現在、審決メルマガは配信を一時停止させていただいております。再開まで今暫くお待ち下さい。

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1378257
審判番号 不服2021-1063  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-26 
確定日 2021-09-16 
事件の表示 特願2016-116948「画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月21日出願公開、特開2017-224398〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2016-116948号(以下「本件出願」という。)は、平成28年6月13日を出願日とする特許出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和2年 5月20日付け:拒絶理由通知書
令和2年 7月13日 :意見書
令和2年 7月13日 :手続補正書
令和2年10月19日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和3年 1月26日 :審判請求書
令和3年 1月26日 :手続補正書

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年1月26日にした手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の(令和2年7月13日にした手続補正後の)特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 反射電極と、
有機EL発光層と、
赤色波長帯域と緑色波長帯域と青色波長帯域とに対応する少なくとも3種類のカラーフィルターがマトリックス状に配置されているカラーフィルター層と、
それぞれの画素を駆動する薄膜トランジスタを備える駆動回路と、
1/4波長位相差層と、
直線偏光板と、をこの順に備える画像表示装置であって、
前記赤色波長帯域と緑色波長帯域と青色波長帯域とに相当する波長をそれぞれ選択反射する、コレステリック液晶を含む3種類の反射層が、前記駆動回路と前記有機EL発光層との間に配置され、
前記コレステリック液晶を含む3種類の反射層が、マトリックス状に配置された前記3種類のカラーフィルターに対応する波長帯域を選択的に反射するように、該カラーフィルターの対応する箇所にそれぞれ1つずつ配置されている
画像表示装置。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。
「 反射電極と、
有機EL発光層と、
赤色波長帯域と緑色波長帯域と青色波長帯域とに対応する少なくとも3種類のカラーフィルターがマトリックス状に配置されているカラーフィルター層と、
それぞれの画素を駆動する薄膜トランジスタを備える駆動回路と、
1/4波長位相差層と、
直線偏光板と、をこの順に備える画像表示装置であって、
前記赤色波長帯域と緑色波長帯域と青色波長帯域とに相当する波長をそれぞれ選択反射する、コレステリック液晶を含む3種類の反射層が、前記駆動回路と前記有機EL発光層との間に配置され、
前記コレステリック液晶は、逆分散波長特性を示す液晶材料、又はシクロヘキサン構造を有する液晶材料であり、
前記コレステリック液晶を含む3種類の反射層が、マトリックス状に配置された前記3種類のカラーフィルターに対応する波長帯域を選択的に反射するように、該カラーフィルターの対応する箇所にそれぞれ1つずつ配置されている
画像表示装置。」

(3)本件補正の内容
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明の、発明を特定するために必要な事項である「コレステリック液晶」について「前記コレステリック液晶は、逆分散波長特性を示す液晶材料、又はシクロヘキサン構造を有する液晶材料であり」という限定をするものである。また、この補正は、本件出願の願書に最初に添付した明細書の【0052】の記載に基づくものである。そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野(【0001】)及び解決しようとする課題(【0007】)は、同一である。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に適合するものであり、また、同条5項2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が、同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

2 独立特許要件についての判断
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(特開2014-38713号公報)は、本件出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある(当合議体注:下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。以下、同様。)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトムエミッション方式の有機EL(Electroluminescence)表示素子を用いた表示装置に、関する。」

イ 「【背景技術】
【0002】
近年、有機EL表示素子を用いた表示装置が開発されている。かかる有機EL表示素子は、画素毎に発光する発光層が備えられ、当該発光層に供給する電流量自体を調整することによって発光光量を調整することができるので、エネルギー効率に優れているという特徴を有している。
このような有機EL表示素子を用いた表示装置において、コントラストを向上させ色再現性を向上させるには、外光に起因する反射光(ゴースト光)が、表示面(有機EL表示素子における最も外側の面を言う。以下同様とする。)を通じて観察者側へ射出されることを防止する必要がある。
そのため、従来、外光が有機EL表示素子の表示面にて反射したり当該表示面を通じて内部に侵入することを防止するとともに、有機EL表示素子の内部に侵入した外光が電極等によって反射された後に、表示面を通じて再度外部に射出されることを防止するための工夫が、なされてきた(例えば、特許文献1乃至3)。
【0003】
・・省略・・
そこで、コントラスト向上に寄与する程度を高めると同時に、表示を明るくするために、円偏光板を有機EL表示素子の表示面に設ける技術が、次に提案された。
・・省略・・その結果、反射光は、偏光層(偏光板)を透過することができず、当該偏光層(偏光板)によって吸収されるので、表示面から外部に射出されることが防止されるのである。
もっとも、有機EL表示素子の発光層によって励起された光(白色光,又は、発光層に混入された色素に応じた原色光)も様々な偏光成分から構成されているので、円偏光板を透過する際に、その約半分のエネルギーを吸収されてしまい、表示を明るくすることができない。
そこで、円偏光板とともに、波長選択反射機能を有する液晶(コレステリック液晶)層とを併用する技術が、開発された(特許文献2,特許文献3)。
この技術によると、有機EL表示素子の発光層によって励起された光(白色光,又は、発光層に混入された色素に応じた原色光)は、その波長及び円偏光成分の旋回方向に応じて分離され、液晶層を構成する液晶分子の螺旋のピッチに対応した波長を有するとともに螺旋方向と同方向に旋回する成分は反射されるが、それ以外の成分は透過する。このようにして液晶層によって反射された光は、発光層における液晶層が設けられている側とは反対側の面に形成された反射層(反射電極)によって反射され、その際に、上述したように旋回方向が逆転するので、再度液晶層に入射しても反射されることなくそのまま透過する。なお、発光層によって励起された後に先ず反射層にて反射された光も、上述したような過程を経て、最終的に、液晶層を透過する。その結果、液晶層を構成する液晶分子の螺旋のピッチに対応した波長の光については、その全成分が、一定の方向に旋回する円偏光に変換される。なお、発光層が白色光を励起する場合には、液晶層を構成する液晶分子の螺旋のピッチに対応した波長の光以外の成分が、カラーフィルタによって除去される。
そして、液晶層によって揃えられる円偏光の旋回方向は、上記外光の反射光の旋回方向とは逆方向に設定されているので、1/4波長板を透過することによって直線偏光に変換された場合における振動方向は、偏光層(偏光板)における透過光の振動方向に合致し、その全成分が、偏光層(偏光板)を透過して射出される。よって、この技術によると、表示の明るさを向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-142170号公報
【特許文献2】特開2001-357979号公報
【特許文献3】特開2012-74221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献3記載の構造では、反射電極層と対になって発光層に電流を供給する透明電極が透明基板と発光層との間に設けられている(従って、当該透明電極に電流を供給するTFT[Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ]を包含するTFT層も、透明基板と発光層との間に設けられる)一方、液晶層は、透明基板を挟んで発光層とは逆側に設けられている。
・・省略・・
【0006】
このように液晶層(選択反射層)と発光層との間にTFT層及び配線が存在すると、外光は、一旦液晶層(選択反射層)を透過してからTFT層又は配線を構成する反射金属層によって反射されて、再度液晶層(選択反射層)に入射することになる。その結果、TFT層又は配線を構成する反射金属層によって反射されることによりその円偏光の旋回方向が逆転された状態で再度液晶層(選択反射層)に入射した外光の一部が、その旋回方向を維持したまま当該液晶層(選択反射層)内部で反射されてしまうので、再度TFT層又は配線を構成する反射金属層によって再反射された時点で、円偏光の旋回方向が再逆転されてしまう。その結果、再反射された外光起因の反射光は、今度は、液晶層(選択反射層)を透過するばかりか、円偏光板をも透過して、外部に射出されてしまうのである。
【0007】
以上のように、液晶層(選択反射層)と発光層との間にTFT層及び配線が存在すると、かかるTFT層及び配線を構成する反射金属層での反射に起因して外光の一部が外部に射出されてしまうので、コントラストを向上させる効果は却って低下してしまう。
・・省略・・
【0009】
そこで、本発明は、表示を明るくする効果を維持しつつ、外光の反射光の外部への射出を極力抑えてコントラストを向上させた表示装置の提供を、課題とする。」

ウ 「【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、有機EL表示素子を用いた表示装置であって、透明な導電材料からなる透明電極と可視光領域の光を反射する金属材料からなる反射電極によって挟まれた構造を有するとともに、これら透明電極と反射電極によって電流が供給されることによって光を発する有機発光層と、前記透明電極を挟んで前記有機発光層に近接して設けられ、入射した光のうち、所定の波長を有するとともに所定の方向に旋回する円偏光成分のみを反射し、他の成分を透過する選択反射層と、前記選択反射層における前記有機反射層とは反対側に設けられ、光を反射する複数の電極を有するとともに前記透明電極に電流を供給する電気素子を内包する透明部材からなる配線層と、前記配線層における前記選択反射層とは反対側に設けられた透明基板と、前記透明基板における前記配線層とは反対側に設けられ、前記選択反射層を透過した前記所定方向に旋回する円偏光成分のみを透過する偏光特性を有する円偏光板とを、備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発光層から発した光のうち選択反射層が反射することのできる波長の光は、当該選択反射層に入射することで、その全成分が、円偏光板が透過する円偏光と同じ方向に旋回する円偏光に変換されるので、当該円偏光板によって遮断されずに外部へ射出され、表示を明るく維持することができる。それにも拘わらず、透明電極に電流を供給するための反射金属層にて反射された外光は選択反射層を透過しないので、その全成分が円偏光板によって遮断され、外部へ射出されることが防止される。よって、外光下でのコントラストが向上する。」

エ 「【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る表示装置,即ち、有機EL表示素子を利用した表示装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0014】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る電子機器について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
(全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る表示装置を構成する有機EL表示素子における何れか一つの画素をなす何れか一つの原色(赤,緑,青)を発光する部分の縦断面図である。
【0016】
図1に示すように、透明基板としてのガラス基板1の一方の面(図1における下向きの面,以下、「射出側面」という)には、順番に、1/4波長板2及び偏光板3が、層をなすように形成されている。これら1/4波長板2及び偏光板3を併せて、「円偏光板11」と言う。
【0017】
これに対して、ガラス基板1の他方の面(図1における上向きの面,以下、「発行側面」という)には、順番に、TFT層4,配向層5,選択反射層6,透明電極7,発光層封止層8及び反射電極10が、層をなすように形成されている。
【0018】
反射電極10は、有機EL表示素子全体を覆うように形成された共通電極であり、入射した可視光領域全般に亙る光を全反射するに足りる屈折率及び膜厚を有する金属膜である。
【0019】
発光層封止層8は、不透明な絶縁材料からなり、各画素における各原色の発光位置に、貫通孔8aが形成されている層である。各貫通孔8a内には、対応する原色の光を発光するための発光層9が形成されている。ここで、詳細な図示及び説明は省略するが、各発光層9は、透明基板1側から順に、電子注入層,電子輸送層,有機発光層,ホール輸送層,ホール注入層が順番に積層されることにより構成されている。ただし、本実施形態においては、各発光層9は、夫々、特定の原色の光を発光するように、その有機発光層の材料(蛍光色素)が選択されている。
【0020】
透明電極7は、各発光層9ごとに、発光層9の全体に接する面積を有するものとして、選択反射層6と発光層封止層8との間に形成されている。透明電極7の材料としては、例えば、ITO(酸化インジウム錫)を用いることができる。
【0021】
選択反射層6は、各画素を構成する各発光層9ごとに区分されており、各発光層9によって発光される原色光の波長を反射するように構成されている。
即ち、各選択反射層6は、波長選択反射機能を有するコレステリック液晶(コレステロールの水酸基をハロゲンで置換したハロゲン化合物や脂肪酸,炭酸とのエステル化合物等のコレステリック環を有する液晶)を封入した構造を有している。これらの波長選択反射液晶の動作原理は公知であるのでその詳細な説明は省略するが、要するに、液晶分子が螺旋状構造を有しており、下記式(1)によって与えられる波長(λ[nm])の光については、液晶分子の螺旋状構造のねじれの向きと同じ方向に旋回する円偏光成分のみを反射するが、反対方向に旋回する円偏光成分及び他の波長の光を透過させる特性を有している。
λ=p・n ……(1)
(但し、pは液晶分子の螺旋ピッチ[nm],nは液晶の平均屈折率である。)
そして、この液晶分子の螺旋ピッチは、液晶材料に添加するカイラル剤の濃度を調整することや、カイラル剤として光反応性カイラル剤を用いた場合に照射すべき光の熱量を調整することによって、調整することができる。このようにして液晶分子の螺旋ピッチを調整することにより、各選択反射層6は、対応する発光層9が発する原色光の波長(λ[nm])を中心とした特定の波長の幅の光のみを反射するように、構成されているのである。例えば、n=1である場合、液晶分子のねじれ方向が右螺子方向であり、且つ、螺旋ピッチが550nmであると、550nmのを中心とした特定の幅の光の右螺子方向の円偏光成分のみが反射される。
【0022】
また、選択反射層6が透過させる上記波長(λ[nm])の円偏光の旋回方向は、上述した円偏光板11が透過させる円偏光の旋回方向と一致している。
【0023】
配向層5は、液晶分子の配列を揃える機能を有する膜であり、ポリイミドから構成されている。
【0024】
なお、当該配向層5及び上述の選択反射層6には、各透明電極7を後述するTFT層に包含されたTFTのドレイン電極に導通させるためのコンタクト7aが、貫通している。
【0025】
配線層としてのTFT層4は、透明基板1側から順番に積層された、保護層41,第1絶縁層42,第2絶縁層43,第3絶縁層44,及び平坦化層49と、第1絶縁層42と第2絶縁層43との間において発光層9と重ならない位置に形成された半導体層45と、第2絶縁層43と第3絶縁層44との間において第2絶縁層43を挟んで半導体層42の中央に対向するように金属によって形成されたゲート電極46と、第2絶縁層43と第3絶縁層44を貫通して半導体層42の一端に導通するように金属によって形成されたソース電極47と、第2絶縁層43と第3絶縁層44を貫通して半導体層42の他端に導通するように金属によって形成されるとともに上記コンタクト7aに導通したドレイン電極48とから、構成されている。なお、これらのうち、半導体層45,ゲート電極46,ソース電極47及びドレイン電極48のみを指して、電気素子としての「TFT」と呼ぶ。また、TFT層4内には、図示は省略されているが、ゲート電極46又はソース電極47に導通している多数の金属膜製の配線が、形成されている。
(作用)
【0026】
上述した構造を有する本実施形態による表示装置の作用を、図1及びこれを簡略化した動作説明図である(但し、天地が図1と逆転している)図2を参照して、以下に説明する。
<内部発光>
【0027】
まず、何れかの発光層9に対応したTFTのゲート電極46に電圧を印加すると、TFTがONとなり、ソース電極47,半導体層45,ドレイン電極48及び透明電極7を通じて、発光層9を構成するホール注入層にホールが注入されるとともに、反射電極10を通じて、発光層9を構成する電子注入層に電子が注入され、これにより、公知の発光原理に従って発光層9を構成する有機発光層が、その材料(蛍光色素)に応じた波長(λ[nm])の原色光を励起し、あらゆる方向に発光する。なお、この原色光を構成する各光束の成分は、各偏光方向毎に分解することにより、右螺子方向に旋回する円偏光成分と左螺子方向に旋回する円偏光成分とを合成したものであるとみなすことができる。従って、選択波長層6により、当該原色光を二つの円偏光に分離することができるのである。
【0028】
即ち、発光層9から発して直接選択反射層6に入射するか一旦反射電極10によって反射されてから選択反射層6に入射した光のうち、円偏光板11によって透過する方向に旋回する円偏光成分は、そのまま選択反射層6を透過するが、反対方向に旋回する円偏光成分は、選択反射層6内で反射される。ここで、円偏光板11によって透過する円偏光の旋回方向が図2に示すように左螺子方向(液晶分子の螺旋構造が右螺子方向である場合)であるとすると、左螺子方向に旋回する円偏光成分が選択反射層6を透過し、右螺子方向に旋回する円偏光成分が選択反射層6内で反射される。
【0029】
選択反射層6内で反射された円偏光成分は、発光層9内に再入射された後に反射電極10によって反射され、これによってその旋回方向を逆転された状態(図2の例においては左螺子方向に逆転された状態)で、選択反射層6に再入射され、今度は、選択反射層6を透過する。
【0030】
以上の結果、発光層9から発した光の全成分が、円偏光板11によって透過する円偏光と同じ旋回方向の円偏光に変換された状態で選択反射層6を透過し、更に、TFT層4,透明基板1及び円偏光板11を透過して、外部へ射出される。よって、表示装置による表示の明るさが維持される。
<外光>
【0031】
一方、外光が本実施形態による有機EL表示素子に入射しようとする場合、円偏光板11を構成する偏光板3を透過する際にその約半分の成分が当該偏光板3によって吸収され、残りの成分が1/4波長板2を透過することによって円偏光(図2の例においては、左螺子方向に旋回する円偏光)に変換される。
【0032】
この外光が透明基板1を通じてTFT層4に含まれる各電極46,47,48や図示せぬ配線の表面に入射すると、当該表面によって反射されるが、その反射の際に、その旋回方向が逆転される(図2の例においては、右螺子方向に逆転される)。従って、この反射光が再度を透明基板1を通り、円偏光板11に入射しても、その旋回方向は当該円偏光板11が透過する円偏光の旋回方向(図2の例では左螺子方向)とは逆である,即ち、1/4波長板2を透過することによって変換される直線偏光の振動方向が、偏光板3が透過する直線偏光の振動方向に対して直交するので、当該反射光の全成分が当該偏光板3によって吸収されて、外部に射出されることがない。
【0033】
また、円偏光板11及び透明基板1を透過した外光のうち、TFT層4における透明部分を透過した光束は、選択反射層6に入射することになるが、当該選択反射層6によって反射されない波長(λ[nm])の光は勿論、反射される波長(λ[nm])の光についても、選択反射層6を透過する方向(図2の例では左螺子方向)に旋回する円偏光に変換されているので、選択反射層6を透過し、発光層9内に入射してから反射電極10によって反射される。このとき、当該外光の全波長成分は、その円偏光の旋回方向を逆転され(図2の例では右螺子方向に逆転され)、選択反射層6に再入射する。
【0034】
選択反射層6に入射した反射光のうち、当該選択反射層6によって反射されない波長(λ[nm])の光は、当該選択反射層6を透過し、更に、TFT層4,透明基板1を透過して円偏光板11に入射するが、その旋回方向は当該円偏光板11が透過する円偏光の旋回方向(図2の例では左螺子方向)とは逆である,即ち、1/4波長板2を透過することによって変換される直線偏光の振動方向が、偏光板3が透過する直線偏光の振動方向に対して直交するので、当該偏光板3によって吸収されて、外部に射出されることがない。
【0035】
これに対して、選択反射層6に入射した反射光のうち、当該選択反射層6によって反射される波長(λ[nm])の光は、その円偏光の旋回方向が液晶分子の螺旋構造のねじれ方向(図2の例では右螺子方向)と一致するので、当該選択反射層6内において反射されて、発光層9内に再度入射し、反射電極10によって再反射される。このとき、当該光の円偏光の旋回方向は再逆転され(図2の例では左螺子方向に再逆転され)、選択反射層6に再入射する。この場合、当該光の円偏光の旋回方向は、液晶分子の螺旋構造のねじれ方向とは逆向き(図2の例では左螺子方向)であるので、当該選択反射層6を透過し、更に、TFT層4,透明基板1を透過して円偏光板11に入射する。この場合、当該光の円偏光の旋回方向は当該円偏光板11が透過する円偏光の旋回方向(図2の例では左螺子方向)と同じである,即ち、1/4波長板2を透過することによって変換される直線偏光の振動方向が、偏光板3が透過する直線偏光の振動方向と平行になるので、当該円偏光板11を透過して、外部に射出されてしまう。
【0036】
もっとも、本実施形態のようなボトムエミッション方式の場合、TFT層4における透明部分(即ち、各TFTの電極や配線が設けられていない部分)が全体に占める面積比率は低く、また、発光層封入層8全体に占める発光層8の面積比率は更に低いので、最終的に円偏光板11を透過して外部に射出される外光起因の反射光の光量は僅かに止まる。その為、当該反射光がコントラストに及ぼす悪影響の程度は最小限に留まる。
【0037】
以上に説明したように、本実施形態においては、反射電極と対になって各発光層に電流を供給する透明電極を駆動するTFTや配線は、透明基板1の片側において、当該透明基板1と選択反射層6との間に設けられているので、有機EL表示素子内に侵入してこれらTFTの電極や配線の表面にて反射された外光起因の反射光は、選択反射層6を透過することがない。従って、当該反射光に関しては、当該当該選択反射層6によって反射されることによって反射電極によって複数回反射されることによって入射時における円偏光の旋回方向に戻ってしまうという問題が生じず、反射回数は1回に留まるので、入射時における円偏光の旋回方向が逆転されるので、円偏光板によって確実に遮断される。よって、本実施形態によると、表示の明るさを維持しつつ、コントラストの低下を極力抑えることができる。」

オ 「(第5実施形態)
【0061】
図22は、本発明の第5実施形態に係る表示装置を構成する有機EL表示素子における何れか一つの画素をなす何れか一つの原色(赤,緑,青)を発光する部分の縦断面図である。
【0062】
図22に示すように、本第5実施形態は、上述した第1実施形態と比較して、発光層封止層8及び各発光層9の代わりに、白色光を発光するように材料(発光色素)が調整された一続きの白色発光層12が形成されているとともに、各透明電極7に対応して(従って、白色発光層12における、各透明電極7によって供給される電流によって発光する部分に対応して)、何れかの原色の波長成分のみを透過させるカラーフィルタ13が、選択反射層6と透明電極7との間に形成されている点のみを相違し、それ以外の構成を同一としている。このような構成においても、白色発光層12にて発した白色光のうち、特定の原色光成分のみがカラーフィルタ13を透過するので、選択反射層6には対応する波長の光のみが入射する点において、第1実施形態と同じである。従って、有機EL表示素子内に入射した外光のうち、選択反射層6によって反射されない波長成分は、カラーフィルタ13によって吸収されてしまう点を除いて、本第5実施形態の作用は、上述した第1実施形態のものと同じである。」

カ 「【図1】


【図2】


【図22】



(2)引用発明
ア 引用文献1の【0061】及び【0062】に記載された「第5実施形態」の「表示装置」に関して、【0062】には、「本第5実施形態は、上述した第1実施形態と比較して、発光層封止層8及び各発光層9の代わりに、白色光を発光するように材料(発光色素)が調整された一続きの白色発光層12が形成されているとともに、各透明電極7に対応して(従って、白色発光層12における、各透明電極7によって供給される電流によって発光する部分に対応して)、何れかの原色の波長成分のみを透過させるカラーフィルタ13が、選択反射層6と透明電極7との間に形成されている点のみを相違し、それ以外の構成を同一としている。」と記載されている。また、引用文献1の【0015】?【0043】に記載された「第1実施形態」の「表示装置」に関して、【0015】?【0017】には、「図1は、本発明の第1実施形態に係る表示装置を構成する有機EL表示素子における何れか一つの画素をなす何れか一つの原色(赤,緑,青)を発光する部分の縦断面図である。」、「図1に示すように、透明基板としてのガラス基板1の一方の面(図1における下向きの面,以下、「射出側面」という)には、順番に、1/4波長板2及び偏光板3が、層をなすように形成されている。」及び「これに対して、ガラス基板1の他方の面(図1における上向きの面,以下、「発行側面」という)には、順番に、TFT層4,配向層5,選択反射層6,透明電極7,発光層封止層8及び反射電極10が、層をなすように形成されている。」と記載されている。
以上の記載及び図22を併せて考慮すると、「第5実施形態」の「表示装置」は、「透明基板としてのガラス基板1の一方の面には、順番に、1/4波長板2及び偏光板3が、層をなすように形成され、ガラス基板1の他方の面には、順番に、TFT層4、配向層5、選択反射層6、カラーフィルタ13、透明電極7、白色発光層12、反射電極10が、層をなすように形成されている」。

イ 「第1実施形態」の「選択反射層6」に関して、引用文献1の【0021】には、「選択反射層6は、各画素を構成する各発光層9ごとに区分されており、各発光層9によって発光される原色光の波長を反射するように構成されている。」、「各選択反射層6は、波長選択反射機能を有するコレステリック液晶(コレステロールの水酸基をハロゲンで置換したハロゲン化合物や脂肪酸,炭酸とのエステル化合物等のコレステリック環を有する液晶)を封入した構造を有している。」及び「各選択反射層6は、対応する発光層9が発する原色光の波長(λ[nm])を中心とした特定の波長の幅の光のみを反射するように、構成されているのである。」と記載されている。また、引用文献1の【0062】には、前記アで述べた事項に加え、「白色発光層12にて発した白色光のうち、特定の原色光成分のみがカラーフィルタ13を透過するので、選択反射層6には対応する波長の光のみが入射する点において、第1実施形態と同じである。」と記載されている。
以上の記載を併せて考慮すると、引用文献1に記載された「第5実施形態」においては、各「カラーフィルタ13」(及び「白色発光層12」)が、「第1実施形態」の各「発光層9」の機能を担っていると理解されるから、「第5実施形態」の「選択反射層6」は、「各画素を構成するカラーフィルタ13ごとに区分されており、各カラーフィルタ13によって発光される原色光の波長を反射するように、波長選択反射機能を有するコレステリック液晶(コレステロールの水酸基をハロゲンで置換したハロゲン化合物や脂肪酸、炭酸とのエステル化合物等のコレステリック環を有する液晶)を封入した構造を有し、各選択反射層6は、対応するカラーフィルタ13が発する原色光の波長(λ[nm])を中心とした特定の波長の幅の光のみを反射するように構成され」たものと理解される。

ウ そうしてみると、引用文献1には、「第5実施形態」として、次の「ボトムエミッション方式の有機EL表示素子を用いた表示装置」(【0001】)の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「 ボトムエミッション方式の有機EL表示素子を用いた表示装置であって、
表示装置を構成する有機EL表示素子における何れか一つの画素をなす何れか一つの原色(赤、緑、青)を発光する部分は、透明基板としてのガラス基板1の一方の面に、順番に、1/4波長板2及び偏光板3が、層をなすように形成され、また、ガラス基板1の他方の面に、順番に、TFT層4、配向層5、選択反射層6、カラーフィルタ13、透明電極7、白色発光層12、反射電極10が、層をなすように形成され、
反射電極10は、有機EL表示素子全体を覆うように形成された共通電極であり、入射した可視光領域全般に亙る光を全反射するに足りる屈折率及び膜厚を有する金属膜であり、
白色光を発光するように材料が調整された一続きの白色発光層12が形成されているとともに、各透明電極7に対応して、何れかの原色の波長成分のみを透過させるカラーフィルタ13が、選択反射層6と透明電極7との間に形成され、白色発光層12にて発した白色光のうち、特定の原色光成分のみがカラーフィルタ13を透過するので、選択反射層6には対応する波長の光のみが入射し、
選択反射層6は、各画素を構成するカラーフィルタ13ごとに区分されており、各カラーフィルタ13によって発光される原色光の波長を反射するように、波長選択反射機能を有するコレステリック液晶(コレステロールの水酸基をハロゲンで置換したハロゲン化合物や脂肪酸、炭酸とのエステル化合物等のコレステリック環を有する液晶)を封入した構造を有し、各選択反射層6は、対応するカラーフィルタ13が発する原色光の波長(λ[nm])を中心とした特定の波長の幅の光のみを反射するように構成されている、
ボトムエミッション方式の有機EL表示素子を用いた表示装置。」

(3)引用文献4の記載
引用文献4(特開2015-163596号公報)は、本件出願の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、そこには、以下の記載がある。
ア 「【背景技術】
【0002】
液晶性を有する重合性化合物を用いて、位相差膜や反射膜などの様々な光学フィルムの作製が可能である。重合性化合物の複屈折性は得られる光学フィルムの光学的性質に大きく関わる性質の1つである。例えば、高い複屈折性を示す液晶を用いることにより薄い膜厚で所望の位相差を有する位相差膜を得ることができる(特許文献1)。
一方、複屈折性の低い重合性化合物を用いて形成したコレステリック液晶相を固定したフィルムとすることにより、反射波長域の選択性の高い反射膜を得ることができる。特許文献2には、特定の構造の非液晶性(メタ)アクリレート化合物を重合性液晶化合物とともに用いることにより低複屈折性位相差膜、または反射波長域の選択性の高い反射膜が得られたことが記載されている。」

イ 「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低複屈折性液晶として利用可能な新規な重合性化合物を提供することを課題とする。本発明はまた、低複屈折性位相差膜、または反射波長域の選択性の高い反射膜等のフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題の解決のために様々な構造の化合物を検討していたところ、特許文献3または4により公知の重合性化合物に類似の構造を有する新規な化合物が、低複屈折性を示し、また、フィルムの形成に有利な性質を有することを見出し、この知見に基づきさらに検討を重ね、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の<1>?<23>を提供するものである。
<1>式(I)で表される重合性化合物:
【0006】
【化1】



ウ 「【発明の効果】
【0017】
本発明により、低複屈折性液晶として利用可能な新規な重合性化合物が提供される。本発明はまた、低複屈折性位相差膜、または反射波長域の選択性の高い反射膜等の新規なフィルムを提供する。」

エ 「【0047】
式(I)で示される重合性化合物は、液晶性を示すと同時に複屈折性が低いため、式(I)で示される重合性化合物を利用して位相差フィルムを作製することによって、位相差フィルムの複屈折性を所望の範囲に調整することができる。特に式(I)で示される重合性化合物を用いてコレステリック液晶相を形成し、これを固定したフィルムとすることにより、選択反射の波長帯域の狭い反射膜、すなわち、反射波長域の選択性の高い反射膜を得ることができる。」

オ 「【0074】
[フィルムの用途]
フィルムの一態様は、重合性組成物の、液晶相の配向(例えば、水平配向、垂直配向、ハイブリッド配向等)を固定したフィルムであって、光学異方性を示すフィルムである。当該フィルムは、液晶表示装置等の光学補償フィルム等として利用される。
光学フィルムの一態様は、重合性組成物のコレステリック液晶相を固定したフィルムであって、所定の波長域の光に対して選択反射特性を示すフィルムである。コレステリック液晶相では、液晶分子は螺旋状に配列している。コレステリック液晶相を固定した層(以下「コレステリック液晶層」ということがある。)は選択反射波長域において、右円偏光または左円偏光のいずれか一方を選択的に反射させ、他方のセンスの円偏光を透過させる円偏光選択反射層として機能する。コレステリック液晶層を1層または2層以上含むフィルムは、様々な用途に用いることができる。コレステリック液晶層を2層以上含むフィルムにおいて、各コレステリック液晶層が反射する円偏光のセンスは用途に応じて同じでも逆であってもよい。また、各コレステリック液晶層の後述の選択反射の中心波長も用途に応じて同じでも異なっていてもよい。」

(4)対比
本件補正後発明と引用発明を対比する。
ア 反射電極
引用発明の「反射電極10」は、「有機EL表示素子全体を覆うように形成された共通電極であり、入射した可視光領域全般に亙る光を全反射するに足りる屈折率及び膜厚を有する金属膜であ」る。
上記記載から理解される「反射電極10」の機能からみて、引用発明の「反射電極10」は、本件補正後発明の「反射電極」に相当する。

イ 有機EL発光層
引用発明は、「ボトムエミッション方式の有機EL表示素子を用いた表示装置」である。また、引用発明の「表示装置を構成する有機EL表示素子における何れか一つの画素をなす何れか一つの原色(赤、緑、青)を発光する部分」は、「ガラス基板1の他方の面に、順番に、TFT層4、配向層5、選択反射層6、カラーフィルタ13、透明電極7、白色発光層12、反射電極10が、層をなすように形成され」たものである。
そうしてみると、引用発明の「表示装置」が「有機EL表示素子を用いた」ものであること、及び上記の層構成からみて、引用発明の「白色発光層12」は、本件補正後発明の「有機EL発光層」に相当する。

ウ カラーフィルター層
引用発明の「表示装置」は、前記イで述べた層構成を具備する。また、引用発明の「表示装置を構成する有機EL表示素子における何れか一つの画素をなす何れか一つの原色(赤、緑、青)を発光する部分」は、「白色光を発光するように材料が調整された一続きの白色発光層12が形成されているとともに、各透明電極7に対応して、何れかの原色の波長成分のみを透過させるカラーフィルタ13が、選択反射層6と透明電極7との間に形成され、白色発光層12にて発した白色光のうち、特定の原色光成分のみがカラーフィルタ13を透過する」。
上記構成からみて、引用発明の「表示装置」は、「赤」、「緑」及び「青」に対応する3種類の「カラーフィルタ13」からなる層(以下「カラーフィルタ13からなる層」という。)を具備するといえる。また、上記「カラーフィルタ13からなる層」は、その機能からみて「カラーフィルター層」と称するにふさわしく、加えて、表示装置に関する技術常識を考慮すると、引用発明の「カラーフィルタ13」がマトリックス状に配置されていることは明らかである。
そうしてみると、引用発明の「カラーフィルタ13」及び「カラーフィルタ13からなる層」は、それぞれ本件補正後発明の「カラーフィルター」及び「カラーフィルター層」に相当する。また、引用発明の「カラーフィルタ13からなる層」は、本件補正後発明の「カラーフィルター層」における、「赤色波長帯域と緑色波長帯域と青色波長帯域とに対応する少なくとも3種類のカラーフィルターがマトリックス状に配置されている」という要件を満たす。
(当合議体注:引用発明の「カラーフィルタ13」の部分が「層」(重なりをなすものの一つ)であることは、図22からも確認できる事項である。)

エ 駆動回路
引用発明の「有機EL表示素子における何れか一つの画素をなす何れか一つの原色(赤、緑、青)を発光する部分」は、「ガラス基板1の他方の面に、順番に、TFT層4、配向層5、選択反射層6、カラーフィルタ13、透明電極7、白色発光層12、反射電極10が、層をなすように形成され」ている。
ここで、「有機EL表示素子」に関する技術常識を考慮すると、引用発明の「TFT層4」が、各「画素」を駆動する「TFT」(薄膜トランジスタ)を備えた、「有機EL表示素子」を発光させる駆動回路の層であることは、明らかである(当合議体注:引用文献1の【0025】及び【0027】の記載からも確認できる事項である。)。
そうしてみると、引用発明の「TFT層4」は、本件補正後発明の「駆動回路」に相当する。また、引用発明の「TFT層4」は、本件補正後発明の「駆動回路」における、「それぞれの画素を駆動する薄膜トランジスタを備える」という要件を満たすものである。

オ 1/4波長位相差層及び直線偏光板
引用発明の「表示装置」は、「透明基板としてのガラス基板1の一方の面に、順番に、1/4波長板2及び偏光板3が、層をなすように形成され」ている。
ここで、「有機EL表示素子を用いた表示装置」に関する技術常識を考慮すると、上記「1/4波長板2及び偏光板3」が、円偏光板として機能することは、明らかである(引用文献1の【0016】及び【0032】の記載からも確認できる事項である。)。
そうしてみると、引用発明の「1/4波長板」及び「偏光板」は、それぞれ、本件補正後発明の「1/4波長位相差層」及び「直線偏光板」に相当する。

カ 各部材の配置順
引用発明の「表示装置を構成する有機EL表示素子における何れか一つの画素をなす何れか一つの原色(赤、緑、青)を発光する部分」は、「透明基板としてのガラス基板1の一方の面に、順番に、1/4波長板2及び偏光板3が、層をなすように形成され、また、ガラス基板1の他方の面に、順番に、TFT層4、配向層5、選択反射層6、カラーフィルタ13、透明電極7、白色発光層12、反射電極10が、層をなすように形成され」ている。
上記層構成からみて、引用発明の「表示装置」は、本件補正後発明の「反射電極と」、「有機EL発光層と」、「カラーフィルター層と」、「駆動回路と」、「1/4波長位相差層と」、「直線偏光板と、をこの順に備える」とされる、「画像表示装置」に相当する。

キ 反射層
引用発明の「表示装置」は、前記カで述べた構成を具備する。また、引用発明の「選択反射層6」は、「各画素を構成するカラーフィルタ13ごとに区分されており、各カラーフィルタ13によって発光される原色光の波長を反射するように、波長選択反射機能を有するコレステリック液晶(コレステロールの水酸基をハロゲンで置換したハロゲン化合物や脂肪酸、炭酸とのエステル化合物等のコレステリック環を有する液晶)を封入した構造を有し、各選択反射層6は、対応するカラーフィルタ13が発する原色光の波長(λ[nm])を中心とした特定の波長の幅の光のみを反射するように構成されている」。
上記構成から理解される位置関係及び機能からみて、引用発明の「選択反射層6」は、本件補正後発明の「前記赤色波長帯域と緑色波長帯域と青色波長帯域とに相当する波長をそれぞれ選択反射する、コレステリック液晶を含む3種類の」とされる「反射層」に相当する。また、引用発明の「選択反射層6」は、本件補正後発明の「反射層」における、「前記駆動回路と前記有機EL発光層との間に配置され」という要件を満たす。また、前記ウの対比結果も考慮すると、引用発明の「表示装置」は、本件補正後発明の「画像表示装置」における、「前記コレステリック液晶を含む3種類の反射層が、マトリックス状に配置された前記3種類のカラーフィルターに対応する波長帯域を選択的に反射するように、該カラーフィルターの対応する箇所にそれぞれ1つずつ配置されている」という要件を満たす。

(5)一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明は、次の構成で一致する。
「 反射電極と、
有機EL発光層と、
赤色波長帯域と緑色波長帯域と青色波長帯域とに対応する少なくとも3種類のカラーフィルターががマトリックス状に配置されているカラーフィルター層と、
それぞれの画素を駆動する薄膜トランジスタを備える駆動回路と、
1/4波長位相差層と、
直線偏光板と、をこの順に備える画像表示装置であって、
前記赤色波長帯域と緑色波長帯域と青色波長帯域とに相当する波長をそれぞれ選択反射する、コレステリック液晶を含む3種類の反射層が、前記駆動回路と前記有機EL発光層との間に配置され、
前記コレステリック液晶を含む3種類の反射層が、前記3種類のカラーフィルターに対応する波長帯域を選択的に反射するように、該カラーフィルターの対応する箇所にそれぞれ1つずつ配置されている
画像表示装置。」

イ 相違点
本件補正後発明と引用発明は、次の点で相違する。
(相違点)
「コレステリック液晶」が、本件補正後発明は、「逆分散波長特性を示す液晶材料、又はシクロヘキサン構造を有する液晶材料であ」るのに対して、引用発明は「コレステロールの水酸基をハロゲンで置換したハロゲン化合物や脂肪酸,炭酸とのエステル化合物等のコレステリック環を有する液晶」である点。

(6)相違点についての判断
引用文献4に記載される「式(I)」は、「【化1】」の構造から明らかなように、シクロヘキサン構造を有する重合性化合物である。また、引用文献4の【0047】には、式(I)で示される重合性化合物は、液晶性を示すと同時に複屈折性が低いため、コレステリック液晶相を形成し、これを固定したフィルムとすることにより、選択反射の波長帯域の狭い反射膜を得ることができる旨開示されている。さらに、引用文献4の【0074】にも記載されるように、この反射膜は、液晶分子が螺旋状に配列しているコレステリック液晶相を固定した層(コレステリック液晶層)であるので、選択反射波長域において、右円偏光または左円偏光のいずれか一方を選択的に反射させ、他方の円偏光を透過させる円偏光選択反射層として機能するものである。
また、有機EL表示装置において、表示の明るさを向上させるために設けられるコレステリック液晶層について、反射する波長帯域を狭くすることにより、色純度を高めることができることは周知の事項である(原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2(特開2005-63841号公報)【0297】、【0298】及び原査定の拒絶の理由において引用された引用文献3(特開2004-296162号公報)【0040】等を参照。)。
そうしてみると、引用文献4の開示事項を心得た当業者にとって、引用発明における選択反射層として、表示装置の色純度を高めるために、選択波長の狭い反射膜を得られる引用文献4に開示の重合性化合物を用いたコレステリック液晶層によるものとすることは、通常の創作能力の範囲内のことである。
なお、引用発明の「コレステリック液晶」は、「(コレステロールの水酸基をハロゲンで置換したハロゲン化合物や脂肪酸,炭酸とのエステル化合物等のコレステリック環を有する液晶)」とされているが、引用発明の「選択反射層」として引用文献4の材料からなるコレステリック液晶を用いても、このような「選択反射層」は、「波長選択反射機能を有する」ものであり、引用文献1【0011】に記載の発明の効果を妨げるものとはならない。

(7)効果について
本件補正後発明の効果について、本件出願の明細書の【0016】には、「本発明によれば、コレステリック液晶の反射層配置による輝度向上と、外光反射の抑制とを両立させる画像表示装置を提供することができ」と記載され、【0046】には「画像表示装置1では、各画素からの出射光の損失を充分に低減し、輝度低下を防止する」と記載されている。
しかしながら、このような効果は、引用発明及び引用文献4に記載された事項から当業者が予測できる範囲内のものにすぎない。

(8)請求人の主張について
令和3年1月26日付け審判請求書において、請求人は、「文献1には、反射層に含まれるコレステリック液晶が逆分散波長特性を示す液晶材料、又はシクロヘキサン構造を有する液晶材料であることは記載も示唆もされておりません。また、逆分散波長特性を示す液晶材料、又はシクロヘキサン構造を有する液晶材料自体が公然に知られた材料であると認められると仮定しても、文献1にこれらの材料が示唆されていない以上、画像表示装置を構成する駆動回路と有機EL発光層との間に配置される反射層に含まれる材料として逆分散波長特性を示す液晶材料、又はシクロヘキサン構造を有する液晶材料を選択することを動機づけることはできるものではありません。」と主張する。
しかしながら、この点は上記(6)で既に述べたとおりであるから請求人の主張は、採用できない。

(9)小括
本件補正後発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正の却下の決定のむすび
本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2」[理由]1(1)に記載された事項によって特定されるとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1(特開2014-38713号公報)に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない、また、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

3 引用文献の記載及び引用発明
引用文献1の記載及び引用発明は、前記「第2」[理由]2(1)及び(2)に記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は、前記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明から、「前記コレステリック液晶は、逆分散波長特性を示す液晶材料、又はシクロヘキサン構造を有する液晶材料であり」という限定を省いたものに相当する。そして、本願発明の構成を全て具備し、さらに上記限定を有する、本件補正後発明は、前記「第2」[理由]2で述べたとおり、引用文献1に記載された発明及び引用文献4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。また、上記限定は、前記「第2」[理由]2(5)イに記載した相違点に関するものであるから、上記限定を省いたものである本願発明と引用発明との間に相違点はない。
そうしてみると、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。仮に何らかの相違点が見いだされたとしても、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないか、又は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-06-29 
結審通知日 2021-07-06 
審決日 2021-07-28 
出願番号 特願2016-116948(P2016-116948)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05B)
P 1 8・ 113- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 榎本 吉孝
特許庁審判官 関根 洋之
早川 貴之
発明の名称 画像表示装置  
代理人 正林 真之  
代理人 林 一好  
代理人 芝 哲央  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ