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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01D
管理番号 1377522
審判番号 不服2020-16040  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-20 
確定日 2021-09-02 
事件の表示 特願2017-547703「磁気検出装置及び移動体検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月 4日国際公開、WO2017/073280〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)10月5日(優先権主張 2015年(平成27年)10月29日)を国際出願日とする日本語特許出願であって、その後の手続の概要は、次のとおりである。
令和 2年 4月 7日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 6月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年10月 6日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(原査定の謄本の送達日:令和2年10月13日)
令和 2年11月20日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 令和2年11月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年11月20日にされた手続補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載
令和2年11月20日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正を含むものであって、本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所を示す。)

「 【請求項1】
磁気検出装置と、
前記磁気検出装置に対して相対移動する移動体と、を備え、
前記磁気検出装置は、
磁界発生導体と、
前記磁界発生導体に交番磁界を発生させるための周波数Fsの信号を印加する信号印加部と、
前記磁界発生導体の発生する磁界が印加される磁気センサと、を有し、
前記移動体は、少なくとも1つの凸部又は凹部を有し、前記磁気検出装置との対向距離が自身の相対移動によって周波数Fcで変化し、
前記周波数Fsと前記周波数Fcとの間に、Fs≧2×Fcの関係があり、
前記磁気検出装置は、前記磁気センサの出力信号を前記信号印加部の前記周波数Fsの信号により同期検波する同期検波部を有する、移動体検出装置。
【請求項2】
磁気検出装置と、
前記磁気検出装置に対して相対移動する移動体と、を備え、
前記磁気検出装置は、
磁界発生導体と、
前記磁界発生導体に交番磁界を発生させるための周波数Fsの信号を印加する信号印加部と、
前記磁界発生導体の発生する磁界が印加される磁気センサと、を有し、
前記移動体は、相互に導電率又は透磁率が異なる第1及び第2の部分を有し、前記磁気検出装置と対面する部分の導電率又は透磁率が自身の相対移動によって周波数Fcで変化し、
前記周波数Fsと前記周波数Fcとの間に、Fs≧2×Fcの関係があり、
前記磁気検出装置は、前記磁気センサの出力信号を前記信号印加部の前記周波数Fsの信号により同期検波する同期検波部を有する、移動体検出装置。
【請求項3】
前記磁界発生導体が、前記磁気センサの周囲を周回するコイルである、請求項1又は2に記載の移動体検出装置。
【請求項4】
前記移動体の相対移動により前記移動体に渦電流が発生し、前記渦電流の変化による磁界変化を前記磁気センサで検出する、請求項1から3のいずれか一項に記載の移動体検出装置。
【請求項5】
前記移動体が回転体であり、前記相対移動が回転である、請求項1から4のいずれか一項に記載の移動体検出装置。
【請求項6】
前記移動体が直線移動体であり、前記相対移動が直線移動である、請求項1から4のいずれか一項に記載の移動体検出装置。
【請求項7】
前記移動体は、回転体であり、自身の回転によって前記磁気検出装置と対向し得る位置に、自身の軸方向一方側の面と反対面との間を貫通する少なくとも1つの貫通孔を有し、
前記磁気検出装置は、前記回転体の前記軸方向一方側の面と対向し、
前記磁界発生導体は、前記磁気センサの周囲を周回するコイルであって、前記コイルの軸方向が前記回転体の前記軸方向と平行である、請求項1に記載の移動体検出装置。
【請求項8】
前記移動体は、直線移動体であり、自身の相対移動によって前記磁気検出装置と対向し得る位置に、自身の一方の面と反対面との間を貫通する少なくとも1つの貫通孔を有し、
前記磁気検出装置は、前記直線移動体の前記一方の面と対向する、請求項1に記載の移動体検出装置。」

(2) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和2年6月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。

「 【請求項1】
移動体の相対移動による磁界変化を検出する磁気検出装置であって、
磁界発生導体と、
前記磁界発生導体に交番磁界を発生させるための信号を印加する信号印加部と、
前記磁界発生導体の発生する磁界が印加される磁気センサと、
前記磁気センサの出力信号を前記信号印加部の前記信号により同期検波する同期検波部と、を備える、磁気検出装置。
【請求項2】
前記磁界発生導体がコイルである、請求項1に記載の磁気検出装置。
【請求項3】
磁気検出装置と、
前記磁気検出装置に対して相対移動する移動体と、を備え、
前記磁気検出装置は、
磁界発生導体と、
前記磁界発生導体に交番磁界を発生させるための信号を印加する信号印加部と、
前記磁界発生導体の発生する磁界が印加される磁気センサと、
前記磁気センサの出力信号を前記信号印加部の前記信号により同期検波する同期検波部と、を有する、移動体検出装置。
【請求項4】
前記移動体は、相互に導電率又は透磁率が異なる第1及び第2の部分を有し、前記磁気検出装置と対面する部分の導電率又は透磁率が自身の相対移動によって変化する、請求項3に記載の移動体検出装置。
【請求項5】
前記信号印加部の前記信号の周波数は、前記移動体の前記磁気検出装置と対面する部分の導電率又は透磁率の変動周波数以上の周波数である、請求項4に記載の移動体検出装置。
【請求項6】
前記移動体は、少なくとも1つの凸部又は凹部を有し、前記磁気検出装置との対向距離が自身の相対移動によって変化する、請求項3に記載の移動体検出装置。
【請求項7】
前記信号印加部の前記信号の周波数は、前記移動体と前記磁気検出装置との対向距離の変動周波数以上の周波数である、請求項6に記載の移動体検出装置。
【請求項8】
前記磁界発生導体が、前記磁気センサの周囲を周回するコイルである、請求項3から7のいずれか一項に記載の移動体検出装置。
【請求項9】
前記移動体の相対移動により前記移動体に渦電流が発生し、前記渦電流の変化による磁界変化を前記磁気センサで検出する、請求項3から8のいずれか一項に記載の移動体検出装置。
【請求項10】
前記移動体が回転体であり、前記相対移動が回転である、請求項3から9のいずれか一項に記載の移動体検出装置。
【請求項11】
前記移動体が直線移動体であり、前記相対移動が直線移動である、請求項3から9のいずれか一項に記載の移動体検出装置。
【請求項12】
前記移動体は、回転体であり、自身の回転によって前記磁気検出装置と対向し得る位置に、自身の軸方向一方側の面と反対面との間を貫通する少なくとも1つの貫通孔を有し、
前記磁気検出装置は、前記回転体の前記軸方向一方側の面と対向し、
前記磁界発生導体は、前記磁気センサの周囲を周回するコイルであって、前記コイルの軸方向が前記回転体の前記軸方向と平行である、請求項3に記載の移動体検出装置。
【請求項13】
前記移動体は、直線移動体であり、自身の相対移動によって前記磁気検出装置と対向し得る位置に、自身の一方の面と反対面との間を貫通する少なくとも1つの貫通孔を有し、
前記磁気検出装置は、前記直線移動体の前記一方の面と対向する、請求項3に記載の移動体検出装置。」

2 補正の適否
(1) 本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1及び2を削除して、本件補正前の請求項3を請求項1に繰り上げるとともに、次の補正をしている。
ア 「移動体」について、「少なくとも1つの凸部又は凹部を有し、前記磁気検出装置との対向距離が自身の相対移動によって周波数Fcで変化」することを限定する補正。
イ 「同期検波部」が「前記磁気センサの出力信号を前記信号印加部の前記信号により同期検波する」ことについて、「前記信号印加部の前記信号」が「前記信号印加部の前記周波数Fsの信号」であることを限定するとともに、「前記周波数Fsと前記周波数Fcとの間に、Fs≧2×Fcの関係」があることを限定する補正。

そして、補正前の請求項3に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正のうち、補正後の請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、次に、本件補正後の請求項1に記載される事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、検討する。

(2) 独立特許要件について
ア 本件補正発明
本件補正発明は、本件補正後の請求項1に記載した事項により特定されるとおりのものである(前記1(1)参照)。

イ 各引用文献の記載事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1
a 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物である、特開2005-265790号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。なお、下線は、当審が付したものであり、後述の引用発明の認定に直接用いるところに付してある。

「【0010】
本発明は、MI素子を利用したセンサにより、非磁性導体からなる回転体の回転数、回転速度、位置ズレ等を、その回転体に磁性物質を取り付けたり、蒸着したりすることなく、そのままの形態で高感度に求めることができるようにし、かつ、そのセンサを小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明は、非磁性導体からなる回転体の回転数、回転速度又は位置を検出する回転体検出センサであって、
回転体を励磁する励磁コイル、
励磁コイルにより回転体に生じた渦電流反磁界による磁束変化を検出する磁気インピーダンス素子、及び
磁気インピーダンス素子により検出された信号を処理する演算回路
を備えた回転体検出センサを提供する。
【0012】
本発明の回転体検出センサによれば、MI素子と励磁コイルを組み合わせて回転体を検出するので、センサを高感度に、かつ小型化することが可能となる。例えば、従来の磁気抵抗素子の感度が1ガウス程度であるのに対し、10^(-6)ガウス程度の高感度とし、かつ演算回路部分を除いたセンサの端子部分を縦横数mmないしそれ以下の寸法に小型化することができる。
【0013】
したがって、本発明の回転体検出センサは、ギアの歯、タービンの羽根等の回転数や回転速度の測定、回転している歯や羽根の位置ズレの検出、ブレーキデスクの面振れの検出、クランクシャフトのギャップ状態の計測、その他非磁性導体からなる種々の回転体の計測に使用することができる。」
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0015】
図1は、本発明の一実施例の回転体検出センサ20Aの概念図である。この回転体検出センサ20Aは、励磁コイル21、MI素子22、発振回路23、及び演算回路24からなり、概略、励磁コイル21とMI素子22とで先端端子部25を構成している。MI素子22は、その外部磁場感知方向(長手方向)が励磁コイル21の軸に対して垂直に配置されており、また、回転体のMI素子22に対する近接面3(即ち、回転体1の羽根2等の測定面がこのセンサ20Aに近接した状態におけるその測定面)に対して水平となるように配置されて使用される。このように励磁コイル21とMI素子22とを配置することにより、ノイズを低減し、リフトオフを大きくした場合の信号の低下を抑制することができる。」

「【0023】
励磁コイル21には、発振回路27により交流正弦波電圧を印加する。図1の態様でも図2の態様でも、励磁コイル21への印加電圧を上げることによりMI素子22で検出される信号の変化分を大きくし、ノイズ比を低下させることができる。
【0024】
この回転体検出センサ20Aの好ましい使用方法としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス又はこれらの合金等の非磁性導体からなる回転体1の近接面3から数ミリ離れた位置に、MI素子22を、その外部磁場感知方向が回転体1の近接面3に水平になるように配置する。このとき、MI素子22の外部磁場感知方向と励磁コイル21の軸とは垂直となる。発振回路23によってMI素子22に高周波電流を流すと、MI素子22は表皮効果により高感度の磁気検出状態となる。この状態において回転体1が回転し、羽根2の先端部分が励磁コイル21に接近してくると、羽根2の先端部に渦電流が生じ、その渦電流が次第に増加する。逆に、羽根2の先端部分が遠ざかると、渦電流は次第に減少し、最後に励磁電流の影響分のみが残る。
【0025】
そこで、演算回路24では、この渦電流によるMI素子22のインピーダンスの変化量を信号として取り出す。より具体的には、まず、図1の保持回路24-1で信号を保持し、増幅回路24-2で増幅し、その信号の変化をオシロスコープ等のモニターに出力するか、あるいはA/D変換回路等に出力する。そして、回転体1の回転数を求めるには、カウンタ回路等で計算処理を行い、羽根2の回転速度を求めるには、回転数を速度に変換する計算処理を行い、また、位置ズレや位置ブレを求めるには、リフトオフ値の変化量を計算処理する。
【0026】
図3は、回転体検出センサ20Aのより具体的な使用例として、この回転体検出センサ20Aをターボチャージャー30に設置した状態の概念図である。
【0027】
ターボチャージャー30は、圧縮ホイール31側で吸気した空気を圧縮し、シリンダ(図示せず)に送り込む。シリンダでは、燃料の燃焼熱が加わると内部のガスが高圧になり、その高圧ガスが排ガスとしてタービン羽根32に当たる。これが、ターボチャージャー30に回転運動を起こし、圧縮空気の吸い込み効率がさらに上がる。なお、排ガスは排気管から外部に放出される。
【0028】
このターボチャージャー30において、回転体検出センサ20Aの先端端子部は、できる限り小形に形成し(例えば、直径10mm以下)、流体に影響を与えない箇所であって、圧縮ホイール31側又は排気管側の厚み数ミリ以下のタービン羽根32の先端部32aから0.5?3mm程度の微小距離が離れた位置に設置する。
【0029】
このタービン羽根32の高さ(即ち、根元と先端の距離)及び羽根32と羽根32の間隔は、羽根先端部の面厚の数倍以上ある。タービン羽根の先端部32aが励磁コイル21に接近すると、タービン羽根の先端部32aには渦電流が発生し、その渦電流により反磁界が発生し、励磁コイル21の磁束が変化する。他方、タービン羽根の先端部32aが励磁コイル21から遠ざかると、励磁コイル21の磁束は元に戻る。この磁束の変化をMI素子22で検出し、タービン羽根の先端部32aが励磁コイル21に接近したときと離れたときの信号の間隔から回転数を計測する。なお、このような磁束変化の検出は、AC分のみとしてもよく、DC分を含めて検出してもよい。
【0030】
実施例1
図1の回転体検出センサ20Aを以下に示すように作製し、この回転体検出センサ20Aで図3のターボチャージャー30を種々の条件で測定し、回転体検出センサ20Aの評価試験を行った。
【0031】
ここで、ターボチャージャー30のタービン羽根32はアルミ製である。
【0032】
励磁コイル21としては、銅線を外径3mmに40ターン(1.7Ω)、80ターン(3.4Ω)、120ターン(5.1Ω)、160ターン(6.8Ω)又は200ターン(8.5Ω)巻いたものを使用した。
【0033】
MI素子22は、その外部磁場感知方向が励磁コイル21の軸に垂直となるように取り付けられてり、測定時にはMI素子22を、その外部磁場感知方向がタービン羽根の先端部32aに平行となるように配置した。
【0034】
MI素子22の端子間に10?70kHzの周波数範囲で電流を加え、また、MI素子22と発振回路23を含む回路への印加電圧(以下、回路印加電圧という)として5Vを加え、以下の試験を行った。
【0035】
試験1-1ターボチャージャー30が静止している状態において、タービン羽根の先端部32aとMI素子22とのリフトオフを2.5mm、回路印加電圧を5V(100kHz)、励磁コイル21に印加する電圧を0.3V(60kHz)とした場合の、MI素子22の検出出力をオシロスコープに表示させた。結果を図4に示す。図4に示すように、MI素子22の検出出力は、励磁コイル21の磁気の影響で正弦波となっている。この正弦波の出力波形には、タービン羽根の先端部32aに生じた渦電流による反磁場の影響も含まれている。
【0036】
試験1-2ターボチャージャー30が静止している状態において、回路印加電圧を5V(100kHz)、励磁コイル21に印加する電圧を0.1V(60kHz)とした場合の、リフトオフ(mm)と励磁コイル21のコイルの巻数と出力電圧との関係を図5に示す。同図から、励磁コイル21の巻数が40ターンと80ターンとでは出力差が顕著に異なるが、120ターン以上ではほとんど出力差がないことがわかる。
【0037】
試験1-3ターボチャージャー30が静止している状態において、回路印加電圧を5V(100kHz)、励磁コイル21の巻数を40、80、120、160、200ターン、励磁コイル21に印加する電圧をターン数に応じて0.1、0.2、0.3、0.4、0.5V(60kHz)とした場合の、リフトオフ(mm)と励磁コイル21への印加電圧と出力電圧との関係を図6に示す。同図から、励磁コイル21の巻数の増加に応じて励磁コイル21への印加電圧を上げると出力電圧が高くなること、リフトオフの大小による出力電圧差が大きくなり、信号処理がし易くなることがわかる。また、リフトオフが小さい程、正の方向で値が大きくなる特徴のあることがわかる。
【0038】
試験1-4ターボチャージャー30が静止している状態において、回路印加電圧を5V(100kHz)、励磁コイル21の巻数を200ターン、励磁コイル21に印加する電圧を0.1、0.35、0.7V(60kHz)とした場合の、励磁コイル21への印加電圧と出力電圧とリフトオフ(mm)との関係を図7に示す。同図から、励磁コイル21への印加電圧が高い程、リフトオフの大小による出力電圧差が向上することがわかる。
【0039】
以上により、リフトオフの大小による出力電圧差を大きくするためには、励磁コイル21の巻数を40ターン以上、好ましくは40?400ターンとし、また、励磁コイル21に0.1?1.0Vの適切な電圧を印加すればよいことがわかる。
【0040】
試験1-5リフトオフの大小による出力電位差を大きくするということは、回転体検出センサの感度を向上させることと共通する。そこで、回転体検出センサの感度と相対感度比を次のように定義し、相対感度比を求めた。
【0041】
感度=(現在のリフトオフ(mm)での出力値?リフトオフ10mmでの出力値) 相対感度比=(現在のリフトオフ(mm)での出力値?リフトオフ10mmでの出力値)÷(リフトオフ1mmでの出力値?リフトオフ10mmでの出力値)
【0042】
ターボチャージャー30が静止している状態において、回路印加電圧を5V(60kHz)、励磁コイル21の巻数を120ターン、励磁コイル21に印加する電圧を0.3V(60kHz)とした場合の結果を図8に示す。同図に示すように、リフトオフ距離が1mmのときの感度を基準にした相対感度比は、2mmでは0.52、3mmでは0.24及び4mmでは0.08であり、この傾向は、本実験を繰り返しても変わらなかった。したがって、リフトオフが大きくなると、急激に感度が下がることが確認できた。
【0043】
試験1-6ターボチャージャー30が静止している状態において、回路印加電圧を5V(100kHz)、励磁コイル21の巻数を180ターン、励磁コイル21に印加する電圧を0.3V(60kHz)とした場合の、リフトオフ1mm、2mm、3mm、4mm、5mmでの出力電圧の経時変化を図9に示す。同図から、各リフトオフにおいて、実験開始から6時間経過後の出力電圧の変化は1%以下であり、この回転体検出センサにより十分に安定した測定を行えることが確認できた。
【0044】
試験1-7回路印加電圧を5V(100kHz)、励磁コイル21の巻数を160ターン、励磁コイル21に印加する電圧を0.4V(60kHz)、リフトオフ2mmとし、図3のターボチャージャー30を、50?200rpsでタービン羽根32の頂点が繰り返しMI素子22に近づくように回転させた。ターボチャージャー30を100rpsで回転させた場合の出力電圧の波形を図10に示す。図中、振幅が大きくなっている領域Aは、タービン羽根32がMI素子22に接近していることを表している。
【0045】
試験励1-8 回路印加電圧を5V(100kHz)、励磁コイル21の巻数を160ターン、励磁コイル21に印加する電圧を0.4V(10k?80kHz)、リフトオフ2mmとし、図3のターボチャージャーを100rps?200rpsで回転させた場合の回転数と、回転体検出センサの感度との関係を図11に示す。同図から、ターボチャージャーの回転数によらず、感度が安定していることがわかる。」

【図1】




【図4】




【図10】




b 引用発明の認定
引用文献1の前記aの記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「 回転体検出センサ20Aを設置したターボチャージャー30であって(【0026】)、
頂点が繰り返し磁気インピーダンス素子22に近づくように回転するタービン羽根32(【0044】)、を有し、
ターボチャージャー30において、前記回転体検出センサ20Aの先端端子部は、前記タービン羽根32の先端部32aから微小距離離れた位置に設置され(【0028】)、
前記回転体検出センサ20Aは、励磁コイル21、磁気インピーダンス素子22、発振回路23、及び演算回路24からなり(【0015】)、
前記励磁コイル21には、発振回路27により交流正弦波電圧が印加され(【0023】)、
前記タービン羽根32の根元と先端の距離及び羽根32と羽根32の間隔が、羽根先端部32aの面厚の数倍以上あり(【0029】)、
タービン羽根32の先端部32aが励磁コイル21に接近すると羽根32の先端部32aに渦電流が発生し、その渦電流により反磁界が発生し、励磁コイル21の磁束が変化し、タービン羽根の先端部32aが励磁コイル21から遠ざかると励磁コイル21の磁束は元に戻るという磁束の変化を磁気インピーダンス素子22で検出し、タービン羽根32の先端部32aが励磁コイル21に接近したときと離れたときの信号の間隔から回転数を計測し(【0029】)、
演算回路24は、渦電流による磁気インピーダンス素子のインピーダンスの変化量を信号として取り出す(【0025】)、
ターボチャージャー30。」

(イ) 引用文献2
a 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物である、特開平1-321383号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は、当審が付した。

(2頁右上欄3?8行)
「 一方、磁束密度が一様でない磁界中で導体を移動すると、導体表面にうず電流が発生し、うず電流による誘導磁界ができる(第4図)。この誘電磁界の強さは、導体が移動する空間の磁界強度に比例するから、ある一定の周期で導体を振動させると、同一周期で磁界強度も変化する。
第1図に示す磁気センサは、次のように動作する。チョッパ10の軸12に設けられた圧電素子2に、一定周波数の電圧を駆動回路3から与える。圧電素子2はこの電圧により伸縮し、それに伴って振動部11が振動して直流磁界を交流化する。この交流化された磁界により、コイル4に誘導電圧が発生し、増幅器6で増幅された後、同期検波回路7へ入力される。同期検波回路7では、駆動回路3の出力電圧を同期信号として検波した信号を出力する。この同期検波回路7の出力信号から磁界の強さが測定できる。」

(2頁右下欄5?9行)
「 以上説明したように本発明は、測定対象磁界中にチョッパを振動させ、コイルに鎖交する磁束数を周期的に変化させることによって、コイルを用いて弱直流磁界を容易に測定することが可能となる効果がある。」

第1図




b 引用文献2に記載された技術事項の認定
前記aに摘記した事項を総合すると、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる(以下「引用文献2記載事項」という。)。

[引用文献2記載事項]
「 チョッパ10の軸12に設けられた圧電素子2に一定周波数の電圧を駆動回路3から与えると、圧電素子2はこの電圧により伸縮し、それに伴って振動部11が振動し、磁束密度が一様でない磁界中で導体が移動すると、導体表面にうず電流が発生してうず電流による誘導磁界ができ、この誘導磁界の強さは、ある一定の周期で導体を振動させると同一周期で磁界強度も変化するため直流磁界が交流化され、この交流化された磁界により、コイル4に誘導電圧が発生し、発生した誘導電圧は増幅器6で増幅された後、同期検波回路7へ入力され、同期検波回路7では、駆動回路3の出力電圧を同期信号として検波した信号を出力することで、弱直流磁界を容易に測定することが可能となること。」

(ウ) 引用文献3
a 引用文献3の記載事項
当審が新たに引用する、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物である、「森村正直、山崎弘郎編集、センサ工学、朝倉書店、1982年10月20日」(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。

(34頁17行?35頁7行)





図 4.9 同期検波による信号の処理 (a) ロックインアンプの基本構成




図 4.9 同期検波による信号の処理 (c) ロックインアンプによる微弱光の測定





b 技術常識の認定
前記aに摘記した記載事項に例示されるように、次の事項は、技術常識であると認められる。

[技術常識]
「信号の周波数あるいは周期があらかじめ判明しているときに同期検波によって雑音を除去すること。」

(エ) 引用文献4
a 引用文献4の記載事項
当審が新たに引用する、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物である、特開昭59-065201号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。

(2頁左上欄第2?10行)
「 本発明では、形状検出センサの検出コイルを励磁する発振器の発振周波数を被検材に渦電流を発生されるために必要な高い周波数とし、検出コイルが渦電流の変動を把えるようにし、この検出コイルで検出されたセンサ検出信号に含まれる検出センサと被検材とのギャップ変動を除去するために、信号処理部には、センサ検出信号の同期検波を行なう手段と、この同期検波位相を調整するための位相分離手段とを設けている。」

(2頁左下欄第2?8行)
「 第7図にこの形状検出センサの電気結線図を示す。励磁コイル7は、発振器11により励磁される。検出コイル8と9は差動に接続され、両者の差分を出力するようになっている。これは、両方向の応力差分のみを出力することを意味する。12は増幅器である。発振器11は、渦電流を発生させるに十分な周波数の励磁電流を出力する。」

(2頁右下欄4行?3頁左上欄15行)
「15は同期検波回路を示し、増幅器12の出力を入力として、この入力信号の同期検波を行なって、検波された直流信号を出力する。16は位相回路を示し、基準となる発振器11の出力を入力し、この基準位相をもとに、この位相を調整して同期検波のタイミングを同期検波回路に与える位相分離の機能を有する。17はゲイン調整回路である。第7図において、被検材が形状検出センサ10の設置位置を通過し始めると、検出コイル間の検出信号差(応力差に対応する。)を増幅器12に出力する。この検出信号は微弱であり、また検出コイルの間の電気的アンバランスや、設置状態によるオフセットエラーなどのノイズを含む。増幅器12には、自動バランス回路14の信号が入力され、被検材の応力差が零の状態で増幅器出力が零となるようになっている。自動バランス回路14は、発振器11の出力である交流信号を入力し、この信号の移相とゲイン調整を増幅器出力を用いて行ない、移相とゲイン調整された信号(交流信号)を増幅器12に与え、検出コイルからの信号に含まれるノイズを打消す。バランス後の信号は、かなりノイズ分の除去が行なわれているけれども、ギャップ変動等のノイズがまだ含まれている。バランス後の信号は、同期増幅器13に与えられ、ここで基本波にかかる信号成分のみが取出される。この基本波信号成分は同期検波回路15に入力され、ここで同期検波される。この同期検波は、位相回路の出力に依存する。位相回路16は、応力差に基づく信号のみを取出し、被検材と形状検出センサとの間のギャップ変動によるノイズ分を分離する位相分離手段である。」

b 周知技術の認定
前記aに摘記した記載事項に例示されるように、以下の事項を本願の優先日前における周知技術として認定できる。

[周知技術]
「検出コイルを励磁する発振器の発振周波数を被検材に渦電流を発生されるために必要な高い周波数として、検出コイルが渦電流の変動を把えるようにし、信号処理部で検出コイルの検出信号を同期検波するセンサにおいて、基準となる発振器の出力を位相回路に入力し、位相回路でこの基準位相をもとに、この位相を調整して同期検波のタイミングを同期検波回路に与え、検出信号差に基づく信号のみを取出し、ノイズ分を分離すること。」

ウ 本件補正発明と引用発明の対比
(ア) 引用発明における「励磁コイル21」は、本件補正発明における「磁界発生導体」に相当する。
また、前記「励磁コイル21」には、「発振回路27」により「交流正弦波電圧が印加」されているところ、この「交流正弦波電圧」は正弦波であり、所定周波数で振動することは明らかである。そして、「交番磁界」は導体に交流電流を流したときにできる磁界であるから、「励磁コイル21」に「交番磁界」が発生することも明らかである。これらの点を踏まえると、「前記励磁コイル21」に「交流正弦波電圧」を「印加」する、「発振回路27」は、本件補正発明における、「磁気検出装置」が有する「前記磁界発生導体に交番磁界を発生させるための周波数Fsの信号を印加する信号印加部」に相当する。
そして、引用発明の「回転体検出センサ20A」は、「磁気インピーダンス素子22」を備え「磁束の変化を検出」するものであるから、磁気を検出するものである。
以上の点を踏まえると、引用発明の「回転体検出センサ20A」と「発振回路27」は、全体として、本件補正発明の「磁気検出装置」に相当する。したがって、本件補正発明と引用発明は、「磁気検出装置」を備えている点で一致する。

(イ) 引用発明の「タービン羽根32」は、「タービン羽根32」の「頂点が繰り返し」「回転検出装置20A」の備える「前記磁気インピーダンス素子22に近づくように回転」するものであるから、本件補正発明の「前記磁気検出装置に対して相対移動する移動体」に相当する。したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記磁気検出装置に対して相対移動する移動体」を備えている点で一致する。

(ウ) 引用発明においては、「タービン羽根32の先端部32aが励磁コイル21に接近すると羽根32の先端部32aに渦電流が発生し、その渦電流により反磁界が発生し、励磁コイル21の磁束が変化し、タービン羽根の先端部32aが励磁コイル21から遠ざかると励磁コイル21の磁束は元に戻るという磁束の変化を磁気インピーダンス素子22で検出」するものであるから、引用発明の「回転体検出センサ20A」が有する「磁気インピーダンス素子22」は、本件補正発明における「磁気検出装置」が有する「前記磁界発生導体の発生する磁界が印加される磁気センサ」に相当する。
前記(ア)における検討結果も踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「磁気検出装置」が「磁界発生導体と、前記磁界発生導体に交番磁界を発生させるための周波数Fsの信号を印加する信号印加部と、前記磁界発生導体の発生する磁界が印加される磁気センサ」を有する点で共通する。

(エ) 引用発明の「タービン羽根32」は、「羽根32の根元と先端の距離」及び「羽根32と羽根32の間隔」が、「羽根先端部32aの面厚の数倍以上」あるから、「羽根の先端」部分が「羽根の根元」に接続される「羽根32と羽根32の間隔」部分に対して突出していることは明らかである。そして、引用発明の「タービン羽根32」の「羽根の先端」部分と「羽根32と羽根32の間隔」部分は、本件補正発明の「移動体」の「凸部」と「凹部」に相当する。よって、引用発明の「タービン羽根32」の、「羽根32の根元と先端の距離」及び「羽根32と羽根32の間隔」が、「羽根先端部32aの面厚の数倍以上」あることは、本件補正発明の「移動体」が「少なくとも1つの凸部又は凹部」を「有」することに相当する。
また、引用発明の「タービン羽根32」が、自身の回転に伴い、「頂点」が「繰り返し」「回転体検出センサ20A」の「磁気インピーダンス素子22に近づくように回転」し、「タービン羽根の先端部32a」が「回転体検出センサ20A」の「励磁コイル21」に「接近」した状態と「離れた」状態とが繰り返されることは、本件補正発明の「移動体」の「前記磁気検出装置との対向距離が自身の相対移動によって周波数Fcで変化」することに相当する。
以上の点を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記磁気検出装置に対して相対移動する移動体」が、「少なくとも1つの凸部又は凹部」を有し、「前記磁気検出装置との対向距離が自身の相対移動によって周波数Fcで変化」する点で一致する。

(オ) 「回転体検出センサ20Aを設置したターボチャージャー30」の発明である引用発明は、本件補正発明の「移動体」に相当する「タービン羽根32」の移動を「回転体検出センサ20A」で検出しているから、「移動体検出装置」の発明である本件補正発明と、「移動体検出装置」の発明である点で共通する。


エ 本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点
前記ウにおける対比の検討結果を総合すると、本件補正発明と引用発明は、次の一致点において一致し、次の相違点1及び相違点2の点において相違する。
[一致点]
「 磁気検出装置と、
前記磁気検出装置に対して相対移動する移動体と、を備え、
前記磁気検出装置は、
磁界発生導体と、
前記磁界発生導体に交番磁界を発生させるための周波数Fsの信号を印加する信号印加部と、
前記磁界発生導体の発生する磁界が印加される磁気センサと、を有し、
前記移動体は、少なくとも1つの凸部又は凹部を有し、前記磁気検出装置との対向距離が自身の相対移動によって周波数Fcで変化する、移動体検出装置。」

<相違点1>
本件補正発明は、「磁気検出装置」が「前記磁気センサの出力信号を前記信号印加部の前記周波数Fsの信号により同期検波する同期検波部を有する」のに対して、引用発明は、「回転体検出センサ20A」が「磁気インピーダンス素子」の出力信号を「同期検波」する「同期検波部」を有しない点。
<相違点2>
本件補正発明は、「前記磁気検出装置」の「前記磁界発生導体に交番磁界を発生させるための周波数Fs」と、「移動体」の「前記磁気検出装置との対向距離」が「自身の相対移動によって」変化する「周波数Fc」との間に、「Fs≧2×Fcの関係」があるのに対して、引用発明においては、このような限定を有さない点。

オ 独立特許要件についての判断
以下、相違点について判断する。
(ア) 相違点1について
前記イ(ウ)bにおいて、技術常識として認定した「信号の周波数あるいは周期があらかじめ判明しているときに同期検波によって雑音を除去すること。」は、理工系の大学生の学生実験で習得する、基本中の基本テクニックであることは、当合議体に顕著な事実である。
また、引用文献2に記載された事項や引用文献4に記載されているような周知技術からも明らかなとおり、微弱な渦電流を利用する測定において、ノイズを除去すべきことは、当業者には自明であり、そのための手段としての同期検波も自明のことである。
してみれば、雑音を低減するために、引用発明において同期検波を行うようにすることは、当業者にとって自明の事項にすぎず、そのときの信号の周波数が、信号印可部により渦電流生成のため磁界発生導体に印可される周波数Fsであることも、当業者には自明である。
したがって、引用発明において、「磁気検出装置」を「前記磁気センサの出力信号を前記信号印加部の前記周波数Fsの信号により同期検波する同期検波部」を有するものとすることは、当業者が容易に想到し得たものであり、当業者にとって格別のものではない。

(イ) 相違点2について
引用発明の「回転検出センサ20A」の「励磁コイル21への印可電圧の周波数」を、「タービン羽根の先端部32a」が「回転体検出センサ20A」の「励磁コイル21」に「接近」した状態と「離れた」状態の繰り返し周波数について、引用文献1の段落【0044】及び【図10】の記載を分析する。
当該段落【0044】及び【図10】における、励磁コイル21に印加する電圧を0.4V(60kHz)として、ターボチャージャー30を、50?200rpsでタービン羽根32の頂点が繰り返し磁気インピーダンス素子22に近づくように回転させたときの出力電圧の波形について、「図中、振幅が大きくなっている領域Aは、タービン羽根32がMI素子22に接近していることを表している」(【0044】)ところ、【図10】の振幅が大きくなっている領域Aに注目すると、当該領域Aには少なくとも4周期分の磁気インピーダンス素子22の出力波形が含まれていることや、当該出力波形の周波数は励磁コイル21に印可される電圧と同じ60kHzであることが読み取れる。ここで、振幅が大きくなっているところの周期は、本件補正発明の周波数Fcに対応するものであり、出力波形の周期は、本件補正発明の周波数Fsに対応するものである。そうすると、Fsは、Fcより少なくとも4倍は大きいことが把握される。したがって、Fs≧4×Fc程度に設定することは、引用文献1に示唆されているということができる。
また、逆に、出力波形の周期が、領域Aの周期よりも長くなった場合、タイミングによっては領域Aを検出できない場合が生じることは、引用文献1の図10及び関連する記載から当業者には自明である。
したがって、羽根32の先端部が接近状態と離れた状態での磁束変化を検出している引用発明において、当該磁束変化の検出の時間分解能を向上させるために、FsをFcの2倍以上に大きくすることは、当業者の当然の配慮事項であって、格別のものではない。

(ウ) 請求人の主張について
a 請求人の主張の内容
請求人は、令和2年11月20日付けで提出した審判請求書において、以下の主張をしている。

[請求人の主張]
引用文献2の同期検波は、駆動回路3の出力電圧を同期信号として検波するもので、この同期信号の周波数は、磁界中で移動する導体である振動部11の振動周波数と一致するから、引用文献2の同期検波は、磁界中で移動する導体である振動部11の振動周波数と同じ周波数の信号による同期検波である。
一方、引用発明の回転体検出センサ20Aにおいて、磁界中で移動する導体は、羽根2であるから、引用文献2の振動部11は、引用文献1の羽根2と対応づけられ、また、引用文献2における振動部11の振動周波数は、引用文献1における、羽根2が回転体検出センサ20Aに近づいて遠ざかるという動作の周波数と対応づけられる。
よって、引用文献1の回転体検出センサ20Aに引用文献2の同期検波を適用すると、羽根2の移動周波数と同じ周波数の信号による同期検波を行うことになり、羽根2の移動周波数と同じ周波数の信号による同期検波は、本願発明の信号印加部の前記周波数Fsの信号による同期検波とは明確に相違する。

b 請求人の主張について
前記(ア)において説示したとおり、同期検波は、技術常識であり、また測定対象が渦電流に由来するものであれば、信号印可部により渦電流生成のため磁界発生導体に印可される周波数Fsの信号を同期検波の基準信号に用いることは自明であるから、引用文献2に記載された技術事項において周波数源が本件補正発明と異なることは、相違点1の自明性を否定することにはならないものである。したがって、請求人の上記主張は採用することができない。

(エ) 独立特許要件判断の小括
以上検討のとおり、本件補正発明と引用発明の相違点である相違点1及び相違点2は、いずれも格別なものではない。また、本件補正発明には、引用発明、引用文献2記載事項、周知技術及び技術常識から予測される効果を超える、格別顕著な効果の存在を認めることはできない。
よって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2記載事項、周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることはできない。

カ 補正の適否のむすび
以上の検討のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1?13に係る発明は、令和2年6月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項3の記載は、前記第2の1(2)に示したとおりである。以下、請求項3に係る発明を「本願発明」という。

2 原査定の拒絶の理由
原査定における本願発明についての拒絶の理由は、次のとおりである。

理由2
本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった次の引用文献1及び2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2005-265790号公報
引用文献2:特開平1-321383号公報


3 引用文献
原査定の拒絶理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明の認定は、前記第2の2(2)イ(ア)に示したとおりである。

4 本願発明と引用発明の対比、判断
(1)対比
本願発明は、本件補正発明のうち、次の(ア)及び(イ)の限定を省いたものである。
ア 「移動体」について、「少なくとも1つの凸部又は凹部を有し」、「前記磁気検出装置との対向距離が自身の相対移動によって周波数Fcで変化」することの限定。
イ 「前記磁気センサの出力信号を前記信号印加部の前記信号により同期検波する」ことについて、「前記信号印加部の前記信号」が「前記信号印加部の前記周波数Fsの信号」であること及び「前記周波数Fsと前記周波数Fcとの間に、Fs≧2×Fcの関係」があることの限定。
(2)判断
前記第2のオで説示したとおり、本件補正発明は、引用発明に、引用文献2記載事項、周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、これを包含することとなる本願発明も、引用発明、引用文献2記載事項、周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-06-24 
結審通知日 2021-06-29 
審決日 2021-07-15 
出願番号 特願2017-547703(P2017-547703)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01D)
P 1 8・ 575- Z (G01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 久  
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 清水 靖記
中塚 直樹
発明の名称 磁気検出装置及び移動体検出装置  
代理人 村井 隆  
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