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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1377460 |
審判番号 | 不服2020-16133 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-11-24 |
確定日 | 2021-08-26 |
事件の表示 | 特願2019- 38405「ユーザ機器、システム、ユーザ機器の制御方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月10日出願公開、特開2020-144422〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成31年3月4日の出願であって,令和1年12月24日付けで拒絶の理由が通知され,令和2年3月5日に意見書とともに手続補正書が提出され,同年8月20日付けで拒絶査定(謄本送達日同年8月25日。以下,「原査定」という。)がなされ,これに対して同年11月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,同年12月21日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされたものである。 第2 令和2年11月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年11月24日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により,特許請求の範囲の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。) 「 【請求項1】 ユーザを認証するための所定の認証情報をサーバに送信する送信部と、 前記ユーザがユーザ機器を使用するための設定情報を前記サーバから受信する受信部と、 前記設定情報を設定する設定部と、を備え、 前記送信部は、前記認証情報に紐づけられた前記設定情報を前記サーバから取得するために用いる送信指示及び、前記認証情報と前記ユーザ機器を使用するための設定情報とを紐づけて前記サーバに保存するために用いる保存指示のいずれかを用いて、前記認証情報を前記サーバへ送信し、 前記受信部は、前記送信部が前記サーバに送信指示を用いて前記認証情報を前記サーバへ送信した場合、前記設定情報の受信待ち状態となる、 ユーザ機器。 【請求項2】 端末、電話機、スマートフォン、携帯電話機、パーソナルコンピュータ、及びタブレットのうちの少なくともいずれかを含む、 請求項1に記載のユーザ機器。 【請求項3】 ユーザを認証するための所定の認証情報を前記ユーザが使用するユーザ機器から受信する受信部と、 前記所定の認証情報が予め保存された複数の認証情報のうちのいずれかと一致するかを判定する判定部と、 前記所定の認証情報が一致する場合、前記所定の認証情報と紐付けられた設定情報であって前記ユーザ機器を使用するための前記設定情報を前記ユーザ機器に送信する送信部と、 前記認証情報と前記設定情報とを紐付けて保存する保存部と、を備え、 前記受信部が、認証情報を含む保存指示を前記ユーザ機器から受信した場合、 前記保存部は、前記保存指示に含まれる認証情報を前記設定情報に紐づけて保存し、 前記受信部が、認証情報を含む送信指示を前記ユーザ機器から受信した場合、 前記判定部は、前記送信指示に含まれる認証情報が予め保存された複数の認証情報のうちのいずれかと一致するかを判定するサーバと、 請求項1又は2に記載のユーザ機器と、 を備えるシステム。 【請求項4】 前記認証情報は、人の顔を使用して前記ユーザを認証する顔認証情報である 請求項3に記載のシステム。 【請求項5】 ユーザ機器が、 認証情報に紐づけられた前記ユーザ機器を使用するための設定情報を取得するための送信指示、及び、前記認証情報と前記ユーザ機器を使用するための設定情報とを紐づけてサーバに保存するための保存指示のいずれかを用いて、ユーザを認証するための所定の認証情報をサーバに送信し、 前記送信指示を送信した場合、 前記設定情報の受信待ち状態となった後、 前記ユーザ機器を使用するための設定情報を前記サーバから受信し、 前記設定情報を前記ユーザ機器に設定する、 ユーザ機器の制御方法。 【請求項6】 前記ユーザ機器は、端末、電話機、スマートフォン、携帯電話機、パーソナルコンピュータ、及びタブレットのうちの少なくともいずれかを含む、 請求項5に記載のユーザ機器の制御方法。 【請求項7】 コンピュータに、 請求項5又は6に記載のユーザ機器の制御方法を 実行させるプログラム。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の,令和2年3月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 「 【請求項1】 ユーザを認証するための所定の認証情報を前記ユーザが使用するユーザ機器から受信する受信部と、 前記所定の認証情報が予め保存された複数の認証情報のうちのいずれかと一致するかを判定する判定部と、 前記所定の認証情報が一致する場合、前記所定の認証情報と紐付けられた設定情報であって前記ユーザ機器を使用するための前記設定情報を前記ユーザ機器に送信する送信部と、 前記認証情報と前記設定情報とを紐付けて保存する保存部と、を備え、 前記受信部が、認証情報を含む保存指示を前記ユーザ機器から受信した場合、 前記保存部は、前記保存指示に含まれる認証情報を前記設定情報に紐づけて保存し、 前記受信部が、認証情報を含む送信指示を前記ユーザ機器から受信した場合、 前記判定部は、前記送信指示に含まれる認証情報が予め保存された複数の認証情報のうちのいずれかと一致するかを判定する、 サーバ。 【請求項2】 前記認証情報は、人の顔を使用して前記ユーザを認証する顔認証情報である、 請求項1に記載のサーバ。 【請求項3】 ユーザを認証するための所定の認証情報をサーバに送信する送信部と、 前記ユーザがユーザ機器を使用するための設定情報を前記サーバから受信する受信部と、 前記設定情報を設定する設定部と、を備え、 前記送信部は、前記認証情報に紐づけられた前記設定情報を前記サーバから取得するために用いる送信指示及び、前記認証情報と前記ユーザ機器を使用するための設定情報とを紐づけて前記サーバに保存するために用いる保存指示のいずれかを用いて、前記認証情報を前記サーバへ送信する、 ユーザ機器。 【請求項4】 端末、電話機、スマートフォン、携帯電話機、パーソナルコンピュータ、及びタブレットのうちの少なくともいずれかを含む、 請求項3に記載のユーザ機器。 【請求項5】 請求項1又は2に記載のサーバと、 請求項3又は4に記載のユーザ機器と、 を備えるシステム。 【請求項6】 サーバが、 ユーザを認証するための所定の認証情報を前記ユーザが使用するユーザ機器から受信し、前記認証情報を含む保存指示を受信した場合、前記保存指示に含まれる認証情報を、前記ユーザ機器を使用するための設定情報に紐づけて保存し、 前記認証情報を含む送信指示を受信した場合、前記送信指示に含まれる認証情報が予め保存された複数の認証情報のうちのいずれかと一致するかを判定し、 前記所定の認証情報が一致する場合、前記所定の認証情報と紐付けられた設定情報であって前記ユーザ機器を使用するための前記設定情報を前記ユーザ機器に送信する、 サーバの制御方法。 【請求項7】 前記認証情報は、人の顔を使用して前記ユーザを認証する顔認証情報である、 請求項6に記載のサーバの制御方法。 【請求項8】 ユーザ機器が、 認証情報に紐づけられた前記ユーザ機器を使用するための設定情報を取得するための送信指示、及び、前記認証情報と前記ユーザ機器を使用するための設定情報とを紐づけてサーバに保存するための保存指示のいずれかを用いて、ユーザを認証するための所定の認証情報をサーバに送信し、 前記送信指示を送信した場合、 前記ユーザ機器を使用するための設定情報を前記サーバから受信し、 前記設定情報を前記ユーザ機器に設定する、 ユーザ機器の制御方法。 【請求項9】 端末、電話機、スマートフォン、携帯電話機、パーソナルコンピュータ、及びタブレットのうちの少なくともいずれかを含む、 請求項8に記載のユーザ機器の制御方法。 【請求項10】 コンピュータに、 請求項6又は7に記載のサーバの制御方法を 実行させるプログラム。 【請求項11】 コンピュータに、 請求項8又は9に記載のユーザ機器の制御方法を 実行させるプログラム。」 2 補正の適否 本件補正は概ね,本件補正前の請求項1,2,6及び10を削除し,本件補正前の請求項3に記載された発明を特定するために必要な事項である「受信部」について,「前記送信部が前記サーバに送信指示を用いて前記認証情報を前記サーバへ送信した場合、前記設定情報の受信待ち状態となる」との限定を付加するものであって,本件補正前の請求項3に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下,「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,上記1(1)の請求項1に記載したとおりのものである。 (2)引用例及び周知例の記載事項 ア 引用例に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開2006-113953号公報(平成18年4月27日公開。以下,これを「引用例」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。) A 「【0022】 図1において、情報端末11、情報端末21および情報端末31は、電子メールの送受信や、インターネットとの接続等を行う。設定情報データベース(記憶装置)14は、各使用者ごとの情報端末11の設定の情報である設定情報を、各使用者の身体の特徴を示す情報である生体情報と対応づけて記憶している。設定情報管理装置(情報端末設定管理装置)13は、設定情報データベース14が記憶している設定情報を読み出して情報端末11に送信する。生体情報入力装置12、生体情報入力装置22および生体情報入力装置32は、使用者の生体情報を入力する。通信ネットワーク15は、例えば、LAN(Local Area Network)によって実現され、情報端末11と設定情報管理装置13とを接続する。また、通信ネットワーク15は、ゲートウェイ(図示せず)によってインターネットに接続され、各情報端末11,21,31は、インターネットに接続可能である。 【0023】 図1に示すシステムは、例えば、一企業内において構築されているシステムである。そして、各情報端末11,21,31は、所定の期間において1人の使用者に独占して使用され、所定期間が経過すると各情報端末11,21,31の使用者が他者に変わりうるような環境にある。所定の期間は例えば1日である。 【0024】 設定情報データベース14が記憶している生体情報は、例えば、各使用者の顔画像や、指紋画像、指や手のひらの静脈の画像、虹彩の画像、声紋等の情報である。また、設定情報データベース14が記憶している設定情報は、電子メールアドレスやIPアドレス、情報端末11において実行が制限される機能を示す情報等を含む情報である。図2は、設定情報データベース14が記憶している生体情報と設定情報との例を示す説明図である。図2には、生体情報が2値化されたデータとして表現されている。 【0025】 ここで、情報端末11、情報端末21または情報端末31の使用者は、予め自分の顔画像等の生体情報を生体情報入力装置12、生体情報入力装置22または生体情報入力装置32に入力する。そして、情報端末11、情報端末21または情報端末31を操作して、生体情報入力装置12、生体情報入力装置22または生体情報入力装置32に入力した生体情報と、使用者を特定する情報と、情報端末11、情報端末21または情報端末31において使用を制限する機能を示す情報とを設定情報管理装置13に送信させる。設定情報管理装置13は、受信した生体情報と使用者を特定する情報と、使用を制限する機能を示す情報とを対応づけて設定情報データベース14に記憶させる。」 B 「【0034】 生体情報入力装置12は、撮影した顔画像の情報を情報端末11に入力する(ステップS103)。情報端末11は、入力された顔画像の情報を、通信ネットワーク15を介して設定情報管理装置13に送信する(ステップS104)。 【0035】 設定情報管理装置13は、受信した顔画像の情報と設定情報データベース14が記憶している生体情報としての顔画像の情報とが合致するか否かを判定し(ステップS105)、合致すると判定すると設定情報データベース14が記憶している生体情報に対応づけられた設定情報を設定情報データベース14から読み出す(ステップS106)。設定情報管理装置13は、読み出した設定情報を、通信ネットワーク15を介して情報端末11に送信する(ステップS107)。 【0036】 情報端末11は、受信した設定情報を情報端末11が内蔵する記憶手段に記憶させ、設定情報にもとづいて、動作環境を設定する(ステップS108)。そして、使用者が、情報端末11の電源をオフにする操作を行うと(ステップS109)、情報端末11は、設定変更プログラムに従って、動作環境を、初期状態、すなわち受信した設定情報にもとづいて設定変更がなされる前の状態に戻す(ステップS110)。さらに、情報端末11は、設定情報を記憶手段から削除する(ステップS111)。情報端末11は、情報端末11と生体情報入力装置12との電源をオフにする処理を行う(ステップS112)。」 C 「 図1」 イ 引用発明 (ア)上記記載事項Aの「図1において、情報端末…(中略)…設定情報データベース…(中略)…設定情報管理装置…(中略)…図1に示すシステム」及び上記記載事項Cの図1の記載から,引用例には,“情報端末,設定情報データベース及び設定情報管理装置からなるシステム”が記載されているといえる。 同じく上記記載事項Aの「情報端末…の使用者は、予め自分の顔画像等の生体情報を生体情報入力装置…に入力する。…情報端末…を操作して、生体情報入力装置…に入力した生体情報と、使用者を特定する情報と、情報端末…において使用を制限する機能を示す情報とを設定情報管理装置…送信させる。設定情報管理装置…は、受信した生体情報と使用者を特定する情報と、使用を制限する機能を示す情報とを対応づけて設定情報データベース…に記憶」との記載,及び上記“システム”に関する認定事項から,引用例には,“情報端末,設定情報データベース及び設定情報管理装置からなるシステムにおける情報端末であって,”“前記情報端末は,前記情報端末の使用者が予め自分の顔画像等の生体情報を生体情報入力装置に入力し,前記情報端末を操作して,生体情報入力装置に入力した生体情報と,前記使用者を特定する情報と,前記情報端末において使用を制限する機能を示す情報とを設定情報管理装置に送信し”,“前記設定情報管理装置は,受信した生体情報と使用者を特定する情報と,使用を制限する機能を示す情報とを対応づけて設定情報データベースに記憶”することが記載されているといえる。 (イ)上記記載事項Aの「設定情報データベース…が記憶している設定情報は、電子メールアドレスやIPアドレス、情報端末…において実行が制限される機能を示す情報等を含む情報」との記載から,引用例には,“前記設定情報データベースが記憶している設定情報は,電子メールアドレスやIPアドレス,情報端末において実行が制限される機能を示す情報等を含む情報であ”ることが記載されているといえる。 (ウ)上記記載事項Bの「情報端末…は、入力された顔画像の情報を…設定情報管理装置…に送信する…設定情報管理装置…は、受信した顔画像の情報と設定情報データベース…が記憶している生体情報としての顔画像の情報とが合致するか否かを判定し…合致すると判定すると設定情報データベース…が記憶している生体情報に対応づけられた設定情報を設定情報データベース…から読み出す…設定情報管理装置…は、読み出した設定情報を…情報端末…に送信する…情報端末…は、受信した設定情報を情報端末…が内蔵する記憶手段に記憶させ、設定情報にもとづいて、動作環境を設定する」との記載,並びに上記(ア)及び(イ)の認定事項から,引用例には,“前記情報端末は,入力された顔画像の情報を前記設定情報管理装置に送信し,”“前記設定情報管理装置は,受信した顔画像の情報と前記設定情報データベースが記憶している生体情報としての顔画像の情報とが合致するか否かを判定し,合致すると判定すると,前記設定情報データベースが記憶している生体情報に対応づけられた設定情報を前記設定情報データベースから読み出し,読み出した設定情報を前記情報端末に送信し,”“前記情報端末は,受信した設定情報を前記情報端末が内蔵する記憶手段に記憶させ,前記設定情報にもとづいて,動作環境を設定する”ことが記載されているといえる。 (エ)以上,上記(ア)?(ウ)より,引用例には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「情報端末,設定情報データベース及び設定情報管理装置からなるシステムにおける情報端末であって, 前記情報端末は,前記情報端末の使用者が予め自分の顔画像等の生体情報を生体情報入力装置に入力し,前記情報端末を操作して,生体情報入力装置に入力した生体情報と,前記使用者を特定する情報と,前記情報端末において使用を制限する機能を示す情報とを設定情報管理装置に送信し, 前記設定情報管理装置は,受信した生体情報と使用者を特定する情報と,使用を制限する機能を示す情報とを対応づけて設定情報データベースに記憶し, 前記設定情報データベースが記憶している設定情報は,電子メールアドレスやIPアドレス,情報端末において実行が制限される機能を示す情報等を含む情報であり, 前記情報端末は,入力された顔画像の情報を前記設定情報管理装置に送信し, 前記設定情報管理装置は,受信した顔画像の情報と前記設定情報データベースが記憶している生体情報としての顔画像の情報とが合致するか否かを判定し,合致すると判定すると,前記設定情報データベースが記憶している生体情報に対応づけられた設定情報を前記設定情報データベースから読み出し,読み出した設定情報を前記情報端末に送信し, 前記情報端末は,受信した設定情報を前記情報端末が内蔵する記憶手段に記憶させ,前記設定情報にもとづいて,動作環境を設定する 情報端末。」 ウ 周知例1に記載された事項 本願の出願前に既に公知である,特開2016-15107号公報(平成28年1月28日公開。以下,これを「周知例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 D 「【0135】 まず、通信端末装置10において、アプリケーション実行部170は、操作部150を介してアカウント名及び第1暗証と、「ログイン」ボタンを選択する旨の入力操作と、を検出すると(ステップSa101)、アプリケーション記録部121に記録されたアプリケーションに従って、入力されたアカウント名及び第1暗証を含むログイン要求を金融機関サーバ装置30に送信し、受信待機状態に移行する(ステップSa102)。」 エ 周知例2に記載された事項 本願の出願前に既に公知である,特開2017-45149号公報(平成29年3月2日公開。以下,これを「周知例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 E 「【0108】 まず、携帯用通信端末装置10は、ユーザの指示に基づいて、メモ情報と、当該メモ情報に登録された購入予定商品における購入可能商品の商品リストを要望する指定店舗と、を指定しつつ、当該指定店舗における購入可能商品情報の配信要求における指示入力を検出すると(ステップSa300)、購入可能商品情報の配信要求指示を情報提供サーバ装置30に送信して受信待機状態に移行する(ステップSa302)。なお、購入可能商品情報には、ユーザID、メモID及び指定店舗情報(位置情報及び店舗名)が含まれる。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「情報端末」,「情報端末の使用者」及び「設定情報管理装置」は,それぞれ本件補正発明の「ユーザ機器」,「ユーザ」及び「サーバ」に相当する。 イ 引用発明の「情報端末」は,「前記情報端末の使用者が予め自分の顔画像等の生体情報を生体情報入力装置に入力し,前記情報端末を操作して,生体情報入力装置に入力した生体情報と,前記使用者を特定する情報と,前記情報端末において使用を制限する機能を示す情報とを設定情報管理装置に送信」するものであるから,当該“送信”を行う“送信部”が存在することは自明である。 そして,引用発明の「情報端末の使用者が予め」「生体情報入力装置に入力」した「自分の顔画像等の生体情報」は,本件補正発明の「ユーザを認証するための所定の認証情報」に相当するといえるから,引用発明と本件補正発明とは,“ユーザを認証するための所定の認証情報をサーバに送信する送信部”を備える点で一致する。 ウ 引用発明の「情報端末」は,「入力された顔画像の情報を前記設定情報管理装置に送信」すると,「前記設定情報管理装置」は,「受信した顔画像の情報と前記設定情報データベースが記憶している生体情報としての顔画像の情報とが合致するか否かを判定し,合致すると判定すると,前記設定情報データベースが記憶している生体情報に対応づけられた設定情報を前記設定情報データベースから読み出し,読み出した設定情報を前記情報端末に送信」することから,当該「設定情報管理装置」から,「設定情報」を受信しているといえ,そのための“受信部”が存在することは自明である。 また,当該「設定情報」は,「電子メールアドレスやIPアドレス,情報端末において実行が制限される機能を示す情報等を含む情報であ」って,「前記設定情報にもとづいて,動作環境」が「設定」されるものでもあるから,本件補正発明の「ユーザがユーザ機器を使用するための設定情報」に相当するといえるから,引用発明と本件補正発明とは,“前記ユーザがユーザ機器を使用するための設定情報を前記サーバから受信する受信部”を備える点で一致する。 エ 引用発明の「情報端末」は,「入力された顔画像の情報を前記設定情報管理装置に送信」した後,「設定情報管理装置」において,「受信した顔画像の情報と前記設定情報データベースが記憶している生体情報としての顔画像の情報とが合致するか否かを判定し,合致すると判定すると,前記設定情報データベースが記憶している生体情報に対応づけられた設定情報を前記設定情報データベースから読み出し,読み出した設定情報」を受信するものである。そして,当該「入力された顔画像の情報を前記設定情報管理装置に送信」することを契機として,「設定情報管理装置」から「設定情報」を取得しているところ,当該「入力された顔画像の情報」,すなわち本件補正発明の「認証情報」に相当する情報を送信して,本件補正発明の「設定情報」に相当する情報を取得しているといえるから,引用発明の「情報端末」は,“前記認証情報に紐づけられた前記設定情報を前記サーバから取得するために”“認証情報を前記サーバへ送信し”ているといえ,当該「入力された顔画像の情報」を送信することは,“前記認証情報に紐づけられた前記設定情報を前記サーバから取得するために用いる送信指示”に対応するものといえる。 引用発明の「情報端末」はまた,「生体情報入力装置に入力した生体情報と,前記使用者を特定する情報と,前記情報端末において使用を制限する機能を示す情報とを設定情報管理装置に送信」した後,「設定情報管理装置」が「受信した生体情報と使用者を特定する情報と,使用を制限する機能を示す情報とを対応づけて設定情報データベースに記憶」するものである。そして,「情報端末」における当該「送信」を契機として,「設定情報データベース」に,「生体情報と使用者を特定する情報と,使用を制限する機能を示す情報とを対応づけて」「記憶」しているところ,当該「生体情報」,すなわち本件補正発明の「認証情報」に相当する情報を送信することによって,本件補正発明の「設定情報」に相当する情報を当該「生体情報」と紐づけて保存しているといえるから,引用発明の「情報端末」は,“前記認証情報と前記ユーザ機器を使用するための設定情報とを紐づけて前記サーバに保存するために”“認証情報を前記サーバへ送信し”ているといえ,当該「生体情報」を送信することは,“前記認証情報と前記ユーザ機器を使用するための設定情報とを紐づけて前記サーバに保存するために用いる保存指示”に対応するものといえる。 上記アの「送信部」に関する認定を参照し,以上を総合すると,引用発明と本件補正発明とは,“前記送信部は,前記認証情報に紐づけられた前記設定情報を前記サーバから取得するために用いる送信指示及び,前記認証情報と前記ユーザ機器を使用するための設定情報とを紐づけて前記サーバに保存するために用いる保存指示のいずれかを用いて,前記認証情報を前記サーバへ送信”する点で一致する。 オ 引用発明の「情報端末」は,「設定情報管理装置」から「受信した…設定情報にもとづいて,動作環境を設定する」ところ,当該“設定”を行うための“設定部”が存在することは自明であるから,引用発明と本件補正発明とは,“前記設定情報を設定する設定部”を備える点で一致する。 カ 以上,ア?オの検討から,引用発明と本件補正発明とは,次の一致点及び相違点を有する。 〈一致点〉 ユーザを認証するための所定の認証情報をサーバに送信する送信部と, 前記ユーザがユーザ機器を使用するための設定情報を前記サーバから受信する受信部と, 前記設定情報を設定する設定部と,を備え, 前記送信部は,前記認証情報に紐づけられた前記設定情報を前記サーバから取得するために用いる送信指示及び,前記認証情報と前記ユーザ機器を使用するための設定情報とを紐づけて前記サーバに保存するために用いる保存指示のいずれかを用いて,前記認証情報を前記サーバへ送信する ユーザ機器。 〈相違点〉 本件補正発明が,「前記受信部は,前記送信部が前記サーバに送信指示を用いて前記認証情報を前記サーバへ送信した場合,前記設定情報の受信待ち状態となる」のに対し,引用発明の「情報端末」が「入力された顔画像の情報を前記設定情報管理装置に送信し」たあと,受信待ち状態となることが特定されていない点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 一般に,サーバから何らかの情報を取得する場合,当該サーバに当該情報の送信を要求した後,受信待機状態となることは,上記(2)ウ,エに示された周知例1及び周知例2等に散見されるように,本願出願前周知な技術に過ぎず,引用発明においても,「設定情報管理装置」,すなわちサーバに,「生体情報」などの認証情報を送信した場合に,「設定情報」の受信待ち状態とするように構成することは,当業者にとって容易になし得たものと認められる。 以上検討したとおり,相違点は格別なものとはいえず,またそのことによる効果も,当業者であれば普通に想起し得る程度のことに過ぎない。 したがって,本件補正発明は,引用発明並びに周知例1及び周知例2に記載されたような周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものである。 したがって,本件補正発明は,引用発明並びに周知例1及び周知例2に記載されたような周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)本件補正についてのむすび 以上のとおり,本件補正は特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和2年11月24日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,令和2年3月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項3に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,その請求項3に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。再掲すれば,次のとおり。 「ユーザを認証するための所定の認証情報をサーバに送信する送信部と、 前記ユーザがユーザ機器を使用するための設定情報を前記サーバから受信する受信部と、 前記設定情報を設定する設定部と、を備え、 前記送信部は、前記認証情報に紐づけられた前記設定情報を前記サーバから取得するために用いる送信指示及び、前記認証情報と前記ユーザ機器を使用するための設定情報とを紐づけて前記サーバに保存するために用いる保存指示のいずれかを用いて、前記認証情報を前記サーバへ送信する、 ユーザ機器。」 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1?11に係る発明は,本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 引用文献1:特開2006-113953号公報(上記第2の[理由]2(2)の引用例) 3 引用文献1 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は,前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は,前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から,「受信部」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の[理由]の(4)及び(5)に記載したとおり,引用発明並びに周知例2及び周知例3に記載されたような周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,当該限定事項を含まない本願発明は,同様の理由により,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものというべきものである。 第4 むすび 以上のとおり,本願発明は,本願出願前に頒布された引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-06-18 |
結審通知日 | 2021-06-22 |
審決日 | 2021-07-09 |
出願番号 | 特願2019-38405(P2019-38405) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平井 誠 |
特許庁審判長 |
石井 茂和 |
特許庁審判官 |
山澤 宏 山崎 慎一 |
発明の名称 | ユーザ機器、システム、ユーザ機器の制御方法、及びプログラム |
代理人 | 家入 健 |