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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1377535 |
審判番号 | 不服2020-17392 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-12-18 |
確定日 | 2021-09-03 |
事件の表示 | 特願2017-173467「ゲームプログラム、方法及び情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月30日出願公開、特開2017-209574〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年5月23日に出願した特願2016-102849号の一部を平成29年9月8日に新たな特許出願としたものであって、令和1年5月20日に手続補正書が提出され、令和2年7月7日付けで拒絶理由が通知され、同年9月3日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年9月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年12月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願発明について 本願の請求項1ないし3に係る発明は、令和2年9月3日に提出された手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである(下線は審決で付した。以下同じ。)。 「【請求項1】 プロセッサとメモリとを備えるコンピュータにおいて実行されるゲームプログラムであって、 前記プロセッサに、 複数のイベントの少なくともいずれかをプレイ可能とする権利を第1ユーザに付与するか否かの抽選をするための前記第1ユーザの入力操作を受け付けることにより、複数のユーザによりプレイすることができるマルチプレイに対応する、前記抽選により当選したイベントを特定し、前記第1ユーザに、当該当選したイベントをプレイ可能とする権利を付与する第1ステップと、 前記当選したイベントのプレイに前記第1ユーザと異なる第2ユーザの参加を受け付ける第2ステップと、 前記第1ユーザ及び前記第2ユーザに対し、前記当選したイベントを進行させることで入手可能な所定のアイテムを所定の条件に基づいて付与する第3ステップと、 を実行させ、 前記第1ユーザ及び前記第2ユーザが前記マルチプレイで前記当選したイベントのゲームクリアに成功した場合、前記第3ステップにおいて、前記第1ユーザに対して確定的に所定のアイテムを付与し、前記第2ユーザに対して非確定的に所定のアイテムを付与する、ゲームプログラム。」 第3 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし3に係る発明は本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された事項、引用文献2に記載された事項、及び引用文献3に例示される周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:有限会社チョップ 四家 秀一ほか,ソウル・サクリファイス デルタ 公式ガイドブック,株式会社KADOKAWA,2014年4月25日,初版,P20-P57 引用文献2:国際公開第2013/146804号 引用文献3:特開2015-147037号公報(周知技術を示す文献) 第4 引用文献等 1.引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献1(有限会社チョップ 四家 秀一ほか,ソウル・サクリファイス デルタ 公式ガイドブック,株式会社KADOKAWA,2014年4月25日,初版)には、以下の事項が記載されている。 (1)「PSVITA」(登録商標)(表紙) (2)「ゲームの目的と流れ 『ソウル・サクリファイス デルタ』は、牢獄に捕らえられた主人公が、生きた日記のリブロムを読み進めていくことで物語が進行する。」(第4頁上部) (3)「ランダムな内容のクエストを作り出せる 【マ04】「悪徳魔法使い 第四章」、【サ04】「異端の救済者 第四章」、【グ04】「魅惑の赤ずきん 第五章」をすべてクリアした状態でリブロムの涙を累計300入手すると解放される白紙ページでは、供物や記憶の塊(→P44)を犠牲に捧げることで新たにクエストを作り出せる。クエストの内容はランダムで決定され、メインクエストや要請録では見ることのできない内容のクエストが生成されることも多い。クエストをクリアすると装飾品や噂の紙片などの貴重な報酬が得られるのも見逃せない利点。なお、生成したクエストはマルチプレイで挑むことも可能だ。」(第36頁上部) (4)「本文中にある白紙ページの解放条件を満たすと、リブロムの表紙のところにコマンドが現れる。」(第36頁上部右側の画像の説明文) (5)「供物や記憶の塊を犠牲にしてクエストを生成 クエストを生成するには供物5個か、記憶の塊1個を犠牲として求められる。犠牲にする供物は難度によって異なり、難度が低の場合はランク1、高ならランク2、極高のときはランク3と4の供物が必要だ。生成されるクエストは、右表「クエストタイプの決定」と下表「クエストランクの決定」により抽選された4つが1セットとなっている。なお、生成したクエストに挑むには、難度によって定められた量のリブロムの涙を消費し、日記の染みを除去する必要がある。」(第36頁中部) (6)「全クリア報酬の抽選 生成した4つのクエストをすべてクリアすると、一度だけ全クリア報酬が獲得できる。獲得できるのは装飾品か噂の紙片のいずれかだが、難度が低のときは全クリア報酬に噂の紙片が抽選されることはない。それ以外の難度の場合、装飾品はまずノーマルかレアの、どちらかのレア度が抽選され、そのあとに何がもらえるのかが決定。噂の紙片の場合は影響度の抽選が最初に行われ、それから噂の紙片の効果が抽選される。装飾品のレア度抽選確率と噂の紙片の影響度抽選確率はページ下部にある表を、獲得できる装飾品と噂の紙片の一覧は次ページ以降の表を参照。なお、バージョン1.10以降では新たな装飾品と噂の紙片、さらにNPCボイスが全クリア報酬に追加される。」(第37頁中部) (7)「全クリア報酬はクエストをクリアしなくても、クエスト生成直後に造られた要請のページの右下で確認できる。」(第37頁中部右側の画像の説明文) (8)「仲間と協力して白紙ページや要請録を攻略 マーリン編のクエストが解放されると、それと同じタイミングで牢屋画面に「交信する」というメニューが追加される。これを選ぶと、インターネットやアドホック、アドホックパーティを介して、要請録と白紙ページのクエスト限定で最大4人のマルチプレイが可能だ。マルチプレイのルールとセオリーを学び、仲間と楽しく共闘しよう。」(第56頁上部) (9)「・白紙ページの完全制覇報酬は参加者全員が入手できる。」(第56頁中部右側の「マルチプレイのルール」欄) (10)上記(5)の「生成されるクエストは、右表「クエストタイプの決定」と下表「クエストランクの決定」により抽選された4つが1セットとなっている。」との記載、及び、第36頁右下の「クエストタイプの決定」と記載された表から、「人型魔物排除要請」、「下級魔物排除要請」、「魂片/気片の探索」、「人型魔物排除要請(ジェミニ)」の4つのクエストタイプが存在し、「低」、「高」、「極高」の3つの難度に応じて、各々のクエストタイプの抽選確率が設定されていることが看取できる。 (11)上記(5)の「生成されるクエストは、右表「クエストタイプの決定」と下表「クエストランクの決定」により抽選された4つが1セットとなっている。」との記載、及び、第36頁下部の「クエストランクの決定」と記載された表から、「1」から「15」までのランクが存在し、「低」、「高」、「極高」の3つの難度に応じて、各々のランクの抽選確率が設定されていることが看取できる。 (12)第37頁中部右側の画像から、当該画像の右下に「完全制覇報酬」との文字が看取できる。 (認定事項1)上記(1)の「PSVITA」との記載、及び、上記(2)の記載から、「ソウル・サクリファイス デルタ」は、PSVITA用ゲームのゲームプログラムの名であると認められる。 (認定事項2)上記(2)、(3)、(4)、(5)、(10)、(11)の記載から、解放条件を満たすと解放される生きた日記の白紙ページにおいて、供物や記憶の塊を犠牲に捧げることで、設定されたクエストタイプの抽選確率及び設定されたランクの抽選確率に基づいて抽選が行われてクエストタイプ及びランクが決定され、4つが1セットとなったクエストが生成されるものであると認められる。 (認定事項3)上記(7)より、「全クリア報酬」は、「クエスト生成直後に造られた要請のページの右下で確認できる」ものであるところ、上記(12)より、第37頁中部右側の画像の右下には「完全制覇報酬」との文字が看取できることから、「完全制覇報酬」と「全クリア報酬」は同一のものを意味しているといえる。よって、上記(6)及び(9)より、4つのクエストをすべてクリアすると、マルチプレイの参加者全員が全クリア報酬を入手できるものであると認められる。 上記記載事項及び認定事項を総合すれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ソウル・サクリファイス デルタという名のPSVITA用ゲームのゲームプログラムであって、 前記ゲームは、 「人型魔物排除要請」、「下級魔物排除要請」、「魂片/気片の探索」、「人型魔物排除要請(ジェミニ)」の4つのクエストタイプが存在し、「低」、「高」、「極高」の3つの難度に応じて、各々のクエストタイプの抽選確率が設定されており_(、) 「1」から「15」までのランクが存在し、「低」、「高」、「極高」の3つの難度に応じて、各々のランクの抽選確率が設定されており、 解放条件を満たすと解放される生きた日記の白紙ページにおいて、供物や記憶の塊を犠牲に捧げることで、設定されたクエストタイプの抽選確率及び設定されたランクの抽選確率に基づいて抽選が行われてクエストタイプ及びランクが決定され、4つが1セットとなったクエストが生成されるものであり、 生成されたクエストは、最大4人のマルチプレイで挑むことが可能であり、 牢屋画面の「交信する」というメニューを選ぶと、インターネットやアドホック、アドホックパーティを介してマルチプレイが可能となっており、 4つのクエストをすべてクリアすると、マルチプレイの参加者全員が全クリア報酬を入手できる、 ゲームプログラム。」 2.引用文献2の記載 原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2(国際公開第2013/146804号)(国際公開日:2013年10月3日)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0001】 本発明は、ゲームシステム、ゲーム制御方法、プログラムに関する。」 (2)「【0003】 また、このようなソーシャルゲームでは、仲間関係になったユーザ同士がメッセージやオブジェクトをやり取りすること等で交流することができる。しかし、ゲームの進行自体や戦闘自体はユーザ毎に個別に行われる場合が多かった。 【0004】 本発明の幾つかの態様は、複数のユーザ同士がつながっているソーシャルゲームの要素を活かし、ゲーム性の高いゲームを提供するゲームシステム、ゲーム制御方法、プログラムを提供する。」 (3)「【0025】 このように、本実施形態によれば、第1のユーザのゲームのイベントである戦闘において、第2のユーザが保有するオブジェクトを利用するようにしたので、第1のユーザと第2のユーザとが協力して敵キャラクタと戦闘を行うゲームを提供することができる。さらに、選択された第2のユーザのオブジェクトは、戦闘処理に用いられるまで第2のユーザのゲームにおいて利用できなくなるため、どのオブジェクトを用いて戦闘に参加するかといった戦略も第2のユーザにとって重要であり、ゲーム性が高くなる。以下、このようなゲームを提供する実施形態について第2の実施形態を用いて詳細に説明する。」 (4)「【0033】 ここで、本実施形態により提供するゲームにおいて、ユーザがゲームの進行を指示する毎に、定められた確率に基づく抽選処理を行ってユーザに報酬を付与する。ここでユーザに付与する報酬は、例えば、ユーザが敵キャラクタと対戦する際に使用するキャラクタや、キャラクタに装備させる武器や防具等といったアイテムなどのオブジェクトが適用できる。ユーザは、このようなオブジェクトを収集することにより、イベント及びイベント以外のゲーム部分の少なくとも一方を有利に進めることができる。また、ユーザに対応する体力を増加させて回復させる回復薬等のアイテムを、ユーザがゲームの進行を指示する毎に、定められた確率でユーザに報酬として付与することもできる。さらに、一定の確率で敵キャラクタが出現し、イベントが発生する。上記説明では、ユーザがゲームの進行を指示する度に上記抽選処理を行うことを説明したが、これに限るものではなく、次のステージに移動する度に上記処理を行ってもよい。また、次のエリアへ移動する度に上記抽選処理を行ってもよい。 【0034】 図7は、敵キャラクタが出現しイベントが発生した際の戦闘画面を示す図である。符号hの領域には、敵キャラクタの体力を表示する。体力は、ユーザが敵キャラクタに攻撃することにより減少し、体力が0になるとその敵キャラクタを倒したこととなるパラメータである。符号iの領域には、敵キャラクタの姿を示す画像を表示する。符号jの領域には、ユーザが敵キャラクタとの戦闘において使用する選択オブジェクトを表示する。符号kの領域には、「戦闘開始」ボタンを表示しており、このボタンが押下されると戦闘処理を行う。 【0035】 図8は、イベントにおける戦闘処理において敵キャラクタの体力が0にならず、敵キャラクタを倒せなかった場合の救援依頼画面の例を示す図である。符号lの領域に示される敵キャラクタの体力は戦闘処理前に比べて減少しているが、0には至っていない。この場合、ユーザはイベントとしての戦闘を終了する(イベントをクリアする)ことができない。そこで、符号mの領域に、他のユーザに対する救援依頼を送るための「救援依頼」ボタンを表示する。以下、救援依頼を出す第1のユーザを特に主ユーザといい、救援依頼を受ける第2のユーザを特に仲間ユーザという。」 (5)「【0056】 例えば、選択部332によって選択された仲間ユーザの選択オブジェクトに対応するパラメータである攻撃力の合計値が、所定の条件である敵キャラクタの体力を超えると判定した場合、その敵キャラクタを倒す戦闘処理を行って、主ユーザの勝利とする。そして、救援依頼に応じた仲間ユーザに報酬を付与する。報酬とは、例えば、キャラクタやアイテム等のオブジェクト、経験値、ゲーム内における通貨等である。このようにすれば、救援依頼に応じてオブジェクトを救援に出し、主ユーザの戦闘処理において敵キャラクタが倒されると報酬が付与されるので、仲間ユーザに対して救援依頼に応じる動機付けを与えることができる。これにより、ユーザ間のコミュニケーションを促すことができ、ゲーム性を高めることができる。」 (6)「【0070】 図15に戻り、ステップS13において、選択部332による上述のようなオブジェクト選択処理によって主ユーザが戦闘に用いるオブジェクトが選択されると、ゲーム進行部333は、選択されたオブジェクトに対応する攻撃力の合計値を算出し、算出した合計値を敵キャラクタの体力から減少させる戦闘処理を行うとともに、選択されたオブジェクトに対応する所要ポイントを、主ユーザの攻撃ポイントから減少させる処理を行う。これにより、敵キャラクタの体力の残量が0になれば、主ユーザの勝利と判定し、所定の報酬を主ユーザに付与し(ステップS21)、処理を終了する。 【0071】 ステップS13における戦闘処理において、敵キャラクタの体力が0にならなければ、ゲーム進行部333は、ユーザ端末100に救援依頼画面を表示させる。ユーザ端末100に救援依頼ボタンが押下された指示情報が入力されると、ゲーム装置300の通知部331は、主ユーザに対応付けられた仲間ユーザIDをユーザ情報記憶部321から読み出し、読み出した仲間ユーザIDが示すユーザに救援依頼を通知する(ステップS14)。 具体的には、仲間ユーザがログインした際の基本画面に、救援依頼通知を表示させる。ここで、仲間ユーザがオブジェクトを選択し、基本画面に表示された「救援」ボタンを押下すると、ゲーム進行部333は、選択されたオブジェクト情報に対応する貸し出しフラグに1を対応付けてオブジェクト情報記憶部322に記憶させる(ステップS15)。これにより、仲間ユーザは救援依頼の応答に選択したオブジェクトの使用が自身のゲーム及びイベントにおいて制限され、利用できなくなる。 【0072】 一方、ゲーム進行部333は、ステップS14において救援依頼を通知してからの経過時間を計測し、経過時間が所定時間を経過したか否かを判定する(ステップS16)。所定時間を経過していないと判定すると(ステップS16:NO)、ゲーム進行部333は、主ユーザからの救援依頼に対する仲間ユーザからの応答を待つ(ステップS17)。ステップS15において仲間ユーザからの応答が入力されると、その時点での主ユーザの攻撃ポイントの残量に応じて上述したオブジェクト選択処理を行い、主ユーザが保有するオブジェクトから選択したオブジェクトと、救援依頼の応答として選択された仲間ユーザのオブジェクトとの攻撃力の合計値を算出する。すなわち、この場面での戦闘に用いられる選択オブジェクトは、主ユーザが保有するオブジェクトと、救援依頼に応じた仲間のユーザが保有するオブジェクトとが含まれる複数のオブジェクトによって構成される。 【0073】 主ユーザが保有するオブジェクトから選択したオブジェクトと、救援依頼の応答として選択された仲間ユーザのオブジェクトとの攻撃力の合計値が敵キャラクタの体力の残量を超えていなければ(ステップS18:NO)、ステップS16に戻る。合計値が敵キャラクタの体力の残量を超えていれば(ステップS18:YES)、戦闘処理を行い、救援依頼に応答した仲間ユーザに報酬を付与する(ステップS19)。この際、戦闘処理を行っても、救援依頼に応じた仲間ユーザの攻撃ポイントは減少させないようにすることができる。」 (7)「【0076】 <他の実施形態> 次に、本実施形態の他の実施形態について説明する。 上述のステップS19において、救援依頼に応じた戦闘処理が勝利の結果に終わった場合、仲間ユーザに対して付与する報酬は、全ての仲間ユーザに同様の報酬を付与してもよいが、戦闘への貢献度に応じて報酬を付与することもできる。すなわち、ゲーム進行部333は、戦闘における所定の条件が満たされたと判定した場合、救援に出された選択オブジェクトのパラメータである攻撃力の値に応じて、仲間ユーザに報酬を付与することができる。例えば、複数の仲間ユーザから救援に出された選択オブジェクトの攻撃力の合計値と、ある仲間ユーザから救援に出された選択オブジェクトの攻撃力の比に応じて、所定量の報酬を複数の仲間ユーザに分配して付与することができる。あるいは、攻撃力の降順にオブジェクトを順位付け、順位に応じて報酬を付与してもよい。このようにすれば、救援に出したオブジェクトの攻撃力が高い程、高い報酬が付与されるので、より攻撃力の高いオブジェクトを救援に出す動機を仲間ユーザに与えることができる。これにより、ユーザ間のコミュニーションを促し、ゲーム性を高めることができる。ここで、仲間ユーザが救援に出すオブジェクトは、複数であってもよく、この場合、救援に出した複数のオブジェクトの攻撃力の合計値に応じた報酬が分配されるようにすることもできる。 【0077】 あるいは、仲間ユーザに対して付与する報酬は、抽選部334による抽選処理を行って付与することもできる。例えば、ゲーム進行部333が、戦闘における所定の条件が満たされたと判定した場合、抽選部334は、救援に応じた仲間ユーザに付与する報酬を抽選し、抽選結果に応じた報酬を仲間ユーザに付与する。このように、救援依頼に応じてオブジェクトを救援に出すことの報酬を抽選により決定することで、ゲーム性が増す。」 (8)上記(5)の段落【0056】より、「選択部332によって選択された仲間ユーザの選択オブジェクトに対応するパラメータである攻撃力の合計値が、所定の条件である敵キャラクタの体力を超えると判定した場合、その敵キャラクタを倒す戦闘処理を行って、主ユーザの勝利とする」ものであるところ、上記(6)の段落【0073】の「合計値が敵キャラクタの体力の残量を超えてい」る際の「戦闘処理」においても、「その敵キャラクタを倒す戦闘処理を行って、主ユーザの勝利とするものである」といえる。 (9)上記(1)ないし(8)から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 「主ユーザと仲間ユーザとが協力して敵キャラクタと戦闘を行うゲームにおいて、 主ユーザによって選択されたオブジェクトに対応する攻撃力の合計値を算出し、算出した合計値を敵キャラクタの体力から減少させる戦闘処理を行い、敵キャラクタの体力の残量が0になれば、主ユーザの勝利と判定し、キャラクタやアイテム等の所定の報酬を主ユーザに付与し、 当該戦闘処理において、敵キャラクタの体力が0にならなければ、仲間ユーザがログインした際の基本画面に、救援依頼通知を表示させ、仲間ユーザからの応答が入力されると、主ユーザが保有するオブジェクトから選択したオブジェクトと、救援依頼の応答として選択された仲間ユーザのオブジェクトとの攻撃力の合計値を算出し、合計値が敵キャラクタの体力の残量を超えていれば、その敵キャラクタを倒す戦闘処理を行って、主ユーザの勝利とし、救援依頼に応答した仲間ユーザにキャラクタやアイテム等の報酬を付与し、 仲間ユーザに対して付与する報酬は、抽選部334による抽選処理を行って付与するものである、 ゲーム。」 第5 対比・判断 1.本願発明と引用発明との対比 (1)引用発明の「ソウル・サクリファイス デルタという名のPSVITA用ゲームのゲームプログラム」は、PSVITAにおいて実行されるものであって、当該PSVITAが、プロセッサとメモリとを備えるコンピュータであることは技術常識である。 したがって、引用発明の「ソウル・サクリファイス デルタという名のPSVITA用ゲームのゲームプログラム」は、本願発明の「プロセッサとメモリとを備えるコンピュータにおいて実行されるゲームプログラム」に相当する。 (2)本願発明は、「複数のイベントの少なくともいずれかをプレイ可能とする権利を第1ユーザに付与するか否かの抽選をするための前記第1ユーザの入力操作を受け付けることにより、複数のユーザによりプレイすることができるマルチプレイに対応する、前記抽選により当選したイベントを特定し、前記第1ユーザに、当該当選したイベントをプレイ可能とする権利を付与する第1ステップ」を「プロセッサに」「実行させ」ているのに対し、引用発明の「ゲーム」は、「解放条件を満たすと解放される生きた日記の白紙ページにおいて、供物や記憶の塊を犠牲に捧げることで、設定されたクエストタイプの抽選確率及び設定されたランクの抽選確率に基づいて抽選が行われてクエストタイプ及びランクが決定され、4つが1セットとなったクエストが生成されるもの」であって、「生成されたクエストは、最大4人のマルチプレイで挑むことが可能」となっているものである。 ここで、引用発明では、「設定されたクエストタイプの抽選確率及び設定されたランクの抽選確率に基づいて抽選が行われてクエストタイプ及びランクが決定され、4つが1セットとなったクエストが生成される」ものであるところ、技術的にみて、引用発明は、クエストタイプやランクに対応して予め用意された複数のイベントの中から抽選を行うものと認められる。また、生成されるクエストは、ユーザがプレイすることが可能となっているものであるところ、引用発明では、抽選を行ったユーザに当該クエストをプレイ可能とする権利が付与されていることは明らかである。したがって、引用発明の「抽選」は、「複数のイベントの少なくともいずれかをプレイ可能とする権利を第1ユーザに付与する抽選」であるといえる。 また、引用発明においては、上記「供物や記憶の塊を犠牲に捧げる」ゲーム処理を実行するために、ユーザの入力操作を受け付ける処理が行われていることは技術常識から見て明らかである。 そして、引用発明の「4つが1セットとなったクエスト」は、「抽選が行われ」ることによって生成されるものであって、「マルチプレイで挑むことが可能」なものであるところ、引用発明の「4つが1セットとなったクエスト」を生成することは、本願発明の「複数のユーザによりプレイすることができるマルチプレイに対応する、前記抽選により当選したイベントを特定し、前記第1ユーザに、当該当選したイベントをプレイ可能とする権利を付与する」ことに相当する。 さらに、引用発明において、上記のゲーム処理をプロセッサに実行させていることは技術常識から見て明らかである。 したがって、本願発明と引用発明とは、「所定の抽選をするための前記第1ユーザの入力操作を受け付けることにより、複数のユーザによりプレイすることができるマルチプレイに対応する、前記抽選により当選したイベントを特定し、前記第1ユーザに、当該当選したイベントをプレイ可能とする権利を付与する第1ステップ」をプロセッサに実行させるものである限りにおいて共通する。 (3)引用発明は、「生成されたクエストは、最大4人のマルチプレイで挑むことが可能」であって、 牢屋画面の「交信する」というメニューを選ぶと、インターネットやアドホック、アドホックパーティを介してマルチプレイが可能となっているものであるところ、生成されたクエストにマルチプレイで挑む際に、他のユーザの参加を受け付けるゲーム処理が実行されていることは、技術常識から見て明らかである。 したがって、引用発明は、本願発明の「プロセッサに、」「前記当選したイベントのプレイに前記第1ユーザと異なる第2ユーザの参加を受け付ける第2ステップ」「を実行させ」ることに相当する構成を備えるものといえる。 (4)引用発明の「4つのクエストをすべてクリアすると、マルチプレイの参加者全員が全クリア報酬を入手できる」ことは、当該報酬が「装飾品」や「噂の紙片」などのアイテムであることを考慮すれば、本願発明の「前記第1ユーザ及び前記第2ユーザに対し、前記当選したイベントを進行させることで入手可能な所定のアイテムを所定の条件に基づいて付与する」ことに相当する。そして、引用発明において、上記のゲーム処理をプロセッサに実行させていることは技術常識から見て明らかである。 したがって、引用発明は、本願発明の「プロセッサに、」「前記第1ユーザ及び前記第2ユーザに対し、前記当選したイベントを進行させることで入手可能な所定のアイテムを所定の条件に基づいて付与する第3ステップ」「を実行させ」ることに相当する構成を備えるものといえる。 (5)引用発明は、「4つのクエストをすべてクリアすると、マルチプレイの参加者全員が全クリア報酬を入手できる」ものであるから、本願発明の「第1のユーザ」と「第2のユーザ」の両方に相当するユーザに対して確定的に所定のアイテムを付与しているものであるといえる。 したがって、本願発明の「前記第1ユーザ及び前記第2ユーザが前記マルチプレイで前記当選したイベントのゲームクリアに成功した場合、前記第3ステップにおいて、前記第1ユーザに対して確定的に所定のアイテムを付与し、前記第2ユーザに対して非確定的に所定のアイテムを付与する」ことと、引用発明の「4つのクエストをすべてクリアすると、マルチプレイの参加者全員が全クリア報酬を入手できる」こととは、「前記第1ユーザ及び前記第2ユーザが前記マルチプレイで前記当選したイベントのゲームクリアに成功した場合、前記第3ステップにおいて、前記第1ユーザに対して確定的に所定のアイテムを付与し、前記第2ユーザに対して、所定の条件に基づいて所定のアイテムを付与する」ものである限りにおいて共通する。 2.一致点・相違点 上記1.の対比を踏まえれば、本願発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違するものである。 <一致点> 「プロセッサとメモリとを備えるコンピュータにおいて実行されるゲームプログラムであって、 前記プロセッサに、 所定の抽選をするための前記第1ユーザの入力操作を受け付けることにより、複数のユーザによりプレイすることができるマルチプレイに対応する、前記抽選により当選したイベントを特定し、前記第1ユーザに、当該当選したイベントをプレイ可能とする権利を付与する第1ステップと、 前記当選したイベントのプレイに前記第1ユーザと異なる第2ユーザの参加を受け付ける第2ステップと、 前記第1ユーザ及び前記第2ユーザに対し、前記当選したイベントを進行させることで入手可能な所定のアイテムを所定の条件に基づいて付与する第3ステップと、 を実行させ、 前記第1ユーザ及び前記第2ユーザが前記マルチプレイで前記当選したイベントのゲームクリアに成功した場合、前記第3ステップにおいて、前記第1ユーザに対して確定的に所定のアイテムを付与し、前記第2ユーザに対して所定の条件に基づいて所定のアイテムを付与する、ゲームプログラム。」 <相違点> (相違点1) 第1ユーザの入力操作が、本願発明においては、「複数のイベントの少なくともいずれかをプレイ可能とする権利を第1ユーザに付与するか否かの抽選をするため」であるのに対し、引用発明においては、「複数のイベントの少なくともいずれかをプレイ可能とする権利を第1ユーザに付与する抽選をするため」である点。 (相違点2) 前記第1ユーザ及び前記第2ユーザが前記マルチプレイで前記当選したイベントのゲームクリアに成功した場合、第3ステップにおいて、本願発明では、「前記第1ユーザに対して確定的に所定のアイテムを付与し、前記第2ユーザに対して非確定的に所定のアイテムを付与」しているのに対し、引用発明では、前記第1ユーザ及び前記第2のユーザの両者に対して確定的に所定のアイテムを付与している点。 3.判断 (1)相違点1について 電子ゲームの分野において、アイテム等の対価を消費して抽選を行う際に、失敗して対価が消費されるのみとなる場合を設定することは、例えば、原査定の拒絶の理由で周知例として例示された引用文献3(特開2015-147037号公報)の段落【0039】?【0043】に記載されているように、本願出願時における周知技術(以下、「周知技術1」という。)である。 してみれば、引用発明において、上記周知技術1を勘案し、供物や記憶の魂といったアイテムを消費しても、クエストが生成されない場合も発生させるようにすることは、当業者が適宜なし得ることである。そして、引用発明において、供物や記憶の魂といったアイテムを消費しても、クエストが生成されない場合も発生させるようにするとは、抽選によって、複数のイベントの少なくともいずれかをプレイ可能とする権利が付与されない場合が生じることに相当するのであるから、上記相違点1の「複数のイベントの少なくともいずれかをプレイ可能とする権利を第1ユーザに付与するか否かの抽選」に相当する構成を具備することとなる。 以上のとおりであるから、引用発明において、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、上記周知技術1を勘案して、当業者が適宜なし得たことである。 (2)相違点2について 引用文献2には、上記第4 2.で指摘したとおりの技術的事項が記載されている。そして、引用文献2に記載された技術的事項における、「主ユーザが保有するオブジェクトから選択したオブジェクトと、救援依頼の応答として選択された仲間ユーザのオブジェクトとの攻撃力の合計値を算出し、合計値が敵キャラクタの体力の残量を超えていれば、その敵キャラクタを倒す戦闘処理を行う」際には、「主ユーザの勝利」と判定されていることから、「主ユーザによって選択されたオブジェクトに対応する攻撃力の合計値を算出し、算出した合計値を敵キャラクタの体力から減少させる戦闘処理を行い、敵キャラクタの体力の残量が0になれば、主ユーザの勝利と判定し」た場合と同様に、所定の報酬が主ユーザにも付与されていることは、技術常識に照らして明らかである。 そうすると、引用文献2には、「主ユーザと仲間ユーザとが協力して敵キャラクタと戦闘を行うゲームにおいて、その敵キャラクタを倒す戦闘処理を行って、主ユーザの勝利とした場合に、主ユーザに対してキャラクタやアイテム等の所定の報酬を付与し、仲間ユーザに対して抽選処理によって報酬を付与する」という技術的事項が示唆されているといえる。 ここで、上記技術的事項における「主ユーザに対してキャラクタやアイテム等の所定の報酬を付与し、仲間ユーザに対して抽選処理によって報酬を付与する」ことは、本願発明における「第1ユーザに対して確定的に所定のアイテムを付与し、第2ユーザに対して非確定的に所定のアイテムを付与する」ことに相当する。 引用発明と引用文献2に記載された技術的事項とは、共に、複数のユーザによって実行されるゲームにおける複数のユーザへの報酬の付与に関する点で共通するものであるから、引用発明における第1ユーザ及び第2ユーザへのアイテム付与の具体的な条件として、引用文献2に記載の上記示唆に基づき、「第1ユーザに対して確定的に所定のアイテムを付与し、第2ユーザに対して非確定的に所定のアイテムを付与する」ものとすることにより、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 (3)予備的判断 上記第5 1.(2)で指摘したとおり、引用発明は、クエストタイプやランクに対応して予め用意された複数のイベントの中から抽選を行うものと認められるが、仮に、そうとまではいえないとした場合であっても、イベントの抽選処理を行う際に、予め用意された複数のイベントから所定のイベントを選択するものとすることは、例えば、特開2014-230618号公報の段落【0047】、【0100】?【0102】に記載されているように、電子ゲームの分野における周知技術(以下、「周知技術2」という。)であるから、引用発明において、イベントの「生成」というゲーム上の演出を実現する具体的なゲーム処理として、複数のイベントを予め用意しておき、抽選によって、そのいずれかを選択するものとすることは、上記周知技術2を勘案しながら、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。 (4)本願発明の作用効果について 本願発明が奏する作用効果は、当業者が予測することができた程度のものである。 (5)審判請求人の主張について 審判請求人は、令和2年12月18日に提出された審判請求書の「【請求の理由】3.(1)ウ.(ア)」において、「本願の請求項1における、(b)抽選によってユーザに「複数のイベントの少なくともいずれかをプレイ可能とする権利」を付与するか否かの「抽選」は、ユーザを参加させるクエストが存在する状態において、当該クエストに参加するための権利を、ユーザに付与するか否かを決定するための抽選」であって、「本願の請求項1においては、存在するクエストのいずれかに参加する権利をユーザが取得するための「抽選」を実行」するため、「引用文献1,3における「抽選」と、(b)本願の請求項1における「抽選」とは明らかに異なる抽選」であり、「引用文献1?引用文献3は、「複数のイベントの少なくともいずれかをプレイ可能とする権利を第1ユーザに付与するか否かの抽選」については記載も示唆も」ない旨を主張している。 しかしながら、上記第5 1.(2)で指摘したとおり、引用発明は、クエストタイプやランクに対応して予め用意された複数のイベントの中から抽選を行うものと認められる。また、仮に、引用発明が、クエストタイプやランクに対応して予め用意された複数のイベントの中から抽選を行うものとまでいえないとした場合であっても、上記(3)で検討したとおりであって、この点が進歩性の判断を左右するものとはいえない。 よって、審判請求人の主張は採用できない。 4.小括 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項、及び上記周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-06-30 |
結審通知日 | 2021-07-01 |
審決日 | 2021-07-20 |
出願番号 | 特願2017-173467(P2017-173467) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 目黒 大地 |
特許庁審判長 |
藤本 義仁 |
特許庁審判官 |
小林 謙仁 清水 康司 |
発明の名称 | ゲームプログラム、方法及び情報処理装置 |
代理人 | 江口 昭彦 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 阿部 豊隆 |
代理人 | 内藤 和彦 |
代理人 | 稲葉 良幸 |