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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1377348
審判番号 不服2020-14289  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-12 
確定日 2021-09-15 
事件の表示 特願2017-128643「リモート通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月24日出願公開、特開2019- 12401、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年6月30日の出願であって、令和2年3月16日付けで拒絶理由通知がされ、令和2年5月15日付けで手続補正がされ、令和2年7月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和2年10月12日に審判の請求がされると同時に手続補正がされ、令和2年11月5日に前置報告がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年7月7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1、3-7に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2004-120547号公報

第3 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願
発明6」という。)は、令和2年10月12日付けの手続補正で補正され
た特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明
であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
画像形成装置と、
前記画像形成装置が所属するネットワークの外部に存在する電子機器と、
前記画像形成装置および前記電子機器の間のセッションを中継するセッション中継システムと、
前記セッションを管理するセッション管理システムと
を備え、
前記セッション中継システムは、前記セッションによる通信を前記セッション中継システムにおいて識別するための第1のセッションIDおよび第2のセッションIDを前記セッション管理システムに通知し、
前記セッション管理システムは、前記電子機器への前記第1のセッションIDの通知と、前記画像形成装置への前記第2のセッションIDの通知とを実行し、
前記電子機器は、前記セッション中継システムとの間に前記第1のセッションIDを使用する接続を確立し、
前記画像形成装置は、前記セッション中継システムとの間に前記第2のセッションIDを使用する接続を確立し、
前記セッション中継システムは、前記電子機器との間に確立された接続と、前記画像形成装置との間に確立された接続とを前記第1のセッションIDおよび前記第2のセッションIDによって関連付けることによって、前記セッションを中継し、
前記セッション管理システムは、前記画像形成装置の利用者から前記セッションの開始が承認されなかった場合、前記電子機器への前記第1のセッションIDの通知と、前記画像形成装置への前記第2のセッションIDの通知との少なくとも1つを実行せず、
前記画像形成装置は、前記画像形成装置に表示される画面のデータを前記セッションを介して前記電子機器に送信するサーバーアプリケーションを備え、
前記電子機器は、前記データを前記セッションを介して前記サーバーアプリケーションから受信して前記データに基づいた画面を表示するアプリケーションであるクライアントを備え、
前記クライアントは、前記クライアント自身が前記データに基づいて表示した画面に対する操作を受け付けて前記操作を前記セッションを介して前記サーバーアプリケーションに送信し、
前記サーバーアプリケーションは、前記操作を前記セッションを介して前記クライアントから受信して前記操作に応じて前記画像形成装置を動作させることを特徴とするリモート通信システム。」

なお、本願発明2-6は、本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2004-120547号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審付与。以下同様。)。

(1) 段落【0060】
「【0060】
以上説明したように本実施の形態によれば、通知UDPパケット109への応答として接続要求UDPパケット111を送ることで、プライベートI Pアドレスを持つLAN 内の機器101 に対し、インターネット上の端末102から所望のタイミングで自由に通信を開始できる。これにより、例えば、端末としてインターネットに接続された携帯電話やPDAを用い、機器としてLAN に接続された、ビデオ、テレビ、エアコン、冷蔵庫などの家電を用いれば宅外から自由に家電操作を行なうことも可能となる。」

(2) 段落【0075】
「【0075】
(実施の形態2)
本発明に係る通信システムの別の実施形態を説明する。
本実施形態のネットワーク接続は図2で示したとおりである。アドレス付与も第1の実施の形態と同じであり、通信シーケンスのみが異なっている。本実施の形態では端末としてWebブラウザを備えたPCや携帯電話を用いており、これを用いてLANに接続された機器101とHTTPによる通信を行なって操作やコンテンツ取得などを行なうものである。」

(2) 段落【0081】-【0091】
「【0081】
以上の通信準備が完了している状況で、端末102から機器101に対する通信を開始する場合、端末102はサーバ104に対し、「GETconnect.cgi?ID=1234」のように機器101の機器IDをパラメータに指定して、HTTPリクエストとして機器接続要求411を送信する。なお、機器ID”1234”は端末102が予め認識しているものとする。機器接続要求411を受信したサーバ104は、ステップS423において、指定された機器IDをキーにサーバ内に登録された機器IDを検索し、機器
101が登録した対応エントリを得る。
【0082】
次に、サーバ104はエントリ内の最終アクセス時刻(図4参照)を確認し、それと現在時刻との差が最大アクセス確認周期を超えている場合は機器接続要求411を拒否し、最大アクセス確認周期以内の場合は、ステップS424以後に進んで機器101に接続要求UDPパケット412を送信する。この最終アクセス時刻の確認により、第1の実施の形態と同様に、誤って関係の無い別の機器に接続要求を行うことを回避できる等の効果がある。
【0083】
次にサーバ104は、ステップS424において一意なセッション識別子を生成してサーバ104内に保存する。さらに、サーバ104は機器101に対応するエントリからSA、DA、SP、DPの各アドレスを取得し、これらを用いてセッション識別子をペイロードに含む接続要求UDPパケット412を送信する。ここで、接続要求UDPパケット412は通知UDPパケットA(410)または通知UDPパケットB(409)に対する応答として構成されているため、ルータ103において、復路のNAPT変換が行なわれて機器101に転送される。
【0084】
接続要求UDPパケット412を受信した機器101は、サーバ104に対してTCP接続要求413を送信する。TCP接続要求413についての詳細な説明は省略するが、syn,ack/syn,ackパケットによって接続を確立する通常のTCP接続確立手順である。TCP接続要求413はLAN側からWAN側に対して行なわれるものであるため、NAPT機能を備えたルータ103を越えて支障なくTCP接続を確立することができる。
【0085】
以上によりサーバ104と機器101の間でTCP接続が確立された後、機器101はそのTCP接続上で、接続要求UDPパケット412により通知されたセッション識別子を、セッション識別子通知414によってサーバ104へ返送する。サーバ104はセッション識別子を受信すると、ステップS425でセッション識別子の照合を行い、このセッション識別子が機器接続要求411により生成されたものであり、従って機器接続要求411に対するTCP接続確立が成功したことを検出する。
【0086】
その後、サーバ104はHTTPリクエスト411に対する応答としてHTTPレスポンス415を端末102に送信する。このHTTPレスポンス415は、端末102に表示すべきHTMLコンテンツを含んでおり、かつ、このHTMLコンテンツにはセッション識別子”5678”が、例えば「<AHREF=”control.cgi?SessionID=5678&Target=deviceFunc.cgi&Param=abcd”>リンク</A>」のようにリンクやボタンとして埋め込まれている。以上の手順により、端末102には機器101に対応するページ(画像)が表示される。
【0087】
次に、ユーザが表示されたページ内のリンクをクリックすると、”GETcontrol.cgi?SessionID=5678&Target=deviceFunc.cgi&Param=abcd”等のようにセッション識別子を含むHTTPリクエスト416が生成されてサーバ104に送信される。サーバ104はHTTPリクエスト416を受信すると、指定されたcontrol.cgiが起動し、セッション識別子”5678”を照合する(ステップS426)。照合した結果、セッション識別子”5678”のTCP接続が既に確立済みであることを検出すると、サーバ104のcontrol.cgiは、HTTPリクエスト416の内容を”GETdeviceFunc.cgi?Param=abcd”のように変換してHTTPリクエスト転送417としてそのTCP接続上に転送する。このようにして、端末102は、機器101に対するHTTPリクエストを送信できる。
【0088】
本発明の端末と機器間の通信転送において、上記で説明したような変換方式を用いると、端末は従来のWebブラウザをなんら変更することなく動作可能な上、機器上の”deviceFunc.cgi”等の所望のcgiと”Param=abcd”等の所望のパラメータを指定して起動させるHTML文書を機器が自由に記述することが可能になるなど、優れた効果を持つ。
【0089】
HTTPリクエスト転送417を受信した機器101は、その応答としてHTTPレスポンス418を返信する。この動作について図6を用いて詳細に説明する。
【0090】
図6に示すように、機器101は転送モジュール501とWebサーバモジュール502を備える。転送モジュール501はサーバ104との間で本発明の通信プロトコルによる通信を行なうためのモジュールであり、Webサーバモジュール502は通常のWebサーバである。転送モジュール501は前述の様に、接続要求UDPパケット412を受信してTCP接続要求413を行い、HTTPリクエスト転送417を受信する。この際の転送モジュール501の通信方向に注目すると、TCP接続を要求(413)する一方でHTTPリクエスト(417)を受信しており、クライアントからTCP接続を要求され且つHTTPリクエストを受信する通常のWebサーバとは通信の方向が異なる。本実施の形態では、転送モジュール501がこの方向の違いを吸収し、Webサーバモジュール502に対し、ソケット等を通じて内部的にHTTPリクエスト503の送信、HTTPレスポンス504の受信を行なうことで、通常のWebサーバを用いて、本発明のHTTP通信手順が実装できるという効果を有する。
【0091】
図5に戻り、次に、サーバ104により、HTTPレスポンス418がHTTPレスポンス転送419として端末102に返送される。HTTPレスポンス転送419に含まれるHTMLコンテンツには、セッション識別子がリンクやボタンとして埋め込まれており、手順416?419と同様の手順を繰り返すことにより、端末102から機器101に対して継続的にHTTPによるアクセスを行なうことが可能になる。この通信のHTMLコンテンツ生成は機器101で行なわれ、コンテンツ表示と操作は端末102で行なわれることにより、端末102から機器101を自由に操作したり、コンテンツを取得したりできる。」

(3) 【符号の説明】欄(抜粋)
「415、614 機器接続応答」

(4) 【図5】




(5) 引用発明
したがって、関連図面に照らし、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「機器としてLAN に接続された、ビデオ、テレビ、エアコン、冷蔵庫などの家電を用いる、通信システムは、端末としてWebブラウザを備えたPCや携帯電話を用いており、これを用いてLANに接続された機器101とHTTPによる通信を行なって操作やコンテンツ取得などを行なうものであり、
端末102から機器101に対する通信を開始する場合、端末102はサーバ104に対し、HTTPリクエストとして機器接続要求411を送信し、
次にサーバ104は、ステップS424において一意なセッション識別子を生成してサーバ104内に保存し、さらに、サーバ104は機器101に、セッション識別子をペイロードに含む接続要求UDPパケット412を送信し、
接続要求UDPパケット412を受信した機器101は、サーバ104に対してTCP接続要求413を送信し、
以上によりサーバ104と機器101の間でTCP接続が確立され、
セッション識別子通知414によって、サーバ104はセッション識別子を受信すると、ステップS425でセッション識別子の照合を行い、
その後、サーバ104はHTTPリクエスト411に対する応答としてHTTPレスポンス415(機器接続応答)を端末102に送信し、このHTTPレスポンス415(機器接続応答)は、端末102に表示すべきHTMLコンテンツを含んでおり、かつ、このHTMLコンテンツにはセッション識別子”5678”が、リンクやボタンとして埋め込まれており、以上の手順により、端末102には機器101に対応するページ(画像)が表示され、
次に、ユーザが表示されたページ内のリンクをクリックすると、セッション識別子を含むHTTPリクエスト416が生成されてサーバ104に送信され、サーバ104はHTTPリクエスト416を受信し、セッション識別子”5678”を照合(ステップS426)した結果、セッション識別子”5678”のTCP接続が既に確立済みであることを検出すると、HTTPリクエスト416の内容を、HTTPリクエスト転送417としてそのTCP接続上に転送し、このようにして、端末102は、機器101に対するHTTPリクエストを送信でき、
機器101は転送モジュール501とWebサーバモジュール502を備え、Webサーバモジュール502は通常のWebサーバであり、
この通信のHTMLコンテンツ生成は機器101で行なわれ、コンテンツ表示と操作は端末102で行なわれることにより、端末102から機器101を自由に操作したり、コンテンツを取得したりできる、
通信システム。」

2.周知技術等
(1) 引用文献2
前置報告書において周知技術を示す文献として引用された引用文献2(特開2017-103814号公報)の段落【0004】には、以下の記載がある。
「【0004】
そこで、最近、画像処理装置の操作用画面を携帯端末装置の表示部にリモート画面として表示し、携帯端末装置から画像処理装置を連携操作できるようにした、画像処理装置と携帯端末装置との連携システムが提案されている。この連携システムでは、携帯端末装置の表示部に表示される画像処理装置側のリモート画面は、画像処理装置から送信される画面データに基づいて表示される。この画面データに基づくリモート画面は、本来は画像処理装置の操作パネルに表示される画面と同じである。」

(2) 引用文献3
前置報告書において周知技術を示す文献として引用された引用文献3(浅野大雅、「画面共有技術の応用システムの開発」、RICOH TECHNICAL REPORT、第33号、2007年12月10日、p.126-133)には、128ページの「1-3-2 PCからMFPの遠隔操作」に、以下の記載がある。
「Fig.4を用いて,PCからMFPの遠隔操作を説明する.PCからMFPの遠隔操作が可能になると,MFPの画面を共有しながらユーザーのサポートが出来るので,顧客サービスの質が向上する.(以下省略)」

(3) 引用文献α
出願時の技術水準を示す文献として、当審で新たに引用する引用文献α(特開2017-54458号公報)には、以下の記載がある。

ア 段落【0032】-【0042】
【0032】
図4は、実施形態1に係るMFP100、PC110、中継サーバ120、管理サーバ130との間の通信を説明するシーケンス図である。このシーケンス図で示す動作は、MFP100のCPU211がHDD214からRAM213に展開したプログラムを実行することによって実現される。またPC110及び中継サーバ120、管理サーバ130の処理は、各装置のCPU311がHDD314からRAM313に展開したプログラムを実行することによって実現される。

・・・(中略)・・・


【0034】
管理サーバ130は、上述したようにMFP100とコールセンターとを関連付けるMFP情報テーブル131を有している。管理サーバ130は、受信したMFPの識別子に基づいて、MFP100が管理サーバ130が管理するMFPであるかをMFP情報テーブル131を参照して判定し、管理対象であればS402で、認証トークンをMFP100に送信する。後のS404で、中継サーバ120がMFP100からのこの認証トークン(認証情報)を検証することにより、中継サーバ120は、管理サーバ130が管理していないMFPからの接続要求を拒否できる。また管理サーバ130はS403で、受信したMFPの識別子に基づいて、MFP情報テーブル131から中継サーバ120のURLを取得し、そのURLをMFP100に送信する。
【0035】
次にS404でMFP100は、S403で受信した中継サーバ120のURLに対して、認証トークンの検証要求を発行する。これにより中継サーバ120は、その検証の結果として、S405でセッションIDをMFP100に返す。このセッションIDは、中継サーバ120へのログインが成功したことを証明するデータであり、中継サーバ120への支援URLの作成要求などの際に渡すデータである。このようにしてMFP100は、管理サーバ130から中継サーバ120への接続情報を受け取ることにより、適切な中継サーバ120への接続情報を取得することができる。こうして、この後、MFP100と中継サーバ120との間で、MFP100がPC110からの支援を受けるための支援 URLと受付番号を作成するためのセッションが実行される。

・・・(中略)・・・

【0041】
S413でPC110は、中継サーバ120に接続するために、管理サーバ130にユーザ名とパスワードを送信して認証要求を行う。これによりS414で管理サーバ130は、PC110のユーザが管理サーバ130のオペレータ情報テーブル132に登録されているか否かを判定し、パスワードの検証を行い、正しければ認証トークンをPC110に送信する。こうして認証トークンを取得したPC110はS415で、中継サーバ120に認証トークンの検証要求を行う。これによりS416で中継サーバ120は、その検証の結果としてセッションIDをPC110に返す。次にPC110はS417で、中継サーバ120に支援URLの取得要求とセッションIDを送信する。このときPC110のオペレータは、中継サーバ120のURLは知っているが、S412によって作成された支援URLは知らない。従ってこれを特定するために、PC110のオペレータは、S411でMFP100の操作部220に表示された受付番号を、MFP100のユーザから取得してPC110に入力する。そしてS411でPC110は入力された受け付け番号をS418で中継サーバ120に送信する。尚、MFP100の操作部220に表示された受付番号をPC110のオペレータに伝えるのは、電話でも良いし、マイク223とスピーカ224を用いたIP電話や電子メールでも良い。これにより中継サーバ120は、RAM313に保存された受付番号の中から、S418で入力された受付番号と一致するものを求め、S419で、その受付番号に対応する支援URLを、PC110に送信する。こうしてS420でPC110は、中継サーバ120へ支援参加要求を発行する。中継サーバ120は、該要求を受信すると、PC110の情報を参加者としてRAM313にバッファリングする。これによりMFP100とPC110との間での支援データのやり取りができるようになる。
【0042】
S421で中継サーバ120は、S412で送信開始されたMFP100からのGET要求に対する応答として、参加者情報をMFP100へ送信する。これにより、MFP1 00は、自身を支援する装置としてPC110が選択されたことを把握することができる。こうしてS422,S423で、MFP100とPC110は、割り当てられた支援URLに対して、POST要求、GET要求を定期的に送信することにより、中継サーバ120を介した支援データの通信を行う。ここで支援データとしては、例えば、動画や音声、遠隔操作の命令データ、MFP100の持つデータなどが挙げられる。尚、MFP100の持つデータは、カウンタ値、稼動ログ、MFP100で使用されている各部品の消耗度を表す部品カウンタ値などの稼動情報、及びハード障害やジャム等の障害情報などを含む。例えば、MFP100にてジャムエラー等の障害が発生し、ユーザが障害復旧できない場合、その原因を探るため、障害情報をMFP100からコールセンター112のオペレータに通知するものとする。この場合、MFP100は障害を示す情報を支援URLにPOSTすると、中継サーバ120は当該情報をRAM313に格納する。その後、コールセンター112のPC110が支援URLに対してGET要求を送信すると、中継サーバ120はRAM313に格納された当該情報を応答としてPC110に送信する。続いてMFP100から送信された情報に基づいて障害の原因を把握したコールセンター112のオペレータがMFP100のユーザに対してエラーの解除方法を動画で伝えるものとする。この場合、コールセンター112のオペレータは、PC110を操作することにより、支援URLに対して動画データのPOST要求を送信すると、中継サーバ120は当該動画データをRAM313に格納する。その後MFP100が支援URLに対してGET要求を送信すると、中継サーバ120のRAM313に格納された動画データがMFP 100に送信される。」

イ 【図4】




第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「機器としてLAN に接続された、ビデオ、テレビ、エアコン、冷蔵庫などの家電を用いる」、「LANに接続された機器101」は、本願発明1の「画像形成装置」と、「装置」である点で共通するといえる。

イ 引用発明の「端末102」は、ここで「端末としてWebブラウザを備えたPCや携帯電話を用いており、これを用いてLANに接続された機器101とHTTPによる通信を行なって操作やコンテンツ取得などを行なうものであ」るから、本願発明1の「前記画像形成装置が所属するネットワークの外部に存在する電子機器」と、「前記装置が所属するネットワークの外部に存在する電子機器」である点で共通するといえる。

ウ 引用発明の「サーバ104」は、本願発明1の「セッション中継システム」に対応する。
よって、引用発明の「サーバ104はHTTPリクエスト416を受信し、セッション識別子”5678”を照合(ステップS426)した結果、セッション識別子”5678”のTCP接続が既に確立済みであることを検出すると、HTTPリクエスト416の内容を、HTTPリクエスト転送417としてそのTCP接続上に転送し、このようにして、端末102は、機器101に対するHTTPリクエストを送信でき」ることは、本願発明1の「前記画像形成装置および前記電子機器の間のセッションを中継するセッション中継システム」と、「前記装置および前記電子機器の間のセッションを中継するセッション中継システム」である点で共通するといえる。

エ 本願発明1の「第1のセッションID」および「第2のセッションID」は、両者が「同一のセッションID」である場合が排除されていない。
よって、引用発明の「サーバ104」が、「セッション識別子”5678”」を用いて、「機器101に、セッション識別子をペイロードに含む接続要求UDPパケット412を送信し」ており、また、「HTTPリクエスト411に対する応答としてHTTPレスポンス415(機器接続応答)を端末102に送信し、このHTTPレスポンス415(機器接続応答)は、端末102に表示すべきHTMLコンテンツを含んでおり、かつ、このHTMLコンテンツにはセッション識別子”5678”が、リンクやボタンとして埋め込まれて」いることは、本願発明1において「前記セッション管理システムは、前記電子機器への前記第1のセッションIDの通知と、前記画像形成装置への前記第2のセッションIDの通知とを実行し」ていることと、「前記電子機器への前記第1のセッションIDの通知と、前記装置への前記第2のセッションIDの通知とを実行し」ている点で共通するといえる。

オ 上記「エ」のとおり、本願発明1の「第1のセッションID」および「第2のセッションID」には、両者が同一のセッションIDである場合が排除されていないから、引用発明において同一の「セッション識別子”5678”」が端末102とサーバ104と、サーバ104と機器101との通信に用いられていることは、「前記第1のセッションIDおよび前記第2のセッションIDによって関連付け」されているといい得る。
よって、引用発明において、(セッション識別子を含む)「次に、ユーザが表示されたページ内のリンクをクリックすると、セッション識別子を含むHTTPリクエスト416が生成されてサーバ104に送信され、サーバ104はHTTPリクエスト416を受信し、セッション識別子”5678”を照合(ステップS426)した結果、セッション識別子”5678”のTCP接続が既に確立済みであることを検出すると、HTTPリクエスト416の内容を、HTTPリクエスト転送417としてそのTCP接続上に転送し、このようにして、端末102は、機器101に対するHTTPリクエストを送信でき」ることは、本願発明1の「前記電子機器は、前記セッション中継システムとの間に前記第1のセッションIDを使用する接続を確立し、前記画像形成装置は、前記セッション中継システムとの間に前記第2のセッションIDを使用する接続を確立し、前記セッション中継システムは、前記電子機器との間に確立された接続と、前記画像形成装置との間に確立された接続とを前記第1のセッションIDおよび前記第2のセッションIDによって関連付けることによって、前記セッションを中継し」ていることと、「前記電子機器は、前記セッション中継システムとの間に前記第1のセッションIDを使用する接続を確立し、前記装置は、前記セッション中継システムとの間に前記第2のセッションIDを使用する接続を確立し、前記セッション中継システムは、前記電子機器との間に確立された接続と、前記装置との間に確立された接続とを前記第1のセッションIDおよび前記第2のセッションIDによって関連付けることによって、前記セッションを中継し」ている点で共通するといえる。

カ 引用発明の「機器101」が備える「Webサーバモジュール502」は、本願発明1の「サーバーアプリケーション」に相当する。
引用発明の「端末102」の「Webブラウザ」は、本願発明1の「アプリケーションであるクライアント」に相当する。
よって、引用発明の「通信システムは、端末としてWebブラウザを備えたPCや携帯電話を用いており」、「サーバ104はHTTPリクエスト411に対する応答としてHTTPレスポンス415(機器接続応答)を端末102に送信し、このHTTPレスポンス415(機器接続応答)は、端末102に表示すべきHTMLコンテンツを含んでおり」、「以上の手順により、端末102には機器101に対応するページ(画像)が表示され、次に、ユーザが表示されたページ内のリンクをクリックすると、セッション識別子を含むHTTPリクエスト416が生成されてサーバ104に送信され」、「機器101は転送モジュール501とWebサーバモジュール502を備え、Webサーバモジュール502は通常のWebサーバであ」ることは、本願発明1の「前記画像形成装置は、前記画像形成装置に表示される画面のデータを前記セッションを介して前記電子機器に送信するサーバーアプリケーションを備え、前記電子機器は、前記データを前記セッションを介して前記サーバーアプリケーションから受信して前記データに基づいた画面を表示するアプリケーションであるクライアントを備え、前記クライアントは、前記クライアント自身が前記データに基づいて表示した画面に対する操作を受け付けて前記操作を前記セッションを介して前記サーバーアプリケーションに送信し」ていることと、「前記装置は、データを前記セッションを介して前記電子機器に送信するサーバーアプリケーションを備え、前記電子機器は、前記データを前記セッションを介して前記サーバーアプリケーションから受信して前記データに基づいた画面を表示するアプリケーションであるクライアントを備え、前記クライアントは、前記クライアント自身が前記データに基づいて表示した画面に対する操作を受け付けて前記操作を前記セッションを介して前記サーバーアプリケーションに送信し」ている点で共通するといえる。

キ 引用発明の「端末102から機器101を自由に操作したり、コンテンツを取得したりできる、通信システム」は、本願発明1の「リモート通信システム」に相当する。

したがって、本願発明1と、引用発明との間には、次の一致点、相違点が
あるといえる。

[一致点]
「装置と、
前記装置が所属するネットワークの外部に存在する電子機器と、
前記装置および前記電子機器の間のセッションを中継するセッション中継システムと、
を備え、
前記電子機器への前記第1のセッションIDの通知と、前記装置への前記第2のセッションIDの通知とを実行し、
前記電子機器は、前記セッション中継システムとの間に前記第1のセッションIDを使用する接続を確立し、
前記装置は、前記セッション中継システムとの間に前記第2のセッションIDを使用する接続を確立し、
前記セッション中継システムは、前記電子機器との間に確立された接続と、前記装置との間に確立された接続とを前記第1のセッションIDおよび前記第2のセッションIDによって関連付けることによって、前記セッションを中継し、
前記装置は、データを前記セッションを介して前記電子機器に送信するサーバーアプリケーションを備え、
前記電子機器は、前記データを前記セッションを介して前記サーバーアプリケーションから受信して前記データに基づいた画面を表示するアプリケーションであるクライアントを備え、
前記クライアントは、前記クライアント自身が前記データに基づいて表示した画面に対する操作を受け付けて前記操作を前記セッションを介して前記サーバーアプリケーションに送信し、
前記サーバーアプリケーションは、前記操作を前記セッションを介して前記クライアントから受信して前記操作に応じて前記装置を動作させることを特徴とするリモート通信システム。」

[相違点1]
本願発明1は、「画像形成装置」を備えるのに対して、引用発明では、「機器101」が、「機器としてLAN に接続された、ビデオ、テレビ、エアコン、冷蔵庫などの家電を用いる」ものであって、「画像形成装置」を用いることが特定されていない点。
また、「装置」が「画像形成装置」であることに伴って、本願発明では、
「電子機器」が、「前記画像形成装置が所属するネットワークの外部に存在する電子機器」であり、
「セッション中継システム」が、「前記画像形成装置および前記電子機器の間のセッションを中継するセッション中継システム」であり、
「前記画像形成装置への前記第2のセッションIDの通知とを実行し」、
「前記画像形成装置は、前記セッション中継システムとの間に前記第2のセッションIDを使用する接続を確立し」、
「前記セッション中継システムは、前記電子機器との間に確立された接続と、前記画像形成装置との間に確立された接続とを前記第1のセッションIDおよび前記第2のセッションIDによって関連付けることによって、前記セッションを中継し」、
「前記サーバーアプリケーションは、前記操作を前記セッションを介して前記クライアントから受信して前記操作に応じて前記画像形成装置を動作させる」のに対して、引用発明では、このようなことが特定されていない点。

[相違点2]
本願発明1のシステムは、さらに、
「前記セッションを管理するセッション管理システム」を備えるとともに、
「前記セッション中継システムは、前記セッションによる通信を前記セッション中継システムにおいて識別するための第1のセッションIDおよび第2のセッションIDを前記セッション管理システムに通知し」、
「前記セッション管理システムは」、前記電子機器への前記第1のセッションIDの通知と、前記画像形成装置への前記第2のセッションIDの通知とを実行しているのに対して、引用発明では、「前記セッションを管理するセッション管理システム」を備えておらず、また、セッション中継システムがセッションIDを「前記セッション管理システムに通知し」、「前記セッション管理システム」が、セッションIDを通知することが特定されていない点。

[相違点3]
本願発明1は、「前記セッション管理システムは、前記画像形成装置の利用者から前記セッションの開始が承認されなかった場合、前記電子機器への前記第1のセッションIDの通知と、前記画像形成装置への前記第2のセッションIDの通知との少なくとも1つを実行せず」という処理を行うのに対して、引用発明では、機器の利用者がセッションの開始を承認しなかった場合の処理について特定されていない点。

[相違点4]
本願発明1は、「前記画像形成装置は、前記画像形成装置に表示される画面のデータを前記セッションを介して前記電子機器に送信するサーバーアプリケーションを備え」るのに対して、引用発明の「機器101」が備える「Webサーバモジュール502」は、自機に表示される画面のデータを送信することが特定されていない点。

(2) [相違点2]についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。
相違点2に係る本願発明1における、
「前記セッションを管理するセッション管理システム」を備えるとともに、
「前記セッション中継システムは、前記セッションによる通信を前記セッション中継システムにおいて識別するための第1のセッションIDおよび第2のセッションIDを前記セッション管理システムに通知し」、
「前記セッション管理システムは」、前記電子機器への前記第1のセッションIDの通知と、前記画像形成装置への前記第2のセッションIDの通知とを実行しているという構成は、上記引用文献1-3には記載されておらず、本願出願前において周知技術であるともいえない。

なお、上記「第4 2.その他の文献について」の「(1) 引用文献2」、「(2) 引用文献3」にそれぞれ記載されるように、端末から画像形成装置を遠隔操作する場合に、画像形成装置に表示する画面を端末に表示させて操作する点は、「画面共有」として、周知技術であると認められる。

また、上記「第4 2.その他の文献について」の「(3) 引用文献α」に記載されるように、セッションを「中継」するための手段(サーバ)とは別に、セッションを「管理」するための手段(サーバ)を設けることまでは、周知技術といえるしても、さらに、相違点2に係る本願発明1のように、「セッション中継システム」がセッションIDを「セッション管理システム」に通知して、「セッション管理システム」が電子機器と画像形成装置にセッションIDを通知する点までも周知技術であるとはいえない。

よって、当業者といえども、引用文献1に記載された発明に基づいて、周知技術(引用文献2-3等)を参照することによって、本願発明1の[相違点2]に係る構成を容易に想到することはできない。

(3)まとめ
したがって、本願発明1は、[相違点1]、[相違点3]-[相違点4]
について検討するまでもなく、当業者であっても、引用文献1に記載された発明に基づいて、周知技術(引用文献2-3等)を参照することによって、容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-6について
本願発明2-6も、上記[相違点2]に係る、本願発明1の、
「前記セッションを管理するセッション管理システム」を備えるとともに、
「前記セッション中継システムは、前記セッションによる通信を前記セッション中継システムにおいて識別するための第1のセッションIDおよび第2のセッションIDを前記セッション管理システムに通知し」、
「前記セッション管理システムは」、前記電子機器への前記第1のセッションIDの通知と、前記画像形成装置への前記第2のセッションIDの通知とを実行しているという構成と同一の構成を備えるものである。
よって、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-6も、当業者であっても、引用文献1に記載された発明に基づいて、周知技術(引用文献2-3等)を参照することによって、容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
審判請求時の補正により補正された、本願発明1-6は、上記[相違点2]に係る、本願発明1の、
「前記セッションを管理するセッション管理システム」を備えるとともに、
「前記セッション中継システムは、前記セッションによる通信を前記セッション中継システムにおいて識別するための第1のセッションIDおよび第2のセッションIDを前記セッション管理システムに通知し」、
「前記セッション管理システムは」、前記電子機器への前記第1のセッションIDの通知と、前記画像形成装置への前記第2のセッションIDの通知とを実行しているという事項を有しており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-08-31 
出願番号 特願2017-128643(P2017-128643)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 玉木 宏治  
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 林 毅
稲葉 和生
発明の名称 リモート通信システム  
代理人 原口 貴志  

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