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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1377594
審判番号 不服2020-10282  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-22 
確定日 2021-09-29 
事件の表示 特願2019-517391「デバイス及び分解方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月 5日国際公開、WO2018/060222、令和 1年12月19日国内公表、特表2019-537249、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年9月27日(パリ条約による優先権主張 2016年9月29日 欧州)を国際出願日とする出願であって、令和1年10月1日付け拒絶理由通知に対して、令和1年12月27日に意見書の提出がなされたが、令和2年3月23日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対し、令和2年7月22日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において令和3年1月27日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和3年5月17日に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

●理由1(特許法第29条第1項第3号)、理由2(特許法第29条第2項)について

・請求項1、2、4、10ないし12
・引用文献等A

●理由2(特許法第29条第2項)について

・請求項3、5、6
・引用文献等A,B

・請求項7
・引用文献等A,C

・請求項8
・引用文献等A,D

・請求項9
・引用文献等A,E

<引用文献等一覧>
A.特表2005-530115号公報
B.特開2010-210977号公報
C.特開昭62-220673号公報
D.特開平10-328166号公報(周知技術を示す文献)
E.特開2000-337326号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(進歩性)について

・請求項1、2
・引用文献等1、2、4ないし7

・請求項3、5、6
・引用文献等1、2

・請求項4
・引用文献等1、4ないし7

・請求項7、8、10、11
・引用文献等1ないし7

●理由2(明確性)について

・請求項10、11
請求項10に「前記セクションは、バイメタルばね要素又は形状記憶材料を含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のデバイス。」と記載されているが、請求項10が引用する請求項9の「セクション」は「熱可塑性ポリマ」であり、請求項9を引用する請求項10に係る発明は構成が不明である。

<引用文献等一覧>
1.特表2005-530115号公報(拒絶査定時の文献A)
2.特開2010-210977号公報(拒絶査定時の文献B)
3.特開昭62-220673号公報(拒絶査定時の文献C)
4.実願昭61-155448号(実開昭63-62187号)のマイクロフィルム(当審において新たに引用した文献)
5.特開平9-60766号公報(当審において新たに引用した文献)
6.特開2005-247222号公報(当審において新たに引用した文献)
7.米国特許出願公開第2015/0096293号明細書(特表2016-539269号参照)(当審において新たに引用した文献)

第4 本願発明
本願の請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明12」という。)は、令和3年5月17日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
デバイスであって、
第1のコンポーネント及び第2のコンポーネントを含むコンポーネントのアセンブリであって、前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントは、当該デバイスのハウジングコンポーネントである、コンポーネントのアセンブリと、
前記第1のコンポーネントを前記第2のコンポーネントに固定するよう構成される固定部材であって、前記固定部材は熱放射によって変形可能なセクションを備え、前記セクションが変形すると前記第1のコンポーネントは前記第2のコンポーネントから解除可能である、固定部材と、
前記熱放射を前記セクションに供給するよう当該デバイス内に配置される回路構成とを備える、デバイスであり、
前記固定部材は、熱可塑性ポリマを含む、デバイス。
【請求項2】
前記固定部材は、前記第1のコンポーネントに取り付けられ、前記第2のコンポーネントと係合するよう構成される末端クランプ部材を含み、前記セクションは、前記固定部材の中間セクションであり、その変形が前記クランプ部材を第2のコンポーネントから脱係合するよう構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記回路構成は、前記セクションから空間的に離れている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記回路構成は、前記セクションと物理的に接触している、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記回路構成は、該回路構成が当該デバイスの機能の少なくとも一部を果たす第1の動作モード、及び該回路構成が前記セクションに前記熱放射を供給する第2の動作モードを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記回路構成は、前記第1の動作モードと比較して、前記第2の動作モードにおいてより高い電圧を受ける、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントをまたぐブレーカスイッチであって、前記第1のコンポーネントから前記第2のコンポーネントを解除すると当該デバイスへの電源を遮断するよう構成されるブレーカスイッチを備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記回路構成への電源内に温度ヒューズを備える、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
当該デバイスは照明デバイスである、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
デバイスを分解する方法であって、前記デバイスは、
第1のコンポーネント及び第2のコンポーネントを含むコンポーネントのアセンブリであって、前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントは、前記デバイスのハウジングコンポーネントである、コンポーネントのアセンブリと、
前記第1のコンポーネントを前記第2のコンポーネントに固定するよう構成される固定部材であって、前記固定部材は熱放射によって変形可能なセクションを備え、前記セクションが変形すると前記第1のコンポーネントは前記第2のコンポーネントから解除可能である、固定部材と、
前記熱放射を前記セクションに供給するよう当該デバイス内に配置される回路構成とを備え、当該方法は、
前記回路構成によって前記セクションに熱放射を供給し、前記セクションを変形させるステップと、
前記第1のコンポーネントから前記第2のコンポーネントを解除するステップと
を含み、
前記固定部材は、熱可塑性ポリマを含む、方法。
【請求項11】
デバイスであって、
第1のコンポーネント及び第2のコンポーネントを含むコンポーネントのアセンブリであって、前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントは、当該デバイスのハウジングコンポーネントである、コンポーネントのアセンブリと、
前記第1のコンポーネントを前記第2のコンポーネントに固定するよう構成される固定部材であって、前記固定部材は熱放射によって変形可能なセクションを備え、前記セクションが変形すると前記第1のコンポーネントは前記第2のコンポーネントから解除可能である、固定部材と、
前記熱放射を前記セクションに供給するよう当該デバイス内に配置される回路構成とを備える、デバイスであり、
前記固定部材は、熱可塑性ポリマを含み、前記セクションは、前記熱可塑性ポリマの薄肉部分を画定する、デバイス。
【請求項12】
デバイスを分解する方法であって、前記デバイスは、
第1のコンポーネント及び第2のコンポーネントを含むコンポーネントのアセンブリであって、前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントは、前記デバイスのハウジングコンポーネントである、コンポーネントのアセンブリと、
前記第1のコンポーネントを前記第2のコンポーネントに固定するよう構成される固定部材であって、前記固定部材は熱放射によって変形可能なセクションを備え、前記セクションが変形すると前記第1のコンポーネントは前記第2のコンポーネントから解除可能である、固定部材と、
前記熱放射を前記セクションに供給するよう当該デバイス内に配置される回路構成とを備え、当該方法は、
前記回路構成によって前記セクションに熱放射を供給し、前記セクションを変形させるステップと、
前記第1のコンポーネントから前記第2のコンポーネントを解除するステップと
を含み、
前記固定部材は、熱可塑性ポリマを含み、前記セクションは、前記熱可塑性ポリマの薄肉部分を画定する、方法。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
当審による令和3年1月27日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。
「【0089】
種々態様に構成された本発明について以下に添付図面に示された非限定的実施例によって説明する。
最初に、図1ないし図3に示した実施態様は成形されたプラスチックから作られたファスナーであり、作動手段は高性能記憶合金ワイヤーである。ファスナー10は側面図で示されていて、一方の端部にかみ合い手段14、他方の端部に取り付けブロック16をもつ可撓ビーム12を一体に有している。形状記憶合金ワイヤー18はチャネル20を通るループを形成し、ループの両端はブロック16中に固定されている。」

「【0092】
図9ないし図13の実施態様は、図1ないし図3及び図4、図5の実施態様とは作動手段の取り付け方式において異なっている。図9はファスナー10の背面図、図10は同側面図、図11は同正面図、そして図12は同上面図である。
この実施態様では、ファスナー10にはかみ合い手段14と一体の可撓ビーム12と取り付けブロック16が備えられている。第一の実施態様とは逆に、可撓ビーム12は、図1ないし図3におけるように前部ではなく、取り付けブロック16の後部に位置している。チタン/ニッケルから成る形状記憶合金ワイヤー18が第一の実施態様の場合と同様の方式でチャネル20中を通っている。しかしながら、ワイヤー18はワイヤー取り付けスクリュー24でブロック16上に保持されている。図10及び図12に示したブロック16の前面から出ている動力ケーブル26を介してワイヤー18へ力が加えられる。動力ケーブル26は図11の正面図では便宜上省略されている。」

「【0102】
次に図36及び図37は、図9ないし図12に示したファスナー10が製品内部にある状態を示した図である。ファスナー10は製品ケースの基部である部材66へ取り付けられた状態で図示されている。基部66へのファスナー10の取り付けには接着剤が使用される。前記製品ケースには楔形状の受け部材70を一体に有する蓋(第二部材)68も含まれている。
【0103】
図37に示すように、高性能記憶合金ワイヤー18が緩んだ状態にある時は、かみ合い手段14が受け部材70上へ引っ掛かって基部66とかみ合う状態で蓋68を保持する。ワイヤー18が電力ケーブル26を通って流れる電流によって十分加熱されると、ワイヤー18が収縮し、図36に示すように受け部材70からかみ合い手段14が引き出される。これにより、蓋68が基部66から解除される。」







ここで、上記記載及び図面から以下の事項が見て取れる。
・基部66及び楔形状の受け部材70を一体に有する蓋68を含む製品ケース(【0102】、図37)。
・かみ合い手段14の反対側にチャネル20が設けられている(【0092】、図10)。
・ワイヤー18が収縮して可撓ビーム12が変形する(【0103】、図36)。

以上のことより、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献1の記載箇所を示す。)。
「基部66及び楔形状の受け部材70を一体に有する蓋68を含む製品ケースであって(【0102】、図37)、
ファスナー10が製品ケースの基部66へ取り付けられ(【0102】)、
ファスナー10にはかみ合い手段14と一体の可撓ビーム12と取り付けブロック16が備えられ(【0092】)、
かみ合い手段14の反対側にチャネル20が設けられ(【0092】、図10)、
形状記憶合金ワイヤー18がチャネル20を通るループを形成し、ループの両端はブロック16上に保持され(【0089】、【0092】)、
形状記憶合金ワイヤー18が緩んだ状態にある時は、かみ合い手段14が受け部材70上へ引っ掛かって基部66とかみ合う状態で蓋68を保持し(【0103】)、
ワイヤー18が電力ケーブル26を通って流れる電流によって十分加熱されると、ワイヤー18が収縮して可撓ビーム12が変形し、受け部材70からかみ合い手段14が引き出され、蓋68が基部66から解除される(【0103】、図36)、
製品ケース。」

2 引用文献2について
当審による令和3年1月27日付けの拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0017】
図1に、本発明に係る電子機器の一実施形態を示す。図1の電子機器は、外装カバー7が枠体6にネジ(締結手段)51とワッシャ(締結手段)52とで取り付けられている。そして電子機器の内部には加熱手段としてのヒータHが配設されている。ここで、ネジ51とワッシャ52とが本発明における締結手段5を構成する。なお、説明を容易にするために、電子機器に内蔵されている他の部品等については図には表していない。
【0018】
図3(a)に示すように、外装カバー7の枠体6への取り付けは、外装カバー7に形成された貫通孔71を、枠体6の、内周面に螺旋状の溝が形成されたネジ孔61に重ね合わせ、ワッシャ52を通したネジ51の軸部512を、貫通孔71に挿通させてネジ穴61に螺合することによって行う。貫通孔71の内径は、ネジ51の頭部511の外径よりも大きく、ワッシャ52の外径よりも小さく設定されている。ワッシャ52は、所定温度以上になると形状が変化する形状記憶合金からなる。」

3 引用文献3について
当審による令和3年1月27日付けの拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「いわゆるロック状態とすることができる。この状態においては、導電性リング(6)、および接点(15)を介して表示ランプ(14)に電源(16)が接続され、表示ランプ(14)が点灯してロック状態であることを表示できる。また、接点(11)が導電性リング(6)に接触して、操作スイッチ(12)を操作することによりヒータ(9)への通電を行ない得る状態となっている。」(9欄19行?10欄6行)

「そして、ロック解除が達成されれば、接点(11)が導電性リング(6)から離れるので、ヒータ(9)への通電が遮断され、過加熱が防止されるとともに、接点(15)も導電性リング(6)から離れるので、表示ランプ(14)が消灯させられ、ロック解除状態であることを表示できる。」(10欄19行-11欄4行)

上記記載より、引用文献3には次の技術的事項が記載されている。
「ロック状態では、接点(11)が導電性リング(6)に接触して、操作スイッチ(12)を操作することによりヒータ(9)への通電を行ない得る状態となっており、ロック解除が達成されれば、接点(11)が導電性リング(6)から離れるので、ヒータ(9)への通電が遮断され、過加熱が防止されること。」

4 引用文献4について
当審による令和3年1月27日付けの拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「また、各形状記憶合金製の釘14が表面盤2の裏面に突出した箇所には、当該釘14の裏面側突出部を包囲するように形成したヒータ19を内装したケース20からなる加熱装置21を固着し、該各加熱装置21を温度調整装置22を介して制御装置23に電気的に接続する。」(6頁10-15行)

5 引用文献5について
当審による令和3年1月27日付けの拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0023】つまり、形状記憶合金の変態温度前後の可逆変形の性質を利用して、加熱コイル10により形状記憶合金の温度をコントロールし、配管1の熱変位分の10mm?30mm膨張および、収縮させることで配管の熱変位を吸収できる。」

6 引用文献6について
当審による令和3年1月27日付けの拒絶の理由に引用された引用文献6には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0021】
例えば図3および図4に示すように、締結部材30は、ボルト31と、分離アクチュエータ13と、ワッシャー33と、ナット34とを備えて構成されている。
分離アクチュエータ13は、ボルト31の軸部31aが装入される略円筒状に形成され、ボルト31の軸部31aの外径よりも大きく、かつ、ボルト31の頭部の外径よりも小さな径の内周面を有する円筒状の内周部32aと、この内周部32aの外周面上に装着された円筒状のヒータ32bと、ヒータ32bの外周面を覆うカバー32cとを備えて構成されている。
分離アクチュエータ13の内周部32aは、例えば形状記憶合金により形成され、電源14から通電されるヒータ32bによって加熱されると、内周部32aの温度が形状記憶合金の変態点以上に上昇した状態で軸方向の長さが所定長さLだけ延びるようになっている。
また、ボルト31の軸部31aの適宜の位置、例えば頭部に近接した位置には、適宜に縮径された脆弱部31bが形成されている。」

7 引用文献7について
当審による令和3年1月27日付けの拒絶の理由に引用された引用文献7には、図面とともに、次の事項が記載されている(なお、翻訳文として日本語ファミリーである特表2016-539269号の記載を付記する。)。
「[0015] As shown in FIG. 1, the shape memory alloy inductive heating system, generally designated 10, may comprise a shape memory alloy (SMA) actuator 20, an induction heating coil 22, a power supply 24, and a control module 26. Alternating electric current may be supplied to the coil 22 by the power supply 24 to inductively heat the SMA actuator 20. The shape memory alloy inductive heating system 10 may be used in a variety of applications such as, for example, an aircraft, power systems, oil drills equipment, rotor craft, and automotive components. Specifically, the shape memory alloy inductive heating system 10 may be used for actuating a wing or door of an aircraft, a blade of a wind turbine, or an air pressure latch located in a trunk of a vehicle. It is to be understood that these are merely illustrative examples, and the shape memory alloy inductive heating system 10 may be used other applications as well.」
(【0009】
図1に示すように、全体として10で表した形状記憶合金誘導加熱システムは、形状記憶合金(SMA)アクチュエータ20、誘導加熱コイル22、電源24、及び制御モジュール26を備える。SMAアクチュエータ20を誘導加熱するために、交流電流が電源24によってコイル22に供給され得る。形状記憶合金誘導加熱システム10は、例えば、航空機、動力システム、石油掘削設備、回転翼機、及び、及び自動車部品などの様々な用途に使用され得る。具体的には、形状記憶合金誘導加熱システム10は、航空機の翼又はドア、風力タービンのブレード、又は輸送体のトランクに位置する空気圧ラッチの作動に使用され得る。これらは例示に過ぎず、形状記憶合金誘導加熱システム10は他の用途にも使用され得ることを理解されたい。)

第6 対比、判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「製品ケース」、「基部66」、「蓋68」は、それぞれ、本願発明1の「デバイス」、「第1のコンポーネント」、「第2のコンポーネント」に相当する。
そして、引用発明は「形状記憶合金ワイヤー18が緩んだ状態にある時は、かみ合い手段14が受け部材70上へ引っ掛かって基部66とかみ合う状態で蓋68を保持」されるので、「基部66」及び「蓋68」は組み立てられている。
そうすると、引用発明の「基部66」及び「蓋68」を組み立てたものが、本願発明1の「第1のコンポーネント及び第2のコンポーネントを含むコンポーネントのアセンブリ」に相当する。

イ 引用発明の「基部66」及び「蓋68」は、「製品ケース」の基部及び蓋となって容器を構成するものであるから、ハウジングコンポーネントといえる。そうすると、引用発明の「製品ケース」に含まれる「基部66」及び「蓋68」は、本願発明1の「当該デバイスのハウジングコンポーネント」に相当するといえる。
したがって、上記アを踏まえると、引用発明の「基部66」及び「蓋68」は、本願発明1の「前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネント」であって、「当該デバイスのハウジングコンポーネントである、コンポーネントのアセンブリ」に相当するといえる。

ウ 引用発明は「形状記憶合金ワイヤー18が緩んだ状態にある時は、かみ合い手段14が受け部材70上へ引っ掛かって基部66とかみ合う状態で蓋68を保持」するものであるから、「形状記憶合金ワイヤー18」及び「かみ合い手段14」を備える「製品ケースの基部66へ取り付けられ」た「ファスナー10」は、本願発明1の「前記第1のコンポーネントを前記第2のコンポーネントに固定するよう構成される固定部材」に相当する。
そして、引用発明は「ワイヤー18が収縮して可撓ビーム12が変形し、受け部材70からかみ合い手段14が引き出され、蓋68が基部66から解除される」のであるから、「ワイヤー18」及び「可撓ビーム12」が、本願発明1の「変形可能なセクション」に相当する。
したがって、引用発明の「ワイヤー18」及び「可撓ビーム12」を備える「ファスナー10」と本願発明1とは、「前記固定部材は変形可能なセクションを備え、前記セクションが変形すると前記第1のコンポーネントは前記第2のコンポーネントから解除可能である、固定部材」である点で共通する。
但し、変形可能なセクションを備える固定部材が、本願発明1は「熱可塑性ポリマを含」み「熱放射」によって変形可能であるのに対して、引用発明は「形状記憶合金ワイヤー18」及び「可撓ビーム12」を備え、「ワイヤー18が電力ケーブル26を通って流れる電流によって十分加熱されると、ワイヤー18が収縮して可撓ビーム12が変形」する点で相違する。
また、本願発明1は「前記熱放射を前記セクションに供給するよう当該デバイス内に配置される回路構成とを備える」のに対して、引用発明はそのような回路構成がない点で相違する。

すると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「デバイスであって、
第1のコンポーネント及び第2のコンポーネントを含むコンポーネントのアセンブリであって、前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントは、当該デバイスのハウジングコンポーネントである、コンポーネントのアセンブリと、
前記第1のコンポーネントを前記第2のコンポーネントに固定するよう構成される固定部材であって、前記固定部材は変形可能なセクションを備え、前記セクションが変形すると前記第1のコンポーネントは前記第2のコンポーネントから解除可能である、固定部材と、
を備える、デバイス。」

(相違点1)
変形可能なセクションを備える固定部材が、本願発明1は「熱可塑性ポリマを含」み「熱放射」によって変形可能であるのに対して、引用発明は「形状記憶合金ワイヤー18」及び「可撓ビーム12」を備え、「ワイヤー18が電力ケーブル26を通って流れる電流によって十分加熱されると、ワイヤー18が収縮して可撓ビーム12が変形」する点。
(相違点2)
本願発明1は「前記熱放射を前記セクションに供給するよう当該デバイス内に配置される回路構成とを備える」のに対して、引用発明はそのような回路構成がない点。

(2)判断
上記相違点1について検討する。
本願の明細書の段落【0024】にも記載されているように、熱可塑性ポリマーに熱を加えると軟化することは、よく知られたことである。
ここで、引用発明は「ワイヤー18が電力ケーブル26を通って流れる電流によって十分加熱されると、ワイヤー18が収縮して可撓ビーム12が変形し、受け部材70からかみ合い手段14が引き出され、蓋68が基部66から解除される」とあるように、蓋68と基部66を切り離すためには、ワイヤー18を加熱して収縮させ、可撓ビーム12を変形させる必要がある。
そうすると、仮に、引用発明において「形状記憶合金ワイヤー18」に換えて、熱放射によって変形可能な「熱可塑性ポリマ」を用いた場合、加熱により「熱可塑性ポリマ」は軟化するだけで収縮することはないので、可撓ビーム12を変形させて蓋68と基部66を切り離すことはできない。

また、熱放射により形状記憶合金を加熱する手段は、引用文献2(ヒータH)、引用文献4(加熱装置21)、引用文献5(加熱コイル10)、引用文献6(ヒータ32b)、引用文献7(誘導加熱コイル22)に記載されている(上記「第5 2」、「第5 4ないし7」)が、引用文献2、4ないし7には、熱放射によって変形可能な「熱可塑性ポリマ」については記載されていない。
そうすると、たとえ引用文献2、4ないし7に記載された技術を参酌しても、引用発明において、「形状記憶合金ワイヤー18」にかえて、熱放射によって変形可能な「熱可塑性ポリマ」を用いることは、当業者が容易になし得たことではなく、上記相違点1に係る構成を導き出すことはできない。

よって、本願発明1は、上記相違点2について検討するまでもなく、引用発明及び引用文献2、4ないし7に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

2 本願発明2ないし6について
請求項2ないし6は請求項1を引用するものであり、本願発明2ないし6も、本願発明1の「前記固定部材は熱放射によって変形可能なセクションを備え」「前記固定部材は、熱可塑性ポリマを含む」構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、4ないし7に記載された技術に基づいて、容易に発明をすることができたものとすることはできない。

3 本願発明7ないし9について
補正後の請求項9は、補正前の請求項11である。
請求項7ないし9は請求項1を引用するものであり、本願発明7ないし9は、本願発明1の「前記固定部材は熱放射によって変形可能なセクションを備え」「前記固定部材は、熱可塑性ポリマを含む」構成と同一の構成を備えるものである。
ここで、本願発明7ないし9に対して引用した、引用文献3には、ロック状態では、接点(11)が導電性リング(6)に接触して、操作スイッチ(12)を操作することによりヒータ(9)への通電を行ない得る状態となっており、ロック解除が達成されれば、接点(11)が導電性リング(6)から離れるので、ヒータ(9)への通電が遮断され、過加熱が防止されることが記載されているが(上記「第5 3」)、熱放射によって変形可能な「熱可塑性ポリマ」については記載されていない。
そうすると、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし7に記載された技術に基づいて、容易に発明をすることができたものとすることはできない。

4 本願発明10について
補正後の請求項10は、補正前の請求項12である。
方法の発明である本願発明10も、本願発明1の「前記固定部材は熱放射によって変形可能なセクションを備え」「前記固定部材は、熱可塑性ポリマを含む」構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、4ないし7に記載された技術に基づいて、容易に発明をすることができたものとすることはできない。

5 本願発明11、12について
補正後の請求項11は補正前の請求項9であり、補正後の請求項12は補正前の請求項9に対応する方法の発明である。
本願発明11、12も、本願発明1の「前記固定部材は熱放射によって変形可能なセクションを備え」「前記固定部材は、熱可塑性ポリマを含む」構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、4ないし7に記載された技術に基づいて、容易に発明をすることができたものとすることはできない。
なお、補正前の請求項9については当審拒絶理由の対象となっていない。

第7 原査定についての判断
1 本願発明1、2、4について
令和3年5月17日の手続補正により、補正後の請求項1、2、4は、「前記固定部材は、熱可塑性ポリマを含む」という技術事項を有することになった。当該技術事項は原査定における引用文献A(当審拒絶理由における引用文献1)に記載されていない。
また、上記「第6 1(2)」に示したように、引用文献Aに記載された発明(引用発明)において、「形状記憶合金ワイヤー18」にかえて、熱放射によって変形可能な「熱可塑性ポリマ」を用いることは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、本願発明1、2、4は、引用文献Aに記載された発明ではなく、当業者であっても、原査定における引用文献Aに基づいて、容易に発明をすることができたものとすることはできない。

2 本願発明3、5、6について
令和3年5月17日の手続補正により、補正後の請求項3、5、6は、「前記固定部材は、熱可塑性ポリマを含む」という技術事項を有することになった。当該技術事項は原査定における引用文献A、B(当審拒絶理由における引用文献1、2)に記載されていない。
また、上記「第6 1(2)」に示したように、引用文献Aに記載された発明(引用発明)において、「形状記憶合金ワイヤー18」にかえて、熱放射によって変形可能な「熱可塑性ポリマ」を用いることは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、本願発明3、5、6は、当業者であっても、原査定における引用文献A、Bに基づいて、容易に発明をすることができたものとすることはできない。

3 本願発明7について
令和3年5月17日の手続補正により、補正後の請求項7は、「前記固定部材は、熱可塑性ポリマを含む」という技術事項を有することになった。当該技術事項は原査定における引用文献A、C(当審拒絶理由における引用文献1、3)に記載されていない。
また、上記「第6 1(2)」に示したように、引用文献Aに記載された発明(引用発明)において、「形状記憶合金ワイヤー18」にかえて、熱放射によって変形可能な「熱可塑性ポリマ」を用いることは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、本願発明7は、当業者であっても、原査定における引用文献A、Cに基づいて、容易に発明をすることができたものとすることはできない。

4 本願発明8について
令和3年5月17日の手続補正により、補正後の請求項8は、「前記固定部材は、熱可塑性ポリマを含む」という技術事項を有することになった。
ここで、引用文献Dには、形状記憶合金を加熱する為の電気回路にヒューズを設けることが記載されているが(【0024】ないし【0026】、【0029】)、熱放射によって変形可能な「熱可塑性ポリマ」については記載されていない。
そうすると、当該技術事項は原査定における引用文献A(当審拒絶理由における引用文献1)、引用文献Dに記載されていない。
また、上記「第6 1(2)」に示したように、引用文献Aに記載された発明(引用発明)において、「形状記憶合金ワイヤー18」にかえて、熱放射によって変形可能な「熱可塑性ポリマ」を用いることは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、本願発明8は、当業者であっても、原査定における引用文献A、Dに基づいて、容易に発明をすることができたものとすることはできない。

5 本願発明9、10について
補正後の請求項9、10は、それぞれ、補正前の請求項11、12である。
令和3年5月17日の手続補正により、補正後の請求項9、10は、「前記固定部材は、熱可塑性ポリマを含む」という技術事項を有することになった。当該技術事項は原査定における引用文献A(当審拒絶理由における引用文献1)に記載されていない。
また、上記「第6 1(2)」に示したように、引用文献Aに記載された発明(引用発明)において、「形状記憶合金ワイヤー18」にかえて、熱放射によって変形可能な「熱可塑性ポリマ」を用いることは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、本願発明9、10は、引用文献Aに記載された発明ではなく、当業者であっても、原査定における引用文献Aに基づいて、容易に発明をすることができたものとすることはできない。

6 本願発明11、12について
補正後の請求項11は補正前の請求項9であり、補正後の請求項12は補正前の請求項9に対応する方法の発明である。
本願発明11、12は、「前記固定部材は熱放射によって変形可能なセクションを備え」「前記固定部材は、熱可塑性ポリマを含み、前記セクションは、前記熱可塑性ポリマの薄肉部分を画定する」という構成を備えるものである。
ここで、引用文献Eには、ドライヤーにより加熱することで、元の形状に復元する、熱可塑性形状記憶樹脂のリベットが記載されている(【0023】、【0025】)。
しかしながら、引用文献Eには、熱放射によって変形可能なセクションが、熱可塑性ポリマの薄肉部分を画定することは記載されていない。そうすると、引用文献Aに記載された発明(引用発明)に、引用文献Eに記載された技術を適用しても、「前記固定部材は熱放射によって変形可能なセクションを備え」「前記固定部材は、熱可塑性ポリマを含み、前記セクションは、前記熱可塑性ポリマの薄肉部分を画定する」という構成を得ることはできない。
したがって、本願発明11、12は、当業者であっても、原査定における引用文献A、Eに基づいて、容易に発明をすることができたものとすることはできない。

7 まとめ
よって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-09-14 
出願番号 特願2019-517391(P2019-517391)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H05K)
P 1 8・ 121- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 五貫 昭一  
特許庁審判長 井上 信一
特許庁審判官 須原 宏光
畑中 博幸
発明の名称 デバイス及び分解方法  
代理人 柴田 沙希子  

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