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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1377390
審判番号 不服2020-16436  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-30 
確定日 2021-09-14 
事件の表示 特願2016- 78494「結晶性酸化物半導体膜および半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 1日出願公開、特開2016-201540、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成28年4月8日(優先権主張 平成27年4月10日)の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年4月3日 :手続補正書及び上申書の提出
令和2年1月31日付け :拒絶理由通知書
令和2年4月6日 :意見書の提出
令和2年8月18日付け :拒絶査定
令和2年11月30日 :審判請求書及び手続補正書の提出


第2 原査定の概要
原査定(令和2年8月18日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1.本願の請求項1?4,6,7に係る発明は,本願の優先権主張日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,下記の引用例1に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないか,下記の引用例1に記載された発明に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
2.本願の請求項1?8に係る発明は,本願の優先権主張日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,下記の引用例2に記載された発明及び引用例1,3?4に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用例1.米国特許出願公開第2012/0045661号明細書
引用例2.国際公開第2013/035843号
引用例3.田村 英雄,米山 宏,酸化物半導体の電気化学特性,電気化学および工業物理化学,1980年,Vol. 48, No. 6,pp. 335-343
引用例4.奥村 次徳,半導体への不純物ドーピング,応用物理,1999年,Vol. 68, No. 9,pp. 1054-1059


第3 本願発明
本願の請求項1?7に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明7」という。)は,令和2年11月30日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される発明であり,そのうちの本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
コランダム構造を有する結晶性酸化物半導体を主成分として含む結晶性酸化物半導体膜であって,結晶性酸化物半導体膜がn型ドーパントを含み,主面が,a面,m面またはr面であることを特徴とする結晶性酸化物半導体膜。」


第4 引用例の記載と引用発明
1.引用例1と引用発明1について
(1)引用例1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1(米国特許出願公開第2012/0045661号明細書)には,次の記載がある。(下線は当審が付加。以下同じ。)

「[0002]The present invention relates generally to rare-earth-doped materials and, more specifically, to alloys of sapphire and α-Ga_(2)O_(3) doped with neodymium useful as active mediums for waveguide lasers and to related methods.」
(和訳)(和訳は当審により作成。以下同じ。)
「[0002] 本発明は,一般的には,希土類元素をドープした材料,より具体的には,導波路レーザの活性媒体として有用であるネオジムがドープされたサファイア及びα-Ga_(2)O_(3)の合金およびそれに関連する方法に関する。」

「[0007]In an embodiment, the present invention is directed to rare-earth-doped α-(Al_(1-x)Ga_(x))_(2)O_(3), where α-(Al_(1-x)Ga_(x))_(2)O_(3) is an alloy of the corundum-phase oxides α-Al_(2)O_(3) (sapphire) and α-Ga_(2)O_(3) that retain the same single-crystal structure independent of Ga/Al ratio, as well as to related methods. The rare-earth-doped α-(Al_(1-x)Ga_(x))_(2)O_(3) has a gallium content x greater than 0 up to and including 1. Rare-earth-doped α-(Al_(1-x)Ga_(x))_(2)O_(3) is a transparent optical material with a high refractive index suitable as the core layer in a planar waveguide laser.」
(和訳)
「[0007]一実施形態では,本発明は,希土類ドープ(Al_(1-x)Ga_(x))_(2)O_(3)及び関連方法を対象とし,ここでα-(Al_(1-x)Ga_(x))_(2)O_(3)はGa/Al比によらず,同じ単結晶構造を保持するコランダム相の酸化物α-Al_(2)O_(3)(サファイア)及びα-Ga_(2)O_(3)の合金である。希土類ドープα-(Al_(1-x)Ga_(x))_(2)O_(3)は0より大きく1以下のガリウム含有量xを有する。希土類ドープα-(Al_(1-x)Ga_(x))_(2)O_(3)は平面導波路のコア層に好適な高屈折率を有する透明な光学材料である。」

「[0012]FIG. 1 shows high resolution x-ray diffraction from a 120 nm thick Nd:α-Ga_(2)O_(3) film grown on A-plane sapphire: (a) θ-2θ scan showing only a single family of corundum-phase x-ray peaks indicating that the film is single phase. (b) φrotation scans showing that the in-plane orientation of the film matches the substrate. φ scans involve detecting off-axis peaks while the sample is rotated about its normal. (c) Reciprocal space map indicating slight mosaicity as shown by the broad film peak. Q_(X) and Q_(y) are the inverse interplanar spacings along the in-plane and out-of-plane directions respectively.」
(和訳)
「[0012]図1は,A面サファイア上に成長された厚さ120nmのNd:α-Ga_(2)O_(3)膜の高分解能X線回折を示している:(a)θ-2θスキャンにただ1つ見られるコランダム相のX線ピークの単一ファミリーは,膜が単一相であることを示す。(b)膜の面内配向が基板と一致することを示すφ回転スキャン。φスキャンは,試料が法線に対し回転しているときにオフ角を検出することを含む。(c)膜の幅広いピークに示されるようにわずかなモザイク性を示す逆格子空間マップ。Q_(x)及びQ_(y)はそれぞれ面内及び面外方向に沿っての逆格子間隔である。」

「[0056]The films were grown on sapphire substrates in a VG-V80H MBE system designed for semiconductors but modified for oxides with the addition of a high-throughput turbomolecular pump and SiC substrate heater.・・・」
(和訳)
「[0056]半導体用に設計され,酸化物用に高スループットのターボ分子ポンプとSiC基板ヒーターを付加する改造がなされたVG-H80H MBE装置内で,膜はサファイア基板上に成長された。・・・」

「[0057]We found that α-Ga_(2)O_(3) was considerably more difficult to grow than sapphire. Any Ga on the film surface not fully oxidized tends to rapidly desorb in the form of the volatile suboxide Ga_(2)O. Using our in-house plasma source, we were limited to growing slowly and at low temperatures to preserve crystallinity and minimize desorption.・・・」
(和訳)
「[0057]本発明者らは,α-Ga_(2)O_(3)の成長がサファイアに比べ著しく困難であることを見いだした。膜表面で十分に酸化されないあらゆるGaは,揮発性のGa_(2)O亜酸化物の形で急速に脱離する傾向にある。本発明者らの内製のプラズマ源を用いて,結晶性を保持し脱離を最小限にするために,成長は遅く,そして低温に制限された。・・・」

[0058]Using our novel method, we were able to grow Nd-doped α-Ga_(2)O_(3) on R, A and M-plane sapphire substrates. Films grown on C-plane under similar conditions were entirely β-Ga_(2)O_(3), possibly because the weaker surface diffusion on C-plane promotes the formation of other phases with lower surface energy. ・・・」
(和訳)
「[0058]本発明者による新規な方法を用いて,本発明者らは,R,A及びM面サファイア基板上のNdドープされたα-Ga_(2)O_(3)を成長することができた。同様の条件でC面上に成長されたフィルムは全てβ-Ga_(2)O_(3)であり,おそらく,C面上における弱い表面拡散がより低い表面エネルギーを有する他の相の形成を促進することによる。・・・」




(2)引用発明1
以上によれば,引用例1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「A面サファイア上に成長された,平面導波路のコア層に好適な高屈折率を有する透明な光学材料であるNdがドープされたα-Ga_(2)O_(3)膜。」

(3)引用例1に記載された技術的事項
また,引用例1の段落0058には,次の技術的事項が記載されていると理解できる。
・サファイアC面上では表面拡散が弱いためβ-Ga_(2)O_(3)の形成が促進される一方,R,A,M面サファイア基板上には,α-Ga_(2)O_(3)を成長することができること。


2.引用例2と引用発明2について
(1)引用例2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用例2(国際公開第2013/035843号)には,次の記載がある。

「[0004] しかしながら,単斜晶系のβ-Ga_(2)O_(3)結晶膜をコランダム構造のα-Al_(2)O_(3)基板上に成長させることは困難であり,高品質なβ-Ga_(2)O_(3)結晶膜を得ることはできない。このため,α-Al_(2)O_(3)基板上のβ-Ga_(2)O_(3)結晶膜を用いて高品質のGa_(2)O_(3)系半導体素子を形成することは困難である。」

「[0014] 〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態では,Ga_(2)O_(3)系半導体素子としてのプレーナゲート構造を有するGa_(2)O_(3)系MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)について説明する。
[0015] (Ga_(2)O_(3)系半導体素子の構成)
図1は,第1の実施の形態に係るGa_(2)O_(3)系MISFETの断面図である。Ga_(2)O_(3)系MISFET10は,α-Al_(2)O_(3)基板2上に形成されたn型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜3と,n型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜3上に形成されたソース電極12及びドレイン電極13と,n型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜3中にソース電極12及びドレイン電極13の下にそれぞれ形成されたコンタクト領域14,15と,n型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜3のコンタクト領域14とコンタクト領域15の間の領域上にゲート絶縁膜16を介して形成されたゲート電極11と,コンタクト領域14を囲むボディ領域17とを含む。」

「[0018] n型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜3は,α-Al_(2)O_(3)基板2上に形成されたα-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)(0≦x<1)の単結晶膜である。n型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜3は,Sn,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Ru,Rh,Ir,C,Si,Ge,Pb,Mn,As,Sb,Bi,F,Cl,Br,I等のn型ドーパントを含む。n型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜3は,例えば,1×10^(15)/cm^(3)以上,1×10^(19)/cm^(3)以下の濃度のn型ドーパントを含む。また,n型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜3の厚さは,例えば,0.01?10μmである。」

「[0026] 図2は,α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜の形成に用いられるMBE装置の一例の構成図である。このMBE装置100は,真空槽107と,この真空槽107内に支持され,α-Al_(2)O_(3)基板2を保持する基板ホルダ101と,基板ホルダ101に保持されたα-Al_(2)O_(3)基板2を加熱するための加熱装置102と,薄膜を構成する原子又は分子ごとに設けられた複数のセル103(103a,103b,103c)と,複数のセル103を加熱するためのヒータ104(104a,104b,104c)と,真空槽107内に酸素系ガスを供給するガス供給パイプ105と,真空槽107内の空気を排出するための真空ポンプ106とを備えている。基板ホルダ101は,シャフト110を介して図示しないモータにより回転可能に構成されている。」

「[0031] これにより,α-Al_(2)O_(3)基板2の主面上にα-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶がSn等のn型ドーパントを添加されながらエピタキシャル成長し,n型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)単結晶膜3が形成される。なお,Sn以外のn型ドーパントとして,Ga又はAlサイトを置換する場合は,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Ru,Rh,Ir,C,Si,Ge,Pb,Mn,As,Sb,Bi等を用いることができ,酸素サイトを置換する場合は,F,Cl,Br,I等を用いることができる。n型ドーパントの添加濃度は,第2のセル103bの温度により制御することができる。」








(2)引用発明2
以上によれば,引用例2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「α-Al_(2)O_(3)基板2の主面上にn型ドーパントを添加されながらエピタキシャル成長されたn型α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)(0≦x<1)単結晶半導体膜3。」

3.引用例3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用例3(田村 英雄,米山 宏,酸化物半導体の電気化学特性,電気化学および工業物理化学,1980年,Vol. 48, No. 6,pp. 335-343)には,次の記載がある。
「しかし,酸化物の導電性は,組成の非化学量論性や存在する不純物の種類と量により大きく変る場合が多く,このことを利用して,特定の不純物元素を酸化物に固溶させ酸化物の抵抗を下げること(これをドーピングという)が行われている.たとえば,化学量論性のNiOは緑色を呈し,ρ=10^(15)Ωcmで絶縁体であるが,Liを2.5?5atm%ドープすると,ρ<10Ωcmになる.それゆえ,絶縁性,半導体の区別にはあまり厳密性を期待できない.表1に代表的な金属酸化物の導電性を示すが,NiOのようにドーピングにより半導性となして利用されているものは半導体として分類してある.」(336頁左欄1?12行)




4.引用例4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用例4(奥村 次徳,半導体への不純物ドーピング,応用物理,1999年,Vol. 68, No. 9,pp. 1054-1059)には,次の記載がある。
「1.まえがき
一般的な辞書,例えば「広辞苑・第五版」をみると,半導体について次のような説明がなされている.
はん-どうたい【半導体】導体と絶縁体との中間の電気伝導率をもつ物質。低温ではほとんど電流を流さないが,高温になるに従い電気伝導率が増す.珪素・ゲルマニウム・セレンや重金属の酸化物の類.ダイオード・トランジスター・集積回路・光電池などに応用(岩波書店:広辞苑第五版).
多くの電気・電子材料関連の教科書でも,ほぼこれに近いニュアンスの説明がみられる.しかし筆者は,学部3年生を対象とした授業の冒頭で,半導体に対するこの定義は,間違いとはいえないがあまり適切ではないことを強調している.すなわち,半導体の電子エネルギー構造は,絶縁体と何ら変わることがなく,理想状態では絶縁体であること,そしてこの絶縁体に,母体原子とは異なる元素を「不純物」として意図的に添加(doping:ドーピング)し,これによって電気伝導特性を広い範囲にわたってコントロールできるようになった物質が半導体である,と説明するようにしている.」(1054頁左欄1?18行)


第5 対比・判断
1.引用発明1を主引用発明とする新規性及び容易想到性について
(1)本願発明1について
(1.1)本願発明1と引用発明1の対比
本願発明1と引用発明1を対比する。
ア 引用発明1の「α-Ga_(2)O_(3)膜」はコランダム相の酸化物であり(段落0007),単一相を示している(段落0012)ことから,本願発明1と引用発明1は,ともに「コランダム構造を有する結晶性酸化物を主成分として含む結晶性酸化物膜」である点で共通する。
イ 引用発明1は「A面サファイア上に成長された」膜であり,「単一相」かつ「膜の面内配向が基板と一致する」膜(段落0012)であるから,膜の主面は「A面」であると理解できる。そうすると,本願発明1と引用発明1は,ともに「主面が,a面,m面またはr面である」点で一致する。

以上によれば,本願発明1と引用発明1の一致点及び相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「コランダム構造を有する結晶性酸化物半導体を主成分として含む結晶性酸化物膜であって,主面が,a面,m面またはr面であることを特徴とする結晶性酸化物膜。」
<相違点1-1>
本願発明1は「酸化物半導体膜」であるのに対し,引用発明1は「α-Ga_(2)O_(3)膜」が「半導体膜」であることは特定されていない点。
<相違点1-2>
本願発明1では,「結晶性酸化物半導体膜がn型ドーパントを含」むのに対し,引用発明1では,「α-Ga_(2)O_(3)膜」がn型のドーパントを含むことは特定されていない点。

(1.2)相違点についての判断
相違点1-1は「半導体膜」に関するものであり,また,相違点1-2の「n型ドーパントを含」む点は「半導体膜」に特有の事項であるから,相違点1-1及び1-2についてまとめて検討する。
ア 引用発明1における「Ndがドープされたα-Ga_(2)O_(3)膜」は「平面導波路のコア層に好適な高屈折率を有する透明な光学材料」であって,半導体材料であることは特定されていない。また,「光学材料」である引用発明1の膜を半導体材料,具体的にはn型ドープされた半導体として用いることは引用例1に記載されていないから,上記相違点1-1及び1-2は実質的な相違点である。
したがって,本願発明1は引用発明1であるとはいえない。
イ 引用例1には,「光学材料」である引用発明1の膜を半導体材料に転用すること,具体的にはn型ドーピングを行い半導体として用いることについて記載はなく,示唆もされていない。さらに,「光学材料」にn型ドーピングを行って半導体として用いることが,当業者の周知技術であるとはいえない。
したがって,本願発明1は,引用発明1に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(2)本願発明2?7について
本願発明2?7は,いずれも本願発明1の全ての発明特定事項を有する発明であるから,上記(1)で検討したのと同様の理由により,引用発明1ではなく,また,引用発明1に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

2.引用発明2を主引用発明とする容易想到性について
(1)本願発明1について
(1.1)本願発明1と引用発明2の対比
本願発明1と引用発明2を対比する。
ア 引用例1の「α-(Al_(1-x)Ga_(x))_(2)O_(3)はGa/Al比によらず,同じ単結晶構造を保持するコランダム相の酸化物α-Al_(2)O_(3)(サファイア)及びα-Ga_(2)O_(3)の合金である」(段落0007)との記載や,引用例2の「コランダム構造のα-Al_(2)O_(3)」(段落0004)との記載からみて,引用発明2の「α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)(0≦x<1)」は,コランダム構造を有するといえる。そうすると,引用発明2における「α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)(0≦x<1)単結晶半導体膜3」は,本願発明1における「コランダム構造を有する結晶性酸化物半導体を主成分として含む結晶性酸化物半導体膜」に相当する。
イ 引用発明2における「α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)(0≦x<1)単結晶半導体膜3」は,「n型ドーパントを添加されながらエピタキシャル成長された」,「n型」の「半導体膜」であるから,本願発明1と引用発明2は,「結晶性酸化物半導体膜がn型ドーパントを含」む点で一致する。

以上によれば,本願発明1と引用発明2の一致点及び相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「コランダム構造を有する結晶性酸化物半導体を主成分として含む結晶性酸化物半導体膜であって,結晶性酸化物半導体膜がn型ドーパントを含む,結晶性酸化物半導体膜。」
<相違点2-1>
本願発明1では,「結晶性酸化物半導体膜」の「主面が,a面,m面またはr面である」のに対し,引用発明2では,「α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)(0≦x<1)単結晶半導体膜3」の主面の面方位が特定されていない点。

(1.2)相違点についての判断
上記第4の1.(3)に示したとおり,引用例1の段落0058には,公知の技術的事項として,サファイアC面上では表面拡散が弱いためβ-Ga_(2)O_(3)の形成が促進される一方,R,A,M面サファイア基板上には,α-Ga_(2)O_(3)を成長することができることが記載されている。ここで,引用例1における「希土類ドープα-(Al_(1-x)Ga_(x))_(2)O_(3)」は「光学材料」として記載されたものであり(引用例1の段落0007),上記段落0058に記載された,R,A,M面サファイア基板上に「α-Ga_(2)O_(3)」を成長させる技術も,「光学材料」を形成する技術であると理解できる。
一方,引用例2の段落0014に記載のとおり,引用発明2における「α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)(0≦x<1)単結晶半導体膜3」は,MISFETを構成する半導体膜である。そうすると,引用発明2と引用例1とは技術分野が相違するから,引用例1に記載された,R,A,M面サファイア基板上に「α-Ga_(2)O_(3)」を成長させる技術を引用発明2に適用することは,当業者にとって容易とはいえない。また,引用例3,4にも,「α-(Al_(x)Ga_(1-x))_(2)O_(3)(0≦x<1)単結晶半導体膜3」の主面を「a面,m面またはr面」とすることは,記載も示唆もされていない。
したがって,本願発明1は,引用発明2及び引用例1,3,4に記載された技術的事項から当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(2)本願発明2?7について
本願発明2?7は,いずれも本願発明1の全ての発明特定事項を有する発明であるから,上記(1)で検討したのと同様の理由により,引用発明2及び引用例1,3,4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

第6 原査定についての判断
審判請求時の手続補正(令和2年11月30日付け手続補正)により補正された本願の請求項1に係る発明は,上記相違点1-1及び1-2に係る本願発明1の構成を有するものであるから,上記第5の1.(1)で検討したのと同様の理由により,引用発明1ではなく,また,引用発明1に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。
また,上記請求項1に係る発明は,上記相違点2-1に係る本願発明1の構成を有するものであるから,上記第5の2.(1)で検討したのと同様の理由により,引用発明2及び引用例1,3,4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
したがって,原査定を維持することはできない。


第7 結言
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-08-25 
出願番号 特願2016-78494(P2016-78494)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長谷川 直也  
特許庁審判長 河本 充雄
特許庁審判官 ▲吉▼澤 雅博
小川 将之
発明の名称 結晶性酸化物半導体膜および半導体装置  
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