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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1377664
審判番号 不服2020-9203  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-01 
確定日 2021-09-08 
事件の表示 特願2017-554499号「視野角切換方法、装置、プログラム及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成30年9月27日国際公開、WO2018/171112、令和1年5月30日国内公表、特表2019-514031号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年8月17日の外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張、2017年3月24日、中華人民共和国)、平成29年10月16日に翻訳文及び手続補正書が提出され、令和元年5月10日付けの拒絶理由通知に対し、同年8月15日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月8日付けの拒絶理由通知に対し、令和2年1月10日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年3月2日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ(原査定の謄本の送達日:同年3月10日)、これに対して、令和2年7月1日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲についての補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の概要
本件補正は、以下の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は、補正箇所を示す。

(1)本件補正前
「【請求項1】
視野角の切換え命令が検出された場合、ディスプレイスクリーンの現在の視野角を決定し、且つ表示されている画像の現在の画像階調値を取得し、前記視野角の切換え命令は、前記ディスプレイスクリーンを狭視野角と広視野角との間で切り換えるように指示するためのものであり、前記ディスプレイスクリーンが狭視野角になる場合に平行バックライトを利用し、前記ディスプレイスクリーンが広視野角になる場合に発散バックライトを利用するステップと、
前記ディスプレイスクリーンの現在の視野角及び前記画像階調値に基づいて、目標階調値を決定し、前記目標階調値は、切り換えられた後の視野角において、切り換える前のスクリーンの輝度値と同じスクリーンの輝度値を取得することができる階調値であるステップと、
前記ディスプレイスクリーンを狭視野角と広視野角との間で切り換え、且つ前記画像の画像階調を前記目標階調値に設定するステップと、及び、
第1の予め設定の輝度曲線及び第2の予め設定の輝度曲線に基づいて、前記予め設定された調整曲線を生成し、前記第1の予め設定の輝度曲線は、前記狭視野角における画像階調とスクリーンの輝度との関係を示すためのものであり、前記第2の予め設定の輝度曲線は、前記広視野角における画像階調とスクリーンの輝度との関係を示すためのものであるステップと、を含み、
前記ディスプレイスクリーンの現在の視野角及び前記画像階調値に基づいて、目標階調値を決定するステップは、
前記ディスプレイスクリーンの現在の視野角及び前記画像階調値に基づき、予め設定された調整曲線によって前記目標階調値を決定し、前記予め設定された調整曲線の各点において、現在の視野角における現在の画像階調値に対応するスクリーンの輝度と切り換えられた後の視野角における目標階調値に対応するスクリーンの輝度とが同じであるステップを含む
ことを特徴とする視野角切換方法。」

(2)本件補正後
「【請求項1】
視野角の切換え命令が検出された場合、ディスプレイスクリーンの現在の視野角を決定し、且つ表示されている画像の現在の画像階調値を取得し、前記視野角の切換え命令は、前記ディスプレイスクリーンを狭視野角と広視野角との間で切り換えるように指示するためのものであり、前記ディスプレイスクリーンが狭視野角になる場合に平行バックライトを利用し、前記ディスプレイスクリーンが広視野角になる場合に発散バックライトを利用するステップと、
前記ディスプレイスクリーンの現在の視野角及び前記画像階調値に基づいて、目標階調値を決定し、前記目標階調値は、切り換えられた後の視野角において、切り換える前のスクリーンの輝度値と同じスクリーンの輝度値を取得することができる階調値であるステップと、
前記ディスプレイスクリーンを狭視野角と広視野角との間で切り換え、且つ前記画像の画像階調を前記目標階調値に設定するステップと、及び、
第1の予め設定の輝度曲線における画像階調と第2の予め設定の輝度曲線における画像階調との関係に基づいて、前記予め設定された調整曲線を生成し、前記第1の予め設定の輝度曲線は、前記狭視野角における画像階調とスクリーンの輝度との関係を示すためのものであり、前記第2の予め設定の輝度曲線は、前記広視野角における画像階調とスクリーンの輝度との関係を示すためのものであるステップと、を含み、
前記ディスプレイスクリーンの現在の視野角及び前記画像階調値に基づいて、目標階調値を決定するステップは、
前記ディスプレイスクリーンの現在の視野角及び前記画像階調値に基づき、予め設定された調整曲線によって前記目標階調値を決定し、前記予め設定された調整曲線の各点において、現在の視野角における現在の画像階調値に対応するスクリーンの輝度と切り換えられた後の視野角における目標階調値に対応するスクリーンの輝度とが同じであるステップを含む
ことを特徴とする視野角切換方法。」

2 本件補正についての当審の判断
本件補正は、請求項1の「予め設定された調整曲線」について、本件補正前は「第1の予め設定の輝度曲線及び第2の予め設定の輝度曲線に基づいて」「生成」するとしていたものを、本件補正後は「第1の予め設定の輝度曲線における画像階調と第2の予め設定の輝度曲線における画像階調との関係に基づいて」「生成」すると補正することを含み、「予め設定された調整曲線」の「生成」に係る事項を限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、以下では、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか否か、について検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、次に特定されるとおりのものである。

「視野角の切換え命令が検出された場合、ディスプレイスクリーンの現在の視野角を決定し、且つ表示されている画像の現在の画像階調値を取得し、前記視野角の切換え命令は、前記ディスプレイスクリーンを狭視野角と広視野角との間で切り換えるように指示するためのものであり、前記ディスプレイスクリーンが狭視野角になる場合に平行バックライトを利用し、前記ディスプレイスクリーンが広視野角になる場合に発散バックライトを利用するステップと、
前記ディスプレイスクリーンの現在の視野角及び前記画像階調値に基づいて、目標階調値を決定し、前記目標階調値は、切り換えられた後の視野角において、切り換える前のスクリーンの輝度値と同じスクリーンの輝度値を取得することができる階調値であるステップと、
前記ディスプレイスクリーンを狭視野角と広視野角との間で切り換え、且つ前記画像の画像階調を前記目標階調値に設定するステップと、及び、
第1の予め設定の輝度曲線における画像階調と第2の予め設定の輝度曲線における画像階調との関係に基づいて、前記予め設定された調整曲線を生成し、前記第1の予め設定の輝度曲線は、前記狭視野角における画像階調とスクリーンの輝度との関係を示すためのものであり、前記第2の予め設定の輝度曲線は、前記広視野角における画像階調とスクリーンの輝度との関係を示すためのものであるステップと、を含み、
前記ディスプレイスクリーンの現在の視野角及び前記画像階調値に基づいて、目標階調値を決定するステップは、
前記ディスプレイスクリーンの現在の視野角及び前記画像階調値に基づき、予め設定された調整曲線によって前記目標階調値を決定し、前記予め設定された調整曲線の各点において、現在の視野角における現在の画像階調値に対応するスクリーンの輝度と切り換えられた後の視野角における目標階調値に対応するスクリーンの輝度とが同じであるステップを含む
ことを特徴とする視野角切換方法。」

(2)引用文献
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由において引用された米国特許出願公開第2009/0067156号明細書(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。下線は当審が付した。日本語訳は当審が作成したものである。

「[0001] The present invention relates to an illumination system for use, for example, in a display device. The present invention relates particularly to a display device which is switchable between a private viewing mode and a public viewing mode.」
(日本語訳)
[0001] 本発明は、例えば、表示装置において使用する照明システムに関するものである。本発明は、特に、プライベート視野モードとパブリック視野モードの間で切り替え可能な表示装置に関するものである。

「[0005] Liquid crystal display devices typically use cold cathode fluorescent tubes as backlights. They may use one tube and a waveguide, or multiple tubes with or without waveguides. The tubes are all of the same type and result in the same viewing angle properties for the display panel. Such arrangements are well known in the field.」
(日本語訳)
[0005] 液晶表示装置は、通常バックライトとして冷陰極蛍光管を用いている。それらは、1つの蛍光管及び導波管、又は、導波管を有する若しくは有さない複数の蛍光管を使用し得る。これらの蛍光管は全て同じタイプのものであり、表示パネルに対して同じ視野角特性をもたらす。このような構成は、当該技術分野において周知である。

「[0138] FIGS. 3(A) and (B) illustrate a display device 30 according to a first embodiment of the present invention. The display device 30 comprises a display panel 31 which is illuminated by an illumination system 32. The illumination system 32 comprises a first light source 34 and a second light source 36. Light from the first light source 34 is distributed by a first waveguide 38 to an output surface of the waveguide 38 having a single illumination region corresponding generally in shape and size to the display panel 31. Light from the second light source 36 is distributed by a second waveguide 40 to an output surface of the waveguide 40 corresponding in the shape and size to that of the display panel 31. In the first embodiment, the first waveguide 38 is disposed between the second waveguide 40 and the display panel 31 with the first and second light sources 34 and 36 disposed to the side of their respective waveguides 38 and 40. Both of the first and second light sources 34 and 36 are CCFL (Cold Cathode Fluorescent Lamp) fluorescent tubes emitting light in a visible range of wavelengths.」
(日本語訳)
[0138] 図3(A)及び(B)は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置30を示す。表示装置30は、照明システム32によって照明される表示パネル31を備えている。照明システム32は、第1光源34及び第2光源36を備えている。第1光源34からの光は、第1導波路38によって、当該第1導波路38の出力面に分配されており、この出力面は、形状及びサイズにおいて表示パネル31に概ね対応した単一の照明領域を有している。第2光源36からの光は、第2導波路40によって、当該第2導波路40の出力面に分配されており、この出力面は、形状及びサイズにおいて表示パネル31に対応している。第1実施形態では、第1導波路38は、第2導波路40及び表示パネル31の間に配置されており、第1及び第2光源34及び36は、それぞれ第1導波路38及び第2導波路40の側方に配置されている。第1及び第2光源34、36の両方は、可視光領域の波長内において発光するCCFL(冷陰極蛍光管)などの蛍光管である。

「[0139] The first waveguide 38 is adapted to cooperate with the first light source 34 to produce output light having a first angular illumination range which is relatively narrow, while the second light source 36 is adapted to cooperate with the second waveguide 40 to produce output light having a second angular illumination range which is relatively wide in comparison to the first angular illumination range.」
(日本語訳)
[0139] 第1導波路38は、第1光源34と協働して、相対的に狭い第1照射角度範囲を有する出力光を生成するように構成されている。また、第2光源36は、第2導波路40と協働して、第1照射角度範囲に比べて相対的に広い第2照射角度範囲を有する出力光を生成するように構成されている。

「[0140] The illumination system 32 is operable selectively in a first mode in which the first light source 34 is on and the second light source 36 is off, and in a second mode in which the first light source 34 is off and the second light source 36 is on. In the first mode, therefore, the output light from the illumination system 32 comprises light derived from the first light source 34 with no light derived from the second light source 36. In the second mode the output light comprises light derived from the second light source 36 with no light derived from the first light source 34. In the first mode, therefore, the output light has an angular illumination range which is narrower than that in the second mode. In the context of the display device 30, the first mode is a private mode and the second mode is a public mode, and the display device 30 is operable selectively in either of these two modes. Operation in the first (narrow) mode is illustrated in FIG. 3(A) while operation in the second (wide) mode is illustrated in FIG. 3(B).」
(日本語訳)
[0140] 照明システム32は、第1光源34が点灯し第2光源36が消灯する第1モードと、第1光源34が消灯し第2光源36が点灯する第2モードにおいて、選択的に操作可能である。したがって、第1モードでは、照明システム32からの出力光は、第2光源36から由来する光ではなく、第1光源34から由来する光から成る。第2モードでは、出力光は、第1光源34から由来する光ではなく、第2光源36から由来する光から成る。それゆえ、第1モードでは、出力光は、第2モードの場合よりも狭い照射角度範囲を有している。表示装置30としては、第1モードは、プライベートモードであり、第2モードは、パブリックモードであり、表示装置30はこれら2つのモードのいずれかで選択的に動作可能である。第1(狭)モードの動作は、図3(A)に示されており、第2(広)モードの動作は、図3(B)に示されている。

「[0141] In this embodiment, the wider angular illumination range provided by the second light source 36 in cooperation with the second waveguide 40 results from the design of the second waveguide 40 which includes a scattering or diffusing layer incorporated into the top (or bottom, or both) of the waveguide 40. Light from the output surface of the second waveguide 40 passes through the first waveguide 38. The first waveguide 38 is therefore adapted to be substantially transparent to light received from the second waveguide 40 without affecting its angular range, and also adapted to produce output light having the first angular range from the first light source 34 disposed to the side of the first waveguide 38. With waveguides 38 and 40 constructed in this manner in this embodiment, their positions cannot be interchanged since otherwise the defusing or scattering properties of the second waveguide 40 would affect the angular distribution range of the light output from the first waveguide 38 as it passed through the second waveguide 40.」
(日本語訳)
[0141] この実施形態において、第2導波路40と協働して第2光源36によって、より広い照射角度範囲が提供されるのは、導波路40の頂部(又は底部、又はその両方)に組み込まれた散乱層又は拡散層を含む第2導波路40の設計によるものである。第2導波路40の出力面からの光は第1導波路38を通過する。したがって、第1導波路38は、その角度範囲に影響を与えることなく、第2導波路40から受光した光に対して実質的に透明に構成され、また、第1導波路38の側方に配置された第1光源34からの第1角度範囲を有する出力光を生成するようになっている。この実施形態では、このように構成された導波路38及び40について、それらの位置を交換することはできない。なぜなら、それらの位置を交換すると、第1導波路38からの出力光が第2導波路40を通過し、第2導波路40の拡散特性又は散乱特性が、第1導波路38からの出力光の角度分布に影響を及ぼすことになるからである。

「[0142] The first embodiment has the advantage of simplicity of construction (and therefore low cost), good viewing angle selection and high brightness in both modes. The brightness of each light source may be adjusted to achieve the required brightness balance between the two modes.」
(日本語訳)
[0142] 第1の実施形態は、構造の単純性(したがって低コスト)、良好な視野角選択及び双方のモードにおける高輝度性という利点を有している。各光源の輝度は、2つのモード間において要求される明るさのバランスを達成するように調整することができる。

「[0214] In each of the above embodiments, light derived from the first light source may not have the same colour balance or luminance as light derived from the second light source. A display device embodying the present invention can be adapted to correct for any such colour and/or luminance difference by adjusting the image grey level of the image formed at the display panel in the first and/or second mode to maintain the visual appearance of the image when switching between modes. The switching means used to switch the light sources between public and private modes could also switch in the grey level offset or adjustment to maintain the colour balance and/or luminance.」
(日本語訳)
[0214] 上記各実施形態では、第1光源から発した光は、第2光源からの光と同じ色バランス又は輝度を有していないかもしれない。本発明の表示装置は、モード切替時における画像の視覚的な外観を維持するために、第1及び/又は第2モードにおいて、表示パネルに形成された画像のグレーレベルを調整することによって、そのような色の差及び/又は輝度差を補正できるようになっている。パブリックモードとプライベートモードで光源を切り替えるための切替手段は、色バランス及び/又は輝度を維持するためのグレーレベルのオフセット値又は調整値における切り替えをすることもできる。

「図3A



「図3B



引用発明の認定
上記アの記載内容及び図示内容を総合すれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「プライベート視野モードとパブリック視野モードの間で切り替え可能な表示装置30で使用する照明システム32において、([0001])
表示装置30の表示パネル31は、バックライトとして第1光源34及び第2光源36を備える照明システム32によって照明され、照明システム32は、第1光源34が点灯し第2光源36が消灯する第1モードと、第1光源34が消灯し第2光源36が点灯する第2モードを選択して操作可能であり、([0005]、[0138]、[0140]、図3A、図3B)
第1モードの出力光は、第2モードの場合よりも狭い照射角度範囲を有しており、第1モードは、表示装置30のプライベート視野モードであり、第2モードは、表示装置30のパブリック視野モードであり、表示装置30はこれら2つのモードのいずれかで選択的に動作可能であり、([0140])
第1及び第2光源34及び36は、それぞれ第1導波路38及び第2導波路40の側方に配置されており、([0138])
第1光源34からの光は、第1導波路38によって、当該第1導波路38の出力面に分配され、この出力面は、形状及びサイズにおいて表示パネル31に概ね対応した単一の照明領域を有しており、第1導波路38は、第1光源34と協働して、相対的に狭い第1照射角度範囲を有する出力光を生成するように構成されており、([0138]、[0139])
第2光源36からの光は、第2導波路40によって、当該第2導波路40の出力面に分配されており、この出力面は、形状及びサイズにおいて表示パネル31に対応しており、第2導波路40の頂部(又は底部、又はその両方)に組み込まれた散乱層又は拡散層によって、第1照射角度範囲に比べて相対的に広い第2照射角度範囲を有する出力光を生成するように構成されており、([0138]、[0139]、[0141])
第1光源34から発した光は、第2光源36からの光と同じ色バランス又は輝度を有しておらず、モード切替時における画像の視覚的な外観を維持するために、第1及び/又は第2モードにおいて、表示パネル31に形成された画像のグレーレベルを調整することによって、そのような色の差及び/又は輝度差を補正できるようになっている、([0214])
照明システム32。」

ウ 引用文献2
原査定の拒絶の理由において引用された特開2008-281768号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。下線は当審が付した。

「【0039】
図3は、図1の携帯電話機1の構成例を示したブロック図であり、携帯電話機1内の機能構成の一例が示されている。この携帯電話機1は、図1に示されたメインディスプレイ101、外光センサ105及び視野角切替キー202に加えて、調光テーブル記憶部11、調光制御部14、画像データ生成部16、表示制御部17及び視野角切替部20を備えている。メインディスプレイ101は、バックライト15及び液晶パネル18によって構成される。
【0040】
液晶パネル18は、表示画面を有し、ピクセルごとに輝度の異なる階調表示を行うことが可能な表示装置である。バックライト15は、液晶パネル18に対して背面側から光を照射する光源装置であり、例えば、LED(発光ダイオード)などの発光素子が用いられている。
【0041】
ここで、液晶パネル18を所定の視野角で閲覧させる動作モードを広視野モードと呼び、上記所定の視野角よりも狭い狭視野角で閲覧させる動作モードを狭視野モードと呼ぶことにする。視野角切替部20は、ユーザによる視野角切替キー202の操作に基づいて、広視野モード及び狭視野モードを切り替える動作を行っている。」

「【0046】
画像データ生成部16は、メインディスプレイに101に表示させる画像データを生成する手段であり、画像データ生成部16によって生成される画像データは、少なくともピクセルごとの輝度を示す階調データを含んでいる。なお、この画像データ生成部16は、外光強度やバックライト輝度とは無関係に所望の画像データを生成している。表示制御部17は、画像データ生成部16によって生成された画像データに基づいて液晶パネル18を制御し、画像情報を液晶パネル18の表示画面上に表示させる動作を行っている。
【0047】
この表示制御部17には、画像データを構成する階調データを高輝度側へシフトさせる階調変換部19が設けられている。この階調変換部19は、画像データを構成する少なくとも一部の階調データを変更することにより、画像データ自体を高輝度化させている。表示制御部17は、狭視野モード時には階調変換部19により高輝度化された画像データを液晶パネル15に表示させる。一方、広視野モード時には、階調変換部19によって変換されていない画像データを液晶パネル15に表示させる。従って、画像データ生成部16によって同じ画像データが生成されている場合であっても、表示制御部17は、狭視野モードであれば、広視野モード時よりも高輝度の画像データを液晶パネル18に表示させるための動作を行う。」

「【0055】
図5は、図3の階調変換部19の動作の一例を示した図であり、階調データを高輝度側へシフトさせる変換特性の一例が示されている。この変換特性は、入力画像データを構成する一部のピクセルについて、その階調データを高輝度側へシフトさせて、入力画像データを出力画像データへ変換する際に用いられる階調変換部19の変換特性である。ここでは、階調レベルとして0?255を使用する入力画像データが、階調レベル0?255の画像データであって、0?255よりも狭い階調レベル範囲のみを使用する出力画像データに変換され、ピクセル間の階調差を縮小させる特性となっているものとする。
【0056】
具体的には、入力画像データ内の0以上d_(1)(例えば、d_(1)=123)以下の階調データが、一定値d_(2)(例えば、d_(2)=123)に変換され、出力画像データとして出力される。また、階調レベルd_(1)を越える入力画像データは、そのままの値で出力画像データとして出力される。つまり、この変換特性では、低階調側の画像データを階調レベルd_(2)に変換するとともに、高階調側の画像データをそのまま出力させることにより、ピクセル間の階調差を縮小させている。」

「【0071】
図9は、図3の階調変換部19の動作の一例を示した図であり、階調データを高輝度側へシフトさせる際の変換特性の他の一例が示されている。この変換特性は、入力画像データを構成する各ピクセルについて、その階調データを高輝度側へシフトさせ、入力画像データを出力画像データへ変換する際に用いられる階調変換部19の変換特性である。ここでは、階調レベルとして0?255を使用する入力画像データが、階調レベル0?255の画像データであって、0?255よりも狭い階調レベル範囲のみを使用する出力画像データに変換され、ピクセル間の階調差を縮小させる特性となっているものとする。
【0072】
上記変換特性は、傾きが45度よりも小さな直線により表され、階調レベル0の入力画像データが階調レベルd_(3)(例えば、d_(3)=123)に変換されている。階調レベル255の入力画像データは、そのままの階調レベル255に変換されている。つまり、この変換特性では、低階調側の画像データほど大きく高輝度側へシフトさせることにより、画像データを高輝度化させるとともに、ピクセル間の階調差を縮小させている。」

「【図3】



「【図5】



「【図9】



エ 周知技術の認定

(ア)引用文献2の記載事項(【0039】、【0041】、【0047】、【図3】)から、次の技術事項が認定できる(以下「引用文献2記載事項」という。)
[引用文献2記載事項]
「バックライト15及び液晶パネル18によって構成されるメインディスプレイ101、視野角切替キー202、視野角切替部20、表示制御部17を備えた携帯電話機1において、(【0039】)
ユーザによる視野角切替キー202の操作に基づいて、視野角切替部20が、液晶パネル18を所定の視野角で閲覧させる広視野モードと、上記所定の視野角よりも狭い狭視野角で閲覧させる狭視野モードを切り替える動作を行い、(【0041】、【図3】)
表示制御部17が、狭視野モード時には階調変換部19により画像データを構成する階調データを高輝度側へシフトさせて、高輝度化された画像データを液晶パネル15に表示させ、広視野モード時には、階調変換部19によって変換されていない画像データを液晶パネル15に表示させること。
(【0047】)」

(イ)引用文献2記載事項において、「視野角切替部20」は、「ユーザによる視野角切替キー202の操作に基づいて」、「広視野モード」と「狭視野モード」を「切り替える動作を行」うから、この「ユーザによる視野角切替キー202の操作」は、表示を狭視野モードと広視野モードの間で切り替えるように指示するための視野角の切替え命令であるといえる。
また、「視野角切替部20」は、このような命令に基づいて「切り替える動作を行」うから、このような命令を検出しており、切り替え前の現在の視野角モードが「狭視野モード」、「広視野モード」のいずれであるかを判定しているといえる。

(ウ)引用文献2記載事項において、「表示制御部17」は、「狭視野モード時には階調変換部19により画像データを構成する階調データを高輝度側へシフトさせ」、「広視野モード時には、階調変換部19によって変換」せずにそのままの階調データで表示するから、切り替え前の現在のモードが「広視野モード」、「狭視野モード」のいずれであっても、表示されている画像の現在のモードにおける現在の画像階調値を取得しているといえる。

(エ)上記(イ)及び(ウ)を踏まえると、次の技術事項は周知なものであるといえる(以下「周知技術」という。)
[周知技術]
「表示を狭視野モードと広視野モードとの間で切り替えるように指示するための視野角の切替え命令が検出されたとき、切り替え前の現在のモードが狭視野モード、広視野モードのいずれであるかを判定し、表示されている画像の現在のモードにおける現在の画像階調値を取得すること」

オ 引用文献3
当審が新たに引用する特開2013-156594号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。下線は当審が付した。

「【0046】
[狭視野角モードの際のガンマカーブ変換処理の詳細]
本実施形態において、前記狭視野角モードの際に前記オリジナル画像データOPに対して施す所定のガンマカーブ変換処理は、以下のような演算を基に予め生成若しくは用意された変換テーブルを用いて行われる。
【0047】
図6には、前記VAタイプの液晶パネルが備えているガンマカーブと、前記所定のガンマカーブ変換演算後のガンマカーブとを示す。なお、図6において、横軸は色の階調i、縦軸は輝度Yを表し、液晶パネルを正面から見て階調iが“0”(黒色)となっている時の輝度Yが“0”、正面から見て階調が“255”(白色)となっている時の輝度Yが“1”となされている。また、この図6において、図中実線で示す曲線は、前記図2同様に当該液晶パネルを正面から見た正面視の場合のガンマカーブ変換演算前のガンマカーブを表し、図中の点線で示す曲線は、前記図2同様に当該液晶パネルを斜めから見た斜め視の場合のガンマカーブ変換演算前のガンマカーブを表している。また、この図6において、図中一点鎖線で示す曲線は、当該液晶パネルを正面から見た正面視の場合のガンマカーブ変換演算後のガンマカーブを表し、図中の二点鎖線で示す曲線は、当該液晶パネルを斜めから見た斜め視の場合のガンマカーブ変換演算後のガンマカーブを表している。
【0048】
ここで、ガンマカーブ変換演算は、下記式(1)?式(4)により表される。但し、下記式中のiは広視野角モード時に入力する色の階調(0?255の範囲)を表し、Ycal(i)は変換演算後のi階調目の輝度を、Ydef(i)は変換演算前のi階調目の液晶パネルの実際の輝度を、CRcalは表示する疑似的コントラスト値(本実施形態ではコントラスト値は例えば10未満とする。)を表している。
【0049】
Ycal(i)=A×Ydef(i)+B ・・・(1)
A=(Ydef(255)-C)/(Ydef(255)-Ydef(0)) ・・・(2)
B={(C-Ydef(0))×Ydef(255)}/(Ydef(255)-Ydef(0))・・・(3)
C=Ydef(255)/CRcal ・・・(4)
そして、前記式(1)?式(4)において、Ycal(i)をi=0?255階調まで求める。
【0050】
その後、下記式(5)となるように、階調jと階調iの変換テーブルを算出する。但し、下記式中、jは狭視野角モード時に入力する色の階調(0?255の範囲)を示し、それら階調jと階調iは図7に示す関係を有する。なお、図7において、横軸は広視野角モードの時の階調をi、横軸は狭視野角モードの時の階調jを示しており、それら階調は0?255の範囲を有する。
【0051】
Ycal(i)≒Ydef(j) ・・・(5)
その後、本実施形態において、前記狭視野角モードの時には、前述のような階調と輝度の対応を表した前記変換テーブルを用い、下記式(6)により、前記オリジナル画像データOPに対してガンマカーブ変換処理が施された、前記ガンマカーブ変換処理後の画像データCPを生成する。
【0052】
j=X(i) ・・・(6)
本実施形態において、前記ガンマカーブ変換処理の前後のガンマカーブを比較すると、図6に示すように、正面視の場合のガンマカーブは、前記ガンマカーブ変換処理前の輝度Ydef(i)に対してガンマカーブ変換処理後の輝度Ycal(i)が高くなされている。また、斜め視の場合のガンマカーブは、低階調側では前記ガンマカーブ変換処理前後における輝度差がさほど変わっていないに対し、高階調側ではガンマカーブ変換処理前の輝度差に対してガンマカーブ変換処理後の輝度差が小さくなされている。すなわち、前述の図2と同様に、前記低階調側の階調ix0から階調ix1の間の輝度差と、高階調側の階調ix2から階調ix3の間の輝度差とを例に挙げた場合、低階調側では、前記ガンマカーブ変換処理前の輝度差ybとガンマカーブ変換処理後の輝度差yb'はさほど変わっていないが、高階調側では、前記ガンマカーブ変換処理前の輝度差ydに対してガンマカーブ変換処理後の輝度差yd'が小さくなっている。」

「【図6】



「【図7】



カ 技術常識の認定
(ア)引用文献3の段落【0048】及び【0049】の記載事項から明らかなように、広視野角モード時に入力する色の階調i(i=0?255)と液晶パネルの輝度Yの間には、所定の関数関係Ycal(i)が成立しており、同様に、段落【0050】及び【0051】の記載事項から明らかなように、狭視野角モード時に入力する色の階調j(j=0?255)と液晶パネルの輝度Yの間には、所定の関数関係Ydef(j)が成立している。
そして、i、j=0?255の範囲で横軸に階調i又はj、縦軸に輝度Ycal(i)又はYdef(j)をとれば、階調と輝度の関係を示す曲線を描くことができる。

(イ)引用文献3の段落【0050】?【0052】及び【図7】に記載されているように、視野角を制御しても輝度が変わらないという条件を満たすための、広視野角モード時に入力する色の階調iと狭視野角モード時に入力する色の階調jとの間の変換式を求めるには、広視野角モードの輝度関数の値と、狭視野角モードの輝度関数の値が等しくなるような階調iと階調jの関係を求めればよい。
すなわち、視野角を制御しても輝度が変わらないという条件を満たすiとjの対応関係を求めることは、段落【0051】の式(5)「Ycal(i)≒Ydef(j)」を満たすi、jの対応関係を求めることであり、この場合のiからjへの変換式が、段落【0052】の式(6)「j=X(i)」であり、式(6)をij平面に描いたものが、【図7】に示された曲線に他ならないことを引用文献3は示している。

(ウ)ここで、広視野角モード時に成立する所定の関数関係Ycal(i)と狭視野角モード時に成立する所定の関数関係Ydef(j)は、一般に異なるものであるから、両者の関数形の違いを強調するため、改めて次のような輝度を表す関数f及びgを定義する。
広視野角モードの輝度関数:f(i) = Ycal(i)
狭視野角モードの輝度関数:g(j) = Ydef(j)
iは広視野角モード時に入力する色の階調値でi=0?255の値をとる。
jは狭視野角モード時に入力する色の階調値でj=0?255の値をとる。

(エ)ここで、上記(ウ)において定義した輝度関数fとgを用いれば、輝度値が同じであるiとjの対応関係を求めることは、f(i)=g(j)が成立するような階調iと階調jの対応関係を求めることになる。ここで、引用文献3の【図6】に示されるように階調と輝度の関係は、通常一対一対応(全単射)であるから、輝度関数f、gのいずれについても、それぞれ逆関数f^(-1)、g^(-1)が存在することは明らかである。
そうすると、f(i)=g(j)が、次の2つの変換式に変形できることは、初等数学の基本事項にすぎず、当業者には自明のことである。
変換式1
j = g^(-1)(f(i)) = (g^(-1)・f)(i)
変換式2
i = f^(-1)(g(j)) = (f^(-1)・g)(j)
ただし、演算記号「・」は、合成関数であることを示す。

(オ)変換式1「j=(g^(-1)・f)(i)」は、広視野角モードから狭視野角モードに切り換える際に、広視野角モード時の階調値iから狭視野角モード時の階調値jを求めるために使用する式であり、求められた階調値jを入力すれば、切り換えの前後で輝度を同じにすることができる。

(カ)変換式2「i=(f^(-1)・g)(j)」は、狭視野角モードから広視野角モードに切り換える際に、狭視野角モード時の階調値jから広視野角モード時の階調値iを求めるために使用する式であり、求められた階調値iを入力すれば、切り換えの前後で輝度を同じにすることができる。

(キ)以上の検討内容をまとめると、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。
[技術常識]
「狭視野角モードと広視野角モードの間で切り換えが可能な液晶パネルの表示において、切り換え前のモードと切り換え前に表示されている画像の階調値から、切り換えの前後で液晶パネルの輝度値が同じになるように、切り換え後に表示される画像の階調値を所定の変換式を用いて求める際の変換式は、広視野角モード時の液晶パネルの輝度の関数f(i)における入力階調iと、狭視野角モード時の液晶パネルの輝度の関数g(j)における入力階調jとの関係に基づいて、定められた次式
「j=(g^(-1)・f)(i)」又は「i=(f^(-1)・g)(j)」であること。
ただし、iは広視野角モード時に入力する色の階調値でi=0?255の値をとり、jは狭視野角モード時に入力する色の階調値でj=0?255の値をとる。また、演算記号「・」は、合成関数であることを示す。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明を対比する。

ア 引用発明の「表示装置30の表示パネル31」は、本件補正発明の「ディスプレイスクリーン」に相当する。
また、引用発明の「表示装置30のプライベート視野モード」は、「照明システム32」において「第1モード」を選択した場合の表示態様であり、「表示装置30のパブリック視野モード」は、「照明システム32」において「第2モード」を選択した場合の表示態様であり、「第1モードの出力光は、第2モードの場合よりも狭い照射角度範囲を有して」いるから、引用発明の「表示装置30のプライベート視野モード」及び「表示装置30のパブリック視野モード」は、それぞれ本件補正発明の「ディスプレイスクリーンが狭視野角になる場合」及び「ディスプレイスクリーンが広視野角になる場合」に相当する。
そうすると、引用発明の「表示装置30」において「プライベート視野モードとパブリック視野モードの間で切り替え」ることは、本件補正発明の「ディスプレイスクリーンを狭視野角と広視野角との間で切り換える」ことに相当する。

イ 引用発明では、「第2光源36からの光」は、「第2導波路40の頂部(又は底部、又はその両方)に組み込まれた散乱層又は拡散層によって、第1照射角度範囲に比べて相対的に広い第2照射角度範囲を有する出力光」となるから、「バックライト」としての「第2光源36」は、本件補正発明の「発散バックライト」に相当する。
また、引用発明では、「第1光源34からの光」は、「相対的に狭い第1照射角度範囲を有する出力光」となるから、「バックライト」としての「第1光源34」は、本件補正発明の「平行バックライト」に相当する。

ウ 上記ア及びイの検討内容を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「ディスプレイスクリーンを狭視野角と広視野角との間で切り換えるために、前記ディスプレイスクリーンが狭視野角になる場合に平行バックライトを利用し、前記ディスプレイスクリーンが広視野角になる場合に発散バックライトを利用するステップ」を含む点で共通する。

エ 引用発明では、「第1光源34から発した光は、第2光源36からの光と同じ色バランス又は輝度を有しておらず、モード切替時における画像の視覚的な外観を維持するために、第1及び/又は第2モードにおいて、表示パネル31に形成された画像のグレーレベルを調整することによって、そのような色の差及び/又は輝度差を補正できるようになっている」から、例えば、「第1光源34が点灯し第2光源36が消灯する第1モード」から「第1光源34が消灯し第2光源36が点灯する第2モード」に切り替える場合に、切り替えの前後での「画像の視覚的な外観を維持するために」、切り替え前の「第1光源34」からの「相対的に狭い第1照射角度範囲を有する出力光」による「表示パネル31」の「輝度」と、切り替え後の「第2光源36」からの「相対的に広い第2照射角度範囲を有する出力光」による「表示パネル31」の「輝度」が「同じ」になるように、切り替え後の「画像のグレーレベルを調整することによって」「輝度差を補正」しているといえる。
ここで、切り替え前の「表示パネル31」の「輝度」は、本件補正発明の「切り換える前のスクリーンの輝度値」に相当し、切り替え後の「表示パネル31」の「輝度」は、本件補正発明の「切り換えられた後の視野角」における「スクリーンの輝度値」に相当する。
また、切り替え後の「画像のグレーレベルを調整することによって」「輝度差を補正」することは、本件補正発明の「切り換えられた後の視野角において、切り換える前のスクリーンの輝度値と同じスクリーンの輝度値を取得することができる階調値を決定する」ことに相当する。

オ 上記エの検討内容を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「切り換えられた後の視野角において、切り換える前のスクリーンの輝度値と同じスクリーンの輝度値を取得することができる階調値を決定するステップ」を含む点で共通し、かつ、「前記ディスプレイスクリーンを狭視野角と広視野角との間で切り換え、且つ前記画像の画像階調を前記決定された階調値に設定するステップ」を含む点で共通する。

カ 引用発明の「プライベート視野モードとパブリック視野モードの間で切り替え可能な表示装置30で使用する照明システム32」を用いて「プライベート視野モードとパブリック視野モードの間」を「切り替え」ることは、本件補正発明の「視野角切換方法」に相当する。

上記ア?カより、本件補正発明と引用発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点1及び相違点2で相違する。

[一致点]
「ディスプレイスクリーンを狭視野角と広視野角との間で切り換えるようにするために、前記ディスプレイスクリーンが狭視野角になる場合に平行バックライトを利用し、前記ディスプレイスクリーンが広視野角になる場合に発散バックライトを利用するステップと、
切り換えられた後の視野角において、切り換える前のスクリーンの輝度値と同じスクリーンの輝度値を取得することができる階調値を決定するステップと、
前記ディスプレイスクリーンを狭視野角と広視野角との間で切り換え、且つ前記画像の画像階調を前記決定された階調値に設定するステップと、
を含む視野角切換方法。」

[相違点1]
本件補正発明は、「ディスプレイスクリーンを狭視野角と広視野角との間で切り換えるように指示するための」「視野角の切換え命令が検出された場合、ディスプレイスクリーンの現在の視野角を決定し、且つ表示されている画像の現在の画像階調値を取得」するのに対して、引用発明は、そのような構成を含むのか明らかではない点。

[相違点2]
「決定」される「階調値」が、本件補正発明では、「前記ディスプレイスクリーンの現在の視野角及び前記画像階調値に基づいて」「予め設定された調整曲線によって」「決定」される「目標階調値」であって、「前記予め設定された調整曲線の各点において、現在の視野角における現在の画像階調値に対応するスクリーンの輝度と切り換えられた後の視野角における目標階調値に対応するスクリーンの輝度とが同じである」ように「決定」される「目標階調値」であり、「前記予め設定された調整曲線」は、「狭視野角における画像階調とスクリーンの輝度との関係を示すための」「第1の予め設定の輝度曲線における画像階調」と、「広視野角における画像階調とスクリーンの輝度との関係を示すための」「第2の予め設定の輝度曲線における画像階調」との「関係に基づいて」「生成」されるものであるのに対して、引用発明は、そのような構成を備えているか明らかではない点。

(4)判断
ア 相違点1について
(ア)表示を狭視野モードと広視野モードとの間で切り替えるように指示するための視野角の切替え命令が検出されたとき、切り替え前の現在のモードが狭視野モード、広視野モードのいずれであるかを判定し、表示されている画像の現在のモードにおける現在の画像階調値を取得することは、周知技術である(前記(2)エ(エ)参照)。

(イ)ここで、引用発明は、「表示装置30」の「プライベート視野モード」と「パブリック視野モード」の「2つのモードのいずれかで選択的に動作可能」であるから、引用発明に上記周知技術を適用して、表示装置30のプライベート視野モードとパブリック視野モードとの間で切り替えるように指示するための視野角の切替え命令が検出された場合、表示装置30の現在のモードがプライベート視野モード、パブリック視野モードのいずれであるかを決定し、且つ表示されている画像の現在のモードにおける画像階調値を取得するようにすることにより、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
(ア)狭視野角モードと広視野角モードの間で切り換えが可能な液晶パネルの表示において、切り換え前のモードと切り換え前に表示されている画像の階調値から、切り換えの前後で液晶パネルの輝度値が同じになるように、切り換え後に表示される画像の階調値を所定の変換式を用いて求める際の変換式が、広視野角モード時の液晶パネルの輝度の関数f(i)における入力階調iと、狭視野角モード時の液晶パネルの輝度の関数g(j)における入力階調jとの関係に基づいて、定められた式j=(g^(-1)・f)(i)又はi=(f^(-1)・g)(j)であることは、当業者にとって技術常識であったと認められる(前記(2)カ(キ)参照)。
ただし、iは広視野角モード時に入力する色の階調値でi=0?255の値をとり、jは狭視野角モード時に入力する色の階調値でj=0?255の値をとる。また、演算記号「・」は合成関数であることを示す。

(イ)ここで、上記「狭視野角モード時の液晶パネルの輝度の関数g(j)」は、狭視野角モード時における画像階調jと液晶パネルの輝度の関係を示すものであり、横軸に階調jを連続変数としてとり、縦軸に輝度Yをとって関数Y=g(j)のグラフを描けば曲線となるから、本件補正発明の「狭視野角における画像階調とスクリーンの輝度との関係を示すための」「第1の予め設定の輝度曲線」に対応する。

(ウ)同様に、上記「広視野角モード時の液晶パネルの輝度の関数f(i)」は、広視野角モード時における画像階調iと液晶パネルの輝度の関係を示すものであり、横軸に階調iを連続変数としてとり、縦軸に輝度Yをとって関数Y=f(i)のグラフを描けば曲線となるから、本件補正発明の「広視野角における画像階調とスクリーンの輝度との関係を示すための」「第2の予め設定の輝度曲線」に対応する。

(エ)また、「広視野角モード時の液晶パネルの輝度の関数f(i)における入力階調iと、狭視野角モード時の液晶パネルの輝度の関数g(j)における入力階調jとの関係に基づいて、定められた」「変換式」「j=(g^(-1)・f)(i)又はi=(f^(-1)・g)(j)」は、ij平面又はji平面に連続関数としてグラフを描けば曲線となるから、本件補正発明の「狭視野角における画像階調とスクリーンの輝度との関係を示すための」「第1の予め設定の輝度曲線における画像階調」と、「広視野角における画像階調とスクリーンの輝度との関係を示すための」「第2の予め設定の輝度曲線における画像階調」との「関係に基づいて」「生成」される「前記予め設定された調整曲線」に対応する。

(オ)「切り換え前のモードと切り換え前に表示されている画像の階調値から、切り換えの前後で液晶パネルの輝度値が同じになるように」、「所定の変換式を用いて求め」られた「切り換え後に表示される画像の階調値」は、本件補正発明の「前記ディスプレイスクリーンの現在の視野角及び前記画像階調値に基づいて」「予め設定された調整曲線によって」「決定」される「目標階調値」であって、「前記予め設定された調整曲線の各点において、現在の視野角における現在の画像階調値に対応するスクリーンの輝度と切り換えられた後の視野角における目標階調値に対応するスクリーンの輝度とが同じである」ように「決定」される「目標階調値」に対応する。

(カ)そして、引用発明では、「モード切替時における画像の視覚的な外観を維持するために、第1及び/又は第2モードにおいて、表示パネル31に形成された画像のグレーレベルを調整することによって、そのような色の差及び/又は輝度差を補正できるようになっている」から(下線は当審が付与した。)、上記技術常識を参照すれば、引用発明においても、表示パネル31の現在のモード(プライベート視野モード又はパブリック視野モード)及び画像のグレーレベルに基づいて、モードの切り換えの前後で表示パネル31の輝度が同じになるように、本件補正発明の「予め設定された調整曲線」に相当する変換式を用いて、本件補正発明の「目標階調値」に相当するモード切り換え後のグレーレベルを決定しているといえる。
そうすると、上記相違点2の点は、当業者に自明な数式の変形を文章で述べたものにすぎず、実質的な相違点ではない。

ウ 本件補正発明の奏する効果について
本件補正発明の奏する効果についても、引用発明、周知技術及び技術常識から当業者が予測可能な範囲内のものにすぎず、格別顕著なものであるということはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)請求人の主張について
ア 請求人は、審判請求書において、以下の主張をしている。
「本願請求項1に係る発明と引用文献1との差異は、少なくとも「第1の予め設定の輝度曲線における画像階調と第2の予め設定の輝度曲線における画像階調との関係に基づいて、前記予め設定された調整曲線を生成し、前記第1の予め設定の輝度曲線は、前記狭視野角における画像階調とスクリーンの輝度との関係を示すためのものであり、前記第2の予め設定の輝度曲線は、前記広視野角における画像階調とスクリーンの輝度との関係を示すためのものであるステップ」及び「前記ディスプレイスクリーンの現在の視野角及び前記画像階調値に基づき、予め設定された調整曲線によって前記目標階調値を決定し、前記予め設定された調整曲線の各点において、現在の視野角における現在の画像階調値に対応するスクリーンの輝度と切り換えられた後の視野角における目標階調値に対応するスクリーンの輝度とが同じであるステップ」であります。
本願の請求項1の上記の技術的特徴によると、現在の視野角(例えば、狭視野角)における現在の画像階調値に対応するスクリーンの輝度と、切り換えられた後の視野角(例えば、広視野角)における目標階調値に対応するスクリーンの輝度とが同じであります。すなわち、現在の視野角と切り換えられた後の視野角のスクリーンの輝度が同じであります。
これに対して、引用文献2の明細書の段落[0013]、[0038]の内容によれば、例えば、ユーザが広視野モード(本願の広視野角に対応します。)から狭視野モード(本願の狭視野角に対応します。)へ切り替える場合、狭視野モード時におけるバックライトの輝度を広視野モード時におけるバックライトの輝度よりも低下させることによって、狭視野モードを狭小化させたり、狭視野モード時における画像データを広視野モード時よりも高輝度化させたりします。これからわかるように、引用文献2では、現在のモードと切替後のモードのバックライトの輝度が異なります。
引用文献1では、第1及び/又は第2のモードで表示パネル上に形成された画像を調整して、モードを切り替えるときに、視覚的な画像の色バランス及び輝度などの視覚的外観を維持するように動作可能であることが記載されていますが、上記のように、引用文献2では、現在のモードと切替後のモードのバックライトの輝度が異なるため、引用文献2を引用文献1に組合わせる示唆が与えられていません。」

イ 上記主張について検討すると、請求人が主張する「本願請求項1に係る発明と引用文献1との差異」は、「(3)対比」において認定した相違点2に対応するものであるところ、「(4)判断」のイにおいて説示したように、上記相違点2の点は、当業者に自明な数式の変形を文章で述べたものにすぎず実質的な相違点ではないから、請求人の上記主張は格別のものではなく、採用することはできない。

(6)小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反する。
したがって、本件補正は、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2において説示したとおり却下されたので、本願の請求項1?11に係る発明は、令和2年1月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次に特定されるとおりである。

「【請求項1】
視野角の切換え命令が検出された場合、ディスプレイスクリーンの現在の視野角を決定し、且つ表示されている画像の現在の画像階調値を取得し、前記視野角の切換え命令は、前記ディスプレイスクリーンを狭視野角と広視野角との間で切り換えるように指示するためのものであり、前記ディスプレイスクリーンが狭視野角になる場合に平行バックライトを利用し、前記ディスプレイスクリーンが広視野角になる場合に発散バックライトを利用するステップと、
前記ディスプレイスクリーンの現在の視野角及び前記画像階調値に基づいて、目標階調値を決定し、前記目標階調値は、切り換えられた後の視野角において、切り換える前のスクリーンの輝度値と同じスクリーンの輝度値を取得することができる階調値であるステップと、
前記ディスプレイスクリーンを狭視野角と広視野角との間で切り換え、且つ前記画像の画像階調を前記目標階調値に設定するステップと、及び、
第1の予め設定の輝度曲線及び第2の予め設定の輝度曲線に基づいて、前記予め設定された調整曲線を生成し、前記第1の予め設定の輝度曲線は、前記狭視野角における画像階調とスクリーンの輝度との関係を示すためのものであり、前記第2の予め設定の輝度曲線は、前記広視野角における画像階調とスクリーンの輝度との関係を示すためのものであるステップと、を含み、
前記ディスプレイスクリーンの現在の視野角及び前記画像階調値に基づいて、目標階調値を決定するステップは、
前記ディスプレイスクリーンの現在の視野角及び前記画像階調値に基づき、予め設定された調整曲線によって前記目標階調値を決定し、前記予め設定された調整曲線の各点において、現在の視野角における現在の画像階調値に対応するスクリーンの輝度と切り換えられた後の視野角における目標階調値に対応するスクリーンの輝度とが同じであるステップを含む
ことを特徴とする視野角切換方法。」

2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、次のとおりである。

本願発明は、下記の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1:米国特許出願公開第2009/0067156号明細書
引用文献2:特開2008-281768号公報
(いずれも再掲)

3 引用文献に記載された事項
上記引用文献1には、[引用発明]において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
また、上記引用文献2には、[引用文献2記載事項]において認定したとおりの技術事項が記載されていると認められ、[周知技術]において認定したとおりの周知技術が認められる。
さらに、特開2013-156594号公報(引用文献3)の記載事項から、[技術常識]において認定したとおりの技術常識が認められる。

4 対比・判断
本願発明は、「予め設定された調整曲線」の「生成」に係る事項について、本件補正発明では「第1の予め設定の輝度曲線における画像階調と第2の予め設定の輝度曲線における画像階調との関係に基づいて」「生成」するとしたものを、「第1の予め設定の輝度曲線及び第2の予め設定の輝度曲線に基づいて」「生成」するとしたものであり、その他の構成は、本件補正発明の構成と同じである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、さらに他の構成を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の2において説示したとおり、引用発明、周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-03-31 
結審通知日 2021-04-06 
審決日 2021-04-19 
出願番号 特願2017-554499(P2017-554499)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
P 1 8・ 575- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西島 篤宏後藤 亮治  
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 濱野 隆
岸 智史
発明の名称 視野角切換方法、装置、プログラム及び記録媒体  
代理人 家入 健  

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