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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H02M
審判 全部申し立て 2項進歩性  H02M
管理番号 1377798
異議申立番号 異議2020-700676  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-09-09 
確定日 2021-08-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6671126号発明「直流電源装置および空気調和機」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6671126号の明細書,特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書,特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第6671126号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6671126号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は,平成27年9月7日の出願であって,令和2年3月5日にその特許権の設定登録がされ,令和2年3月25日に特許掲載公報が発行された。

その特許についての本件特許異議の申し立ての経緯は,次のとおりである。

令和2年 9月 9日 :特許異議申立人 角田 朗(以下,「申立人」という。)による特許異議の申立て
令和2年11月18日付け:取消理由通知書
令和3年 1月 6日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和3年 3月17日付け:申立人による意見書の提出
令和3年 4月23日付け:訂正拒絶理由通知書
令和3年 6月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書に係る手続補正書の提出

第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
令和3年6月1日提出の手続補正書で補正された令和3年1月6日提出の訂正請求書による訂正の請求は,「特許第6671126号の明細書,特許請求の範囲を,本訂正請求書に添付した訂正明細書,特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1?8について訂正することを求める。」ものであり,その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(なお,下線は訂正部分を示す。)。

(1)訂正事項1-1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の第7段落の「前記整流回路と前記平滑コンデンサの負極と間に接続されて、前記整流回路に通流する瞬時電流を検出する第1の電流検出手段と、」との記載を,「前記整流回路と前記平滑コンデンサの負極との間に接続されて、前記整流回路に通流する瞬時電流を検出する第1の電流検出手段と、」に訂正する。(請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2ないし8についても同様に訂正する。)

(2)訂正事項1-2
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の第10段落の「前記第1の電流検出手段は,前記交流電源の一端側の電圧が正極性かつ前記第2のスイッチング素子がオフ状態の場合と、前記交流電源の一端側の電圧が負極性かつ前記第1のスイッチング素子がオフ状態の場合の瞬時電流を検出し、」との記載を,「前記第1の電流検出手段は、前記交流電源の他端側の電圧が正極性かつ前記第2のスイッチング素子がオフ状態の場合と、前記交流電源の他端側の電圧が負極性かつ前記第1のスイッチング素子がオフ状態の場合の瞬時電流を検出し、」に訂正する。

(3)訂正事項1-3
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の第11段落の「前記制御手段は、負荷の大きさに基づいて、」との記載を,「前記制御手段は、」に訂正する。(請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2ないし8についても同様に訂正する。)

(4)訂正事項1-4
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の第12段落の「前記交流電源の電圧の極性に同期して・・・部分スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、」との記載を,「負荷の大きさに基づいて、前記交流電源の電圧の極性に同期して・・・部分スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、」に訂正する。(請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2ないし8についても同様に訂正する。)

(5)訂正事項1-5
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の第12段落の「前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御を実施するモードと、」との記載を,「前記交流電源の電圧の極性に同期して極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御を実施するモードと、」に訂正する。(請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2ないし8についても同様に訂正する。)

(6)訂正事項1-6
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の第13段落の冒頭の「前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および交流全周期に亘って・・・」との記載を,「負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および交流全周期に亘って・・・」に訂正する。(請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2ないし8についても同様に訂正する。)

(7)訂正事項1-7
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の第13段落の「・・・前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、」との記載を,「・・・前記リアクトルを所定周波数 かつ前記瞬時電流に基づいて算出した通流率で短絡する高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、」に訂正する。(請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2ないし8についても同様に訂正する。)

(8)訂正事項1-8
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の第14段落の「前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、」との記載を,「負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、」に訂正する。(請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2ないし8についても同様に訂正する。)

(9)訂正事項1-9
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の第15段落の「前記同期整流制御を実施するモードと、前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、」との記載を,「負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、」に訂正する。(請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2ないし8についても同様に訂正する。)

(10)訂正事項1-10
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の第16段落の「前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、」との記載を,「負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、」に訂正する。(請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2ないし8についても同様に訂正する。)

(11)訂正事項1-11
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の第17段落の「前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、」との記載を,「負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、」に訂正する。(請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2ないし8についても同様に訂正する。)

(12)訂正事項1-12
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の第18段落の「前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、」との記載を,「負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、」に訂正する。(請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2ないし8についても同様に訂正する。)

(13)訂正事項1-13
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の第19段落の「前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、のうちいずれかを実施する、」との記載を,「負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、のうちいずれかを実施する、」に訂正する。(請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2ないし8についても同様に訂正する。)

(14)訂正事項2
明細書の段落【0007】の「・・・、前記整流回路と前記平滑コンデンサの負極と間に接続されて、前記整流回路に通流する瞬時電流を検出する第2の電流検出手段とを備え、・・・、前記第1の電流検出手段は、前記交流電源の一端側の電圧が正極性かつ前記第2のスイッチング素子がオフ状態の場合と、前記交流電源の一端側の電圧が負極性かつ前記第1のスイッチング素子がオフ状態の場合の瞬時電流を検出し、前記制御手段は、負荷の大きさに基づいて、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、前記同期整流制御を実施するモードと、前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、のうちいずれかを実施することを特徴とする。・・・」との記載を,「・・・、前記整流回路と前記平滑コンデンサの負極との間に接続されて、前記整流回路に通流する瞬時電流を検出する第2の電流検出手段とを備え、・・・、前記第1の電流検出手段は、前記交流電源の他端側の電圧が正極性かつ前記第2のスイッチング素子がオフ状態の場合と、前記交流電源の他端側の電圧が負極性かつ前記第1のスイッチング素子がオフ状態の場合の瞬時電流を検出し、前記制御手段は、負荷の大きさに基づいて、前記交流電源の電圧の極性に同期して極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数かつ前記瞬時電流に基づいて算出した通流率で短絡する高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、のうちいずれかを実施することを特徴とする。・・・」に訂正する。

2.訂正要件についての判断
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし8について,請求項2ないし8は,請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって,訂正される請求項1に連動して請求項2ないし8も訂正されるものである。したがって,訂正前の請求項1ないし8に対応する訂正後の請求項1ないし8は,特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

(2)訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.訂正事項1-1について(なお,下線は当審で付与。以下同じ。)
訂正事項1-1は,訂正前の請求項1の第7段落の「前記整流回路と前記平滑コンデンサの負極と間に接続されて、前記整流回路に通流する瞬時電流を検出する第1の電流検出手段と、」との記載を,「前記整流回路と前記平滑コンデンサの負極との間に接続されて、前記整流回路に通流する瞬時電流を検出する第1の電流検出手段と、」に訂正するものであって,明らかに誤記を訂正するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。
そして,本件特許の願書に添付した明細書(以下,単に「本件特許明細書」という。)の段落【0015】には,「・・・。シャント抵抗R1はMOSFET(Q2)のソース端子と平滑コンデンサC1の負極端子の間に接続されている。・・・」と記載されている。したがって,訂正事項1-1は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
さらに,訂正事項1-1は実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

イ.訂正事項1-3,1-4,1-6,1-8ないし1-13について
訂正事項1-3,1-4,1-6,1-8ないし1-13の,訂正前の請求項1の第11段落の「前記制御手段は、負荷の大きさに基づいて、」との記載を,「前記制御手段は、」に訂正し,第12段落から第19段落の冒頭に「負荷の大きさに基づいて、」を挿入する訂正は,第12段落から第19段落の「切り替え」中におけるモードの切り替えが負荷の大きさに基づいて行われていることを明確にするものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして,本件特許の本件特許明細書の段落【0081】には,「図16は、負荷の大きさに応じた直流電源装置の動作モードの切り替えを説明した図である。この図において、第1の閾値を「閾値#1」、第2の閾値を「閾値#2」と省略して記載している。また、第1?第8の制御方法を単に「#1」から「#8」と省略して記載している。第1制御方法は、予め決められた第1の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、同期整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。なお、図面では、部分スイッチング制御のことを「部分SW」と省略して記載している。」と記載され,段落【0082】には,「第2制御方法は、予め決められた第1の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、同期整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。なお、図面では、高速スイッチング制御のことを「高速SW」と省略して記載している。」と記載され,段落【0083】には,「第3制御方法は、予め決められた第1、第2の閾値情報に基づいて、同期整流制御を行うモードと、同期整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、同期整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードと、を切り替えるというものである。」と記載され,段落【0084】には,「第4制御方法は、予め決められた第1の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、ダイオード整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。」と記載され,段落【0085】には,「第5制御方法は、予め決められた第1の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、ダイオード整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。」と記載され,段落【0086】には,「第6制御方法は、予め決められた第1、第2の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、ダイオード整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、ダイオード整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。」と記載され,段落【0087】には,「第7制御方法は、予め決められた第1、第2の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、ダイオード整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、同期整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。」と記載され,段落【0088】には,「第8制御方法は、予め決められた第1、第2の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、同期整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、ダイオード整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。」と記載され,また,図16によれば,「閾値#1」及び「閾値#2」が異なる負荷の大きさを表していることが読み取れる。
したがって,訂正事項1-3,1-4,1-6,1-8ないし1-13は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
さらに,訂正事項1-3,1-4,1-6,1-8ないし1-13は実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ.訂正事項1-5について
訂正前の請求項1には「前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする・・・」と記載されているところ,ここでいう電圧の「極性に同期して」の意味するところが不明確であり,訂正前の請求項1の記載には明瞭でない記載が存在する。
これに対して,訂正後の請求項1では「前記交流電源の電圧の極性の極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする・・・」と訂正したものである。そして,発明の詳細な説明には,例えば段落【0035】に「・・・。そこで、MOSFET(Q1)をオンさせて、MOSFET(Q1)のオン抵抗の部分に電流を流すことで、導通損失の低減を図ることが可能である。これが、いわゆる同期整流制御の原理である。なお、MOSFET(Q1)のオン動作開始のタイミングとしては、交流電源電圧Vsの極性が負から正に切り替わるゼロクロスのタイミングから行う。MOSFET(Q1)のオフさせるタイミングとしては、交流電源電圧Vsの極性が正から負に切り替わるタイミングである。」と記載され,スイッチング素子のオン/オフを,電圧の極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで行うことを意味しているとものと理解することができる。
そうすると,訂正事項1-5は,訂正前の不明瞭さを正してその記載の本来の意味内容を発明の詳細な説明の記載に基づいて明確なものとするものであるといえ,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるということができる。
したがって,訂正事項1-5は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして,訂正事項1-5は上述のとおり,明瞭でない記載の釈明を目的として訂正前の不明瞭さを発明の詳細な説明の記載に基づいて正すものであって,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

エ.訂正事項1-7について
訂正事項1-7は,訂正前の請求項1の「高速スイッチング制御」の「所定周波数で短絡する」ことが,「所定周波数かつ瞬時電流に基づいて算出した通流率で短絡する」こととして構成を付加して限定し,さらに,訂正前の請求項1の「瞬時電流」が「通流率」の「算出」に用いられるものであるとして,「瞬時電流」の技術的意味を明確にしたものである。
したがって,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」,及び第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして,本件特許明細書の段落【0082】には,「第2制御方法は、予め決められた第1の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、同期整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。」と,また,段落【0039】には,「≪高速スイッチング動作≫次に直流電圧Vdの昇圧と力率の改善を行う高速スイッチング動作について説明する。この動作モードでは、あるスイッチング周波数でMOSFET(Q1、Q2)をスイッチング制御して、リアクトルL1を介して回路を短絡させ(以降、「力率改善動作」と呼ぶ)、回路に短絡電流(以降、「力率改善電流」と呼ぶ)を通流させることで、直流電圧Vdの昇圧と力率の改善を行う。」と記載され,本件特許明細書には,同期整流制御および交流全周期に亘って,MOSFET(Q1,Q2)をスイッチング制御して,リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御を同時に実施するモードが記載されているといえる。
さらに,高速スイッチング制御に関して,本件特許明細書の段落【0059】には,「さらに、MOSFETのデューティdは、式(7)のように表すことが可能である。【数7】 d=1-k_(p)・|i_(s)|=1-|i_(s)|/a/I_(s) ・・・(7) 但し、is:回路電流瞬時値」と,さらに,段落【0060】には,「以上より、式(6)に示したKp×Isを制御することで、交流電源電圧Vsの実効値のa倍に昇圧可能であり、そのときのMOSFETのデューティd(通流率)は、式(7)で与えることができる。」と記載され,本件特許明細書には,リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング動作時のMOSFETのスイッチング制御が,回路電流瞬時値に基づいて算出される通流率で行われることが記載されている。
したがって,訂正事項1-7は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
さらに,訂正事項1-7は実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

オ.訂正事項1-2について
上記訂正事項1-7によって,「前記同期整流制御および・・・高速スイッチング制御を同時に実施するモード」で「瞬時電流に基づいて算出した通流率で短絡」するものと訂正され,「前記同期整流制御および・・・高速スイッチング制御を同時に実施するモード」において,「瞬時電流」が用いられるものとなった。
そして,この「モード」における「瞬時電流」は,本件特許明細書の段落【0056】に,「ここで、回路電流is(瞬時値)はシャント抵抗R1で検出した値であり、回路電流実効値Isはカレントトランス11にて検出した値である。交流電源電圧Vsが正の極性の場合、・・・。つまり、MOSFET(Q2)がオフ状態のとき(MOSFET(Q1)はオンまたはオフ)、言い換えると力率改善動作を行っていないときに回路電流is(瞬時値)を検出する。交流電源電圧Vsが負の極性の場合は同様にして、MOSFET(Q1)がオフ状態のとき(MOSFET(Q2)はオンまたはオフ)、言い換えると力率改善動作を行っていないときに回路電流is(瞬時値)を検出する。」と記載され,交流電源電圧Vsが正の極性の場合(図1における「VS」の上側の端子がプラスになる場合)に,MOSFET(Q2)がオフ状態のとき,言い換えると力率改善動作を行っていないとき(「同期整流」中または「ダイオード整流」中),または,交流電源電圧Vsが負の極性の場合(図1における「VS」の下側の端子がプラスになる場合)に,MOSFET(Q1)がオフ状態のとき,言い換えると力率改善動作を行っていないとき(「同期整流」中または「ダイオード整流」中),に 回路電流is(瞬時値)の検出を行うものである。
しかしながら,訂正前の請求項1における「瞬時値電流」(「回路電流瞬時値」に対応)は,「前記交流電源の一端側の電圧が正極性かつ前記第2のスイッチング素子がオフ状態の場合と、前記交流電源の一端側の電圧が負極性かつ前記第1のスイッチング素子がオフ状態の場合の瞬時電流を検出」するものであって,そして,訂正前の請求項1における「交流電源の一端側」は,「交流電源」のうち「前記第1のダイオードのアノードと前記第2のダイオードのカソードとが」「接続され」る端(図1における「VS」の下側)であるから,請求項1の記載における「交流電源の一端側の電圧が正極性」は,段落【0056】における「交流電源電圧Vsが負の極性の場合」に相当することになっていた(請求項1の記載と,実施例の記載では,交流電源の極性の記載が反対になっている)。そして,訂正前の請求項1の「前記交流電源の一端側の電圧が正極性かつ前記第2のスイッチング素子がオフ状態の場合と,前記交流電源の一端側の電圧が負極性かつ前記第1のスイッチング素子がオフ状態の場合の瞬時電流を検出」できるのは,「ダイオード整流」中にのみであって,「同期整流」中には,「瞬時値電流」の検出はできないものである。
一方,訂正事項1-2のように電圧の極性の記載を逆とすれば,本件特許明細書の段落【0056】の記載に対応するものとなり,「同期整流」中または「ダイオード整流」中に 回路電流is(瞬時値)の検出を行うものとなることから,訂正前の請求項1では,交流電源の極性の記載に関して誤記があったものと認められる。
したがって,訂正事項1-2は,特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。
また,訂正事項1-2は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
さらに,訂正事項1-2は実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

カ.訂正事項2について
訂正事項2は,上記訂正事項1-1ないし1-13による訂正に伴い,特許請求の範囲(請求項1)の記載と明細書の記載との整合を図るためのものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって,訂正事項2は,上記訂正事項1-1ないし1-13と同様,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また,訂正事項2は,訂正事項1-1ないし1-13に関係するものであって,全ての請求項と関係するものである。そして,本件訂正請求では全ての請求項の訂正を請求している。したがって,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。

3.むすび
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号,第2号,及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第4項,及び同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するから,訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。


第3 特許異議の申立について
1.本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし8に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明8」という。)は,令和3年1月6日提出の本件訂正請求書に添付されるとともに,令和3年6月1日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1、第2のスイッチング素子を制御する制御手段と、
前記整流回路と前記平滑コンデンサの負極との間に接続されて、前記整流回路に通流する瞬時電流を検出する第1の電流検出手段と、
を備え、
前記第1のダイオードのカソードと前記第1のスイッチング素子の一端とが前記平滑コンデンサの正極側に接続され、前記第1のダイオードのアノードと前記第2のダイオードのカソードとが前記交流電源の一端側に接続され、前記第1のスイッチング素子の他端と前記第2のスイッチング素子の一端とが前記交流電源の他端側に接続され、前記第2のダイオードのアノードと前記第2のスイッチング素子の他端とが前記平滑コンデンサの負極側に接続されており、
前記第1の電流検出手段は、前記交流電源の他端側の電圧が正極性かつ前記第2のスイッチング素子がオフ状態の場合と、前記交流電源の他端側の電圧が負極性かつ前記第1のスイッチング素子がオフ状態の場合の瞬時電流を検出し、
前記制御手段は、
負荷の大きさに基づいて、前記交流電源の電圧の極性に同期して極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、
負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数かつ前記瞬時電流に基づいて算出した通流率で短絡する高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、
負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、
負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、
負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、
負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、
負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、
負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、のうちいずれかを実施する、
ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記部分スイッチング制御から前記高速スイッチング制御への切り替えの場合、または前記高速スイッチング制御から前記部分スイッチング制御への切り替えの場合に、出力する直流電圧が所定値を保つように切り替える、
ことを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記交流電源が印加する交流電圧のゼロクロスで制御を切り替える、
ことを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。
【請求項4】
前記交流電源と前記整流回路との間に接続されて、前記整流回路に通流する平均電流を検出する第2の電流検出手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項1から3のうち何れか1項に記載の直流電源装置。
【請求項5】
前記第2のダイオードのアノードと前記第4のダイオードのアノードとの間に接続されて、過電流検出を行う第3の電流検出手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項1から4のうち何れか1項に記載の直流電源装置。
【請求項6】
前記第1のダイオードのカソードと前記第3のダイオードのカソードとの間に接続されて、過電流検出を行う第4の電流検出手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項1から4のうち何れか1項に記載の直流電源装置。
【請求項7】
前記第1、第2のスイッチング素子は、スーパージャンクションMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、SiC-MOSFET、GaN(Gallium nitride)を用いたスイッチング素子のうちいずれかである、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の直流電源装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の直流電源装置を備えた、
ことを特徴とする空気調和機。」

2.取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし8に係る発明についての特許に対して令和2年11月18日付けで通知した取消理由の概要は,次のとおりである。

請求項1ないし8に係る特許は,特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

ア 請求項1の記載では,負荷の大きさに基づいて,請求項1の8つの「切り替え」のうちいずれかを実施するものであるのか,各「切り替え」中におけるモードの切り替えを負荷の大きさに基づいて行うものであるのかが不明である。
よって,請求項1に係る発明及び請求項1に従属する請求項2ないし8に係る発明は明確なものでない。

イ 請求項1の記載に「前記第1の電流検出手段は、前記交流電源の一端側の電圧が正極性かつ前記第2のスイッチング素子がオフ状態の場合と、前記交流電源の一端側の電圧が負極性かつ前記第1のスイッチング素子がオフ状態の場合の瞬時電流を検出し」とある。(下線は当審で付加。以下同様。)
しかしながら,請求項1において「瞬時電流」と「制御回路」との関係が不明であって,第1の電流検出手段によって「瞬時電流」を検出する技術的意味が理解できない。
よって,請求項1に係る発明及び請求項1に従属する請求項2ないし8に係る発明は明確なものでない。

ウ 請求項1の記載において,「前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御」とあるが,ここでいう電圧の「極性に同期して」の意味するところが不明確である。
よって,請求項1に係る発明及び請求項1に従属する請求項2ないし8に係る発明は明確なものでない。

エ 請求項1の記載に「前記整流回路と前記平滑コンデンサの負極と間に接続されて、前記整流回路に通流する瞬時電流を検出する第1の電流検出手段」とあるが,意味が不明確である。
よって,請求項1に係る発明及び請求項1に従属する請求項2ないし8に係る発明は明確なものでない。


(2)取消理由についての当審の判断
ア 上記(1)アについて
本件訂正請求による訂正により,請求項1において,「負荷の大きさに基づいて」,請求項1の8つの「切り替え」のうちいずれかを実施するものであることが明確となったことから訂正前の不明瞭さは解消された。

イ 上記(1)イについて
本件訂正請求による訂正により,「記制御手段は,・・・ 負荷の大きさに基づいて,前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数かつ前記瞬時電流に基づいて算出した通流率で短絡する高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え」と訂正され,「瞬時電流」と「制御回路」の関係が明確となったことから訂正前の不明瞭さは解消された。

ウ 上記(1)ウについて
本件訂正請求による訂正により,請求項1において,「前記交流電源の電圧の極性に同期して・・」との記載が,「前記交流電源の電圧の極性に同期して極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで」と訂正され,「極性に同期して」の意味するところが明確となったことから訂正前の不明瞭さは解消された。

エ 上記(1)エについて
本件訂正請求による訂正により,請求項1において,「前記整流回路と前記平滑コンデンサの負極との間に接続されて」と訂正され,意味が明確となったことから訂正前の不明瞭さは解消された。

したがって,取消理由通知に記載した取消理由は解消された。よって,請求項1ないし8に係る特許は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではない。


3.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由の概要(特許法第29条第2項)
ア 理由1(特許法第29条第2項)
(ア)請求項1について
訂正前の請求項1に係る発明は,下記の甲第1号証に記載の発明,及び甲第2号証ないし甲第7号証に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(イ)請求項2について
訂正前の請求項2に係る発明は,下記の甲第1号証に記載の発明,及び甲第2号証ないし甲第7号証に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(ウ)請求項3について
訂正前の請求項3に係る発明は,下記の甲第1号証に記載の発明,及び甲第2号証ないし甲第8号証に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(エ)請求項4について
訂正前の請求項4に係る発明は,下記の甲第1号証に記載の発明,及び甲第2号証ないし甲第8号証に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(オ)請求項5について
訂正前の請求項5に係る発明は,下記の甲第1号証に記載の発明,及び甲第2号証ないし甲第9号証に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(カ)請求項6について
訂正前の請求項6に係る発明は,下記の甲第1号証に記載の発明,及び甲第2号証ないし甲第10号証に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(キ)請求項7について
訂正前の請求項7に係る発明は,下記の甲第1号証に記載の発明,及び甲第2号証ないし甲第10号証に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(ク)請求項8について
訂正前の請求項8に係る発明は,下記の甲第1号証に記載の発明,及び甲第2号証ないし甲第10号証に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 理由2(特許法第36条第6項第2号)
以下の点で,訂正前の請求項1ないし8の記載は明確でない。
(ア)理由2-1
訂正前の請求項1において,8つの制御方法を全て備えた上で1つを選択するのか,8つの制御方法のうち1つを備えているのかが不明確である。(特許異議申立書50頁22行-51頁13行)
(イ)理由2-2
訂正前の請求項1の「負荷の大きさ」が何を示すのか明確でない。(特許異議申立書51頁14行-同頁17行)
(ウ)理由2-3
「制御手段」が「負荷の大きさ」をどのように判断するかが明確でない。(特許異議申立書51頁28行-52頁1行)
(エ)理由2-4
MOSFETとIGBTなど「スイッチング素子」の種類によって,飽和電圧の定義が異なることから,訂正前の請求項1の「飽和電圧」がいずれの意味を指し示しているのか明確でない。(特許異議申立書55頁1行-同頁18行)

ウ 理由3(特許法第36条第6項第1号)
訂正前の請求項1の記載では,第1の電流検出手段はダイオード整流中のみ瞬時電流を検出でき,同期整流中の瞬時電流は検出できないものであって,電流検出して制御することを前提としている同期整流を行いつつ高速スイッチングモードの動作を行うことはできないが,明細書の発明の詳細な説明には,電流検出することなく高速スイッチングモードを動作させる手段は記載されておらず,訂正前の請求項1ないし8に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されたものではない。

エ 証拠

甲第1号証 : 国際公開第2008/090917号
甲第2号証 : 国際公開第2013/088652号
甲第3号証 : 国際公開第2008/149530号
甲第4号証 : 国際公開第2012/070200号
甲第5号証 : ROHMのR6025FNZのデータシート
甲第6号証 : 特開2014-090570号公報
甲第7号証 : 特開2003-153543号公報
甲第8号証 : 特開2005-137168号公報
甲第9号証 : 特開2009-189114号公報
甲第10号証: 特開平6-62577号公報

(2)甲号証の記載事項
ア 甲第1号証の記載事項
(ア)甲第1号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は当審において付加した。以下,同じ。)

a 「[0010] ・・・前略・・・
発明の開示
発明が解決しようとする課題
[0011] しかしながら、従来の1石の高周波スイッチング方式直流電源装置においては、リアクトル電流を検出するために、電流検出回路17pが必要であり、乗算器26pおよび電流誤差増幅器23pが必要であった。さらに、従来の直流電源装置は、直流電圧とリアクトル電流波形の両方を同時に制御する構成であるため、電圧誤差増幅器14pの差電圧出力が小さくなると、目標リアクトル電流が小さくなり、リアクトル電流の波形制御に誤差が生じやすい課題があった。その対策として、例えば図9の構成に加えて、直流電圧検出回路11pの出力を目標値と比較し、比較結果がゼロになるように基準電圧設定回路12pの基準電圧を制御する回路が必要であった。」

b 「[0016] 上述した目的を達成するために、本発明の直流電源装置は、第1および第2ダイオード、および前記第1および第2ダイオードに並列に、かつ逆導通方向に、それぞれ接続される第1および第2スイッチ部を含み、交流電源からの交流を整流し、整流電圧を生成する整流部と、1個のリアクトルを含み、前記交流電源と前記整流部の第1および第2交流入力端との間に挿入されるリアクトル部と、前記整流部の正極および負極整流出力端に接続され、整流電圧を平滑化し、大略直流の電圧を表す直流電圧を生成する平滑部と、直流電圧の目標値を表す目標直流電圧を設定する目標直流電圧設定部と、目標直流電圧と直流電圧との差電圧に応じて変化するパルス幅と、交流の基本周期よりも短いパルス周期とを有するパルス信号を含む制御信号を生成する制御部とを有し、前記第1および第2スイッチ部は、制御信号に基づいてスイッチングすることにより、前記リアクトル部に流れる電流の第1および第2経路を交互に変更し、昇圧チョッパ動作を行うことを特徴としている。」

c 「[0042] (実施の形態1)
図1は、実施の形態1における直流電源装置のブロック図である。
[0043] 図1において、直流電源装置は、交流電源1と、フィルタコンデンサ3と、リアクトル2と、スイッチ素子5a、5bと、ダイオード4a、4b、4c、4dと、平滑コンデンサ6と、負荷7と、制御部30と、目標直流電圧設定部12とを含む。制御部30は、交流極性検出部31、搬送波発振部13、直流電圧検出部11、およびスイッチ制御部10を含む。交流極性検出部31は、フォトカプラ8a、8bおよび電流制限用抵抗9を含む。リアクトル2は、リアクトル部に含まれる。スイッチ素子5a、5bおよびダイオード4a、4b、4c、4dは、整流部に含まれる。平滑コンデンサ6は、平滑部に含まれる。平滑部はコンデンサだけでなく、インダクタ等、その他の素子を含むことが可能である。
[0044] 各スイッチ素子5a、5bは、例えばバイポーラトランジスタ、金属酸化膜半導体(MOS:Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ、または絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチ素子により構成される。各スイッチ素子5a、5bは、1個のスイッチ素子により構成されてもよいし、複数個のスイッチ素子の組み合わせにより構成されてもよい。各スイッチ素子5a、5bは、その意味で、スイッチ部とも呼ばれる。
[0045] 交流電源1は、電源端子Uと電源端子Vとの間に、交流電圧S1Vおよび交流電流S1Cを生成する。電源端子Uの電位が電源端子Vの電位よりも高い場合、交流電圧S1Vは正電圧を表し、他方、電源端子Uの電位が電源端子Vの電位よりも低い場合、交流電圧S1Vは負電圧を表す。フィルタコンデンサ3は、交流電源1に並列に接続される。リアクトル2は、一方の端子が電源端子Uに接続されるように、交流電源1に直列に接続される。リアクトル2の他方の端子は交流入力端PA1に接続され、電源端子Vは交流入力端PA2に接続される。フィルタコンデンサ3およびリアクトル2は、交流電源1に並列に接続される別の装置からの高調波電流により、交流電圧S1Vの高調波歪みが増加することを抑制する。さらにフィルタコンデンサ3およびリアクトル2は、実施の形態1の直流電源装置が発生する高周波歪みにより、交流電流S1Cの高周波歪み、すなわち直流電源装置の高調波電流が増加することを抑制する。リアクトル2にはリアクトル電流S2Cが流れ、交流入力端PA1、PA2には交流電圧S2Vが現れる。交流電源1の内部インピーダンスは通常十分低いため、交流電圧S2Vは、位相を除いて交流電圧S1Vに大略等しい。リアクトル部は、交流電源1と交流入力端PA1、PA2との間に挿入される。
[0046] 整流部において、ダイオード4aのアノードおよびダイオード4bのカソードは交流入力端PA1に接続され、ダイオード4cのアノードおよびダイオード4dのカソードは交流入力端PA2に接続される。ダイオード4aおよびダイオード4cの両カソードは正極整流出力端PR1に接続され、ダイオード4bおよびダイオード4dの両アノードは負極整流出力端PR2に接続される。スイッチ素子5aは、ダイオード4aに並列に、かつ導通方向が逆方向になるように接続され、スイッチ素子5bは、ダイオード4bに並列に、かつ導通方向が逆方向になるように接続される。整流部は、交流入力端PA1、PA2の交流電圧S2Vを全波整流し、整流出力端PR1、PR2に整流電圧S4を生成する。平滑コンデンサ6は、整流出力端PR1、PR2に並列に接続され、整流電圧S4を平滑化し、大略直流の電圧を表す直流電圧S6を生成する。実施の形態1では、整流電圧S4および直流電圧S6は互いに等しい。負荷7は平滑コンデンサ6に並列に接続され、直流電圧S6が印加される。」

d 「[0047] 図2Aは、実施の形態1におけるスイッチ制御部10の回路構成を示すブロック図である。図3Aは、実施の形態1における直流電源装置の各部の信号波形を示す波形図であり、図3Bは、図3Aの部分的な拡大図である。図3Cは、実施の形態1による直流電源装置の各部の信号状態を示す説明図である。以下、図1、図2A、図3A、図3B、図3Cを用いて、実施の形態1における直流電源装置の動作について、制御部30を中心に説明する。
[0048] 交流極性検出部31において、フォトカプラ8aのカソードおよびフォトカプラ8bのアノードは、抵抗9を介して電源端子Uに接続され、フォトカプラ8aのアノードおよびフォトカプラ8bのカソードは、電源端子Vに接続される。交流極性検出部31は、フォトカプラ8a、8bを用いて交流電圧S1Vの極性を検出し、フォトカプラ8a、8bの出力論理状態を表す交流極性信号S8a、S8bをそれぞれ生成する。
[0049] 交流周期は、交流電圧S1Vの基本周期であり、例えば50Hzまたは60Hzの逆数である。交流半周期は、交流周期の半分である。交流周期内において、交流電圧S1Vが正電圧となる期間を交流正期間TAPと呼び、交流電圧S1Vが負電圧となる期間を交流負期間TANと呼ぶ(図3Aを参照)。交流正期間TAPでは、フォトカプラ8bはオンされるため交流極性信号S8bはローレベルとなり、フォトカプラ8aはオフされるため交流極性信号S8aはハイレベルとなる。他方、交流負期間TANでは、フォトカプラ8aはオンされるため交流極性信号S8aはローレベルとなり、フォトカプラ8bはオフされるため交流極性信号S8bはハイレベルとなる。交流極性信号S8a、S8bがローレベルとなる期間、すなわちロー期間は、フォトカプラのオン電圧がゼロではないため交流半周期よりも短くなる。他方、ハイレベルとなる期間、すなわちハイ期間は、交流半周期よりも長くなる。」

e 「[0051] 直流電圧検出部11は、直流電圧S6を検出し、直流電圧S6の電圧レベルを表す直流電圧信号S11を生成する。直流電圧検出部11は、例えば高インピーダンス入力/低インピーダンス出力型のバッファ回路である。目標直流電圧設定部12は、直流電圧S6の目標値となる目標直流電圧を設定し、目標直流電圧の電圧レベルを表す目標直流電圧信号S12を生成する。搬送波発振部13は、交流周期よりも短い周期TPWMを有する搬送波信号S13を生成する。搬送波周期TPWMは、例えば交流周期の1/400以下に設定される。搬送波信号S13は、例えば三角波またはのこぎり波などの波形による繰り返し信号である。スイッチ制御部10は、直流電圧信号S11、目標直流電圧信号S12、搬送波信号S13、および交流極性信号S8a、S8bに基づいて、制御信号S10a、S10bを生成する。
[0052] 図2Aにおいて、スイッチ制御部10は、差電圧検出部14、比較部15、NORゲート部16a、16bを含む。差電圧検出部14は、目標直流電圧信号S12および直流電圧信号S11に基づいて、目標直流電圧から直流電圧S6を差し引いた差電圧を検出し、差電圧信号S14を生成する。比較部15は、搬送波信号S13と差電圧信号S14を比較し、比較結果信号S15を生成する。比較結果信号S15は、搬送波信号S13が差電圧信号S14以上の場合、ハイレベルとなり、他方、搬送波信号S13が差電圧信号S14未満の場合、ローレベルとなる。NORゲート部16aは、交流極性信号S8aと比較結果信号S15との否定論理和を表す制御信号S10aを生成し、NORゲート部16bは、交流極性信号S8bと比較結果信号S15との否定論理和を表す制御信号S10bを生成する。
[0053] 図3A、図3B、および図3Cに示すように、制御信号S10a、S10bは、それぞれ交流極性信号S8a、S8bのハイ期間において、比較結果信号S15に関係なくローレベルとなる。他方、制御信号S10a、S10bは、それぞれ交流極性信号S8a、S8bのロー期間において、搬送波信号S13が差電圧信号S14以上の場合、ローレベルとなり、搬送波信号S13が差電圧信号S14未満の場合、ハイレベルとなる。すなわち、制御信号S10a、S10bは、それぞれ交流極性信号S8a、S8bのロー期間において、目標直流電圧と直流電圧S6との差電圧に応じて変化するパルス幅と、搬送波周期TPWMに等しいパルス周期とを有する一連のパルス信号となる。制御信号S10a、S10bは、目標直流電圧と直流電圧S6との差電圧によりパルス幅変調(PWM:Pulse Code Modulation)された信号である。
[0054] 直流電圧S6(すなわち直流電圧信号S11)が目標直流電圧(すなわち目標直流電圧信号S12)よりも低い場合、制御信号S10a、S10bのハイ期間は長くなりロー期間は短くなるため、パルス幅は長くなる。他方、直流電圧S6が目標直流電圧よりも高い場合、制御信号S10a、S10bのハイ期間は短くなりロー期間は長くなるため、パルス幅は短くなる。直流電圧S6の変化速度は代表的には十分小さいため、図3Aに示すような交流周期内では、差電圧信号S14は大略一定である。したがって、各制御信号S10a、S10bのパルス幅は、交流周期内において大略一定である。
[0055] スイッチ素子5a、5bは、上述した制御信号S10a、S10bに基づいて、それぞれスイッチングする。すなわち、スイッチ素子5a、5bは、交流周期ごとにスイッチング可能状態ST1およびスイッチング停止状態ST2の両状態をそれぞれ呈し、スイッチング可能状態にST1おいてスイッチングする。スイッチ素子5a、5bは、いずれか一方がスイッチング可能状態ST1の場合、他方がスイッチング停止状態ST2となる。実施の形態1では、スイッチング可能状態ST1の期間は、スイッチング停止状態ST2の期間よりも短い。スイッチ素子5a、5bは、スイッチング可能状態ST1において、それぞれ制御信号S10a、S10bがハイレベルの場合、オン状態となり、ローレベルの場合、オフ状態となる。直流電圧S6が目標直流電圧よりも低い場合、オン状態の期間は長くなり、他方、直流電圧S6が目標直流電圧よりも高い場合、オン状態の期間は短くなる。

・・・中略・・・

[0060] このように、スイッチ素子5a、5bは、制御信号S10a、S10bに基づいてそれぞれスイッチングすることにより、リアクトル電流S2Cの蓄積経路および放出経路を交互に変更し、整流動作と同時に昇圧チョッパ動作を行う。これにより、実施の形態1の直流電源装置は、交流電圧S1Vを整流および平滑化すると同時に昇圧し、直流電圧S6を生成する。」

f 「[0074] なお、不活性状態ST5の期間を広げるために、負荷7に応じて目標直流電圧を変更してもよい。直流電圧S6が低い場合、放出状態ST4の期間が長くかかり、入力交流電流S1Cの正弦波制御が可能な蓄積状態ST3の動作範囲が狭くなる。そこで、負荷7が大きくなるにつれて目標直流電圧を上げるように構成し、放出状態ST4においてリアクトル電流S2Cが減少する電流変化率を大きくする。これにより、各スイッチ素子5a、5bのオン期間を広げることが可能となり、動作範囲の拡大を図ることが可能となる。
[0075] なお、実施の形態1においては、2個のスイッチ素子5a、5bが大略交流半周期ごとに停止するスイッチング停止状態ST2を設けるように構成した。しかし、常時スイッチング可能状態ST1にし、スイッチ素子5a、5bが交互にオンするように構成してもよい。このようにすることによって、正極側に接続されるスイッチ素子5aのドライブ用電源として、もっともよく用いられるブートストラップ回路の簡素化が可能となり、コスト低減に効果がある。さらに、各スイッチ素子5a、5bを電界効果型トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)にすることにより、同期整流を用いてさらなる電力損失の低減も図ることができる。」

g 「図1



h 「図8



i 「図10



j 上記cの段落[0043]には,「直流電源装置は、交流電源1と、フィルタコンデンサ3と、リアクトル2と、スイッチ素子5a、5bと、ダイオード4a、4b、4c、4dと、平滑コンデンサ6と、負荷7と、制御部30と、目標直流電圧設定部12とを含む」こと,及び「スイッチ素子5a、5bおよびダイオード4a、4b、4c、4dは、整流部に含まれる」ことが,さらに,上記eの段落[0051]には,「目標直流電圧設定部12は」「目標直流電圧の電圧レベルを表す目標直流電圧信号S12を生成する」ことが記載されている。
さらに,上記bの段落[0016]及び上記eの段落[0060]には,“直流電源装置は,第1および第2スイッチ素子5a,5bを,制御信号S10a,S10bに基づいてスイッチングすることにより,リアクトル2に流れる電流の第1および第2経路を交互に変更し,昇圧チョッパ動作を行う”ことが記載されている。
してみると,甲第1号証には,“交流電源1と,フィルタコンデンサ3と,リアクトル2と,スイッチ素子5a,5bとダイオード4a,4b,4c,4dとからなる整流部と,平滑コンデンサ6と,負荷7と,制御部30と,目標直流電圧の電圧レベルを表す目標直流電圧信号S12を生成する目標直流電圧設定部12とを含み,第1および第2スイッチ素子5a,5bを,制御信号S10a,S10bに基づいてスイッチングすることにより,リアクトル2に流れる電流の第1および第2経路を交互に変更し,昇圧チョッパ動作を行う直流電源装置”が記載されている。

k 上記cの段落[0045]には,“交流電源1は,電源端子Uと電源端子Vとの間に,交流電圧S1Vおよび交流電流S1Cを生成するものであ”ることが記載されている。

m 上記cの段落[0045]には,“フィルタコンデンサ3は,交流電源1に並列に接続され,また,リアクトル2は,一方の端子が電源端子Uに接続されるように,交流電源1に直列に接続され,リアクトル2の他方の端子は交流入力端PA1に接続され,電源端子Vは交流入力端PA2に接続されるものであ”ることが記載されている。

n 上記cの段落[0046]には,“整流部において,ダイオード4aのアノードおよびダイオード4bのカソードは交流入力端PA1に接続され,ダイオード4cのアノードおよびダイオード4dのカソードは交流入力端PA2に接続され,ダイオード4aおよびダイオード4cの両カソードは正極整流出力端PR1に接続され,ダイオード4bおよびダイオード4dの両アノードは負極整流出力端PR2に接続され,スイッチ素子5aは,ダイオード4aに並列に,かつ導通方向が逆方向になるように接続され,スイッチ素子5bは,ダイオード4bに並列に,かつ導通方向が逆方向になるように接続され,整流部は,交流入力端PA1,PA2の交流電圧S2Vを全波整流し,整流出力端PR1,PR2に整流電圧S4を生成するものであ”ることが記載されている。

p 上記cの段落[0046]には,“平滑コンデンサ6は,整流出力端PR1,PR2に並列に接続され,整流電圧S4を平滑化し,大略直流の電圧を表す直流電圧S6を生成するものであ”ることが記載されている。

q 上記cの段落[0043]には,「制御部30は、交流極性検出部31、搬送波発振部13、直流電圧検出部11、およびスイッチ制御部10を含む」ことが,また,上記dの段落[0048]には,「交流極性検出部31は」,「交流極性信号S8a,S8bをそれぞれ生成する」ことが,さらに,上記eの段落[0051]には,「搬送波発振部13は」,「搬送波信号S13を生成する」こと,及び「直流電圧検出部11は」,「直流電圧S6の電圧レベルを表す直流電圧信号S11を生成する」ことが記載されている。
してみると,甲第1号証には,“制御部30は,交流極性信号S8a,S8bをそれぞれ生成する交流極性検出部31,搬送波信号S13を生成する搬送波発振部13,直流電圧S6の電圧レベルを表す直流電圧信号S11を生成する直流電圧検出部11,およびスイッチ制御部10を含”むことが記載されているといえる。

r 上記eの段落[0051]には,「スイッチ制御部10は、直流電圧信号S11、目標直流電圧信号S12、搬送波信号S13、および交流極性信号S8a、S8bに基づいて、制御信号S10a、S10bを生成する」ことが,また,段落[0055]には,「スイッチ素子5a、5bは、上述した制御信号S10a、S10bに基づいて、それぞれスイッチングする」ことが記載されている。
してみると,甲第1号証には,“スイッチ制御部10は,直流電圧信号S11,目標直流電圧信号S12,搬送波信号S13,および交流極性信号S8a,S8bに基づいて,制御信号S10a,S10bを生成し,スイッチ素子5a,5bは,この制御信号S10a,S10bに基づいて,それぞれスイッチングされるものであ”ることが記載されているといえる。

s 上記dの段落[0049]には,“交流正期間TAPでは,交流極性信号S8bはローレベルとなり,交流極性信号S8aはハイレベルとなり,他方,交流負期間TANでは,交流極性信号S8aはローレベルとなり,交流極性信号S8bはハイレベルとなるものであ”ることが記載されている。

t 上記eの段落[0053]には,“制御信号S10a,S10bは,それぞれ交流極性信号S8a,S8bのハイ期間において,比較結果信号S15に関係なくローレベルとなり,他方,制御信号S10a,S10bは,それぞれ交流極性信号S8a,S8bのロー期間において,目標直流電圧と直流電圧S6との差電圧に応じて変化するパルス幅と,搬送波周期TPWMに等しいパルス周期とを有する一連のパルス信号となり,目標直流電圧と直流電圧S6との差電圧によりパルス幅変調(PWM:Pulse Code Modulation)された信号となるものであ”ることが記載されている。

u 上記fの段落[0074]には,“負荷7に応じて目標直流電圧を変更し,負荷7が大きくなるにつれて目標直流電圧を上げるように構成して,各スイッチ素子5a,5bのオン期間を広げることが可能であ”ることが,さらに,段落[0075]には,“各スイッチ素子5a,5bを電界効果型トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)にすることにより,同期整流を用いることができる”ことが記載されている。

(イ)上記aないしuの記載内容(特に,下線部を参照)からすると,上記甲第1号証には次の発明(以下,「甲1発明」という。)が記載されている。

「交流電源1と,フィルタコンデンサ3と,リアクトル2と,スイッチ素子5a,5bとダイオード4a,4b,4c,4dとからなる整流部と,平滑コンデンサ6と,負荷7と,制御部30と,目標直流電圧の電圧レベルを表す目標直流電圧信号S12を生成する目標直流電圧設定部12とを含み,第1および第2スイッチ素子5a,5bを,制御信号S10a,S10bに基づいてスイッチングすることにより,リアクトル2に流れる電流の第1および第2経路を交互に変更し,昇圧チョッパ動作を行う直流電源装置において,
交流電源1は,電源端子Uと電源端子Vとの間に,交流電圧S1Vおよび交流電流S1Cを生成するものであり.
フィルタコンデンサ3は,交流電源1に並列に接続され,また,リアクトル2は,一方の端子が電源端子Uに接続されるように,交流電源1に直列に接続され,リアクトル2の他方の端子は交流入力端PA1に接続され,電源端子Vは交流入力端PA2に接続されるものであり,
整流部において,ダイオード4aのアノードおよびダイオード4bのカソードは交流入力端PA1に接続され,ダイオード4cのアノードおよびダイオード4dのカソードは交流入力端PA2に接続され,ダイオード4aおよびダイオード4cの両カソードは正極整流出力端PR1に接続され,ダイオード4bおよびダイオード4dの両アノードは負極整流出力端PR2に接続され,スイッチ素子5aは,ダイオード4aに並列に,かつ導通方向が逆方向になるように接続され,スイッチ素子5bは,ダイオード4bに並列に,かつ導通方向が逆方向になるように接続され,整流部は,交流入力端PA1,PA2の交流電圧S2Vを全波整流し,整流出力端PR1,PR2に整流電圧S4を生成するものであり,
平滑コンデンサ6は,整流出力端PR1,PR2に並列に接続され,整流電圧S4を平滑化し,大略直流の電圧を表す直流電圧S6を生成するものであり,
制御部30は,交流極性信号S8a,S8bをそれぞれ生成する交流極性検出部31,搬送波信号S13を生成する搬送波発振部13,直流電圧S6の電圧レベルを表す直流電圧信号S11を生成する直流電圧検出部11,およびスイッチ制御部10を含み,
スイッチ制御部10は,直流電圧信号S11,目標直流電圧信号S12,搬送波信号S13,および交流極性信号S8a,S8bに基づいて,制御信号S10a,S10bを生成し,スイッチ素子5a,5bは,この制御信号S10a,S10bに基づいて,それぞれスイッチングされるものであって,
交流正期間TAPでは,交流極性信号S8bはローレベルとなり,交流極性信号S8aはハイレベルとなり,他方,交流負期間TANでは,交流極性信号S8aはローレベルとなり,交流極性信号S8bはハイレベルとなるものであり,
制御信号S10a,S10bは,それぞれ交流極性信号S8a,S8bのハイ期間において,比較結果信号S15に関係なくローレベルとなり,他方,制御信号S10a,S10bは,それぞれ交流極性信号S8a,S8bのロー期間において,目標直流電圧と直流電圧S6との差電圧に応じて変化するパルス幅と,搬送波周期TPWMに等しいパルス周期とを有する一連のパルス信号となり,目標直流電圧と直流電圧S6との差電圧によりパルス幅変調(PWM:Pulse Code Modulation)された信号となるものであって,
負荷7に応じて目標直流電圧を変更し,負荷7が大きくなるにつれて目標直流電圧を上げるように構成して,各スイッチ素子5a,5bのオン期間を広げることが可能であり,さらに,各スイッチ素子5a,5bを電界効果型トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)にすることにより,同期整流を用いることができる,
直流電源装置。」

イ 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。

a 「[0062] (実施の形態2)
図6は、本発明に係る実施の形態2の直流電源装置の構成を一部ブロックで示す図である。
[0063] 図6に示すように、本発明に係る実施の形態2の直流電源装置は、交流電源1の一端に接続されたリアクトル2と、交流電源1からの交流電圧を直流に整流するために、交流電源1の両ライン間にリアクトル2を介してその交流入力端が接続された整流回路5と、リアクトル2を介して交流電源1を短絡・開放するために、整流回路5を構成する4個のダイオードのうちの2個のダイオード5aおよび5bと並列に、電流の流れる向きが逆となる方向に接続されたスイッチング素子3aおよび3bと、整流回路5の直流出力端間に接続された平滑コンデンサ6と、スイッチング素子3aおよび3bを有するスイッチング部3のスイッチング駆動信号を生成する制御部7と、を備えている。このように構成された実施の形態2の直流電源装置は、平滑コンデンサ6に接続された負荷9に対して直流電圧を供給する。
[0064] さらに、実施の形態2の直流電源装置においては、実施の形態1の直流電源装置と同様に、整流回路5の直流出力ライン上にあってスイッチング部3のオフ時に平滑コンデンサ6を充電する向きに流れる電流を検出する電流検出部10と、電流検出部10によって検出された電流の値が予め定められた基準電流値Iocを超えているか否かを判定する過電流判定部11と、スイッチング部3の連続オン時間を制限するオン時間制限部12と、を備えている。
[0065] 特に、電流検出部10を平滑コンデンサ6のGND側に接続して配置する場合には、電流検出部10として、抵抗の使用が可能となり、必要に応じてOPアンプ等で増幅することにより、回路を簡単に構成することができる。」

b 「[0071] 次に、図8(a)および図8(b)は、スイッチング部3のオフ時に電流が流れる経路を示す図である。図8(a)は、交流電源1の瞬時電圧が正の場合に電流が流れる経路を示しており、図8(b)は、交流電源1の瞬時電圧が負の場合に電流が流れる経路を示している。
[0072] 図8(a)および図8(b)に示すように、スイッチング部3がオフ、すなわち、スイッチング素子3aおよび3bがオフの場合には、交流電源1の電圧位相によらず、電流検出部10には、交流電源1からの入力電流の大きさに等しい電流が流れる。」

c 「図6



d 「図7



e 「図8



ウ 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。

a 「[0032] 整流電流検出部53(図2参照)は、全波整流回路4と平滑コンデンサ7との間に設けられた抵抗5と、全波整流回路4と平滑コンデンサ7との間を流れる電流(整流電流)と予め決められた所定値(異常整流電流閾値)とを比較する第3の比較回路22を有している。第3の比較回路22は、全波整流回路4と平滑コンデンサ7との間を流れる整流電流と所定値(異常整流電流閾値)との比較結果を示す情報(遮断信号)を、遮断回路21および制御回路24に入力する。第3の比較回路22は、整流電流が所定値(異常整流電流閾値)以上の電流であれば、遮断信号を遮断回路21に入力し、遮断回路21は制御回路24から全波整流回路4のスイッチング素子9、10への駆動指令信号を遮断する。」


b 「[0068] (実施の形態3)
次に、添付の図7を用いて、本発明に係る実施の形態3の電源制御装置およびヒートポンプ装置について説明する。図7は実施の形態3の電源制御装置の構成を一部ブロックで示す回路図である。実施の形態3の電源制御装置において、前述の実施の形態2の電源制御装置と異なる点は、平滑回路26をさらに設けて、第2の絶対値検出回路19の出力が平滑回路26において平滑化(平均値化)されて、その平均値情報が制御回路24に入力されるよう構成されている点である。このように、実施の形態3の電源制御装置においては、電流トランス3の出力の絶対値を示す信号が平滑回路26に入力されて平滑化され入力電流の平均値が検出されている。検出された入力電流の平均値情報は、制御回路24に入力されている。したがって、実施の形態3の説明及び図7において、前述の実施の形態1および実施の形態2の電源制御装置と同じ機能、構成を有する構成要素には同じ符号を付し、それらの構成要素の説明は実施の形態1および実施の形態2における説明を適用する。
[0069] 実施の形態3の電源制御装置により電力が供給される直流負荷8は、具体的には作動流体を圧縮する圧縮機のモータを駆動する回路である。圧縮機モータの回転数を上げるとヒートポンプ装置の能力が増大して、より多くの熱需要をまかなうことが可能となる。しかしながら、ヒートポンプ装置の動作環境、例えば環境温度などが異なると、同じ圧縮機モータが同じ回転数で駆動しても同じ能力、同じ消費電力とはならない。特に、環境温度が上昇して高くなると、作動流体の圧力が上昇して、同じ圧縮機モータを同じ回転数で駆動しようとすると、消費電力が急増する。このために、実施の形態3の電源制御装置においては、消費電力の急増を検出するために、入力電流を監視して、入力電流が急激に大きくなり、ヒートポンプ装置として想定されている許容値を超える可能性がある場合には、圧縮機モータの回転数を下げる、若しくは圧縮機モータへの電力供給を停止するなどのシステム制御を行っている。
[0070] 実施の形態3の電源制御装置は、消費電力の急増を検知するために、電流トランス3により検出された入力電流を用いている。実施の形態3の電源制御装置における入力電流検出部520は、前述の実施の形態1において説明したように入力電流の変化が急であるとき感度(出力)が高くなる電流トランス3と、この電流トランス3により検出された検出電流を入力電流に比例した検出電圧に変換する抵抗18と、その検出電圧の絶対値を検出する第2の絶対値検出回路19と、絶対値化された検出電圧が予め決められた所定値以上か否かを検出する第2の比較回路20と、そして絶対値化された検出電圧が入力されて平滑化(平均値検出)する平滑回路26と、を有している。平滑回路26において入力電流の平均値が検出され、その平均値が予め決められた値を超えた場合には、圧縮機モータの回転数を下げる、若しくは圧縮機モータへの電力供給を停止するなどのシステム制御を行っている。
[0071] 以上のように、実施の形態3の電源制御装置においては、電流トランス3が入力電流の検出とともに消費電力急増の検出を兼用することにより、システム制御用に新たな検出手段を設けることなく、簡素な構成で信頼性の高いシステムを構築することができる。
[0072] (実施の形態4)
次に、添付の図8を用いて、本発明に係る実施の形態4の電源制御装置について説明する。図8は実施の形態4の電源制御装置の構成を一部ブロックで示す回路図である。実施の形態4の電源制御装置において、前述の実施の形態1の電源制御装置と異なる点は、整流回路4における前段部分に双方向スイッチング回路27が設けられ、後段部分にダイオードで構成された全波整流回路28が設けられている点である。したがって、実施の形態4の説明及び図8において、前述の実施の形態1の電源制御装置と同じ機能、構成を有する構成要素には同じ符号を付し、それらの構成要素の説明は実施の形態1における説明を適用する。
[0073] 本発明に係る実施の形態4の電源制御装置は、実施の形態1の電源制御装置と同様に、交流電源1の入力電流がリアクタ2を介して、整流回路4に入力されている。整流回路4は双方向スイッチング回路27と全波整流回路28を具備している。全波整流回路28は、2つのダイオードの直列回路が並列に接続されて、4つのダイオードによりダイオードブリッジ回路が構成されている。全波整流回路28の出力は、平滑コンデンサ7により平滑化され、直流負荷8へ電力を供給している。
[0074] 図8に示すように、実施の形態4の電源制御装置は、整流回路4への入力端子間に1つの双方向スイッチング回路27が設けられており、この双方向スイッチング回路27は、制御回路24により制御されている。双方向スイッチング回路27に対する制御回路24からの駆動指令信号は、遮断回路21により遮断できるよう構成されている。
[0075] 実施の形態4の電源制御装置における制御回路24での処理内容は、前述の実施の形態1の制御回路24の処理内容にほぼ同じであるが、実施の形態1の電源制御装置におけるスイッチング素子9、10に対する処理内容が双方向スイッチング回路27に対する処理内容に変更されている点が異なっている。但し、実施の形態4の電源制御装置においては、極性情報を必要としない双方向スイッチング回路27が用いられているため、交流電源1の入力電圧の極性によってスイッチング素子を切替える必要がなく、制御回路が簡素化されている。また、同じ理由により、実施の形態4の電源装置においては、交流電源1の入力電圧の極性を検知するための回路が不要となり、回路が簡素化されている。
[0076] 図9は、実施の形態4の電源制御装置において用いられる双方向スイッチング回路27の具体例である。図9の(a)は全波整流回路29とIGBT30により構成された双方向スイッチング回路27Aを示したものである。図9の(a)に示す双方向スイッチング回路27Aは、制御可能なスイッチング素子を1つで実現するものである。全波整流回路29は、2つのダイオードの直列体を1つのアーム回路として、2つのアーム回路が並列接続されて、4つのダイオードによるダイオードブリッジ回路により構成されている。アーム回路における2つのダイオードの接続点が交流電源1に接続される端子A、Bとなっている。また、全波整流回路29のカソード側端子にIGBT30のコレクタ端子が接続され、全波整流回路29のアノード側端子にIGBT30のエミッタ端子が接続される。また、全波整流回路29のアノード側端子には端子Dが設けられている。IGBT30のゲート端子である制御端子Cには制御回路24からの駆動指令信号が入力されるよう構成されており、制御端子Cに対して、端子Dの電位より高電位である、一定以上の電圧が印加されると、IGBT30はオン状態となる。結果として、交流電源1に接続されている端子Aと端子Bは、端子間の電位の極性に関係なく、同電位となる。即ち、双方向スイッチング回路27Aの端子Cに入力する信号を制御することにより、双方向スイッチング回路27Aはオンオフ動作する。
[0077] 図9の(b)に示した双方向スイッチング回路27Bは、2つのIGBT31、33と、それらのIGBT31、33のそれぞれに並列に配置されたダイオード32、34とにより構成されている。IGBT31とダイオード32は逆方向の並立接続である。即ち、IGBT31のコレクタ端子とダイオード32のカソード端子が接続され、IGBT31のエミッタ端子とダイオード32のアノード端子が接続されている。一方、IGBT33とダイオード34は逆方向の並立接続であるが、IGBT31とIGBT33は逆向きである。即ち、IGBT33のエミッタ端子とダイオード34のアノード端子が接続され、IGBT33のコレクタ端子とダイオード32のカソード端子が接続されている。そして、IGBT31のエミッタ端子とIGBT33のエミッタ端子が接続されている。また、IGBT31のエミッタ端子とIGBT33のエミッタ端子との接続点には端子Dが設けられている。このようにIGBT31、33とダイオード32、34が接続されて双方向スイッチング回路27Bが構成されている。
[0078] 図9の(b)に示した双方向スイッチング回路27Bは、図9の(a)の双方向スイッチング回路27Aに比べてスイッチング時の電流通過素子の少ない構成である。図9の(b)の双方向スイッチング回路27Bは、図9の(a)の双方向スイッチング回路27Aと同様に、制御端子Cに対して、端子Dの電位より高電位である、一定以上の電圧を印加すると、IGBT31、33はオン状態となる。このため、端子Aの電位が端子Bの電位よりも高い場合には、IGBT31とダイオード34とにより、端子Aと端子Bが同電位となり、双方向スイッチング回路27Bがスイッチング動作する。一方、端子Aの電位が端子Bの電位よりも低い場合には、IGBT33とダイオード32とにより、端子Aと端子Bとが同電位となり、双方向スイッチング回路27Bがスイッチング動作する。このようにして、双方向スイッチング回路27Bは、端子Aと端子Bの電位の高低に関係なく、スイッチング動作することが可能になる。結果として、図8に示した制御回路24においては交流電源1の極性を知ることなく、スイッチング制御することが可能となる。
[0079] 上記のように、実施の形態4の電源制御装置の構成では、交流電源1の極性情報を必要としない制御システムが実現できるため、制御回路を簡素化することが可能となる。」


c 「図1



d 「図2



e 「図7



エ 甲第4号証の記載事項
甲第4号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。


a 「[0017] 上記のように構成された第1の発明は、スイッチング部のオフ期間において、第2の電流検出部を流れる電流が、第1の電流検出部を流れる入力電流の絶対値に等しく、さらに、第2の電流検出部は、双方向に電流が流れる交流電源の入力ラインとは異なり、単一方向でかつ、間欠的に電流が流れるラインの電流を検出すればよい。このため、第1の発明においては、シャント抵抗やトランスなどで構成される第2の電流検出部を用いて正しく電流を検出することが可能となり、さらに、第1の電流検出部と第2の電流検出部による電流の読み値である検出電流値の差が第1の電流検出部のオフセットに等しくなることから、スイッチング部のオフ期間における第1の電流検出部および第2の電流検出部による電流の読み値である検出電流値の絶対値の差情報を用いて、入力電流のアンバランス状態を検知することができる。その結果、第1の発明の構成においては、第1の電流検出部に安価なAC-CTを用いることができる。」

b 「[0043] 図6Aおよび図6Bは、本発明に係る実施の形態1の直流電源装置における入力電流(第1の電流検出部3の検出対象)と、整流回路5の直流出力ラインを流れる出力電流(平滑コンデンサ6を充電する方向を正とする。第2の電流検出部7の検出対象)との関係を示す図である。図6Aは、スイッチング部4のオン期間(短絡期間)における入力電流の流れを示した図である。図6Bは、スイッチング部4のオフ期間(開放期間)における入力電流の流れを示した図である。」

c 「[0052] なお、本発明の直流電源装置の主回路の構成は、図1に示した、整流回路5の交流入力側にてリアクタ2を介して交流電源1をスイッチング部4により短絡する回路構成に限られるものではなく、交流電源1からの入力電流を直接検出する第1の電流検出部3と平滑コンデンサ6への充電電流を検出する第2の電流検出部7とを備えた、例えば図7A、図7Bおよび図7Cに示すような別の回路構成においても同様の効果を奏することは言うまでもない。」

d 「図6A



e 「図6B



f 「図7C



オ 甲第5号証の記載事項
甲第5号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。

a 1頁に表題「・Inner circuit」として記載される図より,MOSFETが寄生ダイオード(「BODY DIODE」)を有することが読み取れる。

b また,1頁に表題「・Absolute maximum ratings(Ta=25℃)」として記載される表より,MOSFETのドレイン・ソース間に耐電圧V_(DSS)を有することが読み取れる。

c 7頁に表題「Fig.8 Typical Output Characteristics(1)」として記載されるMOSFETの飽和電圧に関する表と,11頁に表題「Fig.22 Inverse Diode Forward Current vs.Source-Drain Voltage」として記載されるダイオードの順方向電流と飽和電圧に関する表を合わせ読むと,ダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い領域が存在するといえる。

カ 甲第6号証の記載事項
甲第6号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。

a 「【0010】
以下に、本発明にかかる直流電源装置、冷凍サイクル装置、空気調和機および冷蔵庫の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。」

b 「【0024】
また、図2(b)は、MOSFETのゲートとソースとの間に電圧が印加されONとなっている状態(以下、この状態を「ゲートオン状態」という)を示している。このゲートオン状態においては、MOSFETのオン抵抗による電圧低下が寄生ダイオードの順方向電圧より低い場合、電流は寄生ダイオードではなくトランジスタ側に流れる。この場合、ダイオードの導通損失よりもMOSFETのオン抵抗による導通損失の方が小さくなる。このような、MOSFETに対する逆電圧印加によって電流を逆方向に導通させ、これにより導通損失を低減させる技術は一般的に同期整流と呼ばれる。」

c 「【0026】
ここでまず、本実施の形態の直流電源装置における第1の整流動作である同期整流動作について説明する。上述したように、本実施の形態の直流電源装置は、半導体スイッチ3および4を動作させる制御部13を備えている。制御部13は、電流検出素子10および電流検出部12を介して得られた電流検出値等に基づいて、各半導体スイッチをオンオフ制御する。この直流電源装置は、ハーフブリッジと呼ばれる公知の回路に、制御部13と、電流検出素子9および10と、電流検出部11および12と、電圧検出部14と、駆動部15とを付加した構成となっている。図1の回路構成で半導体スイッチ3および4が共にオフであれば、半導体スイッチ3および4の寄生ダイオードを介した全波整流回路となる(上記第2の整流動作を行う)。半導体スイッチ3および4をダイオードに置き換えた場合も同様に、全波整流動作が可能である。本実施の形態の直流電源装置において、ダイオードとせずに半導体スイッチ3および4を備えた構成としているのは、前述の同期整流を適用可能としてダイオードでの導通損失を低減するためである。」

d 「【0045】
なお、半導体スイッチ3、4、5、6、22は、GaN(窒素ガリウム)、SiC(シリコンカーバイド)、ダイヤモンド等のワイドバンドギャップ半導体で構成されたものとしてもよい。この場合、さらなる低損失化を実現することができる。また、ワイドギャップ半導体を使用した場合、耐電圧や耐熱性が高くなるとともに許容電流密度も高くなる。そのため、半導体スイッチの小型化が可能となり、装置を小型化できる。この効果を得るためには、少なくとも一つの半導体スイッチをワイドバンドギャップ半導体で構成されたものとすればよい。」

キ 甲第7号証の記載事項
甲第7号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。

a 「【0066】次に、このシステムの概略動作を図9を用いて説明する。なお、図9は負荷の消費電力量に対する力率改善回路の力率及び直流出力電圧Vdcを示す図である。まず、負荷の消費電力量が0、或いは、ほとんど0に等しいくらい極低負荷(消費電力量が負荷の許容電力量の10%未満)の場合、即ち、図9の運転モード1の場合、コントローラ10により、整流回路切換用スイッチ8は全波整流モード、短絡スイッチ9は力率改善無しモードに制御される。これにより、直流出力電圧Vdcは√2×Vsと低い値に制御される。
【0067】また、負荷の消費電力量が運転モード1よりも若干増加し、消費電力量が負荷の許容電力量の10?30%の低負荷領域、即ち、図9の運転モード2の場合、コントローラ10により、整流回路切換用スイッチ8は全波整流モードに保たれ、短絡素子9は部分スイッチングモードにて制御される。故に、力率は、図中の破線の部分に制御でき、力率改善無しモードよりも改善され、入力電流に含まれる高調波成分を低減できる。これに伴い、リアクトル2での鉄損を抑制できる。この鉄損抑制量よりも昇圧に伴う短絡素子9での損失量が小さくなるようすることで、力率改善無しモードよりも力率改善回路の変換効率を向上できる。また、直流出力電圧Vdcも破線領域の値を出力することができる。
【0068】全波整流モードにて運転中、更に負荷の消費電力が増し、消費電力が負荷の許容電力量の30?50%の中間負荷領域、即ち、図9の運転モード3の場合、短絡素子9は高周波スイッチングモードにて制御される。故に、直流出力電圧は、図中の斜線の如く上限なく制御することが可能であり、負荷の消費電力量に適する所望の任意の値となるよう制御される。また、このとき力率は、ほぼ1に制御できる。」

b 「【0080】図12は本発明の別の構成を示す回路構成図である。図12において、図1他と対応する部分には同一符号を付し、その重複説明を省略する。図12は図1他における双方向通電性の短絡素子9を、例えば、IGBT又はバイポーラトランジスタ又はMOSFET等の半導体素子を用いた1対のスイッチング素子20a及び20bを整流器3の1相に並列接続させて、代替させたものである。図12において、20a及び20bは図1他での短絡素子9を代替する1対のスイッチング素子であって、これらのスイッチング素子20a、20bは、それぞれ整流回路3のダイオード3a、3cに並列接続され、そのゲートにコントローラ10からの制御信号が印加されるように成されている。また、19は、整流器3と倍電圧コンデンサ4?5との間に挿入された逆流防止用整流素子であり、スイッチング素子20a、20bの短絡動作に伴う、倍電圧整流用コンデンサ4?5或いは平滑コンデンサ6から整流器3側への逆流を防止する為のものである。
【0081】次に、動作について説明する。まず、コントローラ10の電源電圧検出手段11により交流電源1の電圧極性を検出する。このとき、交流電源1の一方の端子aの電位が他方の端子bの電位よりも高い(この状態を正極性とし、これと逆の状態を負極性とする)場合には、コントローラ10の制御手段14は、スイッチング素子20aをオフに制御し、スイッチング素子20bのみのスイッチング動作を許可する。また、交流電源1の電圧極性が負極性の場合には、コントローラ10は、スイッチング素子20bをオフに制御し、スイッチング素子20aのみのスイッチング動作を許可する。ここで、スイッチングの形態は先に説明したと同様、力率改善無しモード、部分スイッチングモード、高周波スイッチングモードにより行われるものとする。」

c 「図9



d 「図12



ク 甲第8号証の記載事項
甲第8号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。

a 「【0032】
まず、負荷15の回転速度が上昇し所定の回転速度以上になった場合、あるいは負荷15の負荷が大きくなり電源1からの入力が大きくなった場合、あるいは電源1からの入力電流が大きくなった場合、スイッチ8を連続オンとして整流回路を全波整流から倍電圧整流に切り換える。なお、スイッチ8をオンするタイミングは、ゼロクロス検出回路13で検出した交流電源のゼロクロスのタイミングで行う。これにより交流電源1から入力する入力電流とインバータ回路9に出力する直流電圧の変化を緩和することができる。また、このとき、スイッチング素子4は、第2-1の運転モードで制御していた遅延時間及び短絡時間で制御したまま、あるいはスイッチ8をオンする前後でオンオフ制御を一定時間停止してスイッチ8をオンし、その後遅延時間を所定の値に制御し、短絡時間を増減して所定の直流電圧を得るようにする。あるいは予めスイッチ8のオンするタイミングにおけるスイッチング素子4の遅延時間及び短絡時間を決定しておいても良い。
【0033】
図2は、第2の運転モード(第2-2及び第2-3の運転モード)における、スイッチング素子4を短絡するときの交流電圧ゼロクロス点からの遅延時間を説明する図である。図2に示すように、入力電流検出回路17で検出した入力電流情報に応じて、入力電流が大きくなるに従ってゼロクロス点からの遅延時間が小さくなるように制御を行う。
【0034】
また、第2-2及び第2-3の運転運転モード時のスイッチング素子4のオンオフ制御は、インバータ回路9に出力する直流電圧が負荷15の回転速度もしくは電源1からの入力電流に応じて予め決定した直流電圧値になるように、スイッチング素子4の短絡時間を増減する。この増減方法は、所定の直流電圧値と検出した直流電圧値の偏差をもとにマイコン10が演算し、スイッチング素子4の短絡時間の増減幅を決定する。このフィードバック制御により精度の良い直流電圧を得ることができる。
【0035】
なお、後述する図4、5に示すように、第2-2の運転モードと第2-3の運転モード時に制御を行う直流電圧はそれぞれ同じ値としても、また、独立した値としてもよい。」

ケ 甲第9号証の記載事項
甲第9号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。

a 「【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明にかかる第1の実施の形態の直流電源装置を示す構成図である。図1において、交流電源1の出力端からリアクタ2を経由してスイッチング素子3a、3bとダイオード4a、4bとの逆並列接続回路からなる直列接続回路と、交流電源1の出力端から電流検出器を経由してダイオード4c、4dからなる直列接続回路より構成されるブリッジ回路に入力される。ブリッジ整流回路の出力には平滑コンデンサ7、負荷8が接続されている。さらに、電流検出器5から得られた検出値に基づいてスイッチング素子制御手段9を制御するものであって、目標電流波形と相似な電流波形になるように、スイッチング素子3a、3bの適切なパルス信号を出力している。
【0016】
次に過電流が流れた場合の動作について説明する。図2は電源位相が正または負の時の電流の流れる経路を示すものであり、ここではシャント抵抗は6aスイッチング素子3bとダイオード4bの逆並列接続回路に直列に接続された場合について説明する。
【0017】
交流電源1の正の半周期は、図2(a)に示すように、スイッチング素子3bがオンの時は、交流電源1-リアクタ2-スイッチング素子3b-シャント抵抗6a-ダイオード4d-電流検出器5-交流電源1の電流経路が形成され、スイッチング素子3bがオフの時は交流電源1-リアクタ2-ダイオード4a-平滑コンデンサ7-ダイオード4d-電流検出器5-交流電源1の電流経路が形成される。スイッチング素子3bに過電流が流れたとすると、スイッチング素子3bに流れる電流をシャント抵抗6aによって電圧レベルで検出し、その電圧レベルが過電流検知レベルを超えれば過電流が発生したと見なして保護回路を動作させる。
【0018】
一方、交流電源1の負の半周期は、図2(b)に示すように、スイッチング素子3aがオンの時は、交流電源1-電流検出器5-ダイオード4c-スイッチング素子3a-リアクタ2-交流電源1の電流経路が形成され、スイッチング素子3aがオフの時は、交流電源1-電流検出器5-ダイオード4c-平滑コンデンサ7-ダイオード4b-リアクタ2-交流電源1の電流経路が形成される。スイッチング素子3aに過電流が流れた時は、入力電流制御に用いている電流検出器5を利用する。スイッチング素子3aに流れる電流は電流検出器5で検出できるので、その検出値が過電流検知レベルを超えれば過電流が発生したと見なして保護回路を動作させる。
【0019】
そうすることで、スイッチング素子3a、3bの両方にシャント抵抗を挿入しなくても、スイッチング素子3aは電流検出器5から得られた検出値、スイッチング素子3bはシャント抵抗6aの両端電圧の検出値によって過電流を判断するようにすれば、保護回路は少なくとも1組のみでよいので実装面積は少なくてすむ。もちろんシャント抵抗をスイッチング素子3a、3bに直列に接続しても過電流保護動作を行なうことは可能であるが、図1のような上下にスイッチング素子3a、3bがあるコンバータ回路では、スイッチング動作のたびに上下のスイッチング素子の接続点の電位は変わるので、上アームのスイッチング素子3aに直列に接続されたシャント抵抗の両端電圧は揺さぶられ、通常保護回路は複雑かつ困難になる。しかし、電流検出器5から得られた検出値を用いることで保護回路を簡素化でき、実装面積、コスト及び損失を少なくすることができる。
【0020】
一方、スイッチング素子3a、3bが同時オンした上下短絡の時は、図2(c)に示すように、スイッチング素子3a-スイッチング素子3b-シャント抵抗6a-平滑コンデンサ7-スイッチング素子3aの電流経路が形成される。この時はシャント抵抗6aの両端電圧の検出値で過電流を判断し、シャント抵抗6aを用いることで上下短絡時の高速保護が可能となる。」

b 「図1



c 「図2



コ 甲第10号証の記載事項
甲第10号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。

a 「【0011】
【実施例】以下、本発明の一実施例について図1を参照しながら説明する。
【0012】図1は本発明の突入電流防止回路の実施例を示す回路図である。図1において、1は商用の交流電源を示し、ダイオードブリッジ2によってこれを整流している。更に、平滑コンデンサ3によって平滑し、負荷装置4へ直流電圧を供給している。5はダイオードブリッジ2と平滑コンデンサ3の間に挿入されたシャント抵抗である。このシャント抵抗5の両端に、流れる電流に比例した電圧が生じる事となる。6はシャント抵抗5の両端に発生した電圧を分圧する抵抗であり、検出電流値の設定を行う。
【0013】7はフォトカプラである。7aはフォトカプラ7の発光ダイオード、7bはフォトカプラ7のフォトトランジスタである。発光ダイオード7aはある電圧以上になると導通して発光し、その光をフォトトランジスタ7bが受ける事となる。8は平滑コンデンサ3に直列に接続されたスイッチング素子である。フォトトランジスタ7bはスイッチング素子8のベースとGNDとの間に接続されている。9は帰還ダイオードであり、平滑コンデンサ3の放電時にはこの帰還ダイオード9を通して電流が流れる。10はスイッチング素子8のベースに所定の電流を供給するためのベース抵抗である。
【0014】以下、動作を説明する。商用の交流電源1を投入すると、ベース抵抗10に電流が流れ、スイッチング素子8が「オン」する。すると、電荷の蓄積のない平滑コンデンサ3は短絡に近い状態であるから、多大な電流がシャント抵抗5を流れようとする。しかし、ある電流値になるとフォトカプラ7の発光ダイオード7aが導通して発光し、それに従ってフォトトランジスタ7bが導通してスイッチング素子8のベースをGNDに短絡させる。するとスイッチング素子8が「オフ」し、平滑コンデンサ3への充電がストップする。
【0015】次にシャント抵抗5を流れる電流がある値より小さくなると、発光ダイオード7aおよびフォトトランジスタ7bは「オフ」し、スイッチング素子8が再び「オン」する。」

b 「図1




(3)対比・判断
ア 理由1(特許法第29条第2項)について
(ア)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比すると以下のとおりである。

a 甲1発明の「交流電源1」,「ダイオード4c」,「ダイオード4d」,「ダイオード4a」,「ダイオード4b」は,各々,本件発明1の「交流電源」,「第1のダイオード」,「第2のダイオード」,「第3のダイオード」,「第4のダイオード」に相当する。
また,甲1発明の「整流部」は,「ダイオード4a,4b,4c,4dとからな」り,「ダイオード4aのアノードおよびダイオード4bのカソードは交流入力端PA1に接続され,ダイオード4cのアノードおよびダイオード4dのカソードは交流入力端PA2に接続され」るものであって,ここで,「交流入力端PA1」は.「リアクトル2」を介して「交流電源1」の「電源端子U」に接続され,また,交流入力端PA2」は.「交流電源1」の「電源端子V」に接続されるものである。
したがって,甲1発明の「交流電源1」に接続され,「ダイオード4a,4b,4c,4dとからな」る「整流部」は,本件発明1の「交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路」に相当する。

b 甲1発明の「スイッチ素子5a」 は,「ダイオード4aに並列に,かつ導通方向が逆方向になるように接続され」るものであり,ダイオード4aがオフする方向に対して耐電圧特性を有することは明らかでる。
してみると,甲1発明の「スイッチ素子5a」と,本件発明1の「前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子」とは,後記の点で相違するものの,“前記第3のダイオードに並列接続されており,当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有する第1のスイッチング素子”の点では共通する。

c 甲1発明の「スイッチ素子5b」 は,「ダイオード4bに並列に,かつ導通方向が逆方向になるように接続され」るものであり,ダイオード4bがオフする方向に対して耐電圧特性を有することは明らかである。
してみると,甲1発明の「スイッチ素子5b」と,本件発明1の「前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子」とは,後記の点で相違するものの,“前記第4のダイオードに並列接続されており,当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有する第2のスイッチング素子”の点では共通する。

d 甲1発明の「リアクトル2」は,「一方の端子が電源端子Uに接続されるように,交流電源1に直列に接続され,リアクトル2の他方の端子は交流入力端PA1に接続され」るものであって,さらに,「交流入力端PA1」に「整流部」の「ダイオード4aのアノードおよびダイオード4bのカソード」が「接続され」るものであるから,本件発明1の「前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトル」に相当する。

e 甲1発明の「平滑コンデンサ6」は,「整流出力端PR1,PR2に並列に接続され,整流電圧S4を平滑化」するものであるから,本件発明1の「前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサ」に相当する。

f 甲1発明の「スイッチ制御部10」は,「制御信号S10a,S10bを生成し,スイッチ素子5a,5bは,この制御信号S10a,S10bに基づいて,それぞれスイッチングされるものであ」るから,本件発明1の「前記第1、第2のスイッチング素子を制御する制御手段」に相当する。

g 甲1発明では「平滑コンデンサ6は,整流出力端PR1,PR2に並列に接続され」るものであるから,甲1発明の「整流出力端PR1」,「整流出力端PR2」は,各々,本件発明1の「平滑コンデンサの正極側」,「平滑コンデンサの負極側」に相当する。
してみると,甲1発明の「ダイオード4aおよびダイオード4cの両カソードは正極整流出力端PR1に接続され,ダイオード4bおよびダイオード4dの両アノードは負極整流出力端PR2に接続され,スイッチ素子5aは,ダイオード4aに並列に,かつ導通方向が逆方向になるように接続され,スイッチ素子5bは,ダイオード4bに並列に,かつ導通方向が逆方向になるように接続され」ることは,本件発明1の「前記第1のダイオードのカソードと前記第1のスイッチング素子の一端とが前記平滑コンデンサの正極側に接続され、」「前記第2のダイオードのアノードと前記第2のスイッチング素子の他端とが前記平滑コンデンサの負極側に接続され」ることに相当する。
また,甲1発明の「ダイオード4aのアノードおよびダイオード4bのカソードは交流入力端PA1に接続され,ダイオード4cのアノードおよびダイオード4dのカソードは交流入力端PA2に接続され,」「スイッチ素子5aは,ダイオード4aに並列に,かつ導通方向が逆方向になるように接続され,スイッチ素子5bは,ダイオード4bに並列に,かつ導通方向が逆方向になるように接続され」ることは,本件発明1の「前記第1のダイオードのアノードと前記第2のダイオードのカソードとが前記交流電源の一端側に接続され、前記第1のスイッチング素子の他端と前記第2のスイッチング素子の一端とが前記交流電源の他端側に接続され」ることに相当する。

h 甲1発明の「直流電源装置」は,「整流部」,「スイッチ素子5a,5b」,「リアクトル2」,「平滑コンデンサ6」,「スイッチ制御部10」を備えるものである。
しかしながら,甲1発明の「直流電源装置」は,電流を検出する手段を備えるものではない。
さらに,甲1発明の「直流電源装置」は,「ダイオード4a,4b,4c,4dとからなる整流部」を備えるとともに,いわゆるダイオード整流を,あるいは,「各スイッチ素子5a,5bを電界効果型トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)にすることにより,同期整流」を行うものである。また,甲1発明は,「交流極性信号S8a,S8bのロー期間において,目標直流電圧と直流電圧S6との差電圧に応じて変化するパルス幅と,搬送波周期TPWMに等しいパルス周期とを有する一連のパルス信号となり,目標直流電圧と直流電圧S6との差電圧によりパルス幅変調(PWM:Pulse Code Modulation)された信号となる」「制御信号S10a,S10bに基づいて」,「第1および第2スイッチ素子5a,5bを,」「スイッチングすることにより,前記リアクトル2に流れる電流の第1および第2経路を交互に変更し,昇圧チョッパ動作を行う」ものである。したがって,甲1発明は,本件発明1の「同期整流制御および交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数」「で短絡する高速スイッチング制御を同時に実施するモード」,あるいは,「ダイオード整流制御および」交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する「高速スイッチング制御を同時に実施するモード」に相当するモードを有していると認められるが,「短絡」が「前記瞬時電流に基づいて算出した通流率で短絡する」ものではない。
また,甲1発明は,「負荷7に応じて目標直流電圧を変更でき」るものであるが,「負荷7が大きくなるにつれて目標直流電圧を上げるように構成して,各スイッチ素子5a,5bのオン期間を広げる」ものであって,ダイオード整流あるいは同期整流と同時に行う昇圧チョッパ動作時(本件発明1の「高速スイッチング制御」時)のオン期間を広げるものであるから,負荷の大きさによって,ダイオード整流のみあるいは同期整流のみのモードから,同期整流あるいはダイオード整流と昇圧チョッパ動作を同時に実施するモードに切り替えを行うものではない。
したがって,甲1発明の「直流電源装置」と,本件発明1の「直流電源装置」とは,後記の点で相違するものの,“整流回路と,第1のスイッチング素子と,第2のスイッチング素子と,リアクトルと,平滑コンデンサと,制御手段と,を備える,直流電源装置。”の点では共通する。

そうすると,本件発明1と甲1発明は,以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「交流電源に接続され,第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と,
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか,または前記第3のダイオードに並列接続されており,当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有する第1のスイッチング素子と,
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか,または前記第4のダイオードに並列接続されており,当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有する第2のスイッチング素子と,
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと,
前記整流回路の出力側に接続され,当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと,
前記第1,第2のスイッチング素子を制御する制御手段と,
を備え,
前記第1のダイオードのカソードと前記第1のスイッチング素子の一端とが前記平滑コンデンサの正極側に接続され,前記第1のダイオードのアノードと前記第2のダイオードのカソードとが前記交流電源の一端側に接続され,前記第1のスイッチング素子の他端と前記第2のスイッチング素子の一端とが前記交流電源の他端側に接続され,前記第2のダイオードのアノードと前記第2のスイッチング素子の他端とが前記平滑コンデンサの負極側に接続されている,
直流電源装置。」

(相違点1)
「第1のスイッチング素子」及び「第2のスイッチング素子」が,本件発明1では,いずれも「前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い」ものであるのに対して,甲1発明では,その旨の特定がされていない点。

(相違点2)
本件発明1では,「前記整流回路と前記平滑コンデンサの負極との間に接続されて、前記整流回路に通流する瞬時電流を検出する第1の電流検出手段」を備えるものであって,また,「前記第1の電流検出手段は、前記交流電源の他端側の電圧が正極性かつ前記第2のスイッチング素子がオフ状態の場合と、前記交流電源の他端側の電圧が負極性かつ前記第1のスイッチング素子がオフ状態の場合の瞬時電流を検出」し,さらに,「交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数かつ前記瞬時電流に基づいて算出した通流率で短絡する高速スイッチング制御」を実施するのに対して,甲1発明では,そのような電流検出手段を備えておらず,また,そのような瞬時電流を検出していないので,「昇圧チョッパ動作」の際の「リアクトル2」の短絡はそのような瞬時電流に基づいて算出した通流率によるものでもない点。

(相違点3)
本件発明1では,「前記制御手段は、負荷の大きさに基づいて、前記交流電源の電圧の極性に同期して極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数かつ前記瞬時電流に基づいて算出した通流率で短絡する高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、 負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、のうちいずれかを実施する」ものであるのに対して,甲1発明では,そのような切り替えを実施していない点。

事案に鑑み,まず,相違点2について先に検討する。
上記(2)イないしエの甲第2号証ないし甲第4号証にも記載されるように,直流電源装置において,整流回路と平滑コンデンサの負極の間に電流検出手段を設けることは周知の技術である。
しかしながら,甲1発明の課題は,上記(2)アaに記載されるように,従来の直流電源装置においては,電流検出回路が必要であったことを課題とするものであり,甲1発明において電流検出手段を設ける理由が存在しない。
また,高速スイッチング制御においてリアクトルを電流検出手段が検出した瞬時電流に基づいて算出した通流率で短絡することまでもが周知の技術であったとは認められない。
さらに,甲第5号証及び甲第6号証には,スイッチング素子の飽和電圧をダイオードの順方向電圧降下よりも低いものとすることが周知技術であること,また,甲第7号証には,負荷の大きさに応じて,「全波整流モード」(本件発明1の「ダイオード整流モード」)と他のモードの切り替えを行うことは記載されているが,甲第5号証ないし甲第7号証には,高速スイッチング制御においてリアクトルを電流検出手段が検出した瞬時電流に基づいて算出した通流率で短絡することは記載されていない。
よって,上記相違点1,及び相違点3について検討するまでもなく,本件発明1は,甲第1号証に記載された発明(甲1発明),甲第2号証ないし甲第4号証に記載の周知技術,甲第5号証及び甲第7号証に記載の周知技術,及び技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

(イ)本件発明2ないし本件発明7
本件発明2ないし本件発明7は,本件発明1の発明特定事項を全て含み,さらに限定するものであり,同様に,甲第1号証に記載された発明(甲1発明),甲第2号証ないし甲第4号証に記載の周知技術,甲第5号証及び甲第7号証に記載の周知技術,及び技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
また,本件発明2ないし本件発明7が共通に含む上記相違点2に係る構成は,上記(2)クないしコに示した甲第8号証ないし甲第10号証にも記載されていないから,本件発明2ないし本件発明7は,甲第1号証ないし甲第10号証に記載された発明,周知技術,及び技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(ウ)本件発明8
本件発明8は,本件発明1ないし本件発明7の直流電源装置を「空気調和機」に備えたものであり,本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから,上記(ア)と同様に,甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明,周知技術,及び技術事項に基づいて,または,甲第1号証ないし甲第10号証に記載された発明,周知技術,及び技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

イ 理由2(特許法第36条第6項第2号)
・「理由2-1」について
本件発明1には「前記制御手段は、・・・の切り替え、・・・の切り替え、・・・の切り替え、・・・の切り替え、・・・の切り替え、・・・の切り替え、・・・の切り替え、・・・の切り替え、のうちいずれかを実施する、」と記載されており,必ずしも,8つの制御方法(「切り替え」)の全てを備えるものではなく,この「いずれか」を備えていることは明らかである。

・「理由2-2」,「理由2-3」について
直流電源装置に接続された装置の「負荷の大きさ」に関しては,通常,「負荷の大きさ」として測定可能な様々な指標を基に検出がされており,そして,測定が可能な指標であれば「負荷の大きさ」を「制御手段」は判断可能である。
したがって,「負荷の大きさ」を具体的に記載しなくとも何を示すか明確でないとまではいえない。また,「負荷の大きさ」を「制御手段」がどのように判断するか明確でないとまではいえない。

・「理由2-4」について
「スイッチング素子」の種類によって「飽和電圧」の定義が異なっていることは技術常識であり,本件発明1の「飽和電圧」が,使用する「スイッチング素子」に応じた「飽和電圧」であることは明らかであるから,「スイッチング素子」を具体的な種類まで記載しなくとも明確でないとまではいえない。

したがって,本件請求項1ないし8に係る特許が明確ではないとはいえない。

ウ 理由3(特許法第36条第6項第1号)
本件訂正請求により,請求項1は「前記第1の電流検出手段は、前記交流電源の他端側の電圧が正極性かつ前記第2のスイッチング素子がオフ状態の場合と、前記交流電源の他端側の電圧が負極性かつ前記第1のスイッチング素子がオフ状態の場合の瞬時電流を検出」と訂正され,同期整流中に瞬時電流を検出できるものとなったことから,本件請求項1ないし8に係る特許が,発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえない。


第4 むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した異議申立ての理由及び証拠によっては,本件請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。また,他に取り消すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
直流電源装置および空気調和機
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電圧を直流電圧に変換する直流電源装置および、この直流電源装置を用いた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
電車、自動車、空気調和機などには、交流電圧を直流電圧に変換する直流電源装置が搭載されている。そして、直流電源装置から出力される直流電圧をインバータによって所定周波数の交流電圧に変換し、この交流電圧をモータなどの負荷に印加するようになっている。このような直流電源装置は、電力変換効率を高めて省エネルギ化を図ることが求められている。
そこで、特許文献1のように交流電源を直流電源に変換する直流電源装置において、回路にMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor-Field-Efect-Transistor)を備えた同期整流回路が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-90570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、直流電源装置には省エネルギ化の他に、電子機器や配電・受電設備の保護といった観点から高調波電流の低減が求められており、そのためには電源力率の改善が必要である。そこで、電源力率改善のために交流電源と整流回路の間にリアクトルを設けて、電源半周期毎に少なくとも1回以上回路を短絡させることで電源力率の改善と直流電圧の昇圧を行う手法が一般的に用いられている。
【0005】
ところで、直流電源装置に接続されている負荷が大きくなればなるほど、短絡回数を増やして力率の改善と直流電圧の昇圧を行わなければならない。しかし、スイッチング回数が増えるほどスイッチング損失が増えるため、回路損失としては大きくなってしまう。また、高速にスイッチングを行うためには電流検出の精度を上げる必要がある。
【0006】
特許文献1の回路構成では、回路短絡時には同期整流を実施していないため回路損失は大きい。そして、回路を短絡するために第2の整流回路やスイッチング素子を追加しているため回路規模の増大やコストアップに繋がってしまう。更に、電流検出にカレントトランスを用いているため、高速スイッチングを行うためには高速のカレントトランスを用いる必要があるためコストアップになってしまう。
そこで本発明は、高効率かつ高調波電流の抑制を両立可能な直流電源装置を提供し、この直流電源装置を用いた空気調和機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するため、本発明の直流電源装置は、交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記第1,第2のスイッチング素子を制御する制御手段と、前記交流電源と前記整流回路との間に接続されて、前記整流回路に通流する平均電流を検出する第1の電流検出手段と、前記整流回路と前記平滑コンデンサの負極との間に接続されて、前記整流回路に通流する瞬時電流を検出する第2の電流検出手段とを備え、前記第1のダイオードのカソードと前記第1のスイッチング素子の他端とが前記平滑コンデンサの正極側に接続され、前記第1のダイオードのアノードと前記第2のダイオードのカソードとが前記交流電源の一端側に接続され、前記第1のスイッチング素子の他端と前記第2のスイッチング素子の一端とが前記交流電源の他端側に接続され、前記第2のダイオードのアノードと前記第2のスイッチング素子の他端とが前記平滑コンデンサの負極側に接続されており、前記第1の電流検出手段は、前記交流電源の他端側の電圧が正極性かつ前記第2のスイッチング素子がオフ状態の場合と、前記交流電源の他端側の電圧が負極性かつ前記第1のスイッチング素子がオフ状態の場合の瞬時電流を検出し、前記制御手段は、負荷の大きさに基づいて、前記交流電源の電圧の極性に同期して極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡して前記瞬時電流を正弦波に近似させる制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数で短絡する高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、のうちいずれかを実施することを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高効率かつ高調波電流の抑制を両立可能な直流電源装置および、この直流電源装置を用いた空気調和機を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態における直流電源装置を示す概略の構成図である。
【図2】交流電源電圧が正の極性の場合において、ダイオード整流を行ったときに回路に流れる電流経路を示した図である。
【図3】交流電源電圧が負の極性の場合において、ダイオード整流を行ったときに回路に流れる電流経路を示した図である。
【図4】交流電源電圧が正の極性の場合において、同期整流を行ったときに回路に流れる電流経路を示した図である。
【図5】交流電源電圧が負の極性の場合において、同期整流を行ったときに回路に流れる電流経路を示した図である。
【図6】同期整流時における、電源電圧と回路電流とMOSFETの駆動パルスの波形図である。
【図7】交流電源電圧が正の極性の場合において、力率改善動作を行った場合に回路に流れる電流経路を示した図である。
【図8】交流電源電圧が負の極性の場合において、力率改善動作を行った場合に回路に流れる電流経路を示した図である。
【図9】力率改善電流を通流させた場合における、電源電圧と回路電流とMOSFETの駆動パルスの波形図である。
【図10】高速スイッチングを行った場合の電源電圧と回路電流とMOSFETの駆動パルスの波形図である。
【図11】高速スイッチングを行った場合のMOSFETのデューティの関係を示した図である。
【図12】高速スイッチングを行い、デッドタイムを考慮した場合のMOSFETのデューティの関係を示した図である。
【図13】高速スイッチングを行った場合の交流電源電圧と回路電流の関係を示した図である。
【図14】交流電源電圧が正極性の場合に、リアクトルによる電流位相の遅れ分を考慮した場合のMOSFETのデューティを示した図である。
【図15】部分スイッチングの概要を説明した図である。
【図16】負荷の大きさに応じた直流電源装置の動作モードの切り替えを説明した図である。
【図17】部分スイッチングから高速スイッチングへ切り替える場合の電流波形を説明した図である。
【図18】電流検出のタイミングを示した図である。
【図19】交流電源電圧が正の極性の場合において、第2のスイッチング素子がオンの状態で、第1のスイッチング素子が誤動作によってオンしてしまい、回路に流れる短絡電流の経路を示した図である。
【図20】交流電源電圧が負の極性の場合において、第1のスイッチング素子がオンの状態で、第2のスイッチング素子が誤動作によってオンしてしまい、回路に流れる短絡電流の経路を示した図である。
【図21】交流電源電圧が負の極性の場合において、過電流を検知する回路を備える変形例を示した図である。
【図22】本実施形態における空気調和機の室内機、室外機、およびリモコンの正面図である。
【図23】負荷の大きさに応じて直流電源装置の動作モードと空気調和機の運転領域を切り替える様子を説明した概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る直流電源装置1の構成図である。
図1に示すように、直流電源装置1は、交流電源VSから供給される交流電源電圧Vsを直流電圧Vdに変換し、この直流電圧Vdを負荷H(インバータ、モータなど)に出力するコンバータである。直流電源装置1は、その入力側が交流電源VSに接続され、出力側が負荷Hに接続されている。
【0011】
直流電源装置1は、リアクトルL1と、平滑コンデンサC1と、ダイオードD1,D2,D3,D4、スイッチング素子であるMOSFET(Q1,Q2)および第1の電流検出手段であるシャント抵抗R1、第2の電流検出手段であるカレントトランス11と、第3の電流検出手段であるシャント抵抗R2とを備えている。ダイオードD1,D2,D3,D4と、MOSFET(Q1,Q2)とは、ブリッジ整流回路10を構成する。
なお、MOSFET(Q1,Q2)はスイッチング素子であり、ダイオードD3はMOSFET(Q1)の寄生ダイオードであり、ダイオードD4はMOSFET(Q2)の寄生ダイオードである。また、MOSFET(Q1)とMOSFET(Q2)の飽和電圧はダイオードD1,D2と寄生ダイオードD3,D4の順方向電圧降下よりも低い。
【0012】
この直流電源装置1は更に、ゲイン制御部12と、交流電圧検出部13と、ゼロクロス判定部14と、負荷検出部15と、昇圧比制御部16と、直流電圧検出部17と、コンバータ制御部18とを備えている。コンバータ制御部18は、交流電源VSのリアクトルL1側の端子の電圧が正極性かつMOSFET(Q2)がオフ状態の場合と、交流電源VSの一端側の電圧が負極性かつMOSFET(Q1)がオフ状態の場合の瞬時電流を検出する。
【0013】
ダイオードD1,D2とMOSFET(Q1,Q2)は、ブリッジ接続されている。ダイオードD1のアノードは、ダイオードD2のカソードに接続され、その接続点N1は配線hbを介して交流電源VSの一端に接続されている。
【0014】
MOSFET(Q1)のソースは、MOSFET(Q2)のドレインに接続されている。MOSFET(Q1)のソースは、接続点N2と配線haとリアクトルL1とを介して交流電源VSの一端に接続されている。
ダイオードD2のアノードは、MOSFET(Q2)のソースに接続されている。
MOSFET(Q1)のドレインは、ダイオードD1のカソードに接続されている。
【0015】
また、ダイオードD1のカソードとMOSFET(Q1)のドレインは、配線hcを介して平滑コンデンサC1の正極と負荷Hの一端に接続されている。更にダイオードD2とMOSFET(Q2)のソースはシャント抵抗R1とシャント抵抗R2と配線hdを介して、それぞれ平滑コンデンサC1の負極および負荷Hの他端に接続されている。シャント抵抗R1はMOSFET(Q2)のソース端子と平滑コンデンサC1の負極端子の間に接続されている。シャント抵抗R2はダイオードD2のアノードとMOSFET(Q2)のソース端子の間に接続されている。
【0016】
リアクトルL1は、配線ha上、つまり交流電源VSとブリッジ整流回路10との間に設けられている。このリアクトルL1は、交流電源VSから供給される電力をエネルギとして蓄え、更にこのエネルギを放出することで昇圧を行う。
【0017】
平滑コンデンサC1は、ダイオードD1やMOSFET(Q1)を通して整流された電圧を平滑化して、直流電圧Vdとする。この平滑コンデンサC1は、ブリッジ整流回路10の出力側に接続されており、正極側が配線hcに接続され、負極側が配線hdに接続される。
【0018】
スイッチング素子であるMOSFET(Q1,Q2)は、後記するコンバータ制御部18からの指令によってオン/オフ制御される。スイッチング素子としてMOSFET(Q1,Q2)を用いることで、スイッチングを高速で行うことができ、更に電圧ドロップの小さいMOSFETに電流を流すことで、いわゆる同期整流制御を行うことが可能であり、回路の導通損失を低減できる。
【0019】
このMOSFET(Q1,Q2)として、オン抵抗の小さいスーパージャンクションMOSFETを用いることで、導通損失を更に低減することが可能である。ここで、MOSFETの寄生ダイオードには、回路短絡動作時に逆回復電流が発生する。特にスーパージャンクションMOSFETの寄生ダイオードは、通常のMOSFETの寄生ダイオードに対して逆回復電流が大きく、スイッチング損失が大きいという課題がある。そこで、MOSFET(Q1,Q2)として、逆回復時間(trr:Reverse Recovery Time)が小さいMOSFETを使用することで、スイッチング損失を低減することができる。
【0020】
ダイオードD1,D2はアクティブ動作時においても逆回復電流が発生しないため、その順方向電圧小さいものを選定することが好ましい。例えば、一般的な整流ダイオードや高耐圧のショットキーバリアダイオードを使用することで、回路の導通損失を低減することが可能である。
カレントトランス11は、回路に通流する平均電流を検出する機能を有している。このカレントトランス11は、ダイオードD5を通して整流し、抵抗R3と平滑コンデンサC2によって平滑することで、回路に通流する平均電流を検出している。
シャント抵抗R1,R2は、回路に流れる瞬時電流を検出する機能を有している。
【0021】
ゲイン制御部12は、回路電流実効値Isと直流電圧昇圧比aから決定される電流制御ゲインKpを制御する機能を有している。このときKp×Isを所定値に制御することで、交流電源電圧Vsから直流電圧Vdをa倍に昇圧することができる。
【0022】
交流電圧検出部13は、交流電源VSから印加される交流電源電圧Vsを検出するものであり、配線ha,hbに接続されている。交流電圧検出部13は、その検出値をゼロクロス判定部14に出力する。
【0023】
ゼロクロス判定部14は、交流電圧検出部13によって検出される交流電源電圧Vsの値に関して、その正負が切り替わったか、つまり、ゼロクロス点に達したか否かを判定する機能を有している。ゼロクロス判定部14は、交流電源電圧Vsの極性を検出する極性検出部である。例えば、ゼロクロス判定部14は、交流電源電圧Vsが正の期間中にはコンバータ制御部18に‘1’の信号を出力し、交流電源電圧Vsが負の期間中にはコンバータ制御部18に‘0’の信号を出力する。
【0024】
負荷検出部15は、例えば不図示のシャント抵抗によって構成され、負荷Hに流れる電流を検出する機能を有している。なお、負荷Hがインバータやモータである場合、負荷検出部15によって検出した負荷電流によってモータの回転速度やモータの印加電圧を演算してもよい。また、後記する直流電圧検出部17によって検出した直流電圧とモータの印加電圧から、インバータの変調率を演算してもよい。負荷検出部15は、その検出値(電流、モータ回転数、変調率等)を昇圧比制御部16に出力する。
【0025】
昇圧比制御部16は、負荷検出部15の検出値から直流電圧Vdの昇圧比aを選定し、その選定結果をコンバータ制御部18に出力する。そして目標電圧まで直流電圧Vdを昇圧するようにコンバータ制御部18はMOSFET(Q1,Q2)に駆動パルスを出力することで、スイッチング制御を行う。
【0026】
直流電圧検出部17は、平滑コンデンサC1に印加される直流電圧Vdを検出するものであり、その正側が配線hcに接続され、負側が配線hdに接続されている。直流電圧検出部17は、その検出値をコンバータ制御部18に出力する。なお、直流電圧検出部17の検出値は、負荷Hに印加される電圧値が所定の目標値に達しているか否かの判定に用いられる。
【0027】
コンバータ制御部18を含むブロックMは、例えば、マイコン(Microcomputer:図示せず)であり、ROM(Read Only Memory)に記憶されたプログラムを読み出してRAM(Random Access Memory)に展開し、CPU(Central Processing Unit)が各種処理を実行するようになっている。コンバータ制御部18は、カレントトランス11またはシャント抵抗R1,R2、ゲイン制御部12、ゼロクロス判定部14、昇圧比制御部16、および直流電圧検出部17から入力される情報に基づいて、MOSFET(Q1,Q2)のオン/オフを制御する。なお、コンバータ制御部18が実行する処理については後記する。
【0028】
本実施形態の直流電源装置1は、MOSFET(Q1,Q2)を上下に組んだ構成としている。この構成に変わる別形態として、本実施形態のダイオードD2の位置にMOSFET(Q1)を配置し、本実施形態のMOSFET(Q1)の位置にダイオードD2を配置する下2個の構成が考えられる。この構成の場合、後述する回路短絡動作を行った場合に、交流電源VSとMOSFET(Q1,Q2)との間にリアクトルL1を介さずに短絡電流が直接グランド(配線hd)を流れてしまうためノイズが過大となってしまう。
これを回避するため、本実施形態の直流電源装置1では、MOSFET(Q1,Q2)を上下に配置した構成としている。しかし、この構成の場合、前述した通り回路短絡動作を行ったときにMOSFET(Q1)の寄生ダイオードD3には逆回復電流(Irr)が発生する。この逆回復電流が大きいほど、更にはスイッチング回数が多いほどスイッチング損失は大きくなってしまう。そこで、本実施形態の直集電源装置ではMOSFET(Q1)にはIrrの小さい、つまり逆回復時間(trr)の速い高速trrタイプのMOSFETを用いている。
【0029】
次に、本実施形態の直流電源装置1の動作モードについて説明する。
直流電源装置1の動作モードとしては、大きく分けてダイオード整流モード、同期整流モード、部分スイッチングモード、高速スイッチングモードの4つを考える。部分スイッチングモード、高速スイッチングモードは、コンバータがアクティブ動作(力率改善動作)をするモードであり、ブリッジ整流回路10に力率改善電流を通流させることで直流電圧Vdの昇圧と力率の改善を行うモードである。例えばインバータやモータなどの負荷が大きい場合には、直流電圧Vdを昇圧する必要がある。また、負荷が大きくなり、直流電源装置1に流れる電流が大きくなるにしたがって高調波電流も増大してしまう。そのため、高負荷の場合には、部分スイッチングモードまたは高速スイッチングモードで昇圧を行い、高調波電流の低減つまり、電源入力の力率を改善させる必要がある。
【0030】
≪ダイオード整流モード≫
ダイオード整流モードは、4つのダイオードD1?D4を用いて全波整流を行うモードである。このモードではMOSFET(Q1)およびMOSFET(Q2)はオフ状態である。
【0031】
図2は交流電源電圧Vsが正の極性の場合において、ダイオード整流を行ったときに回路に流れる電流経路を示している。
図2において、交流電源電圧Vsが正の半サイクルの期間では、破線矢印で示す向きに電流が流れる。すなわち電流は、交流電源VS→リアクトルL1→寄生ダイオードD3→平滑コンデンサC1→シャント抵抗R1→シャント抵抗R2→ダイオードD2→カレントトランス11→交流電源VSの順に流れる。このとき、シャント抵抗R1に電流が流れるため、コンバータ制御部18は、シャント抵抗R1の端子電圧により瞬時電流値を検出する。またコンバータ制御部18は、カレントトランス11により平均電流を検出する。
【0032】
図3は交流電源電圧Vsが負の極性の場合において、ダイオード整流を行ったときに回路に流れる電流経路を示している。
図3において、交流電源電圧Vsが負の半サイクルの期間では、破線矢印で示す向きに電流が流れる。すなわち電流は、交流電源VS→カレントトランス11→ダイオードD1→平滑コンデンサC1→シャント抵抗R1→寄生ダイオードD4→リアクトルL1→交流電源VSの順に流れる。
このとき、シャント抵抗R1に電流が流れるため、コンバータ制御部18は、シャント抵抗R1の端子電圧により瞬時電流を検出する。またコンバータ制御部18は、カレントトランス11で平均電流を検出する。
【0033】
≪同期整流モード≫
前述のダイオード整流モードよりも高効率な動作を行うために、交流電源電圧Vsの極性に応じてMOSFET(Q1,Q2)をスイッチング制御することにより、同期整流制御を行う。
【0034】
図4は、交流電源電圧Vsが正の極性の場合において、同期整流を行ったときに回路に流れる電流経路を示した図である。
図4において、交流電源電圧Vsが正の半サイクルの期間では、破線矢印で示す向きに電流が流れる。すなわち電流は、交流電源VS→リアクトルL1→MOSFET(Q1)→平滑コンデンサC1→シャント抵抗R1→シャント抵抗R1→シャント抵抗R2→ダイオードD2→カレントトランス11→交流電源VSの順に流れる。
このとき、シャント抵抗R1に電流が流れるため、コンバータ制御部18は、シャント抵抗R1の端子電圧により瞬時電流を検出する。またコンバータ制御部18は、カレントトランス11で平均電流を検出する。
【0035】
このとき、MOSFET(Q2)は常時オフ、MOSFET(Q1)は常時オン状態である。仮にMOSFET(Q1)がオン状態で無い場合には、前述のダイオード整流動作のように電流はMOSFET(Q1)の寄生ダイオードD3を流れる。しかし通常、MOSFETの寄生ダイオードの特性は悪いため、大きな導通損失が発生してしまう。そこで、MOSFET(Q1)をオンさせて、MOSFET(Q1)のオン抵抗の部分に電流を流すことで、導通損失の低減を図ることが可能である。これが、いわゆる同期整流制御の原理である。なお、MOSFET(Q1)のオン動作開始のタイミングとしては、交流電源電圧Vsの極性が負から正に切り替わるゼロクロスのタイミングから行う。MOSFET(Q1)のオフさせるタイミングとしては、交流電源電圧Vsの極性が正から負に切り替わるタイミングである。
【0036】
図5は、交流電源電圧Vsが負の極性の場合において、同期整流を行ったときに回路に流れる電流経路を示した図である。
図5において、交流電源電圧Vsが負の半サイクルの期間では、破線矢印で示す向きに電流が流れる。すなわち、交流電源VS→カレントトランス11→ダイオードD1→平滑コンデンサC1→シャント抵抗R1→MOSFET(Q2)→リアクトルL1→交流電源VSの順に電流が流れる。このとき、MOSFET(Q1)は常時オフ、MOSFET(Q2)は常時オン状態である。
このとき、シャント抵抗R1に電流が流れるため、コンバータ制御部18は、シャント抵抗R1の端子電圧により瞬時電流を検出する。またコンバータ制御部18は、カレントトランス11で平均電流を検出する。
【0037】
なお、MOSFET(Q2)のオン動作開始のタイミングとしては、交流電源電圧Vsの極性が正から負に切り替わるゼロクロスのタイミングから行う。MOSFET(Q2)のオフさせるタイミングとしては、交流電源電圧Vsの極性が負から正に切り替わるタイミングである。
以上のように直流電源装置1を動作させることで、高効率動作が可能となる。
【0038】
図6(a)?(d)は、同期整流時における、交流電源電圧Vsと回路電流isとMOSFETの駆動パルスの波形図である。
図6(a)は交流電源電圧の瞬時値vsの波形を示し、図6(b)は回路電流isの波形を示している。図6(c)はMOSFET(Q1)の駆動パルス波形を示し、図6(d)はMOSFET(Q2)の駆動パルス波形を示している。
図6(a)に示すように交流電源電圧の瞬時値vsは、略正弦波状の波形である。
図6(c)に示すようにMOSFET(Q1)の駆動パルスは、交流電源電圧Vsの極性が正のときにHレベル、負のときにLレベルとなる。
図6(d)に示すようにMOSFET(Q2)の駆動パルスは、MOSFET(Q1)の駆動パルスとは反転しており、交流電源電圧Vsの極性が正のときにLレベル、負のときにHレベルとなる。
図6(b)に示すように、回路電流isは、交流電源電圧Vsが所定振幅に達した場合、つまり交流電源電圧Vsが直流電圧Vdに対して大きい場合に流れる。
【0039】
≪高速スイッチング動作≫
次に直流電圧Vdの昇圧と力率の改善を行う高速スイッチング動作について説明する。
この動作モードでは、あるスイッチング周波数でMOSFET(Q1,Q2)をスイッチング制御して、リアクトルL1を介して回路を短絡させ(以降、力率改善動作と呼ぶ)、回路に短絡電流(以降、力率改善電流と呼ぶ)を通流させることで、直流電圧Vdの昇圧と力率の改善を行う。まず、力率改善電流を通流させた場合の動作について説明する。
【0040】
交流電源電圧Vsが正のサイクルで同期整流を行った場合、電流の流れは図4の通りであり、MOSFET(Q1,Q2)の動作については前記した通りである。このとき、図6(b)に示したように、電源電圧に対して回路電流isは歪んでいる。これは、電流が流れるタイミングが交流電源電圧Vsに対して直流電圧Vdが小さくなった場合のみであることと、リアクトルL1の特性から生じるものである。
そこで、複数回に亘って回路に力率改善電流を通流させることで、回路電流isを正弦波に近づけることで力率の改善を行い、高調波電流を低減する。
【0041】
図7は、電源電圧が正のサイクルでMOSFET(Q2)をオンさせた場合に流れる力率改善電流ispの経路を示した図である。
【0042】
力率改善電流ispの経路としては、交流電源VS→リアクトルL1→MOSFET(Q2)→シャント抵抗R2→ダイオードD2→カレントトランス11→交流電源VS、の順である。このとき、リアクトルL1には、以下の式(1)で表されるエネルギが蓄えられる。このエネルギが平滑コンデンサC1に放出されることで、直流電圧Vdが昇圧される。
【数1】

【0043】
交流電源電圧Vsが負のサイクルで同期整流を行った場合の電流の流れは図5の通りであり、MOSFET(Q1,Q2)の動作については前記の通りである。なお、このとき、シャント抵抗R2に電流が流れているため、このシャント抵抗R2で過電流検出を行う。
【0044】
図8は、電源電圧が負のサイクルでMOSFET(Q1)をオンさせて力率改善電流ispを通流させた場合の経路を示した図である。
【0045】
電流の経路としては、交流電源VS→カレントトランス11→ダイオードD1→MOSFET(Q1)→リアクトルL1→交流電源VSの順となる。このときも、前記したようにリアクトルL1にエネルギが蓄えられ、そのエネルギによって直流電圧Vdが昇圧される。
【0046】
図9(a)?(d)は、力率改善電流を2回通流させた場合(2ショットと呼ぶ)における、交流電源電圧Vsと回路電流isとMOSFET(Q1,Q2)の駆動パルスの波形図である。
【0047】
図9(a)は交流電源電圧の瞬時値vsの波形を示し、図9(b)は回路電流isの波形を示している。図9(c)はMOSFET(Q1)の駆動パルス波形を示し、図9(d)はMOSFET(Q2)の駆動パルス波形を示している。
図9(a)に示すように交流電源電圧の瞬時値vsは、略正弦波状の波形である。
【0048】
図9(c)に示すようにMOSFET(Q1)の駆動パルスは、交流電源電圧Vsの極性が正のときにHレベルとなり、更に所定タイミングで2回のLレベルのパルスとなる。交流電源電圧Vsの極性が負のときにLレベルとなり、更に所定タイミングで2回のHレベルのパルスとなる。
【0049】
図9(c)に示すようにMOSFET(Q2)の駆動パルスは、MOSFET(Q1)の駆動パルスとは反転している。これは、力率改善動作と同期整流を組み合わせて行っているためである。例えば交流電源電圧Vsが正の極性の場合において、MOSFET(Q2)がオンして力率改善動作を行う。その後MOSFET(Q1)がオフした後、MOSFET(Q2)がオンしている区間は同期整流動作となる。このように、力率改善動作と同期性流動作を組み合わせることで、力率改善を行いつつ高効率動作が可能である。
【0050】
図9(b)に示すように、回路電流isは、交流電源電圧Vsが正極性かつ、MOSFET(Q2)の駆動パルスがHレベルになったときに立ち上がり、交流電源電圧Vsが負極性かつ、MOSFET(Q1)の駆動パルスがHレベルになったときに立ち上がる。これにより、力率が改善される。
【0051】
例えば交流電源電圧Vsが正の場合、力率改善動作中の電流経路は、図7に示すようになる。MOSFET(Q2)がオフしてMOSFET(Q1)がオンとなって同期整流動作に切り替わったときの電流経路は、図4に示すようになる。
【0052】
なお、この力率改善動作と前述したダイオード整流動作を組み合わせてもよい。すなわち、交流電源電圧Vsが正の極性の場合、力率改善動作中の電流経路は図7に示すようになり、MOSFET(Q2)がオフした後、寄生ダイオードD3がオンとなってダイオード整流動作に切り替わったときの電流経路は図2に示すようになる。
【0053】
図10(a)?(d)は、高速スイッチングを行った場合の交流電源電圧Vsと回路電流isとMOSFET(Q1,Q2)の駆動パルスの波形図である。
図10(a)は交流電源電圧の瞬時値vsの波形を示し、図10(b)は回路電流isの波形を示している。図10(c)はMOSFET(Q1)の駆動パルス波形を示し、図10(d)はMOSFET(Q2)の駆動パルス波形を示している。
図10(a)に示すように交流電源電圧の瞬時値vsは、略正弦波状の波形である。
【0054】
高速スイッチング動作においては、例えば電源電圧が正の極性の場合、力率改善動作時には、MOSFET(Q2)をオン、MOSFET(Q1)をオフ状態とすることで、力率改善電流ispを通流させる。次にMOSFET(Q2)をオフ状態にし、MOSFET(Q1)をオン状態にする。このように、このように力率改善動作の有無に応じてMOSFET(Q1,Q2)のオン、オフを切り替えているのは、同期整流を行っているためである。単純に高速スイッチング動作を行うためには、MOSFET(Q1)は常時オフ状態で、MOSFET(Q2)を一定周波数でスイッチング動作を行えばよい。しかし、このとき、MOSFET(Q2)オフ時にMOSFET(Q1)もオフ状態であると、電流はMOSFET(Q1)の寄生ダイオードD3を流れることになる。前記したように、この寄生ダイオードは特性が悪く、電圧ドロップが大きいために、導通損失が大きくなってしまう。そこで本実施形態では、MOSFET(Q2)のオフ時には、MOSFET(Q1)をオン状態にして同期整流を行うことで、導通損失を低減しているのである。
直流電源装置1に流れる回路電流is(瞬時値)は、以下の式(2)で表すことができる。
【数2】

【0055】
さらに、この式(2)を書き換えると、以下の式(3)となる。
【数3】

【0056】
式(4)は、回路電流is(瞬時値)と、回路電流実効値Isとの関係を示すものである。ここで、回路電流is(瞬時値)はシャント抵抗R1で検出した値であり、回路電流実効値Isはカレントトランス11にて検出した値である。
交流電源電圧Vsが正の極性の場合、MOSFET(Q2)をオフかつMOSFET(Q1)をオフにして力率改善動作を行う。このとき、シャント抵抗R1に電流は流れず、シャント抵抗R2に電流が流れる。この状態から、MOSFET(Q2)をオンさせて、MOSFET(Q1)をオフにして同期整流モードに変わったとき、シャント抵抗R1に電流が通流する。つまり、MOSFET(Q2)がオフ状態のとき(MOSFET(Q1)はオンまたはオフ)、言い換えると力率改善動作を行っていないときに回路電流is(瞬時値)を検出する。交流電源電圧Vsが負の極性の場合は同様にして、MOSFET(Q1)がオフ状態のとき(MOSFET(Q2)はオンまたはオフ)、言い換えると力率改善動作を行っていないときに回路電流is(瞬時値)を検出する。
【数4】

【0057】
式(3)を変形して式(4)を代入すると、以下の式(5)となる。
【数5】

【0058】
昇圧比の逆数を右辺とすると、以下の式(6)となる。
【数6】

【0059】
さらに、MOSFETのデューティdは、式(7)のように表すことが可能である。
【数7】

【0060】
以上より、式(6)に示したKp×Isを制御することで、交流電源電圧Vsの実効値のa倍に昇圧可能であり、そのときのMOSFETのデューティd(通流率)は、式(7)で与えることができる。
【0061】
図11は、電源電圧半サイクル(正の極性)における、MOSFET(Q2)とMOSFET(Q1)の駆動パルスのオン・デューティの関係を示した図である。図11の縦軸はオン・デューティを示し、横軸は正の極性の電源電圧の半サイクル分の時間を示している。
【0062】
破線で示したMOSFET(Q1)の駆動パルスのオン・デューティは、交流電源電圧Vsと比例している。2点鎖線で示したMOSFET(Q2)の駆動パルスのオン・デューティは、1.0からMOSFET(Q1)の駆動パルスのオン・デューティを減算したものとなる。
【0063】
図11において、式(7)で示したように、回路電流isが大きくなるほど力率改善電流を流すためにスイッチング動作を行うMOSFET(Q2)の駆動パルスのデューティdは小さくなり、逆に回路電流isが小さいほどMOSFET(Q2)の駆動パルスのデューティdは大きくなる。同期整流を行う側のMOSFET(Q1)の駆動パルスのデューティdは、MOSFET(Q2)の駆動パルスのデューティdとは逆特性となる。
【0064】
なお、実際には上下短絡を回避するためにデッドタイムを考慮する必要がある。図12は、電源電圧半サイクル(正の極性)における、デッドタイムを考慮したMOSFET(Q2)の駆動パルスのオン・デューティを実線で追記した図である。図12の縦軸はオン・デューティを示し、横軸は交流電源電圧Vsの正極性の半サイクル分の時間を示している。
このように、所定のデッドタイムを付与すると、MOSFET(Q2)の駆動パルスのデューティは、このデッドタイム分だけ小さくなる。
【0065】
図13は、交流電源電圧Vsの瞬時値vsと、回路電流is(瞬時値)との関係を示した図である。実線は交流電源電圧Vsの瞬時値vsを示し、破線は回路電流isの瞬時値を示している。図13の横軸は正の極性の電源電圧の半サイクル分の時間を示している。
【0066】
図13に示すように、高速スイッチング制御により、交流電源電圧Vsの瞬時値vsと回路電流is(瞬時値)とは両方とも略正弦波状となり、よって力率を改善することができる。
MOSFET(Q2)のデューティd_(Q2)を、以下の式(8)に示す。
【数8】

【0067】
MOSFET(Q1)のデューティd_(Q1)を、以下の式(9)に示す。
【数9】

【0068】
また、電源電圧と電流の関係をみると、回路電流isは正弦波状に制御されているため、力率は良い状態である。なお、これはリアクトルL1のインダクタンスが小さく電源電圧に対して電流の位相遅れが無い状態を想定している。仮に、リアクトルL1のインダクタンスが大きく、電流位相が電圧位相に対して遅れる場合には、電流位相を考慮してデューティdを設定すればよい。
【0069】
図14は、交流電源電圧Vsが正極性の場合に、リアクトルL1による電流位相の遅れ分を考慮した場合のMOSFET(Q2)のデューティを示した図である。図14の縦軸はMOSFET(Q2)のデューティを示し、横軸は正の極性の電源電圧の半サイクル分の時間を示している。
【0070】
実線は、リアクトルL1による電流位相の遅れ分を考慮しない場合のMOSFET(Q2)のデューティを示している。破線は、リアクトルL1による電流位相の遅れ分を考慮した場合のMOSFET(Q2)のデューティを示している。このように制御することにより、リアクトルL1のインダクタンスが大きい場合であっても、電流を正弦波状に制御可能である。
【0071】
以上、高速スイッチングと同期整流を組み合わせて実施する場合について説明を行ってきた。なお、前述したように高速スイッチングとダイオード整流を組み合わせてもよい。すなわち、交流電源電圧Vsが正の極性の場合、MOSFET(Q1)を常時オフ状態で、MOSFET(Q2)のみ高速スイッチングを行う。このように制御を行っても力率の改善効果を得ることができる。
【0072】
≪部分スイッチング動作≫
前記したように、高速スイッチング動作を行うことで回路電流isを正弦波に成形することができ、高力率を確保することができる。しかし、スイッチング周波数が大きければ大きいほどスイッチング損失は大きくなる。
【0073】
回路の入力が大きいほど、高調波電流も増大するので、特に高次の高調波電流の規制値を満足することが難しくなるため、入力電流が大きいほど高力率を確保する必要がある。逆に入力が小さい場合には高調波電流も小さくなるので必要以上に力率を確保する必要が無い場合がある。つまり、言い換えると負荷条件に応じて効率を考慮しつつ最適な力率を確保することで高調波電流を低減すればよいと言える。
そこで、スイッチング損失の増大を抑えつつ、力率を改善する場合には部分スイッチング動作を行えばよい。
【0074】
部分スイッチング動作とは、高速スイッチング動作のように所定周波数で力率改善動作を行うのではなく、交流電源電圧Vsの半サイクルの中で、所定の位相で複数回力率改善動作を行うことで直流電圧Vdの昇圧と力率の改善を行う動作モードである。高速スイッチング動作の場合と比べてMOSFET(Q1,Q2)のスイッチング回数が少ない分、スイッチング損失の低減が可能である。以下、図15を用いて部分スイッチング動作の説明を行う。
【0075】
図15(a)?(d)は、交流電源電圧Vsが正のサイクルにおける、MOSFET(Q1)の駆動パルスと交流電源電圧Vs、回路電流isの関係を示した図である。
【0076】
図15(a)は交流電源電圧の瞬時値vsを示し、図15(b)は回路電流isを示している。図15(c)はMOSFET(Q2)の駆動パルスを示し、図15(d)はMOSFET(Q1)の駆動パルスを示している。
図15(a)に示すように交流電源電圧の瞬時値vsは、略正弦波状である。
図15(b)の一点鎖線は、理想的な回路電流isを略正弦波状に示している。このとき、最も力率が改善される。
【0077】
ここで例えば、理想電流上の点P1を考えた場合、この点での傾きをdi(P1)/dtとおく。次に、電流がゼロの状態から、MOSFET(Q2)を時間ton1_Q2に亘ってオンしたときの電流の傾きをdi(ton1_Q2)/dtとおく。さらに時間ton1_Q2に亘ってオンした後、時間toff_Q2に亘ってオフした場合の電流の傾きをdi(toff1_Q2)/dtとおく。このときdi(ton1_Q2)/dtとdi(toff1_Q2)/dtとの平均値が点P1における傾きdi(P1)/dtと等しくなるように制御する。
【0078】
次に、点P1と同様に、点P2での電流の傾きをdi(P2)/dtとおく。そして、MOSFET(Q2)を時間ton2_Q2に亘ってオンしたときの電流の傾きをdi(ton2_Q2)/dtとおき、時間toff2_Q2に亘ってオフした場合の電流の傾きをdi(toff2_Q2)/dtとおく。点P1の場合と同様に、di(ton2_Q2)/dtとdi(toff2_Q2)/dtの平均値が点P2における傾きdi(P2)/dtと等しくなるようにする。以降これを繰り返していく。このとき、MOSFET(Q2)のスイッチング回数が多いほど、理想的な正弦波に近似することが可能である。
【0079】
なお、このようにMOSFET(Q1)とMOSFET(Q2)のスイッチングを相補に切り替えているのは、部分スイッチング動作と同期整流動作を組み合わせて実施しているためである。
なお、場合によっては部分スイッチング動作とダイオード整流動作を組み合わせて実施してもよい。
【0080】
≪制御モードの切り替え≫
本実施形態の直流電源装置は、ダイオード整流動作と同期整流動作と部分スイッチング動作と高速スイッチング動作の4つの機能を備えている。例えば使用する機器によっては、負荷条件によって、高効率化優先の領域、昇圧と力率改善優先の領域等、求められる性能が変わる場合がある。そこで、前述した4つのモードをある決められた閾値情報を基にして選択的に切り替えることで、より最適に高効率化と高調波電流の低減を両立可能となる。
【0081】
図16は、負荷の大きさに応じた直流電源装置の動作モードの切り替えを説明した図である。この図において、第1の閾値を「閾値#1」、第2の閾値を「閾値#2」と省略して記載している。また、第1?第8の制御方法を単に「#1」から「#8」と省略して記載している。
第1制御方法は、予め決められた第1の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、同期整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。なお、図面では、部分スイッチング制御のことを「部分SW」と省略して記載している。
【0082】
第2制御方法は、予め決められた第1の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、同期整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。なお、図面では、高速スイッチング制御のことを「高速SW」と省略して記載している。
【0083】
第3制御方法は、予め決められた第1、第2の閾値情報に基づいて、同期整流制御を行うモードと、同期整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、同期整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードと、を切り替えるというものである。
【0084】
第4制御方法は、予め決められた第1の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、ダイオード整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。
【0085】
第5制御方法は、予め決められた第1の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、ダイオード整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。
【0086】
第6制御方法は、予め決められた第1、第2の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、ダイオード整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、ダイオード整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。
【0087】
第7制御方法は、予め決められた第1、第2の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、ダイオード整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、同期整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。
【0088】
第8制御方法は、予め決められた第1、第2の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実施するモードと、同期整流制御および部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、ダイオード整流制御および高速スイッチング制御を同時に実施するモードとを切り替えるというものである。
【0089】
例えば、効率と高調波電流の低減や昇圧を主目的にするのであれば、第1?第3制御方法で切り替えればよい。また、効率はあまり優先ではなく、高調波電流の低減や昇圧を主目的にするのであれば、第4?第6制御方法等のモードで切り替えればよい。例えば、部分スイッチング動作や高速スイッチング動作と同期整流動作を組み合わせる場合は、交流電源電圧半周期の中で2つのMOSFETを制御する必要があるため、制御としては複雑になる。しかし、ダイオード整流との組み合わせであれば、半周期のうち制御するMOSFETは1つであるため、制御の簡略化にも繋がる。要するに、効率や高調波の低減や制御性など、必要に応じて最適な制御を選択すればよい。
【0090】
なお、制御切り替えのトリガとなる閾値情報としては、例えばカレントトランス11で検出した回路電流がある。或いは負荷検出部15にて検出した負荷情報を用いてもよい。負荷情報として例えば、負荷Hがモータやインバータの場合はモータ電流、モータ回転数、変調率、或いは直流電圧等を用いればよい。
【0091】
更に、第1,第2,第4,第5制御方法のように2つのモードの間で制御を切り替える場合は閾値情報は1つ(第1の閾値情報)であればよい。第3、第6、第7、第8制御方法のように3つのモードの間で切り替える場合には、閾値情報は2つ(第1の閾値情報と第2の閾値情報)用意する。更に、第1の閾値情報と第2の閾値情報は負荷の大きさに関連されている。つまり、第1の閾値情報は、第2の閾値情報よりも大きいという関係がある。
【0092】
例えば、第3制御方法では、第1の閾値未満の領域では同期整流動作で動作させ、第1の閾値以上・第2の閾値未満の領域では同期整流動作+部分スイッチング動作で動作させ、第2の閾値以上の領域では同期整流動作+高速スイッチング動作で動作させる。その他のモードに関しても同様である。
【0093】
また、第3,第6?第8制御方法のように部分スイッチング動作中から高速スイッチング動作に切り替える場合に、直流電圧Vdが変動する場合がある。部分スイッチング時に対して高速スイッチング時は力率が良いため、部分スイッチングの電流振幅と同じになるように切り替えてしまうと、直流電圧Vdが昇圧されすぎてしまうためである。
これを回避するために、切り替えの瞬間に部分スイッチング動作時の電流に対して高速スイッチング動作時の電流のピークが小さくなるようにオン時間を調整して切り替えるとよい。
【0094】
図17は、部分スイッチングから高速スイッチングへ切り替える場合の電流波形を説明した図である。
図17(a)は、部分スイッチング制御時の交流電源電圧の瞬時値vsと回路電流isとを模式的に示している。
図17(b)は、高速スイッチング制御に切り替えたときの交流電源電圧の瞬時値vsと回路電流isとを模式的に示している。高速スイッチングへの切り替えの瞬間に、部分スイッチング動作時の回路電流isのピークに対して、高速スイッチング動作時の回路電流isのピークが小さくなるように制御している。これにより、直流電圧Vdの変動を抑えることが可能である。
【0095】
同様に、高速スイッチングから部分スイッチングへの切り替え時には、先程とは逆に電流の振幅が大きくなるようにオン時間を調整して切り替えることで、逆に直流電圧Vdの低下を防ぐことが可能である。
更に、各制御の切り替えは電源電圧ゼロクロスのタイミングで行うことで、安定的に制御の切り替えを行うことができる。
【0096】
本実施形態の直流電源装置1は、回路に通流する電流を検出するために、カレントトランス11とシャント抵抗R1,R2を備えている。カレントトランス11は平均電流を検出する機能を備えており、シャント抵抗R1,R2は瞬時電流を検出できる。
シャント抵抗R1を用いた電流検出の方法について前述したが、図18(a)?(c)を用いて改めて説明する。
【0097】
図18(a)は、交流電源電圧Vsが正の極性の場合においてダイオード整流または同期整流を行った場合の電流経路を示している。このときMOSFET(Q2)は常時オフ状態であり、MOSFET(Q1)はオンまたはオフ状態である。このとき、シャント抵抗R1を用いて電流検出を行う。
【0098】
図18(b)は、交流電源電圧Vsが負の極性の場合においてダイオード整流または同期整流を行った場合の電流経路を示している。このときMOSFET(Q1)は常時オフ状態であり、MOSFET(Q2)はオンまたはオフ状態である。このとき、シャント抵抗R1を用いて電流検出を行う。
【0099】
図18(a),(b)の場合ともに力率改善動作は行っていないタイミングである。言い換えると2つのMOSFET(Q1,Q2)のうち少なくとも1個がオフ状態のときにシャント抵抗R2を用いて瞬時電流isを検出している。
【0100】
図18(c)は交流電源電圧Vsが正の極性で力率改善動作を行ったときの電流経路を示した図である。このとき力率改善電流ispはシャント抵抗R2を通るため、シャント抵抗R2を用いてこの力率改善電流ispを検出する。
【0101】
例えば力率改善動作を行った場合にシャント抵抗R2にて検出した電流値がある決められた閾値よりも大きいとなって過電流であると判定された場合、デューティを小さする、或いは力率改善動作を停止する等の保護制御を行う。
本実施形態の直流電源装置1は、シャント抵抗R1を用いて直流電圧の上下短絡による短絡電流に対して保護制御を行うことが可能である。
【0102】
例えば図19(a)に示すように交流電源電圧Vsが正の極性の場合において、MOSFET(Q2)がスイッチングして昇圧動作を行っていたときを考える。この場合、シャント抵抗R2により、過電流を検知可能である。
このとき、図19(b)に示すように、MOSFET(Q1)が誤動作によってオンしてしまった場合、破線で示すような短絡電流ixが回路に通流してしまい。最悪の場合回路素子が破壊してしまう。
また、図20(a)に示すように交流電源電圧Vsが負の極性の場合においても、図20(b)に示すように、MOSFET(Q2)の誤動作による上下短絡によって破線で示す短絡電流ixが流れてしまう。
【0103】
特許文献1のように平滑コンデンサと負荷の間に電流検出部を設けても、この短絡電流ixを検出することは不可能である。また、交流電源VS側に設置されている電流検出手段はカレントトランス11であるため、短絡電流ixのような瞬時の電流を検出することはできない。前述したように高速タイプのカレントトランス11を用いた場合コストアップとなってしまう。
そこで本実施形態の直流電源装置1のように平滑コンデンサC1の負極側とMOSFET(Q2)のソース端子の間にシャント抵抗R1を設置することによって、このような瞬時の短絡電流ixを検出して過電流保護を行うことが可能となる。
【0104】
図21は、変形例の直流電源装置1Aを示す構成図である。図1に示した直流電源装置1と同一の構成には同一の符号を付与している。
変形例の直流電源装置1Aは、ダイオードD1のカソード端子とMOSFET(Q1)のドレイン端子との間に、抵抗R4,R5およびフォトトランジスタQ3を含んで構成される電流検出部が接続される。抵抗R5とフォトトランジスタQ3とは直列接続され、更に抵抗R4と並列接続されている。ここでは、ダイオードD1に所定値以上の過電流が流れたとき、フォトトランジスタQ3がオンするように抵抗R4,R5の値が設定される。このフォトトランジスタQ3の出力端子は、コンバータ制御部18に接続される。
この電流検出部により、前記した図20(a)に示すように交流電源電圧が負の極性の場合において、過電流が流れたことを検知可能となる。
【0105】
≪空気調和機と直流電源装置の動作≫
図22は、本実施形態における空気調和機の室内機、室外機、およびリモコンの正面図である。
図22に示すように、空気調和機Aは、いわゆるルームエアコンであり、室内機100と、室外機200と、リモコンReと、不図示の直流電源装置(図1参照)とを備えている。室内機100と室外機200とは冷媒配管300で接続され、周知の冷媒サイクルによって、室内機100が設置されている室内を空調する。また、室内機100と室外機200とは、通信ケーブル(図示せず)を介して互いに情報を送受信するようになっている。更に室外機200には配線(図示せず)で繋がれており室内機100を介して交流電圧が供給されている。直流電源装置は、室外機200に備えられており、室内機100側から供給された交流電力を直流電力に変換している。
【0106】
リモコンReは、ユーザによって操作されて、室内機100のリモコン送受信部Qに対して赤外線信号を送信する。この赤外線信号の内容は、運転要求、設定温度の変更、タイマ、運転モードの変更、停止要求などの指令である。空気調和機Aは、これら赤外線信号の指令に基づいて、冷房モード、暖房モード、除湿モードなどの空調運転を行う。また、室内機100は、リモコン送受信部QからリモコンReへ、室温情報、湿度情報、電気代情報などのデータを送信する。
【0107】
空気調和機Aに搭載された直流電源装置の動作の流れについて説明する。直流電源装置は、高効率動作と力率の改善による高調波電流の低減と直流電圧Vdの昇圧を行うものである。そして、動作モードとしては前記のように、ダイオード整流動作、同期整流動作、高速スイッチング動作、部分スイッチング動作の4つの動作モードをベースにして、前述した第1?第8モードの動作モードを備えている。
【0108】
例えば負荷Hとして空気調和機Aのインバータやモータを考えた場合、負荷が小さく、効率重視の運転が必要であれば、直流電源装置を全波整流モードで動作させるとよい。
【0109】
負荷が大きくなり、昇圧と力率の確保とが必要であれば、直流電源装置に高速スイッチング動作を行わせるとよい。また空気調和機Aの定格運転時のように、負荷としてはそれほど大きくないが昇圧や力率の確保が必要な場合には、部分スイッチング動作を行わせるとよい。
【0110】
図23は、負荷の大きさに応じて直流電源装置1の動作モードと空気調和機Aの運転領域を切り替える様子を説明した概要図である。
負荷に、閾値#1,#2を設けて、かつ機器として空気調和機Aを考えた場合、負荷が小さい中間領域において、直流電源装置1は同期整流を行い、定格運転時には部分スイッチング(ダイオード整流または同期整流の何れかを組み合わせる)を行い、必要に応じて高速スイッチング(ダイオード整流または同期整流の何れかを組み合わせる)を行う。
【0111】
定格運転よりも更に負荷が大きい低温暖房運転領域などにおいて、直流電源装置1は高速スイッチングを行い、必要に応じて部分スイッチング(ダイオード整流または同期整流の何れかを組み合わせる)を行う。
以上のように、直流電源装置1は、空気調和機Aの運転領域に応じた最適な動作モードに切り替えることで、高効率動作を行いつつ、高調波電流の低減を行うことが可能である。
【0112】
なお、負荷Hがインバータやモータなどの場合、負荷の大きさを決めるパラメータとして、インバータやモータに流れる電流、インバータの変調率、モータの回転速度が考えられる。また、直流電源装置1に通流する回路電流isで負荷の大きさを判断してもよい。また、直流電圧で負荷の大きさを判断してもよい。
【0113】
例えば、負荷の大きさが閾値#1以下ならば、直流電源装置1は同期整流を行い、閾値#1を超えたならば部分スイッチング(ダイオード整流または同期整流の何れかを組み合わせる)を行う。または負荷の大きさが閾値#2を超えたならば、直流電源装置1は高速スイッチング(ダイオード整流または同期整流の何れかを組み合わせる)を行い、閾値#2を以下ならば部分スイッチング(ダイオード整流または同期整流の何れかを組み合わせる)を行う。
【0114】
以上のように直流電源装置1は、負荷の大きさに応じた最適な動作モードに切り替えることで、高効率動作を行いつつ、高調波電流の低減を行うことが可能である。
【0115】
本実施形態では、MOSFET(Q1,Q2)としてスーパージャンクションMOSFETを使用した例を説明した。このMOSFET(Q1,Q2)としてSiC(Silicon Carbide)-MOSFETやGaN(Gallium nitride)を用いることで、更なる高効率動作を実現することが可能である。GaNを用いたスイッチング素子を用いることでスイッチング損失の増大を更に抑制しつつ高効率動作が可能となる。
【0116】
このように、空気調和機Aが本実施形態の直流電源装置を搭載することで、エネルギ効率(つまり、APF)を高め、また、信頼性を高めることができる。空気調和機以外の機器が本実施形態の直流電源装置を搭載しても、高効率で信頼性の高い機器を提供することが可能である。
【0117】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0118】
更に、MOSFET(Q1,Q2)として高速trr(逆回復時間)タイプの素子を用いているが、具体的にtrr(逆回復時間)を300ns以下の素子を用いることで高効率動作が可能である。
【0119】
また、MOSFET(Q1,Q2)のオン抵抗に関しても小さいほど同期整流の効果が高まる。具体的にはオン抵抗が0.1Ω以下とすることで高効率動作が可能である。
ブリッジ整流回路10は、MOSFET(Q1,Q2)の寄生ダイオードとダイオードD1,D2の構成に限られず、MOSFET(Q1,Q2)にそれぞれダイオードを並列接続し、これにダイオードD1,D2を組み合わせて構成してもよい。
【0120】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスクなどの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
【0121】
各実施形態に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0122】
1 直流電源装置
10 ブリッジ整流回路
11 カレントトランス (第2の電流検出部)
R1 シャント抵抗 (第1の電流検出部)
R2 シャント抵抗 (第3の電流検出部)
12 ゲイン制御部
13 交流電圧検出部
14 ゼロクロス判定部
15 負荷検出部
16 昇圧比制御部
17 直流電圧検出部
18 コンバータ制御部 (制御手段)
Vs 交流電源
C1 平滑コンデンサ
D1 ダイオード (第1のダイオード)
D2 ダイオード (第2のダイオード)
D3 ダイオード (第3のダイオード)
D4 ダイオード (第4のダイオード)
ha,hb,hc,hd 配線
L1 リアクトル
Q1 MOSFET (第1のスイッチング素子)
Q2 MOSFET (第2のスイッチング素子)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に接続され、第1ないし第4のダイオードを有する整流回路と、
前記第3のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第3のダイオードに並列接続されており、当該第3のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第1のスイッチング素子と、
前記第4のダイオードを寄生ダイオードとして含むか、または前記第4のダイオードに並列接続されており、当該第4のダイオードがオフする方向に対して耐電圧特性を有し、かつ前記第1ないし第4のダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低い第2のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、当該整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1,第2のスイッチング素子を制御する制御手段と、
前記整流回路と前記平滑コンデンサの負極との間に接続されて、前記整流回路に通流する瞬時電流を検出する第1の電流検出手段と、
を備え、
前記第1のダイオードのカソードと前記第1のスイッチング素子の一端とが前記平滑コンデンサの正極側に接続され、前記第1のダイオードのアノードと前記第2のダイオードのカソードとが前記交流電源の一端側に接続され、前記第1のスイッチング素子の他端と前記第2のスイッチング素子の一端とが前記交流電源の他端側に接続され、前記第2のダイオードのアノードと前記第2のスイッチング素子の他端とが前記平滑コンデンサの負極側に接続されており、
前記第1の電流検出手段は、前記交流電源の他端側の電圧が正極性かつ前記第2のスイッチング素子がオフ状態の場合と、前記交流電源の他端側の電圧が負極性かつ前記第1のスイッチング素子がオフ状態の場合の瞬時電流を検出し、
前記制御手段は、
負荷の大きさに基づいて、前記交流電源の電圧の極性に同期して極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、
負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および交流全周期に亘って前記リアクトルを所定周波数かつ前記瞬時電流に基づいて算出した通流率で短絡する高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、
負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、
負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記第1ないし第4のダイオードを用いるダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、
負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、
負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、
負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記同期整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、
負荷の大きさに基づいて、前記同期整流制御を実施するモードと、前記同期整流制御および前記部分スイッチング制御を同時に実施するモードと、前記ダイオード整流制御および前記高速スイッチング制御を同時に実施するモードとの切り替え、のうちいずれかを実施する、
ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記部分スイッチング制御から前記高速スイッチング制御への切り替えの場合、または前記高速スイッチング制御から前記部分スイッチング制御への切り替えの場合に、出力する直流電圧が所定値を保つように切り替える、
ことを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記交流電源が印加する交流電圧のゼロクロスで制御を切り替える、
ことを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。
【請求項4】
前記交流電源と前記整流回路との間に接続されて、前記整流回路に通流する平均電流を検出する第2の電流検出手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項1から3のうち何れか1項に記載の直流電源装置。
【請求項5】
前記第2のダイオードのアノードと前記第4のダイオードのアノードとの間に接続されて、過電流検出を行う第3の電流検出手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項1から4のうち何れか1項に記載の直流電源装置。
【請求項6】
前記第1のダイオードのカソードと前記第3のダイオードのカソードとの間に接続されて、過電流検出を行う第4の電流検出手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項1から4のうち何れか1項に記載の直流電源装置。
【請求項7】
前記第1,第2のスイッチング素子は、スーパージャンクションMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、SiC-MOSFET、GaN(Gallium nitride)を用いたスイッチング素子のうちいずれかである、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の直流電源装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の直流電源装置を備えた、
ことを特徴とする空気調和機。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-07-16 
出願番号 特願2015-175653(P2015-175653)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (H02M)
P 1 651・ 121- YAA (H02M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 匡  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 山崎 慎一
山澤 宏
登録日 2020-03-05 
登録番号 特許第6671126号(P6671126)
権利者 日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
発明の名称 直流電源装置および空気調和機  
代理人 特許業務法人磯野国際特許商標事務所  
代理人 特許業務法人磯野国際特許商標事務所  
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