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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1378242
審判番号 不服2020-8749  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-24 
確定日 2021-09-16 
事件の表示 特願2018-123957「情報処理装置、情報処理システム、情報処理装置の制御方法、及びプログラム。」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月24日出願公開、特開2019-185714〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年6月29日(優先権主張 平成30年3月30日)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 7月23日 :手続補正書の提出
令和 元年 9月18日付け:拒絶理由通知書
令和 元年11月22日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 4月 9日付け:拒絶査定
令和 2年 6月24日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年10月20日 :上申書の提出

第2 令和2年6月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年6月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「 表示部に表示する表示内容を制御可能な情報処理装置であって、
店舗に入る特定の人の識別情報を取得する識別情報取得手段と、
前記識別情報取得手段により取得される識別情報が示す前記特定の人が撮影された撮影情報を取得する撮影情報取得手段と、
前記識別情報取得手段によって取得される識別情報が示す前記特定の人であって、前記店舗に滞在中である特定の人に関する情報を、前記撮影情報取得手段により取得される前記特定の人の前記撮影情報と対応付けて前記表示部に表示するように制御する表示制御手段と、を備え、
前記表示制御手段は、前記店舗に滞在中でない前記特定の人について、滞在中でないことを示すように前記表示部の表示内容を制御し、
前記表示制御手段は、さらに、前記特定の人への店員の応対が行われている最中であることを示す応対ステータス情報を、応対する旨の指示を受け付けてから応対完了の指示を受け付けるまでの間、表示するように制御することを特徴とする情報処理装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の令和元年11月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「 表示部に表示する表示内容を制御可能な情報処理装置であって、
店舗に入る特定の人の識別情報を取得する識別情報取得手段と、
前記識別情報取得手段により取得される識別情報が示す前記特定の人が撮影された撮影情報を取得する撮影情報取得手段と、
前記識別情報取得手段によって取得される識別情報が示す前記特定の人であって、前記店舗に滞在中である特定の人に関する情報を、前記撮影情報取得手段により取得される前記特定の人の前記撮影情報と対応付けて前記表示部に表示するように制御する表示制御手段と、を備え、
前記表示制御手段は、前記店舗に滞在中でない前記特定の人について、滞在中でないことを示すように前記表示部の表示内容を制御し、
前記表示制御手段は、さらに、前記特定の人への店員の応対が行われている最中であるかを示す応対ステータス情報を表示するように制御することを特徴とする情報処理装置。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「表示制御手段」に関して、前記特定の人への店員の応対が行われている最中であることを示す応対ステータス情報を、「応対する旨の指示を受け付けてから応対完了の指示を受け付けるまでの間、」表示するように制御するという限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と、補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野および解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第03/083744号(平成15年10月9日国際公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は、当審で付与した。

A 「本接客支援システム1は、店舗(接客エリア)100における販売員(接客員)70(70a、70b、70c) による顧客41に対する接客を支援するものであって、図1に示すように、 管理サーバ (顧客情報取得部11、通知部12、表示制御部13および優先順位設定部15)10、 顧客DB14、 カードゲート(顧客情報読取部)20、通信ネットワーク30、 顧客カード(媒体)40、携帯端末(携帯端末装置、表示部、選択部)50およびPOS端末60をそなえて 構成されている。」(第8ページ第6行?第12行)

B 「顧客カード40は、顧客41を特定するための顧客特定情報を記録する非接触型IC(Integrated Circuit)カードであって、顧客41が携行することができるものである。なお、本実施形態においては、顧客特定情報として、顧客41毎に設定された顧客コードが顧客カード40に記録されている。」(第8ページ第18行?第21行)

C 「カードゲート(顧客情報読取部)20a、20bは、顧客カード40に記録されている顧客コードを読み取るためのものであって、入口101にカードゲート20aがそなえられるとともに、出口102にカードゲート20bがそなえられ、顧客41が店舗100に入店/退店する際には必ずこれらのカードゲート20a、20bを通過するようにしてそれぞれ設置されている。
なお、以下、カードゲートを示す符号としては、複数のカードゲートのうち1つを特定する必要があるときには符号20aもしくは20bを用いるが、任意のカードゲートを指すときには符号20を用いる。
そして、顧客カード40を持った顧客41が店舗100の入口101にそなえられたカードゲート20aを通過すると、カードゲート20aはその顧客41の顧客カード40から顧客コードを読み取るようになっており、同様に、顧客カード40を持った顧客41が店舗100の出口102にそなえられたカードゲ一ト20bを通過すると、カードゲート20bがその顧客41の顧客カード40から顧客コードを読み取るようになっている。」(第9ページ第14行?第27行)

D 「携帯端末(携帯端末装置)50は、店舗100内において販売員70が携行可能な情報処理装置であって、図3に示すように、タッチパネル51とキーボード52とをそなえて構成されている。又、この携帯端末50は、無線LANインターフェースによって実現される通信部(受信手段)55(図4参照)をそなえ、無線LAN(Local Area Network)基地局31を含む通信ネットワーク30を介して、管理サーバ10と無線で通信可能に接続されている。そして、携帯端末50は、通信部55を用いて、管理サーバ10から送信される来店通知や顧客情報(購入履歴や家族情報等)を受信するようになっている。
また、本実施形態においては、複数の販売員70(本実施形態においては、例えば販売員A(70a)、販売員B(70b)、販売員C(70c)の3人)が店舗100内において接客を行なうようになっており、これらの販売員70がそれぞれ専用の携帯端末50を携行するようになっている。そして、各販売員70は携帯端末50を用いて、来店通知や顧客情報(購入履歴や家族情報等)を閲覧することができるようになっている。」(第10ページ第15行?第28行)

E 「キーボード52は、例えば、10キーやファンクションキーによって構成され、販売員70が種々の入力(もしくは選択)を行なう入力部(入力手段)56(図4参照)として機能するものである。タッチパネル51は、例えば、顧客41の来店通知や顧客41の情報(購入履歴や家族情報)等の、種々の情報を表示させたり、販売員70が触れる(タッチする)ことにより種々の入力(もしくは選択)を行なったりするためのものであり、種々の情報を表示させるための表示部(表示手段)57(図4参照)として機能する他、種々の情報を入力するための入力部(入力手段)56(図4参照)としても機能するようになっている。」(第11ページ第9行?第16行)

F 「さらに、携帯端末50は、販売員70が閲覧可能な種々の接客支援画面(図7?図11等参照;詳細は後述)をタッチパネル51に表示させることができるようになっており、販売員70は、タッチパネル51に表示されたこれらの接客支援画面に対して、タッチパネル51やキーボード52を用いて種々の入力操作を行なうことができるようになっている。なお、本実施形態においては、後述の如く、これらの接客支援画面を管理サーバ10が提供するようになっているが、これに限定されるものではなく、図示しない表示サーバ(ウェブサーバ等)等がこれらの接客支援画面を提供してもよく、又、携帯端末50に予め登録したプログラムがこれらの接客支援画面を表示させてもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
顧客DB(Data Base:データベース)14は、顧客41に関する種々の情報(顧客情報)を記録するものであり、顧客情報記憶部として機能するものである。又、この顧客DB14は後述する管理サーバ10によって管理されるようになっている。・・・(中略)・・・そして、本実施形態においては、顧客情報として、入店/退店情報、顧客詳細情報および購買履歴情報が記録されるようになっている。
図5(a)?(c)はそれぞれ本発明の一実施形態としての接客支援システム1における顧客DB14に記録されるデータの構成を模式的に示す図であり、図5(a)は入店/退店情報のデータ構成を示す図、図5(b)は顧客詳細情報のデータ構成を示す図、図5(c)は購買履歴情報のデータ構成を示す図である。
入店/退店情報は、顧客41が店舗100に入店した日時と退店した日時とを記録するものであって、図5(a)に示すように、入店日付、入店時刻、顧客コード、顧客氏名、退店日付および退店時刻を相互に対応付けて記録することによって構成されている。なお、入店日付、入店時刻、退店日付および退店時刻には、カードゲート20aやカードゲート20bによって顧客41が有する顧客カード40から顧客コードが読み取られた日付や時刻が入力されるようになっている。
すなわち、カードゲート20aが顧客カード40から顧客コードを読み取ると、管理サーバ10は、新たなレコードを作成して、顧客コードを読み取った日付や時刻を入店日付および入店時刻として記録する。なお、新たにレコードを作成する際には、管理サーバ10は、その読み取った顧客コードに基づいて顧客詳細情報(図5(b)参照)から顧客氏名を取得して入力するようになっている。又、カードゲート20bが顧客カード40から顧客コードを読み取ると、管理サーバ10は、その顧客コードに基づいて顧客DB14を検索して、その顧客コードに対応するレコードに対して、カードゲート20bが顧客コードを読み取った日付や時刻を退店日付および退店時刻として記録する。
顧客詳細情報は、顧客41に関する詳細な情報を記録するものであり、図5(b)に示すように、顧客コード、顧客氏名、生年月日、住所、電話番号、顧客登録日、担当販売員、家族構成(家族構成1、家族構成2、家族構成3、家族構成4、家族構成5)および写真を相互に関連付けて記録することによって構成されている。」(第12ページ第8行?第13ページ第20行)

G 「図6は本発明の一実施形態としての接客支援システム1における抽出済顧客情報のデータ構成例を示す図である。この抽出済顧客情報は、図5(a)?(c)に示した顧客情報を特定の顧客41の顧客コードに基づいて抽出して作成された情報であって、顧客情報取得部11によって作成されるものである。」(第14ページ第7行?第10行)

H 「管理サーバ10は、顧客DB14に記録される種々のデータを管理するほか、携帯端末50から入力される種々の要求やデータに基づいて種々の処理を行なうようになっていて、顧客情報取得部11、通知部12、表示制御部13および優先順位設定部15としての機能をそなえている。」
H1 「顧客情報取得部11は、カードゲート20aによって読み取られた顧客コードを通信ネットワーク30を介して受信し、この顧客コードに基づいて、その顧客41に関する顧客情報を顧客DB14から取得するものである。すなわち、この顧客情報取得部11は、カードゲート20aによって読み取られた顧客コードについて、顧客DB14に記録されている種々のデータを抽出して、抽出済顧客情報(図6参照)を作成するようになっている。又、顧客情報取得部11は、顧客41が退店した場合、すなわち、カードゲート20bによって顧客コードが読み取られた場合に、この抽出済顧客情報を削除するようになっている。
通知部12は、カードゲート20aが顧客コードを読み取ると、販売員70に対して顧客41が店舗内(接客エリア)に進入した旨を通知するものである。具体的には、通知部12は、各販売員70が携行する携帯端末50のタッチパネル51に、顧客41が店舗100に来店した旨を通知するメッセージ(図8及び図9に示す例においては、「お客様が来店されました・・・」というメッセージ)を表示させるようになっている。
なお、この通知は、例えば管理サーバ10(通知部12)から各携帯端末50に対して電子メールを送信することによって行なってもよく、又、電子メール以外の種々の手法を用いてもよい。
図7?図11はそれぞれ本発明の一実施形態としての接客支援システム1における携帯端末50のタッチパネル51の表示画面(接客支援画面)の例を示す図であって、図7はその業務選択画面の表示例を示す図、図8は図7の業務選択画面に来店通知が表示された例を示す図、図9はその顧客一覧画面の表示例を示す図、図10および図11はそれぞれその顧客照会画面の例を示す図である。なお、これらの図7?図11に示す接客支援画面(51a、51b、51c、51d、51e)は、販売員A(販売員70a)が携行する携帯端末50のタッチパネル51に表示される例について示すものである。又、本実施形態においては、これらの接客支援画面(51a?51e)は、管理サーバ10(表示制御部13)が各携帯端末50に対して表示させるようになっている。」
H2 「表示制御部13は、種々の接客支援画面を各携帯端末50のタッチパネル51に表示させるべく制御を行なうものである。この表示制御部13は、店舗100内に複数の顧客41がいる場合には、図9に示すような顧客一覧画面51cを表示させるようになっており、店舗100内の複数の顧客41について、カードゲート20によって読み取られた顧客コードによって特定される顧客41のそれぞれについて、顧客コード(顧客No.)、名前、入店時間および前回販売員を1つの列として表示することにより、一覧として携帯端末50のタッチパネル51に対して表示させるべく制御を行なうようになっている。」
H3 「すなわち、表示制御部13は、店舗100内に複数の顧客41がいる場合に、これらの顧客41について、カードゲート20によって読み取られた顧客コードによって特定される顧客41に関する顧客情報の少なくとも一部を、一覧(顧客一覧画面)として携帯端末50(タッチパネル51)に対して表示させるべく制御を行なうのである。」(以上、第14ページ第21行?第16ページ第6行)。

I 「また、販売員70は、この顧客一覧画面51cにおいて特定の顧客41を選択すると、その選択した顧客41に関して、図10に示す顧客照会画面51dが表示されるようになっている。
そして、本実施形態においては、顧客一覧画面(接客支援画面)51cを携帯端末50のタッチパネル51に表示させることにより、このタッチパネル51(もしくは携帯端末50)、顧客情報の一覧から接客を行なう顧客41を選択可能な選択部として機能するようになっている。
図10に示す顧客照会画面51dにおいては、顧客41に関する詳細な情報(顧客情報)が表示されるようになっており、特定の顧客41に関して、前述した顧客DB14に記録された顧客情報が抽出されて表示されるようになっている。本実施形態においては、顧客情報として、顧客No.(顧客コード)、顧客氏名、顧客登録(顧客登録日)、政変月日(当審注:「生年月日」の誤記と認める。)、家族、購入履歴および写真(顔写真)が表示されるようになっている。これらの情報は、顧客情報取得部11により顧客コードに基づいて顧客DB14から取得され、表示制御部13により携帯端末50のタッチパネル51に表示されるようになっている。
そして、顧客照会画面(接客支援画面)51dを携帯端末50のタッチパネル51に表示させることによりタッチパネル51(もしくは携帯端末50)が、顧客情報を表示する表示部として機能するようになっている。
また、販売員70が顧客一覧画面51cにおいて、特定の顧客41を選択して顧客照会画面51dを表示させると、表示制御部13(もしくは通知部12)は、その販売員70に対して通知が行なわれたと判断して、通知メッセージをタッチパネル51から消去するようになっている。
図11に示す顧客照会画面51eにおいては、図10に示した顧客照会画面51eの下部に来店通知が表示されている。この図11に示す来店通知は、販売員A以外の販売員70が優先的に接客を行なうべき顧客41が店舗100内に入ってきたことを通知するものであり、図11に示すように、「お客様が来店されました」というメッセージのみが表示されるようになっている。
すなわち、本接客支援システム1においては、管理サーバ10は、後述する如く、接客を行なうべき販売員70の優先順位を設定するようになっており、その優先順位が一番高い販売員70以外の販売員70に対して行なう来店通知には、図11に示すように、「[販売員○○扱い]」というメッセージを含めないようになっている。
また、表示制御部13は、顧客一覧画面51cを表示させる際には、優先順位設定部15によって設定された順番に従って、各接客員70が有する携帯端末50のタッチパネル51にそれぞれ異なる一覧を表示させるようになっている。」(第17ページ第9行?第18ページ第14行)

J 「上述の如く構成された本発明の一実施形態としての接客支援システム1における顧客41の来店時の処理を、図15に示すフローチャート(ステップA10?A50)に従って説明する。
顧客カード40を持った顧客41が店舗100に来店し、店舗100の入口101付近に設けられたカードゲート20aがその顧客カード40に登録された顧客コードを受信すると(ステップA10;顧客情報読取ステップ)、カードゲート20aは読み取った顧客コードを通信ネットワーク30を介して管理サーバ10に送信する。なお、顧客カード40を持っていない顧客41がカードゲート20aを通過した場合には、カードゲート20はその顧客41の顧客コードを読み取ることができない。
顧客コードを受信した管理サーバ10(顧客情報取得部11)は、顧客DB14からその顧客コードに対応する顧客詳細情報(顧客データ)が存在するか否かを判断し(ステップA20)、顧客詳細情報が存在しない場合には(ステップA20のNOルート参照)、そのまま処理を終了する。
一方、顧客DB14に、その顧客コードに対応する顧客詳細情報が存在する場合には(ステップA20のYESルート参照)、管理サーバ10は、顧客DBにおける入店/退店情報のレコードを新たに作成し、そのレコード中について、入店日付、入店時刻、顧客コードおよび顧客氏名を入力する(ステップA30)。
また、顧客情報取得部11は、顧客DB14の購買履歴情報から、その顧客41に関する情報を抽出して抽出済顧客情報(図6参照)を作成し(ステップA40;顧客情報取得ステップ)、通知部12がその担当販売員70の携帯端末50に対して、顧客41が来店した旨の通知を行なう(ステップA50;通知ステップ)。
次に、本発明の一実施形態としての接客支援システム1において販売員70が顧客41に関する情報を閲覧する手法を、図16に示すフローチャート(ステップB10?B50)に従って説明する。
携帯端末50を携行する販売員70が、通知部(管理サーバ10)から顧客41が来店した旨の通知(図8参照)を受信すると、販売員70は、携帯端末50のタッチパネル51において、業務選択画面51b(51a)を表示させて顧客照会業務を選択する。これにより、タッチパネル51には顧客一覧画面51c(図9参照)が表示され(ステップB10;優先順位設定ステップ、表示ステップ)、販売員70はこの顧客41の一覧の中から特定の顧客41を選択する(ステップB20;選択ステップ)。
管理サーバ10は、選択された顧客41についての抽出済顧客情報が存在するか否かを判断し(ステップB30)、抽出済顧客情報が存在する場合には(ステップB30のYESルート参照)、その販売員70の携帯端末50にその顧客41に関する情報を顧客照会画面51d(図10参照)として送信して(ステップB40)、処理を終了する。又、抽出済顧客情報が存在しない場合には(ステップB30のNOルート参照)、その顧客41が既に退店した旨を示すメッセージを、その販売員70の携帯端末50に送信して(ステップB50)、処理を終了する。」(第20ページ第5行?第21ページ第15行)

K 「接客支援システム1によれば、顧客カードを有する顧客41が店舗100に来店すると、カードゲート20がその顧客カードに記録された顧客コードを読み取って管理サーバ10に通知し、この管理サーバ10(通知部12)が接客員にその旨を通知するようになっているので、店舗100に顧客41が来店したことを接客員が迅速に知ることができ利便性が高く、又、顧客41にとっても、販売員70による接客を迅速に受けることができ満足度が向上する。
また、通知部12が接客員に対して顧客41が来店した旨を通知する際に、通知部12が、各販売員70がそれぞれ携行する携帯端末50のタッチパネル51にメッセージを表示させることにより、販売員70は顧客41が来店したことを迅速且つ確実に知ることができる。」(第22ページ第23行?第23ページ第4行)

L 「また、通知部12によって顧客41が来店した旨の通知が行なわれた際に、販売員70が、タッチパネル51に表示された顧客41の一覧(顧客一覧画面51c)の中から、自分が接客を行なう顧客41を選択・入力して、他の販売員70に知らせることができるようにしてもよく、これにより、他の販売員70との間でどの顧客41に対して接客を行なうかを分担することができ利便性が高い。又、顧客41側にとっても、接客を受けることができずに放置されることがなくなり満足度が向上する。」(第24ページ第15行?第21行)

(イ)上記(ア)の記載から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「店舗における販売員による顧客に対する接客を支援するものであって、管理サーバ、顧客DB、顧客が店舗に入店する際に通過する(上記C)カードゲート、通信ネットワーク、顧客特定情報として顧客毎に設定された顧客コードが記録されている(上記B)顧客カード、携帯端末およびPOS端末をそなえて構成されている接客支援システムにおける管理サーバであって、(上記A)
カードゲートによって読み取られた顧客コードを通信ネットワークを介して受信し、この顧客コードに基づいて、その顧客に関する顧客情報を顧客DBから取得し、抽出済顧客情報を作成するようになっており、又、顧客が退店した場合に、抽出済顧客情報を削除するようになっている顧客情報取得部と、(上記H1)
種々の接客支援画面を各携帯端末のタッチパネルに表示させるべく制御を行なうものであり、店舗内に複数の顧客がいる場合には顧客一覧画面を表示させるようになっており、店舗内の複数の顧客について、カードゲートによって読み取られた顧客コードによって特定される顧客のそれぞれについて、顧客コード、名前、入店時間および前回販売員を1つの列として表示することにより、一覧として携帯端末のタッチパネルに対して表示させるべく制御を行う表示制御部(上記H2)を備え、
表示制御部は、販売員が顧客一覧画面において特定の顧客を選択すると、その顧客41に関して、顧客照会画面が表示されるように制御し、顧客照会画面においては、顧客に関する詳細な情報(顧客情報)が表示されるようになっており、顧客情報として、顧客コード、顧客氏名、顧客登録日、生年月日、家族、購入履歴および写真が表示されるようになっており、(上記I)
選択された顧客についての抽出済顧客情報が存在しない場合には、その顧客が既に退店した旨を示すメッセージをその販売員の携帯端末に送信し、(上記I)
販売員が、タッチパネルに表示された顧客一覧画面の中から、自分が接客を行う顧客を選択・入力して、他の販売員に知らせることができる(上記L)
管理サーバ。」

イ 引用文献2
(ア)本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2000-99827号公報(平成12年4月7日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は、当審で付与した。

「【0018】本発明のさらに別の側面では、特定の顧客データレコードが、顧客の取引履歴、個人的な好み等と共に、1組の履歴視覚画像を含む。顧客が店舗に入るときにカメラによって撮影されたビデオ画像からその顧客を認識または識別することが不可能である場合には、代わりのビデオ画像が画像記憶装置からアクセスされ、店舗内端末装置の各々の中の顧客のデータレコードの中に代入される。このようにして、ある顧客が店舗に入るときに何らかの理由から顧客の顔、特徴、衣服等が不明瞭であった場合でさえ、その顧客を認識し識別することが可能である。現在の顧客ビデオ画像を、その顧客の顧客IDカード発行時のビデオ画像と比較することは、カードのセキュリティを強化する役割もはたす。ある特定の顧客のIDカードの不正使用者は、そのIDカードを提示する人物の顔と特徴をカード所有者本人のビデオ画像と単に比較することによって、容易に識別される。」


「【0022】
【発明の実施の形態】一般的な観点では、本発明は、小売百貨店、ホテル、レストラン、金融機関等の商業施設の個々の顧客がこうした商業施設に入場するときにそれによって顧客が遠隔認識され、かつ、それによって、上記商業施設の従業員に対して、顧客を容易に認識できる仕方で顧客の存在を伝えるシステムと方法とに関する。顧客認識上の特徴を提供することに加えて、上記システムは、顧客の現在のビデオ画像を、その顧客の取引活動の履歴レコードと個人的好み情報と人口統計学的データとを保持するデータベースファイルと組み合わせる。当該顧客に関連する個人履歴情報が、商業施設の従業員がその顧客に対して即時的に適切な援助を提供することを可能にするために、その従業員に提供される。」

「【0031】本発明のシステムと方法の特徴の上記概略を考慮して、図1は、無線識別と視覚データ伝送とによって個々の顧客を認識するための上記システムの実施形態の簡略化した一部図式化ブロック図を示す。図1の実施形態では、顧客認識システムと組み合わせて使用されるスマートカード状の顧客識別カード(顧客IDカード)10を各々の顧客に発行することによって、顧客認識がサポートされる。顧客IDカード10は、通常のクレジットカードに似た外観と印象とを持ち、かつ、接点またはワイヤを使用せずに情報を少なくとも送信し好ましくは送受信すること(すなわち、無線伝送)が可能である、個人用メモリカードまたはデータカードを含む。各々の顧客IDカードは、商業施設の入口/出口に配置されているRF質問システムによって質問または起動されることに応答して顧客ID信号と随意のデータ情報とを通信する、関連のRF受信機/送信機を含む。」

「【0034】適切な顧客IDカード(またはタグ)10を携帯する顧客が商業施設内に入るときには、顧客が入口/出口ゲート12を通過し、それによって顧客が質問機アンテナ14の付近を通過しなければならない。当業者に公知の仕方で質問機アンテナ14は顧客IDカード10と対話し、質問信号に応答して顧客IDカードが少なくとも顧客識別番号を伝送する。質問シーケンスは完全に自動的であってよく、質問信号がアンテナ14によって連続的に発信されるか、または、入口/出口ゲート12内に配置されているセンサ16を顧客が起動させるときに質問シーケンスが起動させられてもよい。センサ16は、単純な運動センサであっても、遮断可能光ビームや遮断可能RF電界等であってもよい。センサ16はIN/OUTセンサとして機能し、1人または複数の人間がセンサ付近を通過しそのセンサを起動させる毎にセンサプロセッサ回路18に信号を供給する。これに応答して、センサプロセッサは、中央処理ユニットまたはマイクロプロセッサ等のような中央制御ユニット20に信号を送り、この中央制御ユニット20は、より詳細に後述されることになっている仕方で、センサ16を起動させる人物が商業施設に入ってくるのか出ていくのかを判定する。
【0035】1人または複数の人間がセンサ16を起動させると、センサプロセッサ18が、制御ユニット20がビデオ信号プロセッサ回路26に信号を送るか、または、センサプロセッサ18がビデオ信号プロセッサに直接的に信号を送り、ビデオ信号プロセッサが、上記センサを起動させた1人または複数の人間の顔または上半身をビデオカメラ24にビデオ記録させる。ビデオカメラ24は、典型的には、固定位置に配置されており、したがって、そのレンズ画像が、入口/出口ゲート12の区域全体を撮影対象範囲に含むようにフレーミングされている。したがって、ビデオカメラ24は、センサ16の物理的至近距離にいるあらゆる人物のビデオ画像を撮影することが可能である。ビデオ画像データはビデオ信号プロセッサ回路26によって処理された後に、中央制御ユニット20を経由してコンピュータネットワークサーバ28に送られ、このコンピュータネットワークサーバ28は、より詳細に後述されることになっている仕方で、顧客のビデオ画像を、その画像が取り込まれたばかりの顧客に属する特定の顧客関連データと組み合わせる。
【0036】適切な顧客IDカード(またはIDタグ)を携帯する顧客がアンテナ14の付近を通過すると、その顧客IDカード10が少なくとも固有顧客識別番号を送信し、この顧客識別番号がアンテナ14によって受信され、さらに、送受信機回路22に送られる。顧客プロファイル、好みおよび取引履歴データが顧客のIDカード10によって上記システムに送信される場合には、制御ユニット20またはネットワークサーバ28がその情報を顧客のビデオ画像データと組み合わせ、その結果として得られる顧客認識情報およびデータセットを、完全なレコードとして、商業施設内に配置されている様々なタイプの販売および/またはサービス援助端末装置に提供する。その商業施設が小売施設である場合には、こうした端末装置が、例えば、POS端末装置30を含み、または、その施設の種類とその従業員の特定の要求とに応じて、ワークステーション32または移動端末装置34を含むことが適切である。備えられる端末装置のタイプには係わらずに、こうした端末装置の各々が、顧客のプロファイルデータ、買物上の好みデータ、人口統計学的データ、取引履歴データを記述するテキスト情報と共に、ビデオ画像データを表示する能力を有すればよい。
【0037】さて、入口/出口ゲート12について再び簡単に言及すると、顧客が商業施設を出ていくときと商業施設に入ってくるときとのようにその顧客が入口/出口ゲート12を通過する毎に、各々の顧客のIDがアンテナ14に送信されて上記システムによって受信されるということが理解されるだろう。本発明によるシステムは、既に受信した顧客IDのリストに対して受信顧客ID信号を比較することによって顧客が施設から出ていくのかそれとも施設に入ってくるのかを判定するために、IN/OUTセンサ信号を識別する。ある特定の顧客がその商業施設に最初に入場し、自分の固有顧客IDを送信すると、各々の顧客IDのレコードが中央制御ユニット20、または、中央制御ユニットに接続されているネットワークサーバ28の記憶場所のどちらかに保持される。その顧客IDは、その特定の顧客がその商業施設を去る時点まで記憶装置内に保持される。したがって、各々の顧客が、入口/出口ゲート12のIN/OUTセンサ16の近くを通過するときに、その顧客の顧客ID番号が上記システムの送受信機回路22によって受信される。記憶装置内に保持されている顧客IDテーブルのエントリと受信顧客ID番号が合致するかどうかを調べるために、記録された顧客IDが、上記顧客IDテーブルまたはレコードの内容と比較される。受信した顧客ID番号が上記テーブルのエントリと合致する場合には、その対応する顧客が既に店舗に入っており、したがって、現時点では店舗から出ていこうとしているのだと見なされる。これに対応して、その顧客ID番号が顧客IDテーブルから削除され、(その顧客がIN/OUTセンサ16を起動したときに撮影された)その顧客のビデオ画像が上記システムから削除される。
【0038】これとは対照的に、受信顧客ID番号が顧客IDテーブル内のエントリと合致しない場合には、その顧客が新たにその商業施設に入ろうとしているのだと見なされる。これに対応して、中央制御ユニット20は、その顧客のビデオ画像を上記システム内に保持し、さらには、その顧客の個人情報と共にそのビデオ画像を組み合わせる。これに加えて、中央制御ユニット20がその顧客のID番号を、商業施設内にいる顧客に対応する顧客ID番号のテーブルまたはレコードの中に入力する。したがって、センサ16とセンサプロセッサ回路18とが、アンテナ14と送受信機回路22と中央制御ユニット20と協働して、個々の顧客が商業施設に入るときにIN信号を発生させ、一方、個々の顧客の誰かがその商業施設を出ていくときにOUT信号を発生させるための手段を提供する。このIN信号とOUT信号は、顧客が店舗に入るときに顧客データとビデオ画像を組み合わせるために、または、顧客が店舗から出ていくときにビデオ画像とその関連の顧客データとを削除するために、中央制御ユニット20によって使用される。
【0039】本発明のシステムに特有の特徴は、その人間が顧客IDカードを所有するか否かに係わらずに、商業施設に入るまたは商業施設から出る全ての人間のビデオ画像が撮影されるということである。ある特定の顧客が適切な顧客IDカードを所有している場合には、画像処理とデータ処理とが進行し、顧客識別のために適切な画像が上記システムによって使用される。したがって、本発明によるシステムが、施設に特定のタイプの顧客が入るときにその顧客を識別し認識する方法を提供するということが理解されるだろう。この固有の特徴が、混雑した環境内でさえこうした特定のタイプの顧客を店舗内従業員が認識することを可能にする。さらに、本発明によるシステムは、そうした顧客が店舗を出ていく時点を認識するための方法も提供し、それによって、VIP顧客が店舗から去った後にそのVIP顧客を探し求めるために店舗内の販売担当者が自分の時間を浪費しないことを確実なものにする。
【0040】有効な(未だ受信されていない)顧客IDをアンテナ14が受信することによって、ビデオカメラ24が起動されることが可能である。しかし、このビデオカメラの画像フレームが特定の場所に固定されているので、顧客が入口/出口ゲート12内の特定の位置にいるときにビデオカメラを起動すること、すなわち、IN/OUTセンサ16を使用することによってビデオカメラを起動することが、視覚的な観点からは、より一層効果的である。RF条件の変化が、顧客IDカードがアンテナ14によって読み取りが可能な距離を変化させる場合が多い。例えば、ある特定の顧客のカードはアンテナから3フィート以上離れた距離で読み取ることが可能であるが、ある特定の顧客のカードは、正確に読み取られるためにアンテナの付近に位置していなければならない。これに加えて、顧客ID信号の強さは、どのような形でIDカードが顧客によって携帯されているのかに応じて様々である可能性がある。例えば、IDカードが、顧客の後ろポケット、シャツのポケット、または、ハンドバックの中に入っているかも知れない。したがって、有効顧客ID番号の受信によってビデオカメラが起動された場合に、様々な顧客が、各々にビデオフレーム内の著しく異った場所に位置している可能性がある。したがって、IN/OUTセンサ16からの信号を使用するのではなくて、この代案が使用される場合には、状況に応じてビデオ取り込みのフレームサイズが調整されなければならない。
【0041】この点で、ビデオカメラ24によって撮影されたビデオ画像データがグレースケールビデオデータまたはカラービデオデータのどちらを含んでもよいということにも留意されたい。顧客の個人的な外観、すなわち、頭髪の色や衣服の色等を適切に表すために、ビデオ画像データがカラーであることが好ましい。カメラ24はビデオカメラとして説明されているが、本発明によるシステムは、完全連続動画ビデオ画像ではなくて静止顧客画像を取り込むための装置を含むということが、当業者によって理解されることだろう。したがって、カメラ24は、ディジタルスチルカメラ、ビデオカメラ、または、ディジタル画像を出力する他のあらゆるタイプの装置を含んでよい。
【0042】上記の通りに、中央制御ユニット20は顧客ID情報とビデオ画像データを収集して、この情報を個々の店舗内端末装置に伝送する機能を果たす。センサ信号がIN信号であるという判定に応答して、中央制御ユニット20が、受信した顧客IDとビデオ画像データとを組み合わせ、これらのデータを個々の店舗内端末装置ユニットに直接供給してもよい。情報伝送は、中央制御ユニット20と様々な店舗内端末装置ユニットの各々との間で直接行われてもよいが、中間ネットワークサーバシステム28を経由して行われることが好ましい。ネットワークサーバとしての利用のために、サーバ28は、そのクライアントPOS端末装置30と、ワークステーション32と、ネットワークバスに直接結線接続されている他の端末装置システムの各々と直接結合されている。これに加えて、ネットワークサーバ28は、多数の無線遠隔端末装置34と通信するようにRFトランシーバ回路のホストとして働く。したがって、ネットワークサーバ28は、中央制御ユニット20のための通信および/または伝送ネクサスとして、または、主記憶装置ホストおよび情報処理および経路選択センターとして機能することも可能であることが理解できるだろう。」

「【0052】各顧客レコードが、その当該顧客の幾つかの履歴視覚画像から成る写真ログを含むことが有利である。この写真ログ内に記録されている第1の画像は、その顧客のIDカードが最初に発行されるときに撮影されるその顧客の画像であってよい。そうした視覚画像をレコード上に有することは、さらに、顧客IDカードのセキュリティを維持する役割を果たすだろう。この発行時の写真は、商業施設の従業員によってアクセスされ、取引を行う際に顧客IDカードを提 示する顧客の顔と比較される。そのIDカードを提示する人物が、写真ログ画像レコード に示されている人物と同一ではない場合には、その商業施設の従業員がさらに調査を進め て、顧客IDカードの不正使用を発見することが可能である。この写真ログ画像レコード は、さらに、顧客が商業施設に入ってくるときに上記システムがその顧客の適切なビデオ 画像を撮影することが不可能である場合にも有用である。例えば、顧客が、その商業施設 に入ってくるときにビデオカメラ(図1の24)から顔を背けているかもしれないし、ま たは、顧客の顔が衣服物品によって妨げられているかもしれないし、または、複数の人物 が同時に撮影されるかもしれないし、適切な撮影が困難なその他の状況が生じるかもしれ ない。その場合には、その商業施設の従業員が、その顧客のID番号によって、その顧客 の写真ログにアクセスし、許容可能な最新の視覚画像をアップロードすることが可能である。」

ウ 引用文献5
(ア)本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2004-302886号公報(平成16年10月28日出願公開。以下「引用文献5」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は、当審が付与した。

「【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、顧客が店舗に来店した際に、該顧客に対応する担当者に接客を指示する接客システムの接客状態管理方法に関し、特に、顧客を接客させる担当者の状況を適切に把握し、もって担当者による接客を効率良くおこなわせることができる接客システムの接客状態管理方法に関する。」

「【0016】まず、本実施の形態に係る接客システムのシステム構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る接客システムのシステム構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、この接客システムは、店員である担当者が常駐する店舗101と、各店舗101を管理する本部102とからなる。」

「【0020】サーバ104は、本発明の特徴をなす装置であり、具体的には、顧客108の来店をICタグ111により検知したならば、担当者テーブル106に基づいて顧客108に対応する担当者113を特定し、特定した担当者113に顧客108への接客を指示する。なお、担当者113が不在の場合や接客中である場合には他の担当者に接客を指示する。
【0021】また、接客を指示された担当者113からの接客開始情報を受け付けたならば、担当者テーブル106に記憶した担当者113の接客状態を非接客から接客中に変更する。さらに、店舗101からの顧客108の退出がICタグ111により検知されたならば、担当者テーブル106に記憶した担当者113の接客状態を接客中から非接客に変更する。このように、このサーバ104は、各担当者113の接客状態を動的に管理している。
【0022】顧客テーブル105は、顧客108に関連する顧客情報を顧客108ごとに管理するテーブルであり、図3に示すように、顧客番号301、顧客指名302、来店状況303、担当者ID304、年齢305、性別306、顔写真ファイル名307、趣味308、来店日309、購入日310および購入品番号311を対応付けて管理する。なお、来店状況303としては、顧客108が店舗101内に所在する場合には「IN」とし、店舗101の外部に所在する場合には「OUT」とする。
【0023】担当者テーブル106は、担当者113に関する状況を管理するテーブルであり、図4に示すように、担当者ID401、担当者氏名402、出勤状況403、フロア位置404、接客顧客番号405および接客状況406を対応付けて管理する。なお、接客状況406としては、担当者113が接客中である場合には「接客中」を示すフラグ「1」を記憶し、接客を終了したならば「非接客」を示すフラグ「0」を記憶する。
【0024】画像情報記憶部107は、各顧客108の顔写真を記憶する記憶部である。かかる顔画像を記憶しておく理由は、本来顧客108を接客すべき担当者113が他の顧客を接客中である場合や担当者113が休みであり、他の担当者に顧客108を接客させねばならない場合に、この担当者による顧客108の識別を容易にするためである。
【0025】次に、図1に示したサーバ104の構成について説明する。図2は、図1に示したサーバ104の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、ICタグ受信部120と、顧客番号検出部118と、顧客位置取得部119と、顧客情報抽出部117と、担当者選択部121と、担当者検出部122と、送信データ作成部123と、携帯端末送信部124と、携帯端末受信部127と、担当者情報抽出部126と、担当者データ更新部125とを有する。
【0026】ICタグ受信部120は、顧客108が所持するICタグ111から送信される顧客番号112および認識番号110を含むデータを送受信器109およびLAN103を介して受信する処理部であり、顧客番号検出部118は、受信したデータから顧客番号112を検出する処理部である。」

「【0029】送信データ生成部123は、担当者となる店員に対して送信する送信データを作成する処理部であり、具体的には、担当者IDを持つ担当者を送信宛先とし、接客相手の顧客108およびその所在位置を含む送信データ若しくは顧客108が店舗101を退出しても携帯端末114から接客の終了をサーバ109に通知する操作をしていない場合に警告を示す送信データを作成する。携帯端末送信部124は、送信データ作成部123により作成された送信データを担当者の携帯端末114に対して送信する処理部である。
【0030】携帯端末受信部127は、担当者113が所持する携帯端末114から情報を受信する処理部であり、具体的には、担当者113が接客を開始した場合の接客開始情報を含む担当者情報などを受信する。担当者情報抽出部126は、携帯端末受信部127が受信したデータから接客開始情報を含む担当者情報を抽出する処理部であり、担当者データ更新部125は、この担当者情報に基づいて担当者テーブル106の担当者データを更新する処理部である。
【0031】なお、ICタグ受信部120により顧客が店舗101から退出した旨を顧客位置取得部119により取得した場合には、担当者検出部122を介して担当者選択部121により担当者テーブル106の内容が接客中から非接客に更新される。」

「【0033】同図に示すように、ICタグ受信部120によって顧客108が所持するICタグ111から送信される顧客番号112および認識番号110を含むデータを送受信器110およびLAN103を介して受信したならば、顧客番号検出部118が、受信したデータから顧客番号112を取得する(ステップS101)。
【0034】その後、顧客情報抽出部117により取得した顧客番号112が顧客テーブル105に存在するか否かを調べ(ステップS102)、この顧客番号112が顧客テーブル105に存在する場合には(ステップS102肯定)、顧客テーブル105上の顧客112の来店状況303を「IN」に更新するとともに(ステップS103)、顧客情報抽出部117が、この顧客テーブル105から顧客情報を抽出する(ステップS104)。なお、この顧客情報には顔写真ファイル名307が含まれるので、画像情報記憶部107から顧客108の顔写真データも取得する(ステップS105)。」

「【0041】次に、図1に示した携帯端末114とサーバ104の間でおこなわれる接客時の処理手順について説明する。図7は、図1に示した携帯端末114とサーバ104の間でおこなわれる接客時の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、携帯端末114が顧客情報を受信したならば(ステップS301)、この顧客情報を携帯端末114の表示部に表示する(ステップS302)。
【0042】そして、担当者113が携帯端末114の接客ボタンをクリックしたならば(ステップS303肯定)、接客開始情報を送受信器109を介してサーバ104に送信する(ステップS304)。また、その後に担当者が携帯端末114の終了ボタンをクリックしたならば(ステップS305肯定)、接客終了情報をサーバ104に送信し(ステップS306)、接客終了ボタンがクリックされない場合には(ステップS305否定)、そのまま接客状態が維持されることになるが、後述する所定の場合に打忘警告を受信する(ステップS307)。」

「【0045】次に、図1に示した携帯端末114の表示部に表示する表示例について説明する。図8は、図1に示した携帯端末114の表示部に表示する表示例を示す図である。同図(a)には、顧客108が店舗101に来店した際に、この顧客108を担当する担当者113の携帯端末114に表示される表示例を示しており、来店情報、顔写真、顧客氏名、Infoボタンおよび接客ボタンが表示される。ここで、担当者113がこのInfoボタンをクリックすると顧客情報が表示され、接客ボタンをクリックすると、接客開始情報が送信される。なお、この接客ボタンをクリックしたならば、この接客ボタンの表示内容は「接客」から「終了」に変更され、終了ボタンがクリックされた際に接客終了信号が送信される。」

「【0048】上述してきたように、本実施の形態では、顧客108の来店をICタグ111により検知したならば、担当者テーブル106に基づいて顧客108に対応する担当者113を特定して顧客108への接客を指示し、担当者113からの接客開始情報を受け付けたならば、担当者テーブル106に記憶した担当者113の接客状態を非接客から接客中に変更し、店舗101からの顧客108の退出がICタグ111により検知されたならば、担当者テーブル106に記憶した担当者113の接客状態を接客中から非接客に変更するよう構成したので、顧客を接客させる担当者の状況を適切に把握し、もって担当者による接客を効率良くおこなわせることができる。
【0049】なお、本実施の形態では、顧客108が本舗101の内部に所在するか否かをすべての送受信器109を介して確認することとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、店舗101の入り口付近に入退出管理用の専用送受信器を配設しておき、この専用送受信器の受信結果を利用して顧客108の状況を管理することもできる。」

(イ)上記記載から、引用文献5には、次の技術が記載されていると認められる。
「サーバは、携帯端末の表示部に接客ボタンを表示させ、接客ボタンがクリックされたならば終了ボタンを表示させ、終了ボタンがクリックされたならば、接客終了情報を受信する(【0025】、【0041】,【0042】)、
技術」。

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明の顧客特定情報として顧客毎に設定された「顧客コード」は、本件補正発明の「人の識別情報」に相当し、引用発明の「顧客が店舗に入店する際に通過する」「カードゲートによって読み取られた顧客コード」は、本件補正発明の「店舗に入る人の識別情報」に相当する。したがって、引用発明の「顧客情報取得部」の「顧客コードを通信ネットワークを介して受信」する機能と、本件補正発明の「識別情報取得手段」の「店舗に入る特定の人の識別情報を取得する」機能とは、「店舗に入る人の識別情報を取得する」機能である点で共通する。
(イ)引用発明の「顧客情報取得部」が顧客DBから取得する「顧客情報」には「写真」が含まれるところ、顧客DBに記録されていた「写真」と、本件補正発明の「撮影された撮影情報」とは、「画像」である点で共通する。したがって、引用発明の「顧客情報取得部」が「この顧客コードに基づいて、その顧客に関する顧客情報を顧客DBから取得」する機能と、本件補正発明の「撮影情報取得手段」の「前記識別情報取得手段によって取得される識別情報が示す前記特定の人が撮影された撮影情報を取得する」機能とは、「前記識別情報取得手段によって取得される識別情報が示す前記人の画像を取得する」機能である点で共通する。
(ウ)引用発明の「種々の接客支援画面」を表示する「各携帯端末のタッチパネル」は、本件補正発明の「表示部」に相当する。そして、引用発明の「表示制御部」が表示するように制御する「顧客紹介画面」は、「店舗内にいる顧客」の「顧客情報」が表示されるようになっており、「顧客情報として、顧客コード、顧客氏名、顧客登録日、生年月日、家族、購入履歴および写真が表示される」ところ、引用発明の「店内にいる顧客の顧客情報」は、本件補正発明の「店舗に滞在中である人の情報」に相当し、引用発明の「写真」は、他の顧客情報とともに表示される。そうすると、引用発明の「表示制御部」が上述の「顧客紹介画面を表示するように制御する」機能と、本件補正発明の「表示制御手段」が「前記識別情報取得手段によって取得される識別情報が示す前記特定の人であって、前記店舗に滞在中である特定の人に関する情報を、前記撮影情報取得手段により取得される前記特定の人の前記撮影情報と対応付けて前記表示部に表示するように制御する」機能とは、「前記識別情報取得手段によって取得される識別情報が示す前記人であって、前記店舗に滞在中である人に関する情報を、前記撮影情報取得手段により取得される前記人の前記画像と対応付けて前記表示部に表示するように制御する」機能である点で共通する。
(エ)引用発明の「選択された顧客についての抽出済顧客情報が存在しない場合には、その顧客が既に退店した旨を示すメッセージをその販売員の携帯端末に送信」する機能について、「抽出済顧客情報が存在しない場合」とは、「顧客が退店した場合」のことであり、メッセージは携帯電話に送信され、当然タッチパネルに表示されるものといえ、該タッチパネルの表示は「表示制御部」が制御することを考慮すると、引用発明の前記機能と、本件補正発明の「表示制御手段」の「前記店舗に滞在中でない前記特定の人について、滞在中でないことを示すように前記表示部の表示内容を制御」する機能とは、「前記店舗に滞在中でない前記人について、滞在中でないことを示すように前記表示部の表示内容を制御」する機能である点で共通する。
(オ)引用発明の「販売員が、タッチパネルに表示された顧客一覧画面の中から、自分が接客を行う顧客を選択・入力して、他の販売員に知らせることができる」機能について、この機能を達成するためには、顧客一覧画面に、販売員が接客を行う顧客を選択・入力したことを示す情報が表示されること、この表示は表示制御部により制御されることは明らかである。そして、顧客を選択・入力した販売員が接客を開始することは当然のことであるから、表示される情報を「応対ステータス情報」と称することは任意である。そうすると、引用発明の前記機能と、本件補正発明の「表示制御手段」の「さらに、前記特定の人への店員の応対が行われている最中であることを示す応対ステータス情報を、応対する旨の指示を受け付けてから応対完了の指示を受け付けるまでの間、表示するように制御する」機能とは、「さらに、前記人への店員の応対が行われることを示す応対ステータス情報を、応対する旨の指示を受け付けてから、表示するように制御する」機能である点で共通する。
(カ)上記(ア)ないし(オ)より、引用発明の「管理サーバ」は、本件補正発明の「表示部に表示する表示内容を制御可能な情報処理装置」といえる。

イ 一致点および相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点および相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「表示部に表示する表示内容を制御可能な情報処理装置であって、
店舗に入る人の識別情報を取得する識別情報取得手段と、
前記識別情報取得手段により取得される識別情報が示す前記人の画像を取得する撮影情報取得手段と、
前記識別情報取得手段によって取得される識別情報が示す前記人であって、前記店舗に滞在中である人に関する情報を、前記撮影情報取得手段により取得される前記人の前記画像と対応付けて前記表示部に表示するように制御する表示制御手段と、を備え、
前記表示制御手段は、前記店舗に滞在中でない前記人について、滞在中でないことを示すように前記表示部の表示内容を制御し、
前記表示制御手段は、さらに、前記人への店員の応対が行われることを示す応対ステータス情報を、応対する旨の指示を受け付けてから、表示するように制御する、
情報処理装置。」

<相違点1>
「識別情報」が、本件補正発明では「特定の人」の識別情報であるのに対して、引用発明は、そのような特定事項を有していない点。
<相違点2>
「画像」が、本件補正発明では「撮影された撮影情報」であるのに対して、引用発明は、顧客DBに記憶された写真である点。
<相違点3>
「応対ステータス情報」が、本件補正発明では「前記特定の人への店員の応対が行われている最中であることを示す応対ステータス情報を、応対する旨の指示を受け付けてから応対完了の指示を受け付けるまでの間、表示する」ものであるのに対して、引用発明は、「タッチパネルに表示された顧客の一覧の中から、自分が接客を行なう顧客を選択・入力して、他の販売員に知らせる」点。

(4)当審の判断
以下、上記相違点について検討する。

ア 相違点1について
本件補正発明における「特定の人」の意味するところについて、発明の詳細な説明を参酌すると次の記載がある。
「【0047】
サーバ装置103は、読取装置101から送信されたICタグ情報を受信することにより取得する。サーバ装置103は、読取装置101から送信されたICタグ情報が、VIP顧客を示すICタグ情報である場合には、当該VIP顧客が店舗内に滞在しているか否かを判定する。すなわち、サーバ装置103は、店舗に来店したVIP顧客が、店舗から退店せずにいまだに店舗内に居るか否かを判定する。」(下線は、当審において付与した。)
この記載から、本件補正発明における「特定の人」は、「VIP顧客」を意味すると認められる。
ここで、引用文献2には、【0039】に、VIP顧客に対する顧客認識を行うことが記載されている。そして、引用文献2に記載された発明は、商業施設に入場する顧客の存在を従業員に伝える技術であり、この点で引用発明と共通する。引用発明において、VIP顧客に対する顧客認識を行うために引用文献2に記載されたようにVIP顧客(特定の人)の識別情報を取得する構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。

イ 相違点2について
引用文献2には、上記(2)イ(イ)のとおり、中央制御ユニットが、商業施設に入る顧客をビデオカメラで撮影し、顧客データとビデオ画像と組み合わせる技術が記載されており、【0041】には、ビデオカメラの他に静止顧客画像を取り込むための装置を含んでもよいことが記載されている。また、引用文献2の【0018】、【0052】の記載を参酌すると、入店時に撮影した画像と過去に撮影し顧客データレコードに履歴とともに記憶された画像とは置換可能であることも記載されている。
そして、引用文献2に記載された技術は、商業施設に入場する顧客の存在を従業員に伝える技術であり、この点で引用発明と共通する。
以上のことからみて、引用発明の「データベースに記憶された写真」を「撮影された画像」とすることは引用文献2に記載の事項に基づき当業者が容易になしえたことであるといえ、引用発明において、相違点2の構成を採用することは当業者が容易に想到し得た事項である。

ウ 相違点3について
(ア)相違点3について検討するにあたり、まず、請求人の主張について検討する。
請求人は、審判請求書において、引用発明に対して「『販売員が顧客一覧の中から自分が接客を行う顧客を選択・入力することによって、他の販売員に知らせる』という構成は、単に『これから、この顧客を接客します。』という旨を他の店員に通知することに過ぎず、『今この顧客は応対中である』という状況を表示するものではありません。」と主張している。
そこで、引用発明に関して検討すると、引用発明には、上記(2)ア(ア)Lのとおり、「通知部12によって顧客41が来店した旨の通知が行なわれた際に、販売員70が、タッチパネル51に表示された顧客41の一覧(顧客一覧画面51c)の中から、自分が接客を行なう顧客41を選択・入力して、他の販売員70に知らせることができるようにしてもよく、これにより、他の販売員70との間でどの顧客41に対して接客を行なうかを分担することができ利便性が高い。又、顧客41側にとっても、接客を受けることができずに放置されることがなくなり満足度が向上する。」ことが記載されている。このことから、引用発明において、「販売員が接客を行なう顧客を選択・入力すること」は、他の販売員に対して、「接客を分担すること、また、顧客を放置せずに接客を行うことを識別させる作用がある」といえ、「販売員」が「選択・入力する」前後で、タッチパネルの表示内容が変化すると解するのが自然といえる。
また、本件補正発明における「応対ステータス情報」に関して、発明の詳細な説明の【0122】には、「また、図9のVIP顧客来店リスト画面では、応対時機情報のうち応対状況情報として、応対ステータス情報を示す未応対アイコン905及び応対中アイコン906が表示されている。未応対アイコン905は、店員による応対がおこなわれていない状態であることを示し、応対中アイコン906は店員による応対がおこなわれている状態である(応対がおこなわれている最中である)ことを示す。」と記載されている。このことから、本件補正発明においても、店員による応対が行われている最中には、表示される応対ステータス情報が変化すると認められる。
上記「未対応アイコン」から「対応中アイコン」への変化は、本願明細書の発明の詳細な説明の【0175】、【0176】の記載によれば、応対開始アイコンに対して店員がタッチ操作を行ったことによりなされるものであり、引用発明における「自分が接客を行う顧客を選択・入力」により、他の販売員に(接客中であることを)知らせる(表示に変更する)ことと比較して、店員が携帯するクライアント装置に対して選択入力を行うと、接客中であることを他の店員に知らせるための表示に変更されるという点において共通するものであり、請求人が主張する上記相違点は、店員が上記クライアント装置に入力するタイミングが、接客の直前(本願発明)であるか、これから接客対応を行おうとする時点(引用発明)であるかの違いによって生じるものであるといえるが、当該相違は、店員がいつ操作を行うかという決めごとにより生じる相違であって当該決めごとをどのようにするかは、引用発明に記載されたシステムをどのように運用するかによって適宜設計可能なことであるから、当該相違点は、当業者が適宜なしえた設計事項である。そして、店員が操作する時点によって、接客直前に操作すればその後すぐに接客が行われるから、操作後の表示は「接客中を示す表示」となり、これから接客を行おうとする時点で操作を行えば、操作後の表示は「これから接客を行おうとする表示」の態様となること明らかであるから、引用発明において、応対ステータス情報を「前記特定の人への店員の応対が行われている最中であることを示す応対ステータス情報」とすることは当業者が容易になしえたことである。
(イ)引用文献5には、上記(2)ウ(イ)のとおり、サーバは、携帯端末の表示部に「接客ボタン」を表示させ、接客ボタンがクリックされたならば「終了ボタン」を表示させ、終了ボタンがクリックされたならば、接客終了情報を受信する技術が記載されている。すると、引用文献5に記載された表示部には、応対する旨の指示を受け付けてから応対完了の指示を受け付けるまでの間、「終了ボタン」が表示されるものである。そして、引用文献5に記載された技術は、顧客を接客する販売員の状況を、他の販売員が把握する技術であり、この点で引用発明と共通する。引用発明において、応対ステータス情報を表示するにあたり引用文献5の記載の上記技術を適用し、管理サーバが、応対する旨の指示を受け付けてから応対完了の指示を受け付けるまでの間、応対ステータス情報を表示する構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
(ウ)上記(ア)、(イ)にて検討したとおりであるから、引用発明において相違点3の構成を採用することは当業者が容易になしえたことである。

エ 効果について
相違点1ないし相違点3を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明および引用文献2、引用文献5に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、および、引用文献2、引用文献5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年6月24日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和元年11月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?20に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:国際公開第03/083744号
引用文献2:特開2000-99827号公報
引用文献3:特開2006-184946号公報
引用文献4:特開2015-232791号公報
引用文献5:特開2004-302886号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1?2およびそれらの記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「応対ステータス情報」についての「応対する旨の指示を受け付けてから応対完了の指示を受け付けるまでの間」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明との一致点および相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「表示部に表示する表示内容を制御可能な情報処理装置であって、
店舗に入る人の識別情報を取得する識別情報取得手段と、
前記識別情報取得手段により取得される識別情報が示す前記人が撮影された撮影情報を有し、
前記識別情報取得手段によって取得される識別情報が示す前記人であって、前記店舗に滞在中である人に関する情報を、前記人の前記撮影情報と対応付けて前記表示部に表示するように制御する表示制御手段と、を備え、
前記表示制御手段は、前記店舗に滞在中でない前記人について、滞在中でないことを示すように前記表示部の表示内容を制御し、
前記表示制御手段は、さらに、応対ステータス情報を表示する、
情報処理装置。」

<相違点4>
「識別情報」が、本願発明では「特定の人」の識別情報であるのに対して、引用発明は、そのような特定事項を有していない点。
<相違点5>
「画像」が、本願発明では「撮影された撮影情報」であるのに対して、引用発明は、顧客DBに記憶された写真である点。
<相違点6>
「応対ステータス情報」が、本願発明では「前記特定の人への店員の応対が行われている最中であるか示す応対ステータス情報を表示する」ものであるのに対して、引用発明は、「タッチパネルに表示された顧客の一覧の中から、自分が接客を行なう顧客を選択・入力して、他の販売員に知らせる」点。

以下、上記相違点について検討する。

(1)相違点4について
上記第2における2(4)アの「相違点1について」において検討したとおりである。
(2)相違点5について
上記第2における2(4)イの「相違点2について」において検討したとおりである。
(3)相違点6について
上記第2における2(4)ウの「相違点3について」(ア)において検討したとおりである。
(4)効果について
相違点4ないし相違点6を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明および引用文献2の奏する効果から予想される範囲のものにすぎず、顕著なものでない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、ほかの請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-06-30 
結審通知日 2021-07-06 
審決日 2021-07-29 
出願番号 特願2018-123957(P2018-123957)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 海江田 章裕塩澤 如正  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 上田 智志
中野 浩昌
発明の名称 情報処理装置、情報処理システム、情報処理装置の制御方法、及びプログラム。  
代理人 木村 友輔  

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