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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1377732
審判番号 不服2020-9201  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-01 
確定日 2021-09-06 
事件の表示 特願2018-153192「電子デバイスにおける透明基板のためのコーティング」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月28日出願公開、特開2019- 49699〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年8月16日(パリ条約による優先権主張2017年9月8日、2018年2月20日、いずれもアメリカ合衆国)の外国語書面出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 8月30日 :翻訳文の提出
令和 元年 7月22日付け:拒絶理由通知書
令和 元年10月 9日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 2月27日付け:拒絶査定(同年3月2日送達、以下「原査定」という。)
令和 2年 7月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 9月 1日付け:前置報告書
令和 2年11月10日 :上申書の提出


第2 令和2年7月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年7月1日にされた手続補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和2年7月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてした補正であり、この補正により、以下に示すとおり、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1が、補正後請求項1に補正された。

<補正前請求項1>
「 【請求項1】
内部を有する電子デバイスであって、
筐体構造体と、
前記筐体構造体に結合した透明ガラス基板と、
前記内部に面し、前記透明ガラス基板を通して視認できる、前記透明ガラス基板上のコーティングと、を備え、前記コーティングは、インク層と、前記インク層と前記透明ガラス基板との間に挿入された薄膜干渉フィルタとを有し、前記薄膜干渉フィルタは、無彩色の部分反射ミラーを形成する、
電子デバイス。」

<補正後請求項1>
「 【請求項1】
内部を有し、かつ対向する前面及び背面を有する電子デバイスであって、
筐体構造体と、
前記筐体構造体に結合されたディスプレイと、
前記ディスプレイに重なり、かつ前記前面を形成する透明層と、
前記筐体構造体に結合した透明ガラス基板であって、前記背面に設けられたガラス筐体部材である前記透明ガラス基板と、
前記内部に面し、前記透明ガラス基板を通して視認できる、前記透明ガラス基板上のコーティングと、を備え、前記コーティングは、インク層と、前記インク層と前記透明ガラス基板との間に挿入された薄膜干渉フィルタとを有し、前記薄膜干渉フィルタは、無彩色の部分反射ミラーを形成する、
電子デバイス。」
(下線は、補正箇所を示す。)


2 補正の目的
本件補正は、本件補正前の「内部を有する電子デバイス」が「対向する前面及び背面を有する」ものであり、本件補正前の「筐体構造体に結合した透明ガラス基板」が「前記背面に設けられたガラス筐体部材である」ものに限定するとともに、本件補正前の「電子デバイス」に「筐体構造体に結合されたディスプレイ」及び「前記ディスプレイに重なり、かつ前記前面を形成する透明層」という構成を新たに付加するものであり、かつ本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。


3 独立特許要件の判断
(1)本件補正後の本願発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、前記「1 補正の内容」の<補正後請求項1>に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。


(2)引用刊行物に記載された発明

ア 引用刊行物1
本願の優先日前の平成25年5月23日に頒布された刊行物である特表2013-519151号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。下線は当審が付した。

「【0036】
ある実施形態では、ポータブル電子装置のハウジングは、種々の表面に対してたたかれ又は擦られる。プラスチック又は柔軟な金属のハウジング面が使用されたときには、それらの面にスクラッチ傷が生じる傾向がある。他方、ガラスのハウジング面(例えば、ガラスカバーアッセンブリ)は、耐スクラッチ性が高い。更に、ガラスのハウジング面は、高周波透過性を呈し、一方、金属のハウジング面は、高周波通信を妨げ又は妨害する。1つの実施形態では、電子装置ハウジングは、電子装置ハウジングの前面及び後面にガラスハウジング部材(例えば、ガラスカバーアッセンブリ)を使用する。例えば、ガラスハウジング部材から形成される前面は、前面のガラスハウジング部材の後方に位置するディスプレイ装置への視覚アクセスを与えるように透明であり、一方、ガラスハウジング部材から形成される後面は、透明又は不透明でよい。不透明が望まれる場合には、電子装置ハウジング内の内部コンポーネントを隠すことができる。一実施形態において、不透明性又は少なくとも部分的半透明性を与えるためにガラスハウジング部材に表面コーティング又はフィルムを施すことができる。そのような表面コーティング又はフィルムは、ガラスハウジング部材の内面又は外面に施すことができる。
【0037】
図3Aは、本発明の一実施形態による例示的電子装置の概略斜視図である。図3Bは、本発明の一実施形態による図3Aの電子装置の分解図である。図3Cは、本発明の一実施形態による図3Aの電子装置の断面図である。図3A-3Cの電子装置は、図2A-2Dの電子装置の特徴の幾つか又は全部を含む。特に、同様の番号をもつコンポーネントは、幾つかの又は全ての特徴を共有する。外周部材320は、電子装置300の周囲を取り巻き、電子装置の最も外側の側部、上面及び下面(例えば、前面310、後面312、左面314、右面316、上面318及び下面319)の幾つか又は全部を形成する。外周部材320は、例えば、リングを形成するように結合される1つ以上の要素を含めて、適当な形状を有する。リング状の外周部材320は、電子装置コンポーネントをアッセンブルして保持することのできる容積部322を包囲する。外周部材320の形状は、容積部322の境界を画成し、それ故、容積部322内に入れられるコンポーネントのサイズ及びタイプに基づいて決定される。容積部322の境界(例えば、外周部材320の形状により決定される)は、例えば、実質的に長方形状(例えば、まっすぐの又は丸み付けされた縁又は角を有する)、円形状、楕円形状、多角形状、又は容積部を画成できる他の閉じた形状を含めて、適当な形状をもつことができる。」

「【0054】
図3A-3Cに戻ると、容積部332内にコンポーネントを保持するために、電子装置300は、電子装置の後面及び前面を各々形成する後部カバーアッセンブリ350及び前部カバーアッセンブリ360を備えている。各カバーアッセンブリは、例えば、接着剤、テープ、機械的固定具、フック、タブ、又はその組み合わせを使用することを含めて、適当な解決策を使用して、外周部材320に結合される。ある実施形態では、例えば、電子装置コンポーネント(例えば、バッテリ)を修理し又は交換するために、カバーアッセンブリ350及び360の一方又は両方を除去することができる。ある実施形態では、前部及び後部カバーアッセンブリ350及び360は、例えば、固定部及び可動部を含めて、多数の異なる部分を含むことができる。前部カバーアッセンブリ350及び後部カバーアッセンブリ360の内面は、外周部材320上でカバーを保持するか又はカバーの適切な整列を保証するために、例えば、1つ以上の峰、フック、タブ、延長部、又はその組み合わせを含めて、適当な特徴部を含むことができる。前記及び後部カバーアッセンブリ350及び360の特徴部は、カバーの適切な配置を保証するために、外周部材320の対応する特徴部又は電子装置の他のコンポーネントと相互作用する。」

「【0060】
電子装置300(図3A-3C)に戻ると、前部カバーアッセンブリ350及び後部カバーアッセンブリ360は、適当な材料又は材料の組合せから構成することができる。ある実施形態では、カバーアッセンブリ350及び360の各々は、多数の異なる要素を結合することで構成することができる。例えば、一方又は両方のカバーアッセンブリは、透明又は半透明のプレート(例えば、長方形のガラスプレート)を含む。別の例として、一方又は両方のカバーアッセンブリは、1つ以上の金属又はプラスチック(例えば、アルミニウム)から構成されたベース又は支持構造体を備え、これに透明要素をアッセンブルすることができる。透明要素は、例えば、透明要素を通して1つ以上の電子装置コンポーネント(例えば、ディスプレイ回路又は画像捕獲のためのフラッシュ)を見ることができるようにすることを含めて、適当な解決策を使用してアッセンブルすることができる。別の例として、透明要素は、(例えば、センサ又はカメラを使用して)透明要素を通して信号を受信し又はユーザの環境を検出するために設けることができる。或いは又、透明要素が主として化粧用コンポーネントとして働くように、透明要素の1つ以上の部分を不透明とすることができる(例えば、インクを使用するか又は透明要素の後方に支持構造体を配置することにより)。例えば、接着剤、固定具、テープ、インターロックコンポーネント、オーバーモールド、又は製造プロセス、或いはそれらの組合せの1つ以上を使用することを含めて、適当な解決策を使用して、各カバーアッセンブリの異なるコンポーネントをアッセンブルすることができる。
【0061】
図3A-3Cの例では、前部カバーアッセンブリ350は、ガラスプレート354がアッセンブルされる支持構造体352を備えている。この支持構造体352は、ディスプレイ355を設けることのできる開口を含めて、1つ以上の開口を含む。ある実施形態では、支持構造体352及びガラスプレート354の一方又は両方は、装置コンポーネントのための開口、例えば、ボタン開口356及び受信器開口357、並びにカメラ、フラッシュ、或いは他の装置センサ又は入力インターフェイスのための他の開口を含む。開口のサイズ及び形状は、例えば、開口又はその下に配置される装置コンポーネントのサイズ及び形状に基づくことを含めて、適当な解決策を使用して選択することができる(例えば、開口356は、ボタンのサイズにより決定され、一方、開口357は、受信器のサイズと、ユーザに充分な音声を与えるための音響的事柄から決定される)。
【0062】
ある実施形態では、ガラスプレート354は、電子装置の内部コンポーネントの視野から隠れる化粧仕上げを含む。例えば、ディスプレイ回路の非表示部分の視野から隠れるようにディスプレイ355を取り巻く領域359に不透明層が付着される。1つ以上のセンサがガラスプレート354を通して信号を受信するので、不透明層を選択的に除去するか、又はプレート後方のセンサへガラスプレートを経て信号を通過できるように選択することができる。例えば、ガラスプレート354は、領域359a及び359bを含み、これを通して、センサ(例えば、カメラ、赤外線センサ、接近センサ、又は周囲光センサ)で信号を受信することができる。
【0063】
ある実施形態では、前部カバーアッセンブリ350は、ユーザが電子装置を使用できるようにする1つ以上のインターフェイスを支持し又はイネーブルする。例えば、ガラスプレート354は、電子装置のプロセス及び動作を制御するためのタッチインターフェイス(例えば、タッチパッド又はタッチスクリーン)を支持することができる。別の例として、前部カバーアッセンブリ350は、装置と相互作用するための1つ以上のボタン又はセンサ(上述した)を含む。あるケースでは、それに代わって又はそれに加えて、外周部材320又は後部カバーアッセンブリ360にボタン、スイッチ又は他のインターフェイス要素を合体することができる。電子装置300は、ユーザと相互作用するための他の適当なインターフェイス、例えば、ディスプレイ回路、プロジェクタ、オーディオ出力回路(例えば、スピーカ又はオーディオポート)、触覚インターフェイス(例えば、振動を発生するためのモータ、又は電気的刺激を与えるための電源)、又はそれらの組み合わせを含む。
【0064】
電子装置300の化粧又は審美的魅力を向上させるために、外周部材320、前部カバーアッセンブリ350及び後部カバーアッセンブリ360の1つ又は全部を、適当なプロセスを使用して仕上げることができる。例えば、ポリシング、コーティング(例えば、染料又は着色材料や、光学的効果を与える材料を使用)、グレージング、薄膜堆積、グラインディング、スーパー仕上げ、又は他の適当なプロセスの1つ以上を電子装置コンポーネントに適用することができる。ある実施形態では、1つ以上のガラス面(例えば、前部カバーアッセンブリ350又は後部カバーアッセンブリ360の)は、例えば、1つ以上のマスク、コーティング(例えば、調光又は二色性コーティング)、インク層、又はそれらの組み合わせを使用して、審美的に満足な見掛けを与えるように仕上げられる。前部カバーアッセンブリ350及び後部カバーアッセンブリ360のガラス面に適用される特定の仕上げは、前面及び後面310及び312が同様の見掛け又は異なる見掛けを有するように選択される。ある実施形態では、ガラス面は、摩耗又は衝撃に耐え(例えば、耐スクラッチ性)、オイルの接触を防止し、又は他の外力が装置に加わるのを防止するように処置することができる。」


【図3A】


【図3B】


【図3C】


【図3A】から、透明のガラスプレート354を通してディスプレイ355の画像が表示されており、当該透明のガラスプレート354が、ディスプレイ355に重なって配置され、電子装置300の前面を形成していることが読み取れる。

上記記載事項及び図面からみて、引用刊行物1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「電子装置300であって、
当該電子装置300の周囲を取り巻き、電子装置コンポーネントをアッセンブルして保持することのできる容積部322を包囲するリング状の外周部材320と、
当該リング状の外周部材320に結合される前部カバーアッセンブリ350が備える支持構造体352と(【0037】、【0054】、【0061】、【図3B】、【図3C】)、
前記支持構造体352の開口に設けられたディスプレイ355と(【0061】)、
電子装置300の前面310を形成し、ディスプレイ355に重なって配置される透明のガラスプレート354と(【0054】、【0060】、【0061】、【図3A】)、
リング状の外周部材320に結合されて電子装置300の後面312を形成し、透明のガラスプレートを含む後部カバーアッセンブリ360と(【0054】、【0060】)を備え、
前記後部カバーアッセンブリ360のガラス面は、内面に1つ以上のコーティングを使用して、審美的に満足な見掛けを与えるように仕上げられる(【0036】、【0064】)、
電子装置300。」


イ 引用刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の平成26年3月27日に頒布された刊行物である特開2014-56227号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0004】
本発明が解決しようとする課題は、メタリックな色感を提供できる表示パネルアセンブリ及びこれを含む電子機器を提供することである。」

「【0049】
図5は、図3のVの部分を拡大して示した図面であって、本発明の一実施形態による不透明層130を拡大して示した断面図である。
【0050】
図5を参照すれば、不透明層130は、ウィンドウカバー110を通じて入射した光を選択的に反射させ、ユーザにメタリックな色感を提供する誘電体ミラー層134、及び誘電体ミラー層134上に形成された光吸収層135を備える。
【0051】
一実施形態として、不透明層130は、フィルム132の背面上に誘電体ミラー層134及び光吸収層135を順次に形成することによって製作される。このように製作された不透明層130は、接着層131によってウィンドウカバー110の背面に付着される。
【0052】
フィルム132は、ウィンドウカバー110を通じて入射する光が誘電体ミラー層134に入射するように、透明な素材を含む。例えば、フィルム132は、ポリエチレンエーテルフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン及びポリイミドで構成される。
【0053】
なお、フィルム132は、ウィンドウカバー110の背面において、誘電体ミラー層134及び光吸収層135を配するための媒介体であって、工程によって省略されることもある。例えば、ウィンドウカバー110の背面上に、直接誘電体ミラー層134を形成し、誘電体ミラー層134上に、光吸収層135を形成すすることにより、フィルム132は省略されうる。
【0054】
誘電体ミラー層134は、屈折率の異なる複数の誘電体層341,342,343(図6)を備える。例えば、誘電体ミラー層134は、ウィンドウカバー110の背面上に形成された第1誘電体層341、第1誘電体層341上に形成された第2誘電体層342、及び第2誘電体層342上に形成された第3誘電体層343を備える。
【0055】
一実施形態として、第1誘電体層341及び第3誘電体層343の屈折率は、第2誘電体層342の屈折率より大きく形成される。すなわち、誘電体ミラー層134は、高屈折率の第1誘電体層341、低屈折率の第2誘電体層342、及び高屈折率の第3誘電体層343を備える。例えば、第1誘電体層341及び第3誘電体層343は、二酸化チタン(TiO_(2))を含み、第2誘電体層342は、二酸化ケイ素(SiO_(2))を含む。
【0056】
他の実施形態においては、第1誘電体層341及び第3誘電体層343の屈折率が、第2誘電体層342の屈折率より小さく形成される。すなわち、誘電体ミラー層134は、低屈折率の第1誘電体層341、高屈折率の第2誘電体層342、及び低屈折率の第3誘電体層343を備える。例えば、第1誘電体層341及び第3誘電体層343は、二酸化ケイ素(SiO_(2))を含み、第2誘電体層342は、二酸化チタン(TiO_(2))を含む。なお、これら第1誘電体層341及び第3誘電体層343の屈折率は、相対的に大小差があればよく、特定の値に限定されるものではない。
【0057】
前述したように、高屈折率層と低屈折率層とが交互に形成された誘電体ミラー層134を通じて、ユーザにメタリックな多様な色感を提供することができる。これは、複数の誘電体層341,342,343を含む誘電体ミラー層134が、それぞれの誘電体層341,342,343の境界面で反射される光の干渉に基づいて、メタリックな多様な色感を提供できるからである。
【0058】
すなわち、ウィンドウカバー110を通じて入射した光の一部は、誘電体ミラー層134によって反射され、ユーザにメタリックな色感を提供し、誘電体ミラー層134で反射されない残りの光は、光吸収層135に吸収される。このために、光吸収層135は、例えば黒色の印刷層であり、スプレイ、スクリーンプリンティングのような方法を利用して、誘電体ミラー層134上に黒色の塗料を塗布することによって形成される。」

「【0064】
さらに他の実施形態として、誘電体ミラー層134が、約200Å厚のTiO_(2)を含む第1誘電体層341、約400Å厚のSiO_(2)を含む第2誘電体層342、約100Å厚のTiO_(2)を含む第3誘電体層343を含む場合、ユーザは、メタリックなシルバーを視認することができる。」

【図5】



上記記載事項及び図面からみて、引用刊行物2には、以下の周知技術が記載されているものと認められる。

「ウィンドウカバーを通じて入射した光を選択的に反射させる誘電体ミラー層、及び誘電体ミラー層上に形成された光吸収層を備え、接着層によってウィンドウカバーの背面に付着される不透明層であって、(【0050】、【0051】)、
前記誘電体ミラー層は、複数の誘電体層を含み、それぞれの誘電体層の境界面で反射される光の干渉に基づいて、メタリックな多様な色感(例えば、メタリックなシルバー(【0064】))を提供でき(【0057】)、
前記誘電体ミラー層で反射されない残りの光は、例えば黒色の印刷層である光吸収層に吸収される(【0058】)、
不透明層。」


(3)対比

ア 本願補正発明と引用発明の対比
本願補正発明と引用発明1を対比する。

(ア)引用発明1の「電子装置300」は、「電子装置コンポーネントを保持する」「容積部322」を有し、「電子装置300」の「後面312」及び「前面310」を各々形成する「後部カバーアッセンブリ360」及び「透明のガラスプレート354」を備えるものであり、当該「容積部322」、「前面310」及び「後面312」は、それぞれ本願補正発明の「内部」、「対向する前面及び背面」に相当する。
よって、引用発明1の「電子装置300」は、本願補正発明の「内部を有し、かつ対向する前面及び背面を有する電子デバイス」に相当する。

(イ)引用発明1の「当該電子装置300の周囲を取り巻き、電子装置コンポーネントをアッセンブルして保持することのできる容積部322を包囲するリング状の外周部材320」は、本願補正発明の「筐体構造体」に相当する。

(ウ)引用発明1の「支持構造体352の開口に設けられたディスプレイ355」は、支持構造体352(を備える前部カバーアッセンブリ350)を介してリング状の外周部材320に結合されているから、本願補正発明の「筐体構造体に結合されたディスプレイ」に相当する。

(エ)引用発明1の「透明のガラスプレート354」は、本願補正発明の「透明層」に相当する。
よって、引用発明1の「電子装置300の前面310を形成し、ディスプレイ355に重なって配置される透明のガラスプレート354」は、本願補正発明の「前記ディスプレイに重なり、かつ前記前面を形成する透明層」に相当する。

(オ)引用発明1の「後面312」、及び「後部カバーアッセンブリ360」に含まれる「透明のガラスプレート」は、それぞれ本願補正発明の「背面」、及び「ガラス筐体部材」である「透明ガラス基板」に相当する。
よって、引用発明1の「リング状の外周部材320に結合されて電子装置300の後面312を形成し、透明のガラスプレートを含む後部カバーアッセンブリ360」は、本願補正発明の「前記筐体構造体に結合した透明ガラス基板であって、前記背面に設けられたガラス筐体部材である前記透明ガラス基板」に相当する。

(カ)引用発明1の「前記後部カバーアッセンブリ360のガラス面は、内面に1つ以上のコーティングを使用して、審美的に満足な見掛けを与えるように仕上げられる」ことと、本願補正発明の「前記内部に面し、前記透明ガラス基板を通して視認できる、前記透明ガラス基板上のコーティングと、を備え、前記コーティングは、インク層と、前記インク層と前記透明ガラス基板との間に挿入された薄膜干渉フィルタとを有し、前記薄膜干渉フィルタは、無彩色の部分反射ミラーを形成する」ことは、「前記内部に面し、前記透明ガラス基板を通して視認できる、前記透明ガラス基板上のコーティングと、を備える」という点で共通する。


イ 一致点及び相違点
上記アの検討を総合すると、本願補正発明と引用発明1の両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

<一致点>
内部を有し、かつ対向する前面及び背面を有する電子デバイスであって、
筐体構造体と、
前記筐体構造体に結合されたディスプレイと、
前記ディスプレイに重なり、かつ前記前面を形成する透明層と、
前記筐体構造体に結合した透明ガラス基板であって、前記背面に設けられたガラス筐体部材である前記透明ガラス基板と、
前記内部に面し、前記透明ガラス基板を通して視認できる、前記透明ガラス基板上のコーティングと、を備える、
電子デバイス、である点。

<相違点>
「透明ガラス基板上のコーティング」について、本願補正発明では、「インク層と、前記インク層と前記透明ガラス基板との間に挿入された薄膜干渉フィルタとを有し、前記薄膜干渉フィルタは、無彩色の部分反射ミラーを形成する」ものであるのに対して、引用発明1では、そのような構成を有していない点。


(4)当審の判断

ア 相違点についての判断
上記相違点について、検討する。

上記「(2)引用刊行物2」で述べたように、「ウィンドウカバーを通じて入射した光を選択的に反射させる誘電体ミラー層、及び誘電体ミラー層上に形成された光吸収層を備え、接着層によってウィンドウカバーの背面に付着される不透明層であって、前記誘電体ミラー層は、複数の誘電体層を含み、それぞれの誘電体層の境界面で反射される光の干渉に基づいて、メタリックな多様な色感(例えば、メタリックなシルバー)を提供でき、前記誘電体ミラー層で反射されない残りの光は、例えば黒色の印刷層である光吸収層に吸収される不透明層」は、本願の優先日前に周知の技術である。
そうすると、引用発明1は、後部カバーアッセンブリ360のガラス面の内面に1つ以上のコーティングを使用して、審美的に満足な見掛けを与えるように仕上げられるものであるから、その具体的な構成として、上記周知技術のメタリックなシルバーの色感を提供する不透明層を採用することは、当業者が容易に想到し得るものである。なお、「メタリックシルバーの色感」が、無彩色であることは明らかである。そして、上記周知技術の「不透明層」を構成する「入射した光を選択的に反射させる誘電体ミラー層」は、複数の誘電体層を含み、それぞれの誘電体層の境界面で反射される光の干渉に基づいて、メタリックな多様な色感を提供するものであるから、本願補正発明の「薄膜干渉フィルタ」及び「部分反射ミラー」に相当し、上記周知技術の「不透明層」を構成する「黒色の印刷層である光吸収層」は、本願補正発明の「インク層」に相当することは明らかである。

したがって、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願補正発明によって奏される効果は、引用発明1及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものにすぎない。

よって、本願補正発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。


イ 請求人の主張について
請求人は、令和2年11月10日の上申書において、
「引用文献1から6は、請求項1および本願明細書に記載されるような「無彩色の部分反射ミラー」を記載していません。特に、前置報告において、引用文献2および3が「無彩色の部分反射ミラー」を記載しているとされています。しかしながら、引用文献2は、前面上の反射防止および色調整層に焦点を当てており、当業者をデバイスの背面上に「無彩色の部分反射ミラー」を含ませるよう導きません。引用文献3は、「ユーザにメタリックな色感を提供する」ミラーディスプレイコーティングを示していますが(請求項1参照)、これは、請求項1および本願明細書に記載されるような、デバイスの背面上になく、また「無彩色」かつ「部分反射ミラー」に対応もしません。引用文献3のミラーは本願明細書の[段落0038]に記載されるような反射率の範囲および無彩色を有していません。」
と主張している。
しかしながら、引用刊行物1の【0064】には、「前部カバーアッセンブリ350及び後部カバーアッセンブリ360のガラス面に適用される特定の仕上げは、前面及び後面310及び312が同様の見掛け又は異なる見掛けを有するように選択される。」と記載されているから、引用文献3(上記引用刊行物2と同じ文献)に記載の、メタリックシルバーの色感を有し、ウィンドウカバーを通じて入射した光を選択的に反射させる誘電体ミラー層及び光吸収層を備える不透明層をウィンドウカバーに付着する前記周知技術を、引用発明1に適用する際には、「後部カバーアッセンブリ360のガラス面」に不透明層を付着することになることは明らかである。
そして、「引用文献3のミラーは本願明細書の[段落0038]に記載されるような反射率の範囲および無彩色を有していません。」との主張については、本件補正後の請求項1の記載に基づくものではなく認められない。

したがって、当該主張は採用できない。


(5)まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和元年10月9日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「 【請求項1】
内部を有する電子デバイスであって、
筐体構造体と、
前記筐体構造体に結合した透明ガラス基板と、
前記内部に面し、前記透明ガラス基板を通して視認できる、前記透明ガラス基板上のコーティングと、を備え、前記コーティングは、インク層と、前記インク層と前記透明ガラス基板との間に挿入された薄膜干渉フィルタとを有し、前記薄膜干渉フィルタは、無彩色の部分反射ミラーを形成する、
電子デバイス。」


第4 原査定における拒絶の理由

原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、以下のとおりである。

理由2.本願発明は、下記の引用文献3に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
理由3.本願発明は、下記の引用文献3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献3.登録実用新案第3208984号公報


第5 引用文献に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の平成29年3月2日に発行された上記引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0010】
電子デバイスは、ディスプレイを備えることができる。ディスプレイは、画像を表示するために使用される画素のアレイを含むアクティブエリア、及び画素のない非アクティブエリアを有することができる。回路及び内部のデバイス構成要素は、非アクティブエリアの下に実装することができる。
【0011】
ディスプレイ用の保護ディスプレイカバー層は、透明な材料の層から形成することができる。ディスプレイカバー層は、ディスプレイのアクティブエリア及び非アクティブエリアの両方に重ね合わせることができる。アクティブエリアに重ね合わさるディスプレイカバー層の部分は、インクはなく透明である。非アクティブエリアに重ね合わさるディスプレイカバー層の部分の内面は、デバイス内の内部構造体をユーザによる視界から隠すのに役立つように、不透明マスキング層でコーティングすることができる。不透明マスキング層は、光吸収粒子を有するポリマー、又は他の好適な不透明な構造体から形成することができる。不透明マスキング層は、例えば、黒色インクの層、又は別の色の不透明な層とすることができる。
【0012】
開口部は、光を透過するウィンドウを形成するように、不透明マスキング層内に形成することができる。光学窓又は光窓と呼ばれる場合もあり得る、これらのウィンドウは、光学式構成要素を収容するために使用することができる。例えば、カメラは、ディスプレイカバー層内のウィンドウを通して画像をキャプチャすることができ、周辺光センサは、ディスプレイカバー層内のウィンドウを通して周辺光レベルを測定することができ、光学式近接センサは、ディスプレイカバー層内のウィンドウを通して近接センサによる測定をするために使用することができる。いくつかの場合(例えば、可視光波長で動作するカメラなどの構成要素用のウィンドウを形成する場合)では、ウィンドウは、可視波長で透明とすることができ、何もコーティング層をなしにすることができる。周辺光センサ用のウィンドウを形成する場合などの他の場合では、少なくとも部分的にウィンドウを不明瞭化するようにウィンドウをコーティングすることが望ましいことがある。これは、例えば、周辺光センサが周辺光の測定ができるように周辺光センサに充分な周辺光を透過する、暗いコーティングで周辺光センサ用ウィンドウをコーティングすることにより、実現することができる。コーティングの暗い外観は、周辺光センサ用ウィンドウを、非アクティブエリア内の黒色インク又は他の不透明マスキング層の近隣の部分の外観と融合するのを可能にできる。
【0013】
一般的に、周辺光センサ用のウィンドウコーティングは、任意の好適な色(例えば、白、灰色、黒、又は他の色)を有することができる。これらのコーティングは、任意の好適な光量を透過することができる(例えば、これらのコーティングの透過率は、50%より大きい、50%未満、5%?20%、30%未満、20%未満、10%未満、又は他の好適な値とすることができる)。コーティングは、デバイス10内の赤外線及び可視光カメラ用、赤外線構成要素用、ユーザ入出力装置(例えば、タッチセンサ又は指紋センサ)に関連付けられた光感知アレイ用、近接センサ用、又は任意の他の好適な光学式構成要素用のウィンドウ上に設けることができる。周辺光センサ用ウィンドウにコーティングを設ける構成は、例として本明細書で説明される場合があり得る。しかしながら、これは単なる例示である。コーティングは、デバイス10内の任意の好適な透明なウィンドウ構造体上に設けることができる。
【0014】
ウィンドウコーティングが所望の外観(例えば、所望の反射率、所望の色、特定の波長での所望の透過率など)を有することを確実にするために、ウィンドウコーティングは、薄膜積層体を使用して形成することができる。例えば、無機材料の複数の薄い層を、物理蒸着技術又は他の好適な技術を使用してディスプレイカバー層の内面上に堆積させることができる。層の数、層の厚さ、及びコーティングの層内に使用される材料を調整することにより、コーティングは、所望の外側の外観及び透過特性を備えることができる。例えば、周辺光センサ用ウィンドウの内面上のコーティングは、ウィンドウからの反射量及びウィンドウの色を調整する(例えば、ディスプレイの非アクティブエリア内の不透明なマスキング材料が帯青黒色の外観を有する構成で、帯青黒色に)、反射防止及び色調整層として機能することができる。コーティングはまた、光を吸収する無機材料の薄膜層も設けることができる(例えば、周囲の不透明なマスキング構造体と融合するためにコーティングが充分に黒く見えることを確実にするために)。」

「【0016】
図1の例では、デバイス10は、ディスプレイ14を含む。ディスプレイ14は、筐体12内に実装されている。エンクロージャ又はケースとも呼ばれることもあり得る筐体12は、プラスチック、ガラス、セラミック、繊維複合材、金属(例えば、ステンレス鋼、アルミニウムなど)、他の好適な材料、又はこれらの材料のいずれか2種以上の組み合わせで形成してもよい。筐体12は、筐体12が一部若しくはすべて単一の構造として機械加工若しくは成形された一体型構成を使用して形成してもよく、又は複数の構造体(例えば、内部枠組構造、外部筐体表面を形成する1つ以上の構造体など)を使用して形成してもよい。通信ポート、ボタン用の孔、及び他の構造を形成するために、開口部を筐体12内に形成することができる。」


「【0019】
ディスプレイ14は、透明なガラス、透明プラスチック、透明なセラミック、サファイア、若しくは他の透明な結晶性材料の層、又は他の透明な層(単数又は複数)などの、ディスプレイカバー層を使用して保護することができる。ディスプレイカバー層は、平面形状、凸の曲線状断面、凹の曲線状断面、平面及び曲線状部分を有する形状、平面主領域の平面の外側に曲がった部分を有する1つ以上の縁部で囲まれた平面主領域を含む構成、又は他の好適な形状を有することができる。ボタン16、スピーカポート18などのポート、及び他の構造体を収容するために、開口部を、ディスプレイカバー層内に形成することができる。」

「【0024】
ディスプレイカバー層30の内面は、非アクティブエリアIA内の1つ以上の材料の層でコーティングすることができる。図2の例では、非アクティブエリアIA内のディスプレイカバー層30の下側は、不透明マスキング層36でコーティングされている。不透明マスキング層36は、例えば、黒色インクの層とすることができる。ウィンドウ20用の開口部40は、不透明マスキング層36内に形成することができる。周辺光センサ用コーティング層38は、開口部40に重ね合わせることができ、ウィンドウ20に所望の外観を提供することができる。例えば、コーティング層38は、ウィンドウ20からの反射を抑制するための反射防止構造体、ウィンドウ20の色を調整するための薄膜スペクトル調整構造体、及びウィンドウ20の外観を暗くするように充分な光を吸収するための構造体を含むことができ、それにより、マスキング層36の外観を適合させることができる。」

「【0026】
図2の例では、ウィンドウコーティング38は、開口部40が層36内に形成された後で、不透明マスキング層36の内面上に堆積してある。層36は、スクリーン印刷又は他の好適な技術を使用して堆積してパターン化することができる。所望であれば、コーティング38は、ウィンドウ20用の開口部40を形成するために層36を堆積して層36をパターン化する前に、ディスプレイカバー層30の内面上に堆積させることができる(例えば、図3を参照)。コーティング38が充分に不透明な外観を有する構成では、不透明マスキング層36の一部又はすべてを、非アクティブエリアIAから省略することができる。
【0027】
図4に示すように、図2の周辺光44などの入射する周辺光は、ウィンドウ20の表面法線n(すなわち、ウィンドウ20内のディスプレイカバー層36の部分の表面法線)に対する入射角AOIの範囲により特徴付けることができる。コーティング38は、好ましくは入射角AOIにあまり依存しない透過特性を呈する。コーティング38の外観もまた、好ましくは、色及び反射率などの属性において不透明マスキング層36の外観に適合する。
【0028】
1つの例示的な構成では、コーティング38は、層50などの反射防止及び色調整層を含む。不透明マスキング層36用の黒色インクなどの材料は、カーボンブラックの粒子を含むポリマー又は比較的低い反射率を有する他のインク材料から形成することができる。従って、層50内の1つ以上の薄膜誘電体層又は他の薄膜層を、反射防止コーティングとして機能するように積層体内に形成することができる。反射防止材料の1つ以上の層の屈折率は、ウィンドウ20からの光の反射を不透明マスキング層36からの光の反射に適合するレベルに低減するように選択することができる。
【0029】
所望であれば、コーティング38内の材料(例えば、層50のスペクトル調整構造体)の屈折率、材料、及び層の厚さは、コーティング38が所望の色(例えば、帯青黒色、又は別の望ましいスペクトル曲線を有する色)を有することを確実にするように選択することができる。薄膜干渉効果を反射率及び色を調整するために使用することができるので、多様な所望の反射率値及び色を実現することができる(例えば、層の厚さ、層の数、及び層の材料を調整することにより)。層50は、コーティング38に関連付けられた反射防止及び色特性を調整することができ、そのため層50は、反射防止及び色調整層(反射防止層、スペクトル調整層、色調整コーティングなど)として呼ばれることもあり得る。
【0030】
コーティング層38はまた、層52などの1つ以上の光吸収層も含むことができる。層52は、例えば、コーティング38を黒く見えるようにするために、充分な光を吸収する暗い材料とすることができる。層52の厚さは、周辺光44の一部が周辺光センサ42に届くことができるように、充分小さくすることができる。
【0031】
図4の反射防止及び色調整コーティング50用の例示的な構成を、図5に示す。図5の例では、コーティング50は、3つの酸化アルミニウム層及び3つの酸化チタン層の、6つの無機誘電体層(金属酸化物層)の積層体から形成されている。酸化アルミニウム(屈折率1.7)及び酸化チタン(屈折率2.7)に対する、互いに対して及び層30のガラス(屈折率1.55)に対して異なる屈折率値は、層50がウィンドウ20に対して、反射防止層として(ウィンドウ20からの可視光の反射を低減する)及び色調整(スペクトル調整)層として機能することを可能にする。一般的に、層50は、任意の好適な数の誘電体層(例えば、より高い屈折率及びより低い屈折率の交互の層、又は異なる屈折率を有する誘電体層の他のパターン)を有することができ、金属酸化物、シリコン酸化物、窒化ケイ素、他の酸化物、窒化物、オキシ窒化物、又は他の無機材料から形成された誘電体層を有することができる。この薄膜層の積層体は、物理蒸着技術(例えば、スパッタリング若しくは蒸発)、又は他の好適な析出技術を使用して堆積させることができる。
【0032】
光吸収層52もまた、物理蒸着又は他の好適な析出技術を使用して堆積された無機層とすることができる(例えば、層52は、黒色物理蒸着無機層とすることができる)。入射角感度を低減するのに役立つために、層52は、比較的高い屈折率を有する材料から形成することができる。」


【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】



【図2】から、ディスプレイカバー層30が、筐体12と結合していることが読み取れる。

【0026】、【図3】から、コーティング38は、ウィンドウ20用の開口部40を形成するために層36を堆積して層36をパターン化する前に、ディスプレイカバー層30の内面上に堆積させており、その堆積される範囲は、周辺光センサ用のウィンドウだけでなく、当該ウィンドウ周辺を含む非アクティブエリアIAであることが読み取れる。この場合、コーティング38内の材料(例えば、コーティング38に含まれる反射防止及び色調整層50のスペクトル調整構造体)の屈折率、材料、及び層の厚さ、すなわちコーティング38の反射率値および色は、堆積される範囲全体にわたって同じになることが類推される。よって、【0013】に記載の「周辺光センサ用のウィンドウコーティング」が有する「任意の好適な色(例えば、白、灰色、黒、又は他の色)」は、「周辺光センサ用のウィンドウコーティング」だけではなく、当該ウィンドウ周辺を含む非アクティブエリアIAのコーティングが有する色であることが読み取れる。

以上を総合すると、上記記載事項及び図面からみて、引用文献3には、以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。

「筐体12内に実装されているディスプレイ14を含むデバイス10であって(【0016】)、
前記筐体12内に実装されているディスプレイ14は、透明なガラスのディスプレイカバー層30を使用して保護することができ、当該ディスプレイカバー層30は前記筐体12と結合し(【0019】、【図2】)、
非アクティブエリアIA内のディスプレイカバー層30の下側は、黒色インクの層とする不透明マスキング層36でコーティングされ、コーティング38は、ウィンドウ20用の開口部40を形成するために層36を堆積して層36をパターン化する前に、ディスプレイカバー層30の内面上に堆積させることができ(【0024】、【0026】)、【図2】、【図3】)、当該コーティング38は、任意の好適な色(例えば、白、灰色、黒)を有することができ(【0013】、【0026】、【図3】)、コーティング38に含まれる反射防止及び色調整層50は、3つの酸化アルミニウム層及び3つの酸化チタン層の、6つの無機誘電体層(金属酸化物層)の積層体から形成され、互いに対して異なる屈折率値は、層50が反射防止層として(可視光の反射を低減する)及び色調整(スペクトル調整)層として機能することを可能にする(【0028】、【0029】、【0031】、【図4】、【図5】)、
デバイス10。」


第6 対比・判断
本願発明と引用発明3を対比する。

1 引用発明3の「デバイス10」は、「筐体12内に実装されているディスプレイ14を含む」ことから、本願発明の「内部を有する電子デバイス」に相当する。

2 引用発明3の「筐体12」は、本願発明の「筐体構造体」に相当する。

3 引用発明3の「透明なガラスのディスプレイカバー層30」は、本願発明の「透明ガラス基板」に相当する。
よって、引用発明の「筐体12と結合し」た「透明なガラスのディスプレイカバー層30」は、本願発明の「筐体構造体に結合した透明ガラス基板」に相当する。

4 引用発明3の「黒色インクの層とする不透明マスキング層36」、「層36を堆積して層36をパターン化する前に、ディスプレイカバー層30の内面上に堆積させ」ることは、それぞれ本願発明の「インク層」、「前記インク層と前記透明ガラス基板との間に挿入され」ることに相当する。
また、引用発明3の「任意の好適な色(例えば、白、灰色、黒)」は、本願発明の「無彩色」に相当し、引用発明3の「コーティング38に含まれる反射防止及び色調整層50」は、「6つの無機誘電体層(金属酸化物層)の積層体から形成され、互いに対して異なる屈折率値は、層50が反射防止層として(可視光の反射を低減する)及び色調整(スペクトル調整)層として機能することを可能にする」ものであるから、本願発明の「部分反射ミラーを形成する」「薄膜干渉フィルタ」に相当する。
よって、引用発明3の「非アクティブエリアIA内のディスプレイカバー層30の下側は、黒色インクの層とする不透明マスキング層36でコーティングされ、コーティング38は、ウィンドウ20用の開口部40を形成するために層36を堆積して層36をパターン化する前に、ディスプレイカバー層30の内面上に堆積させることができ、当該コーティング38は、任意の好適な色(例えば、白、灰色、黒)を有することができ、コーティング38に含まれる反射防止及び色調整層50は、3つの酸化アルミニウム層及び3つの酸化チタン層の、6つの無機誘電体層(金属酸化物層)の積層体から形成され、互いに対して異なる屈折率値は、層50が反射防止層として(可視光の反射を低減する)及び色調整(スペクトル調整)層として機能することを可能にする」ことは、本願発明の「前記内部に面し、前記透明ガラス基板を通して視認できる、前記透明ガラス基板上のコーティングと、を備え、前記コーティングは、インク層と、前記インク層と前記透明ガラス基板との間に挿入された薄膜干渉フィルタとを有し、前記薄膜干渉フィルタは、無彩色の部分反射ミラーを形成する」ことに相当する。

以上のことから、引用発明3は本願発明の構成の全てを含むから、本願発明は引用文献3に記載された発明である。

また、本願発明は、引用発明3に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり、本願発明によって奏される効果は、引用発明3から当業者が予測し得る程度のものにすぎない。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献3に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、また、引用発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。




 
別掲
 
審理終結日 2021-03-31 
結審通知日 2021-04-02 
審決日 2021-04-16 
出願番号 特願2018-153192(P2018-153192)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G09F)
P 1 8・ 121- Z (G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野 博之  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 濱本 禎広
濱野 隆
発明の名称 電子デバイスにおける透明基板のためのコーティング  
代理人 永川 行光  
代理人 特許業務法人大塚国際特許事務所  
代理人 高柳 司郎  
代理人 下山 治  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康弘  
代理人 大塚 康徳  
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