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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B02C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B02C
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  B02C
審判 全部申し立て 2項進歩性  B02C
管理番号 1377793
異議申立番号 異議2020-700896  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-11-24 
確定日 2021-07-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6702460号発明「粉砕ローラ及びローラミル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6702460号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認める。 特許第6702460号の請求項1?5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許異議申立事件に係る本件特許第6702460号は、特許権者である株式会社IHIが保有するものであり、その請求項1?5に係る特許(以下、それぞれ「本件特許1」?「本件特許5」という。)についての出願は、平成26年10月8日(以下、「原出願日」という。)に出願された特願2014-207161号の一部を、平成31年2月13日に新たな特許出願としたものであって、特願2019-23902号として審査され、令和2年5月11日にその特許権の設定登録がされ、同年6月3日にその特許掲載公報が発行された。
その後、上記特許掲載公報の発行の日から6月以内にあたる同年11月24日に、本件特許1?5を対象として、特許異議申立人である廣瀬哲夫により特許異議の申立てがされ、令和3年2月9日付けで、当審より取消理由が通知され、これに対して、同年3月26日に、特許権者より意見書が提出されるとともに訂正の請求(以下、この訂正を「本件訂正」という。)がされた。
なお、上記のとおり訂正の請求があったので、特許法第120条の5第5項の規定に従い特許異議申立人に相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが応答はなかった。

第2 本件訂正の適否

1 本件訂正の内容
本件訂正の請求は、請求の趣旨を「特許第6702460号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?5について訂正することを求める。」とし、願書に添付した特許請求の範囲の訂正を、一群の請求項である請求項1?5を訂正の単位として請求するものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に従うものであるところ、その訂正の内容(訂正事項)は、次のとおりである(なお、下線は当審が付したもの。以下同じ。)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「外周面で被粉砕物の粉砕を行う粉砕ローラであって、
前記外周面に設けられると共に柱状の窪みからなる砕折部を複数備え、
深さの異なる前記窪みを有する
ことを特徴とする粉砕ローラ。」
と記載されていたものを、
「外周面で被粉砕物の粉砕を行う粉砕ローラであって、
前記外周面に設けられると共に半球状のディンプルを除く製造時に形成される柱状の窪みからなる砕折部を複数備え、
深さの異なる前記窪みを有する
ことを特徴とする粉砕ローラ。」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?請求項5についても同様に訂正する。)。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に、
「前記砕折部は、柱状の窪みであり、前記窪みは当該窪みの奥部に向けて窄む形状であることを特徴とする請求項1?3いずれか一項に記載の粉砕ローラ。」
と記載されていたものを、
「前記砕折部は、柱状の窪みであり、前記窪みは当該窪みの奥部に向けて窄む円錐台形状であることを特徴とする請求項1?3いずれか一項に記載の粉砕ローラ。」
に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5についても同様に訂正する。)。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1に記載されていた「柱状の窪み」に関して、「半球状のディンプルを除く製造時に形成される」と具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
また、上記の限定は、本件明細書の【0019】において「すなわち、ここでの柱状の窪みとは、このような半球状のディンプルを含むものである。」とされていた、「半球状のディンプル」を含む「柱状の窪み」の範疇から、当該「半球状のディンプル」を排除するものであり、そして、この限定は、同【0022】の「ディンプル41bに対応する中子を鋳型の内部に配置することによって、ディンプル41bを有する回転ローラ41を製造することができる。また、ディンプル41bが形成された金属部品を予め形成し、この金属部品を埋設するように鋳造を行うことでディンプル41bを有する回転ローラ41を製造することも可能である。」との記載からみて、ディンプル、すなわち「柱状の窪み」は、「製造時に形成される」ものであるといえることに基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(2) 訂正事項2について
上記訂正事項2は、柱状の窪みの形状に関して、「円錐台形状」と具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
また、上記の限定については、本件明細書において「円錐台形状」なる用語は使用されていないものの、図3の実施形態について、その【0019】には「各ディンプル41bは、・・・柱状の窪みであり、回転ローラ41の径方向外側から見て円形状とされている。」と記載され、その上で、図4の実施形態について、同【0034】には「本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。」、同【0035】には「上記実施形態においては、図4(b)に示すように、底部に向けて窄む柱状の窪みからなるディンプル41dを備える構成とすることも可能である。」と記載されていることからみて、図4(b)に示されている実施形態(変形例)におけるディンプル41d(柱状の窪み)は、「窪みの奥部に向けて窄む円錐台形状である」といえることに基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

3 小括
以上のとおり、本件訂正に係る訂正事項1、2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認める。

第3 特許請求の範囲の記載(本件発明)

上記第2のとおり、本件訂正は適法にされたものであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された、次のとおりのものである。そして、その請求項1?5に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明5」といい、まとめて「本件発明」という。)は、当該請求項1?5に記載された事項により特定されたとおりのものであると認める。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面で被粉砕物の粉砕を行う粉砕ローラであって、
前記外周面に設けられると共に半球状のディンプルを除く製造時に形成される柱状の窪みからなる砕折部を複数備え、
深さの異なる前記窪みを有する
ことを特徴とする粉砕ローラ。
【請求項2】
前記砕折部は、ローラ径方向に沿って穿設される柱状の窪みであることを特徴とする請求項1記載の粉砕ローラ。
【請求項3】
前記砕折部は、前記外周面に対する接線と直交する方向に穿設される柱状の窪みであることを特徴とする請求項1または2記載の粉砕ローラ。
【請求項4】
前記砕折部は、柱状の窪みであり、前記窪みは当該窪みの奥部に向けて窄む円錐台形状であることを特徴とする請求項1?3いずれか一項に記載の粉砕ローラ。
【請求項5】
被粉砕物を粉砕ローラによって粉砕するローラミルであって、
前記粉砕ローラとして、請求項1?4いずれか一項に記載の粉砕ローラを備えることを特徴とするローラミル。」

第4 取消理由の概要

令和3年2月9日付けで当審が通知した取消理由は、本件訂正前の請求項1?5に係る特許は、以下の理由により特許法第113条第2号に該当するため取り消すべきものである、というものである(証拠については後記第5の1参照)。
・取消理由1:(新規性欠如)本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、本件特許の原出願日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、その特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。
・取消理由2:(進歩性欠如)本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、本件特許の原出願日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その原出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。
なお、上記取消理由1、2(新規性進歩性欠如)において指摘した、後記甲1発明?甲5発明と本件訂正前の請求項1?5に係る発明との対応関係などは、以下のとおりである。
・「甲1発明」に基づく、本件訂正前の請求項1、4、5に係る発明の新 規性欠如
・「甲2発明」又は「甲5発明」に基づく、本件訂正前の請求項1、4、 5に係る発明の新規性欠如及び本件訂正前の請求項1?5に係る発明の 進歩性欠如
・「甲3発明」又は「甲4発明」に基づく、本件訂正前の請求項1?5に 係る発明の新規性欠如及び進歩性欠如

第5 取消理由1、2(新規性進歩性欠如)についての当審の判断

上記取消理由1、2に係る新規性及び進歩性の判断は、上記取消理由通知に記載したとおり、本件訂正前の特許請求の範囲に記載された「柱状の窪み」との用語については、「半球状のディンプルを含むもの」として解釈し、同「粉砕ローラ」との用語については、製造初期のものを使用した後のものをも含むと解釈することを前提としたものであった。
しかしながら、当該前提は、本件訂正後の特許請求の範囲の記載には既に当てはまるものではないため、上記取消理由1、2に係る新規性及び進歩性の判断も、本件訂正後の発明(本件発明)に対しては妥当しないものとなっているが、念のため、以下、新規性及び進歩性について検討をする。

1 証拠一覧
・甲1:特開2013-173129号公報
(特許異議申立人が甲第1号証として提出した証拠)
・甲2:「平成24年度 火力原子力発電大会 研究発表要旨集」、平成 24年10月4日、一般社団法人火力原子力発電技術協会、第4 2、43頁(特許異議申立人が甲第2号証として提出した証拠)
・甲3:実願昭60-108184号(実開昭62-17336号)のマ イクロフィルム(特許異議申立人が甲第3号証として提出した証 拠)
・甲4:特表2001-512362号公報
(特許異議申立人が甲第4号証として提出した証拠)
・甲5:「Xwin-Composite Wear Resistance Material for Vertical Mil ls」、[online]、2002年10月27日、AUCBM 12th Interna tional Cement Conference、[2020年10月20日検索]、イ ンターネット<URL, http://www.cementechnology.ir/Mechanic/ Mechanic_2.pdf>(特許異議申立人が甲第5号証として提出した 証拠)

2 甲1?5に記載された発明(甲1発明?甲5発明)
(1) 甲1発明
ア 甲1には、次の記載がある。
・「【0001】
本発明は、例えば石炭等を粉砕する粉砕ミルに適用される粉砕部材に関する。」
・「【0033】
図7-1は従来のテーブルライナの断面図、図7-2は従来のローラの断面図、図7-3は従来の粉砕部材の構成図である。 従来の粉砕部材は、図7-1及び図7-2に示すように、ピン(高Cr鋳物)61が埋設されており、従来のテーブルライナ14b及び粉砕ローラ16には、図7-3に示すようにセラミックス層62の中にピン(高Cr鋳物)61が点在していた。 よって、粉砕を長期間に亙って行う場合、ピン(高Cr鋳物)61の脱落が生じていた。」
・「【図7-2】

【図7-2】


イ このように、甲1には、粉砕ミルに適用される粉砕部材について記載され(【0001】)、当該粉砕部材の従来技術として、図7-2、図7-3及びその説明(【0033】)には、粉砕ローラ16が記載されている。
以下、同図に記載された粉砕ローラを、「甲1発明」という。
ここで、甲1発明(粉砕ローラ)は、粉砕ミルに適用され、図7-3及び【0033】に記載のとおり、セラミックス層62の中にピン(高Cr鋳物)61が点在するものであるとともに、図7-2に記載のとおり、ピン(高Cr鋳物)61の長さが異なるものであって、粉砕を長期間に亙って行う場合、当該ピン(高Cr鋳物)61の脱落が生じるようなものであると認められる。
(2) 甲2発明
ア 甲2には、「微粉炭焚きボイラ用ミルローラの長寿命化について」という表題の下、次の記載がある。
・「1.はじめに
三菱重工業は、1954年に微粉炭焚きボイラ用竪型ミルの初号機を納入以来約900台製作しており、内約340台は国内で運転されている。粉砕部のローラ形状は旧タイプのコニカル型、1989年に弊社独自技術で開発したスーパーローラ型及び2003年にコニカル型形状を改良し弊社が開発したニュースーパーローラ型の3種がある(図1参照)。」(42頁左欄1?8行)
・「2.長寿命ミルローラ開発経緯
1989年以降、弊社は、硬化肉盛製スーパーローラを採用し、当時既に稼働中のコニカルローラ型ミルについては、ローラの消耗交換にあわせてNi-Hardから硬化肉盛製に変更してきた。旧タイプのコニカルローラが、ローラとテーブルライナの粉砕接触面圧が局部的に過大となり過大摩耗が早期に発生し易く、スーパーローラに比し寿命が短い傾向にある。2003年、弊社は、コニカルローラの接触面圧を均一化して偏摩耗を低減できるニュースーパーローラを開発し、コニカルローラの約2倍の寿命が得られるようになった(図2参照)。
一方、硬化肉盛は施工厚さに限界がある為、硬化肉盛製のスーパーローラ及びニュースーパーローラは、一般的に2?3年毎にミルからローラを取外し工場で再肉盛される。但し、再肉盛を繰り返すと熱影響が残り割れ等の懸念があるため、再肉盛は、3回程度行った後で新品に交換する。ここで、再肉盛工程は11工程を要し、長納期、高価格の欠点がある。これらの欠点を克服し更なる競争力強化のため、ベルギー・マゴト社の耐摩耗性セラミックを高クロム鋳鉄に融合させる技術に着目し、弊社ミルの摩耗パターンを考慮した長寿命ローラ及びテーブルライナを開発したものである。」)。」(42頁左欄23行?右欄2行)
・「3.長寿命ローラの特徴
今回勿来発電所殿に納入し耐摩耗性および性能を評価した開発品のローラ及びテーブルライナは、高クロム鋳鉄を母材とし、その表層部に特殊な技術によりセラミックを取り込んだ構造で特許化されている。セラミックの配置や形状は、長年にわたり勿来発電所殿にて定期的に摩耗形態を調査した結果を織り込み製作した(図3参照)。
当該セラミックは、石炭中に介在する石英や硫化鉄よりも硬く、摩耗速度は、ラバーホイール試験の結果によると当社硬化肉盛の4分の1と小さく、高クロム鋳鉄部の補強柱との平均値でも、硬化肉盛と同等のレベルである。このローラの最大の特徴は、摩耗が進行しセラミック層が消滅しても高クロム鋳鉄層で運転が可能なことである。その場合、高クロム層の摩耗速度はセラミック層の約2倍であるが、スーパーローラ形状では反転使用が可能であるため、例えば4年間使用後反転し更に4年間(計8年間)の運用が可能である。」)。」(42頁右欄4?20行)
・「4.運転結果および考察
・・・
また、弊社は、本開発品ローラのセラミック融合部のディンプル(くぼみ)状表層に着目し、難粉砕性を特徴とする木質バイオマス燃料の粉砕性確認試験を実施し、木質ペレットの粉砕において、本開発品ローラは硬化肉盛製と比較して粉砕動力の低減効果があることを確認している。」)。」(42頁右欄22?40行)
・「

」(43頁図1?3)
イ このように、甲2には、その表題のとおり、「微粉炭焚きボイラ用ミルローラ」について記載され、その図3には、セラミック鋳物型ローラが記載されている。
以下、同図に記載されたセラミック鋳物型ローラを、「甲2発明」という。
ここで、甲2発明(セラミック鋳物型ローラ)は、微粉炭焚きボイラ用ミルに適用され、図3に記載のとおり、セラミック層(セラミックインサート)の中に、柱状の高クロム鋳鉄のピンが点在するものであると認められる。
そして、この構造は、ベルギー・マゴト社の、耐摩耗性セラミックを高クロム鋳鉄に融合させる技術を利用したものであり(甲2の「2.」の欄)、当該セラミック融合部の表層には、運転(使用)による摩耗により形成されたと解される、ディンプル(くぼみ)が形成され、当該ディンプル(くぼみ)状表層は、木質ペレットの粉砕において、粉砕動力の低減効果を発揮するものである(甲2の「4.」の欄)と認められる。
なお、上記甲2発明の構造は、上記甲1発明の構造と類似するものであるとともに、上記ベルギー・マゴト社は、甲4の出願人かつ甲5のXwinの商標権者であることに照らすと、上記甲2記載の「ディンプル(くぼみ)状表層」とは、後記甲4の図2や甲5の9、13、14頁に記載されたような表層形態を指すと解するのが合理的である。
(3) 甲3発明
ア 甲3には、次の記載がある。
・「2.実用新案登録請求の範囲
(1).複数の粉砕体からなる粉砕体群によって被粉砕物を粉砕する粉砕機において,前記粉砕体群の表面に形状寸法が異なる切欠部を混在させて設けてあることを特徴とする粉砕機。
・・・
(4).前記複数の粉砕体はボールであることを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項,第2項,第3項記載の粉砕機。
(5).前記複数の粉砕体はローラであることを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項,第2項記載の粉砕機。
(6).前記切欠部は凹状であることを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項,第2項,第3項,第4項,第5項記載の粉砕機。」(実用新案登録請求の範囲)
・「また,第1図および第2図に示すように,1個の粉砕ボールの表面に同じ大きさで同じ形状の切欠部を設けると説明したが,1個の粉砕ボールの表面に異なる大きさの切欠部または異なる形の切欠部を設けてもよい。さらに,隣接する粉砕ボールの表面の切欠部の大きさまたは切欠部の形状を変えてもよい。
なお,微粉炭機をボールミルとして説明したが,ローラミルまたはチューブミルであってもよい。ローラミルの場合は粉砕ローラの表面に切欠部を設ける。また,チューブミルの場合は横形円筒内の多数の鋼球の表面に切欠部を設ける。」(9頁1?12行)
・「


イ このように、甲3には、粉砕機に適用される複数の粉砕体からなる粉砕体群であって、粉砕体群の表面に形状寸法の異なる切欠部を混在させて設けてあり(実用新案登録請求の範囲(1))、複数の粉砕体はボールまたはローラであり(実用新案登録請求の範囲(4)、(5))、切欠部は凹状であるもの(実用新案登録請求の範囲(6))が記載され、その第1図及び第2図並びにその説明(9頁1?12行)には、当該粉砕体がボールであるボールミルの場合の具体例(切欠部は半球状と解される。)が図示されるとともに、1個の粉砕ボールの表面に異なる大きさの切欠部または異なる形の切欠部を設けてもよいことが記載され、さらに、同説明には、ローラミルであってもよいことが記載され、その場合は粉砕ローラの表面に切欠部を設ける旨記載されている。
そうすると、第1図及び第2図並びにその説明の記載は、粉砕ローラについても当てはまる事項と考えるのが合理的であるから、甲3には、次の技術的事項が記載されているということができる。
「粉砕機に適用される粉砕ローラであって、ローラ表面に形状寸法の異なる半球状の凹部が設けてあるもの」
以下では、これを「甲3発明」という。
(4) 甲4発明
ア 甲4には、次の記載がある。
・「本発明はさらに、こうして製造された磨耗部品、特に、縦型ミルやロールプレスで使用される粉砕ローラまたはシリンダーに関するものである。」(4頁6、7行)
・「本発明の上記以外の特徴および利点は添付図面を参照した下記の好ましい実施例の説明から明らかになろう。
図1は本発明のインサートの一つのセグメントの斜視図。
図2は本発明のインサートを備えた交換磨耗部品の放射方向断面図。
図3は図2の矢印IIの方向での交換磨耗部品の正面図。
図1は本発明の環状インサート10の一つのセグメントを示している。このセグメントの特徴は閉じることができ、このインサートが用いられる磨耗部品を完全に取り囲むことができる点にある。このインサート10は耐磨耗性の高い合金、例えばクロム合金(炭化物を含むことができる)から鋳造で作ることができる。このインサート10は炭化物、硼化物、窒化物または酸化物型のセラミック材料またはその他任意の材料で作ることもできる。
図1に示すように、インサート10は外部領域12と内部領域14とを有し、内部領域14は外部領域12より薄い。内部領域14には多数の孔16が形成されている。これらの孔16は鋳造時に作ることができ、内部領域14の厚さ方向にまっすぐ貫通している。
図示した実施例では、外部領域12の各横方向側面とインサートの全外周とに放射状リブ18が形成されている。各放射状リブ18の間には凹部20が規定される。互いに反対側の側面にリブを備えたインサートが好ましいが、リブを一方の側面のみに設けることもできる。さらに、上記リブ18の代わりに他の突出要素、例えば島状突起を用いることもできる。要は、以下で説明するように、各インサートの間に鋳造金属を充填可能な凹部および小室を形成することである。
鋳造でインサートを作った場合には、バリ取り後にアニーリング熱処理して耐熱衝撃性を向上させる。は薄い耐火剤被膜を塗布することによって耐熱衝撃性をさらに向上させることもできる。
次に、互いに同一な所定数のインサート10を互いに積み重ね、孔16を互いに整合させ、リブ18を互いに接触させて放射状の小室22を形成する(図3参照)。互いに対を成すインサート10の厚さの薄い内部領域14のの間には環状空間24が規定される(図2参照)。
互いに積重ねたものの底部を形成する2つの外側インサートの外部側面にはリブを形成しないのが好ましい。
次に、互いに整合した二列の孔16からなる少なくとも2つの貫通孔の中にロッドを通して、互いに積重ねたインサート構造物を安定化させ、各インサート10の整合状態を維持する。
次に、インサート構造物全体を炉内に入れ、300?700℃の温度に予熱する。全てのインサートが所望温度になったときに、インサート構造物を炉から取り出し、円筒形鋳型の中に置き、磨耗部品の鋳造を開始する。
すなわち、可延性のあるコア合金を鋳型に注入してインサート10を支持するコア26を形成する。このコア合金は球状黒鉛鋳鉄であるのが好ましい。コア合金は各インサート10の間の環状空間24、孔26および小室22に充填され、凝固することによって形成された支持コア26の中に各インサート10を完全にアンカーさせる。鋳造温度はインサートと注入した合金との間に冶金的接合が起こらないように選択する。
完成磨耗部品が粉砕ロールまたはローラの交換磨耗部品となる場合には、鋳型は中心にコア26の中心円筒形ボア28となる円筒形境界を有している。
冷却および焼入れ後、磨耗部品は通常の加工、例えばバリ取り、予備加工等を行った後、アニールし、ボアを最終切削する。
インサート10に形成した孔16の重要な役目に注目されたい。すなわち、これら孔16は鋳造前の段階(特に予熱の段階)で各インサート10を安定した状態で仮固定するのに使われ、運搬時に複数のインサート10がズレないようにする役目をする。孔は鋳造後に各インサートをコア26の内部に完全にアンカーさせる役目をする。
各インサート10の間に形成される小室22にも2つの目的がある。先ず、注入された合金がインサートの外側表面にまで流出できるようにして、アンカー効果を補強する役目をする。さらに、小室22を充填した可延性のある鋳鉄が早く磨耗して、これら小室が耐久性のある(図2の30に示すような)負の断面形状(凹部)を形成する。インサート間のこの凹部30は粉砕効率を良くする。
小室22の形状は粉砕方法または被粉砕材料の要求に容易に合わせることができる。別の実施例では小室にせずに、凹部30が磨耗部品の周りに環状溝を形成するようにして、そこから圧縮空気が排気するようにすることもできる。これはインサートの外側端縁部にまで延びていないリブ18を用いることによって容易に達成できる。
以上、本発明を環状インサートを用いた好ましい実施例で説明したが、円弧状の開放式インサートを用いて上記方法と同様な方法で粉砕ローラまたはロールのセグメントを作ることもできる。」(8頁2行?10頁9行)
・「【図1】

【図2】

【図3】


イ このように、甲4には、縦型(竪型)ミルで使用される粉砕ローラについて記載され(4頁6、7行)、具体例として、図1?3及びその説明(8頁2行?10頁9行)に記載された粉砕ローラを認めることができる。
以下、同図に記載された粉砕ローラを、「甲4発明」という。
ここで、甲4発明(粉砕ローラ)は、耐摩耗性の高い金属またはセラミック材料で作られた複数の環状インサート10(8頁7?12行)と、各インサート10の間の環状空間24、孔16及び小室22に、球状黒鉛鋳鉄などの可延性のあるコア合金26を充填・凝固して形成された支持コア26(9頁10?15行)から構成されたものであって、当該小室22を充填した可撓性のある鋳鉄が早く摩耗して、凹部30を形成し、この凹部30は粉砕効率を良くするものであること(9頁下から2行目?10頁1行)を認めることができる。
(5) 甲5発明
ア 甲5には、次の記載がある(日本語訳文は特許異議申立人によるもの)。
・「

」(表紙)
・「

」(9頁)
・「

」(13頁)
・「

」(14頁)
イ このように、甲5には、表紙に記載のとおり、「竪型ミル用複合耐摩耗性材料」について記載され、その9、13、14頁には、非常に硬い粒子で補強された層と高クロム合金との複合耐摩耗性材料からなるローラが記載され、当該ローラの表面には、深さの異なるディンプル(くぼみ)を認めることができる。
以下、竪型ミル用の当該ローラを、「甲5発明」という。

3 甲1発明?甲5発明に基づく本件発明1?5の新規性及び進歩性について
上記取消理由1、2(新規性進歩性欠如)においては、(i)「甲1発明」に基づく、本件訂正前の請求項1、4、5に係る発明の新規性欠如、(ii)「甲2発明」又は「甲5発明」に基づく、本件訂正前の請求項1、4、5に係る発明の新規性欠如及び本件訂正前の請求項1?5に係る発明の進歩性欠如、及び、(iii)「甲3発明」又は「甲4発明」に基づく、本件訂正前の請求項1?5に係る発明の新規性欠如及び進歩性欠如、について指摘したが、ここでは、「甲1発明」ないし「甲5発明」に基づく、本件発明1?5の新規性欠如及び進歩性欠如について、まとめて検討をする。
(1) 本件発明1について
上記2のとおり、甲1発明、甲2発明、甲4発明及び甲5発明に係るローラは、その表面に窪みが形成されているが、その窪みは使用後に形成されるものであって、ローラ製造時のものではない。また、甲3発明に係るローラは、その表面にその製造時に形成された窪みを有しているが、その窪みの形状は半球状のディンプル形状である。
そうすると、本件発明1と甲1発明?甲5発明に係るローラとを対比してみると、甲1発明?甲5発明に係るローラはいずれも、粉砕ローラに属するものである点において本件発明1と共通するものの、ローラの構造においては、本件発明1のような「外周面に設けられると共に半球状のディンプルを除く製造時に形成される柱状の窪みからなる砕折部」を複数備えているものではない点において、本件発明1とは相違するものと認められる。
そして、この相違点は、甲1発明?甲5発明に対する実質的な相違点であるということができる。
さらに、甲1、甲2、甲4及び甲5のいずれの文献をみても、製造時に柱状の窪みを形成しておくことについては何ら記載されていないし、甲3をみても、その切欠部の形状を、半球状のディンプルではない柱状の窪みとすることについての記載はないから、これらの文献の記載事項に照らし、上記相違点に係る本件発明1の構成を、甲1発明?甲5発明に基づく容易想到の事項ということもできない。
したがって、本件発明1は、甲1発明?甲5発明に対して新規性及び進歩性を欠如するということはできない。
(2) 本件発明2?5について
本件発明2?5は、いずれも本件発明1の構成をすべて具備するものであるから、上記(1)と同様の理由により、甲1発明?甲5発明に対して新規性及び進歩性を欠如するということはできない。

4 小括
以上のとおり、取消理由1、2(新規性新規性欠如)には理由がない。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要と当該特許異議申立理由についての当審の判断

特許異議申立人が主張する特許異議申立理由のうち、新規性及び進歩性欠如に関する理由については、上記第5においてすべて検討したから、ここでは、それ以外の特許異議申立理由、すなわち、特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)に関する理由について検討をする。
特許異議申立人が主張する明確性要件違反に関する理由は、要するに、本件訂正前の請求項の記載では、製造時に窪みを形成し、初期的に窪みを有するのか、あるいは、使用中の摩耗により窪みが形成されるのかが不明であるというものであるが、本件訂正後の請求項1においては「製造時に形成される」と明記されたため、本件訂正後の請求項の記載は、特許異議申立人が指摘するような不明な点はなく、本件発明は明確であるということができる。
したがって、標記特許異議申立理由についても、理由はない。

第7 結び

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許1?5を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1?5を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面で被粉砕物の粉砕を行う粉砕ローラであって、
前記外周面に設けられると共に半球状のディンプルを除く製造時に形成される柱状の窪みからなる砕折部を複数備え、
深さの異なる前記窪みを有する
ことを特徴とする粉砕ローラ。
【請求項2】
前記砕折部は、ローラ径方向に沿って穿設される柱状の窪みであることを特徴とする請求項1記載の粉砕ローラ。
【請求項3】
前記砕折部は、前記外周面に対する接線と直交する方向に穿設される柱状の窪みであることを特徴とする請求項1または2記載の粉砕ローラ。
【請求項4】
前記砕折部は、柱状の窪みであり、前記窪みは当該窪みの奥部に向けて窄む円錐台形状であることを特徴とする請求項1?3いずれか一項に記載の粉砕ローラ。
【請求項5】
被粉砕物を粉砕ローラによって粉砕するローラミルであって、
前記粉砕ローラとして、請求項1?4いずれか一項に記載の粉砕ローラを備えることを特徴とするローラミル。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-07-20 
出願番号 特願2019-23902(P2019-23902)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B02C)
P 1 651・ 113- YAA (B02C)
P 1 651・ 121- YAA (B02C)
P 1 651・ 851- YAA (B02C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 宮部 裕一  
特許庁審判長 宮澤 尚之
特許庁審判官 日比野 隆治
金 公彦
登録日 2020-05-11 
登録番号 特許第6702460号(P6702460)
権利者 株式会社IHI
発明の名称 粉砕ローラ及びローラミル  
代理人 西澤 和純  
代理人 高橋 久典  
代理人 清水 雄一郎  
代理人 西澤 和純  
代理人 清水 雄一郎  
代理人 寺本 光生  
代理人 高橋 久典  
代理人 寺本 光生  
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