現在、審決メルマガは配信を一時停止させていただいております。再開まで今暫くお待ち下さい。

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C07K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C07K
管理番号 1377789
異議申立番号 異議2020-700707  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-09-17 
確定日 2021-07-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6669314号発明「糖鎖又は糖ペプチドの精製剤及びその使用」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6669314号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-14〕について訂正することを認める。 特許第6669314号の請求項1-3、5-14に係る特許を維持する。 特許第6669314号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許6669314号の請求項1?14に係る特許(以下、「本件特許」ということがある。)についての出願は、平成30年10月31日(優先日:平成29年10月31日 日本国(JP)、平成29年11月27日 日本国(JP))に国際出願したものであって、令和2年3月2日にその特許権の設定登録がなされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、同年9月17日に特許異議申立人 山崎浩一郎(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。
そして、当審において、同年11月26日付けで取消理由を通知したところ、その指定期間内である令和3年1月26日に特許権者により意見書の提出及び訂正の請求がなされ、同年2月18日付けで申立人に訂正請求があった旨を通知したところ、同年3月24日付けで申立人から意見書の提出がなされた。さらに、同年4月7日付けで取消理由(決定の予告)を通知したところ、同年6月11日付けで特許権者から意見書の提出及び訂正請求がなされたものである。
なお、同年6月11日に訂正請求がなされたので、同年1月26日になされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、同年6月11日に訂正請求がされたが、後記「第2 訂正の可否についての判断」の「4.付記」にて述べるとおり、当該訂正請求については、特許法第120条の5第5項ただし書の規定により、申立人に意見書を提出する機会を与えていない。


第2 訂正の可否についての判断

1.訂正の内容
令和3年6月11日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許第6669314号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?14について訂正をすることを求めるものであり、その訂正事項は以下のとおりである。 なお、下線を付した箇所は訂正箇所である。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「単糖以上の長さの糖鎖又は単糖以上の長さの糖鎖を有する糖ペプチドの精製剤。」とあるのを、「O結合型糖鎖の精製剤。」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2、3、5?14についても同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「前記アニオン部位と前記カチオン部位を連結するリンカーは炭素数1?4のアルキレン基である、」とあるのを、「前記アニオン部位と前記カチオン部位を連結するリンカーは炭素数1?4のアルキレン基であり、前記化合物が、前記ベタイン構造を有する側鎖が主鎖に結合したポリマーである、」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2、3、5?14についても同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5の「請求項4に記載の」を、「請求項1?3のいずれか1項に記載の」と訂正する。
請求項5の記載を引用する請求項7?14についても同様に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に、「単糖以上の長さの糖鎖又は単糖以上の長さの糖鎖を有する糖ペプチドの精製用担体。」とあるのを、「O結合型糖鎖の精製用担体。」に訂正する。
請求項6の記載を引用する請求項9?14についても同様に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に、「単糖以上の長さの糖鎖又は単糖以上の長さの糖鎖を有する糖ペプチドの精製用担体。」とあるのを、「O結合型糖鎖の精製用担体。」に訂正する。
請求項7の記載を引用する請求項8?14についても同様に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7の「請求項4又は5に記載の」を、「請求項5に記載の」と訂正する。
請求項7の記載を引用する請求項8?14についても同様に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項12に、「単糖以上の長さの糖鎖又は単糖以上の長さの糖鎖を有する糖ペプチドと有機溶剤を含む試料とを接触させ、前記精製剤又は精製用担体に前記糖鎖又は前記糖ペプチドを吸着させることと、前記精製剤又は精製用担体を水に接触させ、単糖以上の長さの糖鎖又は単糖以上の長さの糖鎖を有する糖ペプチドを溶出させることと、を含む、単糖以上の長さの糖鎖又は単糖以上の長さの糖鎖を有する糖ペプチドの精製方法。」とあるのを、「O結合型糖鎖と有機溶剤を含む試料とを接触させ、前記精製剤又は精製用担体に前記O結合型糖鎖を吸着させることと、前記精製剤又は精製用担体を水に接触させ、前記O結合型糖鎖を溶出させることと、を含む、O結合型糖鎖の精製方法。」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項12の「請求項1?5のいずれか一項」を、「請求項1?3、5のいずれか一項」と訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項13に、「単糖以上の長さの糖鎖又は単糖以上の長さの糖鎖を有する糖ペプチド精製のためのキット。」とあるのを、「O結合型糖鎖精製のためのキット。」に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項13の「請求項1?5のいずれか一項」を、「請求項1?3、5のいずれか一項」と訂正する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項14に、「単糖以上の長さの糖鎖又は単糖以上の長さの糖鎖を有する糖ペプチド精製のための装置。」とあるのを、「O結合型糖鎖精製のための装置。」に訂正する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項14の「請求項1?5のいずれか一項」を、「請求項1?3、5のいずれか一項」と訂正する。

2.本件訂正の適否
(1)訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1、5、6、8、10及び12について
訂正事項1、5、6、8、10及び12は、訂正前の請求項1、6、7及び12?14に「単糖以上の長さの糖鎖又は単糖以上の長さの糖鎖を有する糖ペプチド」として記載されていたもののうち、「単糖以上の長さの糖鎖を有する糖ペプチド」を削除し、「単糖以上の長さの糖鎖」をその下位概念である「O結合型糖鎖」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
さらに、「O結合型糖鎖」を精製することは、本件特許明細書【0085】に記載されているから、訂正事項1、5、6、8、10及び12は、新規事項追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1に、訂正前の請求項4に記載されていた「前記化合物が、前記ベタイン構造を有する側鎖が主鎖に結合したポリマーである」という特徴を追加することにより、訂正前の請求項1に記載の「ベタイン構造を有する化合物」をさらに特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。そして、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、新規事項追加に該当するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する、第126条第6項及び同条第5項に適合する。

ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。そして、新規事項の追加に該当せず、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項及び第5項に適合する。

エ 訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項2によって、訂正前の請求項4の記載が請求項1に追加され、かつ、訂正事項3によって、訂正前の請求項4が削除されることに伴い、訂正前の請求項5の引用請求項が「請求項4」であったところを「請求項1?3のいずれか1項」へ訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、新規事項の追加に該当せず、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項及び第5項に適合する。

オ 訂正事項7、9、11、13について
訂正事項7、9、11及び13は、訂正事項2によって、訂正前の請求項4の記載が請求項1に加えられ、かつ、訂正事項3によって、訂正前の請求項4が削除されることに伴い、訂正前の請求項7、9及び11の引用請求項が「請求項4又は5」または「請求項1?5のいずれか一項」であったところを「請求項5」または「請求項1?3、5のいずれか一項」へ訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、新規事項の追加に該当せず、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項及び第5項に適合する。

3.むすび
以上のとおり、訂正事項1?13は訂正要件に適合するものであるから、訂正事項1?13を認める。

4.付記
上記訂正事項1?13により訂正された本件訂正後の請求項のうち、最も上位の概念の請求項は請求項1であるが、この請求項1は、令和3年1月26日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項4と同じである。そして、この請求項4に対しては、令和3年2月18日付けの通知により、申立人に意見書を提出する機会が与えられていた。
そして、本件訂正後の請求項2?14に対する本件訂正は、請求項1の上記訂正に伴い、請求項4を削除、及び、請求項5、7、12?14の引用請求項から請求項4を削除するものであるから、同様に、令和3年2月18日付けの通知により、申立人に意見書を提出する機会が与えられていたものである。
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第5項ただし書に規定する「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情」がある場合に当たる。
よって、本件訂正請求については、申立人に重ねて意見書の提出の機会を与える必要がないと、合議体は判断した。


第3 訂正後の本件発明

本件訂正後の請求項1?14に係る発明(以下、「本件訂正発明1?14」という。また、まとめて「本件訂正発明」ということもある。)は、令和3年6月11日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?14に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
ベタイン構造を有する化合物を有効成分として含有し、
前記ベタイン構造はアニオン部位、カチオン部位及びリンカーを有し、
前記アニオン部位は、リン酸基、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群より選択される基であり、
前記カチオン部位は、4級アンモニウム基であり、
前記アニオン部位と前記カチオン部位を連結するリンカーは炭素数1?4のアルキレン基であり、
前記化合物が、前記ベタイン構造を有する側鎖が主鎖に結合したポリマーである、
O結合型糖鎖の精製剤。
【請求項2】
前記アニオン部位がリン酸基である、請求項1に記載の精製剤。
【請求項3】
前記ベタイン構造が、ホスホリルコリン基である、請求項1又は2に記載の精製剤。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
前記ポリマーが、(メタ)アクリル化合物を含む単量体の重合体である、請求項1?3のいずれか1項に記載の精製剤。
【請求項6】
請求項1?3のいずれか一項に記載の精製剤が、不溶性支持体に固定された、O結合型糖鎖の精製用担体。
【請求項7】
請求項5に記載の精製剤が、不溶性支持体に固定された、O結合型糖鎖の精製用担体。
【請求項8】
前記不溶性支持体に固定された前記ポリマーの重量が、前記不溶性支持体の単位表面積(m^(2))当たり0.5mg?1.5mgである、請求項7に記載の精製用担体。
【請求項9】
前記不溶性支持体が、無機物質により構成されている、請求項6?8のいずれか一項に記載の精製用担体。
【請求項10】
比重が、1.05?3.00である、請求項6?9のいずれか一項に記載の精製用担体。
【請求項11】
形状が球状であり、平均粒径が0.5μm?100μmである、請求項6?10のいずれか一項に記載の精製用担体。
【請求項12】
請求項1?3、5のいずれか一項に記載の精製剤又は請求項6?11のいずれか一項に記載の精製用担体と、O結合型糖鎖と有機溶剤を含む試料とを接触させ、前記精製剤又は精製用担体に前記O結合型糖鎖を吸着させることと、
前記精製剤又は精製用担体を水に接触させ、前記O結合型糖鎖を溶出させることと、を含む、
O結合型糖鎖の精製方法。
【請求項13】
請求項1?3、5のいずれか一項に記載の精製剤又は請求項6?11のいずれか一項に記載の精製用担体、及び、キット使用のためのプロトコル情報を含む、O結合型糖鎖精製のためのキット。
【請求項14】
請求項1?3、5のいずれか一項に記載の精製剤又は請求項8?11のいずれか一項に記載の精製用担体を収容した容器を保持する容器保持部と、
前記容器に試薬類を導入する試薬導入部と、
を備える、O結合型糖鎖精製のための装置。」


第4 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由についての当審の判断

1.取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要
当審が令和3年4月7日付けで特許権者に通知した取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。

(1)令和3年1月26日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?3、6及び9?13に係る発明は、甲第3号証(以下、「甲3」という。同様に、以下、「甲●号証」を「甲●」という。)(参考文献として、甲4)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、当該特許を受けることができない(以下、「取消理由1」という。)。
(2)令和3年1月26日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?3、6及び9?14に係る発明は、甲3(参考文献として、甲4)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができない(以下、「取消理由2」という。)。

よって、令和3年1月26日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?3、6及び9?14に係る発明は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

甲3:Journal of Chromatography A, 2017年1月27日(available online), Vol.1489, p.65-74
甲4:Analytical Chemistry, 2011年, Vol.83, p.8352-8356

2.取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由についての当審の判断
当審は、本件訂正発明は、以下に示すように、上記取消理由1、2によって取り消すことができないと判断する。

(1)甲3及び甲4の記載事項
ア 甲3の記載事項
「糖及び糖アルコールの親水性相互作用液体クロマトグラフィー設計空間の評価」と題する学術論文である甲3には以下の事項が記載されている。英語で記載されているため、当審による翻訳で示す。下線は当審による。

「要約」
甲3ア 「カラムスクリーニング演習に基づいて、アセトニトリル/水またはアセトン/水移動相を使用したHILICモードで16の極性固定相を使用して、26の糖及び糖アルコール分析物の任意の組み合わせを含むサンプル混合物用のカラムランキングシステムを開発した。各分析対象成分は勾配溶出を伴うHILICカラムで評価され、その後のクロマトグラフィーデータは統計分析ソフトウェアパッケージにまとめた。ここで、分析対象成分のサブセットを選択し、最大分離度でランク付けした。これらの分析物は発色団を欠いているため、蒸発光散乱検出器(ELSD)及び帯電エアロゾル検出器(CAD)を含むエアロゾルベースの検出器を定性的及び定量的検出に採用した。このHILICカラムランキングの実用性と効率を示すために、定性的アプリケーションの例が提供された。さらに、デザインスペースアプローチは、複雑なマトリックス内のグルコースイントレハロースの微量分析のための定量的方法の出発点として使用された。設計空間の評価から得られた知識は、特異性、正確性、精度、直線性、定量限界、検出限界、及び範囲の各パラメーターの検証を通じて示されるように、有能なメソッドの迅速な開発につながった。」(要約)

「2.材料と方法」
甲3イ 「2.2 機器-デザインスペース調査
HPLCシステムは、Agilent 1100ポンプとオートサンプラー(カリフォルニア州サンタクララ)で構成されていた。検出は、Buchi Corporation(デラウェア州ニューキャッスル)のAlltech 3300 ELSDまたはThermo Scientific(マサチューセッツ州ウォルサム)のESA Corona CADを使用して行われた。ELSDの動作条件は、温度50°C、窒素ガス流量1.4 L /分、ゲイン設定2だった。CADの動作条件は、ネブライザー温度30°C、設定範囲200 pA、窒素圧は35psiだった。評価したHPLCカラムを表2に示す。
分析中、カラム温度は25°Cに維持された。注入量は10μLで、移動相の流量は1.0mL/分だった。デザインスペース調査では、各分析対象物を、各カラムで、10%の水と90%の有機物(アセトニトリルまたはアセトンのいずれか)で開始する勾配とその後の30分で有機物が60%になる直線的な勾配を用いて試験し、次いで、4分間保持し、0.5分で開始条件に戻り、そして5.5分間平衡化し、合計実行時間が40分になるようにした。リテンションデータを得るために、1回繰り返した。」(第66頁左欄第3?4段落)

「3.結果と考察」
甲3ウ 「3.1 デザインスペース調査
16の異なるクロマトグラフィーカラム(表2)と2つの異なる移動相組成(「材料と方法」のセクションで説明した勾配を使用)とを使用した26の異なる分析対象物(表1)のデザインスペース調査により、表3および4の結果が得られた。使用したカラムは、両性イオン、アミド、ジオール、トリアゾール、アミノ、シリカ、およびヒドロキシルリガンドを含む、市販されている幅広いHILIC固定相となるように選択された。同じタイプの固定相を持つ他のカラムも同様の選択性を示す可能性があるが、この評価に含まれていない特定のカラムを評価して類似性を評価する必要がある。表3および4に示されているデータには、アセトン/水(表3)およびアセトニトリル/水(表4)の両方の移動相を使用してすべての固定相で分析された各分析対象物のリテンションタイムが含まれている。これらの結果に基づいて、JMP統計ソフトウェア(登録商標)(SAS Institute Inc.)で独自のアルゴリズムが開発され、対象化合物のデータをサブセット化し、固定相と移動相の各分析対象物のリテンションタイムの間隔を計算して、各固定相と移動相の最小間隔を強調した表を作成した。なお、同様のアルゴリズムがExcelなどの他のソフトウェアで開発され得る。これらの結果により、科学者は、他の方法と比較して(分離能と総分析時間の両方に基づいて)より良い分離が行える方法の条件(つまり、固定相と移動相の組み合わせ)を特定できる。いつでも、ここで説明されていない追加のカラムまたは追加の分析物を上記のように分析して、デザインスペースのアルゴリズムを拡張できる。」(第66頁右欄第2段落)

甲3エ 「表2 HILICデザインスペース調査で評価されたカラム

」(表2)

甲3オ 「表3 アセトン/水移動相を使用したテスト分析物のリテンションタイムのデータ。1と2は同じ試料のアノマーを示す。



」(表3)

甲3カ 「表4 アセトニトリル/水移動相を使用したテスト分析物のリテンションタイムのデータ。1と2は同じ試料のアノマーを示す。

」(表4)

イ 甲4の記載事項
「両性イオン親水性相互作用液体クロマトグラフィー分離における定量的プロテオミクスアプローチでの実装のための重水素同位体効果の評価」と題する学術論文である甲4には以下の事項が記載されている。英語で記載されているため、当審による翻訳で示す。下線は当審による。

甲4ア 「



甲4イ 「トラッピングカラムは、ZIC-cHILIC 100μm×20mm、5μm、200Å(Merck SeQuant・・・)であった。分析カラムは、ZIC-cHILIC 75μm×250mm、5μm、200Åであった。」(第8353頁第39?42行目)

(2)甲3発明の認定
甲3には、その「要約」の項に、カラムスクリーニング演習に基づいて、アセトニトリル/水またはアセトン/水移動相を使用したHILICモードで16の極性固定相を使用して、26の糖及び糖アルコール分析物の任意の組み合わせを含むサンプル混合物用のカラムランキングシステムを開発したと記載されており(上記摘記事項甲3ア)、その「2.材料と方法」及び「3.結果と考察」の項に、当該カラムランキングシステムにおいて、カラムのランク付けを行うために、16の異なるクロマトグラフィーカラムを使用して、ガラクトース、マンノース、キシロースを含む、26の糖及び糖アルコール分析物のリテンションタイムを測定したことと、前記クロマトグラフィーカラムのうちの一つがMerck Sequantが提供するZIC-cHILICであったことが記載されている(上記摘記事項甲3イ?カ)。
また、甲3発明の「Merck Sequantが提供するZIC-cHILIC」は、ガラクトース、マンノース、キシロースを含む、26の糖及び糖アルコール分析物のリテンションタイムを測定するために使用されているが、これらの糖及び糖アルコール分析物のリテンションタイムを測定する工程には、これらの糖及び糖アルコール分析物を分離する工程が含まれているから、ZIC-cHILICは、当該糖及び糖アルコール分析物の分離を行う化合物を含むと認める。
したがって、甲3には、以下の発明が記載されていると認められる。
「ガラクトース、マンノース、キシロースを含む、26の糖及び糖アルコール分析物のリテンションタイムを測定するために使用された、Merck Sequantが提供するZIC-cHILICに含まれる、当該糖及び糖アルコール分析物の分離を行う化合物。」(以下、「甲3発明」という。)

(3)本件訂正発明1?14と甲3発明の対比・判断
ア 本件訂正発明1について
本件特許明細書の【0085】に、「糖鎖としては、単糖及びその誘導体、多糖類、糖タンパク質、並びに、糖ペプチド・・・等の複合糖質から遊離又は誘導された糖鎖等が挙げられる・・・ここで、糖タンパク質を構成する糖鎖は、主にアスパラギン残基に糖鎖が結合するN-グリコシド結合糖鎖(N型糖鎖)、及び、セリン及びスレオニン等と結合するO-グリコシド結合糖鎖(O型糖鎖)の2種類に大別される。」と記載されていることから、「O結合型糖鎖」とは、セリン及びスレオニン等とO-グリコシド結合で結合する糖鎖を意味すると解する。そして、「O型結合型糖鎖」が、具体的には、ガラクトース、マンノース、キシロース等である場合があることは、本願優先日の時点で周知技術である(naruken,”糖鎖コラム 第5話 O?結合型糖鎖とは”,[online],2016年8月31日,医科学創薬株式会社ホームページ,[2021年4月2日検索],インターネット<URL:https://soyaku.co.jp/column/1044/>、国際公開第2005/024419号の【0170】参照)。
また、甲3発明において、糖及び糖アルコール分析物の「分離」を行うことは「精製」を行うことと同じ意味である。
そうすると、甲3発明の「当該糖及び糖アルコール分析物の分離を行う化合物」は、ガラクトース、マンノース、キシロースを含む、26の糖及び糖アルコール分析物の精製剤、すなわち、O?結合型糖鎖の精製剤である。
さらに、甲3発明の「Merck Sequantが提供するZIC-cHILIC」について、甲4には、Merck Sequantが提供するZIC-cHILICが、ベタイン構造を有する化合物を含有し、前記ベタイン構造はアニオン部位、カチオン部位及びリンカーを有し、前記アニオン部位は、リン酸基であり、前記カチオン部位は4級アンモニウム基であり、前記アニオン部位と前記カチオン部位を連結するリンカーは炭素数2のアルキレン基であること、すなわち、前記ベタイン構造はホスホリルコリン基であること、及び、ZIC-cHILICのベタイン構造を有する化合物が、分析物と相互作用すること、すなわち、分離に寄与する有効成分であることが記載されていると認める(上記摘記事項甲4ア、イ)。
したがって、ZIC-cHILICが含有する、ベタイン構造を有する化合物が、O?結合型糖鎖の精製剤の有効成分であると認める。

よって、本件訂正発明1と甲3発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「ベタイン構造を有する化合物を有効成分として含有し、
前記ベタイン構造はアニオン部位、カチオン部位及びリンカーを有し、
前記アニオン部位は、リン酸基であり、
前記カチオン部位は、4級アンモニウム基であり、
前記アニオン部位と前記カチオン部位を連結するリンカーは炭素数2のアルキレン基である、
O結合型糖鎖の精製剤。」
<相違点>
ベタイン構造を有する化合物が、本件訂正発明1では「ベタイン構造を有する側鎖が主鎖に結合したポリマー」であると特定されているのに対し、甲3発明ではそのような構造を有していない点。

上記相違点について、検討する。
甲3、甲4のいずれにも、「Merck Sequantが提供するZIC-cHILIC」が、「ベタイン構造を有する側鎖が主鎖に結合したポリマー」を含むことは記載されていない。
また、甲3発明において、「Merck Sequantが提供するZIC-cHILIC」に含まれる、ガラクトース、マンノース、キシロース等のリテンションタイムを測定するための有効成分として、「ベタイン構造を有する側鎖が主鎖に結合したポリマー」を適用する動機付けも見いだせない。
したがって、上記相違点は、実質的な相違点であって、本件訂正発明1は甲3発明ではなく、また、甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ 本件訂正発明2、3、5?14について
本件訂正発明2、3、5?14は、いずれも本件訂正発明1を直接的又は間接的に引用している。
そうすると、本件訂正発明2、3、5?14と甲3発明の相違点は、上記本件訂正発明1と甲3発明の相違点を包含する
したがって、本件訂正発明2、3、5?14は、甲3発明ではなく、また、上述のとおり、当該相違点をかえる動機付けはないから、甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)小括
よって、本件訂正発明1?3及び5?14は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、また、本件訂正発明1?3及び5?14は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1?3及び5?14に係る特許は、上記取消理由1、2によっては取り消すことはできない。


第5 取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由についての合議体の判断

1.特許異議申立理由の概要、及び、取消理由通知書(決定の予告)における採用の有無について
申立人は、甲1?10を提出し、本件特許は、概ね以下の申立理由1?4により、取り消されるべきものである旨主張している。
うち、以下の申立理由3については取消理由通知書(決定の予告)において採用し、以下の申立理由1、2及び4については取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった。

(1)申立理由1(甲1を主引例とした場合の新規性進歩性欠如)
本件特許発明1、2、4?7、9及び12?14は、甲1に記載された発明であり、新規性を有さない。
本件特許発明1?14は、甲1に記載された発明及び甲2?9の記載に基づいて当業者が容易に想到できたものである。

(2)申立理由2(甲2を主引例とした場合の新規性進歩性欠如)
本件特許発明1、2及び4?12は、甲2に記載された発明であり、新規性を有さない。
本件特許発明1、2及び4?12は、甲2に記載された発明及び甲2?9の記載に基づいて当業者が容易に想到できたものである。

(3)申立理由3(甲3を主引例とした場合の新規性進歩性欠如)
本件特許発明1?3、6及び11は、甲3に記載された発明であり、新規性を有さない。
本件特許発明1?11は、甲3に記載された発明及び甲1及び3?9の記載に基づいて当業者が容易に想到できたものである。

(4)申立理由4(特許法第36条第4項第1号、同条第6項第1号違反)
本件特許は、本件特許発明1?14について、特許法第36条第4項第1号、同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2.甲3、甲4以外の特許異議申立書に記載されている証拠及びその記載事項
(1)甲3、甲4以外の特許異議申立書に記載されている証拠
甲1:特開2007-93585号公報
甲2:Talanta, 2016年, Vol.161, p.860-866
甲5:特開2010-190602号公報
甲6:生化学, 平成22年6月25日, 第82巻, 第6号, p.551
甲7:Journal of Chromatography A, 2009年, Vol.1216, p.2439-2448
甲8:米国特許出願公開第2010/0300971号
甲9:Journal of Chromatography A, 2006年, Vol.1127, p.82-91
甲10:特開昭59-169532号公報

(2)甲1、2、5?10の記載事項
甲1、2、5?10には、以下の事項が記載されている。下線は当審による。
甲2?4、7?9は英語で記載されているため、当審による翻訳で示す。

ア 甲1の記載事項
甲1ア 「糖鎖異性体分子および糖ペプチド異性体分子から成る群から選ばれる少なくとも2種の分子を含む試料を、陰イオン及び陽イオン交換基を有する固定相を用いたカラムに供給し、前記試料に含まれる前記糖鎖異性体分子および/または糖ペプチド異性体分子をカラムから溶出させて分離し、分離した分子を分析することを含む、糖鎖異性体分子および/または糖ペプチド異性体分子の分離分析方法。」(請求項1)

甲1イ 「糖鎖化学が進歩し、種々の糖鎖化合物、特に、糖異性体分子や糖ペプチド異性体分子を分離し、分析する機会が増えているが、疎水性分子(イオン)と親水性分子(イオン)が混在する糖異性体分子や糖ペプチド異性体分子の場合、逆相型カラムと順相型カラムの併用が必要であり、分析に時間と労力が必要である。
さらに、上述のように、特に糖ペプチド異性体分子の場合は、そのままの分子を分析することはできず、また、発現定量プロテオミックスにおいても、糖ペプチド異性体分子をそのまま測定することはできなかった。
そこで本発明の目的は、液体クロマトグラフィにより、より簡便に異性体分子や糖ペプチド異性体分子を分離し、分析する方法を提供することにある。」(段落0005?0006)

甲1ウ「[陰イオン及び陽イオン交換基を有する固定相]
陰イオン及び陽イオン交換基を有する固定相は、例えば、有機樹脂で構成されるコアの表面に共有結合した多数の非芳香族両性イオン基を有するものであることができる。このような固定相は、例えば、特表2002-529714号公報に記載されている。より具体的には以下に説明する。
上記固定相における『有機樹脂』とは、合成あるいは天然由来の有機重合体あるいは共重合体を示し、モノあるいはオリゴビニールモノマーユニットの、例えば、スチレンとその付加誘導体、アクリル酸あるいはメタクリル酸、アルキルアクリレートとメタクリレート、ハイドロキシアルキル アクリレートとメタクリレート、アクリルアミドとメタクリルアミド、ビニルピリジンとその付加誘導体、ジビニルベンゼン、ジビニルピリジン、アルキレン ジアクリレート、アルキレン ジメタクリレート、オリゴエチレン グリコール ジアクリレートとオリゴエチレン グリコール ジメタクリレートで5ケのエチレン グリコール 繰り返しユニットを持つものまで、アルキレン ビス(アクリルアミド)、ピペリジン ビス(アクリルアミド)、トリメチロールプロパン トリアクリレート、トリメチロールプロパン トリメタクリレート、ペンタエリスリオール トリアクリレートとテトラアクリレート、そして、これらの混合物からなる。また、それは、炭水化物の重合体である、アガロース、セルロース、デキストラン、キトサン、それらの交差結合誘導体であることもできる。このような有機樹脂は固定相のコア(核)となる。
『非芳香族両性イオン基(zwitterionic non-aromatic group)』とは、同じペンダント状基に正と負の電価を同時に持つ、付加されたイオン性の非芳香族官能基に関し、結果としてその使用中の主な条件下で総電荷がないものを言う。この様な基は、バックボーンとなる重合体に直接的に結合されるモノマー単位として存在するか、あるいは、少なくとも部分的に非芳香族両性イオンモノマーユニットからなる直鎖あるいは交差結合した重合体あるいは共重合層で、結果としてバックボーン重合体に結合したペンダント状基のおのおのには多価の非芳香族両性イオン基があるものを言う。
非芳香族両性イオン基は、非芳香族イオン基が生体高分子の分離に適用され得る水のpH領域において、解離或いは水素イオン付加平衡を行う事が出来るかによって強あるいは弱と分類される。非芳香族強イオン基の例としては、スルホン酸や4級アンモニウム基があり、一方弱イオン基の例としてはカルボキシル基やアルキル- あるいはハイドロキシアルキル-アミンがある。強/強 非芳香族両性イオン基の例としてスルホアルキルアンモニオベタイン類、スルホアルキルアルセノベタイン類、ホスホノアルキルアンモニオベタイン類、そしてホスホノアルキルアルセノベタイン類がある。」(段落0010?0013)

甲1エ 「実施例1
図6は、IgGタンパク質のトリプシン酵素消化物のZICカラム(ZIC-HILIC (2×150mm))での分離分析例である。ZICカラムの固相は、表面にN,N-ジメチル-N-メタクリロイルオキシエチル-N-(3-スルホプロピル)アンモニウムベタイン(N,N-dimethyl-N-methacryloyloxyethyl-N-(3-sulfopropyl)ammonium betaine)を共有結合させたものである。溶離液A(20mM酢酸アンモニウムを含む50%アセトニトリル)と溶離液B(20mM酢酸アンモニウムを含む90%アセトニトリル)の直線グラジエント溶出法(33%B(0.0分)→67%B(120分)を用いた。流量は0.2mL/minで一定である。カラムオーブン(恒温槽)により、カラム温度は40℃に保った。
IgGタンパク質のトリプシン酵素消化は以下のように行った。IgGタンパク質1mgにトリプシン20μg、50mM炭酸アンモニウム(pH=7.8)0.1mLを添加し、37℃で一晩放置した。その後、0.01M塩酸(pH=2)を添加して、90℃で1時間でトリプシン消化を止め、また、シアリル糖の脱離も同時に行った。その後、1M炭酸アンモニウムで中和した。
分離条件(有機溶媒および塩濃度グラジエント、pH)を最適化することにより、疎水的なペプチドを前半部分、親水的な糖ペプチドを後半部分に溶出させることが可能である。図6に示す結果は、溶離液Aとして50%アセトニトリル水溶液(20mM酢酸アンモニウム)溶離液Bとして90%アセトニトリル水溶液(20mM酢酸アンモニウム)を用い、33-67%A(0-120分)のグラジェントで行ったものである。また、質量分析計を検出器として用いることにより、溶出分子(イオン)の確認(同定)ができている。
図7は、図6の結果の内、溶出時間70-125分部分を拡大表示したもので、2種のIgG1,IgG2由来の8種の糖ペプチドの2価イオン質量クロマトグラム(MC)を表示している。m/z1401, m/z1385の質量クロマトグラム(MC)には2つの分離されたピークがある。これらは質量が同じの異性体である。すなわち、ペプチド部分が同じで、糖鎖部分が構造異性体である。このように、分子量が大きな糖ペプチド異性体分離が出来るのが、本発明の特徴である。」(段落0045?0049)

甲1オ 「実施例4
ZICカラムは実施例1と同様のものを使用し、ピリジルアミノ化(PAラベル化)したヒト由来のシアリル糖鎖異性体混合物(標準試料)を分離した。溶離液A(50%アセトニトリル)、溶離液B(90%アセトニトリル)、溶離液C(250mM酢酸アンモニウム(pH=6.8))の直線グラジエント溶出法(A)20mM酢酸アンモニウム:A/B/C=30/62/8(0.0分)→ 58/34/8(120分)(B)5mM酢酸アンモニウム:A/B/C=42/56/2(0.0分)→ 70/28/2(120分)を用いた。グラジエント溶出法中の酢酸アンモニウム濃度は一定に保たれている。流量は0.2mL/minで一定である。カラムオーブン(恒温槽)により、カラム温度は40℃に保った。結果を図12に示す。図12は中性およびシアリル糖鎖の保持時間に対する塩濃度の影響を示している。この図から、中性糖鎖の保持はほとんど変化しないが、シアリル糖鎖の保持時間は大きく変化し、塩濃度が高いほどカラムへの保持が強いことが分かる。」(段落0057)

甲1カ 「シアリル糖鎖異性体がZICカラムでよく分離するメカニズムについて、簡単に記述する。図12及び13の結果から、ZICカラムとシアリル糖鎖の相互作用考察したのが、図14である。ZICカラム表面には、水の組成が移動相より大きい“擬似固定相”が形成されており、また、負電荷を帯びたスルフォン酸基はカウンターイオン(この場合は、アンモニウムイオン)に囲まれている。したがって、塩濃度が高くなるにつれ、シアル酸との静電的な反発相互作用はシールドされ、弱まることになる(図12参照)。図13はα2-6結合の数が多いほど保持も強まることを示している。α2-6結合はα2-3結合に比べて、回転の自由度が大きいのが特徴である。静電的な反発相互作用を回避しようとする場合、回転の自由度が大きいα2-6結合のシアル酸が有利であることは容易に想像できる。結論として、シールドされた静電反発相互作用が、糖鎖全体に対する親水性相互作用を微調節する結果、シアリル糖鎖異性体の構造認識がなされているといえる。正電荷を帯びた4級アミン基は、シアル酸とシールドされた静電引力相互作用を行う。固定相近くに存在するために上記反発力に比べて小さいと思われるが、異性体認識に作用している。また、正負両イオン基をもつZICカラムは、1種(正または負)のイオン基をもつカラムに比べて、“擬似固定相”が厚く親水性相互作用も大きいといわれている。したがって、4級アミンおよびスルフォン酸基共に、親水性相互作用および静電的相互作用に関わっており、その結果として、糖鎖異性体の保持と構造認識が行われているといえる。このように、スルフォン酸基及び4級アミンという陰イオン及び陽イオン交換基を有する固定相を用いることで、糖鎖異性体の保持と構造認識が行われる。」(段落0059)

甲1キ 「

」(図14)

イ 甲2の記載事項

要約
甲2ア 「両性イオン性ポリマー固定相は、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)で注目を集めている。本研究では、多孔性シリカ粒子を基礎とする両性イオンスルホベタイン官能化ポリアクリルアミド固定相(TENS)が、制御された表面開始可逆付加フラグメンテーション移動(RAFT)重合によって調製された。本研究では、従来のメタクリレートタイプのスルホベタインモノマーの代わりに、化学的安定性と疎水性が高いアクリルアミドタイプのスルホベタインモノマーを使用した。元素分析と固定^(13)C交差分極/マジックアングルスピニング核磁気共鳴の特性評価は、TENS固定相の調製が成功したことを示した。また、走査型電子顕微鏡(SEM)、窒素吸着実験、およびサイズ排除性能の実験が行われ、表面開始重合が適切に制御されていることが明らかになった。HILICモードでのTENS材料の理解を深めるために、TENS材料のクロマトグラフィー評価をおこなったが、TENS材料は、良好な親水性と化学的安定性を示した。TENS材料の適用性をさらに研究するために、HILICで困難なターゲットとみなされていた糖類が、テスト対象の検体として選択された。フラクトオリゴ糖、三糖異性体、ジンセノサイドなどの様々な糖サンプルがTENS材料で十分に分離された。さらに、TENS材料は、糖ペプチドの濃縮に優れた選択性を示した。これらの結果は、グリコミクス及びグリコプロテオミクスにおける有望な材料としてのTENSの能力を示すものである。」(要約)

2.材料と方法
甲2イ 「2.1 化学物質と材料
メルカプトプロピル修飾シリカ(SH-シリカ、粒子径5μm、孔径100Å)は、Acchrom(北京、中国)から提供された。2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオナミジン)二塩酸塩(AIBA、98%)、ヒト血清IgG、チトクロームC及びグルタチオンは、Sigma Aldrich(セントルイス、ミズーリ州、米国)から購入した。4-シアノ4(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸(CPA_DB)及び3-(2-アクリルアミド-エチルジメチルアンモニオ)プロパンスルホネート(AEDAPS)はInnotech(大連、中国)から入手した。・・・ギ酸アンモニウム(NH_(4)FA、97%)、酢酸アンモニウム(NH_(4)Ac、98%)及びギ酸(FA、98%)はJ&K Scientific(北京、中国)から入手した。HPLCグレードのアセトニトリル(ACN)とメタノール(CH_(3)OH)はFulltime(Anqing、中国)から入手した。・・・ZIC-HILICカラム(150mm×2.1mm、内径3.5μm、100Å)はMerck(Darmstadt、ドイツ)から入手した。Venusil HILICカラム(150mm×4.6mm、内径5μm、100Å)はAgela Technologies(天津、中国)から購入した。」(第861頁左欄第3段落)

甲2ウ 「2.2 スルホベタイン両性イオンポリマー固定相(TENS)の合成
5gのSHシリカを200mLの水-メタノール(1:1 v/v)中のAEDAPS(33.40g)、CPA_DB(0.335g)及びAIBA(1.30g)の溶液に添加した。その後、酵素を除去するために、窒素を3回真空バブリングした。反応を55℃で72時間続けた。結果として、材料を濾過し、水とメタノールで連続的に洗浄し、80℃で一晩乾燥させた。得られたスルホベタイン両性イオンポリマー固定相をTENSと命名した。」(第861頁左欄第4段落)

甲2エ 「2.5 IgG消化物からの糖ペプチドの濃縮
IgG消化の準備と脱塩は既報に従って行った[24]。糖ペプチドの濃縮のために、TENS(約1mg)をGELoaderチップにスラリー充填した。次に、マイクロカラムをACN/H_(2)O/FA(50:50:5(v/v)、20mM NH_(4)FA、40μL)で活性化し、ACN/H_(2)O/FA(85:15:5(v/v)、20mM NH_(4)FA、40μL)で平衡化した。その後IgGトリプシン消化物をロードした。カラムに移し、ACN/H_(2)O/FA(80:20:5(v/v)、20mM NH_(4)FA、60μL)ですすぎ、非糖ペプチドを除去した。糖ペプチド画分は、ACN/H_(2)O/FA(50:50:5(v/v)、40μL)で溶出した。溶離液を真空濃縮器で乾燥させ、ACN/H_(2)O/FA(50:50:0.1(v/v)、20μL)に溶解し、MSに直接注入した。
MS分光分析は、ナノエレクトロスプレーイオン化四重極飛行時間型質量分析計(ESI-Q-TOF MS)を備えたFinnigan LCQ Advantage質量分析計(Waters、マンチェスター、英国)で行った。」(第861頁右欄第5?6段落)

3.結果と考察
甲2オ 「3.1 TENS材料の合成と特性評価
この研究では、アクリルアミド基を持つスルホベタインモノマーが重合のために選択された。得られるポリマー固定相(TENS)は、親水性ポリアクリルアミド骨格と両性イオン性スルホベタイン側鎖を持つように設計されている。TENS固定相の合成は、制御されたチオール開始表面重合ストラテジーに基づいて行われた(図1)。つまり、SH-シリカの表面で重合が開始され、熱開始剤(AIBA)とRAFT剤(CPA_DB)の存在下で重合が進行した。重合中、増殖するラジカルがRAFT剤に動的に追加又はフラグメント化され、制御された方法で重合が進行した。
得られたTENS材料は、最初に^(13)C/CP MAS NMRによって特徴付けられた(図2)。176.01ppmの信号は、カルボニル基の炭素原子に相当した。一方、元素分析はSH-シリカとTENS材料の特性評価のために行われた。SH-シリカの炭素含有量と窒素含有量は3.42%と0.00%だったのに対し、TENS材料はそれぞれ11.50%と2.30%だった。結果は、両性イオンポリマーがシリカ粒子上にうまくグラフトされたことを示した。さらに、シリカ粒子の表面上の両性イオン性ポリマーの量はTGAによって測定された。図3に示すように、100℃未満で1.68%の重量損失は、TENS材料の表面に吸収された水分によるものである。そして24.07%の重量損失は、両性イオンポリマーの損失によるものであった。
また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を実施した。画像(図S1)は、TENS粒子がSH-シリカと同様の形態を有し、粒子間に凝集がないことを示した。一方、表面積、細孔径、及び全細孔容積は、窒素吸着測定によって得た(窒素吸着-脱離等温線及び細孔サイズ分析は、図S2に示されている)。表1に示すように、平均孔計が95.22から93.78Åにわずかに減少する一方で、表面積は288.76から172.25m^(2)/gに減少し、総細孔容積は重合後に0.719から0.409cm^(3)/gに減少した。上記の結果は、重合が十分に制御されたことを示した。さらに、TENS材料をステンレス鋼のカラム(内径150mm×4.6mm)に充填し、そのサイズ排除性能を調査した。そして図S3に示すように、分子量が異なる4つの試験対象化合物(表S1、シトクロムC、インスリン、トリプトレリン、グルタチオン含む)は全てウラシルの前に溶出した(t_(R)=16.99分)。溶出順序は検体の分子量に対応しており、サイズ排除クロマトグラフィーに準拠しており、重合後も細孔構造が良好に維持されていることが確認された。」(第861頁右欄第7段落?第863頁右欄第1段落)

甲2カ 「

図1 制御されたチオール開始表面重合によるTENS固定相の調製
」(図1)

甲2キ 「表1 SHシリカとTENS材料の表面積と細孔構造の特性評価

」(表1)

甲2ク 「3.4.1 単糖類と異性体の分離
はじめに、TENS材料での糖類の分離の実現可能性を調べるため、重合度の異なるフラクトオリゴ糖が分析対象として選ばれた。図10に示すように、フラクトオリゴ糖は重合度に応じて濃縮され、良いピークの形でよく分離されていた。同時に、異性体の分離は糖類の研究において重要な課題であった。そこで、結合様式の異なる三糖類の異性体の組み合わせが分析対象として選ばれた。図11に示すように、三糖類の異性体が、三種類のカラムで分離された。商業的に入手可能な2種類のカラム(Venusil HILICとZIC-HILIC)に比べ、TENSカラムではより強い保持力とより良いピークの形が得られた。」(第865頁左欄第3段落?同頁右欄第1段落)

ウ 甲5の記載事項

甲5ア 「下記式(1)で表されるホスホリルコリン類似基含有単量体を含む単量体組成物を重合してなる重合体が、シリカ骨格と該シリカ骨格に形成された微細孔の表面に修飾され、かつ、 表面修飾された前記微細孔のポアサイズが、分離対象とする生体小分子の分子サイズに適合する大きさを有する生体小分子分離用モノリス型シリカカラム。

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は同一もしくは異なる基であって、水素原子、炭素数1?6のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、R^(4)は炭素数1?6のアルキレン基を示し、R^(5)は水素原子もしくはメチル基を示す。nは1?4の整数である。)」(請求項1)

甲5イ 「式(1)で表されるホスホリルコリン類似基含有単量体としては、例えば、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、3-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4-((メタ)アクリロイルオキシ)ブチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5-((メタ)アクリロイルオキシ)ペンチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6-((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2'-(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2'-(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2'-(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2'-(トリシクロヘキシルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2'-(トリフェニルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ブチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ペンチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート等が挙げられる。中でも2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン:以下、「MPC」と略す)が入手性等の点で好ましい。」(段落0020)

甲5ウ 「(3)分離対象生体小分子に対する最適化
モノリス型シリカカラムによる生体試料中からの生体小分子の分離は、スルーポアとメソポアの孔径の違いによる分子ふるい効果に基づき、生体小分子のみをメソポア内に取り込んで保持することによって行われる。このとき、生体小分子を効率よくメソポア内に保持するためには、目的とする生体小分子の分子サイズとメソポアの孔径が一致していることにより、メソポア内に分離対象外の生体小分子や、分子サイズが大きいタンパク質が入り込まないようにすることが望ましい。
そこで、本発明においては、分離対象とする生体小分子の分子サイズに応じて所定孔径に形成されたメソポア表面を、生体小分子の分子サイズに応じて所定分子量に重合されたホスホリルコリン類似基含有重合体によって表面修飾する。これにより、本発明では、ホスホリルコリン類似基含有重合体によって表面修飾されたメソポアの孔径(ポアサイズ)が、分離対象とする生体小分子の分子サイズに適合する大きさとなるようにする。すなわち、メソポアの孔径から、表面修飾されたホスホリルコリン類似基含有重合体の膜厚分を引いた孔径(ポアサイズ)が、分離対象とする生体小分子の分子サイズに一致するように、モノリス型シリカカラムのメソポア孔径及びホスホリルコリン類似基含有重合体の分子量を調整する。」(段落0027?0028)

甲5エ 「2.生体小分子の分離方法
(1)分離対象生体小分子
本発明において、分離対象とする生体小分子は、神経伝達物質やホルモン等であって、例えば、アドレナリンやドーパミンなどのカテコールアミン、オキシトシンやエンドルフィンなどの生理活性ペプチド、卵胞ホルモン、黄体ホルモン、男性ホルモン、インスリン、グルカゴン、性腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、成長ホルモン、副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモンやこれらの代謝産物、誘導体、中間体等とできる。さらに、分離対象とする生体小分子は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、トリヨードサイロニン(T3)、サイロキシン(T4)、絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、ヒト胎盤性ラクトーゲン(HPL)やこれらの代謝産物等であってもよい。」(段落0030)

甲5オ 「(3)分離手順
本発明に係る生体小分子の分離方法では、上述したモノリス型シリカカラムを用いて、目的とする生体小分子を溶液中から生体小分子を分離するものである。具体的には、まず、分離対象生体小分子を含む溶液(以下、サンプル溶液)をモノリス型シリカカラムに通流し、生体小分子をメソポア内に保持させる。サンプル溶液の通流に先立って、カラムには緩衝液や水(これらを「ランニングバッファー」と称する)を通流させておいてもよい。サンプル溶液は、ランニングバッファーの送液を一旦停止して、又はランニングバッファーとともに、カラムに通流される。」(段落0033)

甲5カ 「次に、サンプル溶液を通流したモノリス型シリカカラムに、生体小分子を溶出させるためのバッファー(溶出バッファー)を通流する。この溶出バッファーは、上記のランニングバッファーとすることができる。サンプル溶液をランニングバッファーの送液を一旦停止してカラムに通流した場合には、ランニングバッファーの送液を再開することにより、分子ふるい効果によって、まず、タンパク質が溶出され、次に目的とする生体小分子が溶出される。また、サンプル溶液をランニングバッファーとともにカラムに通流した場合にも、まず、タンパク質が溶出され、次に目的とする生体小分子が溶出されてくる。従って、後に溶出されてくる生体小分子を含むバッファー分画を回収することにより、メソポア内に選択的に取り込まれ保持されていた生体小分子を高収率で回収することができる。
このとき、従来のカラムでは、タンパク質及び生体小分子を溶出させるためには、有機溶媒を含むランニングバッファーを用いる必要があった。そのため、回収された生体小分子溶液中に有機溶媒が含まれ、後の分析に問題が生じることがあった。例えば、回収された生体小分子溶液を、ELISAのようなアフィニティー分析に供する場合、抗体やアプタマー等の生体小分子に対するアフィニティーが、生体小分子溶液中の有機溶媒濃度に依存して変化してしまい、分析結果の正確性や再現性に影響が出るおそれがある。これに対して、本発明に係るモノリス型シリカカラムでは、タンパク質及び生体小分子の吸着が起こり難いため、有機溶媒を含まないバッファー(もしくは有機溶媒濃度が低いバッファー)を用いることができ、回収された生体小分子溶液中に含まれる有機溶媒によって後の分析が影響を受けることがない。」(段落0037?0038)

エ 甲6の記載事項
甲6ア 「グリコペプチド(glycopeptide):ペプチドを構成するアミノ酸の側鎖に糖鎖が付加したペプチドであり、生理活性ペプチドなどにしばしば見出される。」(左上欄第1?3行目)。

オ 甲7の記載事項
甲7ア 「特に、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)は、バイオインスパイアードバイオメンブレン構造で調製されており、さまざまなポリマーの製造に使用できるため、そのようなモノマーの1つである。アクリレート基とホスホリルコリン基の間のエタン結合が短いため、最終的なポリマーはHILIC特性を示し得た。Jiang et alは多孔性シリカ粒子の表面上へのMPCのグラフト重合により、新しいPCタイプの両性イオン固定相を合成した[22]。製造された充填HPLCカラムは、固定相と分析対象物間の親水性相互作用と弱い静電相互作用に基づいて、小ペプチドに対して良好な分離を示した。」(第2439頁右欄第22行目?第2440頁左欄第7行目)

カ 甲8の記載事項
甲8ア 「本発明は、担体と、前記担体に結合した少なくとも1つの両性イオン配位子とを含む両性イオン固定相に関し、前記相は、親水性相互作用モードでのHPLC分離に適しており、前記両性イオン配位子の正に帯電した部分は、リガンドの末端に位置し、および前記両性イオンリガンドの負に帯電した部分は、正に帯電した部分と前記両性イオンリガンドの前記担体に直接結合する部分、または担体に結合したポリマー骨格との間に位置し、ここで負に帯電した部分間の分子内距離 両性イオン配位子の長さは、好ましくは多くても10原子長である。本発明はまた、前記両性イオン固定相を生成するための方法およびその相をHPLC分離において使用するための方法を提供する。」(要約)

甲8イ 「

スキーム1 両性イオン固定相KS-polyMPCの作製に用いた合成ステップ
」(スキーム1)

キ 甲9の記載事項
甲9ア 「多孔性シリカ粒子表面への2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンのグラフト重合により、新規ホスホリルコリン型両性イオン固定相を合成した。」(要約第1?2行目)

甲9イ 「いくつかのペプチドの分離を、親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)分離モードの充填カラムで調査した。小ペプチドは、固定相と分析対象物間の親水性相互作用とイオン性相互作用に基づいて分離できることが示された。」(要約第5?7行目)。

ク 甲10の記載事項
甲10ア 「不溶性担体にホスホリルコリン基を有する化合物が結合していることを特徴とするC反応性蛋白の体液浄化用吸着材。」(請求項1)

3.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての合議体の判断
(1)申立理由1(甲1を主引例とした場合の新規性進歩性欠如)について
ア 甲1発明の認定
甲1には、糖鎖異性体分子および糖ペプチド異性体分子から成る群から選ばれる少なくとも2種の分子を含む試料を、陰イオン及び陽イオン交換基を有する固定相を用いたカラムに供給し、前記試料に含まれる前記糖鎖異性体分子をカラムから溶出させて分離し、分離した分子を分析することを含む、糖鎖異性体分子の分離分析方法が記載されており(上記摘記事項甲1ア)、当該方法には、陰イオン及び陽イオン交換基を有する固定相を用いたカラムを使用して、糖鎖異性体分子を分離する工程が含まれている。
そして、甲1の実施例1には、当該陰イオン及び陽イオン交換基の具体例として、N,N-ジメチル-N-メタクリロイルオキシエチル-N-(3-スルホプロピル)アンモニウムベタインが記載されている(上記摘記事項甲1エ)。
したがって、甲1には、以下の発明が記載されていると認める。
「糖鎖異性体分子および糖ペプチド異性体分子から成る群から選ばれる少なくとも2種の分子を含む試料から前記糖鎖異性体分子を分離するカラムに用いられている固定相が有する、陰イオン及び陽イオン交換基であるN,N-ジメチル-N-メタクリロイルオキシエチル-N-(3-スルホプロピル)アンモニウムベタイン。」(以下、「甲1発明」という。)

イ 本件訂正発明1と甲1発明の対比・判断
本件訂正発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「陰イオン及び陽イオン交換基」は、特許請求の範囲の請求項1において、カラムの固定相が有する官能基として特定されているものであるから(上記摘記事項甲1ア)、糖鎖異性体分子を分離する際の「有効成分」であると認める。そして、甲1発明の「陰イオン及び陽イオン交換基」が、糖鎖異性体分子を分離する際の「有効成分」であることは、上記摘記事項甲1カの記載内容とも矛盾しない。
また、糖鎖異性体分子および糖ペプチド異性体分子から成る群から選ばれる少なくとも2種の分子を含む試料からの糖鎖異性体分子の「分離」は、「精製」と同じ意味であるから、甲1発明の「陰イオン及び陽イオン交換基であるN,N-ジメチル-N-メタクリロイルオキシエチル-N-(3-スルホプロピル)アンモニウムベタイン」は、「糖鎖の精製剤」であると認める。
そして、甲1発明の「N,N-ジメチル-N-メタクリロイルオキシエチル-N-(3-スルホプロピル)アンモニウムベタインを共有結合させたもの」は、ベタイン構造を有する化合物であり、アニオン部位、カチオン部位及びリンカーを有し、前記アニオン部位は、スルホン酸基であり、前記カチオン部位は、4級アンモニウム基であり、前記アニオン部位と前記カチオン部位を連結するリンカーは炭素数3のアルキレン基であると認める。
よって、本件訂正発明1と甲1発明の一致点、相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「ベタイン構造を有する化合物を有効成分として含有し、
前記ベタイン構造はアニオン部位、カチオン部位及びリンカーを有し、
前記アニオン部位は、スルホン酸基であり、
前記カチオン部位は、4級アンモニウム基であり、
前記アニオン部位と前記カチオン部位を連結するリンカーは炭素数3のアルキレン基である、
糖鎖の精製剤。」
<相違点>
精製する糖鎖の種類が、本件訂正発明1は「O結合型糖鎖」に特定されているのに対し、甲1発明ではそのような特定がなされていない点(以下、「相違点1」という。)。
ベタイン構造を有する化合物が、本件訂正発明1は、「ベタイン構造を有する側鎖が主鎖に結合したポリマー」に特定されているのに対し、甲1発明ではそのような特定がなされていない点(以下、「相違点2」という。)。

上記相違点1について検討する。
甲1には、O結合型糖鎖を精製できることは記載されていない。また、甲1には、実施例において、分子量が大きな糖ペプチド異性体分離ができるのが、甲1発明の特徴であることが記載されているが(上記摘記事項甲1エ)、O結合型糖鎖のように、分子量の小さな糖鎖を分離できることについては、記載も示唆もない。
そうすると、甲1の記載からは、「O結合型糖鎖」の精製剤が記載されているとは認められないから、本件訂正発明1が甲1に記載された発明であるとはいえない。
また、甲1には、分子量が大きな糖ペプチド異性体分離ができるのが、甲1発明の特徴であることが記載されているが(上記摘記事項甲1エ)、O結合型糖鎖は、糖ペプチドと構成要素が異なり(O結合型糖鎖は、糖鎖のみから構成されるのに対し、糖ペプチドは糖とペプチドで構成されている)、また分子量も大きく異なるものである。
そうすると、甲1発明において、甲3などの甲1以外の甲号証を参酌しても、精製する糖鎖の種類を「O結合型糖鎖」とする動機付けはない。
したがって、上記相違点1は実質的な相違点であるから、本件訂正発明1は甲1発明ではなく、また、当該相違点1をかえる動機付けはないから、上記相違点2について検討するまでもなく、他の甲号証に記載の事項を組み合わせてみても、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ここで、令和3年3月24日付け意見書において、申立人は、特許権者が提出した令和3年1月26日付け意見書において、本件特許明細書における、本件特許発明の精製剤が、グルコースの単糖や二糖のような小さい糖鎖も精製できることを示す実施例3について記載された箇所(【0152】、図5)が引用されていることを根拠に、令和3年1月26日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項に係る発明の「O結合型糖鎖」は、本件特許明細書の【0085】に記載されている、セリン及びスレオニン等と結合するO?グリコシド結合糖鎖(O型糖鎖)のみではなく、グルコースのオリゴマーのようなモデル糖鎖をも含む概念であると主張している。
そして、令和3年1月26日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項に係る発明の「O結合型糖鎖」が、グルコースのオリゴマーのようなモデル糖鎖をも含む概念であるから、甲1発明、甲2発明に対し、依然として新規性進歩性を有しないことを主張している。
しかしながら、本件特許明細書の【0085】に、「糖鎖としては、単糖及びその誘導体、多糖類、糖タンパク質、並びに、糖ペプチド・・・等の複合糖質から遊離又は誘導された糖鎖等が挙げられる・・・ここで、糖タンパク質を構成する糖鎖は、主にアスパラギン残基に糖鎖が結合するN-グリコシド結合糖鎖(N型糖鎖)、及び、セリン及びスレオニン等と結合するO-グリコシド結合糖鎖(O型糖鎖)の2種類に大別される。」と記載されていることからも理解されるとおり、本件訂正発明1に記載の「O結合型糖鎖」とは、セリン及びスレオニン等とO-グリコシド結合で結合する糖鎖を意味し、グルコースのオリゴマーのようなモデル糖鎖は含まれない。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。

ウ 本件訂正発明2?14について
本件訂正発明2?14は、いずれも本件訂正発明1を直接的又は間接的に引用している。
そうすると、本件訂正発明2?14と甲1発明の相違点には、上記相違点1が含まれ、上記イに記載したとおり、上記相違点1は、本件訂正発明2?14と甲1発明の実質的な相違点であり、また、甲1発明において、甲1以外の甲号証や周知慣用技術を参酌して、精製する糖鎖の種類を「O結合型糖鎖」とする動機付けもない。
したがって、本件訂正発明2?14は、甲1発明ではなく、また、甲1以外の甲号証に記載の事項を組み合わせてみても、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

エ 小括
よって、申立理由1により、本件訂正発明を取り消すことはできない。

(2)申立理由2(甲2を主引例とした場合の新規性進歩性欠如)について
ア 甲2発明の認定
甲2は、多孔性シリカ粒子を基礎とする両性イオンスルホベタイン官能化ポリアクリルアミド固定相(TENS)の合成、及び、当該両性イオンスルホベタイン官能化ポリアクリルアミド固定相(TENS)を用いた糖サンプルの分離について報告されており(上記摘記事項甲2ア)、その「2.材料と方法」の項及び「3.結果と考察」の項には、「熱開始剤(AIBA)とRAFT剤(CPA_DB)の存在下において、SH-シリカの表面で3-(2-アクリルアミド-エチルジメチルアンモニオ)プロパンスルホネート(AEDAPS)の重合が開始され、親水性ポリアクリルアミド骨格と両性イオン性スルホベタイン側鎖を持つように設計された両性イオンスルホベタイン官能化ポリアクリルアミド固定相(TENS)が得られたこと、両性イオンスルホベタイン官能化ポリアクリルアミドがシリカ粒子上にうまくグラフトされたことが記載されている(上記摘記事項甲2イ、ウ、オ、カ)。
また、甲2には、その「3.結果と考察」の項に、TENSカラムで、重合度の異なるフラクトオリゴ糖の分離と結合様式の異なる三糖類の異性体の分離を行ったこと(上記摘記事項甲2ク)が記載されている。
したがって、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。
「重合度の異なるフラクトオリゴ糖の分離と結合様式の異なる三糖類の異性体の分離を行う際に使用する、両性イオンスルホベタイン官能化ポリアクリルアミド固定相(TENS)のSHシリカ粒子上にグラフトされた3-(2-アクリルアミド-エチルジメチルアンモニオ)プロパンスルホネート(AEDAPS)の重合体。」(以下、甲2発明という。)

イ 本件訂正発明1と甲2発明の対比・判断
本件訂正発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「3-(2-アクリルアミド-エチルジメチルアンモニオ)プロパンスルホネート(AEDAPS)の重合体」は、SHシリカ粒子の表面に存在し、かつ、ベタイン構造を有することから、フラクトオリゴ糖、三糖類と結合すると認める。すなわち、甲2発明の「3-(2-アクリルアミド-エチルジメチルアンモニオ)プロパンスルホネート(AEDAPS)の重合体」は、フラクトオリゴ糖や三糖類の分離を行う際の「有効成分」であると認める。
また、フラクトオリゴ糖、三糖類は、いずれも糖鎖である。そして重合度の異なるフラクトオリゴ糖の「分離」、及び、結合様式の異なる三糖類の異性体の「分離」は、いずれも「精製」と同じである。そうすると、甲2発明の「3-(2-アクリルアミド-エチルジメチルアンモニオ)プロパンスルホネート(AEDAPS)の重合体」は、「糖鎖の精製剤」であると認める。
そして、甲2発明の「3-(2-アクリルアミド-エチルジメチルアンモニオ)プロパンスルホネート(AEDAPS)の重合体」は、ベタイン構造を有する化合物であり、アニオン部位、カチオン部位及びリンカーを有し、前記アニオン部位は、スルホン酸基であり、前記カチオン部位は、4級アンモニウム基であり、前記アニオン部位と前記カチオン部位を連結するリンカーは炭素数3のアルキレン基であり、前記ベタイン構造を有する側鎖が主鎖に結合したポリマーであると認める。
よって、本件訂正発明1と甲2発明の一致点、相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「ベタイン構造を有する化合物を有効成分として含有し、
前記ベタイン構造はアニオン部位、カチオン部位及びリンカーを有し、
前記アニオン部位は、スルホン酸基であり、
前記カチオン部位は、4級アンモニウム基であり、
前記アニオン部位と前記カチオン部位を連結するリンカーは炭素数3のアルキレン基であり、
前記化合物が、前記ベタイン構造を有する側鎖が主鎖に結合したポリマーである、
糖鎖の精製剤。」
<相違点>
精製する糖鎖の種類が、本件訂正発明1は「O結合型糖鎖」に特定されているのに対し、甲2発明ではそのような特定がなされていない点(以下、「相違点3」という。)。

上記相違点3について検討する。
甲2には、フラクトオリゴ糖や三糖類を精製することは記載されているが(上記摘記事項甲2ア)、O結合型糖鎖を精製することについては記載も示唆も無い。
そうすると、甲2の記載からは「O結合型糖鎖」の精製剤が記載されているとは認められないから、本件訂正発明1が甲2に記載された発明であるとはいえない。
また、甲2以外の甲号証の記載内容を検討すると、甲3には、O?結合型糖鎖の精製剤を含むものであることが記載されているが、当該甲3の精製剤は、第4 2.(3)に説示したとおり、甲4に記載されている、アニオン部位がリン酸基であり、カチオン部位が4級アンモニウム基であり、前記アニオン部位と前記カチオン部位を連結するリンカーが炭素数2のアルキレン基である、ベタイン構造を有する化合物であり、甲2発明の「SHシリカ粒子上にグラフトされた3-(2-アクリルアミド-エチルジメチルアンモニオ)プロパンスルホネート(AEDAPS)の重合体」と、官能基の種類や構造式が大きく異なる。
そうすると、甲2発明において、甲3などの甲2以外の甲号証を参酌しても、精製する糖鎖の種類を「O結合型特鎖」とする動機付けはない。
したがって、上記相違点3は、実質的な相違点であって、本件訂正発明1は甲2発明ではなく、また、上述のとおり、当該相違点3をかえる動機付けはないから、他の甲号証に記載の事項を組み合わせてみても、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 本件訂正発明2、4?12について
本件訂正発明2、4?12は、いずれも本件訂正発明1を直接的又は間接的に引用している。
そうすると、本件訂正発明2、4?12と甲2発明の相違点には、上記相違点1が含まれ、上記イに記載したとおり、上記相違点1は、本件訂正発明2、4?12と甲2発明の実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明2、4?12は、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

エ 小括
よって、申立理由2により、本件訂正発明を取り消すことはできない。

(3)申立理由4(特許法第36条第4項第1号、同法同条第6項第1号違反)について
申立人は、特許異議申立書の3(5)アにおいて、本件特許明細書の【0010】に、「本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ベタイン構造を有する側鎖が主鎖に結合しているポリマーを、不溶性支持体に固定することにより、当該担体の親水度を効率的に高められることを見出した」ことが記載されているのに対し、本件特許発明1では、不溶性支持体が特定されていないから、本件特許発明は課題を解決できないと主張しているので、以下、検討する。
本件訂正発明が解決しようとする課題は、本件特許明細書の【0009】の記載及び本件訂正発明1からみて、O結合型糖鎖を特異的かつ効率的に捕捉可能な技術、簡便な操作で、O結合型糖鎖を効率的、高純度かつ高濃度に濃縮できる技術を提供することであると認める。
そして、本件特許明細書には、本件訂正発明に記載のポリマーがO結合型糖鎖の精製に用いられることが記載され、そのポリマーがベタイン構造を有することにより親水度が非常に高められ、親水性相互作用により親水度の高い糖鎖を強く保持できること(【0046】)、精製剤は、親水度が非常に向上しているため、親水度が高い糖鎖に対して親和性を有し、親水度が低いペプチドや脂質等に対しての親和性が低いことによって、糖鎖を特異的かつ効率的に捕捉し濃縮できること(【0105】)、本実施形態に係る精製剤で、分子量が小さなO結合型糖鎖を特異的かつ効率的に濃縮できること(【0084】?【0085】)が記載されていることから、ベタイン構造を有する化合物が、親水性相互作用により、親水度の高いO結合型糖鎖を強く保持し、O結合型糖鎖を特異的かつ効率的に捕捉し濃縮する「O結合型糖鎖の精製剤」の有効成分として機能することが記載されていると認められる。
そうすると、本件訂正発明1において、精製剤が存在すれば、それが不溶性支持体に固定されていなくても、本件訂正発明が上記課題を解決できるものであることは、本件特許明細書に記載されていると認める。
したがって、本件訂正発明1?14は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものである。

また、申立人は、特許異議申立書の3(5)ウ、エにおいて、本件特許発明6、7の構成要件である「不溶性支持体」は、本件特許明細書に記載された比較例1の「セファロースビーズ」を含むから、本件特許発明6、7は、課題を解決できない範囲を含むと主張しているので、以下検討する。
本件訂正発明6、7は、「・・・精製剤が、不溶性支持体に固定された、O結合型糖鎖の精製用担体。」というものである。そして、不溶性支持体が何であれ、精製剤が固定されている以上、課題が解決できることは明らかである。
そして、本件訂正発明6、7が課題を解決できるかどうかではなく、本件訂正発明6、7の構成要件の一つである「不溶性支持体」がそれだけで課題を解決できるかどうかは、本件訂正発明6、7が、特許法第36条第6項第1号を満たすかどうかとは関係ない。
したがって、本件訂正発明6、7は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものである。

そして、上述のとおり、本件訂正発明1?14は、本件特許明細書に、当業者が課題を解決できるように記載されたものであるから、本件特許明細書は、当業者が本件訂正発明1?14を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものでもある。
したがって、本件訂正発明1?14は、特許法第36条第4項第1号の規定も満たすものである。

ウ 小括
よって、申立理由4により、本件訂正発明を取り消すことはできない。


第6 むすび

以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1?3、5?14に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1?3、5?14に係る特許取り消すべき理由を発見できない。
さらに、本件特許の請求項4に係る特許に対する特許異議の申立てについては、本件特許の請求項4が本件訂正により削除されたことにより、申立ての対象が存在しないものとなったため、不適法な特許異議の申立てであって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベタイン構造を有する化合物を有効成分として含有し、
前記ベタイン構造はアニオン部位、カチオン部位及びリンカーを有し、
前記アニオン部位は、リン酸基、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群より選択される基であり、
前記カチオン部位は、4級アンモニウム基であり、
前記アニオン部位と前記カチオン部位を連結するリンカーは炭素数1?4のアルキレン基であり、
前記化合物が、前記ベタイン構造を有する側鎖が主鎖に結合したポリマーである、
O結合型糖鎖の精製剤。
【請求項2】
前記アニオン部位がリン酸基である、請求項1に記載の精製剤。
【請求項3】
前記ベタイン構造が、ホスホリルコリン基である、請求項1又は2に記載の精製剤。
【請求項4】
(削 除)
【請求項5】
前記ポリマーが、(メタ)アクリル化合物を含む単量体の重合体である、請求項1?3のいずれか1項に記載の精製剤。
【請求項6】
請求項1?3のいずれか一項に記載の精製剤が、不溶性支持体に固定された、O結合型糖鎖の精製用担体。
【請求項7】
請求項5に記載の精製剤が、不溶性支持体に固定された、O結合型糖鎖の精製用担体。
【請求項8】
前記不溶性支持体に固定された前記ポリマーの重量が、前記不溶性支持体の単位表面積(m^(2))当たり0.5mg?1.5mgである、請求項7に記載の精製用担体。
【請求項9】
前記不溶性支持体が、無機物質により構成されている、請求項6?8に記載の精製用担体。
【請求項10】
比重が、1.05?3.00である、請求項6?9のいずれか一項に記載の精製用担体。
【請求項11】
形状が球状であり、平均粒径が0.5μm?100μmである、請求項6?10のいずれか一項に記載の精製用担体。
【請求項12】
請求項1?3、5のいずれか一項に記載の精製剤又は請求項6?11のいずれか一項に記載の精製用担体と、O結合型糖鎖と有機溶剤を含む試料とを接触させ、前記精製剤又は精製用担体に前記O結合型糖鎖を吸着させることと、
前記精製剤又は精製用担体を水に接触させ、前記O結合型糖鎖を溶出させることと、を含む、
O結合型糖鎖の精製方法。
【請求項13】
請求項1?3、5のいずれか一項に記載の精製剤又は請求項6?11のいずれか一項に記載の精製用担体、及び、キット使用のためのプロトコル情報を含む、O結合型糖鎖精製のためのキット。
【請求項14】
請求項1?3、5のいずれか一項に記載の精製剤又は請求項8?11のいずれか一項に記載の精製用担体を収容した容器を保持する容器保持部と、
前記容器に試薬類を導入する試薬導入部と、
を備える、O結合型糖鎖精製のための装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-07-15 
出願番号 特願2019-537017(P2019-537017)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C07K)
P 1 651・ 113- YAA (C07K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田ノ上 拓自  
特許庁審判長 長井 啓子
特許庁審判官 田村 聖子
一宮 里枝
登録日 2020-03-02 
登録番号 特許第6669314号(P6669314)
権利者 住友ベークライト株式会社
発明の名称 糖鎖又は糖ペプチドの精製剤及びその使用  
代理人 福原 直志  
代理人 飯田 雅人  
代理人 福原 直志  
代理人 飯田 雅人  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 棚井 澄雄  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ