• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60R
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B60R
管理番号 1377455
審判番号 不服2020-14851  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-24 
確定日 2021-08-26 
事件の表示 特願2019-502754号「自動車両用のエアバッグ装置,およびエアバッグ装置用のエアバッグクッション」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月 1日国際公開,WO2018/037110,令和 1年 8月22日国内公表,特表2019-523171号〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2017年(平成29年)8月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年8月26日,独国(DE))を国際出願日とする特許出願であって,令和1年11月13日付けで拒絶理由が通知され,令和2年2月12日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,同年6月16日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ,同年10月24日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和2年10月24日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年10月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された(下線部は,補正箇所であり,当審で付した。)。
「シートフレーム(24)上に配置され,側面衝突または車両横転の場合に乗員の頭部および胸部を保護する自動車用エアバッグ装置であって,
当該エアバッグ装置(10)が,前記シートフレーム(24)の第1の側部(26)上に配置され,
ガス発生器と;
前記ガス発生器に連結されたエアバッグクッション(30)と;
前記エアバッグクッション(30)の中心領域(32)に連結された第1端(42)と,前記シートフレーム(24)に連結された第2端(44)とを有する第1の牽引要素(40)と;
前記エアバッグクッション(30)の前方領域(36)に連結された第1端(52)と,前記シートフレーム(24)に連結された第2端(54)とを有する第2の牽引要素(50)と;
前記エアバッグクッション(30)の前方領域(36)に連結された第1端(62)と,前記シートフレーム(24)に連結された第2端(64)とを有する第3の牽引要素(60)と;を備え,
前記エアバッグクッション(30)は,前記エアバッグクッション(30)が膨らんだとき,前記エアバッグクッション(30)の前記中心領域(32)が,陥凹中心領域(32)を形成するように構成され,
前記第2の牽引要素(50)は前記第1の牽引要素(40)の上方に位置し,前記第3の牽引要素(60)は前記第1の牽引要素(40)の下方に位置し,
前記第2の牽引要素(50)が前記陥凹中心領域(32)上に渡って配置され,前記第3の牽引要素(60)が前記陥凹中心領域(32)を覆わないように配置されていることを特徴とする自動車用のエアバッグ装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前の令和2年2月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「シートフレーム(24)上に配置され,側面衝突または車両横転の場合に乗員の頭部および胸部を保護する自動車用エアバッグ装置であって,
当該エアバッグ装置(10)が,前記シートフレーム(24)の第1の側部(26)上に配置され,
ガス発生器と;
前記ガス発生器に連結されたエアバッグクッション(30)と;
前記エアバッグクッション(30)の中心領域(32)に連結された第1端(42)と,前記シートフレーム(24)に連結された第2端(44)とを有する第1の牽引要素(40)と;
前記エアバッグクッション(30)の前方領域(36)に連結された第1端(52)と,前記シートフレーム(24)に連結された第2端(54)とを有する第2の牽引要素(50)と;
前記エアバッグクッション(30)の前方領域(36)に連結された第1端(62)と,前記シートフレーム(24)に連結された第2端(64)とを有する第3の牽引要素(60)と;を備えたことを特徴とする自動車用のエアバッグ装置。」

2.補正の適否
本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「エアバッグクッション(30)」に関して,「前記エアバッグクッション(30)は,前記エアバッグクッション(30)が膨らんだとき,前記エアバッグクッション(30)の前記中心領域(32)が,陥凹中心領域(32)を形成するように構成され」と,「第2の牽引要素(50)」及び「第3の牽引要素(60)」に関して,「前記第2の牽引要素(50)は前記第1の牽引要素(40)の上方に位置し,前記第3の牽引要素(60)は前記第1の牽引要素(40)の下方に位置し,前記第2の牽引要素(50)が前記陥凹中心領域(32)上に渡って配置され,前記第3の牽引要素(60)が前記陥凹中心領域(32)を覆わないように配置されている」との限定をそれぞれ付すものであって,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明とは,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではないから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1.(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア.引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された,本願の優先日前に頒布された特開2016-107721号公報(以下「引用文献1」という。平成28年6月20日出願公開)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。
・「【請求項1】
車両用シートのシートバックにおける車両幅方向中央側の側部内において,シートフレームの側面に対向して設けられ,スタッドボルトを用いて前記シートフレームに固定されると共に,作動することにより膨張用ガスを発生させるインフレータと,
折畳まれた状態で前記側部内に収納され,内部に収容した前記インフレータの前記スタッドボルトを用いて前記シートフレームに固定され,前記膨張用ガスにより膨張展開すると共に,前記側面との対向面に支持板保持部を有するファーサイドエアバッグと,
前記支持板保持部に保持され,前記スタッドボルトを用いて前記シートフレームに固定されると共に,前記インフレータよりも車両上下方向両側に長く形成され,前記インフレータよりも車両上方側で前記シートフレームに係止された支持板と,
を備えた車両用ファーサイドエアバッグ装置。」
・「【技術分野】
【0001】
本発明は,車両用シートのシートバックにおける車両幅方向中央側の側部から膨張展開するファーサイドエアバッグを備えた車両用ファーサイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載されたエアバッグ装置(ファーサイドエアバッグ装置)は,複数の座席が並設された車両に搭載される。このエアバッグ装置は,上記複数の座席の並設方向の一方側からの衝撃力の作用時に,衝撃力作用側から遠い遠隔側(ファーサイド)の座席の背凭れ部から,乗員の前方となる方向に向かって突出するようにエアバッグを膨張させる。このエアバッグは,乗員の胸部から頭部を保護するバッグ本体と,バッグ本体の位置規制用のテザーとを備えている。」
・「【0008】
本発明は上記事実を考慮し,ファーサイドエアバッグの展開挙動の安定化に寄与する車両用ファーサイドエアバッグ装置を得ることを目的とする。」
・「【0023】
<第1の実施形態> 以下,図1?図8を用いて,本発明の第1実施形態に係る車両用ファーサイドエアバッグ装置(以下,『FSエアバッグ装置』と称する)10について説明する。なお,各図に適宜記す矢印FR,矢印UP,矢印OUTは,車両の前方向(進行方向),上方向,幅方向の外方をそれぞれ示している。以下,単に前後,左右,上下の方向を用いて説明する場合は,特に断りのない限り,車両前後方向の前後,車両左右方向(車両幅方向)の左右,車両上下方向の上下を示すものとする。
【0024】
(構成) 図1?図3に示されるように,本実施形態に係るFSエアバッグ装置10は,車両用シート12のシートバック14における車両幅方向中央側の側部14A(以下,単に『中央側サイド部14A』と称する)に設けられている。この車両用シート12は,例えば右ハンドル車の運転席とされている。この車両用シート12のシートバック14は,シートクッション16の後端部に傾倒可能に連結されており,シートバック14の上端部にはヘッドレスト18が連結されている。
【0025】
なお,本実施形態では,車両用シート12の前後方向,左右方向(幅方向)及び上下方向は,車両の前後方向,左右方向及び上下方向と一致している。また,図1では,車両用シート12には実際の乗員の代わりに,衝突試験用のダミーPが着座している。このダミーPは,例えばWorldSID(国際統一側面衝突ダミー:World Side Impact Dummy)のAM50(米国人成人男性の50パーセンタイル)である。このダミーPは,衝突試験法で定められた標準的な着座姿勢で着座している。また,車両に対するシートクッション16の前後位置,及びシートクッション16に対するシートバック14の傾斜位置(傾斜角度)は,上記着座姿勢に対応した基準設定位置に調整されている。以下,説明を分かり易くするために,ダミーPを「乗員P」と称する。
【0026】
上記のシートバック14では,図3に示されるように,シートフレームであるシートバックフレーム20に取り付けられたシートバックパッド22がシート表皮24によって覆われている。シートバックフレーム20は,シートバック14の骨格を構成しており,シートバック14の左右両サイドにおいてシートバック14の高さ方向に延在する左右のサイドフレーム20A(図1?図3ではシート右側のサイドフレーム20Aは図示省略)を備えている。
【0027】
シートバックパッド22は,シートバック14のクッション材を構成しており,中央側サイド部14Aに配設されたパッドサイド部22Aと,シートバック14の中央側に配設されたパッド中央部22Bとを一体に備えている。シート表皮24は,シートバック14の表皮材を構成しており,パッドサイド部22Aをシート幅方向外側及びシート後方側から覆ったサイド表皮26と,パッドサイド部22Aをシート前方側から覆ったフロントサイド表皮28と,パッド中央部22Bをシート前方側から覆ったフロント表皮30とを備えている。サイド表皮26は,シートバック14の背面側へ延びている。
【0028】
フロントサイド表皮28のシート幅方向内側端部とフロント表皮30のシート幅方向外側端部とは,中央側サイド部14Aのシート幅方向内側端部に位置する縫製部32において互いに縫製(縫合)されている。また,フロントサイド表皮28のシート幅方向外側端部とサイド表皮26のシート前方側端部とは,中央側サイド部14Aの前端部(所謂カマチ部)に位置する縫製部34において互いに縫製されている。この縫製部34は,中央側サイド部14Aのカマチ部に沿ってシートバック14の高さ方向に延在している。
【0029】
図2及び図3に示されるように,中央側サイド部14A内には,FSエアバッグ装置10の主要部を構成するファーサイドモジュール36が収納されている。このファーサイドモジュール36は,ファーサイドエアバッグ(以下,『FSエアバッグ』と称する)38と,FSエアバッグ38内に収容されたインフレータ40とを備えている。なお,図3では,FSエアバッグ38の図示を省略している。
【0030】
FSエアバッグ38は,ここでは所謂シングルチャンバタイプのエアバッグとされている。このFSエアバッグ38は,例えばナイロン系又はポリエステル系の布材を切り出して形成された一枚の基布44が二つ折りにされ,外周縁部を図示しない外周縫製部において縫製されることにより長尺な袋状に形成されている。このFSエアバッグ38は,インフレータ40から発生するガスの圧力によって乗員Pに対する車両幅方向中央側へ膨張展開する(図1に二点鎖線で示されるFSエアバッグ38参照)。この膨張展開の際には,前述した縫製部34がFSエアバッグ38の膨張圧を受けて破断することにより,FSエアバッグ38が中央側サイド部14Aの外側(前方側かつ上方側)へ膨張展開する。この際には,パッドサイド部22Aが縫製部34の後方で左右に破断される。
【0031】
なお,本実施形態において「膨張展開状態」は,FSエアバッグ38の膨張展開が完了し且つ乗員PがFSエアバッグ38に拘束される直前の状態(非拘束膨張展開完了状態)を示し,「膨張展開時」は,FSエアバッグ38の膨張展開が開始されると共にその膨張展開が完了する前の状態(膨張展開途中の状態)を示すものとする。
【0032】
上記のFSエアバッグ38は,図1に二点鎖線で示されるように,膨張展開状態を側方(ここでは車両幅方向中央側)から見た場合に,車両上下方向に沿って長尺な略長円形状を成すように形成されている。このFSエアバッグ38は,乗員Pの頭部Hから腹部Bまで(頭部H,肩部S,胸部C及び腹部B)を保護可能な大きさに形成されている。なお,FSエアバッグ38の大きさは,上記に限らず,少なくとも頭部Hから胸部Cまでを保護可能なものであればよい。
【0033】・・・
【0045】
(作用及び効果) 次に,本第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0046】
上記構成のFSエアバッグ装置10では,ECU50が側突センサ52からの信号に基づいて側面衝突を検知した際にインフレータ40が作動され,インフレータ40のガス噴出部40AからFSエアバッグ38内にガスが噴出される。これにより,FSエアバッグ38が乗員Pの車両幅方向中央側に膨張展開し,乗員Pの頭部Hから腹部BまでがFSエアバッグ38によって車両幅方向中央側から拘束(保護)される。
【0047】
このFSエアバッグ38は,インフレータ40の上下のスタッドボルト46を用いてシートバックフレーム20に固定されており,シートバックフレーム20の側面20Sとの対向面38Aに袋部56を有している。この袋部56には,支持板54が保持されており,当該支持板54が上下のスタッドボルト46を用いてシートバックフレーム20に固定されている。この支持板54は,インフレータ40よりも車両上下方向両側に長く形成されており,インフレータ40よりも車両上方側でシートバックフレーム20に係止されている。この支持板54が,FSエアバッグ38の膨張展開時に,インフレータ40の車両上下方向両側でFSエアバッグ38を支持する。これにより,FSエアバッグ38の上部及び下部の揺動を低減することができるので,FSエアバッグ38の展開挙動の安定化,すなわちFSエアバッグ38の展開性能の向上に寄与する。
【0048】
しかも,本実施形態では,上記のように支持板54の上端部がインフレータ40よりも車両上方側でシートバックフレーム20に係止されている。このため,FSエアバッグ38の膨張展開時に,支持板54の上部がシートバックフレーム20に対して車両前後方向両側及び車両幅方向中央側へ不用意に変位(変形)しないようにすることができる。その結果,当該支持板54を袋部56によって保持したFSエアバッグ38の展開挙動を効果的に安定させることができる。換言すれば,支持板54の厚さ寸法を低減すること等により,支持板54の剛性を低下させた場合でも,支持板54がインフレータ40よりも車両上方側で不用意に変形しないようにすることができるので,支持板54の軽量化に寄与する。
【0049】
また,FSエアバッグ38による乗員拘束時には,FSエアバッグ38の後端部の上下方向中央付近が,インフレータ40よりも車両上方側で支持板54に支持されるため,FSエアバッグ38の車両幅方向中央側への変位を抑制することができる。これにより,FSエアバッグ38による乗員拘束性能を向上させることができる。
【0050】
なお,背景技術の欄で説明したエアバッグ装置においても,膨張完了時のバッグ本体の取付部の後端面が,支持部材の端面支持部によって座席後方側から支持される。しかしながら,このバッグ本体は,支持部材及びシートフレームに対して上下一対のスタッドボルトの2点のみで締結固定されているため,バッグ本体の膨張展開時には,バッグ本体の上部が車両前後方向に大きく揺動したり,バッグ本体の下部が車両上下方向に大きく揺動する(不用意に車両上方側へ持ち上がる)可能性がある。この点,本実施形態では,FSエアバッグ38に設けられた袋部56に支持板54が収容されており,支持板54の上端部から下端部までがFSエアバッグ38に拘束されているため,膨張展開時のFSエアバッグ38を支持板54の全長を使って支持することができる。その結果,FSエアバッグ38の上部及び下部の揺動を効果的に抑制することができる。
【0051】
また,背景技術の欄で説明したエアバッグ装置では,バッグ本体が膨張展開時に端面支持部から座席前方への展開反力を受けることにより,バッグ本体が座席の側部から座席の前方へ勢い良く膨張展開する可能性がある。その結果,座席の側部の前方の非適正位置(out of position)に乗員が位置する状態でバッグ本体が膨張展開した場合に,非適正位置の乗員が受ける負荷が大きくなる可能性がある。この点,本実施形態では,FSエアバッグ38におけるシートバックフレーム20の側面20Sとの対向面38Aに支持板54が配設されており,FSエアバッグ38の車両後方(座席後方)に支持板54が位置していない。これにより,FSエアバッグ38が支持板54から車両前方への展開反力を受けないようにすることができ,FSエアバッグ38の車両前方への膨張展開の勢いを抑えることができる。その結果,非適正位置の乗員が受ける負荷を低減することができる。
【0052】
さらに,本実施形態では,FSエアバッグ38において,シートバックフレーム20の側面20Sとの対向面38Aに袋部56が設けられており,当該袋部56内に支持板54が挿入されている。これにより,簡単な構成で,FSエアバッグ38の上記対向面38Aに支持板54を保持させることができる。また,ファーサイドモジュール36に対して容易に支持板54を取り付けることができると共に,支持板54がファーサイドモジュール36から不用意に脱落しないようにすることができるので,FSエアバッグ装置10の製造作業やファーサイドモジュール36のシートバック14への取付作業を容易なものにすることができる。
【0053】
また,本実施形態では,支持板54の上端部に形成されたフック部54Aがシートバックフレーム20に形成された係止孔68の縁部に引っ掛けられることにより,支持板54の上端部がシートバックフレーム20に係止されている。これにより,簡単な構成で支持板54の上端部をシートバックフレーム20に係止することができる。また,支持板54が組み付けられたファーサイドモジュール36をシートバックフレーム20に取り付ける際には,フック部54Aを係止孔68の縁部に引っ掛けるだけでよいため,シートバックフレーム20へのファーサイドモジュール36の取付作業を容易なものにすることができる。
【0054】
また,本実施形態では,支持板54の前縁54F及び後縁54Rがサイドフレーム20Aの前縁20AF及び後縁20ARから車両前後方向に突出しないように構成されている。しかも,支持板54が平板状に形成されており,ファーサイドモジュール36に対する車両幅方向外側のみに配置されている。このため,例えば,乗員Pが中央側サイド部14Aに対して車両前方側又は車両後方側から衝突した際に,乗員Pが支持板54に衝突することを防止できるので,所謂内突要件を確保する観点でも好適である。
【0055】
さらに,本実施形態では,袋部56を形成する布部材58の縫製部60が,前部60F,上部60U及び後部60Rによって,支持板54の上端部を車両前方,車両上方及び車両後方から取り囲んでいる。これにより,FSエアバッグ38の膨張展開時に,支持板54の上端部が袋部56から不用意に抜け出さないようにすることができる。つまり,例えば図7に示される比較例70のように,縫製部60が後部60Rを備えていない場合,FSエアバッグ38の膨張展開時に,支持板54の上端部が袋部56から抜け出し,FSエアバッグ38の上部の揺動が大きくなる可能性があるが(図7の矢印T参照),本実施形態ではこれを回避することができる。」
・「【0057】
次に,本発明の他の実施形態について説明する。なお,前記第1実施形態と基本的に同様の構成及び作用については,前記第1実施形態と同符号を付与しその説明を省略する。
【0058】
<第2の実施形態>
図9には,本発明の第2実施形態に係るFSエアバッグ38の膨張展開状態が車両幅方向中央側から見た側面図にて示されている。また,図10には,FSエアバッグ38の膨張展開状態が概略的な正面図にて示されている。なお,図9,図11,図12,図14,図16-図19,図21,図24-30では,図面を見易くするために,袋部56の図示を省略している。
【0059】
この実施形態では,インフレータ40が円筒状のディフューザ(インナチューブ)75の内側に収容されており,インフレータ40から噴出されるガスをディフューザ75によって上下に分配される(図9の矢印G1,G2参照)。また,この実施形態では,FSエアバッグ38の上下方向中間部(ここでは膨張展開状態を車両幅方向から見た場合の中央側)に,膨張厚調整用の非膨張部72が設けられている。それ以外の構成は前記第1実施形態と同様とされている。
【0060】
上記の非膨張部72は,略円形状の縫製部74(図10では図示省略)によって基布44が縫製されることにより形成されており,FSエアバッグ38において乗員Pの肩部S(図9では図示省略)を拘束する部位の膨張を規制するように構成されている。これにより,膨張展開したFSエアバッグ38が肩部Sと干渉して車両幅方向中央側へ逃げることを防止又は抑制できる。」
・「【0068】
<第4の実施形態>
図12には,本発明の第4実施形態に係るFSエアバッグ38の膨張展開状態が車両幅方向中央側から見た側面図にて示されている。また,図13には,図12のF13-F13線に沿った切断面が拡大断面図にて示されている。なお,図13において符号98が付されているのは,FSエアバッグ38の外周縫製部である。この実施形態では,FSエアバッグ38が,前記第2実施形態と同様に非膨張部72を備えている。また,この実施形態では,FSエアバッグ38と支持板54との間に架け渡された内テザー(テザー)96を備えている。それ以外の構成は,前記第1実施形態と同様とされている。
【0069】
上記の内テザー96は,基布44と同様の布材が長尺帯状に切り出されて形成されたものであり,膨張展開したFSエアバッグ38に対して車両幅方向外側(乗員P側)に位置するように配設されている。この内テザー96の長手方向一端部(前端部)は,縫製部74において非膨張部72の前端部の上部側に縫製(係止)されている。この内テザー96の長手方向他端部(後端部)は,図13に示されるように,支持板54とサイドフレーム20Aの側面20Sとの間に挟まれている。なお,支持板54と内テザー96との間には,布部材58が介在しており,インフレータ40の上下のスタッドボルト46が布部材58と内テザー96を共に貫通している。これにより,内テザー96の長手方向他端部が支持板54と側面20Sとの間に挟まれた状態で,上下のスタッドボルト46を用いてサイドフレーム20Aに締結固定されている。
【0070】
上記の内テザー96は,FSエアバッグ38の膨張展開状態で張力を受けるように長さ寸法が設定されている。具体的には,FSエアバッグ38を平面状に展開した状態(平面展開状態:非膨張展開状態)で,基布44における内テザー96と重なる部位の長さ寸法が,内テザー96の長さ寸法よりも長くなるように設定する。これにより,FSエアバッグ38の膨張展開状態で内テザー96に作用する張力を大きくすることができるので,当該張力によってFSエアバッグ38の展開挙動を安定させることができる。つまり,内テザー96が設けられていない場合,図13に二点鎖線で示されるように,FSエアバッグ38における非膨張部72より後方側の部位38R(以下,『後方部位38R』と称する)が前後に揺動(図13の矢印TA参照)する可能性がある。この点,本実施形態では,内テザー96によって後方部位38Rを支持板54側(サイドフレーム20A側)に押え付けることができるので,上記のような揺動を防止又は抑制できる。これにより,FSエアバッグ38の展開挙動の安定化に一層寄与する。
【0071】
しかも,本実施形態では,内テザー96の長手方向他端部がサイドフレーム20Aの側面20Sと支持板54との間に挟まれている。また,図13に示される平断面視において,支持板54の前端が,インフレータ40の中心よりも車両前方側に位置している。これにより,図13に矢印TBで示される方向にFSエアバッグ38が回転しようとした際には,インフレータ40の上記中心と支持板54の前端との間の車両前後方向に沿った距離L1の分だけ,上記の回転に抗するモーメントを内テザー96からFSエアバッグ38に加えることができる。したがって,FSエアバッグ38の展開挙動の安定化により一層寄与する。しかも,上記モーメントによってFSエアバッグ38の乗員拘束力を増加させることができるので,乗員拘束性能の向上にも寄与する。さらに,内テザー96の長手方向他端部がサイドフレーム20Aと支持板54との間に挟まれているため,内テザー96の長手方向他端部の広い範囲をサイドフレーム20Aに良好に拘束することができる。これにより,上記の張力及びモーメントを良好に発生させることができる。次に,第4実施形態の各種変形例について説明する。」
・「【0076】
(第3変形例)
図17には,第4実施形態の第3変形例が図12に対応した側面図にて示されている。この第3変形例では,上側の内テザー96と,下側の内テザー97とを備えている。上側の内テザー96は,長手方向一端部がFSエアバッグ38の前端部の上部側に縫製されており,下側の内テザー97は,長手方向一端部がFSエアバッグ38の前端部の下部側に縫製されている。また,上下の内テザー96,97は,長手方向他端側が重なっており,FSエアバッグ38の膨張展開状態において,上側の内テザー96の長手方向他端側が下側の内テザー97の長手方向他端側よりも車両幅方向外側(乗員P側)に位置するように構成されている。
【0077】
この第3変形例では,FSエアバッグ38の膨張展開時に上側の内テザー96と下側の内テザー97とに作用する張力を,それぞれ異ならせることができる。これにより,FSエアバッグ38の展開挙動をより詳細に制御することができる。例えば,下側の内テザー97に作用する張力を,上側の内テザー96に作用する張力よりも大きく設定する。これにより,FSエアバッグ38の下部側を乗員Pに接近させて膨張展開させる一方,FSエアバッグ38の上部側を下部側よりも車両幅方向中央側へ膨張展開させる。その結果,FSエアバッグ38の下部側を,乗員Pの腰部とセンタコンソールとの間の狭い隙間に膨張展開させることができると共に,FSエアバッグ38の上部側が膨張展開時に肩部Sに対して後方側から不用意に干渉しないようにすることができる。
【0078】
なお,この第3変形例では,上下の内テザー96,97が別々の布材によって形成されているが,これに限らず,例えばV字状に切り出した一枚の布材によって上下の内テザー96,97を一体に形成してもよい。この点は,以下の第4変形例においても同様である。」
・「【0079】
(第4変形例)
図18には,第4実施形態の第4変形例が図12に対応した側面図にて示されている。この第3変形例(審決注:「第4変形例」の誤記)では,前記第4変形例(審決注:「第3変形例」の誤記)と同様に,上下一対の内テザー96,97を備えているが,下側の内テザー97の長手方向一端部が,非膨張部72の下部における前端側に縫製されている。この第4変形例では,第3変形例よりも下側の内テザー97が短いため,第4実施形態において説明した『FSエアバッグ38の回転に抗するモーメント』を大きく発生させることができる。」
・図1?図3,図9,図12,図13,図17,図18には,以下の内容が示されている。









・図3からみて,ファーサイドモジュール36がサイドフレーム20Aの側部上に配置されていることが理解できる。
・図17からみて,上側の内テザー96が非膨張部72上に渡って配置され,下側の内テザー97は,非膨張部72を覆わないように配置されていることが理解できる。
・段落【0069】の下線部の記載事項と,図17からみて,下側の内テザー97の長手方向他端部が支持板54と側面20Sとの間に挟まれた状態で,上下のスタッドボルト46を用いてサイドフレーム20Aに締結固定されていることが理解できる。
・段落【0069】の下線部の記載事項と,図18からみて,下側の内テザー97の長手方向他端部が支持板54と側面20Sとの間に挟まれた状態で,上下のスタッドボルト46を用いてサイドフレーム20Aに締結固定されていることが理解できる。
・段落【0079】の記載事項と図18からみて,第4変形例は第3変形例と同様に,上下の内テザー96,97は,長手方向他端側が重なっており,FSエアバッグ38の膨張展開状態において,上側の内テザー96の長手方向他端側が下側の内テザー97の長手方向他端側よりも車両幅方向外側(乗員P側)に位置するように構成されていることが理解でき,図18からみて,上側の内テザー96が非膨張部72上に渡って配置されていることが理解できる。

これらの記載事項及び図示内容からみて,第4実施形態の第4変形例(図18)に着目すると,引用文献1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ECU50が側突センサ52からの信号に基づいて側面衝突を検知した際にインフレータ40が作動され,インフレータ40のガス噴出部40AからFSエアバッグ38内にガスが噴出され,FSエアバッグ38が乗員Pの車両幅方向中央側に膨張展開し,少なくとも乗員Pの頭部Hから胸部Cまでを保護可能な,車両用ファーサイドエアバッグ装置10であって,
車両用ファーサイドエアバッグ装置10は,車両用シート12のシートバック14における車両幅方向中央側の側部14Aである中央側サイド部14Aに設けられ,中央側サイド部14A内には,車両用ファーストサイドエアバッグ装置10の主要部を構成するファーサイドモジュール36が収納され,ファーサイドモジュール36は,FSエアバッグ38と,FSエアバッグ38内に収容されたインフレータ40とを備え,支持板54が組み付けられたファーサイドモジュール36がサイドフレーム20Aの側部上に配置され,
シートバックフレーム20は,シートバック14の骨格を構成しており,シートバック14の左右両サイドにおいてシートバック14の高さ方向に延在する左右のサイドフレーム20Aを備え,
FSエアバッグ38の上下方向中間部に,膨張厚調整用の非膨張部72が設けられ,非膨張部72は,略円形状の縫製部74によって基布44が縫製されることにより形成されており,FSエアバッグ38において乗員Pの肩部Sを拘束する部位の膨張を規制するように構成され,膨張展開したFSエアバッグ38が肩部Sと干渉して車両幅方向中央側へ逃げることを防止又は抑制でき,
上下一対の内テザー96,97を備えているが,下側の内テザー97の長手方向一端部が,非膨張部72の下部における前端側に縫製され,下側の内テザー97の長手方向他端部が支持板54と側面20Sとの間に挟まれた状態で,上下のスタッドボルト46を用いてサイドフレーム20Aに締結固定され,上下の内テザー96,97は,長手方向他端側が重なっており,FSエアバッグ38の膨張展開状態において,上側の内テザー96の長手方向他端側が下側の内テザー97の長手方向他端側よりも車両幅方向外側(乗員P側)に位置するように構成され,
上側の内テザー96は,長手方向一端部がFSエアバッグ38の前端部の上部側に縫製されており,上側の内テザー96の長手方向他端部が支持板54と側面20Sとの間に挟まれた状態で,上下のスタッドボルト46を用いてサイドフレーム20Aに締結固定され,
上側の内テザー96が非膨張部72上に渡って配置されている,
車両用ファーサイドエアバッグ装置10。」

また,これらの記載事項及び図示内容からみて,第4実施形態の第4変形例(図18)及びFSエアバッグ38に着目すると,引用文献1には,以下の発明(以下「引用発明8」という。)も記載されていると認められる。
「ECU50が側突センサ52からの信号に基づいて側面衝突を検知した際にインフレータ40が作動され,インフレータ40のガス噴出部40AからFSエアバッグ38内にガスが噴出され,FSエアバッグ38が乗員Pの車両幅方向中央側に膨張展開し,少なくとも乗員Pの頭部Hから胸部Cまでを保護可能な,車両用ファーサイドエアバッグ装置10のFSエアバッグ38であって,
中央側サイド部14A内には,車両用ファーストサイドエアバッグ装置10の主要部を構成するファーサイドモジュール36が収納され,ファーサイドモジュール36は,FSエアバッグ38と,FSエアバッグ38内に収容されたインフレータ40とを備え,支持板54が組み付けられたファーサイドモジュール36がシートバックフレーム20に取り付けられてサイドフレーム20Aの側部上に配置され,
シートバックフレーム20は,シートバック14の骨格を構成しており,シートバック14の左右両サイドにおいてシートバック14の高さ方向に延在する左右のサイドフレーム20Aを備え,
FSエアバッグ38の上下方向中間部に,膨張厚調整用の非膨張部72が設けられ,非膨張部72は,略円形状の縫製部74によって基布44が縫製されることにより形成されており,FSエアバッグ38において乗員Pの肩部Sを拘束する部位の膨張を規制するように構成され,膨張展開したFSエアバッグ38が肩部Sと干渉して車両幅方向中央側へ逃げることを防止又は抑制でき,
上下一対の内テザー96,97を備えているが,下側の内テザー97の長手方向一端部が,非膨張部72の下部における前端側に縫製されている,
FSエアバッグ38。」

イ.引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用文献3として引用された,本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2015/168401号(以下「引用文献2」という。平成27年11月5日国際公開)には,図面とともに次の事項が記載されている({}内に翻訳文を示す。翻訳文は,引用文献2のパテントファミリーである特表2017-514746号公報の記載を使用した参照のこと。)。
・「BACKGROUND
[0002] The present application relates generally to the field of airbag modules. More specifically, the present application relates to a center side impact airbag (CSIAB) module having an airbag cushion with a tether configured to improve the cross-car retention ability of the inflated (e.g., deployed) airbag cushion.
[0003] CSIAB modules may use inflated fabric tubes and other elements to reduce occupant cross-car travel in a far-side crash event (e.g., the inboard travel of an occupant on the driver side during an impact to the passenger side).」
{背景技術
[0002]本出願は広く,エアバッグモジュールの分野に関する。特に,本出願は,膨張した(たとえば,展開した)エアバッグクッションの車両横断方向の保持力を改善するように構成されたテザーを用いたエアバッグクッションを有する中央側面衝突エアバッグ(CSIAB)モジュールに関する。
[0003]CSIABモジュールは,ファーサイド(far-side)衝突事故での車室内の乗員の車両横断方向の移動(たとえば,助手席側への衝突時に運転席の乗員の車室内移動)を低減するための,膨張した織物チューブとその他の要素を用いることが好ましい。}
・「 [0020] Referring in general to FIGS. 4-8, a center side impact airbag module is shown that includes an arrangement of tethering the airbag cushion to improve lateral restraint when the majority of the cushion's "working area" (i.e., the region of the cushion where the occupant initially contacts and remains in contact with) is located above the module mounting apparatus upper vehicle seat frame attachment point. The tethering arrangement includes a first tether and a second tether with uncommon initial attachment points and a common secondary attachment point, such as located at or proximate to a forward edge of the inflated cushion. In other words, the first and second tethers are connected together at a first connection location (e.g., the common secondary attachment location), the first tether is also connected at a second connection location, and the second tether is also connected at a third connection location, which is different than the second connection location. The first tether and/or the second tether may be configured to be under tension when the airbag is deployed. The arrangement scheme of the tethers simulates the cushion's interaction with a vehicle center console to improve restraint by limiting cushion pivoting and/or bending and fully engaging the entirety of the module mounting apparatus. The tethers are tailored to control the deployment trajectory of the cushion in order to avoid interference with a vehicle center console which could potentially hinder the cushion's ability to reach proper restraint position. 」
{[0020]
概括的に図4?8を参照すると,中央側面衝突エアバッグモジュールは,クッションの「作用領域」(すなわち,乗員が最初に接触し,その接触が保持されるようなクッションの領域)の大半部が上側座席フレーム取り付け点のモジュール固定装置の上方に位置する時,横方向拘束を改善するために,エアバッグクッションに設けられたテザーの配置を含んでいることが示されている。前記テザーの配置は,非共通の第一の取り付け点と,膨張したクッションの前端あるいはその直近に位置するような共通の第2の取り付け点を有する第1のテザーと第2のテザーとを含む。言い換えると,第1及び第2のテザーは第1の連結位置(たとえば,共通の第2の取り付け位置)でともに連結されており,第1のテザーは,第2の連結位置でも連結され,さらに第2のテザーは,第2の連結位置と異なる第3の連結位置でも連結されている。第1のテザー及び/または第2のテザーは,エアバッグが展開された際に張力を受けるように構成されることが好ましい。テザーの配置案は,クッションの旋回及び/または屈曲とモジュール固定装置全体との完全なかみ合いを制限することにより拘束を改善するために,クッションの車両の中央コンソールとの相互の影響をシミュレートする。テザーは,適正な拘束位置に到達するためのクッションの能力を潜在的に妨げる可能性のある車両の中央コンソールとの干渉を回避するために,クッションの展開軌跡を制御するように適合されている。}
・「 [0024] Referring to FIGS. 5 and 6, the cushion 32 includes a contact area 38 (e.g., working area) where the shoulder of the occupant 14 contacts the cushion 32. The cushion 32 is configured to restrain the occupant 14 in the cross-car direction by capturing the shoulder of the occupant 14 and limiting the movement of the head of the occupant 14. The cushion 32 is configured to limit the movement of the occupant 14, such that the head of the occupant 14 does not pass beyond a far edge of the center console 16, to reduce the likelihood that the occupant will contact an object or other occupant in a neighboring seat 12. According to an exemplary embodiment, the contact area 38 is positioned above the upper stud 35a. Further, because the airbag cushion 32 does not interact with the center console 16, the lower edge 36 of the airbag cushion 32 is unsupported and is more susceptible to bending and twisting off the occupant 14 and not cupping the shoulder, such as when the cushion is supported by the console 16.」
{[0024]
図5及び6を参照すると,クッション32は乗員14の肩がクッション32に接触する接触領域38(たとえば,作用領域)を含む。クッション32は,乗員14の肩を捕らえて乗員14の頭部の移動を制限することで,車両横断方向において乗員14を拘束するように構成されている。クッション32は,乗員が対象物,すなわち隣の座席12に座っている他の乗員と接触する可能性を低減するために,乗員14の頭部が中央コンソール16の辺縁を乗り越えないように,乗員14の移動を制限するよう構成されている。一実施形態によれば,接触領域38は上側のスタッド35aの上方に位置する。さらに,エアバッグクッション32は中央コンソール16と相互に影響しないので,エアバッグクッション32の下端36は支持されておらず,乗員14の屈曲や捻れに対してより敏感で,コンソール16によりクッションが支持されている場合のように肩を覆って受け止める(cup)ことはない。
・「[0028] The tethers 42 and 44 are disposed on the occupant side of the airbag cushion 32 (e.g., the side of the airbag cushion 32 that is configured to be contacted by the occupant 14 when deployed). The tether 40 may extend through one or more apertures formed in airbag cushion 32 and may be disposed at least partially on either side of the airbag cushion 32. According to an exemplary embodiment, the tether 40 is routed through a pocket that is defined by a strap 43 formed by a pair of generally parallel slits 41. In another embodiment, the tether 40 is disposed entirely on the occupant side of the airbag cushion and may interact with the airbag cushion 32, such as by being routed through another feature (e.g., a pocket formed by a strip of fabric coupled to the occupant side of the airbag cushion). The tethers 40, 42, and 44 may form a substantially Z-shaped structure that reinforces the entire lower section of the cushion 32 to reduce bending or twisting of the cushion 32 when the cushion 32 is engaged (e.g., loaded) by the occupant 14 and without interaction with a console. The tethers 40, 42, and 44 facilitate the transmission of energy from the occupant 14 through the cushion 32 and the mounting bracket 33 into the frame member 26.
[0029] As shown in FIG. 7, the tether 40 has a first end that is configured to connect to one of the airbag cushion, a mounting member (e.g., the mounting bracket 33), and/or the seat frame at the upper location of the vehicle seat (e.g., the stud 35a) and a second end that is connected to a forward portion (e.g., first forward portion) of the airbag cushion 32 via stitch line 39. Also shown, the tether 42 has a first end that is configured to connect to one of the airbag cushion, the mounting member, and/or the seat frame at the upper location of the vehicle seat and a second end that is connected to a forward portion (e.g., second forward portion) of the airbag cushion 32 via a stitch line (e.g., stitch line 39). Also shown, the tether 44 has a first end that is configured to connect to one of the airbag cushion, a mounting member, and/or the seat frame at the lower location of the vehicle seat (e.g., the stud 35b) and a second end that is connected to the second forward portion of the airbag cushion 32. Thus, the ends of the tethers connecting to the locations of the vehicle seat (e.g., the frame member 26) may be configured to connect to, for example, the airbag cushion, the mounting bracket 33, and/or the frame member at the connection location(s). Further each connection location of a tether may be located proximate to the studs, rather than directly at the studs, and still transfer loads to the studs through the tether. As shown in FIG. 8, an end of the first tether 42 is coupled to the cushion 32 at an attachment point 45 (e.g., connection location, etc.) proximate the upper stud 35a and at an attachment point 46 (e.g., connection location, etc.) proximate the forward lower edge 37 of the cushion 32; and the second tether 44 is coupled to the cushion 32 at the attachment point 46 and at an attachment point 48 proximate the lower stud 35b. 」
{[0028]
テザー42,44はエアバッグクッション32の乗員に面した側(たとえば,展開した際に乗員14によって接触されるように構成されたエアバッグクッション32の側面)に配置されている。テザー40はエアバッグクッション32に形成された1個あるいは複数個の開孔を通じて延在し,エアバッグクッション32のいずれかの側に少なくとも部分的に配置されることが好ましい。一実施形態によれば,テザー40は,一組の略平行なスリット41によって形成されたストラップ43によって規定されたポケットを通じて経路付けされている。他の実施例において,テザー40はエアバッグクッションの乗員側全体にわたり配置されており,他の特徴(たとえば,エアバッグクッションの乗員側に連結された織物片によって形成されたポケット)を通じて経路付けするようにして,エアバッグクッション32と相互に影響するようにしてもよい。テザー40,42,44は,クッション32が乗員14によってかみ合い(たとえば,荷重が作用し),コンソールと相互に影響することなく,クッションの屈曲とねじれを低減させるためにクッション32の下部部分全体を補強する略Z字形構造を形成することが好ましい。テザー40,42,44は,クッション32と固定ブラケット33を通じての乗員14からフレーム部材26内へのエネルギーの伝達を容易にする。
[0029]
図7に示されたように,テザー40は,車両座席の上部位置(たとえば,スタッド35a)において,エアバッグクッション,固定部材(たとえば,固定ブラケット33),及び/または座席フレームの一つに連結するように構成された第1の端部と,縫い目線39を介してエアバッグクッション32の前方部分(たとえば,第1の前方部分)に連結された第2の端部とを有する。同様に,テザー42は,車両座席の上部位置(たとえば,スタッド35a)において,エアバッグクッション,固定部材,及び/または座席フレームの一つに連結するように構成された第1の端部と,縫い目線(たとえば,縫い目線39)を介してエアバッグクッション32の前方部分(たとえば,第2の前方部分)に連結される第2の端部とを有することが示されている。同様に,テザー44は,車両座席の下部位置(たとえば,スタッド35b)において,エアバッグクッション,固定部材,及び/または座席フレームの一つに連結するように構成された第1の端部と,エアバッグクッション32の第2の前方部分に連結される第2の端部を有することが示されている。このように,車両座席(たとえば,フレーム部材26)の2つの位置に連結する2つのテザーの端部は,たとえば,エアバッグクッション,固定ブラケット33,及び/または連結位置のフレーム部材に連結するように構成することが好ましい。さらに,テザーの各連結位置は,スタッドに直接というよりその直近に位置させ,テザーを通じてスタッドに荷重をより伝達させることが好ましい。図8に示されたように,第1のテザー42の端部は,上側のスタッド35a直近の取り付け点45(たとえば,連結位置等)と,クッション32の前方下端37の直近の取り付け点46(たとえば,連結位置等)においてクッション32に連結され,さらに第2のテザー44は,取り付け点46と下側のスタッド35bの直近の取り付け点48においてクッション32に連結されている。}
・「[0034] In a side collision, the tethers 40, 42, 44 restrain the cross-car trajectory of the cushion 32 and reduce the likelihood that the cushion will contact the console 16. The tethers (e.g., tethers 42, 44) control the lower inflated cushion portion so that there is a reduced possibility of the cushion catching or hanging up on the edge of the center console 16 regardless of the position of the seat 12 (e.g., fore/aft position). 」
{[0034]
側面衝突において,テザー40,42,44はクッション32の車両横断方向の軌道を規制し,クッションがコンソール16と接触する可能性を低減する。テザー(たとえば,テザー42,44)は,座席12の位置(たとえば,前/後位置)にかかわらず,クッションが中央コンソール16の端部を捉えたり,引っ掛けたりする可能性が低くなるように,膨張したクッションの下方部分を制御する。}
・図5,図7には,以下の内容が示されている。



・[0024],[0028]の下線部の記載事項と,図5,図7からみて,テザー40は乗員14の肩がクッション32に接触する接触領域38にある,一組の略平行なスリット41によって形成されたストラップ43によって規定されたポケットを通じて経路付けされていることが理解できる。
・図7からみて,テザー42,44は,テザー40の下方に位置し,接触領域38を覆わないように配置されていることが理解できる。

これらの記載事項及び図示内容からみて,引用文献2には,以下の事項(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「膨張したエアバッグクッション32の車両横断方向の保持力を改善するように構成されたテザーを用いたエアバッグクッション32を有する中央側面衝突エアバッグ(CSIAB)モジュールに関し,側面衝突において,テザー40,42,44はクッション32の車両横断方向の軌道を規制し,クッション32がコンソール16と接触する可能性を低減するものであって,
テザー40は,車両座席の上部位置(たとえば,スタッド35a)において,座席フレームの一つに連結するように構成された第1の端部を有し,
テザー42は,車両座席の上部位置(たとえば,スタッド35a)において,座席フレームの一つに連結するように構成された第1の端部と,エアバッグクッション32の前方部分(たとえば,第2の前方部分)に連結される第2の端部とを有し,テザー44は,車両座席の下部位置(たとえば,スタッド35b)において,座席フレームの一つに連結するように構成された第1の端部と,エアバッグクッション32の第2の前方部分に連結される第2の端部を有し,
テザー40は乗員14の肩がクッション32に接触する接触領域38にある,一組の略平行なスリット41によって形成されたストラップ43によって規定されたポケットを通じて経路付けされており,テザー42,44は,テザー40の下方に位置し,接触領域38を覆わないように配置されていること。」

(3)対比
ア.本件補正発明と引用発明とを対比すると,後者の「シートバックフレーム20」又は「サイドフレーム20A」は前者の「シートフレーム」に相当し,以下同様に,「乗員P」は「乗員」に,「頭部H」は「頭部」に,「胸部C」は「胸部」に,「車両用ファーサイドエアバッグ装置」は「自動車用エアバッグ装置」又は「エアバッグ装置」に,「側部」は「第1の側部」に,「インフレータ40」は「ガス発生器」に,「FSエアバッグ38」は「エアバッグクッション」に,「FSエアバッグ38の上下方向中間部」は「エアバッグクッションの中心領域」に,「長手方向一端部」は「第1端」に,「長手方向他端部」は「第2端」に,「下側の内テザー97」は「第1の牽引要素」に,「上側の内テザー96」は「第2の牽引要素」に,「FSエアバッグ38の前端部」は「エアバッグクッションの前方領域」に,「非膨張部72」は「陥凹中心領域」に,それぞれ相当する。
イ.後者の「車両用ファーストサイドエアバッグ装置10の主要部を構成するファーサイドモジュール36」が「サイドフレーム20Aの側部上に配置され」ることは,上記アの相当関係を踏まえると,前者の「自動車用エアバッグ装置」が「シートフレーム上に配置され」ること,及び,「当該エアバッグ装置が,シートフレームの第1の側部上に配置され」ていることに相当する。
ウ.後者の「ECU50が側突センサ52からの信号に基づいて側面衝突を検知した際にインフレータ40が作動され,インフレータ40のガス噴出部40AからFSエアバッグ38内にガスが噴出され,FSエアバッグ38が乗員Pの車両幅方向中央側に膨張展開し,少なくとも乗員Pの頭部Hから胸部Cまでを保護可能な,車両用ファーサイドエアバッグ装置10」は,上記アの相当関係を踏まえると,前者の「側面衝突または車両横転の場合に乗員の頭部および胸部を保護する自動車用エアバッグ装置」に相当する。
エ.上記イ.,ウ.から,後者の「車両用ファーストサイドエアバッグ装置10の主要部を構成するファーサイドモジュール36」が「サイドフレーム20Aの側部上に配置され」る「ECU50が側突センサ52からの信号に基づいて側面衝突を検知した際にインフレータ40が作動され,インフレータ40のガス噴出部40AからFSエアバッグ38内にガスが噴出され,FSエアバッグ38が乗員Pの車両幅方向中央側に膨張展開し,少なくとも乗員Pの頭部Hから胸部Cまでを保護可能な,車両用ファーサイドエアバッグ装置」は,前者の「シートフレーム上に配置され,側面衝突または車両横転の場合に乗員の頭部および胸部を保護する自動車用エアバッグ装置」に相当する。
オ.後者は「ファーサイドモジュール36は,FSエアバッグ38と,FSエアバッグ38内に収容されたインフレータ40とを備え」,「側面衝突を検知した際にインフレータ40が作動され,インフレータ40のガス噴出部40AからFSエアバッグ38内にガスが噴出され,FSエアバッグ38が乗員Pの車両幅方向中央側に膨張展開」するものであるところ,後者の「インフレータ40」に「FSエアバッグ38」が連結されていることは明らかであるから,上記ア.の相当関係を踏まえると,後者の「インフレータ40」と「FSエアバッグ38」は,前者の「ガス発生器と,前記ガス発生器に連結されたエアバッグクッション」に相当する。
カ.後者は「下側の内テザー97の長手方向一端部が,非膨張部72の下部における前端側に縫製され,下側の内テザー97の長手方向他端部が支持板54と側面20Sとの間に挟まれた状態で,上下のスタッドボルト46を用いてサイドフレーム20Aに締結固定され」るものであるところ,「FSエアバッグ38の上下方向中間部に,膨張厚調整用の非膨張部72が設けられ」ていることと,上記ア.の相当関係を踏まえると,後者の「下側の内テザー97」は,前者の「エアバッグクッションの中心領域に連結された第1端と,シートフレームに連結された第2端とを有する第1の牽引要素」に相当する。
キ.後者は「上側の内テザー96は,長手方向一端部がFSエアバッグ38の前端部の上部側に縫製されており,上側の内テザー96の長手方向他端部が支持板54と側面20Sとの間に挟まれた状態で,上下のスタッドボルト46を用いてサイドフレーム20Aに締結固定され」るものであるところ,上記アの相当関係を踏まえると,後者の「上側の内テザー96」は,前者の「エアバッグクッションの前方領域に連結された第1端と,シートフレームに連結された第2端とを有する第2の牽引要素」に相当する。
ク.後者は「FSエアバッグ38の上下方向中間部に,膨張厚調整用の非膨張部72が設けられ,非膨張部72は,略円形状の縫製部74によって基布44が縫製されることにより形成されており,FSエアバッグ38において乗員Pの肩部Sを拘束する部位の膨張を規制するように構成され,膨張展開したFSエアバッグ38が肩部Sと干渉して車両幅方向中央側へ逃げることを防止又は抑制でき」るものであるところ,上記アの相当関係を踏まえると,後者の「FSエアバッグ」は,前者の「エアバッグクッションは,前記エアバッグクッションが膨らんだとき,前記エアバッグクッションの前記中心領域が,陥凹中心領域を形成するように構成され」ていることに相当する。
ケ.後者の「上側の内テザー96」は「下側の内テザー97」の上方に位置していることは明らかであるから,この事項と,前者の「第2の牽引要素は第1の牽引要素の上方に位置し,第3の牽引要素は前記第1の牽引要素の下方に位置し」ていることとは,上記アの相当関係を踏まえると,「第2の牽引要素は第1の牽引要素の上方に位置し」ていることにおいて共通する。
コ.後者の「上側の内テザー96が非膨張部72上に渡って配置されている」ことと,前者の「第2の牽引要素が陥凹中心領域上に渡って配置され,第3の牽引要素が前記陥凹中心領域を覆わないように配置されていること」とは,上記アの相当関係を踏まえると,「第2の牽引要素が陥凹中心領域上に渡って配置され」ていることにおいて共通する。
そうすると,両者は,
「シートフレーム上に配置され,側面衝突または車両横転の場合に乗員の頭部および胸部を保護する自動車用エアバッグ装置であって,
当該エアバッグ装置が,前記シートフレームの第1の側部上に配置され,
ガス発生器と,
前記ガス発生器に連結されたエアバッグクッションと,
前記エアバッグクッションの中心領域に連結された第1端と,前記シートフレームに連結された第2端とを有する第1の牽引要素と,
前記エアバッグクッションの前方領域に連結された第1端と,前記シートフレームに連結された第2端とを有する第2の牽引要素と,を備え,
前記エアバッグクッションは,前記エアバッグクッションが膨らんだとき,前記エアバッグクッションの前記中心領域が,陥凹中心領域を形成するように構成され,
前記第2の牽引要素は前記第1の牽引要素の上方に位置し,
前記第2の牽引要素が陥凹中心領域上に渡って配置されている,
自動車用エアバッグ装置。」
の点で一致し,以下の点で相違すると認められる。
<相違点>
本件補正発明は,「前記エアバッグクッションの前方領域に連結された第1端と,前記シートフレームに連結された第2端とを有する第3の牽引要素と;を備え,」「前記第3の牽引要素は前記第1の牽引要素の下方に位置し,」「前記第3の牽引要素が前記陥凹中心領域を覆わないように配置されている」のに対して,引用発明は,第3の牽引要素を備えていない点。

(4)相違点の判断
ア.引用文献1には,第4実施形態の第3変形例(図17)として,FSエアバッグ38の下部側を,乗員Pの腰部とセンタコンソールとの間の狭い隙間に膨張展開させるために,下側の内テザー97は,長手方向一端部がFSエアバッグ38の前端部の下部側に縫製され,下側の内テザー97の長手方向他端部が支持板54と側面20Sとの間に挟まれた状態で,上下のスタッドボルト46を用いてサイドフレーム20Aに締結固定され,下側の内テザー97は,非膨張部72を覆わないように配置されているとともに,下側の内テザー97に作用する張力を,上側の内テザー96に作用する張力よりも大きく設定することが記載されている。
イ.本件補正発明に倣っていいかえると,引用文献1には,上記第3変形例として,エアバッグクッションの下部側を,乗員の腰部とセンタコンソールとの間の狭い隙間に膨張展開させるために,「エアバッグクッションの前方領域に連結された第1端と,シートフレームに連結された第2端とを有する下側の牽引要素と;を備え,」「下側の牽引要素は上側の牽引要素の下方に位置し,」「下側の牽引要素が陥凹中心領域を覆わないように配置されている」ことが記載されているといえる。
ウ.また,引用文献2には,前述したように,
「膨張したエアバッグクッション32の車両横断方向の保持力を改善するように構成されたテザーを用いたエアバッグクッション32を有する中央側面衝突エアバッグ(CSIAB)モジュールに関し,側面衝突において,テザー40,42,44はクッション32の車両横断方向の軌道を規制し,クッション32がコンソール16と接触する可能性を低減するものであって,
テザー40は,車両座席の上部位置(たとえば,スタッド35a)において,座席フレームの一つに連結するように構成された第1の端部を有し,
テザー42は,車両座席の上部位置(たとえば,スタッド35a)において,座席フレームの一つに連結するように構成された第1の端部と,エアバッグクッション32の前方部分(たとえば,第2の前方部分)に連結される第2の端部とを有し,
テザー44は,車両座席の下部位置(たとえば,スタッド35b)において,座席フレームの一つに連結するように構成された第1の端部と,エアバッグクッション32の第2の前方部分に連結される第2の端部を有し,
テザー40は乗員14の肩がクッション32に接触する接触領域38にある,一組の略平行なスリット41によって形成されたストラップ43によって規定されたポケットを通じて経路付けされており,テザー42,44は,テザー40の下方に位置し,接触領域38を覆わないように配置されていること。」
が記載されている。
エ.本件補正発明と引用文献2に記載された事項と対比すると,後者の「エアバッグクッション32」又は「クッション32」は前者の「エアバッグクッション」に相当し,以下同様に,「中央側面衝突エアバッグ(CSIAB)モジュール」は「自動車用エアバッグ装置」に,「テザー」は「牽引要素」に,「テザー40」は「第1の牽引要素」に,「テザー44」は「第3の牽引要素」に,「第1の端部」は「第2端」に,「第2の端部」は「第1端」に,「座席フレーム」は「シートフレーム」に,「前方部分」は「前方領域」に,「接触領域38」は「中央領域」に,それぞれ相当する。
オ.後者の「テザー40」は「乗員14の肩がクッション32に接触する接触領域38にある,一組の略平行なスリット41によって形成されたストラップ43によって規定されたポケットを通じて経路付けされており,」「車両座席の上部位置(たとえば,スタッド35a)において,座席フレームの一つに連結するように構成された第1の端部を有し」ているものであるところ,後者の「テザー40」と,前者の「前記エアバッグクッションの中心領域に連結された第1端と,前記シートフレームに連結された第2端とを有する第1の牽引要素」とは,「前記エアバッグクッションの中心領域に経路付けられた部分と,前記シートフレームに連結された第2端とを有する第1の牽引要素」において共通する。
後者の「テザー44」は「車両座席の下部位置(たとえば,スタッド35b)において,座席フレームの一つに連結するように構成された第1の端部と,エアバッグクッション32の第2の前方部分に連結される第2の端部を有」するものであるところ,後者の「テザー44」は,前者の「前記エアバッグクッションの前方領域に連結された第1端と,前記シートフレームに連結された第2端とを有する第3の牽引要素」に相当する。
カ.以上により,本件補正発明に倣って整理すると,引用文献2には,以下の技術的事項(以下「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されているといえる。
「膨張したエアバッグクッションの車両横断方向の保持力を改善するように構成された牽引要素を用いたエアバッグクッションを有する自動車用エアバッグ装置に関し,側面衝突において,牽引要素は,エアバッグクッションの車両横断方向の軌道を規制し,エアバッグクッションがコンソール16と接触する可能性を低減するものであって,
前記エアバッグクッションの中心領域に経路付けられた部分と,前記シートフレームに連結された第2端とを有する第1の牽引要素と,
前記エアバッグクッションの前方領域に連結された第1端と,前記シートフレームに連結された第2端とを有する第3の牽引要素とを,備え,
前記第3の牽引要素は,前記第1の牽引要素の下方に位置し,前記第3の牽引要素が前記中心領域を覆わないように配置したこと。」
キ.そうすると,上記イ.により,引用文献1の第3変形例には,エアバッグクッションの下部側を,乗員の腰部とセンタコンソールとの間の狭い隙間に膨張展開させるという課題が示唆されるとともに,「エアバッグクッションの前方領域に連結された第1端と,シートフレームに連結された第2端とを有する下側の牽引要素と;を備え,」「下側の牽引要素は上側の牽引要素の下方に位置し,下側の牽引要素が陥凹中心領域を覆わないように配置されている」構成が記載されている。
引用文献2に記載された技術的事項は,引用発明と「テザーを有する車両用ファーサイドエアバッグ装置(中央側面衝突エアバッグモジュール)」という技術分野で共通するとともに,上記引用文献1に示唆される課題と「エアバッグクッションとセンタコンソール間の干渉の防止」という課題においても共通しているから,引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用する動機付けは十分にあるといえる。
そして,引用発明の「非膨張部72(陥凹中心領域)に連結された下側の内テザー97(第1の牽引要素)」に対して,同じく位置関係として中心領域に関連する引用文献2に記載された技術的事項の「中心領域に経路付けられた第1の牽引要素」を対応させて,引用発明においても内在する「エアバッグクッションとセンタコンソール間の干渉の防止」という課題を解決するために,引用文献2に記載された技術的事項の「前記エアバッグクッションの前方領域に連結された第1端と,前記シートフレームに連結された第2端とを有する第3の牽引要素とを,備え,」「前記第3の牽引要素は,前記第1の牽引要素の下方に位置し,」「前記第3の牽引要素が前記中心領域を覆わないように配置したこと」を適用して,上記相違点に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到しえたことである。
そして,本件補正発明の効果について検討しても,引用発明,引用文献1に記載された事項,及び,引用文献2に記載された技術的事項から予期される以上の格別のものがあるとはいえない。
したがって,本件補正発明は,引用発明,引用文献1に記載された事項,及び,引用文献2に記載された技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)請求人の主張の検討
ア.請求人は,審判請求書の「5.本願発明が特許されるべき理由」において,以下のように主張する。
「5.本願発明が特許されるべき理由
(1)引用文献との差異1
請求項1において追加された技術的限定事項である,「前記第2の牽引要素(50)が前記陥凹中心領域(32)上に渡って配置され,前記第3の牽引要素(60)が前記陥凹中心領域(32)を覆わないように配置されている」という点につきましては,何れの引用文献にも開示も示唆もありません。
本願明細書の段落[0029]に記載のように,上記のような特徴的構成により,第2の牽引要素(50)は陥凹中心領域(32)の一部(上方部分)を塞いで,乗員の頭部を保持することができます。一方,第3の牽引要素(60)は陥凹中心領域(32)を覆わないため,乗員の肩部が当該陥凹中心領域(32)に入り込んで拘束することができます。
(2)引用文献との差異2
何れの引用文献にも,エアバッグの展開形状を規制する3本の牽引要素を用い,1本をエアバッグの中央付近に連結し,他の2本をエアバッグの前方に連結するような構成は一切開示も示唆もありません。すなわち,何れの引用文献にも,「前記エアバッグクッション(30)の前方領域(36)に連結された第1端(52)と,前記シートフレーム(24)に連結された第2端(54)とを有する第2の牽引要素(50)と;前記エアバッグクッション(30)の前方領域(36)に連結された第1端(62)と,前記シートフレーム(24)に連結された第2端(64)とを有する第3の牽引要素(60)と;を備えた」という構成要素について開示も示唆もありません。
この点,引用文献3(審決注:当審決における「引用文献2」,以下同様。)の図7に示されているように,2本のテザー42,44の前端部は共通であります。また,引用文献3の段落[0020]には,「2本のテザーが共通した連結位置において連結されるように,互いの端部を重ねることが好ましい。たとえば,テザー42,44の一方は,クッションの前方下端37において,他方のテザー42,44に重ねることが好ましい。」と記載されております。このように,引用文献3に記載の発明においては,エアバッグの前方とテザー(42,44)の前端部との連結箇所は1カ所とすることが好ましく,2本のテザー42,44について別々の端部を有することは好ましくない,すなわち,本発明を創作する上での阻害要因が記載されていることになります。
(3)引用文献との差異3
更に,「前記第2の牽引要素(50)は前記第1の牽引要素(40)の上方に位置し,前記第3の牽引要素(60)は前記第1の牽引要素(40)の下方に位置する」ことについては,何れの引用文献にも開示も示唆もありません。
このように,第2及び第3の牽引要素の前端部を,エアバッグの中央に連結された第1の牽引要素の上下に配置させることにより,エアバッグの展開形状及び展開姿勢の規制を確実に行うことができます(図2参照)。すなわち,第1の牽引要素40によってエアバッグの中央から後方部分が外側に流れるのが規制され,第2及び第3の牽引要素50,60によってエアバッグの前縁部分が外側に流れる(倒れる)のを確実に規制することができます。これに対して,引用文献3に記載された発明(図7)においては,複数のテザーとエアバッグとの連結部分が分散されていないため,本発明と同様の効果は期待できません。」
イ.請求人の主張に対する検討
<(1)について>
本件補正発明の「前記第2の牽引要素が前記陥凹中心領域上に渡って配置され」ることは,引用発明に,本件補正発明の「前記第3の牽引要素が前記陥凹中心領域を覆わないように配置されている」ことは,引用文献2に記載された技術的事項にそれぞれ特定されており,引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用することにより,本件補正発明とすることは,上記(4)に記載したとおりである。
<(2)について>
「エアバッグの展開形状を規制する3本の牽引要素を用い」ることは,引用文献2に主テザー40及び2本のテザー42,44として記載されており,「1本をエアバッグの中央付近に連結し,他の2本をエアバッグの前方に連結するような構成」は,引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用することによりなし得たものである。
また,引用文献2の2本のテザー42,44の前方位置は同じ位置であっても,異なる位置であってもよいものであり,阻害要因とはいえない。
<(3)について>
「前記第2の牽引要素は前記第1の牽引要素の上方に位置」することは,引用発明に特定されており,「前記第3の牽引要素は前記第1の牽引要素の下方に位置する」ことは,引用文献2に記載された技術的事項である。
「第2及び第3の牽引要素の前端部を,エアバッグの中央に連結された第1の牽引要素の上下に配置させること」は,引用発明に引用文献2の記載された技術的事項を適用することによりなし得たものである。
したがって,請求人の上記主張(1)?(3)は,採用することはできない。

(6)まとめ
したがって,本件補正発明は,引用発明,引用文献1に記載された事項,及び,引用文献2に記載された技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,本件補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本件補正前の本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は,「第2 1.(2)」に示したとおりのものと認められる。
また,本件補正前の本願の請求項8に係る発明(以下「本願発明8」という。)は,以下のとおりのものと認められる。
「シートフレーム(24)上に配置され,かつそれに取り付けられ得,側面衝突または車両横転の場合に乗員の頭部および胸部を保護するように設計されている,自動車のエアバッグ装置(10)用のエアバッグクッションであって,
前記エアバッグクッション(30)が,前記シートフレーム(24)の第1の側部(26)上に配置され,かつそれに取り付けられ得,
前記エアバッグクッション(30)が,第1の牽引要素(40)を備え,前記第1の牽引要素が,その第1端(42)によって前記エアバッグクッション(30)の中心領域(32)に取り付けられていることを特徴とする,エアバッグクッション。」

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は,以下のとおりである。
1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<理由1>
・請求項 8,12,13
・引用文献等 1

<理由2>
・請求項 1?4
・引用文献等 1,3

・請求項 3?7
・引用文献等 1?3

・請求項 8?10,12,13
・引用文献等 1

・請求項 9?13
・引用文献等 1,2

・請求項 14?16
・引用文献等 1?3

<引用文献等一覧>
1.特開2016-107721号公報(上記第2 2.(2)ア.の引用文献1と同じ)
2.米国特許出願公開第2012/0049498号明細書
3.国際公開第2015/168401号(上記第2 2.(2)イ.の引用文献2と同じ)

3.引用文献とその記載事項等
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1,3,その記載事項及び引用発明は,上記「第2 2.(2)ア.とイ.」に記載したとおりである。

4.対比・判断
(1)<新規性(本願発明8)について>
ア.本願発明8と引用発明8とを対比すると,後者の「車両用ファーサイドエアバッグ装置」は前者の「自動車のエアバッグ装置」に相当する。
イ.後者は「ファーサイドモジュール36は,FSエアバッグ38と,FSエアバッグ38内に収容されたインフレータ40とを備え,支持板54が組み付けられたファーサイドモジュール36がシートバックフレーム20に取り付けられてサイドフレーム20Aの側部上に配置され」るものであるところ,後者の「FSエアバッグ38」は「ファーサイドモジュール36がシートバックフレーム20に取り付けられてサイドフレーム20Aの側部上に配置され」るから,前者の「シートフレーム上に配置され,かつそれに取り付けられ得」る「エアバッグクッション」及び「前記シートフレームの第1の側部上に配置され,かつそれに取り付けられ得」る「エアバッグクッション」に相当する。
ウ.後者の「ECU50が側突センサ52からの信号に基づいて側面衝突を検知した際にインフレータ40が作動され,インフレータ40のガス噴出部40AからFSエアバッグ38内にガスが噴出され,FSエアバッグ38が乗員Pの車両幅方向中央側に膨張展開し,少なくとも乗員Pの頭部Hから胸部Cまでを保護可能な,車両用ファーサイドエアバッグ装置10のFSエアバッグ38」は,上記ア.の相当関係を踏まえると,前者の「側面衝突または車両横転の場合に乗員の頭部および胸部を保護するように設計されている,自動車のエアバッグ装置用のエアバッグクッション」に相当する。
エ.上記イ.,ウ.から後者の「車両用ファーサイドエアバッグ装置10のFSエアバッグ38」は前者の「シートフレーム上に配置され,かつそれに取り付けられ得,側面衝突または車両横転の場合に乗員の頭部および胸部を保護するように設計されている,自動車のエアバッグ装置用のエアバッグクッション」に相当する。
オ.後者は「FSエアバッグ38の上下方向中間部に,膨張厚調整用の非膨張部72が設けられ,」「下側の内テザー97の長手方向一端部が,非膨張部72の下部における前端側に縫製されている」ものであるところ,後者の「FSエアバッグ38」が「下側の内テザー97」を備えていることは明らかであり,後者の「下側の内テザー97」がその「長手方向一端部」によって[FSエアバッグ38の上下方向中間部」の「非膨張部72」に「縫製されている」から,後者のこれらの事項は,上記ア.を踏まえると,前者の「エアバッグクッションが,第1の牽引要素を備え,前記第1の牽引要素が,その第1端によって前記エアバッグクッションの中心領域に取り付けられている」ことに相当する。
カ.そうすると,両者は,
「シートフレーム上に配置され,かつそれに取り付けられ得,側面衝突または車両横転の場合に乗員の頭部および胸部を保護するように設計されている,自動車のエアバッグ装置用のエアバッグクッションであって,
前記エアバッグクッションが前記シートフレームの第1の側部上に配置され,かつそれに取り付けられ得,
前記エアバッグクッションが,第1の牽引要素を備え,前記第1の牽引要素が,その第1端によって前記エアバッグクッションの中心領域に取り付けられている,
エアバッグクッション。」
の点で一致し,相違点はないと認められる。
したがって,本願発明8は,引用発明8である。

(2)<進歩性(本願発明1)について>
「第2 2.」を参照すると,本件補正発明は,本願発明1を特定するために必要な事項である「エアバッグクッション(30)」に関して,「前記エアバッグクッション(30)は,前記エアバッグクッション(30)が膨らんだとき,前記エアバッグクッション(30)の前記中心領域(32)が,陥凹中心領域(32)を形成するように構成され」と,「第2の牽引要素(50)」及び「第3の牽引要素(60)」に関して,「前記第2の牽引要素(50)は前記第1の牽引要素(40)の上方に位置し,前記第3の牽引要素(60)は前記第1の牽引要素(40)の下方に位置し,前記第2の牽引要素(50)が前記陥凹中心領域(32)上に渡って配置され,前記第3の牽引要素(60)が前記陥凹中心領域(32)を覆わないように配置されている」との限定をそれぞれ付すものであるから,本願発明1は,本件補正発明から上記の限定を削除したものである。
そうすると,本願発明1の発明特定事項をすべて含み,さらに限定した本件補正発明が,引用発明,引用文献1に記載された事項,および,引用文献2に記載された技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明1も同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり,本願発明8は,引用発明8であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
また,本願発明1は,引用発明,引用文献1に記載された事項,及び,引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,その余の請求項を検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-03-25 
結審通知日 2021-03-29 
審決日 2021-04-13 
出願番号 特願2019-502754(P2019-502754)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B60R)
P 1 8・ 121- Z (B60R)
P 1 8・ 113- Z (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 敏史飯島 尚郎  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 藤井 昇
一ノ瀬 覚
発明の名称 自動車両用のエアバッグ装置、およびエアバッグ装置用のエアバッグクッション  
代理人 飯塚 雄二  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ