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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01H |
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管理番号 | 1378211 |
審判番号 | 不服2021-3336 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-03-12 |
確定日 | 2021-10-05 |
事件の表示 | 特願2016-216653「電磁継電器」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月10日出願公開、特開2018- 73795、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成28年11月 4日の出願であって、令和 2年 6月25日付けで拒絶理由通知がされ、同年 8月27日に意見書が提出され、同年12月10日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和 3年 3月12日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 2.本願発明 本件出願に係る発明は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される以下のとおりである(以下、「本願発明1」?「本願発明6」という。)。 【請求項1】 固定接点を有する固定端子と、 第1貫通孔が形成された可動片を含む可動ばねと、 第2貫通孔を有する導電板と、 前記固定接点と接離する頭部と、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔に挿通される脚部とを有する可動接点とを備え、 前記導電板は、前記頭部と前記可動ばねとの間に配置され、 前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔の径方向において前記頭部は前記導電板の外縁からはみ出さず、前記可動片の外縁からはみ出すことを特徴とする電磁継電器。 【請求項2】 前記導電板は前記可動ばねよりも高い導電率及び高い熱伝導率を有することを特徴とする請求項1に記載の電磁継電器。 【請求項3】 前記導電板は、2枚重ねの構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁継電器。 【請求項4】 前記導電板は、前記可動接点が配置される第1領域と、前記第1領域に隣接する第2領域とを備え、前記第2領域は前記固定接点から離れる方向に折り曲げられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電磁継電器。 【請求項5】 前記可動ばね及び前記導電板は一体形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁継電器。 【請求項6】 前記固定端子は、各々前記固定接点を有する第1固定端子及び第2固定端子を含み、 前記可動ばねは、各々前記第1貫通孔が形成された第1可動片及び第2可動片を含み、 前記電磁継電器は、 前記可動ばねに連結される接極子を駆動する電磁石装置と、 前記電磁石装置を覆うカバーと を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電磁継電器。 3.原査定の概要 この出願の請求項1?3、5、6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1?4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 請求項4に係る発明については、拒絶の理由を発見しない。 <引用文献等一覧> 引用文献1:特開2015-191857号公報 引用文献2:特表2012-501059号公報 引用文献3:特開2015-159025号公報 引用文献4:特開2012-94294号公報 4.引用文献に記載された事項及び引用発明 (1)引用文献1について 引用文献1には、次の事項が記載されている。 ア「【0001】 本発明は、電磁継電器に関する。 【背景技術】 【0002】 従来より、電気自動車やハイブリッド車等の走行回路においては、電流の通電と遮断とを切替えるため、リレーと呼ばれる電磁継電器が用いられている。 【0003】 一般的に、電磁継電器は、コイル、可動接点が設けられている可動バネ、固定接点が設けられている固定バネ等を有している。電磁継電器では、コイルに電流を流すことにより磁界が発生し、発生した磁界による磁力により、可動バネが可動し可動接点と固定バネにおける固定接点とが接触し、電磁継電器を介し、電流を通電させることができる。また、コイルに流れる電流を停止すると発生していた磁界が消滅するため、可動バネの復元力により、固定接点と接触していた可動接点が離れ、電磁継電器を介して通電していた電流を遮断することができる。」 イ「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 ところで、電気自動車やハイブリッド車等の走行回路には、高電圧で、大電流が流れるため、用いられている電磁継電器においても、一般的に市販されている通常の電磁継電器とは異なり、高電圧、大電流に対応したものが求められている。また、電気自動車やハイブリッド車等に搭載するためには、小型で低価格なものであることが好ましい。 【0006】 即ち、一般的に市販されている通常の電磁継電器においては、流すことのできる電流量の上限が低く、上限を超えて電流を流した場合には、電磁継電器が発熱し、破壊等されてしまう場合がある。従って、高い耐電圧を有し、大電流を流すことのできる電磁継電器が求められており、更には、小型で低価格なものが求められている。」 ウ「【0012】 (電磁継電器) 第1の実施の形態における電磁継電器について、図1及び図2に基づき説明する。本実施の形態における電磁継電器は、高い耐電圧を有しており、電磁継電器の可動バネに流れる電流量を増やすため、金属等の導電性を有する材料により形成された導電補助部が設けられている構造のものである。尚、図1は本実施の形態における電磁継電器の斜視図であり、図2は、本実施の形態における電磁継電器より導電補助部40が取り除かれている電磁継電器、即ち、導電補助部40が設けられていない電磁継電器の斜視図である。 【0013】 本実施の形態における電磁継電器は、図1に示されるように、第1の固定バネ10、第2の固定バネ20、可動バネ30、導電補助部40を有している。後述する図3に示されるように、第1の固定バネ10の端部近傍には、第1の固定接点11が設けられており、第2の固定バネ20の端部近傍には第2の固定接点21が設けられている。図2に示されるように、可動バネ30は、金属板等を加工することにより形成されたバネ部31と、バネ部31の一方の側の端部30aに設けられた第1の可動接点32と他方の側の端部30bに設けられた第2の可動接点33とを有している。尚、可動バネ30における第1の可動接点32は、第1の固定バネ10における第1の固定接点11に対応する位置に形成されており、第2の可動接点33は、第2の固定バネ20における第2の固定接点21に対応する位置に形成されている。 【0014】 本実施の形態における電磁継電器においては、可動バネ30における第1の可動接点32及び第2の可動接点33には、U字状の導電補助部40が接続されている。即ち、導電補助部40はU字状に形成されており、導電補助部40の一方の端部40aの近傍において、第1の可動接点32に接続されており、他方の端部40bの近傍において、第2の可動接点33と接続されている。」 エ「【0016】 本実施の形態における電磁継電器は、電磁継電器の内部に設けられているコイル50に電流を流すことにより発生した磁界による磁力により、第1の固定バネ10における第1の固定接点11と可動バネ30に設けられた第1の可動接点32とが接触し、第2の固定バネ20における第2の固定接点21と可動バネ30に設けられた第2の可動接点33とが接触する。これにより、電流は、例えば、第1の固定バネ10より、第1の固定接点11及び第1の可動接点32を介し、バネ部31及び導電補助部40の双方を流れ、第2の可動接点33及び第2の固定接点21を介し、第2の固定バネ20に流れる。」 オ「【0018】 これに対し、可動バネ30は、コイル50に電流を流した際に、第1の可動接点32が第1の固定接点11に接触し、第2の可動接点33が第2の固定接点21に接触するようにバネ部31が動くようにする必要がある。よって、可動バネ30におけるバネ部31は、板バネ等の弾性を有するものにより形成されており、導電性とともに弾性を有する銅等の金属材料により形成されている。しかしながら、バネ部31を弾性を有する金属材料により形成した場合であっても、厚すぎると弾性を発揮することができず、バネとしての機能が損なわれるため、バネ部31の厚さを以下となるように形成されている。尚、本実施の形態においては、バネ部31の厚さは、0.25mmとなるように形成されている。 【0019】 本実施の形態における電磁継電器においては、U字状の導電補助部40は、銅等の金属板を加工することにより形成されており、可動バネ30におけるバネ部31の一部と同様の形状となるように形成されている。このように形成された導電補助部40の厚さは、可動バネ30におけるバネ部31と同じ、0.25mmである。これにより、図1に示される本実施の形態における電磁継電器は、図2に示される導電補助部40が設けられていない電磁継電器と比べて、約2倍の電流を流すことができる。 【0020】 尚、導電補助部40を形成している材料は導電性の高い材料が好ましく、例えば、銅(Cu)や銀(Ag)を含む材料が好ましい。また、導電補助部40の厚さは、バネ部31の厚さ以上であることが好ましい。導電補助部40を厚くすることにより、流すことのできる電流量を増やすことができるからである。 【0021】 (導電補助部) 次に、可動バネ30におけるバネ部31と導電補助部40との接続方法について、図6に基づきより詳細に説明する。図6(a)は、バネ部31に導電補助部40が接続される前の状態を示し、図6(b)は、バネ部31に導電補助部40が接続されている状態を示す。 【0022】 可動バネ30におけるバネ部31と導電補助部40とを接続する際には、最初に、バネ部31の上に導電補助部40を重ねる。バネ部31は、第1の固定接点11及び第2の固定接点21と接触する領域の近傍は、U字状に形成されており、U字状に形成された部分における幅は、約4mmである。バネ部31において、U字状に形成された部分の一方の側の端部30aの近傍には接続穴31aが形成されており、他方の側の端部30bの近傍には接続穴31bが形成されている。また、導電補助部40もU字状に形成されており、一方の端部40aの近傍には接続穴41aが設けられており、他方の端部40bの近傍には接続穴41bが設けられている。尚、導電補助部40の幅は約4mmである。 【0023】 導電補助部40の一方の端部40aに設けられた接続穴41aは、バネ部31における一方の側の端部30aに設けられた接続穴31aに対応する位置に設けられており、導電補助部40の他方の端部40bに設けられた接続穴41bは、バネ部31における他方の側の端部30bに設けられた接続穴31bに対応する位置に設けられている。 【0024】 尚、バネ部31の上に導電補助部40を重ねる際には、バネ部31における接続穴31aと導電補助部40における接続穴41aとの位置が一致し、バネ部31における接続穴31bと導電補助部40における接続穴41bとの位置が一致するように重ねる。 【0025】 次に、バネ部31における接続穴31aと導電補助部40における接続穴41aとを第1の可動接点32をかしめることにより接続し、バネ部31における接続穴31bと導電補助部40における接続穴41bとを第2の可動接点33をかしめることにより接続する。これにより、バネ部31と導電補助部40とを接続することができる。このように、バネ部31に導電補助部40を接続することにより、第1の可動接点32と第2の可動接点33との間における抵抗を低くすることができ、電磁継電器に流すことのできる電流量を増やすことができる。」 カ「【図6】 」 キ 【図6】の記載から、可動接点32、33は、リベット状に形成された頭部と脚部からなり、脚部が可動バネ30の接続穴31a、31b及び導電補助部40の接続穴41a、41bとを貫通していることが看取できる。 ク 【図6】の記載から、可動接点32、33の頭部は、可動バネ30及び導電補助部40の外縁からはみ出さない大きさであることが看取できる。 ケ 【図6】の記載から、可動バネ30、導電補助部40及び可動接点32、33とは、導電補助部40と可動バネ30とが重ね合わせられるとともに、可動バネ30側に可動接点32、33の頭部が配置されることが看取できる。 上記摘記事項ア?カ、認定事項キ?ケから、引用文献1には次の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。) (引用発明) 「第1の固定接点11が設けられた第1の固定バネ10、第2の固定接点21が設けられた第2の固定バネ20、 一方の側の端部30aの近傍には接続穴31aが形成されており、他方の側の端部30bの近傍には接続穴31bが形成された可動バネ30、 接続穴41a及び接続穴41bが設けられている導電補助部40、 第1の固定バネ10における第1の固定接点11と可動バネ30に設けられた第1の可動接点32とが接触し、第2の固定バネ20における第2の固定接点21と可動バネ30に設けられた第2の可動接点33とが接触し、 可動接点32、33は、リベット状に形成された頭部と脚部からなり、脚部が可動バネ30の接続穴31a、31b及び導電補助部40の接続穴41a、41bとを貫通し 可動バネ30、導電補助部40及び可動接点32、33とは、導電補助部40と可動バネ30とが重ね合わせられるとともに、可動バネ30側に可動接点32、33の頭部が配置され、 可動接点32、33の頭部は、可動バネ30及び導電補助部40の外縁からはみ出さない大きさである電磁継電器。」 (2)引用文献2について 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 ア「【技術分野】 【0001】 本発明は、リレー用の接点組立体に関する。このリレー用の接点組立体は、少なくとも1つのスイッチ接点と、このスイッチ接点に直接導電接続される接触部を備える少なくとも1つの導電性接続要素と、接触部から離れるように向かう接続要素の接続ストラップに導電接続される柔軟な導電性編組(braid)とを有する。さらに、本発明は、高負荷電流を切り換えるリレーに関する。加えて、本発明は、高負荷電流を切り換えるリレーの取り付け方法に関する。当該方法では、編組が、一スイッチ方向(one switching direction)に撓むことができるスイッチ接点に導電接続されて接点組立体を形成する。」 イ「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 したがって、本発明の目的は、リレー用の接点組立体、および接点組立体を有するリレーを提供することである。また、本発明の目的は、編組端部をシンプルかつ経済的にスイッチ接点と導電結合して接点組立体を形成し、この接点組立体をコンパクトに設計されたリレーに用いることができる、リレーの取り付け方法を提供することである。」 ウ「【0040】 まず、図1の実施形態を参照して、本発明による接点組立体の構造および機能を説明する。図1は、高負荷電流を切り換えるリレー用の本発明による接点組立体1を概略的に示しており、接点組立体1は、スイッチ接点2と、編組4の端部3とを有する。図1では、スイッチ接点2および編組端部3が接続要素5によって共に導電接続されている。」 エ「【0046】 図1の接点組立体1へ図示追加したものは、アーマチュアばね12およびアーマチュア13である。アーマチュアばね12は、アーマチュアばね12のベアリング・アーム14およびスイッチ・アーム15が、互いに向かって延びる角度を形成する。ベアリング・アーム14およびスイッチ・アーム15は、湾曲した曲げ部16において互いへ漸次変化する。曲げ部16は、ベアリング・アーム14に向かって延びるスイッチ・アーム15の固定領域17から連なる。曲げ部16の特徴は、最初にベアリング・アーム14から実質的に離れる方に向かいつつ延在し、次いで曲げ部16がさらに進む中で、ベアリング・アーム14に向かって湾曲し、一直線になってベアリング・アーム14に出合う。ベアリング・アーム14の内面18およびスイッチ・アーム15の内面19は、約90°に等しいアーマチュアばね12の角度に広がる。 ・・・ 【0048】 曲げ部16から離れるように向かうスイッチ・アーム15の自由端22の領域では、接続要素5が、スイッチ・アーム15の外側21に当たってアーマチュアばね12に恒久的に接続される。接続要素5の接触部6は、接触リベットの形態でスイッチ接点2を介してスイッチ・アーム15にリベット留めされる。接触リベット2のスイッチ表面11は、スイッチ方向Sに向いている。スイッチ・アーム15の内側19に配置された接触リベット2の一部は、さらなるスイッチ表面23を備え、このスイッチ表面23は、スイッチ方向Sから離れるように向いている。接触リベット2を収容するために、接続要素5の接触部6、およびオーバートラベルばねの形態をとるスイッチ・アーム15の自由端21は、スイッチ方向Sに延びる相互に位置合わせされた孔を備える。」 オ「【図2】 」 カ「【図3】 」 5.当審の判断 (1)本願発明1について ア 対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 引用発明の「第1の固定接点11」及び「第2の固定接点21」は、本願発明1の「固定接点」に相当し、同様に引用発明の「第1の固定バネ10」及び「第2の固定バネ20」は、本願発明1の「固定端子」に相当する。 引用発明の「接続穴31a」及び「接続穴31b」は、本願発明1の「第1の貫通孔」に相当し、同様に引用発明の「一方の側の端部30a」及び「他方の側の端部30b」、「可動バネ30」は、本願発明1の「可動片」、「可動ばね」に相当する。 引用発明の「接続穴41a」及び「接続穴41b」、「導電補助部40」は、本願発明1の「第2の貫通孔」、「導電板」に相当する。 引用発明の「第1の固定バネ10における第1の固定接点11と可動バネ30に設けられた第1の可動接点32とが接触し、第2の固定バネ20における第2の固定接点21と可動バネ30に設けられた第2の可動接点33とが接触し、可動接点32、33は、リベット状に形成された頭部と脚部からなり、脚部が可動バネ30の接続穴31a、31b及び導電補助部40の接続穴41a、41bとを貫通」することは、引用発明の「可動接点32、33」の「リベット状に形成された頭部」が「固定接点11」及び「固定接点21」に接触するものといえるから、本願発明1の「前記固定接点と接離する頭部と、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔に挿通される脚部とを有する可動接点」と一致する。 そして、引用発明の「電磁継電器」は、本願発明1の「電磁継電器」に相当する。 してみると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点1、2で相違する。 (一致点) 「固定接点を有する固定端子と、 第1貫通孔が形成された可動片を含む可動ばねと、 第2貫通孔を有する導電板と、 前記固定接点と接離する頭部と、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔に挿通される脚部とを有する可動接点とを備えた、電磁継電器。」 (相違点1) 本願発明1では、「前記導電板は、前記頭部と前記可動ばねとの間に配置され」るのに対して、引用発明では、「可動バネ30、導電補助部40及び可動接点32、33とは、導電補助部40と可動バネ30とが重ね合わせられるとともに、可動バネ30側に可動接点32、33の頭部が配置され」る点。 (相違点2) 本願発明1では、「前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔の径方向において前記頭部は前記導電板の外縁からはみ出さず、前記可動片の外縁からはみ出す」のに対して、引用発明では、「可動接点32、33の頭部は、可動バネ30及び導電補助部40の外縁からはみ出さない大きさである」点。 イ 判断 相違点1について検討する。 上記4.(2)エで摘記したとおり、引用文献2の【0048】には、「・・・スイッチ・アーム15の自由端22の領域では、接続要素5が、スイッチ・アーム15の外側21に当たってアーマチュアばね12に恒久的に接続される。接続要素5の接触部6は、接触リベットの形態でスイッチ接点2を介してスイッチ・アーム15にリベット留めされる。接触リベット2のスイッチ表面11は、スイッチ方向Sに向いている。・・・接触リベット2を収容するために、接続要素5の接触部6、およびオーバートラベルばねの形態をとるスイッチ・アーム15の自由端21は、スイッチ方向Sに延びる相互に位置合わせされた孔を備える。」と記載されており、引用文献2の【図2】、【図3】からも、スイッチ・アーム15の自由端21の外側に接続要素5が接続され、その外側に接触リベット2のスイッチ表面11が配置されていること、すなわち、接続要素5が接触リベット2のスイッチ表面11とスイッチ・アーム15との間に配置されていることが看取できる。 しかしながら、相違点2について検討すると、引用文献2の【図2】、【図3】において、スイッチ・アーム15の自由端21と接続要素5とはいずれも同じ大きさで記載されているとともに、接触リベット2のスイッチ表面11は、当該スイッチ・アーム15の自由端21と接続要素5の外縁からはみ出さない大きさで記載されていることが看取できるのみであり、「頭部は前記導電板の外縁からはみ出さず、前記可動片の外縁からはみ出す」構成は、引用文献2には記載されていない。 そして、本願発明1は、相違点1、2に係る構成により「導電板40は、頭部361と可動ばね18との間に配置され、可動ばね18の貫通孔19a及び19b並びに導電板40の貫通孔42a及び42bの径方向において、頭部361は下部18a2及び18b2の外縁からはみ出しても、導電板40の外縁からはみ出さない。従って、頭部361の全体が接触する導電板40を可動ばね18の下部18a2及び下部18b2と頭部361との間に配置するので、可動接点36a及び36bから導電板40に電流や熱を効率的に伝えることができ、通電容量を増大させることができる。」(段落【0047】)とともに、「通電容量を増大させる導電板40が設けられているので、可動ばね18の通電容量を考慮することなくばね負荷設計の自由度が向上する。さらに、可動ばね18のサイズを変更できないような構造上の制約がある場合でも、導電板40を設けることで通電容量を向上させることができる。さらに、導電板40を熱伝導率の高い材料で構成することで、アークの熱を効率的に冷却することができ、可動接点36a及び36bの開閉性能を向上させることができる。」(段落【0048】)という有利な効果を奏するものであって、当該効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項から予測できないものである。 なお、引用文献3、4は、本願発明3、5に対して引用されたもので、相違点の構成を示唆するものでない。 してみると、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができた発明とはいえない。 (2)本願発明2?6について 本願発明2?6も、本願発明1の「前記導電板は、前記頭部と前記可動ばねとの間に配置され、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔の径方向において前記頭部は前記導電板の外縁からはみ出さず、前記可動片の外縁からはみ出すこと」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができた発明とはいえない。 7.むすび 以上のとおり、本願発明1?6は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができた発明ではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-09-15 |
出願番号 | 特願2016-216653(P2016-216653) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01H)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 太田 義典 |
特許庁審判長 |
平田 信勝 |
特許庁審判官 |
中村 大輔 間中 耕治 |
発明の名称 | 電磁継電器 |
代理人 | 片山 修平 |