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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する G09G 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する G09G 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する G09G 審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する G09G |
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管理番号 | 1378089 |
審判番号 | 訂正2021-390067 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2021-04-14 |
確定日 | 2021-07-17 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6622893号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第6622893号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3、7〕について訂正することを認める。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6622893号(以下「本件特許」」という。)の請求項1?7に係る特許についての出願の特許出願までの経緯は次のとおりである。 平成14年 1月18日 : 特願2002-10766号(優先日:平成13年11月9日)の特許出願(以下、「原出願」という。) 平成20年 3月28日 : 原出願の一部の特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2008-87530号、以下「第1世代分割出願」という。) 平成24年 5月 2日 : 第1世代分割出願の一部の特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2012-105184号、以下「第2世代分割出願」という。) 平成25年11月20日 : 第2世代分割出願の一部の特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2013-239679号、以下「第3世代分割出願」という。) 平成26年 6月27日 : 第3世代分割出願の一部の特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2014-132514号、以下「第4世代分割出願」という。) 平成27年 5月26日 : 第4世代分割出願の一部の特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2015-106208号、以下「第5世代分割出願」という。) 平成28年 3月18日 : 第5世代分割出願の一部の特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2016-54981号、以下「第6世代分割出願」という。) 平成29年 9月 1日 : 第6世代分割出願の一部の特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2017-168422号、以下「第7世代分割出願」という。) 平成30年12月25日 : 第7世代分割出願の一部の特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2018-241382号) その後、令和1年11月29日にその特許権の設定登録がされ、令和1年12月18日に特許掲載公報が発行された。その特許についてのその後の経緯は、次のとおりである。 令和 2年 6月18日 : 特許異議申立人渡邉孝充による特許異議の申立て 令和 2年 9月 7日付け : 取消理由通知書 令和 2年10月23日 : 特許権者による意見書の提出及び訂正の請求 令和 2年12月17日 : 特許異議申立人渡邉孝充による意見書の提出 令和 3年 2月24日付け : 異議決定(訂正すべて認容。維持決定。) 令和 3年 4月14日 : 本件訂正審判請求 第2 請求の趣旨 本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第6622893号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。 第3 訂正の内容 請求人が求めている具体的な訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項のとおり訂正することを求めるものである(当審注:訂正箇所に下線を付した。)。 1 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「発光素子と、 前記発光素子の画素電極にソース又はドレインの一方が電気的に接続される第1のトランジスタと、 前記第1のトランジスタよりチャネル形成領域のチャネル長が短い第2のトランジスタと、 前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方に電気的に接続される第1の配線と、 前記第2のトランジスタのゲートに電気的に接続される第2の配線と、 前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方に電気的に接続され、前記第1のトランジスタのゲートと重なりを有する第3の配線と、を有し、 前記第3の配線は、 少なくとも前記第1の配線より線幅が大きい領域を有する発光装置。」 と記載されているのを、 「発光素子と、 前記発光素子の画素電極にソース又はドレインの一方が電気的に接続される電流制御用TFTと、 前記電流制御用TFTよりチャネル形成領域のチャネル長が短いスイッチング用TFTと、 前記スイッチング用TFTのソース又はドレインの一方に電気的に接続されるソース配線と、 前記スイッチング用TFTのゲートに電気的に接続されるゲート配線と、 前記電流制御用TFTのソース又はドレインの他方に電気的に接続され、前記電流制御用TFTのゲートと重なりを有する電源供給線と、を有し、 前記電源供給線は、少なくとも前記ソース配線より線幅が大きい領域を有する発光装置。」 に訂正する。 2 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「発光素子と、 前記発光素子の陽極にソース又はドレインの一方が電気的に接続される第1のトランジスタと、 前記第1のトランジスタよりチャネル形成領域のチャネル長が短い第2のトランジスタと、 前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方に電気的に接続される第1の配線と、 前記第2のトランジスタのゲートに電気的に接続される第2の配線と、 前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方に電気的に接続され、前記第1のトランジスタのゲートと重なりを有する第3の配線と、を有し、 前記第3の配線は、少なくとも前記第1の配線より線幅が大きい領域を有する発光装置。」 と記載されているのを、 「発光素子と、 前記発光素子の陽極にソース又はドレインの一方が電気的に接続される電流制御用TFTと、 前記電流制御用TFTよりチャネル形成領域のチャネル長が短いスイッチング用TFTと、 前記スイッチング用TFTのソース又はドレインの一方に電気的に接続されるソース配線と、 前記スイッチング用TFTのゲートに電気的に接続されるゲート配線と、 前記電流制御用TFTのソース又はドレインの他方に電気的に接続され、前記電流制御用TFTのゲートと重なりを有する電源供給線と、を有し、 前記電源供給線は、少なくとも前記ソース配線より線幅が大きい領域を有する発光装置。」 に訂正する。 3 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、 「発光素子と、 前記発光素子の陰極にソース又はドレインの一方が電気的に接続される第1のトランジスタと、 前記第1のトランジスタよりチャネル形成領域のチャネル長が短い第2のトランジスタと、 前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方に電気的に接続される第1の配線と、 前記第2のトランジスタのゲートに電気的に接続される第2の配線と、 前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方に電気的に接続され、前記第1のトランジスタのゲートと重なりを有する第3の配線と、を有し、 前記第3の配線は、少なくとも前記第1の配線より線幅が大きい領域を有する発光装置。」 と記載されているのを、 「発光素子と、 前記発光素子の陰極にソース又はドレインの一方が電気的に接続される電流制御用TFTと、 前記電流制御用TFTよりチャネル形成領域のチャネル長が短いスイッチング用TFTと、 前記スイッチング用TFTのソース又はドレインの一方に電気的に接続されるソース配線と、 前記スイッチング用TFTのゲートに電気的に接続されるゲート配線と、 前記電流制御用TFTのソース又はドレインの他方に電気的に接続され、前記電流制御用TFTのゲートと重なりを有する電源供給線と、を有し、 前記電源供給線は、少なくとも前記ソース配線より線幅が大きい領域を有する発光装置。」 に訂正する。 4 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7に、 「請求項1乃至請求項6のいずれか一において、 前記第1のトランジスタのチャネル形成領域は、少なくとも一つ以上の角部を有する発光装置。」 と記載されているのを、 「請求項4乃至請求項6のいずれか一において、 前記第1のトランジスタのチャネル形成領域は、少なくとも一つ以上の角部を有する発光装置。」 に訂正する。 第4 当審の判断 1 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否について (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、請求項1において、「第1のトランジスタ」、「第2のトランジスタ」、「第1の配線」、「第2の配線」、及び「第3の配線」について、それぞれ、「電流制御用TFT」、「スイッチング用TFT」、「ソース配線」、「ゲート配線」、及び「電源供給線」に限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて (ア)本件特許の願書に添付した明細書の段落【0065】には、「図5において、半導体層101は、スイッチング用TFTの活性層となる層であり、ゲート配線105と重なる領域がチャネル形成領域、ソース配線104と接続する領域がソース領域(またはドレイン領域)、接続電極103と接続する領域がドレイン領域(またはソース領域)である。なお、スイッチング用TFTは、2つのチャネル形成領域を有するダブルゲート構造である。」と、段落【0066】には、「また、半導体層102は、OLEDに電流を供給するTFTの活性層となる層であり、ゲート電極100と重なる領域がチャネル形成領域である。OLEDに電流を供給するTFTのゲート電極100は、接続電極103と接続している。また、OLEDに電流を供給するTFTのソース領域(またはドレイン領域)と電源供給線106とが接続され、OLEDに電流を供給するTFTのドレイン領域(またはソース領域)と接続電極108とが接続され、該接続電極108と接して画素電極107が形成されている。また、ゲート電極100の上方には、電源供給線106と、隣合う画素のソース配線とが一部重なるように配置されている。なお、半導体層102のうち、ゲート電極100とゲート絶縁膜を介して重なるチャネル形成領域の上方には、電源供給線106と、隣合う画素のソース配線とが一部重なるように配置されている。このゲート電極100と電源供給線106との間で形成される容量は、全てEL素子の保持容量として利用することができる。従って、このゲート電極100と電源供給線106との間で形成される容量で必要とされる保持容量をある程度確保することができる。」と、段落【0067】には、「また、図6は、図5に対応する上面図であり、半導体層101、102とゲート配線105、ゲート電極100を形成した段階での図である。半導体層102がゲート電極100とゲート絶縁膜(図示しない)を介して重なる領域、即ちチャネル形成領域を図6中の点線で示している。」と、段落【0068】には、「本発明は、OLEDに電流を供給するTFTのチャネル形成領域の長さ(チャネル長L)が格段に長いTFT(L=100μm?500μm、ここでは500μm)とし、従来よりも格段に高いゲート電圧値でオン状態として駆動させ、チャネルコンダクタンスgdの低いTFT(gd=0?1×10^(-8)S、好ましくは5×10^(-9)S以下、ここでは2×10^(-9)S以下)を提供することを特徴としている。」と、段落【0108】には、「その後、Al、Ti、Mo、Wなどを用いて電極335?341、具体的にはソース配線、電源供給線、引き出し電極及び接続電極などを形成する。・・・また、先に形成された画素電極334と接して重なるよう設けられた接続電極341は、電流制御用TFT404のドレイン領域に接している。」と記載されている(当審注:下線は当審で付加した。以下同じ。)。 また、図5ないし図8は、以下のとおりのものである。 【図5】 ![]() 【図6】 ![]() 【図7】 ![]() 【図8】 ![]() (イ)訂正事項1による訂正後の請求項1における「前記発光素子の画素電極にソース又はドレインの一方が電気的に接続される電流制御用TFT」に関連して、訂正前の上記段落【0066】、【0108】、図5、7、8には、「画素電極107、334にドレインが(接続電極108、341を介して)電気的に接続される電流制御用TFT404、702」が記載されている。 (ウ)訂正事項1による訂正後の請求項1における「前記電流制御用TFTよりチャネル形成領域のチャネル長が短いスイッチング用TFT」に関連して、訂正前の上記段落【0068】には、「チャネル形成領域のチャネル長が格段に長い電流制御用TFT」が記載されている。 (エ)訂正事項1による訂正後の請求項1における「前記スイッチング用TFTのソース又はドレインの一方に電気的に接続されるソース配線」に関連して、訂正前の上記段落【0065】、図5、8には、「スイッチング用TFT403、701のソースに電気的に接続されるソース配線104、704」が記載されている。 (オ)訂正事項1による訂正後の請求項1における「前記スイッチング用TFTのゲートに電気的に接続されるゲート配線」に関連して、訂正前の上記段落【0065】、図5、8には、「スイッチング用TFT701のゲートに電気的に接続されるゲート配線105、705」が記載されている。 (カ)訂正事項1による訂正後の請求項1における「前記電流制御用TFTのソース又はドレインの他方に電気的に接続され、前記電流制御用TFTのゲートと重なりを有する電源供給線」に関連して、訂正前の上記段落【0066】、図5、7、8、には、「電流制御用TFT404、702のソースに電気的に接続され、電流制御用TFTのゲート100と重なりを有する電源供給線106、340、706R、706G、706B」が記載されている。 (キ)訂正事項1による訂正後の請求項1における「前記電源供給線は、少なくとも前記ソース配線より線幅が大きい領域を有する」との記載に関連して、訂正前の上記段落【0065】、図5には、「電源供給線106は、少なくともソース配線104より線幅が大きい領域を有する」との構成が記載されている。 (ク)したがって、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、本件特許の願書に添付した明細書を「本件特許明細書」という。また、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面を「本件特許明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものでない。 したがって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって、訂正事項1は、特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて 訂正事項1は、請求項1において、発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 よって、訂正事項1は、特許法第126条第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、請求項2において、「第1のトランジスタ」、「第2のトランジスタ」、「第1の配線」、「第2の配線」、及び「第3の配線」について、それぞれ、「電流制御用TFT」、「スイッチング用TFT」、「ソース配線」、「ゲート配線」、及び「電源供給線」に限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて (ア)本件特許の願書に添付した明細書及び図面には、上記(1)イ(ア)に記載したとおりの記載がある。 (イ)また、同明細書の段落【0106】には、「次いで、pチャネル型TFTからなる電流制御用TFT404のドレイン領域に接して後で形成される接続電極に接して重なるよう画素電極334を形成する。本実施例では、画素電極はOLEDの陽極として機能させ、OLEDの発光を画素電極に通過させるため、透明導電膜とする。」と記載されている。 (ウ)訂正事項2による訂正後の請求項2における「前記発光素子の陽極にソース又はドレインの一方が電気的に接続される電流制御用TFT」に関連して、訂正前の上記段落【0066】、【0106】、【0108】、図5、7、8には、「発光素子の陽極として機能する画素電極107、334にドレインが(接続電極108、341を介して)電気的に接続される電流制御用TFT404、702」が記載されている。 (エ)訂正前の明細書及び図面には、上記(1)イの(ウ)?(キ)のとおりの記載があるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、訂正事項2による訂正後の請求項2における、「前記電流制御用TFTよりチャネル形成領域のチャネル長が短いスイッチング用TFT」、「前記スイッチング用TFTのソース又はドレインの一方に電気的に接続されるソース配線」、「前記スイッチング用TFTのゲートに電気的に接続されるゲート配線」、「前記電流制御用TFTのソース又はドレインの他方に電気的に接続され、前記電流制御用TFTのゲートと重なりを有する電源供給線」、及び「前記電源供給線は、少なくとも前記ソース配線より線幅が大きい領域を有する」ことが記載されている。 (オ)したがって、訂正事項2は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものでない。 したがって、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって、訂正事項2は、特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて 訂正事項2は、請求項2において、発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 よって、訂正事項2は、特許法第126条第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的について 訂正事項3は、請求項3において、「第1のトランジスタ」、「第2のトランジスタ」、「第1の配線」、「第2の配線」、及び「第3の配線」について、それぞれ、「電流制御用TFT」、「スイッチング用TFT」、「ソース配線」、「ゲート配線」、及び「電源供給線」に限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて (ア)本件特許の願書に添付した明細書及び図面には、上記(1)イ(ア)に記載したとおりの記載がある。 (イ)a 同明細書の段落【0039】には、「また、図3、図4に示したようにnチャネル型TFTよりもバラツキが低減されているpチャネル型TFTにOLEDに電流を供給するTFT用いることが好ましいが、本発明は、OLEDに電流を供給するTFTがnチャネル型TFTであってもpチャネル型TFTであってもよい。例えば、OLEDに電流を供給するTFTをpチャネル型TFTとする場合、図10(A)に示すような接続を行えばよい。また、例えば、OLEDに電流を供給するTFTをnチャネル型TFTとする場合、図10(B)に示すような接続を行えばよい。」と記載されている。 また、同図10(A)、(B)は、以下のとおりのものである。 図10(B)から、発光素子の陰極にソース又はドレインの一方が電気的に接続されたトランジスタが見てとれる。 【図10】 ![]() b 同明細書の段落【0139】には、「また、画素電極を陰極とし、有機化合物層と、透光性を有する陽極とを積層して図14とは逆方向に発光する構成としてもよい。また、画素電極を陽極とし、有機化合物層と陰極を積層して図14とは逆方向に発光する構成としてもよい。図15にその一例を示す。なお、上面図は同一であるので省略する。」と記載されている。 また、図15は、以下のとおりのものである。 図15から、画素電極(陰極)612にソース又はドレインの一方が接続された電流制御用TFT611が見てとれる。 【図15】 ![]() c したがって、本件特許の願書に添付した明細書及び図面には、訂正事項3による訂正後の請求項3における、「発光素子の陰極として機能する画素電極にソース又はドレインが電気的に接続される電流制御用TFT」が記載されている。 (ウ)訂正前の明細書及び図面には、上記(1)イの(ウ)?(キ)のとおりの記載があるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、訂正事項3による訂正後の請求項3における、「前記電流制御用TFTよりチャネル形成領域のチャネル長が短いスイッチング用TFT」、「前記スイッチング用TFTのソース又はドレインの一方に電気的に接続されるソース配線」、「前記スイッチング用TFTのゲートに電気的に接続されるゲート配線」、「前記電流制御用TFTのソース又はドレインの他方に電気的に接続され、前記電流制御用TFTのゲートと重なりを有する電源供給線」、及び「前記電源供給線は、少なくとも前記ソース配線より線幅が大きい領域を有する」ことが記載されている。 (エ)したがって、訂正事項3は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものでない。 したがって、訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって、訂正事項3は、特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて 訂正事項3は、請求項3において、発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 よって、訂正事項3は、特許法第126条第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的について 訂正事項4は、訂正後の請求項7について、引用請求項から「請求項1乃至3」を除くものであるから、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 したがって、訂正事項4は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて 訂正事項4は、訂正後の請求項7について、引用請求項から「請求項1乃至3」を除くものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって、訂正事項4は、特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて 訂正事項4は、訂正後の請求項7について、引用請求項から「請求項1乃至3」を除くものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 よって、訂正事項4は、特許法第126条第6項の規定に適合する。 2 一群の請求項についての訂正の可否について 訂正前の請求項1について、請求項7は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1及び7に対応する訂正後の請求項1及び7は、特許法第126条第3項に規定する一群の請求項である。 訂正前の請求項2について、請求項7は請求項2を引用しているものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項2及び7に対応する訂正後の請求項2及び7は、特許法第126条第3項に規定する一群の請求項である。 訂正前の請求項3について、請求項7は請求項3を引用しているものであって、訂正事項3によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項3及び7に対応する訂正後の請求項3及び7は、特許法第126条第3項に規定する一群の請求項である。 以上、3つの一群の請求項が特定されるが、これらは請求項7を共通に有しており、組み合わされる。したがって、請求項1、2、3及び7が1つの一群の請求項である。 よって、本件訂正は、特許法第126条第3項の規定に適合する。 3 独立特許要件について 上記1(1)ア?(4)アで検討したとおり、訂正事項1?4は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、本件訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討すると、当該発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 したがって、本件訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、訂正事項1?4は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 第5 むすび 以上のとおり、訂正事項1?4は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同法同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 発光素子と、 前記発光素子の画素電極にソース又はドレインの一方が電気的に接続される電流制御用TFTと、 前記電流制御用TFTよりチャネル形成領域のチャネル長が短いスイッチング用TFTと、 前記スイッチング用TFTのソース又はドレインの一方に電気的に接続されるソース配線と、 前記スイッチング用TFTのゲートに電気的に接続されるゲート配線と、 前記電流制御用TFTのソース又はドレインの他方に電気的に接続され、前記電流制御用TFTのゲートと重なりを有する電源供給線と、を有し、 前記電源供給線は、少なくとも前記ソース配線より線幅が大きい領域を有する発光装置。 【請求項2】 発光素子と、 前記発光素子の陽極にソース又はドレインの一方が電気的に接続される電流制御用TFTと、 前記電流制御用TFTよりチャネル形成領域のチャネル長が短いスイッチング用TFTと、 前記スイッチング用TFTのソース又はドレインの一方に電気的に接続されるソース配線と、 前記スイッチング用TFTのゲートに電気的に接続されるゲート配線と、 前記電流制御用TFTのソース又はドレインの他方に電気的に接続され、前記電流制御用TFTのゲートと重なりを有する電源供給線と、を有し、 前記電源供給線は、少なくとも前記ソース配線より線幅が大きい領域を有する発光装置。 【請求項3】 発光素子と、 前記発光素子の陰極にソース又はドレインの一方が電気的に接続される電流制御用TFTと、 前記電流制御用TFTよりチャネル形成領域のチャネル長が短いスイッチング用TFTと、 前記スイッチング用TFTのソース又はドレインの一方に電気的に接続されるソース配線と、 前記スイッチング用TFTのゲートに電気的に接続されるゲート配線と、 前記電流制御用TFTのソース又はドレインの他方に電気的に接続され、前記電流制御用TFTのゲートと重なりを有する電源供給線と、を有し、 前記電源供給線は、少なくとも前記ソース配線より線幅が大きい領域を有する発光装置。 【請求項4】 発光素子と、 前記発光素子の画素電極にソース又はドレインの一方が電気的に接続され、飽和領域で動作する第1のトランジスタと、 前記第1のトランジスタよりチャネル形成領域のチャネル長が短い第2のトランジスタと、 前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方に電気的に接続される第1の配線と、 前記第2のトランジスタのゲートに電気的に接続される第2の配線と、 前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方に電気的に接続され、前記第1のトランジスタのゲートと重なりを有する第3の配線と、を有し、 前記第3の配線は、少なくとも前記第1の配線より線幅が大きい領域を有する発光装置。 【請求項5】 発光素子と、 前記発光素子の陽極にソース又はドレインの一方が電気的に接続され、飽和領域で動作する第1のトランジスタと、 前記第1のトランジスタよりチャネル形成領域のチャネル長が短い第2のトランジスタと、 前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方に電気的に接続される第1の配線と、 前記第2のトランジスタのゲートに電気的に接続される第2の配線と、 前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方に電気的に接続され、前記第1のトランジスタのゲートと重なりを有する第3の配線と、を有し、 前記第3の配線は、少なくとも前記第1の配線より線幅が大きい領域を有する発光装置。 【請求項6】 発光素子と、 前記発光素子の陰極にソース又はドレインの一方が電気的に接続され、飽和領域で動作する第1のトランジスタと、 前記第1のトランジスタよりチャネル形成領域のチャネル長が短い第2のトランジスタと、 前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方に電気的に接続される第1の配線と、 前記第2のトランジスタのゲートに電気的に接続される第2の配線と、 前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方に電気的に接続され、前記第1のトランジスタのゲートと重なりを有する第3の配線と、を有し、 前記第3の配線は、少なくとも前記第1の配線より線幅が大きい領域を有する発光装置。 【請求項7】 請求項4乃至請求項6のいずれか一において、 前記第1のトランジスタのチャネル形成領域は、少なくとも一つ以上の角部を有する発光装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2021-06-21 |
結審通知日 | 2021-06-23 |
審決日 | 2021-07-07 |
出願番号 | 特願2018-241382(P2018-241382) |
審決分類 |
P
1
41・
851-
Y
(G09G)
P 1 41・ 855- Y (G09G) P 1 41・ 856- Y (G09G) P 1 41・ 841- Y (G09G) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 岩本 勉 |
特許庁審判長 |
辻本 泰隆 |
特許庁審判官 |
恩田 春香 渡部 博樹 |
登録日 | 2019-11-29 |
登録番号 | 特許第6622893号(P6622893) |
発明の名称 | 発光装置 |
代理人 | 蟹田 昌之 |
代理人 | 蟹田 昌之 |