ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B66B |
---|---|
管理番号 | 1378177 |
審判番号 | 不服2021-1404 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-02-01 |
確定日 | 2021-10-05 |
事件の表示 | 特願2018-213355「エレベータ用かご内登録ランプ点検システム及び点検方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 5月28日出願公開、特開2020- 79144、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成30年11月13日の出願であって、令和 2年 9月14日付けで拒絶理由通知がされ、同年 9月28日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月16日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和 3年 2月 1日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。 2.本件補正の適否について 令和 3年 2月 1日にした手続補正(以下、「本件補正」という。)によって、請求項4の「前記画像判定部がによって」が「前記画像判定部によって」に補正された。 当該補正は、日本語として間違った記載を正すものであるから、特許法第17条の2第5項第3号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。 そして、本件補正は、上記のとおり日本語として間違った記載を正すものであって、新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に適合することが明らかである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び同条第5項第3号の規定に適合するものである。 3.本件発明について 上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第5項第3号の規定に適合するものであるから、本願発明1?5は、本件補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される以下のとおりである。 【請求項1】 昇降路内を上下動するかごを制御するエレベータ制御装置を含むエレベータ点検システムであって、 前記かごは、利用者が前記かごを行先階に移動させるための複数の行先階登録ボタンを有する操作盤と、 前記操作盤を撮像する撮像装置と、を含み、 前記エレベータ制御装置は、画像を保存する記憶部と、 前記記憶部に保存されている全点灯された状態の前記行先階登録ボタンの画像と、前記撮像装置で撮像した全点灯の指令が出された状態の前記行先階登録ボタンの画像と、を比較して、点灯している前記行先階登録ボタンの位置が一致するか否かを判定する画像判定部と、 を含み、 前記画像判定部が、前記記憶部に保存されている全点灯された状態の前記行先階登録ボタンの位置を認識し、 前記撮像装置で撮像した全点灯の指令が出された状態の点灯している前記行先階登録ボタンの位置を認識し、 前記記憶部に保存されている全点灯された状態の前記行先階登録ボタンの位置と、 前記撮像装置で撮像した全点灯の指令が出された状態の点灯している前記行先階登録ボタンの位置と、が一致するか否かを判定し、 前記画像判定部が一致しないと判定した場合、その一致していない位置を認識し、その位置の前記行先階登録ボタンの光源が球切れであると判定するエレベータ用点検システム。 【請求項2】 前記画像判定部は画像センサを有し、 前記画像センサにより発光点である行先階ボタンの画面上での位置を特定する請求項1記載のエレベータ点検システム。 【請求項3】 前記撮像装置が防犯カメラである請求項1又は2記載のエレベータ点検システム。 【請求項4】 前記かごは、前記画像判定部によって球切れしていると判定された前記行先階登録ボタンが行先階として選択されたとき、前記行先階登録ボタンの行先階が登録されたという登録情報を通知するスピーカー及び表示部の少なくとも一方を含む請求項1、2又は3記載のエレベータ点検システム。 【請求項5】 昇降路内を上下動するかごを制御するエレベータ制御装置を含むエレベータ点検方法であって、 前記かごは、利用者が前記かごを行先階に移動させるための複数の行先階登録ボタンを有する操作盤と、 前記操作盤を撮像する撮像装置と、を含み、 前記エレベータ制御装置は、前記撮像装置によって撮像された画像を保存する記憶部と、 前記記憶部に保存されている全点灯された状態の前記行先階登録ボタンの画像と、前記撮像装置で撮像した全点灯の指令が出された状態の前記行先階登録ボタンの画像と、を比較して、点灯している前記行先階登録ボタンの位置が一致するか否かを判定する画像判定部と、を含み、 前記エレベータ制御装置が、全点灯された状態の前記行先階登録ボタンの画像を保存する記憶工程と、 前記撮像装置が、全点灯の指令が出された状態の点灯している前記行先階登録ボタンを撮像する撮像工程と、 前記記憶工程により保存されている全点灯された状態の行先階登録ボタンの画像と、前記撮像工程により撮像された全点灯の指令が出された状態の点灯している前記行先階登録ボタンの画像と、を比較して、点灯している前記行先階登録ボタンの位置が一致するか否かを判定する画像判定工程と、 を含み、 前記画像判定工程により、前記画像判定部が、前記記憶部に保存されている全点灯された状態の前記行先階登録ボタンの位置を認識し、 前記画像判定部が、前記撮像装置で撮像した全点灯の指令が出された状態の点灯している前記行先階登録ボタンの位置を認識し、 前記画像判定部が、前記記憶部に保存されている全点灯された状態の前記行先階登録ボタンの位置と、 前記撮像装置で撮像した全点灯の指令が出された状態の点灯している前記行先階登録ボタンの位置と、が一致するか否かを判定し、 前記画像判定部が一致しないと判定した場合、その一致していない位置を認識し、その位置の前記行先階登録ボタンの光源が球切れであると判定するエレベータ点検方法。 4.原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 本願の請求項1?5に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 引用文献1:特開2012-056688号公報 引用文献2:特開2013-227091号公報 5.引用文献に記載された事項及び引用発明 (1)引用文献1について 引用文献1には、次の事項が記載されている。 ア「【技術分野】 【0001】 本発明の実施形態は、乗りかご内や各階の乗場に設置された表示灯を点検するためのエレベータの表示灯点検装置に関する。 【背景技術】 【0002】 エレベータには、乗りかごや各階の乗り場に釦応答灯やランタンなどの表示灯が複数取り付けられている。これらの表示灯を点検する場合に、保守員が各表示灯に対応した釦を1つ1つ押して、点灯状態を確認するといった方法では、手間がかかり、階床数が多いビルでは、点検作業に時間がかかってしまう。 【0003】 このような問題を解決するため、各表示灯を1つ1つ個別に点灯させながら、そのときに流れる電流を電流検出器にて測定し、その測定値から点灯異常にある表示灯を特定して監視センタに発報することが考えられている。」 イ「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、上述した方法では、各表示灯に流れる電流値を一度に測定することができないため、点検に時間がかかる。また、保守員が介在しないため、電流検出器が故障している場合に、正常な表示灯を誤って異常であると誤報してしまい、監視センサから保守員が派遣される可能性がある。 【0006】 そこで、保守員による点検作業の負担を軽減し、全ての表示灯を簡単かつ正確に点検することのできるエレベータの表示灯点検装置が求められる。」 ウ「【0013】 エレベータ制御装置1は、ビルの機械室などに設置されており、エレベータ全体の制御を行う。なお、機械室を持たないマシンルームレスタイプのエレベータでは、エレベータ制御装置1が昇降路内に設置される。 【0014】 このエレベータ制御装置1は、主制御部11と伝送制御部12とで構成される。主制御部11は、乗客の釦操作による呼び(乗り場呼び/かご呼び)の発生に対し、図示せぬモータを駆動して乗りかご2を移動させる。 【0015】 また、本実施形態において、この主制御部11は、「エレベータの表示灯点検装置」として機能し、図2に示すように、一斉点灯部11a、異常検出部11b、点検通知部11c、運転制御部11d、画像取得部11e、報知部11fを備える。 【0016】 一斉点灯部11aは、乗りかご2に乗り込んだ保守員の操作あるいは監視センタ5からの遠隔操作により、乗りかご2内に設置された複数の乗りかご表示灯21A…21Nおよび各階の乗り場に設置された乗り場表示灯41A…41Nを一斉に点灯させる。 【0017】 異常検出部11bは、後述する乗りかご操作盤20に設置された点灯検出部23、乗り場操作盤40A…40Nに設置された点灯検出部43A…43Nを通じて、乗りかご表示灯21A…21Nおよび乗り場表示灯41A…41Nの点灯異常を検出する。 ・・・ 【0020】 画像取得部11eは、乗りかご2内に設置された乗りかご表示灯21A…21Nのいずれかに点灯異常が検出された場合に、乗りかご2内に設置されたカメラ3を起動して、乗りかご表示灯21A…21Nの点灯状態を撮影した画像を取得する。 【0021】 報知部11fは、乗りかご表示灯21A…21N,乗り場表示灯41A…41Nの異常検出結果と共にカメラ3で撮影された乗りかご表示灯21A…21Nの画像を監視センタ5に送信する。 ・・・ 【0023】 エレベータ制御装置1は、監視センタ5と公衆回線6を介して接続されている。監視センタ5は、各地に存在する複数のエレベータの運転状態を遠隔監視しており、何らかの異常を検出した場合に保守員を派遣するなどの対処を行う。 【0024】 乗りかご2は、乗客を乗せて各階を移動する。この乗りかご2の内部には乗りかご操作盤20が設けられている。乗りかご操作盤20には、複数の乗りかご表示灯21A?21Nと、乗りかご制御部22と、点灯検出部23と、表示部24と、操作部25が設けられている。 【0025】 乗りかご表示灯21A?21Nは、各階に対応した呼び釦(行先階指定釦)の応答表示の他、階床表示、管制表示などを行うものであり、電球やLED(light emitting diode)などが用いられる。乗りかご制御部22は、乗りかご2内の表示制御や図示せぬドアの開閉制御などを行う。点灯検出部23は、乗りかご表示灯21A?21Nの点灯状態を検出する。表示部24は、乗りかご2の現在位置や運転方向などを表示する。操作部25は、保守員が点検操作を行う場合に用いられる。 【0026】 ここで、点灯検出部23は、表示灯の種類に応じた検出回路が用いられる。すなわち、例えば乗りかご表示灯21A?21Nがランプやランタンで構成されている場合には、これらの表示灯を点灯させたときに流れる電流値を検出し、その電流値が予め設定された閾値以下であるときに点灯異常と判断する。また、乗りかご表示灯21A?21NがLEDで構成されている場合には、LEDの輝度を検出することにより、輝度が予め設定された閾値以下であるときに点灯異常であると判断する。 【0027】 このような構成において、乗りかご内制御部22は、エレベータ制御装置1の主制御部11から点灯指令52を受けると、乗りかご表示灯21A?21Nに対して点灯指令61を出力して、乗りかご表示灯21A?21Nを点灯させる。 【0028】 点灯検出部23は、乗りかご表示灯21A?21Nから点灯信号62を受信することで、正常に点灯しているかどうかを判断し、その結果を点灯検出信号63として乗りかご内制御部22に送信する。乗りかご内制御部22は、表示部24に表示信号64を出力したり、操作部25からの操作信号65を入力する。 【0029】 また、乗りかご2の内部には、乗りかご操作盤20に向けてカメラ3が設置されている。このカメラ3は、乗りかご操作盤20に設けられた乗りかご表示灯21A?21Nを撮影し、その撮影画像53を主制御部11に転送する。」 エ「【0065】 (c)表示灯遠隔点検処理 次に、表示灯遠隔点検処理について説明する。これは、監視センタ5からの遠隔操作により、乗りかご表示灯21A?21Nと各階の乗り場表示灯41A?41Nの点灯状態を点検するものである。 【0066】 図6は表示灯遠隔点検処理の動作を示すフローチャートである。 【0067】 監視センタ5から公衆回線6を介してエレベータ制御装置1の主制御部11に表示灯点検指令を送信する(ステップS41)。主制御部11は、表示灯点検指令を受信すると、乗りかご制御部22と各階の乗り場制御部42に対し、全ての表示灯を点灯する指令を送信する(ステップS42)。これにより、乗りかご制御部22を通じて乗りかご表示灯21A?21Nが点灯されると共に、乗り場制御部42を通じて乗り場表示灯41A?41Nが点灯される(ステップS43)。 【0068】 このとき、乗りかご表示灯21A?21Nについては、乗りかご操作盤20に設けられた点灯検出部23がこれらの点灯状態を検出し、異常があれば、その情報を乗りかご内制御部22に送信する。・・・乗りかご内制御部22および各階の乗り場制御部42は、それぞれに各表示灯の情報を主制御部11に送信する(ステップS45)。 【0069】 主制御部11は、乗りかご制御部22および各階の乗り場制御部42から受信した各表示灯の情報を監視センタ5に送信した後(ステップS46)、各階の乗り場制御部42に消灯指令を送って、乗り場表示灯41A?41Nを消灯する(ステップS47)。 【0070】 ここで、主制御部11は、乗りかご制御部22から受信した乗りかご表示灯21A?21Nの情報に点灯異常があったか否かを判断する(ステップS48)。点灯異常があった場合(ステップS48のYes)、主制御部11は、乗りかご2内にカメラ3が設置されているか否かを判断する(ステップ49)。 【0071】 乗りかご2内にカメラ3が設置されている場合(ステップS49のYes)、主制御部11は、カメラ3を起動することにより、乗りかご表示灯21A?21Nを点灯させた状態の撮影画像を取得して(ステップS50)、これを監視センタ5へ送信する(ステップS51)。これにより、監視センタ5では、以下のようにして乗りかご表示灯21A?21Nの異常の有無を判断する。 【0072】 すなわち、図7に示すように、監視センタ5では、撮影画像を受信すると(ステップS61のYes)、図示せぬメモリに記憶された基準画像と比較する(ステップS62)。この基準画像は、予め乗りかご表示灯21A?21Nが正常な状態のときに、これらを点灯させてカメラ3で撮影した画像である。 【0073】 この基準画像と上記受信した撮影画像とを比較した結果、両者が一致すれば(ステップS63のYes)、正常であると判断される(ステップS64)。この場合、上記ステップS46にて異常の発報があっても、点灯検出部23の故障による誤報と判断されることになる。一方、両者が一致しない場合には(ステップS63のNo)、上記ステップS46にて異常の発報通りであると判断される(ステップS64)。なお、画像の比較処理は、パターンマッチングなどの一般的に知られている方法を用いるものとし、本発明では特にその方法に限定されるものではない。」 オ「【図1】 」 カ「【図6】 」 キ 引用文献1の段落【0012】?【0014】、【0024】の記載から見て、引用文献1に記載されたエレベータの乗りかご2は、図示しないモータやロープなどの機構により昇降路内を上下に移動し、当該乗りかご2の移動は、エレベータ制御装置1によって制御される図示しないモータを駆動することで行われるものと認められる。 上記摘記事項ア?カ、認定事項キから、引用文献1には次の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。) (引用発明) 「昇降路内を上下に移動する乗りかご2を制御するエレベータ制御装置1を含むエレベータの表示灯点検装置であって、 前記乗りかご2の内部には、各階に対応した呼び釦(行先階指定釦)と、呼び釦(行先階指定釦)の応答表示を行う複数の乗りかご表示灯21A?21Nと、乗りかご制御部22と、点灯検出部23と、表示部24と、操作部25が設けられている乗りかご操作盤20が設けられ、 乗りかご操作盤20に設けられた乗りかご表示灯21A?21Nを撮影するカメラ3と、 乗りかご表示灯21A?21Nから点灯信号62を受信することで、正常に点灯しているかどうかを判断し、点灯検出信号63として乗りかご内制御部22に送信する点灯検出部23と、 を含み、 主制御部11は、表示灯点検指令を受信すると、乗りかご制御部22に対し全ての表示灯を点灯する指令を送信して乗りかご制御部22を通じて乗りかご表示灯21A?21Nが点灯され、 乗りかご表示灯21A?21Nについては、乗りかご操作盤20に設けられた点灯検出部23がこれらの点灯状態を検出し、異常があれば、その情報を乗りかご内制御部22に送信し、 乗りかご内制御部22は、各表示灯の情報を主制御部11に送信し、 主制御部11は、乗りかご制御部22から受信した各表示灯の情報を監視センタ5に送信し 主制御部11は、乗りかご制御部22から受信した乗りかご表示灯21A?21Nの情報に点灯異常があった場合、カメラ3を起動することにより、乗りかご表示灯21A?21Nを点灯させた状態の撮影画像を取得して、これを監視センタ5へ送信し、 監視センタ5では、撮影画像を受信すると、メモリに記憶された、乗りかご表示灯21A?21Nが正常な状態のときにこれらを点灯させてカメラ3で撮影した画像である基準画像と比較し、 基準画像と上記受信した撮影画像とを比較した結果、両者が一致すれば、正常であると判断され、点灯検出部23から異常の発報があっても点灯検出部23の故障による誤報と判断され、両者が一致しない場合には点灯検出部23による異常の発報通りであると判断される、エレベータの表示灯点検装置。」 (2)引用文献2について 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 ア「【技術分野】 【0001】 この発明は、操作釦の操作による指示に対する応答を表示する表示灯の付いたエレベータの表示灯付操作釦制御装置等に関する。 【背景技術】 【0002】 例えば、下記特許文献1には、かご内の操作盤上に取付けられた操作釦の操作の適否をエレベータの運転状態と対比して判定する判定手段と、この判定手段による判定結果が不適であるときその不適である理由に対応したガイドメッセージを作成する翻訳手段と、この翻訳手段によって得られたガイドメッセージをかご内の乗客に報知する報知装置とを備えたエレベータ装置が開示されている。 【0003】 これにより、乗客が不適切な釦操作(例:運転方向と逆方向にある階に対しての呼び登録)を行った時、不適切であることを乗客に報知することができ、乗客は適切な操作をやり直すことができる。」 イ「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、適切な釦操作を行っている時には何も報知しないため、例えば行先階の呼び登録を行った時に、呼び登録の応答を示す表示灯が切れている場合には、乗客は行先階に止まるか不明のため、例えば何度も同じ釦を操作してしまうという問題があった。 【0006】 この発明は、操作釦の応答を表示する表示灯の点灯/不点灯の検出を行い、点灯すべき時に不点灯であった場合には、別の報知手段にて応答の報知を行うエレベータの表示灯付操作釦制御装置等を提供することを目的とする。」 ウ「【発明の効果】 【0008】 この発明では、操作した操作釦の表示灯が点灯すべき時に不点灯であった場合においても、別の報知手段にて応答の報知を行うことで、何度も同じ操作釦を押すようなことがなくなる。」 エ「【0012】 図1において、表示灯付操作釦群200は、それぞれエレベータの各階の乗場操作盤およびかご内操作盤に設けられた複数の表示灯付操作釦からなり、各表示灯付操作釦はそれぞれ例えば図3に示す表示灯付操作釦2のような構成からなる。制御手段100は例えばエレベータの制御盤からなり、制御用のコンピュータ等を含み得る。報知手段300は音や表示等でエレベータの操作釦の操作に対する応答を報知するもので、図2に示す画像表示装置3a、スピーカー3b等からなる。 【0013】 図2において、この発明によるエレベータの各階の乗場操作盤またはかご内操作盤からなる操作盤1には複数の表示灯付操作釦2が設けられ、さらに画像表示装置3a、スピーカー3b等の報知手段が設けられている。 【0014】 図2の各表示灯付操作釦2はそれぞれ例えば図3に示す構成を有する。図3において、エレベータに運転指示を行うために操作される例えば押釦からなる操作釦5、操作釦5の操作に対する応答を表示するランプからなる表示灯6、および表示灯6の近隣に設けられ点灯/不点灯を検出する受光素子からなる光検出手段7は、互いに並列にかつ電源VSとそれぞれ直列に接続され、後述するように制御手段100は、操作釦5のグランド側の電位から操作の有無を判定し、表示灯6のグランド側の電位をグランドさせて点灯指令を行い、光検出手段7のグランド側の電位から点灯/不点灯を判定する。 【0015】 操作釦5が操作されると、制御手段100へ釦信号が入力され、例えば行先階登録が行われる。行先階登録をすると、制御手段100から表示灯6を点灯させる点灯指令が出力され表示灯6が点灯する。表示灯6が点灯すると、光検出手段7で光が検知され制御手段100へ受光信号が入力されて、表示灯6の点灯が検出できるようになっている。 【0016】 図4は制御手段100の動作を示す動作フローチャートであり、該動作フローチャートに従い動作を説明する。制御手段100は例えば行先階釦である操作釦5が押されて図3の操作釦5のグランド側(電源VSと反対側、以下同様)の電圧が上昇する釦信号が入力されると、操作釦5が押された(操作された)と判定し(ステップS1)、行先階登録を行い(ステップS2)、さらに表示灯6のグランド側を例えばスイッチSWを閉じてグランドに接続させる点灯指令を出力して表示灯6を点灯させる(ステップS3)。 【0017】 次に行先階釦である操作釦5に対応する表示灯6の点灯を光検出手段7のグランド側の電圧変化である受光信号入力の変化で検出し(ステップS4)、点灯していれば動作を終了とする。また点灯していなければ、行先階登録されていることを表示灯6以外の報知手段300である例えば図2に示す画像表示装置3a、スピーカー3bに報知指令を出力して映像出力あるいは音声出力させる(ステップS5)。」 6.当審の判断 (1)本願発明1について ア 対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 引用発明の「昇降路内」、「上下に移動」、「乗りかご2」、「エレベータ制御装置1」、「エレベータの表示灯点検装置」は、本願発明1の「昇降路内」、「上下動」、「かご」、「エレベータ制御装置」、「エレベータ点検システム」に相当する。 引用発明の「各階に対応した呼び釦(行先階指定釦)」は、本願発明1の「利用者が前記かごを行先階に移動させるための複数の行先階登録ボタン」に相当する。 引用発明の「乗りかご操作盤20」は、「呼び釦(行先階指定釦)の応答表示を行う複数の乗りかご表示灯21A?21N」が設けられているから、本願発明1の「操作盤」に相当するものといえる。 また、引用発明の「乗りかご操作盤20に設けられた乗りかご表示灯21A?21Nを撮影するカメラ3」は、本願発明1の「操作盤を撮像する撮像装置」に相当する。 してみると、本願発明1と引用発明とは、以下の一致点で一致し、相違点1?3で相違する。 (一致点) 昇降路内を上下動するかごを制御するエレベータ制御装置を含むエレベータ点検システムであって、 前記かごは、利用者が前記かごを行先階に移動させるための複数の行先階登録ボタンを有する操作盤と、 前記操作盤を撮像する撮像装置と、を含む、エレベータ用点検システム。 (相違点1) 本願発明1では、「行先階登録ボタン」自体が点灯するのに対して、引用発明では、「呼び釦(行先階指定釦)の応答表示を行う複数の乗りかご表示灯21A?21N」が点灯する点。 (相違点2) 本願発明1では、「前記エレベータ制御装置は、画像を保存する記憶部と、 前記記憶部に保存されている全点灯された状態の前記行先階登録ボタンの画像と、前記撮像装置で撮像した全点灯の指令が出された状態の前記行先階登録ボタンの画像と、を比較して、点灯している前記行先階登録ボタンの位置が一致するか否かを判定する画像判定部と、 を含」むのに対して、引用発明では、「乗りかご表示灯21A?21Nから点灯信号62を受信することで、正常に点灯しているかどうかを判断し、点灯検出信号63として乗りかご内制御部22に送信する点灯検出部23と、を含」む点。 (相違点3) 本願発明1では、「前記画像判定部が、前記記憶部に保存されている全点灯された状態の前記行先階登録ボタンの位置を認識し、 前記撮像装置で撮像した全点灯の指令が出された状態の点灯している前記行先階登録ボタンの位置を認識し、 前記記憶部に保存されている全点灯された状態の前記行先階登録ボタンの位置と、 前記撮像装置で撮像した全点灯の指令が出された状態の点灯している前記行先階登録ボタンの位置と、が一致するか否かを判定し、 前記画像判定部が一致しないと判定した場合、その一致していない位置を認識し、その位置の前記行先階登録ボタンの光源が球切れであると判定する」のに対して、引用発明では、「主制御部11は、表示灯点検指令を受信すると、乗りかご制御部22に対し全ての表示灯を点灯する指令を送信して乗りかご制御部22を通じて乗りかご表示灯21A?21Nが点灯され、 乗りかご表示灯21A?21Nについては、乗りかご操作盤20に設けられた点灯検出部23がこれらの点灯状態を検出し、異常があれば、その情報を乗りかご内制御部22に送信し、 乗りかご内制御部22は、各表示灯の情報を主制御部11に送信し、 主制御部11は、乗りかご制御部22から受信した各表示灯の情報を監視センタ5に送信し、 主制御部11は、乗りかご制御部22から受信した乗りかご表示灯21A?21Nの情報に点灯異常があった場合、カメラ3を起動することにより、乗りかご表示灯21A?21Nを点灯させた状態の撮影画像を取得して、これを監視センタ5へ送信し、 監視センタ5では、撮影画像を受信すると、メモリに記憶された、乗りかご表示灯21A?21Nが正常な状態のときにこれらを点灯させてカメラ3で撮影した画像である基準画像と比較し、 基準画像と上記受信した撮影画像とを比較した結果、両者が一致すれば、正常であると判断され、点灯検出部23から異常の発報があっても点灯検出部23の故障による誤報と判断され、両者が一致しない場合には点灯検出部23による異常の発報通りであると判断される」点。 イ 当審の判断 上記相違点1について検討する。 引用文献2には、上記5.(2)エに示したとおり、「かご内操作盤からなる操作盤1には複数の表示灯付操作釦2が設けられ」、当該「表示灯付操作釦2」は、「エレベータに運転指示を行うために操作される例えば押釦からなる操作釦5、操作釦5の操作に対する応答を表示するランプからなる表示灯6」で構成される点が記載されており、引用発明の「呼び釦(行先階指定釦)」及び「呼び釦(行先階指定釦)応答表示を行う複数の乗りかご表示灯21A?21N」を、引用文献2に記載された技術的事項を踏まえて、「エレベータに運転指示を行うために操作される例えば押釦からなる操作釦5、操作釦5の操作に対する応答を表示するランプからなる表示灯6」からなる「表示灯付操作釦2」に置換することは、当業者にとって容易であるといえる。 しかしながら、相違点2、3について検討すると、引用発明では、まず「乗りかご操作盤20に設けられた点灯検出部23」が直接的に「乗りかご表示灯21A?21N」それぞれの点灯の有無を検知し、点灯が検出されない「乗りかご表示灯」があった場合には、点灯異常を監視センタ5に発報するとともに、乗りかご表示灯21A?21Nを点灯させた状態の撮影画像を取得して監視センタ5へ送信するものであるから、当該「点灯検出部23」が点灯異常を発報した時点で、すでにいずれの呼び釦(行先階指定釦)に対応する「乗りかご表示灯」が点灯異常であるのかが判明しているものといえる。 そして、引用発明では、監視センタ5において「メモリに記憶された、乗りかご表示灯21A?21Nが正常な状態のときにこれらを点灯させてカメラ3で撮影した画像である基準画像」と「受信した撮影画像」とを比較して、「点灯検出部23」による点灯異常の発報が誤報であるか否かを判断するものであって、上記のとおり「点灯検出部23」が点灯異常を発報した時点ですでにいずれの呼び釦(行先階指定釦)に対応する「乗りかご表示灯」が点灯異常であるのかが判明しているのであるから、監視センタ5における「基準画像」と「撮影画像」との比較によって、点灯異常が発生した乗りかご表示灯の位置を特定する動機付けはない。 してみると、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができた発明とはいえない。 (2)本願発明2?4について 本願発明2?4も、本願発明1の「前記記憶部に保存されている全点灯された状態の前記行先階登録ボタンの画像と、前記撮像装置で撮像した全点灯の指令が出された状態の前記行先階登録ボタンの画像と、を比較して、点灯している前記行先階登録ボタンの位置が一致するか否かを判定する画像判定部と、 を含み、 前記画像判定部が、前記記憶部に保存されている全点灯された状態の前記行先階登録ボタンの位置を認識し、 前記撮像装置で撮像した全点灯の指令が出された状態の点灯している前記行先階登録ボタンの位置を認識し、 前記記憶部に保存されている全点灯された状態の前記行先階登録ボタンの位置と、 前記撮像装置で撮像した全点灯の指令が出された状態の点灯している前記行先階登録ボタンの位置と、が一致するか否かを判定し、 前記画像判定部が一致しないと判定した場合、その一致していない位置を認識し、その位置の前記行先階登録ボタンの光源が球切れであると判定する」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明できた発明とはいえない。 (3)本願発明5について 本願発明5は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「前記記憶部に保存されている全点灯された状態の前記行先階登録ボタンの画像と、前記撮像装置で撮像した全点灯の指令が出された状態の前記行先階登録ボタンの画像と、を比較して、点灯している前記行先階登録ボタンの位置が一致するか否かを判定する画像判定部と、 を含み、 前記画像判定部が、前記記憶部に保存されている全点灯された状態の前記行先階登録ボタンの位置を認識し、 前記撮像装置で撮像した全点灯の指令が出された状態の点灯している前記行先階登録ボタンの位置を認識し、 前記記憶部に保存されている全点灯された状態の前記行先階登録ボタンの位置と、 前記撮像装置で撮像した全点灯の指令が出された状態の点灯している前記行先階登録ボタンの位置と、が一致するか否かを判定し、 前記画像判定部が一致しないと判定した場合、その一致していない位置を認識し、その位置の前記行先階登録ボタンの光源が球切れであると判定する」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明できた発明とはいえない。 7.むすび 以上のとおり、本願発明1?5は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができた発明ではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-09-15 |
出願番号 | 特願2018-213355(P2018-213355) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B66B)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 加藤 三慶 |
特許庁審判長 |
田村 嘉章 |
特許庁審判官 |
間中 耕治 内田 博之 |
発明の名称 | エレベータ用かご内登録ランプ点検システム及び点検方法 |
代理人 | 本田 史樹 |