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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1377623
審判番号 不服2021-3429  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-16 
確定日 2021-09-28 
事件の表示 特願2017-557139「低誘電率かつ低湿式エッチング速度の誘電体薄膜を堆積させるための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月10日国際公開、WO2016/178991、平成30年 6月14日国内公表、特表2018-515921、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年4月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年5月2日、米国)を国際出願日とする出願であって、令和2年7月10日付けで拒絶理由通知がされ、同年10月12日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、同年11月10日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和3年3月16日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年4月9日付けで前置報告がされ、同年7月19日に上申書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年11月10日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

A.(進歩性)本願請求項1-5、12、14、15に係る発明は、以下の引用文献1、6-8に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

B.(進歩性)本願請求項1-4、10-12、14、15に係る発明は、以下の引用文献2、6-8に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

C.(進歩性)本願請求項1-9、12に係る発明は、以下の引用文献3、6-8に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

D.(進歩性)本願請求項9に係る発明は、以下の引用文献3、4、6-8に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

E.(進歩性)本願請求項13に係る発明は、以下の引用文献1、2、5-8に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2013/027549号
2.特開2015-012196号公報
3.特開2014-146786号公報
4.特開2007-221039号公報
5.特開2014-063859号公報
6.特開2013-153143号公報(周知技術を示す文献)
7.特開2015-012021号公報(周知技術を示す文献)
8.特開2014-154630号公報(周知技術を示す文献)

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

1 審判請求時の補正によって、請求項1に記載された「第1区画」、「第2区画」を、それぞれ、「、第1ガスポートを備える第1区画」、「、第2ガスポートを備える第2区画」とする補正は、「第1区画」、「第2区画」を限定する補正であるから、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。(下線は、補正箇所である。以下、同じ。)
また、「第1ガスポートを備える第1区画」、「第2ガスポートを備える第2区画」という事項は、当初明細書の段落【0037】-【0042】、図4、5に記載されているから、当該補正は新規事項を追加するものではない。

2 審判請求時の補正によって、請求項1について、「前記第1ガスポート及び前記第2ガスポートのそれぞれは、それぞれの真空ポートによって取り囲まれる」という事項を追加する補正は、「第1ガスポート及び第2ガスポート」を限定する補正であるから、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。
また、「前記第1ガスポート及び前記第2ガスポートのそれぞれは、それぞれの真空ポートによって取り囲まれる」という事項は、当初明細書の段落【0038】、図4、5に記載されているから、当該補正は新規事項を追加するものではない。

そして、下記第4から第6までに示すように、補正後の請求項1-15に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、令和3年3月16日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり、そのうちの本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
第1ケイ素含有膜を形成するために、処理チャンバの、第1ガスポートを備える第1区画内で基板表面の少なくとも一部分をケイ素含有前駆体に曝露することと、
炭素を含む第2ケイ素含有膜を形成するために、前記処理チャンバの、第2ガスポートを備える第2区画内で前記第1ケイ素含有膜を炭素含有前駆体に曝露することと、
ケイ素-炭素膜を形成するために、前記処理チャンバの第3区画内で前記第2ケイ素含有膜をプラズマに曝露することとを含み、
前記処理チャンバの隣接する区画は、不活性ガスにより分離され、
前記第1ガスポート及び前記第2ガスポートのそれぞれは、それぞれの真空ポートによって取り囲まれる、処理方法。」

なお、本願発明2-15は、本願発明1を減縮した発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載の事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下、同じ。)。

「技術分野
[0001] この発明は、基板上に薄膜を形成する工程を含む半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置および記録媒体に関するものである。」

「[0013] 図1は、本実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示しており、図2は本実施形態で好適に用いられる縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を図1のA-A線断面図で示している。
[0014] 図1に示されているように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。なお、ヒータ207は、後述するようにガスを熱で活性化させる活性化機構としても機能する。
[0015] ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO_(2))または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の筒中空部には処理室201が形成されており、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。」

「[0031] 第1ガス供給管232aからは、所定元素およびハロゲン基を含む第1の原料として、例えば、少なくともシリコン(Si)元素とクロロ基とを含む第1の原料ガスであるクロロシラン系原料ガスが、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、第1ノズル249aを介して処理室201内に供給される。・・・クロロシラン系原料ガスとしては、例えばヘキサクロロジシラン(Si_(2)Cl_(6)、略称:HCDS)ガスを用いることができる。HCDSのように常温常圧下で液体状態である液体原料を用いる場合は、液体原料を気化器やバブラ等の気化システムにより気化して、原料ガス(HCDSガス)として供給することとなる。
[0032] 第2ガス供給管232bからは、所定元素およびアミノ基(アミン基)を含む第2の原料として、例えば、少なくともシリコン(Si)元素とアミノ基とを含む第2の原料ガスであるアミノシラン系原料ガスが、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2ノズル249bを介して処理室201内に供給される。・・・アミノシラン系原料ガスとしては、例えばトリスジメチルアミノシラン(Si[N(CH_(3))_(2)]3H、略称:3DMAS)ガスを用いることができる。3DMASのように常温常圧下で液体状態である液体原料を用いる場合は、液体原料を気化器やバブラ等の気化システムにより気化して、原料ガス(3DMASガス)として供給することとなる。」

「[0051] 次に、上述の基板処理装置の処理炉を用いて半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に絶縁膜を成膜するシーケンス例について説明する。尚、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
[0052] なお、本発明の実施形態では、形成する膜の組成比が化学量論組成、または、化学量論組成とは異なる所定の組成比となるようにすることを目的として、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガスの供給条件を制御する。例えば、形成する膜を構成する複数の元素のうち少なくとも一つの元素が他の元素よりも化学量論組成に対し過剰となるようにすることを目的として、供給条件を制御する。以下、形成する膜を構成する複数の元素の比率、すなわち、膜の組成比を制御しつつ成膜を行うシーケンス例について説明する。
[0053] (第1シーケンス)
まず、本実施形態の第1シーケンスについて説明する。
図3は、本実施形態の第1シーケンスにおけるガス供給およびプラズマパワー供給のタイミングを示す図であり、図3(a)は、プラズマを用いず(ノンプラズマで)成膜を行うシーケンス例を示しており、図3(b)は、プラズマを用いて成膜を行うシーケンス例を示しており、図3(c)は、図3(a)に示すシーケンスの変形例を示しており、図3(d)は、図3(b)に示すシーケンスの変形例を示している。
[0054] 本実施形態の第1シーケンスでは、
処理室201内のウエハ200に対して、クロロシラン系原料を供給し、その後、アミノシラン系原料を供給することで、ウエハ200上にシリコン、窒素および炭素を含む第1の層を形成する工程と、
処理室201内のウエハ200に対して、反応ガスとして熱またはプラズマで活性化させた窒素含有ガスを供給することで、第1の層を改質して、第2の層としてシリコン炭窒化層、または、シリコン窒化層を形成する工程と、
を交互に所定回数行うことで、ウエハ200上に所定組成及び所定膜厚のシリコン炭窒化膜、または、シリコン窒化膜を形成する。
[0055] 以下、本実施形態の第1シーケンスを具体的に説明する。ここでは、クロロシラン系原料ガスとしてHCDSガスを、アミノシラン系原料ガスとして3DMASガスを、窒素含有ガスとしてNH_(3)ガスを用い、図3のシーケンスにより、基板上に絶縁膜としてシリコン炭窒化膜(SiCN膜)、または、シリコン窒化膜(SiN膜)を形成する例について説明する。
・・・
[0061] [ステップ1]
第1ガス供給管232aのバルブ243a開き、第1ガス供給管232a内にHCDSガスを流す。第1ガス供給管232a内を流れたHCDSガスは、マスフローコントローラ241aにより流量調整される。流量調整されたHCDSガスは第1ノズル249aのガス供給孔250aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してHCDSガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243eを開き、不活性ガス供給管232e内にN2ガス等の不活性ガスを流す。不活性ガス供給管232e内を流れたN2ガスは、マスフローコントローラ241eにより流量調整される。流量調整されたN2ガスはHCDSガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
・・・
[0064] 上述の条件下でHCDSガスを処理室201内に供給することで、ウエハ200(表面の下地膜)上に、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのシリコン含有層が形成される。・・・
・・・
[0071] クロロシラン系原料ガスとしては、HCDSガスの他、テトラクロロシラン、すなわちシリコンテトラクロライド(SiCl_(4)、略称:STC)ガス、トリクロロシラン(SiHCl_(3)、略称:TCS)ガス、ジクロロシラン(SiH_(2)Cl_(2)、略称:DCS)ガス、モノクロロシラン(SiH_(3)Cl、略称:MCS)ガス等の無機原料を用いてもよい。不活性ガスとしては、N_(2)ガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
[0072] [ステップ2]
ステップ1が終了し処理室201内の残留ガスを除去した後、第2ガス供給管232bのバルブ243bを開き、第2ガス供給管232b内に3DMASガスを流す。第2ガス供給管232b内を流れた3DMASガスは、マスフローコントローラ241bにより流量調整される。流量調整された3DMASガスは第2ノズル249bのガス供給孔250bから処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対して3DMASガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243fを開き、不活性ガス供給管232f内にN2ガスを流す。N2ガスは3DMASガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
・・・
[0075] 3DMASガスの供給により、ステップ1でウエハ200上に形成されたシリコン含有層と3DMASガスとが反応する。これによりシリコン含有層は、シリコン(Si)、窒素(N)及び炭素(C)を含む第1の層へと改質される。第1の層は、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのSi、N及びCを含む層となる。なお、第1の層は、Si成分の割合とC成分の割合が比較的多い層、すなわち、Siリッチであり、かつ、Cリッチな層となる。・・・
[0078] アミノシラン系原料ガスとしては、3DMASガスの他、テトラキスジメチルアミノシラン(Si[N(CH_(3))_(2)]_(4)、略称:4DMAS)ガス、ビスジエチルアミノシラン(Si[N(C_(2)H_(5))_(2)]2H_(2)、略称:2DEAS)ガス、ビスターシャリーブチルアミノシラン(SiH_(2)[NH(C_(4)H_(9))]_(2)、略称:BTBAS)ガス、ヘキサメチルジシラザン((CH_(3))3Si-NH-Si(CH_(3))_(3)、略称:HMDS)ガス等の有機原料を用いてもよい。不活性ガスとしては、N_(2)ガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
[0079] [ステップ3]
ステップ2が終了し処理室201内の残留ガスを除去した後、第4ガス供給管232dのバルブ243dを開き、第4ガス供給管232d内にNH_(3)ガスを流す。第4ガス供給管232d内を流れたNH_(3)ガスは、マスフローコントローラ241dにより流量調整される。流量調整されたNH_(3)ガスは第4ノズル249dのガス供給孔250dからバッファ室237内に供給される。このとき、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に高周波電力を印加しないことで、バッファ室237内に供給されたNH_(3)ガスは熱で活性化されて、ガス供給孔250eから処理室201内に供給され、排気管231から排気される(図3(a)参照)。また、このとき、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、バッファ室237内に供給されたNH_(3)ガスはプラズマ励起され、活性種としてガス供給孔250eから処理室201内に供給され、排気管231から排気される(図3(b)参照)。このときウエハ200に対して、熱またはプラズマで活性化されたNH_(3)ガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243hを開き、不活性ガス供給管232h内にN_(2)ガスを流す。N_(2)ガスはNH_(3)ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
・・・
[0081] NH_(3)ガスをプラズマ励起することなく熱で活性化させて流すときは、APCバルブ244を適正に調整して処理室201内の圧力を例えば1?3000Paの範囲内の圧力とする。処理室201内の圧力をこのような比較的高い圧力帯とすることで、NH_(3)ガスをノンプラズマで熱的に活性化させることが可能となる。なお、NH_(3)ガスは熱で活性化させて供給した方が、ソフトな反応を生じさせることができ、後述する窒化をソフトに行うことができる。また、NH_(3)ガスをプラズマ励起することにより活性種として流すときは、APCバルブ244を適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば1?100Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ241dで制御するNH_(3)ガスの供給流量は、例えば100?10000sccmの範囲内の流量とする。マスフローコントローラ241h,241e,241f,241gで制御するN_(2)ガスの供給流量は、それぞれ例えば100?10000sccmの範囲内の流量とする。このときNH_(3)ガスを熱で活性化させて流すときは、処理室201内におけるNH_(3)ガスの分圧を、例えば0.01?2970Paの範囲内の圧力とする。またNH_(3)ガスをプラズマで活性化させて流すときは、処理室201内におけるNH_(3)ガスの分圧を、例えば0.01?99Paの範囲内の圧力とする。熱で活性化させたNH_(3)ガス、または、NH_(3)ガスをプラズマ励起することにより得られた活性種をウエハ200に対して供給する時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば1?120秒、好ましくは1?60秒の範囲内の時間とする。このときのヒータ207の温度は、ステップ1?2と同様、ウエハ200の温度が、例えば250?700℃、好ましくは350?650℃、より好ましくは350?600℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。NH_(3)ガスをプラズマ励起する場合に、高周波電源273から第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に印加する高周波電力は、例えば50?1000Wの範囲内の電力となるように設定する。
[0082] このとき処理室201内に流しているガスは、処理室201内圧力を高くすることで熱的に活性化されたNH_(3)ガス、もしくは、NH_(3)ガスをプラズマ励起することにより得られた活性種であり、処理室201内にはHCDSガスも3DMASガスも流していない。したがって、NH_(3)ガスは気相反応を起こすことはなく、活性化された、もしくは、活性種となったNH_(3)ガスは、ステップ2でウエハ200上に形成されたSi、N及びCを含む第1の層の少なくとも一部と反応する。これにより第1の層は窒化されて、シリコン炭窒化層(SiCN層)、または、シリコン窒化層(SiN層)を含む第2の層へと改質される。
・・・
[0092] 上述したステップ1?3を1サイクルとして、このサイクルを1回以上(所定回数)行うことにより、ウエハ200上に所定組成及び所定膜厚のシリコン炭窒化膜(SiCN膜)、または、シリコン窒化膜(SiN膜)を成膜することができる。なお、上述のサイクルは、図3(a)、図3(b)に示すように複数回繰り返すのが好ましい。」
・・・
[0094] なお、上述したステップ1とステップ2とを交互に所定回数行う工程と、ステップ3を行う工程と、を交互に所定回数行うことで、ウエハ200上に所定膜厚のSiCN膜、または、SiN膜を成膜するようにしてもよい。すなわち、上述したステップ1?2を1セットとしてこのセットを所定回数行う工程と、ステップ3を行う工程と、を1サイクルとして、このサイクルを所定回数行うことで、ウエハ200上に所定膜厚のSiCN膜、または、SiN膜を成膜するようにしてもよい。」

「[0128] (第3シーケンス)
次に、本実施形態の第3シーケンスについて説明する。
図5は、本実施形態の第3シーケンスにおけるガス供給およびプラズマパワー供給のタイミングを示す図であり、図5(a)は、プラズマを用いず(ノンプラズマで)成膜を行うシーケンス例を示しており、図5(b)は、プラズマを用いて成膜を行うシーケンス例を示しており、図5(c)は、図5(a)に示すシーケンスの変形例を示しており、図5(d)は、図5(b)に示すシーケンスの変形例を示している。」

図1、3、5は、以下のとおりのものである。



(2)引用文献1に記載された発明
したがって、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「基板処理装置における処理方法であって、
前記基板処理装置の縦型処理炉202は、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている反応管203を有し、反応管203の筒中空部には処理室201が形成されており、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されており、
処理室201内にクロロシラン系原料ガスを流し、シリコン含有層を形成するステップ1と、
ステップ1が終了し処理室201内の残留ガスを除去した後、処理室201内にアミノシラン系原料ガスを流し、シリコン含有層は、シリコン(Si)、窒素(N)及び炭素(C)を含む第1の層へと改質して、Si、N及びCを含む層とするステップ2と、
ステップ2が終了し処理室201内の残留ガスを除去した後、処理室201内に窒素含有ガスを流すステップ3であって、
該窒素含有ガスはプラズマ励起することにより活性種として流すものであり、
ステップ2で形成された第1の層は窒化されて、シリコン炭窒化層(SiCN層)を含む第2の層へと改質される、ステップ3とを含み、
ステップ1?3を1サイクルとして、このサイクルを所定回数行うことにより、又は、ステップ1?2を1セットとしてこのセットを所定回数行う工程と、ステップ3を行う工程と、を1サイクルとして、このサイクルを所定回数行うことで、ウエハ200上に所定組成のシリコン炭窒化膜(SiCN膜)を成膜し、
アミノシラン系原料ガスとしては、3DMASガスの他、テトラキスジメチルアミノシラン(Si[N(CH_(3))_(2)]_(4)、略称:4DMAS)ガス、ビスジエチルアミノシラン(Si[N(C_(2)H_(5))_(2)]2H_(2)、略称:2DEAS)ガス、ビスターシャリーブチルアミノシラン(SiH_(2)[NH(C_(4)H_(9))]_(2)、略称:BTBAS)ガス、ヘキサメチルジシラザン((CH_(3))3Si-NH-Si(CH_(3))_(3)、略称:HMDS)ガス等の有機原料を用いてもよい、基板処理方法。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に薄膜を形成する工程を含む半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラムに関する。」

「【0010】
<本発明の第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態について、図1?図3を用いて説明する。
【0011】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、後述するようにガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0012】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO_(2))または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の筒中空部には処理室201が形成されており、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。」

「【0020】
このように、本実施形態では、反応管203の内壁と、積載された複数のウエハ200の端部(外周)と、で定義される円環状の縦長に伸びた空間内、つまり、円筒状の空間内に配置したノズル249a?249dおよびバッファ室237を経由してガスを搬送している。そして、ノズル249a?249dおよびバッファ室237にそれぞれ開口されたガス供給孔250a?250eから、ウエハ200の近傍で初めて反応管203内にガスを噴出させている。そして、反応管203内におけるガスの主たる流れを、ウエハ200の表面と平行な方向、すなわち水平方向としている。このような構成とすることで、各ウエハ200に均一にガスを供給でき、各ウエハ200に形成される薄膜の膜厚を均一にすることが可能となる。ウエハ200の表面上を流れたガス、すなわち、反応後の残ガスは、排気口、すなわち、後述する排気管231の方向に向かって流れる。但し、この残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定され、垂直方向に限ったものではない。
・・・
【0026】
ガス供給管232eからは、窒化ガス(窒素含有ガス)が、MFC241e、バルブ243e、ガス供給管232c、ノズル249c、バッファ室237を介して処理室201内へ供給される。窒化ガスとしては、例えば、アンモニア(NH_(3))ガスを用いることができる。
【0027】
ガス供給管232dからは、炭素(C)を含むガス(炭素含有ガス)として、例えば、炭化水素系ガスが、MFC241d、バルブ243d、ノズル249dを介して処理室201内へ供給される。炭素含有ガスとしては、例えば、プロピレン(C_(3)H_(6))ガスを用いることができる。
【0028】
ガス供給管232fからは、窒素(N)および炭素(C)を含むガスとして、例えば、アミン系ガスが、MFC241f、バルブ243f、ガス供給管232d、ノズル249dを介して処理室201内へ供給される。
・・・
【0030】
ガス供給管232g?232jからは、不活性ガスとして、例えば、窒素(N_(2))ガスが、それぞれMFC241g?241j、バルブ243g?243j、ガス供給管232a?232d、ノズル249a?249d、バッファ室237を介して処理室201内へ供給される。
・・・
【0037】
また、主に、ガス供給管232g?232j、MFC241g?241j、バルブ243g?243jにより、不活性ガス供給系が構成される。ガス供給管232a?232dにおけるガス供給管232g?232jとの接続部より下流側、ノズル249a?249d、バッファ室237を不活性ガス供給系に含めて考えてもよい。不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。」

「【0049】
(2)基板処理工程
次に、上述の基板処理装置の処理炉を用いて、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に薄膜を成膜するシーケンス例について説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0050】
本実施形態の成膜シーケンスでは、
基板に対して所定元素を含む原料ガスを供給する工程と、
基板に対してN、CおよびOを含む反応ガスを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、基板上に、所定元素を含む酸炭窒化膜を形成する。
【0051】
原料ガスを供給する工程では、所定元素を含む第1の層を形成し、反応ガスを供給する工程では、所定元素を含む第1の層と反応ガスとを反応させることで第1の層を改質して、第2の層として、所定元素を含む酸炭窒化層を形成する。
【0052】
「原料ガスを供給する工程と、反応ガスを供給する工程と、を含むサイクルを所定回数行う」とは、原料ガスを供給する工程と、反応ガスを供給する工程と、を交互に、または、同時に行うサイクルを1サイクルとした場合、このサイクルを1回もしくは複数回行うことを意味する。すなわち、このサイクルを1回以上行うことを意味する。換言すると、原料ガスを供給する工程と、反応ガスを供給する工程と、を交互に、または、同時に行うサイクルを、1回行うこと、もしくは、複数回繰り返すことを意味する。但し、このサイクルは複数回繰り返すのが好ましい。
【0053】
以下に、本実施形態の成膜シーケンスについて、図4、図5(a)を用いて説明する。
【0054】
図4、図5(a)に示す成膜シーケンスでは、
ウエハ200に対してSiを含む原料ガスとしてクロロシラン系原料ガス(HCDSガス)を供給する工程と、
ウエハ200に対してN、CおよびOを含む反応ガスとしてイソシアナート系ガス(HNCOガス)を供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、ウエハ200上に、Siを含む酸炭窒化膜としてシリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)を形成する。
【0055】
図4、図5(a)は、原料ガスを供給する工程と、反応ガスを供給する工程と、を交互に所定回数行う例を示している。
・・・
【0061】
(SiOCN膜形成工程)
その後、次の2つのステップ、すなわち、ステップ1a,2aを順次実行する。
【0062】
[ステップ1a]
(HCDSガス供給)
バルブ243aを開き、ガス供給管232a内にHCDSガスを流す。HCDSガスは、MFC241aにより流量調整され、ガス供給孔250aから処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してHCDSガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243gを開き、ガス供給管232g内にN_(2)ガス等の不活性ガスを流す。N_(2)ガスは、MFC241gにより流量調整され、HCDSガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
・・・
【0068】
上述の条件下でウエハ200に対してHCDSガスを供給することにより、ウエハ200(表面の下地膜)上に、第1の層として、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのClを含むSi含有層が形成される。第1の層はHCDSガスの吸着層であってもよいし、Clを含むSi層であってもよいし、その両方を含んでいてもよい。
・・・
【0074】
(残留ガス除去)
第1の層が形成された後、バルブ243aを閉じ、HCDSガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244は開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは第1の層形成に寄与した後のHCDSガスを処理室201内から排除する。このとき、バルブ243g?243jは開いたままとし、不活性ガスとしてのN_(2)ガスの処理室201内への供給を維持する。N_(2)ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留する未反応もしくは第1の層形成に寄与した後のHCDSガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。
・・・
【0076】
原料ガスとしては、HCDSガスの他、テトラクロロシランすなわちシリコンテトラクロライド(SiCl_(4)、略称:STC)ガス、トリクロロシラン(SiHCl_(3)、略称:TCS)ガス、ジクロロシラン(SiH_(2)Cl_(2)、略称:DCS)ガス、モノクロロシラン(SiH_(3)Cl、略称:MCS)ガス等のクロロシラン系原料ガスを用いてもよい。また、(エチルメチルアミノ)シラン(SiH_(3)[N(CH_(3))(C_(2)H_(5))])ガス、(ジメチルアミノ)シラン(SiH_(3)[N(CH_(3))_(2)])ガス、(ジエチルピペリジノ)シラン(SiH_(3)[NC_(5)H_(8)(C_(2)H_(5))_(2)])ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン(SiH_(2)[N(C_(2)H_(5))_(2)]_(2)、略称:BDEAS)ガス、ビス(ターシャリブチルアミノ)シラン(SiH_(2)[NH(C_(4)H_(9))]_(2)、略称:BTBAS)ガス、ビス(ジエチルピペリジノ)シラン(SiH_(2)[NC_(5)H_(8)(C_(2)H_(5))_(2)]_(2)、略称:BDEPS)ガス、トリス(ジエチルアミノ)シラン(SiH[N(C_(2)H_(5))_(2)]_(3)、略称:3DEAS)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(SiH[N(CH_(3))_(2)]_(3)、略称:3DMAS)ガス、テトラキス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C_(2)H_(5))_(2)]_(4)、略称:4DEAS)ガス、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH_(3))_(2)]_(4)、略称:4DMAS)ガス等のアミノシラン系原料ガスを用いてもよい。
【0077】
不活性ガスとしては、N_(2)ガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
【0078】
[ステップ2a]
(HNCOガス供給)
ステップ1aが終了し処理室201内の残留ガスを除去した後、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内にHNCOガスを流す。HNCOガスは、MFC241bにより流量調整され、ガス供給孔250bから処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対して熱で活性化されたHNCOガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243hを開き、ガス供給管232h内に不活性ガスとしてのN_(2)ガスを流す。N_(2)ガスは、MFC241hにより流量調整され、HNCOガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
・・・
【0081】
上述の条件下でウエハ200に対してHNCOガスを供給することにより、ステップ1aでウエハ200上に形成された第1の層とHNCOガスとが反応する。すなわち、第1の層に含まれるハロゲン元素(ハロゲン基)の原子であるCl(クロロ基)と、HNCOガスに含まれるリガンド(H)と、を反応させることができる。・・・
【0082】
この一連の反応により、第1の層中からClが脱離すると共に、第1の層中に、N成分、C成分、O成分が新たに取り込まれ、第1の層は、Si、O、CおよびNを含む第2の層、すなわち、シリコン酸炭窒化層(SiOCN層)へと変化する(改質される)。第2の層は、1原子層未満から数原子層程度の厚さの層となる。第2の層は、例えば、Si成分の割合とC成分の割合とが比較的多い層、すなわち、Siリッチであり、かつ、Cリッチな層となる。」

「【0125】
<本発明の第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0126】
上述の第1実施形態では、ステップ1a,2aを含むサイクルを所定回数行うことで、基板上に、SiOCN膜を形成する例について説明した。本実施形態では、上述のステップ1a,2aと同様に行うステップ1c,2cに加えて、基板に対して窒化ガスを供給するステップ3cをさらに含むサイクルを所定回数行うことで、基板上に、SiOCN膜またはSiON膜を形成する例について説明する。
【0127】
(第1シーケンス)
まず、本実施形態の第1シーケンスについて、図9、図10を用いて説明する。
【0128】
本実施形態の第1シーケンスでは、
ウエハ200に対してSiを含む原料ガスとしてクロロシラン系原料ガス(HCDSガス)を供給する工程と、
ウエハ200に対してN、CおよびOを含む反応ガスとしてイソシアナート系ガス(HNCOガス)を供給する工程と、
ウエハ200に対して窒化ガス(NH_(3)ガス)を供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、ウエハ200上に、SiOCN膜またはSiON膜を形成する。
【0129】
本シーケンスが第1実施形態の成膜シーケンスと異なるのは、ステップ1a,2aと同様に行うステップ1c,2cに加えてステップ3cをさらに含む点だけであり、その他は第1実施形態の成膜シーケンスと同様である。以下、本実施形態のステップ3cについて説明する。
【0130】
[ステップ3c]
(NH_(3)ガス供給)
ステップ2cが終了し処理室201内の残留ガスを除去した後、バルブ243eを開き、ガス供給管232e内にNH_(3)ガスを流す。NH_(3)ガスは、MFC241eにより流量調整され、ガス供給管232c内を流れ、ガス供給孔250cからバッファ室237内に供給される。このとき、棒状電極269,270間に高周波電力を印加しないことで、バッファ室237内に供給されたNH_(3)ガスは、熱で活性化され、ガス供給孔250eから処理室201内へ供給され、排気管231から排気される(図10(a)参照)。また、このとき、棒状電極269,270間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、バッファ室237内に供給されたNH_(3)ガスは、プラズマ励起され、活性種としてガス供給孔250eから処理室201内へ供給され、排気管231から排気される(図10(b)参照)。このときウエハ200に対して、熱またはプラズマで活性化されたNH_(3)ガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243iを開き、ガス供給管232i内にN_(2)ガスを流す。N_(2)ガスはNH_(3)ガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
・・・
【0133】
NH_(3)ガスをプラズマ励起することにより活性種として流すときは、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば1?100Paの範囲内の圧力とする。・・・
【0134】
このとき、処理室201内へ流しているガスは、処理室201内の圧力を高くすることで熱的に活性化されたNH_(3)ガス、もしくは、NH_(3)ガスをプラズマ励起することにより得られた活性種であり、処理室201内へはHCDSガスもHNCOガスも流していない。したがって、NH_(3)ガスは気相反応を起こすことはなく、活性化された、もしくは、活性種となったNH_(3)ガスは、ステップ2cでウエハ200上に形成された第2の層の少なくとも一部と反応する。これにより第2の層は窒化されて、Si、O、CおよびNを含む第3の層(SiOCN層)、または、Si、OおよびNを含む第3の層(SiON層)へと改質される。第3の層は、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さの層となる。
・・・
【0137】
また、図10(b)に示すように、NH_(3)ガスをプラズマ励起することにより得られた活性種を処理室201内へ流すことで、第2の層をプラズマ窒化して第3の層へと改質(変化)させることができる。このとき、第2の層におけるN成分の割合を増加させつつ、活性種のエネルギーにより、第2の層におけるC成分の少なくとも一部を脱離させる(引き抜く)ことで、第2の層を第3の層へと改質(変化)させることとなる。このとき、NH_(3)ガスによるプラズマ窒化の作用により、第2の層におけるSi-N結合が増加する一方、Si-C結合、Si-O結合、Si-Si結合は減少し、第2の層におけるC成分、O成分、Si成分の割合はそれぞれ減少することとなる。特に、C成分については、その大部分を脱離させることで不純物レベルにまで減少させるか、実質的に消滅させることもできる。例えば、第2の層におけるC成分の割合を不純物レベルにまで減少させたり、実質的に消滅させるまで改質を行うことで、第2の層をSiON層へと変化させることができる。また例えば、第2の層におけるC成分の割合を不純物レベルにまで減少させる前に改質を停止することで、第2の層を、第2の層よりもC成分の割合の少ないSiOCN層へと変化させることができる。すなわち、N濃度を増加させる方向に、また、C濃度、O濃度、Si濃度を減少させる方向に、組成比を変化させつつ第2の層を第3の層へと改質させることができる。さらに、このとき処理室201内の圧力やガス供給時間等の処理条件を制御することで、第3の層におけるN成分の割合、すなわち、N濃度を微調整することができ、第3の層の組成比をより緻密に制御することができる。
・・・
【0145】
(所定回数実施)
上述したステップ1c?3cを1サイクルとして、このサイクルを1回以上(所定回数)行うことにより、ウエハ200上に、所定組成及び所定膜厚のSiOCN膜またはSiON膜を成膜することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成するSiOCN層またはSiON層の厚さを所望の膜厚よりも小さくして、上述のサイクルを所望の膜厚になるまで複数回繰り返すのが好ましい。
【0146】
(第2シーケンス)
次に、本実施形態の第2シーケンスについて、図11、図12を用いて説明する。
【0147】
本実施形態の第2シーケンスでは、
ウエハ200に対してSiを含む原料ガスとしてクロロシラン系原料ガス(HCDSガス)を供給する工程と、ウエハ200に対してN、CおよびOを含む反応ガスとしてイソシアナート系ガス(HNCOガス)を供給する工程と、を交互に所定回数行う工程と、
ウエハ200に対して窒化ガス(NH_(3)ガス)を供給する工程と、
含むサイクルを所定回数行うことで、ウエハ200上に、SiOCN膜またはSiON膜を形成する。
【0148】
図12は、上述したステップ1c,2cを1セットとしてこのセットを2回行った後、ステップ3cを行い、これを1サイクルとして、このサイクルをn回行うことにより、ウエハ200上に所定組成及び所定膜厚のSiOCN膜またはSiON膜を成膜する例を示している。本シーケンスが第1シーケンスと異なるのは、上述したステップ1c,2cを1セットとしてこのセットを複数回繰り返した後、ステップ3cを行う点だけであり、その他は第1シーケンスと同様に行うことができる。また、本シーケンスにおける処理条件も、上述の第1シーケンスと同様な処理条件とすることができる。」

図1、10、12は、以下のとおりのものである。


(2)引用文献2に記載された発明
したがって、上記引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「基板処理装置において、基板上に薄膜を形成する工程を含む半導体装置の製造方法であって、
前記基板処理装置の処理炉202に配設された反応管203は、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成され、反応管203の筒中空部には処理室201が形成されており、基板としてのウエハ200を水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されており、
処理室201内にクロロシラン系原料ガスを流し、ウエハ200(表面の下地膜)上に、第1の層として、Clを含むSi含有層を形成するステップ1cと、
ステップ1cが終了し処理室201内の残留ガスを除去した後、処理室201内にN、CおよびOを含む反応ガスとしてイソシアナート系ガスを流し、第1の層中からClを脱離させると共に、第1の層中に、N成分、C成分、O成分を新たに取り込み、第1の層を、Si、O、CおよびNを含む第2の層、すなわち、シリコン酸炭窒化層(SiOCN層)へと変化させる(改質する)ステップ2cと、
ステップ2cが終了し処理室201内の残留ガスを除去した後、プラズマ励起され、活性種とされた窒化ガスを流すステップ3cであって、
第2の層をプラズマ窒化して第3の層へと改質(変化)させる、すなわち、N濃度を増加させる方向に、また、C濃度、O濃度、Si濃度を減少させる方向に、組成比を変化させつつ第2の層を第3の層へと改質させるステップ3cとを含み、
ステップ1c?3cを1サイクルとして、このサイクルを1回以上(所定回数)行うことにより、ウエハ200上に、所定組成のSiOCN膜を成膜する、半導体装置の製造方法。」

3 引用文献3について
(1)引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。

「【請求項1】
酸化感受性及び/又は窒化感受性基材の曝露表面上に、酸化シリコン材料又は窒化シリコン材料を形成する方法であって、
(a)前記酸化感受性及び/又は窒化感受性基材を、シリコン含有反応物の気相流に周期的に曝露すること;
(b)反応チャンバのステーションにおいて、前記酸化感受性及び/又は窒化感受性基材を、酸化反応物又は窒素含有反応物の気相流に曝露すること;並びに
(c)前記シリコン含有反応物の前記気相流が停止したら、約12.5?約125W/ステーションの高周波数の高周波電力を用いて前記反応チャンバ内でプラズマを周期的に着火すること
を備える、方法。
・・・
【請求項7】
請求項1?5のいずれか一項に記載の方法であって、さらに、
(d)前記反応チャンバのステーションにおいて、前記基材を、第2のシリコン含有反応物の気相流に周期的に曝露すること;
(e)前記基材を、第2の酸化剤含有反応物の気相流又は第2の窒素含有反応物の気相流に曝露すること;並びに
(f)前記第2のシリコン含有反応物の前記気相流が停止したら、約250?約1500W/ステーションの高周波数の高周波電力を用いて前記反応チャンバ内でプラズマを周期的に着火すること
によって、前記酸化シリコン又は窒化シリコン材料の上に、第2の酸化シリコン材料又は窒化シリコン材料を蒸着することを備える、方法。
・・・
【請求項31】
反応感受性基材上にシリコン含有二重層を形成する方法であって、
(a)プラズマ強化原子層蒸着プロセスによって、第1のシリコン含有フィルムの層を形成すること;及び
(b)プラズマ強化原子層蒸着プロセスによって、前記第1の層の上に第2のシリコン含有フィルムの層を形成すること
を備え、
前記(b)の操作は、前記(a)の操作において使用されるものよりも高い高周波電力を使用して実施される、方法。
【請求項32】
反応感受性基材の曝露表面上にシリコン含有二重層を形成する方法であって、
(a)プラズマ強化原子層蒸着プロセスによって、第1のシリコン含有フィルムの層を形成すること;及び
(b)プラズマ強化原子層蒸着プロセスによって、第2のシリコン含有フィルムの層を形成すること
を備え、
前記(b)の操作は、前記(a)の操作よりも高い温度で実施される、方法。
・・・
【請求項37】
請求項31又は32に記載の方法であって、
前記シリコン含有フィルムは、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、酸窒化シリコン、酸炭化シリコン、又は窒化炭化シリコンフィルムである、方法。」

「【発明の概要】
【0003】
ここで開示する様々な態様は、酸化感受性基材の表面の露出表面上にフィルムを蒸着する方法に属する。これらの方法は典型的には、反応物吸収及び反応の複数のサイクルによってフィルムを成長させる、表面媒介反応を含む。このようなある態様では、本方法は以下の操作を特徴とする:(a)酸化感受性基材を気相のシリコン含有反応物に曝露する;(b)酸化感受性基材を、反応チャンバのステーションにおいて気相の酸化反応物に曝露する;及び(c)シリコン含有反応物の流れが止まったら、約12.5?125W/ステーションの高周波数の高周波を用いて、反応チャンバ内でプラズマを周期的に着火する。本方法のいくつかの実装形態では、酸化反応物は基材に連続的に流れ、シリコン含有反応物は基材に断続的に流れる。他の実装形態では、酸化反応物は反応チャンバ内へとパルスとして流れる。
・・・
【0005】
いくつかの実施形態では、上述の本発明は更に、以下の一連の操作による第2の酸化シリコン材料の蒸着を特徴とする:(d)酸化感受性基材を気相の第2のシリコン含有反応物に曝露する;(e)酸化感受性基材を気相の第2の酸化反応物に曝露する;及び(f)第2のシリコン含有反応物の気相流が止まったら、約250?1500W/ステーションの高周波数の高周波を用いて、反応チャンバ内でプラズマを周期的に着火する。いくつかの実装形態では、操作(d)?(f)は約50?400℃で実施され、いくつかの場合にはこれらの操作は150?250℃又は300?400℃に制限される。いくつかの実施形態では操作(a)?(f)は同一の温度で実施されるが、他の実施形態では操作(a)?(c)と操作(d)?(f)は異なる温度で実施される。
・・・
【0017】
別の態様では、反応感受性基材上にシリコン含有二重層を形成する方法は、以下の操作を特徴とするものであってよい:(a)プラズマ強化原子層蒸着プロセスにより、シリコン含有フィルムの第1の層を形成する;及び(b)操作(a)で使用するものよりも高い高周波電力を用いて実施されるプラズマ強化原子層蒸着プロセスにより、シリコン含有フィルムの第2の層を第1の層の上に形成する。異なる態様では、反応感受性基材上にシリコン含有二重層を形成する方法は、以下の操作を特徴とするものであってよい:(a)プラズマ強化原子層蒸着プロセスにより、シリコン含有フィルムの第1の層を形成する;及び(b)操作(a)で使用するものよりも高い温度を用いて実施されるプラズマ強化原子層蒸着プロセスにより、シリコン含有フィルムの第2の層を第1の層の上に形成する。上述のように、第1の層を保護層と呼び、第2の層を電気的に有利な層と呼んでよい。
・・・
【0020】
具体的に開示する操作の多くがシリコン系酸化感受性基材に関係するが、本方法は多数の異なるタイプの酸化感受性基材表面上に使用してもよい。例えばいくつかの実装形態では、基材表面はコバルト、ゲルマニウム-アンチモン-テルル、シリコン-ゲルマニウム、窒化シリコン、炭化シリコン又は酸化シリコンであってよい。本明細書に記載する本方法を、上述のものに限定されない広範な酸化感受性基材に使用できることは、当業者には理解されるであろう。いくつかの実施形態では、シリコン含有フィルムは酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、酸窒化シリコン又は炭化シリコンフィルムである。」

「【0032】
ここで開示する様々な態様は、基材表面上にフィルムを蒸着する方法に属する。これらの方法は、反応物吸収及び反応の複数のサイクルによってフィルムを成長させる、プラズマ賦活表面媒介反応を含む。いくつかの実装形態では、本方法は均一フィルム蒸着(CFD)反応であり、1つ又は複数の反応物を基材表面に吸収し、その後反応させて、プラズマとの相互作用によって表面上にフィルムを形成する、CFD反応を用いる。」

「【0048】
本明細書に記載する実施形態では、様々な異なるプロセスの順序を使用してよい。1つの可能なプロセスは、以下の操作順序を含む:(1)副反応物を連続的に流す;(2)1用量のシリコン含有反応物又は他の主反応物を提供する;(3)1をパージする;(4)基材をRFプラズマに曝露する;(5)2をパージする。別の代替プロセスは、以下の操作順序を含む:(1)不活性ガスを連続的に流す;(2)1用量のシリコン含有反応物又は他の主反応物を提供する;(3)1をパージする;(4)1用量の酸化剤又はその他の副反応物を提供しながら、基材をRFプラズマに曝露する;(5)2をパージする。他の例示的なプロセスフローを図1A?1Eに示す。
・・・
【0061】
図1Aは、プラズマ賦活CFDプロセスの例示的実施形態のためのタイムチャート100を概略的に示す。2回の完全なCFDサイクルを示す。図示したように、各CFDサイクルサイクルは、反応物Aへの曝露段階120、その直後に続く反応物Bへの曝露段階140、反応物Bの排出段階160、及び最後にプラズマ賦活段階180を含む。プラズマ賦活段階180A及び180Bのプロセス中にもたらされるプラズマエネルギは、表面吸収反応物種AとBとの間の反応を賦活する。図示した実施形態では、一方の反応物(反応物A)が送達された後には排出段階は実施されない。実際、この反応物はフィルム蒸着プロセス中は連続的に流れる。よって、反応物Aがガス相であるときにプラズマが着火される。図示した実施形態では、反応物ガスA及びBは反応しないままガス相で共存してよい。従って、ALDプロセスにおいて記載したプロセスステップのうちの1つ又は複数を、この例示的なCFDプロセスでは短縮又は削除してよい。例えばA曝露段階120A及び120Bの後の排出ステップは削除してよい。
・・・
【0073】
CFDサイクルは典型的には、上述の曝露段階及び任意の排出段階に加えて「賦活段階」を含む。賦活段階は、基材表面に吸収された1つ又は複数の反応物の反応を駆動する役割を果たす。図1Aに示す実施例のプラズマ賦活段階180Aにおいて、プラズマエネルギを供給して、表面吸収反応物AとBとの間の表面反応を賦活する。例えば、プラズマは反応物Aのガス相分子を直接的又は間接的に賦活して、反応物Aのラジカルを形成できる。続いて、これらのラジカルは表面吸収反応物Bと相互反応でき、これによってフィルム形成表面反応が起こる。プラズマ賦活段階180Aによって蒸着サイクル110Aは終了し、図1Aの実施形態ではその後に蒸着サイクル110Bが続き、これは反応物A曝露段階120Bから始まる。」

「【0085】
開示した実施形態を実施するにあたり、多くの異なる反応物を用いてよい。蒸着したフィルムがシリコンを含む場合、シリコン化合物は例えばシラン、ハロシラン又はアミノシランとすることができる。シランは水素及び/又は炭素基を含むが、ハロゲンを含まない。シランの例としては、シラン(SiH_(4))、ジシラン(Si_(2)H_(6))、及びメチルシラン、エチルシラン、イソプロピルシラン、t-ブチルシラン、ジメチルシラン、ジエチルシラン、ジ-t-ブチルシラン、アリルシラン、sec-ブチルシラン、テキシルシラン、イソアミルシラン、t-ブチルジシラン、ジ-t-ブチルジシラン等のオルガノシランが挙げられる。ハロシランは少なくとも1つのハロゲン基を含有し、水素及び/又は炭素基を含んでも含まなくてもよい。ハロシランの例としては、ヨードシラン、ブロモシラン、クロロシラン及びフルオロシランが挙げられる。本明細書に記載する特定の実施形態では、ハロシラン、特にフルオロシランは、シリコン材料をエッチングすることができる反応性ハロゲン化物種を形成できるが、プラズマを投入する際、シリコン含有反応物は存在しない。具体的なクロロシランとしては、テトラクロロシラン(SiCl_(4))、トリクロロシラン(HSiCl_(3))、ジクロロシラン(H_(2)SiCl_(2))、モノクロロシラン(ClSiH_(3))、クロロアリルシラン、クロロメチルシラン、ジクロロメチルシラン、クロロジメチルシラン、クロロエチルシラン、t-ブチルクロロシラン、ジ-t-ブチルクロロシラン、クロロイソプロピルシラン、クロロ-sec-ブチルシラン、t-ブチルジメチルクロロシラン、テキシルジメチルクロロシラン等が挙げられる。アミノシランはシリコン原子に結合した少なくとも1つの窒素原子を含むが、水素、酸素、ハロゲン及び炭素を含んでもよい。アミノシランの例としては、モノ-、ジ-、トリ-及びテトラ-アミノシラン(それぞれH_(3)Si(NH_(2))_(4 )、H_(2)Si(NH_(2))_(2)、HSi(NH_(2))_(3)及びSi(NH_(2))_(4))、並びにモノ-、ジ-、トリ-及びテトラ-アミノシラン、例えばt-ブチルアミノシラン、 メチルアミノシラン、tert-ブチルシランアミン、ビス(三級ブチルアミノ)シラン(SiH_(2)(NHC(CH_(3))_(3))_(2)(BTBAS)、tert-ブチルシリルカルバメート、SiH(CH_(3))-(N(CH_(3))_(2))_(2)、SiHCl-(N(CH_(3))_(2))_(2)、(Si(CH_(3))_(2)NH)_(3)、ビスジエチルアミノシラン(BDEAS)、ジイソプロピルアミノシラン(DIPAS)、トリジメチルアミノチタン(TDMAT)等が挙げられる。アミノシランの更なる例は、トリシリルアミン(N(SiH_(3))_(3))である。
・・・
【0087】
いくつかの実施形態では、蒸着したフィルムは窒素を含み、窒素含有反応物を用いなければならない。窒素含有反応物は少なくとも1つの窒素を含み、例えばアンモニア;ヒドラジン;メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、t-ブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、シクロプロピルアミン、sec-ブチルアミン、シクロブチルアミン、イソアミルアミン、2-メチルブタン-2-アミン、トリメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、ジ-t-ブチルヒドラジン、並びにアニリン、ピリジン、及びベンジルアミン等の芳香族含有アミン等のアミン類(例えば、炭素担持アミン類)である。アミン類は一級、二級、三級又は四級アミン(例えばテトラアルキルアンモニウム化合物)であってよい。窒素含有反応物は、窒素以外のヘテロ原子を含むことができ、例えばヒドロキシルアミン、t-ブチルオキシカルボニルアミン及びN-t-ブチルヒドロキシルアミンは、窒素含有反応物である。
【0088】
特定の実装形態では、酸素含有酸化反応物を使用する。酸素含有酸化反応物の例としては、酸素、オゾン、亜酸化窒素、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化硫黄、二酸化硫黄、酸素含有炭化水素(C_(x)H_(y)O_(z))、水(H_(2)O)、これらの混合物等が挙げられる。」

「【0103】
本明細書の記述の大半は酸化シリコンフィルムの形成に焦点を当てているが、本明細書に記載する発明は、他のタイプのフィルムを反応感受性基材上に形成するためにも使用できる。例えば、上述の温度及びRF電力レベルを用いて、シリコン前駆物質及び窒素含有共反応物を用いるプラズマアシスト反応においてSiNを形成できる。このようにして、窒化感受性基材の望ましくない窒化を防ぐことができる。その上、本方法は金属酸化物及び金属窒化物フィルムを含む非シリコン含有フィルムの蒸着にも使用できる。」

「【0121】
装置
上述の実施形態のうち1つ又は複数において、いずれの適切なプロセスステーションを用いてよいことを理解されたい。例えば、図6はCFDプロセスステーション1300のある実施形態を概略的に示す。説明を簡潔にするために、CFDプロセスステーション1300を、低圧環境を維持するためのプロセスチャンバ本体1302を有するスタンドアローンタイプのプロセスステーションとして示す。しかしながら、一般的なプロセスツール環境には、多数のCFDプロセスステーションが含まれ得ることを理解されたい。例えば、図7はマルチステーション処理ツール2400の実施形態を示す。更に、いくつかの実施形態では、既に詳細に説明したものを含むCFDプロセスステーション1400の1つ又は複数のハードウェアパラメータは、1つ又は複数のコンピュータコントローラによってプログラムを用いて調整できることを理解されたい。
・・・
【0126】
シャワーヘッド1306はプロセスガスを基材1312へと分配する。図6に示す実施形態では、基材1312はシャワーヘッド1306の下側に位置し、架台1308上に静置された状態で示されている。シャワーヘッド1306はいずれの適切な形状を有してよく、プロセスガスを基材1312へと分配するためのポートを、いずれの適切な数及び配置で有してよいことを理解されたい。
・・・
【0137】
いくつかの実施形態では、ヒータ1310によって架台1308を温度制御してよい。更に、いくつかの実施形態では、バタフライバルブ1318によって、CFDプロセスステーション1300のための圧力制御を提供してよい。図6の実施形態に示すように、バタフライバルブ1318は、下流の真空ポンプ(図示せず)が提供する真空を絞る。しかしながらいくつかの実施形態では、プロセスステーション1300の圧力制御を、CFDプロセスステーション1300に導入される1つ又は複数のガスの流量を変化させることによって調整してよい。」

図1A、6は、以下のとおりのものである。
【図1A】

【図6】


(2)引用文献3に記載された発明
したがって、上記引用文献3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「プロセスチャンバ本体1302において、反応感受性基材上にシリコン含有二重層を形成する方法であって、
(a)プラズマ強化原子層蒸着プロセスにより、シリコン含有フィルムの第1の層を形成すること;及び(b)操作(a)で使用するものよりも高い高周波電力を用いて実施されるプラズマ強化原子層蒸着プロセス、又は、操作(a)で使用するものよりも高い温度を用いて実施されるプラズマ強化原子層蒸着プロセスにより、シリコン含有フィルムの第2の層を第1の層の上に形成することを備え、
シリコン含有フィルムは、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、酸窒化シリコン、酸炭化シリコン、又は窒化炭化フィルムであり、
均一フィルム蒸着(CFD)反応であり、1つ又は複数の反応物を基材表面に吸収し、その後反応させて、プラズマとの相互作用によって表面上にフィルムを形成する、CFD反応を用いるものであり、
各CFDサイクルは、反応物Aへの曝露段階120、その直後に続く反応物Bへの曝露段階140、反応物Bの排出段階160、及び最後にプラズマ賦活段階180を含み、
プラズマ賦活段階180A及び180Bのプロセス中にもたらされるプラズマエネルギは、表面吸収反応物種AとBとの間の反応を賦活するものであり、
蒸着したフィルムがシリコンを含む場合、シリコン化合物は例えばシラン、ハロシラン又はアミノシランとすることができ、アミノシランはシリコン原子に結合した少なくとも1つの窒素原子を含むが、水素、酸素、ハロゲン及び炭素を含んでもよく、
蒸着したフィルムが窒素を含む場合、窒素含有反応物を用いなければならず、
特定の実装形態では、酸素含有酸化反応物を使用する、方法。」

4 その他の文献について
(1)引用文献6について
原査定の拒絶の理由で、周知技術を示す文献として提示された引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハなどの基板を、互いに反応する2種類以上の反応ガスに交互に曝すことにより、反応生成物による薄膜を成膜する成膜方法に関する。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、半導体記憶素子の低コスト化の観点から、半導体ウエハ(以下、ウエハ)の大口径化が進められており、これに伴って、ウエハ面内における均一性の向上が求められている。このような要望に応える成膜方法として、原子層成膜(ALD)法または分子層成膜(MLD)法と呼ばれる成膜方法が期待されている。ALD法では、互いに反応する2種類の反応ガスの一方の反応ガス(反応ガスA)をウエハ表面に吸着させ、吸着した反応ガスAを他方の反応ガス(反応ガスB)で反応させるサイクルを繰り返すことにより、反応生成物による薄膜がウエハ表面に成膜される。ALDは、ウエハ表面への反応ガスの吸着を利用するため、膜厚均一性及び膜厚制御性に優れるという利点を有している。
【0005】
ALD法を、たとえば縦型のバッチ式成膜装置において実施する場合には、複数のウエハが収容されるプロセスチューブ内に、まず、反応ガスAを所定の期間供給して、ウエハ表面に反応ガスAを吸着させ、次に、プロセスチューブ内から反応ガスAを排気すると共に、パージガスを供給してプロセスチューブから反応ガスAをパージする。続けて、反応ガスBをプロセスチューブ内へ所定の期間供給して、ウエハ表面上で反応ガスAと反応ガスBを反応させることにより、ウエハ表面に反応生成物を生成させる。以下、所定の膜厚を有する薄膜が得られるまで、上記の工程が繰り返される。バッチ式の成膜装置によりALD法を実施する場合には、上述のように、反応ガスAの供給、反応ガスAの排気/パージ、反応ガスBの供給、及び反応ガスBの排気/パージというように、反応ガスAと反応ガスBを切り替えると共に、切り替えの間に排気/パージという工程が行われるため、成膜に時間がかかる。
【0006】
バッチ式の成膜装置に対して、いわゆる回転テーブル式の成膜装置がある。この成膜装置は、真空容器内に回転可能に配置され、複数のウエハが載置される回転テーブルと、回転テーブルの上方に区画される反応ガスAの供給領域、反応ガスBの供給領域、及びこれらを分離する分離領域と、反応ガスA及び反応ガスBの供給領域に対応して設けられる排気口と、これらの排気口に接続される排気装置とを有している。このような成膜装置においては、回転テーブルを回転することによって、反応ガスAの供給領域、分離領域、反応ガスBの供給領域、及び分離領域をウエハに通過させる。このようにすれば、反応ガスAの供給領域においてウエハ表面に反応ガスAを吸着させ、反応ガスBの供給領域において反応ガスAと反応ガスBとをウエハ表面で反応させることができる。このため、成膜中には反応ガスA及び反応ガスBを切り替える必要はなく、継続して供給することができる。したがって排気/パージ工程が不要となり、成膜時間を短縮できるという利点がある。」

「【0014】
(成膜装置)
始めに、本発明の実施形態による成膜方法を実施するのに好適な成膜装置について説明する。 図1から図3までを参照すると、本発明の実施形態による成膜装置1は、ほぼ円形の平面形状を有する扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は、有底の円筒形状を有する容器本体12と、容器本体12の上面に対して、例えばOリングなどのシール部材13(図1)を介して気密に着脱可能に配置される天板11とを有している。
【0015】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は真空容器1の底部14を貫通し、その下端が回転軸22(図1)を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気が外部雰囲気から隔離される。
【0016】
回転テーブル2の表面には、図2及び図3に示すように回転方向(周方向)に沿って複数(図示の例では5枚)半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)Wを載置するための円形状の凹部24が設けられている。なお図3には便宜上1個の凹部24だけにウエハWを示す。この凹部24は、ウエハWの直径(例えば300mm)よりも僅かに例えば4mm大きい内径と、ウエハWの厚さにほぼ等しい深さとを有している。したがって、ウエハWを凹部24に載置すると、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが同じ高さになる。
【0017】
図2及び図3は、真空容器1内の構造を説明する図であり、説明の便宜上、天板11の図示を省略している。図2及び図3に示すように、回転テーブル2の上方には、各々例えば石英からなる反応ガスノズル31、反応ガスノズル32、及び分離ガスノズル41,42が配置されている。図示の例では、真空容器1の周方向に間隔をおいて、搬送口15(後述)から時計回り(回転テーブル2の回転方向)に分離ガスノズル41、反応ガスノズル31、分離ガスノズル42、及び反応ガスノズル32の順に配列されている。これらのノズル31、32、41、及び42は、それぞれの基端部であるガス導入ポート31a、32a、41a、及び42a(図3)を容器本体12の外周壁に固定することにより、真空容器1の外周壁から真空容器1内に導入され、容器本体12の半径方向に沿って回転テーブル2に対して平行に伸びるように取り付けられている。
【0018】
図3に示すように、反応ガスノズル31の導入ガスポート31aには配管110が接続されている。配管110は、所定の継ぎ手により2つの分岐管に分岐している。一方の分岐管には、開閉バルブV1及び流量調整器111(例えばマスフローコントローラ)を介してガス供給源121が接続され、他方の分岐管には、開閉バルブV3及び流量調整器113を介してガス供給源123が接続されている。ガス供給源121は、ジルコニウム(Zr)を含有する反応ガスとして、Zrを含有する有機金属ガス(又は蒸気、以下同じ)を供給する。本実施形態においては、Zr含有有機金属ガスとして、テトラキス・エチルメチル・アミノジルコニウム(TEMAZ)が使用される。また、供給源121は、アルミニウム(Al)を含有する反応ガスとして、Alを含有する有機金属ガスを供給する。本実施形態においては、Al含有有機金属ガスとして、トリメチルアルミニウム(TMA)が使用される。開閉バルブV1及びV3を相補的に開閉することにより、TEMAZ及びTMAのいずれかが反応ガスノズル31から真空容器1内へ供給される。
【0019】
一方、反応ガスノズル32には、TEMAZを酸化してZrOを生成し、TMAを酸化してAlOを生成するオゾン(O_(3))ガスを供給する供給源(不図示)が開閉バルブ及び流量調整器(ともに不図示)を介して接続されている。 また、分離ガスノズル41、42には、ArやHeなどの希ガスや窒素ガスなどの不活性ガスの供給源が開閉バルブ及び流量調整器(ともに不図示)を介して接続されている。本実施形態においては、不活性ガスとしてN_(2)ガスが使用される。」

図3は、以下のとおりのものである。


(2)引用文献7について
原査定の拒絶の理由で、周知技術を示す文献として提示された引用文献7には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、処理ガスのプラズマ化によって得られたプラズマを用いて基板に対して成膜処理を行う成膜方法、この成膜方法が記録された記憶媒体及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)に対して行われる成膜処理として、成膜ガスと反応ガスとを交互に複数回繰り返して供給するALD(Atomic Layer Deposition)法などと呼ばれている手法がある。この手法は、成膜された薄膜が緻密であり、また凹部に対する埋め込み特性が良好であるなどの利点があり、成膜ガスや反応ガスをプラズマ化することにより、不純物が少ない、高い緻密性の薄膜が得られる。
【0003】
ところで緻密性の高い良質な膜は応力が大きいため、膜の材質によっては、温度が変化したときにその応力と下地膜の応力との差が大きくなる場合がある。このため、薄膜に要求される品質として更に高品質化が要求されると、薄膜(上層膜)が下地膜から剥がれる懸念もあり、このような懸念を払拭する手法の確立が望まれる。
【0004】
特許文献1には、公転しているウエハに対して互いに反応する2種類の反応ガスを順番に供給すると共に、ウエハが公転する経路の途中で当該ウエハ上の反応生成物のプラズマ改質を行う手法が記載されている。しかしながら、この特許文献1では、上述の課題については着目されていない。」

「【0053】
また、以上説明した本発明の成膜方法を実施するための装置としては、既述のミニバッチ式の装置に代えて、枚葉装置を用いても良いし、あるいは多数枚のウエハWに対して一括して成膜を行うバッチ式の装置を用いても良い。図14及び図15は、このような装置のうちバッチ式の縦型熱処理装置を示しており、反応管401の内部には多数のウエハWを棚状に積載するウエハボート402が下方側から気密に収納されている。」

(3)引用文献8について
原査定の拒絶の理由で、周知技術を示す文献として提示された引用文献8には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対してプラズマ処理を行う基板処理装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基板(以下「ウエハ」と言う)にシリコン酸化膜(SiO_(2))などの薄膜を成膜する手法として、例えば特許文献1に記載の装置を用いたALD(Atomic Layer Deposition)法が知られている。この装置では、回転テーブル上に5枚のウエハを周方向に並べると共に、この回転テーブルの上方側に複数のガスノズルを配置している。そして、公転している各々のウエハに対して互いに反応する複数種類の反応ガスを順番に供給して、反応生成物を積層している。」

(4)引用文献6-8に記載された周知技術
上記(1)-(3)のとおり、「回転テーブル式の成膜装置において、ALD法による成膜処理を行うこと。」という技術的事項は、本願優先日前において周知技術であったといえる。

第6 対比・判断
1 引用発明1との対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明1における「反応管203」、「基板としてのウェハ200」は、それぞれ、本願発明1における「処理チャンバ」、「基板表面」の「基板」に相当し、引用発明1における「基板処理方法」は本願発明1における「処理方法」に対応する。

(イ)引用発明1は、「処理室201内にクロロシラン系原料ガスを流し、シリコン含有層を形成するステップ1」を含むものであるところ、「クロロシラン系原料ガス」、「シリコン含有層」は、それぞれ、本願発明1における「ケイ素含有前駆体」、「第1ケイ素含有膜」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明1とは、「第1ケイ素含有膜を形成するために、処理チャンバ内で基板表面の少なくとも一部分をケイ素含有前駆体に曝露すること」を含む点で一致する。

(ウ)引用発明1は、「ステップ1が終了し処理室201内の残留ガスを除去した後、処理室201内にアミノシラン系原料ガスを流し、シリコン含有層は、シリコン(Si)、窒素(N)及び炭素(C)を含む第1の層へと改質して、Si、N及びCを含む層とするステップ2」を含み、「アミノシラン系原料ガスとしては、3DMASガスの他、テトラキスジメチルアミノシラン(Si[N(CH_(3))_(2)]_(4)、略称:4DMAS)ガス、ビスジエチルアミノシラン(Si[N(C_(2)H_(5))_(2)]2H_(2)、略称:2DEAS)ガス、ビスターシャリーブチルアミノシラン(SiH_(2)[NH(C_(4)H_(9))]_(2)、略称:BTBAS)ガス、ヘキサメチルジシラザン((CH_(3))3Si-NH-Si(CH_(3))_(3)、略称:HMDS)ガス等の有機原料を用いてもよい」ものであるところ、「3DMASガス」、「4DMASガス」等の例示されているアミノシラン系原料ガスは、いずれも炭素を含むから、引用発明1における「アミノシラン系原料ガス」、「シリコン(Si)、窒素(N)及び炭素(C)を含む第1の層」は、それぞれ、本願発明1における「炭素含有前駆体」、「第2ケイ素含有膜」に対応する。
したがって、本願発明1と引用発明1とは、「炭素を含む第2ケイ素含有膜を形成するために、前記処理チャンバ内で前記第1ケイ素含有膜を炭素含有前駆体に曝露すること」を含む点で一致する。

(エ)引用発明1は、「ステップ2が終了し処理室201内の残留ガスを除去した後、処理室201内に窒素含有ガスを流すステップ3であって、該窒素含有ガスはプラズマ励起することにより活性種として流すものであり、ステップ2で形成された第1の層は窒化されて、シリコン炭窒化層(SiCN層)を含む第2の層へと改質される、ステップ3」を含むものであるところ、引用発明1における「シリコン炭窒化層(SiCN層)を含む第2の層」は、本願発明1における「ケイ素-炭素膜」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明1とは、「ケイ素-炭素膜を形成するために、前記処理チャンバ内で前記第2ケイ素含有膜をプラズマに曝露すること」を含む点で一致する。

(オ)したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「第1ケイ素含有膜を形成するために、処理チャンバ内で基板表面の少なくとも一部分をケイ素含有前駆体に曝露することと、
炭素を含む第2ケイ素含有膜を形成するために、前記処理チャンバ内で前記第1ケイ素含有膜を炭素含有前駆体に曝露することと、
ケイ素-炭素膜を形成するために、前記処理チャンバ内で前記第2ケイ素含有膜をプラズマに曝露することとを含む、処理方法。」

<相違点>
<相違点1A>
「基板表面の少なくとも一部分をケイ素含有前駆体に曝露すること」について、本願発明1では、「処理チャンバの、第1ガスポートを備える第1区画内」で曝露するのに対し、引用発明1では、反応管203の「処理室201内」で行われるステップ1について、そのような特定はなされていない点。

<相違点2A>
「前記第1ケイ素含有膜を炭素含有前駆体に曝露すること」について、本願発明1では、「前記処理チャンバの、第2ガスポートを備える第2区画内」で曝露するのに対し、引用発明1では、反応管203の「処理室201内」で行われるステップ2について、そのような特定はなされていない点。

<相違点3A>
「前記第2ケイ素含有膜をプラズマに曝露すること」について、本願発明1では、「前記処理チャンバの第3区画内」で曝露するのに対し、引用発明1では、反応管203の「処理室201内」で行われるステップ3について、そのような特定はなされていない点。

<相違点4A>
「処理チャンバ」、並びに、処理チャンバの「第1区画」が備える「第1ガスポート」及び「第2区画」が備える「第2ガスポート」について、本願発明1では、「前記処理チャンバの隣接する区画は、不活性ガスにより分離され、前記第1ガスポート及び前記第2ガスポートのそれぞれは、それぞれの真空ポートによって取り囲まれる」ものであるのに対し、引用発明1では、「処理室201」について、そのような特定はなされていない点。

イ 相違点についての判断
相違点1A-4Aは互いに関連することから、まとめて検討する。

(ア)上記「第4」の「4(4)」に記載のとおり、「回転テーブル式の成膜装置において、ALD法による成膜処理を行うこと。」という技術的事項は、本願優先日前において、引用文献6-8に記載された周知技術であったといえる。
しかしながら、引用発明1において、「前記基板処理装置の縦型処理炉202は、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている反応管203を有し、反応管203の筒中空部には処理室201が形成されており、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されており」、また、引用発明1のステップ1ないし3は、いずれも「処理室201内」に、それぞれ、「クロロシラン系原料ガスを流し」、「『ステップ1が終了し処理室201内の残留ガスを除去した後』、『アミノシラン系原料ガスを流し』」、「『ステップ2が終了し処理室201内の残留ガスを除去した後』、『窒素含有ガスを流す』」ものであるから、引用発明1は、縦型処理炉202の処理室201内における時間ベースの処理方法であるといえる。
一方、上記「第4」の「4(1)」に摘記のとおり、引用文献6の段落【0006】には、「この成膜装置は、真空容器内に回転可能に配置され、複数のウエハが載置される回転テーブルと、回転テーブルの上方に区画される反応ガスAの供給領域、反応ガスBの供給領域、及びこれらを分離する分離領域と、反応ガスA及び反応ガスBの供給領域に対応して設けられる排気口と、これらの排気口に接続される排気装置とを有している。このような成膜装置においては、回転テーブルを回転することによって、反応ガスAの供給領域、分離領域、反応ガスBの供給領域、及び分離領域をウエハに通過させる。」と記載されているように、上記周知技術は、「回転テーブル式の成膜装置」における成膜処理であって、真空容器内の、反応ガスAの供給領域、分離領域、反応ガスBの供給領域、及び分離領域をウエハに通過させるものであるから、空間ベースの処理方法であるといえる。
したがって、引用発明1と、上記周知技術とは、基板の処理方法が実施される装置の根本的な構造が異なり、引用発明1において上記周知技術を適用する動機付けはない。
よって、当業者といえども、引用発明1及び引用文献6-8に記載された上記周知技術から、相違点1A-4Aに係る本願発明1の上記構成を容易に想到することはできない。

(イ)したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明1、引用文献6-8に記載された上記周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本願発明2-15について
本願発明2-15も、本願発明1の「処理チャンバの、第1ガスポートを備える第1区画内」、「前記処理チャンバの、第2ガスポートを備える第2区画内」、「前記処理チャンバの第3区画内」、「前記処理チャンバの隣接する区画は、不活性ガスにより分離され、前記第1ガスポート及び前記第2ガスポートのそれぞれは、それぞれの真空ポートによって取り囲まれる」と同一の構成を備えるものであり、引用文献5にも当該同一の構成は記載されていないから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、引用文献5-8に記載された上記周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 引用発明2との対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明2における「反応管203」、「基板としてのウエハ200」は、それぞれ、本願発明1における「処理チャンバ」、「基板表面」の「基板」に相当し、引用発明2における「半導体装置の製造方法」は、本願発明1における「処理方法」に対応する。

(イ)引用発明2は、「処理室201内にクロロシラン系原料ガスを流し、ウエハ200(表面の下地膜)上に、第1の層として、Clを含むSi含有層を形成するステップ1c」を含むものであるところ、「クロロシラン系原料ガス」、「Si含有層」は、それぞれ、本願発明1における「ケイ素含有前駆体」、「第1ケイ素含有膜」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明2とは、「第1ケイ素含有膜を形成するために、処理チャンバ内で基板表面の少なくとも一部分をケイ素含有前駆体に曝露すること」を含む点で一致する。

(ウ)引用発明2は、「ステップ1aが終了し処理室201内の残留ガスを除去した後、処理室201内にN、CおよびOを含む反応ガスとしてイソシアナート系ガスを流し、第1の層中からClを脱離させると共に、第1の層中に、N成分、C成分、O成分を新たに取り込み、第1の層を、Si、O、CおよびNを含む第2の層、すなわち、シリコン酸炭窒化層(SiOCN層)へと変化させる(改質する)ステップ2c」を含むものであるところ、「N、CおよびOを含む反応ガスとしてイソシアナート系ガス」は、炭素を含むから、引用発明2における「N、CおよびOを含む反応ガスとしてイソシアナート系ガス」、「Si、O、CおよびNを含む第2の層、すなわち、シリコン酸炭窒化層(SiOCN層)」は、それぞれ、本願発明1における「炭素含有前駆体」、「第2ケイ素含有膜」に対応する。
したがって、本願発明1と引用発明2とは、「炭素を含む第2ケイ素含有膜を形成するために、前記処理チャンバ内で前記第1ケイ素含有膜を炭素含有前駆体に曝露すること」を含む点で一致する。

(エ)引用発明2は、「ステップ2cが終了し処理室201内の残留ガスを除去した後、プラズマ励起され、活性種とされた窒化ガスを流すステップ3cであって、第2の層をプラズマ窒化して第3の層へと改質(変化)させる、すなわち、N濃度を増加させる方向に、また、C濃度、O濃度、Si濃度を減少させる方向に、組成比を変化させつつ第2の層を第3の層へと改質させるステップ3c」を含むものであるところ、引用発明2における「『第2の層をプラズマ窒化して』『改質(変化)』させた『第3の層』」は、本願発明1における「ケイ素-炭素膜」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明2とは、「ケイ素-炭素膜を形成するために、前記処理チャンバ内で前記第2ケイ素含有膜をプラズマに曝露すること」を含む点で一致する。

(オ)したがって、本願発明1と引用発明2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「第1ケイ素含有膜を形成するために、処理チャンバ内で基板表面の少なくとも一部分をケイ素含有前駆体に曝露することと、
炭素を含む第2ケイ素含有膜を形成するために、前記処理チャンバ内で前記第1ケイ素含有膜を炭素含有前駆体に曝露することと、
ケイ素-炭素膜を形成するために、前記処理チャンバ内で前記第2ケイ素含有膜をプラズマに曝露することとを含む、処理方法。」

<相違点>
<相違点1B>
「基板表面の少なくとも一部分をケイ素含有前駆体に曝露すること」について、本願発明1では、「処理チャンバの、第1ガスポートを備える第1区画内」で曝露するのに対し、引用発明2では、反応管203の「処理室201内」で行われるステップ1cについて、そのような特定はなされていない点。

<相違点2B>
「前記第1ケイ素含有膜を炭素含有前駆体に曝露すること」について、本願発明1では、「前記処理チャンバの、第2ガスポートを備える第2区画内」で曝露するのに対し、引用発明2では、反応管203の「処理室201内」で行われるステップ2cについて、そのような特定はなされていない点。

<相違点3B>
「前記第2ケイ素含有膜をプラズマに曝露すること」について、本願発明1では、「前記処理チャンバの第3区画内」で曝露するのに対し、引用発明2では、反応管203の「処理室201内」で行われるステップ3cについて、そのような特定はなされていない点。

<相違点4B>
「処理チャンバ」、並びに、処理チャンバの「第1区画」が備える「第1ガスポート」及び「第2区画」が備える「第2ガスポート」について、本願発明1では、「前記処理チャンバの隣接する区画は、不活性ガスにより分離され、前記第1ガスポート及び前記第2ガスポートのそれぞれは、それぞれの真空ポートによって取り囲まれる」ものであるのに対し、引用発明2では、「処理室201」について、そのような特定はなされていない点。

イ 判断
相違点1B-4Bは互いに関連することから、まとめて検討する。

(ア)上記「第4」の「4(4)」に記載のとおり、「回転テーブル式の成膜装置において、ALD法による成膜処理を行うこと。」という技術的事項は、本願優先日前において、引用文献6-8に記載された周知技術であったといえる。
しかしながら、引用発明2において、「前記基板処理装置の処理炉202に配設された反応管203は、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成され、反応管203の筒中空部には処理室201が形成されており、基板としてのウエハ200を水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されており」、また、引用発明2のステップ1cないし3cは、いずれも「処理室201内」に、それぞれ、「クロロシラン系原料ガスを流し」、「『ステップ1aが終了し処理室201内の残留ガスを除去した後』、『N、CおよびOを含む反応ガスとしてイソシアナート系ガスを流し』」、「『ステップ2cが終了し処理室201内の残留ガスを除去した後』、『プラズマ励起され、活性種とされた窒化ガスを流す』」ものであるから、引用発明2は、基板としてのウエハ200を水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている処理室201内における時間ベースの処理方法であるといえる。
一方、上記「第4」の「4(1)」に摘記のとおり、引用文献6の段落【0006】には、「この成膜装置は、真空容器内に回転可能に配置され、複数のウエハが載置される回転テーブルと、回転テーブルの上方に区画される反応ガスAの供給領域、反応ガスBの供給領域、及びこれらを分離する分離領域と、反応ガスA及び反応ガスBの供給領域に対応して設けられる排気口と、これらの排気口に接続される排気装置とを有している。このような成膜装置においては、回転テーブルを回転することによって、反応ガスAの供給領域、分離領域、反応ガスBの供給領域、及び分離領域をウエハに通過させる。」と記載されているように、上記周知技術は、「回転テーブル式の成膜装置」における成膜処理であって、真空容器内の、反応ガスAの供給領域、分離領域、反応ガスBの供給領域、及び分離領域をウエハに通過させるものであるから、空間ベースの処理方法であるといえる。
したがって、引用発明2と、上記周知技術とは、基板の処理方法が実施される装置の根本的な構造が異なり、引用発明2において上記周知技術を適用する動機付けはない。
よって、当業者といえども、引用発明2及び引用文献6-8に記載された上記周知技術から、相違点1B-4Bに係る本願発明1の上記構成を容易に想到することはできない。

(イ)したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明2、引用文献6-8に記載された上記周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本願発明2-15について
本願発明2-15も、本願発明1の「処理チャンバの、第1ガスポートを備える第1区画内」、「前記処理チャンバの、第2ガスポートを備える第2区画内」、「前記処理チャンバの第3区画内」、「前記処理チャンバの隣接する区画は、不活性ガスにより分離され、前記第1ガスポート及び前記第2ガスポートのそれぞれは、それぞれの真空ポートによって取り囲まれる」と同一の構成を備えるものであり、引用文献5にも当該同一の構成は記載されていないから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明2、引用文献5-8に記載された上記周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3 引用発明3との対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明3とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明3における「プロセスチャンバ本体1302」、「反応感受性基材」は、それぞれ、本願発明1における「処理チャンバ」、「基板表面」の「基板」に相当し、引用発明3における「シリコン含有二重層を形成する方法」は、本願発明1における「処理方法」に対応する。

(イ)引用発明3は、「(a)プラズマ強化原子層蒸着プロセスにより、シリコン含有フィルムの第1の層を形成すること;及び(b)操作(a)で使用するものよりも高い高周波電力を用いて実施されるプラズマ強化原子層蒸着プロセス、又は、操作(a)で使用するものよりも高い温度を用いて実施されるプラズマ強化原子層蒸着プロセスにより、シリコン含有フィルムの第2の層を第1の層の上に形成することを備え、シリコン含有フィルムは、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、酸窒化シリコン、酸炭化シリコン、又は窒化炭化シリコンフィルムであり」、「各CFDサイクルは、反応物Aへの曝露段階120、その直後に続く反応物Bへの曝露段階140」を含み、「蒸着したフィルムがシリコンを含む場合、シリコン化合物は例えばシラン、ハロシラン又はアミノシランとすることができ、アミノシランはシリコン原子に結合した少なくとも1つの窒素原子を含むが、水素、酸素、ハロゲン及び炭素を含んでもよく、蒸着したフィルムが窒素を含む場合、窒素含有反応物を用いなければならず、特定の実装形態では、酸素含有酸化反応物を使用」するものである。

したがって、引用発明3において、「シリコン含有フィルムの第1の層を形成する」操作(a)は、各CFDサイクルにおける「反応物Aへの曝露段階120」に対応し、「シリコン含有フィルムの第2の層を第1の層の上に形成する」操作(b)は、各CFDサイクルにおける「反応物Bへの曝露段階140」に対応すると認められるから、引用発明3における「反応物A」、「反応物B」は、それぞれ本願発明3の「ケイ素含有前駆体」、「炭素含有前駆体」に対応する。
そして、「シリコン含有フィルムの第1の層」はシリコンを含有するから、その場合、「反応物A」はシリコンを含有する前駆体を用いることが必要となることは明らかである。したがって、引用発明3の「反応物A]、「シリコン含有フィルムの第1の層」は、それぞれ、本願発明1における「ケイ素含有前駆体」、「第1ケイ素含有膜」に相当するといえる。
よって、本願発明1と引用発明3とは、「第1ケイ素含有膜を形成するために、処理チャンバ内で基板表面の少なくとも一部分をケイ素含有前駆体に曝露すること」を含む点で一致する。

引用発明3は、更に、「シリコン含有フィルムは、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、酸窒化シリコン、酸炭化シリコン、又は窒化炭化シリコンフィルム」であるところ、このうち、シリコン含有フィルムが、「炭化シリコンフィルム」、「酸炭化シリコンフィルム」、「窒化炭化シリコンフィルム」である場合は、該フィルムは炭素を含むから、引用発明3における「反応物B」、「シリコン含有フィルムの第2の層」は、それぞれ、本願発明1における「炭素含有前駆体」、「第2ケイ素含有膜」に相当するといえる。
したがって、本願発明1と引用発明3とは、「炭素を含む第2ケイ素含有膜を形成するために、前記処理チャンバ内で前記第1ケイ素含有膜を炭素含有前駆体に曝露すること」を含む点で共通する。

(ウ)引用発明3において、「シリコン含有フィルムは酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、酸窒化シリコン又は炭化シリコンフィルムであり」、「各CFDサイクル」は、「プラズマ賦活段階180」を含み、「プラズマ賦活段階180A及び180Bのプロセス中にもたらされるプラズマエネルギは、表面吸収反応物種AとBとの間の反応を賦活するものであり」であるところ、シリコン含有フィルムが「炭化シリコンフィルム」である場合は、該フィルムは「ケイ素-炭素膜」であるといえるから、引用発明3において、「プラズマ賦活段階180」後の、「シリコン含有フィルムの第2の層」は、本願発明1における「ケイ素-炭素膜」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明3とは、「ケイ素-炭素膜を形成するために、前記処理チャンバ内で前記第2ケイ素含有膜をプラズマに曝露すること」を含む点で一致する。

(エ)したがって、本願発明1と引用発明3との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「第1ケイ素含有膜を形成するために、処理チャンバ内で基板表面の少なくとも一部分をケイ素含有前駆体に曝露することと、
炭素を含む第2ケイ素含有膜を形成するために、前記処理チャンバ内で前記第1ケイ素含有膜を炭素含有前駆体に曝露することと、
ケイ素-炭素膜を形成するために、前記処理チャンバ内で前記第2ケイ素含有膜をプラズマに曝露することとを含む、処理方法。」

<相違点>
<相違点1C>
「基板表面の少なくとも一部分をケイ素含有前駆体に曝露すること」について、本願発明1では、「処理チャンバの、第1ガスポートを備える第1区画内」で曝露するのに対し、引用発明3では、「プロセスチャンバ本体1302」において行われる操作(a)ないし「反応物Aへの曝露段階120」について、そのような特定はなされていない点。

<相違点2C>
「前記第1ケイ素含有膜を炭素含有前駆体に曝露すること」について、本願発明1では、「前記処理チャンバの、第2ガスポートを備える第2区画内」で曝露するのに対し、引用発明3では、「プロセスチャンバ本体1302」において行われる操作(b)ないし「反応物Bへの曝露段階140」について、そのような特定はなされていない点。

<相違点3C>
「前記第2ケイ素含有膜をプラズマに曝露すること」について、本願発明1では、「前記処理チャンバの第3区画内」で曝露するのに対し、引用発明3では、「プロセスチャンバ本体1302」において行われる「プラズマ賦活段階180」について、そのような特定はなされていない点。

<相違点4C>
「処理チャンバ」、並びに、処理チャンバの「第1区画」が備える「第1ガスポート」及び「第2区画」が備える「第2ガスポート」について、本願発明1では、「前記処理チャンバの隣接する区画は、不活性ガスにより分離され、前記第1ガスポート及び前記第2ガスポートのそれぞれは、それぞれの真空ポートによって取り囲まれる」ものであるのに対し、引用発明3では、「プロセスチャンバ本体1302」について、そのような特定はなされていない点。

イ 判断
相違点1C-4Cは互いに関連することから、まとめて検討する。

(ア)上記「第4」の「4(4)」に記載のとおり、「回転テーブル式の成膜装置において、ALD法による成膜処理を行うこと。」という技術的事項は、本願優先日前において、引用文献6-8に記載された周知技術であったといえる。
しかしながら、引用発明3は、「プラズマチャンバ本体1302」における方法であり、また、「各CFDサイクルは、反応物Aへの曝露段階120、その直後に続く反応物Bへの曝露段階140、反応物Bの排出段階160、及び最後にプラズマ賦活段階180を含み、プラズマ賦活段階180A及び180Bのプロセス中にもたらされるプラズマエネルギは、表面吸収反応物種AとBとの間の反応を賦活するもの」であるから、引用発明3は、プロセスチャンバ本体1302における時間ベースの処理方法であるといえる。
一方、上記「第4」の「4(1)」に摘記のとおり、引用文献6の段落【0006】には、「この成膜装置は、真空容器内に回転可能に配置され、複数のウエハが載置される回転テーブルと、回転テーブルの上方に区画される反応ガスAの供給領域、反応ガスBの供給領域、及びこれらを分離する分離領域と、反応ガスA及び反応ガスBの供給領域に対応して設けられる排気口と、これらの排気口に接続される排気装置とを有している。このような成膜装置においては、回転テーブルを回転することによって、反応ガスAの供給領域、分離領域、反応ガスBの供給領域、及び分離領域をウエハに通過させる。」と記載されているように、上記周知技術は、「回転テーブル式の成膜装置」における成膜処理であって、真空容器内の、反応ガスAの供給領域、分離領域、反応ガスBの供給領域、及び分離領域をウエハに通過させるものであるから、空間ベースの処理方法であるといえる。
したがって、引用発明3と、上記周知技術とは、基板の処理方法が実施される装置の根本的な構造が異なり、引用発明3において上記周知技術を適用する動機付けはない。
よって、当業者といえども、引用発明3及び引用文献6-8に記載された上記周知技術から、相違点1C-4Cに係る本願発明1の上記構成を容易に想到することはできない。

(イ)したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明3、引用文献6-8に記載された上記周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本願発明2-15について
本願発明2-15も、本願発明1の「処理チャンバの、第1ガスポートを備える第1区画内」、「前記処理チャンバの、第2ガスポートを備える第2区画内」、「前記処理チャンバの第3区画内」、「前記処理チャンバの隣接する区画は、不活性ガスにより分離され、前記第1ガスポート及び前記第2ガスポートのそれぞれは、それぞれの真空ポートによって取り囲まれる」と同一の構成を備えるものであり、引用文献4にも当該同一の構成は記載されていないから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明3、引用文献4、6-8に記載された上記周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定について
1 理由A-E(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1-15は、「処理チャンバの、第1ガスポートを備える第1区画内」、「前記処理チャンバの、第2ガスポートを備える第2区画内」、「前記処理チャンバの第3区画内」、「前記処理チャンバの隣接する区画は、不活性ガスにより分離され、前記第1ガスポート及び前記第2ガスポートのそれぞれは、それぞれの真空ポートによって取り囲まれる」という構成を有するものとなっている。
したがって、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-8に基づいて、容易に発明できたものであるとはいえない。
よって、原査定の理由A-Eを維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-09-07 
出願番号 特願2017-557139(P2017-557139)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宇多川 勉  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 小川 将之
恩田 春香
発明の名称 低誘電率かつ低湿式エッチング速度の誘電体薄膜を堆積させるための方法  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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