ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
---|---|
管理番号 | 1377518 |
審判番号 | 不服2020-13208 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-09-23 |
確定日 | 2021-09-02 |
事件の表示 | 特願2018-183071号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月20日出願公開、特開2018-199028号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年12月9日に出願した特願2015-239977号の一部を平成30年9月28日に新たな特許出願(特願2018-183071号)としたものであって、平成30年10月26日に手続補正書が提出され、令和1年6月14日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月7日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月6日付けで最後の拒絶の理由が通知され、令和2年2月10日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年6月26日付け(送達日:同年7月7日)で、同年2月10日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、同年9月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、令和3年3月23日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月19日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 この出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年5月19日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(A?Jについては、発明特定事項を分説するため当審で付した。)。 「A 基板と、当該基板と接続されるケーブルと、を備えた遊技機において、 B 左右方向の一方を回動軸とし他方を開放側として支持部に開閉可能に支持される前面開閉部を備え、 C 前記ケーブルは、前記基板に接続するケーブル側コネクタと複数本のコードで構成され、当該複数本のコードの少なくとも一部に、当該ケーブル側コネクタの向きを特定する判別情報が付され、 D 複数の前記ケーブルにおいて、前記判別情報はそれぞれ異なり、 E 前記基板には、前記ケーブル側コネクタが接続される基板側コネクタが、前記左右方向に複数の接点が並ぶ向きで配設され、 F 前記判別情報が付されたコードは、前記ケーブル側コネクタが前記基板側コネクタに接続されたときに当該基板側コネクタの端部のうちの前記開放側の端部に位置するように、当該ケーブル側コネクタに接続され、 G 複数の前記ケーブルは、前記判別情報として第1の判別情報が付されたコードを有する第1のケーブルと、前記判別情報として当該第1の判別情報とは異なる第2の判別情報が付されたコードを有する第2のケーブルと、を含み、 H 前記基板側コネクタには、前記第1のケーブルのケーブル側コネクタが接続される第1の基板側コネクタと、前記第2のケーブルのケーブル側コネクタが接続される第2の基板側コネクタと、があり、 I 前記第1の基板側コネクタには前記第1の判別情報と同一の判別情報が付されるとともに、前記第2の基板側コネクタには前記第2の判別情報と同一の判別情報が付される J ことを特徴とする遊技機。」 第3 拒絶の理由 令和3年3月23日付けで当審が通知した拒絶理由は、概略、次のとおりのものである。 本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献:特開2001-178940号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 引用文献には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。 1 「【0014】また、請求項11の発明においては、前記複数の制御基板のうちの所定の制御基板に接続され、複数の配線の端部に取り付けられるコネクタを有するハーネスを備え、該ハーネスは、前記所定の制御基板が接続先である旨を示唆する示唆手段を有するハーネスを含むことを特徴とする。このように構成することにより、制御基板毎の接続配線(ハーネス)が容易に判別できるので、遊技機の組み付け時及びメンテナンス時において、誤った配線接続を行うのを回避することができ、然も配線接続の作業効率を高めることができる。」 2 「【0016】図1及び図2において、弾球遊技機1は、縦長な方形状に枠組み形成される外枠2と、該外枠2の一側に開閉自在に軸支され且つ弾球遊技機1の主要構成部のほぼすべてが集約して設けられる前面枠3と、該前面枠3の前面上部に開閉自在に設けられるガラス板保持枠4とから構成されている。また、前面枠3に設けられる主要構成部としては、上記したガラス板保持枠4、遊技盤40、上皿19、灰皿29を含む下皿27、操作ハンドル30、機構板150、打球発射装置124がある。また、図示の実施形態では、弾球遊技機1の側方に遊技者に遊技玉を貸し出すためのカードユニット装置31が付設されている。」 3 「【0047】また、主基板ボックス110の上部には、コネクタ接続領域が開放されており、そのコネクタ接続領域に臨む主基板120のコネクタ実装領域には、複数の基板側コネクタ116a?116fが実装されている。本実施形態においては、6つの基板側コネクタ116a?116fが実装されるが、図3に示すように、図示左側上段の基板側コネクタ116aに電飾制御基板87からの配線91が接続され、図示中央上段の基板側コネクタ116bに前記表示制御基板71からの配線が接続され、図示右側上段の基板側コネクタ116cに効果音制御基板95からの配線99が接続され、図示右側下段の基板側コネクタ116dに後述する払出制御基板191からの配線が接続され、図示中央下段の基板側コネクタ116eに後述するサンパック中継基板189からの配線が接続され、図示左側下段の基板側コネクタ116fに前記中継基板73a及び情報端子基板74からの配線が接続されている。また、主基板ボックス110には、その上端中央に前記係止爪82と係止する係止部117が切り欠き形成され、その下端中央に前記係合穴85に嵌合する係合突片118が突設されている。」 4 「【0107】次に、上記した各基板間を接続する配線について図12及び図13を参照して説明する。先ず、配線の基本構造は、図12に示すように、配線束201の両端にコネクタ202を備えたハーネス200として構成されている。配線束201は、同一色の複数の配線201aと、該配線201aと色が異なる1本の配線201b、からなる。1本の配線201bは、配線束201の一側端に配置されており、これによってコネクタ202の左右が一目で判別できるようになっている。また、配線束201の両端を除いた部分は、透明合成樹脂(軟質塩化ビニル等)からなる円筒形状の保護管203によって結束されており、これによって配線201a,201bが配線束201としてまとめられると共に、外部から保護されるようになっている。なお、本実施形態では、保護管203を透明なものとすることで、配線束201の結束部分が外部から視認可能となっており、配線201a,201bへの不正が防止できるようになっているが、必ずしも保護管203を透明なものにする必要はない。一方、コネクタ202には、配線201a,201bの接続用のコネクタピン204と、コネクタ202の嵌合相手先のコネクタに穿設される溝(図示しない)に嵌合する左右一対の位置決め突起205a,205bと、が設けられている。そして、この位置決め突起205a,205bは、片面にのみ設けられ、接続先であるコネクタ(受け側)の位置決め部に対応するように形成されることで、コネクタ202の左右入れ違いを防止するようになっている。なお、上記した配線束201の一側端に配置される配線201bとは、コネクタ202に複数並設されるコネクタピン204のうち端部に配置されるコネクタピン204が接続される配線のことであり、例えば、コネクタピン204が1番から16番まで計16個設けられる場合、配線201bは、1番のコネクタピン204に接続されるものであってもいいし、あるいは16番(最終番)のコネクタピン204に接続されるものであってもいい。」 5 「【0108】ところで、上記した配線201a,201bは、それぞれ接続する基板に応じて設定色が異なっている。具体的には、図13の一覧表図(A-B間配線色1)に示す通りである。電飾制御基板87において、電飾中継基板221、中継基板73b、電源ユニット基板(図13中には、電源生成基板と記載)160、及び主基板120が接続される配線201a(配線201b)は、それぞれ赤色(1本のみ白色)に設定されている。効果音制御基板95において、効果音中継基板222、電源ユニット基板160、及び主基板120が接続される配線201a(配線201b)は、それぞれ黄色(1本のみ白色)に設定されている。・・・」 6 「【0109】また、上記した接続先となる制御基板に応じた配線色の設定において、ハーネス200を構成するコネクタ202の色、及びそのコネクタ202の接続相手となる制御基板側のコネクタの色も配線201aと同一の色に設定されている。具体的には、例えば、電飾制御基板87と電飾中継基板221を接続するハーネス200のコネクタ202及び該コネクタ202が接続される電飾制御基板87のコネクタ87bの色は、それぞれ配線色と同一の赤色に設定され、効果音制御基板95と効果音中継基板222を接続するハーネス200のコネクタ202及び該コネクタ202が接続される効果音制御基板95のコネクタ95bの色は、それぞれ配線色と同一の黄色に設定されている。なお、本実施形態では、ハーネス200を構成する配線201aとコネクタ202の色を、それぞれ接続先の制御基板に応じた同一色に設定しているが、完全なる同一色ではなく同系色に設定してもよい。また、コネクタ全体を配線色に合わせてもよいしコネクタの一部分のみを配線色に合わせてもよい。さらには、配線201aのみを接続先の制御基板に応じた色に設定してもよい。また、前述したようにコネクタ202の左右判別用として1本の配線201bのみを他の配線201aと異ならせているが、必ずしも左右判別用の配線201bを設ける必要はなく、図13中のA-B間配線色2に示すように、全て同一の配線色に統一してもよい。」 7 「【図6】 」 8 【0047】には、「主基板120のコネクタ実装領域には、複数の基板側コネクタ116a?116fが実装されている」と記載されている。 また、図6から、基板側コネクタ116aと基板側コネクタ116cは、横向きに実装されていることが看取できる。 以上のことから、引用文献には、「主基板120のコネクタ実装領域には、基板側コネクタ116a及び基板側コネクタ116cが横向きに実装されている」ことが示されていると認められる。 9 上記1ないし8からみて、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「主基板120と、主基板120に接続される配線91、99と、を備えた弾球遊技機1において(【0016】、【0047】、【0107】、【0108】)、 外枠2と、該外枠2の一側に開閉自在に軸支される前面枠3を備え(【0016】)、 配線91、99は、配線束201の両端にコネクタ202を備えたハーネス200として構成され、配線束201は、同一色の複数の配線201aと、該配線201aと色が異なる1本の配線201b、からなり、1本の配線201bは、配線束201の一側端に配置されており、これによってコネクタ202の左右が一目で判別できるようになっているものであり(【0047】、【0107】)、 主基板120のコネクタ実装領域には、基板側コネクタ116a及び基板側コネクタ116cが横向きに実装され(認定事項8)、 配線201aは、それぞれ接続する基板に応じて設定色が異なっており、電飾制御基板87において、主基板120が接続される配線201a(配線201b)は、赤色(1本のみ白色)に設定され、効果音制御基板95において、主基板120が接続される配線201a(配線201b)は、黄色(1本のみ白色)に設定されており(【0108】)、 基板側コネクタ116aに電飾制御基板87からの配線91が接続され、基板側コネクタ116cに効果音制御基板95からの配線99が接続され、 接続先となる制御基板に応じた配線色の設定において、ハーネス200を構成するコネクタ202の色、及びそのコネクタ202の接続相手となる制御基板側のコネクタの色も配線201aと同一の色に設定されている(【0047】、【0109】) 弾球遊技機1(【0016】)。」 第5 対比 本願発明と引用発明とを対比する。なお、以下の見出し(a)ないし(j)は、本願発明の構成AないしJに対応させている。 (a)引用発明の「主基板120」、「配線91、99」及び「弾球遊技機1」は、それぞれ、本願発明の構成Aの「基板」、「ケーブル」及び「遊技機」に相当する。 よって、引用発明は、本願発明の構成Aを備えている。 (b)引用発明の「前面枠3」は、本願発明の「前面開閉部」に相当する。 また、引用発明の「外枠2の一側」は、「前面枠3」を「開閉自在に軸支」するから、本願発明の「支持部」に相当する。 よって、引用発明は、本願発明の構成Bを備えている。 (c)引用発明の「コネクタ202」は、「配線91、99」に備えられ、「制御基板側のコネクタ」を「接続相手」とするものであるから、本願発明の構成Cの「前記基板に接続するケーブル側コネクタ」に相当する。 そして、引用発明の「同一色の複数の配線201aと、該配線201aと色が異なる1本の配線201b、からな」る「配線束201」は、本願発明の構成Cの「複数本のコード」に相当する。 ここで、引用発明において、「配線束201は、同一色の複数の配線201aと、該配線201aと色が異なる1本の配線201b、からなり、1本の配線201bは、配線束201の一側端に配置されて」いることから、「配線201a」は、「配線201b」に対して「配線束201」の他側端に配置されているといえるところ、「同一色の複数の」「配線201aと色が異なる1本の配線201bは、配線束201の一側端に配置されており、これによってコネクタ202の左右が一目で判別できるようになっている」のであるから、他側端に配置されている「同一色の複数の」「配線201a」も「1本の配線201b」と「色が異なる」ことによって「コネクタ202の左右が一目で判別できる」ものといえる。 したがって、引用発明の「同一色の複数の配線201a」の「色」は、本願発明の構成Cの「複数本のコードの少なくとも一部に」「付され」、「当該ケーブル側コネクタの向きを特定する」「判別情報」に相当する。 よって、引用発明、本願発明の構成Cを備えている。 (d、g)引用発明の「基板側コネクタ116aに電飾制御基板87からの配線91が接続され」ることから、「配線91」は「電飾制御基板87」に接続されるものであって、「電飾制御基板87において、主基板120が接続される」「赤色」「に設定され」た「配線201a」を含むものである。 同様に、「基板側コネクタ116cに効果音制御基板95からの配線99が接続され」ることから、「配線99」は「効果音制御基板95」に接続されるものであって、「効果音制御基板95において、主基板120が接続される」「黄色」「に設定され」た「配線201a」を含むものである。 そして、引用発明の「電飾制御基板87において、主基板120が接続される配線201aは、赤色に設定され、効果音制御基板95において、主基板120が接続される配線201aは、黄色に設定され」ることから、引用発明の「赤色」、「黄色」は、それぞれ、本願発明の構成Gの「第1の判別情報」、「第2の判別情報」に相当し、引用発明の「電飾制御基板87において、主基板120が接続される」「赤色に設定され」た「配線201a」を含む「配線91」、「効果音制御基板95において、主基板120が接続される」「黄色に設定され」た「配線201a」を含む「配線99」は、それぞれ、本願発明の構成Gの「第1の判別情報が付されたコードを有する第1のケーブル」、「第2の判別情報が付されたコードを有する第2のケーブル」に相当する。 また、引用発明は、「赤色に設定され」た「配線201a」を含む「配線91」と、「黄色に設定され」た「配線201a」を含む「配線99」を備えることから、引用発明は、本願発明の構成Dの「複数の前記ケーブルにおいて、前記判別情報はそれぞれ異な」る構成を備えている。 よって、引用発明は、本願発明の構成D、Gを備えている。 (e)引用発明の「基板側コネクタ116a」には「配線91が接続され」ることから、「配線91」の「コネクタ202」が接続されることは明らかである。 同様に、引用発明の「基板側コネクタ116c」には「配線99が接続され」ることから、「配線99」の「コネクタ202」が接続されることは明らかである。 そして、引用発明の「基板側コネクタ116a及び基板側コネクタ116c」は、「主基板120のコネクタ実装領域に」「横向きに実装され」、「配線束201」の「コネクタ202」が接続されることから、「左右方向に複数の接点が並ぶ向きで配設され」ていることは明らかである。 よって、引用発明は、本願発明の構成Eを備えている。 (h、i)上記(d、g)より、引用発明の「電飾制御基板87において、主基板120が接続される」「赤色に設定され」た「配線201a」を含む「配線91」、「効果音制御基板95において、主基板120が接続される」「黄色に設定され」た「配線201a」を含む「配線99」は、それぞれ、本願発明の「第1のケーブル」、「第2のケーブル」に相当するから、引用発明の「電飾制御基板87からの配線91が接続され」る「基板側コネクタ116a」、「効果音制御基板95からの配線99が接続され」る「基板側コネクタ116c」は、それぞれ、本願発明の構成Hの「第1の基板側コネクタ」、「第2の基板側コネクタ」に相当する。 そして、上記(d、g)より、引用発明の「赤色」、「黄色」は、それぞれ、本願発明の「第1の判別情報」、「第2の判別情報」に相当し、引用発明の「接続先となる制御基板に応じた配線色の設定において、ハーネス200を構成するコネクタ202の色、及びそのコネクタ202の接続相手となる制御基板側のコネクタの色も配線201aと同一の色に設定されている」ことから、引用発明は、本願発明の構成Iの「前記第1の基板側コネクタには前記第1の判別情報と同一の判別情報が付されるとともに、前記第2の基板側コネクタには前記第2の判別情報と同一の判別情報が付される」構成を備えている。 よって、引用発明は、本願発明の構成H、Iを備えている。 (j)引用発明の「弾球遊技機1」は、本願発明の「遊技機」に相当する。 よって、引用発明は、本願発明の構成Jを備えている。 以上のことから、本願発明と引用発明は、 「A 基板と、当該基板と接続されるケーブルと、を備えた遊技機において、 B 左右方向の一方を回動軸とし他方を開放側として支持部に開閉可能に支持される前面開閉部を備え、 C 前記ケーブルは、前記基板に接続するケーブル側コネクタと複数本のコードで構成され、当該複数本のコードの少なくとも一部に、当該ケーブル側コネクタの向きを特定する判別情報が付され、 D 複数の前記ケーブルにおいて、前記判別情報はそれぞれ異なり、 E 前記基板には、前記ケーブル側コネクタが接続される基板側コネクタが、前記左右方向に複数の接点が並ぶ向きで配設され、 G 複数の前記ケーブルは、前記判別情報として第1の判別情報が付されたコードを有する第1のケーブルと、前記判別情報として当該第1の判別情報とは異なる第2の判別情報が付されたコードを有する第2のケーブルと、を含み、 H 前記基板側コネクタには、前記第1のケーブルのケーブル側コネクタが接続される第1の基板側コネクタと、前記第2のケーブルのケーブル側コネクタが接続される第2の基板側コネクタと、があり、 I 前記第1の基板側コネクタには前記第1の判別情報と同一の判別情報が付されるとともに、前記第2の基板側コネクタには前記第2の判別情報と同一の判別情報が付される J ことを特徴とする遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点](構成F) 本願発明は、「前記判別情報が付されたコードは、前記ケーブル側コネクタが前記基板側コネクタに接続されたときに当該基板側コネクタの端部のうちの前記開放側の端部に位置するように、当該ケーブル側コネクタに接続され」るのに対し、 引用発明の「配線201a」は、「コネクタ202」が「基板側コネクタ116a」または「基板側コネクタ116c」に接続したときに、「基板側コネクタ116a」または「基板側コネクタ116c」のどちら側の端部に位置するように、「コネクタ202」に接続されるのか特定されていない点。 第6 判断 1 相違点について 上記相違点について検討する。 引用発明は「1本の配線201b」と「色が異なる」「配線201a」を「配線束201」の端部に配置するものであり、この構成を備えることにより「コネクタ202の左右が一目で判別できる」ものであるから、引用発明のコネクタ202が基板側コネクタ116aまたは基板側コネクタ116cに接続されたときに、配線201aが、基板側コネクタ116aまたは基板側コネクタ116cの端部のうちの、前面枠3の開放側の端部に位置するようにコネクタ202に接続させるか、回動軸側の端部に位置するようにコネクタ202に接続させるかは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。 よって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の構成のようにすることは、当業者が容易になし得たことである。 以上のことから、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明し得たものである。 2 請求人の主張について 請求人は、令和3年5月19日提出の意見書の「4.本願発明が特許されるべき理由」において、 「そのような環境下において、本願発明の場合、判別情報が付されたコードが、前面開閉部の開放側、すなわち作業者から見やすい手前側に位置するので、判別情報が付されていないコードに隠れることがなく、これらの作業を行う際に判別情報が付されたコードが見やすくなり、作業効率が向上します。」 「そのような制限ある環境下において、本願発明に係る遊技機は、前面開閉部の開放側から基板を観察すれば、当該基板に接続される複数のケーブルそれぞれにおいて、判別情報が付されていないコードに隠れることなく判別情報が付されたコードが手前側に臨みます。これにより、遊技場の作業者は、前面開閉部の開放側の限られた間隙から観察して複数のケーブル側コネクタの接続確認を行うことができます。」と述べている。 請求人の上記主張は、判別情報が付されたコードが1本(または少数本)で、判別情報が付されていないコードが多数本であることを前提とした上での本願発明の効果と認められるが、本願発明は「当該複数本のコードの少なくとも一部に、当該ケーブル側コネクタの向きを特定する判別情報が付され」ているものであり、判別情報が付されたコードが1本(または少数本)で、判別情報が付されていないコードが多数本であることに限定されていないので、上記主張における効果は、本願発明の効果とはいえない。 加えて、引用発明の赤色又は黄色の「配線201a」(本願発明の「判別情報が付されたコード」に相当する。)は、「配線束201」のうち白色の「1本の配線201b」以外のもの(多数本)であるから、基板側コネクタに接続されたときに当該基板側コネクタの端部のうちの開放側の端部に位置するように接続されているか否かに関わらず、前面開閉部の開放側の限られた間隙からの接続作業及び接続確認において、判別情報が付されていないコード(白色の1本の配線)に隠れることなく、判別情報が付されたコード(赤色又は黄色の多数本の配線)が見やすいことは明らかであり、引用発明は、上記主張の効果を奏し得るものである。 また、請求人は、同意見書において、 「すなわち、本願発明は、構成〔A〕と構成〔B〕とを有することによって、前面開閉部を開放して作業を行う際に、「ケーブルに関する作業(接続作業や接続確認作業)の作業性に優れる」という効果を奏するものであり、これによって、引用文献1には開示されていない新規な課題(遊技場設置環境下における複数のケーブルの接続確認が困難であるという課題)を解決するものであります。」と述べている。 しかしながら、引用発明は「接続先となる制御基板に応じた配線色の設定において、ハーネス200を構成するコネクタ202の色、及びそのコネクタ202の接続相手となる制御基板側のコネクタの色も配線201aと同一の色に設定されている」ものであり、このように構成することにより、「遊技機の組み付け時及びメンテナンス時において、誤った配線接続を行うのを回避することができ、然も配線接続の作業効率を高めることができる」(上記「第4 1」)ものであって、「メンテナンス時」という遊技場設置環境下における作業性も考慮されていることは明らかであるから、請求人の主張する課題及び効果は新規なものであるとはいえない。よって、請求人の主張は採用できない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-06-22 |
結審通知日 | 2021-06-29 |
審決日 | 2021-07-13 |
出願番号 | 特願2018-183071(P2018-183071) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A63F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩永 寛道、東松 修太郎 |
特許庁審判長 |
伊藤 昌哉 |
特許庁審判官 |
北川 創 蔵野 いづみ |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 荒船 良男 |
代理人 | 特許業務法人光陽国際特許事務所 |