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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B63B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B63B
管理番号 1377632
審判番号 不服2020-15907  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-18 
確定日 2021-09-28 
事件の表示 特願2018-513905号「船舶用の船殻装着電子装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 8日国際公開、WO2016/193120、平成30年 7月 5日国内公表、特表2018-517618、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 理 由
第1 手続きの経緯
本願は、2016年(平成28年)5月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年5月29日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の概要は以下のとおりである。

令和 2年 4月10日付け:拒絶理由通知書
同年 6月23日 :意見書、手続補正書の提出
同年 9月15日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
同年11月18日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出
令和 3年 4月15日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由」とい う。)
同年 6月 8日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内において、頒布された下記の刊行物に記載された発明及び周知の技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



・請求項 1、2、5?8
・引用文献等1、6、7
請求項1、2、5?8に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献6、7に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明できたものである。

・請求項 3、4
・引用文献等1?3、6、7
請求項3、4に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3、6、7に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明できたものである。

・請求項 9
・引用文献等1、4?7
請求項9に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献4?7に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明できたものである。

<引用文献等一覧>
1.米国特許第2560066号明細書
2.米国特許第5177891号明細書(周知技術を示す文献)
3.実願昭49-026973号(実開昭50-117865号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
4.米国特許出願公開第2008/0083360号明細書(周知技術を示す文献)
5.中国実用新案第203544341号明細書(周知技術を示す文献)
6.特開平11-43094号公報(周知技術を示す文献)
7.韓国公開特許第10-2013-0081568号公報(周知技術を示す文献)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
請求項1に記載の「前記下方部分(3)及び下方部分に対し最も接近して配置されているフランジ前記部分(4)の少なくとも一部」及び請求項7に記載の「前記ハウジング(14)が前記座部(10)に対し設置された時にガスケット(9)により範囲が定められている前記フランジ部分の少なくとも一部分」は明確であるとはいえない。
また、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2?9に係る発明も、これと同じ理由により、明確でない。
本願請求項1?9に係る発明は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第4 本願発明
本願の請求項1?9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明9」という。)は、令和3年6月8日の手続補正(以下「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
船舶のための構造(1)であって、前記構造は、
貫通孔(11)を備えているとともに座部の貫通孔が船殻の貫通孔(12)と整列するように船舶の船殻(20)に対し取り付けられるよう適用されている座部(10)と、 前記貫通孔(11)を有している前記座部(10)に対し取り付けられるよう適用されている、電子装置(2)とを
備え、
前記電子装置は、船殻の外側の水の中へと伝達される信号を発生させるために適用されているトランスデューサー(16)と、そして、
トランスデューサーを封入し、そして座部の貫通孔中に挿入されるよう適用されている下方部分(3)及び座部の貫通孔中に下方部分を支持するよう座部に対し取り付けられるよう適用されているフランジ部分(4)を有しているハウジング(14)と、
を備え、
ここにおいて、前記下方部分(3)、及び下方部分に対し最も接近して配置されている前記フランジ部分(4)の少なくとも一部が、水密であるとともにトランスデューサー(16)により発生された信号を透過させる材料(17)の表面(5)を有しており、そして、
前記表面の一部分が、船殻(20)の外側の水に対し前記トランスデューサー(16)により発生された信号を伝達するよう配置されているハウジングの窓(13)を形成し、
前記構造は、さらに、前記ハウジング(14)と前記座部(10)の間に適合されるように適用されるガスケット(9)を備え、
ここにおいて、前記構造は、複数のボルト(6)を備え、そして、前記フランジ部分(4)は、フランジ部分(4)を通り座部(10)中へと延出する前記複数のボルト(6)によって、座部(10)に固定される、
構造。
【請求項2】
前記表面(5)が接合されていない、請求項1に記載の船舶のための構造。
【請求項3】
前記材料が、エポキシ又はポリウレタンのようなプラスチックを含む、請求項1又は2に記載の船舶のための構造。
【請求項4】
座部に対面しているフランジ部分の表面(15)が、少なくとも部分的に前記材料により覆われている、請求項1乃至3の何れか1項に記載の船舶のための構造。
【請求項5】
前記下方部分が円筒形である、請求項1乃至4の何れか1項に記載の船舶のための構造。
【請求項6】
前記電子装置が、船速測定装置又は音響測深機のようなナビゲーション装置である、請求項1乃至5の何れか1項に記載の船舶のための構造。
【請求項7】
前記ハウジング(14)が前記座部(10)に対し設置された時にガスケット(9)に接している前記フランジ部分の少なくとも一部分が、前記表面により覆われている、請求項1乃至6の何れか1項に記載の船舶のための構造。
【請求項8】
前記座部の貫通孔(21)が前記船殻の外側の水に向かう方向において先細にされている、請求項1乃至7の何れか1項に記載の船舶のための構造。
【請求項9】
前記座部の前記貫通孔が前記船殻の外側の水に向かう方向において連続して先細にされている、請求項1乃至8の何れか1項に記載の船舶のための構造。」

第5 当審拒絶理由について
本件補正により、補正前の請求項1の「前記下方部分(3)及び下方部分に対し最も接近して配置されている前記フランジ部分(4)の少なくとも一部」が「前記下方部分(3)、及び下方部分に対し最も接近して配置されている前記フランジ部分(4)の少なくとも一部」と補正され、用語の係り受けが明確となった。
また、補正前の請求項7の「ガスケット(9)により範囲が定められている前記フランジ部分の少なくとも一部分」が「ガスケット(9)に接している前記フランジ部分の少なくとも一部分」と補正され、「ガスケット」と「フランジ部分の少なくとも一部分」との関係が明確となった。
上記の補正により、本願発明1?9は明確となった。
したがって、当審拒絶理由で指摘した、特許法第36条第6項第2号に係る拒絶理由は解消した。

第6 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、次の事項が記載されている({ }は当審の仮訳であり、下線は、当審が付した。以下同様である。)。

(1a)(第1欄第6?9行)
「It is an object of the invention to provide a mounting means for a hydrophone which attenuates hull vibrations to which the hydrophone would otherwise normally be sensitive.」
{本発明の目的は、ハイドロホンが通常は敏感であるであろう船体の振動を減衰させるハイドロホンの取り付け手段を提供することである。}

(1b)(第1欄第28?38行)
「Fig. 1 is a side elevation partly in section of a hydrophone mounting in accordance with the invention;
Fig.2 is a bottom view of Fig.1;
Fig.3 is a side elevation partly in section of another embodiment of the invention;
Fig.4 is a modification of fig.1;
Fig.5 is a modification of Fig.3; and
Fig.6 is a vertical section showing a typical hydrophone of the general type with which the invention is concerned.」
{図1は、本発明によるハイドロホン取り付け部の一部の断面図である側面図である。
図2は、図1の底面図である。
図3は、本発明の別の実施形態の一部の断面図である側面図である。
図4は、図1の変形例である。
図5は、図3の変形例である。
図6は、本発明に関係する一般的なタイプの典型的なハイドロホンを示す垂直断面図である。}

(1c)(第1欄第39?第2欄第11行)
「Referring now to Figs.1 and 2, a hydrophone 10 of generally cylindrical shape has a diaphragm 11 at one end thereof. The diaphragm is sensitive to pressure waves, as is well known to those skilled in the art. The hydrophone is further provided around its sides at a distance from the diaphragm end with a raised circumferential projection 12 which is used as a keeper to prevent the hydrophone from being torn away in the presence of a wave of abnormally large amplitude. The diameter of the hydrophone is reduced at 13 in the region between the keeper 12 and the diaphragm 11. A rubber annulus 14 is fitted over and bonded to this portion 13 of the side wall of the hydrophone. This annulus is flush at one side 15 with the face of the diaphragm 11, and the other side 16 does not reach as far as the keeper 12, but rather there is a space 17 between the keeper and the rubber annulus. A metallic annulus 18 surrounds and is tightly bonded to the rubber annulus 14. The metallic annulus is of similar axial width to the rubber annulus and is provided with a radially outwardly projecting flange 19 at the side there of nearer to the keeper 12. This flange is used for mounting the hydrophone in an opening in the skin of a ship or other suitable wall, as will now be described.」
{図1および図2に示されるように、ほぼ円筒形のハイドロホン10は、その一端にダイヤフラム11を有する。当業者によく知られているように、ダイヤフラムは圧力波に敏感である。ハイドロホンはさらに、ダイヤフラム端部から離れた側面の周りに、異常に大きな振幅の波の存在下でハイドロホンが引き抜かれるのを防ぐためのキーパーとして使用される隆起した円周方向突起12を備えている。ハイドロホンの直径は、キーパー12とダイヤフラム11との間の領域である13で縮小されている。ゴム環14が、ハイドロホンの側壁のこの部分13に取り付けられ、接着されている。この環は、片側15でダイヤフラム11の面と同一平面上にあり、反対側16は、キーパー12まで到達せず、むしろ、キーパーとゴム環との間にスペース17が存在する。金属環18は、ゴム環14を取り囲み、ゴム環14にしっかりと結合されている。金属環は、ゴム環と同様の軸方向幅であり、キーパー12に近い側に半径方向外向きに突出するフランジ19を備えている。これから説明するように、船の外板または他の適切な壁の開口部にハイドロホンを取り付けるために使用される。}

(1d)(第2欄第12?50行)
「The wall 21 wherein the hydrophone is mounted, which may, for example, be the skin of ship, is provided with a ring 22 of substantially greater mass than the wall material and preferably welded thereto as at 23, 24. The mass ring 22 serves to a certain degree to prevent vibrations present in the wall 21 from reaching the hydrophone 10. It has been found, however, that this ring does not function perfectly, and that some vibrations which are present in the wall 21 continue to reach the hydrophone. The flange 19 is clamped against a first shoulder 27 on the mass ring 22 by means of a clamping ring 25 which is threadedly fitted into the mass ring. The clamping ring 25 fits loosely about the metallic annulus 18, and a gasket 26 is provided at the side of the flange 19 nearer the mass ring 22. The mass ring 22 is provided with the first shoulder 27 by reducing the inner diameter thereof by a suitable amount at a distance in from the outer surface of the wall 21. This reduction in inner diameter is such that the keeper 12 of the hydrophone 10 fits loosely in the portion of reduced diameter when the flange 19 rests against the first shoulder 27. The mass ring 22 is provided with a second shoulder 28 formed by further reducing the inner diameter thereof at the inner side above the keeper 12. The shoulder 28 and the flange 19 now provide a recess 29 wherein the keeper 12 loosely rests. The keeper 12 is not in contact with any part of this recess so long as the rubber annulus 14 is not seriously deformed, as it might be by a wave of abnormally great amplitude. Should the rubber annulus 14 be so deformed, the keeper 12 would come in contact with either the second shoulder 28 or the flange 19, and the hydrophone could not be torn away. The hydrophone 10 is, however, normally supported only by the rubber annulus 14.」
{例えば船の外板であり得るハイドロホンが取り付けられている壁21は、壁材料よりも実質的に大きな質量のリング22を備えており、好ましくは23、24のようにそれに溶接されている。マスリング22は、壁21に存在する振動がハイドロホン10に到達するのを防ぐのにある程度役立つ。しかしながら、このリングは完全には機能せず、壁21に存在するいくつかの振動がハイドロホンに到達し続けることが見出された。フランジ19は、マスリングにねじ込み式に取り付けられたクランプリング25によって、マスリング22上の第1の肩部27に対してクランプされる。クランプリング25は、金属環18の周りに緩くはまり、ガスケット26は、フランジ19のマスリング22に近い側に提供される。マスリング22は、壁21の外面からのある距離において、その内径を適切な量だけ減少させることによって、第1の肩部27を備えている。この内径の減少は、フランジ19が第1の肩27に対して静止するときに、ハイドロホン10のキーパー12が減少した直径の部分に緩くはまるようにする。マスリング22は、キーパー12の上の内側でその内径をさらに小さくすることによって形成された第2のショルダー28を備えている。ショルダー28およびフランジ19は、キーパー12が緩く静止する窪み29を提供する。キーパー12は、ゴム環14が異常に大きな振幅の波によって大きく変形されない限り、このくぼみのどの部分とも接触していない。ゴム環14がそのように変形した場合、キーパー12は第2の肩28またはフランジ19のいずれかに接触し、ハイドロホンを引き抜くことができなかった。しかしながら、ハイドロホン10は、通常、ゴム環14によってのみ支持される。}

(1e)(第2欄第51行?第3欄第29行)
「As has been already set forth, the hydrophone is sensitive to pressure wave vibrations arriving at the diaphragm 11. Vibrations in the hull, or wall 21, and the mass ring 22 in the direction of a line normal to the diaphragm normally tend to move the body of the hydrophone, and with it the face of the diaphragm, toward and away from the water, thereby creating pressure waves on the diaphragm. The hydrophone is highly sensitive to such waves. However, these vibrations are transmitted to the hydrophone 10 as shear waves in the rubber of the annulus 14. It is well known that rubber offers a high degree of attenuation to shear waves. Vibrations in the hull or wall 21, in directions parallel to the surface of the diaphragm 11, may be transmitted by the rubber annulus 14 as compressional waves, the rubber being compressed thereby, but the diaphragm is moved parallel to its surface by such waves, and not toward and away from the water, so that the hydrophone 10 is comparatively insensitive to such vibrations. From another point of view, it may be said that the rubber ring 14 prevents hull vibrations from moving the hydrophone in such a fashion as to cause it to be actuated as a velocity device. The vibrations in the wall 21 which would normally tend to move the body of the hydrophone toward and away from the water cause velocity actuation of the hydrophone, whereas normally the body of the hydrophone is still and actuation is effected by causing pressure changes on the diaphragm. The present invention thus eliminates the very source of spurious signals.」
{すでに述べたように、ハイドロホンは、ダイヤフラム11に到達する圧力波の振動に敏感である。船体または壁21の振動、およびダイヤフラムに垂直な線の方向のマスリング22は、通常、ダイヤフラム11を動かす傾向がある。ハイドロホンの本体、およびそれとともにダイヤフラムの面が水に向かって、または水から離れて、それによってダイヤフラムに圧力波を生成します。ハイドロホンはそのような波に非常に敏感です。しかしながら、これらの振動は、環状部14のゴム内の剪断波としてハイドロホン10に伝達される。ゴムが剪断波に対して高度の減衰を提供することはよく知られている。ダイヤフラム11の表面に平行な方向の船体または壁21の振動は、圧縮波としてゴム環14によって伝達され得、ゴムはそれによって圧縮されるが、ダイヤフラムはそのような波によってその表面に平行に動かされる。水に近づいたり遠ざかったりしないので、ハイドロホン10はそのような振動に比較的鈍感である。別の見方をすれば、ゴムリング14は、船体の振動がハイドロホンを速度装置として作動させるような方法で移動するのを防ぐと言うことができる。通常、ハイドロホンの本体を水に近づけたり遠ざけたりする傾向がある壁21の振動は、ハイドロホンの速度作動を引き起こすが、通常、ハイドロホンの本体は静止しており、作動は、ダイヤフラムに圧力変化を引き起こすことによって行われる。したがって、現在の発明は、スプリアス信号の発生源そのものを排除します。}

(1f)(第3欄第37?64行)
「The arrangement shown in Fig. 1 is designed for mounting the hydrophone from outside the wall 21.In the case of a ship or the like,this would require that the ship be dry-docked.The arrangement shown in Fig. 3 is designed for inboard mounting. With this arrangement, the hydrophone could, under the proper circumstance, be installed without resorting to dry-docking.In the arrangement of Fig. 3, the hull ring 32 is provided with one shoulder 33 at the outer side thereof and is internally threaded at the inner side 34 thereof. The normal inside diameter of this hull ring is of sufficient size to accept the flange 19 of the hydrophone mounting freely with the flange resting upon the shoulder 33. A gasket 35 is provided between the flange and the shoulder. A clamping ring 36, threaded at the upper end 37 of its outer periphery, fits into the hull ring 32 and is threadedly engaged therewith to hold the flange 19 against the shoulder 33. This clamping ring has a portion of large inside diameter at the lower end 38 thereof, which portion fits loosely around the keeper 12, and the remainder is of smaller diameter, providing a shoulder 39 over but not touching the keeper. The shoulder 39 and flange 19 cooperate to provide again the recess 29 wherein the keeper 12 rests.」
{図1に示される配置は、壁21の外側からハイドロホンを取り付けるように設計されている。船などの場合、これは、船が乾ドックされていることを必要とするであろう。図3に示す配置は、船内取り付け用に設計されています。この配置により、適切な状況下で、乾ドックに頼ることなくハイドロホンを設置することができる。図3の構成では、船体リング32は、その外側に1つの肩部33を備え、その内側34に内ねじが切られている。この船体リングの通常の内径は、ハイドロホンのフランジ19を自由に受け入れるのに十分なサイズであり、フランジは肩部33上に載っている。ガスケット35は、フランジと肩部との間に設けられている。その外周の上端37にねじが切られたクランプリング36は、船体リング32に適合し、肩部33に対してフランジ19を保持するためにそれにねじ込まれている。このクランプリングは、下部に大きな内径の部分を有する。その端部38は、その部分がキーパー12の周りに緩くはまり、残りはより小さな直径であり、肩上39を提供するが、キーパーに接触しない。ショルダー39とフランジ19は協調して、キーパー12が置かれる凹部29を再び提供する。}

(1g)(第3欄第65?75行)
「In Figs. 1 and 3 the clamping rings 25 and 36, respectively, are threadedly engaged with the hull rings 22 and 32, respectively, being put in place by means of a spanner wrench or the like which engages suitably placed holes 41 in the clamping rings. In Figs. 4 and 5 the clamping rings・25 and 36 are replaced by clamping rings 42 and 43, respectively, of a different form, which are attached to the hull or mass rings 44 and 45, respectively, by means of screws 46 or bolts 47, as may be suitable.」
{図1および3に示されるように、クランプリング25および36は、それぞれ、船体リング22および32とねじ込み式に係合され、クランプリングに適切に配置された穴41と係合するスパナレンチなどによって所定の位置に配置される。図4および5において、クランプリング25および36は、それぞれ、異なる形態のクランプリング42および43に置き換えられ、これらは、ねじ46またはボルト47によって、それぞれ、船体またはマスリング44および45に取り付けられている。}

(1h)(第4欄第8?18行)
「Referring now particularly to Fig. 5, the mass rig 45 differs from the mass ring 32 of Fig. 3 in that it is shorter, while the clamping ring 43 is provided with a portion 49 of expanded diameter at the top thereof. This portion 49 of expanded diameter overhangs the top surface 51 of the mass ring 45, and the bolts 47 are driven into the mass ring through this top surface. In all other respects, the arrangements shown in Figs. 4 and 5 are similar to the arrangements shown in Figs. 1 and 3, respectively.」
{ここで特に図5を参照すると、マスリング45は、それがより短いという点で図3のマスリング32とは異なり、一方、クランプリング43は、その上部に拡張された直径の部分49を備えている。拡張された直径の部分49は、マスリング45の上面51に張り出し、ボルト47は、この上面を通ってマスリングに打ち込まれる。他のすべての点で、図4および5に示される配置は、それぞれ、図1および3に示される配置と同様である。}

(1i)(第4欄第19?44行)
「The transducer 10 may have the internal structure shown in Fig. 6. The casing is made of a generally cylindrical portion 53 whereon the keeper 12 is found, a top closure 54 which is attached to the cylindrical portion 53 by bolts 55, for example, and a bottom closure 56 which is threadedly engaged on the cylindrical portion 53, and includes the diaphragm 11. The cylindrical portion 53 is internally threaded at a portion 57 intermediate the ends thereof, and a pressure ring 58 is engaged in the threads. The pressure ring has a circular boss or raised portion 59 on the lower surface thereof for a purpose which will presently be explained. The diaphragm 11 is formed as an integral part of the lower closure 56 by removing an annular portion of the inner side of the closure at or very close to the side wall to provide a thin rim 61. The diaphragm 11 vibrates somewhat as a piston supported by this thin rim. Crystals 62 and 63 are clamped between the diaphragm 11 and a clamping plate 64. The boss 59 is in contact with the upper surface of the clamping plate 64, and the clamping pressure is determined by the clamping ring 58, which may be turned by a spanner wrench or the like, engaging holes 65 therein.」
{変換器10は、図6に示す内部構造を有することができる。ケーシングは、キーパー12が設けられる円筒形部分53、例えば、ボルト55によって円筒形部分53に取り付けられる上部クロージャ54、及び、円筒形部分53にねじ込みされ、ダイヤフラム11を含む底部クロージャ56でできている。円筒形部分53は、その端部の中間の部分57に内部ねじ込みされ、圧力リング58がねじ山に係合される。圧力リングは、現在説明される目的のために、その下面に円形のボスまたは隆起部分59を有する。ダイヤフラム11は、側壁またはその非常に近くのクロージャの内側の環状部分を除去して薄いリム61を提供することにより、底部クロージャ56の一体部分として形成される。ダイヤフラム11は、ピストンが支持されるように幾分振動する。この薄いリムによって。結晶62および63は、ダイヤフラム11とクランププレート64との間にクランプされる。ボス59は、クランププレート64の上面と接触しており、クランプ圧力は、クランプリング58によって決定され、クランプリング58は、スパナレンチ等、その中の穴65と係合する。}

(1j)(第4欄第45?58行)
「The crystals 62 and 63 are each provided with two electrodes 66 and 67, one on each side thereof, through which electrical signals corresponding to the pressure waves incident upon the diaphragm 11 are taken. The top closure 54 is provided with a passage 68 through which an electrical cable 69 passes. This cable has two conductors 71 and 72. The clamping ring58 and clamping plate 64 are provided with passages 73 and 74 through which the conductors 71 and 71 pass. The crystals 62 and 63 are shown connected in parallel to these conductors, but it will be appreciated by those skilled in the art that the connection may be in series if desired.」
{結晶62および63はそれぞれ、その両側に1つずつ、2つの電極66および67を備えており、それを通して、ダイヤフラム11に入射する圧力波に対応する電気信号が受け取られる。上部クロージャ54は、電気ケーブル69が通過する通路68を備えている。このケーブルは、2つの導体71および72を有する。クランプリング58およびクランププレート64は、導体71および71が通過する通路73および74を備えている。結晶62および63は、これらの導体に並列に接続されて示されているが、必要に応じて、接続が直列であり得ることが当業者には理解されるであろう。}

また、図1、3、5及び6は以下のとおりである。







(2)引用文献1の認定事項
上記(1)の摘示から、次のことが認定できる。
ア 上記(1c)の「船の外板または他の適切な壁の開口部にハイドロホンを取り付けるために使用されます。」との記載、(1d)の「船の外板であり得るハイドロホンが取り付けられている壁21」との記載及び図5から、図5に示される構造が、船の壁21にハイドロホン10を取り付ける構造であることが認定できる。

イ 上記(1f)の「ハイドロホンのフランジ19」との記載から、「フランジ19」が「ハイドロホン10」の一部であることがわかる。また、上記(1i)の「変換器10」は、参照符号が「10」であることから、「ハイドロホン10」を意味していることがわかる。

ウ 上記イを踏まえて、上記(1c)の下線部の記載、上記(1i)の下線部の記載及び図6から、ハイドロホン10は、円周方向突起であるキーパー12が設けられる円筒形部分53、円筒形部分53の上端に取り付けられる上部クロージャ54、円筒形部分53の下端にねじ込みされ、ダイヤフラム11を含む底部クロージャ56、底部クロージャ56におけるキーパー12とダイヤフラム11との間の領域13に取り付けられたゴム環14、ゴム環14を取り囲み、ゴム環14に結合され、ゴム環14と同様の軸方向幅である金属環18を有し、金属環18は、キーパー12に近い側に半径方向外向きに突出するフランジ19を備えていることが認定できる。

エ 図6から、円筒形部分53の内部に結晶62、63及び電極66、67を有することが認定できる。

オ 図5及び6から、マスリング45が貫通孔を備え、マスリング45の貫通孔が船の壁21の開口部と整列するようにマスリング45が船の壁21に取り付けられること、及び、ハイドロホン10がマスリング45の貫通孔に取り付けられ、金属環18の下方部分、ゴム環14及び底部クロージャ56がマスリング45の貫通孔に挿入されることが認定できる。

カ 上記(1f)の下線部の記載、及び、上記(1h)の「他のすべての点で、図4および5に示される配置は、それぞれ、図1および3に示される配置と同様である。」との記載及び図5から、マスリング45は、その外側に1つの肩部33を備え、ハイドロホン10のフランジ19は肩部33上に載っていること、ガスケット35は、フランジ19と肩部33との間に設けられていることが認定できる。

キ 上記(1d)の「フランジ19は、マスリングにねじ込み式に取り付けられたクランプリング25によって、マスリング22上の第1の肩部27に対してクランプされる。」との記載及び図1を踏まえて、上記(1g)の下線部の記載及び図5から、フランジ19は、クランプリング43によってマスリング45の肩部33に対してクランプされることが認定できる。

(3)引用発明1
上記(1)及び(2)から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「 船の壁21にハイドロホン10を取り付ける構造であって、
マスリング45が貫通孔を備え、マスリング45の貫通孔が船の壁21の開口部と整列するようにマスリング45が船の壁21に取り付けられ、
ハイドロホン10は、円周方向突起であるキーパー12が設けられる円筒形部分53、円筒形部分53の上端に取り付けられる上部クロージャ54、円筒形部分53の下端にねじ込みされ、ダイヤフラム11を含む底部クロージャ56、底部クロージャ56におけるキーパー12とダイヤフラム11との間の領域13に取り付けられたゴム環14、ゴム環14を取り囲み、ゴム環14に結合され、ゴム環14と同様の軸方向幅である金属環18を有し、金属環18は、キーパー12に近い側に半径方向外向きに突出するフランジ19を備え、
円筒形部分53の内部に結晶62、63及び電極66、67を有し、結晶62および63はそれぞれ、その両側に1つずつ、2つの電極66および67を備えており、それを通して、ダイヤフラム11に入射する圧力波に対応する電気信号が受け取られ、
ハイドロホン10がマスリング45の貫通孔に取り付けられ、金属環18の下方部分、ゴム環14及び底部クロージャ56がマスリング45の貫通孔に挿入され、
マスリング45は、その外側に1つの肩部33を備え、ハイドロホン10のフランジ19は肩部33上に載っており、
ガスケット35は、フランジ19と肩部33との間に設けられ、
クランプリング43は、その上部に拡張された直径の部分49を備え、拡張された直径の部分49は、マスリング45の上面51に張り出し、ボルト47は、この上面51を通ってマスリング45に打ち込まれ、
フランジ19は、クランプリング43によってマスリング45の肩部33に対してクランプされる、
船の壁21にハイドロホン10を取り付ける構造。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2に記載された事項
引用文献2には、次の事項が記載されている。
(1a)(第7欄第27?54行)
「FIG. 6 represents an embodiment of the invention in which the circuitry and equipment for reproducing sound underwater are incorporated in a boat. The boat 500, the hull of which is shown in cross-sectional elevation, includes an onboard computer 501 provided with a display screen 502 and a keyboard 503. The computer 501, which may be any of a number of types of commercially available, relatively inexpensive computers, or may comprise circuitry such as that described above with respect to FIG. 4, will include a memory in which prerecorded data representing underwater sounds produced by fish bait are stored. The computer reads the data from memory and transmits the data to interface circuit 505 via conductor 507. The interface circuit provides an analog signal to acoustical transducer 506 via conductor 508. A boat battery 510 provides power to the computer 501 and interface circuit 505 via conductors 512. The hull 500 is provided with a console 515 for supporting computer 501 and associated equipment. The transducer 506 may be placed in an opening 516 in the hull 500 which is covered by means of a watertight cover 518 which may be made of plastic or other suitable material through which the acoustical signals are transmitted into the water. Alternatively, as a matter of design choice, a transducer may be placed on the inside of the hull 500, transmitting the signals through the hull, or may be appropriately encased and fastened to the outside of the boat below the waterline.」
{図6では、再生音の水中用の回路および装置は、ボートに組み込まれている本発明の実施形態を表す。その船体が断面立面図に示されているボート500は、表示画面502とキーボード503とを搭載した車載コンピュータ501とを備えている。コンピュータ501は、商業的に入手可能な、比較的安価なコンピュータの多くのタイプのいずれかであってもよいし、図4に関連して上に記載されているような回路で構成可能な、魚釣用餌は微生物により発生する水中音を表わす予め記録されたデータが格納されているメモリを含むことになる。コンピュータは、メモリからデータを読み出して、導体507を介して、インターフェース回路505に送信する。インターフェース回路は、導体508を介してトランスデューサー506にアナログ信号を供給する。電池510は、導線512を介してコンピュータ501とインターフェース回路505に電力を供給する。船体500は支援コンピュータ501及び関連機器のためのコンソール515が設けられている。トランスデューサー506は、それを通して音響信号が水中に送信される、プラスチック又は他の適切な材料からなる防水カバー518によってカバーされた船体500の開口部516内に配置されてもよい。あるいは、設計上の選択の問題として、トランスデューサーは、船体500の内側に配置され、船体を介して信号を送信することもでき、あるいは適宜に包み込まれており、水線より下のボートの外側に固定することができる。}

また、図6は以下のとおりである。


3 引用文献3について
(1)引用文献3に記載された事項
引用文献3には、次の事項が記載されている。
(1a)(明細書第3頁第10?19行)
「第2図は本考案に係るソナーの音波送受信装置を船底1に配設した場合の断面図で、船底1にはめ込まれた音波送受信装置2は音波送受信用振動子4a、4bと、これを収納する容器3を具えている。容器3は例えば合成樹脂を成形加工したもので送受波面となる底部外面は船底とほゞ同一面を形成し、底部内面は中央部に対して両側が低い一定の傾斜角を有する傾斜面3a、3bになつており、中央部の穴3cには装置の測温ピツクアツプ6が挿入されている。」

(1b)(明細書第4頁第6?9行)
「振動子4a、4bが送出した音波は容器3の底部3fを伝播し、送受波面を構成する容器3と海水との界面Sで屈折されて矢印B_(1)、B_(2)で示す所定方向の音波として水中に放射される。」

(1c)(明細書第6頁1?5行)
「尚、振動子は圧電振動子に限ることはなく磁歪振動子或は電歪振動子等を使用してもよく、また、これら振動子を密着収納するための容器は合成樹脂に限らず金属或はゴム等で成形したものを使用してもよい。」

また、第2図は以下のとおりである。


4 引用文献4について
(1)引用文献4に記載された事項
引用文献4には、次の事項が記載されている。
「[0003]A conventional transducer thru-hull fitting consists of an externally threaded pipe having a generally smooth inner surface. One end of the threaded pipe includes a flange fitting for securement to the vessel hull, or includes an tapered end if a flush attachment is desired. The flanges are bonded to the vessel by use of an adhesive/sealer, such as 3M 5200, wherein the threaded pipe is permanently mounted at an angle substantially perpendicular to the outer surface of the vessel hull. The inner surface of the pipe provides an open aperture allowing the ingress of water. An electric transducer is place within the aperture providing an uninterrupted access to the water.」
{[0003]従来のトランスデューサー船体取付け具は、一般に、滑らかな内側表面を有する雄ネジ付き管で構成されている。ねじ付き管の一方の端部は、面一取付けを希望する場合、船舶の船体に固定するためのフランジ継手を備えている、またはテーパー付きの端部を有している。フランジは、接着剤/シーリング剤の使用により容器に結合し、3M社の5200のようなねじ付き管は大型船船体の外側表面に実質的に垂直な角度で永久的に取り付けられている。管の内面は、水の進入を可能にする開口部を提供する。電気変換器は、水への連続したアクセスを提供する開口部内に配置される。}

5 引用文献5について
(1)引用文献5に記載された事項
引用文献5には、次の事項が記載されている。



{[0011] 図1に示すように船あるいはフロートなどの水面施設高速位置決め、取り付けた水中音響トランスデューサーに本実用新案を作製する。音響トランスデューサーは1個のテーパー面、長ロッドから、テーパー穴座席、左のバークラスプと右バークラスプは組成して、長ロッドはテーパー面を取り付けてあり、テーパー面のコーンアングルとテーパー穴座席のテーパー穴の度サイズ一致は、テーパー穴座席は水の下ケース上に固定し、左のバークラスプは水面ケース上に固定し、右バークラスプはボルトと左のバークラスプとつながることによって可動接続する。水中音響トランスデューサーの長ロッドはトランスデューサヘッド部を入る水中に用いて、その長ロッド3の長さは水中音響トランスデューサーの水での実装の深さによって決定する。}

また、図1は以下のとおりである。


6 引用文献6について
(1)引用文献6に記載された事項
引用文献6には、次の事項が記載されている。
(1a)「【0007】図において1は船体外板、2は船体外板を切り明け固定装備された船底弁である。船体外板1の切り明け部には口金3が挿入固定されている。4は下部フランジ、5は上部フランジであって、各々中央に内孔を有している。
【0008】6はボールバルブであって、各々中央に内孔を有する下フランジ部7と上フランジ部8との間に、ボール9を狭持している。9はボールバルブのボールで、このボール9にも内孔が設けられている。下フランジ部7は前記下部フランジ4を挟んで口金3にボルト固定され、上フランジ部8には前記上部フランジ5がボルト固定されている。尚、10は調節プレート、11はOリングである。」

また、図2は以下のとおりである。
図2



3 引用文献7について
(1)引用文献7に記載された事項
引用文献7には、次の事項が記載されている。
(1a)「

・・・

・・・


{【0045】図5に図示されたように、ボトムプラグ(160)が該当の位置に結合されるために船体(110)にはボトムプラグ(160)の結合のためのプラグ結合孔(111)が形成される。
・・・
【0052】一方、船体抵抗低減モジュール(140)は、図4ないし図6に図示されたように、ボトムプラグ(160)に着脱可能に結合されうる。
・・・
【0061】ボディーフランジ(144)とボトムプラグ(160)にはボルト(B)が締結されるように相互間連通される多数の第1及び第2通孔(144a、160a)が形成される。第1及び第2通孔(144a、160a)の個数は図6に図示されたように、4対であることが安定的だがこの個数は適切に変更されうる。}

また、図4及び5は以下のとおりである。

図4


図5


第7 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「船」、「壁21」及び「ハイドロホン10」は、それぞれ、本願発明1の「船舶」、「船殻」及び「電子装置」に相当する。

イ 引用発明1の「船の壁21にハイドロホン10を取り付ける構造」は、上記アも踏まえると本願発明1の「船舶のための構造」に相当する。

ウ 引用発明1の「貫通孔を備え」、「貫通孔が船の壁21の開口部と整列するように」、「船の壁21に取り付けられ」る「マスリング45」は、上記アも踏まえると本願発明1の「貫通孔(11)を備えているとともに座部の貫通孔が船殻の貫通孔(12)と整列するように船舶の船殻(20)に対し取り付けられるよう適用されている座部」に相当する。

エ 引用発明1の「マスリング45の貫通孔に取り付けられ」る「ハイドロホン10」は、上記ウも踏まえると本願発明1の「前記貫通孔(11)を有している前記座部(10)に対し取り付けられるよう適用されている、電子装置」に相当する。

オ 引用発明1の「ハイドロホン10」は、「結晶62、63」及び「電極66、67」を「通して」、「ダイヤフラム11に入射する圧力波に対応する電気信号」を「受け取」るから、本願発明1の「結晶62、63」及び「電極66、67」は、本願発明1の「トランスデューサー」に相当する。

カ 引用発明1の「ハイドロホン10」の「金属環18の下方部分、ゴム環14及び底部クロージャ56」は、「マスリング45の貫通孔に挿入され」るから、上記ウも踏まえると本願発明1の「座部の貫通孔中に挿入されるよう適用されている下方部分」に相当する。また、引用発明1の「金属環18」の「フランジ19」は、「マスリング45の肩部33に対してクランプされる」から、「マスリング45」に取り付けられているといえる。さらに、「金属環18」が「ゴム環14に結合され」、「ゴム環14」が「底部クロージャ56」に「取り付けられ」、「金属環18の下方部分、ゴム環14及び底部クロージャ56」が「マスリング45の貫通孔に挿入され」た状態で、「金属環18」の「フランジ19」が「クランプされる」から、「フランジ19」は「マスリング45の貫通孔に挿入され」る「金属環18の下方部分、ゴム環14及び底部クロージャ56」を支持しているといえる。そうすると、引用発明1のかかる構成を有する「フランジ19」は、上記ウも踏まえると本願発明1の「座部の貫通孔中に下方部分を支持するよう座部に対し取り付けられるよう適用されているフランジ部分(4)」に相当する。

キ 引用発明1の「ハイドロホン10」は「円筒形部分53の内部に結晶62、63及び電極66、67を有し」ている。そして、「円筒形部分53の上端」には「上部クロージャ54」が「取り付けられ」、「円筒形部分53の下端」には「底部クロージャ56」が「ねじ込みされ」ているから、「結晶62、63及び電極66、67」は「円筒形部分53」、「上部クロージャ54」及び「底部クロージャ56」によって封入されているといえる。また、「ハイドロホン10」の「円筒形部分53」、「上部クロージャ54」、「底部クロージャ56」、「ゴム環14」及び「金属環18」は、「ハイドロホン10」のハウジングを形成しているといえる。

ク 引用発明1の「ハイドロホン10」が、上記エ?キに記載した構成を有することと本願発明1の「前記電子装置は、船殻の外側の水の中へと伝達される信号を発生させるために適用されているトランスデューサー(16)と、そして、トランスデューサーを封入し、そして座部の貫通孔中に挿入されるよう適用されている下方部分(3)及び座部の貫通孔中に下方部分を支持するよう座部に対し取り付けられるよう適用されているフランジ部分(4)を有しているハウジング(14)と、を備え」ることとは、「前記電子装置は、トランスデューサー(16)と、そして、トランスデューサーを封入し、そして座部の貫通孔中に挿入されるよう適用されている下方部分(3)及び座部の貫通孔中に下方部分を支持するよう座部に対し取り付けられるよう適用されているフランジ部分(4)を有しているハウジング(14)と、を備え」るという点で共通する。

ケ 引用発明1の「ガスケット35」が、「金属環18」の「フランジ19」と「マスリング45」の「肩部33」との「間に設けられ」ることは、上記ウ及びキも踏まえると「前記ハウジング(14)と前記座部(10)の間に適合されるように適用されるガスケット(9)を備え」ることに相当する。

したがって、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

<一致点>
「 船舶のための構造であって、前記構造は、
貫通孔を備えているとともに座部の貫通孔が船殻の貫通孔と整列するように船舶の船殻に対し取り付けられるよう適用されている座部と、前記貫通孔を有している前記座部に対し取り付けられるよう適用されている、電子装置とを
備え、
前記電子装置は、トランスデューサーと、そして、
トランスデューサーを封入し、そして座部の貫通孔中に挿入されるよう適用されている下方部分及び座部の貫通孔中に下方部分を支持するよう座部に対し取り付けられるよう適用されているフランジ部分を有しているハウジングと、
を備え、
前記構造は、さらに、前記ハウジングと前記座部の間に適合されるように適用されるガスケットを備える、
構造。」

<相違点1>
上記「トランスデューサー」、及び、「トランスデューサーを封入」する「ハウジング」に関して、本願発明1では、トランスデューサーは「船殻の外側の水の中へと伝達される信号を発生させるために適用されている」ものであり、「前記下方部分、及び下方部分に対し最も接近して配置されているフランジ部分の少なくとも一部が、水密であるとともにトランスデューサーにより発生された信号を透過させる材料の表面を有しており、そして、前記表面の一部分が、船殻の外側の水に対し前記トランスデューサーにより発生された信号を伝達するよう配置されているハウジングの窓を形成し」ているのに対して、引用発明1では、「ハイドロホン10」の「結晶62、63及び電極66、67」は「ダイヤフラム11に入射する圧力波に対応する電気信号」を「受け取」るものの、船殻の外側の水の中へと伝達される信号を発生させるために適用されたものではなく、また、そのため、「金属環18の下方部分、ゴム環14及び底部クロージャ56」、及び該「金属環18の下方部分、ゴム環14及び底部クロージャ56」に対し最も接近して配置されている「フランジ19」の少なくとも一部が、水密であるとともにトランスデューサーにより発生された信号を透過させる材料の表面を有することの特定はなく、また、前記表面の一部分が、船殻の外側の水に対し前記トランスデューサーにより発生された信号を伝達するよう配置されているハウジングの窓を形成することの特定もない点。

<相違点2>
上記「構造」に関して、本願発明1では、「ここにおいて、前記構造は、複数のボルトを備え、そして、前記フランジ部分は、フランジ部分を通り座部中へと延出する前記複数のボルトによって、座部に固定される」のに対して、引用発明1では、クランプリング43は、その上部に拡張直径の部分49を備え、拡張された直径の部分49は、マスリング45の上面51に張り出し、ボルト47は、この上面51を通ってマスリング45に打ち込まれ、フランジ19は、クランプリング43によって、マスリング45の肩部33に対してクランプされる点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。

原査定において、引用文献6及び7から、「船舶の船殻の貫通孔に取り付けられる座部の貫通孔に物品を取り付ける構造において、物品のハウジングが有しているフランジ部分が、フランジ部分を通り座部中へと延出する複数のボルトによって、座部に固定される」との事項が周知技術であると説示されている。しかしながら、上記事項は、船殻の外側の水の中へと伝達される信号を発生させるために適用されるトランスデューサー及び当該トランスデューサーを封入するハウジングに係るものではない。そのため、上記事項が周知技術であって引用発明1に適用できたとしても上記相違点1に係る本願発明1の構成に至らないことは明らかである。
次に、上記引用文献6及び7について、個別に検討する。
引用文献6には、「下部フランジ4の下方部分が口金3の貫通孔に挿入され、下フランジ部7及び下部フランジ4を通り口金3へ延出するボルトを備え、下フランジ部7は前記下部フランジ4を挟んで口金3にボルト固定される」技術が記載されていると認められる(「第6 6 (1)(1a)及び図2」参照。以下「引用文献6技術事項」という。)。
引用文献7には、「船体(110)にはボトムプラグ(160)の結合のためのプラグ結合孔(111)が形成され、船体抵抗低減モジュール(140)は、ボトムプラグ(160)に着脱可能に結合され、船体抵抗低減モジュール(140)のボディーフランジ(144)とボトムプラグ(160)にはボルト(B)が締結されるように相互間連通される多数の第1及び第2通孔(144a、160a)が形成される」技術が記載されていると認められる(「第6 7 (1)(1a)、図4及び5」参照。以下「引用文献7技術事項」という。)。
しかしながら、上記引用文献6技術事項及び引用文献7技術事項は、船殻の外側の水の中へと伝達される信号を発生させるために適用されるトランスデューサー及び当該トランスデューサーを封入するハウジングに係るものではないから、当該引用文献6技術事項及び引用文献7技術事項を引用発明1に適用したとしても上記相違点1に係る本願発明1の構成に至らないことは明らかである。


上記「第2 原査定の概要」に記載したように、原査定において本願発明1に対して引用された文献は、引用文献1、6及び7である。 しかしながら、本願発明3及び4に対して周知技術として引用された引用文献2に記載された事項(「第6 2 (1)(1a)及び図6」参照)及び引用文献3(第6 3 (1)(1a)?(1c)、第2図参照)に記載された事項から、船殻の外側の水の中へと伝達される信号を発生させるために適用されたトランスデューサー及び当該トランスデューサーにより発生された信号を透過させる材料からなるハウジングを備えた電子装置は周知技術であるといえるから、以下、この点についても検討する。
引用発明1は、上記「第6 1 (1)(1a)」に記載されているように、「船体の振動を減衰させるハイドロホンの取り付け手段を提供すること」を目的としている。
そして、上記「第6 1 (1)(1e)」の「ハイドロホンはそのような波に非常に敏感です。しかしながら、これらの振動は、環状部14のゴム内の剪断波としてハイドロホン10に伝達される。ゴムが剪断波に対して高度の減衰を提供することはよく知られている。」との記載からわかるように、「ゴム環14」は、ハイドロホン10に伝達する振動を減衰する機能を有するものである。
そうすると、引用発明1において、上記機能を有する「ゴム環14」に「結合され」た、「マスリング45の肩部33に対してクランプされる」「フランジ19」を有する「金属環18」の構成は、「壁21」に「取り付け」る対象が「ハイドロホン10」であることを前提とした特有の構成であると理解すべきである。
さらに、引用発明1の「ハイドロホン10」の「結晶62、63及び電極66、67」は「ダイヤフラム11に入射する圧力波に対応する電気信号」を「受け取」るものであるところ、当該「ダイヤフラム11」は「底部クロージャ56」に含まれるものであるから、「結晶62、63及び電極66、67」とそのハウジングを構成する「底部クロージャ56」は一体不可分なものといえる。
以上のことを踏まえると、引用発明1において、「結晶62、63及び電極66、67」に代えて船殻の外側の水の中へと伝達される信号を発生させるために適用されたトランスデューサーを採用するためには、「フランジ19」を有する「金属環18」を備える「ハイドロホン10」に代えて、前記トランスデューサーを備える他の電子装置を採用する必要があるところ、船体の振動を減衰させるハイドロホンの取り付け手段を提供することを目的とする引用発明1には、そのような動機付けはないし、むしろ当該目的が達成されなくなること、及び、取り付け構造を大きく変更する必要があることから阻害要因があるものと認められる。
したがって、引用発明1において「ハイドロホン10」に代えて上記周知技術の電子装置を採用することは当業者にとって容易ではない。
また、上記周知技術は、上記相違点1に係る本願発明1の構成のうち、少なくとも「ハウジング」の「フランジ部分」に相当する構成を有するものではないから、仮に引用発明1において「フランジ19」を有する「金属環18」を備える「ハイドロホン10」に代えて、上記周知技術の電子装置を採用したとしても、上記相違点1に係る本願発明1の構成には至らない。
なお、本願発明9に対して周知技術として引用された引用文献4及び5にも上記相違点1に係る本願発明1の構成は開示されていない。


上記ア及びイより、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1、周知技術(引用文献2、3)、周知技術(引用文献4、5)及び周知技術(引用文献6、7)に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2?9について
本願発明2?9は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに本願請求項2?9において特定される発明特定事項により限定したものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1、周知技術(引用文献2、3)、周知技術(引用文献4、5)及び周知技術(引用文献6、7)に記載された事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

第8 原査定について
令和3年 6月 8日に提出された手続補正書による補正により、本願発明1?9は、上記相違点1に係る本願発明1の構成を有するものとなっている。
そのため、上記第7で述べたとおり、本願発明1は、拒絶査定で引用された、引用発明1及び周知技術(引用文献6、7)に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえず、本願発明2?9も拒絶査定において引用された、引用発明1、周知技術(引用文献2、3)、周知技術(引用文献4、5)及び周知技術(引用文献6、7)に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。



 
審決日 2021-09-07 
出願番号 特願2018-513905(P2018-513905)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (B63B)
P 1 8・ 121- WY (B63B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 成彦  
特許庁審判長 一ノ瀬 覚
特許庁審判官 島田 信一
畔津 圭介
発明の名称 船舶用の船殻装着電子装置  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 大宅 郁治  
代理人 野河 信久  
代理人 井上 正  
代理人 金子 早苗  
代理人 飯野 茂  
代理人 河野 直樹  

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