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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F16L
審判 全部申し立て 特17条の2、3項新規事項追加の補正  F16L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F16L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F16L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F16L
管理番号 1377792
異議申立番号 異議2020-700177  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-03-16 
確定日 2021-07-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6581749号発明「発泡管継手及び配管構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6581749号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、6について訂正することを認める。 特許第6581749号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6581749号の請求項1?6に係る特許についての出願は、2018年9月27日(優先権主張 2017年9月29日)を国際出願日とする出願であって、令和元年9月6日に特許権の設定登録がされ、同年9月25日に特許掲載公報が発行された。
そのすべての請求項に係る特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和2年 3月16日 :特許異議申立人奥村一正(以下「申立人」という)による特許異議の申立て
同年 6月 3日 :取消理由の通知
(令和2年5月29日付け取消理由通知書)
同年 8月 3日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 9月18日 :申立人による意見書の提出
同年11月10日 :取消理由の通知(決定の予告)
(令和2年10月27日付け取消理由通知書)
令和3年 1月 8日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 3月 4日 :訂正拒絶理由の通知
(令和3年3月2日付け訂正拒絶理由通知書)
同年 3月30日 :特許権者による意見書の提出
同年 5月28日 :申立人による意見書の提出

なお、特許権者が令和2年8月3日に提出した訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の請求についての判断
1 訂正の内容
令和3年1月8日提出の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6581749号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正することを求める。」というものであり、その訂正(以下「本件訂正」という)の内容は以下のとおりである。なお、当審で訂正箇所に下線を付した。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を、
「内部に流路を有する管状の本体部と、前記本体部と一体に形成された1つ以上の受口部と、を有し、
ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第一の樹脂と発泡剤とを含む発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層を覆う非発泡樹脂層とを有し、
前記非発泡樹脂層は、ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第二の樹脂を含み、前記第二の樹脂以外の他の樹脂を含有しても良く、
前記第二の樹脂がアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)であり、
前記他の樹脂がアクリル樹脂であり、
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記発泡樹脂層の前記ゴム成分の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下であり、
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記非発泡樹脂層の前記第二の樹脂のブタジエン成分の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して1質量%以上25質量%以下である、発泡管継手。」
に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2、5の記載についても同様に訂正する。なお、請求項3の記載は、請求項1の記載を引用しないものとなった。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を、
「前記第一の樹脂は、前記シアン化ビニル系単量体単位の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して10質量%以上50質量%以下であり、
前記第一の樹脂は、前記芳香族ビニル系単量体単位の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して15質量%以上60質量%以下であり、
前記第二の樹脂は、前記シアン化ビニル系単量体単位の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して10質量%以上50質量%以下であり、
前記第二の樹脂は、前記芳香族ビニル系単量体単位の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して20質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の発泡管継手。」
に訂正する。
(請求項2の記載を引用する請求項5の記載も同様に訂正する。なお、請求項3の記載は、請求項2の記載を引用しないものとなった。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3のうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「内部に流路を有する管状の本体部と、前記本体部と一体に形成された1つ以上の受口部と、を有する、エルボであって、
前記受口部の受口端部からストッパーまでの長さL1と、前記受口部のストッパー近傍の厚さd1との比が、3.5以上7.7以下であって、
ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第一の樹脂と発泡剤とを含む発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層を覆う非発泡樹脂層とを有し、
前記非発泡樹脂層は、ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第二の樹脂を含み、前記第二の樹脂以外の他の樹脂を含有しても良く、
前記第一の樹脂及び前記第二の樹脂がアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)であり、
前記他の樹脂がアクリル樹脂であり、
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記発泡樹脂層の前記ゴム成分の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下であり、
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記非発泡樹脂層の前記第二樹脂のブタジエン成分の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して1質量%以上25質量%以下である、発泡管継手。」
に訂正する。
(請求項3の記載を引用する請求項5の記載も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を、
「内部に流路を有する管状の本体部と、前記本体部と一体に形成された1つ以上の受口部と、を有し、
前記本体部は、発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層を覆う非発泡樹脂層とを有し、
前記発泡樹脂層は、ブタジエンとアクリロニトリルとスチレンとを含む共重合体である第一の樹脂を含む樹脂組成物であり、かつ、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記第一の樹脂のゴム成分の含有量が、前記発泡樹脂層に含まれる前記第一の樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下であり、
前記非発泡樹脂層は、ブタジエンとアクリロニトリルとスチレンとを含む共重合体である第二の樹脂を含み前記第二の樹脂以外の他の樹脂を含有しても良い樹脂組成物であり、前記樹脂組成物の前記第二の樹脂以外の他の樹脂はアクリル樹脂であり、かつ、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記第二の樹脂のゴム成分の含有量が、前記非発泡樹脂層に含まれる前記第二の樹脂の総質量に対して5質量%以上15質量%以下である、発泡管継手。」
に訂正する。
(請求項4の記載を引用する請求項5の記載も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3のうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、
「内部に流路を有する管状の本体部と、前記本体部の開口部の周縁に形成されたストッパーと、前記本体部及び前記ストッパーと一体に形成された1つ以上の受口部と、を有する、発泡管継手あって、
前記本体部および前記ストッパーは、発泡樹脂層と前記発泡樹脂層の両面を覆う非発泡樹脂層とからなり、
ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第一の樹脂と発泡剤とを含む前記発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層を覆う前記非発泡樹脂層とを有し、
前記発泡樹脂層を覆う前記非発泡樹脂層は、ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第二の樹脂を含み、前記第二の樹脂以外の他の樹脂を含有しても良く、
前記第一の樹脂及び前記第二の樹脂がアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)であり、
前記他の樹脂がアクリル樹脂であり、
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記発泡樹脂層の前記ゴム成分の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下であり、
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記非発泡樹脂層の前記第二樹脂のブタジエン成分の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して1質量%以上25質量%以下であり、
前記第一の樹脂は、前記シアン化ビニル系単量体単位の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して10質量%以上50質量%以下であり、
前記第一の樹脂は、前記芳香族ビニル系単量体単位の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して15質量%以上60質量%以下であり、
前記第二の樹脂は、前記シアン化ビニル系単量体単位の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して10質量%以上50質量%以下であり、
前記第二の樹脂は、前記芳香族ビニル系単量体単位の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して15質量%以上60質量%以下である、発泡管継手。」
に訂正し、新たに請求項6とする。
(6)ここで、本件訂正前の請求項1?3、5は、請求項2、3,5が請求項1の記載を直接的に引用する関係にあり、また、本件訂正前の請求項4、5は、請求項5が請求項4の記載を直接的に引用する関係にあるから、これら請求項1?5は、一群の請求項を構成している。
そうであるところ、特許権者は、本件訂正後の請求項1?5と請求項6は、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている(令和3年1月8日に提出した訂正請求書「7.3)」ウ参照)。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1について、その「非発泡樹脂層」が(ア)「前記第二の樹脂以外の他の樹脂を含有しても良く、」かつ「前記他の樹脂がアクリル樹脂であり、」とするとともに(イ)「前記第二の樹脂がアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)であり、」とし、また、(ウ)「前記非発泡樹脂層の前記ゴム成分の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して1質量%以上30量%以下である」という事項を「前記非発泡樹脂層の前記第二の樹脂のブタジエン成分の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して1質量%以上25質量%以下である」という事項とするものである。
上記(ア)につき、合議体は、実質的に請求項に何ら発明特定事項を付加することにはならないと考えることができるとして、訂正拒絶理由を通知した。
これに対して、特許権者は、「前記非発泡樹脂層」の組成を、「前記第二の樹脂以外の他の樹脂を含有しても良く、前記第二の樹脂がアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)であり、前記他の樹脂がアクリル樹脂であり、」と限定するものであり、「前記第二の樹脂以外の他の樹脂を含有しても良く、」との発明特定事項と「前記他の樹脂がアクリル樹脂であり、」との発明特定事項より、含有しても良い「他の樹脂」が「アクリル樹脂」に限定されている、との意見を示した。
そこで、合議体としてさらに検討を進めたところ、上記(ア)によって、本件発明1における非発泡樹脂層の樹脂とは、第二の樹脂たるABS樹脂のみで構成されるか、第二の樹脂たるABS樹脂とアクリル樹脂のみで構成されるかのいずれかであると解釈できるとの結論に至った。
したがって、上記(ア)は、非発泡樹脂層の樹脂を限定する性格のものと捉えることとする。
上記(イ)は、ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第二の樹脂を限定する性格のものである。
上記(ウ)は、上記(イ)で第二の樹脂が限定されたことに伴って「前記非発泡樹脂層の前記ゴム成分」を「前記非発泡樹脂層の前記第二の樹脂のブタジエン成分」とし、かつ、含有量の範囲を狭めたものであることから、明瞭でない記載を釈明するとともに、発明について限定する性格のものである。
そうしてみると、訂正事項1の目的は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号の規定に該当するものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1により発明のカテゴリー、対象、目的が変更されるものではないから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、その(ア)については本件特許明細書の【0046】、【0047】等の記載に基づくものであり、その(イ)については本件特許明細書の【0022】、【0040】、【0062】等の記載に基づくものであり、その(ウ)については本件特許明細書の【0041】の記載に基づくものであるから、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合する。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2について、その「前記第二の樹脂は、前記芳香族ビニル系単量体単位の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して15質量%以上60質量%以下である」という事項を「前記第二の樹脂は、前記芳香族ビニル系単量体単位の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して20質量%以上50質量%以下である」という事項とするものである。
この訂正事項2は、含有量の範囲を狭めたものであることから、発明について限定する性格のものである。
そうすると、訂正事項2の目的は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項2により発明のカテゴリー、対象、目的が変更されるものではないから、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、本件特許明細書の【0043】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合する。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、本件訂正前の請求項3について、そのうちの請求項1を引用する発明を独立請求項として、訂正事項1と同様の訂正を行った上で、「発泡管継手」が「内部に流路を有する管状の本体部と、前記本体部と一体に形成された1つ以上の受口部と、を有し、」とされていたものを「内部に流路を有する管状の本体部と、前記本体部と一体に形成された1つ以上の受口部と、を有する、エルボであって、前記受口部の受口端部からストッパーまでの長さL1と、前記受口部のストッパー近傍の厚さd1との比が、3.5以上7.7以下」と限定するものであるから、訂正事項3の目的は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号の規定に該当するものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項3により発明のカテゴリー、対象、目的が変更されるものではないから、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3のうち「内部に流路を有する管状の本体部と、前記本体部と一体に形成された1つ以上の受口部と、を有する、エルボであって、前記受口部の受口端部からストッパーまでの長さL1と、前記受口部のストッパー近傍の厚さd1との比が、3.5以上7.7以下」は、本件特許明細書の【0057】、【0072】(【表2】)、【0073】(【表3】)等の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合する。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、本件訂正前の請求項4について、(ア)その「発泡樹脂層」を「ブタジエンとアクリロニトリルとスチレンとを含む共重合体である第一の樹脂を含む樹脂組成物であり、かつ、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記第一の樹脂のゴム成分の含有量が、前記発泡樹脂層に含まれる前記第一の樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下であり、」とし、さらに、(イ)「非発泡樹脂層」を「ブタジエンとアクリロニトリルとスチレンとを含む共重合体である第二の樹脂を含み前記第二の樹脂以外の他の樹脂を含有しても良い樹脂組成物であり、前記樹脂組成物の前記第二の樹脂以外の他の樹脂はアクリル樹脂であり、かつ、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記第二の樹脂のゴム成分の含有量が、前記非発泡樹脂層に含まれる前記第二の樹脂の総質量に対して5質量%以上15質量%以下である、」とするものである。
上記(ア)は、発泡樹脂層が樹脂組成物であることを明らかにするとともに、含まれる樹脂を限定し、さらに、発明特定事項とされたゴム成分の含有量が第一の樹脂に含まれるゴム成分のものであることを明らかにするものであるから、明瞭でない記載を釈明するとともに、発明について限定する性格のものである。
上記(イ)は、上記(ア)と同様に、非発泡樹脂層が樹脂組成物であることを明らかにし、含まれる樹脂を限定し、発明特定事項とされたゴム成分の含有量が第二の樹脂に含まれるゴム成分のものであることを明らかにし、さらに、訂正事項1の(ア)と同様に、非発泡樹脂層の樹脂には、第二の樹脂とアクリル樹脂のみが含まれる場合と、第二の樹脂のみが含まれる場合があるように非発泡樹脂層を限定するものである。
そうしてみると、訂正事項4の目的は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号の規定に該当するものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項4により発明のカテゴリー、対象、目的が変更されるものではないから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、その(ア)については本件特許明細書の【0022】、【0023】、【0062】等の記載に基づくものであり、その(イ)については本件特許明細書の【0040】、【0041】、【0046】、【0047】、【0062】等の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合する。

(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5は、本件訂正前の請求項3について、そのうちの請求項2を引用する発明を独立請求項として、訂正事項1と同様の訂正を行った上で、「内部に流路を有する管状の本体部と、前記本体部と一体に形成された1つ以上の受口部と、を有し、」とされていた「発泡管継手」を「内部に流路を有する管状の本体部と、前記本体部の開口部の周縁に形成されたストッパーと、前記本体部及び前記ストッパーと一体に形成された1つ以上の受口部と、を有する、」と限定し、「発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層を覆う非発泡樹脂層」について「前記本体部および前記ストッパーは、発泡樹脂層と前記発泡樹脂層の両面を覆う非発泡樹脂層とからなり、」と限定するものであるから、訂正事項5の目的は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号の規定に該当するものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項5により発明のカテゴリー、対象、目的が変更されるものではないから、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5のうちの「内部に流路を有する管状の本体部と、前記本体部の開口部の周縁に形成されたストッパーと、前記本体部及び前記ストッパーと一体に形成された1つ以上の受口部と、を有する、発泡管継手あって、前記本体部および前記ストッパーは、発泡樹脂層と前記発泡樹脂層の両面を覆う非発泡樹脂層とからなり、」は、本件特許明細書の【0011】?【0014】、図2、図3等の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合する。

(6)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?5〕、6について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正を認めることができるので、本件特許の請求項1?6に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(これらの各発明を以下「本件発明1」のようにいう)。
「【請求項1】
内部に流路を有する管状の本体部と、前記本体部と一体に形成された1つ以上の受口部と、を有し、
ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第一の樹脂と発泡剤とを含む発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層を覆う非発泡樹脂層とを有し、
前記非発泡樹脂層は、ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第二の樹脂を含み、前記第二の樹脂以外の他の樹脂を含有しても良く、
前記第二の樹脂がアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)であり、
前記他の樹脂がアクリル樹脂であり、
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記発泡樹脂層の前記ゴム成分の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下であり、
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記非発泡樹脂層の前記第二の樹脂のブタジエン成分の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して1質量%以上25質量%以下である、発泡管継手。
【請求項2】
前記第一の樹脂は、前記シアン化ビニル系単量体単位の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して10質量%以上50質量%以下であり、
前記第一の樹脂は、前記芳香族ビニル系単量体単位の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して15質量%以上60質量%以下であり、
前記第二の樹脂は、前記シアン化ビニル系単量体単位の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して10質量%以上50質量%以下であり、
前記第二の樹脂は、前記芳香族ビニル系単量体単位の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して20質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の発泡管継手。
【請求項3】
内部に流路を有する管状の本体部と、前記本体部と一体に形成された1つ以上の受口部と、を有する、エルボであって、
前記受口部の受口端部からストッパーまでの長さL1と、前記受口部のストッパー近傍の厚さd1との比が、3.5以上7.7以下であって、
ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第一の樹脂と発泡剤とを含む発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層を覆う非発泡樹脂層とを有し、
前記非発泡樹脂層は、ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第二の樹脂を含み、前記第二の樹脂以外の他の樹脂を含有しても良く、
前記第一の樹脂及び前記第二の樹脂がアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)であり、
前記他の樹脂がアクリル樹脂であり、
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記発泡樹脂層の前記ゴム成分の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下であり、
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記非発泡樹脂層の前記第二樹脂のブタジエン成分の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して1質量%以上25質量%以下である、発泡管継手。
【請求項4】
内部に流路を有する管状の本体部と、前記本体部と一体に形成された1つ以上の受口部と、を有し、
前記本体部は、発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層を覆う非発泡樹脂層とを有し、
前記発泡樹脂層は、ブタジエンとアクリロニトリルとスチレンとを含む共重合体である第一の樹脂を含む樹脂組成物であり、かつ、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記第一の樹脂のゴム成分の含有量が、前記発泡樹脂層に含まれる前記第一の樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下であり、
前記非発泡樹脂層は、ブタジエンとアクリロニトリルとスチレンとを含む共重合体である第二の樹脂を含み前記第二の樹脂以外の他の樹脂を含有しても良い樹脂組成物であり、前記樹脂組成物の前記第二の樹脂以外の他の樹脂はアクリル樹脂であり、かつ、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記第二の樹脂のゴム成分の含有量が、前記非発泡樹脂層に含まれる前記第二の樹脂の総質量に対して5質量%以上15質量%以下である、発泡管継手。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか一項に記載の発泡管継手と、前記発泡管継手の受口部に挿入接続される管部材と、を備える配管構造。
【請求項6】
内部に流路を有する管状の本体部と、前記本体部の開口部の周縁に形成されたストッパーと、前記本体部及び前記ストッパーと一体に形成された1つ以上の受口部と、を有する、発泡管継手あって、
前記本体部および前記ストッパーは、発泡樹脂層と前記発泡樹脂層の両面を覆う非発泡樹脂層とからなり、
ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第一の樹脂と発泡剤とを含む前記発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層を覆う前記非発泡樹脂層とを有し、
前記発泡樹脂層を覆う前記非発泡樹脂層は、ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第二の樹脂を含み、前記第二の樹脂以外の他の樹脂を含有しても良く、
前記第一の樹脂及び前記第二の樹脂がアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)であり、
前記他の樹脂がアクリル樹脂であり、
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記発泡樹脂層の前記ゴム成分の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下であり、
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記非発泡樹脂層の前記第二樹脂のブタジエン成分の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して1質量%以上25質量%以下であり、
前記第一の樹脂は、前記シアン化ビニル系単量体単位の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して10質量%以上50質量%以下であり、
前記第一の樹脂は、前記芳香族ビニル系単量体単位の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して15質量%以上60質量%以下であり、
前記第二の樹脂は、前記シアン化ビニル系単量体単位の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して10質量%以上50質量%以下であり、
前記第二の樹脂は、前記芳香族ビニル系単量体単位の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して15質量%以上60質量%以下である、発泡管継手。」

第4 当審の判断
1 取消理由の概要
本件訂正前の本件特許に対して令和2年11月10日に通知した取消理由(令和2年10月27日付け取消理由通知書<決定の予告>)の概要は、以下のとおりである。
・(進歩性) 請求項1?5に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の甲第1号証に記載された発明、甲第2、7号証記載の事項及び周知の事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
・(新規事項) 令和元年7月31日付けでされた請求項4の「前記発泡樹脂層の前記ゴム成分の含有量が、前記発泡樹脂層に含まれる樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下であ」ること、及び「前記非発泡樹脂層の前記ゴム成分の含有量が、前記非発泡樹脂層に含まれる樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下である」との事項についての手続補正は、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内のものではないから、請求項4に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
・(サポート要件) 請求項1?5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許明細書に記載された範囲のものでないため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
・(明確性要件) 請求項1?5に係る特許は、請求項1及び4の記載の「伸縮性疲労試験」及び「ゴム成分の含有量」が明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
・(実施可能要件) 請求項1?5に係る特許は、明細書の記載が、請求項1及び4の「下記伸縮疲労試験により伸縮破断するまでの回数が200回以上である」発泡管継手を当業者が実施できる程度に記載していないため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。



甲第1号証:特許第3699579号公報
甲第2号証:実用プラスチック事典編集委員会編、「実用プラスチック事典」、株式会社産業調査会、第2刷 1994年1月5日、p.96、97、102?105
甲第3号証:「プラスチック・機能性高分子材料事典」編集委員会編、「プラスチック・機能性高分子材料事典」、産業調査会 事典出版センター、初版第2刷 2005年8月1日、p.110?113
甲第4号証:特開昭49-15796号公報
甲第5号証:特公昭47-31420号公報
甲第6号証:特許第3374947号公報
甲第7号証:特公昭55-9412号公報
甲第8号証:特開昭49-52852号公報
甲第9号証:森本章夫、‘連載講座 合成ゴムとその製造方法(第9回) ABS樹脂とその製法’、日本ゴム協会誌1972年、45巻、6号、p.570?574
甲第10号証:高分子機械材料委員会編、「ABS樹脂」、丸善株式会社、昭和45年8月31日、p.21?45、82?89、92?99、120?123
甲第11号証:「エンジニアリングプラスチック ?その解説と物性表?」、化学工業日報社、昭和58年3月15日、p.325?331
甲第12号証:積水化学工業株式会社の総合カタログ「建物配管用 エスロンパイプ」、改訂33版、2016年5月、p.21、22
甲第13号証:特開2017-155868号公報
(これらの各甲号証を以下単に「甲1」等という)

なお、申立人は、令和2年9月18日に提出された意見書に添付して次の参考文献を提出した。
参考文献1:特開2007-198534号公報
参考文献2:特開2007-333067号公報
参考文献3:特開2011-2012号公報

2 令和2年10月27日付けで通知した取消理由についての判断
(1)本件発明1?6の進歩性について
ア 甲1に記載された発明
甲1には、以下の記載がある。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲する流路を有する本体部に連続して設けられた他の配管材が接続される接続部が中実とされると共に、この流路の内側コーナー部およびその近傍に当たる本体部壁が中実に形成され、前記本体部の内部に発泡樹脂からなる断熱層を備え、この断熱層を囲繞する前記本体部の内外壁と前記接続部とが射出成形により一体成形され、前記本体部の内外壁間の厚みが前記接続部の内外壁間の厚みの2倍以上である断熱層付き管継手。」
・「【0009】
本発明において使用できる樹脂は、特に限定されないが、たとえば、ポリ塩化ビニル,ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂,AES(アクリロニトリル-EPDM(エチレン-プロピレンゴム)-スチレン)樹脂,ポリエチレン,ポリプロピレン,アクリル樹脂等が挙げられる。」
・「【0021】
このエルボAは、以上のように、本体部1aの内外壁14a,15aおよび受口2a,2aが非発泡性溶融樹脂7によって一体成形されているので、本体部1aの内外壁14a,15aに十分な強度がある。また、本体部1aの範囲内の内部に発泡樹脂からなる断熱層13を備えているため、十分な断熱効果も備えている。」
・「【0029】
(実施例1)
非発泡性樹脂としてポリ塩化ビニル、発泡性樹脂としてポリ塩化ビニルに発泡剤としてアゾジカルボアミド(大塚化学社製AZ-HM)を混合したものを用い、図3?図7に示す製造方法で、受口が非発泡性樹脂のみからなり中実で、受口の内外壁面間の厚みが3mm、本体部の内外壁間の厚みが8mm、発泡倍率2.0倍の発泡ポリ塩化ビニル断熱層を有する図1に示すようなφ30のDV継手タイプのエルボを成形した。
【0030】
(実施例2)
非発泡性樹脂としてABS樹脂(デンカ社製CL-301Q)を用いた以外は、実施例1と同様にしてφ30のDV継手タイプのエルボを成形した。」
・「図1



・「図2



上記を総合すると、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という)が記載されているといえる。
「屈曲する流路を有する本体部と、前記本体部に連続して設けられた他の配管材が接続される接続部と、を有する、エルボであって、
前記本体部の内部に発泡樹脂からなる断熱層を備え、この断熱層を囲繞する前記本体部の内外壁と前記接続部とが非発泡性溶融樹脂によって射出成形により一体成形された断熱層付き管継手。」

イ 甲2?甲13に記載された事項
(ア)甲2
・「ABS樹脂中のゴム成分の含有率は、一般的には10?30%である」こと(97頁9?10行)。
・「ABS樹脂におけるアクリロニトリル/ブタジエン/スチレンの組成比は・・・通常のABS樹脂では、20?30/10?30/40?70重量%の範囲内」であること(102頁右欄最終行?103頁左欄4行)。
・ABS樹脂の組成と耐薬品性等の性質との関係(104頁、表7-5)。
・「ポリブタジエン含量が10%未満の領域では、衝撃強さの発現が充分でなく、またその値は安定しない。ポリブタジエン含量が10?20%の領域では、衝撃強さはゴム含量とともに直線的に上昇するが、20%を越えると衝撃性の上昇は徐々ににぶくなり、30%でほぼ飽和点に達する。汎用グレードにおける超高衝撃タイプのグレードでは、ゴム含量は25?30%、高衝撃タイプのグレードでは20?25%、中衝撃タイプのグレードでは15?20%、高剛性タイプのグレードでは10?15%に調達されたものが多い。」こと(105頁左欄1?11行)。
(イ)甲3
・「ABS樹脂はその構成要素から、・・・耐薬性等をアクリロニトリルに持たせている」こと(112頁左欄2?6行)。
・「ゴム量を増加すれば、衝撃強度は増加するが、成形加工性、剛性等考慮すれば限度がある。一般的にはゴム含有率は5?30%の範囲にある」こと(112頁左欄末2行?右欄1行)。
・ABS樹脂の組成と耐薬品性等の物性との関係(112頁、図13)。
(ウ)甲4
・「アクリロニトリルを主成分とする重合体は他の塩化ビニル、スチレン、メタクリレートなどを主成分とする重合体と比較して・・・耐薬品性、強度特性などに優れた性質を有する」こと(1頁右下欄19行?2頁左上欄3行)。
・「アクリロニトリルとメタクリル酸メチルに、限定された割合からなるスチレンを存在させることにより、全く透明でガラス状の透明性と剛性を有する重合体を得る」こと(2頁右下欄5?9行)。
・「本発明の目的に適した熱可塑性樹脂は・・・実質的に組成物中にゴム状重合体の成分を5乃至35重量%、かつ、アクリロニトリル成分を50?80重量%含有せしめることにより得る」こと(3頁右下欄下から4行?4頁左上欄5行)。
・「樹脂中のゴム重合体の含有量を5乃至35重量%に限定したのは、5重量%以下では樹脂の物理的強度が充分でなく、また35重量%以上においては本発明の特長である剛性と熱変形温度が低下するためである」こと(4頁左下欄2?6行)。
(エ)甲5
・「ABS樹脂による低発泡成形品」(1頁2欄20?21行)。
・「芳香族ビニル化合物、・・・アクリロニトリルのうちの1種または2種以上の総和が70重量%以上を占め、かつ・・・ラジカル共重合可能なビニル単量体混合物(a)を・・・グラフト活性化エラストマ状α-オレフィン共重合体(ゴム成分)(b)にグラフト重合してなる樹脂(A)からなる・・・硬質熱可塑性樹脂発泡体」(2頁3欄7?20行)。
・「使用されるゴム成分(b)は樹脂(A)中に2?60重量%含まれるような量であることが好ましい」こと(4頁7欄37行?38行)。
(オ)甲6
・「メチルメタクリレート単位が48?70重量%、スチレン単位が25?50重量%、ブタジエン単位が2?20重量%及びアクリロニトリル単位が0?5重量%からなる、MBS樹脂又はMABS樹脂(A)」(請求項1)。
(カ)甲7
・モノマー組成が「(一段目)アクリロニトリル5重量部、スチレン15重量部、メタクリル酸メチル22重量部、(二段目)ブタジエン12重量部、スチレン3重量部、(三段目)アクリロニトリル6重量部、スチレン15重量部、メタクリル酸メチル22重量部」の重合体(5頁9欄の実施例6。なお、この重合体のアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン/メタクリル酸メチルの割合は、11/12/33/44と計算される。)。
・モノマー組成が「(一段目)アクリロニトリル5重量部、スチレン9重量部、メタクリル酸メチル30重量部、(二段目)ブタジエン10重量部、(三段目)アクリロニトリル6重量部、スチレン9重量部、メタクリル酸メチル31重量部」の重合体(5頁10欄の実施例7。この重合体のアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン/メタクリル酸メチルの割合は、11/10/18/61と計算される。)。
(キ)甲8
・組成が「アクリロニトリル70重量部、メタクリル酸メチル20重量部、スチレン10重量部、ゴムラテックス(固型分で)20重量部(重量組成 1,3-ブタジエン/アクリロニトリル/スチレン=80/10/10重量%からなる)」の樹脂3(5頁右上欄10?16行)。
(ク)甲9
・「図2にゴム量と耐衝撃性、引張強さの関係を示す.ABS樹脂中のゴム成分が多くなれば耐衝撃性は大きくなり、引張強さ、流れは低下する.」こと(571頁右欄30?32行、572頁左欄図2)。
・「透明ABS樹脂をうるには、・・・メタクリル酸メチルを導入する」こと(572頁右欄23?24行)。
(ケ)甲10
・「ABS樹脂は強じんで耐衝撃性と機械的性質にすぐれ、剛性も高く、耐薬品性にも優れている。」(21頁9?10行)
・「ゴム成分は一般に5?30%が使用され、さらに樹脂成分をポリブレンドする方法では、ゴム量は70%程度まで高めてグラフト重合される。残りは、樹脂成分であって、スチレンとアクリロニトリルから成り立っている。」こと(42頁15?17行)。
・ABS樹脂の組成と耐薬品性等の性質との関係(82頁、図3.9)。
・ABS樹脂の性質に関して、「ゴム分の含有率は大部分のものが5?40%であ」ること(83頁1行)。
(コ)甲11
・「通常、ABS樹脂の組成としてはゴム成分が5?40%、樹脂組成としてはスチレンとアクリロニトリルが70?80/30?20%の樹脂である。」こと(326頁左欄8行?右欄1行)。
・ABS樹脂の組成と物性の関係(326頁、図1)
・「耐薬品性 ・・・ABS樹脂の耐薬品性の評価としては、たとえば図5に示す片持ち梁の治具が用いられ、溶剤などによりクラックの生じた箇所から次式で臨界歪(εc)臨界応力(Sc)を計算する」こと(328頁右欄8?13行)。
・「雑貨としては、・・・基本物性に加えて、洗剤、食用油に対する耐薬品性も要求される」こと(331頁左欄4?8行)。
(サ)甲12
・呼び径=30mm、l=18mm、t2=2.5mmの継手(21頁)。
(シ)甲13
・「空隙の形成を抑制することで、伸縮疲労強度の低下を防ぐことができる発泡管継手を提供する」こと(【0006】)。

ウ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a.甲1発明の「屈曲する流路を有する本体部」は、管継手の一部であって、管状をなすものといえるから、本件発明1の「内部に流路を有する管状の本体部」に相当する。
甲1発明の「接続部」は、本件発明1の「受口部」に相当する。
甲1発明の「前記本体部に連続して設けられた他の配管材が接続される接続部」は、「前記本体部の内外壁と前記接続部とが非発泡性溶融樹脂によって射出成形により一体成形された」ものであることから、本件発明1の「前記本体部と一体に形成された1つ以上の受口部」に相当する。
また、甲1発明の「エルボ」は、管継手の一種である。
b.甲1発明の「発泡樹脂からなる断熱層」は、本件発明1の「発泡樹脂層」に相当する。
甲1発明の「前記本体部の内部に発泡樹脂からなる断熱層を備え、この断熱層を囲繞する前記本体部の内外壁と前記接続部とが非発泡性溶融樹脂によって射出成形により一体成形された」は、発泡樹脂からなる断熱層と、発泡樹脂からなる断熱層を囲繞する非発泡性溶融樹脂の層を有することであるから、本件発明1の「発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層を覆う非発泡樹脂層とを有」することに相当する。
c.甲1発明でいう「断熱層付き管継手」は、本件発明1でいう「発泡管継手」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明の一致点、相違点は、つぎのとおりである。
<一致点>
「内部に流路を有する管状の本体部と、前記本体部と一体に形成された1つ以上の受口部と、を有し、
発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層を覆う非発泡樹脂層とを有する、発泡管継手。」
<相違点1-1>
発泡樹脂層について、本件発明1は、「ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第一の樹脂と発泡剤とを含」み、「熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記発泡樹脂層の前記ゴム成分の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下であ」るのに対して、甲1発明は、発泡樹脂が具体的に特定されていない点。
<相違点2-1>
非発泡樹脂層について、本件発明1は、「ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第二の樹脂を含み」、「前記第二の樹脂以外の他の樹脂を含有しても良く、」、「前記第二の樹脂がアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)であり」、「前記他の樹脂がアクリル樹脂であり、」、「熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記非発泡樹脂層の前記第二の樹脂のブタジエン成分の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して1質量%以上25質量%以下であ」るのに対して、甲1発明は、非発泡性溶融樹脂が具体的に特定されていない点。
(イ)判断
上記相違点1-1及び2-1について検討する。
a.甲1の段落【0009】には、使用できる樹脂が例示されており、その中に「ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂」が含まれている。
また、甲1には、実施例に関して、段落【0029】に発泡性樹脂として発泡剤を混合したもの用いたこと、さらに、段落【0030】に非発泡性樹脂としてABS樹脂を用いたことが記載されている。
b.そして、甲2、甲3等の証拠からすると、ABS樹脂においてゴム成分の含有量を低減すれば耐薬品性が向上することは、当業者に良く知られた技術的事項であり、また、ABS樹脂としてゴム成分の含有率が5?30%あるいは10?30%程度のものは一般的であるとされている。
c.しかしながら、甲1発明において、発泡樹脂と非発泡樹脂の双方をゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である樹脂が含まれたものとして構成することが動機付けられるものではない。
たしかに、甲1発明を開示する甲1には、樹脂としてABS樹脂が使用できることが記載されており(段落【0009】)、さらに、実施例で非発泡性樹脂としてABS樹脂を用いたものが示されている(実施例2、段落【0030】)。
しかし、この実施例は、発泡性樹脂はABS樹脂ではなくてそれとは異なるポリ塩化ビニルが用いられたものであって、この実施例において、発泡性樹脂をポリ塩化ビニルからABS樹脂に変更する動機が見いだせるものではない。
甲2、甲7やその他の証拠方法を参酌しても、甲1発明において、発泡樹脂と非発泡樹脂の双方をABS樹脂等のゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である樹脂が含まれたものとして構成することが示唆されるものではない。
さらにまた、甲1全体をみても、耐薬品性に関係する認識が示されているものでもない。
d.そうしてみると、当業者が甲1発明において上記相違点1-1、2-1に係る本件発明1の発明特定事項を容易に採用し得たということはできない。
すなわち、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではない。

エ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲1発明とを対比すると、上記相違点1-1、2-1に加えて、以下の点でも相違し、その余の点で一致する。
<相違点3>
本件発明2は、「前記第一の樹脂は、前記シアン化ビニル系単量体単位の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して10質量%以上50質量%以下であり、前記第一の樹脂は、前記芳香族ビニル系単量体単位の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して15質量%以上60質量%以下であり、前記第二の樹脂は、前記シアン化ビニル系単量体単位の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して10質量%以上50質量%以下であり、前記第二の樹脂は、前記芳香族ビニル系単量体単位の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して20質量%以上50質量%以下である」のに対して、甲1発明は、そのように特定されていない点。
(イ)判断
既に本件発明1について述べたように、甲1発明において上記相違点1-1、2-1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することが当業者によって容易に想到し得たこととはいえないから、相違点3について検討するまでもなく、本件発明2も甲1発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではない。

オ 本件発明3について
(ア)対比
本件発明3と甲1発明とを対比すると、上記相違点2-1と同様の相違点に加えて、以下の点でも相違し、その余の点で一致する。
<相違点1-2>
発泡樹脂層について、本件発明3は、「ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第一の樹脂と発泡剤とを含」み、「熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記発泡樹脂層の前記ゴム成分の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下であ」り、前記第一の樹脂が「アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)」であるのに対して、甲1発明は、発泡樹脂が具体的に特定されていない点。
<相違点4>
本件発明3は、「前記受口部の受口端部からストッパーまでの長さL1と、前記受口部のストッパー近傍の厚さd1との比が、3.5以上7.7以下」とされているのに対して、甲1発明ではそのような特定がない点。
(イ)判断
相違点1-2は、本件発明1についての相違点1-1でのゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体をABS樹脂に限定したことを含んだものということができる。
そうすると、既に本件発明1で相違点1-1、2-1について説示したと同様に、本件発明3も、その相違点4について検討するまでもなく、相違点1-2及び2-1が存在することをもって、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものということはできない。

カ 本件発明4について
(ア)対比
本件発明4と甲1発明とを対比すると、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点1-3>
発泡樹脂層について、本件発明4は、「ブタジエンとアクリロニトリルとスチレンとを含む共重合体である第一の樹脂を含む樹脂組成物」であり、「熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記第一の樹脂のゴム成分の含有量が、前記発泡樹脂層に含まれる前記第一の樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下であ」るのに対して、甲1発明は、発泡樹脂が具体的に特定されていない点。
<相違点2-2>
非発泡樹脂層について、本件発明4は、「ブタジエンとアクリロニトリルとスチレンとを含む共重合体である第二の樹脂を含み」、「熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記第二の樹脂のゴム成分の含有量が、前記非発泡樹脂層に含まれる前記第二の樹脂の総質量に対して5質量%以上15質量%以下である」のに対して、甲1発明は、非発泡溶融樹脂が具体的に特定されていない点。
(イ)判断
相違点1-3は、本件発明1についての相違点1-1でのゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体をブタジエンとアクリロニトリルとスチレンとを含む共重合体に限定したものということができ、また、相違点2-2は、本件発明1についての相違点2-1での第二の樹脂のブタジエン成分の含有量の範囲を狭めたものということができる。
そうすると、既に本件発明1について述べたように、甲1発明において上記相違点1-3、2-2に係る本件発明4の発明特定事項を採用することが当業者によって容易に想到し得たこととはいえない。

キ 本件発明5について
(ア)対比
本件発明5と甲1発明とを対比すると、上記相違点1-1、2-1と同様の相違点に加えて、以下の点でも相違し、その余の点で一致する。
<相違点5>
本件発明5は、発泡管継手とその受口部に挿入接続される管部材を備えた配管構造であるのに対して、甲1発明は、発泡管継手そのものである点。
(イ)判断
甲1発明は、その受口部に管部材を挿入されることが想定されたものであるから、甲1発明に基づいて相違点5に係る本件発明5の発明特定事項を採用することは、当業者にとって通常の創作能力を発揮してなし得たことにすぎない。
しかし、既に本件発明1について述べたように、甲1発明において上記相違点1-1、2-1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することが当業者によって容易に想到し得たこととはいえないから、本件発明5も甲1発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではない。

ク 本件発明6について
(ア)対比
本件発明6と甲1発明とを対比すると、上記相違点1-1、2-1及び3と同様の相違点に加えて、以下の点でも相違し、その余の点で一致する。
<相違点6>
本件発明6は、本体部の開口部の周縁にストッパーが形成され、1つ以上の受口部は前記本体部及び前記ストッパーと一体に形成され、前記本体部および前記ストッパーは、発泡樹脂層と前記発泡樹脂層の両面を覆う非発泡樹脂層とからなるものであるのに対して、甲1発明は、そのようなストッパーにつき明らかでない点。
(イ)判断
既に本件発明1について述べたように、甲1発明において上記相違点1-1、2-1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することが当業者によって容易に想到し得たこととはいえないから、相違点3、6について検討するまでもなく、本件発明6も甲1発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではない。

ケ 以上のとおりであるから、本件発明1?6は、いずれも、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。
したがって、本件発明1?6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当するものではない。

(2)新規事項について
請求項4は、本件訂正により次のものとなった。
「内部に流路を有する管状の本体部と、前記本体部と一体に形成された1つ以上の受口部と、を有し、
前記本体部は、発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層を覆う非発泡樹脂層とを有し、
前記発泡樹脂層は、ブタジエンとアクリロニトリルとスチレンとを含む共重合体である第一の樹脂を含む樹脂組成物であり、かつ、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記第一の樹脂のゴム成分の含有量が、前記発泡樹脂層に含まれる前記第一の樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下であり、
前記非発泡樹脂層は、ブタジエンとアクリロニトリルとスチレンとを含む共重合体である第二の樹脂を含み前記第二の樹脂以外の他の樹脂を含有しても良い樹脂組成物であり、前記樹脂組成物の前記第二の樹脂以外の他の樹脂はアクリル樹脂であり、かつ、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記第二の樹脂のゴム成分の含有量が、前記非発泡樹脂層に含まれる前記第二の樹脂の総質量に対して5質量%以上15質量%以下である、発泡管継手。」
願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、ゴム成分の含有量の数値に関して次のように記載されている。
・「【0023】
第一の樹脂のゴム成分の含有量は、特に限定されず、第一の樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下が好ましい。」
・「【0041】
第二の樹脂は、ゴム成分の含有量が、第二の樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下であり、1質量%以上25質量%以下が好ましく、3質量%以上20質量%以下がより好ましく、5質量%以上15質量%以下がさらに好ましく、5質量%以上10質量%以下が特に好ましい。ゴム成分の含有量が上記下限値以上であると、発泡樹脂成形品の強度を高めやすい。ゴム成分の含有量が上記上限値以下であると、耐薬品性をより向上しやすい。」
そうすると、本件訂正により訂正された請求項4における「第一の樹脂のゴム成分の含有量」は、当初明細書の段落【0023】の記載が踏まえられたものとなっており、また「第二の樹脂のゴム成分の含有量」は、当初明細書の段落【0041】でさらに好ましいとされた記載を踏まえられたものといえるから、本件訂正後の請求項4は、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
したがって、請求項4に係る特許は、第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものではないから、同法第113条第1号に該当するものではない。

(3)サポート要件について
ア 本件発明1?6の目的は、断熱性及び耐薬品性に優れたABS樹脂を得ることにある(段落【0005】及び【0006】参照)。
イ 本件特許明細書には、実施例1?実施例11が開示されるが、これら実施例以外の本件発明1?6の全ての範囲の非発泡樹脂の発泡管継手が耐薬品性を有するか、という点につき検討する。
本件訂正により本件発明1?6の非発泡樹脂層の第二の樹脂は、ABS樹脂のみか、ABS樹脂及びアクリル樹脂から構成されるものとなった。
実施例1?実施例11は、第二の樹脂は、ABS樹脂のみか、ABS樹脂及びアクリル樹脂から構成されるもののみであって、本件発明1?3,6での第二の樹脂におけるブタジエン成分含有量の上限値(第二の樹脂の総重量に対して25質量%)、 本件発明4での第二の樹脂のゴム成分含有量の上限値(第二の樹脂の総重量に対して15質量%)で耐薬品性が得られることは、実施例9(第二の樹脂中の総重量に対してブタジエン(ゴム成分)は26質量%)で確認されているといえる。また、実施例での第二の樹脂中の総重量に対するブタジエン(ゴム成分)の最小値は、実施例3での5質量%であるが、既に「(1)ウ(イ)b.」でも述べたように、ABS樹脂としてブタジエン(ゴム成分)の含有量を低減させると耐薬品性が向上することは、当業者に良く知られたことといえるから、第二の樹脂のブタジエン成分含有量が1?4質量%の実施例が存在しないことをもって、本件発明1?6における第二の樹脂のブタジエン・ゴム成分が1?4質量%の範囲で上記目的の達成がかなわないとする合理的な理由はない。
したがって、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものであるから、本件発明1?6に係る特許は、同法第113条第4号に該当するものではない。

(4)明確性要件について
取消理由の通知(決定の予告)で指摘した明確性要件の欠如は、令和2年8月3日に提出された訂正請求書により訂正された請求項1及び請求項4に記載された「伸縮疲労試験」について、及び、同請求項1及び請求項4に記載されたゴム成分の含有量が特許明細書の記載と不整合であることについてである。
まず、前者については、令和2年8月3日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、その後の訂正の請求の手続き(本件訂正)により、取り下げられたものとみなされ、本件訂正による請求項1及び4並びに他の請求項に「伸縮疲労試験」は記載されていないから、明確性要件は満たされる。
次に、後者については、本件特許明細書のゴム成分の含有量の数値の記載と、本件訂正による請求項1?6の記載は、整合するものであるから、明確性要件は満たされる。
したがって、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものであるから、本件発明1?6に係る特許は、同法第113条第4号に該当するものではない。

(5)実施可能要件について
取消理由の通知(決定の予告)で指摘された実施可能要件の欠如は、令和2年8月3日に提出された訂正請求書により訂正された請求項1及び請求項4に記載されていた「伸縮疲労試験」についてのものであったが、既に「(4)明確性要件について」で述べたと同様に、本件訂正による請求項1及び請求項4並びに他の請求項に「伸縮疲労試験」は記載されていないから、この点で実施可能要件が満たされないものではない。
したがって、本件の明細書の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものであるから、本件発明1?6に係る特許は、同法第113条第4号に該当するものではない。

3 取消理由の通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)本件発明1?6の新規性について
本件発明1?6を甲1に記載された発明と対比した場合、既に「2(1)本件発明1?6の進歩性について」で述べたように、相違点1-1,2-1等が存在する。
甲1にABS樹脂への言及があり、また、ABS樹脂の(ブタジエン)ゴムの含有量について一定の技術常識が存在するとしても、これらの相違点は、実質的なものとしてとらえるべきである。
したがって、本件発明1?6は、いずれも、甲1発明と同一ではなく、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するものではない。

(2)実施可能要件について
申立人は、本件訂正前の本件発明1について、(ア)請求項1には非発泡樹脂層中に含まれる樹脂の総重量に対するゴム成分の含有量や第二の樹脂以外の他の樹脂の含有量について規定されていないところ、非発泡樹脂中のゴム成分が5質量%未満や30質量%超100質量%未満である場合にも技術的課題が解決できるか不明である、(イ)請求項1には非発泡樹脂層に樹脂として第二の樹脂が単独で含まれる場合が包含されるところ、非発泡樹脂中のゴム成分が1質量%以上10質量%未満、及び18質量%超30質量%未満である場合にも技術的課題が解決できることは示されていない、(ウ)ゴム成分量が15質量%以外の含有量である第一の樹脂を用いた場合については技術的課題が解決できることは示されていない、本件訂正前の本件発明3について、(エ)技術的課題が解決されることが示されているのは第一の樹脂及び第二の樹脂がABS樹脂である場合のみであり、AES樹脂又はAAS樹脂である場合まで技術的課題が解決されることは示されていない、本件訂正前の本件発明4について、(オ)請求項4には非発泡樹脂層(又は発泡樹脂層)に含まれる樹脂の総重量に対してゴム成分の含有量が1質量%以上30質量%以下であることが規定されているところ、明細書には非発泡樹脂層(又は発泡樹脂層)に含まれる樹脂の総重量に対してゴム成分の含有量が1質量%以上30質量%以下であることは一切記載されていない、(カ)請求項4には非発泡樹脂層に樹脂として第二の樹脂が単独で含まれる場合が包含されるところ、非発泡樹脂中のゴム成分が1質量%以上10質量%未満、及び18質量%超30質量%未満である場合にも技術的課題が解決できることは示されていない、(キ)実施例において技術的課題が解決できることが示されているのは、アクリロニトリル含有量が21以上43質量%以下の場合(実施例3及び4)だけであり、アクリロニトリル含有量が0超21質量%未満の場合にまで耐薬品性が発揮されるか否かは不明である、と主張する。
これらの主張の内の幾つかは、本件訂正によってその前提を欠くことになっているが、そもそも、本件特許明細書には、実施例1?実施例11,さらには、比較例1及び2が開示され、樹脂組成等とともに耐薬品性の評価が個別に示されている。
そうすると、本件発明1?6は、これらを考慮すれば明らかに実施することが可能であって、申立人の上記主張は、いずれも採用できない。
したがって、本件特許明細書の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているものである。

第5 むすび
以上のとおり、本件発明1?6に係る特許は、通知された取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件発明1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路を有する管状の本体部と、前記本体部と一体に形成された1つ以上の受口部と、を有し、
ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第一の樹脂と発泡剤とを含む発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層を覆う非発泡樹脂層とを有し、
前記非発泡樹脂層は、ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第二の樹脂を含み、前記第二の樹脂以外の他の樹脂を含有しても良く、
前記第二の樹脂がアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)であり、
前記他の樹脂がアクリル樹脂であり、
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記発泡樹脂層の前記ゴム成分の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下であり、
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記非発泡樹脂層の前記第二の樹脂のブタジエン成分の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して1質量%以上25質量%以下である、発泡管継手。
【請求項2】
前記第一の樹脂は、前記シアン化ビニル系単量体単位の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して10質量%以上50質量%以下であり、
前記第一の樹脂は、前記芳香族ビニル系単量体単位の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して15質量%以上60質量%以下であり、
前記第二の樹脂は、前記シアン化ビニル系単量体単位の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して10質量%以上50質量%以下であり、
前記第二の樹脂は、前記芳香族ビニル系単量体単位の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して20質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の発泡管継手。
【請求項3】
内部に流路を有する管状の本体部と、前記本体部と一体に形成された1つ以上の受口部と、を有する、エルボであって、
前記受口部の受口端部から前記本体部の開口部周縁に形成されたストッパーまでの長さL1と、前記受口部のストッパー近傍の厚さd1との比が、3.5以上7.7以下であって、
ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第一の樹脂と発泡剤とを含む発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層を覆う非発泡樹脂層とを有し、
前記非発泡樹脂層は、ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第二の樹脂を含み、前記第二の樹脂以外の他の樹脂を含有しても良く、
前記第一の樹脂及び前記第二の樹脂がアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)であり、
前記他の樹脂がアクリル樹脂であり、
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記発泡樹脂層の前記ゴム成分の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下であり、
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記非発泡樹脂層の前記第二樹脂のブタジエン成分の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して1質量%以上25質量%以下である、発泡管継手。
【請求項4】
内部に流路を有する管状の本体部と、前記本体部と一体に形成された1つ以上の受口部と、を有し、
前記本体部は、発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層を覆う非発泡樹脂層とを有し、
前記発泡樹脂層は、ブタジエンとアクリロニトリルとスチレンとを含む共重合体である第一の樹脂を含む樹脂組成物であり、かつ、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記第一の樹脂のゴム成分の含有量が、前記発泡樹脂層に含まれる前記第一の樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下であり、
前記非発泡樹脂層は、ブタジエンとアクリロニトリルとスチレンとを含む共重合体である第二の樹脂を含み前記第二の樹脂以外の他の樹脂を含有しても良い樹脂組成物であり、前記樹脂組成物の前記第二の樹脂以外の他の樹脂はアクリル樹脂であり、かつ、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記第二の樹脂のゴム成分の含有量が、前記非発泡樹脂層に含まれる前記第二の樹脂の総質量に対して5質量%以上15質量%以下である、発泡管継手。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか一項に記載の発泡管継手と、前記発泡管継手の受口部に挿入接続される管部材と、を備える配管構造。
【請求項6】
内部に流路を有する管状の本体部と、前記本体部の開口部の周縁に形成されたストッパーと、前記本体部および前記ストッパーと一体に形成された1つ以上の受口部と、を有する、発泡管継手であって、
前記本体部および前記ストッパーは、発泡樹脂層と前記発泡樹脂層の両面を覆う非発泡樹脂層とからなり、
ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第一の樹脂と発泡剤とを含む前記発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層を覆う前記非発泡樹脂層とを有し、
前記発泡樹脂層を覆う前記非発泡樹脂層は、ゴム成分とシアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体である第二の樹脂を含み、前記第二の樹脂以外の他の樹脂を含有しても良く、
前記第一の樹脂及び前記第二の樹脂がアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)であり、
前記他の樹脂がアクリル樹脂であり、
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記発泡樹脂層の前記ゴム成分の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して1質量%以上30質量%以下であり、
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC/MS)により求められる、前記非発泡樹脂層の前記第二樹脂のブタジエン成分の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して1質量%以上25質量%以下であり、
前記第一の樹脂は、前記シアン化ビニル系単量体単位の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して10質量%以上50質量%以下であり、
前記第一の樹脂は、前記芳香族ビニル系単量体単位の含有量が、前記第一の樹脂の総質量に対して15質量%以上60質量%以下であり、
前記第二の樹脂は、前記シアン化ビニル系単量体単位の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して10質量%以上50質量%以下であり、
前記第二の樹脂は、前記芳香族ビニル系単量体単位の含有量が、前記第二の樹脂の総質量に対して15質量%以上60質量%以下である、発泡管継手。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-07-20 
出願番号 特願2019-524297(P2019-524297)
審決分類 P 1 651・ 561- YAA (F16L)
P 1 651・ 113- YAA (F16L)
P 1 651・ 536- YAA (F16L)
P 1 651・ 537- YAA (F16L)
P 1 651・ 121- YAA (F16L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 河内 浩志増永 淳司  
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 矢澤 周一郎
藤原 直欣
登録日 2019-09-06 
登録番号 特許第6581749号(P6581749)
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 発泡管継手及び配管構造  
代理人 川越 雄一郎  
代理人 山口 洋  
代理人 西澤 和純  
代理人 大槻 真紀子  
代理人 大槻 真紀子  
代理人 川越 雄一郎  
代理人 西澤 和純  
代理人 山口 洋  
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