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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02J |
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管理番号 | 1377411 |
審判番号 | 不服2021-525 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-01-14 |
確定日 | 2021-09-14 |
事件の表示 | 特願2018-568538「給電回路」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月23日国際公開、WO2018/151110、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2018年2月13日(優先権主張 2017年2月14日 日本国(JP))を国際出願日とする出願であって、令和2年5月20日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年6月15日に手続補正がなされたが、同年11月25日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対して、令和3年1月14日に拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和2年11月25日付けの拒絶査定)の概要は以下のとおりである。 この出願の請求項1ないし8に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術(引用文献2,引用文献a?dに示される技術)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.特開2008-161029号公報 2.特開2015-91200号公報(周知技術を示す文献) a.特開2012-151916号公報(周知技術を示す文献) b.特許第3069096号公報(周知技術を示す文献) c.特開2001-16706号公報(周知技術を示す文献) d.特開平5-338444号公報(周知技術を示す文献) 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は、(a)補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「複数の電源モジュール」について、「少なくとも1つの電源モジュールの各々は、当該電源モジュールと並列に接続される前記ダイオードを含む前記車両本体に対して着脱可能である」ことの限定を付加し、(b)補正前の請求項3、請求項7を削除するものである。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる「請求項の削除」、及び第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、請求項1の「複数の電源モジュール」についての上記(a)の限定事項は、当初の請求項7に記載され、さらに明細書の段落【0030】?【0031】、【0107】?【0108】の記載、図9から導き出せる事項であり、新規事項を追加するものではない。 そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1ないし6に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。 よって、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に適合する。 第4 本願発明 本願の請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、令和3年1月14日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 直列に接続された複数の電源モジュールを備え、車両が備える負荷に対して電力を供給する給電回路であって、 前記複数の電源モジュールの各々は、 電力を蓄積可能であって、電力を供給する電源と、 前記電源に対して直列に接続されたスイッチ素子とを含み、 前記複数の電源モジュールの各々に対して、1つずつ並列に接続された複数のダイオードを備え、 前記複数のダイオードの各々は、当該ダイオードと前記電源の負極とを接続する第1接続点から、当該ダイオードと前記電源の正極とを接続する第2接続点に向かって電流が流れることを許容するが、前記第2接続点から前記第1接続点に向かって電流が流れることを許容しないように構成されており、 前記複数の電源モジュールが、前記車両の車両本体に対して着脱可能であって、 前記電源モジュールが、前記車両本体から取り外された状態で前記電源を充電可能に構成されており、 前記複数の電源モジュールのうちの少なくとも1つの電源モジュールの各々は、当該電源モジュールと並列に接続される前記ダイオードを含む前記車両本体に対して着脱可能である、給電回路。 【請求項2】 請求項1に記載の給電回路であって、 前記スイッチ素子は、電気的に制御可能なスイッチ素子である、給電回路。 【請求項3】 請求項1または2に記載の給電回路であって、 前記複数の電源モジュールのうちの少なくとも1つの電源モジュールの各々は、当該電源モジュールに並列に接続された前記ダイオードと一体的に、前記車両本体に対して着脱可能である、給電回路。 【請求項4】 請求項3に記載の給電回路であって、 前記複数の電源モジュールのうちの少なくとも2つの電源モジュールの各々は、当該電源モジュールに並列に接続された前記ダイオードと一体的に、前記車両本体に対して着脱可能であり、 前記少なくとも2つの電源モジュールは、個別に、前記車両本体に対して着脱可能である、給電回路。 【請求項5】 請求項3に記載の給電回路であって、 前記複数の電源モジュールのうちの少なくとも2つの電源モジュールの各々は、当該電源モジュールに並列に接続された前記ダイオードと一体的に、前記車両本体に対して着脱可能であり、 前記少なくとも2つの電源モジュールは、一体的に、前記車両本体に対して着脱可能である、給電回路。 【請求項6】 請求項1?5の何れか1項に記載の給電回路であって、 前記複数の電源モジュールが有する複数の電源のうちの少なくとも1つの電源は、前記車両の車両本体に対して着脱可能に構成されており、 前記複数の電源モジュールが有する複数の電源のうちの少なくとも1つの電源の各々は、当該電源を含む前記電源モジュールが有する前記スイッチ素子、および、当該電源と並列に接続される前記ダイオードを含む前記車両本体に対して着脱可能である、給電回路。」 第5 引用文献、引用発明等 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、「蓄電モジュールおよび蓄電システム」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 1.「【請求項3】 所定数の蓄電セルを直列接続し、その直列接続端を、半導体スイッチを直列に介して外部端子に導出するとともに、各セルの電圧を個別に監視し、いずれかのセル電圧に異常が生じたときに上記スイッチをオン状態からオフ状態に制御するセル保護回路を備えた蓄電モジュールにおいて、上記セル保護回路によって上記スイッチがオフ状態に設定されたときにその状態を外部へ通知する送信手段と、外部からの制御信号を受信して上記スイッチをオフ状態に強制設定する受信手段とを備えたことを特徴とする蓄電モジュール。 ・・・・・(中 略)・・・・・ 【請求項7】 請求項3?5のいずれかにおいて、上記セル保護回路として、いずれかのセル電圧が所定値以下になったときに上記半導体スイッチをオフ状態に設定する過放電保護回路を備えたことを特徴とする蓄電モジュール。 【請求項8】 請求項7において、蓄電セルの直列接続端が半導体スイッチを直列に介して導出される外部端子間に、その外部端子の入出力電圧に対して逆方向となるようにダイオードを並列接続したことを特徴とする蓄電モジュール。 ・・・・・(中 略)・・・・・ 【請求項12】 所定数の蓄電セルが直列接続された蓄電モジュールを多数直列に接続してなる蓄電システムにおいて、上記蓄電モジュールとして請求項1?11に記載の蓄電モジュールを用いたことを特徴とする蓄電システム。」 2.「【背景技術】 【0002】 二次電池やキャパシタなどの蓄電セルを用いて、たとえば電気自動車の動力電源あるいは負荷平準化用の蓄電システムを構成するためには、数十?数百の蓄電セルを直列接続する必要がある。 【0003】 たとえば数百V規模の電圧で蓄電動作を行う蓄電システムを構築する場合、所定数の蓄電セルが直列接続された蓄電モジュールを構成し、この蓄電モジュールを任意数直列接続して所望の動作電圧を得るようにした方がよい。そうすれば、モジュールを規格化して生産性の向上およびコストの低減が可能となり、所望の動作電圧を得るための配線工数を少なくすることができ、一部のセルに不良や故障が生じた場合の交換修理も容易にすることができるなど、多くの利点が得られる。 【0004】 多数の蓄電セルが直列接続された蓄電モジュールでは、モジュール内のセルを保護するため、蓄電セルの直列接続端と外部端子の間に半導体スイッチを直列に介在させるとともに、モジュール内の各セルの電圧を個別に監視し、いずれかのセル電圧に異常が生じたときに上記スイッチをオン状態からオフ状態に制御するセル保護回路を備えることが望ましい(たとえば、特許文献1参照)。 【0005】 セル保護回路としては、モジュール内の蓄電セルを過充電から保護するための過充電保護回路と、モジュール内の蓄電セルを過放電から保護するための過放電保護回路とがあり、用途に応じてそのいずれか一方または両方が設置される。 ・・・・・(中 略)・・・・・ 【0015】 図10は、過放電保護回路を備えた蓄電モジュールとこのモジュールを用いた蓄電システムの構成例を示す。同図において、(a)は蓄電モジュールM1を示し、(b)は蓄電システム101を示す。 【0016】 同図(a)に示す蓄電モジュールM1は、直列接続された10個の蓄電セルB1?B10、半導体スイッチSd1、外部端子p1,p2、および過放電保護回路22によって構成されている。蓄電モジュールM1および蓄電システム101の基本的な構成は、以下に示す事項を除き、図9に示したものと同じである。 【0017】 すなわち、図10に示す蓄電モジュールM1では、いずれかのセル電圧が所定値以下(たとえば2.5V以下)になったときに、過放電保護回路22が半導体スイッチSd1をオフ状態に設定し、これにより、モジュールM1内の全セルB1?B10を外部端子p1,p2から遮断して保護する。 【0018】 半導体スイッチSd1にはパワーMOSトランジスタQ2が使用されているが、このMOSトランジスタQ2に並列に介在するボディダイオードD2は、放電電流に対して逆極性となるように介在している。 【0019】 各モジュールM1?M10はそれぞれ、過放電保護回路22によってオフ設定されるスイッチSd1?Sd10を備えている。また、この蓄電システム101は420Vの電圧で動作する蓄電利用機器42に接続されて使用される。」 3.「【0082】 図3は本発明の第3実施形態を示す。この第3実施形態は、蓄電セルB1?B10の直列接続端が半導体スイッチSd1を直列に介して導出される外部端子p1,p2間に、モジュールM1の入出力電圧に対して逆方向となるようにダイオードD3を並列接続したことを特徴とする。 【0083】 この実施形態は、蓄電システム100が放電モードで動作する際に有効である。たとえば、図4に示すように、モジュールM10内のいずれかのセルが過放電状態になった場合、そのセルを保護するためにスイッチSd10がオフ状態に設定されるが、このとき、他のモジュールM1?M9の放電電流はそれぞれ、モジュールM10に並列接続されたダイオードD3でバイパスされて流れる。つまり、モジュールM10を迂回して放電電流が流れる。 【0084】 これにより、モジュールM10内のスイッチSd10に印加される電圧は、モジュールM10の電圧だけとなる。したがって、スイッチSd10の電圧破壊は生じ得ない。」 4.「 」 上記「1.」ないし「4.」から以下のことがいえる。 ・上記引用文献1に記載の「蓄電モジュールおよび蓄電システム」のうちの「蓄電システム」は、上記「1.」の請求項3,7,12の記載及び「4.」の図3、図4に加えて、引用文献1に記載の発明の前提となる背景技術に関する上記「2.」の記載及び図10(a)(b)(図3、図4に示されるものからダイオードD3を省いたものに相当)によれば、所定数の蓄電セルB1?B10が直列接続された蓄電モジュールM1?M10を多数直列に接続してなるものであり、電気自動車の動力電源となるものであって、電気自動車が備える蓄電利用機器42に対して電力を供給するものであるといえる。 そして、各蓄電モジュールM1?M10は、直列接続した所定数の蓄電セルB1?B10の直列接続端を、各半導体スイッチSd1?Sd10を直列に介して外部端子p1,p2に導出するとともに、各蓄電セルB1?B10の電圧を個別に監視し、いずれかのセル電圧が所定値以下になったときに半導体スイッチSd1?Sd10をオン状態からオフ状態に制御するセル保護回路としての過放電保護回路を備えてなるものである。 ・上記「1.」の請求項8、「3.」の記載及び「4.」の図3、図4によれば、第3実施形態として、さらに各蓄電モジュールM1?M10は、各半導体スイッチSd1?Sd10の電圧破壊が生じないようにするために、外部端子p1,p2間にその外部端子p1,p2の入出力電圧に対して逆方向となるようにダイオードD3を並列接続してなるものである。 以上のことから、蓄電モジュールを多数直列に接続してなる「蓄電システム」について、図3,4に示される第3実施形態に係るもの着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「蓄電モジュールを多数直列に接続してなり、電気自動車が備える蓄電利用機器に対して電力を供給する蓄電システムであって、 各前記蓄電モジュールは、直列接続した所定数の蓄電セルの直列接続端を、半導体スイッチを直列に介して外部端子に導出するとともに、各前記蓄電セルの電圧を個別に監視し、いずれかのセル電圧が所定値以下になったときに前記半導体スイッチをオン状態からオフ状態に制御するセル保護回路としての過放電保護回路を備え、 さらに各前記蓄電モジュールは、前記半導体スイッチの電圧破壊が生じないようにするために、前記外部端子間にその外部端子の入出力電圧に対して逆方向となるようにダイオードを並列接続してなる、蓄電システム。」 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア.給電回路について 引用発明における多数直列に接続してなる「蓄電モジュール」は、本願発明1でいう「直列に接続された複数の電源モジュール」に相当する。 また、引用発明における「電気自動車が備える蓄電利用機器」は、本願発明1でいう「車両が備える負荷」に相当する。 そして、引用発明における「蓄電システム」は、多数直列に接続してなる蓄電モジュールを備え、当該複数の蓄電モジュールから電気自動車が備える蓄電利用機器に対して電力を供給するものであるから、本願発明1でいう「給電回路」に相当するということができる。 したがって、本願発明1と引用発明とは、「直列に接続された複数の電源モジュールを備え、車両が備える負荷に対して電力を供給する給電回路」である点で一致する。 イ.各々の電源モジュールについて 引用発明における各蓄電モジュールが備える直列接続した所定数の「蓄電セル」は、蓄電すなわち電力を蓄積可能であって、その電力を外部に供給するものであることは明らかであり、本願発明1でいう「電力を蓄積可能であって、電力を供給する電源」に相当する。 また、引用発明における各蓄電モジュールが備える「半導体スイッチ」は、直列接続した所定数の蓄電セルの直列接続端を、当該半導体スイッチを直列に介して外部端子に導出していることから、直列接続した所定数の蓄電セルに対して直列に接続されてなるものであり、本願発明1でいう「前記電源に対して直列に接続されたスイッチ素子」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記複数の電源モジュールの各々は、電力を蓄積可能であって、電力を供給する電源と、前記電源に対して直列に接続されたスイッチ素子とを含」むものである点で一致する。 ウ.ダイオードについて 引用発明における各蓄電モジュールが備える、外部端子間にその外部端子の入出力電圧に対して逆方向となるように並列接続してなる「ダイオード」は、本願発明1でいう「前記複数の電源モジュールの各々に対して、1つずつ並列に接続された複数のダイオード」に相当する。 そして、引用発明における各「ダイオード」について、半導体スイッチの電圧破壊が生じないようにするために、外部端子間にその外部端子の入出力電圧に対して逆方向となるように並列接続してなる構成は、本願発明1でいう「複数のダイオードの各々は、当該ダイオードと前記電源の負極とを接続する第1接続点から、当該ダイオードと前記電源の正極とを接続する第2接続点に向かって電流が流れることを許容するが、前記第2接続点から前記第1接続点に向かって電流が流れることを許容しないように構成」されていることに他ならない。 したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記複数の電源モジュールの各々に対して、1つずつ並列に接続された複数のダイオードを備え、前記複数のダイオードの各々は、当該ダイオードと前記電源の負極とを接続する第1接続点から、当該ダイオードと前記電源の正極とを接続する第2接続点に向かって電流が流れることを許容するが、前記第2接続点から前記第1接続点に向かって電流が流れることを許容しないように構成」されている点で一致する。 エ.電源モジュールの着脱について 複数の電源モジュールについて、本願発明1では「前記車両の車両本体に対して着脱可能であって、前記電源モジュールが、前記車両本体から取り外された状態で前記電源を充電可能に構成」されており、さらに「少なくとも1つの電源モジュールの各々は、当該電源モジュールと並列に接続される前記ダイオードを含む前記車両本体に対して着脱可能」であることを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点で相違するといえる。 したがって上記ア.ないしエ.によれば、本願発明1と引用発明とは、 「直列に接続された複数の電源モジュールを備え、車両が備える負荷に対して電力を供給する給電回路であって、 前記複数の電源モジュールの各々は、 電力を蓄積可能であって、電力を供給する電源と、 前記電源に対して直列に接続されたスイッチ素子とを含み、 前記複数の電源モジュールの各々に対して、1つずつ並列に接続された複数のダイオードを備え、 前記複数のダイオードの各々は、当該ダイオードと前記電源の負極とを接続する第1接続点から、当該ダイオードと前記電源の正極とを接続する第2接続点に向かって電流が流れることを許容するが、前記第2接続点から前記第1接続点に向かって電流が流れることを許容しないように構成されている、給電回路。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 複数の電源モジュールについて、本願発明1では「前記車両の車両本体に対して着脱可能であって、前記電源モジュールが、前記車両本体から取り外された状態で前記電源を充電可能に構成」されており、さらに「少なくとも1つの電源モジュールの各々は、当該電源モジュールと並列に接続される前記ダイオードを含む前記車両本体に対して着脱可能」であることを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討する。 引用文献1の段落【0003】には「・・モジュールを規格化して生産性の向上およびコストの低減が可能となり、・・・一部のセルに不良や故障が生じた場合の交換修理も容易にすることができる・・」と記載され、引用発明における各蓄電モジュールについても着脱可能であることが示唆されているといえ、さらに、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2(特に【請求項1】、段落【0022】?【0031】、図1?3を参照)、引用文献a(特に段落【0003】、段落【0022】?【0025】、図1?3を参照)、引用文献b(特に段落【0029】、図1を参照)、引用文献c(特に【請求項1】?【請求項4】、段落【0007】?【0012】、図1?3を参照)、及び引用文献d(特に【請求項1】、段落【0021】を参照)に記載ないし示唆されているように、電気自動車や電動自動二輪車などの車両に対してバッテリパック(あるいは電池ユニット)を着脱可能とし、取り外したバッテリパック(あるいは電池ユニット)に対して充電可能にした技術は周知といえるものであることも踏まえると、引用発明において、各蓄電モジュールを電気自動車の車両本体に対して着脱可能とし、蓄電モジュールが車両本体から取り外された状態で各蓄電セルを充電可能に構成することについては当業者が容易になし得たことであるといえる。 しかしながらその際、引用発明における各蓄電モジュールは一対の外部端子を有していることから、その外部端子の位置で着脱が行われることになると解されるところ、各ダイオードは着脱が行われる各蓄電モジュール内に設けられており(引用文献1の図3も参照)、各蓄電モジュールと共に取り外されるものである。そして、引用文献1には、少なくとも1つのダイオードを車両本体側に設け、少なくとも1つの蓄電モジュールを、ダイオードを含む車両本体に対して着脱可能に構成することの記載も示唆もなく、あえてそのように構成することの動機も見出せない。 また、上記引用文献2や引用文献a?dのいずれの引用文献にも、ダイオードを車両本体側に設け、蓄電モジュールを、ダイオードを含む車両本体に対して着脱可能に構成することの記載も示唆もない。 よって、引用文献1,2及び引用文献a?dからは、上記相違点に含まれる「少なくとも1つの電源モジュールの各々は、当該電源モジュールと並列に接続される前記ダイオードを含む前記車両本体に対して着脱可能である」構成を導き出すことはできない。 そして、ダイオードを車両本体側に設け、蓄電モジュールを、ダイオードを含む車両本体に対して着脱可能に構成することについては、他の証拠も発見しない。 (3)まとめ したがって、本願発明1は、引用発明及び周知技術(引用文献2、引用文献a?dにそれぞれ記載の技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 2.本願発明2ないし6について 請求項2ないし6は、請求項1を直接または間接的に引用する請求項であって、上記相違点に含まれる「少なくとも1つの電源モジュールの各々は、当該電源モジュールと並列に接続される前記ダイオードを含む前記車両本体に対して着脱可能である」という発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明2ないし6は引用発明及び周知技術(引用文献2、引用文献a?dにそれぞれ記載の技術事項)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第7 原査定について 審判請求時の補正により、本願発明1ないし6は、「複数の電源モジュールのうちの少なくとも1つの電源モジュールの各々は、当該電源モジュールと並列に接続される前記ダイオードを含む前記車両本体に対して着脱可能である」という上記「第6 1.(2)」で検討した上記相違点に含まれる発明特定事項を備えるものであるから、原査定において引用された引用文献1,2,a?dに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-08-30 |
出願番号 | 特願2018-568538(P2018-568538) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H02J)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 坂東 博司 |
特許庁審判長 |
清水 稔 |
特許庁審判官 |
井上 信一 山本 章裕 |
発明の名称 | 給電回路 |
代理人 | 特許業務法人梶・須原特許事務所 |