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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01B
管理番号 1377805
異議申立番号 異議2020-700761  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-10-06 
確定日 2021-08-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6678540号発明「フラットケーブル,これを用いた回転コネクタ,及びフラットケーブルの製造方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6678540号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-9〕,〔10-14〕について訂正することを認める。 特許第6678540号の請求項1ないし9,13ないし14に係る特許を維持する。 特許第6678540号の請求項10ないし12に係る特許についての特許異議申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6678540号の請求項1ないし13に係る特許についての出願は,平成28年8月23日に出願され,令和2年3月19日にその特許権の設定登録がされ,令和2年4月8日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は,次のとおりである。

令和 2年10月 6日 特許異議申立人 特許業務法人朝日奈特許事 務所(以下,「特許異議申立人」という。) による請求項1-13に係る特許に対する特 許異議の申立て
令和 3年 1月 6日付け 取消理由通知書
令和 3年 3月15日 特許権者による意見書,訂正請求書(以下, この訂正請求書による訂正請求を「本件訂正 請求」という。)の提出
令和 3年 5月24日 特許異議申立人による意見書(以下,この意 見書を「意見書」という。)の提出

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は,以下のとおりである。(下線部は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「5℃以上低いことを特徴とするフラットケーブル」を,「5℃以上低く,前記最外層から前記最内層までを構成する樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μm以下であることを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」に訂正する(請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項5?9も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2の「5℃以上低いことを特徴とするフラットケーブル」を,「5℃以上低く,前記最外層から前記最内層までを構成する樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μm以下であることを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」に訂正する。また,特許請求の範囲の請求項2に「ポリフェニレンニレンサルファイド系樹脂」と記載されているのを,「ポリフェニレンサルファイド系樹脂」に訂正する。さらに,請求項2の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項5?9も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3の「前記最外層は架橋処理層であって,前記最内層は架橋未処理層であることを特徴とするフラットケーブル」を,「前記最外層は架橋処理層であり,前記最内層は架橋末処理層であり,前記最外層から前記最内層までを構成する樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μm以下であることを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」に訂正する(請求項3の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項5?8も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記最外層は架橋処理層であって,前記最内層は架橋未処理層であることを特徴とするフラットケーブル」を,「前記最外層は架橋処理層であり,前記最内層は架橋末処理層であり,前記最外層から前記最内層までを構成する樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μm以下であることを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」に訂正する(請求項4の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項5?8も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5の「請求項1から4のいずれか1項に記載のフラットケーブルを内蔵することを特徴とする回転コネクタ」を「請求項1から4のいずれか1項に記載の車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルを内蔵することを特徴とする車両搭載用回転コネクタ」に訂正する(請求項5の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項6?8も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6のうち「フラットケーブル」と「回転コネクタ」をそれぞれ「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」及び「車両搭載用回転コネクタ」に訂正する(請求項6の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項7?8も同様に訂正する)。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7のうち「フラットケーブル」と「回転コネクタ」をそれぞれ「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」及び「車両搭載用回転コネクタ」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する)。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8のうち「フラットケーブル」と「回転コネクタ」をそれぞれ「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」及び「車両搭載用回転コネクタ」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9のうち「フラットケーブル」と「回転コネクタ」をそれぞれ「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」及び「車両搭載用回転コネクタ」に訂正する。

なお,訂正前の請求項1ないし9は,請求項5ないし9が訂正の請求の対象である請求項1ないし4の記載を引用する関係にあるから,本件訂正請求は,一群の請求項〔1-9〕について請求されたものである。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項11を削除する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項13に「請求項10から12のいずれか1項に記載のフラットケーブルの製造方法」とあるうち,請求項10を引用するものについて,独立形式に改めるとともに,「フラットケーブル」を「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」に訂正して,請求項13を以下のように訂正する。
「 融点の異なるポリフェニレンサルファイド系樹脂を層状に含む2枚の樹脂フィルムを,導体を挟んで,熱融着により接着するフラットケーブルの製造方法であって,
前記導体に対して,低融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層が接し,熱融着に用いる加熱圧着装置に対して,高融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層が接するように,前記導体及び前記樹脂フィルムが送出される工程と,
前記送出された導体及び前記樹脂フィルムを,前記加熱装置によって,前記導体に接する層の融点以上前記加熱装置に接する層の融点未満の温度で,加熱圧着する工程と,
を有し,
前記樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μm以下であって,前記高融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層の厚さは1μm以上であることを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルの製造方法。」
(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項13に「請求項10から12のいずれか1項に記載のフラットケーブルの製造方法」とあるうち,請求項11を引用するものについて,独立形式に改めるとともに,「フラットケーブル」を「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」に訂正して,以下のように記載し,新たに請求項14とする。
「 融点の異なるポリフェニレンサルファイド系樹脂を層状に含む2枚の樹脂フィルムを,光ファイバーを挟んで,熱融着により接着するフラットケーブルの製造方法であって,
前記光ファイバーに対して,低融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層が接し,熱融着に用いる加熱圧着装置に対して,高融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層が接するように,前記導体及び前記樹脂フィルムが送出される工程と,
前記送出された導体及び前記樹脂フィルムを,前記加熱装置によって,前記光ファイバーに接する層の融点以上前記加熱装置に接する層の融点未満の温度で,加熱圧着する工程と,
を有し,
前記樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μm以下であって,前記高融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層の厚さは1μm以上であることを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルの製造方法。」

なお,訂正前の請求項10ないし13は,請求項13が訂正の請求の対象である請求項10ないし12の記載を引用する関係にあるから,本件訂正請求は,一群の請求項〔10-14〕について請求されたものである。

2 訂正の目的の適否,新規事項の有無,特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1及び2について
訂正事項1及び2に係る請求項1及び2の「5℃以上低いことを特徴とするフラットケーブル」を,「5℃以上低く,前記最外層から前記最内層までを構成する樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μm以下であることを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」に変更する訂正は,「フラットケーブル」の「最外層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂から最内層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂までの厚さ」を「5μm以上100μm」に具体的に限定するとともに,発明の対象を下位概念の「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」に限定するものであり,段落0049及び0001に基づいて導き出せる。
また,訂正事項2に係る請求項2の「ポリフェニレンニレンサルファイド系樹脂」を,「ポリフェニレンサルファイド系樹脂」に変更する訂正は,誤記の訂正に該当する。
そして,当該訂正事項1及び2は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(2)訂正事項3及び4について
訂正事項3及び4に係る請求項3及び4の「前記最外層は架橋処理層であって,前記最内層は架橋未処理層であることを特徴とするフラットケーブル」を,「前記最外層は架橋処理層であり,前記最内層は架橋末処理層であり,前記最外層から前記最内層までを構成する樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μm以下であることを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」に変更する訂正は,「フラットケーブル」の「前記最外層から前記最内層までを構成する樹脂フィルムの厚さ」を「5μm以上100μm」に具体的に限定するとともに,発明の対象を下位概念の「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」に限定するものであり,段落0049及び0001に基づいて導き出せる。
そして,当該訂正事項3及び4は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(3)訂正事項5ないし9について
訂正事項5ないし9に係る請求項5ないし9の「フラットケーブル」及び「回転コネクタ」を,それぞれ「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」及び「車両搭載用回転コネクタ」に変更する訂正は,訂正前の「フラットケーブル」及び「回転コネクタ」を,それぞれ下位概念の「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」及び「車両搭載用回転コネクタ」に限定するものであり,段落0001に基づいて導き出せる。
そして,当該訂正事項5ないし9は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(4)訂正事項10ないし12について
訂正事項10ないし12は,それぞれ,請求項10ないし12を削除する訂正であるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(5)訂正事項13について
訂正事項13に係る請求項13についての訂正は,特許請求の範囲の請求項13に「請求項10から12のいずれか1項に記載のフラットケーブルの製造方法」とあるうち,請求項10を引用するものについて,独立形式に改めるとともに,訂正前の「フラットケーブル」を「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」に限定するとともに,訂正前の「フラットケーブルの製造方法」を下位概念の「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルの製造方法」に,訂正前の「融点が高いもしくは架橋処理を受けたPPS系樹脂から構成される層」を下位概念の「前記高融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層」に限定するものであり,段落0001,0009に基づいて導き出せる。
そして,当該訂正事項13は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(6)訂正事項14について
訂正事項14に係る請求項14についての訂正は,特許請求の範囲の請求項13に「請求項10から12のいずれか1項に記載のフラットケーブルの製造方法」とあるうち,請求項11を引用するものについて,独立形式に改めるとともに,訂正前の「フラットケーブル」を「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」に限定するとともに,訂正前の「フラットケーブルの製造方法」を下位概念の「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルの製造方法」に,訂正前の「融点が高いもしくは架橋処理を受けたPPS系樹脂から構成される層」を下位概念の「前記高融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層」に限定するものであり,段落0001,0009に基づいて導き出せる。
そして,当該訂正事項14は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

3 小括
以上のとおりであるから,一群の請求項〔1-9〕,〔10-14〕についての本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第6項の規定に適合する。
したがって,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-9〕,〔10-14〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし14に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明14」という。また,「本件発明1」ないし「本件発明14」をまとめて,「本件発明」という。)は,その特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
配列した複数の導体と,前記導体の周囲を被膜する絶縁層とを有し,
前記絶縁層は複数の層を含んでおり,
前記絶縁層の最外層及び前記導体と接する最内層はいずれもポリフェニレンサルファイド系樹脂により構成されており,
前記最内層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点は,前記最外層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点より5℃以上低く,
前記最外層から前記最内層までを構成する樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μmであることを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル。
【請求項2】
配列した複数の光ファイバーと,前記光ファイバーの周囲を保護材料で被覆した保護層とを有し,前記保護層は複数の層を含んでおり,
前記保護層の最外層及び前記光ファイバーと接する最内層はいずれもポリフェニレンサルファイド系樹脂により構成されており,
前記最内層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点は,前記最外層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点より5℃以上低く,
前記最外層から前記最内層までを構成する樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μmであることを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル。
【請求項3】
配列した複数の導体と,前記導体の周囲を被膜する絶縁層とを有し,
前記絶縁層は複数の層を含んでおり,
前記絶縁層の最外層及び前記導体と接する最内層はいずれもポリフェニレンサルファイド系樹脂により構成されており,
前記最外層は架橋処理層であって,前記最内層は架橋未処理層であり,
前記最外層から前記最内層までを構成する樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μmであることを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル。
【請求項4】
配列した複数の光ファイバーと,前記光ファイバーの周囲を保護材料で被覆した保護層とを有し,前記保護層は複数の層を含んでおり,
前記保護層の最外層及び前記光ファイバーと接する最内層はいずれもポリフェニレンサルファイド系樹脂により構成されており,
前記最外層は架橋処理層であって,前記最内層は架橋未処理層であり,
前記最外層から前記最内層までを構成する樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μmであることを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルを内蔵することを特徴とする車両搭載用回転コネクタ。
【請求項6】
前記内蔵される車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルの外表面,及び外装ケースの内周面には,炭化水素系材料を含有する潤滑剤が塗工されていることを特徴とする請求項5に記載の車両搭載用回転コネクタ。
【請求項7】
前記内蔵される車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルの最小屈曲半径は,3mm以上8mm以下であることを特徴とする請求項5または6に記載の車両搭載用回転コネクタ。
【請求項8】
前記内蔵される車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルは5.5A以上の電流を通電可能であり,80℃以上250℃以下の耐熱性を有することを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の車両搭載用回転コネクタ。
【請求項9】
請求項1から2のいずれか1項に記載の車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルを製造する方法であって,
前記最内層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点以上,前記最外層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点未満の温度で,加熱圧着により前記最内層同士を熱融着することを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルの製造方法。
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
融点の異なるポリフェニレンサルファイド系樹脂を層状に含む2枚の樹脂フィルムを,導体を挟んで,熱融着により接着するフラットケーブルの製造方法であって,
前記導体に対して,低融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層が接し,熱融着に用いる加熱圧着装置に対して,高融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層が接するように,前記導体及び前記樹脂フィルムが送出される工程と,
前記送出された導体及び前記樹脂フィルムを,前記加熱装置によって,前記導体に接する層の融点以上前記加熱装置に接する層の融点未満の温度で,加熱圧着する工程と,
を有し,
前記樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μm以下であって,前記高融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層の厚さは1μm以上であることを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルの製造方法。
【請求項14】
融点の異なるポリフェニレンサルファイド系樹脂を層状に含む2枚の樹脂フィルムを,光ファイバーを挟んで,熱融着により接着するフラットケーブルの製造方法であって,
前記光ファイバーに対して,低融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層が接し,熱融着に用いる加熱圧着装置に対して,高融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層が接するように,前記光ファイバー及び前記樹脂フィルムが送出される工程と,
前記送出された導体及び前記樹脂フィルムを,前記加熱装置によって,前記光ファイバーに接する層の融点以上前記加熱装置に接する層の融点未満の温度で,加熱圧着する工程と,
を有し,
前記樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μm以下であって,前記高融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層の厚さは1μm以上であることを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルの製造方法。」

第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし13に係る特許に関して,当審が令和3年1月6日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は,次のとおりである。

理由1 請求項1ないし5,9ないし13に係る特許は,甲第1号証および甲第5号証に基いて,請求項6ないし8に係る発明は,甲第1号証および甲第5,8号証に基いて,本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

甲第1号証 特開2009-274441号公報
甲第5号証 特開2008-248042号公報
甲第8号証 国際公開2011/136008号

第5 各文献の記載
1 甲号証の記載事項
(1)甲第1号証及び甲第1発明
ア 取消理由通知において引用した甲第1号証(特開2009-274441号公報)には,以下の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下同じ。)

「【請求項1】
ポリアリーレンスルフィドフィルム(A)上に導電体からなるエレメント(C)が形成され,さらにその導電体からなるエレメントをポリアリーレンスルフィドフィルム(B)で覆い固定化することを特徴とする構造体。」

「【請求項5】
ポリアリーレンスルフィドフィルム(A)が積層構造であり,ポリアリーレンスルフィドフィルム(A)のポリアリーレンスルフィドフィルム(B)と接する側が,p-フェニレンスルフィド以外の少なくとも1種以上の共重合成分を有する共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)が積層されてなる請求項1?4のいずれかに記載の構造体。
【請求項6】
ポリアリーレンスルフィドフィルム(B)が積層構造であり,ポリアリーレンスルフィドフィルム(B)のポリアリーレンスルフィドフィルム(A)と接する側が,p-フェニレンスルフィド以外の少なくとも1種以上の共重合成分を有する共重合ポリフェニレンスルフィド層(BC)が積層されてなる請求項1?5のいずれかに記載の構造体。」

「【0002】
従来,ポリフェニレンスルフィド(以下,PPSと略称することがある。)は,優れた耐熱性,難燃性,耐加水分解性,耐薬品性,電気絶縁性および低吸湿性などの性質を有しており,電気回路用部材として使用されることが開示されている。例えば,(1)未延伸ポリフェニレンスルフィドシートを接着剤として金属板と積層されてなる積層体が開示されている(特許文献1)。また,(2)ポリフェニレンスルフィドの間に電気回路を有する回路基板が開示されている(特許文献2)。また,(3)ポリフェニレンスルフィドをカバーレイとして使用することが開示されている(特許文献3)。(1)の積層体においては,融点付近の温度にさらされると急激に強度が低下する場合があり,また,150℃以上の高温下で長時間使用されると,ポリマの結晶化が進み,機械特性が低下する危険性があった。(2)(3)の回路基板においては,接着剤を用いて積層しているため,二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの耐熱性,耐加水分解性,耐薬品性などの優れた特性を低下させてしまうなどの問題があった。」

「【0007】
本発明によれば,ポリアリーレンスルフィドの優れた特性を低下させることなくポリアリーレンスルフィドに挟まれた電気回路構造体を得ることができる。
【0008】
本発明の構造体は,電気回路用として幅広く用いることが可能であり,特にポリフェニレンスルフィドの耐熱性,耐薬品性を活かし,高温高圧下,水分共存下,液体化学物質雰囲気下で好適に用いられる。また,難燃剤を添加することなく難燃性を有するため,非ハロゲン性が要求される電気部品としても好適に用いられる。」

「【0011】
(R1,R2は,水素,アルキル基,アルコキシ基,ハロゲン基から選ばれた置換基であり,R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
本発明で用いるポリアリーレンスルフィドの繰り返し単位としては,上記の式(A)で表される構造式が好ましく,これらの代表的なものとして,ポリフェニレンスルフィド,ポリフェニレンスルフィドスルホン,ポリフェニレンスルフィドケトン,これらのランダム共重合体,ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドとしては,耐熱性と経済性の観点から,ポリフェニレンスルフィド(PPS)が好ましく例示され,ポリマの主要構成単位として下記構造式で示されるp-フェニレンスルフィド単位を好ましくは92モル%以上,より好ましくは95モル%以上含む樹脂であることが好ましい。かかるp-フェニレンスルフィド単位が92モル%未満では,ポリマの結晶性やガラス転移温度などが低く,PPSの特徴である耐熱性,電気特性,耐薬品性,耐液体化学物質性などを損なうことがある。」

「【0015】
上記で得られたPPS樹脂を,空気中加熱による架橋/高分子量化,窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理,有機溶媒,熱水および酸水溶液などによる洗浄,酸無水物,アミン,イソシアネートおよび官能基ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など,種々の処理を施した上で使用することも可能である。」

「【0024】
本発明の構造体は,ポリアリーレンスルフィドフィルム(A)上に導電体からなるエレメントが形成され,さらにこの導電体からなるエレメントをポリアリーレンスルフィドフィルム(B)で覆い固定化することを特徴とする構造体である。
【0025】
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムとは,上記PPS樹脂を溶融成形してシート状とし,少なくとも一軸延伸,好ましくは二軸延伸した後,熱処理し てなる二軸配向フィルムであることが好ましい。本発明においては,電気回路などの導電体からなるエレメントがポリアリーレンスルフィドフィルム(A)とポリアリーレンスルフィドフィルム(B)の間に挟まれることが構造体の耐熱性,耐薬品性,耐液体化学物質性,電気特性,難燃性を発現する観点から好ましい。」

「【0029】
また,本発明のポリアリーレンスルフィドフィルム(A)は,積層構造であってもよく,ポリアリーレンスルフィドフィルム(A)のポリアリーレンスルフィドフィルム(B)と接する側が,p-フェニレンスルフィド以外の少なくとも1種以上の共重合成分を有する共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)が積層されていることが本発明の構造体の接着性,耐熱性,耐薬品性,耐液体化学物質性,電気特性,難燃性を発現する観点から好ましい。
【0030】
また,本発明のポリアリーレンスルフィドフィルム(B)は,積層構造であってもよく,ポリアリーレンスルフィドフィルム(B)のポリアリーレンスルフィドフィルム(A)と接する側が,p-フェニレンスルフィド以外の少なくとも1種以上の共重合成分を有する共重合ポリフェニレンスルフィド層(BC)が積層されていることが本発明の構造体の接着性,耐熱性,耐薬品性,耐液体化学物質性,電気特性,難燃性を発現する観点から好ましい。」

「【0043】
共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)および(BC)の融点は,ポリフェニレンスルフィドフィルム(A)および/または(B)の融点より1?100℃低いことが好ましく,より好ましくは,10℃?50℃であり,さらに好ましくは,20℃?40℃である。共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)および(BC)の融点とポリフェニレンスルフィドフィルム(A)および/または(B)の融点との差が1℃未満の場合,ポリアリーレンスルフィドフィルム(A)と電気回路などの導電体からなるエレメントとをポリアリーレンスルフィドフィルム(B)ではさみ固定化する際,接着性を十分高めることができない場合があり,共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)および(BC)とポリフェニレンスルフィドフィルム(A)および/または(B)との融点差が100℃を超える場合,構造体の耐熱性の低下が著しくなる場合がある。共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)および(BC)の融点は,共重合成分のモル比によって適宜調製できる。例えば,共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)および(BC)の融点を210℃とする場合は,共重合成分のモル比を20モル%とすることにより得ることができる。」

「【0054】
本発明の構造体は,ポリアリーレンスルフィドフィルム上に形成された導電体からなるエレメントがポリアリーレンスルフィドフィルムで覆われた構成となっている。これは,導電体からなるエレメントである電気回路のとき,ポリアリーレンスルフィドフィルム(A)上に電気回路を形成したのち,ポリアリーレンスルフィドフィルム(B)で覆うことが好ましい態様である。勿論,上記構成に限定されるものではない。例えば,上記構成以外に,A層の片表面に共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)を積層し,該AC層上に電気回路を形成したのち,電気回路側表面をポリアリーレンスルフィドフィルム(B)で覆う構成,または,A層の片表面に共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)が積層され,該AC層上に電気回路を形成したのち,共重合ポリフェニレンスルフィド層(BC)が積層された二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム(B)をBC層側が電気回路側となるよう覆う構成,または,二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム(A)上に電気回路を形成したのち,共重合ポリフェニレンスルフィド層(BC)が積層された二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム(B)のBC層側が電気回路側となるよう覆う構成などが挙げられる。構造体作製後の電気回路形状保持の観点,およびフィルム積層界面の接着性の観点,さらには,電気回路の樹脂埋め込み性の観点から,ポリアリーレンスルフィドフィルム(A)上に電気回路を形成したのち,共重合ポリフェニレンスルフィド層(BC)が積層されたポリアリーレンスルフィドフィルム(B)のBC層側が電気回路側となるよう覆う構成が好ましく用いられる。」

「【0057】
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルム(A)および(B)の厚みは,5μm以上1000μm以下が好ましい。より好ましくは,10μm以上500μm以下であり,さらに好ましくは,20μm以上300μm以下である。厚みが5μm未満の場合,機械強度が十分でない場合があり,厚みが1000μmを超えると電気回路との熱圧着性が低下する場合がある。
【0058】
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルム(A)と導電体からなるエレメントとをポリアリーレンスルフィドフィルム(B)で固定化する方法は,特に限定されないが,AおよびB層の融点未満の温度で,電気回路の形状が損なわれない程度に圧力をかけて熱圧着させる方法,A層および/またはB層の片表面に共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)および/または(BC)が積層されている場合は,AC層および/またはBC層の融点?20℃以上,Aおよび/またはB層の融点未満の温度で,電気回路などの形状が損なわれない程度に圧力をかけて熱圧着させる方法が用いられる。特に後者の方法は,電気回路などの形状保持の観点から好ましく用いられる。」

「【0061】
次いで,本発明の構造体を製造する方法として,ポリアリーレンスルフィドとしてポリフェニレンスルフィド(PPS)を用い,ポリアリーレンスルフィドフィルムとして二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム単体あるいは,共重合ポリフェニレンスルフィド層を積層した二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを用いた場合について説明するが,本発明は,下記の記載に限定されないことは無論である。」

「【0073】
次に,本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの製造方法について説明する。上記のPPS樹脂組成物と,共重合ポリフェニレンスルフィド樹脂を別々の溶融押出装置に供給し,個々の原料の融点以上に加熱する。加熱により溶融された各原料は,溶融押出装置と口金出口の間に設けられた合流装置で溶融状態で2層または3層に積層され,スリット状の口金出口から押し出される。かかる溶融積層体を冷却ドラム上でPPS樹脂のガラス転移点以下に冷却し,実質的に非晶状態の2層積層シートを得る。二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム単体を製造する場合は,PPS樹脂組成物のみを溶融押出装置に供給して非晶質のシートを得る。溶融押出装置は周知の装置が適用可能であるが,1軸または2軸のエクストルーダが簡便であり好ましく用いられる。」

「【0080】
このようにして得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムに電気回路などの導電体からなるエレメントを形成する。例えば,電気回路の形成方法は周知の方法,例えば,積層,蒸着,メッキ等の方法で金属層を設けて電気回路のパターンにエッチングすることによって形成できる。エッチング液としては,塩化第2鉄水溶液などが通常用いられる。また,金属やカーボン等の導電体を含有する導電ペーストをシルク印刷法などの方法で回路パターンを形成することもできる。
【0081】
以上のようにして得られた電気回路などの導電体からなるエレメントを有する共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)と共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリアリーレンスルフィドフィルム(B)とを共重合ポリフェニレンスルフィド層AC,BCが重なるようにA/AC/導電体からなるエレメント/BC/Bの順に重ね合わせ加熱プレスロール法,熱板プレス法などで熱圧着して積層する。勿論,二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムが単膜の場合,A/導電体からなるエレメント/Bの順に積層し,加熱プレスロール法,熱板プレス法で熱圧着して積層してもよいが,積層界面の接着性の観点から前者が好ましく用いられる。熱圧着条件は,200℃以上,AあるいはB層を構成するPPS樹脂組成物の融点以下の温度で,1?300kg/cm^(2)の圧力で熱圧着することが加工性,接着性 等の観点で好ましい。」

イ 上記記載について検討する。
(ア)甲第1号証の請求項1,段落0024の記載を参照すると,甲第1号証には,「ポリアリーレンスルフィドフィルム(A)上に導電体からなるエレメント(C)が形成され,さらにその導電体からなるエレメントをポリアリーレンスルフィドフィルム(B)で覆い固定化する」「構造体」が記載されている。
また,甲第1号証の請求項5,6,段落0029,0030,0054の記載を参照すると,甲第1号証には,「ポリアリーレンスルフィドフィルム(A)」及び「ポリアリーレンスルフィドフィルム(B)」が,互いに接する側に,それぞれ「共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド層(BC)」が積層されてなる積層構造である点も記載されている。
以上から,甲第1号証には,「ポリアリーレンスルフィドフィルム(A)の片表面に共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)が積層され,該AC層上に電気回路を形成したのち,共重合ポリフェニレンスルフィド層(BC)が積層されたポリアリーレンスルフィドフィルム(B)をBC層側が電気回路側となるよう覆う構成」の「構造体」が記載されている。

(イ)甲第1号証の段落0011の「特に好ましいポリアリーレンスルフィドとしては,耐熱性と経済性の観点から,ポリフェニレンスルフィド(PPS)が好ましく例示され」る旨の記載や,段落0061の「ポリアリーレンスルフィドとしてポリフェニレンスルフィド(PPS)を用い,ポリアリーレンスルフィドフィルムとして二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム単体あるいは,共重合ポリフェニレンスルフィド層を積層した二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを用いた」旨の記載を参酌すると,甲第1号証には,「ポリアリーレンスルフィドフィルム(A)」,「ポリアリーレンスルフィドフィルム(B)」として,「ポリフェニレンスルフィドフィルム」を用いることが記載されている。

(ウ)甲第1号証の段落0043の「共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)および(BC)の融点は,ポリフェニレンスルフィドフィルム(A)および/または(B)の融点より1?100℃低いことが好ましく,より好ましくは,10℃?50℃であり,さらに好ましくは,20℃?40℃である。」の記載を参酌すると,甲第1号証には,「共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)および(BC)の融点」を,「ポリフェニレンスルフィドフィルム(A)および/または(B)の融点」より「10℃?50℃低」くする点が記載されている。

(エ)甲第1号証の段落0058,0081の記載を参照すると,甲第1号証には,「電気回路などの導電体からなるエレメントを有する共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)と共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)とを共重合ポリフェニレンスルフィド層AC,BCが重なるようにA/AC/導電体からなるエレメント/BC/Bの順に重ね合わせ加熱プレスロール法,熱板プレス法などで熱圧着して積層」する点,及び,接着性の観点から,加熱プレスロール法が好ましい点が記載されている。

ウ 上記ア,イの記載によれば,甲第1号証には次の発明(以下「甲第1発明」という。)が記載されている。
「 ポリフェニレンスルフィドフィルム(A)の片表面に共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)が積層され,該AC層上に電気回路を形成したのち,共重合ポリフェニレンスルフィド層(BC)が積層されたポリフェニレンスルフィドフィルム(B)をBC層側が電気回路側となるよう覆う構成であり,
電気回路などの導電体からなるエレメントを有する共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)と共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)とを共重合ポリフェニレンスルフィド層AC,BCが重なるようにA/AC/導電体からなるエレメント/BC/Bの順に重ね合わせ加熱プレスロール法などで熱圧着して積層した,
構造体であって,
共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)および(BC)の融点は,ポリフェニレンスルフィドフィルム(A)および/または(B)の融点より10℃?50℃低いこと。」

(2)甲第5号証
ア 取消理由通知において引用した甲第5号証(特開2008-248042号公報)には,以下の事項が記載されている。

「【0028】
次に本発明のフラットケーブルについて説明する。
本発明のフラットケーブルの好ましい一実施態様を図1に基づいて説明する。
本発明のフラットケーブルは,複数本の芯材3を並列に配置し,接着層2を介し一対の絶縁層1により挟んで一体化してなる。
【0029】
本発明に用いられる芯材としては,任意の材質のものであってよいし,任意の断面の形状を有するものであってよく,例えば,丸断面導体等任意の導体,被覆電線等任意の電線または任意の光ファイバ等が挙げられる。芯材の本数は特に制限はないが2?30本が好ましい。芯材の厚さ,直径は特に制限はないが25?250μmが好ましい。芯材の幅も特に制限はないが0.5?15mmが好ましい。芯材同士の間隔も絶縁が保たれる限り特に制限はないが0.5?5mmが好ましい。」

「【0034】
本発明のフラットケーブルを製造する方法としては,通常の方法を用いることができ,特に限定されない。例えば,まず,ポリエチレンテレフタレート等の絶縁層1の片面に前記のホットメルト接着剤を塗布した接着剤つき絶縁フイルム1aをあらかじめ作製しておく。次に図2に示すように,並列に配列した芯材3を,一対の熱ロール4へと案内し,この熱ロール4により,前記芯材3を,前記芯材3の上下方向(それぞれ,矢印h,i)から供給される接着剤つき絶縁フイルム1aを接着剤が芯材に対する状態にて挟み,熱ロール4にて加熱して接着,一体化させる方法などが挙げられる。」

「【0037】
[フラットケーブル]
25μm厚,幅600mmのポリエチレンテレフタレートフイルムに前記の各実施例,比較例の接着剤を20μmの仕上がり厚さになるように塗布し,接着剤付きポリエチレンテレフタレートフイルムを得た。これを150mm幅に裁断して紙管を芯にしてロール状に巻き取っておいた。
その後,芯材として厚さ35μm,幅1.5mmの平角導体を幅方向に複数本並べ,前記導体を各接着剤付きポリエチレンテレフタレートフイルムにてはさみ込み,160℃の熱ロール間を通過させることにより,接着剤を融着させ,表1?3に示す各実施例,比較例に対応するフラットケーブルを得た。」

「【0040】
(耐屈曲性)
フラットケーブルについて,常温(25℃)にて屈曲半径7mmに曲げたり真っ直ぐに伸ばしたりを繰り返し,フラットケーブル内の芯材が破断するまでの回数を測定した。数字が大きいほど,耐屈曲性に優れる。
【0041】
(回転コネクタ耐久試験)
フラットケーブルを特開平05-234651に示される回転コネクタに組み込み,60℃,95%RH環境下で1週間湿熱処理した後,90℃で168時間熱処理を行い,静止状態で徐冷したものを耐久試験(毎秒5回転の速度で左右2回転ずつを1サイクルとして400000サイクル実施)にかけた。耐久試験の前後でフラットケーブル内の回路導体の導電抵抗値の上昇率が50%未満の場合を合格とした。」

「【図1】



「【図2】



イ 上記記載について検討する。
(ア)甲第5号証の図1を参照すると,甲第5号証のフラットケーブルにおいて,芯材3の周囲は,接着剤つき絶縁フイルム1aによって被膜されていると認められる。

ウ 上記ア,イの記載によれば,甲第5号証には以下の事項が記載(以下,「甲第5号証記載事項」という。)されていると認められる。

(ア)「ポリエチレンテレフタレート等の絶縁層1の片面に前記のホットメルト接着剤を塗布した接着剤つき絶縁フイルム1aをあらかじめ作製しておき,並列に配列した芯材3を,一対の熱ロール4へと案内し,この熱ロール4により,前記芯材3を,前記芯材3の上下方向から供給される接着剤つき絶縁フイルム1aを接着剤が芯材に対する状態にて挟み,熱ロール4にて加熱して接着,一体化させ,芯材3の周囲が,接着剤つき絶縁フイルム1aによって被膜されたフラットケーブルにおいて,
芯材としては,丸断面導体等任意の導体,被覆電線等任意の電線または任意の光ファイバ等が挙げられること。」

(イ)「フラットケーブルを回転コネクタに組み込むこと。」

(3)甲第8号証
ア 取消理由通知において引用した甲第8号証(国際公開第2011/136008号(2011年(平成23年)11月3日国際公開))には,次の記載がある。

「[0002] 回転コネクタ装置は,固定側部材と,これに対して回転可能に取り付ける回転側部材を有し,これらの間に形成される環状をなす収容空間にフラットケーブルが収容されている。そして,フラットケーブルの一方の端は,固定側部材に固定されてコネクタが接続され,フラットケーブルの他方の端は,回転側部材に固定されてコネクタが接続され,フラットケーブルの長手方向の中間部分には,湾曲して折り返す折り返し部が形成されている。この構造により,回転側部材が左右いずれの方向に回転したときでも,フラットケーブルが弾発性をもって巻き締めと巻き戻しがなされ,信号の伝送が可能である。」

「[0011] 上記回転コネクタ装置は,自動車におけるステアリング部分に装着するSRCや,ロボットアーム等の回転部分を有する機構におけるコネクタ装置とすることができる。」

「[0065] なお,この一形態では,回転コネクタ装置11として,自動車のステアリング装置に組み込まれ,図示しない車両側のECU(Electronic Control Unit)と,図示しないステアリング側のECUを接続するステアリングロールコネクタの例を説明するが,その他の回転コネクタ装置であってもよい。」

「[0091] なお,フラットケーブル21を収容する時には,相互間の密着性を高めるため,粘着性と潤滑性を有するグリスなどの物質を塗布しておく。これにより,信号フラットケーブル22,シールドフラットケーブル23,スペーサフラットケーブル24の一体性が高く,バラけにくい状態で円滑な巻き締めと巻き戻しが可能となる。」

「[0115] なお,この一形態では,回転コネクタ装置111として,自動車のステアリング装置に組み込まれ,図示しない車両側のECU(Electronic Control Unit)と,図示しないステアリング側のECUを接続するステアリングロールコネクタの例を説明するが,その他の回転コネクタ装置であってもよい。」

(4)甲第2号証
特許異議申立人が異議申立書において引用した,甲第2号証(特開2007-250245号公報)には以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
樹脂フィルムからなり,温度25℃,周波数1GHzにおける該樹脂フィルムの誘電損失が0?0.01であり,長手方向および幅方向の引張破断伸度が100?250%であるケーブル用絶縁フィルム。」

「【0008】
そこで本発明の目的は,低誘電損失などの優れた電気特性を有し,かつ,加工性,耐久性に優れたケーブル用絶縁フィルムに関するものであり,例えば,電気・電子機器の配線などに使用される電線被覆ケーブル,フラットケーブル,シールドフラットケーブルなどにおいて好適に使用できるケーブル用絶縁フィルムおよびそれを用いたケーブルを提供することにある。」

「【0069】
本発明のケーブル用絶縁フィルムは,例えば,絶縁フィルムと接着剤層とからなる絶縁基材2枚の間に,複数本の平型導体を平行に配置して一体化したフラットケーブルに加工することができる。」

「【0105】
得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの表面にコロナ処理を施し,片面にポリエステル系接着剤を厚み50μmに調整してグラビアロールで塗布し,100℃で3分間乾燥した。得られた接着剤つきフィルムの接着剤面同士を1.0mmピッチで10本の35μm厚み×0.8mm幅のスズメッキ平型軟銅導体を並列して挟み込み,熱ローラーを通すことでこれをラミネート一体化し,フラットケーブルを得た。」

「【0129】
本発明のケーブル用絶縁フィルムは,低誘電損失などの優れた電気特性を有し,かつ,加工性,耐久性に優れたケーブル用絶縁フィルムに関するものであり,例えば,電気・電子機器の配線などに使用される電線被覆ケーブル,フラットケーブル,シールドフラットケーブルなどにおいて好適に使用できるケーブル用絶縁フィルムおよびそれを用いたケーブルに関するものである。」

(5)甲第3号証
特許異議申立人が異議申立書において引用した,甲第3号証(特開平6-36619号公報)には以下の事項が記載されている。

「【請求項1】 高分子材料の絶縁フィルムと接着剤層とからなる絶縁基材2枚の間に,複数本の平型導体を平行に配置して一体化したフラットケーブルにおいて,
絶縁フィルム材料の20℃における引張弾性率が600kg/mm^(2) 以下であり,
接着剤層の樹脂組成物の引張弾性率が,20℃において20kg/mm^(2) 以上,300kg/mm^(2) 以下,80℃において4kg/mm^(2) 以上であって,
接着剤層と平型導体との80℃における剥離強度が1mm幅に換算した値で30g以上であることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項2】 絶縁フィルムが2軸延伸ポリフェニレンサルファイドフィルムであることを特徴とする請求項1記載のフラットケーブル。」

(6)甲第4号証
特許異議申立人が異議申立書において引用した,甲第4号証(特開2003-16851号公報)には以下の事項が記載されている。

「【請求項1】 片面に接着層を備えた一組のプラスチックフィルムによって単数もしくは複数の導体をその上下から挟んで一体化したフレキシブルフラットケーブルにおいて,上記接着層を接着剤にノンハロゲン系難燃剤を添加したもので形成すると共に,上記プラスチックフィルムを自己消火性を有するもので形成したことを特徴とする環境調和型フレキシブルフラットケーブル。
【請求項2】 上記自己消火性を有するプラスチックフィルムが,ポリフェリレンサルファイド又はポリエーテルイミド,あるいはアラミドのいずれか,またはこれらを複合したものであることを特徴とする請求項1に記載の環境調和型フレキシブルフラットケーブル。」

(7)甲第6号証
特許異議申立人が異議申立書において引用した,甲第6号証(特開2009-76281号公報)には以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
芯材を絶縁フィルムで挟むことで構成されるフラットケーブルを内蔵する回転コネクタであって,一方の絶縁フィルムには接着剤層が設けられ,一方の絶縁フィルムは芯材と前記接着剤層とに直接接し,もう一方の絶縁フィルムには接着剤層が設けられずに,芯材とは前記一方の絶縁フィルムに設けられた接着剤層を介して接する位置に芯材が設けられており,接着剤層が設けられていない絶縁フィルムの厚さの対向する接着層を含む絶縁フィルムの厚さに対する比(接着剤層無し絶縁フィルム厚/接着剤層あり絶縁フィルム厚)が0.5から2.0であることを特徴とする回転コネクタ。」

「【0019】
本発明の芯材としては,任意の材質のものであってよいし,任意の断面の形状を有するものであってよく,例えば,丸断面導体等任意の導体,被覆電線等任意の電線または任意の光ファイバ等が挙げられる。芯材の本数は特に制限はないが2?30本が好ましい。芯材の厚さ,直径は特に制限はないが25?250μmが好ましい。芯材の幅も特に制限はないが0.25?15mmが好ましい。芯材同士の間隔も絶縁が保たれる限り特に制限はないが0.5?5mmが好ましい。」

「【0030】
?前略?
[回転コネクタB]
表2?3に示す構成のフラットケーブルを,図3に示すフラットケーブル巻回方向にUターン部を有するものでダミーケーブルを用いるタイプの回転コネクタに組み込んだ。フラットケーブルが収まる空間の大きさは外側ケースの内径が直径85mm,内側ケース外形が直径45mmで,U字転回部の幅は20mmで,ダミーケーブルとして125μm厚のPETフィルムを3枚用いた。」

「【0033】
(耐屈曲性)
高温(90℃)にて屈曲半径3.5?10mmに曲げたり真っ直ぐに伸ばしたりを繰り返し,フラットケーブル内の芯材が破断するまでの回数を測定し対数平均をとった。数字が大きいほど優れていることになる。
?後略?」

(8)甲第7号証
特許異議申立人が異議申立書において引用した,甲第7号証(国際公開第91/04566号)には以下の事項が記載されている。

「 さらにまた本発明のコンデンサの別の好ましい態様は,保護層の最外層の外表面が熱架橋化処理されている実質的に無配向の,あるいは二軸配向したポリフェニレンスルフィドフィルム(以下,熱架橋化PPSフィルムと言うことがある)からなるコンデンサである。ここで,熱架橋化処理とは,220℃以上の高温に晒されたときにポリフェニレンスルフィドフィルムの少なくとも表面部分に架橋構造が導入され,寸法安定化,難燃化,不融化がなされるもの,あるいはそのような方法によって架橋構造が導入されたものをいう。」(第10頁第2?11行)

(9)甲第9号証
特許異議申立人が異議申立書において引用した,甲第9号証(特開2002-358837号公報)には以下の事項が記載されている。

「【0070】さらに高い難燃性が要求される用途には,実施例7で示されるように実施例1にさらにリン系難燃剤を添加した。結果,FFCとしての十分な諸特性を有し,これに加えて水平燃焼試験,45°燃焼試験共にクリアできた。さらに短期耐熱性(200℃×1000秒間で実施)の評価を行ったところ,それでも尚FFCとしての十分な諸特性を有していた。実際に通電加熱試験を行ったところ,10Aで△25℃,20Aで△120℃の温度上昇幅であった。よってこのFFCは周囲温度が80℃の雰囲気においても,許容電流値を20Aと設定することが可能であった。」

第6 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)訂正後の請求項に係る発明
本件訂正請求により訂正された本件発明1ないし9及び13ないし14は,上記第3で示したとおりのものである。

(2)特許法第29条第2項について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲第1発明とを対比する。

a 甲第1発明における「電気回路などの導電体からなるエレメント」は,本件発明1の「配列した複数の導体」と,「導体」である点で一致する。

b 甲第1発明は,「ポリフェニレンスルフィドフィルム(A)の片表面に共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)が積層され,該AC層上に電気回路を形成したのち,共重合ポリフェニレンスルフィド層(BC)が積層されたポリフェニレンスルフィドフィルム(B)をBC層側が電気回路側となるよう覆う構成」であるから,甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」が,「電気回路などの導電体からなるエレメント」を被膜していることは明らかである。
ここで,甲第1号証の段落0002の記載から,ポリフェニレンスルフィドが絶縁体であることは明らかであるから,甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」は,本件発明1の「絶縁層」と,「前記導体の周囲を被膜する絶縁層」である点で一致する。

c 甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」は,それぞれが,「共重合ポリフェニレンスルフィド」の層と,「ポリフェニレンスルフィド」の層との,2つの層を含んでいることは明らかであるから,本件発明1の「絶縁層」と,「複数の層を含んで」いる点で一致する。

d 甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」と「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」とは,「電気回路などの導電体からなるエレメントを有する共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)と共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)とを共重合ポリフェニレンスルフィド層AC,BCが重なるようにA/AC/導電体からなるエレメント/BC/Bの順に重ね合わせ加熱プレスロール法,熱板プレス法などで熱圧着して積層」され,「ポリフェニレンスルフィドフィルム(A)の片表面に共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)が積層され,該AC層上に電気回路を形成したのち,共重合ポリフェニレンスルフィド層(BC)が積層されたポリフェニレンスルフィドフィルム(B)をBC層側が電気回路側となるよう覆う構成」となるものであるから,「共重合ポリフェニレンスルフィド」の層 が「電気回路などの導電体からなるエレメント」と接することは明らかである。
なお,甲第1発明の「ポリフェニレンスルフィド」が,本件発明1の「ポリフェニレンサルファイド」であることは明らかである。
すると,甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」における,「共重合ポリフェニレンスルフィド」の層,「ポリフェニレンスルフィド」の層が,本件発明1の「最内層」,「最外層」にそれぞれ対応し,「いずれもポリフェニレンサルファイド系樹脂により構成されている」点で一致する。

e 甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)および(BC)の融点は,ポリフェニレンスルフィドフィルム(A)および/または(B)の融点より10℃?50℃低」いことは,本件発明1の「前記最内層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点は,前記最外層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点より5℃以上低」いことと,「前記最内層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点は,前記最外層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点より5℃以上低」いことで一致する。

f 甲第1発明の「構造体」は,本件発明1の「フラットケーブル」と,「導体」と「前記導体の周囲を被膜する絶縁層とを有」する「構造体」である点で一致する。

g 以上のことから,本件発明1と甲第1発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
<一致点>
「 導体と,前記導体の周囲を被膜する絶縁層とを有し,
前記絶縁層は複数の層を含んでおり,
前記絶縁層の最外層及び前記導体と接する最内層はいずれもポリフェニレンサルファイド系樹脂により構成されており,
前記最内層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点は,前記最外層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点より5℃以上低い構造体。」

<相違点>
(相違点1)本件発明1は,「配列した複数の導体」を有する「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」と特定されているのに対し,甲第1発明は,「構造体」がそのように特定されていない点。
(相違点2)本件発明1は,「前記最外層から前記最内層までを構成する樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μmである」と特定されているのに対し,甲第1発明はそのように特定されていない点。

(イ)判断
上記相違点1について検討する。

a 甲第1号証には,「構造体」の用途について,段落0008に「本発明の構造体は,電気回路用として幅広く用いることが可能であり,特にポリフェニレンスルフィドの耐熱性,耐薬品性を活かし,高温高圧下,水分共存下,液体化学物質雰囲気下で好適に用いられる。また,難燃剤を添加することなく難燃性を有するため,非ハロゲン性が要求される電気部品としても好適に用いられる。」と,「電気回路用として幅広く用いることが可能」と記載されているが,その用途について「電気回路」とはいえない「配列した複数の導体」を有する「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」に適用することは,何ら示唆されていない。

b そして,例えば甲第5号証記載事項のように,「配列した複数の導体」を有する「フラットケーブル」や,甲第5号証記載事項や甲第8号証に記載されているように,「フラットケーブル」を「回転コネクタ」に組み込むこと,及び,甲第8号証に記載されているように,「回転コネクタ」を自動車に組み込み,「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」とすることは周知のものであるが,甲第1号証には,上記aで検討したように,「構造体」の用途について,「電気回路用として幅広く用いることが可能」と記載されているものの,「電気回路」とはいえない「配列した複数の導体」を有する「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」に適用する動機付けはない。
また,「電気回路用」の「構造体」の用途について「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」とすることが,本願出願前において周知技術であるともいえない。

c よって,甲第1発明から,上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることを,当業者が容易になし得たとはいえない。

d 以上のとおりであるから,他の相違点については検討するまでもなく,本件発明1は,上記甲第1号証に記載された技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)特許異議申立人の意見について
a 特許異議申立人は,訂正の請求により追加された「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」との発明特定事項を規定する訂正は,甲第8号証にフラットケーブルの用途に関して「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」について開示されているから,甲第1号証に記載された構造体の用途を,甲第8号証に記載の車両搭載回転コネクタ用とすることは,当業者は容易に想到し得ると,意見書において主張する。

b 上記(イ)で検討したように,甲第1号証には,「構造体」の用途について,「電気回路用として幅広く用いることが可能」と記載されているが,その用途について「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」とすることは,何ら示唆されておらず,また,「構造体」の用途について「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」とすることが,本願出願前において周知技術であるともいえない。
ここで,甲第8号証に記載されているように,フラットケーブルが自動車のステアリング装置に組み込まれる回転コネクタ装置に用いられることが周知技術であるとしても,甲第1発明に甲第8号証記載事項を適用する動機付けはなく,特許異議申立人の主張は採用できない。

イ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲第1発明とを対比する。

a 甲第1発明における「電気回路などの導電体からなるエレメント」は,本件発明2の「配列した複数の光ファイバー」と,なんらかの「エレメント」である点で一致する。

b 甲第1発明は,「ポリフェニレンスルフィドフィルム(A)の片表面に共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)が積層され,該AC層上に電気回路を形成したのち,共重合ポリフェニレンスルフィド層(BC)が積層されたポリフェニレンスルフィドフィルム(B)をBC層側が電気回路側となるよう覆う構成」であるから,甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」が,「電気回路などの導電体からなるエレメント」を被覆していることは明らかである。
ここで,甲第1号証の段落0002の記載から,ポリフェニレンスルフィドが耐熱性,難燃性等を有する一種の保護材料であることは明らかであるから,甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」は,本件発明2の「保護層」と,「前記エレメントの周囲を保護材料で被覆した保護層」である点で一致する。

c 甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」は,それぞれが,「共重合ポリフェニレンスルフィド」の層と,「ポリフェニレンスルフィド」の層との,2つの層を含んでいることは明らかであるから,本件発明2の「保護層」と,「複数の層を含んで」いる点で一致する。

d 甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」と「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」とは,「電気回路などの導電体からなるエレメントを有する共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)と共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)とを共重合ポリフェニレンスルフィド層AC,BCが重なるようにA/AC/導電体からなるエレメント/BC/Bの順に重ね合わせ加熱プレスロール法,熱板プレス法などで熱圧着して積層」され,「ポリフェニレンスルフィドフィルム(A)の片表面に共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)が積層され,該AC層上に電気回路を形成したのち,共重合ポリフェニレンスルフィド層(BC)が積層されたポリフェニレンスルフィドフィルム(B)をBC層側が電気回路側となるよう覆う構成」となるものであるから,「共重合ポリフェニレンスルフィド」の層 が「電気回路などの導電体からなるエレメント」と接することは明らかである。
なお,甲第1発明の「ポリフェニレンスルフィド」が,本件発明2の「ポリフェニレンサルファイド」であることは明らかである。
すると,甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」における,「共重合ポリフェニレンスルフィド」の層,「ポリフェニレンスルフィド」の層が,本件発明2の「最内層」,「最外層」にそれぞれ対応し,「いずれもポリフェニレンサルファイド系樹脂により構成されている」点で一致する。

e 甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)および(BC)の融点は,ポリフェニレンスルフィドフィルム(A)および/または(B)の融点より10℃?50℃低」いことは,本件発明2の「前記最内層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点は,前記最外層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点より5℃以上低」いことと,「前記最内層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点は,前記最外層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点より5℃以上低」いことで一致する。

f 甲第1発明の「構造体」は,本件発明2の「フラットケーブル」と,「エレメント」と「前記エレメントの周囲を保護材料で被覆した保護層とを有」する「構造体」である点で一致する。

g 以上のことから,本件発明2と甲第1発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
<一致点>
「 エレメントと,前記エレメントの周囲を保護材料で被覆した保護層とを有し,前記保護層は複数の層を含んでおり,
前記保護層の最外層及び前記エレメントと接する最内層はいずれもポリフェニレンサルファイド系樹脂により構成されており,
前記最内層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点は,前記最外層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点より5℃以上低い構造体。」

<相違点>
(相違点1)エレメントに関して,本件発明2は,「光ファイバー」と特定されているのに対し,甲第1発明は,「エレメント」がそのように特定されていない点。
(相違点2)本件発明2は,「配列した複数の光ファイバー」を有する「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」と特定されているのに対し,甲第1発明は,「構造体」がそのように特定されていない点。
(相違点3)本件発明2は,「前記最外層から前記最内層までを構成する樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μmである」と特定されているのに対し,甲第1発明は「構造体」がそのように特定されていない点。

(イ)判断
事案に鑑み,上記相違点2について最初に検討する。
上記相違点2は,本件発明1と甲第1発明との相違点1と実質的に同等の相違する事項を有するものであるから,本件発明2も,甲第1発明の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

よって,甲第1発明から,上記相違点2に係る本件発明2の構成とすることを,当業者が容易になし得たとはいえない。

以上のとおりであるから,他の相違点については検討するまでもなく,本件発明2は,上記甲第1号証に記載された技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明3について
(ア)対比
本件発明3と甲第1発明とを対比する。

a 甲第1発明における「電気回路などの導電体からなるエレメント」は,本件発明3の「配列した複数の導体」と,「導体」である点で一致する。

b 甲第1発明は,「ポリフェニレンスルフィドフィルム(A)の片表面に共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)が積層され,該AC層上に電気回路を形成したのち,共重合ポリフェニレンスルフィド層(BC)が積層されたポリフェニレンスルフィドフィルム(B)をBC層側が電気回路側となるよう覆う構成」であるから,甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」が,「電気回路などの導電体からなるエレメント」を被膜していることは明らかである。
ここで,甲第1号証の段落0002の記載から,ポリフェニレンスルフィドが絶縁体であることは明らかであるから,甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」は,本件発明3の「絶縁層」と,「前記導体の周囲を被膜する絶縁層」である点で一致する。

c 甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」は,それぞれが,「共重合ポリフェニレンスルフィド」の層と,「ポリフェニレンスルフィド」の層との,2つの層を含んでいることは明らかであるから,本件発明3の「絶縁層」と,「複数の層を含んで」いる点で一致する。

d 甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」と「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」とは,「電気回路などの導電体からなるエレメントを有する共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)と共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)とを共重合ポリフェニレンスルフィド層AC,BCが重なるようにA/AC/導電体からなるエレメント/BC/Bの順に重ね合わせ加熱プレスロール法,熱板プレス法などで熱圧着して積層」され,「ポリフェニレンスルフィドフィルム(A)の片表面に共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)が積層され,該AC層上に電気回路を形成したのち,共重合ポリフェニレンスルフィド層(BC)が積層されたポリフェニレンスルフィドフィルム(B)をBC層側が電気回路側となるよう覆う構成」となるものであるから,「共重合ポリフェニレンスルフィド」の層 が「電気回路などの導電体からなるエレメント」と接することは明らかである。
なお,甲第1発明の「ポリフェニレンスルフィド」が,本件発明3の「ポリフェニレンサルファイド」であることは明らかである。
すると,甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」における,「共重合ポリフェニレンスルフィド」の層,「ポリフェニレンスルフィド」の層が,本件発明3の「最内層」,「最外層」にそれぞれ対応し,「いずれもポリフェニレンサルファイド系樹脂により構成されている」点で一致する。

e 甲第1発明の「構造体」は,本件発明3の「フラットケーブル」と,「導体」と「前記導体の周囲を被膜する絶縁層とを有」する「構造体」である点で一致する。

f 以上のことから,本件発明3と甲第1発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
<一致点>
「 導体と,前記導体の周囲を被膜する絶縁層とを有し,
前記絶縁層は複数の層を含んでおり,
前記絶縁層の最外層及び前記導体と接する最内層はいずれもポリフェニレンサルファイド系樹脂により構成されている構造体。」

<相違点>
(相違点1)本件発明3は,「配列した複数の導体」を有する「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」と特定されているのに対し,甲第1発明は,「構造体」がそのように特定されていない点。
(相違点2)本件発明3は,「前記最外層から前記最内層までを構成する樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μmである」と特定されているのに対し,甲第1発明はそのように特定されていない点。
(相違点3)本件発明3は,「前記最外層は架橋処理層であって,前記最内層は架橋未処理層」と特定されているのに対し,甲第1発明はそのように特定されていない点。

(イ)判断
上記相違点1について検討する。
上記相違点1は,本件発明1と甲第1発明との相違点1と実質的に同等の相違する事項を有するものであるから,本件発明3も,甲第1発明の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

よって,甲第1発明から,上記相違点1に係る本件発明3の構成とすることを,当業者が容易になし得たとはいえない。

以上のとおりであるから,他の相違点については検討するまでもなく,本件発明3は,上記甲第1号証に記載された技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明4について
(ア)対比
本件発明4と甲第1発明とを対比する。

a 甲第1発明における「電気回路などの導電体からなるエレメント」は,本件発明4の「配列した複数の光ファイバー」と,なんらかの「エレメント」である点で一致する。

b 甲第1発明は,「ポリフェニレンスルフィドフィルム(A)の片表面に共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)が積層され,該AC層上に電気回路を形成したのち,共重合ポリフェニレンスルフィド層(BC)が積層されたポリフェニレンスルフィドフィルム(B)をBC層側が電気回路側となるよう覆う構成」であるから,甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」が,「電気回路などの導電体からなるエレメント」を被覆していることは明らかである。
ここで,甲第1号証の段落0002の記載から,ポリフェニレンスルフィドが耐熱性,難燃性等を有する一種の保護材料であることは明らかであるから,甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」は,本件発明4の「保護層」と,「前記エレメントの周囲を保護材料で被覆した保護層」である点で一致する。

c 甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」は,それぞれが,「共重合ポリフェニレンスルフィド」の層と,「ポリフェニレンスルフィド」の層との,2つの層を含んでいることは明らかであるから,本件発明4の「保護層」と,「複数の層を含んで」いる点で一致する。

d 甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」と「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」とは,「電気回路などの導電体からなるエレメントを有する共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)と共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)とを共重合ポリフェニレンスルフィド層AC,BCが重なるようにA/AC/導電体からなるエレメント/BC/Bの順に重ね合わせ加熱プレスロール法,熱板プレス法などで熱圧着して積層」され,「ポリフェニレンスルフィドフィルム(A)の片表面に共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)が積層され,該AC層上に電気回路を形成したのち,共重合ポリフェニレンスルフィド層(BC)が積層されたポリフェニレンスルフィドフィルム(B)をBC層側が電気回路側となるよう覆う構成」となるものであるから,「共重合ポリフェニレンスルフィド」の層 が「電気回路などの導電体からなるエレメント」と接することは明らかである。
なお,甲第1発明の「ポリフェニレンスルフィド」が,本件発明4の「ポリフェニレンサルファイド」であることは明らかである。
すると,甲第1発明の「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」における,「共重合ポリフェニレンスルフィド」の層,「ポリフェニレンスルフィド」の層が,本件発明4の「最内層」,「最外層」にそれぞれ対応し,「いずれもポリフェニレンサルファイド系樹脂により構成されている」点で一致する。

e 甲第1発明の「構造体」は,本件発明4の「フラットケーブル」と,「エレメント」と「前記エレメントの周囲を保護材料で被覆した保護層とを有」する「構造体」である点で一致する。

f 以上のことから,本件発明4と甲第1発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
<一致点>
「 エレメントと,前記エレメントの周囲を保護材料で被覆した保護層とを有し,前記保護層は複数の層を含んでおり,
前記保護層の最外層及び前記エレメントと接する最内層はいずれもポリフェニレンサルファイド系樹脂により構成されている構造体。」

<相違点>
(相違点1)エレメントに関して,本件発明4は,「光ファイバー」と特定されているのに対し,甲第1発明は,「エレメント」がそのように特定されていない点。
(相違点2)本件発明4は,「配列した複数の光ファイバー」を有する「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」と特定されているのに対し,甲第1発明は,「構造体」がそのように特定されていない点。
(相違点3)本件発明4は,「前記最外層から前記最内層までを構成する樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μmである」と特定されているのに対し,甲第1発明はそのように特定されていない点。
(相違点4)本件発明4は,「前記最外層は架橋処理層であって,前記最内層は架橋未処理層」と特定されているのに対し,甲第1発明はそのように特定されていない点。

(イ)判断
事案に鑑み,上記相違点2について最初に検討する。
上記相違点2は,本件発明1と甲第1発明との相違点1と実質的に同等の相違する事項を有するものであるから,本件発明4も,甲第1発明の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

よって,甲第1発明から,上記相違点2に係る本件発明4の構成とすることを,当業者が容易になし得たとはいえない。

以上のとおりであるから,他の相違点については検討するまでもなく,本件発明4は,上記甲第1号証に記載された技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

オ 本件発明5ないし9について
本件発明5ないし9は,本件発明1ないし4に対して,技術的事項を追加したものである。
よって,上記アないしエに示した理由と同様の理由により,本件発明5ないし9は,上記甲第1号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易になし得たものではない。

カ 本願発明13について
(ア)対比
本件発明13と甲第1発明を対比する。

a 甲第1発明における「電気回路などの導電体からなるエレメント」は,本件発明13の「導体」に相当する。

b 甲第1発明の,「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」は,それぞれが,「共重合ポリフェニレンスルフィド」の層と,「ポリフェニレンスルフィド」の層との,「ポリフェニレンサルファイド系樹脂」の層を含んでいることは明らかである。
そして,甲第1発明においては,「共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)および(BC)の融点は,ポリフェニレンスルフィドフィルム(A)および/または(B)の融点より10℃?50℃低いこと」から,「共重合ポリフェニレンスルフィド」の層は「低融点」であり,「ポリフェニレンスルフィド」の層は「高融点」であるといえる。
なお,甲第1発明の「ポリフェニレンスルフィド」が,本件発明13の「ポリフェニレンサルファイド」であることは明らかである。
すると,甲第1発明の,「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」は,本件発明13の「融点の異なるポリフェニレンサルファイド系樹脂を層状に含む2枚の樹脂フィルム」に相当する。

c 甲第1発明の「構造体」は,本件発明1の「フラットケーブル」と,「構造体」である点で一致する。
そして,甲第1発明において,「構造体」が「電気回路などの導電体からなるエレメントを有する共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)と共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)とを共重合ポリフェニレンスルフィド層AC,BCが重なるようにA/AC/導電体からなるエレメント/BC/Bの順に重ね合わせ加熱プレスロール法などで熱圧着して積層」されることは,本件発明13と,「融点の異なるポリフェニレンサルファイド系樹脂を層状に含む2枚の樹脂フィルムを,導体を挟んで,」「接着する」「構造体の」「製造方法」である点で一致する。

d 「加熱プレスロール法」が,材料を加熱ロールにより「送出」し,「加熱圧着する」工程を有する「加熱圧着装置」によるものであることは明らかである。
そして,甲第1発明の「電気回路などの導電体からなるエレメントを有する共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)と共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)とを共重合ポリフェニレンスルフィド層AC,BCが重なるようにA/AC/導電体からなるエレメント/BC/Bの順に重ね合わせ加熱プレスロール法などで熱圧着して積層」する場合には,「共重合ポリフェニレンスルフィド」の層が「導電体からなるエレメント」に接し,「ポリフェニレンスルフィド」の層が「加熱ロール」に接することいえる。
すると,甲第1発明の「電気回路などの導電体からなるエレメントを有する共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)と共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)とを共重合ポリフェニレンスルフィド層AC,BCが重なるようにA/AC/導電体からなるエレメント/BC/Bの順に重ね合わせ加熱プレスロール法などで熱圧着して積層」することは,本件発明13と「前記導体に対して,低融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層が接し,」「加熱圧着装置に対して,高融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層が接するように,前記導体及び前記樹脂フィルムが送出される工程と,前記送出された導体及び前記樹脂フィルムを,前記加熱装置によって,」「加熱圧着する工程」で一致するといえる。

e 以上のことから,本件発明13と甲第1発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。

<一致点>
「 融点の異なるポリフェニレンサルファイド系樹脂を層状に含む2枚の樹脂フィルムを,導体を挟んで,接着する構造体の製造方法であって,
前記導体に対して,低融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層が接し,加熱圧着装置に対して,高融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層が接するように,前記導体及び前記樹脂フィルムが送出される工程と,
前記送出された導体及び前記樹脂フィルムを,前記加熱装置によって,加熱圧着する工程と,
を有する構造体の製造方法。」

<相違点>
(相違点1)本件発明13は,「前記加熱装置によって,前記導体に接する層の融点以上前記加熱装置に接する層の融点未満の温度で」加熱圧着することにより,「熱融着により接着する」のに対し,甲第1発明では,そのように特定されていない点。
(相違点2)本件発明13は,「フラットケーブル」及び「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」の製造方法と特定されているのに対し,甲第1発明では,「構造体」がそのように特定されていない点。
(相違点3)本件発明13は,「前記樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μm以下であって,前記高融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層の厚さは1μm以上であること」と特定されているのに対し,甲第1発明は,そのように特定されていない点。

(イ)判断
事案に鑑み,上記相違点2について最初に検討する。
上記相違点2は,本件発明1と甲第1発明との相違点1と実質的に同等の相違する事項を有するものであるから,本件発明13も,甲第1発明の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

よって,甲第1発明から,上記相違点2に係る本件発明13の構成とすることを,当業者が容易になし得たとはいえない。

以上のとおりであるから,他の相違点については検討するまでもなく,本件発明13は,上記甲第1号証に記載された技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

キ 本願発明14について
(ア)対比
本件発明14と甲第1発明を対比する。

a 甲第1発明における「電気回路などの導電体からなるエレメント」は,本件発明14の「光ファイバー」と,何らかの「エレメント」である点で一致する。

b 甲第1発明の,「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」は,それぞれが,「共重合ポリフェニレンスルフィド」の層と,「ポリフェニレンスルフィド」の層との,「ポリフェニレンサルファイド系樹脂」の層を含んでいることは明らかである。
そして,甲第1発明においては,「共重合ポリフェニレンスルフィド層(AC)および(BC)の融点は,ポリフェニレンスルフィドフィルム(A)および/または(B)の融点より10℃?50℃低いこと」から,「共重合ポリフェニレンスルフィド」の層は「低融点」であり,「ポリフェニレンスルフィド」の層は「高融点」であるといえる。
なお,甲第1発明の「ポリフェニレンスルフィド」が,本件発明13の「ポリフェニレンサルファイド」であることは明らかである。
すると,甲第1発明の,「共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)」及び「共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)」は,本件発明14の「融点の異なるポリフェニレンサルファイド系樹脂を層状に含む2枚の樹脂フィルム」に相当する。

c 甲第1発明の「構造体」は,本件発明1の「フラットケーブル」と,「構造体」である点で一致する。
そして,甲第1発明において,「構造体」が「電気回路などの導電体からなるエレメントを有する共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)と共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)とを共重合ポリフェニレンスルフィド層AC,BCが重なるようにA/AC/導電体からなるエレメント/BC/Bの順に重ね合わせ加熱プレスロール法などで熱圧着して積層」されることは,本件発明14と,「融点の異なるポリフェニレンサルファイド系樹脂を層状に含む2枚の樹脂フィルムを,エレメントを挟んで,」「接着する」「構造体の」「製造方法」である点で一致する。

d 「加熱プレスロール法」が,材料を加熱ロールにより「送出」し,「加熱圧着する」工程を有する「加熱圧着装置」によるものであることは明らかである。
そして,甲第1発明の「電気回路などの導電体からなるエレメントを有する共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)と共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)とを共重合ポリフェニレンスルフィド層AC,BCが重なるようにA/AC/導電体からなるエレメント/BC/Bの順に重ね合わせ加熱プレスロール法などで熱圧着して積層」する場合には,「共重合ポリフェニレンスルフィド」の層が「導電体からなるエレメント」に接し,「ポリフェニレンスルフィド」の層が「加熱ロール」に接することいえる。
すると,甲第1発明の「電気回路などの導電体からなるエレメントを有する共重合ポリフェニレンスルフィド(AC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(A)と共重合ポリフェニレンスルフィド(BC)を積層したポリフェニレンスルフィドフィルム(B)とを共重合ポリフェニレンスルフィド層AC,BCが重なるようにA/AC/導電体からなるエレメント/BC/Bの順に重ね合わせ加熱プレスロール法などで熱圧着して積層」することは,本件発明13と「前記エレメントに対して,低融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層が接し,」「加熱圧着装置に対して,高融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層が接するように,前記エレメント及び前記樹脂フィルムが送出される工程と,前記送出された導体及び前記樹脂フィルムを,前記加熱装置によって,」「加熱圧着する工程」で一致するといえる。

e 以上のことから,本件発明14と甲第1発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。

<一致点>
「 融点の異なるポリフェニレンサルファイド系樹脂を層状に含む2枚の樹脂フィルムを,エレメントを挟んで,接着する構造体の製造方法であって,
前記エレメントに対して,低融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層が接し,加熱圧着装置に対して,高融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層が接するように,前記エレメント及び前記樹脂フィルムが送出される工程と,
前記送出された導体及び前記樹脂フィルムを,前記加熱装置によって,加熱圧着する工程と,
を有する構造体の製造方法。」

<相違点>
(相違点1)エレメントに関して,本件発明14は,「光ファイバー」と特定されているのに対し,甲第1発明は,「エレメント」がそのように特定されていない点。
(相違点2)本件発明14は,「前記加熱装置によって,前記導体に接する層の融点以上前記加熱装置に接する層の融点未満の温度で」加熱圧着することにより,「熱融着により接着する」のに対し,甲第1発明では,そのように特定されていない点。
(相違点3)本件発明14は,「フラットケーブル」及び「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」の製造方法と特定されているのに対し,甲第1発明では,「構造体」がそのように特定されていない点。
(相違点4)本件発明14は,「前記樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μm以下であって,前記高融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層の厚さは1μm以上であること」と特定されているのに対し,甲第1発明は,そのように特定されていない点。

(イ)判断
事案に鑑み,上記相違点3について最初に検討する。
上記相違点3は,本件発明1と甲第1発明との相違点1と実質的に同等の相違する事項を有するものであるから,本件発明14も,甲第1発明の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

よって,甲第1発明から,上記相違点3に係る本件発明14の構成とすることを,当業者が容易になし得たとはいえない。

以上のとおりであるから,他の相違点については検討するまでもなく,本件発明14は,上記甲第1号証に記載された技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許法第29条第2項について
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲第1発明を対比すると,その一致点及び相違点は,上記1(2)ア(ア)に示したとおりのものである。

(イ)相違点1について検討すると,甲第2ないし4,6ないし7,9号証には,「構造体」を「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」と特定することは記載されておらず,また「構造体」を「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」に用いることが,本件特許出願前に周知技術であったともいえないから,甲第1発明の「構造体」を,「車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル」に用いる動機付けは認められない。
そうすると,甲第1発明について,相違点1に係る本件発明1の構成とすることが容易であったとはいえない。

(ウ)したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本件発明1は,当業者であっても,甲第1号証ないし甲第9号証の記載に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

イ 本件発明2ないし9,13ないし14について
本件発明2ないし4,13ないし14も,本件発明1と甲第1発明との相違点1と実質的に同等の相違点を有するものであり,本件発明5ないし9は,本件発明1ないし4に対して技術的事項を追加したものであるから,甲第1号証ないし甲第9号証の記載に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

ウ 小括
したがって,特許異議申立人の主張する特許異議申立て理由を採用することはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,請求項1ないし9,13ないし14に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1ないし9,13ないし14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
なお,請求項10ないし12に係る特許は,上記第2の1のとおり,訂正により削除された。これにより,特許異議申立人による特許異議の申立てについて,請求項10ないし12に係る申立ては,申立ての対象が存在しないものとなったため,特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって,結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列した複数の導体と、前記導体の周囲を被膜する絶縁層とを有し、
前記絶縁層は複数の層を含んでおり、
前記絶縁層の最外層及び前記導体と接する最内層はいずれもポリフェニレンサルファイド系樹脂により構成されており、
前記最内層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点は、前記最外層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点より5℃以上低く、
前記最外層から前記最内層までを構成する樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μm以下であることを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル。
【請求項2】
配列した複数の光ファイバーと、前記光ファイバーの周囲を保護材料で被覆した保護層とを有し、前記保護層は複数の層を含んでおり、
前記保護層の最外層及び前記光ファイバーと接する最内層はいずれもポリフェニレンサルファイド系樹脂により構成されており、
前記最内層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点は、前記最外層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点より5℃以上低く、
前記最外層から前記最内層までを構成する樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μm以下であることを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル。
【請求項3】
配列した複数の導体と、前記導体の周囲を被膜する絶縁層とを有し、
前記絶縁層は複数の層を含んでおり、
前記絶縁層の最外層及び前記導体と接する最内層はいずれもポリフェニレンサルファイド系樹脂により構成されており、
前記最外層は架橋処理層であって、前記最内層は架橋未処理層であり、
前記最外層から前記最内層までを構成する樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μm以下であることを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル。
【請求項4】
配列した複数の光ファイバーと、前記光ファイバーの周囲を保護材料で被覆した保護層とを有し、前記保護層は複数の層を含んでおり、
前記保護層の最外層及び前記光ファイバーと接する最内層はいずれもポリフェニレンサルファイド系樹脂により構成されており、
前記最外層は架橋処理層であって、前記最内層は架橋未処理層であり、
前記最外層から前記最内層までを構成する樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μm以下であることを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルを内蔵することを特徴とする車両搭載用回転コネクタ。
【請求項6】
前記内蔵される車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルの外表面、及び外装ケースの内周面には、炭化水素系材料を含有する潤滑剤が塗工されていることを特徴とする請求項5に記載の車両搭載用回転コネクタ。
【請求項7】
前記内蔵される車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルの最小屈曲半径は、3mm以上8mm以下であることを特徴とする請求項5または6に記載の車両搭載用回転コネクタ。
【請求項8】
前記内蔵される車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルは5.5A以上の電流を通電可能であり、80℃以上250℃以下の耐熱性を有することを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の車両搭載用回転コネクタ。
【請求項9】
請求項1から2のいずれか1項に記載の車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルを製造する方法であって、
前記最内層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点以上、前記最外層を構成するポリフェニレンサルファイド系樹脂の融点未満の温度で、加熱圧着により前記最内層同士を熱融着することを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルの製造方法。
【請求項10】削除
【請求項11】削除
【請求項12】削除
【請求項13】
融点の異なるポリフェニレンサルファイド系樹脂を層状に含む2枚の樹脂フィルムを、導体を挟んで、熱融着により接着するフラットケーブルの製造方法であって、
前記導体に対して、低融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層が接し、熱融着に用いる加熱圧着装置に対して、高融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層が接するように、前記導体及び前記樹脂フィルムが送出される工程と、
前記送出された導体及び前記樹脂フィルムを、前記加熱装置によって、前記導体に接する層の融点以上前記加熱装置に接する層の融点未満の温度で、加熱圧着する工程と、
を有し、
前記樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μm以下であって、前記高融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層の厚さは1μm以上であることを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルの製造方法。
【請求項14】
融点の異なるポリフェニレンサルファイド系樹脂を層状に含む2枚の樹脂フィルムを、光ファイバーを挟んで、熱融着により接着するフラットケーブルの製造方法であって、
前記光ファイバーに対して、低融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層が接し、熱融着に用いる加熱圧着装置に対して、高融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層が接するように、前記光ファイバー及び前記樹脂フィルムが送出される工程と、
前記送出された導体及び前記樹脂フィルムを、前記加熱装置によって、前記光ファイバーに接する層の融点以上前記加熱装置に接する層の融点未満の温度で、加熱圧着する工程と、
を有し、
前記樹脂フィルムの厚さが5μm以上100μm以下であって、前記高融点のポリフェニレンサルファイド系樹脂から構成される層の厚さは1μm以上であることを特徴とする車両搭載回転コネクタ用フラットケーブルの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-07-28 
出願番号 特願2016-162514(P2016-162514)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (H01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 神田 太郎  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 ▲吉▼澤 雅博
小田 浩
登録日 2020-03-19 
登録番号 特許第6678540号(P6678540)
権利者 古河電気工業株式会社 古河AS株式会社
発明の名称 フラットケーブル、これを用いた回転コネクタ、及びフラットケーブルの製造方法  
代理人 松下 亮  
代理人 松下 亮  
代理人 松下 亮  
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