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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1378133
審判番号 不服2020-11911  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-26 
確定日 2021-09-15 
事件の表示 特願2017-509730「シリコン基板を有する光電子モジュールおよびそのようなモジュールの作製方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月25日国際公開、WO2016/028227、平成29年10月19日国内公表、特表2017-531310〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)8月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年8月19日、米国、2014年9月29日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和元年 6月26日付け:拒絶理由通知書
令和元年11月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年 4月23日付け:拒絶査定
令和2年 8月26日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和3年 2月 4日 :上申書の提出

第2 令和2年8月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年8月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所として、請求人が付したものである。)

「光電子モジュールであって、
光電子デバイスが内または上に設けられたシリコン基板と、
前記光電子デバイスの上方に配置された光学アセンブリと、
前記シリコン基板を前記光学アセンブリから隔てるスペーサとを備え、
前記スペーサは、前記光電子デバイスにより発せられた、および/または前記光電子デバイスにより検出可能な波長の光を実質的に透過しないか、または大幅に減衰させ、
前記スペーサは、前記シリコン基板の側面を囲み、かつ、前記シリコン基板に直接接触し、
前記スペーサの底部が前記シリコン基板の底部と面一である、光電子モジュール。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和元年11月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「光電子モジュールであって、
光電子デバイスが内または上に設けられたシリコン基板と、
前記光電子デバイスの上方に配置された光学アセンブリと、
前記シリコン基板を前記光学アセンブリから隔てるスペーサとを備え、
前記スペーサは、前記光電子デバイスにより発せられた、および/または前記光電子デバイスにより検出可能な波長の光を実質的に透過しないか、または大幅に減衰させ、
前記スペーサは、前記シリコン基板の側面を囲み、かつ、前記シリコン基板に直接接触している、光電子モジュール。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「スペーサ」について、「前記スペーサの底部が前記シリコン基板の底部と面一である」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の最先の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2008-283002号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審が付した。以下同じ。)。

「【0026】
図1は、本発明の撮像素子モジュールの概略構成を示す断面図である。この撮像素子モジュールは、ベース回路基板11a上にダイボンディングされた撮像素子12を有しており、撮像素子12が、ベース回路基板11aと、ボンディングワイヤーである金線13によってワイヤーボンディングされている。撮像素子12上には、透光性部材としてのIR(赤外線)カットガラス14が接着剤15によって取り付けられている。IRカットガラス14は、上面および下面がそれぞれ平坦面に構成された直方体形状のガラス本体部にIRカットフィルタが貼り付けられて構成されている。IRカットガラス14は、撮像素子12における有効画素領域を取り囲む周囲に全周にわたって連続して設けられた接着剤15によって、平坦な下面が、撮像素子12の上面に接着されている。接着剤15は、IRカットガラス14の平坦な下面と、撮像素子12における有効画素領域との間の空間を気密状態で封止している。
【0027】
IRカットガラス14の平坦な上面には、接着剤18によって接着されたレンズ体17が設けられている。レンズ体17は、透光性樹脂によって直方体形状に形成された支持部17aと、支持部17aの上部中央に設けられたレンズ部17bとを有している。支持部17aの上部に設けられたレンズ部17bは、支持部17aの上面から一部が上方に突出した状態になっており、上方から入射する光を所定の屈折率で屈折させて、支持部17aおよびIRカットガラス14を介して、撮像素子12aの有効画素領域に集光させるようになっている。支持部17aは、レンズ部17bが突出する部分を除いた上面部分、下面および各側面がそれぞれ平坦面に形成されており、レンズ部17bを透過した光は、支持部17aの内部を直進して、平坦に構成された下面から出射する。
【0028】
接着剤18は、IRカットガラス14の平坦な上面における撮像素子12aの有効画素領域を取り囲む周囲に対応した外周縁部に沿って全周にわたって連続して設けられており、レンズ体17は、支持部17aの下面とIRカットガラス14の上面との間に適当な空間が形成された状態で接着されている。接着剤18は、支持部17aの平坦な下面とIRカットガラス14の平坦な上面との間の空間を気密状態に封止している。
【0029】
ベース回路基板11a上の撮像素子12と、ボンディングワイヤーである金線13と、IRカットガラス14と、レンズ体17とは、レンズ体17における支持部17aの上面およびその上面から突出したレンズ部17bの上部が露出するように、非透光性のモールド樹脂16によって封止されている。モールド樹脂16の上面は、レンズ体17における支持部17aの上面と同一平面に位置した平坦面になっている。
【0030】
図2は、図1に示す本発明の撮像素子モジュールの製造工程を示す概略図である。図1に示す撮像素子モジュールを製造するために、図2(a)に示すように、半導体ウェハ12が準備される。半導体ウェハ12には、撮像素子モジュールのそれぞれの撮像素子12aに対応した多数の撮像素子部分12bが予め形成されている。各撮像素子部分12bには、有効画素領域がそれぞれ設けられている。
【0031】
このような半導体ウェハが準備されると、それぞれの撮像素子部分12bに対して、所定量の接着剤15が一括して塗布される。この場合、接着剤15は、各撮像素子部分12bにおける有効画素領域の周囲に、全周にわたって連続した状態になるようにそれぞれ所定量ずつ塗布される。
【0032】
その後、それぞれの上面および下面が平坦面に形成された複数のIRカットガラス14が準備されて、各撮像素子モジュールに対応したそれぞれの撮像素子部分12bの有効画素領域と対向するように各IRカットガラス14が配置されて、全てのIRカットガラス14が、接着剤15によって、半導体ウェハ12における全ての撮像素子部分12bに一括して接着される。この場合、全てのIRカットガラス14は、半導体ウェハ12における全ての撮像素子部分12bに対して所定の押圧力によって一括して押圧されるようになっており、これにより、各IRカットガラス14は、それぞれの下面と各撮像素子部分11bにおける有効画素領域との間に所定の空間が気密状態で形成された状態で、しかも、それぞれの下面が各撮像素子部分11bの上面に対して平行な状態で接着される。
【0033】
このような状態になると、図2(b)に示すように、各IRカットガラス14のそれぞれの上面に接着剤18が所定量ずつ一括して塗布される。この場合も、接着剤18は、各IRカットガラス14の上面において、各撮像素子部分12bの有効画素領域を取り囲む周囲に対応する外周縁部分に、全周にわたって連続するように一括して塗布される。その後、レンズ部17bが上面から突出した直方体形状の複数のレンズ体17が、各IRカットガラス14の上面に、接着剤18によって接着される。この場合にも、全てのレンズ体17は、各IRカットガラス14の上面に対して所定の押圧力によって一括して押圧されるようになっており、これにより、各レンズ体17は、それぞれの下面と各IRカットガラス14の上面との間に所定の空間が気密状態で形成された状態で、しかも、それぞれの下面が各IRカットガラス14の上面に対して平行な状態で接着される。そして、各各撮像素子部分12bの有効画素領域に対してレンズ部17bが所定の位置になるうに、レンズ体17が調整される。
【0034】
このようにして、各IRカットガラス14の上面にレンズ体17がそれぞれ取り付けられると、図2(c)に示すように、ベース基板11の各ベース回路基板部分11bと、各ベース回路基板部分11b上にダイボンディングされた撮像素子12aとが、金線13によって、それぞれワイヤーボンディングされる。そして、その後に、ベース基板11上の各撮像素子12と、ボンディングワイヤーであるそれぞれの全ての金線13と、各撮像素子12上にそれぞれ設けられたIRカットガラス14と、各IRカットガラス14上にそれぞれ設けられたレンズ体17とが、非透光性のモールド樹脂16によって一括してモールドされて、モールド樹脂16は、レンズ体17における支持部17aの平坦な上面と、その上面から突出したレンズ体17b部分とが露出するように、モールド樹脂16の上面が平坦面に加工される。モールド樹脂16の上面は、化学機械研磨等の加工方法によって平坦化される。
【0035】
ベース基板11上のすべての撮像素子12aが、IRカットガラス14およびレンズ体17とともにモールド樹脂16によってモールドされると、ベース基板11が、モールド樹脂16とともに、ベース基板11における各ベース回路基板部分11b毎にダイシングによって分断される。これにより、図2(d)に示すように、本発明の撮像素子モジュールが形成される。この場合、相互に隣接する各レンズ体17間にモールド樹脂16をダイシングできる間隔が形成されていればよいために、ベース基板11における各ベース回路基板部分11bを密接させて形成することができる。その結果、ベース基板11に対してベース回路基板部分11bを歩留まりよく形成することができる。」
「【0044】
11 ベース基板
11a ベース回路基板
11b ベース回路基板部分
12 半導体ウェハ
12a 撮像素子
12b 撮像素子部分
13 金線
14 IRカットガラス
15 接着剤
16 モールド樹脂
17 レンズ体
17a 支持部
17b レンズ部」
「図1


「図2



イ 引用文献1に記載された技術的な事項
(ア)上記【0030】の記載及び図2(a)?(c)より、半導体ウェハ12には、撮像素子モジュールのそれぞれの撮像素子12aに対応した多数の撮像素子部分12bが予め形成され、当該半導体ウェハ12は、各撮像素子部分12b毎に分割されて、撮像素子12aが形成されると、みてとれる。
よって、撮像素子12aは、分割された半導体ウェハ12及び半導体ウェハ12に形成された撮像素子部分12bより構成されるもの、と認められる。
(イ)上記【0029】に記載のとおり、ベース回路基板11a上の撮像素子12と、IRカットガラス14と、レンズ体17とは、非透光性のモールド樹脂16によって封止されており、当該記載を踏まえ、図2(d)より、モールド樹脂16は、撮像素子12a、IRカットガラス14及びレンズ体17を、一体に固定しているもの、とみてとれる。
(ウ)上記【0029】に記載のとおり、ベース回路基板11a上の撮像素子12は、非透光性のモールド樹脂16によって封止されていることから、図2(d)より、モールド樹脂16は、撮像素子12aの側面を囲み、かつ、撮像素子12に直接接触している構成が、みてとれる。

ウ 上記ア、イより、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考までに、引用発明の認定に用いた引用文献1の記載等に係る段落番号等を括弧内に付してある。

<引用発明>
「ベース回路基板11a上にダイボンディングされた撮像素子12aと、(【0034】及び図2(d))
撮像素子12a上には、透光性部材としてのIR(赤外線)カットガラス14が接着剤15によって取り付けられ、(【0026】及び図2(d))
IRカットガラス14の平坦な上面には、接着剤18によって接着されたレンズ体17が設けられ、(【0027】)
ベース回路基板11a上の撮像素子12aと、ボンディングワイヤーである金線13と、IRカットガラス14と、レンズ体17とは、非透光性のモールド樹脂16によって封止されている、撮像素子モジュールであって、(【0029】及び図2(d))
撮像素子12aは、分割された半導体ウェハ12及び半導体ウェハ12に形成された撮像素子部分12bより構成され、(上記イ(ア))
モールド樹脂16は、撮像素子12a、IRカットガラス14及びレンズ体17を、一体に固定し、(上記イ(イ))
モールド樹脂16は、撮像素子12aの側面を囲み、かつ、撮像素子12に直接接触している、(上記イ(ウ))
撮像素子モジュール。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを、以下に対比する。
(ア)引用発明の「撮像素子モジュール」は、本件補正発明の「光電子モジュール」に相当する。
(イ)引用発明の「撮像素子12a」は、「分割された半導体ウェハ12及び半導体ウェハ12に形成された撮像素子部分12bより構成され」ている。
一方、本件補正発明は、「光電子デバイスが内または上に設けられたシリコン基板」を備えている。
したがって、両者の構成を対比すると、引用発明の「撮像素子部分12b」は、本件補正発明の「光電子デバイス」に相当するといえ、引用発明と本件補正発明とは、「光電子デバイスが内に設けられた基板」を備える点で、一致するといえる。
(ウ)引用発明の「レンズ体17」は、撮像素子12a上に設けられ、撮像素子部分12b上に設けられているといえるから、本件補正発明の「光学アセンブリ」に相当し、「前記光電子デバイスの上方に配置された」との構成を備えているといえる。
(エ)引用発明の「モールド樹脂16」は、「撮像素子12a、IRカットガラス14及びレンズ体17を、一体に固定し」ており、「非透光性」であり、「撮像素子12aの側面を囲み、かつ、撮像素子12aに直接接触している」ものである。
一方、本件補正発明の「スペーサ」は、「前記シリコン基板を前記光学アセンブリから隔てる」ものであり、「前記光電子デバイスにより発せられた、および/または前記光電子デバイスにより検出可能な波長の光を実質的に透過しないか、または大幅に減衰させ」、「前記シリコン基板の側面を囲み、かつ、前記シリコン基板に直接接触」するものである。
ここで、引用発明の「モールド樹脂16」及び本件補正発明の「スペーサ」を特定する、各事項を対比してみると、
a 引用発明の「モールド樹脂16」は、「撮像素子12a、IRカットガラス14及びレンズ体17を、一体に固定」するものであるから、「撮像素子12a」及び「レンズ体17」の位置を固定しているものと理解できる。
したがって、引用発明の「モールド樹脂16」は、本件補正発明の「前記シリコン基板を前記光学アセンブリから隔てる」との構成を備えるといえる。
b 引用発明の「非透光性」との特定は、他の「透光性部材としてのIR(赤外線)カットガラス14」との特定を踏まえると、撮像素子12aが受光する光に対して「非透光性」であると解されるから、引用発明の「モールド樹脂16」は、本件補正発明の「前記光電子デバイスにより検出可能な波長の光を実質的に透過しないか、または大幅に減衰させ」との構成を備えるといえる。
したがって、上記a及びbより、引用発明の「モールド樹脂16」は、本件補正発明の「スペーサ」に相当するといえる。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「光電子モジュールであって、
光電子デバイスが内に設けられた基板と、
前記光電子デバイスの上方に配置された光学アセンブリと、
前記基板を前記光学アセンブリから隔てるスペーサとを備え、
前記スペーサは、前記光電子デバイスにより検出可能な波長の光を実質的に透過しないか、または大幅に減衰させ、
前記スペーサは、前記基板の側面を囲み、かつ、前記基板に直接接触する、光電子モジュール。」

<相違点>
・相違点1
「基板」について、本件補正発明では、「シリコン基板」であるのに対して、引用発明では、「分割された半導体ウェハ12」である点。
・相違点2
「スペーサ」について、本件補正発明は、「前記スペーサの底部が前記シリコン基板の底部と面一である」のに対し、引用発明は、不明である点。

(4)判断
以下、相違点1?2について検討する。
ア 相違点1について
引用発明の「分割された半導体ウェハ12」は、「撮像素子部分12b」が形成されているところ、撮像素子を形成する半導体ウェハとして、シリコンウェハが慣用されることは、技術常識(必要であれば、下記文献1参照。)である。
したがって、引用発明の「分割された半導体ウェハ12」として、シリコン基板を用いることは、当業者が容易になし得た事項である。

<技術常識を示す文献>
・文献1:特開2011-82924号公報(令和元年6月26日付け拒絶理由通知に提示された文献)
「【0018】
裏面照射型の撮像素子2は、周知のように、基板上に配線層が形成された構成を有しているとともに、光軸方向Lにおいて、5?10μmの厚みに形成されており、その厚み公差は、基板が削られることにより、基板に既知のSOI(silicon on insulator)基板を用いる場合であれば、±数十nm程度に規定されており、単結晶のシリコン基板(バルク基板)を用いる場合であれば、±1μm程度に規定されている。尚、配線層は、厚み公差が殆ど無視できる程度に、基板上に精度良く形成されている。」

イ 相違点2について
引用発明の「撮像素子12a(分割された半導体ウェハ12及び半導体ウェハ12に形成された撮像素子部分12b)」は、ベース回路基板11a上にダイボンディングされているから、「撮像素子12a」の底部と「ベース回路基板11a」の表面との間には、接着剤が介在している。
一方、引用発明の「モールド樹脂16」は、ベース回路基板11a上にモールドされた樹脂であるから、その底部は、ベース回路基板11aの表面に接していると解される。
してみると、「撮像素子12a」の底部と「モールド樹脂16」の底部とは、接着剤の厚さ分だけ段差があるとも解し得る。
しかしながら、ダイボンディングに際して、ダイ(素子)を押圧して固定することは技術常識であるから、押圧により、接着剤は薄く広がるものと解され、その厚さは、薄いものと解される。
そうすると、引用発明において、「撮像素子12a」の底部と「モールド樹脂16」の底部と間には、薄い接着剤の分だけ段差があるとしても、当該段差は、ほとんどないものと考えられるから、実質的な段差はないと解することが相当であり、言い換えれば、「モールド樹脂16」の底部と「撮像素子12a」の底部とは、実質的に面一であると解される。
ここで、本件補正発明の「前記スペーサの底部が前記シリコン基板の底部と面一である」との特定について、本願の発明の詳細な説明の記載を参酌すると、【0024】において、「たとえば、いくつかの場合において、スペーサ30の底部がシリコン基板26A、26Bの底部と実質的に面一であってもよい」と記載されていることから、本件補正発明の「面一」との特定は、「実質的に面一」である構成を含むもの解される。
したがって、上記相違点2は、実質的な相違点ではないものである。

ウ 本件補正発明の効果について
上記相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び慣用技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
なお、本願の発明の詳細な説明の【0024】には、「上述の方法およびモジュールのさまざまな修正例が実現可能である。たとえば、いくつかの場合において、スペーサ30の底部がシリコン基板26A、26Bの底部と実質的に面一であってもよいが、他の場合において、スペーサがシリコン基板の底部を越えて多少突出してもよい(図5参照)。特に、スペーサ30は、外部導電性コンタクト42が位置する、シリコン基板の下面50を越えて延在してもよい。」と記載されており、「面一」であることの技術的意義について、明記されてはいない。

エ 結論
したがって、本件補正発明は、引用発明及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

オ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「原査定では、引用文献2(特開2008-283002号公報)の「半導体ウエハ12」を本願発明の「シリコン基板」に対応させている。引用文献2の「半導体ウエハ12」の底部は、一見すると、「モールド樹脂16」の底部と面一に形成されていると錯覚されるかもしれない。
しかし、引用文献2の「半導体ウエハ(撮像素子)12」は「ベース回路基板11」上に「ダイボンディング」されるものであり(引用文献2の段落[0026])、「ベース回路基板11」上にダイボンド剤(接着剤)の層が形成され、その接着剤層の上に「撮像素子12」が設けられるものであることは当業者にとって明らかな事項である。
したがって、引用文献2の「撮像素子12」の底部が「モールド樹脂16」の底部と面一に形成されているとはいえない。」(第3頁第14行?第23行)と主張している。
しかしながら、上記イのとおり、接着剤が介在するとしても、その厚みは薄いことから、引用発明において、「撮像素子12a」の底部と「モールド樹脂16」の底部とは、実質的に面一であると解される。
また、本件補正発明の「前記スペーサの底部が前記シリコン基板の底部と面一である」との特定は、審判請求書の第2頁【補正の説明】によれば、「本願明細書の段落[0024]等の記載に基づくもの」であるところ、上記イのとおり、【0024】には、「たとえば、いくつかの場合において、スペーサ30の底部がシリコン基板26A、26Bの底部と実質的に面一であってもよい」と記載されていることから、本件補正発明の「面一」は、「実質的に面一」を含んでいると解される。
したがって、請求人の主張は、上記判断を左右するものではない。

3 本件補正についてのむすび
本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年8月26日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和元年11月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?7に係る発明は、本願の最先の優先権主張の日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。

特開2008-283002号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記スペーサの底部が前記シリコン基板の底部と面一である」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2021-03-30 
結審通知日 2021-04-06 
審決日 2021-04-19 
出願番号 特願2017-509730(P2017-509730)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原 俊文  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 吉野 三寛
野村 伸雄
発明の名称 シリコン基板を有する光電子モジュールおよびそのようなモジュールの作製方法  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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