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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H01J 審判 全部申し立て 2項進歩性 H01J |
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管理番号 | 1377796 |
異議申立番号 | 異議2020-700629 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-08-21 |
確定日 | 2021-08-04 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6659167号発明「電子銃を備えたX線発生管及びX線撮影装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6659167号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-17〕について訂正することを認める。 特許第6659167号の請求項2ないし17に係る特許を維持する。 特許第6659167号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6659167号の請求項1?17に係る特許についての出願は、平成28年3月30日に出願され、令和2年2月10日にその特許権の設定登録がされ、令和2年3月4日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 2年 8月21日 :特許異議申立人末吉直子(以下「申立人」と いう。)による請求項1?17に係る特許に 対する特許異議の申立て 令和 2年11月16日付け:取消理由通知書 令和 3年 1月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 3年 3月10日 :申立人による意見書の提出 令和 3年 4月23日付け:訂正拒絶理由通知書 令和 3年 6月 9日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提出 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和3年4月23日付けの訂正拒絶理由において、令和3年1月25日に提出された訂正請求書に添付された特許請求の範囲における訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合しないことを通知した。 これに対して、令和3年6月9日に特許権者から訂正請求書についての手続補正書が提出され、当合議体は、当該手続補正書による補正は、請求項の削除及びそれに整合させるための補正で、訂正請求書の請求の趣旨の要旨を変更しないものであり、そして、当該補正によって上記訂正拒絶理由は解消したものと判断した。 よって、本件訂正請求による訂正の内容は、上記訂正請求書についての手続補正書に記載されているとおりであり、以下の訂正事項からなる。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項2において、「サポート部材に固定されたグリッド電極を備えた電子銃を有するX線発生管であって、前記グリッド電極と前記サポート部材は、前記グリッド電極及び前記サポート部材より低い弾性係数を有する緩衝部材と、前記グリッド電極と前記緩衝部材との第一の接合部と、前記サポート部材と前記緩衝部材との第二の接合部と、を介して固定されており、」を加筆し、「請求項1に記載の」を削除して独立形式請求項へ改める訂正を行う(請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項5?17も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項2において、「前記グリッド電極と前記サポート部材がそれぞれ有する位置決め面同士の当接箇所であって、前記グリッド電極と前記サポート部材の位置関係を規制する位置決め部を有しており、」との要件を加える訂正を行う(請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項5?17も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項2において、「前記グリッド電極と前記サポート部材には熱膨張率差がある」との要件を加える訂正を行う(請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項5?17も同様に訂正する。)。 (5)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項3において、「サポート部材に固定されたグリッド電極を備えた電子銃を有するX線発生管であって、前記グリッド電極と前記サポート部材は、前記グリッド電極及び前記サポート部材より低い弾性係数を有する緩衝部材と、前記グリッド電極と前記緩衝部材との第一の接合部と、前記サポート部材と前記緩衝部材との第二の接合部と、を介して固定されており、」を加筆し、「請求項1又は2に記載の」を削除して独立形式請求項へ改める訂正を行う(請求項3を直接的又は間接的に引用する請求項5?17も同様に訂正する。)。 (6)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項3において、「前記グリッド電極と前記サポート部材がそれぞれ有する位置決め面同士の当接箇所であって、前記グリッド電極と前記サポート部材の位置関係を規制する位置決め部を有しており、」との要件を加える訂正を行う(請求項3を直接的又は間接的に引用する請求項5?17も同様に訂正する。)。 (7)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項4において、「サポート部材に固定されたグリッド電極を備えた電子銃を有するX線発生管であって、前記グリッド電極と前記サポート部材は、前記グリッド電極及び前記サポート部材より低い弾性係数を有する緩衝部材と、前記グリッド電極と前記緩衝部材との第一の接合部と、前記サポート部材と前記緩衝部材との第二の接合部と、を介して固定されており、前記グリッド電極、前記緩衝部材、前記サポート部材の線膨張率の大小関係が、サポート部材>緩衝部材>グリッド電極、又は、グリッド電極>緩衝部材>サポート部材であり、」を加筆し、「請求項3に記載の」を削除して独立形式請求項へ改める訂正を行う(請求項4を直接的又は間接的に引用する請求項5?17も同様に訂正する。)。 (8)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項4において、「前記グリッド電極と前記サポート部材がそれぞれ有する位置決め面同士の当接箇所であって、前記グリッド電極と前記サポート部材の位置関係を規制する位置決め部を有しており、」との要件を加える訂正を行う(請求項4を直接的又は間接的に引用する請求項5?17も同様に訂正する。)。 (9)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項5において、「前記位置決め部は、前記X線発生管の管軸を中心とした周方向に沿って環状に設けられている」との要件を加える訂正を行う(請求項5を直接的又は間接的に引用する請求項6?17も同様に訂正する。)。 (10)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項16において、「X線発生管」との記載を、「電子銃を有するX線発生管」に訂正する。 (11)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項5において、「請求項1乃至4」を「請求項2乃至4」と訂正する。 (12)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項13において、「請求項1乃至12」を「請求項2乃至12」と訂正する。 (13)訂正事項15 特許請求の範囲の請求項15において、「請求項1乃至14」を「請求項2乃至14」と訂正する。 (14)訂正事項16 特許請求の範囲の請求項17において、「請求項1乃至16」を「請求項2乃至16」と訂正する。 なお、訂正前の請求項1ないし17は、請求項2ないし17が請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項1ないし17について請求されている。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1を削除するものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、請求項1を削除するものである。 したがって、訂正事項1は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。 (2)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正事項4は、訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項4は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではない。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項4は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではない。 したがって、訂正事項4は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。 (3)訂正事項5 ア 訂正の目的について 訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項2において、「前記グリッド電極と前記サポート部材がそれぞれ有する位置決め面同士の当接箇所であって、前記グリッド電極と前記サポート部材の位置関係を規制する位置決め部を有している」の要件を加える訂正を行うものである。「位置決め部」を有していることを規定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項5は、発明特定事項を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 明細書の段落0031?0034及び図1?図3には、それぞれ、「グリッド電極とサポート部材がそれぞれ有する位置決め面同士の当接箇所であって、グリッド電極とサポート部材の位置関係を規制する位置決め部」が記載されている。 したがって、訂正事項5は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。 (4)訂正事項6 ア 訂正の目的について 訂正事項6は、特許請求の範囲の請求項2において、「前記グリッド電極と前記サポート部材には熱膨張率差がある」の要件を加える訂正を行うものである。「グリッド電極とサポート部材」の熱膨張率についての関係を規定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと 上記(a)の理由から明らかなように、訂正事項6は、「グリッド電極とサポート部材」を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 明細書の段落0018には、「よって、係るカソードヒーター10のオン・オフ駆動により、グリッド電極13とサポート部材14の接合部には、両部材の熱膨張率差に起因する熱応力が繰り返し作用する。」と記載されている。 したがって、訂正事項6は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。 (5)訂正事項7 ア 訂正の目的について 訂正事項7は、訂正前の請求項3の記載が訂正前の請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正を行うものである。 したがって、訂正事項7は、引用する請求項を減少させるものなので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項7は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項7は、引用する請求項の数を減少させるものである。 したがって、訂正事項7は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。 (6)訂正事項8 ア 訂正の目的について 訂正事項8は、特許請求の範囲の請求項3において、「前記グリッド電極と前記サポート部材がそれぞれ有する位置決め面同士の当接箇所であって、前記グリッド電極と前記サポート部材の位置関係を規制する位置決め部を有している」の要件を加える訂正を行うものである。「位置決め部」を有していることを規定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項8は、発明特定事項を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 明細書の段落0031?0034及び図1?図3には、それぞれ、「グリッド電極とサポート部材がそれぞれ有する位置決め面同士の当接箇所であって、グリッド電極とサポート部材の位置関係を規制する位置決め部」が記載されている。 したがって、訂正事項8は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。 (7)訂正事項9 ア 訂正の目的について 訂正事項9は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項3の記載を引用し、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1又は請求項2を引用する記載であったものを、請求項3が請求項2を引用しないものとした上で、請求項1及び請求項3を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正を行うものである。 したがって、訂正事項9は、引用する請求項を減少させるものなので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項9は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項9は、引用する請求項の数を減少させるものである。 したがって、訂正事項9は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。 (8)訂正事項10 ア 訂正の目的について 訂正事項10は、特許請求の範囲の請求項4において、「前記グリッド電極と前記サポート部材がそれぞれ有する位置決め面同士の当接箇所であって、前記グリッド電極と前記サポート部材の位置関係を規制する位置決め部を有している」の要件を加える訂正を行うものである。「位置決め部」を有していることを規定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項10は、発明特定事項を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 明細書の段落0031?0034及び図1?図3には、それぞれ、「グリッド電極とサポート部材がそれぞれ有する位置決め面同士の当接箇所であって、グリッド電極とサポート部材の位置関係を規制する位置決め部」が記載されている。 したがって、訂正事項10は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。 (9)訂正事項11 ア 訂正の目的について 訂正事項11は、特許請求の範囲の請求項5において、「位置決め部」を、「X線発生管の管軸を中心とした周方向に沿って環状に設けられている」ものに減縮するものである。 したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項11は、「位置決め部」という発明特定事項を、「X線発生管の管軸を中心とした周方向に沿って環状に設けられている」ものに減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 明細書の段落0034には、「位置決め部15は、管軸を中心とした周方向に連続する環状に設けられていても良いが、周方向に離散的に複数箇所設けられていても良い。」と記載されている。 したがって、訂正事項11は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。 (10)訂正事項12 ア 訂正の目的について 訂正事項12は、特許請求の範囲の請求項16において、「X線発生管」を「電子銃を有するX線発生管」に訂正するものである。訂正前の請求項16は、訂正前の請求項15を引用しており、訂正前の請求項15はさらに訂正前の請求項1?14のいずれか一項を記載していることから、訂正前の請求項1?14と同じ「電子銃を有するX線発生管」である。 したがって、訂正事項12は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項12は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項12は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項12は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 したがって、訂正事項12は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。 (11)訂正事項13 ア 訂正の目的について 訂正事項13は、訂正前の請求項5が請求項1乃至4の記載を引用する記載であるところ、訂正事項1で請求項1が削除されて請求項1を引用できなくなった。 したがって、訂正事項13は、引用する請求項を減少させるものなので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項13は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項13は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項13は、引用する請求項の数を減少させるものである。 したがって、訂正事項13は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。 (12)訂正事項14 ア 訂正の目的について 訂正事項14は、訂正前の請求項13が請求項1乃至12の記載を引用する記載であるところ、訂正事項1で請求項1が削除されて請求項1を引用できなくなった。 したがって、訂正事項14は、引用する請求項を減少させるものなので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項14は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項14は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項14は、引用する請求項の数を減少させるものである。 したがって、訂正事項14は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。 (13)訂正事項15 ア 訂正の目的について 訂正事項15は、訂正前の請求項15が請求項1乃至14の記載を引用する記載であるところ、訂正事項1で請求項1が削除されて請求項1を引用できなくなった。 したがって、訂正事項15は、引用する請求項を減少させるものなので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項15は、引用する請求項の数を減少させるものである。 したがって、訂正事項15は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項15は、引用する請求項の数を減少させるものである。 したがって、訂正事項15は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。 (14)訂正事項16 ア 訂正の目的について 訂正事項16は、訂正前の請求項17が請求項1乃至16の記載を引用する記載であるところ、訂正事項1で請求項1が削除されて請求項1を引用できなくなった。 したがって、訂正事項16は、引用する請求項を減少させるものなので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項16は、引用する請求項の数を減少させるものである。 したがって、訂正事項14は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項16は、引用する請求項の数を減少させるものである。 したがって、訂正事項14は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。 3 小括 したがって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 第3 本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項1ないし17に係る発明(以下順に「本件発明1」ないし「本件発明17」という。)は、下記のとおりのものである。 「【請求項1】 (削除) 【請求項2】 サポート部材に固定されたグリッド電極を備えた電子銃を有するX線発生管であって、 前記グリッド電極と前記サポート部材は、前記グリッド電極及び前記サポート部材より低い弾性係数を有する緩衝部材と、前記グリッド電極と前記緩衝部材との第一の接合部と、前記サポート部材と前記緩衝部材との第二の接合部と、を介して固定されており、 前記グリッド電極と前記サポート部材がそれぞれ有する位置決め面同士の当接箇所であって、前記グリッド電極と前記サポート部材の位置関係を規制する位置決め部を有しており、 前記緩衝部材が、前記グリッド電極及び前記サポート部材より、室温において10%以上低い弾性係数を有しており、 前記グリッド電極と前記サポート部材には熱膨張率差があることを特徴とする電子銃を有するX線発生管。 【請求項3】 サポート部材に固定されたグリッド電極を備えた電子銃を有するX線発生管であって、 前記グリッド電極と前記サポート部材は、前記グリッド電極及び前記サポート部材より低い弾性係数を有する緩衝部材と、前記グリッド電極と前記緩衝部材との第一の接合部と、前記サポート部材と前記緩衝部材との第二の接合部と、を介して固定されており、 前記グリッド電極、前記緩衝部材、前記サポート部材の線膨張率の大小関係が、サポート部材>緩衝部材>グリッド電極、又は、グリッド電極>緩衝部材>サポート部材であり、 前記グリッド電極と前記サポート部材がそれぞれ有する位置決め面同士の当接箇所であって、前記グリッド電極と前記サポート部材の位置関係を規制する位置決め部を有していることを特徴とする電子銃を有するX線発生管。 【請求項4】 サポート部材に固定されたグリッド電極を備えた電子銃を有するX線発生管であって、 前記グリッド電極と前記サポート部材は、前記グリッド電極及び前記サポート部材より低い弾性係数を有する緩衝部材と、前記グリッド電極と前記緩衝部材との第一の接合部と、前記サポート部材と前記緩衝部材との第二の接合部と、を介して固定されており、 前記グリッド電極、前記緩衝部材、前記サポート部材の線膨張率の大小関係が、サポート部材>緩衝部材>グリッド電極、又は、グリッド電極>緩衝部材>サポート部材であり、 前記緩衝部材と前記グリッド電極、及び、前記緩衝部材と前記サポート部材、のそれぞれにおいて、線膨張係数の差が1.33×10^(-5)/℃以下であり、 前記グリッド電極と前記サポート部材がそれぞれ有する位置決め面同士の当接箇所であって、前記グリッド電極と前記サポート部材の位置関係を規制する位置決め部を有していることを特徴とする電子銃を有するX線発生管。 【請求項5】 前記グリッド電極と前記サポート部材がそれぞれ有する位置決め面同士の当接箇所であって、前記グリッド電極と前記サポート部材の位置関係を規制する前記位置決め部は、前記X線発生管の管軸を中心とした周方向に沿って環状に設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項6】 前記位置決め部は、前記X線発生管の管軸方向を向く位置決め面同士の当接箇所であることを特徴とする請求項5に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項7】 前記位置決め部は、前記X線発生管の管軸方向に直交する方向を向く位置決め面同士の当接箇所であることを特徴とする請求項5に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項8】 前記位置決め部は、前記X線発生管の管軸方向を向く位置決め面同士の当接箇所と、前記X線発生管の管軸方向に直交する方向を向く位置決め面同士の当接箇所とが併存する箇所であることを特徴とする請求項6に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項9】 前記位置決め部は、前記X線発生管の管軸を中心とした周方向に離散的に位置していることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項10】 前記位置決め部は、前記X線発生管の管軸を中心とした周方向に3箇所位置していることを特徴とする請求項9に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項11】 前記X線発生管の管軸方向から前記位置決め部、前記第一の接合部及び前記第二の接合部をみたとき、 前記位置決め部と前記第一の接合部のそれぞれは、互いに重ならない部分を有し、前記位置決め部と前記第二の接合部のそれぞれは、互いに重ならない部分を有していることを特徴とする請求項5乃至10のいずれか1項に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項12】 前記第二の接合部が、前記位置決め部よりも、前記X線発生管の管軸を中心とする外周側に位置していることを特徴とする請求項5乃至11のいずれか1項に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項13】 前記第一の接合部が、前記グリッド電極及び前記緩衝部材より低い固相線温度を有する接合材による接合部であることを特徴とする請求項2乃至12のいずれか1項に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項14】 前記接合材がろう材であることを特徴とする請求項13に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項15】 前記第二の接合部の接合が、溶接による接合であることを特徴とする請求項2乃至14のいずれか1項に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項16】 前記第二の接合部が、前記緩衝部材と前記サポート部材の間に形成された隙間を有することを特徴とする請求項15に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項17】 請求項2乃至16のいずれか1項に記載のX線発生管を備えることを特徴とするX線撮影装置。」 第4 取消理由の概要 1 令和2年11月16日付け取消理由の概要 本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであり、 本件特許の請求項1-4、13-17に係る発明は、甲1に記載された発明及び周知技術、甲3に記載された発明及び周知技術、若しくは甲4に記載された発明及び周知技術、又は、本件特許の請求項5-12に係る発明は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 引用文献等一覧 甲第1号証:特開昭58-123643号公報 甲第2号証:特開2015-64950号公報 甲第3号証:特開平1-120741号公報 甲第4号証:特開2009-26600号公報 甲第5号証:特開2010-52015号公報 甲第6号証:特開昭60-61251号公報 (以下、甲第1ないし6号証を順に「甲1」ないし「甲6」と略して記載する。) 2 なお、上記取消理由で採用しなかった特許異議申立理由はない。 第5 取消理由に対する当審の判断 当審は、本件特許の請求項2?17に係る特許については、令和2年11月16日付け取消理由によって、これらの特許を取り消すことができないと判断する。 また、本件特許の請求項1に係る特許については、請求項が削除されたので、特許異議申立てを却下する。 その理由は、以下のとおりである。 1 サポート要件について サポート要件不適合の概要は、本件特許の請求項1及び2、本件特許の請求項3及び4を引用しない本件特許の請求項5-17は、サポート部材の線膨張係数とグリッド電極の線膨張係数が相違しないX線発生管も含み、サポート部材の線膨張係数とグリッド電極の線膨張係数が相違しないX線発生管は、本件特許の発明の詳細な説明に記載されていないというものである。 本件訂正により、本件特許の請求項1は削除され、本件特許の請求項2は、「前記グリッド電極と前記サポート部材には熱膨張率差がある」と訂正されたため、サポート部材の線膨張係数とグリッド電極の線膨張係数が相違しないX線発生管を含まなくなり、よって、本件特許の請求項2、本件特許の請求項2を引用する本件特許の請求項5-17に記載された発明は、本件特許の発明の詳細な説明に記載されているものとなった。 2 進歩性について (1)甲号証の記載 ア 甲1には、以下の記載がある(下線は、当審で付した。以下同様。)。 (ア)「【特許請求の範囲】 (1) ステムピンに固着された集束溝を有するカップ状集束電極と、前記ステムピンとは異なる2本のステムピンにそれぞれ接合されたパイプと、該両パイプ間に張設され前記集束溝の内側空間部分に位置するコイル状フィラメントとを具備することを特徴としたX線管用陰極。」 (イ)「発明の技術分野 この発明はX線管用陰極及びその製造方法に関する。 発明の技術的背景 一般にX線管の陰極には、熱電子放出源として直熱形コイル状フィラメントが用いられ、これと集束電極とを組合せて陰極が構成されている。」(第1頁左下欄下から2行目-右下欄6行目) (ウ)「発明の目的 この発明の目的は、集束電極とフィラメントとの相対位置を高精度に出すことができ、組立工程の簡単なX線管用陰極及びその製造方法を提供することである。」(第2頁左上欄6-10行目) (エ)「更に、前記ステム16に貫通植設されたステムビン22、23には、集束溝24を有するカップ状集束電極25が固着されている。勿論、この場合、集束溝24に前記フィラメント21が位置することになる。」(第2頁右上欄1-6行目) (オ)「次いで、治具27及び芯金26を取外した後、集束電極25をかぶせてステムビン22、23と溶接により固着すれば、第2図に示すX線管用陰極が完成する。」(第2頁右上欄下から3行目-左下欄1行目) (カ)第2図、第5図には、以下の記載がある。 (キ)したがって、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「ステムピンに溶接により固着された集束溝を有するカップ状集束電極と、前記ステムピンとは異なる2本のステムピンにそれぞれ接合されたパイプと、該両パイプ間に張設され前記集束溝の内側空間部分に位置する熱電子放出源としての直熱形コイル状フィラメントとを具備するX線管用陰極が構成されているX線管。」(以下「甲1発明」という。) イ 甲2には、以下の記載がある。 「【0019】 低剛性部35にグリッドホルダ32が接合される。このとき、Mo等の耐熱材料で作られているグリッドホルダ32とSUS(ステンレス)材質のグリッド支持体33とを溶接では接合しにくいので、ロウ付けによる接合方法を採ることになるが、ロウ付けのように高い温度にまで昇温する接合方法を採ると、熱膨張差による変形、ずれ等が生じることを考慮する必要がある。そこで、グリッド支持体33に設けた低剛性部35にグリッドホルダ32を接合することにより、低剛性部35が、高い剛性のグリッドホルダ32より先に変形して、熱膨張差による応力を吸収するので、グリッドホルダ32およびグリッドプレート30の変形を抑えることが可能となっている。」 ウ 甲3には、以下の記載がある。 (ア)「【特許請求の範囲】 (1)真空外囲器内に陰極構体と陽極ターゲットが対向して配設され、上記陰極構体は少なくともフィラメント支持体に支持された平板状陰極フィラメント及びその前方に設けられた集束電極とからなるX線管装置において、 上記フィラメント支持体及び集束電極の各外周にそれぞれ絶縁体が鑞接され、この絶縁体を介して一体化されてなることを特徴とするX線管装置。 (2)上記絶縁体は、窒化アルミ系又はアルミナ系セラミックスの絶縁物からなる特許請求の範囲第1項記載のX線管装置。」 (イ)「従って、集束電極7が発熱状態になって直接絶縁体8に熱的に負荷が掛る状態となり、集束電極7と絶縁体8との接合部が剥がれたり、絶縁体8を破壊したりしてしまう。」(第2頁左上欄下から3行目-右上欄1行目) (ウ)「(問題点を解決するための手段) この発明は、真空外囲器内に陰極構体と陽極ターゲットが対向して配設され、上記陰極構体は少なくともフィラメント支持体に支持された平板状陰極フィラメント及びその前方に設けられた集束電極とからなるX線管装置において、上記フィラメント支持体及び集束電極の各外周にそれぞれ絶縁体が鑞接され、この絶縁体を介して一体化されてなるX線管装置であり、上記絶縁体としては、窒化アルミ系又はアルミナ系セラミックスの絶縁物が使用されている。 (作用) この発明によれば、フィラメント支持体と集束電極とを絶縁する絶縁体は陰極構体の外面に設けられているので、絶縁体の断面積及び表面積を大きくすることが可能である。その結果、絶縁体自身の輻射冷却効果及び熱伝導効果の向上が期待出来る。」(第2頁左下欄7行目-右上欄4行目) (エ)「この場合、フィラメント支持体19及び集束電極15の各外周には、それぞれ絶縁体17、25と熱膨張率のほぼ等しい金属部材16、18を介して絶縁体17、25が鑞接されている。」(第3頁右上欄3-6行目) (オ)第1図は以下のとおりである。 (カ)したがって、甲3には、以下の発明が記載されていると認められる。 「真空外囲器内に陰極構体と陽極ターゲットが対向して配設され、上記陰極構体は少なくともフィラメント支持体に支持された平板状陰極フィラメント及びその前方に設けられた集束電極とからなるX線管装置において、 上記フィラメント支持体及び集束電極の各外周にそれぞれ絶縁体が鑞接され、この絶縁体を介して一体化されてなり、 上記絶縁体は、窒化アルミ系又はアルミナ系セラミックスの絶縁物からなり、 フィラメント支持体及び集束電極の各外周には、それぞれ絶縁体と熱膨張率のほぼ等しい金属部材を介して絶縁体が鑞接されているX線管装置。」(以下「甲3発明」という。) エ 甲4には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 電子ビームを発生する電子源と、 この電子源が発生した電子ビームを収束させる電子光学系と、 この電子光学系により収束された電子ビームの開き角を設定するアパチャーとを具備し、 前記電子源と前記電子光学系とは、少なくとも一方の一部が他方に嵌め込まれて前記電子光学系の軸に対して位置決めされ、 前記電子光学系と前記アパチャーとは、少なくとも一方の一部が他方に嵌め込まれて前記電子光学系の軸に対して位置決めされる ことを特徴とした電子銃。 【請求項2】 電子光学系は、 非磁性材により形成され、第1電極を支持する支持部材と、 非磁性材により形成され、前記支持部材と別体の第2電極と、 非磁性材により形成され、前記支持部材と前記第2電極とを絶縁する絶縁部材とを備えている ことを特徴とした請求項1記載の電子銃。 【請求項3】 電子光学系は、支持部材および第2電極と絶縁部材との間に、この絶縁部材との熱膨張率差が、前記支持部材および前記第2電極と前記絶縁部材との熱膨張率差よりも小さい緩衝部材を備えている ことを特徴とした請求項2記載の電子銃。 【請求項4】 支持部材と第2電極との少なくともいずれか一方の絶縁部材との接合部に、応力吸収用のスリットが設けられている ことを特徴とした請求項2または3記載の電子銃。 【請求項5】 透過ターゲットを備え、接地電位に設定された真空容器と、 この真空容器内に収納された請求項1ないし4いずれか記載の電子銃と を具備したことを特徴としたX線源。」 (イ)「【0062】 次に、図4および図5に、第3の実施の形態を示す。なお、上記各実施の形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。 【0063】 この第3の実施の形態は、収束レンズ32のレンズ筐体61と絶縁筒72との間、および、レンズ第2電極73と絶縁筒72との間に、ロウ材111を挟んで、緩衝部材としての緩衝用リング112をそれぞれ装着するものである。 【0064】 ここで、レンズ筐体61、レンズ第1電極71およびレンズ第2電極73は、それぞれ加工が容易で安価な非磁性材である例えばステンレス製とし、絶縁筒72は、非磁性材である例えばセラミックス製とし、緩衝用リング112は、絶縁筒72を形成するセラミックスと熱膨張率が近い非磁性材である例えばチタン製とし、かつ、ロウ材111としては、例えばメタライズ処理を施さなくてもセラミックスと金属の直接接合が可能な活性ロウを選択する。 【0065】 また、レンズ筐体61には、緩衝用リング112と接合する部分に、筒状の接合部115が軸方向に突設されている。この接合部115は、薄肉に形成され、等位相すなわち周方向に略等間隔に、複数のスリット116が軸方向に沿って形成され、歪み(応力)を吸収する構造とする。 【0066】 同様に、レンズ第2電極73には、緩衝用リング112と接合する部分に、筒状の接合部118が軸方向に突設されている。この接合部118は、薄肉に形成され、等位相すなわち周方向に略等間隔に、複数のスリット119が軸方向に沿って形成され、歪み(応力)を吸収する構造とする。 【0067】 一般的に、電子銃ユニットにおいては、セラミックスにより構成した絶縁筒と、金属製構成材とを接合することが必要となるが、このときの接合方法としては、高温のベーキングに耐えうるようにロウ付け接合が最も妥当なものとなる。このとき、一般的な手法としては、金属との接合部のセラミックス表面にあらかじめモリブデン(Mo)-マンガン(Mn)合金を塗布し、高温でセラミックス内部に浸透させるメタライズという手法が採られ、これに対してセラミックスと最も近い熱膨張率を持つコバール合金で構成された部品が接合される。しかしながら、マンガンおよびコバール合金は磁性材であるため、着磁作用によって残留磁場が生じた場合には、電子ビームの軌道が影響を受けるおそれがある。 【0068】 そこで、本実施の形態では、電子ビーム28が通過する近傍の構成材であるレンズ筐体61、レンズ第1電極71、絶縁筒72、レンズ第2電極73、および、緩衝用リング112などを全て非磁性材とすることにより、電子ビーム28の軌道に対する影響を排除できる電子源31および収束レンズ32を提供でき、安定した電子ビーム収束性能を持った低エネルギ微小焦点型のX線源11を提供することが可能となる。 【0069】 また、レンズ筐体61をステンレス製とすることによって同じステンレス製のレンズ第1電極71をスポット溶接で簡単に接合することが可能となり、製造性が向上する。 【0070】 さらに、絶縁筒72との熱膨張率差が、レンズ筐体61(レンズ第2電極73)と絶縁筒72との熱膨張率差よりも小さい緩衝用リング112を、レンズ筐体61およびレンズ第2電極73と絶縁筒72との間に設けることで、熱膨張などによる接合部115,118への応力によってレンズ筐体61およびレンズ第2電極73と絶縁筒72との接合面にて破損が生じることを抑制できる。 【0071】 そして、接合部115,118には、応力を吸収するためのスリット116,119を設けることで、レンズ筐体61およびレンズ第2電極73と緩衝用リング112との接合時に発生する応力がスリット116,119による接合部115,118の変形によって分散して加えられ、歪みを吸収でき、これによりセラミックス製の絶縁筒72が接合部分から破損することを防止できる。」 (ウ)図1、図4は以下のとおりである。 (エ)したがって、甲4には、以下の発明が記載されていると認められる。 「レンズ第2電極73と絶縁筒72との間に、この絶縁筒72との熱膨張率差が、前記レンズ第2電極73と前記絶縁筒72との熱膨張率差よりも小さい緩衝部材を備え、 レンズ第2電極73と絶縁筒72との間に、ロウ材111を挟んで、緩衝部材としての緩衝用リング112を装着するものである電子銃を具備したX線源。」(以下「甲4発明」という。) オ 甲5には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 第1の部材と、前記第1の部材と熱膨張係数が異なる第2の部材との間に、ヤング率が150GPa以下でありかつ融点が1500K以下である第3の部材を、金属ろう材を介して配設してろう付接合することを特徴とする異材接合体の製造方法。」 (イ)「【0007】 以上のような理由から、高い熱伝達率を求められる真空チャック装置や冷却板などに使用する部材は、金属部材とセラミックス部材とを、金属ろう材を用いたろう付等の高温接合することが必要である。そこで、上述した問題を解決するために、特許文献1および特許文献2に示されるように、2つの部材の中間に、複数層(具体的には、3層。)からなる応力緩和層(または、ダンパ層。)を設けることが提案されている。応力緩和層の材質は、熱膨張係数が2つの部材の材質の熱膨張係数の中間である材質である。 【0008】 上述の方法を、図を基に説明する。図4は、特許文献2に示された3層の応力緩和層を有する異材接合体の製造方法を示す概略図である。図4(A)は、接合の過程を示し、図4(B)は、接合後の状態を示す。図4(A)に示すように、この方法においては、セラミック部材(ここでは、セラミックスとして、アルミナあるいは窒化アルミなどから成るセラミックスを使用している。)201と、金属部材(ここでは、金属部材として第1酸化銅1を20?80%体積含む銅複合材を使用している。)202を、三つの応力緩和層(221、222、223)を介して、金属ろう材205によってろう付する。ここで、応力緩和層(221、222、223)は、それぞれ第1酸化銅を20?80%体積含む複合材で形成され、熱膨張係数が、セラミック部材201側の応力緩和層223から金属部材202側の応力緩和層221へ、順に大きくなるように設定されている。そして図4(B)に示すように、最終的に3層構造の応力緩和層(221、222、223)を有する接合体が形成されている。応力緩和層(221、222、223)の熱膨張係数が、セラミックス部材201側から逓増するように設定することで、熱歪によるセラミックス部材201の破損や反りを抑制するものである。」 (ウ)「【0028】 以上説明した方法によって、本発明の第1の実施形態に係る異材接合体が形成される。本発明の異材接合体は、図1(B)に示すように、ろう付された状態で、3層構造となる。即ち、図1(B)に向かって、上から第1の部材1、第3の部材3、第2の部材2の3層構造である。言い換えれば、熱膨張係数が、5×10^(-6)/℃以上異なる第1の部材1と第2の部材2との間に、ヤング率が150GPa以下かつ融点が1500K以下の低ヤング率かつ低融点の第3の部材3が存在する3層構造となる。熱処理時に、第1の部材1と第2の部材2との熱膨張係数の差によって生じる熱歪は、第3の部材3に対する応力として働く。しかし、第3の部材3が低ヤング率の材質で形成されているため、この応力は第3の部材3の内部応力として吸収されて緩和される。また、第3の部材3は、低融点の材質で形成されているため、前記内部応力は、接合熱処理時の回復機構によって応力が開放されて減少する。従って、第1の部材1と第2の部材2との熱膨張係数の差によって生じる熱歪は、これによって吸収されることになり、異材部材接合材の破損や反りが抑制される。また、上述した本発明の第1の実施形態に係る異材接合体の製造方法によれば、第1の部材1と第2の部材2との間に、所定の範囲のヤング率および融点を有する材質で形成した第3の部材3を介在させてろう付するだけで、異材接合体の破損や反りを抑制することができる。そして、第3の部材3については、ヤング率および融点に留意するだけで、熱膨張率について考慮する必要がない。即ち、上述した特許文献に開示されたように、複数の応力緩和層をそれぞれの熱膨張係数を所定の範囲に設定して形成する作業、およびろう付時に複数の応力緩和層を、それぞれの熱膨張係数に基づいて所定の順番に配置する作業を行う必要がない。即ち、これらの作業を軽減することができる。従って、製造工程の効率を改善することができ、製品コストを抑制することができる。」 (エ)「 」 (オ)「【0045】 本実施例1においては、第2のプレート12の材質としてチタン(Ti。熱膨張係数8.9×10^(-6)/℃。)を用いた。上述した第2のプレート第1部材12aと第2のプレート第2部材12bをチタンで形成し、ろう付して冷却孔21を有する第2のプレート(冷却板基材)12を形成した。また、第1のプレート11は、炭化ケイ素(SiC。熱膨張係数4×10^(-6)/℃。)のセラミックスプレートを使用した。更に、第3のプレート13の材質として、アルミニウム(Al。ヤング率76GPa、融点933K。)を用い、アルミニウムプレートを形成して使用した。金属ろう材15としては、アルミニウム系金属ろう材を使用した。第1のプレート11と第2のプレート12との熱膨張係数の差は、本実施例1においては、5.9×10^(-6)/℃である。」 (カ)「【0058】 ここで、第1のプレート11、第3のプレート13および第2のプレート12は、本発明の第1の実施形態に係る異材接合体の製造方法によって、ろう付されて形成される。本実施例2においては、第1のプレート11として、ESC機能を有するアルミナ(Al_(2)O_(3)。熱膨張係数7.5×10^(-6)/℃。)のセラミックスプレートを使用した。また、第2のプレート12として、予め内部に冷却孔または加熱工21が形成された、チタン(Ti。熱膨張係数8.9×10^(-6)/℃。)からなるチタンプレートを使用した。更に第3のプレート13として、アルミニウム(Al。ヤング率76GPa、融点933K。)からなるアルミニウムプレートを使用した。」 (キ)図1-3は以下のとおりである。 カ 甲6には、以下の記載がある。 (ア)「本発明に係る異種材料の接合構造では、2種以上の被接合材料間に中間層としてその被接合材料のいずれよりも弾性係数の小さな材料を一体的に介在さす、これにより被接合材料間に生じる熱膨張差を異種材料間に設けた中間層によって吸収するようにしている。」(第2頁右上欄7-12行目) (イ)「詳述すると、主体部分2を構成するステンレス鋼としては、熱伝導率が15kcal/mh℃、熱膨張係数が14×10^(-6)m/m℃,弾性係数が21000Kg/mm^(2)のものを使用している。また、表面部分3を構成するジルコニアとしては、熱伝導率が1?5kcal/mh℃,熱膨張係数が1×10^(-6)m/m℃、弾性係数が10000Kg/mm^(2)のもの全使用している。そして、中間層4を構成するニッケル・カーボン複合材としては、カーボン繊維をニッケル・クロム合金で固めたもので、熱伝導率が100kcal/mh℃、熱膨張係数が10×10^(-6)m/m℃、弾性係数が1000Kg/mm^(2)のものを使用している。」(第2頁左下欄下から7行目-右上欄5行目) (2)対比・検討 訂正前の請求項5について甲3発明及び周知技術、又は甲4発明及び周知技術に基づいて取消理由を通知しておらず、訂正前の請求項5の構成を、訂正後の請求項2?14を備えることになったので、甲3発明及び周知技術、又は甲4発明及び周知技術に基づく取消理由の対象となる請求項は存在しない。 以下、甲1発明に基づく取消理由について検討する。 ア 本件発明2について (ア) 甲1発明の「ステムピン」は、本件発明2の「サポート部材」に、 甲1発明の「カップ状集束電極」は、本件発明2の「グリッド電極」に、 甲1発明の「ステムピンに溶接により固着された集束溝を有するカップ状集束電極」は、本件発明2の「サポート部材に固定されたグリッド電極」に、 甲1発明の「X線管」は、本件発明2の「X線発生管」に、 それぞれ相当する。 (イ)甲1発明は、熱電子放出源としての直熱形コイル状フィラメントとカップ状集束電極とを組み合わせて構成されたX線管用陰極であるから、電子銃といえる。 (ウ)したがって、本件発明2と甲1発明とは、 「サポート部材に固定されたグリッド電極を備えた電子銃を有するX線発生管。」の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1)本件発明2は、「前記グリッド電極と前記サポート部材は、前記グリッド電極及び前記サポート部材より低い弾性係数を有する緩衝部材と、前記グリッド電極と前記緩衝部材との第一の接合部と、前記サポート部材と前記緩衝部材との第二の接合部と、を介して固定されており、前記グリッド電極と前記サポート部材がそれぞれ有する位置決め面同士の当接箇所であって、前記グリッド電極と前記サポート部材の位置関係を規制する位置決め部を有」するのに対し、甲1発明は、そのような構成を有していない点。 (相違点2)本件発明2は、「前記緩衝部材が、前記グリッド電極及び前記サポート部材より、室温において10%以上低い弾性係数を有」するのに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているか明らかでない点。 (相違点3)本件発明2は、「前記グリッド電極と前記サポート部材には熱膨張率差がある」のに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているか明らかでない点。 (エ)相違点についての検討 上記相違点1について検討する。 a X線発生管に関する技術において、グリッド電極とサポート部材が、熱の影響により、変形、ずれ、破壊、剥がれ、破損が生じることは、周知の課題である。 また、相互に接続すべき部材よりも低い弾性係数を有する緩衝部材を間に介在させて接合する技術は、種々の分野で一般的に採用されている周知技術である(必要ならば、甲5、甲6を参照されたい。)。 b そして、上記の周知な課題を解決するために、上記一般的に採用されている周知技術を、甲1発明に適用できるかもしれないが、そのように、集束電極とステムピンとの間に緩衝部材を設けると、集束電極とステムピンが高精度に位置を合わせしにくくなる。 そうすると、上記一般的に採用されている周知技術を、甲1発明に適用した場合には、集束電極とステムピンとの間の熱応力を低減できるが、集束電極とステムピンとの位置関係を規制しにくくなり、甲1発明の場合には、集束電極とステムピンとの位置関係を規制できるが、集束電極とステムピンとの間の熱応力を低減できなくなる。 すなわち、集束電極とステムピンとの間に緩衝部材を設け、熱応力を低減し、集束電極とステムピンとの当接部分を位置決め部とし、位置関係を規制しようとする技術思想、構成は、甲1発明及び周知技術から導き出せないといえる。 c さらに、申立人が令和3年3月10日付けで提出した甲第7号証(特開平6-290721号公報)、甲第8号証(再公表特許2016-027575号)、甲第9号証(実願昭57-111130号(実開昭59-16063号)のマイクロフィルム)から、上記技術思想、構成は導き出せない。 (オ)したがって、本件発明1は、相違点2、3を検討するまでもなく、当業者であっても、甲1発明及び周知技術に基づいて容易に発明ができたものとはいえない。 イ 本件発明3?17について 本件発明3?17は、本件発明2の「前記グリッド電極及び前記サポート部材より低い弾性係数を有する緩衝部材と、前記グリッド電極と前記緩衝部材との第一の接合部と、前記サポート部材と前記緩衝部材との第二の接合部と、を介して固定されており、前記グリッド電極と前記サポート部材がそれぞれ有する位置決め面同士の当接箇所であって、前記グリッド電極と前記サポート部材の位置関係を規制する位置決め部を有している」と同一の構成を備えるものであるから、本件発明2と同じ理由により、当業者であっても、甲1発明及び周知技術に基づいて容易に発明ができたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本件請求項2?17に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件請求項2?17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件請求項1に係る特許は、訂正により削除されたため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、この特許についての特許異議の申立ては却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (削除) 【請求項2】 サポート部材に固定されたグリッド電極を備えた電子銃を有するX線発生管であって、 前記グリッド電極と前記サポート部材は、前記グリッド電極及び前記サポート部材より低い弾性係数を有する緩衝部材と、前記グリッド電極と前記緩衝部材との第一の接合部と、前記サポート部材と前記緩衝部材との第二の接合部と、を介して固定されており、 前記グリッド電極と前記サポート部材がそれぞれ有する位置決め面同士の当接箇所であって、前記グリッド電極と前記サポート部材の位置関係を規制する位置決め部を有しており、 前記緩衝部材が、前記グリッド電極及び前記サポート部材より、室温において10%以上低い弾性係数を有しており、 前記グリッド電極と前記サポート部材には熱膨張率差があることを特徴とする電子銃を有するX線発生管。 【請求項3】 サポート部材に固定されたグリッド電極を備えた電子銃を有するX線発生管であって、 前記グリッド電極と前記サポート部材は、前記グリッド電極及び前記サポート部材より低い弾性係数を有する緩衝部材と、前記グリッド電極と前記緩衝部材との第一の接合部と、前記サポート部材と前記緩衝部材との第二の接合部と、を介して固定されており、 前記グリッド電極、前記緩衝部材、前記サポート部材の線膨張率の大小関係が、サポート部材>緩衝部材>グリッド電極、又は、グリッド電極>緩衝部材>サポート部材であり、 前記グリッド電極と前記サポート部材がそれぞれ有する位置決め面同士の当接箇所であって、前記グリッド電極と前記サポート部材の位置関係を規制する位置決め部を有していることを特徴とする電子銃を有するX線発生管。 【請求項4】 サポート部材に固定されたグリッド電極を備えた電子銃を有するX線発生管であって、 前記グリッド電極と前記サポート部材は、前記グリッド電極及び前記サポート部材より低い弾性係数を有する緩衝部材と、前記グリッド電極と前記緩衝部材との第一の接合部と、前記サポート部材と前記緩衝部材との第二の接合部と、を介して固定されており、 前記グリッド電極、前記緩衝部材、前記サポート部材の線膨張率の大小関係が、サポート部材>緩衝部材>グリッド電極、又は、グリッド電極>緩衝部材>サポート部材であり、 前記緩衝部材と前記グリッド電極、及び、前記緩衝部材と前記サポート部材、のそれぞれにおいて、線膨張係数の差が1.33×10^(-5)/℃以下であり、 前記グリッド電極と前記サポート部材がそれぞれ有する位置決め面同士の当接箇所であって、前記グリッド電極と前記サポート部材の位置関係を規制する位置決め部を有していることを特徴とする電子銃を有するX線発生管。 【請求項5】 前記グリッド電極と前記サポート部材がそれぞれ有する位置決め面同士の当接箇所であって、前記グリッド電極と前記サポート部材の位置関係を規制する前記位置決め部は、前記X線発生管の管軸を中心とした周方向に沿って環状に設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項6】 前記位置決め部は、前記X線発生管の管軸方向を向く位置決め面同士の当接箇所であることを特徴とする請求項5に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項7】 前記位置決め部は、前記X線発生管の管軸方向に直交する方向を向く位置決め面同士の当接箇所であることを特徴とする請求項5に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項8】 前記位置決め部は、前記X線発生管の管軸方向を向く位置決め面同士の当接箇所と、前記X線発生管の管軸方向に直交する方向を向く位置決め面同士の当接箇所とが併存する箇所であることを特徴とする請求項6に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項9】 前記位置決め部は、前記X線発生管の管軸を中心とした周方向に離散的に位置していることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項10】 前記位置決め部は、前記X線発生管の管軸を中心とした周方向に3箇所位置していることを特徴とする請求項9に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項11】 前記X線発生管の管軸方向から前記位置決め部、前記第一の接合部及び前記第二の接合部をみたとき、 前記位置決め部と前記第一の接合部のそれぞれは、互いに重ならない部分を有し、前記位置決め部と前記第二の接合部のそれぞれは、互いに重ならない部分を有していることを特徴とする請求項5乃至10のいずれか1項に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項12】 前記第二の接合部が、前記位置決め部よりも、前記X線発生管の管軸を中心とする外周側に位置していることを特徴とする請求項5乃至11のいずれか1項に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項13】 前記第一の接合部が、前記グリッド電極及び前記緩衝部材より低い固相線温度を有する接合材による接合部であることを特徴とする請求項2乃至12のいずれか1項に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項14】 前記接合材がろう材であることを特徴とする請求項13に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項15】 前記第二の接合部の接合が、溶接による接合であることを特徴とする請求項2乃至14のいずれか1項に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項16】 前記第二の接合部が、前記緩衝部材と前記サポート部材の間に形成された隙間を有することを特徴とする請求項15に記載の電子銃を有するX線発生管。 【請求項17】 請求項2乃至16のいずれか1項に記載のX線発生管を備えることを特徴とするX線撮影装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-07-19 |
出願番号 | 特願2016-67013(P2016-67013) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(H01J)
P 1 651・ 537- YAA (H01J) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 大門 清 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
松川 直樹 野村 伸雄 |
登録日 | 2020-02-10 |
登録番号 | 特許第6659167号(P6659167) |
権利者 | キヤノン株式会社 |
発明の名称 | 電子銃を備えたX線発生管及びX線撮影装置 |
代理人 | 渡辺 敬介 |
代理人 | 渡辺 敬介 |
代理人 | 山口 芳広 |
代理人 | 山口 芳広 |