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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する C12N
管理番号 1378094
審判番号 訂正2021-390066  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2021-04-13 
確定日 2021-07-28 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6788500号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6788500号の明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔25?46〕について、訂正することを認める。 
理由
第1 手続の経緯
本件特許第6788500号に係る出願(特願2016-525904号)は、平成26年10月22日を国際出願日(パリ条約による優先権主張 2013年10月23日 米国)として出願されたものであって、その請求項1?56に係る発明について令和2年11月4日に特許権の設定登録がなされた。
これについて、令和3年4月13日に本件訂正審判が請求された。


第2 請求の趣旨および訂正の内容
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第6788500号に係る明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項25?46及び訂正明細書の段落[0043]、[0073]及び[0190]について訂正することを認める、との審決を求めるものである。
そして、本件訂正審判の請求による訂正の内容は、下記訂正事項1?5のとおりである。

1.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項25における、
「MUC1抗原が、野生型MUC1のアミノ酸配列に関して更に:T93、A161、P162、G169、S170、T171、A392、C406、T444、D445、及びS460の位置にアミノ酸置換を含む、請求項24の酵母-MUC1免疫療法組成物。」
との記載を、
「MUC1抗原が、野生型MUC1のアミノ酸配列に関して更に:T93、A141、P142、G149、S150、T151、A392、C406、T444、D445、及びS460の位置にアミノ酸置換を含む、請求項24の酵母-MUC1免疫療法組成物。」
に訂正する(請求項25の記載を引用する請求項26?46も同様に訂正する)。

2.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項27における、
「MUC1抗原が、野生型MUC1のアミノ酸配列に関して更に以下:T93L、A161Y、P162L、G169V、S170Y、T171L、A392Y、C404A、C406V、T444L、D445F、及びS460Yから選択されるアミノ酸置換を含む、請求項24?26のいずれか1項の酵母-MUC1免疫療法組成物。」
との記載を、
「MUC1抗原が、野生型MUC1のアミノ酸配列に関して更に以下:T93L、A141Y、P142L、G149V、S150Y、T151L、A392Y、C404A、C406V、T444L、D445F、及びS460Yから選択されるアミノ酸置換を含む、請求項24?26のいずれか1項の酵母-MUC1免疫療法組成物。」
に訂正する(請求項27の記載を引用する請求項28?46も同様に訂正する)。

3.訂正事項3
明細書段落[0043]における、
「A161、P162、G169、S170、T171」
との記載を、
「A141、P142、G149、S150、T151」
に訂正するとともに、同じく明細書段落[0043]における、
「A161Y、P162L、G169V、S170Y、T171L」
との記載を、
「A141Y、P142L、G149V、S150Y、T151L」
に訂正する。

4.訂正事項4
明細書段落[0073]における、
「A232Y(野生型MUC1における161位)、P233L(野生型MUC1における162位)、G240V(野生型MUC1における169位)、S241Y(野生型MUC1における170位)、T242L(野生型MUC1における171位)」
との記載を、
「A232Y(野生型MUC1における141位)、P233L(野生型MUC1における142位)、G240V(野生型MUC1における149位)、S241Y(野生型MUC1における150位)、T242L(野生型MUC1における151位)」
に訂正する。

5.訂正事項5
明細書段落[0190]における、
「A232Y(野生型MUC1中161位)、P233L(野生型MUC1中162位)、G240V、(野生型MUC1中169位)、S241Y(野生型MUC1中170位)、T242L(野生型MUC1中171位)」
との記載を、
「A232Y(野生型MUC1中141位)、P233L(野生型MUC1中142位)、G240V、(野生型MUC1中149位)、S241Y(野生型MUC1中150位)、T242L(野生型MUC1中151位)」
に訂正する。


第3 当審の判断
1 願書に添付した特許請求の範囲及び明細書の記載事項
願書に添付した特許請求の範囲及び明細書には、特に配列番号14、16のアミノ酸配列について、次の事項が記載されている。下線は当審による。

(1)特許請求の範囲
ア 「酵母-MUC1免疫療法組成物であって:
(a)酵母ビヒクル;及び
(b)少なくとも1のMUC1抗原を含む、融合タンパク質であって、MUC1抗原が、野生型MUC1のアミノ酸配列に関して以下:T422K、P430A、及びT431Lのアミノ酸置換によって配列番号14を有する野生型MUC1タンパク質のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有する、融合タンパク質
を含む、免疫療法組成物。」(請求項24)

(2)明細書
イ 「1つの実施形態においては、本発明における使用に好適なMUC1アゴニスト抗原は、少なくとも1、2、…又はそれ以上のアミノ酸置換により、野生型(天然)のMUC1タンパク質若しくはポリペプチド又はそれらのペプチドとは異なるアミノ酸配列を有する、MUC1タンパク質若しくはポリペプチド又はそれらのペプチドを含み、該アミノ酸置換は、抗原に1以上のMUC1アゴニストエピトープを導入する。かかるアミノ酸置換としては、以下:T93、A161、P162、G169、S170、T171、A392、C406、T422、P430、T431、T444、D445、S460、S462、及び/又はA470、のアミノ酸位置における置換が挙げられ得る(置換の位置は、受入番号NP_001191214(配列番号14)で表されるアミノ酸配列を有する野生型MUC1に関して提供される(しかし、同一又は同等の位置は、容易に他のいずれかの野生型MUC1配列内で同定し得る))。1つの実施形態においては、置換は:T93L、A161Y、P162L、G169V、S170Y、T171L、A392Y、C406V、T422K、P430A、T431L、T444L、D445F、S460Y、S462K、及び/又はA470Lである。」([0043])

ウ 「テンプレートとして用いられる野生型MUC1タンパク質と比較して、配列番号16の配列は、以下:(配列番号16を参照し、配列番号14に対応する、受入番号NP_001191214で表される野生型MUC1の置換位置を、括弧内に更に参照して示された置換位置):T184L(野生型MUC1における93位)、A232Y(野生型MUC1における161位)、P233L(野生型MUC1における162位)、G240V(野生型MUC1における169位)、S241Y(野生型MUC1における170位)、T242L(野生型MUC1における171位)…のアミノ酸置換を含有する。」([0073])

エ 「簡潔に述べると、N末端からC末端にインフレームで融合された以下:(1)配列番号17のα因子リーダー配列(配列番号16の1位?89位に対応);(2)リンカー配列Thr-Ser(配列番号16の90位?91位に対応);(3)15アミノ酸のアゴニスト置換及び1の不活性置換の導入を除いて、野生型タンパク質に一致する全長MUC1アゴニストタンパク質(配列番号16の92位?566位に対応);及び(4)ヘキサペプチドヒスチジンタグ(配列番号16の567位?572位に対応)、の配列要素を有する単一のポリペプチドとして、配列番号16で表される、MUC1アゴニスト抗原を含む融合タンパク質を製造した。配列番号16は、配列番号15(酵母の発現のためにコドンを最適化)で表される塩基配列によりコードされる。…テンプレートとして用いられた野生型MUC1タンパク質と比較して、配列番号16は、以下:(配列番号16を参照し、括弧内で、配列番号14と同定された受入番号NP_001191214で表される野生型MUC1における置換の位置を更に参照し、置換位置を示す):T184L(野生型MUC1中93位)、A232Y(野生型MUC1中161位)、P233L(野生型MUC1中162位)、G240V、(野生型MUC1中169位)、S241Y(野生型MUC1中170位)、T242L(野生型MUC1中171位)、…のアミノ酸置換を含有する。」( [0190])

オ 「Ala Pro Asp Thr Arg Pro Ala Pro Gly Ser Thr … Ala Pro Asp Asn Arg Pro Ala Leu Gly Ser Thr」(配列表の配列番号14の141位?151位及び161位?171位)

カ 「Tyr Leu Asp Thr Arg Pro Ala Pro Val Tyr Leu … Ala Pro Asp Asn Arg Pro Ala Leu Gly Ser Thr」(配列表の配列番号16の232位?242位及び252位?262位)


2 訂正事項についての判断
(1)訂正の目的について
審判請求人は、訂正事項1?5は、いずれも、配列番号16のアミノ酸配列の特定のアミノ酸位置に対応する配列番号14のアミノ酸位置に関して、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである旨説明している。
以下、それぞれの訂正事項の内容に鑑み、訂正事項4及び5、訂正事項1?3の順で検討する。

ア 訂正事項4及び5
訂正事項4及び5はいずれも、配列番号16のアミノ酸配列の特定のアミノ酸位置に対応する配列番号14のアミノ酸位置の訂正に関するものである。
ここで、前記1(2)イ?エのとおり、配列番号14は野生型MUC1に係るアミノ酸配列であり、配列番号16は、その92位?566位に、15アミノ酸のアゴニスト置換と1の不活性置換が導入された全長野生型MUC1であるMUC1アゴニスト抗原を含む融合タンパク質のアミノ酸配列であり、すなわち配列番号16の92位が配列番号14の1位に対応する。
そのため、配列番号16の232位以降が配列番号14の141位以降に対応するところ、前記1(2)オ及びカから明らかであるとおり、アラニンからチロシン、プロリンからロイシン、グリシンからバリン、セリンからチロシン、チロシンからロイシンへの置換がそれぞれ生じているのは、配列番号16の232位(配列番号14の141位)、233位(同142位)、240位(同149位)、241位(同150位)、242位(同151位)の位置であって、明細書段落[0073]及び[0190]に記載されるような配列番号14の161位、162位、169位、170位、171位(前記1(2)ウ及びエ参照)ではない。また、配列番号14と配列番号16の対応部分(92位?566位、前記1(2)エ参照)との間で、配列番号14の141位、142位、149位、150位、151位以外に、これらの特定のアミノ酸置換が生じていると認められる位置は見当たらない。
そうすると、訂正事項4に係る明細書段落[0073]の配列番号16に関する「A232Y(野生型MUC1における161位)、P233L(野生型MUC1における162位)、G240V(野生型MUC1における169位)、S241Y(野生型MUC1における170位)、T242L(野生型MUC1における171位)」が「A232Y(野生型MUC1における141位)、P233L(野生型MUC1における142位)、G240V(野生型MUC1における149位)、S241Y(野生型MUC1における150位)、T242L(野生型MUC1における151位)」の誤記であり、また、訂正事項5に係る明細書段落[0190]の配列番号16に関する「A232Y(野生型MUC1中161位)、P233L(野生型MUC1中162位)、G240V、(野生型MUC1中169位)、S241Y(野生型MUC1中170位)、T242L(野生型MUC1中171位)」が「A232Y(野生型MUC1中141位)、P233L(野生型MUC1中142位)、G240V、(野生型MUC1中149位)、S241Y(野生型MUC1中150位)、T242L(野生型MUC1中151位)」の誤記であることは、当業者にとって明らかである。
したがって、訂正事項4及び5はいずれも、配列番号16のアミノ酸配列の特定のアミノ酸位置に対応する配列番号14のアミノ酸位置の誤りを訂正するものであり、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定される誤記の訂正を目的とするものである。

イ 訂正事項1?3
訂正事項1は、請求項25において引用される請求項24の記載(前記1(1)ア)からみて、配列番号14で表される野生型MUC1におけるアミノ酸位置に関して、置換を有する5つのアミノ酸位置を訂正事項4及び5と同様に「A161、P162、G169、S170、T171」から「A141、P142、G149、S150、T151」に訂正するものである。訂正事項3の前段についても同様である。
訂正事項2は、請求項27において引用される請求項24の記載(前記1(1)ア)からみて、配列番号14で表される野生型MUC1におけるアミノ酸位置に関して、特定のアミノ酸への置換を有する5つのアミノ酸位置を訂正事項4及び5と同様に「A161Y、P162L、G169V、S170Y、T171L」から「A141Y、P142L、G149V、S150Y、T151L」に訂正するものである。訂正事項3の後段についても同様である。
これらの点について、上記アで示したとおり、融合タンパク質中の野生型MUC1に置換を導入したMUC1抗原に上記のとおりの誤りがあることは明らかであるから、上記アと同様に、訂正事項1に係る請求項25及び訂正事項3の前段に係る明細書段落[0043]における「A161、P162、G169、S170、T171」が「A141、P142、G149、S150、T151」の誤記であり、また、訂正事項2に係る請求項27及び訂正事項3の後段に係る明細書段落[0043]における「A161Y、P162L、G169V、S170Y、T171L」が「A141Y、P142L、G149V、S150Y、T151L」の誤記であることは、当業者にとって明らかである。
したがって、訂正事項1から3は、配列番号16のアミノ酸配列の特定のアミノ酸位置に対応する配列番号14のアミノ酸位置の誤りを訂正するものであり、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定される誤記の訂正を目的とするものである。

ウ 小括
よって、訂正事項1?5はいずれも、配列番号16のアミノ酸配列の特定のアミノ酸位置に対応する配列番号14のアミノ酸位置の誤りを訂正するものであり、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定される誤記の訂正を目的とするものである。

(2)国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1?5はいずれも、配列番号16のアミノ酸配列の特定のアミノ酸位置に対応する配列番号14のアミノ酸位置に関して訂正するものであり、これらの配列は、2014(平成26)年10月22日に米国に国際特許出願(外国語書面出願)された外国語書面(国際公開第2015/061416号)の一部を構成する配列表「SEQUENCE LISTING」の配列番号14及び配列番号16の記載に基づくものであるから、訂正事項1?5は、国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものといえる。
したがって、訂正事項1?5は、特許法第126条第5項に規定する要件に適合する。

(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
前記(1)の理由から明らかなように、訂正事項1?5は、単に誤記を訂正することで、本来その意であることが明らかな内容に正すものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に規定する要件に適合する。

(4)独立特許要件について
前記(1)及び(3)で検討したとおり、訂正事項1?5は、特許請求の範囲に記載される技術的事項を変更するものではないから、訂正後の特許請求の範囲の請求項25?46に記載された発明は、特許された発明と同一であり、訂正後の特許請求の範囲の請求項25?46に記載された事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見当たらない。
したがって、訂正事項1?5は、特許法第126条第7項に規定する要件に適合する。


第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第5項ないし第7項に規定する要件に適合する。
よって、結論のとおり審決する。


 
発明の名称 (54)【発明の名称】
MUC1-C癌タンパク質のHLA-A24アゴニストエピトープ及び組成物及び使用方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2013年10月23日出願の米国仮特許出願第61/894,482号(参照により組み込まれる)の利益を主張する。
【0002】
配列表
本明細書と同時提出の、ヌクレオチド/アミノ酸の配列表は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
MUC1(CD227)は、大型のN末端サブユニット(MUC1-N)が、小型のC末端サブユニット(MUC1-C)に共有結合したヘテロダイマーから構成される、I型膜糖タンパク質である。
【0004】
N末端サブユニット(MUC1-N)は、可変数のタンデムリピート領域(VNTR)及び非VNTR領域から成る、大型の細胞外ドメインである。MUC1-Nは、細胞から放出され、進行がんに罹った患者の循環血液中に見出され得る。MUC1-Nは、乳癌患者における腫瘍マーカー(CA15.3)として用いられる(Hayes et al.,J.Clin.Oncol.,4:1542-50(1986)参照)。
【0005】
MUC1のC末端領域(MUC1-C)には独特の3部分:MUC1-Nに共有結合している小型の細胞外ドメイン、1回膜貫通型ドメイン、及び細胞質尾部、がある(Lan et al.,J.Biol.Chem.,265:15294-9(1990)参照)。細胞質尾部は、βカテニン、上皮成長因子受容体(EGFR)、及びSrc等のシグナル伝達タンパク質との相互作用のための部位を含有する(Li et al.,J.Biol.Chem.,276:35239-42(2001)参照)。これらのタンパク質は、健全な細胞の側底部に位置しているため、タンパク質-MUC1相互作用が顕著であるとは考えられない。しかしながら、ヒト腫瘍細胞における極性の喪失は、細胞質尾部がシグナル伝達タンパク質に曝露されることを可能にし、相互作用が生じ得る(Vermeer et al.,Nature,422:322-6(2003)参照)。
【0006】
MUC1-C領域は、癌遺伝子として作用することが示されており、MUC1-Cがβ-カテニンに結合する場合、ヒト細胞の形質転換につながる(Li et al.,Oncogene,22:6107-10(2003);Raina et al.,Cancer Res.,69:5133-41(2009);及びWei et al.,Cancer Res.,67:1853-8(2007)参照)。また、MUC1-Cトランスフェクションは、形質転換を誘導し、増殖速度の増大、足場非依存性細胞増殖、化学療法剤に対する抵抗性等の、以前は全長MUC1タンパク質に起因すると考えられた発癌活性を付与するのに十分であることが実証されている(Ren et al.,Cancer Cell.5:163-75(2004)参照)。更に、c-Srcによって活性化されるMUC1-Cシグナル伝達は、癌細胞の運動性、浸潤、及び転移を刺激する、E-カドヘリン接着結合及びインテグリン接着斑の両方の破壊に関与し、それによって、上皮間葉転換(EMT)においてあり得る、MUC1-Cの役割が示唆される(Hu et al.,Expert Rev.Anticancer Ther.,6:1261-71(2006)参照)。MUC1に関連する遺伝子の過剰発現は、肺癌及び乳癌並びに薬物耐性を患う患者における予後不良と高度に関連することも見出されている(Ren et al.,上記;及びKhodarev et al.,Cancer Res.,69:2833-7(2009)参照)。
【0007】
多くの臨床試験で、様々なヒト腫瘍の、ワクチン療法のための標的候補として、MUC1が評価された。これらの大部分では、VNTR領域のポリペプチドを用いてきた。1のアゴニストエピトープ(P93L)が、天然エピトープと比較して、より効率的にヒト腫瘍細胞を溶解することもできるT細胞の生成を増強することが示された(Tsang et al.,Cancer Res.,10:2139-49(2004)参照)。この領域中の、他の二つのアゴニストエピトープの候補が、T細胞のサイトカイン産生を増強することが示されたが、腫瘍細胞殺傷は報告されなかった(Mitchell et al.,Cancer Immunol.Immunother.,56:287-301(2007)参照)。
【0008】
ワクチンの能力を、より有効であるように増強することが示されている1つの方法は、推定上のT細胞エピトープのアミノ酸配列を変化させることであり、それが、ひいてはT細胞活性化及びT細胞の特異的な腫瘍細胞殺傷を増強し得る(Grey et al.,Cancer Surv.,22:37-49(1995);及びTerasawa et al.,Clin.Cancer Res.8:41-53(2002)参照)。しかしながら、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトープのアミノ酸に起き得るすべての置換が、エンハンサーアゴニストエピトープをもたらすわけではなく、いくつかの置換は、アンタゴニストエピトープをもたらす。また、腫瘍関連抗原の、推定上のアゴニストエピトープの生成が、IFN-γ産生による、T細胞活性化の増強につながる可能性がよくあるが、ヒト腫瘍細胞表面上のMHCに関連して発現する内生の(天然の)エピトープを活性化T細胞が認識し、結果としてそれらの腫瘍細胞を溶解しない限り、役に立たない。
【0009】
新しい、特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトープ及びエンハンサーアゴニストペプチド又はMUC1-Cのエピトープを同定すること、並びに癌の診断及び/又は治療のために、これらのエピトープを使用する組成物及び方法を開発することが望まれている。
【発明の概要】
【0010】
発明の要旨
本発明は、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を含むペプチドを提供する。
【0011】
別の態様においては、本発明は、該ペプチドを含むポリペプチド(タンパク質)、該ペプチドをコードする核酸、該核酸を含むベクター、該ペプチド、ポリペプチド(タンパク質)、核酸、又はベクター、を含む細胞、及びそれらの組成物を提供する。
【0012】
特に、本発明は、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を含むMUC1タンパク質又はポリペプチド(例、配列番号16、配列番号20、配列番号21、配列番号22、又は配列番号23)を提供する。
【0013】
別の態様においては、本発明は、(a)酵母ビヒクル、及び(b)少なくとも1のMUC1抗原を含む、融合タンパク質であって、MUC1抗原が、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を含む、融合タンパク質、を含む、酵母-MUC1免疫療法組成物を提供する。
【0014】
本発明は、(a)酵母ビヒクル、及び(b)少なくとも1のMUC1抗原を含む、融合タンパク質であって、MUC1抗原が、(i)配列番号16、(ii)配列番号16の92位?566位、又は(iii)異なるMUC1タンパク質からの対応する配列、に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、及びMUC1抗原が、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を含む、融合タンパク質、を含む、酵母-MUC1免疫療法組成物も提供する。
【0015】
本発明は、(a)酵母ビヒクル、及び(b)少なくとも1のMUC1抗原を含む、融合タンパク質であって、MUC1抗原が、配列番号14等の野生型MUC1のアミノ酸配列に関して:T422、P430、T431、S462、及びA470から選択される配列位置に、少なくとも1のアミノ酸置換によって野生型MUC1タンパク質のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む、融合タンパク質、を含む、酵母-MUC1免疫療法組成物も提供する。
【0016】
本発明は、治療有効量の、ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、核酸、ベクター、細胞を含む組成物又は酵母-MUC1免疫療法組成物を宿主に投与することを含む、宿主においてMUC1を発現する癌に対する免疫応答を増強する方法であって、宿主において免疫応答が増強される、方法も提供する。
【0017】
本発明は、治療有効量の、ペプチド、ポリペプチド(タンパク質)、核酸、ベクター、細胞を含む組成物又は酵母-MUC1免疫療法組成物を個体に投与することを含む、個体においてMUC1を発現する癌を治療する方法も提供する。
【0018】
本発明は、治療有効量の、ペプチド、ポリペプチド(タンパク質)、核酸、ベクター、細胞を含む組成物又は酵母-MUC1免疫療法組成物を個体に投与することを含む、MUC1を発現する癌を有する個体において癌の転移の進行を減退させる、阻止する、反転させる、又は予防する方法も提供する。
【0019】
本発明は、治療有効量の、ペプチド、ポリペプチド(タンパク質)、核酸、ベクター、細胞を含む組成物又は酵母-MUC1免疫療法組成物を個体に投与することを含む、個体においてMUC1を発現する癌の発症を予防するか、又は遅延させる方法も提供する。
【0020】
本発明は、(a)被験体からリンパ球を得る(単離する)こと、(b)宿主に対するペプチド、ポリペプチド(タンパク質)、核酸、ベクター、又は細胞を含む組成物により、リンパ球を刺激して、ex vivoで細胞傷害性Tリンパ球を生成すること、及び(c)細胞傷害性Tリンパ球を被験体に投与すること、を含み、被験体においてMUC1を発現する癌が阻害される、被験体においてMUC1を発現する癌を阻害する方法を更に提供する。
【0021】
本発明は、(a)被験体から樹状細胞を得る(単離する)こと(b)ペプチド、ポリペプチド(タンパク質)、核酸、ベクター、細胞を含む組成物又は酵母-MUC1免疫療法組成物により、樹状細胞をex vivoで処理すること、及び(c)処理された樹状細胞を被験体に投与すること、を含み、被験体においてMUC1を発現する癌が阻害される、被験体においてMUC1を発現する癌を阻害する方法を提供する。
【0022】
更に、本発明は、(a)癌を患う被験体から末梢血単核細胞(PBMC)を得ること(b)PBMCから樹状細胞を単離すること(c)ペプチド、ポリペプチド(タンパク質)、核酸、ベクター、細胞を含む組成物又は酵母-MUC1免疫療法組成物により、樹状細胞をex vivoで処理すること、(d)処理した樹状細胞により、PBMCをex vivoで活性化すること、及び(e)活性化されたPBMCを被験体に投与すること、を含み、被験体においてMUC1を発現する癌が阻害される、被験体においてMUC1を発現する癌を阻害することを提供する。
【0023】
本発明は、(a)癌を患う被験体から末梢血単核細胞(PBMC)を得ること(b)PBMCから樹状細胞を単離すること(c)ペプチド、ポリペプチド(タンパク質)、核酸、ベクター、細胞を含む組成物又は酵母-MUC1免疫療法組成物により、樹状細胞をex vivoで処理すること、(d)処理した樹状細胞により、PBMCをex vivoで活性化すること(e)活性化したPBMCからTリンパ球をex vivoで単離すること、及び(f)単離されたTリンパ球を被験体に投与すること、を含み、被験体においてMUC1を発現する癌が阻害される、被験体においてMUC1を発現する癌を阻害することを更に提供する。
【0024】
本発明は、癌を治療するため、被験体においてMUC1を発現する癌を阻害するため、癌を有する個体において、癌の転移の進行を減退させる、阻止する、反転させる、若しくは予防するため、又はMUC1を発現する癌の発症を予防する若しくは遅延させるための、ペプチド、ポリペプチド(タンパク質)、核酸、ベクター、細胞を含む組成物又は酵母-MUC1免疫療法組成物によりin vitroで刺激した養子移入T細胞の使用を提供する。
【0025】
更なる態様においては、本発明は、(a)配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列をコードする核酸を含む第一のポックスウイルスベクターを被験体に投与すること、及び(b)配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列をコードする核酸を含む第二のポックスウイルスベクターを被験体に投与することを含む、被験体においてMUC1を発現する癌に対する免疫応答を誘導する方法を提供する。1つの実施形態においては、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列をコードする核酸は、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を含むMUC1タンパク質(例、配列番号16、配列番号20、配列番号21、配列番号22、又は配列番号23)をコードする核酸である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本発明は、MUC1を発現又は過剰発現する癌を含むが、それらに限定されない癌の、予防又は治療的処置のためのワクチン及び他の組成物に用いられ得る、ヒト腫瘍関連抗原(TAA)のムチン1(MUC1)及びその類似体の、C末端サブユニットからのヒト細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトープを含む、ペプチドを提供する。特に、本発明は、KYHPMSEYAL(配列番号1)又はKYTNPAVAL(配列番号2)のアミノ酸配列を含む、それらから本質的になる、又はそれらからなるペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質を提供する。
【0027】
別の実施形態においては、本発明は、MUC1のアミノ酸配列(即ち、MUC1タンパク質)又はその断片を含むポリペプチドであって、対応するアミノ酸残基のうちの1以上が、エンハンサーアゴニストエピトープの、配列番号1又は配列番号2のうちの1以上で置換されている、ポリペプチド(例、配列番号16、配列番号20、配列番号21、配列番号22、又は配列番号23)を提供する。
【0028】
「ポリペプチド」は、一般的に、タンパク質分子の一部又は全体を形成する、連続的、非分枝鎖状に結びつけられた多数のアミノ酸残基から成る直鎖状有機ポリマーであると理解される。「ペプチド」は、一般に、サイズに基づいて、全長タンパク質又はポリペプチドと区別されると考えられ、1つの実施形態においては、任意の基準として約50個以下のアミノ酸を含有すると理解され得るが、ポリペプチド又は全長タンパク質は、一般的により長い。しかしながら、用語「ペプチド」及び「ポリペプチド」は、いくつかの実施形態においては、本発明において有用なタンパク質を記述するために、交換可能に用いられ得、又は用語「タンパク質」が、全般的に用いられ得る。
【0029】
本発明のペプチド又はポリペプチドは、任意の好適な長さであり得る。1つの実施形態においては、本発明のペプチドは、20以下(例、19以下、18以下、17以下、16以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、又は10以下)のアミノ酸残基を有する。更なるアミノ酸残基は、存在する場合、好ましくは、MUC1(例、MUC1-C)タンパク質又は本明細書に記載の通りの、MUC1の配列由来である。更なるアミノ酸残基が、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列の、いずれかの末端又は両末端に配置され得る。
【0030】
酵母等の宿主細胞での発現用ポリペプチドは、宿主細胞中での組換え発現が可能な最小サイズである。従って、宿主細胞が発現するポリペプチドは、好ましくは少なくとも25アミノ酸長であり、典型的には、少なくとも25アミノ酸長若しくは25アミノ酸長超、又は少なくとも26アミノ酸長若しくは26アミノ酸長超、少なくとも27アミノ酸長若しくは27アミノ酸長超、少なくとも28アミノ酸長若しくは28アミノ酸長超、少なくとも29アミノ酸長若しくは29アミノ酸長超、少なくとも30アミノ酸長若しくは30アミノ酸長超、少なくとも31アミノ酸長若しくは31アミノ酸長超、少なくとも32アミノ酸長若しくは32アミノ酸長超、少なくとも33アミノ酸長若しくは33アミノ酸長超、少なくとも34アミノ酸長若しくは34アミノ酸長超、少なくとも35アミノ酸長若しくは35アミノ酸長超、少なくとも36アミノ酸長若しくは36アミノ酸長超、少なくとも37アミノ酸長若しくは37アミノ酸長超、少なくとも38アミノ酸長若しくは38アミノ酸長超、少なくとも39アミノ酸長若しくは39アミノ酸長超、少なくとも40アミノ酸長若しくは40アミノ酸長超、少なくとも41アミノ酸長若しくは41アミノ酸長超、少なくとも42アミノ酸長若しくは42アミノ酸長超、少なくとも43アミノ酸長若しくは43アミノ酸長超、少なくとも44アミノ酸長若しくは44アミノ酸長超、少なくとも45アミノ酸長若しくは45アミノ酸長超、少なくとも46アミノ酸長若しくは46アミノ酸長超、少なくとも47アミノ酸長若しくは47アミノ酸長超、少なくとも48アミノ酸長若しくは48アミノ酸長超、少なくとも49アミノ酸長若しくは49アミノ酸長超、又は少なくとも50アミノ酸長若しくは50アミノ酸長超、又は少なくとも25?50アミノ酸長、少なくとも30?50アミノ酸長、又は少なくとも35?50アミノ酸長、又は少なくとも40?50アミノ酸長、又は少なくとも45?50アミノ酸長であるが、より小型のタンパク質が発現し得、また、相当大型のタンパク質(たとえば、何百アミノ酸長、更には数千アミノ酸長)が発現し得る。
【0031】
別の実施形態においては、本発明は、MUC1を発現又は過剰発現する癌を含むが、それらに限定されない癌の、予防又は治療的処置のためのワクチン及び他の組成物に用いられ得る、ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、MUC1のアミノ酸配列又はその断片(例、その免疫原性ドメイン)を含むか、それらから本質的に成るか、又はそれらから成り、該ポリペプチドの1以上の対応するアミノ酸残基が、該ポリペプチドが配列番号1又は配列番号2のエンハンサーアゴニストエピトープの1以上を含むように置換され(replaced)ている(例、置換され(substituted)ている)、ポリペプチドを提供する(即ち、該ポリペプチドのアミノ酸配列が、典型的には、所定の野生型エピトープ配列中に、1、2、3、又はそれ以上のアミノ酸の、異なるアミノ酸との置換を含む、1以上のエンハンサーアゴニストエピトープを含む点で、該ポリペプチドは、天然の又は野生型の、MUC1のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有する)。この実施形態の1つの態様においては、ポリペプチドは、更なるMUC1エンハンサーアゴニストエピトープ(その例は、以下に詳細に記載される)を更に含み得る。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態においては、本発明のペプチド及びポリペプチド(タンパク質)は、抗原として用いられる。本発明によれば、本明細書中で一般的に用いる用語「抗原」は、タンパク質(例、ペプチド、部分タンパク質、全長タンパク質)の任意の部分を指し、該タンパク質は天然に生じるか、或いは合成由来であり、或いは、細胞組成物(全細胞、細胞溶解物、又は破壊された細胞)に対して、生物(全生物、溶解物又は破壊された細胞)に対して、又は炭水化物、若しくは他の分子若しくはその一部に対して設計される。抗原は、免疫系の要素(例、T細胞、抗体)が、in vitro、in vivo、又はex vivoで遭遇する、同一又は類似の抗原に対して、抗原特異的免疫応答(例、液性及び/又は細胞性免疫応答)を誘発し得る。
【0033】
抗原は、単一のエピトープ(例、本明細書に記載の配列番号1又は配列番号2)と同程度に小型であり得、単一の免疫原性ドメイン以上であり得、また複数のエピトープ又は免疫原性ドメインを含み得る。このように、タンパク質抗原のサイズは、約8?11アミノ酸(例、ペプチド)と同程度に小型であり得、及びタンパク質のドメイン、全長タンパク質、多量体、融合タンパク質、又はキメラタンパク質と同程度に大型であり得る。本明細書に記載の様々な免疫療法組成物において有用な抗原としては、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質ドメイン(複数可)(例、免疫原性ドメイン)、タンパク質サブユニット、全長タンパク質、多量体、融合タンパク質、及びキメラタンパク質が挙げられる。
【0034】
免疫応答の刺激に言及する場合、用語「免疫原」は、用語「抗原」のサブセットであり、従って、いくつかの例においては、用語「抗原」と交換可能に用いられ得る。本明細書で用いられる免疫原は、個体への免疫原の投与が、個体の免疫系が遭遇する、同一又は類似の抗原に対して、抗原特異的免疫応答を開始するような、液性及び/又は細胞性免疫応答を誘発する(即ち、免疫原性である)抗原を記述する。1つの実施形態においては、免疫原は、CD4^(+)T細胞応答(例、TH1、TH2、及び/又はTH17)及び/又はCD8^(+)T細胞応答(例、CTL応答)を含む、細胞性免疫応答を誘発する。
【0035】
所定のタンパク質(ポリペプチド)の「免疫原性ドメイン」又は「免疫学的ドメイン」は、動物に投与した場合に免疫原として作用し得る、少なくとも1のエピトープを含有する、抗原の任意の部分、断片若しくはエピトープ(例、ペプチド断片又はサブユニット又は抗体エピトープ又は他の立体構造エピトープ)であり得る。従って、免疫原性ドメインは、単一のアミノ酸よりも大きく、且つ少なくとも、免疫原として作用し得る少なくとも1のエピトープを含有するのに十分なサイズである。例えば、単一のタンパク質が複数の異なる免疫原性ドメインを含有し得る。免疫原性ドメインは、立体構造ドメインが考慮される液性免疫応答の場合等においては、タンパク質内の直鎖配列を必要としない。
【0036】
エピトープは、本明細書においては、所定の抗原内の、(免疫系に提供された場合、免疫系の適切な共刺激シグナル及び/又は活性化細胞の背景において、免疫応答を誘発するのに十分である)単一の免疫原性部位として定義される。言い換えれば、エピトープは、免疫系の構成要素によって認識される抗原の一部であり、抗原決定基と呼ばれる場合もある。当業者は、T細胞エピトープは、B細胞又は抗体エピトープとは、サイズ及び組成が異なること、及び、クラスI MHC経路を介して提示されるエピトープは、クラスII MHC経路を介して提示されるエピトープとは、サイズ及び構造属性が異なることを理解するであろう。例えば、クラスI MHC分子により提示されるT細胞エピトープは、一般的に8?11アミノ酸長である一方で、クラスII MHC分子によって提示されるエピトープは、長さはそれほど制限されず、最大25アミノ酸又はそれ以上であり得る。更に、T細胞エピトープは、該エピトープが結合した特異的なMHC分子に応じて、構造的特徴が予測されている。エピトープは、直鎖状配列エピトープ(linear sequence epitopes)又は立体構造エピトープ(保存された結合領域)であり得る。ほとんどの抗体は、立体構造エピトープを認識する。
【0037】
「標的抗原」は、本発明の免疫療法組成物によって特異的に標的化される抗原(即ち、免疫療法に用いられる抗原が天然抗原のアゴニストであっても、免疫応答の誘発が望まれる抗原で、通常、天然抗原)である。腫瘍関連抗原(TAA)とも呼ばれる「癌抗原」は、腫瘍細胞が発現する抗原等の、癌に関連する、少なくとも1の抗原を含む抗原である。該抗原を標的とすることにより、腫瘍細胞及び/又は癌も標的となる。癌抗原は、1以上の腫瘍関連タンパク質を含む、1以上のタンパク質からの1以上の抗原を含み得る。特に、「MUC1抗原」は、MUC1タンパク質(MUC1-N、MUC1-C、又はMUC1-N及びMUC1-Cの両方が挙げられる)から誘導、設計、又は産生される抗原である。「MUC1アゴニスト抗原」は、本明細書に記載のエンハンサーアゴニストエピトープ等の、少なくとも1のアゴニストエピトープを含む、MUC1タンパク質(MUC1-N、MUC1-C又はMUC1-N及びMUC1-Cの両方が挙げられる)から誘導、設計、又は産生される抗原である。本発明の好適なエンハンサーアゴニストエピトープは、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を有する。
【0038】
MUC1(「ムチン-1」、「DF3抗原」又は「HMFG1」とも呼ばれ得る)は、ほとんどの上皮分泌組織で、基低レベルで発現する大型の糖タンパク質であり、上皮細胞起源の悪性疾患によって高レベルで発現する。MUC1は、最も典型的には、O-結合を介して高度にグリコシル化された可変数タンデムリピート(VNTR、典型的には20?125リピート)を含む大型細胞外ドメイン(MUC1-Nサブユニットとも呼ばれる)を有する多型I型膜貫通タンパク質(polymorphic, type I transmembrane protein)として見出される。MUC1タンパク質は、単一の転写物としてコードされ、そのうえ、それぞれ、MUC1-N及びMUC1-C又はα及びβサブユニットとして知られるサブユニットに翻訳後にプロセシングされ、次いで、該2サブユニットの強力な非共有結合性相互作用によりヘテロ二量体タンパク質を形成する。MUC1は、高度に保存されたタンパク質ドメインである「ウニ精子タンパク質、エンテロキナーゼ、及びアグリン」(SEA)ドメイン内でN及びCサブユニットに切断される。このドメインは、それが最初に精子タンパク質中、エンテロキナーゼ中、及びアグリン中で同定されたことに基づいて命名されており、典型的には膜に係留されたいくつかの高グリコシル化ムチン様タンパク質中に見いだされる。MUC1タンパク質は、SEAドメイン内で、配列番号11の1097位?1101位に対応する配列GSVVV中に存在するグリシン及びセリン残基の間で切断される(Lillehoj et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,307:743-749(2003);Parry et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,283:715-720(2001);Wreschner et al.,Protein Sci.,11:698-706(2002))。
【0039】
MUC1-Cサブユニットは、グリコシル化され、ガレクチン-3リガンドを結合させ、それが今度はMUC1と上皮成長因子受容体(EGFR)及びおそらく他の受容体チロシンキナーゼとを物理的に会合させるために、ブリッジとして機能する細胞外ドメイン(ED)を含む。MUC1-Cはまた、リン酸化された場合にSH2ドメインを有するタンパク質のための結合モチーフとして作用し得るいくつかのチロシン残基を含有する、膜貫通(TM)ドメイン、及び細胞質ドメイン(CD)を含む(MUC1タンパク質並びに知られている、及び推定される機能の詳細な検討については、Kufe,Cancer Biol.& Ther.,7:81-84(2008)参照)。MUC1の選択的スプライシングバリアント(例えば、MUC1/Y及びMUC1/Xとして知られる)は、大型のVNTR領域を含むMUC1-Nのほとんどを欠くMUC1の「短縮」型であるが、それは、ED、TM及びCDの領域並びにSEAドメイン及びN末端領域のシグナル配列領域の部分を含む。これらの短縮型では、SEAドメイン内の切断は生じないかもしれない。
【0040】
ヒトMUC1をコードするDNA及びcDNAの単離及び配列決定が報告されている(例、Siddiqui et al.,PNAS,85:2320-2323(1998);Abe and Kufe,PNAS,90:282-286(1993);Hareuveni et al.,Eur.J.Biochem.,189(3):475-486(1990);Gendler et al.,J.Biol.Chem.,265(25):15286-15293(1990);Lan et al.,J.Biol.Chem.,265(25):15294-15299(1990);Tsarfaty et al.,Gene,93(2):313-318(1990);Lancaster,Biochem.Biophys.Res.Commun.,173(3):1019-1029(1990)参照)。MUC1-N領域及びMUC1-C領域の両方を含有する全長ヒトMUC1前駆体タンパク質の例は、SwissProt受入番号P15941.3(GI:296439295)に記載されており、本明細書では配列番号5で表される。選択的転写産物スプライシングにより、配列番号5をコードする遺伝子から、10の異なるMUC1アイソフォームが作製され得る。例えば、MUC1/Yとして知られるアイソフォームは、配列番号5の54位?1053位を欠いている。他の種々のアイソフォームが、このタンパク質のデータベースの説明に記載されている。
【0041】
MUC1転写産物の様々な変異体が知られているが、上記の例示的な配列番号5に記載のMUC1のサブユニット、ドメイン、又は領域は、該変異体中に容易に同定し得、本発明において有用なMUC1抗原を、所定のMUC1配列、又は別のMUC1タンパク質からの対応する配列に基づいて設計又は産生し得る。例えば、ヒトMUC1タンパク質をコードする1のヌクレオチド配列は、本明細書中、配列番号6(GENBANK(登録商標)受入番号NM_002456.4(GI:65301116)に対応する)により表される。配列番号6は、273アミノ酸のヒトMUC1タンパク質(MUC1/ZDとしても知られる、転写産物変異体1)をコードし、そのアミノ酸配列は、配列番号7(GENBANK(登録商標)受入番号NP_002447.4;GI:65301117としても見出される)として本明細書に表される。本明細書中、配列番号8(GENBANK(登録商標)受入番号NM_001018016.1(GI:67189006)に対応する)により、別のヒトMUC1タンパク質をコードする別のヌクレオチド配列が表される。配列番号8は、264アミノ酸のヒトMUC1タンパク質(「MUC1/Y」としても知られる、転写産物変異体2)をコードし、そのアミノ酸配列は、配列番号9(GENBANK(登録商標)受入番号NP_001018016.1;GI:67189007中にも見出される)として本明細書に表される。本明細書中、配列番号10(GENBANK(登録商標)受入番号AY327587.1(GI:33150003)に対応する)により、別のヒトMUC1タンパク質をコードする別のヌクレオチド配列が表される。配列番号10は、264アミノ酸のヒトMUC1タンパク質(「MUC1/Y」としても知られる、転写産物変異体2)をコードし、そのアミノ酸配列は、配列番号11(GENBANK(登録商標)受入番号AAP97018.1(GI:33150004)中にも見出される)として本明細書に表される。本明細書中、配列番号12(GENBANK(登録商標)受入番号NM_001018017(GI:324120954)に対応する)により、別のヒトMUC1タンパク質をコードする別のヌクレオチド配列が表される。配列番号12は、255アミノ酸のヒトMUC1タンパク質(転写産物変異体3)をコードし、そのアミノ酸配列は、配列番号13(GENBANK(登録商標)受入番号NP_001018017.1;GI:67189069)中にも見出される)として本明細書に表される。本明細書中、配列番号14(GENBANK(登録商標)受入番号NM_001191214中にも見出される)により、なお別の例示的な野生型MUC1アミノ酸配列が表される。配列番号14は、本明細書に記載のMUC1のいくつかの、アミノ酸位置の基準として用いられるが、他のMUC1配列における対応する位置は、当業者によって同定され得る。
【0042】
ヒトMUC1タンパク質及びMUC1抗原を含む、本明細書に記載のヒトMUC1は、様々なCD4^(+)及びCD8^(+)T細胞エピトープを含有する。かかるT細胞エピトープは、例えば、米国特許第6,546,643号;米国特許第7,118,738号;米国特許第7,342,094号;米国特許第7,696,306号;及び米国特許出願公開第2008/0063653号並びにPCT公開第2013/024972号に記載されており、本発明のMUC1抗原において、これらのエピトープのいずれか1以上が、該配列を、本明細書に記載の配列内の1以上のアミノ酸を付加、削除、又は、置換することによる等で、その位置(複数可)で、公開されたエピトープ配列に一致させるために、用いられ得る。
【0043】
本発明において発見されたMUC1アゴニスト抗原の例が、本明細書中に提供される(実施例参照)。本発明において有用なペプチド、タンパク質、又はポリペプチドは、配列番号1及び配列番号2で表されるMUC1エンハンサーアゴニストペプチドの少なくとも1を含むか、本質的にそれらから成るか、又はそれらから成る。しかしながら、本発明において使用するためのMUC1抗原には、他のMUC1アゴニストエピトープを更に含め得る。1つの実施形態においては、本発明における使用に好適なMUC1アゴニスト抗原は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又はそれ以上のアミノ酸置換により、野生型(天然)のMUC1タンパク質若しくはポリペプチド又はそれらのペプチドとは異なるアミノ酸配列を有する、MUC1タンパク質若しくはポリペプチド又はそれらのペプチドを含み、該アミノ酸置換は、抗原に1以上のMUC1アゴニストエピトープを導入する。かかるアミノ酸置換としては、以下:T93、A141、P142、G149、S150、T151、A392、C406、T422、P430、T431、T444、D445、S460、S462、及び/又はA470、のアミノ酸位置における置換が挙げられ得る(置換の位置は、受入番号NP_001191214(配列番号14)で表されるアミノ酸配列を有する野生型MUC1に関して提供される(しかし、同一又は同等の位置は、容易に他のいずれかの野生型MUC1配列内で同定し得る))。1つの実施形態においては、置換は:T93L、A141Y、P142L、G149V、S150Y、T151L、A392Y、C406V、T422K、P430A、T431L、T444L、D445F、S460Y、S462K、及び/又はA470Lである。
【0044】
更に、本発明において有用なMUC1抗原は、例えば、天然のタンパク質の天然の生物学的機能を不活化又は欠失させる(例、抗原の発現を改善する、又は安全性を増強する)ための、1以上の更なるアミノ酸変異(置換、挿入又は欠失)を含み得る。かかる変異の1例は、基準配列として配列番号14を用いる場合、野生型タンパク質に関する位置C404での置換である、不活性化変異である。1つの態様においては、不活性化置換は、(配列番号14に関して)C404Aである。
【0045】
本発明のペプチド又はポリペプチド(タンパク質)は、ペプチドを合成することにより、又は細胞内で、ペプチド又はポリぺプチドについての適切なアミノ酸配列をコードする核酸を発現させ、いくつかの実施形態において、細胞よりペプチド又はポリぺプチドを回収すること等の任意の方法によって、調製され得る。酵母-免疫療法組成物に関する、本発明の実施形態において等、いくつかの実施形態においては、ペプチド又はポリペプチドは、細胞から回収されない(下記に詳述)。かかる、ペプチド及びポリペプチドの産生方法の組み合わせも用いられ得る。ペプチドのde novo合成方法及び組換え的にペプチド又はポリペプチドを製造する方法は当該分野で知られている(例、Chan et al.,Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2005;Peptide and Protein Drug Analysis,ed.Reid,R.,Marcel Dekker,Inc.,2000;Epitope Mapping,ed.Westwood et al.,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2000;Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3^(rd) ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY 2001;及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,GreenePublishing Associates and John Wiley&Sons,NY,1994参照)。
【0046】
本発明は、ペプチド又はポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸分子も提供する。核酸分子はDNA(ゲノム若しくはcDNA)又はRNAを含み得、一本鎖又は二本鎖
であり得る。更に、核酸分子は、ヌクレオチド類似体又は誘導体(例、イノシン又はホスホロチオエートヌクレオチドなど)を含み得る。核酸配列は、ペプチド又はポリペプチドを単独で、又は融合タンパク質の一部としてコードし得る。ペプチド又はポリペプチドをコードする核酸配列は、核酸分子と、細胞への核酸分子の送達及び/又は細胞での核酸分子の発現を可能にするエレメントとを含むコンストラクトの一部として提供され得る。かかるエレメントとしては、例えば、発現ベクター、プロモーター、並びに転写及び/又は翻訳制御配列が挙げられる。かかるコンストラクトは、「組換え核酸分子」とも呼ばれ得る。好適なベクター、プロモーター、転写/翻訳配列、及び他のエレメント、並びにかかる核酸分子及びコンストラクトの調製方法は、当該分野で知られている(例、Sambrook et al.,上記;Ausubel et al.,上記)。語句「核酸分子」は、主に物理的核酸分子を指し、語句「核酸配列」は、主に核酸分子上のヌクレオチド配列を指すが、該2語は、特に、ペプチド又はポリペプチドをコードし得る核酸分子又は核酸配列に関して交換可能に用いられ得る。同様に、語句「組換え核酸分子」は、主に、転写制御配列等のエレメントに作動可能に連結された核酸分子を指すが、語句「核酸分子」と交換可能に用いられ得る。
【0047】
本発明は更に、核酸分子を含むベクターを提供する。好適なベクターの例としては、プラスミド(例、DNAプラスミド)及びポックスウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、アルファウイルス、バキュロウイルス(baculorvirus)、及びシンドビスウイルス等のウイルスベクターが挙げられる。
【0048】
第1の実施形態においては、ベクターは、プラスミド(例、DNAプラスミド)である。プラスミドは、キトサンと複合体形成し得る。
【0049】
第2の実施形態においては、ベクターは、ポックスウイルス(例、コードポックスウイルスベクター及びエントモポックスウイルスベクター)である。好適なポックスウイルスとしては、オルトポックス、アビポックス、パラポックス、ヤタポックス、及びモルシポックス、アライグマポックス、ウサギポックス、カプリポックス(例、羊痘)、レポリポックス、及びスイポックス(例、豚痘)が挙げられる。アビポックスウイルスの例としては、鶏痘、鳩痘、ALVAC等のカナリア痘、九官鳥痘、ユキヒメドリ痘(uncopox)、ウズラ痘、クジャク痘、ペンギン痘、スズメ痘、ムクドリ痘、及び七面鳥痘が挙げられる。オルトポックスウイルスの例としては、(痘瘡としても知られる)天然痘、牛痘、サル痘、ワクシニア、エクトロメリア、ラクダ痘、アライグマポックス、及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0050】
用語「ワクシニアウイルス」は、野生型ワクシニアウイルス及び、例えば、修飾ワクシニアのアンカラ(MVA)、NYVAC、TROYVAC、ドライバックス(Dry-Vax)(ワクシニアウイルスワイス(Weyth)としても知られる)、POXVAC-TC(Schering-Plough Corporation)、ワクシニアウイルスウエスタンリザーブ(Western Reserve,)、ワクシニアウイルスEM63、ワクシニアウイルスリスター(Lister)、ワクシニアウイルスニューヨークシティボードオブヘルス(New York City Board of Health)、ワクシニアウイルステンプルオブヘブン(Temple of Heaven)、ワクシニアウイルスコペンハーゲン(Copenhagen)、ACAM1000、ACAM2000、及び修飾ワクシニアウイルスアンカラ-バーバリアンノルディック(「MVA-BN」)が挙げられる、後に単離された種々の弱毒株又は分離株のいずれかの、両方を指す。
【0051】
特定の実施形態においては、MVAは、1994年1月27日に、寄託番号ECACC 94012707で、欧州動物細胞培養機関(「ECACC」)、健康保護庁、微生物学局(Microbiology Services)、ポートダウン、ソールズベリー SP4 0JG、連合王国(「UK」)に寄託されたMVA-572;2000年12月7日に、寄託番号ECACC00120707で、ECACCに寄託されたMVA-575;2000年8月30日に、寄託番号V00080038で、ECACCに寄託されたMVA-バーバリアンノルディック(「MVA-BN」);及びMVA-BNの誘導体から成る群から選択される。更なる例示的なポックスウイルスベクターは、米国特許第7,211,432号に記載されている。
【0052】
ワクシニアウイルスMVAは、漿尿膜ウイルス(chorioallantois virus)アンカラ(CVA)と呼ばれる、ワクシニアウイルスアンカラ株を、ニワトリ胚線維芽細胞において516代連続的に継代することによって生成された(Mayr et al.,Infection,3:6-14(1975)参照)。得られた弱毒MVAのゲノムは、親CVA株と比較して、ゲノムDNAの約31キロ塩基対を欠いており、宿主細胞が、鳥類細胞にかなり限定される(Meyer et al.,J.Gen.Virol.,72:1031-1038(1991)参照)。得られたMVAは、著しく非病原性であることがさまざまな動物モデルで示された(Mayr et al.,Dev.Biol.Stand.,41:225-34(1978))。このMVA株は、天然痘に対して免疫するためのワクチンとして、ヒトにおける臨床試験で試験されている(Mary et al.,Zbl.Bakt.Hyg.I,Abt.Org.B,167:375-390(1987);及びStickl et al.,Dtsch.Med.Wschr.,99:2386-2392(1974)参照)。これらの研究は、高リスク患者を含む、ヒト120,000人超が関わり、MVAが、ワクシニアウイルスベースのワクチンに比べて、毒性や感染力を減少させたが、依然として良好な特異的免疫応答を誘導できることを証明した。MVA-BNは、他のMVA株よりも複製能が乏しいので、その、より安全性の高いプロファイルのため好ましいが、MVA-BN及びその誘導体を含むすべてのMVAが、本発明に好適である。
【0053】
MVA及びMVA-BNの両方が、たとえ非病原性であっても、哺乳動物細胞において、それらのDNAを効率的に複製することができる。この特性は、その、ニワトリ胚線維芽細胞を介した継代の間に生じた、少なくとも25の更なる変異及び欠失に伴い、2つの重要な宿主域遺伝子を喪失したことの結果である(Meyer et al.,Gen.Virol.,72:1031-1038(1991);及びAntoine et al.,Virol.,244:365-396(1998)参照)。弱毒コペンハーゲン株(NYVAC)及び宿主域制限アビポックス(ALVAC)とは対照的に、MVAにおいては、初期及び後期の転写が両方損なわれず、ウイルスのライフサイクル全体を通じて、連続的な遺伝子発現を可能にする(Sutter et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,89:10847-10851(1992)参照)。更に、MVAは、既存のポックスウイルス免疫の条件で用いられ得る(Ramirez et al.,J.Virol.,74:7651-7655(2000))。
【0054】
MVA及びMVA-BNの両方は、祖先の漿尿膜ワクシニアウイルスアンカラ(「CVA」)と比較して、ゲノムの約15%(6つの領域から31kb)を欠失している。欠失は、多数の病原性遺伝子及び宿主域遺伝子並びにA型封入体の遺伝子に影響を与える。MVA-BNはヒト細胞に付着して侵入し、ウイルスにコードされた遺伝子が、非常に効率的に発現する。しかし、子孫ウイルスの集合及び放出は起こらない。MVA-BNは、ニワトリ一次胚線維芽(CEF)細胞に強く適応し、ヒト細胞中で複製しない。ヒト細胞においては、ウイルス遺伝子が発現し、且つ非感染性ウイルスが産生される。顕著な減衰及び毒性の低下にもかかわらず、前臨床試験において、MVA-BNが、ワクシニアに対する、及びMVAゲノムにクローニングされた遺伝子によってコードされる異種遺伝子産物に対する、液性及び細胞性免疫応答の両方を誘発することが示された(Harrer et al.,Antivir.Ther.,10(2):285-300(2005);Cosma et al.,Vaccine,22(1):21-29(2003);Di Nicola et al.,Hum.Gene Ther.,14(14):1347-1360(2003);及びDi Nicola et al.,Clin.Cancer Res.,10(16):5381-5390(2004)参照)。
【0055】
ウイルスの繁殖的複製は、典型的には、増幅率で表される。用語「増幅率」は、最初の段階で細胞を感染させる(「インプット」)ために用いられた元々の量に対する、感染した細胞から産生されるウイルス(「アウトプット」)の割合を指す。増幅率「1」は、感染細胞から産生されるウイルスの量が、最初に細胞を感染させるために用いられる量と同じである増幅状態を規定し、感染細胞は、ウイルス感染及び複製を許容することを意味する。1未満の増幅率は、感染細胞が産生するウイルスが、最初の段階で細胞を感染させるために用いられる量よりも少ないことを意味し、ウイルスが、繁殖的複製の能力を欠いていることを示しており、これはウイルス減衰の尺度である。
【0056】
従って、用語「繁殖的に複製することができない」は、MVA又はMVA誘導体が、例えば、ヒト胚性腎臓293細胞株(HEK293、寄託番号ECACC番号85120602で寄託)、ヒト骨骨肉腫細胞株143B(寄託番号ECACC No.91112502で寄託)、ヒト子宮頸部腺癌細胞株HeLa(寄託番号ATCC No.CCL-2でアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATTC)に寄託)、及びヒト角化細胞株HaCat(Boukamp et al.,J.Cell Biol.,106(3):761-71(1988)参照)等の1以上のヒト細胞株で、増幅率が1未満であることを意味する。
【0057】
MVA-BNはヒト細胞株HEK293、143B、HeLa、及びHaCat中で繁殖的に複製しない(米国特許第6,761,893号及び米国特許第6,193,752号、及び国際特許出願公開第2002/042480号参照)。例えば、1つの典型的な実験においては、MVA-BNは、HEK293細胞中で0.05?0.2の増幅率、143B細胞中で0.0?0.6の増幅率、HeLa細胞中で0.04?0.8の増幅率、及びHaCat細胞中で0.02?0.8を示した。このように、MVA-BNは、ヒト細胞株HEK293、143B、HeLa、及びHaCatのいずれにおいても繁殖的に複製しない。対照的に、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)の初代培養物及びベビーハムスター腎臓細胞(BHK、寄託番号ATCC No.CRL-1632で寄託された)におけるMVA-BNの増幅率は1を超える。従ってMVA-BNは、容易に増殖させられ得、CEF初代培養物中では500超の増幅率で、BHK細胞中では50超の増幅率で増幅し得る。
【0058】
上述の通り、MVA-BN及びその誘導体を含むすべてのMVAは、本発明に好適である。用語「誘導体」は、寄託番号ECACC No.V00080038で、2000年8月30日にECACCに寄託された株と実質的に同じ複製特性を示すが、そのゲノムの1以上の部分で違いを示すウイルスを指す。寄託されたウイルスと同じ「複製特性」を有するウイルスは、BHK細胞において、並びにヒト細胞株HEK293、143B、HeLa及びHaCatにおいて、CEF細胞における寄託株の増幅率と同様の増幅率で複製するウイルスである。
【0059】
ベクターが宿主(例、ヒト)への投与用である場合、ベクター(例、ポックスウイルス)は、好ましくは標的細胞において低い複製効率を有する(例、細胞あたり約1子孫以下、又は、より好ましくは、細胞あたり0.1子孫以下が産生される)。複製効率は、標的細胞の感染後のウイルス力価の測定によって、経験的に容易に決定され得る。
【0060】
ポリペプチド(タンパク質)又はポリペプチド(即ち、本明細書に記載の、少なくとも1のMUC1エンハンサーアゴニストエピトープを含む、又はそれから本質的に成る若しくはそれらから成る、ペプチド又はポリペプチド)をコードする核酸分子に加えて、本発明において有用なベクター(例、プラスミド又はウイルスベクター)は、1以上の免疫刺激/調節分子、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)、サイトカイン、及び/又は免疫応答を増強できる分子(例、更なる腫瘍関連抗原)をコードする核酸配列も含み得る。更なる典型的な腫瘍関連抗原(TAA、癌抗原とも呼ばれる)としては、5-α-レダクターゼ、α-フェトプロテイン(AFP)、AM-1、APC、エープリル(April)、Bメラノーマ抗原遺伝子(BAGE)、βカテニン、Bcl12、bcr-abl、ブラキュリ、CA-125、カスパーゼ8(CASP-8、FLICEとしても知られる)、カテプシン、CD19、CD20、CD21/補体受容体2(CR2)、CD22/BL-CAM、CD23/F_(c)εRII、CD33、CD35/補体受容体1(CR1)、CD44/PGP-1、CD45/白血球共通抗原(LCA)、CD46/膜補助因子タンパク質(MCP)、CD52/CAMPATH-1、CD55/崩壊促進因子(DAF)、CD59/プロテクチン、CDC27、CDK4、癌胎児性抗原(CEA)、c-myc、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)、結腸直腸癌欠失遺伝子(DCC)、DcR3、E6/E7、CGFR、EMBP、Dna78、ファルネシルトランスフェラーゼ、線維芽細胞増殖因子8a(FGF8a)、線維芽細胞増殖因子8b(FGF8b)、FLK-1/KDR、葉酸受容体、G250、Gメラノーマ抗原遺伝子ファミリー(GAGEファミリー)、ガストリン17、ガストリン放出ホルモン、ガングリオシド2(GD2)/ガングリオシド3(GD3)/モノシアル酸ガングリオシド2(ganglioside-monosialic acid-2)(GM2)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、UDP-GlcNAc:R_(1)Man(α1-6)R_(2)[GlcNAc-Man(α1-6)]β1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(GnT V)、GP1、gp100/Pme117、GP-100-in4、gp15、gp75/チロシン関連タンパク質-1(gp75/TRP-1)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヘパラナーゼ、Her2/neu、ヒト乳房腫瘍ウイルス(HMTV)、70キロダルトン熱ショックタンパク質(HSP70)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、インスリン様成長因子受容体-1(IGFR-1)、インターロイキン13受容体(IL-13R)、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)、Ki67、KIAA0205、K-ras、H-ras、N-ras、KSA、LKLR-FUT、メラノーマ抗原をコードするファミリー(少なくともMAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、及びMAGE-4を含む、MAGEファミリー)、マンマグロビン、MAP17、メランA/T細胞認識メラノーマ抗原1(melanoma antigen recognized by T-cells-1)(MART-1)、メソテリン、MICA/B、MT-MMP、ムチン、精巣特異抗原NY-ESO-1、オステオネクチン、p15、p170/MDR1、p53、P97/メラノトランスフェリン、PAI-1、血小板由来増殖因子(PDGF)、μPA、PRAME、プロバシン、プロジェニポエチン(progenipoietin)、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、RAGE-1、Rb、RCAS1、変異Ras、SART-1、SSXファミリー、STAT3、STn、TAG-72、形質転換成長因子アルファ(TGF-α)、形質転換成長因子ベータ(TGF-β)、チモシンβ-15、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、TP1、TRP-2、チロシナーゼ、血管内皮増殖因子(VEGF)、ZAG、p16INK4、及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、並びにそれらの修飾型(例、CEA-6D)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
ウイルスベクターの場合は、ペプチドをコードする核酸、及び任意の他の外生遺伝子(複数可)は、好ましくは、得られる組換えウイルスのウイルス生存率に影響しないベクター(例、ポックスウイルス)中の部位又は領域(挿入領域)に挿入される。かかる領域は、組換えウイルスのウイルス生存率に大きく影響せずに組換え体形成を可能にする領域について、ウイルスDNAのセグメントを試験することによって、容易に同定され得る。
【0062】
チミジンキナーゼ(TK)遺伝子は、容易に用いられ得、多くのウイルスに存在する挿入領域である。特に、TK遺伝子は、検査された全てのポックスウイルスゲノムにおいて見出されている。更なる好適な挿入部位は、国際特許出願公開第WO 2005/048957に記載されている。例えば、鶏痘においては、挿入領域としてはBamHI Jフラグメント、EcoRI-HindIIIフラグメント、BamHIフラグメント、EcoRV-HindIIIフラグメント、長い固有配列(LUS)挿入部位(例、FPV006/FPV007及びFPV254/FPV255)、FP14挿入部位(FPV060/FPV061)、及び43K挿入部位(FPV107/FPV108)が挙げられるが、これらに限定されない。ワクシニアにおいては、挿入部位としては44/45、49/50、及び124/125が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
ベクターが、ペプチドをコードする核酸、及び/又は他の外生遺伝子(複数可)(例、1以上の免疫刺激/調節分子をコードする)を含む組換え鶏痘ウイルスの場合、ペプチドをコードする核酸は、1の領域(例、FP14領域)に挿入され得、外生遺伝子(複数可)は別の領域(例、BamHI J領域)に挿入され得る。
【0064】
本発明のベクターは、転写調節エレメント又はエンハンサー等の、好適なプロモーター及び調節エレメントを含み得る。好適なプロモーターとしては、SV40初期プロモーター、RSVプロモーター、レトロウイルスLTR、アデノウイルス主要後期プロモーター、ヒトCMV前初期プロモーター(human CMV immediate early I promoter)、並びにPr7.5Kプロモーター、30Kプロモーター、40Kプロモーター、I3プロモーター、Prsプロモーター、PrsSynIImプロモーター、PrLE1プロモーター、合成初期/後期(sE/L)プロモーター、HHプロモーター、11Kプロモーター、及びPiプロモーター等の各種ポックスウイルスプロモーターが挙げられる。プロモーターは、典型的には構成的プロモーターであるが、誘導性プロモーターも本発明のベクターにおいて利用され得る。かかる誘導可能なシステムは、遺伝子発現の調節を可能にする。
【0065】
本発明の1つの実施形態においては、(1)ペプチド若しくはポリペプチド、(2)ペプチド又はポリペプチドをコードする核酸分子、及び/又は(3)核酸分子を含むベクター、を含む細胞も、本明細書中に提供される。好適な細胞としては、原核細胞並びに真核細胞、例、哺乳動物細胞、酵母、酵母以外の真菌、及びバクテリア(大腸菌等)が挙げられる。細胞は、研究用又はペプチド若しくはポリペプチドの産生用等に、in vitroで用いられ得、又は細胞は、in vivoで用いられ得る。1つの実施形態においては、細胞は、本明細書に記載の酵母ベースの免疫療法組成物の酵母ビヒクル成分を提供するために用いられ得る、酵母細胞である。別の実施形態においては、細胞は、ペプチドパルスされた抗原提示細胞であり得る。好適な抗原提示細胞としては、樹状細胞、Bリンパ球、単球、マクロファージなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
1つの実施形態においては、細胞は樹状細胞である。異なる成熟段階の樹状細胞は、細胞表面上の発現マーカーに基づいて単離され得る。例えば、成熟樹状細胞は、提示のために新しいタンパク質を捉えることはあまりできないが、増殖及び分化するために休止T細胞を刺激することは非常に良好にできる。従って、成熟樹状細胞は重要であり得る。成熟樹状細胞は、形態におけるそれらの変化によって、及び種々のマーカーの存在によって、同定され得る。かかるマーカーとしては、B7.1、B7.2、CD40、CD11、CD83及びMHCクラスII等の細胞表面マーカーが挙げられるが、これらに限定されない。或いは、成熟は炎症性サイトカインの産生の観察又は測定によって、同定され得る。
【0067】
樹状細胞は、典型的な細胞蛍光法、並びに蛍光活性化セルソーター(FACS)等の細胞選別技術及び装置を用い、集められ、解析され得る。成熟段階が異なる樹状細胞の細胞表面抗原に特異的な抗体は、商業的に利用可能である。
【0068】
1つの実施形態においては、細胞は、酵母(例、サッカロミセス)である。従って、本発明は、(a)酵母ビヒクル、及び(b)本発明のMUC1ペプチド又はポリペプチド(タンパク質)を含む抗原、を含む、酵母ベースの免疫療法組成物(本明細書中、全般的に「酵母免疫療法組成物(yeast-immunotherapy composition)」、「酵母免疫療法製品(yeast-immunotherapy product)」)、「酵母免疫療法組成物(yeast-immunotherapeutic composition)」、「酵母ベースのワクチン(yeast-based vaccine)」、又はこれらの語句の派生語でも参照される)も提供する。上述の通り、MUC1抗原を含有する酵母ベースの免疫療法組成物は、より具体的に、「酵母-MUC1免疫療法組成物」と、又はその派生語で呼ばれ得る。「免疫療法組成物」は、被験体において、少なくとも1の治療効果を達成するのに十分な免疫応答を誘発する組成物である。「酵母ベースの免疫療法組成物」(及びその誘導体)は、酵母ビヒクル成分及び抗原成分を含む組成物を指し、T細胞性の細胞性免疫応答を含むが、これに限定されない、細胞性免疫応答等の、免疫応答を誘発又は誘導し得る。免疫応答としては、一般的に、自然免疫応答及び獲得免疫応答の両方が挙げられ、酵母成分及び抗原成分の両方に対して生じる(抗原特異的免疫応答)。個体に投与する場合、好ましくは、酵母ベースの免疫療法組成物は、該個体に、少なくとも1の、保護、予防、又は治療上の利益を提供する。1つの態様においては、本発明に有用な酵母ベースの免疫療法組成物は、CD8^(+)及び/又はCD4^(+)T細胞性免疫応答、1つの態様においては、特に標的抗原に対する(例、癌抗原、好ましくはMUC1に対する)CD8^(+)及びCD4^(+)T細胞性免疫応答を誘導できる。CD4^(+)免疫応答としては、TH1免疫応答、TH2免疫応答、TH17免疫応答、又は以上の任意の組合せが挙げられ得る。CD8^(+)免疫応答としては、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答が挙げられ得る。1つの態様においては、酵母ベースの免疫療法組成物は、被験体において制御性T細胞(Treg)の数及び/又は機能性を調節する。
【0069】
上記の通り、本発明の酵母ベースの免疫療法組成物は、(a)酵母ビヒクル、及び(b)MUC1抗原又はその免疫原性ドメインを含む、少なくとも1の癌抗原を含み、MUC1抗原は、配列番号1及び/又は配列番号2から選択されるアミノ酸配列を有する、少なくとも1のMUC1エンハンサーアゴニストエピトープを含むか、それから本質的に成るか、又はそれらから成る。癌抗原は、酵母ビヒクルにより(即ち、組換え的に)発現させられ、酵母ビヒクルへ接着させられ、酵母ビヒクルにロードされ、又は酵母ビヒクルと混合される。
【0070】
いくつかの実施形態においては、癌抗原、MUC1抗原、又はそれらの免疫原性ドメインは、融合タンパク質として提供される。例えば、いくつかのMUC1タンパク質及び融合タンパク質が、PCT公開第WO2013/024972号に記載されている。かかるタンパク質及び融合タンパク質は、本発明のエンハンサーアゴニストエピトープを組み込むように、更に修飾され得る。いくつかの実施形態においては、癌抗原及びMUC1抗原は同一のエレメントである。いくつかの実施形態においては、癌抗原は、MUC1抗原に加えて、他の癌抗原(本明細書中、腫瘍関連抗原又はTAAとも呼ばれる)を含む他の抗原を含む。本発明の1つの態様においては、癌抗原として有用な融合タンパク質は、2以上の抗原、例、MUC1抗原及びMUC1抗原ではない別の癌抗原(TAA)又は異なる2のMUC1抗原、を含み得る。1つの態様においては、融合タンパク質は、MUC1抗原の2以上の免疫原性ドメイン等の、1以上の抗原の2以上の免疫原性ドメイン、又はMUC1抗原の2以上のエピトープ等の、1以上の抗原の2以上のエピトープを含み得る。他の種々の癌抗原又はTAAが当該分野で知られており、本明細書中、他の箇所に記載されている。
【0071】
本発明の酵母ベースの免疫療法組成物において有用であるMUC1抗原の例は、配列番号16のアミノ酸配列を含むか、又はそれから成る。配列番号16は、酵母ベースの免疫療法組成物に用いるための、MUC1抗原を含む融合タンパク質のアミノ酸配列であり、該MUC1抗原は、(a)タンパク質内において、配列番号1のエンハンサーアゴニストエピトープを含む、いくつかのアゴニストエピトープを形成するための、15アミノ酸置換の導入、及び(b)不活性化変異である単一アミノ酸置換、を除いて、野生型MUC1タンパク質に一致する、全長MUC1アゴニストタンパク質である。配列番号16は、N末端からC末端へ、以下の順序で以下の配列:(1)配列番号17のアルファ因子リーダー配列(配列番号16の1位?89位に対応);(2)クローニングを容易にするための、Thr-Serのリンカー配列(配列番号16の90位?91位に対応);(3)上記15アミノ酸のアゴニスト置換及び1の不活性化置換の導入を除いて、野生型タンパク質に一致する、全長MUC1アゴニストタンパク質(配列番号16の92位?566位に対応)及び(4)ヘキサペプチドのヒスチジンタグ(配列番号16の567位?572位に対応)、を含む。
【0072】
配列番号16は、配列番号15で表されるヌクレオチド配列(酵母の発現のためにコドン最適化)によりコードされる。(配列番号16の1位?89位に対応する)アルファリーダー配列は、配列番号19で表されるペプチド等の、プロテアソーム分解に対する抵抗性及び/又は安定化した発現を付与するために設計された異なるN末端配列で、又は配列番号18等の、異なる酵母アルファリーダー配列からのN末端ペプチドで、又はMUC1シグナル配列によって、置換され得る。C末端のヘキサヒスチジンタグは任意であり、タンパク質の同定及び/又は精製を容易にする。
【0073】
テンプレートとして用いられる野生型MUC1タンパク質と比較して、配列番号16の配列は、以下:(配列番号16を参照し、配列番号14に対応する、受入番号NP_001191214で表される野生型MUC1の置換位置を、括弧内に更に参照して示された置換位置):T184L(野生型MUC1における93位)、A232Y(野生型MUC1における141位)、P233L(野生型MUC1における142位)、G240V(野生型MUC1における149位)、S241Y(野生型MUC1における150位)、T242L(野生型MUC1における151位)、A483Y(野生型MUC1における392位)、C495A(野生型MUC1における404位)、C497V(野生型MUC1における406位)、T513K(野生型MUC1における422位)、P521A(野生型MUC1における430位)、T522L(野生型MUC1における431位)、T535L(野生型MUC1における444位)、D536F(野生型MUC1における445位)、及びS551Y(野生型MUC1における460位)、のアミノ酸置換を含有する。置換C495A(野生型MUC1タンパク質における404位)は不活性化変異であり、置換の残りは、アゴニストエピトープを生成するためである。
【0074】
配列番号16は、本明細書中、配列番号1と呼ぶエンハンサーアゴニストペプチドを含む。配列番号1は、配列番号16の513位?522位に位置する。
【0075】
配列番号16で表される、酵母ベースの免疫療法のためのMUC1抗原は、A2、A3及びA24を含むいくつかの異なるHLA型のアゴニストエピトープを含有し、それが、MUC1を発現する癌を有する種々の個体において腫瘍を標的とするための、汎用且つ固有の抗原になっている。
【0076】
本発明の酵母ベースの免疫療法組成物に有用なMUC1抗原としては、配列番号16の92位?566位(配列番号16内のMUC1抗原)が挙げられ得る(しかしそれに限定されない)タンパク質、の1部を形成する、融合タンパク質の全長にわたって、又は配列番号16の明示された断片(例、免疫学的ドメイン又は機能的ドメイン(少なくとも1の生物学的活性を有するドメイン))にわたって、配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一のアミノ酸配列を有する、抗原も挙げられる。
【0077】
本明細書で例示されたもの以外の配列若しくはソース、及び特に、同一の動物種内の配列若しくはソースから由来するか、又は得られる、MUC1タンパク質のいずれかの対応する部分を用いて、本明細書に記載のペプチド、ポリペプチド、及び融合タンパク質と類似又は同一の全体構造を有する、ペプチド、ポリペプチド、及び融合タンパク質を作製することは簡単である。例として、単純な配列アラインメントのツール又は方法を用いて、配列番号16の92位?566位に対応する任意のソースからの、所定のヒトMUC1タンパク質における対応する配列を、容易に同定し得る。従って、本明細書に例示の配列と少数の及び/又は保存的な相違を有する配列は、明確に本発明に包含される。
【0078】
上述の通り、配列番号16の融合タンパク質に関して上記したもの等の、N末端側発現配列及びC末端側タグは、任意であるが、発現、安定性を改善するか、若しくは促進するため、並びに/又はタンパク質の同定及び/若しくは精製を可能にするために、いくつかの異なる配列から選択し得る。例えば、酵母細胞における抗原の発現の安定性を増強し、及び/又は酵母におけるタンパク質の翻訳後修飾を妨げる、例示的なN末端合成配列としては、(配列番号19により本明細書に表される)配列M-A-D-E-A-Pが挙げられる。他の実施形態においては、MUC1抗原は、α因子プレプロ配列(アルファ因子シグナルリーダー配列とも呼ばれ、そのアミノ酸配列は、配列番号17又は配列番号18により本明細書に例示される)等の酵母タンパク質に、N末端で連結される。酵母アルファ因子プレプロ配列のための他の配列は、当該分野で知られており、本発明における使用のために包含される。また、酵母内での使用に好適な多くの異なるプロモーターが、当該分野において知られている。更に、短い介在リンカー配列(例、1、2、3、4、又は5アミノ酸のペプチド)が、クローニングを容易にする制限酵素部位を導入するため、宿主ファゴソームプロテアーゼ用の切断部位として、タンパク質又は抗原のプロセシングを加速するため、及びコンストラクトの将来的操作のため等の、様々な理由で、MUC1抗原を含む融合タンパク質の各部分の間に導入され得る。
【0079】
本発明の、酵母に関する実施形態における使用のために、任意の好適な酵母プロモーターが用いられ得、多様な、かかるプロモーターが当業者に知られている。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)における発現用のプロモーターとしては、以下の酵母タンパク質:アルコールデヒドロゲナーゼI(ADH1)又はII(ADH2)、CUP1、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、翻訳伸長因子EF-1α(TEF2)、グリセロアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH;トリオースリン酸デヒドロゲナーゼについては、TDH3とも呼ばれる)、ガラクトキナーゼ(GAL1)、ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ(GAL7)、UDP-ガラクトースエピメラーゼ(GAL10)、シトクロムc1(CYC1)、Sec7タンパク質(SEC7)及び酸性ホスファターゼ(PHO5)をコードする遺伝子のプロモーターが挙げられるが、これらに限定されず、ADH2/GAPDH及びCYC1/GAL10プロモーター等のハイブリッドプロモーター、細胞中のグルコース濃度が低い(例、約0.1?約0.2%)場合に誘導されるADH2/GAPDHプロモーター、並びにCUP1プロモーター及びTEF2プロモーターが挙げられる。同様に、いくつかの上流活性化配列(UAS:upstream activation sequence)(エンハンサーとも呼ばれる)が知られている。サッカロミセス・セレビシエにおける発現用の上流活性化配列としては、以下のタンパク質:PCK1、TPI、TDH3、CYC1、ADH1、ADH2、SUC2、GAL1、GAL7及びGAL10をコードする遺伝子のUAS、並びにGAL4遺伝子産物によって活性化される他のUASが挙げられるが、これらに限定されず、1つの態様においては、ADH2 UASが用いられる。ADH2 UASは、ADR1遺伝子産物によって活性化されることから、異種遺伝子がADH2 UASに作動可能に連結される場合、ADR1遺伝子を過剰発現するのが好ましい場合がある。サッカロミセス・セレビシエにおける発現用の転写終結配列としては、α因子、GAPDH、及びCYC1遺伝子の終結配列が挙げられる。
【0080】
メチル栄養の(methyltrophic)酵母において遺伝子を発現する転写制御配列としては、アルコールオキシダーゼ及びギ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の転写制御領域が挙げられる。
【0081】
本発明によれば、酵母ベースの免疫療法組成物において用いられる「酵母ビヒクル」は、任意の酵母細胞(例、全酵母若しくは無傷細胞)又はその誘導体(以下を参照)であり、本発明の酵母ベースの免疫療法組成物(例、治療又は予防組成物)において、1種以上の抗原、その免疫原性ドメイン若しくはそのエピトープと組合せて用いられ得る。従って、酵母ビヒクルとしては、生きている無傷の(全)酵母微生物(即ち、細胞壁を含む、その成分をすべて有する酵母細胞)、死滅した(死んだ)若しくは不活性化された無傷酵母微生物、酵母スフェロプロスト(即ち、細胞壁を欠く酵母細胞)、酵母サイトプラスト(すなわち、細胞壁及び核を欠く酵母細胞)、酵母ゴースト(すなわち、細胞壁、核、及び細胞質を欠く酵母細胞)、サブセルラーの(subcellular)酵母膜抽出物若しくはその画分(酵母膜粒子とも呼ばれ、以前はサブセルラーの酵母粒子と呼ばれた)、任意の他の酵母粒子、又は酵母細胞壁標品が挙げられる、無傷酵母の誘導体、が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0082】
酵母スフェロプラストは、典型的に、酵母細胞壁の酵素的消化によって製造される。かかる方法は、例えば、Franzusoff et al.,Meth.Enzymol.,194:662-674(1991)に記載されている。酵母サイトプラストは、典型的に、酵母細胞の除核によって製造される。かかる方法は、例えば、Coon,Natl.Cancer Inst.Monogr.,48:45-55(1978)に記載されている。酵母ゴーストは、典型的に、透過処理又は溶解した細胞を再封入することによって製造され、その細胞の細胞小器官の少なくとも一部を含有し得るが、含む必要はない。かかる方法は、例えば、Franzusoff et al.,J.Biol.Chem.,258,3608-3614(1983)及びBussey et al.,Biochim.Biophys.Acta,553:185-196(1979)に記載されている。酵母膜粒子(サブセルラーの酵母膜抽出物又はその画分)とは、天然の核又は細胞質が欠失した、酵母の膜を指す。粒子は、任意のサイズであり得、天然酵母膜の大きさから、超音波破砕又は当業者に知られている他の膜破砕方法に続く再封入によって製造される微粒子までの大きさが含まれる。サブセルラーの酵母膜抽出物を製造するための方法は、例えば、Franzusoff et al.,Meth.Enzymol.,194,662-674(1991)に記載されている。酵母膜部分を含有する酵母膜粒子の画分、及び、酵母膜粒子の調製前に、抗原又は他のタンパク質を酵母により組換え発現させる場合には、目的の抗原又は他のタンパク質を含有する酵母膜粒子の画分、も用い得る。目的の抗原又は他のタンパク質は、膜の内側、膜のいずれかの表面上、又はそれらの組合せに担持され得る(即ち、タンパク質は、膜の内側及び外側の両方にあり得、及び/又は酵母膜粒子の膜を貫通し得る)。1つの実施形態においては、酵母膜粒子は、組換え酵母膜粒子であり、これは、膜の表面上に、又は少なくとも部分的に膜内に埋め込んで、少なくとも1の所望の抗原若しくは目的とする他のタンパク質を含む、無傷の、破砕された、若しくは破砕され再封入された、酵母膜であり得る。酵母細胞壁標品の例は、該酵母細胞壁標品が、被験体に投与されると、疾患標的に対して所望の免疫応答を刺激するように、その表面上に、又は少なくとも部分的に細胞壁内に埋め込んで、抗原を担持する、単離された酵母細胞壁の標品である。
【0083】
本発明の酵母ビヒクルを製造するためには、本発明において宿主細胞として用いられるものでなければ、任意の酵母株が用いられ得る。酵母は、3綱:子嚢菌(Ascomycetes)、担子菌(Basidiomycetes)及び不完全菌(Fungi Imperfecti)のうちの1に属する単細胞微生物である。免疫調節成分として用いるための酵母の種類の選択について考慮することの1つは、酵母の病原性である。1つの実施形態においては、酵母は、サッカロミセス・セレビシエ等の非病原性株である。非病原性酵母株の選択は、酵母ビヒクルを投与される個体へのあらゆる有害な作用を最小限にする。しかし、当業者に知られているいずれかの手段(例、変異株)によって、酵母の病原性を無効にし得れば、病原性酵母が用いられ得る。本発明の1つの態様によれば、非病原性酵母株が用いられる。
【0084】
本発明において用られ得る酵母株の属としては、サッカロミセス属(Saccharomyces)、カンジダ属(Candida)(病原性であり得る)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、ハンセヌラ属(Hansenula)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)及びヤロウィア属(Yarrowia)が挙げられるが、これらに限定されない。1つの態様においては、酵母属は、サッカロミセス属(Saccharomyces)、カンジダ属(Candida)、ハンセヌラ属(Hansenula)、ピキア属(Pichia)又はシゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)から選択され、1つの態様においては、サッカロミセス属(Saccharomyces)が用いられる。本発明において用いられ得る酵母株の種としては、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ケフィア(Candida kefyr)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、クリプトコッカス・ラウレンティ(Cryptococcus laurentii)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ハンセヌラ・アノマラ(Hansenula anomala)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、クルイベロミセス・マルキシアヌス・バー・ラクチス(Kluyveromyces marxianus var.lactis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ロドトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、及びヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)が挙げられるが、これらに限定されない。これら種の多くが、様々な亜種、タイプ、サブタイプなどを含み、これらが、前述した種内に含まれることが意図されることは、理解すべきである。1つの態様においては、本発明において用いられる酵母種としては、S.セレビシエ、C.アルビカンス、H.ポリモルファ、P.パストリス及びS.ポンべが挙げられる。S.セレビシエは、操作するのが比較的容易であり、食品添加物としての使用に「一般に安全と認められる(Generally Recognized As Safe)」又は「GRAS」(GRAS、食品医薬品局による提案規定(FDA propsed Rule)62FR18938、1997年4月17日)であることから、有用である。本発明の1つの実施形態は、例えば、S.セレビシエ cir°株等の、プラスミドを特に高いコピー数に複製することができる酵母株である。該S.セレビシエ株は、そのような、1以上の標的抗原(複数可)及び/又は抗原融合タンパク質(複数可)及び/又は他のタンパク質を高レベルで発現させることを可能にする発現ベクターを担持できる株の1つである。本発明で有用な、別の酵母株は、サッカロミセス・セレビシエ W303αである。更に、N結合グリコシル化を伸長させる酵素の変異等の、発現した標的抗原又は他のタンパク質の翻訳後修飾低減を示すものを含む、任意の変異酵母株が本発明において用いられ得る。本発明の1つの態様においては、酵母ベースの免疫療法組成物は、野生型株(正常なグリコシル化を有する)により作製される同一の抗原と比較して、低グリコシル化されたタンパク質としてMUC1抗原を産生する変異酵母株を用いて、作製される。かかるMUC1抗原は、腫瘍細胞が発現するMU1抗原により類似する可能性があり、次いで、抗原提示細胞によって、固有のT細胞エピトープにプロセシングされ得るので、特定の抗腫瘍反応を増強する。
【0085】
一般に、酵母ビヒクル並びに抗原(複数可)及び/又は他の物質は、本明細書に記載のいずれの技術によっても結合され得る。1つの態様においては、酵母ビヒクルに、組成物中に含められる、抗原(複数可)及び/又は他の、若しくは更なる、物質(複数可)が細胞内ロードされる。別の態様においては、抗原(複数可)及び/又は物質(複数可)が、酵母ビヒクルと共有又は非共有結合される。なお別の態様においては、酵母ビヒクル並びに抗原(複数可)及び/又は物質(複数可)が、混合によって結合される。別の態様においては、抗原(複数可)及び/又は物質(複数可)は、組換えにより、酵母ビヒクルに、又は酵母ビヒクルが誘導される酵母細胞若しくは酵母スフェロプラストに、発現する(酵母ビヒクルが無傷の全細胞又はスフェロプラスト以外の場合)。
【0086】
1つの実施形態においては、酵母ビヒクルを調製するのに用いられる酵母細胞は、ペプチド又はポリペプチドが酵母細胞に発現するように、ペプチド又はポリペプチド(例、抗原)をコードする異種核酸分子でトランスフェクトされる。かかる酵母は、本明細書において、組換え酵母又は組換え酵母ビヒクルとも呼ばれる。次いで、酵母細胞は、医薬的に許容可能な賦形剤で製剤化されて個体に直接投与され、個体への後の投与のために貯蔵され、又は樹状細胞にロードされ得、その後、今度は個体に投与され得る。酵母細胞はまた、死滅させられ得、或いは、酵母スフェロプラスト、サイトプラスト、ゴースト、又はサブセルラーの粒子の形成等により、誘導体化され得、これらのいずれかに続いて、細胞又は誘導体は、貯蔵されるか、個体に直接投与されるか、又は、樹状細胞にロードされ得る。酵母スフェロプラストはまた、抗原を発現する組換えスフェロプラストを作製するために、組換え核酸分子で直接トランスフェクトされ得る(例、スフェロプラストが全酵母から製造され、次いでトランスフェクトされる)。酵母サイトプラスト、酵母ゴースト、又は酵母膜粒子若しくは酵母細胞壁粒子、或いはこれらの画分を含む酵母ビヒクルを作製するために、抗原(複数可)を組換えにより発現する酵母細胞又は酵母スフェロプラストが用いられ得る。
【0087】
本発明の酵母ビヒクルによって製造される抗原及び/又は他のタンパク質の数は、酵母ビヒクルが妥当に産生し得る、抗原及び/又は他のタンパク質の任意の数であり、典型的には、少なくとも1から少なくとも約6又はそれ以上の範囲であり、約2?約6の抗原及び/又は他のタンパク質を含む。
【0088】
本発明の酵母ビヒクルにおける抗原又は他のタンパク質の発現は、当業者に知られている技術を用いて達成される。簡潔に述べると、宿主酵母細胞に形質転換された場合に、核酸分子の構成的又は調節された発現のいずれかをもたらし得るようにするために、少なくとも1の所望の抗原又は他のタンパク質をコードする核酸分子が、該核酸分子が転写制御配列と作動可能に連結される態様で、発現ベクターに挿入される。1以上の抗原及び/又は他のタンパク質をコードする核酸分子は、1以上の発現ベクター中で、1以上の発現制御配列と作動可能に連結され得る。特に重要な発現制御配列は、プロモーター及び上流活性化配列等の、転写開始を制御するものである。酵母における使用に好適なプロモーターが上記されている。
【0089】
本発明による、細胞(例、酵母細胞)への核酸分子のトランスフェクションは、核酸分子が細胞に導入され得るいずれかの方法によって達成され得、拡散、能動輸送、浴中超音波破砕(bath sonication)、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、及び原形質体融合が挙げられるが、これらに限定されない。トランスフェクトされた核酸分子は、当業者に知られている技術を用いて、酵母染色体に組み込まれ得るか、又は染色体外ベクター上で維持され得る。かかる核酸分子を担持する酵母ビヒクルの例は、本明細書に詳しく開示されている。上述した通り、酵母サイトプラスト、酵母ゴースト、並びに酵母膜粒子若しくは細胞壁標品は、無傷の酵母微生物又は酵母スフェロプラストを所望の核酸分子でトランスフェクトし、そこに抗原を産生させ、次いで所望の抗原又は他のタンパク質を含有するサイトプラスト、ゴースト若しくはサブセルラーの酵母膜抽出物又はこれらの画分を製造するのに当業者に知られている技術を用い、微生物又はスフェロプラストを更に操作することによって、組換えによっても製造され得る。
【0090】
組換え酵母ビヒクルの製造並びに酵母ビヒクルによる抗原及び/又は他のタンパク質の発現のために効果的な条件としては、酵母株を培養し得る有効培地が挙げられる。有効培地は、典型的に、同化可能な炭水化物、窒素及びリン酸供給源、並びに適切な塩、ミネラル類、金属及びビタミンや増殖因子等のその他の栄養素を含む水性培地である。培地は、複合栄養素を含み得るか、又は規定最少培地であり得る。本発明の酵母株は、バイオリアクター、三角フラスコ(Erlenmeyer flask)、試験管、マイクロタイターディッシュ、及びペトリプレートが挙げられるが、これらに限定されない、様々な容器中で培養され得る。培養は、酵母株に適切な温度、pH及び酸素濃度で行われる。かかる培養条件は、十分に、当業者の技術の範囲内である(例えば、Guthrie et al.(eds.),Methods in Enzymology,vol.194,Academic Press,San Diego(1991)参照)。例えば、1つのプロトコルによれば、酵母ベースのMUC1免疫療法組成物の、スタータープレート及び/又はスターター培養物から得られた培養物を用いて、好適な培地を含有する液体培養物が接種され得、250rpmで撹拌しながら、30℃で約20時間増殖させられる。次いで、必要に応じて、初代培養物はより大きな培養物に増幅され得る。酵母を形質転換するのに用いたベクターからのタンパク質発現(例、MUC1発現)は、利用したプロモーターが構成プロモーターの場合、構成性となり得、又は利用したプロモーターが、誘導性プロモーターの場合、プロモーターに適した誘導条件(例、CUP1プロモーターの場合には、硫酸銅)の追加により、誘導され得る。誘導性プロモーターの場合には、タンパク質発現の誘導は、培養物を好適な細胞密度(約0.2YU/ml又はそれ以上であり得る)まで増殖させた後、開始され得る。
【0091】
本発明の酵母ベースの免疫療法組成物の培養に好適な培地の非限定的な例の1つが、U2培地である。U2培地は、以下の成分:15g/Lのグルコース、6.7g/Lの硫酸アンモニウム含有酵母窒素原基礎培地、並びに各々0.04mg/mLのヒスチジン、トリプトファン、及びアデニン、及び0.06mg/mLのロイシン、を含む。本発明の酵母ベースの免疫療法組成物の培養に好適な培地の別の非限定的な例は、UL2培地である。UL2培地は、以下の成分:15g/Lのグルコース、6.7g/Lの硫酸アンモニウム含有酵母窒素原基礎培地、並びに各々0.04mg/mLのヒスチジン、トリプトファン、及びアデニンを含む。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態においては、酵母は、中性pH条件下で増殖させられる(時に、「DEC」又は「Dec」条件とも呼ばれる)。本明細書で用いる場合、用語「中性pH」の一般的な使用は、pH約5.5?pH約8、1つの態様においては、pH約6?pH約8のpH範囲を指す。pHメータで測定する場合、微細な変動(例、1/10又は1/100)が起こりうることは、当業者に理解されよう。このように、酵母細胞を増殖させるための中性pHの使用とは、これら酵母細胞を、培養中の時間の大半の間、中性pHで増殖させることを意味する。1つの実施形態においては、酵母が、少なくとも5.5のpHレベルに維持した培地(即ち、培養培地のpHを、pH5.5を下回らせない)中で増殖させられる。別の態様においては、酵母が、約6、6.5、7、7.5、又は8に維持したpHレベルで増殖させられる。1つの態様においては、好適な緩衝液を使用し、緩衝化された培養物又は増殖培地を作製することによって、中性pHが維持される。酵母の培養における中性pHの使用は、酵母を、免疫調節用のビヒクルとして用いることにとって、望ましい特性であるいくつかの生物学的効果を促進する。例えば、酵母を中性pHで培養することは、細胞産生時間に対して負の作用(例、倍加時間の減速)なく、酵母の良好な増殖を可能にする。酵母は、その細胞壁柔軟性を失うことなく、高密度にまで増殖し続け得る。中性pHの使用は、すべての回収密度で、柔軟な細胞壁を有する酵母及び/又は細胞壁消化酵素(例、グルカナーゼ)に対してより感受性のある酵母の製造を可能にする。柔軟な細胞壁を有する酵母は、より酸性の条件下で増殖させた酵母と比較して、例えば、酵母を貪食した抗原提示細胞によるサイトカイン(例、IFN-γ、インターロイキン-12(IL-12)、及びIL-2が挙げられるが、これらに限定されないTH1型サイトカイン、並びにIL-6等の炎症性サイトカイン)の分泌を促進することにより、異なる又は改善された免疫応答を誘導し得るため、この特性は望ましい。更に、かかる培養方法により、細胞壁内に位置する抗原との高い接触性がもたらされる。別の態様においては、いくつかの抗原についての中性pHの使用は、ジチオスレイトール(DTT)での処理により、ジスルフィド結合する抗原の放出を可能にするが、これは、かかる、抗原を発現する酵母をより低いpH(例、pH5)で、培地中で培養した場合、不可能である。本発明において用いるための酵母を培養するための、中性pH条件の使用の非限定的な一例においては、上記のUL2培地は、例えば、4.2g/Lのビス-トリス(Bis-Tris)を用いて緩衝化される。
【0093】
1つの実施形態では、特に表面上での、酵母による抗原の発現を制御するために、酵母グリコシル化の量の制御が用いられる。酵母グリコシル化の量は、糖部分が嵩高になりやすいため、抗原、特に、表面上に発現した抗原の免疫原性及び抗原性に影響を与え得る。このように、本発明による酵母の調節においては、酵母表面上の糖部分の存在、及びその、標的抗原(複数可)周辺の3次元空間への影響が考慮されるべきである。酵母のグリコシル化の量を低下又は上昇させるために、任意の方法が、所望により用いられ得る。例えば、グリコシル化を低下させるように選択された酵母変異株(例、mnnl、och1及びmnn9変異体)を用い得、又は、変異により、標的抗原上のグリコシル化アクセプター配列を排除し得る。或いは、短縮グリコシル化パターンを有する酵母、例、ピキア(Pichia)を用い得る。また、グリコシル化を低下させるか、又は改変する方法を用いて、酵母を処理し得る。
【0094】
本発明の1つの実施形態においては、酵母ビヒクルでの組換えによる抗原の発現に代わるものとして、ポリペプチド(タンパク質)若しくはペプチド、並びに/或いは本発明による抗原として作用する、及び/又は免疫調節剤若しくは生物学的反応修飾剤として有用な、他の分子を、酵母ビヒクルに細胞内ロードする。その後、既に細胞内に抗原及び/又は他のタンパク質を含有する酵母ビヒクルを、個体に投与し得、又は、樹状細胞等の担体にロードし得、それが今度は個体に投与される。ペプチド及びタンパク質は、拡散、能動輸送、リポソーム融合、エレクトロポレーション、食作用、凍結融解サイクル及び浴中超音波破砕等、当業者に知られている技術によって、本発明の酵母ビヒクルに直接挿入し得る。ペプチド、タンパク質、炭水化物、又は他の分子を直接ロードし得る酵母ビヒクルとしては、無傷酵母、及びスフェロプラスト、ゴースト若しくはサイトプラストが挙げられ、これらは、製造後、抗原及び他の物質をロードされ得る。或いは、無傷酵母は、抗原及び/又は物質をロードされ得、次いで、これらから、スフェロプラスト、ゴースト、サイトプラスト、又はサブセルラーの粒子が調製され得る。この実施形態においては、任意の数の抗原及び/又は他の物質、例えば、微生物又はその部分のローディングによって提供される等で、少なくとも1、2、3、4、又は最大数百若しくは最大数千の全整数の抗原及び/又は他の物質が、酵母ビヒクルにロードされ得る。
【0095】
本発明の別の実施形態においては、抗原及び/又は他の物質が酵母ビヒクルに物理的に結合される。酵母ビヒクルへの抗原及び/又は他の物質の物理的結合は、当該分野において好適な、(抗体若しくは他の結合相手を用いることによる等で、酵母ビヒクルの外側表面への抗原及び/又は他の物質の化学的架橋、又は酵母ビヒクルの外側表面への抗原及び/又は他の物質の生物学的連結が挙げられるが、これらに限定されない共有及び非共有結合方法が挙げられる、任意の方法によって達成され得る。化学的架橋は、例えばグルタルアルデヒド結合、光親和性標識、カルボジイミドによる処理、ジスルフィド結合の連結が可能な化学物質による処理、並びに当該分野で標準的な他の架橋化学物質による処理を含む方法によって達成され得る。或いは、酵母の外側表面が、特定の電荷特性を有する抗原及び/又は他の物質とより融合若しくは結合しそうになるように、酵母膜の脂質二層の電荷又は細胞壁の組成を改変する化学物質が、酵母ビヒクルと接触させられ得る。抗体、結合ペプチド、可溶性受容体、及び他のリガンド等の標的化物質も、融合タンパク質として抗原に組み込まれ得るか、そうでなければ、抗原と酵母ビヒクルとの結合のために抗原に結合され得る。
【0096】
抗原又は他のタンパク質が、酵母の表面上に発現するか、又は物理的に結合する場合、1つの態様においては、表面上の抗原若しくは他のタンパク質の発現又は含量を最適化するように、スペーサアームが、慎重に選択され得る。スペーサアーム(複数可)のサイズは、どの程度の抗原又は他のタンパク質を、酵母の表面上での結合のために露出させるかに影響を及ぼし得る。従って、どの抗原(複数可)又は他のタンパク質(複数可)が用いられているかに応じて、当業者は、酵母表面上の抗原又は他のタンパク質の適切なスペーシングを達成するスペーサアームを選択する。1つの実施形態においては、スペーサアームは、少なくとも450アミノ酸の酵母タンパク質である。スペーサアームは、詳細に上記されている。
【0097】
なお別の実施形態においては、酵母ビヒクル及び抗原又は他のタンパク質が、緩衝液又は他の好適な製剤(例、混合物)中で、酵母ビヒクル及び抗原又は他のタンパク質を穏やかに混合すること等の、より受動的、非特異的若しくは非共有結合的な機構によって、互いに結合させられる。
【0098】
1つの実施形態においては、酵母細胞壁標品、酵母膜粒子若しくは酵母断片(即ち、無傷ではない)を製造するような様式で、(異種抗原又は他のタンパク質の発現を伴うか、又は伴わないで)無傷酵母が、粉砕又は処理され得、いくつかの実施形態においては、酵母断片が、免疫応答を増強するための抗原(例、DNAワクチン、タンパク質サブユニットワクチン、死滅若しくは不活性化病原体、ウイルスベクターワクチン)を含む他の組成物と共に、提供若しくは投与され得る。酵母を、アジュバントとして用いる小片に粉砕するために、例えば、酵素処理、化学的処理又は物理的な力(例、機械的せん断若しくは超音波破砕)が用いられ得る。
【0099】
本発明の1つの実施形態においては、本発明において有用な酵母ビヒクルとしては、死滅又は不活性化した酵母ビヒクルが挙げられる。酵母の死滅又は不活性化は、当該分野で知られる、種々の好適な方法のいずれかを用いて達成され得る。例えば、酵母の熱不活性化は、酵母不活性化の標準的方法であり、当業者は、所望により、当該分野で知られる標準的方法によって、標的抗原の構造変化をモニターし得る。或いは、化学的、電気的、放射性若しくはUVの方法等の、酵母を不活性化する他の方法が用いられ得る。例えば、Methods of Enzymology, Vol.194,Cold Spring Harbor Publishing(1990)等の標準的な酵母培養の教科書に開示されている方法を参照のこと。用いられる不活性化戦略は、いずれも、標的抗原の二次、三次、若しくは四次構造を考慮に入れて、その免疫原性を最適化するような構造を保存すべきである。
【0100】
酵母ビヒクルは、当業者に知られている多くの方法を用いて、本発明の酵母ベースの免疫療法組成物又は製品に製剤化され得る。例えば、酵母ビヒクルは凍結乾燥により乾燥させられ得る。酵母ビヒクルを含む製剤は、ベーキング又は醸造処理に用いられる酵母についてなされるような、ケーキ若しくは錠剤に酵母を充填することによっても調製され得る。更に、酵母ビヒクルは、宿主若しくは宿主細胞に許容される等張緩衝液等の、医薬的に許容可能な賦形剤と混合され得る。かかる賦形剤の例としては、水、生理食塩水、リンゲル液(Ringer’s solution)、デキストロース溶液、ハンクス液(Hank’s solution)、及び他の水性生理的平衡食塩水が挙げられる。不揮発性油、ゴマ油、オレイン酸エチル、又はトリグリセリドなどの非水性ビヒクルも用いられ得る。他の有用な製剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、グリセロール又はデキストランなどの増粘剤を含有する懸濁液が挙げられる。賦形剤は、等張性及び化学的安定性を増強する物質等の添加剤も少量含有し得る。緩衝液の例としては、リン酸緩衝液、重炭酸緩衝液及びトリス(Tris)緩衝液が挙げられ、保存剤の例としては、チメロサール、m-又はo-クレゾール、ホルマリン及びベンジルアルコールが挙げられる。標準的製剤は、注射液、又は注射用の懸濁液若しくは溶液として好適な液体に溶解させ得る固体のいずれかであり得る。従って、非液体製剤において、賦形剤は、例えば、デキストロース、ヒト血清アルブミン、及び/又は保存剤を含み得、投与前に、これらに滅菌水又は生理食塩水が加えられ得る。
【0101】
ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター又は細胞は単離され得る。用語「単離された」は、本明細書で用いられる場合、生物学的環境(例、細胞、組織、培養培地、体液など)から取り出された又は任意の程度に純度を上げられた(例、合成培地から単離された)、化合物又は組成物を包含する。単離された化合物及び組成物は、従って、合成され、又は天然で産生され得る。
【0102】
ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター又は細胞は、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター又は細胞と、担体(例、医薬的又は生理学的に許容可能な担体)とを含む組成物(例、医薬組成物)として製剤化され得る。更に、本発明のペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞又は組成物は、本明細書に記載の方法において、単独で又は医薬製剤の一部として用いられ得る。
【0103】
組成物(例、医薬組成物)は、1を超える本発明のペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、若しくは細胞又は組成物を含み得る。本発明のベクター及び組成物は、他の任意の薬剤若しくは組成物又は癌の予防又は治療に有用なプロトコール或いは癌、及び特にMUC1発現又は過剰発現と関連する癌、の任意の症状を治療又は改善する任意の化合物を更に含み得るか、又はそれらと共に(同時に、逐次的に又は断続的に)投与され得る。例えば、組成物は1以上の他の医薬活性剤又は薬物を含み得る。医薬組成物における使用に好適であり得る、かかる他の医薬活性薬剤又は薬物の例としては、抗癌剤(例、化学療法剤又は放射線療法剤)、代謝拮抗薬、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬、シクロフォスファミド、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適な抗癌剤としては、アルキル化剤、葉酸アンタゴニスト、プリンアンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト、紡錘体毒、トポイソメラーゼ阻害剤、アポトーシス誘導剤、血管新生抑制剤、ポドフィロトキシン、ニトロソウレア、シスプラチン、カルボプラチン、インターフェロン、アスパラギナーゼ、タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、メゲストロール、マイトマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イリノテカン、タキソール、ゲルダナマイシン(例、17-AAG)、及び当該分野で知られる種々の抗癌ペプチド並びに抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
典型的なアルキル化剤としては、ナイトロジェンマスタード(例、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、ウラシルマスタード、又はクロラムブシル)、アルキルスルホネート(例、ブスルファン)、ニトロソウレア(例、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、又はダカルバジン)が挙げられるが、これらに限定されない。典型的な代謝拮抗剤としては、葉酸類似体(例、メトトレキサート)、ピリミジン類似体(例、5-フルオロウラシル(5-FU)又はシタラビン)、及びプリン類似体(例、メルカプトプリン又はチオグアニン)が挙げられるが、これらに限定されない。典型的なホルモン及びホルモンアンタゴニストとしては、副腎皮質ステロイド(例、プレドニゾン)、プロゲスチン(例、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、及び酢酸メゲストロール(magestrol))、エストロゲン(例、ジエチルスチルベストロール及びエチニルエストラジオール)、抗エストロゲン(例、タモキシフェン)、及びアンドロゲン(例、テストステロンプロプリオネート(testosterone proprionate)及びフルオキシメステロン)が挙げられるが、これらに限定されない。他の例示的な薬剤としては、ビンカアルカロイド(例、ビンブラスチン、ビンクリスチン、又はビンデシン)、エピポドフィロトキシン(例、エトポシド又はテニポシド)、抗生物質(例、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、又はマイトマイシン(mitocycin)C)、酵素(例、L-アスパラギナーゼ)、白金配位錯体(例、シスプラチンとしても知られるシス-ジアミンジクロロ白金II)、置換尿素(例、ヒドロキシ尿素)、メチルヒドラジン誘導体(例、プロカルバジン)、及び副腎皮質抑制剤(例、ミトタン及びアミノグルテチミド)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
同時に、逐次的に又は断続的に、本明細書に開示されたベクター及び組成物と共に投与し得る化学療法剤としては、アドリアマイシン、アルケラン、アラC、ブスルファン、CCNU、カルボプラチン(Carboplatinum)、シスプラチン(Cisplatinum)、サイトキサン、ダウノルビシン、DTIC、5-FU、フルダラビン、ハイドレア、イダルビシン、イホスファミド、メトトレキサート、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ナイトロジェンマスタード、タキソール(又は、ドセタキセル等の他のタキサン)、ベルバン、ビンクリスチン、VP-16、ゲムシタビン(ジェムザール)、ハーセプチン、イリノテカン(カンプトサール、CPT-11)、ロイスタチン、ナベルビン、リツキサンSTI-571、タキソテール、トポテカン(ハイカムチン)、ゼローダ(カペシタビン)、ゼベリン、エンザルタミド(MDV-3100又はXTANDI(商標))、及びカルシトリオールが挙げられる。典型的な免疫調節剤及び/又はサイトカインとしては、AS-101(Wyeth-Ayerst Labs.)、ブロピリミン(Upjohn)、ガンマインターフェロン(Genentech)、GM-CSF(顆粒球単球コロニー刺激因子;Genetics Institute)、IL-2(Cetus又はHoffman-LaRoche)、ヒト免疫グロブリン(Cutter Biological)、IMREG(Imreg of New Orleans,La.から)、SK&F 106528、腫瘍壊死因子(TNF)-α、及びTNF-βが挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
本発明のペプチド、ポリペプチド(タンパク質)、核酸、ベクター、細胞、及び組成物と組み合わせる、癌の治療に有用な他の薬剤、組成物又はプロトコル(例、治療プロトコル)としては、腫瘍の外科的切除、放射線療法、同種若しくは自己の幹細胞移植、T細胞養子移入、及び/又は標的型癌療法(例、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、アロマターゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、レチノイド受容体活性化物質、アポトーシス刺激剤、血管新生阻害剤、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤、若しくは免疫刺激剤が挙げられるが、これらに限定されない、腫瘍の成長及び進行に関与する分子を特異的に標的とする小分子薬、生物製剤、又は、モノクローナル抗体療法)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
更なる活性薬剤(例、化学療法剤)が、本明細書に開示のベクター及び組成物の投与前、投与と同時に(concurrently)(同時(simultaneously)を含む)、投与と交互に、順次、又は投与後に、投与され得る。特定の実施形態においては、1以上(例、2、3、4、又は5)の化学療法剤が、本明細書に開示のベクター及び組成物と組み合わせて投与される。例えば、化学療法又は標的癌療法と組み合わせて個体に与えられる場合には、免疫療法組成物の有効性を最大にするために、化学療法又は標的癌療法の投与間の「休日」中に、酵母ベースの免疫療法組成物を投与することが望ましい場合がある。腫瘍の外科的切除は、しばしば、酵母ベースの免疫療法組成物の投与に先行し得るが、更なる、又は最も重要な手術は、酵母ベースの免疫療法組成物の投与の間又は投与後に行い得る。
【0108】
更なる活性薬剤は、単独で、又は組成物中で投与され得る。更なる活性薬剤は、ベクター(例、プラスミド又はウイルスベクター)、リポソーム(STIMUVAX(商標)、L-BLP25、又はBLP25リポソームワクチンとしても知られるテセモチド(tecemotide))、又はナノ粒子(例、VERSAMUNE(商標)ナノテクノロジー)中に含めることにより、製剤化され得る。
【0109】
担体は、従来用いられるもののいずれかであり得、溶解度、及び活性化合物(複数可)との反応性の欠如など、生理化学的な考慮点によって、及び投与経路によってのみ限定される。本明細書に記載の医薬上許容可能な担体、例えば、ビヒクル、アジュバント、賦形剤、及び希釈剤は、当業者に周知であり、容易に公衆に利用可能である。医薬上許容可能な担体は、活性薬剤(複数可)に対し化学的に不活性であるもの、及び使用条件下、有害な副作用又は毒性を有さないものであることが好ましい。
【0110】
担体の選択は、本発明の特定のペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物、及び使用される他の活性薬剤又は薬物、並びにペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物を投与するために用いられる特定の方法によって、ある程度決定される。
【0111】
組成物は、更に又は代わりに、1以上の免疫刺激/調節分子を含み得る。インターロイキン(IL)-2、IL-4、IL-6、IL-12、IL-15、IL-15/IL-15Ra、IL-15/IL-Ra-Fc、インターフェロン(IFN)-γ、腫瘍壊死因子(TNF)-α、B7.1、B7.2、ICAM-1、ICAM-2、LFA-1、LFA-2、LFA-3、CD70、CD72、RANTES、G-CSF、GM-CSF、OX-40L、41BBL、抗CTLA-4、IDO阻害剤、抗PDL1、抗PD1、及びそれらの組み合わせ等の、任意の好適な免疫刺激/調節分子が用いられ得る。好ましくは、組成物は、B7.1、ICAM-1、及びLFA-3の組み合わせ(TRICOMとも呼ばれる)を含む。1以上の免疫刺激/調節分子が、1以上の免疫刺激/調節分子をコードする核酸を含むベクター(例、ポックスウイルスベクター等の組換えウイルスベクター)の形態で投与され得る。例えば、1以上の免疫刺激/調節分子(例、IL-12)が、DNAプラスミドの形態で、キトサンあり又はなしで投与され得る。或いは、1以上の免疫刺激/調節分子が、キトサンと混合されたタンパク質(例、組換えIL-12)等、タンパク質(例、組換えタンパク質)として投与され得る。1以上の免疫刺激/調節分子は、また、本発明の酵母ベースの免疫療法組成物と組合わせて、又は同時に投与され得る。
【0112】
本発明の1つの実施形態においては、組成物は、本発明のペプチド又はポリペプチド(タンパク質)をコードする核酸を含む第一の組換えベクター、並びにB7.1、ICAM-1及びLFA-3をコードする核酸を含む第二の組換えベクターを含む。別の実施形態においては、本発明のペプチド又はポリペプチド(タンパク質)をコードする核酸、並びにB7.1、ICAM-1、及びLFA-3をコードする核酸は、同一の組換えベクター中にある。第一及び/又は第二のベクターは、別の腫瘍関連抗原(例、CEA)、それらの修飾型(例、CEA-6D)、又はそれらのエピトープをコードする核酸を、更に含み得る。
【0113】
例えば、組換えベクターは、本発明のペプチドをコードする核酸並びにB7-1ポリペプチド、ICAM-1ポリペプチド及びLFA-3ポリペプチドをコードする核酸を含む、アビポックスベクター(例、カナリア痘ウイルス又は鶏痘ウイルス)であり得る。或いは、組換えベクターは、本発明のペプチドをコードする核酸並びにB7-1ポリペプチド、ICAM-1ポリペプチド、及びLFA-3ポリペプチドをコードする核酸を含む、オルソポックスウイルスであり得る。
【0114】
本発明の別の実施形態においては、組成物は、本明細書に記載の酵母ベースの免疫療法組成物を含み、該酵母ベースの免疫療法組成物は、酵母ビヒクル並びに、本発明のペプチド又はポリペプチドを含む、少なくとも1の抗原を含む。
【0115】
本発明は、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物及び必要に応じて、例えば、B7-1、ICAM-1及びLFA-3等の免疫刺激/調節分子で、樹状細胞に形質導入する方法を提供する。本発明の1つの態様においては、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物で形質導入された樹状細胞が、宿主に投与され、細胞傷害性T細胞応答の活性化等の、免疫応答を生じる。
【0116】
本発明は、MUC-1を発現する癌に罹患しているか、又は罹患しやすい被験体を治療する方法、及び/又はMUC-1を発現する癌に対する免疫応答を増強する方法、及び/又はMUC-1を発現する癌を阻害する方法を提供する。第1の実施形態においては、本発明の方法は、被験体に、治療有効量の1以上のペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物を投与することを含む。本発明のペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物は、特に、他の個体よりも、かかる癌を発症するリスクが高い個体において、MUC1を発現する癌の発症を予防するため、又はMUC1を発現する癌に罹患した患者を治療するために用いられ得る。本発明のペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物は、かかる癌の出現を予防し、かかる癌の進行を阻止し、又はかかる癌を除去するのに有用である。より具体的には、本発明のペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物は、MUC1を発現する腫瘍の発症を予防し、阻害し、若しくは遅延させるため、並びに/又は腫瘍の移動及び/若しくは他の組織への腫瘍の浸潤(転移)を予防し、阻害し、若しくは遅延させるため、並びに/又は、個体における癌の進行を一般的に予防し若しくは阻害するために用いられ得る。本発明のペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物は、個体における全身腫瘍組織量を減少させること;個体における腫瘍の成長を阻害すること;個体の生存を増加させること;及び/又は個体における癌の進行を予防する、阻害する、反転させる、若しくは遅延させることによる等で、癌の少なくとも1の症状を改善するためにも用いられ得る。本発明のペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物は、MUC1を発現する癌の任意の段階で、被験体を治療するために用いられ得る。
【0117】
第2の実施形態においては、本発明の方法は、被験体から樹状細胞(単離することによって)を得ること、樹状細胞を、治療有効量のペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物の1以上で処理すること、及び処理された樹状細胞を被験体に投与することを含む。
【0118】
第3の実施形態においては、本発明の方法は、(a)被験体から末梢血単核細胞(PBMC)を得る(単離する)こと、(b)PBMCから樹状細胞を単離すること、(c)治療有効量のペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物の1以上により、樹状細胞をex vivoで処理すること、(d)処理した樹状細胞により、PBMCをex vivoで活性化すること、及び(e)活性化されたPMBCを被験体に投与すること、を含む。
【0119】
第4の実施形態においては、本発明の方法は、(a)被験体からPBMCを得る(単離する)こと、(b)PBMCから樹状細胞を単離すること、(c)治療有効量のペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物の1以上により、樹状細胞をex vivoで処理すること、(d)処理した樹状細胞により、PBMCをex vivoで活性化すること、(e)活性化したPBMCからTリンパ球をex vivoで単離すること、及び(f)単離されたTリンパ球を被験体に投与すること、を含む、被験体においてMUC1を発現する癌を阻害するための方法を含む。
【0120】
本発明はまた、被験体においてMUC1を発現する癌を阻害するために、治療有効量のペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物の1以上により、in vitroで刺激した養子移入T細胞の使用を提供する。
【0121】
治療(例、MUCを発現する癌を阻害すること及び/又はMUC1を発現する癌に対する免疫応答を増強すること)は、腫瘍細胞を破壊すること、全身腫瘍組織量を減少させること、腫瘍の成長を阻害すること、原発性腫瘍のサイズを縮小させること、転移性病変(metastatic legions)数を減少させること、個体の生存を増加させること、転移性癌の発症の開始を遅延させること、阻害すること、阻止すること、若しくは予防すること(腫瘍浸潤及び/又は原発性癌の外部組織の腫瘍浸潤及び/又は癌の転移進行に関連する他の過程の発症の開始を遅延させること、阻害すること、阻止すること若しくは予防すること等)、原発性癌の進行を遅延させ若しくは阻止すること、腫瘍に対する免疫応答を向上させること、腫瘍抗原に対する長期記憶免疫応答を向上させること、及び/又は個体の全般的健康を向上させることを含むが、これらに限定されない。腫瘍細胞死は、例えば、支持細胞、血管新生、線維状マトリックスなどの存在に起因して、腫瘍サイズの実質的な減少なしに起こり得ることが理解されよう。従って、腫瘍サイズの減少が好ましいが、それは癌の治療に必要ではない。
【0122】
MUC1を発現する癌は、MUC1を発現する任意の癌であり得、原発性及び転移性の癌並びに、リンパ腫、白血病及び骨髄腫(例、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、多発性骨髄性リンパ腫(multiple myelogenous lymphoma)(MML)、急性骨髄性白血病(AML)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)形質転換B細胞、バーキットリンパ腫及びホジキンリンパ腫及びいくつかのB細胞非ホジキンリンパ腫)等の血液悪性腫瘍含む、ヒト癌腫(卵巣、乳房、小腸、胃、腎臓、膀胱、子宮、精巣、膵臓、直腸結腸、肺、甲状腺、胃、頭頸部、前立腺、食道、及び上皮細胞起源の他の癌)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物は、任意の方法によって宿主に投与され得る。例えば、細胞と、ペプチド、ポリペプチド、核酸、又は本明細書に記載の通りの、該核酸の送達及び発現を可能にするコンストラクトの一部としての核酸を含む組成物とを接触させることによって等、種々の技術のいずれかによって、ペプチド、ポリペプチド、又はペプチド若しくはポリペプチドをコードする核酸(例、ベクターとして)は、細胞(例、宿主における)内に導入され得る。核酸を、細胞内に導入及び細胞内で発現させるための具体的なプロトコルは、当該分野で知られている(例、Sambrook et al.(eds.),上記;及びAusubel et al.,上記、を参照)。
【0124】
本発明の酵母ベースの免疫療法組成物は、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、結節内投与、冠動脈内投与、動脈内投与(例、頸動脈に)、皮下投与、経皮送達、気管内投与、関節内投与、脳室内投与、吸入(例、エアロゾル)、頭蓋内、脊髄内、眼内、耳内、鼻腔内、経口、肺投与、カテーテルの含浸、及び組織への直接注入が挙げられるがこれらに限定されない、許容可能な種々の方法によって投与され得る。1つの態様においては、投与経路としては:静脈内、腹腔内、皮下、皮内、結節内、筋肉内、経皮、吸入、鼻腔内、経口、眼内、関節内、頭蓋内、及び脊髄内が挙げられる。非経口送達としては、皮内、筋肉内、腹腔内、胸膜内、肺内、静脈内、皮下、心房カテーテル及び静脈(venal)カテーテルの経路が挙げられ得る。耳内送達としては、点耳薬が挙げられ得、鼻腔内送達としては、点鼻薬又は鼻腔内注射が挙げられ得、眼内送達としては、点眼薬が挙げられ得る。エアロゾル(吸入)送達もまた、当該技術分野で標準の方法を用いて行われ得る(例えば、Stribling et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,189:11277-11281(1992)参照)。1つの態様においては、本発明の酵母ベースの免疫療法組成物は、皮下投与される。1つの態様においては、酵母ベースの免疫療法組成物は、腫瘍環境に直接投与される。
【0125】
ペプチド、ポリペプチド(タンパク質)、核酸、ベクター、細胞、及び組成物を宿主(被験体)に投与する、好適な方法は、当該分野で知られている。宿主(被験体又は個体)は、哺乳動物(例、マウス、ラット、ハムスター又はモルモット等の齧歯類、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマ、霊長類又はヒト)等の任意の好適な宿主であり得る。
【0126】
例えば、ペプチド、ポリペプチド、核酸又はベクター(例、組換えポックスウイルス)は、ex vivoで腫瘍細胞をペプチド、ポリペプチド、核酸、若しくはベクターに曝露することにより、又はペプチド、ポリペプチド、核酸、若しくはベクターを宿主へ注入することにより、宿主へ投与され得る。ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター(例、組換えポックスウイルス)又はベクターの組み合わせ、細胞、及び組成物は、癌病変又は腫瘍への直接注入により、又は局所適用(例、医薬上許容可能な担体とともに)により、直接投与(例、局所投与)され得る。
【0127】
ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物は、単独で、又はアジュバントと組み合わせて投与され得、リポソーム中に取り込まれ得(例、米国特許第5,643,599号、米国特許第5,464,630号、米国特許第5,059,421号、及び米国特許第4,885,172号に記載)、ナノ粒子中に取り込まれ得(例、VERSAMUNE(商標)ナノテクノロジー)、サイトカインとともに投与され得、生物学的応答修飾物質(例、インターフェロン、インターロイキン-2(IL-2)とともに投与され得、コロニー刺激因子(CSF、GM-CSF、及びG-CSF)とともに投与され得、及び/又は投与された、免疫応答を増強することが知られる、当該分野の他の試薬であり得る。
【0128】
好適なアジュバントの例としては、アラム、アルミニウム塩、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム(aluminum silica)、リン酸カルシウム、不完全フロイントアジュバント、QS21(南アメリカの樹木キラヤ・サポナリア・モリナ(Quillaja saponaria Molina)の樹皮に由来する免疫学的アジュバント)等のサポニン、モノホスホリル脂質A(MLP-A)、及びRIBI DETOX(商標)アジュバントが挙げられる。
【0129】
本発明における使用に特に好ましいアジュバントは、サイトカインGM-CSFである。GM-CSFは、樹状細胞による抗原プロセシング及び提示を増強するため、効果的なワクチンアジュバントであることが示されている。実験研究及び臨床試験によって、組換えGM-CSFは、種々の免疫原を対象とした宿主免疫を増強できることが示唆されている。
【0130】
GM-CSFは、ウイルスベクター(例、ポックスウイルスベクター)を用いて、又は単離されたタンパク質として、医薬製剤中で投与され得る。GM-CSFはペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物の最初の投与前、投与の間又は投与後に、宿主へ投与され、宿主の抗原特異的免疫応答を増強し得る。例えば、組換えGM-CSFタンパク質は、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物でのワクチン接種の各日に宿主へ投与され、翌3日間毎日(即ち合計4日間)投与され得る。任意の好適な用量のGM-CSFが使用できる。例えば、1日当たり50?500μg(例、100μg、200μg、300μg、400μg、及びそれらの間の範囲)の組換えGM-CSFが投与され得る。GM-CSFは、任意の好適な方法(例、皮下)により投与され得、好ましくは、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物での宿主のワクチン接種部位又はその近傍に投与される。
【0131】
1つの実施形態においては、本発明のペプチド又はポリペプチド(タンパク質)は、ヘルパーペプチド又は大きな担体分子に結合させて、ペプチド又はポリペプチドの免疫原性を増強し得る。これらの分子としては、インフルエンザペプチド、破傷風トキソイド、破傷風トキソイドCD4エピトープ、シュードモナス体外毒素A、ポリLリジン、脂質尾部、小胞体(ER)シグナル配列などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
本発明のペプチドは又はポリペプチド(タンパク質)は、当該分野で認められた方法を用いて、免疫グロブリン分子とも結合され得る。該免疫グロブリン分子は、腫瘍細胞に存在するが正常な細胞には存在しない又はごく少量しか存在しない表面レセプターに特異的であり得る。該免疫グロブリンは、特定の組織(例、乳房、卵巣、結腸又は前立腺組織)に特異的でもあり得る。かかるペプチド-免疫グロブリン結合体又はポリペプチド-免疫グロブリン結合体は、特定の組織及び/又は細胞へのペプチドの標的化を可能にする。
【0133】
ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物は、MUC1特異的免疫応答、好ましくは細胞性免疫応答を生じるのに効果的な量で、宿主(例、ヒト等の哺乳動物)へ投与される。免疫原としてのペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター又は細胞の有効性は、当該分野で知られているin vivo又はin vitroパラメーターによって決定され得る。これらのパラメーターとしては、抗原特異的な細胞毒性アッセイ、MUC1又はMUC1エピトープを発現する腫瘍の退縮、MUC1又はMUC1エピトープを発現する癌細胞の阻害、サイトカインの産生などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
任意の好適な用量のペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、若しくは細胞又はそれらの組成物が、宿主に投与され得る。適切な用量は、宿主の年齢、体重、身長、性別、全身状態、既往歴、疾患進行、及び全身腫瘍組織量などの要因に応じて変化し、臨床医によって決定され得る。例えば、ペプチドは、ワクチン接種あたり約0.05mg?約10mg(例、0.1mg、0.5mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、及びそれらの間の範囲)の用量で宿主(例、ヒト等の哺乳動物)に投与される得、好ましくはワクチン接種あたり約0.1mg?約5mgである。種々の用量(例、1、2、3、4、5、6又はそれ以上)が、提供(例、数週間又は数か月の期間にわたって)され得る。1つの実施形態においては、1種の用量が3か月の間毎月提供される。
【0135】
ベクターがウイルスベクターの場合、好適な用量は、約1×10^(5)?約1×10^(12)(例、1×10^(6)、1×10^(7)、1×10^(8)、1×10^(9)、1×10^(10)、1×10^(11)、及びそれらの間の範囲)プラーク形成単位(pfu)が挙げられ得るが、より低用量又はより高用量が宿主に投与され得る。例えば、約2×10^(8)pfuが投与(例、約0.5mLの体積で投与)され得る。
【0136】
本発明の細胞(例、細胞傷害性T細胞)は、注入あたり、約1×10^(5)細胞?2×10^(11)細胞(例、1×10^(6)、1×10^(7)、1×10^(8)、1×10^(9)、1×10^(10)、及びそれらの間の範囲)の用量で宿主に投与され得る。細胞は、例えば、1?3(例、1、2又は3)回の注入で投与され得る。細胞の投与に加え、宿主は、インターロイキン2(IL-2)等の生物学的応答修飾物質を投与され得る。投与される細胞が細胞傷害性T細胞の場合、in vivoのT細胞の数を更に増やすように細胞傷害性T細胞に刺激を与えるために、細胞傷害性T細胞の投与後、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、又はそれらの組成物が投与され得る。
【0137】
一般に、酵母ベースの免疫療法組成物の好適な単回用量は、好適な期間に亘って、1以上の回数投与した場合に、酵母ビヒクル及びMUC1抗原を、患者の体の所定の細胞種、組織、又は領域へ、1以上のMUC1抗原又はエピトープに対する抗原特異的免疫応答を誘発するための有効量で、効果的に提供できる用量である。例えば、1つの実施形態においては、本発明の酵母-MUC1の単回用量は、組成物が投与されている生物の体重1キログラム当たり、約1×10^(5)?約5×10^(7)酵母細胞当量である。1酵母単位(YU)は、1×10^(7)の酵母細胞又は酵母細胞当量である。1つの態様においては、本発明の酵母ビヒクルの単回用量は、投与あたり(即ち、生物あたり)約0.1YU(1×10^(6)の酵母細胞又は酵母細胞当量)?約100YU(1×10^(9)細胞)である(0.1×10^(6)細胞ずつのいずれかの中間用量(即ち、1.1x10^(6)、1.2x10^(6)、1.3x10^(6)など)を含む)。1つの実施形態においては、好適な用量としては、1YU?40YUの用量、及び、1つの態様においては、10YU?40YU、又は10YU?80YUが挙げられる。1つの実施形態においては、用量は、同一投与期間中、個体上の異なる部位で投与される。例えば、40YU用量は、1の投与期間中に、個体上の4つの異なる部位に10YU用量を注入することによって投与し得る。本発明は、ある量の酵母-MUC1免疫療法組成物(例、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20YU又はそれ以上)を、個体の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の異なる部位で投与し、単回用量を形成することを含む。
【0138】
投与される細胞が樹状細胞の場合、被験体に投与される樹状細胞の量は、被験体の状態に依存して変化し、医師(practitioner)により全ての適切な要因を考慮して決定されるべきである。好ましくは、約1×10^(6)?約1×10^(12)(例、約1×10^(7)、約1×10^(8)、約1×10^(9)、約1×10^(10)、又は約1×10^(11)(本明細書に記載の細胞数のいずれかの、間の範囲を含む))の樹状細胞がヒト成人のために利用される。これらの量は、被験体の年齢、体重、大きさ、状態、性別、治療されるべき腫瘍の種類、投与経路、治療が局所か又は全身か、及び他の要因に依存して変化する。当業者は、被験体の特定の状況及びニーズに合わせるために、適切な投与量及び投与スケジュールを当然容易に導き出すことができる。
【0139】
本発明は、有効量の本発明のペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター又は細胞により、単独で、又は1以上の免疫刺激/調節分子及び/若しくはアジュバントを含む組成物中又はリポソーム製剤中で、リンパ球を刺激することにより、in vivo、ex vivo又はin vitroで、ペプチド特異的な細胞傷害性Tリンパ球を作製する方法を提供する。リンパ球は、例えば、末梢血、腫瘍組織、リンパ節、及び胸膜液又は腹水液等の滲出液といった、任意の好適なソースからのリンパ球であり得る。
【0140】
MUC1ペプチド特異的細胞傷害性Tリンパ球は、MUC1に対して免疫反応性である。好ましくは、細胞傷害性Tリンパ球は、腫瘍細胞及び癌の発生を阻害し、MUC1又はそのエピトープを発現する腫瘍細胞の増殖を抑制するか、又は該細胞を死滅させる。細胞傷害性Tリンパ球は、抗原特異的であることに加えて、MHCクラスI拘束性であり得る。1つの実施形態においては、細胞傷害性Tリンパ球は、MHCクラスI HLA-A24拘束性である。細胞傷害性Tリンパ球は、好ましくはCD8^(+)の表現型を有する。
【0141】
1つの実施形態においては、リンパ球は宿主から取り出され、ex vivoでペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物により刺激され、細胞傷害性Tリンパ球を生じる。細胞傷害性Tリンパ球は、癌に対する免疫応答を増強するために宿主に投与され得、それによって癌を阻害する。従って、本発明は、宿主において癌を阻害する方法であって、(a)リンパ球を(例、宿主から)得ること、(b)ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞又はそれらの組成物により該リンパ球を刺激して、細胞傷害性Tリンパ球を作製すること、及び(c)該細胞傷害性Tリンパ球を宿主へ投与すること、を含み、癌が阻害される方法を提供する。
【0142】
別の実施形態においては、宿主内のリンパ球は、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物の、宿主への投与により刺激され、細胞傷害性Tリンパ球を生じ、かかる細胞傷害性Tリンパ球は癌への免疫応答を増強し、それによって癌を阻害する。
【0143】
本発明はプライム及びブーストのプロトコルを含む。特に、本発明のペプチド、ポリペプチド及びベクターに関する1つの実施形態においては、プロトコルは、本発明のペプチド又はポリペプチド並びに、必要に応じて1以上の免疫刺激/調節分子及び/又は他の腫瘍関連抗原(例、CEA)、それらの修飾型、及びそれらの免疫原性エピトープをコードする1以上の組換えベクターを含む組成物による最初の「プライム」と、続いて、本発明のペプチド又はポリペプチド、又は本発明のペプチド又はポリペプチド並びに、必要に応じて1以上の免疫刺激/調節分子及び/又は他の腫瘍関連抗原(例、CEA)、それらの修飾型、及びそれらの免疫原性エピトープをコードする1以上のポックスウイルスベクターを含有する組成物による、1回、又は好ましくは複数回の「ブースト」を含む。
【0144】
本実施形態においては、最初のプライミングワクチン接種(priming vaccination)は、1以上のベクターを含み得る。1つの実施形態においては、単一のベクター(例、ポックスウイルスベクター)が、本発明のペプチド並びに1以上の免疫刺激/調節分子及び/又は他の腫瘍関連抗原(例、CEA)、それらの修飾型、及びそれらの免疫原性エピトープの送達に用いられる。別の実施形態においては、2以上のベクター(例、ポックスウイルスベクター)が、プライミングワクチン接種を構成し、これは一回の注入で同時に投与される。
【0145】
ブースティングワクチン接種(boosting vaccinations)も、1以上のベクター(例、ポックスウイルスベクター)を含み得る。1つの実施形態においては、単一のベクターが、ブースティングワクチン接種の、本発明のペプチド並びに1以上の免疫刺激/調節分子及び/又は他の腫瘍関連抗原(例、CEA)、それらの修飾型、及びそれらの免疫原性エピトープの送達に用いられる。別の実施形態においては、2以上のベクターが、ブースティングワクチン接種を構成し、これは一回の注入で同時に投与され得る。
【0146】
異なる時間間隔での接種のために、異なるセットの治療用分子を有するベクターを用いた、異種のプライム/ブーストプロトコルを提供するために、異なるベクター(例、ポックスウイルスベクター)が用いられ得る。例えば、1の異種のプライム/ブースト組み合わせにおいて、第一のオルソポックスベクター組成物がプライムに用いられ、第二のアビポックスベクター組成物がブーストに用いられる。
【0147】
ベクター(例、ポックスウイルスベクター)の投与のためのスケジュールは、典型的に、ブースティングベクターの繰り返し投与を伴う。ブースティングベクターは、任意の好適な期間(例、2?4週間ごと)で1?3回(例、1、2又は3回)、任意の好適な長さの期間(例、合計少なくとも5から15回のブースティングワクチン接種のために6?12週間)投与され得る。例えば、プライマリーワクチン接種は、組換えワクシニア又はMVAベクターを含み得、それに続いて、複数回のブースターワクチン接種では、アビポックスベクター用いる。特定の実施形態においては、宿主は、プライミングベクターで一回ワクチン接種を受けた後、ブースティングベクターにより、2週間ごとに6ブーストを続け、その後、ブースティングベクターにより、4週間ごとに続け、そして疾患の進行に応じた期間、ブースティングベクターを用いて継続する。
【0148】
本発明は、被験体又は個体への、本発明の酵母ベースの免疫療法組成物の送達(投与、免疫、ワクチン接種)も含む。投与方法は、ex vivo又はin vivoで行われ得るが、典型的にはin vivoで行われる。酵母ベースの免疫療法組成物の、好適な投与経路及び好適な単回投与量は、上記されている。酵母ベースの免疫療法組成物の初回(オリジナル又はプライミング)投与に続いて、例えば、抗原に対する免疫応答が衰えた場合、或いは免疫応答をもたらすか、又は特定の抗原若しくは抗原(複数可)に対する記憶応答を誘導するために必要に応じて、酵母ベースの免疫療法組成物の「ブースター」又は「ブースト」が投与される。ブースターは、約1、2、3、4、5、6、7、又は8週の間隔で、若しくは毎月、隔月、四半期ごと、毎年、及び/又は最初の投与(プライミングの用量)後に、治療されている個体の状態及び投与時における治療の目的(例、予防的、積極的な治療、維持)に応じて、数年ずつ(few or several year increments)投与され得る。1つの実施形態においては、投与スケジュールは、数週間から、数ヶ月、数年の期間に亘って、酵母ベースの免疫療法組成物の用量が、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回、又はそれ以上投与されるものである。1つの実施形態においては、用量は、毎週、又は隔週、又は3週毎に1回、又は毎月、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の用量について投与され、続いて、毎週、隔週、3週毎に1回、又は毎月、癌に対する、所望の予防的又は治療的処置を達成するために、必要に応じた用量が投与される。望まれる場合、次いで、更なるブースターが、維持又は寛解療法と同様又はより長い間隔(数ヶ月又は数年)で与えられ得る。
【0149】
1つの実施形態においては、本発明は、医薬的に許容可能な担体中、本発明のペプチド又はポリペプチドをコードする核酸をそのゲノム又はその一部に組み込んだ、第1の組換えベクター(例、ポックスウイルスベクター)を少なくとも有する、キットを更に提供する。第1の組換えベクター(例、ポックスウイルスベクター)は、1以上の免疫刺激/調節分子及び/又は他の腫瘍関連抗原(例、CEA)、それらの修飾型、及びそれらの免疫原性エピトープをコードする1以上の核酸も含み得る。第1の組換えベクターに加えて、キットは、医薬的に許容可能な担体中、1以上の免疫刺激/調節分子及び/又は他の腫瘍関連抗原(例、CEA)、それらの修飾型、及びそれらの免疫原性エピトープをコードする1以上の核酸を含む、第2の組換えベクターを有し得る。キットは、容器、注射針、該キットを使用する方法の説明書を更に提供する。別の実施形態においては、キットは、GM-CSF等のアジュバント、及び/又は市販のアジュバントを、キットの構成要素とともに使用するための指示書、を更に提供する。
【0150】
本発明は、本明細書に記載の、いずれかの酵母ベースの免疫療法組成物、又は本明細書に記載の、かかる組成物の、いずれかの個々の構成成分を含むキットも含む。キットは、MUC1の発現又は過剰発現に関連するか、又はそれよって特徴付けられる、癌を予防又は治療するための、本発明の組成物のいずれかを使用するための、更なる試薬及び説明書又は指示書を含み得る。
【0151】
上述の通り、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物は、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、静脈内、及び腫瘍内を含むが、これらに限定されない、様々な経路で宿主に投与され得る。複数回投与が与えらる場合、該投与は、宿主内の1以上の部位にされ得、酵母ベースの免疫療法の場合には、単回用量は、個体の1、2、3、4又はそれ以上の部位に投与するために、該単回用量を等しい分割量に分割して投与され得る。
【0152】
ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物の投与は、「予防的」又は「治療的」であり得る。ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物は、予防的に提供される場合、腫瘍形成の前、又はMUC1を発現する腫瘍の発生の検出の前に、MUC1を発現する腫瘍の発生を予防し、阻害し、若しくは遅延させること;及び/又は、かかる腫瘍の転移を予防し、阻害し、若しくは遅延させること、及び/又は、個体における癌の進行を全般的に予防し若しくは阻害すること;を目的として、一般的には、宿主の免疫系の能力が、該宿主が発症しやすい腫瘍に対して戦えるようにするため、又は、宿主の該能力を改良するために提供される。例えば、遺伝性の発癌感受性を有する宿主は、かかる予防的免疫で治療される、好ましい一群の患者である。ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物の予防的投与は、MUC1を発現する癌を予防し、改善し、又は遅延させる。ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物は、治療的に提供される場合、MUC1を発現する癌の診断時又は診断後に、個体の全身腫瘍組織量を減少させること;個体における腫瘍の成長を阻害すること;個体の生存を増加させること;及び/又は、個体における癌の進行を予防すること、阻害すること、反転させること又は遅延させること等の、癌を改善する目的で、提供される。
【0153】
宿主が、既にMUC1を発現する癌又は転移癌と診断された場合、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物は、化学療法、腫瘍の外科的切除、癌標的療法による治療、同種又は自己幹細胞移植、T細胞養子移入、他の免疫療法及び/又は放射線療法等の、他の治療的処置と組み合わせて投与され得る。
【0154】
好ましい実施形態においては、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物を宿主へ投与すると、結果として、本発明のペプチド並びに必要に応じて1以上の免疫刺激/調節分子及び/又は他の腫瘍関連抗原(例、CEA)、それらの修飾型、及びそれらの免疫原性エピトープ(同時投与されたもの)を発現する宿主細胞がもたらされる。本発明のペプチド(即ち、MUC1抗原)は、感染した宿主細胞の細胞表面に発現し得る。1以上の免疫刺激/調節分子及び/又は他の腫瘍関連抗原(例、CEA)、それらの修飾型、及びそれらの免疫原性エピトープは、細胞表面に発現し得、又は宿主細胞によって活発に分泌され得る。MUC1抗原及び免疫刺激/調節分子の両方が発現すると、特定のT細胞に必要なMHC拘束性ペプチド及び該T細胞に適切なシグナルが提供されて、抗原認識、並びに抗原特異的T細胞の増殖又はクローン性増殖に役立つ。総合的な結果は、免疫システムのアップレギュレーションである。好ましくは、免疫応答のアップレギュレーションは、癌(例、乳癌、卵巣癌、結腸癌、肺癌、甲状腺癌、胃癌、頭頸部癌又は前立腺癌)細胞を死滅させること又はその増殖を阻害することができる、抗原特異的ヘルパーTリンパ球及び/又は細胞傷害性Tリンパ球の増加である。
【0155】
本発明の方法について、医薬組成物の種々の好適な製剤が存在する。非経口、皮下、静脈内、筋肉内、及び腹腔内投与のための以下の製剤が代表的であるが、決して限定されない。当業者は、本発明のペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞又は組成物のこれらの投与ルートは知られており、特定の化合物を投与するために、1超のルートが用いられ得るものの、特定のルートが別のルートと比べてより即効性があり、より効果的な反応を提供し得ることを理解する。
【0156】
注射製剤は、本発明に基づく、これら好ましい製剤の1つである。注射用組成物のために効果的な医薬担体の要件は、当業者に周知である(例、Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Company,Philadelphia,PA,Banker and Chalmers,eds.,pages 238-250(1982),及びASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel,4Th ed.,pages 622-630(1986)参照)。
【0157】
非経口投与に好適な製剤としては、酸化防止剤、緩衝液、静菌剤、及び製剤を、意図されるレシピエントの血液と等張とする溶質を含有し得る水性及び非水性の等張滅菌注射溶液、並びに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、及び保存剤を含有し得る水性及び非水性の滅菌懸濁液が挙げられる。ペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、又はそれらの組成物は、医薬担体中、生理学的に許容可能な希釈剤中で投与され得、これは例えば滅菌液体又は液体の混合物などであって、水、生理食塩水、デキストロース水溶液及び関連する糖溶液、エタノール、イソプロパノール、若しくはヘキサデシルアルコール等のアルコール、プロピレングリコール若しくはポリエチレングリコール等のグリコール、ジメチルスルホキシド、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール等のグリセロールケタール、ポリ(エチレングリコール)400等のエーテル、油、脂肪酸、脂肪酸エステル若しくはグリセリド、石鹸若しくは洗剤などの医薬上許容可能な界面活性剤の添加を含むか、若しくは含まないアセチル化脂肪酸グリセリド、ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース若しくはカルボキシメチルセルロース等の懸濁化剤、又は乳化剤及び他の医薬アジュバントが挙げられる。
【0158】
非経口製剤で用いられ得る油としては、石油系、動物性、植物性、及び合成油が挙げられる。油の具体的な例としては、ピーナッツ、大豆、胡麻、綿実、トウモロコシ、オリーブ、ワセリン及び鉱物が挙げられる。非経口製剤で用いるのに好適な脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルは、脂肪酸エステルの好適な例である。
【0159】
非経口製剤において用いるのに好適な石鹸としては、脂肪酸アルカリ金属、アンモニウム、及びトリエタノールアミン塩、並びに(a)例えば、ハロゲン化ジメチルジアルキルアンモニウム、及びハロゲン化アルキルピリジニウム等のカチオン性界面活性剤、(b)例えば、アルキル、アリール、及びオレフィンスルホネート、アルキル、オレフィン、エーテル、及びモノグリセリドスルフェート、及びスルホスクシネート等のアニオン性界面活性剤、(c)例えば、脂肪アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド、及びポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマー等のノニオン性界面活性剤、(d)例えば、アルキル-b-アミノプロピオネート、及び2-アルキル-イミダゾリン四級アンモニウム塩等の両性界面活性剤、及び(e)それらの混合物を含む、好適な界面活性剤が挙げられる。
【0160】
保存剤及び緩衝液が用いられ得る。注射部位の炎症を最小限にする又は排除するために、かかる組成物は、約12?約17の親水性-親油性バランス(HLB)を有する1以上のノニオン性界面活性剤を含有し得る。かかる製剤における界面活性剤の量は、典型的に約5重量%?約15重量%の範囲である。好適な界面活性剤としては、ソルビタンモノオレエート等のポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びエチレンオキサイドの疎水性塩基との高分子量付加物(プロピレンオキサイドのプロピレングリコールとの縮合により形成される)が挙げられる。
【0161】
非経口製剤は、アンプル及びバイアル等の、単回用量又は複数回用量密閉容器に入れて提示され得、且つ、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存され得、これは、使用直前に、注射のために滅菌液体賦形剤、例えば水の添加のみを必要する。即席注射溶液及び懸濁液は、滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製され得る。
【0162】
本発明の酵母ベースの免疫療法組成物は、最も典型的には、アジュバント又は他の担体なしで、単純な医薬的に許容可能な、PBS又は他の緩衝液等の賦形剤中の、酵母ベースの組成物の注射可能な製剤として投与される。
【0163】
以下の実施例は、本発明を更に説明するが、当然ながら、決してその範囲を限定すると解釈してはならない。
【実施例】
【0164】
実施例1
本実施例では、HLA-A24 MUC1-Cアゴニストエピトープの解析について説明する。
【0165】
I.材料及び方法
【0166】
患者-以前に記載の、イピリムマブと組み合わせたPSA-TRICOMワクチンの臨床試験(Madan et al.,Lancet Oncol.,13:501-8(2012))に登録された、2人の前立腺癌患者からのPBMCを用いた。国立衛生研究所(NIH)臨床センターの施設内審査委員会は、手順を承認しており、インフォームドコンセントは、ヘルシンキ宣言に従って得た。
【0167】
ペプチド-MUC1のアミノ酸配列を、HLA-A24結合ペプチドに関するコンセンサスモチーフとの一致についてスキャンした。ペプチド/MHC複合体の予測される解離半減期により潜在的なMHC結合ペプチドを順位づける、Parker et al.により開発されたコンピューターアルゴリズムを用いた。(Parker et al.,J.Immunol.,152:163-75(1994))。American Peptide Company(Sunnyvale,CA)が、MUC1のMUC1-C領域から、結合親和性を増加させるため、9-merペプチド及び10-merペプチドの類似体を、単一アミノ酸置換により合成した(表1)。ペプチドの純度は>90%だった。
【0168】
【表1】

【0169】
親和性及び結合活性(avidity)アッセイ-T2-A24細胞を用いる、HLA-A24ペプチドについての結合アッセイを確立するための多くの試みにもかかわらず、信頼性の高いアッセイは確立できなかった。従って、これらのペプチドは、単に、対応するペプチドでパルスした細胞及び天然ペプチドを発現する腫瘍細胞を溶解する能力に基づいて評価した。
【0170】
T細胞株の樹立-Tsang et al.,J.Natl.Cancer Inst.,87:982-90(1995)に記載されたプロトコルの修正版を、MUC1特異的CTLの作製に用いた。放射線照射した自己DCを、20μg/mLのペプチドで2時間パルスし、次いで、PBMCを10:1の比で添加した。3日後、ヒトIL-2(20シータス単位(Cetus units)/mL)を添加した。細胞を、7日ごとに再刺激した。三回目のin vitro刺激の後、細胞を、抗原提示細胞としての自己エプスタイン-バーウイルス形質転換B細胞を2:1の比率で用いて再刺激し、IL-7(10ng/mL)及びIL-15(5ng/mL)を含有する培地中で維持した。
【0171】
サイトカインの検出-様々な濃度(25、12.5、6.25及び3,13、及び1.56μg/ml)のペプチドでパルスした自己B細胞を、MUC1特異的T細胞株と、2:1の比で、24時間、インキュベートした。IFN-γに関して、上清をELISA(Invitrogen, Frederick,MD)により解析した。
【0172】
腫瘍細胞培養-膵臓癌細胞株ASPC-1(HLA-A3^(neg)、HLA-A24^(neg)、MUC1^(+))、結腸癌細胞株SW620(HLA-A24^(+)、MUC1^(+))、及び前立腺癌細胞株PC3(HLA-A24^(+)、MUC1^(+))を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(Manassas,VA)から購入した。細胞培養物は、すべてマイコプラズマを含んでおらず、完全培地(RPMI1640、10%ウシ胎仔血清、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、及び2mM L-グルタミンを追加)(Mediatech,Herndon,VA)中で維持した。K562-A2.1細胞は、C.Britten博士(Johannes Gutenberg University,Mainz,Germany)から入手し、0.5mg/mLのG418(Mediatech,Manassas,VA)を追加した完全培地中で維持した。
【0173】
腫瘍細胞溶解の細胞毒性アッセイ、コールド標的阻害及び抗体ブロッキング-T細胞性の
キリング(T-cell-mediated killing)を測定するために、16時間^(111)インジウム放出アッセイ(Tsang et al.,J.Natl.Cancer Inst.,87:982-90(1995))を用いた。2×10^(6)の標的細胞を、60μCi酸化^(111)インジウム(^(111)In oxide)(GE Health Care,Vienna,VA)で、37℃で20分間標識し、96ウェル丸底培養プレート中、3000細胞/ウェルで用いた。種々の比率でT細胞を添加した。全てのアッセイを、10%ヒトAB血清(Omega Scientific,Tarzana,CA)、グルタミン及び抗生物質(Mediatech,Manassas,VA)で置換したRPMI培地中で行った。自然放出は、標的細胞を培地のみとインキュベートすることによって測定し、完全溶解は、2.5%Triton X-100とのインキュベーションによって測定した。溶解は、式:
【0174】
【数1】

【0175】
を用いて算出した。対応するペプチドでの前パルスあり又はなしで、K562-A2.1又はK562-A3細胞を、1:10の比でウェルに添加することにより、コールド標的阻害アッセイを行った(Tsang et al.,J.Natl.Cancer Inst.,87:982-90(1995))。腫瘍細胞を、10μg/mlの抗HLA-A24抗体又はアイソタイプコントロール抗体(UPC10)とプレインキュベートすることにより、抗体ブロッキングを行った。
【0176】
II.解析
【0177】
MUC1-C領域におけるHLA-A24クラスI結合ペプチドについて、アルゴリズムは、A24結合候補を示さなかった。アンカー残基の変更で、3つのHLA-A24アゴニストの候補が示された。これらのアゴニストのうち2つ(C6A及びC7A、表1)を用いて研究を行った。第三のアゴニスト候補は、該第三のアゴニスト候補により作製されたT細胞株が、腫瘍細胞を溶解しなかったため、記載しない。
【0178】
ワクチンを接種した二人の異なる癌患者からのPBMCを用いて、C6と命名された天然ペプチドによりT細胞株を作製する試みは、不成功であった。しかしながら、対応するアゴニストペプチドC6A(配列番号1)でパルスしたAPCを用いて、これらの同一の患者からT細胞株を作製することができた。
【0179】
溶解について、C6AペプチドでパルスしたAPC由来のT細胞株を、MUC1^(+)、HLA-A24^(+)の、異なる2つの腫瘍細胞株(SW620;結腸癌、及びPC3;前立腺癌)及びASPC-1膵臓癌細胞株(MUC1^(+)、HLA-A24^(neg))と比較して評価した。HLA-A24^(neg)株とは対照的に、両方のHLA-A24^(+)細胞株の溶解が観察された(表2参照)。
【0180】
【表2】

【0181】
天然のC7ペプチドで得られたT細胞株の増殖は不十分であったが、結腸癌細胞株SW620を用いた細胞毒性アッセイにおいて、このT細胞株を評価するためには、十分な細胞が利用可能であった。表3から理解できる通り、アゴニストのC7Aペプチドで得られたT細胞株は、天然のC7ペプチドで得られたT細胞株よりも効率的にSW620細胞を溶解した。どちらのT細胞株も、ASPC-1腫瘍細胞株を溶解しなかった。抗HLA-A24抗体の添加で、腫瘍細胞の溶解が大幅に減少し、それによって、C6A及びC7A特異的T細胞株の両方について、溶解のMHC拘束性が実証された(表3)。
【0182】
【表3】

【0183】
C6Aアゴニストペプチドにより作製されたT細胞株の刺激で、高レベル(pg/mL/10^(5)細胞)のIFN-γ(2,651)、GM-CSF(>10,000)、IL-8(>10,000)、及びTNF-α(372)並びに低レベル(<50)のIL-2、IL-6、IL-10、及びIL-12が産生された。
【0184】
T細胞株は、天然のC7又はアゴニストのC7Aのペプチドでパルスした自己APCを用いて、同一の患者から作製できた。次いで、各細胞株を、天然のC7又はアゴニストのC7AのペプチドのいずれかでパルスしたB細胞で24時間刺激し、上清中のサイトカインレベルを解析した。
【0185】
表4に示す通り、天然のペプチドにより作製されたT細胞株は、アゴニストのC7Aで刺激した場合、天然のC7ペプチドと比較して、より多くのI型サイトカインIFN-γを産生した。更に、アゴニストのC7Aペプチドにより作製されたT細胞株が、天然及びアゴニストのペプチドの両方により刺激された場合、アゴニストのC7AペプチドでパルスしたAPCによる刺激によって、天然のC7ペプチドと比較して、より多くのIFN-γ、GM-CSF、IL-8、IL-10及びTNF-αが産生された(表4)。
【0186】
【表4】

【0187】
これらの研究の結果は、本明細書に記載の本発明の文脈において、樹状細胞に対する、ペプチドの単独での使用、古典的な又は新規なアジュバント製剤を伴う使用、或いは様々な生物学的アジュバント又は、IL-12、GM-CSF、若しくはIL-15等のサイトカインを伴う使用を含む、MUC1-Cのアゴニストエピトープの治療的有用性を支持する。養子T細胞療法アプローチにおいて、in vitroでT細胞を活性化するためにも、これらのアゴニストペプチドが用いられ得る。これらのアゴニストエピトープに対するT細胞受容体は、遺伝子改変されたT細胞の養子移入実験にも用いられ得る。本明細書に記載の通り、アゴニストエピトープを含有する、より長いペプチド又はMUC1タンパク質自体も用い得る。最後に、MUC1導入遺伝子をコードし、これらのアゴニストエピトープについての配列を含む、組換えベクターベースのワクチンが用いられ得る。
【0188】
実施例2
本実施例では、配列番号1を含み、GI-6108として知られる、酵母ベースのMUC1アゴニスト免疫療法組成物の製造を実証する。
【0189】
酵母(サッカロマイセス・セレビシエ)を、銅誘導性プロモーター、CUP1の制御下で、ヒトMUC1アゴニスト抗原を発現し、酵母-MUC1アゴニスト免疫療法組成物を製造するよう改変した。MUC1アゴニスト抗原は、配列番号1のエンハンサーアゴニストペプチドを含み、受入番号NP_001191214(配列番号14)を有する、全長の野生型MUC1抗原を用いて設計した(しかし、他の野生型MUC1タンパク質を利用して同様のアゴニストを設計し得る)。
【0190】
簡潔に述べると、N末端からC末端にインフレームで融合された以下:(1)配列番号17のα因子リーダー配列(配列番号16の1位?89位に対応);(2)リンカー配列Thr-Ser(配列番号16の90位?91位に対応);(3)15アミノ酸のアゴニスト置換及び1の不活性置換の導入を除いて、野生型タンパク質に一致する全長MUC1アゴニストタンパク質(配列番号16の92位?566位に対応);及び(4)ヘキサペプチドヒスチジンタグ(配列番号16の567位?572位に対応)、の配列要素を有する単一のポリペプチドとして、配列番号16で表される、MUC1アゴニスト抗原を含む融合タンパク質を製造した。配列番号16は、配列番号15(酵母の発現のためにコドンを最適化)で表される塩基配列によりコードされる。アルファリーダー配列(配列番号16の1位?89位に対応)は、配列番号19で表されるペプチド、又は配列番号18等の、別の酵母アルファリーダー配列からのN末端ペプチド、又はMUC1シグナル配列等の、プロテアソーム分解に対する抵抗性を付与するため、及び/又は発現を安定化するために設計された異なるN末端配列で置換され得る。C末端のヘキサヒスチジンタグは任意であり、タンパク質の同定及び/又は精製を容易にする。テンプレートとして用いられた野生型MUC1タンパク質と比較して、配列番号16は、以下:(配列番号16を参照し、括弧内で、配列番号14と同定された受入番号NP_001191214で表される野生型MUC1における置換の位置を更に参照し、置換位置を示す):T184L(野生型MUC1中93位)、A232Y(野生型MUC1中141位)、P233L(野生型MUC1中142位)、G240V、(野生型MUC1中149位)、S241Y(野生型MUC1中150位)、T242L(野生型MUC1中151位)、A483Y(野生型MUC1中392位)、C495A(野生型MUC1中404位)、C497V(野生型MUC1中406位)、T513K(野生型MUC1中422位)、P521A(野生型MUC1中430位)、T522L(野生型MUC1中431位)、T535L(野生型MUC1中444位)、D536F(野生型MUC1中445位)、及びS551Y(野生型MUC1中460位)、のアミノ酸置換を含有する。C495Aの置換(野生型MUC1タンパク質における404位)は不活性化変異であり;残りの置換は、アゴニストエピトープを生成するためのものである。配列番号16は、本明細書中配列番号1と呼ばれるエンハンサーアゴニストペプチドを含む。配列番号1は、配列番号16の513位?522位に位置する。配列番号16の融合タンパク質を発現するサッカロミセス・セレビシエ全酵母を含む、酵母ベースの免疫療法組成物は、本明細書中、GI-6108と呼ばれる。
【0191】
GI-6108のためのMUC1アゴニスト抗原を含有するプラスミドをW303α酵母にトランスフェクトし、形質転換体を、ウリジンドロップアウトアガー(uridine dropout agar)(UDA)上での、30℃で3日の増殖後にセレクションした。単一コロニーを、追加の4日間、ウリジン及びロイシンドロップアウトアガー(uridine and leucine dropout agar)(ULDA)プレート上に再ストリークし、30℃でインキュベートし、プラスミドコピー数が増加した細胞についてセレクションした。
【0192】
GI-6108の単一コロニーをULDAプレートから取り出し、25mLのUL2液体培地に接種するために用いた(スターター培養)。ビス-トリス4.2g/Lを含有する、pHを緩衝したUL2培地(BT-UL2)にも、GI-6108を接種し(得られた酵母は、本明細書中、GI-6108-DECと呼ばれる)、中性pHの製造条件下で製造された、この酵母ベースの免疫療法(immunotherapeutic)を評価した。pHを緩衝したUL2培地中の培養では、酵母細胞壁上にβグルカンが露出し、抗原提示細胞上のデクチン受容体との相互作用を修飾する結果として、酵母によって誘導される細胞性免疫応答が修飾されると考えられる。従って、GI-6108酵母は、構造的及び機能的に、GI-6108-DEC酵母とは異なる。スターター培養物を、30℃で震盪しながら、約3YU/mLの密度にまでインキュベートし、次いで、接種して0.3YU/mLの中間培養物にするために用いた。中間培養物を、密度3YU/mLにまで増殖させ、次いで、接種して密度0.04YU/mLの最終培養物にするために用いた。最終培養物を密度3YU/mLまで増殖させ、次いで、0.5mMの硫酸銅で30℃で3時間処理して、MUC1アゴニスト抗原の発現を誘導した。
【0193】
誘導した細胞を、PBSで一度洗浄し、56℃で1時間、熱で死滅させ、次いでPBS中で3回洗浄した。熱で死滅させた細胞の全タンパク質含量をAmidoschwarzアッセイにより測定し、アゴニスト抗原含量を、C末端のヘキサヒスチジンエピトープタグを認識するモノクローナル抗体を用いて、ウェスタンブロットによって測定した。抗原量は、hisタグ付きHCV NS3タンパク質から構成される標準曲線に対して補間することによって決定した。
【0194】
結果は、GI-6108酵母は、UL2培地中で十分に抗原を発現することを示し、GI-6108についての抗原含量は約2531Ng/YUであると推定された(データは示さず)。GI-6108-DEC酵母による抗原の発現(即ち、BT-UL2培地中、中性のpH条件で増殖させたGI-6108)は、低すぎて、ウェスタンブロットによる正確な定量化をもたらさなかった(データは示さず)。それでもなお、GI-6108及びGI-6108-DECの両方を、実施例3に記載の実験に用いた。
【0195】
実施例3
本実施例では、GI-6108及びGI-6108-DECとして知られる本発明の酵母-MUC1免疫療法組成物が、MUC1特異的T細胞を活性化し得ることを実証する。
【0196】
T細胞株- T-3-P93Lは、HLA-A2との関連でP93Lと表示される、MUC1アゴニストペプチドを特異的に認識するMUC-1特異的T細胞株である。P93Lは、全長MUC1-Cタンパク質の92位?101位にまたがるペプチド(例、配列番号14の92位?101位に対応するATWGQDVTSV)(このペプチドの2位(配列番号14の92位?101位の93位)のスレオニンがロイシンで置換され、それによってアゴニストペプチドを作製していることを除く)である。P93Lは、天然(野生型)のペプチドよりも高いレベルでHLA-A2に結合し、そして天然のペプチドより良好な(TH1サイトカインのより高い産生)MUC1特異的T細胞の誘導因子である(米国特許出願公開第2008/0063653号参照)。T細胞株T-3-P93Lは、in vitroで、HLA-A2陽性、MUC1陽性腫瘍標的を特異的に溶解し得る。このT細胞株は、MUC1-Nのサブユニット内にあるMUC1の一部に特異的である。
【0197】
C1A T細胞は、HLA-A2との関連でC1Aと表示されるMUC1アゴニストペプチドを特異的に認識するMUC-1特異的T細胞株である。C1Aは、全長MUC1タンパク質の392位?401位にまたがるペプチド(例、配列番号14の392位?401位に対応するALAIVYLIAL)である(このペプチドの1位(配列番号14の392位)のアラニンがチロシンで置換され、それによってアゴニストペプチドを作製していることを除く)。
【0198】
C2A T細胞は、HLA-A2との関連でC2Aと表示されるMUC1アゴニストペプチドを特異的に認識するMUC-1特異的T細胞株である。C2Aは、全長MUC1タンパク質の397位?406位にまたがるペプチド(例、配列番号14の397位?406位に対応するYLIALAVCQC)である(このペプチドの10位(配列番号14の406位)のシステインがバリンで置換され、それによってアゴニストペプチドを作製していることを除く)。
【0199】
C3A T細胞は、HLA-A2との関連でC3Aと表示されるMUC1アゴニストペプチドを特異的に認識するMUC-1特異的T細胞株である。C3Aは、全長MUC1-Cタンパク質の460位?468位にまたがるペプチド(例、配列番号14の460位?468位に対応するSLSYTNPAV)である(このペプチドの1位(配列番号14の460位)のセリンがチロシンで置換され、それによってアゴニストペプチドを作製していることを除く)。
【0200】
V1A T細胞は、HLA-A2との関連でVNTR-3と表示されるMUC1アゴニストペプチドを特異的に認識するMUC-1特異的T細胞株である。V1Aは、全長MUC1タンパク質の150位?158位にまたがるペプチド(例、配列番号14の150位?158位に対応するSTAPPAHGV)である(このペプチドの1位(配列番号14の150位)のセリンがチロシンで置換され、且つこのペプチドの2位(配列番号14の151位)のスレオニンがロイシンで置換され、それによってアゴニストペプチドを作製していることを除く)。
【0201】
V2A T細胞は、HLA-A2との関連でVNTR-5と表示されるMUC1アゴニストペプチドを特異的に認識するMUC-1特異的T細胞株である。V2Aは、全長MUC1タンパク質の141位?149位にまたがるペプチド(例、配列番号14の141位?149位に対応するAPDTRPAPG)である(このペプチドの1位(配列番号14の141位)のアラニンがチロシンで置換され、且つこのペプチドの2位(配列番号14の142位)のプロリンがロイシンで置換され、それによってアゴニストペプチドを作製していることを除く)。
【0202】
C5A T細胞は、HLA-A3との関連でC5Aと表示されるMUC1アゴニストペプチドを特異的に認識するMUC-1特異的T細胞株である。C5Aは、全長MUC1タンパク質の443位?451位にまたがるペプチド(例、配列番号14の443位?451位に対応するSTDRSPYEK)である(このペプチドの2位(配列番号14の444位)のスレオニンがロイシンで置換され、且つこのペプチドの3位(配列番号14の445位)のアスパラギン酸がフェニルアラニンで置換され、それによってアゴニストペプチドを作製していることを除く)。
【0203】
C6A T細胞は、HLA-A24との関連でC6Aと表示されるMUC1アゴニストペプチドを特異的に認識するMUC-1特異的T細胞株である。C6Aは、全長MUC1タンパク質の422位?431位にまたがるペプチド(例、配列番号14の422位?431位に対応するTYHPMSEYPT)である(このペプチドの1位(配列番号14の422位)のスレオニンがチロシンで置換され、このペプチドの9位(配列番号14の430位)のプロリンがアラニンで置換され、且つこのペプチドの10位(配列番号14の431位)のスレオニンがロイシンで置換され、それによってアゴニストペプチドを作製していることを除く)。このT細胞株はまた、実施例1に記載されている。
【0204】
Tsang et al.,J.Natl.Cancer Inst.,87:982-90(1995)により記載されたプロトコルの修正版を用いて、MUC1特異的CTLを作製した。放射線照射した自己DCを、20μg/mLのペプチドで2時間パルスし、次いで、PBMCを比10:1で添加した。3日後、ヒトIL-2(20シータス単位/mL)を添加した。細胞を、7日ごとに再刺激した。3回目のin vitro刺激(IVS)後、細胞を、自己エプスタイン-バーウイルス形質転換B細胞を抗原提示細胞として用いて、比2:1で再刺激し、IL-7(10ng/mL)及びIL-15(5ng/mL)を含有する培地中で維持した。
【0205】
最初の実験においては、正常なHLA-A2のヒトドナーからの樹状細胞(DC)を:(1)培地単独(Medium);(2)GI-6106-DEC酵母(PCT公開第WO2013/024972号に以前記載された、中性pH条件下で増殖させた陽性コントロールの酵母-MUC1免疫療法組成物);(3)GI-6108酵母(HLA-A2、HLA-A3及びHLA-A24アゴニストエピトープを含むMUC1抗原を発現する、実施例2に記載の通りの、本発明の酵母-MUC1免疫療法組成物);(4)GI-6108-DEC(やはり実施例2に記載の通りに中性pH条件下で増殖させた、HLA-A2、HLA-A3及びHLA-A24アゴニストエピトープを含むMUC1抗原を発現する、本発明の酵母-MUC1免疫療法組成物);及び(5)GI-Vec(酵母コントロール)、空のベクター(MUC1抗原インサート無し)を含む酵母、で48時間培養した。次いで、処理されたDCを、MUC1特異的HLA-A2拘束性T細胞株P93L,C1A,C2A,C3A,V1A及びV2Aを刺激するそれらの能力を評価するために、抗原提示細胞(APC)として用いた(T細胞:DC比=10:1)。DCの各セットについて、「T細胞なし」のコントロールも含めた。24時間培養の上清を回収し、分泌インターフェロンγ(IFN-γ)についてスクリーニングした。結果を表5に示す(T細胞によって産生されるIFN-γの量として、pg/mlで表す)。
【0206】
【表5】

【0207】
表5に示す通り、GI-6108で処理し、標準(GI-6108)及び中性pH(GI-6108-DEC)条件の両方の下で製造した、いくつかの異なるMUC1アゴニストエピトープを発現する樹状細胞は、MUC1特異的HLA-A2拘束性T細胞を刺激して、陽性コントロールと同様の様式及びレベルで、相当量のIFN-γを産生できた。
【0208】
第2の実験では、正常なHLA-A3又はHLA-A24のヒトのドナーからのDCを:(1)培地単独(Medium);(2)GI-6106-DEC酵母;(3)GI-6108酵母;(4)GI-6108-DEC;及び(5)GI-VEC(酵母コントロール)と48時間培養した。次いで、処理されたDCを、MUC1特異的HLA-A3拘束性T細胞株C5A又はMUC1特異的HLA-A24拘束性T細胞株C6Aを刺激するそれらの能力を評価するために、APCとして用いた(T細胞:DC比=10:1)。DCの各セットについて、「T細胞なし」コントロールも含めた。24時間培養の上清を回収し、分泌IFN-γについてスクリーニングした。結果を表6に示す(T細胞によって産生されるIFN-γの量として、pg/mlで表す)。
【0209】
【表6】

【0210】
表6に示す通り、GI-6108で処理し、標準(GI-6108)及び中性pH(GI-6108-DEC)条件の両方の下で製造した、A3及びA24のMUC1アゴニストエピトープを発現する樹状細胞は、MUC1特異的HLA-A3拘束性T細胞及びMUC1特異的HLA-A24拘束性T細胞の両方を刺激して、陽性コントロールと同様の様式及びレベルで、相当量のIFN-γを産生できた。
【0211】
このデータは、MUC1 HLA-A24アゴニストエピトープC6Aを用いて樹立したMUC1特異的HLA-A24 T細胞株が、HLA-A2/A3/A24 MUC1アゴニストエピトープを含有する、酵母-MUC1アゴニストコンストラクト(GI-6108及びGI-6108-DEC)で処理したヒトDC(HLA-A24陽性)により活性化され得、高レベルのIFN-γを産生し得ることを示す。更に、このデータは、GI-6106-DECベクターがHLA-A24 MUC1アゴニストエピトープを含有しないため、MUC1 HLA-A24アゴニストエピトープ特異的T細胞株が、天然のHLA-A24エピトープによって活性化され得ることを示す。
【0212】
実施例4
本実施例では、MUC1陽性の癌を患う被験体における第1相臨床試験について説明する。
【0213】
オープンラベルの用量漸増第1相臨床試験を、実施例2に記載の、GI-6108として知られている酵母-MUC1免疫療法組成物を用いて実行する(標準的な増殖条件の下、又は中性pH条件下のいずれかでの増殖)。HLA-A2、HLA-A3、又はHLA-A24陽性であり得る、MUC1陽性腫瘍を有する12?24の被験体に、皮下投与された4YU(1YU×4部位)、16YU(4YU×4部位X)、40YU(10YU×4部位)及び80YU(20YU×4部位)の用量範囲を利用する順次用量漸増コホートプロトコル(sequential dose cohort escalation protocol)で、酵母-MUC1免疫療法組成物を投与する。酵母-MUC1免疫療法は、2週間隔で3ヶ月間、その後毎月投与するか、又は毎月投与する。最大耐量(MTD)又は観察された至適用量(best dose)での患者の拡大コホート(N=10)が、更なる研究のために選択される。結果は、一次エンドポイントとして安全性を、二次エンドポイントとして、抗原特異的T細胞応答(例、治療中に出現又は増幅する、MUC1特異的CD8^(+)T細胞)及び臨床活性をモニターする。
【0214】
GI-6108は、重大な毒性はなく、安全で、且つ忍容性が良好であると予想される。更に、GI-6108は、統計学的に有意な患者数で、治療により発生するMUC1特異的T細胞応答を、又はベースラインの、既存のMUC1特異的なT細胞応答の改善をもたらすことが期待される。一部の患者では、疾患が安定化することも期待される。
【0215】
実施例5
本実施例では、MUC1-CのHLA-A24アゴニストエピトープが、MUC1特異的細胞を活性化し得ることを実証する。
【0216】
MUC1 HLA-A24アゴニストエピトープC6Aを用いて樹立したMUC1特異的HLA-A24 T細胞株を、MUC1 HLA-A2/A3 MUC1アゴニストエピトープ(MVA-mBN-CV301)を含有するポックスウイルス(MVA)ベクターをトランスフェクトしたHLA-A24陽性ヒトDCで活性化した。特に、ヒトDCを、10MOIの(1)MVA-mBN336クローン73又は(2)MVA-mBN336クローン77のいずれかで処理すると、高レベルのIFN-γが産生された(表7参照)。
【0217】
【表7】

【0218】
表7に示す通り、MVA-mBN-CV301ベクターはHLA-A24 MUC1アゴニストエピトープを含有しないため、MUC1 HLA-A24アゴニストエピトープ特異的T細胞株は、天然のHLA-A24エピトープによって活性化され得る。
【0219】
刊行物、特許出願及び特許を含む、本明細書中に引用した全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照によって組み込まれることが個々に且つ具体的に示されているのと同程度又はその全体が本明細書中に記載されているのと同程度まで、参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0220】
本発明の説明に関して(特に、以下の特許請求の範囲に関して)、用語「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1の(at least one)」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中に特記しないか文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。1以上の事項の列挙の後で「少なくとも1の」という用語の使用(例えば、「A及びBのうち少なくとも1の」)は、本明細書中に特記しない又は文脈と明らかに矛盾しない限り、列挙した事項(A若しくはB)から選択された1の事項又は列挙した事項(A及びB)のうち2以上の任意の組み合わせを意味すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」は、特記しない限り、オープンエンドの用語(即ち、「?を含むがそれらに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書中の値の範囲の記述は、本明細書中に特記しない限り、その範囲内に入る各個別の値に個々に言及する省略方法として働くことのみを意図しており、各個別の値は、それが本明細書中に個々に記述されているかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中に特記しない又は文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施できる。本明細書中に提供される任意の及び全ての例又は例示的語句(例、「など(such as)」)の使用は、本発明をよりよく説明することのみを意図しており、特段特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中の全ての語句は、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須のものとして示していると解釈すべきではない。
【0221】
発明を実施するための、発明者が知る最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載されている。本発明者らは、当業者がかかるバリエーションを適宜使用することを予期しており、本発明者らは、本明細書中に具体的に記載されたのとは異なる方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるとおり、本明細書中に添付した特許請求の範囲に記載される対象の全ての改変及び均等物を含む。更に、その全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組合せが、本明細書中に特記しない限り又は文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列から成るMUC1ペプチドであって、アゴニストエピトープとして機能する、ペプチド。
【請求項2】
請求項1のペプチドをコードする核酸。
【請求項3】
請求項2の核酸を含むベクター。
【請求項4】
(i)請求項1のペプチドの1以上、(ii)請求項2の核酸の1以上、又は(iii)請求項3のベクターの1以上を含む、細胞。
【請求項5】
細胞がヒトのである、請求項4の細胞。
【請求項6】
抗原提示細胞又は腫瘍細胞である、請求項4又は5の細胞。
【請求項7】
(a)(i)請求項1のペプチド、(ii)請求項2の核酸、(iii)請求項3のベクター又は(iv)請求項4?6のいずれか1項の細胞の、1以上、及び
(b)医薬的に許容可能な担体
を含む、組成物。
【請求項8】
免疫刺激/調節分子を更に含む、請求項7の組成物。
【請求項9】
免疫刺激/調節分子が、インターロイキン(IL)-2、IL-4、IL-6、IL-12、IL-15、IL-15/IL15Ra、IL-15/IL-15Ra-Fc、インターフェロン(IFN)-γ、腫瘍壊死因子(TNF)-α、B7.1、B7.2、ICAM-1、LFA-3、CD70、RANTES、G-CSF、OX-40L、41BBL、抗CTLA-4、IDO阻害剤、抗PDL1、抗PD1、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項8の組成物。
【請求項10】
免疫刺激/調節分子が、(i)キトサンと複合体化されたIL-12をコードするプラスミド及び(ii)キトサンと混合された組換えIL-12から成る群から選択される、請求項8の組成物。
【請求項11】
化学療法薬、放射性薬剤、代謝拮抗剤、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬、シクロホスファミド、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項7?10のいずれか1項の組成物。
【請求項12】
アルキル化剤、葉酸アンタゴニスト、プリンアンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト、紡錘体毒、トポイソメラーゼ阻害剤、アポトーシス誘導剤、血管新生阻害剤、ポドフィロトキシン、ニトロソウレア、シスプラチン、カルボプラチン、インターフェロン、アスパラギナーゼ、タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、メゲストロール、マイトマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イリノテカン、タキソール、ゲルダナマイシン、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項7?10のいずれか1項の組成物。
【請求項13】
アドリアマイシン、アルケラン、アラC、ブスルファン、CCNU、カルボプラチン、シスプラチン、サイトキサン、ダウノルビシン、DTIC、5-FU、フルダラビン、ハイドレア、イダルビシン、イホスファミド、メトトレキサート、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ナイトロジェンマスタード、タキソール、ベルバン、ビンクリスチン、VP-16、ゲムシタビン、ハーセプチン、イリノテカン、ロイスタチン、ナベルビン、リツキサンSTI-571、タキソテール、トポテカン、カペシタビン、ゼベリン、エンザルタミド、カルシトリオール、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項7?10のいずれか1項の組成物。
【請求項14】
1以上のアジュバントを更に含む、請求項7?13のいずれか1項の組成物。
【請求項15】
1以上のアジュバントが、アラム、アルミニウム塩、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、リン酸カルシウム、不完全フロイントアジュバント、QS21、MPL-A、RIBI DETOX(商標)、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項14の組成物。
【請求項16】
顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)を更に含む、請求項7?15のいずれか1項の組成物。
【請求項17】
リポソームを更に含む、請求項7?16のいずれか1項の組成物。
【請求項18】
被験体においてMUC1を発現する癌に対する免疫応答を増強するための、請求項7?17のいずれか1項の組成物。
【請求項19】
被験体においてMUC1を発現する癌を阻害するための、請求項7?17のいずれか1項の組成物により刺激されたリンパ球を含む、組成物。
【請求項20】
被験体においてMUC1を発現する癌を阻害するための、請求項7?17のいずれか1項の組成物により処理された樹状細胞を含む、組成物。
【請求項21】
被験体においてMUC1を発現する癌を阻害するための、請求項7?17のいずれか1項の組成物によりin vitroで刺激した養子移入T細胞を含む、組成物。
【請求項22】
酵母-MUC1免疫療法組成物であって:
(a)酵母ビヒクル;及び
(b)少なくとも1のムチン1(MUC1)抗原を含む融合蛋白質であって、融合蛋白質は、配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み、且つ配列番号1のアミノ酸配列から成るMUC1抗原を更に含む、
を含む、免疫療法組成物。
【請求項23】
酵母-MUC1免疫療法組成物であって:
(a)酵母ビヒクル;及び
(b)少なくとも1のMUC1抗原を含む、融合タンパク質であって、融合タンパク質が、配列番号16のアミノ酸配列を含み、
MUC1抗原が、配列番号16の92位?566位から成る、及び
MUC1抗原が、配列番号1のアミノ酸配列を含む、融合タンパク質
を含む、免疫療法組成物。
【請求項24】
酵母-MUC1免疫療法組成物であって:
(a)酵母ビヒクル;及び
(b)少なくとも1のMUC1抗原を含む、融合タンパク質であって、MUC1抗原が、野生型MUC1のアミノ酸配列に関して以下:T422K、P430A、及びT431Lのアミノ酸置換によって配列番号14を有する野生型MUC1タンパク質のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有する、融合タンパク質
を含む、免疫療法組成物。
【請求項25】
MUC1抗原が、野生型MUC1のアミノ酸配列に関して更に:T93、A141、P142、G149、S150、T151、A392、C406、T444、D445、及びS460の位置にアミノ酸置換を含む、請求項24の酵母-MUC1免疫療法組成物。
【請求項26】
MUC1抗原が、野生型MUC1のアミノ酸配列に関して、C404位のアミノ酸の置換を更に含む、請求項24又は25の酵母-MUC1免疫療法組成物。
【請求項27】
MUC1抗原が、野生型MUC1のアミノ酸配列に関して更に以下:T93L、A141Y、P142L、G149V、S150Y、T151L、A392Y、C404A、C406V、T444L、D445F、及びS460Yから選択されるアミノ酸置換を含む、請求項24?26のいずれか1項の酵母-MUC1免疫療法組成物。
【請求項28】
酵母ビヒクルが全酵母である、請求項22?27のいずれか1項の酵母-MUC1免疫療法組成物。
【請求項29】
融合タンパク質が酵母により発現されている、請求項22?28のいずれか1項の酵母-MUC1免疫療法組成物。
【請求項30】
酵母ビヒクルが熱で不活性化されている、請求項22?29のいずれか1項の酵母-MUC1免疫療法組成物。
【請求項31】
酵母ビヒクルがサッカロマイセス・セレビシエ由来である、請求項22?30のいずれか1項の酵母-MUC1免疫療法組成物。
【請求項32】
5.5?8のpHレベルで維持された培地中で、MUC1抗原を発現する全酵母を培養することにより製造された、請求項22?31のいずれか1項の酵母-MUC1免疫療法組成物。
【請求項33】
個体における全身腫瘍組織量を減少させ、腫瘍の成長を阻害し、及び/又はMUC1を発現する癌を有する個体の生存を増加させるための、請求項22?32のいずれか1項の酵母-MUC1免疫療法組成物。
【請求項34】
MUC1発現が、組成物が最初に投与される時に、個体の癌で検出される、請求項33の酵母-MUC1免疫療法組成物。
【請求項35】
個体が、少なくとも1の、癌に対する更なる治療法で治療されているか、又は治療されていた、請求項33又は請求項34の酵母-MUC1免疫療法組成物。
【請求項36】
少なくとも1の更なる治療法が、化学療法、標的癌療法、放射線療法、養子T細胞移入、及び/又は1以上の更なる免疫療法組成物の投与から選択される、請求項35の酵母-MUC1免疫療法組成物。
【請求項37】
個体におけるMUC1を発現する癌の発症を予防する、又は遅延させるための、請求項22?32のいずれか1項の酵母-MUC1免疫療法組成物。
【請求項38】
個体において癌が検出されていない、請求項37の酵母-MUC1免疫療法組成物。
【請求項39】
個体が癌を発症するリスクが高い、請求項38の酵母-MUC1免疫療法組成物。
【請求項40】
癌が上皮細胞起源である、請求項33?39のいずれか1項の酵母-MUC1免疫療法組成物。
【請求項41】
癌が:乳癌、小腸癌、胃癌、膵臓癌、腎臓癌、膀胱癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、肺癌、結腸癌、前立腺癌、黒色腫、食道癌、多発性骨髄性白血病(MML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、分泌組織の癌、及びそれらの転移性癌から成る群から選択される、請求項33?39のいずれか1項の酵母-MUC1免疫療法組成物。
【請求項42】
癌の治療に使用するための、請求項22?32のいずれか1項の酵母-MUC1免疫療法組成物。
【請求項43】
癌を有する個体において癌の転移の進行を減退させること、阻止すること、反転させること、又は予防することに用いるための、請求項22?32のいずれか1項の酵母-MUC1免疫療法組成物。
【請求項44】
癌を治療することに用いるための医薬の調製における、請求項22?32のいずれか1項の酵母-MUC1免疫療法組成物の使用。
【請求項45】
癌を有する個体において、癌の転移の進行を減退させること、阻止すること、反転させること、又は予防することに用いるための医薬の調製における、請求項22?32のいずれか1項の酵母-MUC1免疫療法組成物の使用。
【請求項46】
MUC1を発現する癌の発症を予防すること又は遅延させることに用いるための医薬の調製における、請求項22?32のいずれか1項の酵母-MUC1免疫療法組成物の使用。
【請求項47】
配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み、且つ配列番号1から成るアミノ酸配列を更に含む、MUC1タンパク質。
【請求項48】
被験体においてMUC1を発現する癌に対する免疫応答を誘導するための、
(a)請求項1のペプチドをコードする核酸を含む第一のポックスウイルスベクター及び
(b)請求項1のペプチドをコードする核酸を含む第二のポックスウイルスベクター
を含む、組み合わせ組成物。
【請求項49】
被験体においてMUC1を発現する癌に対する免疫応答を誘導するための、
(a)請求項47のMUC1タンパク質をコードする核酸を含む第一のポックスウイルスベクター及び
(b)請求項47のMUC1タンパク質をコードする核酸を含む第二のポックスウイルスベクター
を含む、組み合わせ組成物。
【請求項50】
第一及び第二のポックスウイルスベクターが、癌胎児性抗原(CEA)をコードする核酸を更に含む、請求項48又は49の組み合わせ組成物。
【請求項51】
第一及び第二のポックスウイルスベクターが、1以上の共刺激分子をコードする核酸を更に含む、請求項48?50のいずれか1項の組み合わせ組成物。
【請求項52】
1以上の共刺激分子が、B7.1、ICAM-1、及びLFA-3から選択される、請求項51の組み合わせ組成物。
【請求項53】
第一のポックスウイルスベクターがワクシニアウイルスであり、及び第二のポックスウイルスベクターが鶏痘ウイルスである、請求項48?52のいずれか1項の組み合わせ組成物。
【請求項54】
第一のポックスウイルスベクターが、修飾ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスであり、及び第二のポックスウイルスベクターが鶏痘ウイルスである、請求項48?52のいずれか1項の組み合わせ組成物。
【請求項55】
MVAウイルスがMVA-BNである、請求項54の組み合わせ組成物。
【請求項56】
第一及び第二のポックスウイルスベクターが、プライム-ブーストプロトコルで被験体への投与に使用するための、請求項48?55のいずれか1項の組み合わせ組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2021-06-24 
結審通知日 2021-06-29 
審決日 2021-07-16 
出願番号 特願2016-525904(P2016-525904)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (C12N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三原 健治竹内 祐樹  
特許庁審判長 森井 隆信
特許庁審判官 田村 聖子
安居 拓哉
登録日 2020-11-04 
登録番号 特許第6788500号(P6788500)
発明の名称 MUC1-C癌タンパク質のHLA-A24アゴニストエピトープ及び組成物及び使用方法  
代理人 當麻 博文  
代理人 當麻 博文  
代理人 鎌田 光宜  
代理人 高島 一  
代理人 土井 京子  
代理人 土井 京子  
代理人 赤井 厚子  
代理人 戸崎 富哉  
代理人 赤井 厚子  
代理人 高島 一  
代理人 田村 弥栄子  
代理人 鎌田 光宜  
代理人 田村 弥栄子  
代理人 戸崎 富哉  
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