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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B01J
審判 全部申し立て 2項進歩性  B01J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B01J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B01J
管理番号 1377778
異議申立番号 異議2020-700797  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-10-15 
確定日 2021-07-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6681492号発明「吸水性樹脂粒子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6681492号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし5〕について訂正することを認める。 特許第6681492号の請求項1及び3ないし5に係る特許を維持する。 特許第6681492号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6681492号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成31年3月22日(優先権主張 平成30年12月12日)の出願であって、令和2年3月25日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年4月15日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年10月15日に特許異議申立人 株式会社日本触媒(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし5)がされ、同年12月14日付けで取消理由が通知され、令和3年2月12日に特許権者から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年3月12日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年4月16日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和3年2月12日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が10質量%以上」とあるのを、「25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が11.0質量%以上」と訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3ないし5についても同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「25質量%以下であり」とあるのを、「15質量%以下であり」と訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3ないし5についても同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、「40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が14質量%以上30質量%以下である」とあるのを「40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が14質量%以上30質量%以下であり、
生理食塩水保水量が20?49g/gである」と訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3ないし5についても同様に訂正する。

(4)訂正事項4
請求項2を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に」とあるのを「請求項1に」と訂正する。
併せて、請求項3を直接又は間接的に引用する請求項4及び5についても同様に訂正する。

2 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1及び2による請求項1についての訂正は、「25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3による請求項1についての訂正は、「生理食塩水保水量」に関する限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
さらに、訂正事項1ないし3による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)請求項2についての訂正について
訂正事項4による請求項2についての訂正は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)請求項3についての訂正について
訂正事項5による請求項3についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)請求項4及び5についての訂正について
訂正事項1ないし3による請求項4及び5についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項5による請求項4及び5についての訂正は、請求項3についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
さらに、訂正事項1ないし3及び5による請求項4及び5についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおり、請求項1ないし5についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。

なお、訂正前の請求項1ないし5は一群の請求項に該当するものである。そして、請求項1ないし5についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

そして、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし5に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし5〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70?100モル%であり、
下記方法で測定される、25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が11.0質量%以上15質量%以下であり、40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が14質量%以上30質量%以下であり、
生理食塩水保水量が20?49g/gである、吸水性樹脂粒子。
溶解分測定方法:
500mLビーカーに入れた0.9質量%NaCl水溶液500gを、25℃又は40℃に調整し、600rpmで攪拌する。吸水性樹脂粒子2gを該ビーカーに入れ、3時間攪拌した後、75μmJIS標準篩でろ過し、ろ液を回収する。得られたろ液を、JIS P3801に定められた第6種のろ紙を用いて更に吸引ろ過する。吸引ろ過して得られた液を、秤量済みの100mLビーカーに80g量りとり、140℃の熱風乾燥機で15時間乾燥させ、ろ過固形分質量(Wa)を測定する。吸水性樹脂粒子を用いずに同様の手順でろ過固形分質量(Wb)を測定する。以下の式により、溶解分を算出する。
溶解分(質量%)=[((Wa-Wb)/80)×500/2]×100
【請求項2】(削除)
【請求項3】
請求項1に記載の吸水性樹脂粒子を含有する、吸収体。
【請求項4】
請求項3に記載の吸収体を備える、吸収性物品。
【請求項5】
おむつである、請求項4に記載の吸収性物品。」

第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和2年10月15日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

(1)申立理由1(甲第1、7又は9号証を主引用文献とする新規性進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1、7又は9号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか又は上記甲第1、7又は9号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(2)申立理由2(甲第3、4、5、6又は8号証に基づく新規性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3、4、5、6又は8号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(3)申立理由3(甲第1号証と甲第2号証の組み合わせによる進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1及び2号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(4)申立理由4(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

・甲第15号証は、「吸水性樹脂が吸水した膨潤ゲルのベトツキ(粘着性)の原因が、可溶分の量そのものではなく、可溶分の分子量に大きく依存する」ことを開示している。一方、本件発明1では、可溶分の量のみが規定されており、可溶分の分子量については何ら規定されていない。それゆえ、本件発明1には、本件発明の課題を解決しない範囲までもが含まれていることになる。したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
以上の議論は、本件請求項1を引用する、本件請求項2?5についても該当する。

(5)申立理由5(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

・本件請求項1に係る吸水性樹脂粒子の製造方法に関して、本件明細書には、「特定の条件下で行われる逆相懸濁重合で合成され、シリカ微粒子を添加する」態様しか記載されていないと言える。本件明細書の記載に基づいては、他の製造方法(例えば、「水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等」)に基づいて、どのように本件請求項1に係る吸水性樹脂粒子を製造すればよいのか、たとえ技術常識を参酌しても当業者には理解できない。
以上の議論は、本件請求項1を引用する、本件請求項2?5についても該当する。

(6)証拠方法
甲第1号証:米国特許出願公開第2016/0220980号
甲第2号証:特開平8-67821号公報
甲第3号証:特開2006-68731号公報
甲第4号証:特開2005-111474号公報
甲第5号証:国際公開第2017/170605号
甲第6号証:国際公開第2018/062539号
甲第7号証:国際公開第2013/002387号
甲第8号証:特開2001-98170号公報
甲第9号証:国際公開第2006/123561号
甲第10号証:実験成績証明書(甲第3号証の実施例2)
甲第11号証:実験成績証明書(甲第4号証の実施例32)
甲第12号証:実験成績証明書(甲第5号証の実施例3)
甲第13号証:実験成績証明書(甲第6号証の実施例23)
甲第14号証:実験成績証明書(甲第8号証の実施例10)
甲第15号証:特開平2-255804号公報
なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。

2 取消理由の概要
令和2年12月14日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。

(1)取消理由1(甲1、7又は9を主引用文献とする新規性進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1、7又は9号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか又は上記甲第1、7又は9号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(2)取消理由2(甲3、4、5又は6に基づく新規性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3、4、5又は6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(3)取消理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

・発明の詳細な説明の記載及び技術常識から、当業者は、「25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分」及び「40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分」の量に加え、分子量が特定されたものが、発明の課題を解決できると認識する。
しかし、本件特許発明1は、「25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分」及び「40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分」の分子量を特定するものではない。
したがって、本件特許発明1は、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。
また、本件特許発明2ないし5についても同様である。
よって、本件特許発明1ないし5に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合しない。

なお、取消理由1は申立理由1とおおむね同旨であり、取消理由2は申立理由2のうち甲3、4、5又は6に基づく理由とおおむね同旨であり、取消理由3は申立理由4とおおむね同旨である。

第5 取消理由についての当審の判断
1 取消理由1(甲1、7又は9を主引用文献とする新規性進歩性)について
(1)甲1、7及び9に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項及び甲1発明
(ア)甲1に記載された事項
甲1には、「WATER-ABSORBING RESIN AND PREPARING METHOD THEREOF(訳:吸水性樹脂及びその製造方法)」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、TABLE 1及びTABLE 2を除き、原文の摘記は省略し、訳文を摘記する。下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。

・「[0005] 吸水性樹脂(SAP)は、樹脂の重量の数十?数千倍の水を吸収できる樹脂である。吸水性樹脂とは、親水性の3次元網目状構造を有しており、ある程度の圧力を加えても吸収した水を放出しないポリマー材料のことを表す。かつては、天然ポリマー(デンプンなど)を使用した吸水性樹脂が多く存在した。しかし、近年では、アクリル酸またはアクリルアミドと、少量の架橋剤とを重合して製造された合成ポリマーが、最も使用されている。今日では、樹脂の重量の数十?数百倍の水を吸収できる新規な吸収性樹脂が開発されており、衛生製品(オムツ、衛生用品など)を含む吸水または保水を必要とする種々の応用に利用されている。」

・「[0034] アクリル系モノマー、重合開始剤および内部架橋剤を混合して調製されたポリマー組成物の重合によって、基材樹脂を調製してもよい。
[0035] 本開示において、アクリル系モノマーとは、アクリル酸またはその塩のことを表す。アクリル酸塩の例としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルキルアミン塩などが挙げられるが、これらに限定されない。
[0036] アクリル系モノマーを重合して本発明の一実施形態に係る基材樹脂を得る際に、アクリル系モノマーの含有量は特に限定されないが、例えば、全モノマーに対して70?100mol%であり、特に90?100mol%である。」

・「[0074] 本開示に記載されている無加圧下(すなわち「無荷重下」)吸収倍率とは、「遠心保持容量(CRC)」の省略形である。無加圧下吸収倍率は、不織布製の袋(ティーバックなど)に入れた0.2gの吸水性樹脂を0.9重量%生理食塩水中で30分間吸水させ、その後、遠心分離により水分を除去することによって得られる吸収倍率(g/g)を表しうる。無加圧下吸収倍率は、下記式2によって決定されうる。
無加圧下吸収倍率(g/g)={(吸水性樹脂+ティーバックの重量(g)-(空のティーバックの重量(g))}/乾燥樹脂の重量(g) [式2]」

・「[0076] 本開示において、可溶分(extractables)とは、水中に溶解しているアクリルオリゴマー成分(液体溶出分)のことを表す。可溶分は、吸水性樹脂を100倍量の水に1時間浸漬し、調製された水溶性成分の溶液を加圧下でフィルターに通して濾過し、抽出された成分を除湿・乾燥させることによって、下記式4に従って決定されてよい。
可溶分(重量%)(抽出された成分の重量/乾燥した吸水性樹脂の最初の重量)×100 [式4]」

・「[0087] 本発明の一実施形態に係る高温における可溶分の増加は、1以上3未満でなくてはならない。一般的に、高温においては、可溶分の量は増加する。したがって、上述した高温における可溶分の増加の定義によると、高温における可溶分の増加の下限値は1.0となる。一方、高温における可溶分の増加が3以上であるならば、温度が上昇している条件下において、樹脂中の可溶分の発生が促進される場合がある。そのため、吸水性樹脂が吸水および膨潤した際に、膨潤ゲル中から可溶分が溶解して、ゲル粒子間の粘着性を増加させる。それゆえ、液体の流通を妨げるゲルブロッキング現象を加速させる。上記の範囲であれば、他の物性を損なうことなくゲルブロッキング現象を防止できる。上限値は特に限定されないが、2.8以下であってよい(例えば、2.5以下、より具体的には2以下)。上限値が1.0に近くなるにつれて、吸水性樹脂の架橋濃度は高くなり、架橋点がより頻繁かつ均一になる。これらの結果は、高温における可溶分が減少し、それゆえ、優れた吸水特性を維持したままゲルブロッキング現象が最小限に抑えられることを意味している。
[0088] 可溶分の量を測定する際、90℃および23℃において測定したモノマー残渣の値である限り、その量は特に限定されない。しかし、例えば、可溶分の量は、90℃においては2?50重量%であってよく、23℃においては2?15重量%であってよい。」

・「[0104] アクリル系モノマーを含有する水溶性の溶液(それぞれの組成は、表1に示す通りである)に、重合開始剤および内部架橋剤を加えた。その後、調製した溶液を10℃に冷却した。」

・「[0106] 得られた含水ゲル状態のポリマーに、表面架橋剤を加えた。その後、混合物を3mm角に細断し、135℃の熱風で60分間乾燥させた。そして、ロールミルによって粉砕することにより、粒径が300?500μmの吸水性樹脂を得た。」

・「[0113](2)無加圧下吸収倍率(CRC)の測定(EDANA WSP 241.2R3)」

・「



・「[0114] 各実施例および比較例で調製した吸水性樹脂を、0.2gずつティーバックに密封した。その後、ティーバックを0.9重量%生理食塩水に浸漬し、30分間超吸水させた。
[0115] その後、250G、3分間に設定した遠心分離機でティーバックを遠心分離し、ティーバックの重量を測定した。」

・「[0117] (3)可溶分の測定(EDANA WSP270.02)
[0118] 吸水性樹脂中の可溶分は、加圧下における抽出により測定した。
[0119] 実施例および比較例で調製した吸水性樹脂を、80℃にて3時間、水分を除き乾燥させた。その後、2gの乾燥させた樹脂と、200gの水とを、自転公転ミキサー(Unitec Co. Ltd.)に入れ、50rpmにて1時間攪拌した。
[0120] 調製された溶液を、1.2μmのガラス濾紙を有する容器に注いだ。その後、35℃、5psiの窒素ガスを用いて、溶液を濾紙に通し、ゆっくりと濃縮した。その後、抽出物の水分を除き乾燥させた。このように処理した抽出物から、上記式4に従って可溶分を測定した。
[0121] 上記の手順において、90℃および23℃にて、可溶分の量を測定した。その後、上記式1に従って可溶分の増加を計算した。その結果を表2に示す。」

・「



・「[請求項1] アクリル系モノマー、重合開始剤および式1で表される内部架橋剤を含む組成物を重合する工程を含む、吸水性樹脂の製造方法。
・・・(略)・・・
[請求項4] 無加圧下吸収倍率が25g/g以上であり、加圧下吸収倍率が20g/gであり、高温における可溶分の増加が1を超え3未満である、吸水性樹脂であって、
高温における可溶分の増加は、下記式1によって表される、吸水性樹脂。
・・・(略)・・・
[請求項5] 上記吸水性樹脂は、アクリル系樹脂である、請求項4に記載の吸水性樹脂。
・・・(略)・・・
[請求項7] 上記無加圧下吸収倍率が25?45g/gである、請求項4に記載の吸水性樹脂。」

(イ)甲1発明
甲1に記載された事項を、特に実施例1ないし3に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「TABLE 1のExample1ないし3に示す組成のアクリル系モノマーを含有する水溶性の溶液に、重合開始剤および内部架橋剤を加え、その後、調製した溶液を10℃に冷却し、得られた含水ゲル状態のポリマーに、表面架橋剤を加え、その後、混合物を3mm角に細断し、135℃の熱風で60分間乾燥させ、そして、ロールミルによって粉砕することにより、得た粒径が300?500μmで、90℃及び23℃での可溶分量がTABLE 2のExample1ないし3のContent of extractablesの欄に示すものである吸水性樹脂。」(当審注:TABLE 1のExample1ないし3及びTABLE 2のExample1ないし3の具体的内容は、上記(ア)を参照。)

イ 甲7に記載された事項及び甲7発明
(ア)甲7に記載された事項
甲7には、「ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末及びその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「[0028] (1-2)「ポリアクリル酸(塩)」
本発明における「ポリアクリル酸(塩)」とは、任意にグラフト成分を含み、繰り返し単位として、アクリル酸及び/又はその塩(以下、アクリル酸(塩)と称することがある)を主成分とする重合体を意味する。具体的には、重合に用いられる総単量体(内部架橋剤を除く)のうち、アクリル酸(塩)を必須に50?100モル%、好ましくは70?100モル%、更に好ましくは90?100モル%、特に好ましくは実質100モル%含む重合体をいう。また、重合体としてポリアクリル酸塩を用いる場合は、必須に水溶性塩を含み、中和塩の主成分として一価塩が好ましく、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩がより好ましく、アルカリ金属塩が更に好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。なお、形状は特に問わないが、粒子状または粉体状が好ましい。」

・「[0032] (c)「Ext」(ERT470.2-02)
「Ext」は、Extractablesの略称であり、水可溶分(水可溶成分量)を意味する。具体的には、吸水性樹脂1.0gを0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200mlに添加し、35mmのスターラーチップを用いて500rpmで16時間攪拌した後の溶解ポリマー量(単位;重量%)である(別称:16時間可溶分)。溶解ポリマー量の測定はpH滴定を用いて行う。なお、含水ゲル状架橋重合体の水可溶分(以下、「ゲルExt」と称する)は、試料を5.0g、攪拌時間を24時間にそれぞれ変更して測定を行った。」

・「[0092] (a)CRC(無加圧下吸水倍率)
本発明で得られる吸水性樹脂粉末のCRC(無加圧下吸水倍率)は、上記範囲であり30[g/g]以上であり、32[g/g]以上が好ましく、34g/g以上、35g/g以上が特に好ましい。CRCが低いと紙オムツでの吸収量に劣る傾向がある。CRCの上限値は、特に限定されないが、他の物性(例えば耐尿性、通液性)のバランスから、45[g/g]以下であり、42〔g/g〕以下、40[g/g]以下が好ましい。」

・「[0098] (d)劣化可溶分
本発明に係る吸水性樹脂粉末は、劣化可溶分(0.05%L-A生食・2時間/60℃、抽出リンス1時間/室温)が好ましくは40重量%以下、さらには30重量%以下、25重量%以下、23重量%以下、20重量%以下である。劣化可溶分が40重量%を超えると紙オムツ使用時に、尿によってゲル劣化が進行し、もれや戻りの原因となる。劣化可溶分の制御には上記キレート剤の使用、さらには還元剤の使用、特に併用が好適である。また、重合時の連鎖移動剤の使用も好適な手法であり適宜使用さらにはキレート剤還元剤と併用される。
[0099] 劣化可溶分の下限は少ない方が好ましいが、キレート剤を使用しても、劣化可溶分の低減には吸水倍率(CRC)の低減が必要であり、高いCRCとのバランスから5重量%、さらには10重量%でも十分である。」

・「[0109] (g)Ext(水可溶分)
本発明で得られる吸水性樹脂粉末のExt(水可溶分/ERT410.02-02)は、液溶出分の影響で紙オムツでの使用時のべとつき等を防ぐため、35重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましく、20重量%以下、15重量%以下が更に好ましく、10重量%以下が特に好ましい。当該Extは、重合時の架橋剤量及びその後のゲル粉砕での水可溶分量増加によって適宜制御できる。なお、水可溶分の低減には一般に吸水倍率(CRC)の低下や生産性低下を招くため、下限は10重量%(ないし13重量%、さらには15重量%)程度でも十分であり、よって、バランスから水可溶分は例えば10?35重量%、10?25重量%、10?20重量%の範囲でもよい。さらには下限が13重量%、15重量%であってもよい。」

・「[0189] 〔4〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の用途
本発明に係る製造方法で得られる吸水性樹脂粉末の用途は特に限定されないが、好ましくは紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パット等の吸収性物品に使用される。これまで原料由来の臭気や着色等が問題になっていた高濃度オムツ(紙オムツ1枚当りの吸水性樹脂粉末の使用量が多い紙オムツ)、特に上記吸収性物品の吸収体上層部に使用した場合に、優れた性能を発揮する。」

・「実施例
[0191] 以下、実施例に従って本願発明を説明するが、本願発明は実施例に限定され解釈されるものではない。また、本発明の特許請求の範囲や実施例に記載の諸物性は、特に記載のない限り、室温(20?25℃)及び湿度50RH%の条件下で、EDANA法又は以下の測定法に従って求めた。さらに、実施例及び比較例に提示される電気機器は、200V又は100Vで60Hzの電源を使用した。なお、便宜上、「リットル」を「L」、「重量%」を「wt%」と記することがある。
[0192] (吸水性樹脂粉末の物性測定)
(イ)CRC(無加圧下吸水倍率)
本発明に係る吸水性樹脂粉末のCRC(無加圧下吸水倍率)は、EDANA法(ERT441.2-02)に準拠して測定した。」

・「[0194] (ハ)Ext(水可溶分)
本発明に係る吸水性樹脂粉末のExt(水可溶分)は、特開2006-055833号の段落〔0134〕?〔0146〕又はEDANA法(ERT470.2-02)に準拠して測定した。」

・「[0196] (ホ)劣化可溶分
本発明に係る吸水性樹脂粉末の劣化可溶分は、下記の方法により測定した。
[0197] 即ち、予め調製した生理食塩水に、0.05重量%となるようにL-アスコルビン酸を添加し、劣化試験液を作成した。具体的には、999.5gの生理食塩水に0.5gのL-アスコルビン酸を溶解して、1000.0gの劣化試験液を調製した。
[0198] 劣化試験液200mlを蓋付きの250mlのポリプロピレンカップに加えた後、吸水性樹脂粉末1.0gを添加することにより膨潤ゲルを形成させた。この容器に蓋をして密閉し、膨潤ゲルを60℃の雰囲気下に2時間静置した。2時間後、長さ30mmで太さ8mmの円筒型攪拌子を投入し、劣化させた後の可溶分について、上記(Ext(水可溶分))と同様の方法で、1時間攪拌して含水ゲルから抽出した。
[0199] 1時間の攪拌で抽出後、上記可溶分量の測定法と同じ方法で濾過し、pH滴定を行い、同じ計算式で劣化試験液での劣化可溶分[重量%]を求めた。」

・「[0247] [製造例1]特許文献53の製造例1に準拠
上記特許文献53(国際公開第2011/126079号)の製造例1に準じて、下記の操作を行って帯状の含水ゲル状架橋重合体(a)を得た。以下、含水ゲル架橋重合体を「含水ゲル」と称する。
[0248] 先ず、アクリル酸193.3重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液64.4重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)1.26重量部(0.09モル%対アクリル酸)、0.1重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液52重量部、脱イオン水134重量部からなる単量体水溶液(a)を作成した。
[0249] 次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(a)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液97.1重量部を連続的にラインミキシングした。なお、この時、中和熱によって単量体水溶液(a)の液温は85℃まで上昇した。
[0250] 更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液8.05重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが約7.5mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間/重合ピーク温度110℃)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(a)を得た。該帯状の含水ゲル(a)は、CRC28.0[g/g]、樹脂固形分53.0重量%、水可溶分4.0重量%、水可溶分の重量平均分子量218,377[Da]であった。また、重合時の沸騰で気泡を含有するものであった。」

・「[0251] [製造例2]高CRC化及びp-メトキシフェノールの使用
上記製造例1において、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)を0.88重量部(約0.06モル%対アクリル酸)に変更し、更にp-メトキシフェノールを70ppm(対アクリル酸)を重合時に使用した以外は、製造例1と同様の操作を行って、帯状の含水ゲル(b)を得た。該帯状の含水ゲル(b)は、CRC30.1[g/g]、樹脂固形分53重量%、水可溶分5.5重量%、水可溶分の重量平均分子量310,000[Da]であった。」

・「[0256] [製造例6]製造例2の高CRC化(架橋剤減量)
上記製造例2において、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)を0.41重量部(約0.03モル%対アクリル酸)に変更した以外は、製造例2と同様の操作を行って、帯状の含水ゲル(f)を得た。該帯状の含水ゲル(f)は、CRC38.1[g/g]、樹脂固形分53重量%、水可溶分8.5重量%、水可溶分の重量平均分子量550,000[Da]であった。」

・「[0257] [製造例8]製造例2の高CRC化(連鎖移動剤の使用)
上記製造例2において、水溶性連鎖移動剤として亜燐酸ナトリウムを0.1モル%(対アクリル酸(塩))を単量体中に添加した以外は、製造例2と同様の操作を行って、帯状の含水ゲル(h)を得た。該帯状の含水ゲル(h)は、CRC30.1[g/g]、樹脂固形分53重量%、水可溶分5.0重量%、水可溶分の重量平均分子量200,000[Da]であった。」

・「[0259] [比較例5]特許文献53の比較例1のゲル粉砕
上記製造例2で得られた帯状の含水ゲル(b)について、特許文献53(国際公開第2011/126079号)の比較例1に準じて、ゲル粉砕、乾燥、粉砕、分級、表面架橋及び整粒を行って、内部気泡率が2.6%の比較吸水性樹脂粉末(5)を得た。」

・「[0266] [実施例1]特許文献53の実施例1のゲル粉砕
上記製造例2で得られた帯状の含水ゲル(b)について、特許文献53の実施例1に準じてゲル粉砕を行った後、上記比較例5と同様の乾燥、粉砕、分級、表面架橋及び整粒を行って、吸水性樹脂粉末(1)を得た。
[0267] 即ち、製造例2で得られた帯状の含水ゲル(b)について、切断長を200mmとし、温水及び水蒸気の供給をせず、ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を115rpmに変更してゲル粉砕した以外は、比較例5と同様の操作を行い、粉砕ゲル(1)、即ち粒子状含水ゲル(1)及び吸水性樹脂粉末(1)を得た。」

・「[0270] [実施例2]特許文献53の実施例2のゲル粉砕(内部気泡率の調整)
上記製造例2で得られた帯状の含水ゲル(b)について、特許文献53の実施例2に準じてゲル粉砕を行った後、上記比較例5と同様の乾燥、粉砕、分級、表面架橋及び整粒を行って、吸水性樹脂粉末(2)を得た
[0271] 即ち、製造例2で得られた帯状の含水ゲル(b)について、切断長を200mmとし、温水及び水蒸気の供給をせず、ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を134rpmに変更してゲル粉砕した以外は、比較例5と同様の操作を行い、粉砕ゲル(2)、即ち粒子状含水ゲル(2)及び吸水性樹脂粉末(2)を得た。」

・「[0286] [実施例7]高CRC化(還元剤の使用)
上記製造例8で得られた帯状の含水ゲル(h)について、上記実施例2と同様のゲル粉砕、乾燥、粉砕及び分級を行った後、表面架橋工程での反応時間を25分間に短縮し架橋密度を低下した以外は実施例2と同様の操作を行って、吸水性樹脂粉末(7)を得た。なお、吸水性樹脂粉末(7)の内部気泡率は1.6%であり、その粒度は実施例2とほぼ同程度であった。その他の物性は表1に示す。」

・「[0287] [実施例8]高CRC化(架橋剤減量)
上記製造例6で得られた帯状の含水ゲル(f)について、上記実施例2と同様のゲル粉砕、乾燥、粉砕、分級、表面架橋及び整粒を行って、吸水性樹脂粉末(8)を得た。なお、吸水性樹脂粉末(8)の内部気泡率は0.8%であり、その粒度は実施例2とほぼ同程度であった。その他の物性は表1に示す。」

・「[0298] [実施例14?16]Anti-Caking剤の添加
上記実施例6?8で得られた吸水性樹脂粉末(6)?(8)100重量部に、それぞれ水不溶性無機微粒子(アエロジル200;日本アエロジル社)0.5重量部を乾式撹拌混合して、表面が水不溶性無機微粒子で被覆され、混合前とほぼ同一粒度の吸水性樹脂粉末(14)?(16)を得た。なお、吸水性樹脂粉末(14)?(16)の諸物性は表1に示す。」

・「[0305][表1]



(イ)甲7発明
甲7に記載された事項を、特に実施例7、8及び15に関して整理すると、甲7には次の発明(以下、順に「甲7実施例7発明」のようにいう。)が記載されていると認める。

<甲7実施例7発明>
「製造例8で得られた帯状の含水ゲル(h)について、実施例2と同様のゲル粉砕、乾燥、粉砕及び分級を行った後、表面架橋工程での反応時間を25分間に短縮し架橋密度を低下した以外は実施例2と同様の操作を行って、得たExt(水可溶分)が16wt%、劣化可溶分が17wt%の吸水性樹脂粉末(7)。」(当審注:製造例8及び実施例2の具体的内容は、上記(ア)を参照。)

<甲7実施例8発明>
「製造例6で得られた帯状の含水ゲル(f)について、実施例2と同様のゲル粉砕、乾燥、粉砕、分級、表面架橋及び整粒を行って、得たExt(水可溶分)が23wt%、劣化可溶分が24wt%の吸水性樹脂粉末(8)。」(当審注:製造例6及び実施例2の具体的内容は、上記(ア)を参照。)

<甲7実施例15発明>
「実施例7で得られた吸水性樹脂粉末(7)100重量部に、水不溶性無機微粒子(アエロジル200;日本アエロジル社)0.5重量部を乾式撹拌混合して、得た表面が水不溶性無機微粒子で被覆され、混合前とほぼ同一粒度のExt(水可溶分)が23wt%、劣化可溶分が24wt%の吸水性樹脂粉末(15)。」(当審注:実施例7の具体的内容は、上記(ア)を参照。)

ウ 甲9に記載された事項及び甲9発明
(ア)甲9に記載された事項
甲9には、「吸水性樹脂の製造方法、それにより得られる吸水性樹脂粒子、およびそれを用いた吸収体および吸収性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「背景技術
[0002] 従来から、吸水性樹脂は、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料、ケーブル用止水材等の工業材料に幅広く用いられている。吸水性樹脂としては、例えば、澱粉?アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、澱粉?アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニルアクリル酸エステル共重合体のケン化物、ポリアクリル酸部分中和物等が知られている。
[0003] 近年、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料においては、使用時の快適性の観点から、吸収体を薄型化にする傾向にある。吸収体を薄型化にするには、吸収体中の吸水性樹脂の比率を増加する方法、吸水性樹脂の保水能を上げる方法等が挙げられる。」

・「発明が解決しようとする課題
[0006] 本発明の目的は、高い保水能(吸収容量)、高い加圧下吸水能およびゲル強度を有し、かつ、水可溶分が少なぐ衛生材料に好適に使用できる吸水性?脂粒子の製造方法、それにより得られる吸水性?脂粒子、およびそれを用いた吸収体および吸収性物品を提供することにある。」

・「[0012] 水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸〔「(メタ)アクリル」とは「アクリル」および「メタクリル」を意味する。以下同じ〕、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸またはそのアルカリ金属塩;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のノニオン性不飽和単量体;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和単量体またはその四級化物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。」

・「[0060] 実施例5
工程1:吸水性樹脂粒子前駆体の調整 (当審注:該下線は予め付されたものである。)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた1000mL容の五つ口円筒型丸底フラスコ内に、n-ヘプタン340gおよびHLBが 3.0のショ糖脂肪酸エステル〔三菱化学フーズ株式会社製、商品名:S-370〕0.92gを加え、分散させながら70℃まで昇温して溶解させた後、55℃まで冷却した。
[0061] これとは別に、500mL容の三角フラスコ内に、80. 5質量%アクリル酸水溶液92g(1.02モル)を加えた。外部から冷却しつつ、このフラスコ内に、30質量%水酸化ナトリウム水溶液102.2g (0.77モル)を滴下して、アクリル酸の75モル%を中和した。さらに、水50.2g、水溶性ラジカル重合開始剤の2,2,-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.llg (0.00041モル)および架橋剤のエチレングリコールジグリシジルエーテル 8. 3mg(0.000047モル)を添加し、1段目重合用の単量体水溶液を調製した。
この1段目重合用の単量体水溶液の全量を、前記五つ口円筒型丸底フラスコに、撹拌下で加えて分散させ、系内を窒素ガスで十分に置換し、浴温を70℃に保持し、重合反応を1時間行った。その後、得られたスラリー状の反応混合物を室温まで冷却した。
[0062] これとは別の500mL容の三角フラスコ内に、80.5質量%アクリル酸水溶液119. lg(l.32モル)を加え、冷却しつつ30質量%水酸化ナトリウム水溶液132.2g(0.99モル)を滴下して、アクリル酸の75モル%を中和し、さらに水27. 4gおよび2, 2' ?アゾビス(2?アミジノプロパン)二塩酸塩0.14g(0.00052モル)およびエチレングリコールジグリシジルエーテル10.7mg(0.000061モル)を添加し、2段目重合用の単量体水溶液を調製し、氷水浴内で冷却した。
この2段目重合用の単量体水溶液の全量を、前記で得られた反応混合物に添加した後、再び系内を窒素ガスで十分に置換し、浴温を70℃に保持し、2段目の重合反応を2時間行った。
[0063] 重合終了後、120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水224gのみを系外に除去し、吸水性樹脂粒子前駆体を得た。この時の吸水性樹脂粒子前駆体の残存水分量は94gであり、水分率は45%であった(本実施例の理論樹脂固形分量は209gである)
[0064]工程2:吸水性樹脂粒子の製造(当審注:該下線は予め付されたものである。)
得られた吸水性樹脂粒子前駆体に、後架橋剤として2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.22g(0.00049モル)を添加して混合した。
この混合物を 120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水のみを系外に除去しながら 第1の後架橋反応を行った。この時38gの水分が除去され、残存水分量は60gで、水分率29%となった。
引続き、後架橋剤として2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液3.17g(0.00036モル)を添加して混合した。
この混合物を120℃の油浴で加熱し、得られたゲル状物の水分およびn-ヘプタンを蒸留により除去、乾燥しながら第2の後架橋反応を行い、質量平均粒子径が378μmの吸水性樹脂粒子223.7gを得た。なお、この吸水性樹脂粒子の最終水分率(乾燥減量)は3%であった。」

・「[0072]B.吸水性樹脂粒子の特性評価
[0073] 実施例1?5および比較例1?3の吸水性樹脂粒子につき、(1)保水能、(2)吸水能、(3)ゲル強度、(4)水可溶分および(5)乾燥減量を以下の手順により測定した。それらの結果を表1に示す。
[0074](1)吸水性樹脂粒子の生理食塩水保水能
吸水性樹脂粒子2.0gを、綿袋 (メンブロード60番、横100mm×縦200mm)中に量り取り、500mL容のビーカー中に入れた。綿袋に生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム水溶液、以下同様)500gを一度に注ぎ込み、吸水性樹脂粒子のママコが発生しないように食塩水を分散させた。綿袋の上部を輪ゴムで縛り、1時間放置して、吸水性樹脂粒子を十分に膨潤させた。遠心力167Gになるよう設定した脱水機〔国産遠心機株式会社、品番: H?122〕を用いて綿袋を1分間脱水して、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂脂粒子を添加せずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時空質量Wb(g)を測定し、以下の式から保水能を算出した。
[0075] [数1]
保水能(g/g)=[Wa-Wb](g)/吸水性樹脂粒子の質量(g)」

・「[0086](4)吸水性樹脂粒子の水可溶分
500mL容のビーカーに、生理食塩水500gを量り取り、マグネチックスターラーバー (8mm×30mmのリング無し)を投入し、マグネチックスターラー(iuchi社製:HS-30D)の上に配置した。引続きマグネチックスターラーバーを600rpmで回転するように調整し、さらに、マグネチックスターラーバーの回転により生ずる渦の底部は、マグネチックスターラーバーの上部近くになるように調整した。
次に、吸水性樹脂粒子2.0gを、ビーカー中の渦中央とビーカー側面の間に素早く流し込み分散させ、3時間撹拌した。3時間撹拌後の吸水性樹脂粒子分散水を、JIS標準ふるい(目開き75μm)でろ過し、得られたろ液をさらに桐山式ロート(濾紙No. 6)を用い吸引ろ過した。
あらかじめ140℃で乾燥して恒量し、室温まで冷却した100ml容のビーカーに得られたろ液を80±0.01g量りとり、内温を140℃に設定した熱風乾燥機 (ADVANTEC社製)で恒量になるまで乾燥させ、ろ液固形分の質量Wd(g)を測定した。
一方、吸水性樹脂粒子を用いずに上記操作と同様に行い、ブランク質量We(g)を測定して、次式より水可溶分を算出した。
[0087] [数4]
水可溶分(質量%)=[(W d-W e)×(5 0 0/8 0)]/2×1 0 0」

・「[0090][表1]



・「請求の範囲
[1] 水溶性エチレン性不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂粒子前駆体に、少なくとも2段階で後架橋剤を添加して後架橋反応を行う工程を含むことを特徴とする吸水性樹脂粒子の製造方法。
[2] 水分率が35%以上の吸水性樹脂粒子前駆体に後架橋剤を添加して後架橋反応を行う第1の後架橋反応工程、
後架橋した吸水性樹脂粒子前駆体の水分率を35%未満に低下させる水分率調整工程、および
水分率を低下させた後架橋吸水性樹脂前駆体に後架橋剤を添加して後架橋反応を行う第2の後架橋反応工程
を含む請求項1記載の吸水性樹脂粒子の製造方法。
・・・(略)・・・
[5] 生理食塩水保水能が40?60g/g、4.14kPa加圧下の生理食塩水吸水能が15ml/g以上、ゲル強度が500Pa以上、水可溶分が15質量%以下であることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の製造方法で得られる吸水性樹脂粒子。
[6] 請求項5記載の吸水性樹脂粒子と親水性繊維とからなる吸収体。
[7] 請求項6に記載の吸収体を、液体透過性シートと液体不透過性シートとの間に保持してなる吸収性物品。」

(イ)甲9発明
甲9に記載された事項を、特に実施例5に関して整理すると、甲9には次の発明(以下、「甲9発明」という。)が記載されていると認める。

「撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた1000mL容の五つ口円筒型丸底フラスコ内に、n-ヘプタン340gおよびHLBが 3.0のショ糖脂肪酸エステル〔三菱化学フーズ株式会社製、商品名:S-370〕0.92gを加え、分散させながら70℃まで昇温して溶解させた後、55℃まで冷却し、これとは別に、500mL容の三角フラスコ内に、80. 5質量%アクリル酸水溶液92g(1.02モル)を加え、外部から冷却しつつ、このフラスコ内に、30質量%水酸化ナトリウム水溶液102.2g (0. 77モル)を滴下して、アクリル酸の75モル%を中和し、さらに、水50.2g、水溶性ラジカル重合開始剤の2,2,-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.llg (0.00041モル)および架橋剤のエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg(0.000047モル)を添加し、1段目重合用の単量体水溶液を調製し、この1段目重合用の単量体水溶液の全量を、前記五つ口円筒型丸底フラスコに、撹拌下で加えて分散させ、系内を窒素ガスで十分に置換し、浴温を70℃に保持し、重合反応を1時間行い、その後、得られたスラリー状の反応混合物を室温まで冷却し、これとは別の500mL容の三角フラスコ内に、80.5質量%アクリル酸水溶液119.lg(l.32モル)を加え、冷却しつつ30質量%水酸化ナトリウム水溶液132.2g(0.99モル)を滴下して、アクリル酸の75モル%を中和し、さらに水27. 4gおよび2, 2' ?アゾビス(2?アミジノプロパン)二塩酸塩0.14g(0.00052モル)およびエチレングリコールジグリシジルエーテル10.7mg(0.000061モル)を添加し、2段目重合用の単量体水溶液を調製し、氷水浴内で冷却し、この2段目重合用の単量体水溶液の全量を、前記で得られた反応混合物に添加した後、再び系内を窒素ガスで十分に置換し、浴温を70℃に保持し、2段目の重合反応を2時間行い、重合終了後、120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水224gのみを系外に除去し、吸水性樹脂粒子前駆体を得、得られた吸水性樹脂粒子前駆体に、後架橋剤として2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.22g(0.00049モル)を添加して混合し、この混合物を 120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水のみを系外に除去しながら 第1の後架橋反応を行い、引続き、後架橋剤として2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液3.17g(0.00036モル)を添加して混合し、この混合物を120℃の油浴で加熱し、得られたゲル状物の水分およびn-ヘプタンを蒸留により除去、乾燥しながら第2の後架橋反応を行い、得た質量平均粒子径が378μm、水可溶分が12質量%、生理食塩水保水能が52g/gの吸水性樹脂粒子。」

(2)甲1を主引用文献とする新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70?100モル%である、吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-1>
本件特許発明1においては、「下記方法で測定される、25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が11.0質量%以上15質量%以下であり、40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が14質量%以上30質量%以下であり」(当審注:「下記方法」の摘記は省略する。以下同様。)と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点1-2>
本件特許発明1においては、「生理食塩水保水量が20?49g/gである」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

まず、相違点1-1について検討する。
甲1のTable2には、甲1発明の認定の根拠であるExample1ないし3について、90℃及び23℃における可溶分の量は、Example1は9.43重量%及び4.1重量%、Example2は14.84重量%及び5.3重量%、Example3は4.16重量%及び2.6重量%であることが記載されている。
また、甲1の[0088]には、「可溶分の量を測定する際、90℃および23℃において測定したモノマー残渣の値である限り、その量は特に限定されない。しかし、例えば、可溶分の量は、90℃においては2?50重量%であってよく、23℃においては2?15重量%であってよい。」と記載されている。
そして、可溶分の量は、測定方法により多少の差が生じるとしても、ほぼ同じ値になるといえるとした場合、25℃と23℃は温度条件として非常に近いから、「下記方法で測定される、25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分」は甲1発明の23℃における可溶分の量である「4.1重量%」、「5.3重量%」及び「2.6重量%」に近い値である蓋然性が高いとはいえるかもしれない。
しかし、それらより遙かに大きい値である「11.0質量%以上15質量%以下」という条件を満たしている蓋然性が高いとはいえない。
また、甲1発明の90℃における可溶分の量は、「9.43重量%」、「14.84重量%」及び「4.16重量%」であるから、90℃より遙かに低い温度である「40℃」の「下記方法で測定される」「0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分」が「14質量%以上30質量%以下」という条件を満たしている蓋然性が高いともいえない。
したがって、相異点1-1は実質的な相違点である。
そして、甲1には、[0088]に上記記載があるものの、40℃における可溶分の量に関する記載があるとはいえない。
すなわち、甲1には、甲1発明において、「40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分」を「14質量%以上30質量%以下」にする動機付けとなるような記載があるとはいえない。
したがって、甲1発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「体温付近の温度での粘着性が低減された吸水性樹脂粒子」が「提供される」(本件特許の発明の詳細な説明の【0012】)という甲1発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点1-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明3ないし5について
本件特許発明3ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)甲7を主引用文献とする新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲7実施例7発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70?100モル%である、吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点7-1>
本件特許発明1においては、「下記方法で測定される、25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が11.0質量%以上15質量%以下であり、40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が14質量%以上30質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲7実施例7発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点7-2>
本件特許発明1においては、「生理食塩水保水量が20?49g/gである」と特定されているのに対し、甲7実施例7発明においては、そのようには特定されていない点。

まず、相違点7-1について検討する。
甲7実施例7発明における「Ext(水可溶分)」は本件特許発明1における「下記方法で測定される、25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分」と類似したパラメータであるが、その値が「16wt%」なので、本件特許発明1における「下記方法で測定される、25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分11.0質量%以上15質量%以下」を有しているといえない。
また、甲7実施例7発明における「劣化可溶分」に関して、甲7の[0098]及び[0196]に「劣化可溶分(0.05%L-A生食・2時間/60℃、抽出リンス1時間/室温)」という記載があるものの、その測定に使用する液体及び温度条件は、本件特許発明1における「40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分」の測定に使用するものと異なるものであるから、甲7実施例7発明は本件特許発明1における「40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が14質量%以上30%以下」を有しているともいえない。
したがって、相違点7-1は実質的な相違点である。
そして、甲7には、甲7実施例7発明において、「下記方法で測定される、25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分」を「11.0質量%以上15質量%以下」にする動機付けとなる記載があるとはいえないし、また、「40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分」を「14質量%以上30質量%以下」にする動機付けとなるような記載があるともいえない。
よって、甲7実施例7発明において、相違点7-1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「体温付近の温度での粘着性が低減された吸水性樹脂粒子」が「提供される」という甲7実施例7発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。

したがって、相違点7-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲7実施例7発明であるとはいえないし、甲7実施例7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

また、本件特許発明1と甲7実施例8発明又は甲7実施例15発明の対比についても同様であるから、本件特許発明1は甲7実施例8発明又は甲7実施例15発明であるとはいえないし、甲7実施例8発明又は甲7実施例15発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明3ないし5について
本件特許発明3ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲7に記載された発明であるとはいえないし、甲7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)甲9を主引用文献とする新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲9発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70?100モル%である、吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点9-1>
本件特許発明1においては、「下記方法で測定される、25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が11.0質量%以上15質量%以下であり、40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が14質量%以上30質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲9発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点9-2>
本件特許発明1においては、「生理食塩水保水量が20?49g/gである」と特定されているのに対し、甲9発明においては、「生理食塩水保水能が52g/g」と特定されている点。

事案に鑑み、相違点9-2から検討する。
甲9発明における「生理食塩水保水能」(本件特許発明1における「生理食塩水保水量」に相当する。)は「52g/g」であり、「20?49g/g」であるから、相違点9-2は実質的な相違点である。
そして、甲9の[0006]によると、甲9発明の課題は、「高い保水能(吸収容量)、高い加圧下吸水能およびゲル強度を有し、かつ、水可溶分が少な」い「吸水性樹脂粒子」を提供することであるから、甲9には、甲9発明において、「生理食塩水保水能」を小さくする動機付けとなるような記載があるとはいえない。
したがって、甲9発明において、相違点9-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「体温付近の温度での粘着性が低減された吸水性樹脂粒子」が「提供される」という甲9発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。

よって、相違点9-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲9発明であるとはいえないし、甲9発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明3ないし5について
本件特許発明3ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲9に記載された発明であるとはいえないし、甲9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(5)取消理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1及び3ないし5は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1及び3ないし5に係る特許は、取消理由1によっては取り消すことはできない。

2 取消理由2(甲3、4、5又は6に基づく新規性)について
(1)甲3ないし6に記載された事項等
ア 甲3に記載された事項及び甲3発明
(ア)甲3に記載された事項
甲3には、「吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤、その製造方法及び吸水性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【0012】
本発明の目的は、優れた吸収性物品を与えるため、オムツ等の吸収体における高濃度での実使用に好適な吸水性樹脂を含む粒子状吸水剤及びその製造方法の提供にある。すなわち、課題(優れた吸収性物品)の解決手段として、本発明はさらなる付加機能を有する吸水剤であって、消臭性能に優れ、膨潤後に発生する臭気が無く、実使用に好適な吸水剤及びその製造方法の提供にある。」

・「【0148】
[アクリル酸の製造例1]
市販のアクリル酸(アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、プロピオン酸500ppm含有)を、無堰多孔板50段を有する高沸点不純物分離塔の塔底に供給して、還流比を1として蒸留し、マレイン酸やアクリル酸からなる二量体(アクリル酸ダイマー)等の除去後、さらに晶析を行なうことで、アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm含有)を得た。」

・「【0151】
[実施例1]
攪拌機、還流冷却機、温度計、窒素ガス導入管及び滴下漏斗を付した2Lの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン1.0Lをとり、分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(第一工業薬品株式会社製、DK-エステルF-50、HLB=6)3.8gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。フラスコ中に、製造例1のアクリル酸の中和物であるアクリル酸ナトリウム84.6g、製造例1のアクリル酸21.6g及びN,N’-メチレンビスアクリルアミド0.016gをイオン交換水197gに溶解し、さらにヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、HEC-ダイセルEP-850)0.4gを溶解させ、モノマー濃度35質量%のモノマー水溶液を調製した。このモノマー水溶液に過硫酸カリウム0.15gを加えて溶解させた後、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する酸素を追い出した。次いでこのフラスコ内のモノマー水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて攪拌することにより分散させた。その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完了した。重合終了後、シクロヘキサンとの共沸脱水により含水ゲル中の水を留去した後、ろ過し、80℃で減圧乾燥し、球状のポリマー粉体を得た。得られたポリマー粉体の含水率は、5.6%であった。
【0152】
上記ポリマー100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部と、1,4-ブタンジオール0.3質量部と、水2.7質量部とからなる表面架橋剤3.53質量部とを混合した。上記の混合物を210℃で45分間加熱処理した。表面架橋後さらに、水3質量部を添加して60℃で30分密閉して加熱し、850μmで分級することで造粒された粒子状吸水剤(1)を得た。得られた粒子状吸水剤(1)の無加圧下吸収倍率、1.9kPaでの加圧下吸収倍率、粒度分布、質量平均粒子径(D50)、対数標準偏差(σζ)及び粒子径150μm未満の質量百分率、水可溶分、耐尿性評価、吸収速度、吸湿ブロッキング率、揮発性有機溶媒、及び180℃での3時間加熱後の残存モノマーの含有量が表1及び表2に示される。」

・「【0155】
[実施例2]
実施例1で得られた粒子状吸水剤(1)100質量部に微粒子状の二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製、アエロジル200(1次粒子の平均粒子径12nm))0.3質量部を添加・混合(ドライブレンド)して、粒子状吸水剤(2)を得た。得られた粒子状吸水剤(2)を実施例1と同様に評価した結果が、表1及び表2に示される。」

(イ)甲3発明
甲3に記載された事項を、特に実施例2に関して整理すると、甲3には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。

「市販のアクリル酸(アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、プロピオン酸500ppm含有)を、無堰多孔板50段を有する高沸点不純物分離塔の塔底に供給して、還流比を1として蒸留し、マレイン酸やアクリル酸からなる二量体(アクリル酸ダイマー)等の除去後、さらに晶析を行なうことで、アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm含有)を得、攪拌機、還流冷却機、温度計、窒素ガス導入管及び滴下漏斗を付した2Lの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン1.0Lをとり、分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(第一工業薬品株式会社製、DK-エステルF-50、HLB=6)3.8gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出し、フラスコ中に、上記アクリル酸の中和物であるアクリル酸ナトリウム84.6g、上記製造例1のアクリル酸21.6g及びN,N’-メチレンビスアクリルアミド0.016gをイオン交換水197gに溶解し、さらにヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、HEC-ダイセルEP-850)0.4gを溶解させ、モノマー濃度35質量%のモノマー水溶液を調製し、このモノマー水溶液に過硫酸カリウム0.15gを加えて溶解させた後、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する酸素を追い出し、次いでこのフラスコ内のモノマー水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて攪拌することにより分散させ、その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完了し、重合終了後、シクロヘキサンとの共沸脱水により含水ゲル中の水を留去した後、ろ過し、80℃で減圧乾燥し、球状のポリマー粉体を得、得られたポリマー粉体100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部と、1,4-ブタンジオール0.3質量部と、水2.7質量部とからなる表面架橋剤3.53質量部とを混合し、上記の混合物を210℃で45分間加熱処理し、表面架橋後さらに、水3質量部を添加して60℃で30分密閉して加熱し、850μmで分級することで造粒された粒子状吸水剤(1)を得、この粒子状吸水剤(1)100質量部に微粒子状の二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製、アエロジル200(1次粒子の平均粒子径12nm))0.3質量部を添加・混合(ドライブレンド)して、得た粒子状吸水剤(2)。」

イ 甲4に記載された事項及び甲4発明
(ア)甲4に記載された事項
甲4には、「吸水剤およびその製法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【0107】
本発明の吸水剤が衛生材料に用いられた場合、優れたゲル特性を有するため、オムツなどの吸収体中に高濃度で使用した場合においても、2度目以降の尿や体液が吸収体表面で行き場を失うことなく吸収体の内部に拡散することが出来、内部の吸水性樹脂粒子に尿や体液を分配することができる。
(4)吸水体の製法および吸水特性
上記方法により得られた吸水剤は、適当な素材と組み合わせることにより、たとえば、衛生材料の吸収層として好適な吸水体とすることができる。以下、本発明の吸水体について説明する。
【0108】
本発明の吸水体とは血液や体液、尿などを吸収する、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の衛生材料に用いられる、吸水剤とその他の素材からなる成形された組成物のことであり、用いられる素材の例としては、たとえば、セルロース繊維が挙げられる。」

・「【0248】
(実施例15)
断熱材である発泡スチロールで覆われた内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸192.2g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)2.79g、およびジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム0.01gを混合した溶液(A)と、48.5重量%NaOH水溶液156.8gと40℃に調温したイオン交換水239.3gを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系で一気に加え混合した。中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液(単量体濃度39重量%、中和率71.3モル%が得られた。さらに、この単量体水溶液に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液8.89gを加え、数秒攪拌した後すぐに、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1-1000(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。
【0249】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生し上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、3分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。
【0250】
この細分化された含水重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で40min間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級することにより、重量平均粒子径325μm、対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは31.4g/g、ゲル層膨潤圧は40.1kdyne/cm^(2)であった。その他の諸物性を表12、13に示した。
【0251】
得られた吸水性樹脂粒子100重量部にエチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール1重量部、純水3重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を190℃で35分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた吸水剤(15)の諸物性を表12に示した。」

・「【0270】
(実施例20)
実施例15に記載の方法においてポリエチレングリコールジアクリレートを0.05モル%に変更した以外は同様の操作を行い、重量平均粒子径323μm、対数標準偏差(σζ)0.37の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは43.5g/g、ゲル層膨潤圧は35.1kdyne/cm^(2)であった。その他の諸物性を表12、13に示した。」

・「【0282】
(実施例32)
実施例20で得られた吸水剤(20)100重量部に、ReolosilQS-20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた吸水剤の諸物性を表14、15に示した。」

(イ)甲4発明
甲4に記載された事項を、特に実施例32に関して整理すると、甲4には次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認める。

「断熱材である発泡スチロールで覆われた内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸192.2g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.70g、およびジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム0.01gを混合した溶液(A)と、48.5重量%NaOH水溶液156.8gと40℃に調温したイオン交換水239.3gを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系で一気に加え混合し、中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液(単量体濃度39重量%、中和率71.3モル%)が得られ、さらに、この単量体水溶液に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液8.89gを加え、数秒攪拌した後すぐに、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1-1000(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注ぎ、3分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出し、この細分化された含水重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で40min間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級することにより、重量平均粒子径325μm、対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の吸水性樹脂を得、得られた吸水性樹脂粒子100重量部にエチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール1重量部、純水3重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を190℃で35分間加熱処理し、さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得、この吸水剤100重量部に、ReolosilQS-20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、得た吸水剤。」

ウ 甲5に記載された事項及び甲5発明
(ア)甲5に記載された事項
甲5には、「粒子状吸水剤」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「[0146] 〔3〕粒子状吸水剤の用途
本発明の粒子状吸水剤の用途は、特に限定されないが、好ましくは紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド等の衛生用品の吸収体用途が挙げられる。特に、原料由来の臭気、着色等が問題となっていた高濃度紙オムツ(紙オムツ1枚あたりの粒子状吸水剤の使用量が多いもの)の吸収体として使用することができる。更に、上記吸収体の上層部に使用される場合に、顕著な効果が期待できる。
[0147] また、上記吸収体として、粒子状吸水剤以外にパルプ繊維等の吸収性材料を使用することもできる。この場合、吸収体中の粒子状吸水剤の含有量(コア濃度)としては、好ましくは30?100重量%、より好ましくは40?100重量%、更に好ましくは50?100重量%、更により好ましくは60?100重量%、特に好ましくは70?100重量%、最も好ましくは75?95重量%である。」

・「<ダメージ付与後の微粉増加量>
[0293] 吸水剤に下記のペイントシェーカーテストを行い、目開き150μmのJIS標準篩で分級し、テスト前後における150μm以下の粒子径を有する粒子の増加量を測定した。
[0294] [ペイントシェーカーテスト]
ペイントシェーカーテスト(PS-test)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で30分間、振盪するものであり、装置詳細は特開平9-235378号公報に開示されている。」

・「[0331] [製造例2]
アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液100重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61重量部、1.0重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5重量部、脱イオン水346.1重量部からなる単量体水溶液(2)を作製した。
[0332] 次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(2)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液150.6重量部を連続的にラインミキシングした。尚、この時、中和熱によって単量体水溶液(2)の液温は81℃まで上昇した。
[0333] 更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(2)を得た。得られた帯状の含水ゲル(2)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、含水ゲル(2)を得た。含水ゲル(2)は、CRC36.0[g/g]、樹脂固形分48.1重量%であった。」

・「[0351] [実施例1]
(ゲル粉砕)
上記製造例1で得られた含水ゲル(1)を、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕した。該スクリュー押出機としては、先端部に直径100mm、孔径9.5mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の外径が86mmのミートチョッパーを使用した。該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を130rpmとした状態で、含水ゲル(1)を4640[g/min]、同時に、水蒸気を83[g/min]でそれぞれ供給する。この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は26.9[J/g]、GGE(2)は13.6[J/g]であった。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(1)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粉砕ゲル、即ち粒子状含水ゲル(1)の温度は85℃に上昇していた。
[0352] 上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(1)は、樹脂固形分49.1重量%、重量平均粒子径(D50)994μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)1.01であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(1)の物性を表2に示す。
[0353](乾燥)
次に、上記粒子状含水ゲル(1)をゲル粉砕終了後1分以内に通気板上に散布(この時の粒子状含水ゲル(1)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体(1)を得る。熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]である。尚、熱風の風速は、日本カノマックス株式会社製定温度熱式風速計アネモマスター 6162で測定する。
[0354](粉砕・分級)
次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体(1)全量を3段ロールミルに供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(1)を得る。吸水性樹脂粒子(1)は、重量平均粒子径(D50)348μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.32であり、CRC42.1[g/g]、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.5重量%である。
[0355](表面処理・添加剤添加)
次に、上記吸水性樹脂粒子(1)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、1,4-ブタンジオール0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(1)のCRCが35g/gとなるように加熱処理する。その後冷却を行い、上記ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合する。60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4重量部を均一に添加する。こうして、粒子状吸水剤(1)を得た。粒子状吸水剤(1)の諸物性を表3?6に示す。なお、ペイントシェーカーテスト後の150μm通過粒子増加量は粒子状吸水剤に対して、さらにペイントシェーカーテストを実施した際(おむつなどの吸収体製造時のプロセスダメージを想定したもの)の150μm通過粒子の増加量を示す。」

・「[0356] [実施例2]
実施例1と以下に示す操作以外は同様の操作を行う。含水ゲル(1)のかわりに上記製造例2で得られた含水ゲル(2)を用いる。スクリュー押出機の先端部の多孔板の孔径を8mmに変更する。この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は31.9[J/g]、GGE(2)は17.5[J/g]であった。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(2)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粉砕ゲル、即ち粒子状含水ゲル(2)の温度は84℃に上昇していた。
[0357] 上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(2)は、樹脂固形分47.5重量%、重量平均粒子径(D50)860μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.95であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(2)の物性を表2に示す。
[0358] 次いで、実施例1と同様の乾燥・粉砕・分級操作を行い、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(2)を得る。吸水性樹脂粒子(2)は、重量平均粒子径(D50)355μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.32であり、CRC48.2[g/g]、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.4重量%である。
[0359] 次に、上記吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(2)のCRCが38g/gとなるように加熱処理する。その後、実施例1と同様の操作を行う。こうして、粒子状吸水剤(2)を得た。粒子状吸水剤(2)の諸物性を表3?6に示す。」

・「[0360] [実施例3]
実施例2で使用する目開き710μmの網にかえて、850μmの網を使用した以外は、実施例2と同じ操作を行う。こうして得られる吸水性樹脂粒子(3)は、重量平均粒子径(D50)431μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.35であり、CRC48.2[g/g]、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.3重量%である。また、得られた粒子状吸水剤(3)の諸物性を表3?6に示す。」

(イ)甲5発明
甲5に記載された事項を、特に実施例3に関して整理すると、甲5には次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認める。

「アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液100重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61重量部、1.0重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5重量部、脱イオン水346.1重量部からなる単量体水溶液(2)を作製し、次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(2)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液150.6重量部を連続的にラインミキシングし、更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給し、その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(2)を、得られた帯状の含水ゲル(2)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、含水ゲル(2)を得、上記含水ゲル(2)を、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕し、該スクリュー押出機としては、先端部に直径100mm、孔径8mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の外径が86mmのミートチョッパーを使用し、該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を130rpmとした状態で、含水ゲル(2)を4640[g/min]、同時に、水蒸気を83[g/min]でそれぞれ供給し、この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は31.9[J/g]、GGE(2)は17.5[J/g]であり、上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(2)をゲル粉砕終了後1分以内に通気板上に散布(この時の粒子状含水ゲル(2)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体(2)を得、熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]であり、次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体(1)全量を3段ロールミルに供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(1)を得、次に、上記吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(2)のCRCが38g/gとなるように加熱処理し、その後冷却を行い、ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合し、60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4重量部を均一に添加して得た粒子状吸水剤(2)。」

エ 甲6に記載された事項及び甲6発明
(ア)甲6に記載された事項
甲6には、「吸水性樹脂組成物」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「[0249] 〔6〕衛生物品
本発明の一実施形態の吸水性樹脂組成物は従来になく、高い遠心分離機保持容量(CRC)と、十分な耐尿性とが両立されたものであるため、紙おむつ、失禁パッド、医療用パッド等の衛生物品、特に紙おむつに好適に使用される。
[0250] その場合、着用者の体に隣接して配置される液体透過性のトップシート、着用者の身体から遠くに、着用者の衣類に隣接して配置される液体に対して不透過性のバックシート、及びトップシートとバックシートの間に配置された吸水性樹脂組成物を含む吸収体を含んでなる構成で使用されることが好ましい。吸収体は二層以上であっても良いし、パルプ層などとともに用いても良い。吸水性樹脂組成物を含む吸収体は吸水性樹脂組成物のみでもよいし、吸水性樹脂以外の繊維材料(特にパルプ)を含んでもよいが、吸収体中の吸水性樹脂組成物の含有量は通常10?100質量%、好ましくは30?100質量%、より好ましくは50?100質量%の範囲である。」

・「[0347] 〔製造例2〕
容量2Lのポリプロピレン製容器に、アクリル酸441.0g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.768g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.024モル%)、1.0質量%のジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)水溶液2.70g、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液181.69g、および脱イオン水(イオン交換水)366.44gを投入し混合させて、単量体水溶液(a2’)を作製した。
[0348] 次に、前記単量体水溶液(a2’)を攪拌しながら冷却した。液温が39.5℃となった時点で、40℃に調温した48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液189.76gを加え、混合することで単量体水溶液(a2)を作製した。このとき、該単量体水溶液(a2)の作製直後の温度は、2段目の中和熱によって79.8℃まで上昇した。
[0349] 次に、攪拌状態の前記単量体水溶液(a2)に4.5質量%の過硫酸ナトリウム水溶液17.68gを加えた後、直ちにステンレス製バット型容器(底面340mm×340mm、高さ25mm、内面;テフロン(登録商標)コーティング)に大気開放系で注いだ。なお、2段目の中和開始から前記バット型容器に単量体水溶液(a2)を注ぎ込むまでの時間は、55秒間とし、前記バット型容器はホットプレート(NEO HOTPLATE HI-1000/株式会社井内盛栄堂社)を用いて、表面温度が40℃となるまで加熱した。
[0350] 前記単量体水溶液(a2)がバット型容器に注がれてから58秒経過後に、重合反応が開始した。前記重合反応は、生成する重合体が水蒸気を発生しながら四方八方に膨脹発泡して進行した後、バット型容器よりも若干大きなサイズまで収縮した。重合反応の開始から3分経過後に、含水ゲル(2)を取り出した。なお、これら一連の操作は、大気開放系で行った。
[0351] 前記重合反応で得られた含水ゲル(2)を、ミートチョッパー(HL-3225N、プレート孔径:10.0mm/レマコ株式会社)を用いてゲル粉砕し、粒子状の含水ゲル(2)とした。
[0352] 前記含水ゲル(2)の投入量は230g/minであり、前記含水ゲル(2)の投入と並行して、90℃に調温した脱イオン水を50g/minで添加しながらゲル粉砕を行った。
[0355] 前記操作で得られた粒子状の含水ゲル(2)を、目開き850μmのステンレス製の金網上に広げ、180℃で30分間、熱風を通気させることで乾燥した。続いて、乾燥処理で得られた乾燥重合体(2)をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社)を用いて粉砕した後、目開き710μmおよび45μmのJIS標準篩で分級することにより、粒径710?45μmの不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(A2)を得た。吸水性樹脂粒子(A2)の遠心分離機保持容量(CRC)は48.3g/g、溶出可溶分量は24.6質量%であった。」

・「[0354] 〔実施例1〕
製造例1で得た、不定形粒子状の吸水性樹脂粒子(A1)(粒径:850?150μm)100質量部に、エチレンカーボネート0.385質量部、プロピレングリコール0.644質量部、純水2.6質量部、および濃度10質量%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート溶液0.01質量部(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレートとして0.001質量部)を混合してなる表面処理剤溶液を均一に混合した。その後、混合物を200℃に加熱されたパドルミキサー中で加熱処理した。混合物の平均滞留時間は約50分であった。加熱物を冷却して、目開き850μmと150μmのJIS標準篩で分級することにより、表面架橋された吸水性樹脂粒子(1)を得た。なお、850μm篩上にあった表面架橋後の吸水性樹脂粒子(粒径850μmを超える凝集粒子)は850μm篩を通過するまで解砕した。
[0355] 次いで、表面架橋された吸水性樹脂粒子(1)100質量部に対し、純水1.0質量部およびジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.01質量部を混合してなる溶液を、均一に混合した。その後、無風条件下、60℃で45分間加熱処理した後、850μmを超える凝集粒子は目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、850μm通過物の粒子状吸水性樹脂組成物(1)を得た。」

・「[0356] 〔実施例2〕吸水性樹脂の変更
実施例1において、製造例2で得た不定形粒子状の吸水性樹脂粒子(A2)(粒径:710?45μm)100質量部を使用したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、表面架橋された吸水性樹脂粒子(2)、および850μm通過物の粒子状吸水性樹脂組成物(2)を得た。」

・「[0376] 〔実施例23〕多価金属塩の添加
実施例2において、さらに、実施例2で得られた吸水性樹脂組成物(2)に、硫酸アルミニウム27.5質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.53質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.16質量部、およびプロピレングリコール0.01質量部からなる混合液を添加した。得られた混合物を、無風条件下、60℃にて1時間乾燥させた後、目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕して、850μm通過物の粒子状吸水性樹脂組成物(23)を得た。」

(イ)甲6発明
甲6に記載された事項を、特に実施例23に関して整理すると、甲6には次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されていると認める。

「容量2Lのポリプロピレン製容器に、アクリル酸441.0g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.768g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.024モル%)、1.0質量%のジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)水溶液2.70g、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液181.69g、および脱イオン水(イオン交換水)366.44gを投入し混合させて、単量体水溶液(a2’)を作製し、次に、前記単量体水溶液(a2’)を攪拌しながら冷却した。液温が39.5℃となった時点で、40℃に調温した48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液189.76gを加え、混合することで単量体水溶液(a2)を作製し、このとき、該単量体水溶液(a2)の作製直後の温度は、2段目の中和熱によって79.8℃まで上昇し、次に、攪拌状態の前記単量体水溶液(a2)に4.5質量%の過硫酸ナトリウム水溶液17.68gを加えた後、直ちにステンレス製バット型容器(底面340mm×340mm、高さ25mm、内面;テフロン(登録商標)コーティング)に大気開放系で注ぎ、なお、2段目の中和開始から前記バット型容器に単量体水溶液(a2)を注ぎ込むまでの時間は、55秒間とし、前記バット型容器はホットプレート(NEO HOTPLATE HI-1000/株式会社井内盛栄堂社)を用いて、表面温度が40℃となるまで加熱し、前記単量体水溶液(a2)がバット型容器に注がれてから58秒経過後に、重合反応が開始し、前記重合反応は、生成する重合体が水蒸気を発生しながら四方八方に膨脹発泡して進行した後、バット型容器よりも若干大きなサイズまで収縮し、重合反応の開始から3分経過後に、含水ゲル(2)を取り出し、なお、これら一連の操作は、大気開放系で行い、前記重合反応で得られた含水ゲル(2)を、ミートチョッパー(HL-3225N、プレート孔径:10.0mm/レマコム株式会社)を用いてゲル粉砕し、粒子状の含水ゲル(2)とし、前記含水ゲル(2)の投入量は230g/minであり、前記含水ゲル(2)の投入と並行して、90℃に調温した脱イオン水を50g/minで添加しながらゲル粉砕を行い、前記操作で得られた粒子状の含水ゲル(2)を、目開き850μmのステンレス製の金網上に広げ、180℃で30分間、熱風を通気させることで乾燥し、続いて、乾燥処理で得られた乾燥重合体(2)をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社)を用いて粉砕した後、目開き710μmおよび45μmのJIS標準篩で分級することにより、粒径710?45μmの不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(A2)を得、得た不定形粒子状の吸水性樹脂粒子(A2)100質量部に、エチレンカーボネート0.385質量部、プロピレングリコール0.644質量部、純水2.6質量部、および濃度10質量%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート溶液0.01質量部(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレートとして0.001質量部)を混合してなる表面処理剤溶液を均一に混合し、その後、混合物を200℃に加熱されたパドルミキサー中で加熱処理し、混合物の平均滞留時間は約50分であり、加熱物を冷却して、目開き850μmと150μmのJIS標準篩で分級することにより、表面架橋された吸水性樹脂粒子(1)を得、なお、850μm篩上にあった表面架橋後の吸水性樹脂粒子(粒径850μmを超える凝集粒子)は850μm篩を通過するまで解砕し、次いで、表面架橋された吸水性樹脂粒子(1)100質量部に対し、純水1.0質量部およびジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.01質量部を混合してなる溶液を、均一に混合した。その後、無風条件下、60℃で45分間加熱処理した後、850μmを超える凝集粒子は目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、850μm通過物の粒子状吸水性樹脂組成物(2)を得、得た吸水性樹脂組成物(2)に、硫酸アルミニウム27.5質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.53質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.16質量部、およびプロピレングリコール0.01質量部からなる混合液を添加し、得られた混合物を、無風条件下、60℃にて1時間乾燥させた後、目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕して、得た850μm通過物の粒子状吸水性樹脂組成物(23)。」

(2)甲3に基づく新規性について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70?100モル%である、吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点3-1>
本件特許発明1においては、「下記方法で測定される、25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が11.0質量%以上15質量%以下であり、40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が14質量%以上30質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点3-2>
本件特許発明1においては、「生理食塩水保水量が20?49g/gである」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。

まず、相違点3-1について検討する。
甲10によると、甲3発明における「下記方法で測定される、25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分」は、「10.7質量%」であり、「11.0質量%以上15質量%以下」ではない。
したがって、甲3発明は、相違点3-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとはいえないので、相違点3-1は実質的な相違点である。

よって、相違点3-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲3発明であるとはいえない。

イ 本件特許発明3ないし5について
本件特許発明3ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲3に記載された発明であるとはいえない。

(3)甲4に基づく新規性について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲4発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70?100モル%である、吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点4-1>
本件特許発明1においては、「下記方法で測定される、25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が10質量%以上25質量%以下であり、40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が14質量%以上30質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲4発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点4-2>
本件特許発明1においては、「生理食塩水保水量が20?49g/gである」と特定されているのに対し、甲4発明においては、「生理食塩水保水能が52g/g」と特定されている点。

まず、相違点4-1について検討する。
甲11によると、甲4発明における「下記方法で測定される、25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分」は「16質量%」であり、「11.0質量%以上15質量%以下」ではない。
したがって、甲4発明は、相違点4-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとはいえないので、相違点4-1は実質的な相違点である。

よって、相違点4-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲4発明であるとはいえない。

イ 本件特許発明3ないし5について
本件特許発明3ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲4に記載された発明であるとはいえない。

(4)甲5に基づく新規性について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲5発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70?100モル%である、吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点5-1>
本件特許発明1においては、「下記方法で測定される、25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が10質量%以上25質量%以下であり、40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が14質量%以上30質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲5発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点5-2>
本件特許発明1においては、「生理食塩水保水量が20?49g/gである」と特定されているのに対し、甲5発明においては、そのようには特定されていない点。

まず、相違点5-1について検討する。
甲12(当審注:目開き850μmのJIS標準篩を用いていることから、甲5の実施例2ではなく、甲5の実施例3に記載の粒子状吸収剤を調製し実験したものの実験成績証明書であると認める。)によると、甲5発明における「下記方法で測定される、25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分」は「21質量%」であり、「11.0質量%以上15質量%以下」ではない。
したがって、甲5発明は、相違点5-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとはいえないので、相違点5-1は実質的な相違点である。

よって、相違点5-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲5発明であるとはいえない。

イ 本件特許発明3ないし5について
本件特許発明3ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲5に記載された発明であるとはいえない。

(5)甲6に基づく新規性について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲6発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70?100モル%である、吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点6-1>
本件特許発明1においては、「下記方法で測定される、25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が10質量%以上25質量%以下であり、40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が14質量%以上30質量%以下である」と特定されているのに対し、甲6発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点6-2>
本件特許発明1においては、「生理食塩水保水量が20?49g/gである」と特定されているのに対し、甲6発明においては、そのようには特定されていない点。

まず、相違点6-1について検討する。
甲13によると、甲6発明における「下記方法で測定される、25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分」は、「20質量%」であり、「11.0質量%以上15質量%以下」ではない。
したがって、甲6発明は、相違点6-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとはいえないので、相違点6-1は実質的な相違点である。

よって、相違点6-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲6発明であるとはいえない。

イ 本件特許発明3ないし5について
本件特許発明3ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲6に記載された発明であるとはいえない。

(6)取消理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1及び3ないし5は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1及び3ないし5に係る特許は、取消理由2によっては取り消すことはできない。

3 取消理由3(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりである。

(3)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細の記載は次のとおりである。

・「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
おむつ等の吸収性物品は、肌に直接触れて使用されるものであるため、吸収性物品に含まれる吸水性樹脂粒子の吸水後の粘着性が高いと、肌への不快感につながるおそれがある。
【0005】
本発明は、体温付近の温度での粘着性が低減された吸水性樹脂粒子、並びにそれを用いた吸収体及び吸収性物品を提供することを目的とする。」

・「【0015】
本明細書において、「アクリル」及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記する。「アクリレート」及び「メタクリレート」も同様に「(メタ)アクリレート」と表記する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「水溶性」とは、25℃において水に5質量%以上の溶解性を示すことをいう。本明細書に例示する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0016】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が30質量%以下である。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、40℃の0.9質量%NaCl水溶液での溶解分が30質量%以下であることにより、使用時の環境である体温付近の温度での粘着性を抑制し、使用時の不快感を低減することができる。
【0017】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が、例えば、28質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、18質量%以下又は16質量%以下であってもよい。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が、例えば、5質量%以上、10質量%以上、12質量%以上、又は14質量%以上であってもよい。
【0018】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、25℃での0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が、例えば、25質量%以下、22質量%以下、20質量%以下、18質量%以下、15質量%以下又は12質量%以下であってよく、3質量%以上、5質量%以上、8質量%以上又は10質量%以上であってもよい。
【0019】
25℃又は40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分は、次の方法によって測定する。500mLビーカーに入れた0.9質量%NaCl水溶液500gを、所定温度(25℃又は40℃)に調整し、600rpmで攪拌する。吸水性樹脂粒子2gを該ビーカーに入れ、3時間攪拌した後、75μmJIS標準篩でろ過し、ろ液を回収する。得られたろ液を、JIS P3801に定められた第6種のろ紙を用いて更に吸引ろ過する。吸引ろ過して得られた液を、秤量済みの100mLビーカーに80g量りとり、140℃の熱風乾燥機で15時間乾燥させ、ろ過固形分質量(Wa)を測定する。吸水性樹脂粒子を用いずに同様の手順でろ過固形分質量(Wb)を測定する。以下の式により、溶解分を算出する。
溶解分(質量%)=[((Wa-Wb)/80)×500/2]×100
【0020】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、40℃の0.9質量%NaCl水溶液吸水後のろ紙に対する付着量が2.0g以下、1.8g以下、1.6g以下又は1.2g以下であることが好ましい。上記付着量は後述の実施例に記載の方法によって測定される。
【0021】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量は、例えば20?70g/g、25?65g/g、27?60g/g、又は30?57g/gであってよい。生理食塩水の保水量は、次の方法によって測定する。吸水性樹脂粒子2gを量り取った綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)を500mL容のビーカー内に設置する。吸水性樹脂粒子の入った綿袋中に0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)500gをママコができないように一度に注ぎ込み、綿袋の上部を輪ゴムで縛り、30分静置させることで吸水性樹脂粒子を膨潤させる。30分経過後の綿袋を、遠心力が167Gとなるよう設定した脱水機を用いて1分間脱水し、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wc(g)を測定する。吸水性樹脂粒子を添加せずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時の空質量Wd(g)を測定し、以下の式から生理食塩水保水量を算出する。
生理食塩水保水量(g/g)=(Wc-Wd)/2
【0022】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の荷重下における生理食塩水の吸水量は、例えば10?35mL/g、12?33mL/g、15?30mL/g、又は20?30mL/gであってよい。荷重下における生理食塩水の吸水量としては、荷重4.14kPaにおける吸水量(25℃)を用いることができる。吸水量は、後述する実施例に記載の方法によって測定できる。」

・「【0025】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、例えば、後述の製造方法により得られた時点で所望の粒度分布を有するものとすることができるが、更に篩による分級を用いた粒度調整等の操作を行うことにより、粒度分布を所定のものとしてもよい。
【0026】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、例えば、エチレン性不飽和単量体を含有する単量体を重合させて得られる架橋重合体を含むことができる。すなわち、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有することができる。
【0027】
上記単量体を重合させる方法としては、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。これらの中では、得られる吸水性樹脂粒子の良好な吸水特性の確保、及び重合反応の制御が容易である観点から、逆相懸濁重合法又は水溶液重合法が好ましい。以下においては、エチレン性不飽和単量体を重合させる方法として、逆相懸濁重合法を例にとって説明する。
【0028】
エチレン性不飽和単量体は水溶性であることが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸及びその塩、・・・(略)・・・等が挙げられる。エチレン性不飽和単量体がアミノ基を含有する場合には、当該アミノ基は4級化されていてもよい。・・・(略)・・・
【0029】
これらの中でも、工業的に入手が容易という観点から、エチレン性不飽和単量体は、アクリル酸及びその塩、メタクリル酸及びその塩、・・・(略)・・・からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことがより好ましい。吸水特性をより高める観点から、エチレン性不飽和単量体は、アクリル酸及びその塩、並びにメタクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが更に好ましい。
【0030】
単量体としては、上記のエチレン性不飽和単量体以外の単量体が一部使用されてもよい。このような単量体は、例えば、上記エチレン性不飽和単量体を含む水溶液に混合して用いることができる。エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体全量に対し70?100モル%であることが好ましい。中でも(メタ)アクリル酸及びその塩が、単量体全量に対し70?100モル%であることがより好ましい。
・・・(略)・・・
【0033】
逆相懸濁重合法においては、界面活性剤の存在下で、炭化水素分散媒中で単量体水溶液を分散し、ラジカル重合開始剤等を用いて、エチレン性不飽和単量体の重合が行われる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、水溶性ラジカル重合開始剤を用いることができる。重合の際に、内部架橋剤を用いてもよい。
【0034】
界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤及びアニオン系界面活性剤が挙げられる。・・・(略)・・・
【0035】
界面活性剤の量は、使用量に対する効果が十分得られ、かつ経済的である観点から、エチレン性不飽和単量体水溶液100質量部に対して0.05?10質量部であることが好ましく、0.08?5質量部であることがより好ましく、0.1?3質量部であることが更に好ましい。
【0036】
また、逆相懸濁重合では、上述した界面活性剤と共に、高分子系分散剤を併せて用いてもよい。
【0037】
高分子系分散剤としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、・・・(略)・・・等が挙げられる。・・・(略)・・・
【0038】
高分子系分散剤の量は、使用量に対する効果が十分得られ、かつ経済的である観点から、エチレン性不飽和単量体水溶液100質量部に対して0.05?10質量部であることが好ましく、0.08?5質量部であることがより好ましく、0.1?3質量部であることが更に好ましい。
【0039】
ラジカル重合開始剤は水溶性であることが好ましく、例えば、過硫酸カリウム、・・・(略)・・・などが挙げられる。・・・(略)・・・
【0040】
ラジカル重合開始剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体1モルに対して0.00005?0.01モルであってよい。ラジカル重合開始剤の使用量が0.00005モル以上であると、重合反応に長時間を要さず、効率的である。使用量が0.01モル以下であると、急激な重合反応が起こらない傾向がある。
【0041】
上記ラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L-アスコルビン酸等の還元剤と併用して、レドックス重合開始剤として用いることもできる。
【0042】
重合反応の際には、重合に用いるエチレン性不飽和単量体水溶液の中に、連鎖移動剤を含んでいてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、次亜リン酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、アミン類等が挙げられる。
【0043】
また、吸水性樹脂粒子の粒子径を制御するために、重合に用いるエチレン性不飽和単量体水溶液の中に、増粘剤を含んでいてもよい。
【0044】
増粘剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、・・・(略)・・・等を用いることができる。なお、重合時の攪拌速度が同じであれば、エチレン性不飽和単量体水溶液の粘度が高いほど得られる粒子の中位粒子径は大きくなる傾向にある。
【0045】
炭化水素分散媒は、炭素数6?8の鎖状脂肪族炭化水素、及び炭素数6?8の脂環族炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。炭化水素分散媒としては、例えば、n-ヘキサン、・・・(略)・・・などが挙げられる。・・・(略)・・・
【0046】
炭化水素分散媒の使用量は、重合熱を適度に除去し、重合温度を制御しやすくする観点から、単量体水溶液100質量部に対して、30?1000質量部が好ましく、40?500質量部がより好ましく、50?300質量部が更に好ましい。炭化水素分散媒の使用量が30質量部以上であることにより、重合温度の制御が容易である傾向がある。炭化水素分散媒の使用量が1000質量部以下であることにより、重合の生産性が向上する傾向があり、経済的である。
【0047】
通常、重合の際に自己架橋による内部架橋が生じるが、更に内部架橋剤を用いることで内部架橋を施し、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御してもよい。用いられる内部架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、・・・(略)・・・等が挙げられる。・・・(略)・・・
【0048】
内部架橋剤の量は、得られる重合体が適度に架橋されることにより水溶性の性質が抑制され、充分な吸水量を示すようにする観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、0?0.03モルであることが好ましく、0.00001?0.01モルであることがより好ましく、0.00002?0.005モルであることが更に好ましい。また、内部架橋剤の量が上述した範囲であれば、40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が30質量%以下となる吸水性樹脂粒子が得られやすい。
【0049】
エチレン性不飽和単量体、ラジカル重合開始剤、界面活性剤、高分子系分散剤、炭化水素分散媒等(必要に応じて内部架橋剤)を混合して、攪拌下で加熱し、油中水系において、逆相懸濁重合を行うことができる。
【0050】
逆相懸濁重合を行う際には、界面活性剤、必要に応じて高分子系分散剤の存在下に、エチレン性不飽和単量体を含む単量体水溶液を、炭化水素分散媒に分散させる。このとき、重合反応を開始する前であれば、界面活性剤や高分子系分散剤の添加時期は、単量体水溶液添加の前後どちらであってもよい。
【0051】
その中でも、得られる吸水性樹脂に残存する炭化水素分散媒量を低減しやすいという観点から、高分子系分散剤を分散させた炭化水素分散媒に、単量体水溶液を分散させた後に、更に界面活性剤を分散させてから重合を行うことが好ましい。
【0052】
このような逆相懸濁重合を、1段又は2段以上の多段で行うことが可能である。また、生産性を高める観点から2?3段で行うことが好ましい。また、逆相懸濁重合を多段、好ましくは2段で行うことにより、吸収性物品に適した粒子径の吸水性樹脂粒子が得られやすくなる。
【0053】
2段以上の多段で逆相懸濁重合を行う場合には、1段目の逆相懸濁重合を行った後、1段目の重合反応で得られた反応混合物にエチレン性不飽和単量体を添加して混合し、1段目と同様の方法で2段目以降の逆相懸濁重合を行えばよい。2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、エチレン性不飽和単量体の他に、上述したラジカル重合開始剤や内部架橋剤を、2段目以降の各段における逆相懸濁重合の際に添加するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述したエチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行うことが好ましい。
【0054】
重合反応の温度は、使用するラジカル重合開始剤によって異なるが、重合を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより、経済性を高めるとともに、容易に重合熱を除去して円滑に反応を行う観点から、20?150℃が好ましく、40?120℃がより好ましい。反応時間は、通常、0.5?4時間である。重合反応の終了は、例えば、反応系内の温度上昇の停止により確認することができる。これにより、エチレン性不飽和単量体の重合体は、通常、含水ゲルの状態で得られる。
【0055】
重合後、得られた含水ゲル状重合体に架橋剤を添加して加熱することで、重合後架橋を施してもよい。重合後架橋を行えば、好適な吸水特性を示す吸水性樹脂粒子が得られやすい。
【0056】
重合後架橋を行うための架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、・・・(略)・・・等が挙げられる。・・・(略)・・・
【0057】
重合後架橋に用いられる架橋剤の量は、得られる含水ゲル状重合体が適度に架橋されることにより、好適な吸水特性を示すようにする観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、0?0.03モルであることが好ましく、0?0.01モルであることがより好ましく、0.00001?0.005モルであることが更に好ましい。重合後架橋に用いられる架橋剤の量が上述の範囲内であると、得られる吸水性樹脂粒子の40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分も30質量%以下となりやすい。
【0058】
重合後架橋の添加時期としては、重合に用いられるエチレン性不飽和単量体の重合後であればよく、多段重合の場合は、多段重合後に添加されることが好ましい。なお、重合時及び重合後の発熱、工程遅延による滞留、架橋剤添加時の系の開放、及び架橋剤添加に伴う水の添加等による水分の変動を考慮して、重合後架橋の架橋剤は、含水率(後述)の観点から、[重合直後の含水率±3質量%]の領域で添加することが好ましい。
【0059】
引き続き、得られた含水ゲル状重合体より水分を除去するために、乾燥を行なう。乾燥により、エチレン性不飽和単量体の重合体を含む重合体粒子が得られる。乾燥方法としては、例えば(a)上記含水ゲル状重合体が炭化水素分散媒に分散した状態で、外部から加熱することにより共沸蒸留を行い、炭化水素分散媒を還流させて水分を除去する方法、(b)デカンテーションにより含水ゲル状重合体を取り出し、減圧乾燥する方法、(c)フィルターにより含水ゲル状重合体をろ別し、減圧乾燥する方法等が挙げられる。中でも、製造工程における簡便さから、(a)の方法を用いることが好ましい。
【0060】
吸水性樹脂粒子の粒子径の制御は、例えば、重合反応時の攪拌機の回転数を調整することによって、あるいは重合反応後、又は乾燥の初期において、粉末状無機凝集剤を系内に添加することによって行うことができる。凝集剤を添加することにより、得られる吸水性樹脂粒子の粒子径を大きくすることができる。粉末状無機凝集剤の例としては、シリカ、・・・(略)・・・が好ましい。
【0061】
逆相懸濁重合において、粉末状無機凝集剤を添加する方法としては、重合で用いられるものと同種の炭化水素分散媒又は水に、粉末状無機凝集剤を予め分散させてから、攪拌下の含水ゲル状重合体を含む炭化水素分散媒中に混合する方法が挙げられる。
【0062】
粉末状無機凝集剤の添加量は、エチレン性不飽和単量体100質量部に対して0.001?1質量部であることが好ましく、0.005?0.5質量部であることがより好ましく、0.01?0.2質量部であることが更に好ましい。粉末状無機凝集剤の添加量を上記範囲内とすることによって、目的とする粒度分布を有する吸水性樹脂粒子を得られやすい。
【0063】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の製造においては、乾燥工程又はそれ以降のいずれかの工程において、架橋剤を用いて含水ゲル状重合体の表面部分の架橋(表面架橋)が行われることが好ましい。表面架橋を行うことで、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御しやすい。また、粉砕後溶解分も40質量%以下となりやすい。表面架橋は、含水ゲル状重合体が特定の含水率であるタイミングで行われることが好ましい。表面架橋の時期は、含水ゲル状重合体の含水率が5?50質量%である時点が好ましく、10?40質量%である時点がより好ましく、15?35質量%である時点が更に好ましい。
【0064】
含水ゲル状重合体の含水率(質量%)は、次の式で算出される。
含水率=[Ww/(Ww+Ws)]×100
Ww:全重合工程の重合前の水性液に含まれる水分量から、乾燥工程により系外部に排出された水分量を差し引いた量に、粉末状無機凝集剤、表面架橋剤等を混合する際に必要に応じて用いられる水分量を加えた含水ゲル状重合体の水分量。
Ws:含水ゲル状重合体を構成するエチレン性不飽和単量体、架橋剤、開始剤等の材料の仕込量から算出される固形分量。
【0065】
表面架橋を行うための表面架橋剤としては、反応性官能基を2個以上有する化合物を挙げることができる。その例としては、エチレングリコール、・・・(略)・・・が挙げられる。・・・(略)・・・
【0066】
表面架橋剤の量は、通常、重合に使用するエチレン性不飽和単量体1モルに対して、0.00001?0.02モル、好ましくは0.00005?0.01モル、より好ましくは、0.0001?0.005モルの比である。
【0067】
吸水性樹脂粒子の表面部分における架橋密度を十分に高め、吸水性樹脂粒子のゲル強度を高める観点から、表面架橋剤の使用量は0.00001モル以上であることが好ましく、吸水性樹脂粒子の保水能を高くする観点から0.02モル以下であることが好ましい。また、表面架橋剤の使用量が上記範囲であれば、40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が30質量%以下となる吸水性樹脂粒子が得られやすい。
【0068】
表面架橋反応後、公知の方法により、水及び炭化水素分散媒を留去することにより、表面架橋された乾燥品である重合体粒子を得ることができる。
【0069】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、重合体粒子のみから構成されていてもよいが、例えば、ゲル安定剤、金属キレート剤(エチレンジアミン4酢酸及びその塩、ジエチレントリアミン5酢酸及びその塩、例えばジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム等)、流動性向上剤(滑剤)等から選ばれる各種の追加の成分を更に含むことができる。・・・(略)・・・流動性向上剤(滑剤)が好ましく、その中でも無機粒子がより好ましい。無機粒子としては、例えば、非晶質シリカ等のシリカ粒子が挙げられる。
【0070】
吸水性樹脂粒子は、重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子を含んでいてもよい。例えば、重合体粒子と無機粒子とを混合することにより、重合体粒子の表面上に無機粒子を配置することができる。この無機粒子は、非晶質シリカ等のシリカ粒子であってもよい。吸水性樹脂粒子が重合体粒子の表面上に配置された無機粒子を含む場合、重合体粒子の質量に対する無機粒子の割合は、0.2質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、又は1.5質量%以上であってもよく、5.0質量%以下、又は3.5質量%以下であってもよい。ここでの無機粒子は、通常、重合体粒子の大きさと比較して微小な大きさを有する。例えば、無機粒子の平均粒子径が、0.1?50μm、0.5?30μm、又は1?20μmであってもよい。ここでの平均粒子径は、動的光散乱法、又はレーザー回折・散乱法によって測定される値であることができる。無機粒子の添加量が上記範囲であることによって、吸水特性が良好であり40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が好適な数値である吸水性樹脂粒子が得られやすい。」

・「【0071】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、尿、血液等の体液の吸収性に優れており、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、タンポン等の衛生用品、ペットシート、犬又は猫のトイレ配合物等の動物排泄物処理材などの分野に応用することができる。
【0072】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、吸収体に好適に用いることができる。本実施形態に係る吸収体は、吸水性樹脂粒子を含む。吸収体は、さらに、例えば繊維状物を備えていてよい。
・・・(略)・・・
【0080】
本実施形態に係る吸収性物品は、本実施形態に係る吸収体を備える。・・・(略)・・・吸収性物品としては、おむつ(例えば紙おむつ)、トイレトレーニングパンツ、失禁パッド、衛生用品(生理用ナプキン、タンポン等)、汗取りパッド、ペットシート、簡易トイレ用部材、動物排泄物処理材などが挙げられる。・・・(略)・・・
【0081】
図1は、吸収性物品の一例を示す断面図である。図1に示す吸収性物品100は、吸収体10と、コアラップ20a,20bと、液体透過性シート30と、液体不透過性シート40と、を備える。吸収性物品100において、液体不透過性シート40、コアラップ20b、吸収体10、コアラップ20a、及び、液体透過性シート30がこの順に積層している。図1において、部材間に間隙があるように図示されている部分があるが、当該間隙が存在することなく部材間が密着していてよい。
・・・(略)・・・
【0085】
吸収体10、コアラップ20a,20b、液体透過性シート30、及び、液体不透過性シート40の大小関係は、特に限定されず、吸収性物品の用途等に応じて適宜調整される。また、コアラップ20a,20bを用いて吸収体10を保形する方法は、特に限定されず、図1に示すように複数のコアラップにより吸収体を包んでよく、1枚のコアラップにより吸収体を包んでもよい。」

・「【実施例】
【0086】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0087】
[吸水性樹脂粒子の製造]
(実施例1)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、攪拌機として、翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた、内径11cm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、炭化水素分散媒としてn-ヘプタン293gをとり、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、ハイワックス1105A)0.736gを添加し、攪拌しつつ80℃まで昇温して分散剤を溶解した後、50℃まで冷却した。
【0088】
一方、内容積300mLのビーカーに、エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(1.03モル)をとり、外部より冷却しつつ、20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.7gを滴下して75モル%の中和を行った後、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社、HEC AW-15F)、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.0736g(0.272ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.010g(0.057ミリモル)を加えて溶解し、第1段目の水性液を調製した。
【0089】
調製した水性液をセパラブルフラスコに添加して、10分間攪拌した後、n-ヘプタン6.62gに界面活性剤としてHLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS-370)0.736gを加熱溶解した界面活性剤溶液を、更に添加して、撹拌機の回転数を550rpmとして攪拌しながら系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を60分間行うことにより、第1段目の重合スラリー液を得た。
【0090】
一方、別の内容積500mLのビーカーに、エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)をとり、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.090g(0.334ミリモル)を加えて溶解し、第2段目の水性液を調製した。
【0091】
撹拌機の回転数を1000rpmとして撹拌しながら、上記のセパラブルフラスコ系内を25℃に冷却した後、上記第2段目の水性液の全量を、第1段目の重合スラリー液に添加して、系内を窒素で30分間置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を60分間行った。重合後、架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル0.580g(0.067ミリモル)を添加し、含水ゲル状重合体を得た。
【0092】
第2段目の重合後の含水ゲル状重合体に、45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.265gを攪拌下で添加した。その後、125℃に設定した油浴にフラスコを浸漬し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流しながら、256.1gの水を系外へ抜き出した。その後、フラスコに表面架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.42g(0.507ミリモル)を添加し、83℃で2時間保持した。
【0093】
その後、n-ヘプタンを125℃にて蒸発させて乾燥させることによって、乾燥品(重合体粒子)を得た。この乾燥品を目開き850μmの篩に通過させ、乾燥品に対して0.2質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP-S)を混合し、吸水性樹脂粒子を230.8g得た。得られた吸水性樹脂粒子の生理食塩水保水量は41g/g、中位粒子径は346μmであった。
【0094】
(実施例2)
・・・(略)・・・
【0101】
(実施例3)
・・・(略)・・・
【0108】
(実施例4)
・・・(略)・・・
【0115】
(比較例1)
・・・(略)・・・
【0122】
得られた吸水性樹脂粒子について、以下の方法により、生理食塩水保水量、中位粒子径、溶解分(25℃又は40℃)及び粘着性を測定した。結果を表1に示す。」

・「【0128】
[溶解分(25℃又は40℃)]
500mLビーカーに0.9質量%塩化ナトリウム水溶液500gを入れ、25℃又は40℃に設定した恒温槽(WATER BATH STIRRER KS-1、アズワン株式会社)に浸漬した。攪拌子(8mmφ×30mmのリング無し)を上記ビーカーに入れ、600rpmで回転するように調整した。吸水性樹脂粒子2.000gを25℃又は40℃それぞれの恒温槽に浸漬したビーカーに添加し、恒温槽に浸漬したまま3時間攪拌した。混合物を75μmJIS標準篩でろ過し、得られた液を更に桐山式ロート(ろ紙:ADVANTEC、No.6)を用いて吸引ろ過し、ろ液を回収した。得られたろ液を、事前に140℃で恒量した秤量済みの100mLビーカーに80g量り取り、140℃の熱風乾燥機(ADVANTEC社製、FV-320)で15時間乾燥させ、ろ過固形分の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂粒子を用いずに上記操作を同様に行い、ろ液固形分Wb(g)を測定し、以下の式により溶解分を算出した。
溶解分(質量%)=[((Wa-Wb)/80)×500/2]×100
【0129】
[粘着性]
(付着量)
測定は温度25℃、湿度60±10%の環境下で行なわれた。100mLビーカーに25±1℃の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液50gを入れ、攪拌子(8mmφ×30mm、リングなし)を用いて回転数600rpmで攪拌しながら、吸水性樹脂粒子1.0gを入れ、粒子を膨潤させた。1分間撹拌後、ビーカーを40℃に設定した恒温槽に3時間入れ、膨潤ゲルを得た。トレイの上にろ紙1(ADVANTEC No.51A、15×15cm)を1枚載せ、ろ紙1の上に10cm×10cmの開口部を有するアクリル樹脂製ガイド枠を置き、枠の中に、ビーカー内の膨潤ゲル全量を均一に散布した。当該膨潤ゲルの上に、秤量済みのろ紙2(ADVANTEC、No.51A、9.8cm×9.8cm)を置いた。さらに、ろ紙2の上に膨潤ゲルの余剰水を吸収するため、同サイズのろ紙(ADVANTEC、No.51A、9.8cm×9.8cm)19枚を重ねて置いた。上記ガイド枠の内側に沿って、ろ紙の上から5.0kgの重り(9.8cm×9.8cm)を載せた。重りを載せてから1分後に重りを外し、次いで上記ガイド枠を外した。重ねて置いたろ紙19枚を外し、ろ紙2を膨潤ゲルからゆっくりと剥がし、一部の膨潤ゲルが付着したろ紙2の質量を測定した。荷重後のろ紙2の質量(g)から、荷重前のろ紙2の質量を差し引くことにより、ろ紙2に付着した一部の膨潤ゲルの質量を算出した。
【0130】
(官能評価)
上記付着性評価において、評価後のろ紙1上に残った膨潤ゲルを、温度25±2℃の室内で、5名のパネリストが指で摘まんで軽くすり潰し、その際に感じる粘着性を下記基準にしたがって評価した。5名の評価の平均点を表1に示す。
1点:粘着性が感じられない。
2点:僅かに粘着性が感じられる。
3点:少し粘着性が感じられる。
4点:粘着性が感じられる。
5点:明らかに粘着性が感じられ、糸引きが確認される。
【0131】
【表1】

【0132】
40℃での溶解分が30質量%以下である実施例の吸水性樹脂粒子は、ろ紙へのゲル付着量が十分に少なく、官能試験においても十分に低い粘着性を示した。実施例の吸水性樹脂粒子は、体温付近の温度での吸水後の粘着性が十分に低いことが示された。」

(4)サポート要件の判断
発明の詳細な説明の【0004】及び【0005】によると、本件特許発明1及び2の解決しようとする課題、本件特許発明3の解決しようとする課題並びに本件特許発明4及び5の解決しようとする課題は、それぞれ「体温付近の温度での粘着性が低減された吸水性樹脂粒子を提供すること」、「体温付近の温度での粘着性が低減された吸水性樹脂粒子を用いた吸収体を提供すること」及び「体温付近の温度での粘着性が低減された吸水性樹脂粒子を用いた吸収体を用いた吸収性物品を提供すること」(以下、総称して「発明の課題」という。)である。
そして、上記(3)のとおり、発明の詳細な説明には、本件特許発明1の各発明特定事項について具体的に記載され、本件特許発明1の各発明特定事項を有する実施例において体温付近の温度での吸水後の粘着性が低いことを確認している。
また、令和3年2月12日に特許権者が提出した意見書に乙第1号証として添付された実験報告書によると、同程度の分子量であっても、本件特許発明1の発明特定事項を有する吸水性樹脂粒子は、そうでない吸水性樹脂粒子と比べて、体温付近の温度での吸水後の粘着性が低いこと、すなわち、体温付近の温度での吸水後の粘着性が吸水性樹脂から溶出する水溶性成分の分子量に多少は左右されるとしても、本件特許発明1の発明特定事項を有すれば、体温付近の温度での吸水後の粘着性が低くなることが理解できる。
そうすると、当業者は、発明の詳細な説明の記載により、「25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が10質量%以上25質量%以下であり、40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が14質量%以上30質量%以下」である吸水性樹脂粒子は、発明の課題を解決できると認識できる。

したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
また、本件特許発明3ないし5についても同様である。
よって、本件特許発明1及び3ないし5に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。

(5)取消理由3についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び3ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、取消理由3によっては取り消すことはできない。

なお、令和3年4月16日に特許異議申立人が提出した意見書も検討したが、上記取消理由1ないし3についての判断は左右されない。

第6 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について
取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、申立理由2のうち甲8に基づく理由、申立理由3(甲1と甲2の組み合わせによる進歩性)及び申立理由5(実施可能要件)である。
そこで、これらの申立理由について検討する。

1 申立理由2のうち甲8に基づく理由について
(1)甲8に記載された事項及び甲8発明
ア 甲8に記載された事項
甲8には、「吸水剤組成物およびその用途」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【0061】そして、上記吸水剤組成物の諸性能を上記の方法によって測定した。その結果を表1に示す。
(実施例10)中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム(親水性不飽和単量体)33重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)4.46gを溶解させて反応液とした。次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した(この反応液に窒素ガスを30分間吹き込むことによって該反応液中の溶存酸素を追い出した)。次いで,シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を取り付けて形成した反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を25℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。
【0062】続いて、反応液を攪拌しながら、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム2.4gおよびL-アスコルビン酸0.12gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、25?90℃で重合を行い、重合を開始してから40分後に反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は、その径が約5mmに細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開きの大きさ300μm)の金網上に広げ、170℃で70分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕後、分級し、不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体(b)を得た。
【0063】得られた吸水性樹脂前駆体(b)100重量部に、プロピレングリコール0.7重量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.02重量部、水2重量部、エチルアルコール0.7重量部とからなる表面架橋剤水溶液を混合した。上記の混合物を185℃で40分間加熱処理することにより吸水性樹脂(b)を得た。得られた吸水性樹脂(b)の無加圧下吸収倍率は43g/g、加圧下吸収倍率は32g/g、平均粒径は430μmであり、粒径が106μm未満の粒子の割合は3重量%であった。次に、上記の吸水性樹脂(b)100gに、過通液緩衝剤としての微粒子状の親水性二酸化ケイ素(商品名・アエロジル200(1次粒子の平均粒径約12nm);日本アエロジル株式会社製)0.3gを添加・混合(ドライブレンド)することにより、本発明にかかる吸水剤組成物(10)を得た。得られた吸水剤組成物(10)の粒径は、吸水性樹脂(b)に対してほとんど変化せず、平均粒径は430μm、粒径が106μm未満の粒子の割合は3重量%であった。
【0064】そして、上記吸水剤組成物の諸性能を上記の方法によって測定した。その結果を表1に示す。」

イ 甲8発明
甲8に記載された事項を、特に実施例10に関して整理すると、甲8には次の発明(以下、「甲8発明」という。)が記載されていると認める。

「中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム(親水性不飽和単量体)33重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)4.46gを溶解させて反応液とし、次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気し(この反応液に窒素ガスを30分間吹き込むことによって該反応液中の溶存酸素を追い出した)、次いで,シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を取り付けて形成した反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を25℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、続いて、反応液を攪拌しながら、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム2.4gおよびL-アスコルビン酸0.12gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始し、そして、25?90℃で重合を行い、重合を開始してから40分後に反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出し、得られた含水ゲル状重合体は、その径が約5mmに細分化され、この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開きの大きさ300μm)の金網上に広げ、170℃で70分間熱風乾燥し、次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕後、分級し、不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体(b)を得、得られた吸水性樹脂前駆体(b)100重量部に、プロピレングリコール0.7重量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.02重量部、水2重量部、エチルアルコール0.7重量部とからなる表面架橋剤水溶液を混合し、上記の混合物を185℃で40分間加熱処理することにより吸水性樹脂(b)を得、次に、上記の吸水性樹脂(b)100gに、過通液緩衝剤としての微粒子状の親水性二酸化ケイ素(商品名・アエロジル200(1次粒子の平均粒径約12nm);日本アエロジル株式会社製)0.3gを添加・混合(ドライブレンド)することにより、得た吸水剤組成物(10)。」

(2)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲8発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70?100モル%である、吸水性樹脂粒子。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点8-1>
本件特許発明1においては、「下記方法で測定される、25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が11.0質量%以上15質量%以下であり、40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が14質量%以上30質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲8発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点8-2>
本件特許発明1においては、「生理食塩水保水量が20?49g/gである」と特定されているのに対し、甲8発明においては、そのようには特定されていない点。

まず、相違点8-1について検討する。
特許異議申立人は、甲8発明が上記相違点8-1に係る発明特定事項を有する証拠として、甲14(甲8の実施例10の実験成績証明書)を提示しているが、甲14では、内部架橋剤として、甲8の実施例10で使用された「ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)」ではなく、「ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)」を使用している。
したがって、甲14は甲8の実施例10を正確に実験したものであるとはいえない。
よって、甲14は採用できない。
そうすると、甲8発明が相違点8-1に係る発明特定事項を有しているとはいえず、相違点8-1は実質的な相違点である。
したがって、相違点8-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲8発明であるとはいえない。

(3)本件特許発明3ないし5について
本件特許発明3ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲8に記載された発明であるとはいえない。

(4)申立理由2のうち甲8に基づく理由についてのむすび
したがって、本件特許発明1及び3ないし5は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし3及び5に係る特許は申立理由2のうち甲8に基づく理由によっては取り消すことはできない。

2 申立理由3(甲1と甲2の組み合わせによる進歩性)について
(1)甲1発明
甲1発明は、上記第5 1(1)ア(イ)のとおりである。

(2)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明を対比するに、一致点及び相違点は、上記第5 1(2)アのとおりである。
そして、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項について、甲2には記載も示唆もない。
そもそも、甲2は、「40?200℃」という高温下で使用される通信用ケーブル材などに利用可能な「吸水性樹脂組成物」に関する文献であり、甲1発明とは技術分野も解決しようとする課題も異なるものであるから、甲1発明に甲2に記載された事項を適用する動機付けもない。
したがって、甲1発明において、甲2に記載された事項を考慮しても、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「体温付近の温度での粘着性が低減された吸水性樹脂粒子」が「提供される」という甲1発明及び甲2に記載された事項からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点1-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件特許発明3ないし5について
本件特許発明3ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)申立理由3についてのむすび
したがって、本件特許発明1及び3ないし5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由3によっては、本件特許の請求項1及び3ないし5に係る特許を取り消すことはできない。

3 申立理由5(実施可能要件)について
(1)判断基準
本件特許発明1及び3ないし5は何れも物の発明であるところ、物の発明の実施とは、その物の生産及び使用等をする行為であるから、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。

(2)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明の記載は、上記第5 3(3)のとおりである。

(3)実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の【0015】ないし【0022】及び【0071】ないし【0085】には、本件特許発明1及び3ないし5の各発明特定事項についての具体的な記載があり、同【0025】ないし【0070】には本件特許発明1及び3ないし5に使用する原料及びその量並びに製造方法について具体的な記載があり、同【0086】ないし【0114】には、実施例1ないし4として、吸水性樹脂粒子の具体的な製造方法及び得られた吸水性樹脂粒子が記載されている。
したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし3及び5に係る物を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1ないし3及び5に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。

なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「本件明細書の記載に基づいては、他の製造方法(例えば、「水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等」)に基づいて、どのように本件請求項1に係る吸水性樹脂粒子を製造すればよいのか、たとえ技術常識を参酌しても当業者には理解できない。」旨主張するが、少なくとも、懸濁重合法によって、本件特許発明1に係る物を生産し、使用することができることが示されているから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

おり、他の方法では、本件特許発明1に係る物を生産することが不可能であるといった技術常識がある訳でもないから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(4)申立理由5についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び3ないし5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由5によっては、取り消すことはできない。

第7 結語
上記第5及び6のとおり、本件特許の請求項1及び3ないし5に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1及び3ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項2に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項2に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70?100モル%であり、
下記方法で測定される、25℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が11.0質量%以上15質量%以下であり、40℃の0.9質量%NaCl水溶液中での溶解分が14質量%以上30質量%以下であり、
生理食塩水保水量が20?49g/gである、吸水性樹脂粒子。
溶解分測定方法:
500mLビーカーに入れた0.9質量%NaCl水溶液500gを、25℃又は40℃に調整し、600rpmで攪拌する。吸水性樹脂粒子2gを該ビーカーに入れ、3時間攪拌した後、75μmJIS標準篩でろ過し、ろ液を回収する。得られたろ液を、JIS P3801に定められた第6種のろ紙を用いて更に吸引ろ過する。吸引ろ過して得られた液を、秤量済みの100mLビーカーに80g量りとり、140℃の熱風乾燥機で15時間乾燥させ、ろ過固形分質量(Wa)を測定する。吸水性樹脂粒子を用いずに同様の手順でろ過固形分質量(Wb)を測定する。以下の式により、溶解分を算出する。
溶解分(質量%)=[((Wa-Wb)/80)×500/2]×100
【請求項2】(削除)
【請求項3】
請求項1に記載の吸水性樹脂粒子を含有する、吸収体。
【請求項4】
請求項3に記載の吸収体を備える、吸収性物品。
【請求項5】
おむつである、請求項4に記載の吸収性物品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-06-25 
出願番号 特願2019-55124(P2019-55124)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (B01J)
P 1 651・ 537- YAA (B01J)
P 1 651・ 113- YAA (B01J)
P 1 651・ 121- YAA (B01J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 飛彈 浩一  
特許庁審判長 細井 龍史
特許庁審判官 加藤 友也
大畑 通隆
登録日 2020-03-25 
登録番号 特許第6681492号(P6681492)
権利者 住友精化株式会社
発明の名称 吸水性樹脂粒子  
代理人 吉川 絵美  
代理人 清水 義憲  
代理人 沖田 英樹  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 沖田 英樹  
代理人 吉川 絵美  
代理人 清水 義憲  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
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