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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N |
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管理番号 | 1377668 |
審判番号 | 不服2020-10602 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-07-30 |
確定日 | 2021-09-08 |
事件の表示 | 特願2018- 80817「多重分析物分析のための系と方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月16日出願公開、特開2018-128464〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年(平成25年)10月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年11月2日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2015-540119号の一部を平成30年4月19日に新たな特許出願としたものであって、平成30年4月26に手続補正書が提出され、平成31年3月7日付けで拒絶理由が通知され、令和元年6月19日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月15日付けで拒絶理由が通知され、令和2年1月9日に意見書が提出されたが、同年3月31日付けで拒絶査定(原査定)がされたところ、同年7月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。 第2 令和2年7月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年7月30日にされた手続補正(以下「本件補正」ということがある。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所を示す。) 「 【請求項1】 試料中の複数の分析物を分析する方法であって、 検査素子を前記試料と接触させること、 前記検査素子が試料中の第1分析物及び第2分析物をそれぞれ電気化学的に分析するために構成され、前記第1分析物がケトンであり、且つ、前記第2分析物がグルコースであり、 前記検査素子と相互作用するように構成された検査計測器によって前記試料中の第1分析物の濃度及び第2分析物の濃度を決定し、 前記第1分析物の濃度が0.6mMの所定の値より上であるという決定に応答して前記第1分析物の濃度に関する表示を提供し、前記第2分析物の濃度に関する表示を自動的に提供すること、 を含み、 前記第1分析物の濃度に関する表示を提供するステップが、前記第1分析物の濃度の表示、警告の提供、前記所定の値よりも上である前記第1分析物の濃度に応答してとられる行動のリストの提供、並びに前記検査素子の使用者、医療提供者、介護者、及び親又は保護者のうちの少なくとも1人へのメッセージの伝達、又はモバイル機器又はコンピューターへのメッセージの伝送、のうちの少なくとも2つを含む、方法。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の、令和元年6月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「 【請求項1】 試料中の複数の分析物を分析する方法であって、 検査素子を前記試料と接触させること、 前記検査素子が試料中の第1分析物及び第2分析物をそれぞれ電気化学的に分析するために構成され、前記第1分析物がケトンであり、且つ、前記第2分析物がグルコースであり、 前記検査素子と相互作用するように構成された検査計測器によって前記試料中の第1分析物の濃度及び第2分析物の濃度を決定し、 前記第1分析物の濃度が0.6mMの所定の値より上であるという決定に応答して前記第1分析物の濃度に関する表示を提供し、前記第2分析物の濃度に関する表示を自動的に提供すること、 を含む、方法。」 2 補正の適否 本件補正のうち、請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1分析物の濃度に関する表示を提供」することの内容について、上記1(1)の下線部のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である中国実用新案第201438187号明細書(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審において付加した。和訳は当審による。)。 (引1-ア)「 」 (和訳:技術分野 [0001] 本発明は、医療機器の分野に関するもので、特に糖尿病の検出・分析装置に関するものである。 背景技術 [0002] 糖尿病は、糖分、脂質、タンパク質の代謝障害を伴う慢性疾患で、主に人間の血液中の糖分濃度が高くなることにより、過度の飲酒、過度の摂食、過度の排尿、衰弱などの症状が現れる。現在、糖尿病は完全に治すことはできず、一度発症すると長期的な監視と治療管理が必要で、糖尿病の治療と管理が不十分だと、人間の循環系と神経系の病変を引き起こし、さらに糖尿病を適切に治療・コントロールしないと、循環器系、神経系などの病態が進み、高血圧、心臓病、腎臓病、脳卒中、失明、足潰瘍などの合併症を引き起こし、糖尿病患者の仕事や生活に深刻な影響を及ぼす。 [0003] 現在、糖尿病患者の治療は、自宅でのセルフモニタリングと治療管理が中心となっている。患者のセルフモニタリングでは、主に血糖値計、血圧計、ケトン体計、尿中マイクロアルブミン検査カードなどの迅速な検出製品を使用して、各ポインターの状態を検査し、結果が異常と思われる場合は、適時に病院に行くか、原因を見つけて治療計画を調整して状態をコントロールし、健康状態の悪化を避ける必要がある。 [0004] 糖尿病患者のための迅速なテスト製品は、大きい利便性を提供するために、現在より多くの患者は、迅速なテスト製品の独自の購入を通じて、自宅で自分自身をテストすることができ、実験室でのテストのために病院への頻繁な移動の必要性を排除するが、通常、患者は専門の医療従事者ではないので、これらの迅速なテスト製品の使用において、テスト結果の代表的意味が知られているのか、しばしば疑問が生じる。例えば、糖尿病の患者は、血糖値測定器、ケトン体測定器、尿中マイクロアルブミン検査カードなどの迅速検査製品を使って自宅で自己検査をすることが多いが、検査が終了して検査結果が表示されても、ほとんどの患者は結果を見た後に、正常なのか異常なのか、いくつかの結果の意味がわからない。結果の上昇は何を意味するのでしょうか?低下はどういうことですか?異常があった場合、どうすればいいのでしょうか?多くの糖尿病患者はこれらのことをよく知らないので、場合によっては多くの専門的なデータを参考にしたり、専門の医師に相談したりする必要があるが、これは患者が素早く病状を理解し、タイムリーに対策を講じるためには不便をもたらすし、遅れると危険な緊急事態が発生する可能性もある。例えば、糖尿病患者が血糖値2.9mmol/L以下を検出して低血糖症状を呈した場合、低血糖に対する緊急措置を直ちに講じなければ、患者の身体に重大な危害や生命の危機をもたらす可能性が高い。 発明の内容 [0005] 本実用新案は、糖尿病検出・分析装置を提供するものであり、前記装置は、以下を含む。血糖値及び/又はケトン体検査を行い、検査結果を得るための検出ユニットと、ユーザが検査結果を入力するための入力ユニットと、前記検出ユニットに接続され、前記検出ユニットで得られた検査結果を分類して記憶するとともに、糖尿病に関連する様々な診断結果参照情報と前記診断結果に対応する推奨電子書籍を予め記憶しておくためのものであって、それぞれの診断結果参参照情報は、異なる値領域の検査結果及びそれに対応した診断結果を含む、記憶ユニットと、前記記憶ユニットと入力ユニットに接続され、前記テスト結果を記憶した後、又はユーザーが入力したテスト結果を受信した後、前記テスト結果に対応する診断結果参照情報に応じて、前記診断結果と前記診断結果に対応する推奨電子書籍を取得する分析ユニットと、前記分析ユニットに接続され、前記分析ユニットで得られた診断結果や推奨電子書籍を表示するための表示ユニット。 [0006] 実用新案で提供される検査装置は、既存の迅速検査製品に専門的な診断治療推論システムを追加したもので、糖尿病関連の検査結果を分析・計算して、現在の状態と異常状態の対策を患者に知らせることができ、患者が現在の状態と緊急対策を科学的に迅速かつ簡単に理解するのに大いに役立ち、緊急事態による被害を軽減することができるものである。) (引1-イ)「 」 (和訳:具体的な実施形態 [0015] 以下、本発明の実施形態における技術的解決策を、本発明の実施形態における添付図面と併せて明確かつ完全に説明するが、説明された実施形態は、本発明の実施形態の一部にすぎず、その全てではないことは明らかである。本発明の実施形態に基づいて、当業者が創造的な労力をかけずに得た他の全ての実施形態は、本発明の保護範囲に入る。 [0016] 図1に示すように、本実用新案は、糖尿病検出・分析装置を提供するものであり、当該装置は、検出ユニット101、記憶ユニット102、分析ユニット103、表示ユニット104及び入力ユニット105から構成されている。検出ユニット101は、前記記憶ユニット102に接続され、血糖値及び/又はケトン体検査を行い、検査結果を得る。入力ユニット105は、前記分析ユニット103に接続され、検査結果をユーザが入力する。記憶ユニット102は、前記検査ユニット101に接続され、前記検査ユニット101で得られた検査結果を分類して記憶するとともに、様々な糖尿病関連の診断結果参照情報、及び様々な診断結果に対応する推奨電子書籍を予め記憶しており、前記診断結果参照情報の各々は、異なる範囲の値を持つ検査結果と、これらに対応する診断結果を含んでいる。分析ユニット103は、前記記憶ユニット102と入力ユニット105に接続され、前記検査結果を記憶した後、又はユーザからの検査結果の入力を受けた後、前記検査結果に対応する診断結果参照情報に従って、前記診断結果と前記診断結果に対応する推奨電子書籍を取得する。表示ユニット104は、前記分析ユニット103に接続され、前記分析ユニット103で得られた診断結果と推奨電子書籍を表示する。 [0017] 図2に示すように、本実用新案の別の実施形態における検出ユニット101は、血糖値検出モジュール1011とケトン体検出モジュール1012とをさらに含んでいてもよい。血中ケトン体のモニタリングは、通常、糖尿病患者において、ストレスが生じた場合、他の併発疾患が発生した場合、又は血糖値が16.7mmol/L(300mg/dl)を超えた場合に行われるべきである。 [0018] 血糖値検出モジュール1011は、血糖値テストストリップの表面に固定化されたグルコースオキシダーゼ(GOD)又はグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)と血液中のグルコースが反応することを利用して動作する。この反応には電子伝達又はH^(+)伝達が伴い、電子媒介剤又はH^(+)基質を介してテストストリップの表面に反応信号が伝達される。血糖値検出モジュール1011は、テストストリップに一定の動作電圧を印加することで、酵素反応に参加した後の電子媒介剤やH^(+)基質を酸化させ、グルコース濃度に比例した大きさの酸化電流を発生させる。血糖値検出モジュール1011は、酸化電流の大きさを記録し、血糖値の濃度値(血糖値検査結果)に変換して記憶ユニット102に保存する。 [0019] 血液中のケトン体には、D-3-ヒドロキシ酪酸(β-ヒドロキシ酪酸)、アセト酢酸、アセトンがあり、それぞれ正常な血液中の78%、20%、2%を占めている。血中のD-3-ヒドロキシ酪酸を検出することで、ケトアシドーシスの程度をタイムリーに知ることができる。ケトン体検出モジュール1012は、血液中のD-3-ヒドロキシ酪酸と、テストストリップの表面に固定されたD-3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼが触媒する補酵素NADとの反応を利用して、D-3-ヒドロキシ酪酸を酸化してアセト酢酸を生成するとともに、NADをNADHに還元する仕組みになっている。ケトン体検出モジュール1012は、テストストリップに一定の動作電圧を印加してNADHをNADに酸化し、酸化電流を発生させる。酸化電流の大きさはD-3-ヒドロキシ酪酸の濃度に比例する。ケトン体検出モジュール1012は、酸化電流の大きさを記録し、ケトン体濃度の値(ケトン体検査結果)に変換して記憶ユニット102に保存する。 [0020] 図3に示すように、前記記憶ユニット102は更に以下を備えている。取得した血糖値検査結果を時間でタグ付けし、異なる時間帯ごとに分類して記憶するための血糖値検査結果記憶モジュール1021。取得したケトン体検査結果を時間でタグ付けして記憶するためのケトン体検査結果記憶モジュール1022。糖尿病に関連する各種の診断結果参照情報と、様々な診断結果に対応した推奨電子書籍を予め記憶するための診断データ記憶モジュール1023であって、前記診断結果参照情報は、それぞれが異なる範囲の値を持つ検査結果と、これらの検査結果に対応する診断結果を含む。複数の糖尿病関連診断結果参照は、血糖値診断結果参照、ケトン体診断結果参照、血圧診断結果参照、腎臓の健康診断結果参照、糖化ヘモグロビン診断結果参照、体格診断結果参照、トリグリセリド診断結果参照、血中クレアチニン診断結果参照を含んでもよい。なお、上記の診断結果参考情報は本実用新案を限定するものではなく、実用上の必要性に応じて他の診断結果参考情報を追加したり、上記参考情報を何らかの形で組み合わせて使用することは、本実用新案の保護範囲に含まれるものとする。 [0021] 血糖値検出モジュール1011が血糖値検査結果を取得した後、記憶ユニット102の血糖値検査結果記憶モジュール1021は、毎回取得した当該血糖値検査結果を、異なる時間帯に応じて分類して記憶する。分類は、ユーザーが測定した時間に応じて自動的に行われ、自動分類が実際のものと一致しない場合は、ユーザーが手動で修正することができる。自動分類は、以下の時間範囲に応じて自動的に決定される。 [0022] 1、測定時間(6:00?8:00)は、自動的に「朝食前血糖」に分類される。 [0023] 2、測定時間(8:00-10:00)の測定時間は、自動的に「朝食後血糖」に分類される。 [0024] 3、測定時間(10:00-13:00)は、自動的に「昼食前血糖」に分類される。 [0025] 4、測定時間(13:00-15:00)は、自動的に「昼食後血糖」に分類される。 [0026] 5、測定時間(17:00-19:00)は、自動的に「夕食前血糖」に分類される。 [0027] 6、測定時間(19:00-21:00)は、自動的に「夕食後血糖」に分類される。 [0028] 7、測定時間(21:00-23:00)は、自動的に「就寝時血糖」に分類される。 [0029] 8、測定時間(2:00-3:00)は、自動的に「午前2-3時血糖」に分類される。 [0030] 9、その他の時間は自動的に「ランダム血糖」に分類される。 [0031] 血糖値の検査結果を分類した後、血糖値の分類と検査時間に応じて自動的に保存される。 [0032] 上記分類のうち、全ての食前血糖と午前2-3時血糖及びランダム血糖は、全て条件の空腹時血糖で分析し、全ての食後血糖は、食後血糖で分析する。 [0033] また、記憶ユニット102の診断データ記憶モジュール1023には、血糖値診断結果参考情報(すなわち、異なる時間帯の血糖値検査結果の範囲と、それに対応する診断結果であり、上記参考情報は「中国糖尿病予防管理指針」に基づいて設定されている)が含まれている。 [0034] 空腹時血糖 [0035] 1、血糖値の範囲:4.4-6.1(mmol/L)、診断結果:血糖値は正常、理想的な状態にコントロールされている。 [0036] 2、血糖値の範囲:6.2-7.0(mmol/L)、診断結果:良好な血糖値コントロール。 [0037] 3、血糖値の範囲:7.0(mmol/L)より大又はHI、診断結果:血糖値コントロール不良、医師に相談。 [0038] 4、血糖値の範囲:3.9-4.3(mmol/L)、診断結果:良好な血糖値コントロール。 [0039] 5、血糖値の範囲:2.9-3.8(mmol/L)、診断結果:低血糖症の可能性あり。 [0040] 6、血糖値の範囲:2.9(mmol/L)未満又はLO、診断結果:低血糖症、医師に相談。 [0041] 食後血糖 [0042] 1、血糖値の範囲:4.4-8.0(mmol/L)、診断結果:血糖値は正常、理想的な状態にコントロールされている。 [0043] 2、血糖値の範囲:8.1-10.0(mmol/L)、診断結果:良好な血糖値コントロール。 [0044] 3、血糖値の範囲:10.0(mmol/L)より大又はHI、診断結果:血糖値コントロール不良、医師に相談。 [0045] 4、血糖値の範囲:3.9-4.3(mmol/L)、診断結果:良好な血糖値コントロール。 [0046] 5、血糖値の範囲:2.9-3.8(mmol/L)、診断結果:低血糖症の可能性あり。 [0047] 6、血糖値の範囲:2.9(mmol/L)未満又はLO、診断結果:低血糖症、医師に相談。 [0048] 記憶ユニット102の診断データ記憶モジュール1023は、異なる血糖値診断結果に対応する電子書籍(電子書籍と診断結果の対応関係を含む)を保持しており、例えば、診断結果が「血糖値コントロール不良、医師に相談」の場合、対応する推奨電子書籍の目録は、「糖尿病コントロール目標」、「食事療法の目標と原則」、「運動療法の原則」、「経口血糖降下剤療法の原則」、「インスリン療法」である。 [0049] 記憶ユニット102のケトン体検査結果記憶モジュール1022は、取得ごとの前記ケトン体検査結果を記憶しており、また、記憶ユニット102の診断データ記憶モジュール1023は、様々な濃度範囲に対応する診断結果と、当該診断結果に対応する推奨電子書籍を含むケトン体診断結果参照情報を予め記憶している。 [0050] 事前に保存されているケトン体検査結果の範囲は、「中国糖尿病管理ガイドライン」に基づいて、以下のように定めた。 [0051] ケトン体検査結果:0.6未満 診断結果:正常なケトン体の値。 [0052] ケトン体検査結果:0.6-1.5 診断結果:ケトーシス(疑いあり)。 [0053] ケトン体検査結果:1.5より大きい 診断結果:ケトアシドーシス [0054] 記憶ユニット102の診断データ記憶モジュール1023は、異なるケトン体診断結果に対応する電子書籍を保持している。) (引1-ウ)「 」 (和訳:[0087] 図4に示すように、本発明の別の実施形態では、分析ユニット103は更に以下を含む。 [0088] 前記血糖値検査結果を格納した後、前記血糖値検査結果とマークされた時間に基づいて、前記血糖値診断結果参照情報を検索して、診断結果と前記診断結果に対応する推奨電子書籍を導出する血糖値分析モジュール1031。 [0089] 前記ケトン体検査結果を格納した後に、前記ケトン体検査結果に基づいて、前記ケトン体診断結果参照情報を検索して、診断結果と前記診断結果に対応する推奨電子書籍を導出するケトン体分析モジュール1032。 [0090] ユーザー入力された検査データを受信した後、対応する診断結果参照情報に従って、診断結果と当該診断結果に対応する推奨電子書籍を検索するためのユーザー入力分析モジュール1033。 [0091] 記憶ユニット102の診断データ記憶モジュール1023内の各種診断結果参照情報は、分析ユニット103の分析基準として用いられる。例えば、検査ユニット101の血糖値検査モジュール1011が、時刻が20:00で血糖値が11(mmol/L)の血糖値検査結果を取得すると、記憶ユニット102の血糖値検査結果記憶モジュール1021は、食後血糖値に分類して当該血糖値検査結果を保存する。分析ユニット103の血糖値分析モジュール1031は、予め記憶された血糖値の参照情報により、血糖値検査結果が食後血糖値範囲の項目3に属し、対応する診断結果が「血糖コントロール不良、医師に相談」であると判断し、診断結果を取得した後、診断結果に対応する推薦電子書籍を取得し、表示ユニット104を制御して、診断結果と上記推奨電子書籍の目録を表示する。ユーザーは、入力ユニット105によって読みたい電子書籍を選択し、表示された電子書籍のページをめくることができる。 [0092] 分析ユニット103のケトン体分析モジュール1032は、記憶ユニット102のケトン体検査結果記憶モジュール1022に前記ケトン体検査結果を記憶した後、予め記憶されたケトン体の参照情報に基づいて、前記予め記憶されたケトン体検査結果に対応する診断結果と、前記診断結果に対応する推奨電子書籍を得る。ユーザーは、入力ユニット105によって、読みたい電子書籍の目録を選択することができ、前記分析ユニット103は、電子書籍を開き、表示ユニット104を制御して、ユーザーが参考に読むための関連コンテンツを表示する。 [0093] 分析ユニット103のユーザー入力分析モジュール1033は、ユーザーが入力ユニット105を介して入力した検査結果を受信した後、当該検査結果に対応する診断結果の参照情報に応じて、当該診断結果に対応する診断結果及び推奨電子書籍を取得する。分析ユニット103は、電子書籍を開き、表示ユニット104を制御して、ユーザーが参考に読むための関連コンテンツを表示する。ユーザーが入力する検査結果は、血圧検査結果、腎臓の健康状態検査結果、糖化ヘモグロビン検査結果、体格検査結果、トリグリセリド検査結果、又は血中クレアチニン検査結果などが考えられる。なお、ユーザー入力分析モジュール1033は、表示ユニット104が表示するどの検査結果を入力するかをユーザーが選択するインターフェースを提供し、入力ユニット105に入力する検査結果の種類をユーザーが選択してもよく、ユーザー入力分析モジュール1033は、ユーザーが入力した検査結果の種類に応じて、診断結果と当該診断結果に対応する推奨電子書籍を取得する。) (引1-エ)「 」 (和訳:[0157] 本実用新案の検出装置は、既存の迅速な検出製品をベースに、専門的な診断・治療の推論システムを追加したもので、糖尿病関連の検査結果を分析・計算し、現在の状態と異常状態への対策を患者に知らせることができ、患者が現在の状態と緊急時の対策を迅速かつ簡単に科学的に理解し、緊急時の被害を軽減するのに大いに役立つ。) (引1-オ)図1 「 」 和訳 (引1-カ)図2 「 」 和訳 (引1-キ)図3 「 」 和訳 (引1-ク)図4 「 」 和訳 イ 引用文献1に記載された発明 (ア)引用文献1は「糖尿病検出・分析装置」に関するものであるが、その記載から糖尿病検出・分析装置を用いた分析方法を把握することができる。 (イ)上記(引1-イ)の段落[0019]の記載によれば、ケトン体検査結果は血中のケトン体濃度の値であると認められるところ、段落[0051]ないし[0053]に記載されたケトン体検査結果の数値には、単位が付されていないが、本願優先日当時の技術常識から見て、当該数値の単位はmmol/Lであるといえる。 (ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、上記(引1-ア)ないし(引1-ク)の記載から、引用文献1には、 「 検出ユニット101、記憶ユニット102、分析ユニット103、表示ユニット104及び入力ユニット105から構成されている糖尿病検出・分析装置を用いた分析方法であって、 検出ユニット101は、血糖値検出モジュール1011とケトン体検出モジュール1012とをさらに含んでおり、 血糖値検出モジュール1011は、血糖値テストストリップの表面に固定化されたグルコースオキシダーゼ(GOD)又はグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)と血液中のグルコースが反応することを利用して動作し、テストストリップに一定の動作電圧を印加することで、酵素反応に参加した後の電子媒介剤やH^(+)基質を酸化させ、グルコース濃度に比例した大きさの酸化電流を発生させ、酸化電流の大きさを記録し、血糖値の濃度値(血糖値検査結果)に変換して記憶ユニット102に保存し、 ケトン体検出モジュール1012は、血液中のD-3-ヒドロキシ酪酸と、テストストリップの表面に固定されたD-3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼが触媒する補酵素NADとの反応を利用して、D-3-ヒドロキシ酪酸を酸化してアセト酢酸を生成するとともに、NADをNADHに還元する仕組みになっており、テストストリップに一定の動作電圧を印加してNADHをNADに酸化し、酸化電流を発生させ、酸化電流の大きさはD-3-ヒドロキシ酪酸の濃度に比例し、酸化電流の大きさを記録し、ケトン体濃度の値(ケトン体検査結果)に変換して記憶ユニット102に保存し、 記憶ユニット102は、糖尿病に関連する各種の診断結果参照情報と、様々な診断結果に対応した推奨電子書籍を予め記憶するための診断データ記憶モジュール1023を備えており、 記憶ユニット102の診断データ記憶モジュール1023は、異なる時間帯の血糖値検査結果の範囲と、それに対応する診断結果である血糖値診断結果参考情報、異なる血糖値診断結果に対応する電子書籍、ケトン体検査結果の様々な濃度範囲に対応する診断結果と、当該診断結果に対応する推奨電子書籍を含むケトン体診断結果参照情報を予め記憶しており、 事前に保存されているケトン体検査結果の範囲は、 ケトン体検査結果:0.6 mmol/L未満 診断結果:正常なケトン体の値 ケトン体検査結果:0.6-1.5 mmol/L 診断結果:ケトーシス(疑いあり) ケトン体検査結果:1.5 mmol/Lより大きい 診断結果:ケトアシドーシス であり、 分析ユニット103は、前記血糖値検査結果を格納した後、前記血糖値検査結果とマークされた時間に基づいて、前記血糖値診断結果参照情報を検索して、診断結果と前記診断結果に対応する推奨電子書籍を導出する血糖値分析モジュール1031と、前記ケトン体検査結果を格納した後に、前記ケトン体検査結果に基づいて、前記ケトン体診断結果参照情報を検索して、診断結果と前記診断結果に対応する推奨電子書籍を導出するケトン体分析モジュール1032を含み、 記憶ユニット102の診断データ記憶モジュール1023内の各種診断結果参照情報は、分析ユニット103の分析基準として用いられ、 例えば、検査ユニット101の血糖値検査モジュール1011が、時刻が20:00で血糖値が11(mmol/L)の血糖値検査結果を取得すると、記憶ユニット102の血糖値検査結果記憶モジュール1021は、食後血糖値に分類して当該血糖値検査結果を保存し、分析ユニット103の血糖値分析モジュール1031は、予め記憶された血糖値の参照情報により、血糖値検査結果が食後血糖値範囲の項目3に属し、対応する診断結果が「血糖コントロール不良、医師に相談」であると判断し、診断結果を取得した後、診断結果に対応する推薦電子書籍を取得し、表示ユニット104を制御して、診断結果と上記推奨電子書籍の目録を表示し、ユーザーは、入力ユニット105によって読みたい電子書籍を選択し、表示された電子書籍のページをめくることができ、 分析ユニット103のケトン体分析モジュール1032は、記憶ユニット102のケトン体検査結果記憶モジュール1022に前記ケトン体検査結果を記憶した後、予め記憶されたケトン体の参照情報に基づいて、前記予め記憶されたケトン体検査結果に対応する診断結果と、前記診断結果に対応する推奨電子書籍を得、ユーザーは、入力ユニット105によって、読みたい電子書籍の目録を選択することができ、前記分析ユニット103は、電子書籍を開き、表示ユニット104を制御して、ユーザーが参考に読むための関連コンテンツを表示する、 方法。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (3)本件補正発明と引用発明との対比 ア (ア)引用発明の「血液」は、本件補正発明の「試料」に相当する。 (イ)引用発明の「D-3-ヒドロキシ酪酸」及び「グルコース」は、それぞれ本件補正発明の「ケトン」である「第1分析物」及び「グルコース」である「第2分析物」に相当し、併せて本件補正発明の「複数の分析物」に相当する。 (ウ)引用発明の「濃度」を求めることは、本件補正発明の「分析する」ことに含まれる。 (エ)上記(ア)ないし(ウ)を踏まえると、引用発明の「糖尿病検出・分析装置を用いた分析方法であって、」「血液中の」「グルコース濃度に比例した大きさの酸化電流」「の大きさを記録し、血糖値の濃度値(血糖値検査結果)に変換して記憶ユニット102に保存し」、「血液中のD-3-ヒドロキシ酪酸」「の濃度に比例し」た「酸化電流の大きさを記録し、ケトン体濃度の値(ケトン体検査結果)に変換して記憶ユニット102に保存」する「方法」は、本件補正発明の「試料中の複数の分析物を分析する方法」に相当する。 イ (ア)引用発明のケトン体検出モジュール1012に係る「テストストリップ」及び「血糖値テストストリップ」は、併せて本件補正発明の「検査素子」に相当する。 (イ)引用発明は、「血液中のD-3-ヒドロキシ酪酸と、テストストリップの表面に固定されたD-3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼが触媒する補酵素NADとの反応を利用し」、また、「血糖値テストストリップの表面に固定化されたグルコースオキシダーゼ(GOD)又はグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)と血液中のグルコースが反応することを利用し」ていることから、ケトン体検出モジュール1012に係る「テストストリップ」及び「血糖値テストストリップ」に「血液」を接触させる工程を含んでいるといえる。 (ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、「血液中のD-3-ヒドロキシ酪酸と、テストストリップの表面に固定されたD-3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼが触媒する補酵素NADとの反応を利用し」、また、「血糖値テストストリップの表面に固定化されたグルコースオキシダーゼ(GOD)又はグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)と血液中のグルコースが反応することを利用し」ている引用発明は、本願補正発明の「検査素子を前記試料と接触させること」に相当する構成を備えているといえる。 ウ (ア)引用発明のケトン体検出モジュール1012に係る「テストストリップ」は、「表面に固定されたD-3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼが触媒する補酵素NADとの反応を利用して、D-3-ヒドロキシ酪酸を酸化してアセト酢酸を生成するとともに、NADをNADHに還元する仕組みになっており、テストストリップに一定の動作電圧を印加してNADHをNADに酸化し、酸化電流を発生させ、酸化電流の大きさはD-3-ヒドロキシ酪酸の濃度に比例し」ていることから、電気化学的に「D-3-ヒドロキシ酪酸」の濃度を検出するように構成されているといえる。 (イ)引用発明の「血糖値テストストリップ」は、「表面に固定化されたグルコースオキシダーゼ(GOD)又はグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)と血液中のグルコースが反応」し、「一定の動作電圧を印加することで、酵素反応に参加した後の電子媒介剤やH^(+)基質を酸化させ、グルコース濃度に比例した大きさの酸化電流を発生」することから、電気化学的に「グルコース」の濃度を検出するように構成されているといえる。 (ウ)上記(ア)及び(イ)、ア(イ)並びにイ(ア)を踏まえると、引用発明のケトン体検出モジュール1012に係る「テストストリップ」は、「表面に固定されたD-3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼが触媒する補酵素NADとの反応を利用して、D-3-ヒドロキシ酪酸を酸化してアセト酢酸を生成するとともに、NADをNADHに還元する仕組みになっており、テストストリップに一定の動作電圧を印加してNADHをNADに酸化し、酸化電流を発生させ、酸化電流の大きさはD-3-ヒドロキシ酪酸の濃度に比例し」、「血糖値テストストリップ」は、「表面に固定化されたグルコースオキシダーゼ(GOD)又はグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)と血液中のグルコースが反応」し、「一定の動作電圧を印加することで、酵素反応に参加した後の電子媒介剤やH^(+)基質を酸化させ、グルコース濃度に比例した大きさの酸化電流を発生させ」と、本件補正発明の「前記検査素子が試料中の第1分析物及び第2分析物をそれぞれ電気化学的に分析するために構成され、前記第1分析物がケトンであり、且つ、前記第2分析物がグルコースであり」とは、「前記検査素子が試料中の第1分析物及び第2分析物を電気化学的に分析するために構成され、前記第1分析物がケトンであり、且つ、前記第2分析物がグルコースであり」で共通する。 エ (ア)引用発明の「血糖値検出モジュール1011とケトン体検出モジュール1012とをさらに含んで」いる「検出ユニット101」は、本件補正発明の「検査計測器」に相当する。 (イ)引用発明の「テストストリップに一定の動作電圧を印加してNADHをNADに酸化し、酸化電流を発生させ」るものであること、及び「テストストリップに一定の動作電圧を印加することで、酵素反応に参加した後の電子媒介剤やH^(+)基質を酸化させ、グルコース濃度に比例した大きさの酸化電流を発生させ」るものであることは、それぞれ本件補正発明の「前記検査素子と相互作用するように構成された」ことに相当する。 (ウ)上記(ア)及び(イ)並びにア(イ)を踏まえると、引用発明の「検出ユニット101」の「ケトン体検出モジュール1012は」、「テストストリップに一定の動作電圧を印加してNADHをNADに酸化し、酸化電流を発生させ、酸化電流の大きさはD-3-ヒドロキシ酪酸の濃度に比例し、酸化電流の大きさを記録し、ケトン体濃度の値(ケトン体検査結果)に変換し」、同じく「血糖値検出モジュール1011は」、「テストストリップに一定の動作電圧を印加することで、酵素反応に参加した後の電子媒介剤やH^(+)基質を酸化させ、グルコース濃度に比例した大きさの酸化電流を発生させ、酸化電流の大きさを記録し、血糖値の濃度値(血糖値検査結果)に変換し」は、本件補正発明の「前記検査素子と相互作用するように構成された検査計測器によって前記試料中の第1分析物の濃度及び第2分析物の濃度を決定し」に相当する。 オ (ア)引用発明の「血糖値」は「グルコース濃度」に対応したものであるから、引用発明の血糖値に係る「診断結果」及び「診断結果に対応する推薦電子書籍」「の目録」は、「グルコース濃度」に関する情報である。 (イ)上記(ア)及びア(イ)を踏まえると、引用発明の「血糖値分析モジュール1031」が「表示ユニット104を制御して、診断結果と上記推奨電子書籍の目録を表示」することは、本件補正発明の「前記第2分析物の濃度に関する表示を自動的に提供する」ことに相当するといえる。 (ウ)引用発明の「ケトン体濃度」は「D-3-ヒドロキシ酪酸」の濃度に対応したものであるから、引用発明の「ケトン体検査結果に対応する診断結果と、前記診断結果に対応する推奨電子書籍」「の目録」は、「D-3-ヒドロキシ酪酸」の濃度に関する情報である。 (エ)引用発明の「分析ユニット103のケトン体分析モジュール1032は、記憶ユニット102のケトン体検査結果記憶モジュール1022に前記ケトン体検査結果を記憶した後、予め記憶されたケトン体の参照情報に基づいて、前記予め記憶されたケトン体検査結果に対応する診断結果と、前記診断結果に対応する推奨電子書籍を得、ユーザーは、入力ユニット105によって、読みたい電子書籍の目録を選択することができ、前記分析ユニット103は、電子書籍を開き、表示ユニット104を制御して、ユーザーが参考に読むための関連コンテンツを表示する」ものであるところ、「血糖値分析モジュール1031」が「表示ユニット104を制御して、診断結果と上記推奨電子書籍の目録を表示し、ユーザーは、入力ユニット105によって読みたい電子書籍を選択し、表示された電子書籍のページをめくることができ」ることを踏まえると、「ケトン体分析モジュール1032」は、表示ユニット104を制御して、ケトン体検査結果に対応する「診断結果に対応する推奨電子書籍の目録」を表示するといえる。 (オ)そして、引用発明の「事前に保存されているケトン体検査結果の範囲は、 ケトン体検査結果:0.6 mmol/L未満 診断結果:正常なケトン体の値 ケトン体検査結果:0.6-1.5 mmol/L 診断結果:ケトーシス(疑いあり) ケトン体検査結果:1.5 mmol/Lより大きい 診断結果:ケトアシドーシス であ」るから、「ケトン体分析モジュール1032」は、表示ユニット104を制御して、ケトン体検査結果「0.6 mmol/L未満」、「0.6-1.5 mmol/L」及び「1.5 mmol/Lより大きい」それぞれに対応する「診断結果に対応する推奨電子書籍の目録」を表示するといえる。 (イ)上記(ウ)ないし(オ)及びア(イ)を踏まえると、引用発明の「ケトン体分析モジュール1032は」「前記予め記憶されたケトン体検査結果に対応する診断結果と、前記診断結果に対応する推奨電子書籍を得、ユーザーは、入力ユニット105によって、読みたい電子書籍の目録を選択することができ」ることと、本件補正発明の「前記第1分析物の濃度が0.6mMの所定の値より上であるという決定に応答して前記第1分析物の濃度に関する表示を提供」することとは、「前記第1分析物の濃度が所定の値より上であるという決定に対応した前記第1分析物の濃度に関する表示を提供」することで共通するといえる。 カ 引用発明のケトン体検査結果に対応する「診断結果に対応する推奨電子書籍の目録」は、ユーザーに有用と思われる電子書籍の情報を提供するものであるから、本件補正発明の「前記検査素子の使用者」「へのメッセージ」に相当するといえる。 (4)そうすると、本件補正発明と引用発明とは、 「 試料中の複数の分析物を分析する方法であって、 検査素子を前記試料と接触させること、 前記検査素子が試料中の第1分析物及び第2分析物を電気化学的に分析するために構成され、前記第1分析物がケトンであり、且つ、前記第2分析物がグルコースであり、 前記検査素子と相互作用するように構成された検査計測器によって前記試料中の第1分析物の濃度及び第2分析物の濃度を決定し、 前記第1分析物の濃度が所定の値より上であるという決定に対応した前記第1分析物の濃度に関する表示を提供し、前記第2分析物の濃度に関する表示を自動的に提供すること、 を含み、 前記第1分析物の濃度に関する表示を提供するステップが、前記検査素子の使用者へのメッセージの伝達を含む、方法。」 の発明である点で一致し、次の3点において相違する。 (相違点1) 試料中の第1分析物及び第2分析物を電気化学的に分析するために構成された検査素子について、本件補正発明においては、「試料中の第1分析物及び第2分析物をそれぞれ電気化学的に分析するために構成され」ていることから、「単一」の検査素子であるのに対し、引用発明においては、「D-3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ」が固定された「テストストリップ」と「血糖値テストストリップ」が「単一」の検査素子として構成されているかが不明である点。 (相違点2) 前記第1分析物の濃度が所定の値より上であるという決定に対応した前記第1分析物の濃度に関する表示を提供することについて、本件補正発明においては、「0.6mMの所定の値より上であるという決定に応答して」表示を提供すると特定されているのに対し、引用発明においては、ケトン体検査結果「0.6 mmol/L未満」、「0.6-1.5 mmol/L」及び「1.5 mmol/Lより大きい」に「対応する推奨電子書籍」「の目録」を表示するといえる点。 (相違点3) 前記検査素子の使用者へのメッセージの伝達を含む前記第1分析物の濃度に関する表示を提供するステップが、本件補正発明においては、「前記第1分析物の濃度の表示、警告の提供、前記所定の値よりも上である前記第1分析物の濃度に応答してとられる行動のリストの提供」のうちの少なくとも1つを含むのに対し、引用発明においては、そのような特定はされていない点。 (5)判断 ア 相違点1について テストストリップを用いて試料中の複数の分析物を分析する際に、複数の分析物のそれぞれを検出するテストストリップを別個の検査素子として構成するか、2以上の分析物のそれぞれを検出するテストストリップを統合した検査素子として構成するかは、適宜選択し得る設計的事項である。 イ 相違点2について (ア)ケトン体濃度の正常と異常との境界値である0.6 mmol/Lを、正常値とするか異常値とするかは、適宜選択し得る設計的事項である。 (イ)本件補正発明における「0.6mMの所定の値より上であるという決定に応答して」表示を提供するとの特定は、「0.6mMの所定の値以下のであるという決定の場合は表示を提供しない」ことを特定するものとはいえないから、引用発明が「0.6 mmol/L未満」の場合にも、それに「対応する推奨電子書籍」「の目録」を表示することは、実質的な相違点ではない。 (ウ)加えて、本件補正発明における「0.6mMの所定の値より上であるという決定に応答して」表示を提供するとの特定が、「0.6mMの所定の値以下のであるという決定の場合は表示を提供しない」ことを特定するものであったとしても、検査結果が異常の場合のみ報知することは、本願の優先日当時において周知(例えば、特開2005-198790号公報の段落【0012】、特開2006-81838号公報の段落【0021】及び特開2007-20971号公報の段落【0041】?【0043】参照。)であり、正常時に参考とする情報を提示する必要性は低いといえることから、引用発明において、ケトン体検査結果が0.6 mmol/L未満の場合には、「推奨電子書籍」「の目録」を表示しないようにすることに、困難性があるとはいえない。 (エ)したがって、引用発明において、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項を備えたものとすることは、当業者が容易になし得ることである。 ウ 相違点3について (ア)引用発明におけるケトン体検査結果が0.6-1.5 mmol/Lの場合の診断結果である「ケトーシス(疑いあり)」及びケトン体検査結果が1.5 mmol/Lより大きい場合の診断結果である「ケトアシドーシス」は、ケトン体濃度が正常範囲でないことを示すものであるから、本件補正発明の「警告」に相当するといえる。 (イ)引用発明においては、ケトン体検査結果に対応する診断結果を表示することは特定されていないが、血糖値検査結果に対応する診断結果を表示するものであることから、ケトン体に係る診断結果に対応する「推奨電子書籍」「の目録」とともに、診断結果も表示しているものといえる。 (ウ)加えて、ケトン体に係る診断結果を表示しているとはいえないとしても、ケトン体に係る診断結果は血糖値に係る診断結果と同様にユーザーにとって有用な情報であるから、血糖値に係る「診断結果と上記推奨電子書籍の目録を表示」することに倣い、ケトン体に係る診断結果に対応する「推奨電子書籍」「の目録」とともに、ケトン体に係る診断結果も表示するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (エ)したがって、上記相違点3は、実質的な相違点ではない。 また、実質的な相違点ではないといえないとしても、引用発明において、上記相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 エ 本件補正発明の奏する作用効果 引用発明は、血糖値(グルコース濃度)検査結果に対応した診断結果及び推奨電子書籍の目録を表示するとともに、ケトン体(D-3-ヒドロキシ酪酸)検査結果に対応した診断結果に対応した推奨電子書籍の目録を表示するものであることから、本件補正発明によってもたらされる効果が、引用文献1の記載事項から当業者が予測し得る程度を超えるものとはいえない。 オ したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 補正の却下の決定のむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和2年7月30日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和元年6月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし18に係る発明は、その優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:中国実用新案第201438187号明細書 3 引用文献について 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)ア及びイに記載したとおりである。 4 対比・判断 (1)本願発明は、上記第2[理由]2(3)ないし(5)で検討した本件補正発明から、第1分析物の濃度に関する表示を提供するステップについて、「前記第1分析物の濃度の表示、警告の提供、前記所定の値よりも上である前記第1分析物の濃度に応答してとられる行動のリストの提供、並びに前記検査素子の使用者、医療提供者、介護者、及び親又は保護者のうちの少なくとも1人へのメッセージの伝達、又はモバイル機器又はコンピューターへのメッセージの伝送、のうちの少なくとも2つを含む」という限定事項を削除したものである。 (2)そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2[理由]2(3)ないし(5)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2021-03-31 |
結審通知日 | 2021-04-06 |
審決日 | 2021-04-19 |
出願番号 | 特願2018-80817(P2018-80817) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 三好 貴大、磯田 真美 |
特許庁審判長 |
福島 浩司 |
特許庁審判官 |
渡戸 正義 伊藤 幸仙 |
発明の名称 | 多重分析物分析のための系と方法 |
代理人 | 南山 知広 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 胡田 尚則 |
代理人 | 渡辺 陽一 |