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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1377767
異議申立番号 異議2020-700753  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-10-01 
確定日 2021-07-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6684712号発明「硬化性樹脂含有シート、並びに、それを用いた構造体および配線板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6684712号の特許請求の範囲及び明細書を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1ないし6〕について訂正することを認める。 特許第6684712号の請求項1、2、4ないし6に係る特許を維持する。 特許第6684712号の請求項3に係る特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6684712号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)7月2日(優先権主張 平成26年7月29日)を国際出願日とする出願であって、令和2年4月1日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年同月22日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年10月1日に特許異議申立人 特許業務法人朝日奈特許事務所(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし6)がされ、令和3年1月8日付けで取消理由が通知され、同年3月15日に特許権者 太陽ホールディングス株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年同月25日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年4月13日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年5月17日付けで取消理由が通知され、同年6月9日に特許権者から意見書が提出されるとともに訂正請求がされたものである。
なお、令和3年3月15日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、すでに特許異議申立人に意見書の提出の機会が与えられており、下記第2 1のとおり、令和3年6月9日にされた訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、下記第5ないし7のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断したことから、特許異議申立人に再度の意見書の提出の機会は与えない。

第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和3年6月9日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「全芳香族ポリアミド繊維と異なる繊維基材と、
前記繊維基材中の繊維同士を固着する固着剤と、
前記繊維基材と固着剤とに接する樹脂と、を有し、
前記固着剤の貯蔵弾性率が、前記樹脂の貯蔵弾性率よりも高いことを特徴とする樹脂含有シート。」とあるのを、
「全芳香族ポリアミド繊維と異なる繊維基材と、
前記繊維基材に含浸されて該繊維基材中の繊維同士を固着する、固着剤組成物からなる固着剤と、
前記固着剤にて繊維同士を固着させた繊維基材に含浸されて該繊維基材と固着剤とに接する、樹脂組成物からなる樹脂と、を有するドライフィルムである硬化性樹脂含有シートであって、
前記固着剤組成物および前記樹脂組成物は、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂のいずれか1種以上を含み、
前記樹脂組成物の含浸率が、前記硬化性樹脂含有シート中の樹脂濃度として10?70体積%であり、
前記固着剤組成物の硬化膜の貯蔵弾性率が、前記樹脂組成物の硬化膜の貯蔵弾性率よりも高く、
前記繊維基材の繊維同士を前記固着剤組成物により固着させた後、該繊維同士を固着させた繊維基材に前記樹脂組成物を含浸して得られることを特徴とする硬化性樹脂含有シート。」に訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2、4ないし6についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記固着剤のガラス転移温度が、前記樹脂のガラス転移温度または軟化温度よりも高い請求項1記載の樹脂含有シート。」とあるのを、「前記固着剤組成物の硬化膜のガラス転移温度が、前記樹脂組成物の硬化膜のガラス転移温度よりも高い請求項1記載の硬化性樹脂含有シート。」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記繊維基材が織布または不織布を含む請求項1記載の樹脂含有シート。」とあるのを、「前記繊維基材が織布または不織布を含み、基板に熱密着、硬化して用いられる請求項1記載の硬化性樹脂含有シート。」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1記載の樹脂含有シートを、基板に密着させて得られることを特徴とする構造休。」とあるのを、「請求項1記載の硬化性樹脂含有シートを、基板に密着させて得られることを特徴とする構造体。」に訂正する。
併せて、請求項5を直接引用する請求項6についても、請求項5を訂正したことに伴う訂正をする。

(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の【発明の名称】に記載された「樹脂含有シート」 を、「硬化性樹脂含有シート」に訂正する。

2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正のうち、
「前記繊維基材に含浸されて該繊維基材中の繊維同士を固着する、固着剤組成物からなる固着剤」との訂正は、「固着剤」に係る限定を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、
「前記固着剤にて繊維同士を固着させた繊維基材に含浸されて該繊維基材と固着剤とに接する、樹脂組成物からなる樹脂」との訂正は、「樹脂」に係る限定を追加するものであり、
「ドライフィルムである硬化性樹脂含有シート」との訂正は、「樹脂含有シート」に係る限定を追加するものであり、
「前記固着剤組成物および前記樹脂組成物は、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂のいずれか1種以上を含み」との訂正は、「固着剤」及び「樹脂」に係る限定を追加するものであり、
「前記樹脂組成物の含浸率が、前記硬化性樹脂含有シートの樹脂濃度として10?70体積%であり」との訂正は、「樹脂含有シート」に係る限定を追加するものであり、
「前記固着剤組成物の硬化膜の貯蔵弾性率が、前記樹脂組成物の硬化膜の貯蔵弾性率よりも高く」との訂正は、「固着剤」および「樹脂」の「貯蔵弾性率」に係る限定を追加するものであり、
「前記繊維基材の繊維同士を前記固着剤組成物により固着させた後、該固着された繊維基材に前記樹脂組成物を含浸して得られる」との訂正は、「樹脂含有シート」に係る限定を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項も同様である。

(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項2の訂正のうち、
「前記固着剤組成物の硬化膜のガラス転移温度が、前記樹脂組成物の硬化膜のガラス転移温度よりも高い」との訂正は、「固着剤」および「樹脂」の「ガラス転移温度」に係る限定を追加し、「または軟化温度よりも」という選択肢を削除したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、
「硬化性樹脂含有シート」との訂正は、「樹脂含有シート」に係る限定を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4に係る請求項4の訂正のうち、
「基板に熱密着、硬化して用いられる」との訂正は、「樹脂含有シート」に係る限定を追加するものであり、
「硬化性樹脂含有シート」との訂正は、「樹脂含有シート」に係る限定を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5に係る請求項5の訂正は、「樹脂含有シート」に係る限定を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項5を直接引用する請求項6も同様である。

(6)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正事項1ないし5による訂正に伴い、明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし6は、それぞれ、特許法120条の5第2項ただし書第1又は3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし6は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項2ないし6は訂正前の請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし6は一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項1ないし5は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、訂正事項6は、願書に添付した明細書についての訂正であるが、当該明細書に係る請求項の全てについて、本件訂正請求は行われているので、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
さらに、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし6に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし6〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
全芳香族ポリアミド繊維と異なる繊維基材と、
前記繊維基材に含浸されて該繊維基材中の繊維同士を固着する、固着剤組成物からなる固着剤と、
前記固着剤にて繊維同士を固着させた繊維基材に含浸されて該繊維基材と固着剤とに接する、樹脂組成物からなる樹脂と、を有するドライフィルムである硬化性樹脂含有シートであって、
前記固着剤組成物および前記樹脂組成物は、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂のいずれか1種以上を含み、
前記樹脂組成物の含浸率が、前記硬化性樹脂含有シート中の樹脂濃度として10?70体積%であり、
前記固着剤組成物の硬化膜の貯蔵弾性率が、前記樹脂組成物の硬化膜の貯蔵弾性率よりも高く、
前記繊維基材の繊維同士を前記固着剤組成物により固着させた後、該繊維同士を固着させた繊維基材に前記樹脂組成物を含浸して得られることを特徴とする硬化性樹脂含有シート。
【請求項2】
前記固着剤組成物の硬化膜のガラス転移温度が、前記樹脂組成物の硬化膜のガラス転移温度よりも高い請求項1記載の硬化性樹脂含有シート。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記繊維基材が織布または不織布を含み、基板に熱密着、硬化して用いられる請求項1記載の硬化性樹脂含有シート。
【請求項5】
請求項1記載の硬化性樹脂含有シートを、基板に密着させて得られることを特徴とする構造体。
【請求項6】
請求項5記載の構造体を有することを特徴とする配線板。」

第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和2年10月1日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

(1)申立理由1(甲第1号証又は甲第2号証に基づく新規性)
本件特許の請求項1、2、4に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(2)申立理由2(甲第1号証又は甲第2号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1ないし3号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(3)申立理由3(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(4)証拠方法
甲第1号証:エポキシ-ポリエーテルイミド・ブレンド/炭素繊維複合材料における高次構造と力学特性、繊維学会誌 Vol.49、No.2(1993)、p.72-78、一般社団法人繊維学会
甲第2号証:ポリイミドを被ふくした炭素繊維とエポキシ樹脂間相互作用、高分子論文集 Vol.42、No.6(June, 1985)、p.383-388、公益社団法人高分子学会
甲第3号証:超薄切片法、電子顕微鏡 Vol.9、No.1・2(1974)、p.57-66、公益社団法人日本顕微鏡学会
甲第4号証:jER○R(合議体注:「○R」は○の中にRの記号を表す。)製品案内 2020年4月、三菱ケミカル株式会社スペシャリティケミカルズ事業部
なお、甲号証の表記は、おおむね特許異議申立書の記載に従った。
以下、順に「甲1」のようにいう。

2 取消理由の概要
(1)令和3年5月17日付けで通知した取消理由(以下、「2回目の取消理由」という。)の概要は次のとおりである。
2回目の取消理由(明確性要件)
令和3年3月15日に提出された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(2)令和3年1月8日付けで通知した取消理由(以下、「1回目の取消理由」という。)の概要は次のとおりである。
1回目の取消理由(甲1又は甲2に基づく新規性進歩性)
本件特許の請求項1、2、4に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。また、本件特許の請求項1、2、4ないし6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

第5 取消理由についての当審の判断
1 2回目の取消理由(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。

(2)判断
2回目の取消理由は、令和3年3月15日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1の「固着剤組成物を含浸してなる固着剤」、「樹脂組成物を含浸してなる樹脂」という記載に起因する記載不備によるものであるところ、本件訂正により、請求項1は「固着剤組成物からなる固着剤」、「樹脂組成物からなる樹脂」に訂正され、上記記載が存在しなくなったことから、上記記載不備は解消した。
そして、請求項1、2、4ないし6の記載は、上記第3の【請求項1】、【請求項2】、【請求項4】ないし【請求項6】のとおりであり、それ自体不明確な記載はなく、また、発明の詳細な説明及び図面の記載とも整合している。
したがって、本件特許発明1、2、4ないし6は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。

(3)2回目の取消理由についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1、2、4ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当するものではない。

2 1回目の取消理由のうち甲1に基づく新規性進歩性について
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線については、当審において付与した。以下同様。)
(ア)「炭素繊維複合材料 (CFRP) のマトリックス樹脂としてはエポキシ樹脂(Ep)が広く用いられているが,車両,航空機などの分野での需要を伸ばすためには,脆弱さの改善が望まれている。」(第72ページ左欄第2-5行)
(イ)「筆者は,Ep-ポリエーテルイミド(PEI)ブレンド硬化物のモルホロジーと物性について報告してきた」(第72ページ右欄第2-3行)
(ウ)「本報では,Ep-PEIをマトリックス樹脂とするCFRPにおける繊維-樹脂界面付近の高次構造と物性について検討した結果を報告する。」(第73ページ左欄第2-4行)
(エ)「2.実験
EpはビスフェノールAタイプのもの(エピコート828,Mw?380,油化シェルエポキシ)を用いた。硬化剤としては,4,4'-ジアミノジフェニルタン(DDM)または4,4'-ジアミノジフェニルスルフォン(DDS)を各々化学当量用いた。PEIはULTEM 1000(日本ジーイープラスチック,Mw?12000)を用い,添加量は約20wt%とした。樹脂バルク試料は,以下のような方法により調製した。Ep-硬化剤系については, 約90℃に加熱したEpに硬化剤を添加し,混合,脱泡後,注型し,所定の条件で硬化させた。Ep-PEI-硬化剤系の場合,Ep,PEI,硬化剤をジクロロメタン(DCM)に溶解し,溶媒を減圧回収した後,脱泡,注型し,所定の条件で硬化させた。
CFクロス(トレカ#6343)は,エポキシ樹脂用の市販品をそのまま用いた。CFRPとしては,以下の様な成形方法により得たものを用いた。Ep-硬化剤系CFRPについては,上記の方法で調製したマトリックス樹脂を,粘度を下げるためホットプレート上で加熱(60?80℃)しながらCFクロスに含浸させ,冷却後,プレス成形により初期硬化した後,恒温硬化炉中で後硬化を行なった。Ep-PEI-硬化剤系CFRPについては,樹脂混合物のDCM溶液にCFクロスを浸漬し,風乾,減圧乾燥後,積層したものを,Ep-硬化剤系CFRPと同様,プレス成形および後硬化した。CF含有率は約60wt%であった。樹脂バルク試料およびCFRPの硬化条件は,硬化剤としてDDMを用いた場合,130℃にて2h硬化し,さらに150℃で3h後硬化した。硬化剤としてDDSを用いた場合の硬化条件は,200℃にて6h(以下,硬化条件1),あるいは,130℃12h硬化しさらに200℃3h後硬化(以下,硬化条件2)とした。」(第73ページ左欄第5行-右欄第8行)
(オ)「破断面をDCMによりエッチングした後SEM観察した結果,写真で白く見える部分はPEIリッチ相,黒く見える部分はEpリッチ相であることがわかった。」(第74ページ右欄第5-7行)
(カ)「Ep-PEI混合系をマトリックス樹脂とするCFRPについて,破断面のSEM観察した結果を図2に示す。(なおPEIを添加しないEpのみの硬化物では,樹脂バルク試科,CFRPマトリックスともに相分離構造のような顕著な構造形態は認められなかった。)DDM硬化CFRP(図2a)およびDDS硬化(条件2)CFRP(図2c)では,バルク試料(図1a,c)に比べて大きな形態の相違は認められなかった。したがって,これらの系では,PEIリッチ連続相がCFと接していると考えられる。」(第75ページ左欄第9-17行)
(キ)「Fig.2 SEM photographs of CFRP fracture surface after DCB test. Matrix cure conditions were as follows.…(中略)… (c,e) Ep/PEI/DDS=100:35:33, cuerd at 130 ℃ for 12h and after cured at 200℃ for 3h.」(第74ページ下欄第1-3行)
(ク)「Fig.3 Temperature dependence of storage modulus E’. …(中略)… 5) Ep/DDS = 100:33, cured at 130゜C 12h and after cured at 200℃ 3h.…(中略)… 7) PEI.」(第75ページ下欄第1-5行)
(ケ)「Fig.4 Temperature dependence of loss modulus E". Notations are the same as in Fig.3.」(第76ページ上欄第1行)
(コ)「樹脂バルク及びCFRPについての動的粘弾性測定により得られた貯蔵弾性率(E') および損失弾性率(E")の結果をそれぞれ図3,4に示す。」(第76ページ左欄第7-9行)
(サ)「図4において,樹脂バルク試料のうち,PEI混合硬化系とEpのみの硬化系とでは,Epのガラス転位に基づく緩和のピーク温度(Tg) が若干異なった。」(第77ページ左欄第2-4行)
(シ)「

」(図2、第74ページ)
(ス)「

」(図3、第75ページ)
(セ)「

」(図4、第76ページ)
イ 甲1に記載された発明
甲1の「硬化剤としてDDSを用いた場合の硬化条件は…(中略)…130 ℃ 12 h 硬化しさらに 200 ℃ 3h後硬化(以下,硬化条件2)とした。」(上記(エ))、「DDS硬化(条件2)CFRP(図2c) 」(上記(カ))、図2(c)の注釈である「(c,e) Ep/PEI/DDS=100:35:33, cuerd(当審注:「cured」の誤記と認める。) at 130℃ for 12h and after cured at 200℃ for 3h.」(上記(キ))、図3の符号「5」の注釈である「5) Ep/DDS = 100:33, cured at 130℃ 12h and after cured at 200℃ 3h」(上記(ク))、図4の注釈である「Fig. 4 Temperature dependence of loss modulus E". Notations are the same as in Fig.3.」(上記(ケ))を参酌すると、図2(c)は、硬化条件2である「硬化剤としてDDSを用い130℃ 12 h 硬化しさらに 200℃ 3 h後硬化」したものであって、図2(c)の上記注釈と図3の符号「5」の上記注釈とは、「DDS」の比率が「33」であり、「cured at 130 ℃ for 12h and after cured at 200℃ for 3h」である点で一致しているから、図3の符号「5」のものも、図2(c)と同じ上記硬化条件2で製造されたものであると認められる。
甲1の図4の注釈である「Fig. 4 Temperature dependence of loss modulus E". Notations are the same as in Fig. 3.」(上記(ケ))の記載において、「Notations」は「注釈」という意味であり、「same」は「同じ」という意味であるから、図4と図3の注釈とは同じであると理解できる。そうすると、図4の符号「5」のものも、図2(c)と同じ上記硬化条件2で製造されたものであると認められる。
これらの点を踏まえた上で、図3の左図及び右図をみると、特に215℃以下の温度範囲において、「7) PEI」の貯蔵弾性率が、「5) Ep/DDS」の貯蔵弾性率よりも高いことが看取できる。そうすると、甲1には、「PEI」の貯蔵弾性率が、硬化条件2(硬化剤としてDDSを用い130℃12h硬化しさらに200℃3h後硬化したもの。)で製造された「Ep/DDS」の貯蔵弾性率よりも高いことが記載されていると認められる。
以上の点を踏まえつつ、甲1の上記(ア)ないし(セ)の記載事項を整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「CFクロス(トレカ#6343)に、Ep/DDS(硬化剤としてDDSを用いて130℃12h硬化しさらに200℃3h後硬化したもの。)とPEIとのブレンド硬化物を含浸させた複合材料において、PEIリッチ連続相がCFと接しており、前記PEIの貯蔵弾性率が、前記Ep/DDSの貯蔵弾性率よりも高い複合材料。」

(2) 対比・判断
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
甲1発明における「CFクロス(トレカ#6343)」は、炭素繊維で作成されたものであるから、本件特許発明1における「全芳香族ポリアミド繊維と異なる繊維基材」に相当する。
甲1発明における「CF」は、本件特許発明1における「繊維」に相当する。
甲1発明においては、「PEIリッチ連続相がCFと接して」いるものである。そして、甲1において「CFクロス(トレカ#6343)」は、炭素繊維の織物であるから、「CF」が「Ep/DDSとPEIとのブレンド硬化物」であるマトリックス樹脂内に張り巡らされていると解されるので、甲1の図2(c)を参酌すれば、白い部分であるPEIリッチ連続相、すなわち「PEI」のうちいずれかは、「CF」同士を固着していると解される。さらに、甲1発明においては、「CFクロス(トレカ#6343)に、Ep/DDS(硬化剤としてDDSを用いて130℃12h硬化しさらに200℃3h後硬化したもの。)とPEIとのブレンド硬化物を含浸させた」ものである。そうすると、甲1発明における「PEI」は、本件特許発明1における「繊維基材に含浸されて該繊維基材中の繊維同士を固着する、固着剤組成物からなる固着剤」に相当する。
甲1の図2(c)からは、黒い部分であるEPリッチ相が、PEIリッチ連続相と接していることが看取できる。そして、甲1において「CFクロス(トレカ#6343)」は、炭素繊維の織物であるから、「CF」が「Ep/DDSとPEIとのブレンド硬化物」であるマトリックス樹脂内に張り巡らされていると解されるので、甲1の図2(c)を参酌すれば、黒い部分であるEPリッチ相、すなわち「Ep/DDS」のうちいずれかは、「CF」に接していると解される。さらに、甲1発明においては、「CFクロス(トレカ#6343)に、Ep/DDS(硬化剤としてDDSを用いて130℃12h硬化しさらに200℃3h後硬化したもの。)とPEIとのブレンド硬化物を含浸させた」ものである。そうすると、甲1発明における「Ep/DDS(硬化剤としてDDSを用いて130℃12h硬化しさらに200℃3h後硬化したもの。)」は、本件特許発明1における「固着剤にて繊維同士を固着させた繊維基材に含浸されて該繊維基材と固着剤とに接する、樹脂組成物からなる樹脂」に相当する。
甲1発明における「複合材料」は、炭素繊維の織物でシート状である「CFクロス(トレカ#6343)」に「Ep/DDS(硬化剤としてDDSを用いて130℃12h硬化しさらに200℃3h後硬化したもの。)とPEIとのブレンド硬化物を含浸」させているので、本件特許発明1における「硬化性樹脂含有シート」に相当する。
甲1発明における「Ep/DDS(硬化剤としてDDSを用いて130℃12h硬化しさらに200℃3h後硬化したもの。)」は、本件特許発明1における「熱硬化性樹脂」に相当することから、「熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂のいずれか1種以上」を満たすものである。
甲1には、「PEI」及び「Ep/DDS」をどのような形態にして「貯蔵弾性率」を測定しているのかについて明記はないが、硬化させた形態でなければ、「貯蔵弾性率」が測定できないことが明らかであるから、甲1発明の「貯蔵弾性率」は、「PEI」及び「Ep/DDS」を硬化させた形態で測定していることは明らかである。そうすると、甲1発明における「PEI」の硬化膜の「貯蔵弾性率」は、「Ep/DDS」の硬化膜の「貯蔵弾性率」よりも高いものであるといえる。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「全芳香族ポリアミド繊維と異なる繊維基材と、
前記繊維基材に含浸されて該繊維基材中の繊維同士を固着する、固着剤組成物からなる固着剤と、
前記固着剤にて繊維同士を固着させた繊維基材に含浸されて該繊維基材と固着剤とに接する、樹脂組成物からなる樹脂と、を有する硬化性樹脂含有シートであって、
前記樹脂組成物は、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂のいずれか1種以上を含み、
前記固着剤組成物の硬化膜の貯蔵弾性率が、前記樹脂組成物の硬化膜の貯蔵弾性率よりも高い硬化性樹脂含有シート。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-1>
硬化性樹脂含有シートに関して、本件特許発明1においては、「ドライフィルム」と特定されるのに対し、甲1発明においては、「複合材料」であって「ドライフィルム」ではない点。

<相違点1-2>
固着剤組成物に関して、本件特許発明1においては、「熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂のいずれか1種以上を含み」と、特定されるのに対し、甲1発明においては、熱可塑性樹脂である「PEI」である点。

<相違点1-3>
樹脂組成物の含浸率に関して、本件特許発明1においては、「硬化性樹脂含有シート中の樹脂濃度として10?70体積%」であるのに対し、甲1発明においては、特定されていない点。

<相違点1-4>
本件特許発明1においては、硬化性樹脂含有シートが、繊維基材の繊維同士を固着剤組成物により固着させた後、該繊維同士を固着させた繊維基材に樹脂組成物を含浸して得られるものであるのに対し、甲1発明においては、「Ep/DDS」と「PEI」との「ブレンド硬化物を含浸させた」ものである点。

(イ)判断
相違点1-1について検討する。
甲1発明は「CFクロス(トレカ#6343)に、Ep/DDS(硬化剤としてDDSを用いて130℃12h硬化しさらに200℃3h後硬化したもの。)とPEIとのブレンド硬化物を含浸させた複合材料において、PEIリッチ連続相がCFと接しており、前記PEIの貯蔵弾性率が、前記Ep/DDSの貯蔵弾性率よりも高い複合材料」である。そして、甲1には、前記「複合材料」の用途について記載されておらず、当該「複合材料」を、「ドライフィルム」とする動機付けとなる記載はない。
また、他の甲号証にも、甲1発明のような「複合材料」を「ドライフィルム」とする動機付けとなる記載はない。
したがって、甲1発明のような「複合材料」を「ドライフィルム」とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

よって、相違点1-2ないし1-4について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明及び他の甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件特許発明2、4ないし6について
本件特許発明2,4ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 1回目の取消理由のうち甲2に基づく新規性進歩性について
(1)甲2に記載された事項等
ア 甲2には、次の事項が記載されている。
(ア)「要旨 炭素繊維強化高分子複合体における強化材-マトリックス間相互作用を高める目的で,ポリイミド樹脂簿膜を彼ふくした炭素繊維で強化されたエポキシ樹脂複合体について力学的及び分光学的特性を調べた。」(第383ページの要旨の欄第1-3行)
(イ)「本研究では,マトリックスに比べてかなり高いガラス転移温度と比較的大きい極性基濃度を持つポリイミド樹脂で被ふくした炭素繊維強化複合体について,強化材-マトリックス間相互作用の変化を力学特性及び分光特性から調べた。」(第383ページ右欄第2-6行)
(ウ)「2 実験方法
2.1 炭素繊維,アルミ箔のポリイミド被ふく
炭素繊維としては東レ(株)製PAN系高強度糸T-300で作られた平織布(#6142)あるいは長さ10mmのチョップドファイバを用いた(これをCF-Sと表す)。これを大量のアセトン中で洗浄して,サイジング剤(表面被ふく樹脂分)を除去したもの(CF-Nと表す)に以下のようなポリイミド被ふくを行った。3,3',4,4'-benz-ophenonetetracarboxylic dianhydride(BPTD)と4,4'-diaminodiphenyl ether(DDE)を5.9mol:6.0molの割合に混合したものをメタノールに溶解して1%溶液とした。この溶液中にCF-Nを30分間浸漬,取り出して空気中で乾燥(30分間)後,(200℃,2時間)+280℃,3.5時間)の加熱により重合を行わせた。」(第383ページ右欄第11-24行)
(エ)「2.2 複合体の構成
マトリックスとしてはエポン815(Shell Chemical Co.)とイソフオロンジアミン(IPDと略す)を100:24の重量比で配合したものを主として用い,エポン815とメチル化ヘキサヒドロ無水フタル酸(CH_(3)-HHPAと略す)を340:330の重量比で配合したものを一部の試料で用いた。このマトリックスを平織布に含浸,あるいは面内無配向のチョップドファイバ集合体に含浸し,加熱硬化して複合体とした。」(第384ページ左欄第11-19行)

イ 甲2に記載された発明
甲2の上記(ア)ないし(エ)の記載事項を整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。
<甲2発明>
「炭素繊維として東レ(株)製PAN系高強度糸T-300で作られた平織布(#6142)あるいはチョップドファイバ集合体と、
3,3',4,4'-benzo-phenonetetracarboxylic dianhydride(BPTD)と4,4'-diaminodiphenyl ether(DDE)との混合物を溶液とし、この溶液中に前記平織布あるいは前記チョップドファイバ集合体を浸漬、取り出して空気中で乾燥後、加熱により重合を行わせることで、前記平織布あるいは前記チョップドファイバ集合体にポリイミド被ふくを行い、
ポリイミド被ふくを行った前記平織布あるいは前記チョップドファイバ集合体にエポン815(Shell Chemical Co.)とイソフオロンジアミン(IPD)とを配合したマトリックスを含浸し、加熱硬化した複合体。」

(2) 対比・判断
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
甲2発明における「炭素繊維として東レ(株)製PAN系高強度糸T-300で作られた平織布(#6142)あるいはチョップドファイバ集合体」は、炭素繊維で作成されたものであるから、本件特許発明1における「全芳香族ポリアミド繊維と異なる繊維基材」に相当する。
甲2発明における「炭素繊維」は、本件特許発明1における「繊維」に相当する。
甲2発明においては、「3,3',4,4'-benzo-phenonetetracarboxylic dianhydride(BPTD)と4,4'-diaminodiphenyl ether(DDE)との混合物を溶液とし、この溶液中に前記平織布あるいは前記チョップドファイバ集合体を浸漬、取り出して空気中で乾燥後、加熱により重合を行わせることで、前記平織布あるいは前記チョップドファイバ集合体にポリイミド被ふく」を行っているものである、すなわち、本件特許の実施例と同じように、ポリイミド前駆体の溶液に平織布あるいはチョップドファイバ集合体を浸漬させ、乾燥後、加熱重合してイミド化しているものであるから、炭素繊維同士がポリイミド被ふくにより固着しているといえる。そうすると、甲2発明の「3,3',4,4'-benzo-phenonetetracarboxylic dianhydride(BPTD)と4,4'-diaminodiphenyl ether(DDE)との混合物を溶液とし、この溶液中に前記平織布あるいは前記チョップドファイバ集合体を浸漬、取り出して空気中で乾燥後、加熱により重合を行わせる」ことで形成される「ポリイミド被ふく」は、本件特許発明1における「繊維基材に含浸されて該繊維基材中の繊維同士を固着する、固着剤組成物からなる固着剤」に相当するといえる。
甲2発明においては、「平織布あるいはチョップドファイバ集合体にエポン815(Shell Chemical Co.)とイソフオロンジアミン(IPD)とを配合したマトリックスを含浸し、加熱硬化した」ものである、すなわち、本件特許の実施例と同じように、織布又は不織布に樹脂を含浸させたものであるから、織布又は不織布の「炭素繊維」に「マトリックス」である樹脂が接していると推認できる。そうすると、甲2発明における「エポン815(Shell Chemical Co.)とイソフオロンジアミン(IPD)とを配合したマトリックス」は、本件特許発明1における「固着剤にて繊維同士を固着させた繊維基材に含浸されて該繊維基材と固着剤とに接する、樹脂組成物からなる樹脂」に相当するといえる。
甲2発明における「複合体」は、シート状である「平織布(#6142)あるいはチョップドファイバ集合体」に「エポン815(Shell Chemical Co.)とイソフオロンジアミン(IPD)とを配合したマトリックスを含浸し、加熱硬化」させているので、本件特許発明1における「硬化性樹脂含有シート」に相当する。
甲2発明における「ポリイミド」、「エポン815(Shell Chemical Co.)」は熱硬化性樹脂であることから、「熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂のいずれか1種以上」を含むものである。
甲2発明における「前記平織布あるいは前記チョップドファイバ集合体にポリイミド被ふくを行い、ポリイミド被ふくを行った前記平織布あるいは前記チョップドファイバ集合体にエポン815(Shell Chemical Co.)とイソフオロンジアミン(IPD)とを配合したマトリックスを含浸」は、本件特許発明1における「繊維基材の繊維同士を固着剤組成物により固着させた後、該固着された繊維基材に樹脂組成物を含浸」に相当する。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「全芳香族ポリアミド繊維と異なる繊維基材と、
前記繊維基材に含浸されて該繊維基材中の繊維同士を固着する、固着剤組成物からなる固着剤と、
前記固着剤にて繊維同士を固着させた繊維基材に含浸されて該繊維基材と固着剤とに接する、樹脂組成物からなる樹脂と、を有する硬化性樹脂含有シートであって、
前記固着剤組成物および前記樹脂組成物は、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂のいずれか1種以上を含み、
前記繊維基材の繊維同士を前記固着剤組成物により固着させた後、該固着された繊維基材に前記樹脂組成物を含浸して得られる硬化性樹脂含有シート。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2-1>
硬化性樹脂含有シートに関して、本件特許発明1においては、「ドライフィルム」と特定されるのに対し、甲2発明においては、「複合体」であって「ドライフィルム」ではない点。

<相違点2-2>
樹脂組成物の含浸率に関して、本件特許発明1においては、「硬化性樹脂含有シート中の樹脂濃度として10?70体積%」であるのに対し、甲2発明においては、特定されていない点。

<相違点2-3>
本件特許発明1における固着剤組成物の硬化膜の貯蔵弾性率は、樹脂組成物硬化膜の貯蔵弾性率よりも高いのに対して、甲2発明における「ポリイミド被ふく」の貯蔵弾性率は、「エポン815(Shell Chemical Co.)とイソフオロンジアミン(IPD)とを配合したマトリックス」の貯蔵弾性率よりも高いか否か不明である点。

(イ)判断
相違点2-1について検討する。
甲2発明は「平織布あるいはチョップドファイバ集合体にポリイミド被ふくを行い、ポリイミド被ふくを行った前記平織布あるいは前記チョップドファイバ集合体にエポン815(Shell Chemical Co.)とイソフオロンジアミン(IPD)とを配合したマトリックスを含浸し、加熱硬化した複合体」である。そして、甲2には、前記「複合体」の用途について記載されておらず、当該「複合体」を、「ドライフィルム」とする動機付けとなる記載はない。
また、他の甲号証にも、甲2発明のような「複合体」を「ドライフィルム」とする動機付けとなる記載はない。
したがって、甲2発明のような「複合体」を「ドライフィルム」とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

なお、特許異議申立人は、意見書(令和3年4月13日提出)において、甲2発明の「複合体」の硬化前のものは、未硬化状態であることから、本件特許発明1と実質的に相違しない旨主張している。
しかしながら、そもそも、甲2発明は「加熱硬化した複合体」である。そして、甲2においては、「複合体」を加熱硬化前で止め、それを取り出して利用することは想定していない。仮に、甲2において、「複合体」を硬化前に取り出した場合は、硬化前の樹脂が漏れ出てしまうので、硬化前に取り出したものを発明として認定することができない。
したがって、特許異議申立人の前記主張は採用できない。

よって、相違点2-2及び2-3について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2発明及び他の甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件特許発明2、4ないし6について
本件特許発明2,4ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について
取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、申立理由3(明確性要件)である。
そこで、申立理由3(明確性要件)に係る特許異議申立人の主張について検討する。
主張の1点目は、本件特許発明1は、固着剤組成物の硬化膜の貯蔵弾性率が、樹脂組成物の硬化膜の貯蔵弾性率よりも高いことを必須の特定事項とするが、本件特許発明1には、上記特定事項を具備する際の条件(たとえば温度)が規定されていないから、不明確であるというものである。
しかし、当業者であれば、貯蔵弾性率を比較する際に、特段の事情がない限り、同じ温度で比較することが技術常識である。
そして、明細書の「固着剤2の貯蔵弾性率が、いずれかの温度において、樹脂3の貯蔵弾性率よりも高い」(【0016】)、「…固着剤2の貯蔵弾性率とは…(中略)…成膜後に熱または光により硬化させた硬化膜の貯蔵弾性率を意味する。同様に、樹脂3の貯蔵弾性率についても、硬化性樹脂の場合には成膜後に熱または光により硬化させた硬化膜の貯蔵弾性率を意味…(中略)…する。」(【0055】)の記載によれば、当業者であれば、固着剤組成物の硬化膜と樹脂組成物の硬化膜とを、いずれかの温度に設定し、当該いずれかの温度における固着剤組成物の硬化膜と樹脂組成物の硬化膜の貯蔵弾性率を比較すると理解できる。
そうすると、いずれかの温度において、固着剤組成物の硬化膜の貯蔵弾性率が、樹脂組成物の硬化膜の貯蔵弾性率よりも高いものが本件特許発明1に含まれることは明らかであるから、特許異議申立人の主張は採用できない。

主張の2点目は、実施例の組成物4では、熱可塑性樹脂であるポリエチレンを樹脂として使用しているにもかかわらず、溶剤を除去することなく、貯蔵弾性率を測定するための試験片が作製されていることからすると、本件特許発明1における貯蔵弾性率は、明細書で定義された方法(【0055】)とは異なる方法(【0072】)によって作製された試験片を用いて得た貯蔵弾性率が採用されている結果、本件特許発明1における貯蔵弾性率の定義が明確でないことから、発明そのものの外延が不明確であるというものである。
しかし、貯蔵弾性率の定義は、明細書の【0055】に記載されたとおりであるから明確である。
また、組成物4は、明細書の【0072】の記載からすると、ペレットにされ加熱され、溶剤は実質除去されているといえるから、特許異議申立人の主張は採用できない。

そして、特許異議申立人の前記各主張以外に係る明確性要件については、上記「第5 1 2回目の取消理由(明確性要件)について」で判断したとおりである。

第7 結語
上記第5及び6のとおり、本件特許の請求項1、2、4ないし6に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、2、4ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項3に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項3に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
硬化性樹脂含有シート、並びに、それを用いた構造体および配線板
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた力学強度、弾性率および密着性を有し、電子機器用の配線板等に好適な樹脂含有シート、並びに、それを用いた構造体および配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器用の配線板としては、一般に、ガラス繊維やアラミド繊維、セルロース繊維などからなる基材にエポキシ等の樹脂を含浸させて得られるプリプレグ(半硬化状態の樹脂絶縁層)を、銅等の金属箔に密着させ、エッチング法で回路を形成したものが用いられている。また、配線板には、部品実装時におけるはんだの流出を防止するために、ソルダーレジストが設けられている。これらプリプレグやソルダーレジスト等の配線板材料は、金属箔表面や回路形成された配線板表面に対し隙間なく密着するように、加熱加圧しながら密着させる必要があり、その際の密着性が重要となる。また、配線板には、実装信頼性を高めるために高強度(高弾性率)であることが望まれており、その構成部材であるプリプレグやソルダーレジストについても、同様に高弾性率化が図られている。
【0003】
配線板材料に関する従来技術として、例えば、特許文献1には、絶縁信頼性および配線との応力緩和の両機能を得るために、コア層の両面に異なる強度(弾性率)の樹脂層を設けたプリプレグが記載されている。しかし、この技術は、コア層の両面に異なる樹脂組成物の層を設けるものであり、また、密着性に有用であるとの開示はない。また、特許文献2には、所定の弾性率を有するプリプレグが記載されている。この技術はプリプレグシートと回路基板との仮固定を目的とし、弾性率を組成物によって制御しているものである。
【0004】
さらに、特許文献3には、プリプレグ中に2種の樹脂組成物を用いる技術が開示されている。このプリプレグにおいては2種の樹脂組成物を表面側ほど弾性率が大きくなるように偏在させている。さらにまた、特許文献4には、金属箔との接着性を改良するためにプリプレグ表面に接着層を設ける技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-088280号公報
【特許文献2】特開2006-179716号公報
【特許文献3】特開2010-095557号公報
【特許文献4】特開2004-168943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のプリプレグでは、十分な力学強度と密着性を有することができなかった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、力学強度を向上させつつ、基板との密着性についても向上した樹脂含有シート、並びに、それを用いた構造体および配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下のことを見出した。
すなわち、一般に、各種繊維状材料からなる織布や不織布においては、繊維同士が絡み合いや相互作用により集合体を形成している。よって、図2(a)に示すように、このような繊維21の集合体に対し一方向に張力Tをかけると、繊維21同士が接点Pで滑って、矢印Dの方向に繊維21同士が引き離され、集合体には、ほつれが生じ、最終的には破断することになる。この点、織布の場合は、繊維方向の引っ張りに対する強度はある程度高いが、繊維方向と異なる方向(斜め方向)の引っ張りに対する強度は低い。また、不織布の場合、どの方向においても、引っ張りに対する強度は低い。
【0009】
前述したように、配線板には、ガラスクロス等の織布やアラミド繊維等よりなる不織布と樹脂とからなるプリプレグのような樹脂含有シートが用いられるので、配線板の強度を確保するためには、繊維の集合体において、繊維同士の滑りを防止することが重要となる。一方で、前述したように、樹脂含有シートには、金属箔表面や配線板表面に対する良好な密着性も要求される。
【0010】
上記検討の結果、本発明者らは、以下の構成とすることにより、力学強度と密着性とのバランスをとることができることを見出した。
すなわち、本発明の樹脂含有シートは、繊維基材と、前記繊維基材中の繊維同士を固着する固着剤と、前記繊維基材と固着剤とに接する樹脂と、を有し、前記固着剤の貯蔵弾性率が、前記樹脂の貯蔵弾性率よりも高いことを特徴とするものである。
【0011】
本発明において、前記固着剤のガラス転移温度は、前記樹脂のガラス転移温度または軟化温度よりも高いことが好ましい。本発明の樹脂含有シートは、前記繊維基材の繊維同士を固着剤組成物により固着させた後、該固着された繊維基材に樹脂組成物を含浸して得ることができる。この場合、前記固着剤組成物の粘度は、1Pa・s以下であることが好ましい。また、本発明の樹脂含有シートにおいては、前記繊維基材が織布または不織布を含むことが好ましい。
【0012】
本発明の構造体は、上記本発明の樹脂含有シートを、基板に密着させて得られることを特徴とするものである。
【0013】
さらに、本発明の配線板は、上記本発明の構造体を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、力学強度を向上しつつ、基板との密着性を向上した樹脂含有シートを得ることが可能となった。すなわち、本発明においては、繊維基材中の繊維同士を固着する固着剤の貯蔵弾性率を、繊維基材と固着剤とに接する樹脂の貯蔵弾性率よりも高くしたことで、高強度・高弾性率化を図るとともに、密着性も向上した樹脂含有シートを得るための材料の条件を見出したものである。これは、配線板用の樹脂絶縁材には高強度化が要求されているが、例えば、ポリイミド等の高弾性率材料を用いると金属箔等に対する密着性が悪化するものであるところ、本発明においては、高弾性率化を実現しつつ、この密着性の問題を解決するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の樹脂含有シートの構造をモデル的に示す説明図である。
【図2】繊維の集合体に対し一方向に張力Tをかけた際における、繊維同士が固着されていない場合(a)、および、固着されている場合(b)の挙動をモデル的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明の樹脂含有シートの構造を示す説明図を示す。本発明の樹脂含有シートは、主として繊維成分と樹脂成分から形成されるシート状体であり、図示するように、繊維基材11と、繊維基材11中の繊維1同士を固着する固着剤2と、繊維基材11と固着剤2とに接する樹脂3と、を有している。なお、図中の符号Sは、繊維基材11内で固着剤2および樹脂3のいずれも含浸されていない空間を示す。本発明の樹脂含有シートにおいては、繊維基材11を構成する繊維1と、固着剤2と、樹脂3とが、全体として1つの層を形成しているものといえる。本発明の樹脂含有シートにおいては、繊維1同士を固着する固着剤2の貯蔵弾性率が、いずれかの温度において、樹脂3の貯蔵弾性率よりも高い点が重要である。
【0017】
すなわち、本発明者らは鋭意検討の結果、樹脂含有シートに含まれる樹脂成分の役割には2つあり、1つは、繊維同士の滑りを抑制して、樹脂含有シートを高強度および高弾性率化するための固着剤としての役割であり、もう1つは、絶縁樹脂層と金属箔表面等とを密着させる役割であることを見出した。かかる観点から、本発明者らはさらに検討した結果、樹脂含有シートに含まれる樹脂成分の2つの役割を、高強度の確保については固着剤に、密着性の確保については樹脂に、それぞれ分担させて、これら固着剤と樹脂との貯蔵弾性率の関係を規定することで、これら両性能をともに良好に確保できることを見出したものである。このように、樹脂成分の役割を2つに分けて、高弾性率と良好な密着性とを両立させた技術は、従来、知られていない。
【0018】
図2(b)に示すように、本発明を概念的に説明すると、繊維基材11に含まれる繊維1の接点Pを固着剤2により固着したことで、一方向に張力Tをかけた場合でも、接点Pで滑りが生じないので、繊維基材11を高強度・高弾性率化することができる。さらに、繊維基材11と固着剤2に接するように樹脂3を含浸することで、樹脂含有シートとしての、良好な接着性も得ることができるものである。よって、本発明の樹脂含有シートによれば、繊維基材11に対し要求される高い弾性率を固着剤2により確保しつつ、基板等に対する密着性を樹脂3により確保することができ、単にポリイミド等の高弾性率材料を用いることによっては得られなかった、高強度と良好な密着性との双方を兼ね備えた樹脂含有シートを得ることが可能となった。
【0019】
[繊維基材]
本発明に係る繊維基材11は、繊維1の集合体よりなる。繊維1としては、集合体を形成し、織布または不織布を製造できるものであれば特に限定されず、主として天然繊維や化学繊維を使用することができる。繊維1の具体例のうち、天然繊維としては、ガラス繊維、セルロース繊維、岩石繊維、金属繊維、炭素繊維、ロックウール等が挙げられ、化学繊維としては、アラミド、ナイロン、ビニロン、ビニリデン、ポリエステル、ポリオレフィン(ポリエチレンテレフタレート、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリウレタン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、アセテート、トリアセテート、プロミックス、レーヨン、キュプラ、ポリノジックレーヨン、リヨセル、テンセル等が挙げられ、これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、その製法、繊維含有量(繊維配合率)、繊維径、繊維長、質量(坪量)・密度(比重)、厚み、および、織布の織組織については、目的に応じて適宜選択することができる。繊維基材11としては、上記のうちでも、固着剤との親和性の観点から、ガラス繊維、セルロース繊維、アラミド繊維が好ましい。
【0020】
本発明においては、特には、繊維基材11として織布を用いることが好ましく、織りを加えることにより、元々強度の低い繊維であっても高強度化できるメリットが得られる。また、本発明においては、繊維基材11として、元々高強度であるガラス繊維ではなく、強度が低い有機繊維を用いた場合であっても、貯蔵弾性率の高い固着剤を用いることで高強度化できるという利点もある。
【0021】
[固着剤組成物]
固着剤2を形成する固着剤組成物としては、繊維1に付着して、繊維1同士を固着させることができるものであればよく、繊維同士が互いに接し合う接点部のみを固着するものであっても、繊維1の全体を被覆して固着するものであってもよい。固着剤組成物の使用量としては、繊維1同士を固着させることができ、密着性に悪影響が及ばない程度の量であればよく、繊維1を固着剤2により固着させた集合体において、有機溶媒を除いた固形分で、繊維1と固着剤2との体積比が99:1?50:50の範囲、特には、99:1?60:40の範囲であることが好ましい。繊維1と固着剤2との体積比がこの範囲であると、繊維1同士が固着剤により十分に固着されて所望の高強度が得られるものとなるとともに、その後の樹脂3の含浸により良好な密着性が確保できるものとなり、好ましい。特には、固着剤2の使用量は、固着剤2の適用前後において、繊維基材11の膜厚が実質的に変化しない程度の量であることが好ましい。ここで、膜厚が実質的に変化しないとは、繊維基材11が固着剤組成物の溶剤成分等により膨潤して見かけ上厚みを増すような場合を膜厚の変化に含まないとの意味である。また、固着剤組成物は、繊維に付着させる際に液体であることが好ましく、温度や圧力を変えることで液体にして用いることができるものであってもよい。特には、固着剤組成物の、25℃にてE型粘度計におけるローター回転数5rpmで測定した粘度が1Pa・s以下、例えば、1?0.0001Pa・sであることが好ましく、これにより、繊維1の集合体の内部まで、固着剤組成物を含浸させることができ、繊維同士を、より確実に固着させることができる。
【0022】
また、固着剤組成物は、熱または光により硬化するものを用いる。ここでいう硬化とは、熱または光のエネルギーにより液体から固体に化学変化することを意味する。固着剤組成物としては、その用途に応じて、慣用の成分を用いることができ、1種を単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。固着剤組成物に用いられる慣用の成分としては、例えば、熱硬化性樹脂、硬化剤、熱硬化触媒、光硬化性樹脂、光重合開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤、有機溶媒などが挙げられ、具体的には、以下に示すものが使用可能である。
【0023】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂は、加熱により硬化して電気絶縁性を示す樹脂であればよく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートとの共重合エポキシ樹脂、エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体、CTBN変性エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル-1,3-ジグリシジルエーテル、ビフェニル-4,4’-ジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールまたはプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油などで変性した油変性レゾールフェノール樹脂などのレゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂、フェノキシ樹脂、尿素(ユリア)樹脂、メラミン樹脂などのトリアジン環含有樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、ノルボルネン系樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリアゾメチン樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの中でも特に、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂が、絶縁層としての信頼性が優れているために好ましい。
【0024】
エポキシ樹脂としては、1分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する公知慣用の多官能エポキシ樹脂が使用できる。エポキシ樹脂は、液状であってもよく、固形または半固形であってもよい。中でも、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂またはそれらの混合物が好ましい。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エポキシ樹脂としては、具体的には例えば、三菱化学(株)製のjER828等が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0025】
エポキシ樹脂を用いて硬化物を形成する場合には、エポキシ樹脂の他に、硬化剤を含有することが好ましい。硬化剤としては、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)、2-フェニルイミダゾール(2PZ)、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール(2P4MHZ)等のイミダゾール系硬化剤、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、N-アミノエチルピペラジン等のアミン系硬化剤、ポリアミド、ビニルフェノール、アラルキル型フェノール樹脂、フェノールフェニルアラルキル樹脂、フェノールビフェニルアラルキル樹脂等のフェノール系硬化剤、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物等の酸無水物系硬化剤、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂、脂肪族または芳香族の一級または二級アミン、ポリアミド樹脂、ポリメルカプト化合物などの公知の硬化剤を使用できる。硬化剤の配合量は、上記エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1?150質量部、より好ましくは0.5?100質量部である。硬化剤の配合量を、0.1質量部以上とすることで樹脂組成物を十分に硬化させることができ、150質量部以下とすることで、配合量に見合った効果を効率的に得ることができる。
【0026】
また、熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などが挙げられる。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもできる。
【0027】
ポリイミド樹脂としては、一般的に知られている芳香族多価カルボン酸無水物またはその誘導体と芳香族ジアミンとの合成反応によって、ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)を経由して得られるものと、既に有機溶媒にポリアミック酸組成物が溶解された状態の、いわゆるポリイミドワニスとして上市されているものが挙げられる。
【0028】
芳香族多価カルボン酸無水物の具体例としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシルフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独または2種以上混合して用いられる。これらの中でも、特に、少なくとも成分の1つとして、ピロメリット酸二無水物を用いることが好ましい。
【0029】
芳香族多価カルボン酸無水物等の多価カルボン酸と反応させる芳香族ジアミンの具体例としては、例えば、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-アミノベンジルアミン、p-アミノベンジルアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ビス(3-アミノフェニル)スルフィド、(3-アミノフェニル)(4-アミノフェニル)スルフィド、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、ビス(3-アミノフェニル)スルフィド、(3-アミノフェニル)(4-アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3-アミノフェニル)スルホン、(3-アミノフェニル)(4-アミノフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、1,1-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,1-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-エタン、1,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、4,4’-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’-ビス〔4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ〕ベンゾフェノン、4,4’-ビス〔4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ〕ジフェニルスルホン、ビス〔4-{4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル〕スルホン、1,4-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ〕-α,α-ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル〕ベンゼン等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して使用される。これらの中でも、特に、少なくとも成分の1つとして、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを用いることが好ましい。
【0030】
ポリイミドワニスとしては、新日本理化(株)製のリカコートSN20、リカコートPN20、リカコートEN20、東レ(株)製のトレニース、宇部興産(株)製U-ワニス、JSR(株)製のオプトマー、日産化学(株)製のSE812、住友ベークライト(株)製のCRC8000が挙げられる。
【0031】
合成反応により得られるかまたは上市されているポリアミック酸溶液を、加熱等により処理することで、ポリアミック酸からポリイミドへの環化(イミド化)が行なわれる。ポリアミック酸は、加熱のみによる方法、または、化学的方法によって、イミド化することが可能である。加熱のみによる方法の場合、ポリアミック酸を、例えば、200?350℃で加熱処理することによってイミド化する。また、化学的方法は、イミド化を速やかに進行させるために塩基性触媒を利用しつつ、ポリアミック酸を加熱処理して、完全にイミド化する方法である。上記塩基性触媒としては、特に限定されず、従来公知の塩基性触媒が用いられ、例えば、ピリジン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)、各種3級アミン等が挙げられる。これらの塩基性触媒は、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0032】
(光硬化性樹脂)
光硬化性樹脂としては、活性エネルギー線の照射により硬化して電気絶縁性を示す樹脂であればよく、特には、分子中に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物が好ましく用いられる。エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、公知慣用の光重合性オリゴマーおよび光重合性ビニルモノマー等が用いられる。
【0033】
光重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル系オリゴマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0034】
光重合性ビニルモノマーとしては、公知慣用のもの、例えば、スチレン、クロロスチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニルまたは安息香酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルイソブチルエーテル、ビニル-n-ブチルエーテル、ビニル-t-ブチルエーテル、ビニル-n-アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル-n-オクタデシルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリルなどのアリル化合物;2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート類、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのアルキレンポリオールポリ(メタ)アクリレート、;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート類;ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレートなどのポリ(メタ)アクリレート類;トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレートなどのイソシアヌルレート型ポリ(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
【0035】
光硬化性樹脂としては、脂環エポキシ化合物、オキセタン化合物およびビニルエーテル化合物等も好適に用いることができる。このうち脂環エポキシ化合物としては、3,4,3’,4’-ジエポキシビシクロヘキシル、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)-1,3-ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)メタン、1-[1,1-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)]エチルベンゼン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル)メチル-3’,4’-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレン-1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボン酸)エステル、シクロヘキセンオキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアルコール、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有する脂環エポキシ化合物などが挙げられる。
【0036】
オキセタン化合物としては、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体などの多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等のオキセタン化合物が挙げられる。
【0037】
ビニルエーテル化合物としては、イソソルバイトジビニルエーテル、オキサノルボルネンジビニルエーテル等の環状エーテル型ビニルエーテル(オキシラン環、オキセタン環、オキソラン環等の環状エーテル基を有するビニルエーテル);フェニルビニルエーテル等のアリールビニルエーテル;n-ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル;ハイドロキノンジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル、αおよび/またはβ位にアルキル基、アリル基等の置換基を有するビニルエーテル化合物などが挙げられる。市販品としては、例えば、丸善石油化学(株)製の2-ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)、ジエチレングリコールモノビニルエーテル(DEGV)、2-ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、トリエチレングリコールジビニルエーテルなどが挙げられる。
【0038】
光硬化性樹脂を用いる場合には、上述した光硬化性樹脂に加えて、光重合開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤等が用いられ、これらのうちの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン等のアミノアルキルフェノン類;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;またはキサントン類;(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル-2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィネイト等のフォスフィンオキサイド類;各種パーオキサイド類、チタノセン系開始剤、オキシムエステル系開始剤などが挙げられる。これらは、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類のような光増感剤等と併用してもよい。これらの光重合開始剤は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
光酸発生剤としては、例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、ブロモニウム塩、クロロニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩;トリス(トリハロメチル)-s-トリアジン(例えば、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン)、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のハロゲン化化合物;スルホン酸の2-ニトロベンジルエステル;イミノスルホナート;1-オキソ-2-ジアゾナフトキノン-4-スルホナート誘導体;N-ヒドロキシイミド=スルホナート;トリ(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン誘導体;ビススルホニルジアゾメタン類;スルホニルカルボニルアルカン類;スルホニルカルボニルジアゾメタン類;ジスルホン化合物;鉄アレン錯体等を挙げることができる。これらの光酸発生剤は、単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0041】
光塩基発生剤は、紫外線や可視光等の光照射により分子構造が変化するか、または、分子が開裂することにより、重合反応の触媒として機能しうる1種以上の塩基性物質を生成する化合物である。塩基性物質として、例えば2級アミン、3級アミンが挙げられる。このような光塩基発生剤としては、例えば、α-アミノアセトフェノン化合物や、オキシムエステル化合物、アシルオキシイミノ基,N-ホルミル化芳香族アミノ基、N-アシル化芳香族アミノ基、ニトロベンジルカーバメイト基、アルコオキシベンジルカーバメート基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。これらの光塩基発生剤は、単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0042】
有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロプレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよび上記グリコールエーテル類のエステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;1-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、2-ピロリジノン、ε-カプロラクタム、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド等のアミド類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、クロロホルム、ジクロロメタン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン類;N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアニリン、ジブチルアニリン、ジイソプロピルアニリン等のアミン類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶媒等を挙げることができる。これらの中でも、N-メチル-2-ピロリドンやメチルエチルケトンは、取扱いが容易であるため好ましい。
【0043】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂含有シートにおいて、樹脂3は、固着剤2と繊維基材11とに接するものである。本発明において、樹脂3は、密着性を確保する役割を奏しうるものであればよいので、繊維基材11の外側を被覆していてもよい。樹脂組成物の含浸率としては、樹脂含有シートを金属箔等に密着することができるものであれば特に限定はないが、樹脂含有シート中の樹脂の濃度として、10?99体積%、特には、10?70体積%であることが好ましい。樹脂組成物の含浸率を上記範囲内とすることで、良好な密着性と、高強度とをバランス良く得ることができる。
【0044】
樹脂3を形成する樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のうちから選ばれる少なくとも1種類を含むものとすることができ、その用途に応じて、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、硬化物または成形物の物性の観点から、熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂を用いることがさらに好ましい。樹脂組成物として、熱硬化性樹脂ないし光硬化性樹脂を使用する場合には、固着剤組成物について挙げたのと同様の熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、有機溶媒等を適宜使用することが可能であり、本発明においては、樹脂組成物および固着剤組成物が、それぞれ異なればよい。また、熱可塑性樹脂としては、以下に示すものが使用可能である。
【0045】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、アクリル、変性アクリル、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸等の汎用プラスチック類、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ポリアセタール、ポリカーボネート、超高分子量ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン(PSF)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステルイミド、熱可塑性ポリイミド等のエンジニアリングプラスチック類、オレフィン系、スチレン系、ポリエステル系、ウレタン系、アミド系、塩化ビニル系、水添系等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。本発明においては、樹脂複合体を使用することもでき、例えば、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の樹脂複合体として、エポキシ樹脂-PSF、エポキシ樹脂-PPS、エポキシ樹脂-PES等が使用できる。
【0046】
本発明に係る固着剤組成物および樹脂組成物には、その他の成分として、着色剤を配合することもできる。
【0047】
着色剤としては、着色顔料や染料等としてカラーインデックスで表される公知慣用のものが使用可能である。例えば、Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、60、Solvent Blue 35、63、68、70、83、87、94、97、122、136、67、70、Pigment Green 7、36、3、5、20、28、Solvent Yellow 163、Pigment Yellow 24、108、193、147、199、202、110、109、139、179、185、93、94、95、128、155、166、180、120、151、154、156、175、181、1、2、3、4、5、6、9、10、12、61、62、62:1、65、73、74、75、97、100、104、105、111、116、167、168、169、182、183、12、13、14、16、17、55、63、81、83、87、126、127、152、170、172、174、176、188、198、Pigment Orange 1、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、61、63、64、71、73、Pigment Red 1、2、3、4、5、6、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、112、114、146、147、151、170、184、187、188、193、210、245、253、258、266、267、268、269、37、38、41、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53:1、53:2、57:1、58:4、63:1、63:2、64:1、68、171、175、176、185、208、123、149、166、178、179、190、194、224、254、255、264、270、272、220、144、166、214、220、221、242、168、177、216、122、202、206、207、209、Solvent Red 135、179、149、150、52、207、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet 13、36、Pigment Brown 23、25、Pigment Black 1、7等が挙げられる。
【0048】
また、本発明に係る固着剤組成物および樹脂組成物には、必要に応じて、消泡・レベリング剤、チクソトロピー付与剤・増粘剤、カップリング剤、分散剤、難燃剤等の慣用の添加剤を含有させることができる。
【0049】
消泡剤・レベリング剤としては、鉱物油、植物油、脂肪族アルコール、脂肪酸、金属石鹸、脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等の化合物等が使用できる。
【0050】
チクソトロピー付与剤・増粘剤としては、カオリナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、ベントナイト、タルク、マイカ、ゼオライト等の粘土鉱物や、不定形無機粒子、ポリアミド系添加剤、変性ウレア系添加剤、ワックス系添加剤などが使用できる。
【0051】
カップリング剤としては、アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、アセチル等であり、反応性官能基としてビニル、メタクリル、アクリル、エポキシ、環状エポキシ、メルカプト、アミノ、ジアミノ、酸無水物、ウレイド、スルフィド、イソシアネート等である、例えば、ビニルエトキシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル・トリス(β?メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシラン等のビニル系シラン化合物、γ-アミノプロピルトリメトキシラン、Ν?β?(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、Ν-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シラン化合物、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β?(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ系シラン化合物、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シラン化合物、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のフェニルアミノ系シラン化合物等のシランカップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイル化チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラ(1,1-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス-(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等のチタネート系カップリング剤、エチレン性不飽和ジルコネート含有化合物、ネオアルコキシジルコネート含有化合物、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデシル)ベンゼンスルホニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ジオクチル)ホスフェートジルコネート、ネオアルコキシトリス(ジオクチル)ピロホスフェートジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノ)エチルジルコネート、ネオアルコキシトリス(m-アミノ)フェニルジルコネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル)ブチル,ジ(ジトリデシル)ホスフィトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリネオデカノイルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ドデシル)ベンゼン-スルホニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ホスファトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ピロ-ホスファトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(N-エチレンジアミノ)エチルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(m-アミノ)フェニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリメタクリルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリアクリルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシ,ジパラアミノベンゾイルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシ,ジ(3-メルカプト)プロピオニックジルコネート、ジルコニウム(IV)2,2-ビス(2-プロペノラトメチル)ブタノラト,シクロジ[2,2-(ビス2-プロペノラトメチル)ブタノラト]ピロホスファト-O,O等のジルコネート系カップリング剤、ジイソブチル(オレイル)アセトアセチルアルミネート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等のアルミネート系カップリング剤等が使用できる。
【0052】
分散剤としては、ポリカルボン酸系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合系、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸部分アルキルエステル系、ポリエーテル系、ポリアルキレンポリアミン系等の高分子型分散剤、アルキルスルホン酸系、四級アンモニウム系、高級アルコールアルキレンオキサイド系、多価アルコールエステル系、アルキルポリアミン系等の低分子型分散剤等が使用できる。
【0053】
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水和金属系、赤燐、燐酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、モリブデン化合物系、臭素化合物系、塩素化合物系、燐酸エステル、含燐ポリオール、含燐アミン、メラミンシアヌレート、メラミン化合物、トリアジン化合物、グアニジン化合物、シリコーンポリマー等が使用できる。
【0054】
本発明に係る固着剤組成物および樹脂組成物は、その他、硫酸バリウム、シリカ、ハイドロタルサイト等の無機フィラー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の有機フィラー、ラジカル補捉剤、紫外線吸収剤、過酸化物分解剤、熱重合禁止剤、密着促進剤、防錆剤、表面処理剤、界面活性剤、潤滑剤、帯電防止剤、pH調整剤、酸化防止剤、染料、顔料、蛍光剤等を、本発明の目的を阻害しない範囲で含んでいてもよい。
【0055】
[貯蔵弾性率]
本発明においては、固着剤2の貯蔵弾性率が、樹脂3の貯蔵弾性率よりも高いことが必要である。ここで、固着剤2の貯蔵弾性率とは、繊維1は含まずに、固着剤組成物の成分のみの配合物を、成膜後に熱または光により硬化させた硬化膜の貯蔵弾性率を意味する。同様に、樹脂3の貯蔵弾性率についても、硬化性樹脂の場合には成膜後に熱または光により硬化させた硬化膜の貯蔵弾性率を意味し、熱可塑性樹脂の場合には、溶融成膜後に溶剤を除去して得られる塗膜の貯蔵弾性率を意味する。また、貯蔵弾性率とは、試料の硬さの一指標値であって、一定の温度変化を加えながら試料に対し周期的な荷重をかけて歪を検出する動的粘弾性測定と呼ばれる評価を行って、検出した歪から算出される値であり、この値が高いほど優れた力学強度を示していることを意味する。本発明においては、いずれかの温度において、固着剤2の貯蔵弾性率が樹脂3の貯蔵弾性率よりも高いものであればよく、その好適範囲は、固着剤2の貯蔵弾性率については30?0.1GPaであり、より好ましくは20?0.5GPaであり、樹脂3の貯蔵弾性率については10?0.001GPaであり、より好ましくは5?0.01GPaであり、いずれかの温度において、固着剤2の貯蔵弾性率が樹脂3の貯蔵弾性率よりも0.1GPa以上大きいことが好ましい。特には、150?250℃の範囲内のいずれかの温度において、固着剤2の貯蔵弾性率が、樹脂3の貯蔵弾性率よりも高いことが好ましく、150?250℃の全温度範囲において、固着剤2の貯蔵弾性率が、樹脂3の貯蔵弾性率よりも高いことがより好ましい。これにより、本発明の樹脂含有シートは、150?250℃の高温領域でも使用可能となるので、用途が広がることから、好ましい。
【0056】
[ガラス転移温度]
本発明においては、固着剤2のガラス転移温度が、樹脂3のガラス転移温度または軟化温度よりも高いことが好ましい。ここで、固着剤2のガラス転移温度とは、繊維1は含まずに、固着剤組成物の成分のみの配合物を、成膜後に熱または光により硬化させた硬化膜のガラス転移温度を意味する。同様に、樹脂3のガラス転移温度または軟化温度についても、硬化性樹脂の場合には成膜後に熱または光により硬化させた硬化膜のガラス転移温度を意味し、熱可塑性樹脂の場合には、溶融成膜後に溶剤を除去して得られる塗膜の軟化温度を意味する。また、ガラス転移温度とは、前述の動的粘弾性測定から得られた貯蔵弾性率(E′)と損失弾性率(E″)の比(E″/E′)から算出される値(損失正接)が最大のときの温度のことであり、この温度が高いほど優れた耐熱性を示していることを意味する。本発明においては、ガラス転移温度の上限については特に制限されないが、その好適範囲は、固着剤2のガラス転移温度については130℃以上であり、より好ましくは140℃以上であり、特に好ましくは250℃以上である。固着剤2のガラス転移温度が高いほど、本発明の樹脂含有シートの貯蔵弾性率が高くなるので好ましい。
一方、樹脂3のガラス転移温度または軟化温度については70℃以上であり、より好ましくは80℃以上である。また、固着剤2のガラス転移温度が樹脂3のガラス転移温度または軟化温度よりも5℃以上大きいことが好ましい。
【0057】
[樹脂含有シートの製造]
本発明の樹脂含有シートは、繊維基材11を固着剤組成物で処理して繊維1同士を固着させた後、固着された繊維基材11に樹脂組成物を含浸することにより、得ることができる。本発明の樹脂含有シートは、例えば、キャリアフィルム等の被塗布物上に繊維を配置した状態で、固着剤組成物および樹脂組成物を順次塗布、含浸させて、固着剤組成物および樹脂組成物中に含まれる有機溶媒を揮発乾燥することにより、ドライフィルムとして製造することもでき、所望に応じ、さらに、その上にカバーフィルムを貼り合わせてもよい。この際、樹脂組成物が、固着剤組成物の繊維に対する固着性能を阻害するものでなければ、樹脂組成物の塗布プロセスは、固着剤の乾燥前であっても乾燥後であっても、いずれでもよい。
【0058】
この場合、本発明の固着剤組成物および樹脂組成物は、必要に応じ、各成分を配合、分散、希釈して、塗布方法に適した粘度に調整し、塗布することができる。上述したように、固着剤組成物については、繊維基材11に浸透させて繊維1同士を固着させることができるものであればよく、また、樹脂組成物については、繊維基材11の少なくとも一方の面、特には両方の面を、金属箔等に対し密着させることができるものであればよい。
【0059】
被塗布物としては、ドライフィルム用のキャリアフィルムが好ましいが、金属箔表面や回路形成された配線板表面に直接塗布してもよい。塗布方法の具体例としては、ピペット等を用いた滴下法、ディップコート法、バーコーター法、スピンコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、スリットコート法、ブレードコート法、リップコート法、コンマコート法、フィルムコート法等の各種コート法や、スクリーン印刷、スプレー印刷、インクジェット印刷、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷等の各種印刷法が挙げられる。
【0060】
また、キャリアフィルムとカバーフィルムとは、ドライフィルムに用いられる材料として公知のものを、いずれも使用することができ、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。キャリアフィルムとカバーフィルムとは、同一のフィルム材料を用いても、異なるフィルム材料を用いてもよいが、カバーフィルムについては、樹脂3との接着性が、キャリアフィルムよりも小さいものが好ましい。
【0061】
本発明の樹脂含有シートを基板に密着させることで、構造体を得ることができる。基板としては、金属箔基板や、回路基板(回路形成された配線板)などが挙げられる。本発明の樹脂含有シートを基板表面に熱密着させることで、樹脂絶縁層を形成することができ、その繰り返しにより、金属箔層と樹脂絶縁層とをそれぞれ複数層で積層することもできる。なお、樹脂含有シートは、キャリアフィルム上で製造した際に、樹脂含有シート同士で積層してもよく、金属箔等との密着時に樹脂含有シート同士で積層してもよい。
【0062】
本発明の樹脂含有シートを用いて構造体を作製する際に、固着剤組成物および樹脂組成物が熱硬化性樹脂ないし光硬化性樹脂の組合せである場合には、加熱硬化のみの方法、活性エネルギー線照射のみの方法、活性エネルギー線の照射後に加熱硬化させる方法、または、加熱硬化後に活性エネルギー線を照射する方法を用いることで、構造体を作製することができる。また、ドライフィルムを用いる場合には、カバーフィルムがある場合にはカバーフィルムを剥がして、基板表面に樹脂含有シートを熱密着させ、次いで、キャリアフィルムを剥がし、上記硬化方法により硬化させて、構造体を製造することができる。なお、固着剤組成物および樹脂組成物として、ともに熱硬化性樹脂を用いる場合には、繊維同士の固着および樹脂の含浸の、双方の加熱硬化プロセスを同時に実施してもよい。また、加熱を行う際の加熱温度については、目的とする基材に含まれる繊維や固着剤が高熱により分解しない範囲であれば、特に下限および上限の制限はなく、活性エネルギー線照射を行う際の露光量についても、露光量が低すぎて未硬化部分が生ずることがなければ、特に下限および上限の制限はない。
【0063】
また、本発明の樹脂含有シートを作製する際に、樹脂組成物が熱可塑性樹脂である場合には、ペレット形状やシート形状の熱可塑性樹脂を加熱または加熱、圧着する手法を用いることもできる。ここで、熱可塑性樹脂を、固着剤により固着した繊維基材内に含浸させるためには、装置を用いて加圧することは必須要件ではないが、加圧を行うことにより熱可塑性樹脂の繊維基材内への浸入がより容易となる。加圧を行う場合、目的とする樹脂含有シートの形状を損なわない限り、特に圧力の上限はない。この樹脂含有シートを基体表面に熱密着することにより、構造体を成形することができる。また、ドライフィルムを用いて構造体を成形する際には、前記同様に作製することができる。
【0064】
なお、上記において、乾燥時、加熱硬化時または加熱加圧時に用いられる装置としては、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン、加熱・加圧ロール、プレス機等が挙げられる。また、活性エネルギー線照射の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。その他、レーザー光線なども活性エネルギー線として利用できる。
【0065】
本発明の樹脂含有シートの構成部材である繊維基材、繊維同士を固着剤により固着したもの(以下、「中間体」とも称する)、および、ドライフィルムの厚みについては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、特に中間体については、固着剤により繊維同士が互いに固着されているものであればよいので、その厚みは、繊維基材の厚みと同等、または、繊維基材の厚みの2倍を超えない程度の膜厚であることが好ましい。具体的には、繊維基材の厚みの1?1.5倍の範囲内であることがより好ましい。中間体の厚みが繊維基材の厚みの2倍を超えると、固着剤そのものの物性の影響が出るため、好ましくない。
【0066】
本発明の樹脂含有シートを基板表面に形成し、硬化または成形して得られる構造体は、配線板用のコア材として使用することができ、エッチング処理等を行うことで、配線板用の層間絶縁材として使用することもできる。また、樹脂含有シートを回路形成された配線板表面に形成し、回路配線のみを覆うようにパターニング処理および硬化または成形して構造体とすれば、配線板の最外層であるソルダーレジスト等として使用することもできる。
【0067】
以上説明したような構成の本発明の樹脂含有シートは、電子機器用の配線板等に適用することができ、例えば、配線板用の層間絶縁材やソルダーレジスト、コア材等に好適に適用することができ、これにより、本発明の所期の効果を得ることができるものである。その他、例えば、繊維同士を固着剤組成物で固着し、樹脂を浸透、乾燥させて、半硬化である状態(Bステージ)の樹脂絶縁層を形成し、樹脂絶縁層と金属箔を積層プレスすることで、多層板を作製することもできる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例、参考例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例、参考例および比較例によって制限されるものではない。なお、以下の表中の配合量は、すべて質量部を示す。
【0069】
[ポリアミック酸ワニス1の合成]
窒素置換させた攪拌機付属の三つ口フラスコに、脱水N-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒(和光純薬工業(株)製)を入れ、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)(和光純薬工業(株)製)と1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(PMDA)(和光純薬工業(株)製)とを1:1のモル比で配合し、室温で16時間以上撹拌して、樹脂固形分割合が7.5質量%であるポリアミック酸ワニス1を得た。
【0070】
[ポリアミック酸ワニス2の合成]
窒素置換させた攪拌機付属の三つ口フラスコに、脱水N-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒(和光純薬工業(株)製)を入れ、p-フェニレンジアミン(PDA)(和光純薬工業(株)製)と、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物(BPDA)(和光純薬工業(株)製)とを1:1のモル比で配合し、室温で16時間以上撹拌して、樹脂固形分割合が7.5質量%であるポリアミック酸ワニス2を得た。
【0071】
[固着剤組成物または樹脂組成物の調製]
下記表1中に、固着剤組成物または樹脂組成物として使用される組成物1?4の配合内容を示す。下記表1中の組成物1?4の記載に従い、各組成物を調製した。組成物1の複数成分系の場合は、各成分を配合した後、自転・公転ミキサーを用いて攪拌し、調製した。
【0072】
[固着剤または樹脂の貯蔵弾性率等評価用試験片の作製]
各組成物1?4をそれぞれ、厚さ18μmの銅箔にアプリケーターを用いて塗布し、塗膜を得た。
組成物1については、熱風循環式乾燥炉で80℃、30分間の大気条件下で乾燥後、150℃、60分間の大気条件下で加熱させてエポキシ樹脂硬化物を得た。銅箔を除去したところ、厚みは50μmであった。この硬化物を用いて、幅5mm、長さ50mmの貯蔵弾性率等評価用試験片を作製した。
組成物2については、塗布後、熱風循環式乾燥炉で80℃、30分間の大気条件下で乾燥後、250℃、60分間の窒素条件下(100ml/min.)で加熱してイミド化物を得た。銅箔を除去したところ、厚みは50μmであった。その後、上記と同様にして評価用試験片を作製した。
組成物3については、加熱操作を300℃、60分間の窒素条件下で行った以外は組成物2と同様にして評価用試験片を作製した。
組成物4については、高密度ポリエチレンペレット(比重0.95)をプレス機に適量投入して、140℃、3MPa、3分間加熱加圧後、室温まで冷却して成形体を得た後に個片化したところ、厚みは50μmであった。その後、上記と同様にして評価用試験片を作製した。
【0073】
[樹脂含有シートおよびシートについての貯蔵弾性率評価用試験片の作製]
下記表2,3中に、各実施例、参考例および比較例の樹脂含有シートないしシートの構成を示す。
【0074】
(実施例1-Aの中間体の作製)
下記表2中の実施例1-Aについては、繊維基材としてガラスクロス(タイプ1035(IPC規格)、厚み30μm)を用いて、ここに、上記組成物1(粘度0.0005Pa・s)を含浸させた後、熱風循環式乾燥炉で80℃、30分間の大気条件下で乾燥後、150℃、60分間で加熱硬化させて、ガラスクロスおよび固着剤(エポキシ樹脂組成物の硬化物)からなる中間体を作製した。
【0075】
(実施例2-Aの中間体の作製)
下記表2中の実施例2-Aについては、実施例1-Aと同様のガラスクロスに、上記組成物2(粘度0.001Pa・s)を含浸させた後、熱風循環式乾燥炉で80℃、30分間の大気条件下で乾燥後、250℃、60分間で加熱してイミド化し、ガラスクロスおよび固着剤(ポリイミド)からなる中間体を作製した。
【0076】
(実施例3-Aの中間体の作製)
下記表2中の実施例3-Aについては、実施例1-Aと同様のガラスクロスに、上記組成物3(粘度0.001Pa・s)を含浸させた後、熱風循環式乾燥炉で80℃、30分間の大気条件下で乾燥後、300℃、60分間で加熱してイミド化し、ガラスクロスおよび固着剤(ポリイミド)からなる中間体を作製した。
【0077】
(比較例4-Aの中間体の作製)
実施例1-Aと同様に、上記組成物1を使用してガラスクロスおよび固着剤(エポキシ樹脂組成物の硬化物)からなる中間体を作製した。
【0078】
実施例1-A?3-Aおよび比較例4-Aの各中間体の厚みは33?35μmであり、ガラスクロスの厚みからの厚みの増大は3?5μmとわずかだった。
【0079】
(参考例1-Bの中間体の作製)
下記表3中の参考例1-Bについては、繊維としてアラミド不織布(ノーメックス410、厚み50μm)を用いたこと以外は、実施例1-Aの中間体の作製と同様に処理して、アラミド不織布および固着剤(エポキシ樹脂組成物の硬化物)からなる中間体を作製した。
【0080】
(参考例2-Bの中間体の作製)
下記表3中の参考例2-Bについては、繊維として参考例1-Bと同様のアラミド不織布を用いたこと以外は、実施例2-Aの中間体の作製と同様に処理して、アラミド不織布および固着剤(ポリイミド)からなる中間体を作製した。
【0081】
(参考例3-Bの中間体の作製)
下記表3中の参考例3-Bについては、繊維として参考例1-Bと同様のアラミド不織布を用いたこと以外は、実施例3-Aの中間体の作製と同様に処理して、アラミド不織布および固着剤(ポリイミド)からなる中間体を作製した。
【0082】
(比較例4-Bの中間体の作製)
参考例1-Bと同様に、上記組成物1を使用してガラスクロスおよび固着剤(エポキシ樹脂組成物の硬化物)からなる中間体を作製した。
【0083】
参考例1-B?3-Bおよび比較例4-Bの各中間体の厚みは53?56μmであり、アラミド不織布の厚みからの厚みの増大は3?6μmとわずかだった。
【0084】
(各実施例、参考例および比較例の樹脂含有シートないしシートの作製)
実施例1-Aおよび参考例1-Bについては、上記組成物4をプレス機に投入して、140℃で溶融させた後に、上記で得られた各中間体に含浸させ、140℃、3MPa、3分間加熱加圧後、室温まで冷却させることで、固着剤(エポキシ)で固着されたガラスクロスまたはアラミド不織布に、樹脂(高密度ポリエチレン樹脂)が含浸された樹脂含有シートを作製した。
実施例2-A、参考例2-B、実施例3-Aおよび参考例3-Bについては、上記組成物1を、上記で得られた各中間体に対し、繊維全体に行き渡るように適量で塗布し、含浸させ、上記固着剤または樹脂の評価用試験片の作製と同様の条件で、加熱硬化させることで、固着剤(ポリイミド)で固着されたガラスクロスまたはアラミド不織布に樹脂(エポキシ樹脂硬化物)が含浸された樹脂含有シートを作製した。
実施例1-A?3-Aおよび参考例1-B?3-Bの各樹脂含有シートの厚みは、中間体の厚みよりも5?10μm厚くなった。その後、各樹脂含有シートについて、上記と同様の条件で、評価用試験片を作製した。
【0085】
比較例1-Aおよび比較例1-Bについては、上記組成物1を、ガラスクロスまたはアラミド不織布に対し、繊維全体に行き渡るように適量で塗布し、含浸させ、上記固着剤または樹脂の評価用試験片の作製と同様の条件で、加熱硬化させることで、固着剤を含まないガラスクロスまたはアラミド不織布に樹脂(エポキシ樹脂硬化物)が含浸されたシートを作製した。
比較例2-Aおよび比較例2-Bについては、ガラスクロスまたはアラミド不織布に、上記組成物2を比較例1-Aと同様に塗布、含浸させた後、熱風循環式乾燥炉で80℃、30分間の大気条件下で乾燥後、250℃、60分間の大気条件下で加熱してイミド化し、固着剤を含まないガラスクロスまたはアラミド不織布に樹脂(ポリイミド)が含浸されたシートを作製した。
比較例3-Aおよび比較例3-Bについては、上記組成物4をプレス機に投入して、140℃で溶融させた後に、ガラスクロスまたはアラミド不織布に含浸させ、140℃、3MPa、3分間加熱加圧後、室温まで冷却させることで、固着剤を含まないガラスクロスまたはアラミド不織布に樹脂(高密度ポリエチレン樹脂)が含浸されたシートを作製した。
比較例4-Aおよび比較例4-Bについては、比較例2-Aおよび比較例2-Bにおけるガラスクロス又はアラミド不織布を上記組成物1からなる固着剤を有する中間体に変えて使用した以外は、比較例2-A,2-Bと同様に樹脂含有シートを作製した。
その後、各シートについて、上記と同様に評価用試験片を作製した。
【0086】
なお、樹脂分濃度は、下記表2,表3に示したように、実施例1-A?3-Aおよび比較例1-A?4-Aについて同程度であり、また、参考例1-B?3-Bおよび比較例1-B?4-Bについても同程度であった。ここで、樹脂分濃度は、固着剤量={1-(繊維基材の体積/中間体の体積)}×100[体積%]、樹脂量={1-(中間体の体積/樹脂含有シートまたはシートの体積)}×100[体積%](体積は、質量および比重を基に換算)から、それぞれ求めた。
【0087】
[貯蔵弾性率等の測定]
固着剤または樹脂の貯蔵弾性率等評価用試験片を用いて、DMA粘弾性測定装置((株)日立ハイテクサイエンス製 DMA7100)の引張モードを用い、測定周波数1Hz、最小張力および最小圧縮力200mN、歪振幅10μm、昇温速度5℃/分、大気下条件で粘弾性を測定し、50℃、150℃および250℃における貯蔵弾性率を得るとともに、ガラス転移温度または軟化温度を得た。その結果を下記表1に示す。
【0088】
【表1】

*1:jER828,三菱化学(株)製
*2:2-エチル-4-メチルイミダゾール,四国化成(株)製
*3:和光純薬工業(株)製
*4:比重0.95
【0089】
[樹脂含有シートまたはシートの貯蔵弾性率の評価]
樹脂含有シートまたはシート評価用試験片については、シート中のガラスクロスまたはアラミド不織布の繊維のバイアス(斜め)方向が装置の引張方向となるように試験片を取り付け、最小張力および圧縮力を50mNとした以外は、上記と同様にして粘弾性を測定し、50℃、150℃および250℃における貯蔵弾性率を得た。ここで、バイアス(斜め)方向に測定するのは、繊維基材そのものの弾性率の影響を極力排除し、固着効果による弾性率向上の影響を調べるためである。各実施例および参考例については、固着剤を付着させていない比較例のシートと比べたとき、貯蔵弾性率E[GPa]の値が大きい場合は〇、小さい場合は×とした。
【0090】
具体的に説明すると、実施例1-Aの樹脂含有シートは、50℃、150℃、250℃のいずれの温度においても、固着剤を使用しなかった比較例3-Aのシートよりも貯蔵弾性率E[GPa]の値が大きいため、「〇」とした。
参考例1-Bにおいても、固着剤を使用しなかった比較例3-Bのシートと比較して貯蔵弾性率E[GPa]の値が大きいため、「〇」とした。
実施例2-A,参考例2-B,実施例3-A,参考例3-Bの樹脂含有シートにおいても、それぞれ固着剤を使用しなかった比較例1-A,1-Bのシートと比較して貯蔵弾性率E[GPa]の値が大きいため、「〇」とした。
一方、比較例4-Aの樹脂含有シートは、50℃、150℃、250℃のいずれの温度においても、固着剤を使用しなかった比較例2-Aのシートよりも貯蔵弾性率E[GPa]の値が小さくなるため、「×」とした。
比較例4-Bの樹脂含有シートにおいても、固着剤を使用しなかった比較例2-Bのシートと比較して「×」とした。
その結果を下記表2、表3に示す。
【0091】
なお、参考として、ガラスクロスのみを用いて上記測定を実施した場合、バイアス方向の引張りにより測定開始時において編み込んだ繊維がほどけたために、貯蔵弾性率の値が得られなかった。
【0092】
[密着性評価用試験片の作製]
繊維基材としてのガラスクロスまたはアラミド不織布をキャリアフィルム上に配置したこと以外は、上記と同様にして固着剤組成物を塗布、含浸させて、各中間体を作製した。その後、乾燥後の固着剤の表面に、樹脂組成物を成形または塗布し、乾燥させた後、カバーフィルムを貼り合わせて、ドライフィルムを得た。このドライフィルムの両面に厚み18μmの表面未処理銅箔を重ね合わせて(密着させる際にキャリアフィルムおよびカバーフィルムは剥離した)、真空プレス機で、加圧条件を1MPa、加熱条件を、実施例1-Aおよび参考例1-Bについては150℃×10分、実施例2-Aおよび参考例2-B,比較例4-Aおよび4-Bについては250℃×60分、実施例3-Aおよび参考例3-Bについては300℃×60分として成形し、樹脂層と銅箔とが密着した密着性評価用試験片を作製した。また、比較例1-A?3-A,比較例1-B?3-Bについては、固着剤組成物を塗布、含浸しないこと以外は同様にドライフィルムを作製、真空プレス機で加圧し、比較例1-A?3-Aおよび比較例1-B?3-Bのシート作製と同様の温度条件で密着性評価用試験片を作製した。
【0093】
[密着性の評価]
密着性評価用試験片を用いて、樹脂層と表面未処理銅箔との界面で両者を剥離する際のピール強度を、ピール角度90°、ピール速度50mm/分として測定し、0.5kN/m以上の場合を〇、0.5kN/m未満の場合を×とした。その結果を下記表2、表3に示す。ピール強度が高い場合、凹凸に追従する密着性に優れ、銅箔との密着性に優れるといえる。
【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【0096】
上記表2,3に示すように、実施例1-A?3-A,参考例1-B?3-Bの固着剤の貯蔵弾性率は、樹脂の貯蔵弾性率に比べていずれも大きく、一方、比較例4-A,4-Bでは、固着剤の貯蔵弾性率が樹脂の貯蔵弾性率に比べ、いずれも小さくなっている。また、比較例1-A?3-A,1-B?3-Bでは、樹脂のみを用いて、固着剤を用いていない。
【0097】
上記表2,3に示す通り、固着剤の貯蔵弾性率が樹脂の貯蔵弾性率よりも高い固着剤を用いて、ガラスクロスまたはアラミド不織布を固着し、さらに樹脂を含浸させた実施例および参考例の樹脂含有シートは、樹脂のみを含浸させた比較例のシートと比べ、密着性に優れており、かつ、貯蔵弾性率が大きいことがわかる。
例えば、実施例1-Aと比較例3-Aとを対比すると明らかなように、ガラスクロスの繊維同士を固着組成物により固着させ、さらに繊維基材に樹脂組成物を含浸させた実施例の樹脂含有シートは、ガラスクロスの繊維同士を固着組成物により固着させていない比較例3-Aと比較して、いずれの温度においても貯蔵弾性率が高いので、力学強度が高いことが分かった。
特に、実施例2-A,3-Aおよび参考例2-B,3-Bの樹脂含有シートは、250℃の貯蔵弾性率が1GPaを超えており、高温時の力学強度にも優れていることがわかる。一方、固着剤の貯蔵弾性率が樹脂の貯蔵弾性率よりも低い比較例4-Aおよび比較例4-Bでは、樹脂含有シートとしての貯蔵弾性率が低くなり、密着性も劣っていた。
【0098】
以上より、繊維基材中の繊維同士を固着する固着剤と、固着された繊維に接する樹脂とを有し、固着剤の貯蔵弾性率が樹脂の貯蔵弾性率よりも高い樹脂含有シートを用いることにより、優れた力学強度、弾性率および密着性を実現することが可能であることが確かめられた。かかる本発明の樹脂含有シートは、電子機器用の配線板等に適用することができ、例えば、配線板用の層間絶縁材やソルダーレジスト、コア材等に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1,21 繊維
2 固着剤
3 樹脂
11 繊維基材
P 接点
D 張力Tにより繊維が引き離される方向
S 空間
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全芳香族ポリアミド繊維と異なる繊維基材と、
前記繊維基材に含浸されて該繊維基材中の繊維同士を固着する、固着剤組成物からなる固着剤と、
前記固着剤にて繊維同士を固着させた繊維基材に含浸されて該繊維基材と固着剤とに接する、樹脂組成物からなる樹脂と、を有するドライフィルムである硬化性樹脂含有シートであって、
前記固着剤組成物および前記樹脂組成物は、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂のいずれか1種以上を含み、
前記樹脂組成物の含浸率が、前記硬化性樹脂含有シート中の樹脂濃度として10?70体積%であり、
前記固着剤組成物の硬化膜の貯蔵弾性率が、前記樹脂組成物の硬化膜の貯蔵弾性率よりも高く、
前記繊維基材の繊維同士を前記固着剤組成物により固着させた後、該繊維同士を固着させた繊維基材に前記樹脂組成物を含浸して得られることを特徴とする硬化性樹脂含有シート。
【請求項2】
前記固着剤組成物の硬化膜のガラス転移温度が、前記樹脂組成物の硬化膜のガラス転移温度よりも高い請求項1記載の硬化性樹脂含有シート。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記繊維基材が織布または不織布を含み、基板に熱密着、硬化して用いられる請求項1記載の硬化性樹脂含有シート。
【請求項5】
請求項1記載の硬化性樹脂含有シートを、基板に密着させて得られることを特徴とする構造体。
【請求項6】
請求項5記載の構造体を有することを特徴とする配線板。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-07-02 
出願番号 特願2016-538237(P2016-538237)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08J)
P 1 651・ 113- YAA (C08J)
P 1 651・ 537- YAA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 斎藤 克也  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 加藤 友也
岩田 健一
登録日 2020-04-01 
登録番号 特許第6684712号(P6684712)
権利者 太陽ホールディングス株式会社
発明の名称 硬化性樹脂含有シート、並びに、それを用いた構造体および配線板  
代理人 本多 一郎  
代理人 杉本 由美子  
代理人 本多 一郎  
代理人 杉本 由美子  
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