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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B63C
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 B63C
管理番号 1377490
審判番号 不服2021-2572  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-26 
確定日 2021-09-14 
事件の表示 特願2016-226432号「水中航走体」拒絶査定不服審判事件〔平成30年5月31日出願公開、特開2018-83472号、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の概要
本願は、平成28年11月22日の出願であって、令和2年7月10日付けで拒絶理由通知がされ、同年9月8日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲及び明細書について補正をする手続補正書が提出されたが、同年11月19日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して令和3年2月26日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に、特許請求の範囲及び明細書について補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
1.(理由1)この出願の下記請求項に係る発明は、この出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(理由2)この出願の下記請求項に係る発明は、この出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

●理由1について
・請求項 1,2
・引用文献等 1

●理由2について
・請求項 1,2
・引用文献等 1,6?8

・請求項 3
・引用文献等 1?3,6?8

・請求項 4
・引用文献等 1,4?8

・引用文献等一覧
1.韓国公開特許第10-2015-0133098号公報
2.特開平4-368294号公報(周知技術を示す文献)
3.中国特許出願公開第101372256号明細書(周知技術を示す文献)
4.中国特許出願公開第103085938号明細書
5.実願平4-41764号(実開平5-92092号)のCD-ROM(周知技術を示す文献)
6.特開2008-18899号公報(周知技術を示す文献)
7.特開2007-153183号公報(周知技術を示す文献)
8.米国特許第5058521号明細書(周知技術を示す文献)

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の手続補正により、請求項1における「凹凸部」及び「突出部」について、「前記本体の径方向での前記凹凸部の高さをHtとするとともに前記軸線方向での前記凹凸部と前記突出部との間の距離をDとしたとき、距離比D/Htは1以上10以下である」なる限定がされ、該限定による補正は、属する技術分野や解決すべき課題を変更するものでもないから、限定的減縮を目的とするものであり、願書に最初に添付された明細書における「本体3の径方向での凹凸部9の高さをHt」(【0023】)、「幾つかの実施形態では、図7に示したように、軸線方向での凹凸部9と突出部5との間の距離をDとしたとき、距離比D/Htは1以上10以下である。」(【0027】、下線は当審が付与。以下同様。)に基づくものであるから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものではない。
また、下記第6で説示するように、審判請求時の手続補正により補正された請求項1?4に係る発明は、独立特許要件も満たすものである。
よって、上記補正は適法にされたものである。

第4 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明4」という。)は、令和3年2月26日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。

「【請求項1】
軸線方向に延びる本体と、
前記軸線方向と直交する方向に前記本体から突出する突出部と、
前記軸線方向にて前記突出部よりも後方に位置する推進器と、
を備え、
前記本体の外表面は、前記本体の軸線方向にて前記突出部よりも前方にて、前記本体の周方向に沿って前記本体を囲むように延在する少なくとも1つの凹凸部を含み、
前記少なくとも1つの凹凸部は、
前記軸線方向を含む縦断面視にて凹曲線によって構成される凹部と、
前記軸線方向を含む縦断面視にて凸曲線によって構成され、前記軸線方向にて前記凹部の後端に連なる凸部と、
を有し、
前記本体の径方向での前記凹凸部の高さをHtとするとともに前記軸線方向での前記凹凸部と前記突出部との間の距離をDとしたとき、距離比D/Htは1以上10以下であることを特徴とする水中航走体。
【請求項2】
前記本体は、
筒形状の胴部と、
前記軸線方向にて前記胴部から前方に突出する頭部と、
を含み、
前記少なくとも1つの凹凸部は、前記頭部に位置している凹凸部を含むことを特徴とする請求項1に記載の水中航走体。
【請求項3】
前記本体は、
筒形状の胴部と、
前記軸線方向にて前記胴部から前方に突出する頭部と、
を含み、
前記少なくとも1つの凹凸部は、前記胴部に位置している凹凸部を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の水中航走体。
【請求項4】
前記本体の外表面は、前記軸線方向にて前記突出部よりも前方に、複数のディンプル及び少なくとも1つの周方向溝のうち一方又は両方を更に有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の水中航走体。」

第5 引用文献の記載事項等
1 引用文献1について
引用文献1には、図面とともに、以下の記載がある(下線は当審が付し、和訳は当審が作成した。以下同様である。)。

(1)[0001]

(和訳:【0001】本発明は潜水艦や潜水艇、魚雷など潜航機能を有する水中移動装置に関することとして、さらに詳しくは水中での起動性能が向上した水中移動装置に関する。)

(2)[0006]

・・・
[0008]

(和訳:【0006】このような潜水艦や潜水艇、魚雷などの水中移動装置は通常的に水中移動の中に抵抗を減らすために流線形に製作される。これ以外にも水中移動装置の水中移動中の抵抗を減らすための多様な研究が持続的に成り立っている。
・・・
【0008】ところで上述したことと同じ従来技術はさまざまな問題点を有している。 先に、前者の場合、空気を噴射するための噴射口を水中移動装置の先端に用意しなければならないのでこのような噴射口がむしろ水中移動装置の抵抗を増加させることができるし、持続的に空気を噴射するためには空気を供給するための装置が大きくならなければならないので水中移動装置のサイズも大きくなるようになる。そして後者の場合、推進システムが水中移動装置の先頭に設置されなければならないので、これを適用することができる対象が制限的なしかない。また上述した従来技術は水中移動装置の移動の中で水中移動装置の迎え角が大きい場合には起動性能を向上させるのに困難がある。)

(3)[0009]

(和訳:【0009】本発明は上述したような必要性を解決するために案出されたことで、水中移動の中に起動性能を向上させることができる起動性能向上装置が具備されることで迎え角が大きい移動条件などでの起動性能が向上した水中移動装置を提供することを目的にする。)

(4)[0017]

[0018]

[0019]

[0020]

(和訳:【0017】図1ないし図5に示したものと一緒に、本発明の一実施例による起動性能が向上した水中移動装置(100)は移動装置ボディー(110)と、水中移動の中に起動性能を向上させるために移動装置ボディー(110)に設置される起動性能向上装置(130)と、水中移動装置(100)の全般的な動作を制御するコントローラー(140)を含む。移動装置ボディー(110)に設置される起動性能向上装置(130)は長寿亀など箱の縦方向背筋を模倣した複数のリッジ(131)を含むことで、このような起動性能向上装置(130)は水中移動装置(100)が水中移動の中で急旋回など迎え角が大きく発生する場合揚力係数と揚抗比を大きく向上させることで水中移動装置(100)の起動性能を向上させることができる。
【0018】移動装置ボディー(110)は潜水艦や潜水艇、魚雷など潜航機能を有する通常的な水中移動装置と一緒に流線形で成り立って、その後尾には推進機(115)が設置される。移動装置ボディー(110)の先端には前方の方にますます幅が漸進的に減少してその外面が緩やかな曲面で成り立つ多重曲率形状の多重曲率ヘッド(120)が具備される。
【0019】図1及び図3に示したものと一緒に、多重曲率ヘッド(120)は移動装置ボディー(110)と緩やかに連結される第1外周縁(121)と、第1外周縁(121)と緩やかに連結される第2外周縁(122)と、第2外周縁(122)と緩やかに連結される第3外周縁(123)を有する。 第1外周縁(121)は前方に行くほどその幅が漸進的に減少してその端周囲に沿って第1プラス曲率(R1)を有する軸対称構造で成り立つ。 第2外周縁(122)は前方に行くほどその幅が漸進的に減少してその端周囲に沿ってマイナス曲率(R2)を有する軸対称構造で成り立つ。 第3外周縁(123)は前方に行くほどその幅が漸進的に減少してその端周囲に沿って第2プラス曲率(R3)を有する軸対称構造で成り立つ。
【0020】通常的に、軸対称物体の先端部分が多重曲率形状を有する場合、同じ面積や体積を有する反楕円体形状の物体より摩擦抵抗が減ることを見られる。よって、本実施例による水中移動装置(100)はその前頭部が多重曲率形状で成り立つことで、表面摩擦抵抗及び形状抵抗が小さい。)

図1

図3

参考図(図1に当審が名称と引き出し線を付記)

(5)上記(4)の【0017】には、水中移動装置(100)は、移動ボディー(110)と推進機(115)と起動性能向上装置(130)とを含むことが記載され、上記(4)(特に【0017】)、図1及び図1に基づく参考図によれば、移動装置ボディー(110)は前後方向に延びること、及び、水中移動装置(100)は、移動装置ボディー(110)の前後方向の略中央部において前後方向に直交する方向で移動装置ボディー(110)から上方に突出する突出部も含むことが認められ、上記(4)(特に【0018】)及び図1によれば、推進機(115)は、移動装置ボディー(110)の後尾に設置されること、及び、移動装置ボディー(110)の先端に外面が緩やかな曲面で成り立つ多重曲率ヘッド(120)が具備されることが認められる。

(6)上記(4)(特に【0019】)によれば、多重曲率ヘッド(120)は、第1外周縁(121)と第2外周縁(122)と第3外周縁(123)を有することが認められ、上記(4)(特に【0019】)及び図3によれば、第3外周縁(123)は、前方に行くほどその幅が漸進的に減少して、側面から見て外側に凸の曲線からなる輪郭を有する軸対称構造であること、第2外周縁(122)は、前方に行くほどその幅が漸進的に減少して、側面から見て内側に凸の曲線からなる輪郭を有する軸対称構造で、第3外周縁(123)の後方に連結されること、及び、第1外周縁(121)は、前方に行くほどその幅が漸進的に減少して、側面から見て外側に凸の曲線からなる輪郭を有する軸対称構造で、第2外周縁(122)の後方に連結されることが認められる。

上記(5)、(6)を総合すると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「前後方向に延びる移動装置ボディー(110)と、
移動装置ボディー(110)の前後方向の略中央部において前後方向に直交する方向で移動装置ボディー(110)から上方に突出する突出部と、
移動装置ボディー(110)の後尾に設置される推進機(115)と、
起動性能向上装置(130)と、
を含み、
移動装置ボディー(110)の先端に外面が緩やかな曲面で成り立つ多重曲率ヘッド(120)が具備され、
多重曲率ヘッド(120)は、
前方に行くほどその幅が漸進的に減少して、側面から見て外側に凸の曲線からなる輪郭を有する軸対称構造である第3外周縁(123)と、
前方に行くほどその幅が漸進的に減少して、側面から見て内側に凸の曲線からなる輪郭を有する軸対称構造で、第3外周縁(123)の後方に連結される第2外周縁(122)と、
前方に行くほどその幅が漸進的に減少して、側面から見て外側に凸の曲線からなる輪郭を有する軸対称構造で、第2外周縁(122)の後方に連結される第1外周縁(121)と、
を有する、水中移動装置(100)。」

2 引用文献2について
引用文献2には、図面とともに以下の記載がある。

(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば水中航走体や深海探査船等の外殻や、宇宙ロケット等の構造体等に適用される異材継手の構造に関する。」

(2)「【0002】
【従来の技術】一般に、図3に示すように、水中航走体20は、各コンポーネント1?6により構成されており、上記の各コンポーネントは通常メカニカル継手により接合されていて容易に着脱できるようになっている。
【0003】上記のメカニカル継手の部分Aは、コンポーネント2とコンポーネント3との接合部分の詳細を示した図4に示されるように、接合面7がV-クランプ8により接合されている。
【0004】上記の各コンポーネント1?6の外殻は通常アルミ合金でできているが、CFRP(Carbon Film Reinforced Plastic)サンドイッチ構造を用いる場合もあり、後者の場合、メカニカル継手は形状が複雑で加工が難しく強度が不足するなどの理由により、金属材料が用いられるため、CFRPサンドイッチ構造と金属材料とを結合する異材継手が必要となる。
【0005】従来の異材継手構造を図4の矢印Bに示す。
【0006】図4の矢印Bに示す従来の異材継手構造は、コンポーネント2の外殻がCFRP(Carbon Film Reinforced Plastic)サンドイッチ構造であり、コア材9および同コア材9をはさむCFRPよりなる内外円筒10,11により円筒体に構成された上記外殻に、コンポーネント3の外殻にV-クランプ8接合されたメカニカル金具14の先端部に一体的に構成されたアルミ合金製のインサート13が、上記円筒体の端部に装着されたGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastic)よりなる中間材12を介して接着されている。」

【図3】

【図4】


3 引用文献3について
引用文献3には、図面とともに以下の記載がある。

(1)(3頁2?3行)

(和訳:技術分野
本発明は流体力学に関し、特に艦船、魚雷、潜水艇のハウジングを提供する。)

(2)(4頁19行?6頁6行)

(和訳:実施例1
本発明は艦船、魚雷、潜水艇のハウジングを提供した、その特徴は:前記の艦船、魚雷、潜水艇のハウジングは複数の階節形陥没を持ち、陥没した形状は前部内凹曲率半径のために小さく、後部内凹曲率半径は大きく、両部分の間は接し、円滑に過渡的である。
前記の艦船、魚雷、潜水艇のハウジング上の陥没奥行き方向寸法と長く方向寸法を渉る比は1:10とする。
前記の艦船ハウジングの水位線以下部分割帯域は複数の半環状階節形が陥没する。
前記の魚雷ハウジング全身は複数の環状階節形を持って陥没する。
前記の潜水艇のハウジングは、潜水艇ハウジング全身に複数の環状階節形を持って陥没する。
実施例2
本発明は艦船、魚雷、潜水艇のハウジングを提供した、その特徴は:前記の艦船、魚雷、潜水艇のハウジングは複数の階節形陥没を持ち、陥没した形状は前部内凹曲率半径のために小さく、後部内凹曲率半径は大きく、両部分の間は接し、円滑に過渡的である。
前記の艦船、魚雷、潜水艇のハウジング上の陥没奥行き方向寸法と長く方向寸法を渉る比は1:5とする。
前記の艦船ハウジングの水位線以下部分割帯域は複数の半環状階節形が陥没する。
前記の魚雷ハウジング全身は複数の環状階節形を持って陥没する。
前記の潜水艇のハウジングは、潜水艇ハウジング全身に複数の環状階節形を持って陥没する。
実施例3
本発明は艦船、魚雷、潜水艇のハウジングを提供した、その特徴は:前記の艦船、魚雷、潜水艇のハウジングは複数の階節形陥没を持ち、陥没した形状は前部内凹曲率半径のために小さく、後部内凹曲率半径は大きく、両部分の間は接し、円滑に過渡的である。
前記の艦船、魚雷、潜水艇のハウジング上の陥没奥行き方向寸法と長く方向寸法を渉る比は1:15とする。
前記の艦船ハウジングの水位線以下部分割帯域は複数の半環状階節形が陥没する。
前記の魚雷ハウジング全身は複数の環状階節形を持って陥没する。
前記の潜水艇のハウジングは、潜水艇ハウジング全身に複数の環状階節形を持って陥没する。)

図4


図5


4 引用文献4について
引用文献4には、図面とともに以下の記載がある。

(1)

(和訳:技術分野
[0001] 本発明は水下高速航行体抗キャビテーション方法に関して、有効阻害が航行体高速移動肩部近傍のフローフィールド圧力低減によって引き起こしたキャビテーションは、ひいてはキャビテーションを減少して航行体周囲フローフィールドおよび航行体流動力に対した影響は、これによって水下高速航行体の運動安定性を高め、力学環境を改善する。)

(2)

(和訳:発明を実施するための最良の形態
[0009] 図1、水中航行体頭部(2)圧力よどみ点に水注入口(1)を開き、分流装置(4)はねじ溝によって航行体頭部(2)を航行体前船室段(6)と接続する。同時に、分流装置(4)前端は設置してある中心孔は、中部は設置してありキャスタ角を持ついくつは内外方に分岐孔から、取り付ける時は中心孔と水注入口(1)を対応させて、分岐孔は航行体頭部(2)航行体前室の段(6)共通とから形成されるショルダーリングの形水出口(5)に対応し、ループ状の水出口(5)の大きさは分流装置(4)と航行体頭部(2)および航行体前室の段(6)間のねじ溝とクッションパッドによって調節することができる。)

図1

図2


5 引用文献5について
引用文献5には、図面とともに以下の記載がある。

(1)「【0005】
【作用】
本案は,船体の海水接触面に球面状の凹型窪みを多数設けることにより抵抗を軽減し乱流を整えようとするものであるが,どの大きさや数・配列によるものが最も有効であるかや,窪みそのものの効果が流体力学的に証明されるかどうかは,今後の問題に属すベきことで本願の主眼とするところではない。
しかし,ゴルフボールのディンプルがその飛距離向上と方向性の安定に役立っていることは周知の事実である。従って,本案の窪みが船舶においても海水の抵抗を軽減し,乱流を抑制するであろうことは容易に考えられることである。また,配置する数が多ければ多いほど大きな効果をもたらすであろうことも容易に考えられるであろう。
本願の主旨は,特別の装置を要せずに海水接触面全体に多くの窪みを密接して配することにより抵抗を軽減し,乱流の発生を抑制しようとするものである。・・・」

図1


6 引用文献6について
引用文献6には、図面とともに以下の記載がある。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、水中航走体に関するものである。」

(2)「【0016】
水平翼16(「グライディング翼」ともいう。)は、断面視翼型を有する先細翼(「テーパ翼」ともいう。)であり、図1に実線で示すように、船体12の中央部から船体12の左右方向(幅方向)に延びる図示しない水平軸線に沿って、左右に一枚ずつ設けられている。・・・」

図1


7 引用文献7について
引用文献7には、図面とともに以下の記載がある。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、水中航走体、特に、機体を浮上または潜行させるのに使用される水平舵、および機体を左回頭または右回頭させるのに使用される垂直舵を備えた水中航走体に関するものである。」

(2)「【0010】
以下、本発明による水中航走体の一実施形態について、図1および図2を参照しながら説明する。
図1(a)は本実施形態による水中航走体1の概略平面図、図1(b)は本実施形態による水中航走体1の概略右側面である。また、図2(a)および図2(b)は本実施形態による水中航走体1の概略右側面である。図1に示すように、本実施形態による水中航走体1は、機体2と、推進器3と、水平舵4と、垂直舵5とを主たる要素として構成されたものである。
【0011】
推進器3は、機体2の後端部に配置されているとともに、プロペラ3aを備えている。このプロペラ3aは、図示しない駆動源(例えば、バッテリー駆動の電動モータ等)により正回転または逆回転させられるものである。そして、このプロペラ3aが正回転または逆回転することによって、水中航走体1が前進または後進するようになっている。
【0012】
水平舵4(「昇降舵」ともいう。)は、断面視翼型を有する板状の部材であり、機体2の前部(より詳しくは、水中航走体1の重心Gよりも前方側に位置する部分)から機体2の左右方向(幅方向)に延びる図示しない水平軸線に沿って、左右に一枚ずつ設けられている。・・・
【0013】
垂直舵5(「方向舵」ともいう。)は、断面視翼型を有する板状の部材であり、機体2の前部(より詳しくは、水中航走体1の重心Gよりも前方側に位置する部分)から機体2の上下方向(高さ方向)に延びる図示しない垂直軸線に沿って、上下に一枚ずつ設けられている。・・・」

図2


8 引用文献8について
引用文献8には、以下の図面が記載されている。



第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1における「前後方向」は本願発明1における「軸線方向」に相当し、以下同様に、「移動装置ボディー(110)」は「本体」に、「推進機(115)」は「推進器」に、「含」むことは「備え」ることに、「多重曲率ヘッド(120)」は「少なくとも1つの凹凸部」に、「多重曲率ヘッド(120)が具備」されることは「少なくとも1つの凹凸部を含む」ことに、「第2外周縁(122)」は「凹部」に、「後方」は「後端」に、「連結される」ことは「連なる」ことに、「第1外周縁(121)」は「凸部」に、「水中移動装置(100)」は「水中航走体」に、それぞれ相当する。
引用発明1における「前後方向に延びる移動装置ボディー(110)」、「前後方向に直交する方向で移動装置ボディー(110)から上方に突出する突出部」は、それぞれ、本願発明1における「軸線方向に延びる本体」、「前後方向に直交する方向に移動装置ボディー(110)から突出する突出部」に相当する。
引用発明1における「推進機(115)」は、移動装置ボディー(110)の後尾に設置され、移動装置ボディー(110)から突出する突出部より後方にあるのは明らかであるから、引用発明1における「移動装置ボディー(110)の後尾に設置された推進機(115)」は、本願発明1における「前記軸線方向にて前記突出部よりも後方に位置する推進器」に相当する。
引用発明1における「多重曲率ヘッド(120)」は、移動装置ボディー(110)の先端にあるから、移動装置ボディー(110)の前後方向の略中央部において前後方向に直交する方向にで移動装置ボディー(110)から上方に突出する突出部より前方にあることは明らかであり、第1外周縁(121)と第2外周縁(122)と第3外周縁(123)を有するものであり、外側又は内側に凸の曲線からなる輪郭を有する軸対象構造、すなわち、点対称の外周を有してその周方向に沿って凹凸面を有するものであり、移動装置ボディー(110)に連結されるものであるから、引用発明1における「移動装置ボディー(110)の先端に外面が緩やかな曲面で成り立つ多重曲率ヘッド(120」は、本願発明1における「前記本体の外表面は、前記本体の軸線方向にて前記突出部よりも前方にて、前記本体の周方向に沿って前記本体を囲むように延在する少なくとも1つの凹凸部」に相当する。
また、引用発明1における「側面から見て」、「内側に凸の曲線」、「外側に凸の曲線」は、それぞれ、本願発明1における「前記軸線方向を含む縦断面視にて」、「凹曲線」、「凸曲線」に相当するから、引用発明1における「側面から見て内側に凸の曲線からなる輪郭を有する軸対称構造である第2外周縁(122)」、「側面から見て外側に凸の曲線からなる輪郭を有する軸対称構造で、第2外周縁(122)の後方に連結される第1外周縁(121)」は、それぞれ、本願発明1における「前記軸線方向を含む縦断面視にて凹曲線によって構成される凹部」、「前記軸線方向を含む縦断面視にて凸曲線によって構成され、前記軸線方向にて前記凹部の後端に連なる凸部」に相当する。
そうすると、本願発明1は引用発明1とはいえず、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。

<一致点>
「軸線方向に延びる本体と、
前記軸線方向と直交する方向に前記本体から突出する突出部と、
前記軸線方向にて前記突出部よりも後方に位置する推進器と、
を備え、
前記本体の外表面は、前記本体の軸線方向にて前記突出部よりも前方にて、前記本体の周方向に沿って前記本体を囲むように延在する少なくとも1つの凹凸部を含み、
前記少なくとも1つの凹凸部は、
前記軸線方向を含む縦断面視にて凹曲線によって構成される凹部と、
前記軸線方向を含む縦断面視にて凸曲線によって構成され、前記軸線方向にて前記凹部の後端に連なる凸部と、
を有する水中航走体。」

<相違点1>
本願発明1では、「前記突出部の前記軸線方向における前方端部は、前記本体の前記軸線方向における後方側の端部よりも前方側の端部に近い位置に位置」するのに対し、引用発明1では、突出部の前側の端部がどこに位置するのか特定されていない点。

<相違点2>
本願発明1は、「前記本体の径方向での前記凹凸部の高さをHtとするとともに前記軸線方向での前記凹凸部と前記突出部との間の距離をDとしたとき、距離比D/Htは1以上10以下である」であるのに対し、引用発明1は、そのように特定されていない点。

(2)判断
新規性について
相違点1、2は、本願発明1と引用発明1との実質的な相違点であるから、本願発明1は引用発明1ではない。

進歩性について
事情に鑑み、まず、相違点2について検討する。
相違点2に係る本願発明1の構成に関する事項として、引用文献1には、多重曲率ヘッド及び突出部の概形や大まかな位置は、図1及び3に図示されており、多重曲率ヘッド(120)による作用・効果は記載されている(例えば、上記第5 1(4)の【0020】)が、多重曲率ヘッド(120)における第1外周縁(121)及び第2外周縁(122)の径方向の高さや多重曲率ヘッド(120)と突出部との距離について具体的な記載は一切なく、多重曲率ヘッド(120)と突出部によって何らかの作用・効果があることについての記載や示唆もなく、一般に特許公報等の図面は、設計図のように、形、大きさ、位置等が厳密なものではないところ、引用文献1の図面には、目盛等の距離や位置を特定するものも記載されておらず、また、明細書にも当該図面が正確な縮尺を示したものとの記載もないことから、引用文献1には、相違点2に係る本願発明1の構成に相当する事項が記載されているとも示唆されているとも認められない。
よって、引用文献1に接した当業者が、引用発明1において、相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、容易に想到し得たことであるとはいえない。
また、引用文献6?8には、突出部に関する記載(甲6には、「水平翼16」、甲7には、「水平舵4」、「垂直舵5」、甲8には、「keel-wing 24」(キール翼24)について記載。)はあるが、凹凸部については、記載も示唆もないから、相違点2に係る本願発明1の構成が、本願出願前の周知技術とは認められない。
以上によれば、相違点1について検討をするまでもなく、本願発明1は、引用発明1及び引用文献6?8で例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2?4について
本願発明2は、本願発明1の全ての構成を有し、更に限定するものであるから、上記1(1)で説示したとおり、引用発明1とはいえず、上記1(2)で説示したのと同様に、引用発明1及び引用文献6?8で例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、引用文献2には、異材継手構造について記載され、引用文献3には、艦船、魚雷、潜水艇のハウジングに凹凸部を設けることが記載され、引用文献4には、水下高速航行体に分流装置(4)(周方向溝)を設けることが記載され、引用文献5には、船体に多数の窪み(ディンプル)を設けることが記載されているが、相違点2に係る本願発明1の構成に相当する事項は記載されておらず、示唆されていないところ、本願発明3,4も、本願発明1の全ての構成を有し、更に限定するものであるから、上記1(2)で説示したのと同様に、本願発明3は、引用発明1及び引用文献2、3、6?8で例示される周知技術に基いて容易に発明することができたものであるとはいえず、本願発明4は、引用発明1,引用文献4に記載された事項及び引用文献6?8で例示された周知技術に基いて容易に発明することができたものであるとはいえない。

第7 原査定について
第6に説示したとおり、本願発明1,2は、引用文献1に記載された発明とはいえず、当業者であっても、本願発明1、2は、引用文献1に記載された発明及び引用文献6?8で例示される周知技術に基いて容易に発明することができたものであるとはいえず、本願発明3は、引用発明1及び引用文献2、3、6?8で例示される周知技術に基いて容易に発明することができたものであるとはいえず、本願発明4は、引用発明1,引用文献4に記載された事項及び引用文献6?8で例示された周知技術に基いて容易に発明することができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の拒絶理由は維持できない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-08-24 
出願番号 特願2016-226432(P2016-226432)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (B63C)
P 1 8・ 121- WY (B63C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 成彦  
特許庁審判長 一ノ瀬 覚
特許庁審判官 八木 誠
出口 昌哉
発明の名称 水中航走体  
代理人 誠真IP特許業務法人  
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