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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
管理番号 1377757
異議申立番号 異議2020-700659  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-09-03 
確定日 2021-07-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6659727号発明「ケラチン繊維のための組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6659727号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-7、14-20]について訂正することを認める。 特許第6659727号の請求項1?7、14?20に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6659727号の請求項1?20に係る特許についての出願は、平成28年5月12日に出願され、令和2年2月10日にその特許権の設定登録がされ、令和2年3月4日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和2年9月3日(同年同月4日受付)に特許異議申立人 中島美奈子により、請求項1?7、14?20に係る特許についての特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。

令和2年 9月 4日受付:特許異議申立人 中島美奈子(以下、「申立
人」という)による特許異議の申立て
同 年12月18日付け:取消理由通知書
令和3年 3月18日受付:特許権者による意見書及び訂正請求書
(以下「本件訂正請求」という。)
なお、申立人は、令和3年4月9日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答をしなかった。


第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)、(2)のとおりである。なお、下線は、訂正部分であり、当審が付した。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「組成物の総質量に対して0.1質量%未満の還元剤を含むか、又は還元剤を一切含まない、」と記載されているのを、
「組成物の総質量に対して0.1質量%未満の還元剤を含むか、又は還元剤を一切含まず、
(a)有機アルカリ剤が、アミノ酸及びアミノ酸のオリゴマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、」に訂正する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に
「(a)有機アルカリ剤が、アミノ酸並びにアミノ酸のオリゴマー;モノアミン及びそれらの誘導体;ジアミン及びそれらの誘導体;ポリアミン及びそれらの誘導体;グアニジン及びその誘導体;尿素及びその誘導体;並びにこれらの混合物からなる群から選択される」と記載されているのを、
「(a)有機アルカリ剤が、アミノ酸から選択される」に訂正する。

そして、訂正事項1及び2は、訂正前の請求項1を直接又間接的に引用する訂正前の請求項2?7及び14?20の一群の請求項についてされたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、「(a)アルカリ剤」の種類を「アミノ酸及びアミノ酸のオリゴマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される」に限定するものであり、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、「(a)アルカリ剤」として、「アミノ酸及びアミノ酸のオリゴマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される」点は、訂正前の請求項3、本件特許明細書の段落【0047】に記載されており、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてされたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項1は、(a)有機アルカリ剤の種類を限定し、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、「(a)アルカリ剤」の種類を訂正前の請求項3に列挙記載されたものから、「アミノ酸から選択されるもの」に限定するものであり、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2に係る点は、訂正前の請求項3、本件特許明細書の段落【0047】に記載されており、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてされたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項2は、訂正前の「(a)有機アルカリ剤」として列挙記載されたものから特定のものに限定し、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7、14-20〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?7、14?20に係る発明(以下「本件発明1?7、14?20」等といい、これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?7、14?20に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
熱でケラチン繊維を再成形するための組成物であって、
(a)8.0?13.5のpKa値を有する、少なくとも1種の有機アルカリ剤と、
(b)少なくとも1種の高分子増粘剤と
を含み、
pHが8.0?12であり、
組成物の総質量に対して0.1質量%未満の還元剤を含むか、又は還元剤を一切含まず、
(a)有機アルカリ剤が、アミノ酸及びアミノ酸のオリゴマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、組成物。
【請求項2】
(a)有機アルカリ剤が、8.0?12.5のpKa値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)有機アルカリ剤が、アミノ酸からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物中の(a)有機アルカリ剤の量が、組成物の総質量に対して0.1?25質量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(a)8.0?13.5のpKa値を有する有機アルカリ剤とは異なる、少なくとも1種のアルカリ剤を更に含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種の酸を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
アンモニアを一切含まない、又は組成物の総質量に対して1質量%未満のアンモニアを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。

【請求項14】
(b)高分子増粘剤が、少なくとも1つの糖単位を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
組成物中の(b)高分子増粘剤の量が、組成物の総質量に対して0.01?10質量%である、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
組成物の粘度が、800mPa・s以上である、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
チオール化合物を一切含まない、又は組成物の総質量に対して1質量%未満のチオール化合物を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
酸化剤を一切含まない、又は組成物の総質量に対して1質量%未満の酸化剤を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
ケラチン繊維のための、再成形する方法であって、
前記ケラチン繊維上へ、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物を塗布する工程と、
前記ケラチン繊維を加熱する工程と、
任意選択で前記ケラチン繊維を濯ぐ且つ/又は乾燥させる工程と
を含む、方法。
【請求項20】
ケラチン繊維が、少なくとも80℃の温度に加熱される、請求項19に記載の方法。」


第4 取消理由の概要及び特許異議申立理由の概要について
1 令和2年12月18日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要
請求項1?7、14?20に係る特許に対して、当審が令和2年12月18日付けで、特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

「1.(新規性) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2.(進歩性) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
3.(サポート要件) 本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。」

「第2 理由1、2について」
「(1)・理由1、2
・請求項 1-5、7、14、15、17-20
・引用文献 1、5」
「(2)・理由1、2
・請求項 1-4,7、14-19
・引用文献 2、5」
「(3)・理由1、2
・請求項1-4,7,17-19
・引用文献 3、6」
「(4)・理由2
・請求項 1-7、14-20
・引用文献 4、1-3、5、7、8、9」

「第3 理由3について
・請求項 1-7、14-20」

「<引用文献等一覧>
1.国際公開第2013/145330号(甲第2号証)
2.特開平7-291840号公報(甲第3号証)
3.米国特許第2154924号明細書(甲第4号証)
4.特表2013-528158号公報(甲第5号証)
5.WIKIPEDIAウェブサイト、 「Ethanolamine」 6.WIKIPEDIAウェブサイト、 「Morpholine」、検索日:令和2年7月9日、インターネット(甲第8号証)
7.WIKIPEDIAウェブサイト、「タンパク質を構成するアミノ酸」、検索日:令和2年11月12日、インターネット
8.特開2006-188441号公報
9.特開平9-263521号公報
10.ChemicalBookウェブサイト、「尿素[一般有機合成用] 」 (合議体注:現在のアドレスはhttps://m.chemicalbook.com/ProductChemicalPropertiesCB5853861_JP.htm)」


2 特許異議申立理由の概要
(1) 特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項について(同法第113条第2号)
ア 本件特許発明1?7及び14?19は、 甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明であるか、あるいはこれら各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号に該当するか又は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
イ 本件特許発明1?4、7及び14?19は、 甲第3号証に記載された発明であるか、又は甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号に該当するか又は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
ウ 本件特許発明1?4、6?7及び15?20は、 甲第4号証に記載された発明であるか、又は甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号に該当するか又は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
また、本件特許発明14は、甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(2) 特許法第36条第6項第1号について(同法第113条第4号)
本件の特許請求の範囲の記載には不備があり、 本件特許発明1?7、14?20は、 特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(3) 特許法第36条第6項第2号について(同法第113条第4号)
本件の特許請求の範囲の記載には不備があり、 本件特許発明1?7、14?20は、 特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(4) 証拠方法
甲第1号証:米国特許公報第2013/0167861号公報
甲第2号証:国際公開第2013/145220号
甲第3号証:特開平7-291840号公報
甲第4号証:米国特許第2154924号明細書
甲第5号証:特表2013-528158号公報
甲第6号証:WIKIPEDIAウェブサイト、「Ethanolamine」、、出力日:令和2年7月9日)
甲第7号証:WIKIPEDIAウェブサイト、「Triethanolamine」、、出力日:令和2年7月9日)
甲第8号証:WIKIPEDIAウェブサイト、「Morpholine」、、出力日:令和2年7月9日)
甲第9号証:職場のあんぜんサイト 「安全データシート モルホリン」、 甲第10号証:ChemicalBookウェブサイト 「尿素[一般有機合成用]」、、出力日:令和2年7月15日)


第5 当審の判断:取消理由の理由1、2について
1 引用文献に記載された事項
引用文献1、2、3及び4には以下の記載がある。

(1) 引用文献1(甲第2号証:国際公開第2013/145220号)
引用文献1は外国語文献であるので、合議体の翻訳文により記載する。
ア1 「1. 以下のステップを備えるケラチン繊維、好ましくは毛髪を処理する方法、
少なくとも1つの還元剤を組成物の全重量の0.01?10重量%の量で、下記式のイオンの少なくとも1つの供給源を組成物の全重量に対して0.01?10重量%の量で含むことを特徴とする化粧品組成物をケラチン繊維に適用し、

Xは、O^(-)、OH、NH_(2)、OH、OCOO^(-)からなる群から選択される基であり、

閉塞空間内にケラチン繊維配置し、
ケラチン繊維を加熱すること。」(請求項1)

イ1 「組成物2
成分 量(重量%)
炭酸水素ナトリウム 2.0
ペンテト酸五ナトリウム(水溶液中40%) 0.4
ヒドロキシエチルセルロース(PM1,300,000) 0.2
モノエタノールアミン pH8.2とする量
水 100とする量」
(第20頁の一番上の表)

ウ1 「比較例2
組成物2を、あらかじめ1.7cmのローラーに巻き付けた1gの日本人毛束に15分間適用した。次いでローラーをプラスティックフィルムで覆い、デジタルパーママシン(オーヒロ、モデルODIS-2)に接続した。90℃で15分間加熱した後、毛髪をすすぎ、乾燥した。」(第21頁第6?11行)

エ1 「pHを調整するために、本発明のイオン源以外の酸性またはアルカリ剤を、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。酸性剤またはアルカリ剤の量は限定されないが、組成物の総重量に対して0.1 -5重量%であってよい。酸性剤としては、クエン酸、乳酸、リン酸、塩酸(HC1)などの化粧品に一般的に使用される任意の無機酸または有機酸を挙げることができる。HCl が好ましい。 アルカリ剤としては、化粧品に一般的に使用される無機または有機の塩基性剤;アンモニア;モノ、ジ、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン;水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム;尿素、グアニジンおよびそれらの誘導体;リジン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸;および下記構造に示されるようなジアミン・・・」(第12頁最下行?第13頁9行)

オ1 「

注 合議体訳:Comparative Example2:比較実施例2
Reductive step:還元工程
Composition 2:組成物2
Curl efficiency:カール効率
Curl retention:カール保持」

(2) 引用文献2(甲第3号証:特開平7-291840号公報)
ア2 「【請求項1】 ケラチン繊維類を一時的に成形するための化粧品組成物における単独成形剤および/または成形保持剤として、グアガムを使用することを特徴とする、グアガムの使用方法。
・・・
【請求項22】 前記化粧品組成物が、防腐剤、pH調節剤類、および香料類から選択される添加物をさらに含有することを特徴とする、請求項1ないし21のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項23】 前記ケラチン繊維類が、髪であることを特徴とする、請求項1ないし22のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項24】 前記化粧品組成物が、ヘアースタイリング組成物および/またはヘアー固定組成物であることを特徴とする、請求項1ないし23のいずれか1項に記載の使用方法。」

イ2 「【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
美容院において行われる、’ヘアーセット’とは、毛髪に一時的成形(一般的にはウエーブ成形、たとえば穏やかなカール、きついカール等)を施すことからなる単純な操作を示すものとして知られている。この一時的成形は、いわゆるパーマネント変形処理とは異なり、毛髪を再度濡らした場合、特に水またはシャンプーでセット処理した毛髪を洗浄すると、即座に消えるものである。一方、いわゆるパーマネント変形処理の場合には、純粋な化学変換および/または処理(還元/酸化)がケラチン繊維類に施され、髪に形成された最終形状が、この場合、上記外部薬剤に対してもはや変化しない(または多少、変化する)ものである。
【0003】
ヘアーセット(または一時的変形)を行う最も一般的な技術は、まず、予め濡らしたまたはまだ湿っている髪に(カーラーまたはローラータイプ等の従来の支持体を用いて)引張力を加え、次いで、引張力をかけたまま、30℃から60℃までの間の温度に加熱したサロンヘアードライヤーで、乾燥させるべき髪の量に応じて、20分から60分の範囲の時間、乾燥させ、その後、引張力を付与する手段を、前記乾燥した髪から外し、最後に、所望の最終形状のヘアースタイルを得るべく、髪に仕上げの櫛入れをすることからなる。
または、ブラッシングを行うことも可能であり、ブラッシングは、髪を乾燥させながら、ブラシを用いて成形することからなるものである。
・・・
【0006】
本発明の目的は、特に、上記問題点を解決することである。
より詳細には、本発明の目的は、ケラチン繊維類を一時的に成形させる方法を提案することであり、本発明によれば、通常の保持具の使用を排除可能にする一方、該操作後、均一な見かけで均一感のあるケラチン繊維類にすることが可能な方法を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段および作用】
したがって、本主題に関して鋭意研究した結果、本出願人は全く予想外で驚くべきことに、上記目的は、化粧品として許容されるビヒクル中において、ビヒクル中のグアガムを、ケラチン繊維類用の単独の成形剤および/または成形保持剤として用いることによって達成可能であることを見い出した。この発見が本発明の基礎となるものである。
【0008】
本発明の主題は、ケラチン繊維類を一時的に成形するための化粧品組成物において、ケラチン繊維類、特に髪、まつげまたは眉毛用単独成形剤および/または成形保持剤として、グアガムを使用することを特徴とする、グアガムの使用方法である。」

ウ2 「【0027】実施例4
以下の組成の本発明によるゲル(1)を調製した:
-ジャガー(JAGUAR)C13S 1.1g
-エタノール 30g
-モノエタノールアミン pH8とするための適量
-脱イオン水 合計 100g
以下の組成の比較ゲル(2)を調製した:
-グッドリッチ(Goodrich)社から商品名カルボポール(CARBOPOL)934として販売されている、架橋アクリル酸ポリマー 1.1g
-エタノール 30g
-モノエタノールアミン pH8とするための適量
-脱イオン水 合計 100g
【0028】10gのゲル(1)を、洗浄して水気をきった頭髪の左半分に適用し、10gのゲル(2)を、洗浄して水気をきった頭髪の右半分に適用した。カールは、指を用いて、両側の髪を巻上げることによって形成された。髪を次いでフードドライヤーで乾燥し、乾燥後、髪を櫛でといた。左半分(本発明)において、髪はもつれをほどきやすく、スタイルはふくらみのあるものである。これに対して、右半分(比較)においては、髪はもつれをほどきにくく、粗くて光沢がかけるものである。」

エ2 「【0019】カチオン基類により変性されたグアガム類は、それ自体既に知られているものであり、たとえば、米国特許3,589,578および4,0131,307に記載されている。該ガム類は、たとえば、メイホール(MEYHALL)社から販売されている商品名ジャガー(JAGUAR)C13S、ジャガー(JAGUAR)C15、ジャガー(JAGUAR)C17である。」

(3) 引用文献3(甲第4号証:米国特許第2154924号明細書)
引用文献3は外国語文献であるので、合議体の翻訳文により記載する。

ア3 「1. 約10重量%?約20重量%のモルホリンと約1重量%のロジンとを含有する水溶液を含む、毛髪ウェービング調製物。」(請求項1)

イ3 「 実施例1
ウェービングを施されるべき毛髪を房に分けて、水中に溶解された、6%のモルホリンと約1%のライトウッドロジンから構成される組成物で完全に湿潤させた。次いで、パーマネントウェービング手技において慣用される種類のマンドレル上にきつく房を巻き付け、抵抗素子を用いて電気的に加えられた熱に供した。約15分後に、加熱を停止し、最後に、マンドレルから毛髪を取り外した。
この操作によって、外見上自然で、その後に行われるヘアドレッシングを極めて容易にする深い縮れたウェーブをもたらした。毛髪は、その自然な光沢の多くを保持し、ウェービング操作においてしばしば現れる、粗く、もろい末端は存在しなかった。」 (第2カラム第28?45行)

ウ3 「 実施例4
ロジンおよび油の両方を含有する組成物を、以下の材料で形成した。
重量%
混合ヒマシ油・オリーブ油 9.9
ステアリン酸 1.8
モルホリン 15.2
ライトロジン 1.0
香油 0.8
水 72.0」(第3カラム6 第24?34行)

エ3 「本発明の組成物を使用するウェービング操作は、 一般に、 本分野における通常の慣行に従う。 毛髪を房に分けた後に、 および毛髪がマンドレルまたはカーラーに巻き付けられる前に、 ウェービング液を毛髪に塗布することが好ましいが、 所望であれば、 これらの操作は、 逆の順序で実施され得る。5?25分の加熱時間が通常十分であり、 多くの場合、 熱は約10分を超えて加える必要はない。電気抵抗 素子が慣用の熱源を形成するが、化学的にまたはその他の方法で生成される熱も使用することができる。 一部の事例では、 周囲温度でのウェービング液の蒸発のみが十分である。」 (第3カラム第53?67行)

オ3 「モルホリンの25%水溶液は約11.2のpHを有し」 (第1カラム第43?44行)

カ3 「本発明者らの改善されたウェービング組成物を形成する上で、 毛髪に対する軟化剤の作用は、弱粘着性増粘剤、油又は脂肪、吸湿材及び乳化剤などの材料との軟化剤の組み合わせを通じて調節され、改変される。 例えば、ロジン、アラビアゴム、トラガカントゴムなどを組成物中に含めることによって、 ウェービング作用が促進され、 増大した縮れが確保される。」(第1カラム第53行?第2カラム第6行)

(4) 引用文献4(甲第5号証:特表2013-528158号公報)
ア4 「【請求項1】
ケラチン繊維を処理する方法であって、 前記ケラチン繊維上に機械的張力下で1種又は数種のアルカリ剤を含む組成物を適用する工程; 次いで、前記ケラチン繊維を閉塞空間中に配置する工程; 次いで、前記ケラチン繊維を加熱する工程を含み、 前記組成物が、還元剤及び/又は式:
【化1】

(式中、 Xは、O^(-)、OH、NH_(2)、O-OH及びO-COO^(-)からなる群から選択される基である)の1種又は数種のイオン源を含まない、方法。
・・・
【請求項3】
前記機械的張力が、カーラー、ローラー、プレート及びアイロンからなる群から選択される少なくとも1つの再成形手段によって提供される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記閉塞空間が、少なくとも1つの被覆手段により形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
・・・
【請求項7】
前記ケラチン繊維を加熱する工程の間、前記ケラチン繊維が50℃から250℃で加熱される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
・・・
【請求項10】
前記アルカリ剤が無機アルカリ剤である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記無機アルカリ剤が、アンモニア;アルカリ金属水酸化物;及びアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属リン酸塩、及び/又はリン酸一水素塩からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アルカリ剤が有機アルカリ剤である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記有機アルカリ剤が、モノアミン及びその誘導体;ジアミン及びその誘導体;ポリアミン及びその誘導体;塩基性アミノ酸及びその誘導体;塩基性アミノ酸及びその誘導体のオリゴマー;塩基性アミノ酸及びその誘導体のポリマー;尿素及びその誘導体;並びにグアニジン及びその誘導体からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アルカリ剤が、アルギニン、尿素及びモノエタノールアミンからなる群から選択される、請求項12又は13のいずれか一項に記載の方法。」

イ4 「【0050】
本発明において使用される組成物はまた、1つ又は複数の化粧料成分 (cosmetic agent)を含んでもよい。化粧料成分の量は制限されないが、組成物の合計重量に対して0.1重量%から10重量%であってよい。化粧料成分は、揮発性又は不揮発性、直鎖状又は環状の、アミン型又はそうではない、シリコーン、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性又は両性のポリマー、ペプチド及びその誘導体、タンパク質加水分解物、合成又は天然のろう、特に脂肪アルコール、膨張剤及び浸透剤、並びに他の活性化合物、例えば、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性、両性又は双性イオン性の界面活性剤、抜け毛防止剤、抗フケ剤、会合型又はそうではない天然又は合成の増粘剤、懸濁化剤、金属イオン封鎖剤、不透明化剤(opacifying agent)、染料、日焼け止め剤、充填剤、ビタミン又はプロビタミン、ミネラル、植物油又は合成油、並びに香料、保存剤、安定化剤、還元剤並びにそれらの混合物等からなる群から選択することができる。」

ウ4 「【0035】
(組成物)
本発明に使用される組成物は、1種又は数種のアルカリ剤を含む。
【0036】
アルカリ剤は、無機アルカリ剤であってよい。無機アルカリ剤は、アンモニア;アルカリ金属水酸化物;アルカリ土類金属水酸化物;リン酸ナトリウム及びリン酸一水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩及びリン酸一水素塩からなる群から選択されることが好ましい。
【0037】
無機アルカリ金属水酸化物の例として、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを挙げることができる。アルカリ土類金属水酸化物の例として、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムを挙げることができる。無機アルカリ剤として、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0038】
アルカリ剤は、有機アルカリ剤であってもよい。有機アルカリ剤は、モノアミン及びその誘導体;ジアミン及びその誘導体;ポリアミン及びその誘導体;塩基性アミノ酸及びその誘導体;塩基性アミノ酸及びその誘導体のオリゴマー;塩基性アミノ酸及びその誘導体のポリマー;尿素及びその誘導体;並びにグアニジン及びその誘導体からなる群から選択されることが好ましい。
【0039】
有機アルカリ剤の例として、モノ、ジ、及びトリエタノールアミン並びにイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン;尿素、グアニジン及びそれらの誘導体;リシン、オルニチン又はアルギニン等の塩基性アミノ酸;並びに以下の構造:
【0040】
【化4】


【0041】
(式中、Rは、ヒドロキシル又はC1?C4アルキル基により場合により置換されているプロピレン等のアルキレンを表し、R1、R2、R3及びR4は独立して、水素原子、アルキル基又はC1?C4ヒドロキシアルキル基を表す)に記載されているもの等のジアミン(これは、1,3-プロパンジアミン及びその誘導体により例示することができる)を挙げることができる。アルギニン、尿素及びモノエタノールアミンが好ましい。
【0042】
アルカリ剤は、その溶解性に応じて、組成物の合計重量に対して0.1重量%?60重量%、好ましくは0.2重量%?30重量%、より好ましくは0.3重量%?20重量%の合計量で使用され得る。
・・・
【0048】
組成物のpHは、6から13まで、好ましくは7から12.5の間、より好ましくは8.0から12.0の間の範囲であってよい。組成物のpHが比較的高くない場合、組成物によるケラチン繊維への損傷をより低減することができる。」

エ4 「【0106】
(実施例)
本発明を、実施例によってより詳細に説明するが、これは本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0107】
組成物1?4以下の組成物を、成分(活性成分重量%)を混合することによって調製した。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】



オ4 「【0112】
実施例1?4及び比較例1?4
(実施例1)
組成物1を、1.7cmパーマローラーに予め巻いておいた1gの日本人の毛髪束上に室温で15分間適用した。次いで、パーマローラーを、プラスチックフィルムにより覆い、Digital Perm Machine(Oohiro、型番ODIS-2)に差し込んだ。90℃で15分間の加熱プロセスの後、毛髪をすすぎ、乾燥させた。
【0113】
(比較例1)
組成物1を、1.7cmパーマローラーに予め巻いておいた1gの日本人の毛髪束上に室温で15分間適用した。休止時間の後、毛髪をすすいだ。次いで、毛髪をパーマローラーから取り
外し、再度すすぎ、乾燥させた。
【0114】
(実施例2)
組成物2を、1.7cmパーマローラーに予め巻いておいた1gの日本人の毛髪束上に室温で15分間適用した。次いで、パーマローラーを、プラスチックフィルムにより覆い、Digital Perm Machine(Oohiro、型番ODIS-2)に差し込んだ。90℃で15分間の加熱プロセスの後、毛髪をすすぎ、乾燥させた。
【0115】
(比較例2)
組成物2を、1.7cmパーマローラーに予め巻いておいた1gの日本人の毛髪束上に室温で15分間適用した。休止時間の後、毛髪をすすいだ。次いで、毛髪をパーマローラーから取り
外し、再度すすぎ、乾燥させた。
・・・
【0120】
[試験]
実施例1?4及び比較例1?4の処理された毛髪束について、カール保持試験を実施した。
その目的のために、毛髪束を40℃で5時間、100%相対湿度下でまっすぐに束縛した状態に維持した。カール長時間持続性を、このカール保持試験の前及び後の人工的に付与形状を比較することによって評価した。結果を表1に示す。
【0121】
【表5】

++:非常に良好なカール効率
+:良好なカール効率
-:低いカール効率
--:非常に弱いカール効率
【0122】
表1は、本発明が良好なカール効率及びカール保持効果をもたらすことができることを示す。」

2 引用発明
(1) 引用文献1に記載された発明
摘示事項ア1?オ1、特にア1?ウ1の記載からみて、引用文献1には以下の発明が記載されている。
「髪に適用して閉塞空間内に配置して加熱して用いる組成物であり、カール成形・カール保持のよい、以下の成分からなる組成物。
成分 量(重量%)
炭酸水素ナトリウム 2.0
ペンテト酸五ナトリウム(水溶液中40%) 0.4
ヒドロキシエチルセルロース(PM1,300,000) 0.2
モノエタノールアミン pH8.2とする量
水 100とする量」
(以下、「引用発明1a」という。)

「引用発明1aの組成物をパーマローラで巻いた髪に適用し、閉塞空間(デジタルパーママシン)内でケラチン繊維を配置し、90℃で15分間加熱し、毛髪をすすぎ乾燥させて、毛髪を処理する方法。」
(以下、「引用発明1b」という。)

(2) 引用文献2に記載された発明
摘示事項ア2?エ2の記載、特にア2、ウ2の記載からみて、引用文献2には以下の発明が記載されている。
「髪であるケラチン繊維に適用し、カールを指で用いて巻き上げて形成し、フードドライヤーで乾燥させて、ケラチン繊維を一時的に成形するための化粧品組成物であって、成形剤としてグアガムを配合する、以下の組成のゲル組成物。
-ジャガー(JAGUAR)C13S 1.1g
-エタノール 30g
-モノエタノールアミン pH8とするための適量
-脱イオン水 合計 100g」(以下、「引用発明2a」という。)

「引用発明2aの化粧品組成物を、髪であるケラチン繊維に適用し、カールを指で用いて巻き上げて形成し、フードドライヤーで乾燥させる、ケラチン繊維の一時的成形又は変形方法。」(以下、「引用発明2b」という。)

(3) 引用文献3に記載された発明
摘示事項ア3?エ3、特にア3、ウ3、エ3の記載からみて、以下の発明が記載されている。
「16重量%のモルホリンと1重量%のライトウッドロジンとからなる毛髪ウェービング調製物。」(以下、「引用発明3a」という。)

また、摘示事項ア3、ウ3、エ3の記載からみて
「引用発明3aのウェービング調製物で髪を湿潤させ、パーマネントウェービング手技において慣用される種類のマンドレル上にきつく房を巻き付け、抵抗素子を用いて電気的に加えられた熱に供し、約15分後に 加熱を停止して、マンドレルから毛髪を取り外す、髪のウェービング形成方法。」(以下、「引用発明3b」という。)

(4) 引用文献4に記載された発明
摘示事項ア4?オ4の記載、特にア4、エ4、オ4の記載からみて、引用文献4には以下の発明が記載されている。
「ケラチン繊維を処理する方法に用いる組成物であって、 前記方法が、前記ケラチン繊維上に機械的張力下で1種又は数種のアルカリ剤を含む組成物を適用する工程; 次いで、前記ケラチン繊維を閉塞空間中に配置する工程; 次いで、前記ケラチン繊維を加熱する工程を含み、 前記組成物が、還元剤及び/又は式:
【化1】


(式中、 Xは、O^(-)、OH、NH_(2)、O-OH及びO-COO^(-)からなる群から選択される基である)の1種又は数種のイオン源を含まず、
前記アルカリ剤が有機アルカリ剤であり、
前記有機アルカリ剤が、モノアミン及びその誘導体;ジアミン及びその誘導体;ポリアミン及びその誘導体;塩基性アミノ酸及びその誘導体;塩基性アミノ酸及びその誘導体のオリゴマー;塩基性アミノ酸及びその誘導体のポリマー;尿素及びその誘導体;並びにグアニジン及びその誘導体からなる群から選択される、以下の組成の組成物。

成分 重量%
エタノールアミン又はアルギニン 10重量%
水 100に応じて適量
HCl pH 10まで適量」
(以下、「引用発明4a」という。)

「ケラチン繊維を処理する方法であって、引用発明4aの組成物を、1.7cmパーマローラーに予め巻いておいた1gの日本人の毛髪束上に室温で15分間適用し、次いで、パーマローラーをプラスチックフィルムにより覆い、Digital Perm Machine(Oohiro、型番ODIS-2)に差し込んで90℃で15分間の加熱プロセスの後、毛髪をすすぎ、乾燥させる工程を含む、方法。」
(以下、「引用発明4b」という。)

3 対比・判断
(1) 引用発明1a、1bに対して
ア 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と引用発明1aを対比する
引用発明1aの「モノエタノールアミン」は、技術常識からみて、本件発明1の「(a)8.0?13.5のpKa値」を有するものであるから、「(a)8.0?13.5のpKa値を有する、少なくとも1種の有機アルカリ剤」に相当する(なお、技術常識について、必要であれば、引用例5(甲第6号証)にモノエタノールアミンのpKaが9.5と記載されていることを参照。)。
引用発明1aの「ヒドロキシセルロース」は、本件発明1の「(b)少なくとも1種の高分子増粘剤」に相当する。
引用発明1aの「ケラチン繊維に適用し、閉塞空間内でケラチン繊維を配置し、加熱するための」「組成物」は、加熱によって毛髪のカール効率、カール保持がよいもの、つまり、熱により髪を再成形するためのものであるから、本件発明1の「熱でケラチン繊維を再成形するための組成物」に相当する。
また、引用発明1aは、組成物のpHが8.2であり、組成物は還元剤を含まないから、本件発明1の「pHが8.0?12であり、」及び「組成物の総質量に対して0.1質量%未満の還元剤を含むか、又は還元剤を一切含まない」との条件も満たすものである。
さらに、本件発明1aは、(a)、(b)成分以外で還元剤以外の成分も含んでよいものであるから、引用発明1に含まれる他の成分は両発明の相違点とはならない。
そうすると、本件発明1と引用発明1aは、
「熱でケラチン繊維を再成形するための組成物であって、
(a)8.0?13.5のpKa値を有する、少なくとも1種の有機アルカリ剤と、
(b)少なくとも1種の高分子増粘剤と
を含み、
pHが8.0?12であり、
組成物の総質量に対して0.1質量%未満の還元剤を含むか、又は還元剤を一切含まない、
組成物。」
の発明である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
(a)有機アルカリ剤が、本件発明1では、「アミノ酸及びアミノ酸のオリゴマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される」のに対し、引用発明1aでは、「モノエタノールアミン」である点。

(イ) 判断
まず、相違点1があるので、本件発明1は、引用発明1a、つまり、引用文献1に記載された発明ではない。
次に、上記相違点1について検討するに、引用文献1の摘示事項エ1には、pHを調整するために、酸性剤又はアルカリ剤が使用でき、アルカリ剤として無機アルカリ剤と有機アルカリ剤が記載され、該有機アルカリ剤として、モノ、ジ、トリエタノールなどのアルカノールアミンや、リジンやアルギニンなどの塩基性アミノ酸などが記載されてはいる。
しかしながら、本件発明1は、良好な使用勝手とともにケラチン繊維の高いウェーブ強度が得られる組成物の提供を目的とするものであり(本件特許明細書の段落【0008】)、実施例2と比較例3とをみるに、「アミノ酸及びアミノ酸のオリゴマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される」有機アルカリ剤単独よりも、高分子増粘剤を組み合わせて用いることで、使用勝手がよいだけでなく、高いウェーブ強度が得られることが記載されている。そして、このような組合せにより、特に、高いウェーブ強度などの良好な効果が得られることは、引用文献1には記載も示唆もないから、このような効果を目的に、引用発明1aにおいて、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
また、本件発明1の効果について検討するに、上述したように、本件発明1は、使用勝手がよいだけでなく、高いウェーブ強度が得られるとの格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2?5、7、14、15、17、18について
本件発明2?5、7、14、15、17、18は、請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1にさらに限定を加えたものであるところ、本件発明1が上記アに記載したとおり、引用文献1に記載された発明ではなく、また、引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された事項から当業者が容易に発明することができたものでもないから、本件発明2?5、7、14、15、17、18も同様に判断される。

ウ 本件発明19について
引用発明1bを再掲する。
「引用発明1aの組成物をパーマローラで巻いた髪に適用し、閉塞空間(デジタルパーママシン)内でケラチン繊維を配置し、90℃で15分間加熱し、毛髪をすすぎ乾燥させて、毛髪を処理する方法。」

本件発明19は、請求項1?18に係る組成物を引用し、これを塗布する工程を含む、ケラチン繊維のための、再成形をする方法の発明である。
一方、引用発明1bは、毛髪を処理する方法の発明であるが、それに用いる組成物として引用発明1aを引用するものであるところ、上記ア(イ)、イで検討したとおり、本件発明1?5、7、14、15、17、18は、引用発明1a、つまり、引用文献1に記載された発明ではなく、また、引用文献1に記載された発明から当業者は容易に発明をすることができたものではないから、本件発明19も同様に判断され、本件発明19は、引用文献1aを引用する引用発明1b、つまり、引用文献1に記載された発明ではなく、また、引用文献1に記載された発明から当業者は容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明20について
本件発明20は、請求項19を直接引用し、本件発明19にさらに限定を加えたものであるところ、本件発明19が上記ウに記載したとおり、引用文献1に記載された発明ではなく、また、引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された事項から当業者が容易に発明することができたものでもないから、本件発明20も同様に判断される。

オ 小括
よって、本件発明1?5、7、14、15、17?20は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、同法同条第2項の規定に違反するものでもなく、同法第113条第2号に該当しないから、これらの発明に係る特許は取り消すべきものではない。

(2) 引用発明2a、2bに対して
ア 本件発明1について
(ア) 対比
引用発明2aを再掲する。
引用発明2a:「髪であるケラチン繊維に適用し、カールを指で用いて巻き上げて形成し、フードドライヤーで乾燥させる、髪を一時的に成形するための化粧品組成物であって、成形剤としてグアガムを配合する、以下の組成のゲル組成物。
-ジャガー(JAGUAR)C13S 1.1g
-エタノール 30g
-モノエタノールアミン pH8とするための適量
-脱イオン水 合計 100g」

本件発明1と引用発明2aを対比する
引用発明2aの「モノエタノールアミン」は、技術常識からみて「(a)8.0?13.5のpKa値」を有するものであるから、本件発明1の「(a)8.0?13.5のpKa値を有する、少なくとも1種の有機アルカリ剤」に相当する(なお、技術常識について、必要であれば、引用例5にモノエタノールアミンのpKaが9.5と記載されていることを参照。)。
引用発明2aの「ジャガー(JAGUAR)C13S」は、摘示事項ウ2の記載からみて、カチオン性の変成されたグアガムであるから、本件発明1の「(b)少なくとも1種の高分子増粘剤」に相当する。
引用発明2aの「髪であるケラチン繊維を髪に適用し、カールを指で用いて巻き上げて形成し、フードドライヤーで乾燥させる、髪を一時的に成形又は変形するための化粧品組成物」は、フードドライやーにより髪が加熱されて成形又は変形するものであるから、本件発明1の「熱でケラチン繊維を再成形するための組成物」に相当する。
また、引用発明2aは、還元剤を含まないから、本件発明1の「組成物の総質量に対して0.1質量%未満の還元剤を含むか、又は還元剤を一切含まない」との条件も満たすものである。
引用発明2aは、組成物のpHが8.0であり、組成物には還元剤を含まないから、本件発明1の「pHが8.0?12であり、」及び「組成物の総質量に対して0.1質量%未満の還元剤を含むか、又は還元剤を一切含まない」との条件も満たすものである。
さらに、本件発明1は、(a)、(b)成分以外で還元剤以外の成分も含んでよいものであるから、引用発明2aに含まれる他の成分は両発明の相違点とはならない。
そうすると、本件発明1と引用発明2aとは、
「熱でケラチン繊維を再成形するための組成物であって、
(a)8.0?13.5のpKa値を有する、少なくとも1種の有機アルカリ剤と、
(b)少なくとも1種の高分子増粘剤と
を含み、
pHが8.0?12であり、
組成物の総質量に対して0.1質量%未満の還元剤を含むか、又は還元剤を一切含まない、
組成物。」
の発明である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点2>
(a)有機アルカリ剤が、本件発明1では、「アミノ酸及びアミノ酸のオリゴマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される」のに対し、引用発明2aでは、「モノエタノールアミン」である点。

(イ) 判断
上記相違点2について検討する。
引用文献2には、エタノールアミン以外のアルカリ剤について、記載も示唆もない。
したがって、引用発明2aにおいて、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
本件発明1の効果については、上記(1)ア(イ)で記載したとおりであり、格別顕著なものと認められる。
したがって、本件発明1は、引用文献2に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2?4、7、14?18について
本件発明2?4、7、14?18は、請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1にさらに限定を加えたものであるところ、本件発明1が上記アに記載したとおり、引用文献2に記載された発明ではなく、また、引用文献2に記載された発明及び引用文献2に記載された事項から当業者が容易に発明することができたものでもないから、本件発明2?4、7、14?18も同様に判断される。

ウ 本件発明19について
引用発明2bを再掲する。
「引用発明2aの化粧品組成物を、髪であるケラチン繊維に適用し、カールを指で用いて巻き上げて形成し、フードドライヤーで乾燥させる、毛髪の一時的成形又は変形方法。」

本件発明19は、請求項1?18に係る組成物を引用し、これを塗布する工程を含む、ケラチン繊維のための、再成形をする方法の発明である。
一方、引用発明2bは、毛髪の一時的成形又は変形方法の発明であるが、化粧料組成物として引用発明2aを引用するものであるところ、上記ア(イ)、イで検討したとおり、本件発明1?7、14?18は、引用発明2a、つまり、引用文献2に記載された発明ではなく、また、引用発明2に記載された発明から当業者は容易に発明をすることができたものではないから、本件発明19も同様に判断され、本件発明19は、引用文献2aを引用する引用発明2b、つまり、引用文献2に記載された発明ではなく、また、引用文献2に記載された発明から当業者は容易に発明をすることができたものではない。

エ 小括
よって、本件発明1?4、7、14?19は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、同法同条第2項の規定に違反するものでもなく、同法第113条第2号に該当しないから、これらの発明に係る特許は取り消すべきものではない。

(3) 引用発明3a、3bに対して
ア 本件発明1について
(ア) 対比
引用発明3aを再掲する。
「16重量%のモルホリンと1重量%のライトウッドロジンとからなる毛髪ウェービング調製物。」

本件発明1と引用発明3aを対比する。
引用発明3aの「モルホリン」は、技術常識である引用情報7によれば、pKaが8.36であるから、本件発明1の「(a)8.0?13.5のpKa値を有する、少なくとも1種の有機アルカリ剤」に相当する(なお、技術常識について、必要であれば、引用例5にモノエタノールアミンのpKaが9.5と記載されていることを参照。)。
引用発明3aの「ライトロジン」は、本件発明1の「(b)少なくとも1種の高分子増粘剤」に相当する。
引用発明3aの「毛髪ウェービング調製物」は、毛髪に適用後、マンドレル上に巻き付けて熱に供されてウェービングを形成するものであるから、本件発明1の「熱でケラチン繊維を再成形するための組成物」に相当する。
引用発明3aは、組成物には還元剤を含まないから、本件発明1の「組成物の総質量に対して0.1質量%未満の還元剤を含むか、又は還元剤を一切含まない」との条件も満たすものである。
また、引用発明3aは、組成物のpH値について規定がないが、アルカリ性化合物であるモルホリンはアルカリ性化合物であり、モルホリンの25%水溶液のpHが11.2であること(摘示事項オ3)を考慮すれば、本件発明1の「pHが8.0?12であり」との条件と一致する蓋然性が高いといえる。
そうすると、本件発明1と引用発明3aとは、
「熱でケラチン繊維を再成形するための組成物であって、
(a)8.0?13.5のpKa値を有する、少なくとも1種の有機アルカリ剤と、
(b)少なくとも1種の高分子増粘剤と
を含み、
pHが8.0?12であり、
組成物の総質量に対して0.1質量%未満の還元剤を含むか、又は還元剤を一切含まない、
組成物。」
の発明である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点3>
(a)有機アルカリ剤が、本件発明1では、「アミノ酸及びアミノ酸のオリゴマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される」のに対し、引用発明3aでは、「モルホリン」である点。

(イ) 判断
まず、相違点3があるので、本件発明1は、引用発明3a、つまり、引用文献3に記載された発明ではない。
次に、上記相違点3について検討する。
引用文献3には、摘示事項ア3?カ3をみても、モルホリン以外のアルカリ剤について、記載も示唆もない。
したがって、引用発明3aにおいて、相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
本件発明1の効果については、上記(1)ア(イ)で記載したとおりであり、格別顕著なものと認められる。
したがって、本件発明1は、引用文献3に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2?4、7、14?18について
本件発明2?4、7、14?18は、請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1にさらに限定を加えたものであるところ、本件発明1が上記アに記載したとおり、引用文献3に記載された発明ではなく、また、引用文献3に記載された発明及び引用文献3に記載された事項から当業者が容易に発明することができたものでもないから、本件発明2?4、7、14?18も同様に判断される。

ウ 本件発明19について
引用発明3bを再掲する。
「引用発明3aのウェービング調製物で髪を湿潤させ、パーマネントウェービング手技において慣用される種類のマンドレル上にきつく房を巻き付け、抵抗素子を用いて電気的に加えられた熱に供し、約15分後に 加熱を停止して、マンドレルから毛髪を取り外す、髪のウェービング形成方法。」

本件発明19は、請求項1?18に係る組成物を引用し、これを塗布する工程を含む、ケラチン繊維のための、再成形をする方法の発明である。
一方、引用発明3bは、髪のウェービング形成方法であるが、それに用いるウェービング調製物として引用発明3aを引用するものであるところ、上記ア(イ)、イで検討したとおり、本件発明1?4、7、14?18は、引用発明3a、つまり、引用文献3に記載された発明ではなく、また、引用文献3に記載された発明から当業者は容易に発明をすることができたものではないから、本件発明19も同様に判断され、本件発明19は、引用発明3aを引用する引用発明3b、つまり、引用文献3に記載された発明ではなく、また、引用文献3に記載された発明から当業者は容易に発明をすることができたものではない。

エ 小括
よって、本件発明1?4、7、17?19は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、同法同条第2項の規定に違反するものでもなく、同法第113条第2号に該当しないから、これらの発明に係る特許は取り消すべきものではない。

(4) 引用発明4a、4bに対して
ア 本件発明1について
(ア) 対比
引用発明4aを再掲する。
「ケラチン繊維を処理する方法に用いる組成物であって、 前記方法が、前記ケラチン繊維上に機械的張力下で1種又は数種のアルカリ剤を含む組成物を適用する工程; 次いで、前記ケラチン繊維を閉塞空間中に配置する工程; 次いで、前記ケラチン繊維を加熱する工程を含み、 前記組成物が、還元剤及び/又は式:
【化1】


(式中、 Xは、O-、OH、NH_(2)、O-OH及びO-COO-からなる群から選択される基である)の1種又は数種のイオン源を含まず、
前記アルカリ剤が有機アルカリ剤であり、
前記有機アルカリ剤が、モノアミン及びその誘導体;ジアミン及びその誘導体;ポリアミン及びその誘導体;塩基性アミノ酸及びその誘導体;塩基性アミノ酸及びその誘導体のオリゴマー;塩基性アミノ酸及びその誘導体のポリマー;尿素及びその誘導体;並びにグアニジン及びその誘導体からなる群から選択される、以下の組成の組成物。

成分 重量%
エタノールアミン又はアルギニン 10重量%
水 100に応じて適量
HCl pH 10まで適量」

本件発明1と引用発明4aを対比する
引用発明4aの「モノエタノールアミン」又は「アルギニン」は、技術常識からみて「(a)8.0?13.5のpKa値」を有するものであるから、本件発明1の「(a)8.0?13.5のpKa値を有する、少なくとも1種の有機アルカリ剤」に相当する(なお、技術常識について、必要であれば、引用例5にモノエタノールアミンのpKaが9.5と記載されていること、引用例7にアルギニンのpKaが9.00、12.10と記載されていることを参照。)。
また、引用発明4aの「アルギニン」については、本件発明1の「(a)有機アルカリ剤が、アミノ酸及びアミノ酸のオリゴマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される」にも相当する。
引用発明4aの「ケラチン繊維を処理する方法に用いる組成物」は、「ケラチン繊維上に機械的張力下で1種又は数種のアルカリ剤を含む組成物を適用」して、「ケラチン繊維を閉塞空間中に配置」し、「次いで、前記ケラチン繊維を加熱する」工程からなる毛髪の処理のために用いるものであるから、本件発明1の「熱でケラチン繊維を再成形するための組成物」に相当する。
引用発明4aは、組成物のpHが10.0であり、還元剤も含まないから、本件発明1の「pHが8.0?12であり」及び「組成物の総質量に対して0.1質量%未満の還元剤を含むか、又は還元剤を一切含まない」との条件も満たすものである。
さらに、本件発明1は、(a)、(b)成分以外で還元剤以外の成分も含んでよいものであるから、引用発明4aに含まれるpH調整のためのHClは両発明の相違点とはならない。
そうすると、本件発明1と引用発明4aとは、
「熱でケラチン繊維を再成形するための組成物であって、
(a)8.0?13.5のpKa値を有する、少なくとも1種の有機アルカリ剤と、
を含み、
pHが8.0?12であり、
組成物の総質量に対して0.1質量%未満の還元剤を含むか、又は還元剤を一切含まず、
(a)有機アルカリ剤が、アミノ酸及びアミノ酸のオリゴマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、
組成物。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点4>
本件発明1は、「(b)少なくとも1種の高分子増粘剤」を含むことを特定するのに対し、引用文献4aでは、この特定はない点。

(イ) 判断
上記相違点4について検討する。
パーマ等の髪を成形する化粧料分野において、増粘剤を用いて粘度を調整することはよく行われており(引用文献1摘示事項ア1、引用文献2摘示事項ア2、引用文献3摘示事項カ3)、また、液だれを防ぐために組成物の粘度を高分子増粘剤により調整することは技術常識である(引用文献8 特許請求の範囲、【0005】、引用文献9 特許請求の範囲、【0002】)。
そして、引用文献4にも「会合型又はそうではない天然又は合成の増粘剤」を配合できることは記載されている(摘示事項イ4)。
一方、本件発明1は、良好な使用勝手とともにケラチン繊維の高いウェーブ強度が得られる組成物の提供を目的とするものであり(本件特許明細書の段落【0008】)、実施例2と比較例3とをみるに、「アミノ酸及びアミノ酸のオリゴマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される」有機アルカリ剤単独よりも、高分子増粘剤を組み合わせて用いることで、使用勝手がよいだけでなく、高いウェーブ強度が得られることが記載されている。
ここで、この本件発明1における、「アミノ酸及びアミノ酸のオリゴマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される」有機アルカリ剤と高分子増粘剤を組み合わせて「高いウェーブ強度が得られること」については、引用文献4にも、他の引用文献1?3、8、9にも記載がなく、また、パーマ等の髪を成形する化粧料分野において技術常識といえるものでもない。
そして、本件発明1は、特定の有機アルカリ剤と高分子増粘剤を組み合わせることにより、使用勝手がよいだけでなく、「高いウェーブ強度が得られること」との予測できない格別顕著は効果が奏されるものである。
そうすると、本件発明1は、引用文献4に記載された発明並びに引用文献1?4、8、9に記載された事項及び技術常識(引用例5、7)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2?7、14?18について
本件発明2?7、14?18は、請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1にさらに限定を加えたものであるところ、本件発明1が上記アに記載したとおり、引用文献4に記載された発明並びに引用文献1?4、8、9に記載された事項及び技術常識(引用例5、7)に基づいて当業者が容易に発明することができたものでもないから、本件発明2?7、14?18も同様に判断される。

ウ 本件発明19について
引用発明4bを再掲する。
「ケラチン繊維を処理する方法であって、引用発明4aの組成物を、1.7cmパーマローラーに予め巻いておいた1gの日本人の毛髪束上に室温で15分間適用し、次いで、パーマローラーをプラスチックフィルムにより覆い、Digital Perm Machine(Oohiro、型番ODIS-2)に差し込んで90℃で15分間の加熱プロセスの後、毛髪をすすぎ、乾燥させる工程を含む、方法。」

本件発明19は、請求項1?18に係る組成物を引用し、これを塗布する工程を含む、ケラチン繊維のための、再成形をする方法の発明である。
一方、引用発明4bは、ケラチン繊維を処理する方法に関する発明であるが、これに用いる組成物として引用発明4aを引用するものであるところ、上記ア(イ)、イで検討したとおり、本件発明1?7、14?18は、引用発明4a、つまり、引用文献4に記載された発明並びに引用文献1?4、8、9に記載された事項及び技術常識(引用例5、7)に基づいて当業者が容易に発明することができたものではないから、本件発明19も同様に判断され、本件発明19は、引用発明4aを引用する引用発明4b、つまり、引用文献4に記載された発明並びに引用文献1?4、8、9に記載された事項及び技術常識(引用例5、7)に基づいて当業者が容易に発明することができたものでもない。

エ 本件発明20について
本件発明20は、請求項19を直接引用し、本件発明19にさらに限定を加えたものであるところ、本件発明19が上記ウに記載したとおり、引用文献4に記載された発明並びに引用文献1?4、8、9に記載された事項及び技術常識(引用例5、7)に基づいて当業者が容易に発明することができたものでもないから、本件発明20も同様に判断される。

オ 小括
よって、本件発明1?7、14?20は、特許法第29条第2項の規定に違反するものでもなく、同法第113条第2号に該当しないから、これらの発明に係る特許は取り消すべきものではない。


第6 当審の判断:取消理由の理由3について
1 取消理由の理由3の概要
「本件発明1では、「(a)8. 0?13. 5のpKa値を有する、少なくとも1種の有機アルカリ剤」と規定され、本件発明3では、当該(a)成分の有機アルカリ剤が「アミノ酸並びにアミノ酸のオリゴマー:モノアミン及びそれらの誘導体:ジアミン及びそれらの誘導体;ポリアミン及びそれらの誘導体;グアニジン及びその誘導体:尿素及びその誘導体;並びにこれらの混合物」と規定されている。
そして、本件特許明細書には、本件発明1に対応する実施例として、【0173】?【0190】、表1に、前記(a)成分の有機アルカリ剤として、ヒスチジンとグリシンを使用した実施例1、及びアルギニンを使用した実施例2において、ウェーブ強度、使い勝手に優れていたことが示されるのみである。
しかしながら、前記のアミノ酸以外の(a)成分の有機アルカリ剤や、(a)成分に相当しないpKa値を有する尿素について、有機アルカリ剤とはいえ構造や性質も異なることから、実施例で用いたアミノ酸と同様の効果を奏すると直ちに認めることはできない(なお、尿素のpKa値は0.10であることについては、引用例10を参照。)。
よって、本件発明1は、特定のアミノ酸以外の(a)成分を含む場合について、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。
請求項1を引用する本件発明2?7、14?20についても同様である。」

2 判断
本件訂正請求により、本件発明1は、(a)有機アルカリ剤について、「アミノ酸及びアミノ酸のオリゴマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される」ものに特定された。
そして、本件特許明細書の実施例の表1によれば、本件特許明細書には、本件発明1に対応する実施例として、表1に、前記(a)成分の有機アルカリ剤として、ヒスチジンとグリシンを使用した実施例1、及びアルギニンを使用した実施例2において、ウェーブ強度、使い勝手に優れていたことが記載されている。
これらの実施例によれば、「ヒスチジン」又は「アルギニン」と同様に、1分子中にカルボキシル基とアミン基を有する他の「アミノ酸及びアミノ酸のオリゴマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される」ものであれば、実施例と同様の効果を奏すると推認できるものといえる。
そうすると、上記取消理由の理由3にはその理由がなく、本件発明1?7、14?20に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、特許法第113条第4号の規定により、取り消されるべきものではない。


第7 当審の判断:取消理由で採用されなかった特許異議申立理由について
1 取消理由で採用されなかった特許異議申立理由の概要
取消理由で採用されなかった特許異議申立理由は、第4 2に記載されたもののうち、以下の(1)アの甲第1号証に基づく理由と、(3)の理由の2つである。

「(1)ア 本件特許発明1?7及び14?20は、 甲第1号証に記載された発明であるか、あるいはこの発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号に該当するか又は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。」

「(3) 特許法第36条第6項第2号について(同法第113条第4号)
本件の特許請求の範囲の記載には不備があり、 本件特許発明1?7、14?20は、 特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。」

2 甲第1号証に基づく異議申立理由(上記(1)ア)について
(1) 甲第1号証(米国特許公報第2013/0167861号公報)に記載された事項
甲第1号証は外国語文献であるので、合議体の翻訳文により記載する。

甲1ア 「試験処方K
褐色の色合い
重量%
水 QS
キサンタンガム 2
トリエタノールアミン 0. 2
モノエタノールアミン 1
ヘキシレングリコール 2
尿素 10
EDTA二ナトリウム 0. 2
アスコルビン酸 0. 3
亜硫酸ナトリウム 0. 4
m-アミノフェノール 0. 6
1, 4-ジアミノベンゼン 0. 58」

甲1イ 「実施例7 カールの減少と縮れの抑制
[0472] 髪見本:自然なウェーブのかかった髪タイプのサンプルから、ブリーチされた髪見本(毛束あたり-1.3 gの髪)を調製した。2つの髪見本を試験見本として割り当て、1つの見本を対照(処理なし)として割り当てた。
[0473] ステップ1:試験及び対照の髪見本をシャンプー(髪見本あたり0. 52g) で洗浄し、同時に30℃で2分間水道水で洗浄し、髪のもつれをほどくために杭かした。次に、試験見本をブロー乾燥し、同時にまっすぐに引っ張った。
[0474] ステップ2:各試験見本は、毛髪を染色、並びにカール及び/又は縮れを低減するために、約4gの本発明の組成物(実施例6の本発明の処方K)で処理された。組成物は毛髪を櫛で楠かし、45℃で約20分間試験見本上に置いたままにした。次に、処理した各試験見本に 370°F(188℃)でチタン製フラットアイロンを各5秒かけて3回通過させることにより滑らかにした。
[0475] 工程 3-各試験見本は、櫛を通すことにより、本発明の中和組成物約1. 3グラム(中和組成物対髪見本の重量の比 1 : 1) で処理された。中和組成物は約5分間毛髪上に放置した。
[0476] 次に、試験及び対照の毛見本をシャンプー(見本あたり0.52 g) で洗浄し、同時に30℃で2分間水道水で洗浄し、髪のもつれをほどくために楠かした。見本を3回楡かしてから吊るして風乾させた。乾燥後、見本の長さと幅をコントロール見本と比較するために、試験及びコントロールの見本のデジタル写真を定規を背景にして撮影した。
[0477] カール及び/又は縮れ減少効果並びに毛髪上の人工色の持続性を決定するために、1つの試験見本及び1つの対照見本を、それぞれ1 0回シャンプー/洗浄/くし入れし、各サイクルの間に髪見本を吊るして風乾した。見本のデジタル写真を2サイクルごとに撮影した。
[0478] 髪見本の写真は、試験見本が対照見本よりも長く、有意によりまっすぐに見えることを示した。さらに、試験見本の幅は、対照見本の幅と比較して、試験見本の幅が狭いことからわかるように、縮れが大幅に少なかった。」

甲1ウ 「[0008] ヘアストレートナー又は再成形技術は、チオグリコール酸およびシステイン化合物のような還元剤又は亜硫酸塩及び亜硫酸水素塩のような非チオール系還元剤を熱と組み合わせて、永久的に毛髪結合またはタンパク質変性を減少させるために使用することができる。」

(2) 甲第1号証に記載された発明
摘示事項甲1ア、甲1イの[0474]?[0478]からみて、甲第1号証には以下の発明が記載されている。
「下記の組成物であって、毛髪に塗布し、370°F(188℃)でチタン製フラットアイロンを通過させて、カールの減少と縮れの抑制のための毛髪用組成物。
重量%
水 QS
キサンタンガム 2
トリエタノールアミン 0. 2
モノエタノールアミン 1
ヘキシレングリコール 2
尿素 10
EDTA二ナトリウム 0. 2
アスコルビン酸 0. 3
亜硫酸ナトリウム 0. 4
m-アミノフェノール 0. 6
1, 4-ジアミノベンゼン 0. 58」(以下、「甲1発明」という。)

(3) 対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明を対比するに、甲1発明には、還元剤である「亜硫酸ナトリウム」が組成物中「0.4重量%」で含まれており(還元剤については摘示事項 甲1ウ参照)、一方、本件発明1は、「組成物の総質量に対して0.1質量%未満の還元剤を含むか、又は還元剤を一切含ま」ないものであるから、本件発明1は、甲1発明、つまり甲第1号証に記載された発明ではない。
また、甲1発明における組成物中「0.4重量%」で含まれる「亜硫酸ナトリウム」を、本件発明1に特定される「0.1質量%未満の還元剤を含むか、又は還元剤を一切含ま」ないようにすることは、摘示事項甲1ウや他の甲第1号証の記載をみても示唆がなく、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2?7、14?20について
請求項1を直接又は間接的に引用する本件発明2?7、14?20についても、上記アで本件発明1について述べたのと同様であり、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 特許法第36条第6項第2号についての異議申立理由について
(1) 異議申立理由の内容
「本件特許明細書の【0047】には、(a)有機アルカリ剤として「尿素及びその誘導体」が例示されている。 しかし、尿素のpKa値は0. 10であり(甲第11号証(合議体注:甲第10号証の誤記だと思われる))、請求項1に規定される「(a) 8. 0?13. 5のpKa値を有する、少なくとも1種の有機アルカリ剤」を満たしていない。
また、本件特許明細書の【0064】には、(a)有機アルカリ剤として「トリエタノールアミン」例示されている。しかし、トリエタノールアミンのpKa値は7. 7 4であり(甲第7号証)、請求項1に規定される「(a) 8. 0?13. 5のpKa値を有する、少なくとも1種の有機アルカリ剤」を満たしていない。
このように、8. 0?13. 5のpKa値を有しない化合物も(a)有機アルカリ剤に含まれるものとされており、何が「(a)8. 0?13. 5のpKa値を有する、少なくとも1種の有機アルカリ剤」に含まれるのかが明確ではない。
したがって、請求項1及びこれを引用する請求項2-7、14-20に記載された発明は明確でない。」

(2) 判断
本件訂正請求により、本件発明1は、「(a)8. 0?13. 5のpKa値を有する、少なくとも1種の有機アルカリ剤」の(a)有機アルカリ剤について、「アミノ酸及びアミノ酸のオリゴマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される」ものに特定され、上記(1)の異議申立理由で記載された尿素、トリエタノールアミンは、その範囲に含まれないことが明らかとなったから、本件発明1は明確であり、また、請求項1を引用する本件発明2?7、14?20も同様に明確である。

4 小括
よって、取消理由で採用されなかった異議申立理由により、本件発明1?7、14?20に係る特許は取り消されるべきものではない。

第8 むすび
以上のとおり、請求項1?7、14?20に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に、請求項1?7、14?20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱でケラチン繊維を再成形するための組成物であって、
(a)8.0?13.5のpKa値を有する、少なくとも1種の有機アルカリ剤と、
(b)少なくとも1種の高分子増粘剤と
を含み、
pHが8.0?12であり、
組成物の総質量に対して0.1質量%未満の還元剤を含むか、又は還元剤を一切含まず、
(a)有機アルカリ剤が、アミノ酸及びアミノ酸のオリゴマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、
組成物。
【請求項2】
(a)有機アルカリ剤が、8.0?12.5のpKa値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)有機アルカリ剤が、アミノ酸から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物中の(a)有機アルカリ剤の量が、組成物の総質量に対して0.1?25質量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(a)8.0?13.5のpKa値を有する有機アルカリ剤とは異なる、少なくとも1種のアルカリ剤を更に含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種の酸を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
アンモニアを一切含まない、又は組成物の総質量に対して1質量%未満のアンモニアを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
熱でケラチン繊維を再成形するための組成物であって、
(c)3.5未満のpKa値を有する少なくとも1種の有機酸性剤と、
(b)少なくとも1種の高分子増粘剤と、
(d)少なくとも1種のアルカリ剤と
を含み、
pHが8?12であり、且つ
アンモニア又はメチオニンを含まない、
組成物。
【請求項9】
(c)有機酸性剤が、1.0?3.0のpKa値を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
(c)有機酸性剤が、カルボン酸、アミノスルホン酸;アミノ酸;アミノ酸のオリゴマー;及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項11】
組成物中の(c)有機酸性剤の量が、組成物の総質量に対して0.1?25質量%である、請求項8から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
(d)アルカリ剤が、無機アルカリ剤である、請求項8から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
組成物中の(d)アルカリ剤の量が、組成物の総質量に対して0.1?20質量%である、請求項8から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
(b)高分子増粘剤が、少なくとも1つの糖単位を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
組成物中の(b)高分子増粘剤の量が、組成物の総質量に対して0.01?10質量%である、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
組成物の粘度が、800mPa・s以上である、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
チオール化合物を一切含まない、又は組成物の総質量に対して1質量%未満のチオール化合物を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
酸化剤を一切含まない、又は組成物の総質量に対して1質量%未満の酸化剤を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
ケラチン繊維のための、再成形する方法であって、
前記ケラチン繊維上へ、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物を塗布する工程と、
前記ケラチン繊維を加熱する工程と、
任意選択で前記ケラチン繊維を濯ぐ且つ/又は乾燥させる工程と
を含む、方法。
【請求項20】
ケラチン繊維が、少なくとも80℃の温度に加熱される、請求項19に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-06-28 
出願番号 特願2017-559131(P2017-559131)
審決分類 P 1 652・ 537- YAA (A61K)
P 1 652・ 113- YAA (A61K)
P 1 652・ 121- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 辰己 雅夫  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 進士 千尋
岡崎 美穂
登録日 2020-02-10 
登録番号 特許第6659727号(P6659727)
権利者 ロレアル
発明の名称 ケラチン繊維のための組成物  
代理人 村山 靖彦  
代理人 堀江 健太郎  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 堀江 健太郎  
代理人 実広 信哉  

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