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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H01M 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H01M 審判 全部申し立て 2項進歩性 H01M |
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管理番号 | 1377773 |
異議申立番号 | 異議2020-700380 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-06-03 |
確定日 | 2021-07-16 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6616599号発明「固体酸化物形燃料電池用の電極材料とこれを用いた固体酸化物形燃料電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6616599号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6616599号の請求項1?4、6に係る特許を維持する。 特許第6616599号の請求項5に係る特許についての特許異議申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6616599号の請求項1?6に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成27年6月30日の出願であって、令和1年11月15日にその特許権の設定登録がなされ、同年12月4日に特許掲載公報が発行された。 本件は、その後、その特許について、令和2年6月3日に特許異議申立人村山玉恵(以下、「申立人」という。)より請求項1?6(全請求項)に対して特許異議の申立てがなされ、令和2年9月4日付けで取消理由が通知され、これに対して、同年11月5日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正請求がなされ、その後、同年12月23日に、同年11月5日になされた訂正請求に係る訂正について、申立人から意見書が提出され、令和3年2月1日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、これに対して、同年4月5日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされ、その後、同年5月13日に、本件訂正請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)について、申立人から意見書が提出されたものである。 第2 訂正請求について 1 訂正の趣旨、及び、訂正の内容 本件訂正請求は、特許第6616599号の特許請求の範囲を、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。 なお、令和2年11月5日になされた訂正請求は、本件訂正請求がなされたため、取り下げられたものとみなす(特許法第120条の5第7項)。 また、訂正箇所には、当審で下線を付した。 (1)訂正事項1 請求項1について、訂正前の「固体酸化物形燃料電池の電極を形成するために用いる電極材料であって、 前記固体酸化物形燃料電池の運転環境において電子伝導性を有する遷移金属および遷移金属化合物のうちの少なくとも一つからなる遷移金属成分粉末と、 前記固体酸化物形燃料電池の運転環境において少なくとも酸素イオン伝導性を有する酸素イオン伝導性材料粉末と、 を含み、 前記遷移金属成分粉末と、前記酸素イオン伝導性材料粉末とは、互いに独立した粉末であり且つ混合された状態で存在しており、 前記遷移金属成分粉末は、平均結晶子径をS、平均粒子径をDとしたとき、次式で表されるパラメータP:P=S/D;がP>0.085を満たす、電極材料。」を 「固体酸化物形燃料電池の電極を形成するために用いる電極材料であって、 前記固体酸化物形燃料電池の運転環境において電子伝導性を有する遷移金属および遷移金属化合物のうちの少なくとも一つからなる遷移金属成分粉末と、 前記固体酸化物形燃料電池の運転環境において少なくとも酸素イオン伝導性を有する酸素イオン伝導性材料粉末と、 少なくとも1種の分散媒と、 を含み、 前記遷移金属成分粉末と、前記酸素イオン伝導性材料粉末とは、互いに独立した粉末であり、且つ、前記電極材料において前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とは互いに結合して複合化された状態ではなく混合された状態で存在しており、 前記遷移金属成分粉末は、平均結晶子径をS、平均粒子径をDとしたとき、次式で表されるパラメータP:P=S/D;がP>0.085を満たし、 ここで前記遷移金属成分粉末の平均粒子径は0.1μm以上3μm以下であり、前記酸素イオン伝導性材料粉末の平均粒子径は0.1μm以上3μm以下であり、 前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とが該分散媒中に分散したペースト状に調製された電極材料。」と訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項2?4および請求項6も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 請求項5を削除する。 (3)訂正事項3 請求項6の「請求項1?5のいずれか1項」を「請求項1?4のいずれか1項」と訂正する。 2 当審の判断 2-1 訂正の目的、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び、新規事項追加の有無 (1)訂正事項1 訂正事項1は、本件の願書に添付された明細書(以下、「本件明細書」という。)【0033】の記載を根拠として、「少なくとも1種の分散媒」を含むことを特定する事項(以下、「訂正事項1-1」という。)、本件明細書【0029】の記載を根拠として、訂正前の「遷移金属成分粉末と、前記酸素イオン伝導性材料粉末」について、「互いに独立した粉末であり且つ混合された状態で存在して」いたとの記載を、明瞭にするために、「互いに結合して複合化された状態ではな」いとの記載を付加する事項(以下、「訂正事項1-2」という。)、本件明細書【0025】及び【0027】の平均粒子径についての記載を根拠として、訂正前の「前記遷移金属成分粉末」及び「前記酸素イオン伝導性材料粉末」について、いずれもその「平均粒子径」を「0.1μm以上3μm以下」と特定する事項(以下、「訂正事項1-3」という。)、及び、本件明細書【0033】の記載を根拠として、「遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とが分散媒中に分散したペースト状に調製された」ことを特定する事項(以下、「訂正事項1-4」という。)である。 したがって、訂正事項1-1、訂正事項1-3及び訂正事項1-4は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とし、訂正事項1-2は「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、いずれについても、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)に記載された範囲内の訂正である。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、請求項5を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、訂正事項2において訂正前の請求項5を削除することに伴い、本件訂正前の請求項6について、引用する請求項を「請求項1?5」から請求項5を省き「請求項1?4」に変更するものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載された範囲内の訂正である。 2-2 一群の請求項について 本件訂正前の請求項2?6は、請求項1を引用するものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1?6は一群の請求項である。 そして、本件訂正は、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めがないから、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1?6〕を訂正単位とする訂正の請求をするものである。 2-3 独立特許要件について 本件訂正請求に係る請求項はいずれも特許異議の申立てがなされているので、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。 3 訂正請求についてのむすび 以上のとおりであるから、令和3年4月5日に特許権者が行った訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?6〕についての訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 令和3年4月5日に特許権者が行った請求項1?6についての訂正は、上記第2で検討したとおり適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?6に係る発明(以下、請求項1?6に係る発明をそれぞれ「本件発明1」?「本件発明6」という。また、請求項1?6に係る発明をまとめて「本件発明」という。)は、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 固体酸化物形燃料電池の電極を形成するために用いる電極材料であって、 前記固体酸化物形燃料電池の運転環境において電子伝導性を有する遷移金属および遷移金属化合物のうちの少なくとも一つからなる遷移金属成分粉末と、 前記固体酸化物形燃料電池の運転環境において少なくとも酸素イオン伝導性を有する酸素イオン伝導性材料粉末と、 少なくとも1種の分散媒と、 を含み、 前記遷移金属成分粉末と、前記酸素イオン伝導性材料粉末とは、互いに独立した粉末であり、且つ、前記電極材料において前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とは互いに結合して複合化された状態ではなく混合された状態で存在しており、 前記遷移金属成分粉末は、平均結晶子径をS、平均粒子径をDとしたとき、次式で表されるパラメータP:P=S/D;がP>0.085を満たし、 ここで前記遷移金属成分粉末の平均粒子径は0.1μm以上3μm以下であり、前記酸素イオン伝導性材料粉末の平均粒子径は0.1μm以上3μm以下であり、 前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とが該分散媒中に分散したペースト状に調製された電極材料。 【請求項2】 前記酸素イオン伝導性材料粉末は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ),スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ),サマリウムドープセリア(SDC)およびガドリニウムドープセリア(GDC)からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の電極材料。 【請求項3】 前記遷移金属成分粉末は、少なくとも酸化ニッケル(NiO)を含む、請求項1または2に記載の電極材料。 【請求項4】 前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末との割合は、質量比で、90:10?40:60である、請求項1?3のいずれか1項に記載の電極材料。 【請求項5】(削除) 【請求項6】 燃料極と、固体電解質と、空気極と、を備えた固体酸化物形燃料電池であって、 前記燃料極が請求項1?4のいずれか1項に記載の電極材料から作製されている、固体酸化物形燃料電池。」 2 令和3年2月1日付けで通知された取消理由(決定の予告)の概要 本件特許は、その特許請求の範囲請求項1の「遷移金属成分粉末と、前記酸素イオン伝導性材料粉末とは、互いに独立した粉末であり且つ混合された状態で存在して」いるとの記載が明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである(申立理由を採用)。 3 令和2年9月4日付けで通知された取消理由の概要 なお、令和2年9月4日付けで通知された取消理由は、特許異議申し立ての理由をすべて採用した。 (1)上記2と同じ(申立理由を採用)。 (2)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである(申立理由を採用、一部職権で通知)。 請求項1?6:刊行物1 請求項1?4、6:刊行物2 (3)本件特許の請求項1?6に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1または2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである(申立理由を採用、一部職権で通知)。 請求項1?6:刊行物1または刊行物2 刊行物1:Haeran Cho et al.,"Synthesis of Octahedral-Shaped NiO and Approaches to an Anode Material of Manufactured Solid Oxide Fuel Cells Using the Decalcomania Method", Journal of Nanomaterials, Vol.2013(申立人が提出した甲第1号証:以下、「甲1」という。) 刊行物2:特開2006-40612号公報(申立人が提出した甲第2号証:以下、「甲2」という。) 4 当審の判断 (1)特許法第36条第6項第2号について(上記2、及び上記3の(1)) ア 本件発明1は、「遷移金属成分粉末と、前記酸素イオン伝導性材料粉末とは、互いに独立した粉末であり、且つ、前記電極材料において前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とは互いに結合して複合化された状態ではなく混合された状態で存在して」いるとの発明特定事項(以下、「発明特定事項1」という。)、及び、「遷移金属成分粉末の平均粒子径は0.1μm以上3μm以下であり、前記酸素イオン伝導性材料粉末の平均粒子径は0.1μm以上3μm以下である」との発明特定事項(以下、「発明特定事項2」という。)を含むものである。 イ ここで、上記アの発明特定事項1について、本件明細書【0029】には、次の記載がある。 「なお、遷移金属成分粉末と酸素イオン伝導性材料粉末とは、互いに単独で混合された状態(いわゆるサーメット)であっても良いし、複合化された状態であっても良い。例えば、酸素イオン伝導性材料粉末を構成する粒子の表面に、遷移金属成分粉末が担持された状態であっても良い。この場合、遷移金属成分粉末と酸素イオン伝導性材料粉末とは、(1)機械的結合、(2)物理的結合(例えば分子間結合)、(3)化学的結合(例えば共有結合、イオン結合(焼結を含む))のいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせにより結合されていても良い。」 ウ 上記アの発明特定事項1の「独立」とは、一般に「他のものとはっきり別になっていること」(三省堂大辞林 第三版)を意味するから、上記アの「互いに独立し」、且つ、「互いに結合して複合化された状態ではなく混合された状態」とは、上記イの「互いに単独で混合された状態」に該当すると解される。 エ また、上記イの記載において、「互いに単独で混合された状態」と「複合化された状態」とは、その文言からみて互いに別々の状態を意味していると解される。 オ さらに、上記イの記載において、「例えば」との文言の位置からみて、「酸素イオン伝導性材料粉末を構成する粒子の表面に、遷移金属成分粉末が担持された状態」とは、「複合化された状態」の一例であると解される。 カ また、上記イの記載において、「例えば」及び「この場合」との文言の位置からみて、「(1)機械的結合、(2)物理的結合(例えば分子間結合)、(3)化学的結合(例えば共有結合、イオン結合(焼結を含む))のいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせ」は、「酸素イオン伝導性材料粉末」と「遷移金属成分粉末」とが「複合化された状態」の種類を例示していると解される。 キ そうすると、上記エ?カの検討により、上記カの「(2)物理的結合(例えば分子間結合)」は、「遷移金属成分粉末と酸素イオン伝導性材料粉末と」が「複合化され」る際の結合の一例であり、「(2)物理的結合(例えば分子間結合)」をしているものは、「互いに単独で混合された状態」ではない、すなわち、上記アの「互いに独立し」、且つ、「互いに結合して複合化された状態ではなく混合された状態」ではないこととなる。 ク ここで、申立人が提出した甲第5号証(セメダイン株式会社「接着ガイド」 1.接着の原理(https://www.cemedine.co.jp/basic/pro/guide/principle.html))の「3.物理的相互作用」には、「物理的相互作用とは分子間力やファンデルワールス力といわれるもの」と記載されており、また、新たに当審において引用する参考電子媒体(マルヤ通商株式会社「接着剤の基礎知識」(http://www.maruya-t.co.jp/topics/secchakuzai-1.htm))には、「物理的相互作用とは分子間力(ファン・デル・ワールス力)をいい、二次結合力ともいって接着剤の基本的原理とされています」(「接着のメカニズム」第12?13行)と記載されているから、上記イの「(2)物理的結合(例えば分子間結合)」とは、所謂ファンデルワールス力が含まれると考えられる。 ケ したがって、本件明細書の記載と、上記クの文献の記載事項を参照すると、上記アの「互いに独立し」、且つ、「互いに結合して複合化された状態ではなく混合された状態」には、ファンデルワールス力により凝集されたものは含まれないと解される。 コ 一方、上記アの発明特定事項2によれば、「遷移金属成分粉末の平均粒子径は0.1μm以上3μm以下であり、前記酸素イオン伝導性材料粉末の平均粒子径は0.1μm以上3μm以下であ」り、通常、この程度の平均粒子径の微粒子は混合するだけで、ファンデルワールス力により、「遷移金属成分粉末」と「酸素イオン伝導性材料粉末」とが引き寄せられて、ある程度凝集することは技術常識である。 サ すなわち、上記コの検討より、上記アの「遷移金属成分粉末」及び「酸素イオン伝導性材料粉末」は、混合するだけで、ファンデルワールス力によりある程度凝集することとなる。 シ しかしながら、本件発明1は、本件訂正により、「少なくとも1種の分散媒」「を含み」、「遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とが該分散媒中に分散したペースト状に調製された」ものであることが特定された。 ス そうすると、本件発明1の「電極材料」は、「分散媒」を含んでいるために、必ずファンデルワールス力による凝集が生じているとまではいえず、「遷移金属成分粉末と、前記酸素イオン伝導性材料粉末とは、互いに独立した粉末であり、且つ、前記電極材料において前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とは互いに結合して複合化された状態ではなく混合された状態で存在して」いることも可能であると考えられる。 セ したがって、本件発明1がどのような「電極材料」であるかが特定できるから、本件発明1は明確である。 ソ また、本件発明1を引用する本件発明2?4、6も同様に明確である。 (2)特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について(上記3の(2)及び(3)) (2)-1 甲1の記載 甲1には、次の記載がある。なお、引用刊行物に記載された発明の認定に関連する個所には、当審で下線を付した。また、翻訳は当審による。以下、同じ。 ア 「2.Experimental 2.1. Synthesis of Octahedral-Shaped Ni. The NiO was synthesized by the microwave thermal treatment method. The process used was as follows. First, after the addition of polystyrene (molecular weight = 10,000, Aldrich, USA) and Ni source (NiCl_(2)・H_(2)0, 99.95%, Junsei Chemical, Japan) into ethanol, the solution was stirred homogeneously. The mixed solution was then placed in a quartz liner and the solution was microwave heated at 300 W for 15 min. The product like a lump so obtained was then thermally treated at 450℃ for 3 h to allow crystallization and remove polymer components. To prepare anode functional layers, we purchased a commercially available YSZ powder (TZSY, D50 = 3μm, Tosoh, Japan). To prepare the synthesized NiO (60 wt%)/YSZ (40 wt%) material, a physically mixing technique was used.」(第2頁左欄第20行?右欄第10行) (訳)「2. 実験 2.1 八面体形状Niの合成 NiOは、マイクロ波熱処理法により合成された。使用した製法は次のとおりである。まず、エタノールに対するポリスチレン(分子量 = 10,000, アルドリッチ,USA)及びNi源 (NiCl_(2)・H_(2)O,99.95%, 純正化学,日本)の添加後、溶液は均ーに撹拌された。混合液は、石英ライナに入れられ、300Wで15分間マイクロ波で加熱された。塊状の生成物がそうして得られ、続いて、結晶化を許容し高分子成分を除去するために450℃ で3時間熱処理された。アノード機能層を得るために、我々は、市販のYSZ粉末 (TZSY,D50=3μm, 東ソー,日本)を購入した。合成したNiO(60wt%)/YSZ(40wt%) の材料を準備するため、物理的混合法が使用された。」 イ 「2.3. Fabrication of Solid Oxide Fuel Cells Using Decalcomania Method. The decalcomania paper was prepared next. Briefly, two types of commercial and synthesized NiO were each mixed with YSZ powders at a weight ratio 6:4 in a mortar for 1 h to obtain anode functional layer (AFL) precursor powder. Mixtures were reduced to unique and fine particles (5?10μm) using a 3-roll ball mill (EXAKT50, German) and a high speed mixer (Thinky centrifugal mixer, Japan), and then a binder (benzene oil) was dropped into the powder mixture (the weight ratio of powder to benzene oil in paste was 58?66 : 42?34). The prepared pastes were assembled onto decalcomania sheets (Tullis Russell Coaters, Republic of Korea) using screen printing equipment (DSP-380VS, Nsys, Republic of Korea).」(第3頁左欄第17行?右欄第3行) (訳)「2.3.デカルコマニー法を用いた固体酸化物形燃料電池の製造 デカルコマニーペーパーが次に準備された。簡潔に言えば、市販及び合成された2種類のNiOが、それぞれ、YSZ粉末と6:4の重量比にてすり鉢内で1時間混合され、アノード機能層 (AFL) 前駆体粉末が得られた。混合物は、3ロールボールミル(EXAKT50, ドイツ)及び高速ミキサー (Thinky centrifugal mixer, 日本)を用いて、独特かつ微粒子 (5?10μm)とされ、その後にバインダ(ベンゼン油)が混合粉末に滴下された(ペーストにおける粉末のベンゼン油に対する重量比は58?66:42?34)。準備されたペーストは、デカルコマニーシート (Tullis Russell Coaters,大韓民国)上に、スクリーン印刷装置 (DSP-380VS, Nsys, 大韓民国)を用いて成膜された。」 ウ 「Cell 1 was based on commercial NiO anodes (particle size 0.6μm, Sumitomo, Japan) and NiO anode in cell 2 was synthesized in this study; cell efficiencies were compared.」(第3頁右欄第14?17行) (訳)「セル1は、市販のNiOアノード(粒子サイズ0.6μm,住友,日本)に基づくものであり、セル2のNiOアノードは、本研究で合成されたものであり、これらのセル効率が比較された。」 エ 「3. Results and Discussion Figures1(a),1(b), and1(c) show the XRD pattern, SEM image, and particle size distribution of an NiO powder synthesized by microwave treatment.」(第4頁左欄第1?4行) (訳)「3.結果及び議論 Figure 1(a), 1(b)及び1 (c) は、マイクロ波処理によって合成されたNiO粉末のXRDパターン、SEM像及び粒子サイズ分布である。」 オ 「Fortunately, we were able to obtain the octahedral NiO by using the microwave thermal treatment method, as shown in Figure l(a). The NiO structure showed peaks at 2 theta= 38.0, 43.5, 63.0, 70.0, and 78.58, which were assigned to the (d111),(d200),(d220), (d311), and (d222) planes, respectively. Line broadening of the peak of the main 200 plane is related to crystallite size. The full width at half maximum (FWHM) of the peak at 2 theta = 43.58 was estimated using Scherrer's equation (t=0.9λ/βcosθ, where λ is the wavelength of incident X-rays, β the FWHM height in radians, and θ the diffraction angle). From this calculation, the crystalline domain size was calculated as 7.2μm. Figure1(b) shows FE-SEM images of the particle shapes of NiO. A relatively uniform octahedral shape and particle sizes in the range 4?10μm (average size 7.2μm by the particle size analyzer in Figure1(c)) were observed.」(第4頁右欄第16?31行) (訳)「幸運にも、我々は、Figure1(a) に示すとおり、マイクロ波熱処理法を用いて八面体のNiOを得ることに成功した。NiO構造は、それぞれ、(d111)、(d200)、(d220)、(d311)及び(d222)面に割り当てられた、2θ=38.0,43.5,63.0,70.0及び78.58にてピークを示した。主200面のピークの線の広がりは、結晶サイズに関係している。2θ=43.58におけるピークの半値全幅(FWHM) は、シェラーの式を用いて評価された (t=0.9λ/βcosθ、λは入射X線の波長、βはラジアンで表したFWHM高さ、θは回折角である)。この計算から、結晶ドメインサイズは7.2μmと算出された。Figure1(b) は、NiOの粒子形状のFE-SEM像である。相対的に均一な八面体形状及び4?10μmの範囲の粒子径 (Figure1(c)では粒子径分析器により平均サイズ7.2μm) が観察された。」 カ 「 ![]() 」(第2頁上欄) (訳)「Figure1: マイクロ波加熱処理を用いて合成されたNiO粉末のXRDパターン(a)、SEM像(b)、及び粒子径分布(c)」 (2)-2 甲2の記載 甲2には、次の記載がある。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 酸素イオン伝導性を有するセラミックス粒子の表面に、当該セラミックス粒子の粒径よりも小さい粒径の金属含有粒子が複合化された構造の複合粒子からなる固体電解質形燃料電池の燃料極原料粉体。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、固体電解質形燃料電池の燃料極原料粉体、その燃料極原料粉体の製造方法、その燃料極原料粉体を用いて作製した燃料極、及び、当該燃料極を備えた固体電解質形燃料電池に関する。」 「【0008】 本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、固体電解質形燃料電池の燃料極を形成するNi等の金属含有粒子のナノレベルの微細化とYSZ等の酸素イオン伝導性のセラミックス粒子の粒径制御を同時に実現できる燃料極原料粉体、及び、安価かつ簡素な燃料極原料粉体の製造方法、並びに、当該燃料極原料粉体を用いて作製した燃料極及び固体電解質形燃料電池を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0009】 上記目的を達成するための本発明に係る固体電解質形燃料電池の燃料極原料粉体の第一特徴構成は、酸素イオン伝導性を有するセラミックス粒子の表面に、当該セラミックス粒子の粒径よりも小さい粒径の金属含有粒子が複合化された構造の複合粒子からなる点にある。 【0010】 すなわち、燃料極原料粉体を構成する複合粒子において、酸素イオン伝導性を有するセラミックス粒子の粒径を例えば50nmから十数μm程度に制御しつつ、当該セラミックス粒子の表面に、当該セラミックス粒子の粒径よりも小さい、例えば数nmから数μm程度の粒径の金属含有粒子を複合化させることにより、金属含有粒子のナノレベルの微細化が可能になるとともに、微細な金属含有粒子のセラミックス粒子表面への均質な混合と高分散化が可能となる。」 「【0034】 図5及び図6に基づいて、セラミックス粒子がYSZであり、金属成分を含む溶液がニッケル成分を含む有機溶液(具体的には、酸化ニッケル又は硝酸ニッケルのアルコール溶液)である場合を例にして、仮焼をしない第1方法と仮焼をする第2方法に分けて、具体的に説明する。 第1方法(図5)では、先ず、NiO粉末とYSZ粉末を溶媒(エタノール等)と共にボールミルに投入して湿式ボールミル粉砕を行って、YSZ粉末が分散したNiOの溶液を得る。次に、エバポレーター等を用いてこの溶液から溶媒を除去し、乾燥させた後、乳鉢で粉砕して燃料極原料粉体を得る。図7に、上記溶媒除去から乾燥工程を経て、次第に複合粒子が形成される過程を模式的に示している。」 「【実施例】 【0037】 図5の仮焼無しの燃料極原料粉体の作製では、YSZ粉末(平均粒径:0.3μm、BET値:12m^(2)/g)とNiO粉末(酸化ニッケル(F)、山中化学工業(株)製)をYSZ/Ni=50/50vol%となるように合計130g秤量し、固形分40%となる量のエタノール、及びφ1mmのZrO_(2)ビーズ2080gと共に2LのPEボトルに投入し、卓上型ボールミル(イリエ商会(株)製、V-2M)を用いて回転速度170rpmで3時間、湿式ボールミル粉砕を行った。 【0038】 得られた粉砕スラリーはエバポレータ(東京理化器械(株)製、NAJ-100T)により、温度55℃で1時間、余分なエタノールを留去(除去)した。その後、恒温槽中、温度100℃の条件に24時間置いて完全に乾燥させてから、乳鉢で粉砕後、#250の篩を通して目的の粉末を得た。得られた粉末(サンプル名:M-50)は、下記に示す分析評価方法で粒度、BET値、XRDによる定性分析・結晶子径等の解析を行った。測定結果を表1に示す。」 「【0044】 【表1】 ![]() 」 「【0046】 表1、表2より、複合粒子の粒度はN-50を除いてNA処理品よりも細かくなっている。BET値はすべてNA処理品よりも大きくなっている。 結晶相はすべてNiOとYSZで構成され、NiOとYSZの結晶子径はすべて100nm以下に形成され、NA処理品よりも小さくなっている。特に、N-10、N-30,N-50については、NiO粒子の結晶子径とYSZ粒子の結晶子径が共に50nm以下で、かつ、NiO粒子の結晶子径がYSZ粒子の結晶子径よりも10nm程度小さく、NiO粒子が微細化されていることが確認できる。」 (2)-3 対比・判断 (2)-3-1 甲1を主たる引例とする場合について ア 上記(2)-1のオの「マイクロ波熱処理法を用いて」得られた「八面体のNiO」は、上記(2)-1のアで合成された「NiO」であり、また、上記(2)-1のイで「YSZ粉末」と「混合され」た「NiO」粉末である。 さらに、上記(2)-1のカのFigure1(c)には、NiO粉末のD50が6.867μmであることが記載されている。 そうすると、上記(2)-1より、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「NiO粉末が、YSZ粉末と6:4の重量比にてすり鉢内で1時間混合され、その後にバインダ(ベンゼン油)が混合粉末に滴下され、準備された、固体酸化物系燃料電池のアノード機能層用ペーストであって、 NiO粉末の結晶ドメインサイズは7.2μmであり、NiO粉末のD50は6.867μmであり、 YSZ粉末のD50は3μmである、固体酸化物系燃料電池のアノード機能層用ペースト。」 イ ここで、本件発明1と甲1発明とを対比する。 ウ NiOが、「固体酸化物形燃料電池の運転環境において電子伝導性を有する」ことは周知であるから、甲1発明の「NiO粉末」は、本件発明1の「固体酸化物形燃料電池の運転環境において電子伝導性を有する遷移金属および遷移金属化合物のうちの少なくとも一つからなる遷移金属成分粉末」に相当する。 エ YSZが、「固体酸化物形燃料電池の運転環境において少なくとも酸素イオン伝導性を有する」ことは周知であるから、甲1発明の「YSZ粉末」は、本件発明1の「固体酸化物形燃料電池の運転環境において少なくとも酸素イオン伝導性を有する酸素イオン伝導性材料粉末」に相当する。 オ 甲1発明の「バインダ(ベンゼン油)」は、常温で液体であって、「NiO粉末」と「YSZ粉末」が分散されている溶媒であると考えられるから、本件発明1の「少なくとも1種の分散媒」に相当する。 カ 甲1発明の「アノード機能層用ペースト」は、「NiO粉末が、YSZ粉末と6:4の重量比にてすり鉢内で1時間混合され、その後にバインダ(ベンゼン油)が混合粉末に滴下され、準備された」ものであり、「NiO粉末」と「YSZ粉末」は「バインダ(ベンゼン油)」中で分散されていると考えられるから、本件発明1の「遷移金属成分粉末と、前記酸素イオン伝導性材料粉末とは、互いに独立した粉末であり、且つ、前記電極材料において前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とは互いに結合して複合化された状態ではなく混合された状態で存在して」いる事項に含まれるものであると考えられる。 キ 本件発明1の「平均結晶子径」について、本件明細書には、次のとおり記載されている。 「遷移金属成分粉末に関する平均結晶子径(結晶子の大きさ)は、粉末X線回折法により得られる回折パターンに基づきシェラー(Scherrer)の式:S=Kλ/(β×cosθ);を用いて算出することができる。式中、Sは平均結晶子径を、KはScherrer定数(0.92)を、λは使用X線の波長を、βは回折線(回折ピーク)の半値全幅を、θは回折角を示している。 粉末X線回折法において、例えば、遷移金属成分粉末がNiO粉末である場合、2θ=43°に検出される回折線に基づき、平均結晶子径を算出することができる。」(【0023】) ク また、甲1発明の「NiO粉末の結晶ドメインサイズ」について、甲1には、次のとおり記載(上記(2)-1のオ参照。)されている。 「主200面のピークの線の広がりは、結晶サイズに関係している。2θ=43.58におけるピークの半値全幅(FWHM) は、シェラーの式を用いて評価された (t=0.9λ/βcosθ、λは入射X線の波長、βはラジアンで表したFWHM高さ、θは回折角である)。この計算から、結晶ドメインサイズは7.2μmと算出された。」 ケ ここで、上記キの2θ=43°の回折ピークと上記クの2θ=43.58の回折ピークは、両者ともにNiO粉末のピークであり、同一のピークであると考えられる。 そして、シェラーの式のシェラー定数について、上記キによれば、本件発明1の「平均結晶子径」は、0.92を採用し、上記クによれば、甲1発明の「NiO粉末の結晶ドメインサイズ」は、0.9を採用している。 コ そうすると、甲1発明の「NiO粉末の結晶ドメインサイズは7.2μmであ」る事項は、本件発明1の「平均結晶子径」に換算すると、7.2μm×0.92÷0.9=7.36μmとなる。 したがって、甲1発明における「NiO粉末の結晶ドメインサイズ」を本件発明1の「平均結晶子径」に換算して、甲1発明の(NiO粉末の平均結晶子径)/(NiO粉末のD50)を計算すると、(NiO粉末の平均結晶子径)/(NiO粉末のD50)は7.36/6.867=約1.072となるから、甲1発明の「NiO粉末の結晶ドメインサイズは7.2μmであり、NiO粉末のD50は6.867μmである」事項は、本件発明1の「遷移金属成分粉末は、平均結晶子径をS、平均粒子径をDとしたとき、次式で表されるパラメータP:P=S/D;がP>0.085を満たす」事項に含まれる。 サ 甲1発明の「固体酸化物系燃料電池のアノード機能層用ペースト」は、「NiO粉末が、YSZ粉末と6:4の重量比にてすり鉢内で1時間混合され、その後にバインダ(ベンゼン油)が混合粉末に滴下され、準備された」ものであるから、本件発明1の「固体酸化物形燃料電池の電極を形成するために用いる電極材料であって、」「遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とが該分散媒中に分散したペースト状に調製された電極材料」に相当する。 シ 甲1発明の「YSZ粉末のD50は3μmであ」る事項は、本件発明1の「酸素イオン伝導性材料粉末の平均粒子径は0.1μm以上3μm以下であ」る事項に含まれる。 ス 上記ウ?シの検討より、本件発明1と甲1発明とは、 「固体酸化物形燃料電池の電極を形成するために用いる電極材料であって、 前記固体酸化物形燃料電池の運転環境において電子伝導性を有する遷移金属および遷移金属化合物のうちの少なくとも一つからなる遷移金属成分粉末と、 前記固体酸化物形燃料電池の運転環境において少なくとも酸素イオン伝導性を有する酸素イオン伝導性材料粉末と、 少なくとも1種の分散媒と、 を含み、 前記遷移金属成分粉末と、前記酸素イオン伝導性材料粉末とは、互いに独立した粉末であり、且つ、前記電極材料において前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とは互いに結合して複合化された状態ではなく混合された状態で存在しており、 前記遷移金属成分粉末は、平均結晶子径をS、平均粒子径をDとしたとき、次式で表されるパラメータP:P=S/D;がP>0.085を満たし、 ここで前記酸素イオン伝導性材料粉末の平均粒子径は0.1μm以上3μm以下であり、 前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とが該分散媒中に分散したペースト状に調製された電極材料。」で一致し、次の相違点で相違する。 (相違点1) 「遷移金属成分粉末の平均粒子径」が、本件発明1は、「0.1μm以上3μm以下」であるのに対し、甲1発明は、「6.867μm」である点。 セ 以下、相違点1について検討する。 ソ 本件発明1は、「遷移金属成分粉末の平均粒子径は0.1μm以上3μm以下であ」るのに対し、甲1発明は、「NiO粉末のD50は6.867μmであ」るから、相違点1は実質的な相違点である。 タ 次に、念のため、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たことか否かを検討する。 チ 甲1には、NiO粉末は「4?10μmの範囲の粒子径」(上記(2)-1のオ)と記載され、甲1の図1(c)(上記(2)-1のカ)には、NiO粉末はD10が4.345μmであることが示されている。 ツ 一方、本件明細書の記載によれば、「一般的に、平均粒子径が小さい程、反応表面積や燃料ガス/固体電解質/遷移金属成分粉末が接する三相界面を増大できる点で好ましい」が、「遷移金属成分粉末は熱凝集しやすいという問題が生じ得」、「多孔質電極が緻密化されたり、電極の導電パスを遮断されたりする等の問題が生じ得た」(【0020】)ところ、本件発明1は、「P>0.085を満たすようにして」(【0021】)、「遷移金属成粒子内で結晶子が大きく成長され」、「遷移金属成分粉末の電子伝導性が高められるとともに、熱安定性が改善され」、「遷移金属成分粉末の熱凝集の問題を抑制することができ」(【0022】)るものである。すなわち、本件発明1は、「遷移金属成分粉末の平均粒子径は0.1μm以上3μm以下」という小さい粒子であっても、「P>0.085を満た」すことにより、凝集を抑制するものといえる。 テ そうすると、甲1発明において、NiO粉末の粒子径(4.345μm)を、わざわざ凝集しやすくなるような、0.1μm以上3μm以下とする動機がない。 ト したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 ナ よって、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 ニ また、本件発明2?4、6は、本件発明1を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるため、少なくとも相違点1で相違するから、これまで検討した理由と同様の理由により、甲1発明ではないし、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (2)-3-2 甲2を主たる引例とする場合について ア 上記(2)-2の【0044】の【表1】には、サンプル名「M-50」の燃料極原料粉体について、NiOの結晶子径が524Åであり、原料粉体の粒度が0.331μmであることが記載されている。 また、上記(2)-2の【0046】には、「表1、表2より、複合粒子の粒度はN-50を除いてNA処理品よりも細かくなっている」と記載されているから、表1に記載されたサンプル名「M-50」の燃料極原料粉体は、「複合粒子」であるといえる。 そうすると、上記(2)-2より、サンプル名「M-50」の燃料極原料粉体に注目すると、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「YSZ粉末とNiO粉末をYSZ/Ni=50/50vol%となるように秤量し、エタノール、及びZrO_(2)ビーズと共にPEボトルに投入し、湿式ボールミル粉砕を行い、得られた粉砕スラリーを完全に乾燥させてから、乳鉢で粉砕後、#250の篩を通して得た複合粒子の粉体であって、 NiOの結晶子径が524Åであり、 原料粉体の粒度が0.331μmである、固体電解質形燃料電池の燃料極原料粉体。」 イ ここで、本件発明1と甲2発明とを対比する。 ウ 甲2発明の「固体電解質形燃料電池の燃料極原料粉体」は、本件発明1の「固体酸化物形燃料電池の電極を形成するために用いる電極材料」に相当する。 エ NiOが、「固体酸化物形燃料電池の運転環境において電子伝導性を有する」ことは周知であるから、甲2発明の「NiO粉末」は、本件発明1の「固体酸化物形燃料電池の運転環境において電子伝導性を有する遷移金属および遷移金属化合物のうちの少なくとも一つからなる遷移金属成分粉末」に相当する。 オ YSZが、「固体酸化物形燃料電池の運転環境において少なくとも酸素イオン伝導性を有する」ことは周知であるから、甲2発明の「YSZ粉末」は、本件発明1の「固体酸化物形燃料電池の運転環境において少なくとも酸素イオン伝導性を有する酸素イオン伝導性材料粉末」に相当する。 カ 上記ウ?オより、本件発明1と甲2発明とは、 「固体酸化物形燃料電池の電極を形成するために用いる電極材料であって、 前記固体酸化物形燃料電池の運転環境において電子伝導性を有する遷移金属および遷移金属化合物のうちの少なくとも一つからなる遷移金属成分粉末と、 前記固体酸化物形燃料電池の運転環境において少なくとも酸素イオン伝導性を有する酸素イオン伝導性材料粉末と、 を含む、 電極材料。」で一致し、次の相違点で相違する。 (相違点2-1) 本件発明1は、「少なくとも1種の分散媒」を含み、「遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とが該分散媒中に分散したペースト状に調製された」ものであるのに対し、甲2発明は、「粉体」であって、分散媒を含まず、ペースト状に調製されたものでない点。 (相違点2-2) 本件発明1は、「遷移金属成分粉末と、前記酸素イオン伝導性材料粉末とは、互いに独立した粉末であり、且つ、前記電極材料において前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とは互いに結合して複合化された状態ではなく混合された状態で存在して」いるのに対し、甲2発明は、「複合粒子」である点。 (相違点2-3) 本件発明1は、「遷移金属成分粉末の平均粒子径は0.1μm以上3μm以下であり、前記酸素イオン伝導性材料粉末の平均粒子径は0.1μm以上3μm以下であ」るのに対し、甲2発明は、NiO粉末及びYSZ粉末の平均粒子径が不明である点。 (相違点2-4) 本件発明1は、「遷移金属成分粉末は、平均結晶子径をS、平均粒子径をDとしたとき、次式で表されるパラメータP:P=S/D;がP>0.085を満たす」のに対し、甲2発明は、「NiOの結晶子径が524Åであり、原料粉体の粒度が0.331μmである」点。 キ 事案に鑑み、まず、相違点2-2について検討する。 ク 甲2発明は、「複合粒子の粉体」であるから、本件発明1の「互いに独立した粉末であり、且つ、前記電極材料において前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とは互いに結合して複合化された状態ではなく混合された状態で存在して」いる事項を含むとはいえない。 ケ また、甲2の「固体電解質形燃料電池の燃料極原料粉体」は、「固体電解質形燃料電池の燃料極を形成するNi等の金属含有粒子のナノレベルの微細化とYSZ等の酸素イオン伝導性のセラミックス粒子の粒径制御を同時に実現できる」(【0008】)ものを提供するために、「固体電解質形燃料電池の燃料極原料粉体」が、「酸素イオン伝導性を有するセラミックス粒子の表面に、当該セラミックス粒子の粒径よりも小さい粒径の金属含有粒子が複合化された構造の複合粒子からなる」(【0009】)ものであって、「複合粒子」であることが必須のものである。 コ そうすると、甲2発明において、相違点2-2に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 サ よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 シ また、本件発明2?4、6は、本件発明1を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるため、少なくとも相違点2-2で相違するから、これまで検討した理由と同様の理由により、甲2発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 5 申立人の意見について (1)申立人は、令和3年5月13日付けの意見書において、次のア?ウの主張をしている。 ア「「分散媒」の有無によって各粒子の状態は大きく影響を受けることは明らかであるから、【0016】?【0029】記載の粉末状の「電極材料」とこれを分散媒中に分散したペースト状の電極材料とは、「電極材料」という枠組みで共通するものの、性質として全く異なるものである。 特に、「粉末状の電極材料」から出発して、「分散媒」の添加によって「ペースト状の電極材料」を得る過程においては、通常、「公知の三本ロールミル等」(【0036】)を用いた混練が行われるから、混練中に作用する剪断力により、「遷移金属成分粉末」及び「酸素イオン電導性材料粉末」の平均粒子径や両粉末の混合状態は大きく変化する。 然るに、本件明細書には、混練後の「ペースト状の電極材料」に関して、平均粒子径や両粉末の混合状態を何ら説明していない。 そうすると、構成要件lD及び構成要件1Eは、「ペースト状の電極材料」を特定するものではなく、本件明細書において各構成要件との対応関係が明確に説明された「粉末状の電極材料」に関するものであると考えなければならない。」(第5頁第11行?最終行) 「構成要件lDについては、粉末状の電極材料に関する技術的特徴として【0029】で説明されているため、本件明細書に接した当業者の立場からは、特許権者の上記主張を受け容れることはできない。 しかし、訂正後請求項1の文言だけを考慮すれば、訂正後請求項1において、構成要件lDの発明特定事項は、「ペースト状に調製された、電極材料」における「遷移金属成分粉末」と「酸素イオン伝導性材料粉末」との関係を特定するものであると考える特許権者のような立場もあるかもしれず、訂正後請求項1の文言上、構成要件1Dの発明特定事項が分散剤添加前の粉末状の電極材料についてのものであるのか、分散媒の添加によって「ペースト状に調製された、電極材料」についてのものであるのかが判然としない。 よって、訂正後請求項1は、粉末状の電極材料、または、ペースト状の電極材 料の何れを特定するものとして構成要件lDを特定しているのか不明である点において、特許法36条6項2号の規定に違反するものである。」(第7頁第21行?第8頁第8行) イ「訂正後請求項6について、「固体酸化物形燃料電池」において各粉末の粒子が互いに焼結されている場合、それは、「…複合化された状態…」の例示である「(3)化学的結合(例えば共有結合、イオン結合(焼結を含む))」(【 0029 】)に他ならない。 また、例えば甲第10号証においても、「サーメットの構造は微細なセラミックス粉末を金属によって結合した構造を持つ。…この結合力の中心こそ化学的な結合力であるが,…。…セラミックスと金属間の結合力として主に作用する化学的な結合力は…」(「4・1焼結体内部に成立する強度発生の機構」)と記載されるように、サーメットにおけるセラミックスと金属との結合形態は化学的結合であることが当業者にとっても周知の事実である。 そうすると、訂正後請求項6に係る「固体酸化物形燃料電池」において、引用先である訂正後請求項1の構成要件lDが、焼結後の各粉末の状態を意味すると考えた場合、かかる焼結後の各粉末の状態が実際には「…複合化された状態…」(化学的結合)であることと矛盾し、訂正後請求項6の場合における構成要件1Dが各粉末のどのような状態を意味するのか不明である。 以上述べたように、訂正後請求項6は、引用先である訂正後請求項1で特定された構成要件lDが各粉末のどのような状態を特定しているのか不明確である点において、特許法36条6項2号の規定に違反するものである。」(第9頁第12行?第10頁第3行) ウ 次のア.?オ.より、本件発明1の「令和3年2月1日付の取消理由通知書における「第3」「3」で指摘された特許法 36条 6項2号に関する取消理由が訂正後請求項1及びこれを引用する訂正後請求項2?4及び6においても依然として解消していない。」 「ア.訂正後の請求項1における構成要件1Dについて説明した【0029】の記載は分散媒の存在を前提としていない。」 「イ.訂正後請求項1の構成要件1Dは、 ペースト状に調製される前の粉体状物に関する発明特定事項である。」 「ウ.「遷移金属成分粉末」と 「酸素イオン電導性材料粉末」とが、「…互いに単独で混合された状態(いわゆるサーメット)…」(【0029】)であると解釈することは、当業者の技術常識に照らして、 決して正当化されるものではない。」 「エ. ペースト状の電極材料の分散状態は、ペースト状に調製される前の粉体状物に関する訂正後請求項1の構成要件1Dの発明特定事項とは無関係である。」 「オ.「分散媒」を含んでいるからといって、ファンデルワールスカによる凝集が起きないとは限らない。」(以上、第10頁第4行?第14頁第18行) (2)アの主張について ア 特許出願に係る発明の要旨認定は、特段の事情のない限り、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきである。特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか、あるいは、一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限って、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎない(昭和62年(行ツ)第3号)。 イ 上記アを本件発明1に当てはめると、本件発明1は、「少なくとも1種の分散媒」「を含み、前記遷移金属成分粉末と、前記酸素イオン伝導性材料粉末とは、互いに独立した粉末であり、且つ、前記電極材料において前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とは互いに結合して複合化された状態ではなく混合された状態で存在しており、」「前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とが該分散媒中に分散したペースト状に調製された電極材料」である。 ウ そうすると、請求項1の記載には、上記アの「特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか、あるいは、一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情」は存在しない。 エ したがって、本件発明1は、「遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とが該分散媒中に分散したペースト状に調製された」状態で、「前記遷移金属成分粉末と、前記酸素イオン伝導性材料粉末とは、互いに独立した粉末であり、且つ、前記電極材料において前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とは互いに結合して複合化された状態ではなく混合された状態で存在して」いるものであり、特段明確ではないといえるような記載は認められない。 オ よって、申立人の意見には理由がない。 (3)イの主張について ア 本件発明6は、「燃料極と、固体電解質と、空気極と、を備えた固体酸化物形燃料電池であって、前記燃料極が請求項1?4のいずれか1項に記載の電極材料から作製されている、固体酸化物形燃料電池」であって、「燃料極」が「遷移金属成分粉末と、前記酸素イオン伝導性材料粉末とは、互いに独立した粉末であり、且つ、前記電極材料において前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とは互いに結合して複合化された状態ではなく混合された状態で存在して」(請求項1)いる「電極材料」から作製されているものである。 イ そして、申立人も認めているように、通常、燃料極は電極材料を焼結して形成するものであるから、焼結されることにより、電極材料同士は、化学的結合で結合された状態となる。 ウ そうすると、「電極材料」の状態では、「遷移金属成分粉末と、前記酸素イオン伝導性材料粉末とは、互いに独立した粉末であり、且つ、前記電極材料において前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とは互いに結合して複合化された状態ではなく混合された状態で存在して」いたものの、この「電極材料」から「燃料極」を作製することにより、電極材料同士は、焼結されることにより化学的結合で結合された状態となることは明らかである。 エ したがって、本件発明6は、電極材料同士が化学的結合で結合された状態である以外考えられないから、明確であるといえる。 オ よって、申立人の意見には理由がない。 (4)ウの主張について ア 上記(1)のウのア.?エ.の主張は、本件発明1の「遷移金属成分粉末と、前記酸素イオン伝導性材料粉末とは、互いに独立した粉末であり、且つ、前記電極材料において前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とは互いに結合して複合化された状態ではなく混合された状態で存在して」いる事項について、明細書を参酌することを前提とした主張である。 イ しかしながら、本件発明1は、上記(2)のイで述べたとおりのものであって、上記(2)のアの「特段の事情」は存在せず、「明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許される」場合に該当するものとはいえない。 ウ したがって、上記(1)のウのア.?エ.の主張には理由がない。 エ 次に、上記(1)のウのオ.の主張について検討する。 オ 確かに、申立人が主張するように、「分散媒」を含んでいるからといって、ファンデルワールスカによる凝集が起きないとは限らないかもしれない。 カ しかしながら、本件発明1は、「少なくとも1種の分散媒」「を含み、前記遷移金属成分粉末と、前記酸素イオン伝導性材料粉末とは、互いに独立した粉末であり、且つ、前記電極材料において前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とは互いに結合して複合化された状態ではなく混合された状態で存在して」いるものである。 キ そうすると、本件発明1の「電極材料」は、「分散媒」またはその他の手段(例えば、分散剤の使用)により、ファンデルワールスカによる凝集がほぼ起きていないものと解される。 ク よって、申立人の上記(1)のウのオ.の主張にも理由がない。 6 むすび 以上のとおり、本件の請求項1?4、6に係る特許は、令和2年9月4日付けで通知された取消理由に記載した取消理由、令和3年2月1日付けで通知された取消理由に記載した取消理由(決定の予告)、及び、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことはできず、また、他に本件の請求項1?4、6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件の請求項5は、本件訂正により削除されたから、本件の請求項5に係る特許に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 固体酸化物形燃料電池の電極を形成するために用いる電極材料であって、 前記固体酸化物形燃料電池の運転環境において電子伝導性を有する遷移金属および遷移金属化合物のうちの少なくとも一つからなる遷移金属成分粉末と、 前記固体酸化物形燃料電池の運転環境において少なくとも酸素イオン伝導性を有する酸素イオン伝導性材料粉末と、 を含み、 前記遷移金属成分粉末と、前記酸素イオン伝導性材料粉末とは、互いに独立した粉末であり、且つ、前記電極材料において前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とは互いに結合して複合化された状態ではなく混合された状態で存在しており、 前記遷移金属成分粉末は、平均結晶子径をS、平均粒子径をDとしたとき、次式で表されるパラメータP:P=S/D;がP>0.085を満たし、 ここで前記遷移金属成分粉末の平均粒子径は0.1μm以上3μm以下であり、前記酸素イオン伝導性材料粉末の平均粒子径は0.1μm以上3μm以下である、電極材料。 【請求項2】 前記酸素イオン伝導性材料粉末は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ),スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ),サマリウムドープセリア(SDC)およびガドリニウムドープセリア(GDC)からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の電極材料。 【請求項3】 前記遷移金属成分粉末は、少なくとも酸化ニッケル(NiO)を含む、請求項1または2に記載の電極材料。 【請求項4】 前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末との割合は、質量比で、90:10?40:60である、請求項1?3のいずれか1項に記載の電極材料。 【請求項5】 少なくとも1種の分散媒を含み、前記遷移金属成分粉末と前記酸素イオン伝導性材料粉末とが該分散媒中に分散したペースト状に調製された、請求項1?4のいずれか1項に記載の電極材料。 【請求項6】 燃料極と、固体電解質と、空気極と、を備えた固体酸化物形燃料電池であって、 前記燃料極が請求項1?5のいずれか1項に記載の電極材料から作製されている、固体酸化物形燃料電池。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-07-07 |
出願番号 | 特願2015-131910(P2015-131910) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(H01M)
P 1 651・ 121- YAA (H01M) P 1 651・ 537- YAA (H01M) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 高木 康晴 |
特許庁審判長 |
池渕 立 |
特許庁審判官 |
増山 慎也 土屋 知久 |
登録日 | 2019-11-15 |
登録番号 | 特許第6616599号(P6616599) |
権利者 | 株式会社ノリタケカンパニーリミテド |
発明の名称 | 固体酸化物形燃料電池用の電極材料とこれを用いた固体酸化物形燃料電池 |
代理人 | 安部 誠 |
代理人 | 安部 誠 |