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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1377545
審判番号 不服2020-14705  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-22 
確定日 2021-09-24 
事件の表示 特願2018- 36583「操作端末および補助パネル」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月12日出願公開、特開2019-152974、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年3月1日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 2月17日付け :拒絶理由通知書
令和2年 4月16日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年 7月27日付け :拒絶査定(原査定)
令和2年10月22日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年7月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1?2、5?6、8?9に係る発明は、以下の引用文献1?3に基づいて当業者が容易に発明できたものである。また、本願請求項3?4に係る発明は、以下の引用文献1?4に基づいて当業者が容易に発明できたものである。また、本願請求項7に係る発明は、以下の引用文献1?5に基づいて当業者が容易に発明できたものである。したがって、本願請求項1?9に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2015-55938号公報
2.特開2009-276978号公報
3.特開2007-72660号公報
4.特開2000-305614号公報
5.特開2010-250675号公報

第3 本願発明
本願請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明7」という。)は、令和2年10月22日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1?本願発明7は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
操作対象に対して入力を行う操作端末であって、
入力面を有するタッチパネル部と、
操作者による前記入力面に対する入力動作に対応して操作信号を出力する出力部と、
を備え、
前記入力動作が、前記入力面に接触する接触要素を前記入力面上において所定の円環状の移動経路上にて移動させる移動動作を含み、
前記入力面は、
前記移動経路において円周状に等角度間隔にて断続的に配列される複数の区切り部と、
前記移動経路の径方向外側に配置される円環状の凸部である外ガイド要素と、
前記移動経路の径方向内側に配置される凸部であって、前記外ガイド要素との間に前記移動経路を挟む内ガイド要素と、
を備え、
前記複数の区切り部はそれぞれ、前記接触要素が接触する周囲の領域から突出する凸部であり、
前記移動動作において、前記接触要素が前記複数の区切り部のうち一の区切り部から隣接する区切り部へと移動することにより、予め設定されている単位移動距離に応じた1パルスの操作信号が前記出力部によって出力されることを特徴とする操作端末。
【請求項2】
操作対象に対して入力を行う操作端末であって、
入力面を有するタッチパネル部と、
操作者による前記入力面に対する入力動作に対応して操作信号を出力する出力部と、
を備え、
前記入力動作が、前記入力面に接触する接触要素を前記入力面上において所定の円環状の移動経路上にて移動させる移動動作を含み、
前記入力面は、
前記移動経路において円周状に等角度間隔にて断続的に配列される複数の区切り部と、
前記移動経路の径方向外側に配置される円環状の凸部である外ガイド要素と、
前記移動経路の径方向内側に配置される凸部であって、前記外ガイド要素との間に前記移動経路を挟む内ガイド要素と、
を備え、
前記複数の区切り部はそれぞれ、前記接触要素が接触する周囲の領域から凹む凹部であり、
前記移動動作において、前記接触要素が前記複数の区切り部のうち一の区切り部から隣接する区切り部へと移動することにより、予め設定されている単位移動距離に応じた1パルスの操作信号が前記出力部によって出力されることを特徴とする操作端末。
【請求項3】
請求項1または2に記載の操作端末であって、
所定の位置まで押し込むことで操作信号の伝達が可能となるイネーブルスイッチをさらに備え、
前記出力部は、前記イネーブルスイッチが所定の位置に押し込まれているときに、前記移動動作を操作信号しとて操作対象へと伝達することを特徴とする操作端末。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の操作端末であって、
前記タッチパネル部が、
タッチセンシティブ面を有するタッチパネル本体と、
前記タッチセンシティブ面を覆うとともに前記入力面を有する透明な補助パネルと、
を備え、
前記操作者による前記入力動作が、前記補助パネルを介して前記タッチセンシティブ面に対して行われることを特徴とする操作端末。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の操作端末であって、
前記タッチパネル部が、前記移動経路上または前記移動経路に沿って所定間隔にて配列される複数の発光部を備え、
前記移動動作における前記接触要素の移動に応じて前記複数の発光部の点灯状態が変化することを特徴とする操作端末。
【請求項6】
操作対象に対して入力を行う操作端末となる汎用スマートデバイスのタッチセンシティブ面を覆う補助パネルであって、
前記タッチセンシティブ面に接触する主面である接触面と、
前記接触面とは反対側の主面である入力面と、
を備え、
操作者による前記入力面に対する入力動作が、前記入力面に接触する接触要素を前記入力面上において所定の円環状の移動経路上にて移動させる移動動作を含み、
前記入力面は、
前記移動経路において円周状に等角度間隔にて断続的に配列される複数の区切り部と、
前記移動経路の径方向外側に配置される円環状の凸部である外ガイド要素と、
前記移動経路の径方向内側に配置される凸部であって、前記外ガイド要素との間に前記移動経路を挟む内ガイド要素と、
を備え、
前記複数の区切り部はそれぞれ、前記接触要素が接触する周囲の領域から突出する凸部であり、
前記移動動作において、前記接触要素が前記複数の区切り部のうち一の区切り部から隣接する区切り部へと移動することにより、予め設定されている単位移動距離に応じた1パルスの操作信号が前記出力部によって出力されることを特徴とする補助パネル。
【請求項7】
操作対象に対して入力を行う操作端末となる汎用スマートデバイスのタッチセンシティブ面を覆う補助パネルであって、
前記タッチセンシティブ面に接触する主面である接触面と、
前記接触面とは反対側の主面である入力面と、
を備え、
操作者による前記入力面に対する入力動作が、前記入力面に接触する接触要素を前記入力面上において所定の円環状の移動経路上にて移動させる移動動作を含み、
前記入力面は、
前記移動経路において円周状に等角度間隔にて断続的に配列される複数の区切り部と、
前記移動経路の径方向外側に配置される円環状の凸部である外ガイド要素と、
前記移動経路の径方向内側に配置される凸部であって、前記外ガイド要素との間に前記移動経路を挟む内ガイド要素と、
を備え、
前記複数の区切り部はそれぞれ、前記接触要素が接触する周囲の領域から凹む凹部であり、
前記移動動作において、前記接触要素が前記複数の区切り部のうち一の区切り部から隣接する区切り部へと移動することにより、予め設定されている単位移動距離に応じた1パルスの操作信号が前記出力部によって出力されることを特徴とする補助パネル。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。

「【0005】
機械式ボタンの操作によって情報入力を行う場合、操作者は、機械式ボタンを視認しながら情報入力できるとともに、機械式ボタンを視認しなくても機械式ボタンが指に触れる感覚によって情報入力することができる。しかし、タッチ検出機能付き表示装置の表示面上での操作によって情報入力を行う場合、操作者は、表示面を視認しながらでなければ容易に情報入力をできない可能性がある。また、表示面を視認せずに操作する必要がある場面は、日常的に発生する可能性がある。そこで、表示面を視認できない状況においても、表示面上での操作による情報入力を容易にすることができるタッチ検出機能付き表示装置が望まれる。
【0006】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたもので、表示面を視認できない状況においても、表示面上での操作による情報入力を容易にすることができるタッチ検出機能付き表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によるタッチ検出機能付き表示装置は、静電容量式のタッチ検出装置を有し、画像を表示する表示面を有する表示パネルと、前記表示パネルの前記表示面側に重ねられ、前記表示パネルと対向する表面と反対側の表面である被タッチ表面の側に凹部または凸部を有するカバー材と、前記タッチ検出装置が前記凹部または前記凸部の近傍で静電容量の変化を検出したときに信号を発信できる制御手段と、を含む。
【0008】
本開示の電子機器は、上記タッチ検出機能付き表示装置を備えたものである。本開示の電子機器は、例えば、テレビジョン装置、デジタルカメラ、パーソナルコンピュータ、ビデオカメラあるいは携帯電話等の携帯端末装置などが該当する。
【発明の効果】
【0009】
本開示のタッチ検出機能付き表示装置及び電子機器は、表示面を視認できない状況においても、表示面上での操作による情報入力を容易にすることができる。」

「【0012】
<1.実施形態(タッチ検出機能付き表示装置)>
[1-1.実施形態1]
図1は、実施形態1に係るタッチ検出機能付き表示装置の分解模式図である。図2は、実施形態1に係るカバー材の正面図である。図3は、実施形態1に係るカバー材の背面図である。図1に示すように、タッチ検出機能付き表示装置1は、表示パネルである液晶パネル30と、緩衝層20、カバー材10と、を備えている。なお、タッチ検出機能付き表示装置1は、液晶パネル30に代えて有機ELモジュールを備えていてもよい。」
「【0014】
液晶パネル30は、静電容量式のタッチ検出装置40を有する。例えば、タッチ検出装置40は、1つの平面に配列される複数の駆動電極と、複数の駆動電極が配列される平面とは異なる平面に配列される複数の検出電極としてのタッチ検出電極とを有する。複数の駆動電極は、それぞれ第1の方向に向かって延在し、かつ第1の方向と交差する第2の方向に向かって配列される。複数のタッチ検出電極は、それぞれ当該第2の方向に向かって延在し、かつ当該第1の方向に向かって配列される。それぞれのタッチ検出電極は、複数の駆動電極と所定の間隔をもって交差している。すなわち、それぞれのタッチ検出電極は、複数の駆動電極と立体交差している。駆動電極とタッチ検出電極とが交差する部分には、静電容量が生じる。
【0015】
タッチ検出装置40は、タッチ検出電極と電気的に接続されたタッチ検出部を有する。タッチ検出電極と駆動電極とが交差する部分の静電容量の変化は、タッチ検出信号としてタッチ検出部に入力される。タッチ検出部は、駆動電極とタッチ検出電極とが交差する部分のうち、静電容量が変化した部分をタッチ検出信号に基づいて検出する。タッチ検出部は、タッチ検出信号に基づき、対象物がタッチ検出装置40に接触または近接した位置を特定する。以下の説明において、対象物がタッチ検出装置40に接触または近接することは、適宜タッチと表記される。
【0016】
なお、実施形態1において、駆動電極とタッチ検出電極とが立体交差し、両者が対向する部分の静電容量の変化に基づきタッチを検出するが、静電容量が発生する位置は、両者が対向する部分に限定されるものではない。例えば、タッチ検出装置40は、駆動電極から引き出された導体と、タッチ検出電極から引き出された導体とを同一平面に配置し、両方の導体の間に発生する静電容量に基づきタッチを検出してもよい。すなわち、タッチ検出装置40は、駆動電極とタッチ検出電極との間に発生する静電容量に基づいてタッチを検出すればよい。
【0017】
緩衝層20は、液晶パネル30とカバー材10との間に配置される。例えば、緩衝層20は、光学弾性樹脂であり、屈折率がカバー材10および液晶パネル30の透明基板の屈折率と同じになっている。光学弾性樹脂は、弾性を有するため、外部からの衝撃をやわらげ、液晶パネル30の破損する可能性を低減することができる。また、光学弾性樹脂は、屈折率がカバー材10および液晶パネル30の透明基板と同じであるため、カバー材10と光学弾性樹脂との境界および光学弾性樹脂と液晶パネル30との境界における光の反射を低減することができる。なお、緩衝層20は、エアギャップであってもよい。ただし、緩衝層20が光学弾性樹脂の場合、屈折率がカバー材10および液晶パネル30の透明基板と同じにできる。このため、緩衝層20は、光学弾性樹脂であることが好ましい。なお、光学弾性樹脂の屈折率は、カバー材10および液晶パネル30の透明基板の屈折率と全く同じでなくてもよく、近い値であってもよい。」

「【0019】
カバー材10は、液晶パネル30の画像を表示する表示面側に重ねられ、表示面を被覆して保護する部材である。例えば、カバー材10は、ガラスで形成されており、表示面に対して垂直方向から見た形状が長方形である。カバー材10は、液晶パネル30と対向する表面と反対側の表面である被タッチ表面10fの側に凹部11、12、13を有する。タッチ検出装置40は、静電容量式であるため、対象物が被タッチ表面10fへ接触または近接したことを検出できる。例えば、実施形態1において、当該対象物は、人間の指である。また、図3に示すとおり、カバー材10の液晶パネル30と対向する表面である背面10bは、平坦であって緩衝層20と接触する。なお、カバー材10は、液晶パネル30の表面を保護することができ、液晶パネル30に表示された画像を透過させることができればよく、例えば透明な樹脂のように光を透過する種々の材料で形成することができる。また、カバー材10は、表示面に対して垂直方向から見た形状が正方形または円形等の長方形以外の形状であってもよい。
【0020】
図1?3に示すとおり、例えば、実施形態1における凹部11、13は、被タッチ表面10fに対して垂直な方向から見た形状が円形であり、凹部12は、被タッチ表面10fに対して垂直な方向から見た形状が略長方形である。以下の説明において、被タッチ表面10fに対して垂直な方向から見た形状は、単に平面形状と表記される。凹部12は、凹部11と凹部13との間に配置されており、凹部12の長辺方向は、凹部11の中心と凹部13の中心を結ぶ直線方向と平行である。また、凹部11、12、13は、カバー材10の長辺に沿うように配置されており、被タッチ表面10fにおいて中央よりも当該長辺に寄って配置されている。
【0021】
なお、凹部11、12、13の配置は、上記のような配置に限らず、自由に配置されてよい。例えば、凹部11、12、13は、カバー材10の短辺に沿うように並べて配置されてもよいし、被タッチ表面10fの中央に並べて配置されていてもよい。ただし、凹部11、12、13が被タッチ表面10fの中央よりも長辺または短辺に寄って配置されていた方が、凹部11、12、13が目立ちにくくなる点で好ましい。また、カバー材10は、凹部11、12、13を有さなくてもよく、例えば、凹部11、12、13のうちいずれか1つまたは2つを組み合わせて有していてもよい。
【0022】
図4は、図1におけるA-A’断面を示す図である。図4に示すように、凹部12は、被タッチ表面10fに設けられた深さが寸法L1の溝である。これにより、操作者は、凹部12の縁に触れることで、凹部12の位置を知ることができる。例えば、凹部12は、被タッチ表面10fを切削することにより形成される。また、例えば実施形態1における寸法L1は、0.1mmである。なお、寸法L1は、0.02mm以上0.5mm以下であることが好ましい。寸法L1が0.02mm以上である場合、カバー材10は、人間が指の触覚によって凹部12を認識する可能性を高めることができる。寸法L1が0.5mm以下である場合、カバー材10は、凹部12が液晶パネル30の表示画像の視認を妨げる可能性を低減することができる。また、上記の説明は凹部12に関する説明であるが、凹部11、13についても上記の説明が適用できる。これより、タッチ検出機能付き表示装置1によれば、操作者は、凹部11、12、13に触れることで、液晶パネル30の表示面を視認せずに凹部11、12、13の位置を知ることができる。
【0023】
なお、実施形態1における凹部11、12、13は、被タッチ表面10fを切削して形成されているが、透明フィルムを用いて形成されてもよい。図5は、透明フィルムを用いて凹部を形成する場合の図1におけるA-A’断面を示す図である。透明フィルムF1を用いて凹部を形成する場合、透明フィルムF1は、例えば、略長方形の貫通孔を有し被タッチ表面10fの一部に重なる。凹部12の壁面は、透明フィルムF1の断面である当該貫通孔の断面である。例えば、透明フィルムF1は、ポリエチレンテレフタレート等で形成される飛散防止フィルムであり、厚みが寸法L1である。これにより、操作者は、凹部12の縁に触れることで、凹部12の位置を知ることができる。また、透明フィルムF1は、円形の貫通孔を2つ有している。凹部11の壁面は、2つの当該貫通孔のうち一方の貫通孔の断面である。凹部13の壁面は、2つの当該貫通孔のうち他方の貫通孔の断面である。これより、タッチ検出機能付き表示装置1によれば、操作者は、凹部11、12、13に触れることで、液晶パネル30の表示面を視認せずに凹部11、12、13の位置を知ることができる。タッチ検出機能付き表示装置1は、透明フィルムF1を備えることで、被タッチ表面10fを切削するよりも容易に凹部11、12、13を形成することができる。なお、凹部11、12、13の壁面は、一部に透明フィルムF1の断面を含んでいてもよい。例えば、凹部11、12、13の壁面の一部が透明フィルムF1の断面であって、壁面のその他の部分がタッチ検出機能付き表示装置1を取り付ける筐体等で形成されていてもよい。
【0024】
図6は、タッチ検出装置と制御手段との関係を説明するブロック図である。タッチ検出機能付き表示装置1は、タッチ検出装置40に接続される制御手段50を有する。被タッチ表面10fのうち指が接触または近接する部分は、静電容量が変化する。タッチ検出装置40が凹部11、12、13のうちいずれかの凹部の近傍で静電容量の変化を検出したとき、制御手段50は、当該凹部に割り当てられた入力機能に応じて信号を発信させることができる。また、制御手段50は、タッチ検出装置40により検出される静電容量が変化する位置の軌跡に応じて発信する信号を変化させることができる。また、タッチ検出装置40が凹部11、12、13のうちいずれかの凹部の近傍でない位置で静電容量の変化を検出したとき、制御手段50は、部11、12、13のそれぞれに割り当てられた入力機能に応じた信号を発信しない。また、凹部の近傍は、タッチ検出装置40のうち凹部の縁、凹部の縁より内側の部分または凹部の縁の周辺部分に重なる部分を意味する。
【0025】
制御手段50は、位置形状記憶手段51と、軌跡記憶手段52と、比較手段53と、出力手段54を有し、タッチ検出装置40と機器制御手段60とに接続されている。制御手段50は、例えば、マイクロコンピュータであって、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、入出力回路(I/O(:Input/Output) Device)とを含む。位置形状記憶手段51は、例えば、メモリとしてのRAMに保持される情報により、凹部11、12、13の位置および平面形状を記憶している。軌跡記憶手段52は、CPU、ROM及びRAMにより実現される機能であって、CPUで演算された、タッチ検出装置40によって検出される静電容量が変化した位置の軌跡を例えばメモリとしてのRAMに記憶する。比較手段53は、CPU、ROM及びRAMにより実現される機能であって、タッチ検出装置40によって検出される静電容量が変化した位置の情報と位置形状記憶手段51に記憶された情報とを比較することができ、また比較手段53は、軌跡記憶手段52に記憶された情報と位置形状記憶手段51に記憶された凹部11、12、13の位置および平面形状の情報とを比較することができる。出力手段54は、CPU、ROM、RAM及び入出力回路により実現される機能であって、比較手段53による比較の結果に応じて信号を機器制御手段60へ発信する手段である。
【0026】
例えば、制御手段50は、タッチ検出装置40が検出する、静電容量が変化した位置の情報を一定時間ごとに取り込む。比較手段53は、タッチ検出装置40によって検出される静電容量が変化した位置と位置形状記憶手段51に記憶された凹部11、12、13の位置とを比較する。当該比較の結果、タッチ検出装置40が凹部11、12、13のうちいずれかの凹部の近傍で静電容量の変化を検出していた場合、比較手段53は、出力手段54に信号を発信させる。出力手段54は、液晶パネル30を制御する機器制御手段60に対して信号を発信する。例えば、機器制御手段60は、出力手段54からの信号を受信すると、液晶パネル30を当該信号の変化を待ち受ける状態にする。
【0027】
軌跡記憶手段52は、タッチ検出装置40から受け取った情報から静電容量が変化した位置の軌跡を演算し、記憶する。タッチ検出装置40から受け取った情報から演算された、静電容量が変化した位置の軌跡は、例えば、指が被タッチ表面10f上で移動したときの軌跡である。さらに、軌跡記憶手段52は、タッチ検出装置40から受け取った情報と当該情報を受け取った時間とから、静電容量が変化した位置の移動方向および移動速度を演算し、記憶する。タッチ検出装置40が凹部11、12、13のうちいずれかの凹部の近傍で静電容量の変化を検出したと判定した比較手段53は、軌跡記憶手段52に記憶された静電容量が変化した位置の軌跡と位置形状記憶手段51に記憶された凹部11、12、13のうち静電容量が変化した位置に最も近い凹部の平面形状とを比較する。当該比較の結果、当該軌跡が当該凹部の平面形状に沿っていた場合、比較手段53は、軌跡記憶手段52に記憶された静電容量が変化した位置の移動方向および移動速度に応じて、出力手段54が発信する信号を変化させる。このように、制御手段50は、タッチ検出装置40により検出される静電容量が変化した位置の軌跡に応じて出力手段54が発信する信号を変化させる。機器制御手段60は、出力手段54からの信号の変化に応じて、液晶パネル30を制御する。なお、機器制御手段60が制御する対象は、外部装置であるオーディオまたは空調設備等であってもよい。
【0028】
機器制御手段60は、例えば、出力手段54からの信号の変化に応じて液晶パネル30を制御することで、表示画像を拡大または縮小させる。また、機器制御手段60は、出力手段54からの信号の変化に応じて液晶パネル30を制御することで、表示の輝度を調節させてもよいし、表示画像をスクロールさせてもよい。また、機器制御手段60は、出力手段54からの信号の変化に応じて外部装置であるオーディオを制御することで、オーディオの音量を調節させてもよいし選曲をさせてもよい。また、機器制御手段60は、出力手段54からの信号の変化に応じて外部装置である空調設備を制御することで、空調の温度を調節させてもよいし風量を調節させてもよい。なお、タッチ検出装置40が凹部11、12、13のうちいずれかの凹部の近傍で静電容量の変化を検出した時点で、機器制御手段60は、液晶パネル30を制御することで、液晶パネル30の凹部11、12、13と重なる部分に各種の入力用の画像等を表示させてもよい。
【0029】
上述したように、凹部11の平面形状は円形である。指が被タッチ表面10fに接触または近接すると、タッチ検出装置40は、静電容量が変化した位置を検出する。比較手段53は、タッチ検出装置40によって検出される静電容量が変化した位置と位置形状記憶手段51に記憶された凹部11、12、13の位置とを比較する。例えば、指が凹部11に接触または近接した場合、当該比較の結果、比較手段53は、タッチ検出装置40が凹部11の近傍で静電容量の変化を検出したと判定する。指が凹部11に接触または近接した後、凹部11の縁に沿って移動した場合、軌跡記憶手段52は、タッチ検出装置40から受け取った情報から静電容量が変化した位置の軌跡を演算し、円形状の軌跡を記憶する。さらに、軌跡記憶手段52は、タッチ検出装置40から受け取った情報と当該情報を受け取った時間とから、静電容量が変化した位置の移動方向および移動速度を演算し、記憶する。そして、タッチ検出装置40が凹部11の近傍で静電容量の変化を検出したと判定した比較手段53は、軌跡記憶手段52に記憶された円形状の軌跡と位置形状記憶手段51に記憶された凹部11の平面形状とを比較する。指が凹部11の縁に沿って移動したので、当該比較の結果、比較手段53は、円形状の軌跡が凹部11の平面形状に沿っていると判定する。当該判定をした比較手段53は、軌跡記憶手段52に記憶された静電容量が変化した位置の移動方向および移動速度に応じて、出力手段54が発信する信号を変化させる。このように、制御手段50は、タッチ検出装置40により検出される静電容量が変化した位置の軌跡に応じて出力手段54が発信する信号を変化させる。機器制御手段60は、出力手段54からの信号の変化に応じて、液晶パネル30を制御することで表示の輝度を調節させる。なお、指が凹部11の縁に沿って移動した場合に機器制御手段60が変化させる対象は、表示の輝度に限らない。
【0030】
上述したように、凹部12の平面形状は略長方形である。指が被タッチ表面10fに接触または近接すると、タッチ検出装置40は、静電容量が変化した位置を検出する。比較手段53は、タッチ検出装置40によって検出される静電容量が変化した位置と位置形状記憶手段51に記憶された凹部11、12、13の位置とを比較する。例えば、指が凹部12に接触または近接した場合、当該比較の結果、比較手段53は、タッチ検出装置40が凹部12の近傍で静電容量の変化を検出したと判定する。指が凹部12に接触または近接した後、凹部12の縁に沿って移動した場合、軌跡記憶手段52は、タッチ検出装置40から受け取った情報から静電容量が変化した位置の軌跡を演算し、直線状の軌跡を記憶する。さらに、軌跡記憶手段52は、タッチ検出装置40から受け取った情報と当該情報を受け取った時間とから、静電容量が変化した位置の移動方向および移動速度を演算し、記憶する。そして、タッチ検出装置40が凹部12の近傍で静電容量の変化を検出したと判定した比較手段53は、軌跡記憶手段52に記憶された直線状の軌跡と位置形状記憶手段51に記憶された凹部12の平面形状とを比較する。指が凹部12の縁に沿って移動したので、当該比較の結果、比較手段53は、直線状の軌跡が凹部12の平面形状に沿っていると判定する。当該判定をした比較手段53は、軌跡記憶手段52に記憶された静電容量が変化した位置の移動方向および移動速度に応じて、出力手段54が発信する信号を変化させる。このように、制御手段50は、タッチ検出装置40により検出される静電容量が変化した位置の軌跡に応じて出力手段54が発信する信号を変化させる。機器制御手段60は、出力手段54からの信号の変化に応じて、液晶パネル30を制御することで表示画像をスクロールさせる。なお、指が凹部12の長辺の縁に沿って移動した場合に機器制御手段60が変化させる対象は、表示画像のスクロールに限らない。
【0031】
上述したように、凹部13の平面形状は円形である。指が被タッチ表面10fに接触または近接すると、タッチ検出装置40は、静電容量が変化した位置を検出する。比較手段53は、タッチ検出装置40によって検出される静電容量が変化した位置と位置形状記憶手段51に記憶された凹部11、12、13の位置とを比較する。例えば、指が凹部13に接触または近接した場合、当該比較の結果、比較手段53は、タッチ検出装置40が凹部13の近傍で静電容量の変化を検出したと判定する。指が凹部13に接触または近接した後、凹部13の縁に沿って移動した場合、軌跡記憶手段52は、タッチ検出装置40から受け取った情報から静電容量が変化した位置の軌跡を演算し、円形状の軌跡を記憶する。さらに、軌跡記憶手段52は、タッチ検出装置40から受け取った情報と当該情報を受け取った時間とから、静電容量が変化した位置の移動方向および移動速度を演算し、記憶する。そして、タッチ検出装置40が凹部13の近傍で静電容量の変化を検出したと判定した比較手段53は、軌跡記憶手段52に記憶された円形状の軌跡と位置形状記憶手段51に記憶された凹部13の平面形状とを比較する。指が凹部13の縁に沿って移動したので、当該比較の結果、比較手段53は、円形状の軌跡が凹部13の平面形状に沿っていると判定する。当該判定をした比較手段53は、軌跡記憶手段52に記憶された静電容量が変化した位置の移動方向および移動速度に応じて、出力手段54が発信する信号を変化させる。このように、制御手段50は、タッチ検出装置40により検出される静電容量が変化した位置の軌跡に応じて出力手段54が発信する信号を変化させる。機器制御手段60は、出力手段54からの信号の変化に応じて、オーディオを制御することでオーディオの音量を調節させる。なお、指が凹部13の縁に沿って移動した場合に機器制御手段60が変化させる対象は、オーディオの音量に限らない。また、指が凹部13の縁に沿って移動した場合に機器制御手段60が変化させる対象は、指が凹部11の縁に沿って移動した場合に機器制御手段60が変化させる対象と同じであってもよい。
【0032】
このように、タッチ検出機能付き表示装置1は、凹部11、12、13のうちいずれかの凹部に沿って指が移動した際の入力機能を凹部11、12、13のそれぞれに割り当てることができる。また、指が凹部11、12、13のうちいずれかの凹部の縁に沿って移動した場合に機器制御手段60が変化させる対象は、操作者が当該凹部の平面形状から想起しやすい対象となっている。
【0033】
以上より、タッチ検出機能付き表示装置1は、操作者の指を表示面上にある凹部11、12、13に触れさせることで、情報入力を可能にする。また、タッチ検出機能付き表示装置1は、操作者が凹部11、12、13を視認できない状況でも、操作者の触覚を通じて凹部11、12、13の位置を知らせることができる。このため、タッチ検出機能付き表示装置1は、表示面を視認できない状況においても、表示面上での操作による情報入力を容易にすることができる。
【0034】
また、制御手段50が、タッチ検出装置40により検出される静電容量が変化した位置の軌跡に応じて出力手段54が発信する信号を変化させることができるため、タッチ検出機能付き表示装置1は、操作者の指の動きに応じた情報入力を可能にする。これにより、タッチ検出機能付き表示装置1は、指が凹部11、12、13のうちいずれかの凹部の縁に沿って移動した場合に機器制御手段60が変化させる対象を、操作者が当該凹部の平面形状から想起しやすい対象とすることができる。このため、タッチ検出機能付き表示装置1は、表示面上での操作による情報入力をより容易にすることができる。
【0035】
また、タッチ検出機能付き表示装置1は、液晶パネル30とカバー材10との間に光学弾性樹脂である緩衝層20を有することで、カバー材10と光学弾性樹脂との境界および光学弾性樹脂と液晶パネル30との境界における光の反射を低減することができる。これらの境界における光の反射が低減すると、凹部11、12、13が目立ちにくくなる。このため、タッチ検出機能付き表示装置1は、凹部11、12、13が液晶パネル30の表示画像の視認を妨げる可能性を低減することができる。 」

「【図1】



「【図4】



「【図6】



(2)上記(1)から、引用文献1には次の技術的事項が記載されているものと認められる。
ア タッチ検出機能付き表示装置1は、タッチ検出装置40を備えた液晶パネル30、緩衝層20、カバー材10を備え(【0012】、【0014】)、また、制御手段50及び機器制御手段60を備える(【0024】?【0025】、【図6】)。

イ カバー材10は液晶パネル30の画像を表示する表示面側に重ねられ、表示面を被覆して保護する部材である。
タッチ検出装置40は静電容量式であるため、カバー材10の、液晶パネル30と対向する表面と反対側の表面である被タッチ表面10fに、対象物(例えば、人間の指)が接触または近接したことを検出できる。(【0019】)

ウ カバー材10の被タッチ表面10fの側には、円形の凹部11、13、略長方形の凹部12が形成されており、操作者は、凹部11、12、13に触れることで、液晶パネル30の表示面を視認せずに凹部11、12、13の位置を知ることができる。(【0020】?【0022】、【図4】)

エ 制御手段50は、位置形状記憶手段51と、軌跡記憶手段52と、比較手段53と、出力手段54を有する。
制御手段50は、静電容量が変化した位置の情報を一定時間ごとに取り込み、軌跡記憶手段52は、指がカバー部材10の被タッチ表面10f上で移動したときの軌跡を演算して記憶し、さらに、静電容量が変化した位置の移動方向と移動速度を演算して記憶する。
比較手段53は、軌跡記憶手段52に記憶された軌跡と、位置形状記憶手段51が記憶している凹部11、12、13の位置と平面形状とを比較し、当該軌跡が凹部の平面形状に沿っていた場合、軌跡記憶手段52に記憶された移動方向と移動速度に応じて、出力手段54が発信する信号を変化させる。(【0025】、【0027】)

オ 上記エに関して、例えば、指が凹部11の縁に沿って移動した場合、軌跡記憶手段52は円形状の軌跡を記憶し、静電容量が変化した位置の移動方向および移動速度を演算し、比較手段53が、記憶した円形状の軌跡が凹部11の平面形状に沿っていると判定した場合、記憶した移動方向および移動速度に応じて、出力手段54が発信させる信号を変化させる。(【0029】)

カ 機器制御手段60は、出力手段54からの信号の変化に応じて、外部装置を制御する。例えば、液晶パネルの表示画像をスクロールさせる、オーディオの音量を調節する、空調の温度や風量を調節させる、といった制御を行う。(【0027】、【0028】)

(3)上記(1)、(2)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「タッチ検出機能付き表示装置1が、タッチ検出装置40を備えた液晶パネル30、緩衝層20、カバー材10、制御手段50、機器制御手段60を備え、
タッチ検出装置40は静電容量式であり、
カバー材10は液晶パネル30の画像を表示する表示面側に重ねられ、カバー材10の、液晶パネル30と対向する表面と反対側の表面である被タッチ表面10fには、円形の凹部11、13、略長方形の凹部12が形成されており、操作者は、凹部11、12、13に触れることで、液晶パネル30の表示面を視認せずに凹部11、12、13の位置を知ることができるものであり、
制御手段50は、カバー材10の被タッチ表面10f上で指が移動したときの静電容量が変化した位置の軌跡、移動方向、移動速度を演算して記憶し、前記軌跡が凹部11、12、13の平面形状に沿っていた場合、前記移動方向と前記移動速度に応じて出力する信号を変化させ、
機器制御手段60は、制御手段50が出力する信号の変化に応じて外部装置を制御するものであって、
指が凹部11の縁に沿って移動した場合、静電容量が変化した位置として円形状の軌跡を記憶し、静電容量が変化した位置の移動方向と移動速度に応じて、オーディオの音量や選曲、空調設備の温度や風量を調節する、
タッチ検出機能付き表示装置1。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばタッチパッド等の入力装置に関し、特に、何らかの処理が操作者の指の動作に対応付けられている入力装置の技術分野に関する。
「【背景技術】
【0002】
この種の入力装置には、例えば、一定間隔で表面加工が施されたタッチパッドを複数の領域に区切り、該区切られた複数の領域各々に文字、数字等が割り当てられている操作入力装置が提案されている。ここでは特に、操作者が、タッチパッドにタッチすることによって領域が決定され、指をスライドすることによって、決定された領域に割り当てられている文字等の中から所望する文字等を検索し、指をタッチパッドから離すことによって文字等の選択が確定する技術が記載されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007-72660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の背景技術によれば、操作者が指の一動作(例えばタッチ、スライド等)によって指定することができる処理は一つである。すると、例えば複数の条件を指定して検索を行う場合には、条件の数に応じて複数回、操作者が入力装置を操作しなければならなくなり、使い勝手が低下する可能性があるという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、操作者の操作用部位の一動作で複数の処理を指定することができる入力装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の入力装置は、上記課題を解決するために、入力領域を通る第1軸に沿って該入力領域を区切ると共に凹凸を呈する区切部材を有し、前記入力領域において前記区切部材を跨いで行われる、操作者の操作用部位の位置変化を入力の一つとして受け付け可能な受付手段と、前記受け付けられた入力に応じて、少なくとも一つのイベントを特定する特定手段とを備える。
【0007】
本発明の入力装置によれば、例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる受付手段は、入力領域を通る第1軸(例えばY軸)に沿って該入力領域を区切る(即ち、区切のラインは夫々第1軸に交差する第2軸(例えばX軸)に沿っている)と共に凹凸を呈する区切部材を有し、入力領域におういて区切部材を跨いで行われる、操作者の操作用部位の位置変化を入力の一つとして受け付け可能である。ここに、本発明に係る「操作用部位」とは、典型的には、指を意味する。また、「凹凸を呈する」とは、平面上に凸部や凹部が形成されることに限らず、例えば空中に棒状等の区切部材が形成又は配置されることを含んでよい。」

「【0049】
<第1実施形態>
本発明の入力装置に係る第1実施形態を、図1乃至図6を参照して説明する。ここに、図1は、第1実施形態に係る入力装置の構成を示すブロック図である。尚、図中の矢印は、信号の流れを示している。
【0050】
図1において、本実施形態に係る入力装置1は、タッチパッド11、処理部20、検索データベース(DB)を格納する記憶装置30、表示装置40及びスピーカ50を備えて構成されている。処理部20は、入力位置受取部201、入力動作判定部202、検索条件生成部203、検索実行部204、音声生成部205、表示データ生成部206、映像表示部207、選択位置表現部208及びメモリ209を備えて構成されている。
【0051】
ここに、本実施形態に係る「タッチパッド11」、「処理部20」及び「入力動作判定部202」は、夫々、本発明に係る「受付手段」、「特定手段」及び「ジェスチャー認識手段」の一例である。また、本実施形態に係る「入力位置受取部201」は、本発明に係る「受付手段」及び「位置認識手段」の一例であり、本実施形態に係る「表示装置40」及び「スピーカ50」は、本発明に係る「通知手段」の一例である。
【0052】
尚、記憶装置30は、入力装置1に内蔵されてなくてよく、例えばUSB(Universal Serial Bus)ケーブル、光ケーブル等を介して外付けされていてもよいし、ネットワークを介して接続されていてもよい。また、本実施形態では、タッチパッド11を静電容量式のタッチパッドとして説明するが、感圧式のタッチパッドであってもよい。
【0053】
ここで、タッチパッド11について、図2及び図3を参照して説明を加える。ここに、図2(a)は、本実施形態に係るタッチパッドの平面図であり、図2(b)は、図2(a)のA-A´線断面図である。図3(a)は、タッチパッド上に設定された複数の領域を示す概念図であり、図3(b)は、各領域に割り当てられた情報の一例を示す概念図である。
【0054】
図2において、タッチパッド11は、パッド111の入力領域111aに、本発明に係る「区切部材」の一例としての複数の凸部112が形成されている。本実施形態では、タッチパッド11は、凸部112上を、本発明に係る「操作用部位」の一例としての操作者の指が通過しても信号が発生しないように構成されている。尚、タッチパッド11は、矩形に限らず、例えば円形、多角形等であってもよい。
【0055】
図3(a)において点線で示すように、図2に示した入力領域111aは、凸部112によって、複数の部分領域11a?11fに区画されている。他方、図1に示したメモリ209には、図3(b)に示すような仮想入力領域301が格納されている。情報が夫々割り当てられた仮想入力領域301における各部分領域301a?301fと、タッチパッド11の各部分領域11a?11fとが夫々対応している。この結果、各部分領域11a?11fに情報が割り当てられる。
【0056】
尚、本実施形態では、説明の便宜上、仮想入力領域として示したが、例えば「x1,y1?x2,y2:Pops」等のように、座標範囲で指定してもよい。また、操作者の指が最初に触れたタッチパッド11の部分領域に、仮想入力領域301の部分領域301aの情報が割り当てられるように構成してもよい。この場合は、対応する部分領域を順次繰り下げるようにすればよい。具体的には例えば、操作者が部分領域11eに最初に触れた場合、部分領域11eに部分領域301aの情報を、部分領域11fに部分領域301bの情報を、部分領域11aに部分領域301cの情報を、・・・と順次割り当てればよい。
【0057】
再び図1に戻り、入力位置受取部201は、タッチパッド11からの信号に基づいて、タッチパッド11上における操作者の指の位置(即ち、座標)を検出する。そして、入力位置受取部201は、順次、検出された位置を示す信号を、入力動作判定部202に対し送信する。
【0058】
入力動作判定部202は、受信した信号から指の軌跡を検出すると共に、該検出された軌跡が予め定められたジェスチャーと一致するか否かを判定する。ジェスチャーと一致すると判定された場合、入力動作判定部202は、一致すると判定されたジェスチャーに対応付けられているイベントを特定する。一方、ジェスチャーと一致しないと判定された場合、入力動作判定部202は、典型的には、無効な入力として処理する。
【0059】
ここで、入力動作判定部202の動作を、図4を参照して具体的に説明する。ここに、図4(a)は、タッチパッド上における操作者の指の動作の一例を示す概念図であり、図4(b)は、入力動作判定部が検出した指の軌跡の一例を示す概念図である。
【0060】
図4(a)に示すように、操作者が指60を、タッチパッド11の部分領域11a及び11cにおいて左右に移動させつつ、図4(a)の上から下へ移動させた場合、入力動作判定部202は、指60の動作を、図4(b)に示すような軌跡401として検出する。
【0061】
本実施形態では、「左右方向への軌跡」は、「選択」を示すジェスチャーとして、「断続入力、且つ上下方向への軌跡」は、「AND検索」を示すジェスチャーとして設定されている。従って、入力動作判定部202は、部分領域11a及び11cに夫々割り当てられている情報の選択、並びにAND検索であると判定する。
【0062】
再び図1に戻り、入力動作判定部202は、メモリ209に格納されている仮想入力領域301を参照して、選択された部分領域11a及び11cに夫々割り当てられている「Pops」及び「早い」という情報を取得する。そして、「Pops」及び「早い」という情報の選択、並びにAND検索であることを示す信号を、検索条件生成部203、音声生成部205及び表示データ生成部206に対し送信する。
【0063】
検索条件生成部203は、受信した信号に基づいて、「『Pops』且つ『早い』」という検索条件を生成して、該生成された検索条件を示す信号を、検索実行部204に送信する。検索実行部204は、受信した信号に基づいて、記憶装置30に格納されている検索データベースを参照して検索を実行し、検索結果を示す信号を表示データ生成部206に対し送信する。
【0064】
入力動作判定部202からの信号を受信した音声生成部205は、例えば「Pops選択」等の音声を生成して、スピーカ50を介して出力する。他方、入力動作判定部202からの信号を受信した表示データ生成部206は、仮想入力領域301のような映像を示す映像信号を生成して、映像表示部207に対し送信すると共に、例えば部分領域11a及び11cに対応する範囲の文字の色を反転することを示す信号を、選択位置表現部208に対し送信する。この結果、「Pops」及び「早い」という文字の色が反転された映像が表示装置40に表示される。
【0065】
検索実行部204からの信号を受信した表示データ生成部206は、検索結果を示す映像信号を生成して映像表示部207に対し送信する。表示データ生成部206は、更に、入力動作判定部202を介して、入力位置受取部201によって検出された指60の位置を示す信号を受信して、該受信した信号に基づいて、指60の位置に対応する検索結果の、例えば文字の色を反転することを示す信号を、選択位置表現部208に対し送信する。
【0066】
尚、検索結果が表示装置40に表示されている場合には、例えば、タッチパッド11上における指60の上下方向への移動、又は左右方向への移動によって、検索結果がスクロールされるように構成してもよい。更に、タッチパッド11に触れている指の本数に応じてスクロールスピードが変化するように構成してもよい。
【0067】
次に、操作者の指の動作の他の例について、図5及び図6を参照して説明する。ここに、図5(a)及び図6(a)の各々は、図4(a)と同趣旨の、タッチパッド上における操作者の指の動作の他の例を示す概念図であり、図5(b)及び図6(b)の各々は、図4(b)と同趣旨の、入力動作判定部が検出した指の軌跡の他の例を示す概念図である。
【0068】
図5(a)に示すように、操作者が指60を、タッチパッド11の部分領域11a及び11cにおいて左右に移動させつつ、凸部112を避けながら、図5(a)の上から下へ移動させた場合、入力動作判定部202は、指60の動作を、図5(b)に示すような軌跡402として検出する。本実施形態では、「連続入力、且つ上下方向への軌跡」は、「OR検索」を示すジェスチャーとして設定されている。従って、入力動作判定部202は、部分領域11a及び11cに夫々割り当てられている情報の選択、並びにOR検索であると判定する。
【0069】
また、図6(a)に示すように、操作者が指60を、タッチパッド11の部分領域11a、及び11cにおいて左右に移動させつつ、部分領域11aから部分領域11cまでは凸部112の上を通過するように、図6(a)の上から下へ移動させると共に、部分領域11eにおいて左右に移動させつつ、部分領域11cから部分領域11fまでは凸部112を避けながら、図6(a)の上から下へ移動させた場合、入力動作判定部202は、指60の動作を、図6(b)に示すような軌跡403として検出する。そして、入力動作判定部202は、部分領域11a、11c及び11eに夫々割り当てられている情報の選択、並びに、部分領域11c及び11eに夫々割り当てられている情報によるOR検索の結果と部分領域11aに割り当てられている情報とによるAND検索であると判定する。」

「【図2】



「【図3】



「【図4】



したがって、引用文献2には、「タッチパッドの入力領域に複数の凸部を形成し、当該凸部は操作者の指が通過しても信号を発生しないように構成され、タッチパッド上の操作者の指の軌跡を検出し、左右方向の軌跡、上下方向の軌跡、指が凸部を通過することによる検出信号の断続に基づいて、予め定められたジェスチャーと一致するかを判定し、一致する場合、当該ジェスチャーと対応付けられているイベントを特定することで、操作者の動作で複数の処理を指定することができるものとする」、という技術的な事項が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、操作入力装置、より詳細には、タッチパッドを操作する際の操作者の指の移動と停止を制御し易くした操作入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画面上におけるカーソルの移動を制御するために、タッチパッドを備えた操作入力装置が知られている。例えば、特許文献1には、タッチパッドを備えた携帯端末機が開示されている。これは、手指、ペン等の指示体の接触位置の2次元座標を出力すると共に、指示体の押圧力に応じて異なる信号を出力するタッチパッドを操作手段とし、情報とカーソルを表示する表示手段と、タッチパッドの操作に応じて、カーソルを移動する移動処理と情報の選択を決定する決定処理とを行う制御手段とを備え、さらに、タッチパッド上に、タッチパッド上をタップ操作することによりカーソルを移動させるカーソル移動領域と、タッチパッド上をタップ操作することにより情報の選択決定を行う決定領域とを設けたものである。
【0003】
上記のタッチパッドは、操作者の指の移動距離に応じてカーソルの移動量を制御することができる。このとき、操作者は、その指を平面状のタッチパッド上でスライドさせるため、指の移動量は無段階となる。
【特許文献1】特開2004-166109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、タッチパッドを操作して文字や図のようなキャラクタや、行や列を指定するとき、操作者の指は無段階にタッチパッド上を移動することになる。このため、操作者はカーソルを意図する場所に停止させるために、定められた指の移動と停止位置の位置決めの範囲がつかみにくかった。従って、意図する停止位置よりも前あるいは後でカーソルを停止させてしまうことによる誤操作を生じさせやすく、そのたびに再調整の必要があり、入力操作が非効率なものになっていた。
【0005】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、タッチパッドを備える操作入力装置において、タッチパッドの表面に一定間隔で表面加工を施し、操作者の指の移動及び停止を制御し易くすること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、カーソルを表示する表示手段と、操作者の指の移動量に応じて前記カーソルの移動量を制御可能なタッチパッドとを備える操作入力装置において、前記タッチパッドは、前記操作者の指の移動方向と交わるように一定間隔で表面加工が施され、該表面加工の間隔に対応させて前記カーソルの移動量を設定していることを特徴としたものである。」

「【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る操作入力装置の構成例を示すブロック図で、図中、1は操作者の指、10は操作入力装置を示す。操作入力装置10は、タッチパッド11、タッチパッドコントローラ12、表示制御手段13、辞書DB14、メモリ15、表示手段16、及び入力確定手段17を備えている。
【0017】
本発明の操作入力装置10は、例えば、ポータブル音楽プレーヤ、携帯電話機、携帯型情報機器、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどのように、表示手段16を有し、その画面上にカーソルが表示され、カーソル移動をタッチパッド11によって操作可能な装置であって、カーソルの停止位置が操作者の意図とずれることを防止することを主たる目的とする。このため、タッチパッド11上をスライドさせる指1を特定の位置で停止し易くするために、タッチパッド11の表面に断面波型の加工を行うなどの表面加工を施す。」

「【0024】
図2は、本発明の他の実施形態に係る操作入力装置10の構成例を示す図で、図中、20はLCDなどの表示装置、30は記録再生装置(レコーダなど)やPC本体等の外部機器を示す。本実施形態では、外部機器30と表示装置20が接続され、操作入力装置10からの操作入力信号は、外部機器30で受信され、外部機器30から表示装置20に送られる。
【0025】
本発明の操作入力装置10は、表示装置20や外部機器30を遠隔操作可能なリモートコントロール装置に適用してもよい。この場合、表示手段16が外部の表示装置20となり、表示制御手段13、辞書DB14、メモリ15、及び入力確定手段17を外部機器30あるいは表示装置20に備える構成としてもよい。また、表示装置20あるいは外部機器30は、テレビチューナ機能、ラジオチューナ機能、音楽プレーヤ機能などの機能を備えるようにしてもよい。」

「【0031】
(第1の実施形態)
図3は、本発明の第1の実施形態に係るタッチパッド11の表面加工処理の一例を示す図である。操作入力装置10は、タッチパッド11に対して操作者の指1が触れた点を始点として認識し、始点を含む領域に割り当てられている選択候補のリストを表示手段16の画面に表示する。そして、タッチパッド11上の始点からの操作者の指1の移動方向及び移動量に応じて、カーソル16aを移動させて、選択候補を順に選択状態にする。本例では、白抜き表示されている選択候補「BBB」が選択状態にあることを示す。
【0032】
図3(A)において、タッチパッド11は、操作者の指1の移動方向と交わるように一定間隔で表面加工11aが施され、表面加工11aの間隔に対応させてカーソル16aの移動量が設定されている。図3(B)は、図3(A)に示すタッチパッド11のXX′断面を示す図である。本実施形態のタッチパッド11は、カーソル移動の操作のため、操作者の指1を直線状に移動させるように設定されており、表面加工11aは、操作者の指1の移動方向と交わるように一定間隔で施されている。
【0033】
本実施形態では、表面加工11aとして、図3(B)に示すように断面波型に加工され、領域「00」から領域「04」までの各領域がカーソル位置「A」からカーソル位置「E」までに対応している。また、波型の凹部が指1の停止位置に対応して形成され、操作者の指1が波型の凸部をひとつ越えて次の凹部に停止すると、表示手段16のカーソル16aがひとつ移動する。なお、その逆、すなわち、波型の凸部が指1の停止位置に対応して形成されていてもよい。この場合、操作者の指1が波型の凹部をひとつ越えるごとにカーソル16aがひとつ移動する。
【0034】
図3(A)及び(B)において、指1が領域「00」にタッチしている間は、カーソル位置「A」にカーソル16aが当たり、指1をスライドさせて領域「01」にタッチしている間は、カーソル位置「B」にカーソル16aが当たる。以下、指1をスライドさせて領域「02」にタッチしている間は、カーソル位置「C」にカーソル16aが当たり、指1が領域「03」にタッチしている間は、カーソル位置「D」にカーソル16aが当たり、指1が領域「04」にタッチしている間は、カーソル位置「E」にカーソル16aが当たるように設定されている。
【0035】
このように、タッチパッド11に表面加工11aを施して断面波型にすることにより、操作者はタッチパッド11上において指1を順にスライドさせる際に、波型の凹部を指1の触覚で感知することができるため、この凹部で指1のスライドを停止させることができる。これにより、操作者の指1が波型の凸部をひとつ越えるごとに、表示手段16のカーソル16aをひとつ移動させることが可能となり、操作者は指1の停止位置の位置決めがし易くなり、誤操作を減少させることができる。
【0036】
なお、操作者の指1の移動方向は、タッチパッド1の表面における上下方向、左右方向、斜め方向のいずれの方向にしてもよく、各方向に対して断面波型を形成することで、同様の操作を行うことができる。」

「【図3】



したがって、引用文献3には、「タッチパッドの表面に一定間隔で凹凸部を設け、指が凹部を1つ越える、あるいは、指が凸部を1つ越えるごとに、表示手段のカーソルを一つ移動させるものとすることで、操作者は指の停止位置の位置決めをし易くなり、誤操作を減少させる」、という技術的事項が記載されていると認められる。

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【請求項1】
サーボ機構の手動操作用の入力操作部が画面表示されるタッチパネルと、前記入力操作部の入力操作に応じて制御対象機械のサーボ機構に移動指令を与える操作認識移動指令手段とを備えたタッチパネルによる機械制御装置。
【請求項2】
前記操作認識移動指令手段で与える移動指令が、パルス列である請求項1記載のタッチパネルによる機械制御装置。
【請求項3】
前記入力操作部には、複数のタッチスイッチ表示が、指でなぞって連続的に入力操作可能なように配列され、前記操作認識移動指令手段は、タッチスイッチ表示がなぞられた数および方向に対応して前記移動指令の移動量および移動方向を定めるものとした請求項1または請求項2記載のタッチパネルによる機械制御装置。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自動運転の各種の機械、例えば工作機械やその他の産業機械を手動で動作させる場合に用いるタッチパネルによる機械制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】従来、NC工作機械等の産業機械において、手動で動作させたい場合、制御装置本体にケーブルで接続された手動パルス発生装置を用いている。産業機械の制御装置は、以前は専用のコンピュータ装置を用いることが多かったが、パーソナルコンピュータ(以下「パソコン」と称す)の高性能化に伴い、パソコンを使用することが増えている。パソコンを用いた制御装置は、その入力手段としてタッチパネルを採用することが主流となっている。しかし、機械の手動操作を行う場合は、以前と同様に、専用のハードウェアである手動パルス発生装置によっており、パソコンの採用による低コスト化が十分に果たされていない。
【0003】この発明の目的は、専用のハードウェアを必要とせずに、機械の手動による操作が簡単に行えるタッチパネルによる機械制御装置を提供することである。この発明の他の目的は、ハードウェアとして存在していた手パルスの発生手段を、ソフトウェア的に実現することである。この発明のさらに他の目的は、移動量、移動方向の手動による指令も簡単な操作で行えるようにすることである。」
(なお、【0003】における「フソトウェア的」という記載は、「ソフトウェア的」の誤記と認めた。)

「【0009】画面表示手段12は、タッチパネル11のディスプレイに、サーボ機構2の手動操作用の入力操作部19を画面表示する手段である。入力操作部19は、複数のタッチスイッチ表示20が、指でなぞって連続的に入力操作可能なように配列されたものとしてある。各タッチスイッチ表示20は、サークル状に配列されている。操作認識移動指令手段13は、タッチパネル11の入力操作部19の入力操作に応じて制御対象機械1のサーボ機構2に移動指令sを与える手段である。移動指令sはパルス列からなり、サーボコントローラ5に入力される。
【0010】操作認識移動指令手段13は、タッチパネル11の入力の認識につき、入力操作部19に対応する範囲が指等で触れられた場合に入力があったと判断するものとしてある。入力操作部19がタッチスイッチ表示20の列からなる場合は、各タッチスイッチ表示20のいずれかの箇所が触れられる毎に、そのタッチスイッチ表示20と対応して予め設定された所定の座標入力があったと認識される。なお、操作認識移動指令手段13は、上記のようにタッチスイッチ表示20毎に定まった座標値とする代わりに、触れられた座標位置をそのまま入力座標として認識するものとしても良く、その場合、タッチスイッチ表示20は入力を認識する範囲の目安を表示する役目を果たすものとされる。
【0011】操作認識移動指令手段13は、上記の入力認識を行う手段の他に、移動指令付与手段14、方向決定手段15、速度決定手段16、操作連続性認識手段17、および不連続時停止手段18を有し、例えば図2に流れ図で示す制御を行う。
【0012】移動指令付与手段14は、タッチパネル11の入力座標の変化を認識し、その変化によりサーボコントローラ5に移動指令sを与える手段であり、図2の処理の場合、ステップS2,S6の正転指令および逆転指令を行う手段となる。また移動指令付与手段14は、移動指令sとして、タッチパネル11の入力座標の変化量に応じた移動量を指令する。例えば、タッチパネル11の入力操作部19がタッチスイッチ表示20の並びからなる場合、移動指令付与手段14は、なぞり箇所がタッチスイッチ表示20の1個分移ることで、所定個数のパルス数を発生するものとされる。なお、移動指令付与手段14による移動指令sの移動量は、タッチパネル11の入力操作部19が触れられている時間によって定めるようにしても良い。例えば、入力操作部19が触れられている時間だけ、移動が続くように、移動指令sを与えるものとしても良い。方向決定手段15は、入力座標が増加の場合は正転、減少の場合は逆転として軸方向を制御する手段であり、図2の処理では判断ステップS1,S5が該当する。速度決定手段16は、入力座標の増加量を監視し、その量に応じて送り速度を変化させる手段であり、図2の処理ではステップS3,S4が該当する。この場合の入力座標の増加量は、単位時間当たりの入力座標の増加量としている。なお速度決定手段16は、単位時間当たりの入力座標の増加量ではなく、タッチパネル11から1回の連続した入力操作が行われる毎の入力座標の増加量に応じて送り速度を変化させるものとしても良い。その場合、移動指令付与手段14は、例えば、前記のように入力操作部19が触れられている時間によって移動量を定めるようにしても良く、また1回の入力操作で一定の移動量だけ移動するようにしても良い。」

「【0014】図4は制御対象機械1の一例を示す。この例では、制御対象機械1はタレット式の旋盤であり、タレット21を搭載した送り台22が、図1の例の可動体3に相当する。送り台22は、ベッド23の案内24上を、主軸台25の主軸26に対して近接,離間する方向に移動自在に設置され、ボールねじ機構等の送り機構6を介してサーボモータ4により進退駆動される。
【0015】上記構成の動作を説明する。まず概略を説明する。タッチパネル11の各タッチスイッチ表示20をオペレータが指30等で順次連続的に触れることにより、操作認識移動指令手段13から、パルス列による移動指令sがサーボコントローラ5に与えられる。サーボコントローラ5は、この移動指令sによりサーボモータ4を駆動し、移動台3を移動させる。タッチスイッチ表示20が図示のようにサークル状に配列されている場合、任意のタッチスイッチ表示20を触れ、指30で円または円弧を描くように各タッチスイッチ表示20を順次なぞることにより、操作認識移動指令手段13は各タッチスイッチ表示20の接触毎に得られる信号が何方の方向に回転されているかを認識して移動方向を確定し、その移動方向に対応する方向に駆動する移動指令sを出力する。指30が複数のタッチスイッチ表示20に接触する速度が異なれば、移動指令sとなるパルスを出力する速度も異なるので、結果的にサーボモータ4の回転速度が変わることになり、従来はハードウェア的に構成されていた手パルス発生器と同等の機能が、タッチパネル11上で実現されることになる。」

「【図1】



したがって、引用文献4には、「タッチパネルによる機械制御装置について、タッチパネルにタッチスイッチ表示がサークル状に配列され、タッチスイッチ表示は指によってなぞって連続的に入力操作可能であり、なぞり箇所がタッチスイッチ表示の1個分移ることで、所定個数のパルスを発生させるものとし、指が複数のタッチスイッチ表示に接触する速度が異なると、パルスを出力する速度も異なるものとなり、その結果、制御対象機器の回転速度を変えるという制御を実現する」、という技術的事項が記載されていると認められる。

5.引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、空気調和機、調理家電機器や設備機器などの制御対象機器の操作を受け付ける操作インタフェースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、以下の特許文献1,2には、複数の押し圧式の透光性スイッチが配置されている操作部を備えている操作インタフェースが開示されている。 この操作インタフェースでは、複数の透光性スイッチのうち、現在操作を受け付ける有効な透光性スイッチを発光するようにしているので、ユーザは、どの透光性スイッチを押せば、操作を行うことができるかを容易に認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-318231号公報(段落番号[0027]、図3)
【特許文献2】特開平11-213794号公報(段落番号[0008]、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の操作インタフェースは以上のように構成されているので、例えば、N個の透光性スイッチを配置すれば、N個の操作内容の中から、ユーザが所望の操作内容を選択する操作を受け付けることができる。しかし、選択可能な操作内容の数は、透光性スイッチの個数が上限であり、透光性スイッチの個数以上の操作内容の選択を受け付けることができない。このため、制御対象機器が多数の操作内容を有している場合、数多くの透光性スイッチを配置しなければならず、大型化やコスト高を招いてしまう課題があった。 また、複数の押し圧式の透光性スイッチが飛び飛びに配置されるため、ユーザが操作部上をなぞることにより制御量を決定するような連続的なインタフェースとして使用することができない課題があった。 また、透光性スイッチが機械的な押し圧式のスイッチであるため、スイッチの周りに隙間が生じて、水の浸入を招いてしまう課題もあった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、操作部に配置するスイッチの個数以上の操作内容の選択を受け付けることができる操作インタフェースを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る操作インタフェースは、人体との距離に応じて静電容量が変化する静電スイッチ及び発光体が透明又は半透明の外装材の裏面側に複数個配置されている操作部と、操作部における複数の静電スイッチの静電容量を検出して、ユーザの指が触れている操作部上の位置を特定する位置特定手段とを設け、操作内容決定手段が位置特定手段により特定された位置から制御対象機器の操作内容を決定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、人体との距離に応じて静電容量が変化する静電スイッチ及び発光体が透明又は半透明の外装材の裏面側に複数個配置されている操作部と、操作部における複数の静電スイッチの静電容量を検出して、ユーザの指が触れている操作部上の位置を特定する位置特定手段とを設け、操作内容決定手段が位置特定手段により特定された位置から制御対象機器の操作内容を決定するように構成したので、操作部に配置するスイッチの個数以上の操作内容の選択を受け付けることができるようになり、その結果、制御対象機器が多数の操作内容を有している場合でも、スイッチの配置数を抑えることができる効果がある。」

「【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による操作インタフェースが実装されている炊飯器の一部を示す外形表面図である。
また、図2は図1の操作インタフェースにおける操作部付近の断面形状を示す断面図である。
さらに、図3は操作部1に配置されている静電スイッチ3を示す概略構成図である。
図1、図2及び図3において、操作部1は制御対象機器である炊飯器の操作内容を受け付けるインタフェースであり、静電スイッチ3及びLEDランプ4が外装材2の裏面側に複数個配置されている。
【0010】
外装材2は透明又は半透明の導電性部材(例えば、ガラス、アクリル)で構成されており、静電スイッチ3が配置される部分の表面には凹型の溝2aが施されている。 静電スイッチ3は人体との距離に応じて静電容量が変化するスイッチであって、概ね電極シート3aとコンデンサ3bから構成されるスイッチである。静電スイッチ3の幅は、ユーザの人差し指程度であり(例えば、10?15mm)、静電スイッチ3と静電スイッチ3の間隔が、ユーザの指の幅より狭い間隔(例えば、2mm)で配置される(図22を参照)。
静電スイッチ3は、図3に示すように、ユーザの指が外装材2と離れている間は指と電極シート3a間に電流が流れないが、ユーザの指が外装材2と接触すると、人体を通じて、指と電極シート3a間に電流が流れて、コンデンサ3bの静電容量が増加する。
なお、コンデンサ3bの静電容量は、ユーザの指が電極シート3aを覆っている面積に比例し、指が電極シート3aを覆っている面積が増えると、コンデンサ3bの静電容量が増加する。
【0011】
LEDランプ4は静電スイッチ3の真下に配置される発光体である(図2を参照)。 図2の例では、LEDランプ4は静電スイッチ3の真下にだけ配置されているが、必要に応じて静電スイッチ3と静電スイッチ3の間の真下にも配置される。
【0012】
図4はこの発明の実施の形態1による操作インタフェースを示す構成図である。
図4において、静電容量検出部11は操作部1における複数の静電スイッチ3の静電容量を検出する処理を実施する。
接触位置特定部12は静電容量検出部11により検出された複数の静電スイッチ3の静電容量から、ユーザの指が触れている操作部1上の位置を特定する処理を実施する。
なお、静電容量検出部11及び接触位置特定部12から位置特定手段が構成されている。
【0013】
操作内容記録部13はユーザの指が触れている操作部1上の位置に対応する制御対象機器の操作内容を示すテーブルを格納しているメモリである。
操作内容決定部14は操作内容記録部13に格納されているテーブルを参照して、接触位置特定部12により特定された位置に対応する制御対象機器の操作内容を特定する処理を実施する。
なお、操作内容記録部13及び操作内容決定部14から操作内容決定手段が構成されている。
LED制御部15は接触位置特定部12により特定された位置に配置されているLEDランプ4を点灯する処理を実施する。なお、LED制御部15は点灯手段を構成している。
【0014】
次に動作について説明する。
図1の操作部1には、複数の静電スイッチ3とLEDランプ4が円形に配置されている例を示しているが、ここでは、説明の簡単化のため、図5に示すように、複数の静電スイッチ3とLEDランプ4が直線状に配置されている操作部1を例にして説明する。
複数の静電スイッチ3とLEDランプ4が直線状に配置されている操作部1は、例えば、IHクッキングヒータなどに適用される。
【0015】
ユーザの指が外装材2と離れている間は、図3に示すように、ユーザの指と静電スイッチ3の電極シート3aとの間に電流が流れないが、ユーザの指が外装材2と接触すると、人体を通じて、指と電極シート3a間に電流が流れて、コンデンサ3bの静電容量が増加する。
コンデンサ3bの静電容量は、ユーザの指が電極シート3aを覆っている面積に比例し、指が電極シート3aを覆っている面積が増えると、コンデンサ3bの静電容量が増加する。
【0016】
したがって、ユーザの指が、ある静電スイッチ3(説明の便宜上、「静電スイッチA」と称する)の真上にあり、他の静電スイッチ3(説明の便宜上、「静電スイッチB」と称する)を覆っていない状況下では、図6に示すように、指が真上にある静電スイッチAのコンデンサ3bの静電容量のみが増加して、他の静電スイッチBのコンデンサ3bの静電容量は増加しない。
これに対して、ユーザの指が静電スイッチAと静電スイッチBの間にあるため、ユーザの指が静電スイッチAの一部を覆うとともに、静電スイッチBの一部を覆う状況下では、図7に示すように、静電スイッチAのコンデンサ3bの静電容量が増加するとともに、静電スイッチBのコンデンサ3bの静電容量が増加する。
ただし、ユーザの指の位置が、静電スイッチAよりも静電スイッチBに近く、ユーザの指が静電スイッチAを覆っている面積よりも、静電スイッチBを覆っている面積の方が多い場合、図8に示すように、静電スイッチAのコンデンサ3bの静電容量よりも、静電スイッチBのコンデンサ3bの静電容量の方が大きくなる。
【0017】
そこで、接触位置特定部12は、静電容量検出部11が操作部1における複数の静電スイッチ3の静電容量を検出すると、複数の静電スイッチ3の静電容量から、ユーザの指が触れている操作部1上の位置を特定する。 以下、接触位置特定部12における位置の特定処理を具体的に説明する。 ここでは、図9に示すように、3個の静電スイッチ3(静電スイッチX,Y,Z)が配置されている場合を例にして説明する。
【0018】
接触位置特定部12は、静電スイッチXの静電容量のみが増加しており、静電スイッチY,Zの静電容量が増加していなければ、ユーザの指が触れている位置は、静電スイッチXの真上Xであると判定する。
接触位置特定部12は、静電スイッチYの静電容量のみが増加しており、静電スイッチX,Zの静電容量が増加していなければ、ユーザの指が触れている位置は、静電スイッチYの真上Yであると判定する。
接触位置特定部12は、静電スイッチZの静電容量のみが増加しており、静電スイッチX,Yの静電容量が増加していなければ、ユーザの指が触れている位置は、静電スイッチZの真上Zであると判定する。
【0019】
接触位置特定部12は、静電スイッチX,Yの静電容量が増加しており、静電スイッチZの静電容量が増加していなければ、ユーザの指が触れている位置は、静電スイッチXと静電スイッチYの間にあると判定する。
このとき、静電スイッチXの静電容量をCx、静電スイッチYの静電容量をCyとし、下記の式(1)が成立すれば、ユーザの指が触れている位置は、静電スイッチXと静電スイッチYの中間点Mxyに位置していると判定する。
|Cx-Cy|<T1 (1)
ただし、T1は予め設定された閾値である。
式(1)が成立しない場合、静電スイッチXの静電容量Cxが静電スイッチYの静電容量Cyより大きければ(Cx>Cy)、ユーザの指が触れている位置は、静電スイッチXと中間点Mxyとの中間点Mxy_(-)xに位置していると判定する。
一方、静電スイッチXの静電容量Cxが静電スイッチYの静電容量Cyより小さければ(Cx<Cy)、ユーザの指が触れている位置は、静電スイッチYと中間点Mxyとの中間点Mxy_(-)yに位置していると判定する。
【0020】
接触位置特定部12は、静電スイッチY,Zの静電容量が増加しており、静電スイッチXの静電容量が増加していなければ、ユーザの指が触れている位置は、静電スイッチYと静電スイッチZの間にあると判定する。
このとき、静電スイッチYの静電容量をCy、静電スイッチZの静電容量をCzとし、下記の式(2)が成立すれば、ユーザの指が触れている位置は、静電スイッチYと静電スイッチZの中間点Myzに位置していると判定する。
|Cy-Cz|<T2 (2)
ただし、T2は予め設定された閾値である。
式(2)が成立しない場合、静電スイッチYの静電容量Cyが静電スイッチZの静電容量Czより大きければ(Cy>Cz)、ユーザの指が触れている位置は、静電スイッチYと中間点Myzとの中間点Myz_(-)yに位置していると判定する。
一方、静電スイッチYの静電容量Cyが静電スイッチZの静電容量Czより小さければ(Cy<Cz)、ユーザの指が触れている位置は、静電スイッチZと中間点Myzとの中間点Myz_(-)zに位置していると判定する。
【0021】
ここでは、ユーザの指が触れている位置が、静電スイッチXと静電スイッチYの間、あるいは、静電スイッチYと静電スイッチZの間にあると判定する場合、その位置を3点のいずれかに判別する例を示したが、3点より更に詳細に位置を判別するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0022】
操作内容決定部14は、接触位置特定部12が、ユーザの指が触れている位置を特定すると、操作内容記録部13に格納されているテーブルを参照して、ユーザの指が触れている位置に対応する制御対象機器の操作内容を特定する。
ここで、図10は操作内容記録部13に格納されているテーブルの一例を示す説明図である。
図10では、ユーザの指が触れている位置が例えばXであれば、操作内容が“火力調整”、ユーザの指が触れている位置が例えばMxyであれば、操作内容が“タイマー設定”である例を示している。
【0023】
LED制御部15は、接触位置特定部12が、ユーザの指が触れている位置を特定すると、図5に示すように、ユーザの指が触れている位置に配置されているLEDランプ4を点灯する。
例えば、ユーザの指が触れている位置が例えばXであれば、静電スイッチXの真下に配置されているLEDランプ4を点灯し、ユーザの指が触れている位置が例えばMxyであれば、位置Mxyの真下に配置されているLEDランプ4を点灯する。
ここでは、ユーザの指が触れている位置に配置されているLEDランプ4を点灯することで、操作が受け付けられた旨をユーザにフィードバックするものについて示したが、操作が受け付けられた旨を音声ガイダンスで知らせるようにしてもよい。
【0024】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、人体との距離に応じて静電容量が変化する静電スイッチ3及びLEDランプ4が透明又は半透明の外装材2の裏面側に複数個配置されている操作部1と、操作部1における複数の静電スイッチ3の静電容量を検出する静電容量検出部11と、静電容量検出部11により検出された複数の静電スイッチ3の静電容量から、ユーザの指が触れている操作部1上の位置を特定する接触位置特定部12とを設け、操作内容決定部14が接触位置特定部12により特定された位置から制御対象機器の操作内容を決定するように構成したので、操作部1に配置するスイッチの個数以上の操作内容の選択を受け付けることができるようになり、その結果、制御対象機器が多数の操作内容を有している場合でも、スイッチの配置数を抑えることができる効果を奏する。」

「【図1】



したがって、引用文献5には、「制御対象機器の操作を受け付ける操作インタフェースを、複数の静電スイッチを円形に配置した操作部として、静電スイッチの静電容量から、ユーザの指が触れている操作部の位置を特定し、特定された位置から制御対象機器の操作内容を決定する」、という技術的事項が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明における「タッチ検出機能付き表示装置1」は、例えば、オーディオの音量や選曲、空調設備の温度や風量を調節するものであり、外部装置を制御するものであるから、本願発明1における「操作対象に対して入力を行う操作端末」に対応する。

イ 引用発明における「タッチ検出装置40を備えた液晶パネル30」は、明らかに入力面を有するから、本願発明1における「入力面を有するタッチパネル部」に相当する。

ウ 引用発明における「カバー材10の被タッチ表面10f上で指が移動」することは、「タッチ検出装置40は静電容量式」であり、当該「指」の移動が「タッチ検出装置40」の静電容量を変化させていることから、本願発明1における「操作者による前記入力面に対する入力動作」に相当する。
また、引用発明は、「制御手段50は、カバー材10の被タッチ表面10f上で指が移動したときの静電容量が変化した位置の軌跡、移動方向、移動速度を演算して記憶し、前記軌跡が凹部11、12、13の平面形状に沿っていた場合、前記移動方向と前記移動速度に応じて出力する信号を変化させ、機器制御手段60は、制御手段50が出力する信号の変化に応じて外部装置を制御する」ものであり、すなわち、「制御手段50」は、「カバー材10の被タッチ表面10f上で指が移動」することに応じて「外部装置を制御する」「信号」を出力するものである。
そうすると、引用発明における「制御手段50」は、本願発明1における「操作者による前記入力面に対する入力動作に対応して操作信号を出力する出力部」に相当する。

エ 引用発明における「指」は、本願発明1における「接触要素」に相当する。引用発明における「タッチ検出装置40」は静電容量式であるから、「指」と「タッチ検出装置40を備えた液晶パネル30」とは、電気的に接触するものである。
また、引用発明において「カバー材10の被タッチ表面10f上で指が移動」することは、本願発明1における「移動経路上にて移動させる移動動作」に相当する。そして、引用発明は、「指が凹部11の縁に沿って移動した場合、静電容量が変化した位置として円形状の軌跡を記憶」するものであるから、「移動経路」が「円形状」であるものが含まれる。
よって、本願発明1の「所定の円環状の移動経路」は上位概念では“円形状”とみることができるから、本願発明1と引用発明とは、“前記入力動作が、前記入力面に接触する接触要素を前記入力面上において所定の円形状の移動経路上にて移動させる移動動作を含”む点で一致する。

オ 引用発明は、「指が凹部11の縁に沿って移動した場合、静電容量が変化した位置として円形状の軌跡を記憶」するものであるから、「移動経路」が「円形状」のものを含むといえる。
この場合、「凹部11の縁」は、「円形状」の「移動経路」の径方向外側に配置され、「指」をそれに沿って移動させるものであるから、引用発明の「凹部11の縁」と、本願発明1の「外ガイド要素」とは、“前記移動経路の径方向外側に配置される円形状の外ガイド要素”である点で一致する。

カ 上記ア?オから、本願発明1と引用発明は、次の点で一致し、次の点で相違する。

(一致点)
「操作対象に対して入力を行う操作端末であって、
入力面を有するタッチパネル部と、
操作者による前記入力面に対する入力動作に対応して操作信号を出力する出力部と、
を備え、
前記入力動作が、前記入力面に接触する接触要素を前記入力面上において所定の円形状の移動経路上にて移動させる移動動作を含み、
前記入力面は、
移動経路の径方向外側に配置される円形状の外ガイド要素と、
を備えた操作端末。」

(相違点)
(相違点1)
(相違点1-1)
「移動経路」について、本願発明1は「円環状」であるのに対し、引用発明は「円形状」であるものの、円環状であるかは明らかではない点。

(相違点1-2)
本願発明1は、「円環状の移動経路」が、「前記移動経路の径方向外側に配置される円環状の凸部である外ガイド要素」と、「前記移動経路の径方向内側に配置される凸部であ」る「内ガイド要素」との間に挟まれて形成されるのに対し、引用発明は、「円環状の移動経路」、「内ガイド要素」を有しておらず、「外ガイド要素」もそのようなものではない点。

(相違点2)
(相違点2-1)
本願発明1は、「前記移動経路において円周状に等角度間隔にて断続的に配列される複数の区切り部」を有し、「前記複数の区切り部はそれぞれ、前記接触要素が接触する周囲の領域から突出する凸部であ」るのに対し、引用発明は「区切り部」に対応する構成を有しない点。

(相違点2-2)
本願発明1は、「前記移動動作において、前記接触要素が前記複数の区切り部のうち一の区切り部から隣接する区切り部へと移動することにより、予め設定されている単位移動距離に応じた1パルスの操作信号が前記出力部によって出力される」ものであるのに対し、引用発明は、「区切り部」に対応する構成を有していない点。

(2)判断
事案に鑑み、先ず、上記相違点2(上記相違点2-1及び上記相違点2-2)について検討する。
ア 上記第4の2のとおり、引用文献2に記載された技術的事項は、タッチパッドの入力領域に凸部を形成するものであるが、当該凸部は指がその上を通過した際に信号を発生しないものである。
上記第4の3のとおり、引用文献3に記載された技術的事項は、タッチパッドの入力領域に凹凸部を設けるものであるが、指が凸部を1つ越えるごとにカーソルを1つ移動させるもので、パルスの操作信号を出力するものではない。
上記第4の4のとおり、引用文献4に記載された技術的事項は、タッチパネル上のタッチスイッチ表示をなぞる指が、タッチスイッチ1個分移ると、制御対象機器を制御するための所定個数のパルスを発生させることが記載されているが、タッチスイッチ表示はあくまで表示であり、凸部は形成されていない。
上記第4の5のとおり、引用文献5に記載された技術的事項は、操作面でユーザの指が接触している位置を特定することであって、操作面に凸部を形成することや、凸部の上を指が移動するとパルスの操作信号を出力することは記載されていない。
以上のとおりであるから、引用文献2?5には、指を移動させる面に、指の移動に応じてパルスの操作信号を出力する凸部(「区切り部」)を設ける、という上記相違点2(上記相違点2-1及び上記相違点2-2)に係る構成について記載されていない。

イ 引用発明は、凹部の縁に沿って指を移動させた際の移動方向と移動速度に応じて外部装置を制御するものである。
引用発明において、操作者は凹部の縁を沿わせることによって指の移動方向と移動速度を感知できるので、凹部とは別に凸部(「区切り部」)を設ける動機はない。また、引用発明において、指の移動方向と移動速度に応じて外部装置を制御する際に、移動方向と移動速度に応じた制御信号をパルスとする動機もない。

ウ そうすると、引用発明に引用文献2?5に記載された技術的事項を適用する動機がなく、さらに、上記アのとおり引用文献2?5には上記相違点2に係る構成についての記載も無いから、上記相違点2に係る本願発明1の構成は、当業者であっても、引用発明、引用文献2?5に記載された技術的事項に基づいて容易に想到し得たものではない。
したがって、上記相違点1(上記相違点1-1及び上記相違点1-2)について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2?5に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2?7について
本願発明2?7も、本願発明1の、「前記移動経路において円周状に等角度間隔にて断続的に配列される複数の区切り部」であって、「前記複数の区切り部はそれぞれ、前記接触要素が接触する周囲の領域から突出する凸部であり」、「前記移動動作において、前記接触要素が前記複数の区切り部のうち一の区切り部から隣接する区切り部へと移動することにより、予め設定されている単位移動距離に応じた1パルスの操作信号が前記出力部によって出力される」、という同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2?5に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について

1.特許法第29条第2項について
審判請求時の補正により、本願発明1?7は「上記相違点2に係る本願発明1の構成」を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1?5に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1?7は、当業者が、引用発明、引用文献2?5に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-09-07 
出願番号 特願2018-36583(P2018-36583)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 星野 裕  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 小田 浩
恩田 春香
発明の名称 操作端末および補助パネル  
代理人 田中 勉  
代理人 松阪 正弘  
代理人 井田 正道  

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