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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61G |
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管理番号 | 1378285 |
審判番号 | 不服2021-3250 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-03-10 |
確定日 | 2021-10-12 |
事件の表示 | 特願2019-505573号「介助システム、介助方法、および方向転換補助装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年9月20日国際公開、WO2018/167857号、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2017年(平成29年)3月14日を国際出願日とする出願であって、令和2年4月27日付けで拒絶理由通知がされ、同年7月9日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲及び明細書について補正する手続補正書が提出され、同年12月8日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされたものであり、それに対して令和3年3月10日に拒絶査定不服審判の請求がされ、当審が令和3年5月27日付けで拒絶理由通知をし、同年7月28日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲について補正をする手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 この出願の下記に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項 1,4,5 ・引用文献等 1,2 ・請求項 6?9 ・引用文献等 1?3 ・請求項 11 ・引用文献等 2,1 ・引用文献等一覧 1.特開2014-144036号公報 2.実用新案第3044545号公報 3.特開2016-10557号公報 第3 本願発明 本願の請求項1?11に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明11」という。)は、令和3年7月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。 「【請求項1】 被介助者の移動を介助する移動式の介助装置と、 床面に対して垂直な回転軸線を中心とする前記介助装置の方向転換を補助する方向転換補助装置と、を備える介助システムにおいて、 前記介助装置は、前記床面を転動可能な複数の車輪を備え、 前記方向転換補助装置は、 前記介助装置の少なくとも一部が載置されることにより前記介助装置を支持する載置台と、 前記床面に対して前記載置台を前記回転軸線周りに回転可能に支持する回転装置と、 を備え、 前記介助装置が前記方向転換補助装置から離脱して移動可能な状態で使用される場合は、前記複数の車輪によって前記介助装置の方向転換が行われ、前記介助装置が前記載置台に支持された状態で使用される場合は、少なくとも前記回転装置の回転を利用して前記介助装置の方向転換が行われる介助システム。 【請求項2】 被介助者の移動を介助する移動式の介助装置と、 床面に対して垂直な回転軸線を中心とする前記介助装置の方向転換を補助する方向転換補助装置と、 前記介助装置および前記方向転換補助装置の双方に渡って設けられ、前記方向転換補助装置に対する前記介助装置の水平方向の移動を補助するスライド装置と、を備える介助システムにおいて、 前記方向転換補助装置は、 前記介助装置の少なくとも一部が載置されることにより前記介助装置を支持する載置台と、 前記床面に対して前記載置台を前記回転軸線周りに回転可能に支持する回転装置と、 を備える介助システム。 【請求項3】 前記介助装置は、前記床面を転動可能な複数の車輪を備え、 前記複数の車輪の少なくとも1つの車輪が、前記スライド装置の少なくとも一部を構成する、請求項2に記載の介助システム。 【請求項4】 前記介助システムは、前記介助装置および前記方向転換補助装置の少なくとも一方に設けられ、前記載置台に対する前記介助装置の相対回転を規制する相対回転規制装置をさらに備える、請求項1-3の何れか一項に記載の介助システム。 【請求項5】 前記介助装置は、前記床面を転動可能な複数の車輪を備え、 前記載置台は、前記複数の車輪のうち少なくとも1つの車輪が前記床面に接地するように前記介助装置を支持する、請求項1-4の何れか一項に記載の介助システム。 【請求項6】 前記介助装置は、 基台と、 前記被介助者の上半身を支持する支持部材と、 座位姿勢にある前記被介助者の臀部を座面から離間させるように、前記支持部材を前記基台に対して移動させる駆動装置と、を備える請求項1-5の何れか一項に記載の介助システム。 【請求項7】 前記床面が施設された部屋は、移動目標としての便器が設置されたトイレ室であり、 前記方向転換補助装置は、前記便器の前方に設置される、請求項1-6の何れか一項に記載の介助システム。 【請求項8】 前記方向転換補助装置は、前記載置台の前記回転軸線が前記便器の左右方向の中心線上となる位置に設置される、請求項7に記載の介助システム。 【請求項9】 請求項1-8の何れか一項に記載の介助システムを用いた介助方法であって、 前記介助装置は、少なくとも一部が前記載置台に載置されることにより前記載置台に支持された状態とされ、 前記介助装置に前記被介助者を乗り込ませる乗り込み工程と、 前記介助装置を回転させて前記介助装置を方向転換させる回転工程と、 前記介助装置から移動目標に前記被介助者を移乗させる移乗工程と、 を備える介助方法。 【請求項10】 被介助者の移動を介助する移動式の介助装置と、床面に対して垂直な回転軸線を中心とする前記介助装置の方向転換を補助する方向転換補助装置と、前記介助装置および前記方向転換補助装置の双方に渡って設けられ、前記方向転換補助装置に対する前記介助装置の水平方向の移動を補助するスライド装置と、を備える介助システムを用いた介助方法であって、 前記方向転換補助装置は、 前記介助装置の少なくとも一部が載置されることにより前記介助装置を支持する載置台と、 前記床面に対して前記載置台を前記回転軸線周りに回転可能に支持する回転装置と、を備え、 前記介助装置は、少なくとも一部が前記載置台に載置されることにより前記載置台に支持された状態とされ、 前記介助装置に前記被介助者を乗り込ませる乗り込み工程と、 前記乗り込み工程の後に、前記スライド装置により前記介助装置を前記回転軸線に接近させる第一スライド工程と、 前記介助装置を回転させて前記介助装置を方向転換させる回転工程と、 前記回転工程の後に、前記スライド装置により前記介助装置を前記移動目標に接近させる第二スライド工程と、 前記介助装置から移動目標に前記被介助者を移乗させる移乗工程と、 を備える介助方法。 【請求項11】 被介助者の移動を介助する移動式の介助装置に適用され、床面に対して垂直な回転軸線を中心とする前記介助装置の方向転換を補助する方向転換補助装置であって、 前記介助装置の少なくとも一部が載置されることにより前記介助装置を支持し、前記介助装置に前記回転軸線を中心とする回転方向に係合する載置台と、 前記床面に対して前記載置台を前記回転軸線周りに回転可能に支持する回転装置と、 を備え、 前記介助装置は、前記床面を転動可能な複数の車輪を備え、 前記介助装置が前記方向転換補助装置から離脱して移動可能な状態で使用される場合は、前記複数の車輪によって前記介助装置の方向転換が行われ、前記介助装置が前記載置台に支持された状態で使用される場合は、少なくとも前記回転装置の回転を利用して前記介助装置の方向転換が行われる方向転換補助装置。」 第4 引用文献の記載事項等 1 引用文献1について 引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審が付与。以下同様。)。 (1)「【技術分野】 【0001】 本発明は移乗補助装置に関する。」 (2)「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 上記特許文献1の装置では、トイレ内で便器を移動させるレールを設置しなければならず、設置工事が大掛かりになるという問題があり、トイレ内のスペースが狭い場合、あるいは一般家庭には設置することができなかった。 【0007】 また、特許文献1の装置は、被介護者が車椅子から立ち上がって手摺りに掴まるため、例えば手と足が不自由な被介護者の場合は、車椅子及び便器を移動させる間に被介護者が倒れてしまうおそれがあった。 【0008】 そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決した移乗補助装置の提供を目的とする。」 (3)「【0041】 〔実施形態2〕 図10は移乗補助装置の実施形態2を示す側面図である。図10に示されるように、実施形態2の移乗補助装置10Aは、ベース20の下面の四隅に車輪300が取り付けられている。また、ベース20の上面には、移動時に押圧操作される搬送用ハンドル310が起立している。搬送用ハンドル310は、金属パイプからなり、被介護者Hが搬送中に掴まる手摺りとしても機能する。 【0042】 移乗補助装置10Aは、ベース20の下面に車輪300が設けられているので、移動時に、搬送用ハンドル310を押圧操作して容易に走行(移動)できる。そのため、上記トイレ以外の場所にも移動することができ、必要とされる場所(例えば、トイレ、病室、風呂場など)に適宜移動して移乗操作を補助することが可能になる。 【0043】 図11は移乗補助装置の実施形態2を用いて被介護者を搬送する場合を示す側面図である。図11に示されるように、移乗補助装置10Aは、被介護者Hが胸部当接部60及び脛部当接部70により体重を支持された前傾姿勢のまま搬送することが可能になる。例えば、緊急時に車椅子やストレッチャーが足りない場合、臨時的な搬送手段として使用することも可能である。」 図10 図11 (4)引用文献1の記載により認められること 上記(3)の【0041】上記(3)の【0042】及び図10の記載によれば、移乗補助装置10Aは、複数の車輪300が設けられることが認められ、移乗補助装置10Aは、被介護者Hを搬送することが認められる。 (5)上記(4)によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「複数の車輪300が設けられ、被介護者Hを搬送する移動補助装置10A。」 2 引用文献2について 引用文献2には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (1)「0001】 【考案の属する技術分野】 本考案はトイレ、更に詳細には足の不自由な者が便座に簡易に腰掛けることができるトイレに関する。」 (2)「【0012】 【考案の実施の形態】 本考案のトイレにおいて、便座前方の床に回転可能に軸支される回転盤は、トイレブース内に入った利用者の向きを転向するためのものであって、その上面が周囲の床面と略同じ高さになるように設けられる。」 (3)「【0017】 本考案のトイレは、図1(a)?(d)に示すように、便座10前方の床に回転可能に設けられる回転テーブル11と、該テーブル11を回転駆動する駆動モーター12と、上記テーブル11上に設けられる手摺13と、上記テーブル11上において退避可能に必要に応じてトイレブースの出入口方向に支持され、上記駆動モーター12によるテーブル11の回転に従って所定円周方向に移動し、便座に対して突合せ状態に転向される股座部材14と、を備えている。尚、トイレブースの壁面には、出入口付近から便座付近にわたって他の手摺15が設けられる。」 図1 (4)引用文献2の記載により認められること 上記(1)及び(2)の記載によれば、「足の不自由な者」と「利用者」は同じ者であるから、トイレは、足の不自由な者である利用者の向きを転向することにより、便座に簡易に腰掛けることができると認められ、図1も参酌すると、上記転向は、床に垂直な回転軸で回転することと認められる。そうすると、引用文献2に記載のトイレは、便座10前方の床に回転可能に設けられる回転テーブル11と、回転テーブル11を回転駆動する駆動モーター12と、回転テーブル11上に設けられる手摺13と、回転テーブル上において退避可能に設けられる股座部材14と、を備えるものであると認められる。 (5)上記(4)によれば、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「床に垂直な回転軸で足の不自由な者である利用者の向きを転向することにより、便座に簡易に腰掛けることができるトイレであって、 便座10前方の床に回転可能に設けられる回転テーブル11と、 回転テーブル11を回転駆動する駆動モーター12と、 回転テーブル11上に設けられる手摺13と、 回転テーブル上において退避可能に設けられる股座部材14と、 を備えるトイレ。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比すると、後者の「車輪100」は、前者の「車輪」に相当し、以下同様に、「被介護者H」は「被介助者」に、「移動補助装置10A」は「介助装置」に、それぞれ相当する。 後者の「車輪100」は、床面上で回転可能であるのは明らかであるから、後者の「複数の車輪300が設けられ」ることは、前者の「床面を転動可能な複数の車輪を備え」ることに相当し、後者の「被介護者Hを搬送する移動補助装置10A」は、前者の「被介助者の移動を介助する移動式の介助装置」に相当する。 そうすると、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。 <一致点> 「床面を転動可能な複数の車輪を備え、被介助者の移動を介助する移動式の介助装置。」 <相違点1> 本願発明1は、介助装置と、「床面に対して垂直な回転軸線を中心とする前記介助装置の方向転換を補助する方向転換補助装置と、を備える介助システムにおいて、」「前記方向転換補助装置は、前記介助装置の少なくとも一部が載置されることにより前記介助装置を支持する載置台と、前記床面に対して前記載置台を前記回転軸線周りに回転可能に支持する回転装置と、を備え、前記介助装置が前記方向転換補助装置から離脱して移動可能な状態で使用される場合は、前記複数の車輪によって前記介助装置の方向転換が行われ、前記介助装置が前記載置台に支持された状態で使用される場合は、少なくとも前記回転装置の回転を利用して前記介助装置の方向転換が行われる介助システム」であるのに対し、引用発明1は、移動補助装置10Aであり、方向転換装置を備える解除システムではない点。 (2)判断 ここで、相違点1について検討する。 引用文献2には、足の不自由な者の向きを転向することにより、便座に簡易に腰掛けることができるトイレが記載されているが、相違点1に係る本願発明1の構成のうち、少なくとも、介助装置が載置されることにより介助装置を支持する載置台を備える方向転換補助装置については記載も示唆もないから、引用発明1に引用文献2に記載された事項を適用しても、相違点1に係る本願発明1の構成とはならない。 また、介助装置が載置されることにより介助装置を支持する載置台を備える方向転換装置が、本願出願前の技術常識又は周知技術であると認めるに足る証拠があるとも認められない。 そして、本願発明1は、上記相違点1の構成により、「このような構成によると、介助装置は、方向転換補助装置によって回転軸線を中心とする方向転換を補助される。これにより、方向転換補助装置が設置された位置において、被介助者が乗り込んだ状態にある介助装置の方向転換が補助され、移動目標の位置に応じた角度の調整が容易となる。また、方向転換補助装置から介助装置を取り外すことによって、移動式の介助装置を他の用途に使用することが可能となる。換言すると、移動式の介助装置を、方向転換補助装置が設置された所定の部屋における特定用途に流用することが可能となる。このような構成により、介助施設の設備コストの増加を抑制できる。」(本願明細書の【0009】)という作用効果を奏するものである。 したがって、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明4,5について 本願発明4,5は、本願発明1の全ての構成を有し、更に構成を限定するものであるから、上記1で説示したのと同様に、引用発明1及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 本願発明6?9について 引用文献3には、電動移乗機が記載されているが、引用文献2と同様に、介助装置が載置されることにより介助装置を支持する載置台を備える方向転換装置については記載も示唆もなく、本願発明6?9は、本願発明1の全ての構成を有し、更に構成を限定するものであるから、上記1で説示したのと同様に、引用発明1及び引用文献2、3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 4 本願発明11について (1)対比 本願発明11と引用発明2とを対比すると、後者の「回転軸」は、前者の「回転軸線」に相当し、以下同様に、「向きを転向すること」は「方向転換を補助する」ことに、「回転テーブル11」は「載置台」に、「駆動モーター12」は「回転装置」に、それぞれ相当する。 後者の「床に垂直な回転軸で足の不自由な者の向きを転向することにより、便座に簡易に腰掛けることができるトイレ」と前者の「被介助者の移動を介助する移動式の介助装置に適用され、床面に対して垂直な回転軸線を中心とする前記介助装置の方向転換を補助する方向転換補助装置」とは、「床面に対して垂直な回転軸線を中心とする方向転換を補助する方向転換補助装置」という点で共通する。 そして、後者の「回転テーブル11」は、床に回転可能に設けられ、その回転軸は床に垂直であるから、後者の「テーブル11を回転駆動する駆動モーター12」は、前者の「前記床面に対して前記載置台を前記回転軸線周りに回転可能に支持する回転装置」に相当する。 そうすると、本願発明11と引用発明2との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。 <一致点> 「床面に対して垂直な回転軸線を中心とする方向転換を補助する方向転換補助装置であって、 載置台と、 前記床面に対して前記載置台を前記回転軸線周りに回転可能に支持する回転装置と、 を備える方向転換補助装置。」 <相違点2> 本願発明11は、方向転換補助装置が、「被介助者の移動を介助する移動式の介助装置に適用され、前記介助装置の方向転換を補助」し、載置台が、「前記介助装置の少なくとも一部が載置されることにより前記介助装置を支持し、前記介助装置に前記回転軸線を中心とする回転方向に係合」し、「前記介助装置は、前記床面を転動可能な複数の車輪を備え、前記介助装置が前記方向転換補助装置から離脱して移動可能な状態で使用される場合は、前記複数の車輪によって前記介助装置の方向転換が行われ、前記介助装置が前記載置台に支持された状態で使用される場合は、少なくとも前記回転装置の回転を利用して前記介助装置の方向転換が行われる」のに対し、引用発明2は、トイレが、「足の不自由な者である利用者の向きを転向することにより、便座に簡易に腰掛けることができ」、回転テーブル11が、「便座10前方の床に回転可能に設けられ」、回転テーブル11上に手摺13と退避可能な股座部材14が設けられる点。 (2)判断 ここで、相違点2について検討する。 引用文献1には、相違点2に係る本願発明11の構成のうち、少なくとも、介助装置が載置されることにより介助装置を支持する載置台を備える方向転換補助装置については記載も示唆もないから、引用発明2に引用文献1に記載された事項を適用しても、相違点2に係る本願発明11の構成とはならない。 そして、本願発明11は、上記相違点2の構成により、「このような構成によると、介助装置は、方向転換補助装置によって回転軸線を中心とする方向転換を補助される。これにより、方向転換補助装置が設置された位置において、被介助者が乗り込んだ状態にある介助装置の方向転換が補助され、移動目標の位置に応じた角度の調整が容易となる。また、方向転換補助装置から介助装置を取り外すことによって、移動式の介助装置を他の用途に使用することが可能となる。換言すると、移動式の介助装置を、方向転換補助装置が設置された所定の部屋における特定用途に流用することが可能となる。このような構成により、介助施設の設備コストの増加を抑制できる。」(本願明細書の【0009】)という作用効果を奏するものである。 したがって、本願発明11は、引用発明2及び引用文献1に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 原査定についての判断 上記第5で説示したとおり、当業者であっても、本願発明1,4,5は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえず、本願発明6?9は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえず、本願発明11は、引用文献2に記載された発明及び引用文献1に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、原査定の拒絶理由は維持できない。 第7 当審拒絶理由について ・特許法第36条第6項第1号について 当審は、請求項2,10には、「前記介助装置および前記方向転換補助装置の少なくとも一方に設けられ、・・・スライド装置」と記載されているところ、発明の詳細な説明において、介助装置及び方向転換補助装置の双方に渡ってスライド装置を設けることは記載されているが、方向転換補助装置のみにスライド装置を設けることは、記載も示唆も見出せず、介助装置のみにスライド装置を設けることが記載又は示唆されているか不明である旨の拒絶理由を通知したが、令和3年7月28日の手続補正により、請求項2,10の上記記載は、「前記介助装置および前記方向転換補助装置の双方に渡って設けられ、・・・スライド装置」と補正され、当該拒絶理由は解消された。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-09-21 |
出願番号 | 特願2019-505573(P2019-505573) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A61G)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 井出 和水 |
特許庁審判長 |
芦原 康裕 |
特許庁審判官 |
八木 誠 藤井 昇 |
発明の名称 | 介助システム、介助方法、および方向転換補助装置 |
代理人 | 特許業務法人 共立 |