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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16B
管理番号 1378271
審判番号 不服2021-2474  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-25 
確定日 2021-10-12 
事件の表示 特願2019-126283号「部材間の接合構造および接合方法」拒絶査定不服審判事件〔令和3年2月4日出願公開、特開2021-11920号、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和1年7月5日の出願であって、令和2年8月21日付けで拒絶理由が通知され、同年10月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月20日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)され、これに対して、令和3年2月25日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
この出願の以下の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物1に記載された発明及び周知の技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1-11
・刊行物等1-3

[刊行物]
1.米国特許第3512316号明細書
2.特開2004-245399号公報(周知の技術を示す文献)
3.特許第3358182号公報(周知の技術を示す文献)
以下それぞれ引用文献1ないし3という。

第3 本願発明
本願の請求項1?11に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」?「本願発明11」という。)は、令和2年10月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される次のとおりの発明である。
「 【請求項1】
互いに接合される一方の部材のボルト孔に対してボルトが装着されており、前記ボルトのボルト頭部と前記ボルト孔との間に互いに接合される他方の部材の接合部を嵌合させた部材間の接合構造であって、前記ボルト頭部の裏面側には所定の勾配を持たせた第1の勾配付きの部材が前記ボルトの軸部を貫通させた状態で取り付けられており、前記他方の部材の接合部には前記第1の勾配付きの部材と逆向きの勾配を持たせた第2の勾配付きの部材が取り付けられており、前記他方の部材の接合部および前記第2の勾配付きの部材には、前記ボルトの軸部を側方から受入れ可能なガイド溝が形成されており、前記第1の勾配付きの部材と前記第2の勾配付きの部材の勾配面どうしを当接させた状態で部材どうしが前記ボルトを介して接合されていることを特徴とする部材間の接合構造。
【請求項2】
請求項1記載の部材間の接合構造において、前記ボルトは、前記一方の部材の前記ボルト孔に対しボルトの軸部の雄ねじに螺合したナットで接合されていることを特徴とする部材間の接合構造。
【請求項3】
請求項1記載の部材間の接合構造において、前記ボルトの軸部の雄ねじが前記一方の部材の前記ボルト孔に形成された雌ねじに螺合して接合されていることを特徴とする部材間の接合構造。
【請求項4】
請求項2記載の部材間の接合構造において、前記一方の部材のボルト孔と前記ナットとの間に弾性部材を介在させてあることを特徴とする部材間の接合構造。
【請求項5】
請求項1?3の何れかに記載の部材間の接合構造において、前記ボルト頭部と前記第1の勾配付きの部材との間に弾性部材を介在させてあることを特徴とする部材間の接合構造。
【請求項6】
請求項4または5記載の部材間の接合構造において、前記弾性部材はばね座金または皿ばねであることを特徴とする部材間の接合構造。
【請求項7】
互いに接合される一方の部材のボルト孔にあらかじめボルトを装着しておき、前記ボルトのボルト頭部と前記ボルト孔との間に、互いに接合される他方の部材の接合部を側方から嵌合させて、部材どうしを前記ボルトを介して接合する部材間の接合方法であって、前記ボルト頭部の裏面側に所定の勾配を持たせた第1の勾配付きの部材を前記ボルトの軸部を貫通させて取り付けておき、前記他方の部材の接合部に前記第1の勾配付きの部材と逆向きの勾配を持たせた第2の勾配付きの部材を取り付けた状態で、前記他方の部材の接合部および前記第2の勾配付きの部材に形成されているガイド溝に前記ボルトの軸部を側方から嵌入させながら、前記他方の部材の接合部を側方から嵌合させて、前記第1の勾配付きの部材と前記第2の勾配付きの部材の勾配面どうしを当接させ、前記部材間に前記ボルトの締付け力を導入することを特徴とする部材間の接合方法。
【請求項8】
請求項7記載の部材間の接合方法において、前記一方の部材のボルト孔に対し、前記ボルトを、該ボルトの軸部の雄ねじに螺合したナットを介して装着することを特徴とする部材間の接合方法。
【請求項9】
請求項7記載の部材間の接合構造において、前記一方の部材のボルト孔に対し、前記ボルトを該ボルトの軸部の雄ねじを前記ボルト孔に形成された雌ねじに螺合して装着することを特徴とする部材間の接合方法。
【請求項10】
請求項8記載の部材間の接合方法において、前記一方の部材のボルト孔と前記ナットとの間に弾性部材を介在させることを特徴とする部材間の接合方法。
【請求項11】
請求項7?9の何れかに記載の部材間の接合方法において、前記ボルト頭部と前記第1の勾配付きの部材との間に弾性部材を介在させることを特徴とする部材間の接合方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付し、訳は当審が作成した。以下同様である。)。
(1a)
「Another form of connector is shown in FIGS. 8 through 11 which is similar in use to the connectors 88 previously described. The connector 142 as illustrated in FIGS. 8 through 11, includes a connector rod 144 provided with a plurality of axially spaced grooves 146 in order to accommodate the clamping of structural members of different widths. The structural members abut the head 148 welded to one end of the rod and engage one of the wedge.elements 150 made of metal which is slotted to open in a direction opposite to the slot associated with the other coacting wedge element 152 from which the rod 144 projects. The wedge element 152 is also provided on the sides thereof with a dovetail recess 154 to slidably mount a clamping plate 156 having inturned sides 158. A key slot 160 is formed in the clamping plate to engage one of the grooves 146 of the rod. Thus, the connector 142 may be utilized to secure abutting members to each other in the same manner as hereinbefore described・in connection with the connectors 88.」(4欄40?58行)
「別の形態のコネクターが図8ないし図11に示され、これは、前述のコネクター88と同様の使用法である。図8ないし図11に示されるようなコネクター142は、異なる幅の構造部材のクランプに対応するために、軸方向に間隔を置いた複数の溝146を備えたコネクターロッド144を含む。構造部材は、ロッドの一端に溶接されたヘッド148に隣接し、ロッド144が突出する他の協調くさび要素152に関連するスロットと反対の方向に開くようにスロットが設けられた金属製のくさび要素の1つ150と係合する。くさび要素152はまた、その両側面に、内側に折り返された両側面158を有するクランププレート156をスライド可能に取り付けるためのアリ継ぎ溝154を備えている。キースロット160は、ロッドの溝146の1つと係合するようにクランププレートに形成されている。このようにして、コネクター142は、コネクター88に関連する前述したのと同じ方法により、隣接する部材を互いに固定するために利用することができる。」
(1b)
図8?11は、以下のとおりである。

(2)引用文献1に記載された発明

摘記(1a)の「構造部材は、ロッドの一端に溶接されたヘッド148に隣接し、ロッド144が突出する他の協調くさび要素152に関連するスロットと反対の方向に開くようにスロットが設けられた金属製のくさび要素の1つ150と係合する。」(以下「記載A」ともいう。)、「コネクター142は、コネクター88に関連する前述したのと同じ方法により、隣接する部材を互いに固定する」(以下「記載B」ともいう。)、「くさび要素152はまた、その両側面に、内側に折り返された両側面158を有するクランププレート156をスライド可能に取り付けるためのアリ継ぎ溝154を備えている。キースロット160は、ロッドの溝146の1つと係合するようにクランププレートに形成されている。」(以下「記載C」ともいう。)、及び、図8?11に着目すると、以下のことがいえる。

摘記(1a)の「ロッド」及び「ロッド144」は、いずれも、「コネクターロッド144」として特定できる。

記載Aすなわち「構造部材は、ロッドの一端に溶接されたヘッド148に隣接し、ロッド144が突出する他の協調くさび要素152に関連するスロットと反対の方向に開くようにスロットが設けられた金属製のくさび要素の1つ150と係合する。」という記載、記載Bすなわち「コネクター142は、コネクター88に関連する前述したのと同じ方法により、隣接する部材を互いに固定する」という記載に併せて、図10?11及び上記イを参照すると、「構造部材」は、「隣接する部材」を、すなわち、くさび要素の1つ150(「くさび要素150」として特定できる。)に接する部材である一方の部材と、ヘッド148に接する部材である他方の部材を、これらの部材に設けられた孔(以下「コネクターロッド144用の孔」という。)にコネクターロッド144を挿通して接合した部材間の接合構造となっていることが明らかであって、「構造部材」は、互いに接合される一方の部材のコネクターロッド144用の孔に対してコネクターロッド144が装着されており、前記コネクターロッド144の一端に溶接されたヘッド148と前記コネクターロッド144用の孔との間の位置において、互いに接合される他方の部材のコネクターロッド144用の孔に対してコネクターロッド144を装着して互いに接合される他方の部材の接合部を嵌合させた、部材間の接合構造として特定することができ、さらに、この部材間の接合構造は、くさび要素152と、くさび要素150とを備えた、部材間の接合構造として特定できる。

また、上記ウを踏まえると、図8及び図10から、摘記(1a)の「くさび要素の1つ150」及び「くさび要素152」は、いずれも、勾配面付きの「くさび要素の1つ150」(くさび要素150)及び勾配面付きの「くさび要素152」であることが看取でき、勾配面付きの「くさび要素150」と勾配面付きの「くさび要素152」の勾配面どうしを当接させた状態で一方の部材と他方の部材とがコネクターロッド144を介して接合されている、部材間の接合構造が看取できる。

図8を参照すると、「くさび要素152」は、くさび先端側が開くようにスロットが設けられた、「くさび要素152」であることが明らかである。
このことと、上記イ、エ、及び、記載Aの「ロッド144が突出する他の協調くさび要素152」、記載Cすなわち「くさび要素152はまた、その両側面に、内側に折り返された両側面158を有するクランププレート156をスライド可能に取り付けるためのアリ継ぎ溝154を備えている。キースロット160は、ロッドの溝146の1つと係合するようにクランププレートに形成されている。」から、
「くさび要素152」は、コネクター「ロッド」144「の溝146の1つと係合する」「キースロット160」が「形成され」「内側に折り返された両側面158を有するクランププレート156を」、「スライド可能に取り付けるためのアリ継ぎ溝154を」「両側面に」「備え」、コネクター「ロッド144が突出する」、くさび先端側が開くようにスロットが設けられた、勾配面付きの「くさび要素152」として特定できる。
また、上記のように特定される「くさび要素152」と上記エを踏まえ、図8及び図10において、「くさび要素の1つ150」及び「くさび要素152」に着目すると(特に、これらのくさび要素のスロットの開く向きに着目すると)、
記載Aにおける「ロッド144が突出する他の協調くさび要素152に関連するスロットと反対の方向に開くようにスロットが設けられた金属製のくさび要素の1つ150」は、勾配面付きのくさび要素152と一方の部材との間に配置され、勾配面付きの「くさび要素152に」設けられた「スロット」が開く方向「と反対の方向に」くさび先端側が「開くようにスロットが設けられた」、勾配面付きの「くさび要素の1つ150」(くさび要素150)として特定できる。

上記ア?オ、摘記(1a)及び図8?11から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明A]
「互いに接合される一方の部材のコネクターロッド144用の孔に対してコネクターロッド144が装着されており、前記コネクターロッド144の一端に溶接されたヘッド148と前記コネクターロッド144用の孔との間の位置において、互いに接合される他方の部材のコネクターロッド144用の孔に対してコネクターロッド144を装着して互いに接合される他方の部材の接合部を嵌合させた部材間の接合構造であって、
コネクターロッド144の溝146の1つと係合するキースロット160が形成され内側に折り返された両側面158を有するクランププレート156を、スライド可能に取り付けるためのアリ継ぎ溝154を両側面に備え、コネクターロッド144が突出する、くさび先端側が開くようにスロットが設けられた、勾配面付きのくさび要素152と、
勾配面付きのくさび要素152と一方の部材との間に配置され、勾配面付きのくさび要素152に設けられたスロットが開く方向と反対の方向にくさび先端側が開くようにスロットが設けられた、勾配面付きのくさび要素150とを備え、
前記勾配面付きのくさび要素150と前記勾配面付きのくさび要素152の勾配面どうしを当接させた状態で一方の部材と他方の部材とがコネクターロッド144を介して接合されている、
部材間の接合構造。」

引用発明Aを製造する際に、引用発明Aの「くさび要素150」の「開く」「スロット」が「コネクターロッド144」を嵌入させるように機能することが明らかであり、引用発明Aの「コネクターロッド144」が、「くさび要素の1つ150」と「くさび要素152」と「クランププレート156」とに連動することで、一方の部材と他方の部材の間にコネクターロッド144の締付け力を導入するように機能することが明らかであることに鑑みると、引用文献1には、次の方法の発明(以下「引用発明B」という。)も記載されていると認められる(下線は、引用発明Aと相違する部分を示す。)。

[引用発明B]
「互いに接合される一方の部材のコネクターロッド144用の孔にコネクターロッド144を装着し、前記コネクターロッド144の一端に溶接されたヘッド148と前記コネクターロッド144用の孔との間の位置において、互いに接合される他方の部材のコネクターロッド144用の孔に対してコネクターロッド144を装着して互いに接合される他方の部材の接合部を嵌合させて、部材どうしを前記コネクターロッド144を介して接合する部材間の接合方法であって、
コネクターロッド144の溝146の1つと係合するキースロット160が形成され内側に折り返された両側面158を有するクランププレート156を、スライド可能に取り付けるためのアリ継ぎ溝154を両側面に備え、コネクターロッド144が突出する、くさび先端側が開くようにスロットが設けられた、勾配面付きのくさび要素152と、一方の部材との間において、
勾配面付きのくさび要素152と一方の部材との間に配置され、勾配面付きのくさび要素152に設けられたスロットが開く方向と反対の方向にくさび先端側が開くようにスロットが設けられた、勾配面付きのくさび要素150のスロットに、コネクターロッド144を嵌入させ、
前記勾配面付きのくさび要素152と前記勾配面付きのくさび要素150の勾配面どうしを当接させた状態で一方の部材と他方の部材とがコネクターロッド144を介して接合され、一方の部材と他方の部材の間にコネクターロッド144の締付け力を導入する、
部材間の接合方法。」

2 引用文献2について
引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(2a)
「【0021】
【発明の実施の形態】
本発明による二鋼材締結構造と、その締結構造に用いる締結部品の第一実施形態を図1に基づき説明すれば、ナット機能部1を有する第一鋼材P1と、該鋼材P1に隙間を有して相対しナット機能部1に連通する貫通穴p2を有する第二鋼材P2と、両鋼材P1,P2間に装着する楔対偶4と、第二鋼材P2の外側から楔対偶4を貫通し第一鋼材P1に設けたナット機能部1に螺合するボルト7とを備え、楔対偶4は傾斜面5aを有する第一楔板5と、該楔板5と反対方向の傾斜面6aを有する第二楔板6とに、両楔板5,6の肉厚端側から肉薄端側に向けて先細となるテーパー長孔52,62を設け、傾斜面5a,6aを相互に面接した状態で、長孔小径部r1,r2が連通する最小楔対偶厚さtから、長孔大径部R1,R2が連通する最大楔対偶厚さtまでの範囲でスライド自在となり、ボルト7は頭部7aと雄ねじ部7dとの間に、ねじ部径φ2より大径の円形胴部7bと、該胴部7bより雄ねじ部7dに向けて先細と成る円錐部7cとを備え、ボルト7の螺進に従って円錐部7cが第二楔板6のテーパー長孔62に挿入し、そのことにより図5と6(イ)の如く長孔小径部r2側から長孔大径部R2側にスライドし、楔対偶厚さtを拡厚し、第一楔板5を第一鋼材P1に、二楔板6を第二鋼材P2に摩擦接合する。
【0022】
第一実施形態の締結構造に用いる締結部品の一つである楔対偶4として、例えば図2の如く略同じ大きさの第一楔板5と第二楔板6とを一対とする簡易楔対偶4Aを用い、簡易楔対偶4Aの第一楔板5は肉厚端側に長孔大径部R1を、肉薄端側に長孔小径部r1を有するテーパー長孔52を板厚方向に貫通し、第二楔板6は第一楔板5の傾斜面5aと反対方向の傾斜面6aを有し、肉厚端側に長孔大径部R2を、肉薄端側に長孔小径部r2を有するテーパー長孔62を板厚方向に貫通し、傾斜面5a,6aを相互に面接した状態で、テーパー長孔52,62の範囲内で肉厚端側、又は肉薄端側に向けてスライド自在となる。
【0023】
本発明による二鋼材締結構造の第二実施形態を、第一実施形態と相違する点について説明すれば、第二実施形態の二鋼材締結構造は、締結部品の一つである楔対偶4として、図3の如く少なくとも第二楔板6のテーパー長孔62に、望ましくは第一楔板5と第二楔板6のテーパー長孔52,62に、ボルト円錐部7cの傾斜角度θと一致する傾斜周面52a,62aを設けた汎用楔対偶4Bを用い、ボルト7の雄ねじ部7dを長孔最小径部r1より小径に、円形胴部7bを長孔最小径部r1より大径で、長孔最大径部R1より小径に形成し、円錐部7cが傾斜周面62aと面接触しながら図6(ロ)と図7の如くテーパー長孔52内に挿入し得るようにする。
【0024】
本発明による二鋼材締結構造の第三実施形態を、第一及び第二実施形態と相違する点について説明すれば、第三実施形態の二鋼材締結構造は、図8の如くボルト円錐部7cが汎用楔対偶4Bの第二楔板テーパー長孔62を貫通し、第一楔板テーパー長孔52内まで達しており、それにより、第一楔板5のテーパー長孔52に円形胴部7bが挿入し始めると、第二楔板6のスライドが停止し、第一楔板5を長孔大径部R1側にスライドして楔対偶厚さtを更に拡厚し、その後、第一鋼材P1と第二鋼材P2を締結するために大部分の応力が働き、正確なトルクで締結することが可能となるし、予め、計算された一定の拡厚作用以上には拡厚しない拡厚制限機能を付加することも可能となる。即ち、円形胴部7bが第一楔板5のテーパー長孔52の半ばまで挿入し得るようにすることにより、第一楔板5に円形胴部7bが挿入し始めると、第二楔板6のスライドが停止し、第一楔板5のみをスライドする。簡易楔対偶4Aにおいても同様である。
【0025】
第一?第三実施形態の締結構造に用いる締結部品の一つであるボルト7は、図4の如くボルト頭部7aより雄ねじ部7d側に、胴部径φ1の円形胴部7bと、該胴部7bより雄ねじ部7dに向けて先細と成る円錐部7cとを順に備え、雄ねじ部7dのねじ部径φ2が長孔最小径部r1より小径であり、円形胴部7bが長孔最小径部r1より大径で、長孔最大径部R1より小径であり、少なくとも第二楔板6のテーパー長孔62に挿入し、その挿入に伴い図5と図6の如く円錐部7cの先部が先ず長孔小径部r2に当接し、第二楔板6を長孔大径部R2側にスライドしながら、テーパー長孔62の中間部を経て、円錐部7cの後部が長孔大径部R2に当接し、楔対偶厚さtを拡厚にする。」
(2b)
図1?8は、以下のとおりである。

3 引用文献3について
引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
(3a)
「【0014】図中、符号Cで指示するものは、隙間に楔材3を差し込んだ鉄骨柱1と補強筒材2とを連結するボルト連結手段である。本実施形態のボルト連結手段Cは、図5及び図6に示すように、鉄骨柱1の固定孔10に鉄骨柱1の内側から装着される連結ナット部材5と、この連結ナット部材5に補強筒材2の外側から螺合される連結ボルト9とから構成されている。」
(3b)
図5?6は、以下のとおりである。


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明Aとを対比する。

(ア)
引用発明Aの「コネクターロッド144」と、本願発明1の「ボルト」とは、「棒状部材」において共通している。
引用発明Aの「コネクターロッド144用の孔」と、本願発明1の「ボルト孔」は、「孔」において共通している。
引用発明Aの「コネクターロッド144の一端に溶接されたヘッド148」と、本願発明1の「ボルト頭部」とは、「棒状部材頭部」において共通している。
(イ)
上記(ア)を踏まえると、引用発明Aの「互いに接合される一方の部材のコネクターロッド144用の孔に対してコネクターロッド144が装着されており、前記コネクターロッド144の一端に溶接されたヘッド148と前記コネクターロッド144用の孔との間の位置において、互いに接合される他方の部材のコネクターロッド144用の孔に対してコネクターロッド144を装着して互いに接合される他方の部材の接合部を嵌合させた部材間の接合構造」と、本願発明1の「互いに接合される一方の部材のボルト孔に対してボルトが装着されており、前記ボルトのボルト頭部と前記ボルト孔との間に互いに接合される他方の部材の接合部を嵌合させた部材間の接合構造」とは、「互いに接合される一方の部材の孔に対して棒状部材が装着されており、前記棒状部材の棒状部材頭部と前記孔との間に互いに接合される他方の部材の接合部を嵌合させた部材間の接合構造」において共通している。

(ア)
引用発明Aの「勾配面付きのくさび要素150」に着目すると、以下のことがいえる。
引用発明Aでは、「前記勾配面付きのくさび要素150と前記勾配面付きのくさび要素152の勾配面どうしを当接させた状態で一方の部材と他方の部材とがコネクターロッド144を介して接合されている」こと、及び、「勾配面付きのくさび要素152」から「コネクターロッド144が突出する」ことから、引用発明Aの「勾配面付きのくさび要素152と一方の部材との間に配置され」た「勾配面付きのくさび要素150」に「設けられた」、「勾配面付きのくさび要素152に設けられたスロットが開く方向と反対の方向にくさび先端側が開くようにスロット」は、コネクターロッド144の軸部を側方から受入れ可能なガイド溝であることが明らかであり、「勾配面付きのくさび要素150」が、「勾配面付きのくさび要素152」と逆向きの勾配を持つことも明らかでる。
(イ)
上記(ア)を踏まえると、引用発明Aの「勾配面付きのくさび要素152」及び「勾配面付きのくさび要素150」は、それぞれ、本願発明1の「所定の勾配を持たせた第1の勾配付きの部材」及び「前記第1の勾配付きの部材と逆向きの勾配を持たせた第2の勾配付きの部材」に相当する。
(ウ)
上記(ア)、(イ)を踏まえると、
引用発明Aの「コネクターロッド144の溝146の1つと係合するキースロット160が形成され内側に折り返された両側面158を有するクランププレート156を、スライド可能に取り付けるためのアリ継ぎ溝154を両側面に備え、コネクターロッド144が突出する、くさび先端側が開くようにスロットが設けられた、勾配面付きのくさび要素152と、
勾配面付きのくさび要素152と一方の部材との間に配置され、勾配面付きのくさび要素152に設けられたスロットが開く方向と反対の方向にくさび先端側が開くようにスロットが設けられた、勾配面付きのくさび要素150とを備え」る構成と、
本願発明1の「前記ボルト頭部の裏面側には所定の勾配を持たせた第1の勾配付きの部材が前記ボルトの軸部を貫通させた状態で取り付けられており、前記他方の部材の接合部には前記第1の勾配付きの部材と逆向きの勾配を持たせた第2の勾配付きの部材が取り付けられており、前記他方の部材の接合部および前記第2の勾配付きの部材には、前記ボルトの軸部を側方から受入れ可能なガイド溝が形成されて」いる構成とは、
「所定の勾配を持たせた第1の勾配付きの部材と、前記第1の勾配付きの部材と逆向きの勾配を持たせた第2の勾配付きの部材とが設けられており、
前記第2の勾配付きの部材には、前記棒状部材の軸部を側方から受入れ可能なガイド溝が形成されて」いる構成において共通している。

上記ア(ア)及び上記イ(イ)を踏まえると、引用発明Aの「前記勾配面付きのくさび要素150と前記勾配面付きのくさび要素152の勾配面どうしを当接させた状態で一方の部材と他方の部材とがコネクターロッド144を介して接合されている、部材間の接合構造」と、本願発明1の「前記第1の勾配付きの部材と前記第2の勾配付きの部材の勾配面どうしを当接させた状態で部材どうしが前記ボルトを介して接合されている」「部材間の接合構造」とは、「前記第1の勾配付きの部材と前記第2の勾配付きの部材の勾配面どうしを当接させた状態で部材どうしが前記棒状部材を介して接合されている、部材間の接合構造」において共通している。

以上から、本願発明1と引用発明Aとの一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点1>
「互いに接合される一方の部材の孔に対して棒状部材が装着されており、前記棒状部材の棒状部材頭部と前記孔との間に互いに接合される他方の部材の接合部を嵌合させた部材間の接合構造であって、
所定の勾配を持たせた第1の勾配付きの部材と、前記第1の勾配付きの部材と逆向きの勾配を持たせた第2の勾配付きの部材とが設けられており、
前記第2の勾配付きの部材には、前記棒状部材の軸部を側方から受入れ可能なガイド溝が形成されており、
前記第1の勾配付きの部材と前記第2の勾配付きの部材の勾配面どうしを当接させた状態で部材どうしが前記棒状部材を介して接合されている、
部材間の接合構造。」
<相違点1-1>
「互いに接合される一方の部材の孔に対して棒状部材が装着されており、前記棒状部材の棒状部材頭部と前記孔との間に互いに接合される他方の部材の接合部を嵌合させた部材間の接合構造」、及び、「前記第1の勾配付きの部材と前記第2の勾配付きの部材の勾配面どうしを当接させた状態で部材どうしが前記棒状部材を介して接合されている、部材間の接合構造」が、
本願発明1は、互いに接合される一方の部材の「ボルト孔」に対して「ボルト」が装着されており、前記「ボルト」の「ボルト頭部」と前記「ボルト孔」との間に互いに接合される他方の部材の接合部を嵌合させた部材間の接合構造、及び、前記第1の勾配付きの部材と前記第2の勾配付きの部材の勾配面どうしを当接させた状態で部材どうしが前記「ボルト」を介して接合されている部材間の接合構造であるのに対して、
引用発明Aは、互いに接合される一方の部材の「コネクターロッド144用の孔」に対して「コネクターロッド144」が装着されており、前記「コネクターロッド144の一端に溶接されたヘッド148」と前記「コネクターロッド144用の孔」との間「の位置において、互いに接合される他方の部材のコネクターロッド144用の孔に対してコネクターロッド144を装着して」互いに接合される他方の部材の接合部を嵌合させた部材間の接合構造、及び、前記勾配面付きの「くさび要素150」と前記勾配面付きの「くさび要素152」の勾配面どうしを当接させた状態で「一方の部材と他方の部材とがコネクターロッド144」を介して接合されている、部材間の接合構造である点。
<相違点2-1>
「所定の勾配を持たせた第1の勾配付きの部材と、前記第1の勾配付きの部材と逆向きの勾配を持たせた第2の勾配付きの部材とが設けられており、前記第2の勾配付きの部材には、前記棒状部材の軸部を側方から受入れ可能なガイド溝が形成されて」いることに関して、
本願発明1では、「前記ボルト頭部の裏面側には所定の勾配を持たせた第1の勾配付きの部材が前記ボルトの軸部を貫通させた状態で取り付けられており、前記他方の部材の接合部には前記第1の勾配付きの部材と逆向きの勾配を持たせた第2の勾配付きの部材が取り付けられており、前記他方の部材の接合部および前記第2の勾配付きの部材には、前記ボルトの軸部を側方から受入れ可能なガイド溝が形成されて」いるのに対して、
引用発明Aでは、「コネクターロッド144の溝146の1つと係合するキースロット160が形成され内側に折り返された両側面158を有するクランププレート156を、スライド可能に取り付けるためのアリ継ぎ溝154を両側面に備え、コネクターロッド144が突出する、くさび先端側が開くようにスロットが設けられた、勾配面付きのくさび要素152と、勾配面付きのくさび要素152と一方の部材との間に配置され、勾配面付きのくさび要素152に設けられたスロットが開く方向と反対の方向にくさび先端側が開くようにスロットが設けられた、勾配面付きのくさび要素150とを備え、記勾配面付きのくさび要素150と前記勾配面付きのくさび要素152の勾配面どうしを当接させた状態で一方の部材と他方の部材とがコネクターロッド144を介して接合され」、「他方の部材」は「コネクターロッド144用の孔」を備えているが、他方の部材にはガイド溝が設けられておらず、他方の部材のガイド溝及びくさび要素150のスロットに対して、コネクターロッド144を側方から嵌入させることは、記載されていない点。

(2)判断
事案に鑑み、最初に相違点2-1について検討する。

引用文献2には、「ナット機能部1を有する第一鋼材P1と、該鋼材P1に隙間を有して相対しナット機能部1に連通する貫通穴p2を有する第二鋼材P2と、両鋼材P1,P2間に装着する楔対偶4と、第二鋼材P2の外側から楔対偶4を貫通し第一鋼材P1に設けたナット機能部1に螺合するボルト7」(摘記(2a)、(2b)参照)が記載されている。
引用文献3には、「鉄骨柱1の固定孔10に鉄骨柱1の内側から装着される連結ナット部材5と、この連結ナット部材5に補強筒材2の外側から螺合される連結ボルト9」(摘記(3a)、(3b)参照)が記載されている。

上記ア、引用文献2の図1(摘記(2b)参照)、及び、引用文献3の図5、6(摘記(3b)参照)によると、楔を用いた接続構造を接続する際に、ボルトを使用することは、周知の技術であるといえるし、引用文献2、3には、引用発明Aの「互いに接合される他方の部材のコネクターロッド144用の孔」と同様に、他方の部材に孔(引用文献2の「第二鋼材P2」の「貫通穴p2」、引用文献3の「鉄骨柱1」の「固定孔10」)が設けられていることが記載されているといえる。

しかしながら、引用文献2、3には、引用発明Aの「勾配面付きのくさび要素152」又は「勾配面付きのくさび要素150」を「他方の部材」に取り付けたり、「他方の部材」の「コネクターロッド144用の孔」を「コネクターロッド144」の軸を側方から受入れ可能なガイド溝にしたりする、動機付けの根拠となる事項は記載も示唆もされていないし、上記相違点2-1の本願発明1の「前記他方の部材の接合部には前記第1の勾配付きの部材と逆向きの勾配を持たせた第2の勾配付きの部材が取り付けられており、他方の部材に、ボルトの軸部を側方から受入れ可能なガイド溝が設けられ」た構成も記載も示唆もされていない。
そうすると、引用発明Aに、周知の技術ないし引用文献2、3に記載された技術事項を適用しても、上記相違点2-1の本願発明1の構成にはならない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明A、周知の技術及び引用文献2ないし3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

そして、本願発明1は、「複数本のボルトがあっても、一方の接合部材を一方向にスライドするのみでロックがかかり複数本のボルトを介した接合組立てが同時に完了することから、現場作業における労務負担が大幅に減り、生産性の向上が図られる。」(本願明細書の段落【0025】)という格別に顕著な作用効果を奏するものである。

2 本願発明7について
(1)対比
本願発明7と引用発明Bとを対比する。

上記1(1)アを踏まえると、引用発明Bの「互いに接合される一方の部材のコネクターロッド144用の孔にコネクターロッド144を装着し、前記コネクターロッド144の一端に溶接されたヘッド148と前記コネクターロッド144用の孔との間の位置において、互いに接合される他方の部材のコネクターロッド144用の孔に対してコネクターロッド144を装着して互いに接合される他方の部材の接合部を嵌合させて、部材どうしを前記コネクターロッド144を介して接合する部材間の接合方法」と、本願発明7の「互いに接合される一方の部材のボルト孔にあらかじめボルトを装着しておき、前記ボルトのボルト頭部と前記ボルト孔との間に、互いに接合される他方の部材の接合部を側方から嵌合させて、部材どうしを前記ボルトを介して接合する部材間の接合方法」とは、「互いに接合される一方の部材の孔に棒状部材を装着し、前記棒状部材の棒状部材頭部と前記孔との間に、互いに接合される他方の部材の接合部を嵌合させて、部材どうしを前記棒状部材を介して接合する部材間の接合方法」において共通している。

引用発明Bの「勾配面付きのくさび要素152」は、「コネクターロッド144が突出する」ことから、コネクターロッド144の軸部を貫通させていることが、明らかである。
また、引用発明Bの「勾配面付きのくさび要素150のスロットに、コネクターロッド144を嵌入させ」ることは、実質的に、「勾配面付きのくさび要素150のスロットに、コネクターロッド144」の軸部「を嵌入させ」ることを意味することが、明らかである。
これらのことと、上記ア及び上記1(1)イ、ウを踏まえると、
引用発明Bの「コネクターロッド144の溝146の1つと係合するキースロット160が形成され内側に折り返された両側面158を有するクランププレート156を、スライド可能に取り付けるためのアリ継ぎ溝154を両側面に備え、コネクターロッド144が突出する、くさび先端側が開くようにスロットが設けられた、勾配面付きのくさび要素152と、一方の部材との間において、
勾配面付きのくさび要素152と一方の部材との間に配置され、勾配面付きのくさび要素152に設けられたスロットが開く方向と反対の方向にくさび先端側が開くようにスロットが設けられた、勾配面付きのくさび要素150のスロットに、コネクターロッド144を嵌入させ、
前記勾配面付きのくさび要素152と前記勾配面付きのくさび要素150の勾配面どうしを当接させた状態で一方の部材と他方の部材とがコネクターロッド144を介して接合され、一方の部材と他方の部材の間にコネクターロッド144の締付け力を導入する、
部材間の接合方法」と、
本願発明7の「前記ボルト頭部の裏面側に所定の勾配を持たせた第1の勾配付きの部材を前記ボルトの軸部を貫通させて取り付けておき、前記他方の部材の接合部に前記第1の勾配付きの部材と逆向きの勾配を持たせた第2の勾配付きの部材を取り付けた状態で、前記他方の部材の接合部および前記第2の勾配付きの部材に形成されているガイド溝に前記ボルトの軸部を側方から嵌入させながら、前記他方の部材の接合部を側方から嵌合させて、前記第1の勾配付きの部材と前記第2の勾配付きの部材の勾配面どうしを当接させ、前記部材間に前記ボルトの締付け力を導入する」「部材間の接合方法」とは、
「所定の勾配を持たせた第1の勾配付きの部材に棒状部材の軸部を貫通させて、第2の勾配付きの部材に形成されているガイド溝に前記棒状部材の軸部を嵌入させながら、前記第1の勾配付きの部材と前記第2の勾配付きの部材の勾配面どうしを当接させ、前記部材間に前記棒状部材の締付け力を導入する、
部材間の接合方法。」において共通している。

以上から、本願発明7と引用発明Bとの一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点7>
「互いに接合される一方の部材の孔に棒状部材を装着し、前記棒状部材の棒状部材頭部と前記孔との間に、互いに接合される他方の部材の接合部を嵌合させて、部材どうしを前記棒状部材を介して接合する部材間の接合方法であって、
所定の勾配を持たせた第1の勾配付きの部材に棒状部材の軸部を貫通させて、第2の勾配付きの部材に形成されているガイド溝に前記棒状部材の軸部を嵌入させながら、前記第1の勾配付きの部材と前記第2の勾配付きの部材の勾配面どうしを当接させ、前記部材間に前記棒状部材の締付け力を導入する、
部材間の接合方法。」
<相違点1-7>
「互いに接合される一方の部材の孔に棒状部材を装着し、前記棒状部材の棒状部材頭部と前記孔との間に、互いに接合される他方の部材の接合部を嵌合させて、部材どうしを前記棒状部材を介して接合する部材間の接合方法」が、
本願発明7は、互いに接合される一方の部材の「ボルト孔」に「あらかじめボルト3を装着しておき」、「前記ボルトのボルト頭部」と前記「ボルト孔」との間に、互いに接合される他方の部材の接合部を「側方から」嵌合させて、部材どうしを前記「ボルト」を介して接合する部材間の接合方法、であるのに対して、
引用発明Bは、互いに接合される一方の部材の「コネクターロッド144用の孔」に「コネクターロッド144」を装着し、「前記コネクターロッド144の一端に溶接されたヘッド148」と前記「コネクターロッド144用の孔」との間「の位置において、互いに接合される他方の部材のコネクターロッド144用の孔に対してコネクターロッド144を装着して」互いに接合される他方の部材の接合部を嵌合させて、部材どうしを前記「コネクターロッド144」を介して接合する部材間の接合方法、である点。
<相違点2-7>
「所定の勾配を持たせた第1の勾配付きの部材に棒状部材の軸部を貫通させて、第2の勾配付きの部材に形成されているガイド溝に前記棒状部材の軸部を嵌入させながら、前記第1の勾配付きの部材と前記第2の勾配付きの部材の勾配面どうしを当接させ、前記部材間に前記棒状部材の締付け力を導入する」ことに関して、
本願発明7では、「前記ボルト頭部の裏面側に所定の勾配を持たせた第1の勾配付きの部材を前記ボルトの軸部を貫通させて取り付けておき、前記他方の部材の接合部に前記第1の勾配付きの部材と逆向きの勾配を持たせた第2の勾配付きの部材を取り付けた状態で、前記他方の部材の接合部および前記第2の勾配付きの部材に形成されているガイド溝に前記ボルトの軸部を側方から嵌入させながら、前記他方の部材の接合部を側方から嵌合させて」、前記第1の勾配付きの部材と前記第2の勾配付きの部材の勾配面どうしを当接させ、前記部材間に前記「ボルト」の締付け力を導入するのに対して、
引用発明Bでは、「コネクターロッド144の溝146の1つと係合するキースロット160が形成され内側に折り返された両側面158を有するクランププレート156を、スライド可能に取り付けるためのアリ継ぎ溝154を両側面に備え、コネクターロッド144が突出する、くさび先端側が開くようにスロットが設けられた、勾配面付きのくさび要素152と、一方の部材との間において、勾配面付きのくさび要素152と一方の部材との間に配置され、勾配面付きのくさび要素152に設けられたスロットが開く方向と反対の方向にくさび先端側が開くようにスロットが設けられた、勾配面付きのくさび要素150のスロットに、コネクターロッド144を嵌入させ、前記勾配面付きのくさび要素152と前記勾配面付きのくさび要素150の勾配面どうしを当接させた状態で一方の部材と他方の部材とがコネクターロッド144を介して接合され、一方の部材と他方の部材の間にコネクターロッド144の締付け力を導入」し、「他方の部材」は「コネクターロッド144用の孔」を備えているが、他方の部材にはガイド溝が設けられておらず、他方の部材のガイド溝及びくさび要素150のスロットに対して、コネクターロッド144を側方から嵌入させることは、記載されていない点。

(2)判断
事案に鑑み、最初に相違点2-7について検討する。

引用文献2、3に記載された事項ないし周知の技術は、上記1(2)ア、イのとおりである。

しかしながら、引用文献2、3には、引用発明Bの「勾配面付きのくさび要素152」又は「勾配面付きのくさび要素150」を「他方の部材」に取り付けたり、「他方の部材」の「コネクターロッド144用の孔」を「コネクターロッド144」の軸を側方から受入れ可能なガイド溝にしたりする、動機付けの根拠となる事項は記載も示唆もされていないし、上記相違点2-7の本願発明7の「前記他方の部材の接合部に・・・第2の勾配付きの部材を取り付けた状態で、前記他方の部材の接合部・・・に形成されているガイド溝に前記ボルトの軸部を側方から嵌入させながら、前記他方の部材の接合部を側方から嵌合させ」る構成も記載も示唆もされていない。
そうすると、引用発明Bに、周知の技術ないし引用文献2、3に記載された技術事項を適用しても、上記相違点2-7の本願発明7の構成にはならない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明7は、引用発明B、周知の技術及び引用文献2ないし3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

本願発明7の作用効果は、上記1(2)オで述べた作用効果と同じである。

3 本願発明2?6及び本願発明8?11について
本願発明2?6は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに請求項2?6の発明特定事項を付加して限定したものであるから、上記1と同じ理由により、引用発明A、周知の技術及び引用文献2ないし3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明8?11は、本願発明7の発明特定事項を全て含み、さらに請求項8?11の発明特定事項を付加して限定したものであるから、上記2と同じ理由により、引用発明B、周知の技術及び引用文献2ないし3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 まとめ
したがって、本願発明1?11は、引用発明A、B、周知の技術及び引用文献2ないし3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-09-21 
出願番号 特願2019-126283(P2019-126283)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F16B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 谷口 耕之助  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 出口 昌哉
畔津 圭介
発明の名称 部材間の接合構造および接合方法  
代理人 久門 保子  
代理人 久門 享  

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