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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1378243
審判番号 不服2020-11823  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-25 
確定日 2021-09-16 
事件の表示 特願2016-81309号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月19日出願公開、特開2017-189456号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成28年4月14日の出願であって、平成30年3月29日に手続補正書が提出され、同年11月29日付けで拒絶の理由が通知され、平成31年1月18日に意見書及び手続補正書が提出され、令和1年6月3日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月5日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年1月10日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年3月3日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年5月12日付け(送達日:同年同月26日)で同年3月3日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、同年8月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和2年8月25日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 補正の内容
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲、すなわち令和1年8月5日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下のとおり、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1のものに補正するものである(下線は補正箇所を示す。なお、本件補正後のAないしXの符号は合議体が付与したものである。)。

本件補正前
「【請求項1】
遊技盤を設けてなる遊技機本体と、
前記遊技盤の盤面に対向可能な透明板を有し、前記遊技機本体に対し前記遊技盤の盤面側にて開閉可能に支持される前扉と、
前記遊技盤にその裏側から設けられる裏部品と、
前記遊技盤の盤面にその前側から設けられる盤面部品と、
磁気センサと、
制御装置と、
情報を出力可能な複数の端子を具備する外部端子盤と
を備える遊技機において、
前記遊技機にその裏側から設けられる裏カバーと、
前記遊技盤に形成してなる中央開口部に対向するように前記裏カバーに形成してなる組み付け穴部に前記中央開口部を通してその前方から視認可能なように組み付けられて演出表示を行う表示装置と、
前記前扉に設けられる音演出装置と,
操作に応じて操作信号を発生するクリアスイッチ手段とを具備してなり、
前記遊技盤は、盤面部品取り付け用開孔部を形成してなり、
前記盤面部品は、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開孔部にその前側から対向するように前記遊技盤の盤面に設けられており、
前記磁気センサは、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開孔部に対向するように前記裏部品に支持されており、
前記制御装置は、
電源が遮断されても少なくとも所定の期間の間記憶内容を保持するメモリと、
前記電源が投入された後、前記クリアスイッチ手段からの前記操作信号の発生に基づいて前記メモリの記憶内容をクリアしてメモリクリア信号を発生するメモリクリア手段と、1
前記遊技盤の盤面に沿い転動する遊技球を前記盤面部品に誘導するように当該遊技球に対し前記前扉の前記透明板を介し磁石を対向させるに伴い、前記磁気センサが前記磁石の磁気を検出したとき、当該磁石の磁気の検出に基づいて磁気エラーが発生したか否かを判定するエラー判定手段と、
当該エラー判定手段による前記磁気エラーの発生との判定に伴い磁気エラー出力信号を出力する出力手段とを備えており、
前記外部端子盤は、前記メモリクリア手段が前記メモリクリア信号を発生したとき、当該メモリクリア信号を、前記複数の端子のうちの一端子を介しホールコンピュータに出力し、かつ、前記出力手段が前記磁気エラー出力信号を出力したとき、当該磁気エラー出力信号を、前記一端子を介し前記ホールコンピュータに出力するようになっており、
前記表示装置は、その表示面の全面に亘り、所定のエラー画像を、前記演出表示中の表示内容を視認できないように、前記出力手段からの前記磁気エラー出力信号に基づき、表示するようになっており、
前記音演出装置は、前記出力手段からの前記磁気エラー出力信号に基づき、最大音量にてエラー音を発生するようにした
ことを特徴とする遊技機。」

本件補正後
「【請求項1】
A 遊技盤を設けてなる遊技機本体と、
B 前記遊技盤の盤面に対向可能な透明板を有し、前記遊技機本体に対し前記遊技盤の盤面側にて開閉可能に支持される前扉と、
C 前記遊技盤にその裏側から設けられる裏部品と、
D 盤面部品と、
E 磁気センサと、
F 制御装置と、
G 情報を出力可能な複数の端子を具備する外部端子盤と
H を備える遊技機において、
I 前記遊技機にその裏側から設けられる裏カバーと、
J 前記遊技盤に形成してなる中央開口部に対向するように前記裏カバーに形成してなる組み付け穴部に前記中央開口部を通してその前方から視認可能なように組み付けられて演出表示を行う表示装置と、
K 前記前扉に設けられる音演出装置と,
L 操作に応じて操作信号を発生するクリアスイッチ手段とを具備してなり、
M 前記遊技盤は、盤面部品取り付け用開孔部を形成してなり、
N 前記盤面部品は、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開孔部にその前側から取り付けられており、
O 前記磁気センサは、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開口部に対しその後側から当該盤面部品取り付け用開孔部を通して投影されたとき当該投影の領域内に位置するように対向して、磁気の流れを妨げられることなく良好な磁気検出機能を発揮し得るように前記裏部品に支持されており、
P 前記制御装置は、
Q 電源が遮断されても少なくとも所定の期間の間記憶内容を保持するメモリと、
R 前記電源が投入された後、前記クリアスイッチ手段からの前記操作信号の発生に基づいて前記メモリの記憶内容をクリアしてメモリクリア信号を発生するメモリクリア手段と、
S 前記遊技盤の盤面に沿い転動する遊技球を前記盤面部品に誘導するように当該遊技球に対し前記前扉の前記透明板を介し磁石を対向させるに伴い、前記磁気センサが前記磁石の磁気を検出したとき、当該磁石の磁気の検出に基づいて磁気エラーが発生したか否かを判定するエラー判定手段と、
T 当該エラー判定手段による前記磁気エラーの発生との判定に伴い磁気エラー出力信号を出力する出力手段とを備えており、
U 前記外部端子盤は、前記メモリクリア手段が前記メモリクリア信号を発生したとき、当該メモリクリア信号を、前記複数の端子のうちの一端子を介しホールコンピュータに出力し、かつ、前記出力手段が前記磁気エラー出力信号を出力したとき、当該磁気エラー出力信号を、前記一端子を介し前記ホールコンピュータに出力するようになっており、
V 前記表示装置は、その表示面の全面に亘り、所定のエラー画像を、前記演出表示中の表示内容を視認できないように、前記出力手段からの前記磁気エラー出力信号に基づき、表示するようになっており、
W 前記音演出装置は、前記出力手段からの前記磁気エラー出力信号に基づき、最大音量にてエラー音を発生するようにした
X ことを特徴とする遊技機。」
(以下、本件補正後の請求項1に記載された事項によって特定される発明を、「本願補正発明」という。)

2 補正の適否について

(1) 補正事項
本件補正は、以下の補正事項を含むものである。

ア 補正事項ア
本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「盤面部品」に関して、「前記遊技盤の盤面にその前側から設けられる」の記載を削除する。

イ 補正事項イ
本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「盤面部品」に関して、「前記盤面部品は、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開孔部にその前側から対向するように前記遊技盤の盤面に設けられており、」の記載を削除し、代わりに、「前記盤面部品は、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開孔部にその前側から取り付けられており、」との記載を追加する。

ウ 補正事項ウ
本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「磁気センサ」に関して、「前記磁気センサは、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開孔部に対向するように前記裏部品に支持されており、」の記載を削除し、代わりに、「前記磁気センサは、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開口部に対しその後側から当該盤面部品取り付け用開孔部を通して投影されたとき当該投影の領域内に位置するように対向して、磁気の流れを妨げられることなく良好な磁気検出機能を発揮し得るように前記裏部品に支持されており、」との記載を追加する。

エ 補正事項エ
本件補正前の請求項1の記載において、「前記電源が投入された後、前記クリアスイッチ手段からの前記操作信号の発生に基づいて前記メモリの記憶内容をクリアしてメモリクリア信号を発生するメモリクリア手段と、1」の記載を、「前記電源が投入された後、前記クリアスイッチ手段からの前記操作信号の発生に基づいて前記メモリの記憶内容をクリアしてメモリクリア信号を発生するメモリクリア手段と、」に補正する。

(2) 新規事項追加の有無について
本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面における【0011】、【0012】、【0017】、【0018】、【0107】、【0174】、図7、図8及び図10等の記載に基づくものであり、新たな技術事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

(3) 本件補正の目的について
ア 補正事項ウは、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 補正事項エは、特許法第17条の2第5項第3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。

ウ 補正事項アは、発明を特定するために必要な事項である「盤面部品」に関して、「前記遊技盤の盤面にその前側から設けられる」の記載を削除し、また、補正事項イは、同「盤面部品」に関して、「前記盤面部品は、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開孔部にその前側から対向するように前記遊技盤の盤面に設けられており、」の記載を削除し、代わりに、「前記盤面部品は、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開孔部にその前側から取り付けられており、」との記載を追加するものである。
これらの補正事項は、「盤面部品」と「盤面部品取り付け用開孔部」との関係が、本件補正前においては、「盤面部品は、」「盤面部品取り付け用開孔部にその前側から対向するように」「遊技盤の盤面に設けられて」いる点が特定されていたものが、本件補正後においては、「盤面部品は、」「盤面部品取り付け用開孔部にその前側から取り付けられて」いる点が特定されるように補正するものであるから、実質的に「前側から対向するように」「設けられ」ている点が、「前側から取り付けられて」いる点に補正されることになるが、本件補正後の「前側から取り付けられて」いることが、本件補正前の「前側から対向するように」「設けられ」ていることを限定するものとはいえず、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められない。
また、補正事項ア及びイが、請求項の削除、及び、誤記の訂正を目的とするものでないことは明らかである。
そして、明りょうでない記載の釈明を目的とする補正は、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限られているところ、明りょうでない記載に関する拒絶の理由は通知されていない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項をも目的としない補正事項を含むものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反しているものと認められるので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 独立特許要件について
本件補正は、上記のとおり、特許法第17条の2第5項の規定に違反しているものであるが、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下、検討する。

(1) 本願補正発明
本願補正発明は、上記1の「本件補正後」の【請求項1】に記載したとおりのものである。

(2) 引用文献

ア 引用文献1

(ア) 記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に公開された特開2013-146394号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下、同様。)。

引1-ア
「【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳述する。図1?図12は本発明をパチンコ機に採用した一実施形態を例示している。図1において、遊技機本体1は、矩形状の外枠2と、この外枠2の左右一側、例えば左側のヒンジ3を介して縦軸心廻りに開閉及び着脱自在に枢着された内枠4とを備えている。
【0014】
内枠4には、その上部側に図2に示す遊技盤5等が、下部側に発射手段(図示省略)等が夫々配置されており、その内枠4の前側には、遊技盤5の前側を覆うガラス扉6と、そのガラス扉6の下側で発射手段等の前側を覆う下部開閉扉7とがヒンジ3と同じ側のヒンジ8により開閉及び着脱自在に枢着されている。ガラス扉6には、遊技盤5側の遊技領域5aに対応するガラス窓9が設けられ、また下部開閉扉7には、発射手段に供給するための遊技球を貯留する貯留皿10、発射手段を作動させるための発射ハンドル11等が設けられている。
【0015】
遊技盤5の前面側には、図2に示すように、発射手段により発射された遊技球を案内するガイドレール12が略環状に配置されており、そのガイドレール12内の遊技領域5aには、中央表示ユニット13、ゲートユニット14、始動入賞口ユニット15、大入賞口ユニット16、普通入賞口ユニット17等の遊技部品が着脱自在に装着されている。また、遊技盤5の裏側には、図3等に示すように、液晶式その他の画像表示手段18を保持する裏ケース19、不正防止センサユニット20等が装着されている。」

引1-イ
「【0017】
中央表示ユニット13は、遊技領域5aの略中央に配置される画像表示手段18の表示枠を構成するもので、遊技盤5に設けられた表示枠装着孔5b(図4)に前側から着脱自在に装着され、ねじ止め等により遊技盤5に固定されており、その略中央の表示窓22の他、普通図柄表示手段23、特別図柄表示手段24、普通保留個数表示手段25、特別保留個数表示手段26等の各種表示手段、ステージ27、右普通入賞手段28等が設けられている。
【0018】
また裏ケース19は、図3及び図7に示すように、前側が開放した略箱形に形成され且つその略中央に画像表示手段18の表示画面18aに対応する矩形状の開口部29が形成されており、中央表示ユニット13等の後側を略覆うように遊技盤5の裏側に装着され、その前端側に一体に設けられた鍔状の固定部19aにおいてねじ止め等により遊技盤5に固定されている。画像表示手段18は、演出図柄表示手段30等を構成するもので、その表示画面18aを開口部29に一致させた状態で裏ケース19の背面側に着脱自在に固定されている。」

引1-ウ
「【0036】
普通入賞口ユニット17は、例えば大入賞口ユニット16の左側で内レール12bの内側に沿って配置されており、その長手方向に沿って複数、例えば3つの第1?第3普通入賞手段61a?61cが上部側から下部側にかけて一列状に配置されている。この普通入賞口ユニット17は、遊技盤5に設けられた普通入賞口ユニット装着孔5eに対して前側から着脱自在に装着され、ねじ止め等により遊技盤5に固定されている。
【0037】
第1?第3普通入賞手段61a?61cは、図2,図3及び図6に示すように、遊技領域5a内で上向きに開口する第1?第3普通入賞口62a?62cと、第1?第3普通入賞口62a?62cに入賞した(所定部位を通過した)遊技球を検出する近接センサ64a?64cとを備えている。近接センサ64a?64cは、第1?第3普通入賞口62a?62cに入賞した遊技球を夫々遊技盤5の後側まで案内する後方案内通路63の後端側に配置されており、第1?第3普通入賞口62a?62cに入賞した遊技球を遊技盤5の後側で検出するようになっている。
【0038】
近接センサ64a?64cからの検出信号に基づいて遊技球が第1?第3普通入賞口62a?62cに入賞したものと判定された場合には、1個の入賞につき、第1?第3普通入賞口62a?62c毎に設定された所定個数の賞球が払い出される。なお、第1?第3普通入賞口62a?62cのうちの2以上が同じ賞球払い出し個数に設定されている場合には、それらの入賞口に入賞した遊技球を共通の近接センサで検出するようにしてもよい。
【0039】
不正防止センサユニット20は、図3,図7及び図8に示すように、磁気センサ71と、電波センサ72と、それら磁気センサ71と電波センサ72とを例えば遊技盤5の後側で保持するセンサホルダ73とで構成されている。
【0040】
磁気センサ71は、ガラス窓9の前側に強力な磁石が押し当てられたような場合にその磁気を検知するためのもので、図8に示すように例えば長手方向の一端側に接続端子74が設けられた略直方体状に形成されており、接続端子74から所定の信号線を介して例えば主制御基板75に磁気検知信号を出力するように構成されている。なお、この磁気センサ71は、その長手方向前側の検知距離が長手方向に直交する側の検知距離よりも長くなるように、即ち先端面側の方が側面側よりも検知感度が高くなるように構成されている。この磁気センサ71を遊技盤5上又はその近傍に配置することで、例えば「大玉ゴト」の際に磁石を用いて不正球を所定の入賞口に誘導しようとした場合には、その時点でその不正行為を発見することが可能である。」

引1-エ
「【0046】
センサホルダ73は、図7及び図8に示すように、磁気センサ71を保持する磁気センサ保持部81と、電波センサ72を保持する電波センサ保持部82とを備え、例えば普通入賞口ユニット17の後側に対応して裏ケース(電波センサ72を装着する遊技部品の一例)19の前側にねじ止め等により着脱自在に固定されるベース体83と、このベース体83に着脱自在に装着される保持体84とで構成されている。
・・・
【0048】
磁気センサ保持部81は、例えば保持体84上に設けられ、前端部に磁気センサ71の端面を露出させるための前開口部81aが、後端部に、磁気センサ71の接続端子74に接続されるハーネスを引き出すための後開口部81bが夫々設けられた前後方向の角筒状に形成されており、磁気センサ71を、例えばその先端面が遊技盤5の背面に当接又は近接する位置で保持するようになっている。磁気センサ71は、保持体84をベース体83から取り外した状態で、その保持体84上の磁気センサ保持部81に対してその後側の後開口部81bを介して着脱可能である。」

引1-オ
「【0055】
続いて、本パチンコ機の制御系のうち、大玉ゴト等による不正入賞を監視するための構成について説明する。本実施形態の主制御基板75には、図12に示すように、各入賞手段28,41,42,51,61a?61cへの遊技球の入賞に関する処理を行う入賞処理手段91と、普通図柄表示手段23、特別図柄表示手段24の図柄変動に関する処理を行う図柄処理手段92と、下部始動入賞手段42の開閉翼47、大入賞手段51の開閉板54等の動作に関する処理を行う役物処理手段93とが設けられている。また、例えば入賞処理手段91には、磁気センサ71、電波センサ72からの検知信号に基づいて不正行為の蓋然性の高い異常を監視する異常監視手段94が設けられている。」

引1-カ
「【0059】
異常監視手段94は、磁気センサ71から磁気検知信号を受けた場合、及び電波センサ72から電波検知信号を受けた場合に、所定のエラー処理、例えば画像表示手段18へのエラー表示、エラー警告音の出力、外部出力端子からのエラー信号出力等によるエラー報知、払い出し処理の停止等の処理を実行するようになっている。」

引1-キ
「【図1】



引1-ク
「【図2】



引1-ケ
「【図3】




引1-コ
「【図6】



引1-サ
「【図7】



引1-シ
「【図8】



引1-ス
「【図12】



(イ) 認定事項

a 認定事項ア
【0015】における「ガイドレール12内の遊技領域5aには、中央表示ユニット13」「が」「装着され」の記載、【0017】における「中央表示ユニット13は、遊技領域5aの略中央に配置される画像表示手段18の表示枠を構成するもので、遊技盤5に設けられた表示枠装着孔5b(図4)に前側から着脱自在に装着され、ねじ止め等により遊技盤5に固定されており、その略中央の表示窓22」「が設けられている。」の記載より、「遊技盤5の遊技領域5aには、画像表示手段18の表示枠を構成する表示窓22が設けられた中央表示ユニット13が装着され」る点が認定できる。

b 認定事項イ
「パチンコ機における遊技盤の正面図」が記載された図2を参照すると、表示窓22を通して、画像表示手段18の表示画面18aを視認可能であることが見て取れる。

c 認定事項ウ
図12には、「パチンコ機の制御系」の構成が図示されており、「パチンコ機」が、「主制御基板75」を有する点が記載されている。

d 認定事項エ
【0059】には、「異常監視手段94は、磁気センサ71から磁気検知信号を受けた場合」「に、所定のエラー処理、例えば、画像表示手段18へのエラー表示、エラー警告音の出力、外部出力端子からのエラー信号出力」「を実行するようになっている。」との記載があることから、異常監視手段94が実行する「所定のエラー処理」には、「画像表示手段18へのエラー表示、エラー警告音の出力、外部出力端子からのエラー信号出力」があり、また、「パチンコ機」は、「エラー警告音」出力手段、及び、「外部出力端子」を有し、「外部出力端子から」「エラー信号」を「出力する」ものと認められる。
そして、外部出力端子は、異常監視手段94の所定のエラー処理によりエラー信号を出力し、画像表示手段18は、異常監視手段94の所定のエラー処理によりエラー表示を行い、エラー警告音出力手段は、異常監視手段94の所定のエラー処理によりエラー警告音の出力を行う点が認定できる。

(ウ) 引用発明

上記(ア)における摘記事項、及び、(イ)おける認定事項を総合すると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。aないしxの符号は、本願補正発明の構成AないしXに対応させて合議体により付与したものである。

「a ヒンジ3を介して縦軸心廻りに開閉及び着脱自在に枢着された内枠4を備え、内枠4に遊技盤5が配置された遊技機本体1と(【0013】、【0014】)、
b その内枠4の前側にヒンジ3と同じ側のヒンジ8により開閉及び着脱自在に枢着され、遊技盤5の前側を覆い、遊技盤5側の遊技領域5aに対応するガラス窓9が設けられたガラス扉6と(【0014】)、
d 遊技盤5の前面側に配置された、発射手段により発射された遊技球を案内するガイドレール12と(【0015】)、そのガイドレール12内の遊技領域5aに着脱自在に装着された普通入賞口ユニット17(【0015】)であって、3つの第1?第3普通入賞手段61a?61cが上部側から下部側にかけて一列状に配置され、遊技盤5に設けられた普通入賞口ユニット装着孔5eに対して前側から着脱自在に装着され、ねじ止め等により遊技盤5に固定される普通入賞口ユニット17と(【0036】、図6)、
c,e 遊技盤5の裏側に装着された、画像表示手段18を保持する裏ケース19、及び、不正防止センサユニット20と(【0015】)を備え、
f 主制御基板75と(図1、認定事項ウ)、
g 外部出力端子と(認定事項エ)
h を有するパチンコ機であり(【0013】)、
i 裏ケース19は、遊技盤5の裏側に装着され(【0018】)、
j 画像表示手段18は、演出図柄表示手段30等を構成するもので、その表示画面18aを裏ケース19の略中央に形成された矩形状の開口部29に一致させた状態で裏ケース19の背面側に着脱自在に固定され(【0018】)、遊技盤5の遊技領域5aには、画像表示手段18の表示枠を構成する表示窓22が設けられた中央表示ユニット13が装着され(認定事項ア)、前記表示窓22を通して、画像表示手段18の表示画面18aを視認可能であるように構成され(認定事項イ)、
k パチンコ機はエラー警告音出力手段を有し(認定事項エ)、
o 不正防止センサユニット20は、磁気センサ71と、磁気センサ71を遊技盤5の後側で保持するセンサホルダ73で構成され(【0039】)、センサホルダ73は、普通入賞口ユニット17の後側に対応して裏ケース19の前側にねじ止め等により着脱自在に固定されるベース体83と、このベース体83に着脱自在に装着される保持体84とで構成され(【0046】、図7)、磁気センサ保持部81は、保持体84上に設けられ、前端部に磁気センサ71の端面を露出させるための前開口部81aが設けられた前後方向の角筒状に形成されており、磁気センサ71を、その先端面が遊技盤5の背面に当接又は近接する位置で保持するようになっており(【0048】、図8)、
s 磁気センサ71は、ガラス窓9の前側に強力な磁石が押し当てられたような場合にその磁気を検知し、主制御基板75に磁気検知信号を出力するように構成されており(【0040】)、
t 主制御基板75には、入賞処理手段91が設けられ、入賞処理手段91には、磁気センサ71からの検知信号に基づいて不正行為の蓋然性の高い異常を監視する異常監視手段94が設けられ(【0055】)、異常監視手段94は、磁気センサ71から磁気検知信号を受けた場合、所定のエラー処理を実行するようになっており(【0059】)、所定のエラー処理には、画像表示手段18へのエラー表示、エラー警告音の出力、外部出力端子からのエラー信号出力があり(【0059】)、
u 外部出力端子は、異常監視手段94の所定のエラー処理によりエラー信号を出力し(認定事項エ)、
v 画像表示手段18は、異常監視手段94の所定のエラー処理によりエラー表示を行い(認定事項エ)、
w エラー警告音出力手段は、異常監視手段94の所定のエラー処理によりエラー警告音の出力を行う(【0059】、認定事項エ)
x パチンコ機(【0013】)。」

イ 引用文献2

(ア) 記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に公開された特開2015-29730号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている

引2-ア
「【0016】
(パチンコ機の概略構成について)
実施例に係るパチンコ機10は、図1に示すように、遊技店に設けられた「島」とも称される設置枠台(図示せず)に固定される固定枠としての外枠11と、該外枠11に対して着脱および開閉可能に枢支された本体枠としての中枠12と、該中枠12に着脱交換可能に取り付けられて所要の遊技領域34が画成された遊技盤30(図2参照)と、中枠12の前面側に着脱および開閉可能に枢支され、該中枠12に配設した遊技盤30を透視保護する透明板14が配設される前枠13とを備えている。前枠13の前側には、透明板14が配設された窓口15の下方に、パチンコ球を貯留可能な上球皿16が配設されると共に、該上球皿16の下方に、パチンコ球を貯留可能な下球皿17や、中枠12に配設された打球発射装置(図示せず)および前枠13に配設された球送り装置(図示せず)を作動させるハンドルユニット18が、左右に並んで配設されている。また、パチンコ機10の後側には、図14に示すように、当該パチンコ機10を総合的に制御するメイン制御基板(制御手段)210、メイン制御基板210からの制御信号に基づき球払出装置217を作動制御する球払出制御基板212、打球発射装置19を制御する発射制御基板213等が配設されていると共に、遊技盤30の後側には、メイン制御基板210からの制御信号に基づき、後述する可動演出装置95や照明装置等を作動制御する統括制御基板211が配設されている。」

引2-イ
「【0025】
(第1始動入賞部)
第1始動入賞部40は、図2、図3および図5に示すように、遊技領域34の第1遊技領域34Aに配設された第1入賞部材41と、該第1入賞部材41の前側に取付けられた装飾部材42とを備えている。第1入賞部材41は、上方に開口した球入口および該球入口に連通して後方へ開口した球出口を備えた第1始動入賞口43と、該第1始動入賞口43に一体に形成された取付ベース部44とを備え、遊技盤30に前後に貫通するよう形成した第1貫通孔37(図5参照)に第1始動入賞口43の球出口を整合させた状態で、取付ベース部44を遊技盤30にネジ止めして該遊技盤30に取付けられる。すなわち、第1始動入賞部40は、第1始動入賞口43が第1遊技領域34A内で常に上方へ開口する常時開放タイプの入賞口であり、該第1遊技領域34Aを流下するパチンコ球が常時一定の確率で入賞可能に構成されている。」

引2-ウ
「【0040】
(第1球排出ユニット)
前記第1球排出ユニット110は、図4に示すように、遊技盤30前面の第1遊技領域34Aに配設された第1始動入賞部40に入ったパチンコ球、第1普通入賞口58,58に入ったパチンコ球、第1特別入賞部50に入ったパチンコ球の夫々を、中枠12の後面における遊技盤保持部25の下方に配設された球処理部(図示せず)へ排出する複数の球排出路が形成されたユニット部材である。すなわち、第1球排出ユニット110は、第1始動入賞部40から通出されたパチンコ球を球処理部へ排出する第1球排出路111と、各第1普通入賞口58,58から通出されたパチンコ球を球処理部へ排出する第2球排出路112と、第1特別入賞部50から通出されたパチンコ球を球処理部へ排出する第3球排出路113とが設けられている。また、第1球排出ユニット110には、前記第1始動入賞球検知センサ45を配設するための第1センサ取付部140および第2始動入賞球検知センサ47を配設するための第2センサ取付部145が設けられると共に、第1普通入賞口58に入賞したパチンコ球を検知する第1普通入賞球検知センサ59を配設するための第4センサ取付部165が設けられている。更に、第1球排出ユニット110には、遊技盤30の前面おいて第1始動入賞部40の近傍や第1普通入賞口58の近傍で生じた磁気を検知可能な磁気検知センサ(磁気検知手段)155を配設するための2つの第3センサ取付部(第3取付部)150,150が設けられている。」

引2ーエ
「【図5】



引2-オ
「【図7】



(イ) 認定事項
上記図7には、磁気検知センサ155が、遊技盤30に対して第1始動入賞部40の後方に設けられた点が記載されており、上記図5に記載された磁気検知センサ155と第1貫通孔37の位置関係を参酌すると、第1貫通孔37の開口の範囲内の後方に対向させて磁気検知センサ155が配設されている点(以下、「認定事項オ」という。)が記載されているといえる。

(ウ) 引用文献2記載事項
上記(ア)における摘記事項、及び、(イ)における認定事項を総合すると、引用文献2には以下の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「所要の遊技領域34が画成された遊技盤30を備えたパチンコ機10であって(【0016】)、
遊技領域34の第1遊技領域34Aに配設された第1入賞部材41を備え(【0025】)、
第1入賞部材41は、上方に開口した球入口および該球入口に連通して後方へ開口した球出口を備えた第1始動入賞口43と、該第1始動入賞口43に一体に形成された取付ベース部44とを備え、遊技盤30に前後に貫通するよう形成した第1貫通孔37に第1始動入賞口43の球出口を整合させた状態で、取付ベース部44を遊技盤30にネジ止めして該遊技盤30に取付けられ(【0025】)、
第1貫通孔37の開口の範囲内の後方に対向させて、遊技盤30の前面において第1始動入賞部40の近傍で生じた磁気を検知可能な磁気検知センサ155が配設された(【0040】、認定事項オ)、
パチンコ機10(【0016】)。」

ウ 引用文献3

原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に公開された特開2016-30075号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。

引3-ア
「【0001】
本発明は、弾球遊技機(ぱちんこ機)、回胴遊技機(スロットマシン)、封入式遊技機あるいはメダルレススロットマシンに代表される遊技台に関する。」

引3-イ
「【0376】
<エラー報知の一例/磁気検知エラーのみを報知する場合>
【0377】
図36は、図33?図35に示す一遊技中に、磁気検知エラーのみが発生し装飾図柄表示装置208において磁気検知エラー報知を行う場合の表示例である。同図における「主:磁気検知OFF」の記載は、広範囲磁気センサ700から主制御部300に入力される異常な磁気検出信号がない(主制御部300で磁気検知されていない)ことを示し、「主:磁気検知ON」は異常な磁気検出信号がある(主制御部300で磁気検知されている)ことを示す。
・・・略・・・。
【0384】
同図(d)´のように、磁気検知エラーが発生した場合は、装飾図柄表示装置208に表示されている演出表示(装飾図柄、第四図柄、保留アイコン等も含む)を消去し、例えば、背景をブルースクリーンにし「磁石を検知しました」の文字表示を表示するなどの磁石検知エラー用の表示が表示されるようにしてもよい。」

引3-ウ
「【図36】



上記摘記事項より、引用文献3には、以下の事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「磁気検知エラーが発生した場合は、装飾図柄表示装置208に表示されている演出表示を消去し、背景をブルースクリーンにし「磁石を検知しました」の文字表示を表示するなどの磁石検知エラー用の表示が表示される(【0384】)弾球遊技機(【0001】)。」

エ 引用文献4

(ア) 記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に公開された特開2016-47315号公報(以下、「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。

引4-ア
「【0010】
そこで、本発明は、遊技機への電源投入時に行われる不正行為を防止しつつ、外部出力用の信号線の無駄を低減することができるようにすることを目的とする。」

引4-イ
「【0055】
次に、パチンコ遊技機1の裏面の構造について図2を参照して説明する。図2は、遊技機を裏面から見た背面図である。図2に示すように、パチンコ遊技機1裏面側では、演出表示装置9を制御する演出制御用マイクロコンピュータ100が搭載された演出制御基板80を含む変動表示制御ユニット、遊技制御用マイクロコンピュータ等が搭載された遊技制御基板(主基板)31、音声出力基板70、ランプドライバ基板35、および球払出制御を行う払出制御用マイクロコンピュータ等が搭載された払出制御基板37等の各種基板が設置されている。なお、遊技制御基板31は基板収納ケース200に収納されている。
【0056】
さらに、パチンコ遊技機1裏面側には、DC30V、DC21V、DC12VおよびDC5V等の各種電源電圧を作成する電源回路が搭載された電源基板910やタッチセンサ基板91が設けられている。電源基板910には、パチンコ遊技機1における遊技制御基板31および各電気部品制御基板(演出制御基板80および払出制御基板37)やパチンコ遊技機1に設けられている各電気部品(電力が供給されることによって動作する部品)への電力供給を実行あるいは遮断するための電力供給許可手段としての電源スイッチ、遊技制御基板31の遊技制御用マイクロコンピュータ560のRAM55をクリアするためのクリアスイッチが設けられている。さらに、電源スイッチの内側(基板内部側)には、交換可能なヒューズが設けられている。」

引4-ウ
「【0059】
パチンコ遊技機1裏面において、上方には、各種情報をパチンコ遊技機1の外部に出力するための各端子を備えたターミナル基板160が設置されている。ターミナル基板160には、例えば、大当り遊技状態の発生を示す大当り情報等の情報出力信号(図45に示す図柄確定回数1信号、始動口信号、大当り1信号、大当り2信号、大当り3信号、時短信号、入賞信号、セキュリティ信号、高確中信号、賞球情報)を外部出力するための情報出力端子が設けられている。」

引4-エ
「【0062】
図3は、主基板(遊技制御基板)31における回路構成の一例を示すブロック図である。なお、図3には、払出制御基板37および演出制御基板80等も示されている。主基板31には、プログラムに従ってパチンコ遊技機1を制御する遊技制御用マイクロコンピュータ(遊技制御手段に相当)560が搭載されている。遊技制御用マイクロコンピュータ560は、ゲーム制御(遊技進行制御)用のプログラム等を記憶するROM54、ワークメモリとして使用される記憶手段としてのRAM55、プログラムに従って制御動作を行うCPU56およびI/Oポート部57を含む。この実施の形態では、ROM54およびRAM55は遊技制御用マイクロコンピュータ560に内蔵されている。すなわち、遊技制御用マイクロコンピュータ560は、1チップマイクロコンピュータである。1チップマイクロコンピュータには、少なくともRAM55が内蔵されていればよく、ROM54は外付けであっても内蔵されていてもよい。また、I/Oポート部57は、外付けであってもよい。」

引4-オ
「【0069】
また、RAM55は、その一部または全部が電源基板において作成されるバックアップ電源によってバックアップされている不揮発性記憶手段としてのバックアップRAMである。すなわち、遊技機に対する電力供給が停止しても、所定期間(バックアップ電源としてのコンデンサが放電してバックアップ電源が電力供給不能になるまで)は、RAM55の一部または全部の内容は保存される。特に、少なくとも、遊技状態すなわち遊技制御手段の制御状態に応じたデータ(特別図柄プロセスフラグや、保留記憶数をカウントするための保留記憶数カウンタの値など)と未払出賞球数を示すデータ(具体的には、後述する賞球コマンド出力カウンタの値)は、バックアップRAMに保存される。遊技制御手段の制御状態に応じたデータとは、停電等が生じた後に復旧した場合に、そのデータにもとづいて、遊技を再開させるために必要なデータである。また、制御状態に応じたデータと未払出賞球数を示すデータとを遊技の進行状態を示すデータと定義する。なお、この実施の形態では、RAM55の全部が、電源バックアップされているとする。」

引4-カ
「【0101】
図8は、ターミナル基板160の内部構成を示す回路図である。図8に示すターミナル基板160において、左側上段のコネクタCN-1,CN-2は、主基板31からの信号を伝達するケーブルを接続するためのコネクタであり、左側下段のコネクタCN-3は、払出制御基板37からの信号を、主基板31を経由して伝達するケーブルを接続するためのコネクタである。また、右側のコネクタCN1?CN10は、ホールコンピュータなど外部装置に対して信号を伝達するケーブルを接続するためのコネクタである。また、ターミナル基板160には、ドライバ回路としての半導体リレー(PhotoMOSリレー)PC1?PC10が搭載されている。」

引4-キ
「【0106】
以上のような半導体リレーPC1?PC10の動作により、入力側のコネクタCN-1、コネクタCN-2およびコネクタCN-3から入力された信号が出力側のコネクタCN1?CN10に伝達され、ホールコンピュータなど外部装置に対して出力される。具体的には、コネクタCN1から図柄確定回数1信号が出力され、コネクタCN2から始動口信号が出力され、コネクタCN3から大当り1信号が出力され、コネクタCN4から大当り2信号が出力され、コネクタCN5から大当り3信号が出力され、コネクタCN6から時短信号が出力され、コネクタCN7から入賞信号が出力され、コネクタCN8からセキュリティ信号が出力され、コネクタCN9から高確中信号が出力され、コネクタCN10から賞球情報が出力される。なお、ターミナル基板160における各外部出力信号に対するコネクタの割り当ては、この実施の形態で示したものにかぎられない。例えば、セキュリティ信号については、ターミナル基板160に設けられた一番端のコネクタ(例えば、コネクタCN10)から出力されるようにしてもよい。」

引4-ク
「【0109】
また、コネクタCN8から出力されるセキュリティ信号は、遊技機のセキュリティ状態を示す信号である。具体的には、後述するように、第2始動口スイッチ14aの検出結果と入賞確認スイッチ14bの検出結果とにもとづいて、第2始動入賞口14への異常入賞が発生したと判定された場合に、セキュリティ信号が所定期間(例えば、4分間)ホールコンピュータなどの外部装置に出力される。そのように構成することによって、電波などを用いて第2始動入賞口14への入賞数が実際の入賞数よりも多くなるように認識させるような不正行為が行われたことを、ホールコンピュータなどの外部装置側で認識できるようにすることができる。
【0110】
また、この実施の形態では、遊技機への電源投入が行われて初期化処理が実行された場合にも、セキュリティ信号が所定期間(例えば、30秒間)ホールコンピュータなどの外部装置に出力される。そのように構成することによって、不自然なタイミングで(例えば、遊技店の開店時に全ての遊技機の電源リセット作業を終えた後であるにもかかわらず)初期化処理が実行されたことを認識可能とすることによって、不正に遊技機を電源リセットさせて電源リセットのタイミングで大当りを狙うような不正行為が行われた可能性を、ホールコンピュータなどの外部装置側で認識できるようにすることができる。
【0111】
なお、この実施の形態では、上記のように、異常入賞が検出された場合と、初期化処理(例えば、遊技機への電源投入時に、クリアスイッチによる操作が行われたことにもとづいてRAM55の記憶内容をクリアするなどの処理)が実行された場合とで、共通のセキュリティ信号をターミナル基板160の共通のコネクタCN8から外部出力している。これは、初期化処理が実行されるのは、通常、遊技店の開店時に遊技機の電源リセット作業を行う場合のみであることから、1日のうち1回程度しか出力されない信号のためにターミナル基板160上に専用のコネクタや半導体リレーを設けることは効率的ではなく無駄が多い。そこで、この実施の形態では、異常入賞が検出された場合と、初期化処理が実行された場合とで、共通のコネクタCN8からセキュリティ信号を出力するように構成することによって、外部出力用の信号線や回路素子の無駄を低減している。すなわち、ホールコンピュータなどの外部装置に情報を出力するための機構の部品数の増加や配線作業の複雑化を防ぐことができる。
【0112】
なお、セキュリティ信号として共通のコネクタから外部出力される信号は、この実施の形態で示したものにかぎられない。例えば、第2始動入賞口14への異常入賞にかぎらず、第1始動入賞口13や、大入賞口、普通入賞口29,30への異常入賞を検出して、ターミナル基板160の共通のコネクタCN8からセキュリティ信号として外部出力可能なように構成してもよい。この場合、例えば、第1始動入賞口13や、大入賞口、普通入賞口29,30についても、第2始動入賞口14と同様に、遊技球の入賞を検出するためのスイッチとして検出方式の異なる2種類のスイッチ(近接スイッチとフォトセンサ)を設けるようにし、第2始動入賞口14と同様の判定方法に従って、異常入賞の有無を判定するようにすればよい。
【0113】
また、例えば、遊技機に設けられた磁石センサで異常磁気を検出した場合や、遊技機に設けられた電波センサで異常電波を検出した場合に、ターミナル基板160の共通のコネクタCN8からセキュリティ信号として外部出力可能なように構成してもよい。また、例えば、遊技機に設けられた各種スイッチの異常を検出した場合(例えば、入力値が閾値を超えたと判定したことにより、短絡などの発生を検出した場合)に、ターミナル基板160の共通のコネクタCN8からセキュリティ信号として外部出力可能なように構成してもよい。
【0114】
上記のように、大入賞口への異常入賞や異常磁気エラー、異常電波エラーについてもターミナル基板160の共通のコネクタCN8からセキュリティ信号として外部出力可能なように構成すれば、1本の信号線さえ接続すればホールコンピュータなど外部装置でエラー検出を行えるようにすることができ、エラー検出に関する作業負担を軽減することができる。」

引4-ケ
「【図8】



(イ) 認定事項

a 認定事項カ
図8を参照すると、ターミナル基板160の右側には、CN1からCN10が設けられていることが見て取れ、【0101】には、「右側のコネクタCN1?CN10は、ホールコンピュータなど外部装置に対して信号を伝達するケーブルを接続するためのコネクタである。」と記載されていることから、引用文献4には、ターミナル基板160には、ホールコンピュータなど外部装置に対して信号を伝達するケーブルを接続するためのコネクタとして、CN1からCN10の10個のコネクタが設けられた点が記載されていると認められる。

b 認定事項キ
【0111】には、「異常入賞が検出された場合と、初期化処理(例えば、遊技機への電源投入時に、クリアスイッチによる操作が行われたことにもとづいてRAM55の記憶内容をクリアするなどの処理)が実行された場合とで、共通のセキュリティ信号をターミナル基板160の共通のコネクタCN8から外部出力している。」と記載され、【0112】には、「セキュリティ信号として共通のコネクタから外部出力される信号は、この実施の形態で示したものにかぎられない。」と記載され、【0113】には、「例えば、遊技機に設けられた磁石センサで異常磁気を検出した場合」「に、ターミナル基板160の共通のコネクタCN8からセキュリティ信号として外部出力可能なように構成してもよい。」と記載されていることを考え合わせると、引用文献4には、クリアスイッチによる操作が行われたことにもとづいてRAM55の記憶内容をクリアするなどの処理が実行された場合と、遊技機に設けられた磁石センサで異常磁気を検出した場合とで、ターミナル基板160の共通のコネクタCN8からセキュリティ信号として外部出力可能なように構成する点が記載されていると認められる。

(ウ) 引用文献4記載事項

上記(ア)における摘記事項、及び、上記(イ)における認定事項を総合すると、引用文献4には、以下の事項(以下、「引用文献4記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「遊技制御用マイクロコンピュータ560が搭載された遊技制御基板(主基板)31と、各種電源電圧を作成する電源回路が搭載された電源基板910が設けられ、各種情報をパチンコ遊技機1の外部に出力するための各端子を備えたターミナル基板160が設置されたパチンコ遊技機1であって(【0055】、【0056】、【0059】、【0062】)、
遊技制御基板31には、プログラムに従ってパチンコ遊技機1を制御する遊技制御用マイクロコンピュータ560が搭載され、遊技制御用マイクロコンピュータ560は、ワークメモリとして使用される記憶手段としてのRAM55を含み(【0062】)、
RAM55は、電力供給が停止しても、所定期間は、一部または全部の内容が保存されるものであり(【0069】)、
電源基板910には、遊技制御基板31の遊技制御用マイクロコンピュータ560のRAM55をクリアするためのクリアスイッチが設けられ(【0056】)、
ターミナル基板160には、ホールコンピュータなど外部装置に対して信号を伝達するケーブルを接続するためのコネクタとして、CN1からCN10の10個のコネクタが設けられ(認定事項カ)、遊技機のセキュリティ状態を示す信号であるセキュリティ信号は、コネクタCN8から出力され(【0106】、【0109】)、
クリアスイッチによる操作が行われたことにもとづいてRAM55の記憶内容をクリアするなどの処理が実行された場合と、遊技機に設けられた磁石センサで異常磁気を検出した場合とで、ターミナル基板160の共通のコネクタCN8からセキュリティ信号として外部出力可能なように構成された(認定事項キ)、
パチンコ遊技機1(【0055】)。」

(3) 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 本願補正発明の構成Aに関して
引用発明の構成aにおける「遊技機本体1」は、「ヒンジ3を介して縦軸心廻りに開閉及び着脱自在に枢着された内枠4を備え、内枠4に遊技盤5が配置され」たものであるから、「遊技機本体1」は「遊技盤5」を備えているといえる。
してみると、引用発明の構成aにおける「遊技機本体1」は、本願補正発明の構成Aにおける「遊技盤を設けてなる遊技機本体」に相当する。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Aに相当する構成を有する。

イ 本願補正発明の構成Bに関して
引用発明の構成bにおける「遊技盤5の前側を覆い、遊技盤5側の遊技領域5aに対応するガラス窓9が設けられ」ることは、「ガラス窓9」に透明なガラスが設けられることは当業者の技術常識であるから、本願補正発明の構成Bにおける「遊技盤の盤面に対向可能な透明板を有」することに相当する。
また、引用発明の構成bにおける「内枠4の前側に」「開閉及び着脱自在に枢着され」ることは、本願補正発明の構成Bにおける「前記遊技機本体に対し前記遊技盤の盤面側にて開閉可能に支持される」ことに相当する。
したがって、引用発明の構成bにおける「遊技盤5の前側を覆い、遊技盤5側の遊技領域5aに対応するガラス窓9が設けられ」、「内枠4の前側に」「開閉及び着脱自在に枢着され」た「ガラス扉6」は、本願補正発明の構成Bにおける「前記遊技盤の盤面に対向可能な透明板を有して、前記遊技機本体に対し前記遊技盤の盤面側にて開閉可能に支持される前扉」に相当する。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Bに相当する構成を有する。

ウ 本願補正発明の構成Cに関して
引用発明の構成c,eにおける「画像表示手段18を保持する裏ケース19」と「不正防止センサユニット20」は、いずれも、「遊技盤5の裏側に装着され」るものであるから、それらは、本願補正発明の構成Cにおける「前記遊技盤にその裏側から設けられる裏部品」に相当する。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Cに相当する構成を有する。

エ 本願補正発明の構成Dに関して
引用発明の構成dにおける「普通入賞口ユニット17」は、本願補正発明の構成Dにおける「盤面部品」に相当する。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Dに相当する構成を有する。

オ 本願補正発明の構成Eに関して
引用発明の構成c,eにおける「不正防止センサユニット20」を「構成」する構成oにおける「磁気センサ71」は、本願補正発明の構成Eにおける「磁気センサ」に相当する。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Eに相当する構成を有する。

カ 本願補正発明の構成Fに関して
引用発明の構成fにおける「主制御基板75」は、本願補正発明の構成Fにおける「制御装置」に相当する。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Fに相当する構成を有する。

キ 本願補正発明の構成Gに関して
引用発明の構成g及び構成uにおける「外部出力端子」と、本願補正発明の構成Gにおける「情報を出力可能な複数の端子を具備する外部端子盤」とを対比すると、両者は、「情報を出力可能な」「外部端子盤」である点で一致する。

ク 本願補正発明の構成Hに関して
引用発明の構成hにおける「パチンコ機」は、本願補正発明の構成Hにおける「遊技機」に相当する。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Hに相当する構成を有する。

ケ 本願補正発明の構成Iに関して
引用発明の構成iにおける「遊技盤5の裏側に装着され」る「裏ケース19」は、本願補正発明の構成Iにおける「前記遊技盤にその裏側から設けられる裏カバー」に相当する。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Iに相当する構成を有する。

コ 本願補正発明の構成Jに関して
引用発明の構成jにおける「演出図柄表示手段30等を構成する」「画像表示手段18」は、本願補正発明の構成Jにおける「演出表示を行う表示装置」に相当する。
また、引用発明の構成jにおける「表示窓22」は、「遊技盤5の遊技領域5a」に「装着され」た「中央表示ユニット13」に設けられたもので「画像表示手段18の表示画面18aを視認可能」とするものであるから、本願補正発明の構成Jにおける「前記遊技盤に形成してな」り、それ「を通してその前方から視認可能なように」「演出表示を行う表示装置」が「組み付けられ」る「中央開口部」に相当する。
そして、引用発明の構成jにおける「裏ケース19の略中央に形成された矩形状の開口部29」は、本願補正発明の構成Jにおける「前記裏カバーに形成してなる組み付け穴部」に相当する。
したがって、引用発明の構成jにおける「裏ケース19の略中央に形成された矩形状の開口部29に」「表示画面18aを一致させた状態で」「裏面ケース19に」「固定され」、「遊技盤5の遊技領域5a」に「装着され」た「中央表示ユニット13」に設けられた「表示窓22を通して、」「表示画面18aを視認可能であるように構成され」た「画像表示手段18」は、本願補正発明の構成Jにおける「前記遊技盤に形成してなる中央開口部に対向するように前記裏カバーに形成してなる組み付け穴部に前記中央開口部を通してその前方から視認可能なように組み付けられて演出表示を行う表示装置」に相当する。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Jに相当する構成を有する。

サ 本願補正発明の構成Kに関して
引用発明の構成kにおける「エラー警告音出力手段」と本願補正発明の構成Kにおける「前扉に設けられる音演出装置」とは、音出力手段である点で共通する。

シ 本願補正発明の構成Lに関して
引用発明は、本願補正発明の構成Lに相当する構成を有さない。

ス 本願補正発明の構成Mに関して
引用発明の構成dにおける「遊技盤5に」「普通入賞口ユニット装着孔5e」が「設けられた」ことは、本願補正発明の構成Mにおける「前記遊技盤は、盤面部品取り付け用開孔部を形成してな」ることに相当する。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Mに相当する構成を有する。

セ 本願補正発明の構成Nに関して
引用発明の構成dにおける「遊技盤5に設けられた普通入賞口ユニット装着孔5e」は、本願補正発明の構成Nにおける「前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開孔部」に相当し、引用発明の構成dにおける「普通入賞口ユニット17」は、本願補正発明の構成Nにおける「盤面部品」に相当し、引用発明の構成dにおける「前側から」「装着され」ることは、本願補正発明の構成Nにおける「前側から取り付けられて」いることに相当する。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Nに相当する構成を有する。

ソ 本願補正発明の構成Oに関して
(ア) 引用発明の構成oにおける「磁気センサ71を」「保持する」「センサホルダ73」の「ベース体83」が「裏ケース19の前側にねじ止め等により着脱自在に固定される」ことは、「センサホルダ73」の「ベース体83」を介して「磁気センサ71」が「裏ケース19」に「保持」されることになるから、本願補正発明の構成Oにおける「前記磁気センサ」が「前記裏部品に支持され」ることに相当する。
(イ) 引用発明の構成oにおける「磁気センサ71を」「保持する」「センサホルダ73」の「ベース体83」が「普通入賞口ユニット17の後側に対応して」「固定される」ことと、本願補正発明の構成Oにおける「磁気センサ」が「前記盤面部品取り付け用開口部に対しその後側から当該盤面部品取り付け用開孔部を通して投影されたとき当該投影の領域内に位置するように対向して、」「支持され」ることとを対比すると、引用発明は、構成dにおいて「普通入賞口ユニット17」が「遊技盤5に設けられた普通入賞口ユニット装着孔5eに対して前側から着脱自在に装着され」るものである点が特定されていることから、引用発明の構成oにおける「普通入賞口ユニット17の後側に対応して」「保持」されることは、「普通入賞口ユニット装着孔5e」「の後側に対応して」「保持」されることであり、両者は、「磁気センサ」が「前記遊技盤の盤面部品取り付け用開口部に対しその後ろ側から」対応して「支持され」る点で一致する。
(ウ) 上記(ア)及び(イ)より、引用発明の構成oにおける「磁気センサ71を」「保持する」「センサホルダ73」の「ベース体83」が「普通入賞口ユニット17の後側に対応して裏ケース19の前側にねじ止め等により着脱自在に固定され」ることと、本願補正発明の構成Oにおける「前記磁気センサは、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開口部に対しその後側から当該盤面部品取り付け用開孔部を通して投影されたとき当該投影の領域内に位置するように対向して、磁気の流れを妨げられることなく良好な磁気検出機能を発揮し得るように前記裏部品に支持されて」いることとを対比すると、両者は、「前記磁気センサは、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開口部に対しその後側から」「前記裏部材に支持されて」いる点で一致する。

タ 本願補正発明の構成PないしTに関して
(ア) 引用発明の構成sにおける「ガラス窓9の前側に強力な磁石が押し当てられたような場合」に「磁気センサ71」が「その磁気を検知」することは、「ガラス窓9の前側に強力な磁石が押し当て」る行為が、遊技球を不正に誘導するためのものであることは当業者の技術常識であるから、本願補正発明の構成Sにおける「前記遊技盤の盤面に沿い転動する遊技球を前記盤面部品に誘導するように当該遊技球に対し前記前扉の前記透明板を介し磁石を対向させるに伴い、前記磁気センサが前記磁石の磁気を検出」することに相当する。
また、引用発明の構成s及び構成tにおける「磁気センサ71」から「磁気検知信号を出力」させ、「磁気センサ71からの検知信号に基づいて不正行為の蓋然性の高い異常を監視する異常監視手段94」は、本願補正発明の構成Sにおける「磁気の検出に基づいて磁気エラーが発生したか否かを判定するエラー判定手段」としての機能を有するものである。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Sに相当する構成を有する。
(イ) 引用発明の構成tにおける「磁気センサ71から磁気検知信号を受けた場合、所定のエラー処理を実行する」「異常監視手段94」は、「所定のエラー処理」として、「画像表示手段18へのエラー表示」、「エラー警告音出力手段」の「エラー警告音の出力」、「外部出力端子からのエラー信号出力」を「実行する」ものであり、「画像表示手段18」、「エラー警告音出力手段」及び「外部出力端子」に「所定のエラー処理」を実行するためには、磁気検知信号に基づく信号が送られることは明らかであるから、本願補正発明の構成Tにおける「当該エラー判定手段による前記磁気エラーの発生との判定に伴い磁気エラー出力信号を出力する出力手段」としての機能を有するものである。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Tに相当する構成を有する。
(ウ) 引用発明の構成tにおいて、「主制御基板75には、入賞処理手段91が設けられ、入賞処理手段91には、」「異常監視手段94が設けられ」ていることから、「異常監視手段94」は「主制御基板75」に設けられており、そのことは、本願補正発明の構成P、S及びTにおける「前記制御装置は、」「エラー判定手段」を「備えて」いることに相当する。
(エ) 引用発明は、本願補正発明の構成Q及びRに相当する構成を有さない。
(オ) 以上のことから、引用発明は、本願補正発明の構成PないしTのうち、構成P、S及びTに相当する構成を有する。

チ 本願補正発明の構成Uに関して
引用発明の構成uにおける「外部出力端子は、異常監視手段94の所定のエラー処理によりエラー信号を出力」することと、本願補正発明の構成Uにおける「前記外部端子盤は、前記メモリクリア手段が前記メモリクリア信号を発生したとき、当該メモリクリア信号を、前記複数の端子のうちの一端子を介しホールコンピュータに出力し、かつ、前記出力手段が前記磁気エラー出力信号を出力したとき、当該磁気エラー出力信号を、前記一端子を介し前記ホールコンピュータに出力する」こととを対比すると、両者は、「前記外部端子盤は、」「前記出力手段が前記磁気エラー出力信号を出力したとき、当該磁気エラー出力信号を」「出力する」点で一致する。

ツ 本願補正発明の構成Vに関して
引用発明の構成vにおける「画像表示手段18は、異常監視手段94の所定のエラー処理によりエラー表示を行」うことと、本件補正発明の構成Vにおける「前記表示装置は、その表示面の全面に亘り、所定のエラー画像を、前記演出表示中の表示内容を視認できないように、前記出力手段からの前記磁気エラー出力信号に基づき、表示するようになって」いることとを対比すると、両者は、「前記表示手段は」、「所定のエラー画像を」「前記出力手段からの前記磁気エラー出力信号に基づき、表示する」点で一致する。

テ 本願補正発明の構成Wに関して
引用発明の構成wにおける「エラー警告音出力手段は、異常監視手段94の所定のエラー処理によりエラー警告音の出力を行う」ことと、本願補正発明の構成Wにおける「前記音演出装置は、前記出力手段からの前記磁気エラー出力信号に基づき、最大音量にてエラー音を発生するようにした」こととを対比すると、両者は、「前記音演出装置は、前記出力手段からの前記磁気エラー出力信号に基づき、」「エラー音を発生するようにした」点で一致する。

ト 本願補正発明の構成Xに関して
引用発明の構成xにおける「パチンコ機」は、本願補正発明の構成Xにおける「遊技機」に相当する。
よって、引用発明は、本願補正発明の構成Xに相当する構成を有する。

以上のことから、本願補正発明と引用発明は、以下の点で一致する。

<一致点>
「A 遊技盤を設けてなる遊技機本体と、
B 前記遊技盤の盤面に対向可能な透明板を有し、前記遊技機本体に対し前記遊技盤の盤面側にて開閉可能に支持される前扉と、
C 前記遊技盤にその裏側から設けられる裏部品と、
D 盤面部品と、
E 磁気センサと、
F 制御装置と、
G’情報を出力可能な外部端子盤と
H を備える遊技機において、
I 前記遊技機にその裏側から設けられる裏カバーと、
J 前記遊技盤に形成してなる中央開口部に対向するように前記裏カバーに形成してなる組み付け穴部に前記中央開口部を通してその前方から視認可能なように組み付けられて演出表示を行う表示装置と、
K’音出力手段と
を具備してなり、
M 前記遊技盤は、盤面部品取り付け用開孔部を形成してなり、
N 前記盤面部品は、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開孔部にその前側から取り付けられており、
O’前記磁気センサは、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開口部に対しその後側から前記裏部材に支持されており、
P 前記制御装置は、
S 前記遊技盤の盤面に沿い転動する遊技球を前記盤面部品に誘導するように当該遊技球に対し前記前扉の前記透明板を介し磁石を対向させるに伴い、前記磁気センサが前記磁石の磁気を検出したとき、当該磁石の磁気の検出に基づいて磁気エラーが発生したか否かを判定するエラー判定手段と、
T 当該エラー判定手段による前記磁気エラーの発生との判定に伴い磁気エラー出力信号を出力する出力手段とを備えており、
U’前記外部端子盤は、前記出力手段が前記磁気エラー出力信号を出力したとき、当該磁気エラー出力信号を出力するようになっており、
V’前記表示装置は、所定のエラー画像を、前記出力手段からの前記磁気エラー出力信号に基づき、表示するようになっており、
W’前記音演出装置は、前記出力手段からの前記磁気エラー出力信号に基づき、エラー音を発生するようにした
X 遊技機。」

そして、両者は、以下の点で相違する。

<相違点1>(構成Oに関して)
磁気センサに関して、本願補正発明では、磁気センサが、遊技盤の盤面部品取り付け用開口部に対しその後側から当該盤面部品取り付け用開孔部を通して投影されたとき当該投影の領域内に位置するように対向して、磁気の流れを妨げられることなく良好な磁気検出機能を発揮し得るように前記裏部品に支持されているのに対して、引用発明では、磁気センサ71が普通入賞口ユニット装着孔5eの後側に保持されていると認められるが、前記磁気センサ71が、普通入賞口ユニット装着孔5eを通して投影されたとき当該投影の領域内に位置するように対向し、磁気の流れを妨げられることなく良好な磁気検出機能を発揮し得るように裏ケースに支持されているか否かは不明である点。

<相違点2>(構成Vに関して)
エラー画像の表示に関して、本願補正発明では、表示装置の表示面の全面に亘り、所定のエラー画像を、演出表示中の表示内容を視認できないように、表示するのに対して、引用発明ではエラー表示の詳細が不明である点。

<相違点3>(構成K及び構成Wに関して)
音出力手段に関して、本願補正発明は、音出力手段が前扉に設けられる音演出装置であり、前記音演出装置は、最大音量にてエラー音を発生するようにされているのに対して、引用発明は、エラー警告音出力手段が音演出装置であるか否かは不明であり、また、ガラス扉6に設けられたか否かも不明であり、さらに、最大音量にてエラー音を発生するようにされたか否かも不明である点。

<相違点4>(構成G、L、Q、R及びUに関して)
本願補正発明は、遊技機が、操作に応じて操作信号を発生するクリアスイッチ手段を具備し、外部端子盤が複数の端子を具備し、制御装置が、電源が遮断されても少なくとも所定の期間の間記憶内容を保持するメモリと、前記電源が投入された後、前記クリアスイッチ手段からの前記操作信号の発生に基づいて前記メモリの記憶内容をクリアしてメモリクリア信号を発生するメモリクリア手段とを有し、前記外部端子盤は、前記メモリクリア手段が前記メモリクリア信号を発生したとき、当該メモリクリア信号を、前記複数の端子のうちの一端子を介しホールコンピュータに出力し、かつ、前記出力手段が前記磁気エラー出力信号を出力したとき、当該磁気エラー出力信号を、前記一端子を介し前記ホールコンピュータに出力するようになっているのに対して、引用発明は、クリアスイッチ手段を具備するものであるかどうか不明であり、外部出力端子が複数の端子を具備するものであるかどうか不明であり、また、主制御基板75が電源が遮断されても少なくとも所定の期間の間記憶内容を保持するメモリ、及び、クリアスイッチ手段からの操作信号の発生に基づいて前記メモリの記憶内容をクリアしてメモリクリア信号を発生するメモリクリア手段を有するものであるかどうか不明であり、さらに、外部出力端子が、メモリクリア手段がメモリクリア信号を発生したときの当該メモリクリア信号と、異常監視手段94の所定のエラー処理による磁気エラー出力信号の出力とを、外部出力端子の複数の端子のうちの一端子を介しホールコンピュータに出力するものであるかどうか不明である点。

(4) 検討

ア 相違点1について
上記引用文献2記載事項における「磁気検知センサ155」及び「第1貫通孔37」は、それぞれ、本願補正発明の上記相違点1に係る構成における「磁気センサ」及び「盤面部品取り付け用開口部(又は開孔部)」に相当し、引用文献2記載事項における「磁気検知センサ155が」「第1貫通孔37の開口の範囲内の後方に対向させて」「配設された」構成は、本願補正発明の上記相違点1に係る構成における「前記磁気センサ」が、「前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開口部に対しその後側から当該盤面部品取り付け用開孔部を通して投影されたとき当該投影の領域内に位置するように対向して」「支持され」た構成に相当する。
また、上記引用文献2記載事項には、本願補正発明の上記相違点1に係る構成のうち、「磁気センサ」が「磁気の流れを妨げられることなく良好な磁気検出機能を発揮し得るように」「支持され」た点についての特定はされていないが、本願の明細書の【0011】、【0012】等の記載を参照すると、「磁気の流れを妨げられることなく良好な磁気検出機能を発揮し得るように」「裏部品に支持される」構成は、「磁気センサを、」「遊技盤の前記盤面部品取り付け用開口部に対しその後側から当該盤面部品取り付け用開孔部を通して投影されたとき当該投影の領域内に位置するように対向」させるだけで実現可能であると認められ、上記引用文献2記載事項も、「磁気検知センサ155が」「第1貫通孔37の開口の範囲内の後方に対向させて」「配設され」ることに「磁気の流れを妨げられることなく良好な磁気検出機能を発揮し得るように」構成されていると認められる。
そして、引用発明と引用文献2記載事項は、いずれも、磁気センサを用いて不正検出を行う遊技機という共通の技術分野に属するものであり、ともに、不正行為を的確に検出するという自明な共通の課題を有するものであるから、引用発明において、磁気センサが対向する部位を設定するにあたって、引用文献2記載事項に記載された技術を適用して、磁気センサを、普通入賞口ユニット装着孔5eの開口の範囲内の後方に対向させるように構成し、本願補正発明の上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

イ 相違点2について
上記引用文献3記載事項における「装飾図柄表示装置208に表示されている演出表示を消去し、背景をブルースクリーンにし「磁石を検知しました」の文字表示を表示する」ことは、本願補正発明の上記相違点2に係る構成における「表示装置の表示面の全面に亘り、所定のエラー画像を、演出表示中の表示内容を視認できないように、表示する」ことに相当する。
ここにおいて、引用発明と引用文献3記載事項は、いずれも、磁気センサを用いて不正検出を行い、不正を検出した場合にエラー画像を表示する遊技機という共通の技術分野に属するものであり、ともに、不正行為を的確に報知するという自明な共通の課題を有するものであるから、引用発明において、磁気センサ71からの検知信号に基づいてエラー表示を実行するにあたって、引用文献3記載事項に記載された技術を適用し、画像表示手段に表示されている演出表示を消去し、磁石検知エラー用の表示が表示されるように構成して、本願補正発明の上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

ウ 相違点3について
本願出願前に公開された特開2015-202242号公報の【0035】には、「スピーカ24は、液晶表示器5で行われる表示演出と同期するように楽曲や音声、効果音等を出力して音によって演出を行う。」と記載され、【0359】には、「エラー報知の具体的な方法は任意であるが、本実施形態においては、統括CPU141は、エラーが発生していることを液晶表示器5において表示するとともに、「入賞口エラーです」といった音声と、所定のエラー報知音とを最大音量でスピーカ24から出力する。」と記載されており、以下に示す図1には、スピーカ24(本願補正発明における「音演出手段」に相当する。)は、枠部材3(同「前扉」に相当する。)に設けられていることが見て取れる。

同特開2012-120727号公報の【0021】には、「また、ガラス枠15の左右には内部にランプ等を内蔵し装飾や演出のための発光をする枠装飾装置18や、音響(例えば、効果音)を発するスピーカ(上スピーカ)19aが設けられている。さらに、前面枠12の下部にもスピーカ(下スピーカ)19bが設けられている。」と記載され、【0169】には、「遊技制御装置100または演出制御装置300のいずれかでエラーが発生した時に、スピーカの音量がボリュームSWによって最大レベルよりも低いレベルに設定されていたとしても、最大音量によるエラー報知音が出力される。」と記載されており、以下に示す図1には、スピーカー19a(本願補正発明における「音演出手段」に相当する。)がガラス枠15(同「前扉」に相当する。)に設けられている点が見て取れる。

してみると、そして、遊技機の技術分野において、エラー音の出力に用いる音出力手段として、前扉に設けられる音演出装置を採用し、最大音量でエラー音を発生するように構成することは、本願出願前周知の事項である。
ここにおいて、引用発明と上記した本願出願前周知の事項は、いずれも、エラー音を用いたエラーの報知を行う遊技機という共通の技術分野に属するものであるから、引用発明において、エラー音を用いてエラーの報知を行うにあたって、本願出願前周知の事項を適用し、前扉に設けられる音演出装置を用いて最大音量にてエラー音を発生するように構成して、本願補正発明の上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

エ 相違点4について
上記引用文献4記載事項における「電力供給が停止しても、所定期間は、一部または全部の内容が保存される」「RAM55」、「RAM55をクリアするためのクリアスイッチ」は、それぞれ、本願補正発明の上記相違点4に係る構成の「電源が遮断されても少なくとも所定の期間の間記憶内容を保持するメモリ」、「操作に応じて操作信号を発生するクリアスイッチ手段」に相当する。
また、上記引用文献4記載事項における「クリアスイッチによる操作が行われたことにもとづいてRAM55の記憶内容をクリアするなどの処理」を「実行」することは、本願補正発明の上記相違点4に係る構成の「前記電源が投入された後、前記クリアスイッチ手段からの前記操作信号の発生に基づいて前記メモリの記憶内容をクリア」することに相当し、上記引用文献4記載事項における「RAM55の記憶内容をクリアするなどの処理が実行された場合」に「外部出力」される「セキュリティ信号」は、本願補正発明の上記相違点4に係る構成の「前記クリアスイッチ手段からの前記操作信号の発生に基づいて」「発生」する「メモリクリア信号」に相当し、上記引用文献4記載事項における「RAM55の記憶内容をクリアするなどの処理」を「実行」し、「セキュリティ信号」を「外部出力」する手段は、本願補正発明の上記相違点4に係る構成の「前記電源が投入された後、前記クリアスイッチ手段からの前記操作信号の発生に基づいて前記メモリの記憶内容をクリアしてメモリクリア信号を発生するメモリクリア手段」に相当する。
そして、上記引用文献4記載事項における「CN1からCN10の10個のコネクタが設けられ」た「ターミナル基板160」、「クリアスイッチによる操作が行われたことにもとづいてRAM55の記憶内容をクリアするなどの処理が実行された場合と、遊技機に設けられた磁石センサで異常磁気を検出した場合とで、ターミナル基板160の共通のコネクタCN8からセキュリティ信号として」「ホールコンピュータなど外部装置に対して」「外部出力可能なように構成され」ることは、それぞれ、本願補正発明の上記相違点4に係る構成の「複数の端子を具備」する「外部端子盤」、「外部端子盤は、前記メモリクリア手段が前記メモリクリア信号を発生したとき、当該メモリクリア信号を、前記複数の端子のうちの一端子を介しホールコンピュータに出力し、かつ、前記出力手段が前記磁気エラー出力信号を出力したとき、当該磁気エラー出力信号を、前記一端子を介し前記ホールコンピュータに出力する」ことに相当する。
してみると、上記引用文献4記載事項は、本願補正発明の上記相違点4に係る構成のうち、「操作に応じて操作信号を発生するクリアスイッチ手段を具備」する構成、「外部端子盤が複数の端子を具備」する構成、「電源が遮断されても少なくとも所定の期間の間記憶内容を保持するメモリと、前記電源が投入された後、前記クリアスイッチ手段からの前記操作信号の発生に基づいて前記メモリの記憶内容をクリアしてメモリクリア信号を発生するメモリクリア手段とを有」する構成、「前記外部端子盤は、前記メモリクリア手段が前記メモリクリア信号を発生したとき、当該メモリクリア信号を、前記複数の端子のうちの一端子を介しホールコンピュータに出力し、かつ、前記出力手段が前記磁気エラー出力信号を出力したとき、当該磁気エラー出力信号を、前記一端子を介し前記ホールコンピュータに出力する」構成を有しており、本願補正発明の上記相違点4に係る構成をすべて有するものと認められる。
ここにおいて、引用発明と引用文献4記載事項は、いずれも、磁気エラーを検出し、エラー信号の出力を行う遊技機という共通の技術分野に属するものであり、引用発明において、引4-アに示した、外部に出力する信号線の無駄を低減することを動機付けとして引用文献4記載事項を適用し、メモリクリア信号と、磁気エラー出力信号の出力とを、共通の端子から出力するように構成し、本願補正発明の上記相違点4に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

オ 本願補正発明の作用効果について
本願補正発明の作用効果は、引用発明、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、引用文献4記載事項、及び、本願出願前周知の事項に基づいて当業者が予測できる範囲のものであり、格別なものではない。

(5) 請求人の主張への反論
請求人は、審判請求書において、
「(1-2)当該本願発明の構成によれば、次のような本願発明に特有の作用効果が達成され得る。
・本願発明の構成によれば、磁気センサは、遊技盤の盤面部品取り付け用開口部に対しその後側から当該盤面部品取り付け用開孔部を通して投影されたとき当該投影の領域内に位置するように対向して、磁気の流れを妨げられることなく良好な磁気検出機能を発揮し得るように裏部品に支持されている。
・また、盤面部品取り付け用開孔部の周囲には表示装置や音演出装置が存在するものの、当該盤面部品取り付け用開孔部にはその前側から盤面部品が取り付けられているのみである。これに伴い、当該盤面部品取り付け用開孔部の前後両側近傍領域においては、盤面部品や磁気センサを除き、他の構成部品やベニヤ板の積層体等の密集した構成等の余分な構成部品が存在することはなく、簡単な構成となっている。
・従って、磁気センサを、上述のごとく、遊技盤の盤面部品取り付け用開口部に対しその後側から当該盤面部品取り付け用開孔部を通して投影されたとき当該投影の領域内に位置するように対向して、磁気の流れを妨げられることなく良好な磁気検出機能を発揮し得るように裏部品に支持する構成とすることで、当該磁気センサは、その磁気の流れを妨げられたり磁気を減少させられたりすることなく、良好な磁気検出機能を発揮し得る。」
と主張している。
そこで、本願補正発明における「磁気センサ」が「磁気の流れを妨げられることなく良好な磁気検出機能を発揮し得るように前記裏部品に支持され」る構成について、どのような構成とされているのかについて検討すると、本願の明細書において、「磁気の流れを妨げられることなく良好な磁気検出機能を発揮し得るように裏部品に支持する構成」を実現するために、磁気センサをどのように配置すべきかに関しては、特に検討がなされておらず、同明細書の【0011】、【0012】等の記載を参照すると、「磁気の流れを妨げられることなく良好な磁気検出機能を発揮し得るように裏部品に支持する構成」は、「磁気センサを、」「遊技盤の上記盤面部品取り付け用開口部に対しその後側から当該盤面部品取り付け用開孔部を通して投影されたとき当該投影の領域内に位置するように対向」させるだけで実現可能であると認められる。
してみると、引用文献2記載事項も、同様に、「磁気の流れを妨げられることなく良好な磁気検出機能を発揮し得る」ものということになり、請求人が主張する上記の作用効果は、引用発明、及び、引用文献2記載事項により奏し得たものであると認められ、請求人の上記の主張は採用できない。

(6) 小括
よって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、引用文献4記載事項、及び、本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のことから、本件補正は、上記2(3)ウにおいて既に検討したように、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項をも目的としない補正事項を含むものである。
また、本願補正発明は、引用発明、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、引用文献4記載事項、及び、本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
よって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

令和2年8月25日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和1年8月5日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのもの(上記第2[理由]1の「本件補正前」の記載を参照)(以下「本願発明」という。)であり、分説してA1ないしX1の符号を付与すると、以下のとおりである。ただし、構成R1において、末尾に「1」と記載されており、当該記載は誤記であることが明らかであるから、本願発明の対比、判断等の検討においては、「1」の記載は存在しないものとして、検討を行う。

「【請求項1】
A1 遊技盤を設けてなる遊技機本体と、
B1 前記遊技盤の盤面に対向可能な透明板を有し、前記遊技機本体に対し前記遊技盤の盤面側にて開閉可能に支持される前扉と、
C1 前記遊技盤にその裏側から設けられる裏部品と、
D1 前記遊技盤の盤面にその前側から設けられる盤面部品と、
E1 磁気センサと、
F1 制御装置と、
G1 情報を出力可能な複数の端子を具備する外部端子盤と
H1 を備える遊技機において、
I1 前記遊技機にその裏側から設けられる裏カバーと、
J1 前記遊技盤に形成してなる中央開口部に対向するように前記裏カバーに形成してなる組み付け穴部に前記中央開口部を通してその前方から視認可能なように組み付けられて演出表示を行う表示装置と、
K1 前記前扉に設けられる音演出装置と,
L1 操作に応じて操作信号を発生するクリアスイッチ手段とを具備してなり、
M1 前記遊技盤は、盤面部品取り付け用開孔部を形成してなり、
N1 前記盤面部品は、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開孔部にその前側から対向するように前記遊技盤の盤面に設けられており、
O1 前記磁気センサは、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開孔部に対向するように前記裏部品に支持されており、
P1 前記制御装置は、
Q1 電源が遮断されても少なくとも所定の期間の間記憶内容を保持するメモリと、
R1 前記電源が投入された後、前記クリアスイッチ手段からの前記操作信号の発生に基づいて前記メモリの記憶内容をクリアしてメモリクリア信号を発生するメモリクリア手段と、1
S1 前記遊技盤の盤面に沿い転動する遊技球を前記盤面部品に誘導するように当該遊技球に対し前記前扉の前記透明板を介し磁石を対向させるに伴い、前記磁気センサが前記磁石の磁気を検出したとき、当該磁石の磁気の検出に基づいて磁気エラーが発生したか否かを判定するエラー判定手段と、
T1 当該エラー判定手段による前記磁気エラーの発生との判定に伴い磁気エラー出力信号を出力する出力手段とを備えており、
U1 前記外部端子盤は、前記メモリクリア手段が前記メモリクリア信号を発生したとき、当該メモリクリア信号を、前記複数の端子のうちの一端子を介しホールコンピュータに出力し、かつ、前記出力手段が前記磁気エラー出力信号を出力したとき、当該磁気エラー出力信号を、前記一端子を介し前記ホールコンピュータに出力するようになっており、
V1 前記表示装置は、その表示面の全面に亘り、所定のエラー画像を、前記演出表示中の表示内容を視認できないように、前記出力手段からの前記磁気エラー出力信号に基づき、表示するようになっており、
W1 前記音演出装置は、前記出力手段からの前記磁気エラー出力信号に基づき、最大音量にてエラー音を発生するようにした
X1 ことを特徴とする遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、本願発明に対する拒絶の理由を含むものであり、その概要は以下のとおりである。

本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1、引用文献2、引用文献3、及び、引用文献4に記載された事項に基づいて、本願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2013-146394号公報
引用文献2:特開2015-29730号公報
引用文献3:特開2016-30075号公報
引用文献4:特開2016-47315号公報

3 引用文献とそれに記載された事項

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、引用文献2、引用文献3及び、引用文献4は、それぞれ、上記第2における引用文献1、引用文献2、引用文献3、及び、引用文献4に対応し、それらの記載事項は、それぞれ、上記第2[理由]3(2)アないしエに記載したとおりである。

4 対比・判断

(1) 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

ア 本願発明の構成A1、B1、C1、E1、F1、H1、I1、J1、M1及びX1に関して
本願発明の構成A1、B1、C1、E1、F1、H1、I1、J1、M1及びX1は、それぞれ、本願補正発明の構成A、B、C、E、F、H、I、J、M及びXに相当する。
よって、前記第2の3(3)ア、イ、ウ、オ、カ、ク、ケ、コ、ス及びトにおいて検討したように、引用発明は、本願発明の構成A1、B1、C1、E1、F1、H1、I1、J1、M1及びX1に相当する構成を有する。

イ 本願発明の構成D1に関して
引用発明の構成dにおける「普通入賞口ユニット17」は、本願発明の構成D1における「盤面部品」に相当し、引用発明の構成dにおける「前側から」「遊技盤5に」「装着され」ることは、本願発明の構成D1における「前記遊技盤の盤面にその前側から設けられる」ことに相当する。
したがって、引用発明の構成dにおける「遊技盤5に」「前側から」「装着され」る「普通入賞口ユニット17」は、本願発明の構成D1における「前記遊技盤の盤面にその前側から設けられる盤面部品」に相当する。
よって、引用発明は、本願発明の構成D1に相当する構成を有する。

ウ 本願発明の構成G1に関して
引用発明の構成gにおける「外部出力端子」と、本願発明の構成G1における「情報を出力可能な複数の端子を具備する外部端子盤」とを対比すると、両者は、「情報を出力可能な」「外部端子盤」である点で一致する。

エ 本願発明の構成K1に関して
引用発明の構成kにおける「エラー警告音出力手段」と本願発明の構成K1における「音演出装置」とは、音出力手段である点で共通する。

オ 本願発明の構成L1に関して
引用発明は、本願発明の構成L1に相当する構成を有さない。

カ 本願発明の構成N1に関して
引用発明の構成dにおける「遊技盤5に設けられた普通入賞口ユニット装着孔5e」は、本願発明の構成N1における「前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開孔部」に相当し、引用発明の構成dにおける「普通入賞口ユニット17」は、本願発明の構成N1における「盤面部品」に相当する。
そして、引用発明の構成dにおける「前側から」「装着され」ることと、本願発明の構成N1における「前側から対向するように取り付けられて」いることを対比すると、両者は、「前側から」「取り付けられて」いる点で一致する。
よって、引用発明の構成dと、本願発明の構成N1とは、「盤面部品は、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開孔部にその前側から」「取り付けられて」いる点で一致する。

キ 本願発明の構成O1に関して
(ア) 引用発明の構成oにおける「磁気センサ71を」「保持する」「センサホルダ73」の「ベース体83」が「裏ケース19の前側にねじ止め等により着脱自在に固定される」ことは、「センサホルダ73」の「ベース体83」を介して「磁気センサ71」が「裏ケース19」に「保持」されることになるから、本願発明の構成O1における「前記磁気センサ」が「前記裏部品に支持されて」いることに相当する。
(イ) 引用発明は、構成dにおいて「普通入賞口ユニット17」は「遊技盤5に設けられた普通入賞口ユニット装着孔5eに」「着脱自在に装着され」るものである点が特定されていることから、引用発明の構成oにおける「普通入賞口ユニット17」「に対応して」「保持」されることは、「普通入賞口ユニット装着孔5e」「に対応して」「保持」されることであると認められる。そして、その構成と、本願発明の構成O1における「前記盤面部品取り付け用開孔部に対向するように」「支持されて」いることとを対比すると、両者は、「前記盤面部品取り付け用開孔部に」対応させて「前記裏部品に支持されて」いる点で一致する。
(ウ) よって、両者は、「前記磁気センサは、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開孔部に」対応させて「前記裏部品に支持されて」いる点で一致する。

ク 本願発明の構成P1ないしT1に関して
(ア) 引用発明の構成sにおける「ガラス窓9の前側に強力な磁石が押し当てられたような場合」に「磁気センサ71」が「その磁気を検知」することは、「ガラス窓9の前側に強力な磁石が押し当て」る行為が、遊技球を不正に誘導するためのものであることは当業者の技術常識であるから、本願発明の構成S1における「前記遊技盤の盤面に沿い転動する遊技球を前記盤面部品に誘導するように当該遊技球に対し前記前扉の前記透明板を介し磁石を対向させるに伴い、前記磁気センサが前記磁石の磁気を検出」することに相当する。
また、引用発明の構成s及び構成tにおける「磁気センサ71」から「磁気検知信号を出力」され、「磁気センサ71からの検知信号に基づいて不正行為の蓋然性の高い異常を監視する異常監視手段94」は、本願発明の構成S1における「磁気の検出に基づいて磁気エラーが発生したか否かを判定するエラー判定手段」としての機能を有するものである。
よって、引用発明は、本願発明の構成S1に相当する構成を有する。
(イ) 引用発明の構成tにおける「磁気センサ71から磁気検知信号を受けた場合、所定のエラー処理を実行する」「異常監視手段94」は、「所定のエラー処理」として、「画像表示手段18へのエラー表示」、「エラー警告音出力手段」の「エラー警告音の出力」、「外部出力端子からのエラー信号出力」を「実行する」ものであり、「画像表示手段18」、「エラー警告音出力手段」及び「外部出力端子」に「所定のエラー処理」を実行するためには、磁気検知信号に基づく信号が送られることは明らかであるから、本願発明の構成T1における「当該エラー判定手段による前記磁気エラーの発生との判定に伴い磁気エラー出力信号を出力する出力手段」としての機能を有するものである。
よって、引用発明は、本願発明の構成T1に相当する構成を有する。
(ウ) 引用発明の構成tにおいて、「主制御基板75には、入賞処理手段91が設けられ、入賞処理手段91には、」「異常監視手段94が設けられ」ることから、「異常監視手段94」は「主制御基板75」に設けられている点が認定でき、そのことは、本願発明の構成P1、S1及びT1における「前記制御装置は、」「エラー判定手段」を「備えて」いることに相当する。
(エ) 引用発明は、本願発明の構成Q1及びR1に相当する構成を有さない。
(オ) 以上のことから、引用発明は、本願発明の構成P1ないしT1のうち、構成P1、S1及びT1に相当する構成を有する。

ケ 本願発明の構成U1に関して
引用発明の構成uにおける「外部出力端子は、異常監視手段94の所定のエラー処理によりエラー信号を出力」することと、本願発明の構成U1における「前記外部端子盤は、前記メモリクリア手段が前記メモリクリア信号を発生したとき、当該メモリクリア信号を、前記複数の端子のうちの一端子を介しホールコンピュータに出力し、かつ、前記出力手段が前記磁気エラー出力信号を出力したとき、当該磁気エラー出力信号を、前記一端子を介し前記ホールコンピュータに出力する」こととを対比すると、両者は、「前記外部端子盤は、」「前記出力手段が前記磁気エラー出力信号を出力したとき、当該磁気エラー出力信号を」「出力する」点で一致する。

コ 本願発明の構成V1に関して
引用発明の構成vにおける「画像表示手段18は、異常監視手段94の所定のエラー処理によりエラー表示を行」うことと、本願発明の構成V1における「前記表示装置は、その表示面の全面に亘り、所定のエラー画像を、前記演出表示中の表示内容を視認できないように、前記出力手段からの前記磁気エラー出力信号に基づき、表示するようになって」いることとを対比すると、両者は、「前記表示手段は」、「所定のエラー画像を」「前記出力手段からの前記磁気エラー出力信号に基づき、表示する」点で一致する。

サ 本願発明の構成W1に関して
引用発明の構成wにおける「エラー警告音出力手段は、異常監視手段94の所定のエラー処理によりエラー警告音の出力を行う」ことと、本願発明の構成W1における「前記音演出装置は、前記出力手段からの前記磁気エラー出力信号に基づき、最大音量にてエラー音を発生するようにした」こととを対比すると、両者は、「前記音演出装置は、前記出力手段からの前記磁気エラー出力信号に基づき、」「エラー音を発生するようにした」点で一致する。

以上のことから、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。

<一致点>
「A1 遊技盤を設けてなる遊技機本体と、
B1 前記遊技盤の盤面に対向可能な透明板を有し、前記遊技機本体に対し前記遊技盤の盤面側にて開閉可能に支持される前扉と、
C1 前記遊技盤にその裏側から設けられる裏部品と、
D1 前記遊技盤の盤面にその前側から設けられる盤面部品と、
E1 磁気センサと、
F1 制御装置と、
G1’情報を出力可能な外部端子盤と
H1 を備える遊技機において、
I1 前記遊技機にその裏側から設けられる裏カバーと、
J1 前記遊技盤に形成してなる中央開口部に対向するように前記裏カバーに形成してなる組み付け穴部に前記中央開口部を通してその前方から視認可能なように組み付けられて演出表示を行う表示装置と、
K1’音出力手段と
を具備してなり、
M1 前記遊技盤は、盤面部品取り付け用開孔部を形成してなり、
N1’前記盤面部品は、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開孔部にその前側から取り付けられており、
O1’前記磁気センサは、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開孔部に対応させて前記裏部材に支持されており、
P1 前記制御装置は、
S1 前記遊技盤の盤面に沿い転動する遊技球を前記盤面部品に誘導するように当該遊技球に対し前記前扉の前記透明板を介し磁石を対向させるに伴い、前記磁気センサが前記磁石の磁気を検出したとき、当該磁石の磁気の検出に基づいて磁気エラーが発生したか否かを判定するエラー判定手段と、
T1 当該エラー判定手段による前記磁気エラーの発生との判定に伴い磁気エラー出力信号を出力する出力手段とを備えており、
U1’前記外部端子盤は、前記出力手段が前記磁気エラー出力信号を出力したとき、当該磁気エラー出力信号を出力し、
V1’前記表示装置は、所定のエラー画像を、前記出力手段からの前記磁気エラー出力信号に基づき、表示するようになっており、
W1’前記音演出装置は、前記出力手段からの前記磁気エラー出力信号に基づき、エラー音を発生するようにした
X1 遊技機。」

そして、両者は、以下の点で相違する。

<相違点A>(構成N1に関して)
盤面部品の遊技盤の盤面部品取り付け用開口部への取り付けに関して、本願発明は、盤面部品は、盤面部品取り付け用開口部にその前側から対向するように取り付けられているのに対して、引用発明は、普通入賞口ユニット17が普通入賞口ユニット装着孔5eに前側から装着されてはいるものの、前側から対向するように取り付けられているか否かが不明である点。

<相違点B>(構成O1に関して)
磁気センサの支持に関して、本願発明は、磁気センサが盤面部品取り付け用開孔部に対向するように裏部品に支持されているのに対して、引用発明は、磁気センサ71が普通入賞口ユニット装着孔5eに対向して保持されているか否かが不明である点。

<相違点C>(構成V1に関して)
エラー画像の表示に関して、本願発明では、表示装置の表示面の全面に亘り、所定のエラー画像を、演出表示中の表示内容を視認できないように、表示するのに対して、引用発明ではエラー表示の詳細が不明である点。

<相違点D>(構成K1及び構成W1に関して)
音出力手段に関して、本願発明は、音出力手段が前扉に設けられる音演出装置であり、前記音演出装置は、最大音量にてエラー音を発生するようにされているのに対して、引用発明は、エラー警告音出力手段が音演出装置であるか否かは不明であり、また、ガラス扉6に設けられたか否かも不明であり、さらに、最大音量にてエラー音を発生するようにされたか否かも不明である点。

<相違点E>(構成G1、L1、Q1、R1及びU1に関して)
本願発明は、遊技機が、操作に応じて操作信号を発生するクリアスイッチ手段を具備し、外部端子盤が複数の端子を具備し、制御装置が、電源が遮断されても少なくとも所定の期間の間記憶内容を保持するメモリと、前記電源が投入された後、前記クリアスイッチ手段からの前記操作信号の発生に基づいて前記メモリの記憶内容をクリアしてメモリクリア信号を発生するメモリクリア手段とを有し、前記外部端子盤は、前記メモリクリア手段が前記メモリクリア信号を発生したとき、当該メモリクリア信号を、前記複数の端子のうちの一端子を介しホールコンピュータに出力し、かつ、前記出力手段が前記磁気エラー出力信号を出力したとき、当該磁気エラー出力信号を、前記一端子を介し前記ホールコンピュータに出力するようになっているのに対して、引用発明は、クリアスイッチ手段を具備するものであるかどうか不明であり、外部出力端子が複数の端子を具備するものであるかどうか不明であり、また、主制御基板75が電源が遮断されても少なくとも所定の期間の間記憶内容を保持するメモリ、及び、クリアスイッチ手段からの操作信号の発生に基づいて前記メモリの記憶内容をクリアしてメモリクリア信号を発生するメモリクリア手段を有するものであるかどうか不明であり、さらに、外部出力端子が、メモリクリア手段がメモリクリア信号を発生したときの当該メモリクリア信号と、異常監視手段94の所定のエラー処理による磁気エラー出力信号の出力とを、外部出力端子の複数の端子のうちの一端子を介しホールコンピュータに出力するものであるかどうか不明である点。

(2) 検討

上記の各相違点について検討する。

ア 相違点Aについて
本願発明の構成N1の「その前側から対向するように取り付けられており、」の記載によって特定される構成がどのようなものであるのかについて検討するにあたって、本願の明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載を参照すると、【0032】に「普通入賞口ユニット60は、・・・取り付け板60a及び3つの普通入賞口装置60b?60dでもって構成されている。」と記載され、【0033】に「取り付け板60aは、図1或いは図6から分かるように、遊技盤10に形成してなる盤面部品取り付け用開孔部12にその前側から装着されている。」と記載されており、図6には、以下に示す態様が示されている。
「【図6】


上記の摘記事項を合わせて上記の図6を参照すると、図6には、普通入賞口ユニット60が、遊技盤10に形成してなる盤面部品取り付け用開孔部12にその前側から装着されている態様が示されていると認められ、この態様は、本願発明の構成N1の「前記盤面部品は、前記遊技盤の前記盤面部品取り付け用開孔部にその前側から対向するように取り付けられており、」の記載によって特定される構成に対応するものと認められる。
そして、上記の摘記事項及び図6の図示内容を参照する限り、本願発明の構成N1における「対向するように」の記載によって、本願発明において特徴的な構成が特定されるものではない。
してみると、「対向するように」の記載の有無は実質的な相違点とはならず、本願発明の相違点Aに係る構成は、実質的な相違点とは認められない。

イ 相違点Bについて
上記引用文献2記載事項における「磁気検知センサ155」及び「第1貫通孔37」は、それぞれ、本願発明の上記相違点Bに係る構成における「磁気センサ」及び「盤面部品取り付け用開孔部」に相当し、引用文献2記載事項における「磁気検知センサ155が」「第1貫通孔37」「に対向させて」「配設された」構成は、本願発明の上記相違点Bに係る構成における「前記磁気センサ」が、「前記盤面部品取り付け用開孔部に対向するように」「支持され」た構成に相当する。
そして、引用発明と引用文献2記載事項は、いずれも、磁気センサを用いて不正検出を行う遊技機という共通の技術分野に属するものであり、ともに、不正行為を的確に検出するという自明な共通の課題を有するものであるから、引用発明において、磁気センサを支持するにあたって、引用文献2記載事項に記載された技術を適用して、磁気センサを、普通入賞口ユニット装着孔5eに対向させるように保持し、本願発明の上記相違点Bに係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

ウ 相違点C、相違点D及び相違点Eについて
相違点C、相違点D及び相違点Eは、実質的に上記第2の3(3)において検討した本願補正発明と引用発明との対比における相違点2、相違点3及び相違点4と同じものであり、それらの相違点については、上記第2の3(4)において検討したとおりである。

したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、引用文献4記載事項、及び、本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである

第4 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-07-07 
結審通知日 2021-07-13 
審決日 2021-07-27 
出願番号 特願2016-81309(P2016-81309)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 572- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡辺 剛史  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 澤田 真治
▲高▼橋 祐介
発明の名称 遊技機  
代理人 間瀬 ▲けい▼一郎  

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