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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04B
管理番号 1377652
審判番号 不服2020-16506  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-01 
確定日 2021-09-28 
事件の表示 特願2017-521850「信号処理装置および方法、並びに、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 8日国際公開、WO2016/194719、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年 5月25日(優先権主張 2015年 6月 5日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

2020年 1月10日付け:拒絶理由通知書
2020年 3月 9日 :意見書、手続補正書の提出
2020年 8月27日付け:拒絶査定
2020年12月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(2020年 8月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(新規性)この出願の請求項1、2、5?7、9、10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の請求項1?20に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1?4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2005-223389号公報
2.特開2008-135889号公報
3.特開2006-311439号公報
4.特表2009-519689号公報

なお、各請求項にかかる発明と各引用文献の対応関係は、以下のとおりである。
・請求項1、2、5?7、9、10に係る発明ついては、引用文献1に記載された発明を引用
・請求項3、4に係る発明については、引用文献1、2、4に記載された発明を引用
・請求項8にかかる発明については、引用文献1、2に記載された発明を引用
・請求項11?20にかかる発明については、引用文献3に記載された発明を引用

第3 本願発明
本願請求項1?20に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明20」という。)は、2020年12月 1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
データをフレーム毎に無線信号として送信する送信部と、
前記送信部が前記データを送信する周波数帯域のキャリアセンスを繰り返すキャリアセンス部と、
前記キャリアセンス部による前記キャリアセンスを行わせ、前記周波数帯域が空いている場合、前記送信部に、データフレームを前記無線信号として前記周波数帯域に送信させる処理を繰り返し、さらに、前記送信部が第1の時間内において、前記データフレームとは異なる所定の情報により構成される同期フレームの送信を挟まずに前記データフレームを所定回数送信した場合、前記送信部に、前記同期フレームを前記無線信号として前記周波数帯域に送信させる送信制御部と
を備える信号処理装置。
【請求項2】
前記キャリアセンス部は、前記第1の時間よりも短い第2の時間毎に、前記キャリアセンスを繰り返す
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記同期フレームは、前記第1の時間分の受信信号に前記所定回数分の前記データフレームが存在することを保証するためのフレームであり、受信側にとって既知の情報により構成される
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記同期フレームは、予め定められた所定の擬似乱数列により構成される
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記同期フレームを生成する同期フレーム生成部をさらに備える
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記データフレームを生成するデータフレーム生成部をさらに備える
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記データフレーム生成部は、同一のデータを用いて複数の前記データフレームを生成し、
前記送信部は、前記データフレーム生成部により生成された複数の前記データフレームを送信することにより、前記同一のデータを複数回送信する
請求項6に記載の信号処理装置。
【請求項8】
前記データフレーム生成部は、前記データフレームの受信側にとって既知の部分が、前記データフレーム内により均一に分散するように、前記データフレーム内でデータの並び替えを行う
請求項6に記載の信号処理装置。
【請求項9】
信号処理装置が、
データをフレーム毎に無線信号として送信し、
前記データを送信する周波数帯域のキャリアセンスを行わせ、前記周波数帯域が空いている場合、データフレームを前記無線信号として前記周波数帯域に送信させる処理を繰り返し、さらに、第1の時間内において、前記データフレームとは異なる所定の情報により構成される同期フレームの送信を挟まずに前記データフレームを所定回数送信した場合、前記同期フレームを前記無線信号として前記周波数帯域に送信させる
信号処理方法。
【請求項10】
コンピュータを、
データをフレーム毎に無線信号として送信する送信部と、
前記送信部が前記データを送信する周波数帯域のキャリアセンスを繰り返すキャリアセンス部と、
前記キャリアセンス部による前記キャリアセンスを行わせ、前記周波数帯域が空いている場合、前記送信部に、データフレームを前記無線信号として前記周波数帯域に送信させる処理を繰り返し、さらに、前記送信部が第1の時間内において、前記データフレームとは異なる所定の情報により構成される同期フレームの送信を挟まずに前記データフレームを所定回数送信した場合、前記送信部に、前記同期フレームを前記無線信号として前記周波数帯域に送信させる送信制御部と
して機能させるためのプログラム。
【請求項11】
フレーム毎のデータの無線信号を受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記無線信号である受信信号を記憶する記憶部と、
前記記憶部により記憶されている所定の時間分以上の前記受信信号の中から、データフレームが第1の時間内に所定回数送信された場合に送信される同期フレームを検出する同期フレーム検出部と、
前記同期フレーム検出部により前記同期フレームが検出された場合、前記記憶部に記憶されている、前記同期フレームより前の前記所定の時間分の前記受信信号の中から前記データフレームを検出するデータフレーム検出部と
を備える信号処理装置。
【請求項12】
前記同期フレームは、前記所定の時間分の前記受信信号に所定回数分の前記データフレームが存在することを保証するためのフレームであり、前記信号処理装置にとって既知の情報により構成される
請求項11に記載の信号処理装置。
【請求項13】
前記同期フレームは、予め定められた所定の擬似乱数列により構成される
請求項11に記載の信号処理装置。
【請求項14】
前記同期フレーム検出部により前記同期フレームが検出された場合、前記記憶部に記憶されている、前記同期フレームより前の前記所定の時間分の前記受信信号を前記記憶部から読み出す読み出し部をさらに備え、
前記データフレーム検出部は、前記読み出し部により読み出された、前記同期フレームより前の前記所定の時間分の前記受信信号の中から、前記データフレームを検出する
請求項11に記載の信号処理装置。
【請求項15】
前記データフレーム検出部は、前記同期フレームより前の前記所定の時間分の前記受信信号内の前記データフレームの先頭位置を検出し、1フレーム分のデータを切り出し、フレーム毎に前記データフレームを検出する
請求項14に記載の信号処理装置。
【請求項16】
前記読み出し部により読み出された、前記同期フレームより前の前記所定の時間分の前記受信信号を保持する保持部をさらに備え、
前記データフレーム検出部は、前記保持部により保持されている、前記同期フレームより前の前記所定の時間分の前記受信信号の中から、前記データフレームを検出する
請求項14に記載の信号処理装置。
【請求項17】
前記データフレーム検出部により検出された前記データフレームを、所定の擬似乱数列を乗算して積算することにより逆拡散する逆拡散部をさらに備える
請求項11に記載の信号処理装置。
【請求項18】
前記データフレーム検出部は、前記同期フレーム検出部により前記同期フレームが検出されなかった場合、前記同期フレームより前の前記所定の時間分の前記受信信号に対する前記データフレームの検出を省略する
請求項11に記載の信号処理装置。
【請求項19】
信号処理装置が、
フレーム毎のデータの無線信号を受信し、
受信された前記無線信号である受信信号を記憶し、
記憶されている所定の時間分以上の前記受信信号の中から、データフレームが第1の時間内に所定回数送信された場合に送信される同期フレームを検出し、
前記同期フレームが検出された場合、記憶されている、前記同期フレームより前の前記所定の時間分の前記受信信号の中から前記データフレームを検出する
信号処理方法。
【請求項20】
コンピュータを、
フレーム毎のデータの無線信号を受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記無線信号である受信信号を記憶する記憶部と、
前記記憶部により記憶されている所定の時間分以上の前記受信信号の中から、データフレームが第1の時間内に所定回数送信された場合に送信される同期フレームを検出する同期フレーム検出部と、
前記同期フレーム検出部により前記同期フレームが検出された場合、前記記憶部に記憶されている、前記同期フレームより前の前記所定の時間分の前記受信信号の中から前記データフレームを検出するデータフレーム検出部と
して機能させるためのプログラム。」

第4 引用文献、引用発明等
1.特開2005-223389号公報(以下、「引用文献1」という。)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0020】
図1において、無線通信装置1は、相手無線通信装置の間欠受信周期を記憶する相手受信周期記憶手段2と、相手受信周期記憶手段2で検出した相手間欠受信周期に応じて、無線電文を複数回送信する際の送信回数(以下連送回数という)を決定する連送回数決定手段3と、アンテナ4に接続され、無線電文を連送する無線送信手段5と、家電機器6と通信を行うためのインターフェースである外部通信手段7と、前記各手段を制御する制御手段8とで構成されている。」

「【0024】
図3において(1)はデータフォーマット全体構成を示す。図3の(1)において区間(a)はヘッダー部と呼ばれ、受信チャンネルとして複数チャンネルを順次スキャンして待ち受ける受信方式に対応するため(ビット同期信号1+フレーム同期信号1+データ信号1)を一つのブロックとして、このブロックをN回繰り返し送信する。そして、区間(b)はデータを含む情報部である。区間(c)は送信の最後を示す信号であるがなくてもかまわない。」

「【0035】
なお、本実施の形態において、無線電文を送信する前に、制御手段8は、送信するチャンネルが空いているかどうか(キャリアがあるかどうか)を確認するため、無線受信手段を用いて、前記チャンネルのキャリアセンスを行い、キャリアがない場合に無線電文を送信するようにすることもできる。」

【図1】


【図3】


したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「無線電文を連送する無線送信手段と制御手段を備え、
無線電文のデータフォーマット全体構成は、区間(a)(b)(c)からなり、区間(a)はヘッダー部と呼ばれ、受信チャンネルとして複数チャンネルを順次スキャンして待ち受ける受信方式に対応するため(ビット同期信号1+フレーム同期信号1+データ信号1)を一つのブロックとして、このブロックをN回繰り返し送信し、区間(b)はデータを含む情報部であり、区間(c)は送信の最後を示す信号であるがなくてもかまわず、
無線電文を送信する前に、制御手段は、送信するチャンネルが空いているかどうかを確認するため、無線受信手段を用いて、前記チャンネルのキャリアセンスを行い、キャリアがない場合に無線電文を送信する無線通信装置。」

2.特開2008-135889号公報(以下、「引用文献2」という。)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0016】
同期符号は、フレームデータ全体の伝送品質を均一に保つため均等に配置するのが望ましい。例えば、4タイムスロット長のフレームデータに同期符号を追加する場合、1タイムスロットには予め同期符号が固定されているので、3スロット目、4スロット目、2スロット目といった順に挿入していく。従って、偏差調整部は、どこのタイムスロットに同期符号があるかのを同期情報領域から参照し、予め定義された挿入順に従って次の挿入箇所に同期符号を挿入する。」

3.特開2006-311439号公報(以下、「引用文献3」という。)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0025】
図1は、この発明の実施形態であるデータ伝送システムの機能構成を示す図である。この実施形態のデータ伝送システムは、送信側1から受信側2へデータを送信し、受信側2において受信したデータに誤りがあれば、その誤りを訂正するシステムである。送信側1と受信側2とは、有線で接続される構成であってもよいし、無線で接続される構成であってもよい。また、送信側1と受信側2とは、単一の装置内に設けることもできれば(単一の装置内でのデータ伝送に利用する場合)、異なる2つの装置にそれぞれ設けることもできる(異なる2つの装置間でのデータ伝送に利用する場合)。例えば、紙幣処理装置(単一の装置)において、送信側1を紙幣のデータを読み取る読取部(一方の機能部)に設け、受信側2を読取部で読み取った紙幣のデータに基づいて紙幣の真偽等を鑑別する鑑別部(他方の機能部)に設けることで、読取部から鑑別部への紙幣データの送信に利用できる。また、監視システムにおいて、送信側1を監視エリアを撮像する撮像装置に設け、受信側2を撮像装置で撮像した撮像画像を処理するホスト装置に設けることで、撮像装置からホスト装置への撮像画像データの送信に利用できる。
【0026】
この実施形態のデータ伝送システムは、調歩同期により送信側1と受信側2との間におけるデータ伝送を制御するシステムである。送信側1は、図2(A)に示すデータ本体を、受信側2へ送信するとき、図2(B)に示すフレームを作成し、これを受信側2へ送信する。図2(A)において、D1、D2、D3、・・・、Dnは、所定の単位、例えば1バイト、の大きさのデータ(以下、単位データと言う。)である。送信側1は、図2(B)に示すように同期データ、およびレングスをデータ本体の先頭に付加し、水平パリティをデータ本体の後端に付加したブロックを2つつなげたフレームを作成する(第1ブロック、第2ブロックをつなげたフレームを作成する。)。同期データは、ブロックの開始を示す特定のデータであり、レングスはデータ本体の大きさを示すデータであり、水平パリティはこのブロックに対して誤りの有無を検知するためのデータである。第1ブロックと第2ブロックは、同じである。また、このフレームには、第1ブロックの先頭、および第2ブロックの先頭(第1ブロックと第2ブロックとの間)にガードデータが挿入されている。このガードデータは、単位データ以上の大きさ(ここでは、1バイト以上)であり、受信側2において調歩同期で同期を取るときのスタートビット(この実施形態では0を示すビットである。)と反対のビット(この実施形態では1を示すビットであり、ストップビットと同じである。)を並べたビット列のデータである。このガードデータは、受信側2をアイドル状態にするためのデータである。さらに、第2ブロックの後端には、フレームの終了を示す終了データが付加されている。この終了データは、単位データと同じ大きさであり、受信側2に対して図2(B)に示すフレームの送信完了を通知するためのデータである。」

「【0042】
受信処理部21は、調歩同期により送信側1から送信されてくる単位データを受信すると(s11)、今回受信した単位データを受信バッファ26に記憶させるとともに(s12)、垂直パリティチェック部22において今回受信した単位データに対する誤りの有無を検知し(s13)、その結果を制御メモリ27に記憶させる(s14)。受信バッファ11には、受信処理部21で受信した順番に単位データが記憶される(図6(A)参照)。また、制御メモリ27には、受信処理部21で受信した順番に、その単位データに対する誤りの有無(垂直パリティチェックによる検知結果)が記憶される(図6(B)参照)。また、受信処理部21は、単位データを受信する毎に、受信した単位データが終了データであるかどうかを判定している。受信側2は、s15で送信側1から送信されてきているフレームの受信が完了したと判定するまで、s11?s14の処理を繰り返す。s15では、受信処理部21において終了データが受信されたときに、フレームの受信が完了したと判定する処理である。」

したがって、上記引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「送信側と無線で接続され、
前記送信側は、データ本体を、受信側へ送信するとき、同期データ、およびレングスをデータ本体の先頭に付加し、水平パリティをデータ本体の後端に付加したブロックを2つつなげたフレームを作成して、
前記送信側から送信されてくる単位データを受信すると、受信バッファには、受信処理部で受信した順番に単位データが記憶され、前記受信処理部は、単位データが終了データであるかどうかを判定して、終了データが受信されたときに、フレームの受信が完了したと判定するデータ伝送システムの受信側。」

4.特表2009-519689号公報(以下、「引用文献4」という。)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0023】
図3はまた、802.11bに対するプリアンブルを示す。このプリアンブルは、擬似乱数(PN)発生器に基づいて発生される、既知の128個のパイロットビットのシーケンスによって構成される。128個のパイロットビットは、d0ないしd127として表示されている。各パイロットビットは、バーカーシーケンスと呼ばれる、{+1,-1,+1,+1,-1,+1,+1,+1,-1,-1,-1}の11個のチップの拡散シーケンスにより拡散される。このプリアンブルは、128μsの長さを有する。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明1における「無線電文」は、区間(a)(b)(c)で構成されるデータフォーマットの無線信号であるから、引用発明1の「無線電文を連送する無線送信手段」は、本願発明1の「データをフレーム毎に無線信号として送信する送信部」に相当する。
(イ)引用発明1における「チャンネル」は、本願発明1の「周波数帯域」に相当する。
(ウ)引用発明1は、送信するチャンネルが空いているかどうかを確認するため、無線受信手段を用いて、前記チャンネルのキャリアセンスを繰り返し行うものといえるから、引用発明1における「無線受信手段」は、本願発明1の「前記送信部が前記データを送信する周波数帯域のキャリアセンスを繰り返すキャリアセンス部」に相当する。
(エ)引用発明1における「制御手段」は、送信するチャンネルが空いているかどうかを確認するため、無線受信手段を用いて、前記チャンネルのキャリアセンスを行い、キャリアがない場合に無線電文を無線送信手段から繰り返し送信するものといえるから、引用発明1の「制御手段」は、本願発明1の「前記キャリアセンス部による前記キャリアセンスを行わせ、前記周波数帯域が空いている場合、前記送信部に、データフレームを前記無線信号として前記周波数帯域に送信させる処理を繰り返す送信制御部」に相当する。
(オ)引用発明1の「無線通信装置」は、本願発明1の「信号処理装置」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点がある。

(一致点)
「データをフレーム毎に無線信号として送信する送信部と、
前記送信部が前記データを送信する周波数帯域のキャリアセンスを繰り返すキャリアセンス部と、
前記キャリアセンス部による前記キャリアセンスを行わせ、前記周波数帯域が空いている場合、前記送信部に、データフレームを前記無線信号として前記周波数帯域に送信させる処理を繰り返す送信制御部とを備える信号処理装置。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1の「送信制御部」は、前記送信部が第1の時間内において、前記データフレームとは異なる所定の情報により構成される同期フレームの送信を挟まずに前記データフレームを所定回数送信した場合、前記送信部に、前記同期フレームを前記無線信号として前記周波数帯域に送信させるものであるのに対し、引用発明1の「制御手段」はそのような「同期フレーム」の送信に関する構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、相違点1に係る本願発明1の「同期フレーム」の送信に関する構成は、引用文献1に記載も示唆もされておらず、引用発明1に基いたとしても当業者が容易に想到できるものではない。
なお、原査定においては、引用発明1において、ヘッダー部の繰り返し送信(区間(a))の後、フレーム同期2及びデータを含む区間(b)の情報部を送信することが、相違点1に係る本願発明1の「同期フレーム」の送信に関する構成に対応するものと認定しているが、そもそも、「ヘッダー部」の繰り返し送信は、「無線電文(データフレーム)」の繰り返し送信ではないし、引用発明1の「データを含む情報部」は「同期フレーム」ではないから、引用文献1において、ヘッダー部のくり返し送信の後、データを含む情報部を送信することが、本願発明1の「データフレームを所定回数送信した場合、前記送信部に、前記同期フレームを前記無線信号として前記周波数帯域に送信」することに相当するとはいえない。
そして、この構成により【0099】に「同期フレームをデータフレームよりも後に送信し、さらに、データフレームの送信が成功した場合のみ同期フレームを送信するようにし、さらにそのデータフレームが送信される期間を有限とすることにより、受信側において、同期フレームを基準とする所定の期間内に所定の数のデータフレームの存在が保証されることになり、フレームの検出精度を向上させることができる。」と記載される効果を有するものである。

したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

本願発明2、5?7も、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1に基いて容易に発明できたものとはいえない。

本願発明3、4も、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2、4に記載の発明に基いて容易に発明できたものとはいえない。

本願発明8も、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2に記載の発明に基いて容易に発明できたものとはいえない。

本願発明9は、本願発明1を方法の発明として特定したものであって、本願発明1に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

本願発明10は、本願発明1をプログラムの発明として特定したものであって、本願発明1に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明11について
(1)対比
本願発明11と引用発明3とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明3における「伝送システムの受信側」は、送信側と無線で接続され、「受信処理部」は、フレーム毎のデータの無線信号を受信するものであるといえるから、引用発明3の「受信処理部」及び「伝送システムの受信側」は、本願発明11における「フレーム毎のデータの無線信号を受信する受信部」及び「信号処理装置」に相当する。
(イ)引用発明3における「受信バッファ」は、受信処理部で受信した順番に単位データが記憶されるものであるから、引用発明3の「受信バッファ」は、本願発明11における「前記受信部により受信された前記無線信号である受信信号を記憶する記憶部」に相当する。
(ウ)引用発明3における「受信処理部」は、単位データが終了データであるかどうかを判定して、終了データが受信されたときに、フレームの受信が完了したと判定するものであるから、本願発明11の「同期フレーム検出部」と「記憶部により記憶されている受信信号の中から、データの区切りを示す単位データを検出する検出部」であるという点で共通する。

したがって、本願発明11と引用発明3の間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「フレーム毎のデータの無線信号を受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記無線信号である受信信号を記憶する記憶部と、
前記記憶部により記憶されている前記受信信号の中から、前記データの区切りを示す単位データを検出する検出部と、
を備える信号処理装置。」

(相違点)
(相違点2)本願発明11は「前記同期フレーム検出部により前記同期フレームが検出された場合、前記記憶部に記憶されている、前記同期フレームより前の前記所定の時間分の前記受信信号の中から前記データフレームを検出するデータフレーム検出部」という構成を備えるのに対し、引用発明3は先頭に同期データが付加されているフレームを受信する点。

(2)相違点についての判断
上記相違点2について検討すると、引用発明3は、同期データが先頭に付加、すなわち同期データの後にデータ本体が存在しているから、同期データを検出しても,「同期フレームより前の前記所定の時間分の前記受信信号の中から前記データフレームを検出」することは不可能であり、相違点2に係る本願発明11の「同期フレーム検出部」により、同期フレームが検出された場合に、記憶部に記憶されている受信信号の中から、データフレームを検出する「データフレーム検出部」に関する構成は、引用発明3に基づいたとしても当業者が容易に想到できるものではない。

したがって、本願発明11は、当業者であっても、引用発明3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

本願発明12?18も、本願発明11と同一の構成を備えるものであるから、本願発明11と同じ理由により、当業者であっても、引用発明3に基いて容易に発明できたものとはいえない。

本願発明19は、本願発明11を方法の発明として特定したものであって、本願発明11に対応する構成を備えるものであるから、本願発明11と同様の理由により、当業者であっても、引用発明3に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

本願発明20は、本願発明11をプログラムの発明として特定したものであって、本願発明11に対応する構成を備えるものであるから、本願発明11と同様の理由により、当業者であっても、引用発明3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
1.新規性(特許法第29条第2項)について
本願発明1、2、5?7、9、10は、前述のとおり、引用発明1と対比して、上記相違点1を有するから、拒絶査定において引用された引用文献1に記載された発明と同一であるとはいえない。
したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

2.進歩性(特許法第29条第2項)について
本願発明1?10は、前述のとおり、上記相違点1に関する構成を備えるものであるから、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1、2、4に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
また、本願発明11?20は、前述のとおり、上記相違点2に関する構成を備えるものであるから、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献3に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由2を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1、2、5?7、9、10に係る発明は、引用文献1に記載された発明ではないし、本願の請求項1?20に係る発明は、当業者が引用文献1?4に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-09-10 
出願番号 特願2017-521850(P2017-521850)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04B)
P 1 8・ 113- WY (H04B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 野元 久道  
特許庁審判長 吉田 隆之
特許庁審判官 伊藤 隆夫
佐藤 智康
発明の名称 信号処理装置および方法、並びに、プログラム  
代理人 三浦 勇介  
代理人 稲本 義雄  
代理人 西川 孝  
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