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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1378361
審判番号 不服2020-17134  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-14 
確定日 2021-09-24 
事件の表示 特願2016-156285「ゴルフクラブヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月25日出願公開、特開2018- 11913〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成28年8月9日を出願日(優先権主張 平成28年7月8日)とする特願2016-156285号であって,令和2年7月1日付けで拒絶理由が通知され,同年9月3日に意見書及び手続補正書が提出され,同年10月6日付けで拒絶査定(発送日:同月13日,以下「原査定」という。)がなされた。
これに対して同年12月14日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に,手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明1
本願の請求項1ないし8に係る発明は,令和2年12月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであって,そのうち請求項1に係る発明(以下,「本願発明1」という。)は,つぎのとおりのものである。
「【請求項1】
上下の高さを有して左右に延在するフェース面を構成するフェース部と,前記フェース部の上部から後方に延在するクラウン部と,前記フェース部の下部から後方に延在するソール面を構成するソール部と,前記クラウン部と前記ソール部の間で前記フェース部のトウ側縁とヒール側縁との間をフェースバックを通って延在するサイド部とを含むヘッド本体を備え,それらフェース部とクラウン部とソール部とサイド部とで囲まれた内部が中空部であるゴルフクラブヘッドであって,
前記ゴルフクラブヘッドを水平面に対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態において,前記フェース面の中心点を通る法線を含みかつ前記水平面と直交する平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース中心基準断面とし,
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からトウ方向に10mm離れた平面を第1平面とし,
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からヒール方向に10mm離れた平面を第2平面とし,
前記フェース中心基準断面および前記水平面と直交しリーディングエッジからフェースバック方向に50mm離れた平面を第3平面としたとき,
前記第1平面と前記第2平面と前記第3平面とで囲まれた前記ソール部の部分に,前記リーディングエッジから前記フェースバック方向に向かって第1低剛性エリア,第2低剛性エリア,高剛性エリアが形成され,
前記第1低剛性エリアの肉厚d1が前記第2低剛性エリアの肉厚d2より大きく,かつ,前記高剛性エリアの肉厚d3が前記第1低剛性エリアの肉厚d1以上であり,
前記フェース中心基準断面と平行する任意の平面で前記ヘッド本体を破断したフェース基準断面において,
前記フェース面の反対側に位置するフェース裏面と前記ソール面の反対側に位置するソール裏面との境界点である第1境界点を通り前記水平面と直交する直線を第1基準線L1とし,
前記第1低剛性エリアと前記第2低剛性エリアとの境界点である第2境界点を通り前記水平面と直交する直線を第2基準線L2とし,
前記第2低剛性エリアと前記高剛性エリアとの境界点である第3境界点を通り前記水平面と直交する直線を第3基準線L3としたとき,
前記第1低剛性エリアは,前記第1基準線L1から前記フェースバック方向に3mmまでの範囲に少なくとも位置し,
前記第2低剛性エリアは,前記第2基準線L2から前記フェースバック方向に3mmまでの範囲に少なくとも位置し,
前記高剛性エリアは,前記第3基準線L3から前記フェースバック方向に3mmまでの範囲に少なくとも位置し,
前記第1低剛性エリアの肉厚d1の加重平均値Δd1と,前記第2低剛性エリアの肉厚d2の加重平均値Δd2と,前記高剛性エリアの肉厚d3の加重平均値Δd3とは以下の関係式(1),(2)を満たし,
0.5≦(Δd2/Δd1)<1 (1)
1≦(Δd3/Δd1) (2)
前記第1低剛性エリアの肉厚d1の加重平均値Δd1は1.0mm以上2.0mm以下であり,
前記第2低剛性エリアの肉厚d2の加重平均値Δd2は0.5mm以上1.0mm以下であり,
前記高剛性エリアの肉厚d3の加重平均値Δd3は1.5mm以上10mm以下であり,
前記第1低剛性エリアの肉厚d1は0.7mm以上2.0mm以下であり,
前記第2低剛性エリアの肉厚d2は0.3mm以上1.2mm以下であり,
前記高剛性エリアの肉厚d3は1.5mm以上10mm以下である,
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。」

第3 原査定の拒絶の理由
拒絶査定の理由である,令和2年7月1日付け拒絶理由通知の理由は,次のとおりのものである。
1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

●理由1(新規性),理由2(進歩性)について
・請求項 1,4-6
・引用文献等 1
●理由2(進歩性)について
・請求項 1-8
・引用文献等 1-5

<引用文献等一覧>
1.特許第5848840号公報
2.特許第5852717号公報
3.特許第5842904号公報
4.特開2004-041376号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2009-273579号公報(周知技術を示す文献)

第4 新規性についての当審の判断
1 引用例
(1)引用例1
本願の優先日前の平成28年1月27日に公報が発行され,原査定の拒絶の理由に引用された特許第5848840号公報(以下「引用例1」という。)には,次の事項が記載されている。
ア 「【0013】
<1.ゴルフクラブヘッドの概要>
図1に示すように,本実施形態に係るゴルフクラブヘッド(以下,単に「ヘッド」ということがある)は,中空構造であり,フェース部1,クラウン部2,ソール部3,サイド部4,及びホーゼル部5によって壁面が形成されたウッド型のゴルフクラブヘッドである。
【0014】
フェース部1は,ボールを打撃する面であり,クラウン部2はフェース部1と隣接し,ヘッドの上面を構成する。ソール部3は,ヘッドの底面を構成し,フェース部1及びサイド部4と隣接する。そして,ソール部3には,ウエイト部材(図示省略)が配置されている。また,サイド部4は,クラウン部2とソール部3との間の部位であり,フェース部1のトウ側からヘッドのバック側を通りフェース部1のヒール側へと延びる部位である。さらに,ホーゼル部5は,クラウン部2のヒール側に隣接して設けられる部位であり,ゴルフクラブのシャフト(図示省略)が挿入される挿入孔51を有している。そして,この挿入孔51の中心軸線Zは,シャフトの軸線に一致している。
【0015】
ここで,上述した基準状態について説明する。まず,図2に示すように,上記中心軸線Zが水平面H(設置面,図5参照)に対して垂直な平面P1に含まれ,且つ所定のライ角及びリアルロフト角で水平面H上にヘッドが載置された状態を基準状態と規定する。そして,上記平面P1を基準垂直面P1と称する。また,図2に示すように,上記基準垂直面P1と上記水平面Hとの交線の方向をトウ-ヒール方向と称し,このトウ-ヒール方向に対して垂直であり且つ上記水平面Hに対して平行な方向をフェース-バック方向と称することとする。
【0016】
本実施形態において,クラウン部2とサイド部4との境界は次のように定義することができる。すなわち,クラウン部2とサイド部4との間に稜線が形成されている場合には,これが境界となる。これに対して,明確な稜線が形成されていない場合には,ヘッドを基準状態に設置し,これをヘッドの重心の真上から見たときの輪郭が境界となる。また,クラウン部2とフェース部1との境界についても,同様であり,稜線が形成されている場合には,これが境界となる。一方,明確な稜線が形成されていない場合には,例えば,図3(a)に示されるように,ヘッド重心GとスイートスポットSSとを結ぶ直線Nを含む各断面E1,E2,E3…において,図3(b)に示されるように,フェース外面輪郭線Lfの曲率半径rがスイートスポット側からフェース外側に向かって初めて200mmとなる位置Peがフェース部1の周縁(境界)として定義される。なお,スイートスポットSSとは,ヘッド重心Gを通るフェース面の法線(直線N)とこのフェース面との交点である。」
イ 「【0021】
<3.フェース用部材の構造>
次に,図5を参照しつつ,フェース用部材20の周縁部12について説明する。図5は,図2のA-A線断面図,つまりフェースのセンターを通る垂直面(上述した水平面Hに垂直な面,以下同じ)に沿う断面である。フェースのセンターは,フェース部1内の点であり,その点からフェース部1の最もトウ側の位置までの水平長さと,その点からフェース部1の最もヒール側の位置までの水平長さとが等しく,かつ,その点から,フェース部1の最も上側の位置までの上下方向長さと,その点から最もフェース部1の下側の位置までの上下方向長さとが等しくなるという条件を満たすものとして定義される。上記のように,フェース用部材20は,フェース部1及びその周縁から延びる周縁部12を有するカップ状に形成されている。そして,周縁部12のうち,ヘッド本体10のクラウン部2に接合される周縁部の幅K1,つまりフェース部1からの突出長さは,3?8mmであることが好ましく,4?7mmであることがさらに好ましい。
【0022】
一方,周縁部のうち,ヘッド本体10のソール部3に接合される周縁部の幅K2は,8mmより大きく15mm以下であることが好ましく,9?12mmであることがさらに好ましい。以下では,周縁部12のうち,クラウン部2に接合される部分を第1周縁領域121,ソール部3に接合される部分を第2周縁領域122と称することとする。また,第1周縁領域121及び第2周縁領域122の幅K1,K2は,上述したフェースのセンターを通過する垂直面で切断した場合の,フェース-バック方向の長さで測定することとする。
【0023】
上記のように,本実施形態では,第2周縁領域122の幅K2が,第1周縁領域121の幅K1よりも大きいのであるが,特に,1.6倍より大きいことが好ましく,1.8倍以上であることがさらに好ましい。」
ウ 「【0024】
<5.ソール部の構造>
続いて,図6も参照しつつ,ソール部3について説明する。図6は,ソール部の内壁面を透過した平面図である。図5及び図6に示すように,ソール部3は,フェース用部材20の周縁部12と接合する接合部31と,そのバック側に配置される厚肉部32と,を備えている。また,ソール部3には,先端厚肉部32と,中央薄肉部33とを囲むように配置された周縁厚肉部34が設けられ,さらにこの周縁厚肉部34を囲むように周縁薄肉部35が配置されている。また,周縁厚肉部34上には,上述したウエイト部材を配置する凹部36が配置されている。
【0025】
接合部31の肉厚は,フェース用部材20の周縁部12の端面の肉厚と概ね同じ,例えば,0.7?1.5mmとすることができる。この点は,サイド部4及びクラウン部2も同じである。そして,接合部31のフェース-バック方向の幅Yは,10mm以下であることが好ましく,5mm以下であることがさらに好ましい。これは,接合部の長さYが長すぎると,先端厚肉部32がよりバック側に配置されてしまい,重心がバック側にずれるおそれがあることによる。特に,重心がバック側にずれると,SS(スィート・スポット)高さが高くなってしまい,ボールの打ち出し角度が低くなってしまう。反対に,接合部の長さYが短すぎると溶接が困難となるため,幅Yは2.5mm以上が好ましい。
【0026】
先端厚肉部32は,接合部31よりも肉厚が大きく,断面矩形状に形成されており,ソール部3のトゥ-ヒール方向に延びるように形成されている。また,この先端厚肉部32には,ソール部3に投影されるヘッドの重心Gが位置する。そして,先端厚肉部32のソール部3の下面からの高さF1は,2.5?8.0mmであることが好ましく,3.0?8.0mmであることがさらに好ましい。また,先端厚肉部32の接合部31の端部を起点とする幅F2は,10?30mmであることが好ましく,15?25mmであることがさらに好ましい。このときの幅F2は,最大の長さとし,例えば,先端厚肉部32の断面形状が台形のときは,下辺の長さとする。また,先端厚肉部32の幅F2に対する高さF1の割合F2/F1は,例えば,1.25?10.0であることが好ましく,3.0?8.0であることがさらに好ましい。なお,上記の寸法F1,F2,Yは,上述したヘッド本体10をフェースのセンターを通る垂直面で切断した場合の,フェース-バック方向の長さで測定するものとする。」
エ 「【0038】
<8.3>
上記実施形態では,例えば,図5に示すように,フェース用部材20の周縁部12の肉厚と,ヘッド本体10の開口の端面の肉厚を同じにしているが,これを変更することもできる。例えば,周縁部12の肉厚を,開口の端面の肉厚よりも大きくすることができる。」
オ 図5及び図6から,第2周縁領域122及び接合部31はソール部3のトゥ-ヒール方向の全幅に亘って設けられていることが看て取れる。
カ 図6から,先端厚肉部32はソール部3のトゥ-ヒール方向の中央部に約半分の領域に設けられていることが看て取れる。
キ 図5及び図6から,第2周縁領域122,接合部31,先端厚肉部32は,ソール部3のフェースバック方向に連続していることが看て取れる。
また、第2周縁領域122はフェース面の下端である「リーディングエッジ」から、接合部31との接合面までの領域であり、接合部31は第2周縁領域122と接合部31との接合面から先端厚肉部32までの領域であることも看て取れる。
ク 段落【0021】,【0022】及び【図5】から,第2周縁領域122のフェース-バック方向の長さである幅K2は,フェース部1からの突出長さである。
また、幅K2は、フェース面の下端を水平面に投影した箇所から、接合部31との接合面までの長さである。
ケ 段落【0025】,【0026】及び【図5】から,接合部31のフェース-バック方向の長さである幅Yは,第2周縁領域122との接合面から先端厚肉部32の接合部31側の端部までの長さである。
コ 段落【0026】及び【図5】から,先端厚肉部32の接合部31の端部を起点とする幅F2は,先端厚肉部32の最大の長さとし,先端厚肉部32の断面形状が台形のときは,下辺の長さとなる。
サ 段落【0021】,【0022】、【0026】から,K2、Y、F2の長さは,フェース部1の最もトウ側の位置までの水平長さと,その点からフェース部1の最もヒール側の位置までの水平長さとが等しく,かつ,その点から,フェース部1の最も上側の位置までの上下方向長さと,その点から最もフェース部1の下側の位置までの上下方向長さとが等しくなるという条件を満たすフェースのセンターを通る前記水平面Hに垂直な面である垂直面に沿う断面の,フェース-バック方向の長さとして測定されたものである。
シ 段落【0026】から、先端厚肉部32は接合部31よりも肉厚が大きく設定されているものといえる。段落【0038】には、周縁部12の肉厚は開口の端面の肉厚よりも大きく設定できることが記載されているところ、ここでの周縁部12とは第2周縁領域122のこと、開口の端面とは接合部31のことであるから、第2周縁領域122の肉厚は接合部31の肉厚よりも大きく設定できることが理解できる。さらに、先端厚肉部32は第2周縁領域122及び接合部31の肉厚より大きく設定されることは明らかであるから、第2周縁領域122の肉厚が接合部31の肉厚より大きく,かつ,先端厚肉部32が第2周縁領域122の肉厚以上であるといえる。
上記ア乃至シの事項より,引用例1には,次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「フェース部1,クラウン部2,ソール部3,サイド部4,及びホーゼル部5によって壁面が形成された中空構造のゴルフクラブヘッドであって,
クラウン部2はフェース部1と隣接し,ヘッドの上面を構成し,
ソール部3はフェース部1及びサイド部4と隣接し,ヘッドの底面を構成するとともにウエイト部材が配置されており,
サイド部4は,クラウン部2とソール部3との間の部位であり,フェース部1のトウ側からヘッドのバック側を通りフェース部1のヒール側へと延びる部位であり,
ホーゼル部5は,クラウン部2のヒール側に隣接して設けられる部位であり,ゴルフクラブのシャフトが挿入される挿入孔51を有しているとともに,該挿入孔51の中心軸線Zは,シャフトの軸線に一致しており,
フェース用部材20は,フェース部1及びその周縁から延びる周縁部12を有するカップ状に形成され,前記周縁部12のうち,第2周縁領域122は,ヘッド本体のソール部3が備える接合部31の接合面と接合するリーディングエッジから接合部31との接合面までの領域であり、 前記接合部31は、第2周縁領域122との接合面から先端厚肉部32までの領域であり、
第2周縁領域122及び接合部31はソール部3のトゥ-ヒール方向の全幅に亘って設けられ,先端厚肉部32はソール部3のトゥ-ヒール方向の中央部に約半分の領域に設けられ,第2周縁領域122,接合部31,先端厚肉部32は,ソール部3のフェースバック方向に連続して設けられており,
前記中心軸線Zが水平面Hに対して垂直な平面P1に含まれ,且つ所定のライ角及びリアルロフト角で水平面H上にヘッドが載置された状態を基準状態と規定して,フェースのセンターを通る垂直面である,水平面Hに垂直な面に沿う断面を有し,
フェース面の下端を水平面に投影した箇所から、接合部31との接合面までの長さである第2周縁領域122の幅K2は,8mmより大きく15mm以下であることが好ましく,
第2周縁領域122との接合面から先端厚肉部32の接合部31の端部までの長さである接合部31の幅Yは,10mm以下2.5mm以上が好ましく,
先端厚肉部32の接合部31の端部を起点とする幅F2は,10?30mmであることが好ましく,
第2周縁領域122の肉厚が接合部31の肉厚より大きく,かつ,先端厚肉部32が第2周縁領域122の肉厚以上に設定され,
接合部31の肉厚は,0.7?1.5mmとすることができ,
先端厚肉部32のソール部3の下面からの肉厚である高さF1は,2.5?8.0mmであることが好ましいゴルフクラブヘッド。」

2 対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「フェース部1」は,上下の高さを有して左右に延在するフェース面を構成していることは明らかであるから,本願発明1の「フェース部」に相当する。
引用発明1の「クラウン部2」は,「フェース部1と隣接し,ヘッドの上面を構成」するものであって,フェース部の上部から後方に延在していることは明らかであるから,本願発明1の「クラウン部」に相当する。
引用発明1の「ソール部3」は,「フェース部1(及びサイド部4)と隣接し,ヘッドの底面を構成」するものであって,フェース部の下部から後方に延在するソール面を構成していることは明らかであるから,本願発明1の「ソール部」に相当する。
引用発明1の「サイド部4」は,クラウン部2とソール部3との間の部位であり,フェース部1のトウ側からヘッドのバック側を通りフェース部1のヒール側へと延びる部位であって,クラウン部とソール部の間でフェース部のトウ側縁とヒール側縁との間をフェースバックを通って延在するといえるから,本願発明1の「サイド部」に相当する。
引用発明1の「フェース部1,クラウン部2,ソール部3,サイド部4,及びホーゼル部5によって壁面が形成された中空構造のゴルフクラブヘッド」は,「ホーゼル部5」が,「クラウン部2のヒール側に隣接して設けられる部位」であることを勘案すると,本願発明1の「フェース部とクラウン部とソール部とサイド部とで囲まれた内部が中空部であるゴルフクラブヘッド」に相当する。
引用発明1の「前記中心軸線Zが水平面Hに対して垂直な平面P1に含まれ,且つ所定のライ角及びリアルロフト角で水平面H上にヘッドが載置された状態を基準状態」は,ゴルフクラブを載置する状態を規定する基準の状態である点において,本願発明1の「ゴルフクラブヘッドを水平面に対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態」に相当する。
引用発明1の「フェースのセンターを通る垂直面である,水平面Hに垂直な面に沿う断面」は,本願発明1の「フェース面の中心点を通る法線を含みかつ前記水平面と直交する平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース中心基準断面」に相当する。
引用発明1の「第2周縁領域122」は,リーディングエッジから接合部31との接合面までの領域であり、ソール部3のフェースバック方向に連続して設けられている、第2周縁領域122,接合部31,先端厚肉部32のうち,もっともフェース部寄りの領域である。また、その厚さは先端肉厚部32に比べて薄いことに照らせば、当該領域の剛性は低いと考えられ、本願発明1の「第1低剛性エリア」に相当する。
引用発明1の「接合部31」は,ソール部3のフェースバック方向に連続して設けられている、第2周縁領域122,接合部31,先端厚肉部32のうち、第2周縁領域122と先端厚肉部32とに挟まれた領域である。また、その厚さは先端肉厚部32に比べて薄いことに照らせば、当該領域の剛性は低いと考えられ、本願発明1の「第2低剛性エリア」に相当する。
引用発明1の「先端厚肉部32」は,ソール部3のフェースバック方向に連続して設けられている、第2周縁領域122,接合部31,先端厚肉部32のうち、もっともフェース部から離れた領域である。また、その厚さは、他の2つの領域に比べて厚いことに照らせば、当該領域の剛性は高いと考えられ、本願発明1の「高剛性エリア」に相当する。
引用発明1の「第2周縁領域122,接合部31,先端厚肉部32は,ソール部3のフェースバック方向に連続して設け」られていることは、本願発明1の「前記ソール部の部分に,前記リーディングエッジから前記フェースバック方向に向かって第1低剛性エリア,第2低剛性エリア,高剛性エリアが形成され」ていることに相当する。
引用発明1において,第2周縁領域122の幅K2は「8mmより大きく15mm以下」の数値範囲内の数値を取り得るものである。
そして、引用発明1において、本願発明1の「第1境界点」及び「第1基準線L1」に相当する「点」及び「線」について明記はないが、引用発明1にそのような「点」及び「線」を設定することは可能であり、フェースの板厚を勘案しても、引用発明1の「第2周縁領域122」は,該「線」からフェースバック方向に3mmまでの範囲に少なくとも位置するものを含んでいることは明らかである。
したがって、引用発明1は,本願発明1の「第1低剛性エリアは,前記第1基準線L1から前記フェースバック方向に3mmまでの範囲に少なくとも位置し」に相当する構成を有しているといえる。
引用発明1において,接合部31の幅Yは「10mm以下,2.5mm以上」の数値範囲内の数値を取り得るものである。
そして、引用発明1において、本願発明1の「第2境界点」及び「第2基準線L2」に相当する「点」及び「線」について明記はないが、引用発明1の「ヘッド本体のソール部3が備える接合部31の接合面」は、第2周縁領域122と接合部31との境界点であることに照らせば、本願発明1の「第2境界点」に相当することは明らかであるから、引用発明1にそのような「点」及び「線」を設定することは可能であり、引用発明1の接合部31は,該「線」からフェースバック方向に3mmまでの範囲に少なくとも位置するものを含んでいることは明らかである。
したがって、引用発明1は,本願発明1の「第2低剛性エリアは,前記第2基準線L2から前記フェースバック方向に3mmまでの範囲に少なくとも位置し」に相当する構成を有しているといえる。
引用発明1において,先端厚肉部32の幅F2は「10?30mm」の数値範囲内の数値を取り得るものである。
そして、引用発明1において、本願発明1の「第3境界点」及び「第3基準線L3」に相当する「点」及び「線」について明記はないが、引用発明1の先端厚肉部32の幅F2の起点である「接合部31の端部」は、接合部31と先端厚肉部32との境界点であることに照らせば、本願発明1の「第3境界点」に相当することは明らかであるから、引用発明1にそのような「点」及び「線」を設定することは可能であり、引用発明1の先端厚肉部32は,該「線」からフェースバック方向に3mmまでの範囲に少なくとも位置するものを含んでいることは明らかである。
したがって、引用発明1は,本願発明1の「高剛性エリアは,前記第3基準線L3から前記フェースバック方向に3mmまでの範囲に少なくとも位置し」に相当する構成を有しているといえる。
引用発明1において,「先端厚肉部32のソール部3の下面からの高さF1」は,「先端厚肉部32の肉厚」のことであって,「2.5?8.0mm」の数値範囲内の数値を取り得るのであるから,引用発明1の「先端厚肉部32の肉厚」は,「1.5mm以上10mm以下」の数値範囲のうちの「2.5?8.0mm」の範囲で重複していることになる。したがって,引用発明1は,本願発明1の「高剛性エリアの肉厚d3は1.5mm以上10mm以下のうちの2.5?8.0mm」に相当する構成を有しているといえる。
引用発明1において,「接合部31の肉厚」は,「0.7?1.5mm」の数値範囲内の数値を取り得るのであるから,引用発明1の「接合部31の肉厚」は,「0.3mm以上1.2mm以下」の数値範囲のうちの「0.7?1.2mm」の範囲で重複していることになる。したがって,引用発明1は,本願発明1の「第2低剛性エリアの肉厚d2は0.3mm以上1.2mm以下のうちの0.7?1.2mm」に相当する構成を有しているといえる。
引用発明1において,「接合部31の肉厚」が,「0.7?1.5mm」の数値範囲内の数値を取り得るのであるから,「接合部31の肉厚」より大きいという条件を満たした上で,「第2周縁領域122の肉厚」は,「0.7mm<第2周縁領域122の肉厚」?「1.5mm<第2周縁領域122の肉厚」の数値範囲内の数値を取り得ることになる。したがって,引用発明1は,本願発明1の「第1低剛性エリアの肉厚d1は0.7mm以上2.0mm以下のうちの0.7mm?1.2mm(但し,接合部31の肉厚が0.7mmの場合は,0.7mmを含まずに超え,接合部31の肉厚が1.2mmの場合は1.2mmを含まずに超える)」に相当する構成を有しているといえる。
引用発明1の「第2周縁領域122の肉厚が接合部31の肉厚より大きく,かつ,先端厚肉部32が第2周縁領域122の肉厚以上に設定」されていることは、本願発明1の「前記第1低剛性エリアの肉厚d1が前記第2低剛性エリアの肉厚d2より大きく,かつ,前記高剛性エリアの肉厚d3が前記第1低剛性エリアの肉厚d1以上」であることに相当する。
したがって,両者は,
「上下の高さを有して左右に延在するフェース面を構成するフェース部と,前記フェース部の上部から後方に延在するクラウン部と,前記フェース部の下部から後方に延在するソール面を構成するソール部と,前記クラウン部と前記ソール部の間で前記フェース部のトウ側縁とヒール側縁との間をフェースバックを通って延在するサイド部とを含むヘッド本体を備え,それらフェース部とクラウン部とソール部とサイド部とで囲まれた内部が中空部であるゴルフクラブヘッドであって,
前記ゴルフクラブヘッドを水平面に対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態において,前記フェース面の中心点を通る法線を含みかつ前記水平面と直交する平面で前記ヘッド本体を破断した断面をフェース中心基準断面とし,
前記ソール部の部分に,リーディングエッジからフェースバック方向に向かって第1低剛性エリア,第2低剛性エリア,高剛性エリアが形成され,
前記第1低剛性エリアの肉厚d1が前記第2低剛性エリアの肉厚d2より大きく,かつ,前記高剛性エリアの肉厚d3が前記第1低剛性エリアの肉厚d1以上であり,
前記フェース中心基準断面と平行する任意の平面で前記ヘッド本体を破断したフェース基準断面において,
前記フェース面の反対側に位置するフェース裏面と前記ソール面の反対側に位置するソール裏面との境界点である第1境界点を通り前記水平面と直交する直線を第1基準線L1とし,
前記第1低剛性エリアと前記第2低剛性エリアとの境界点である第2境界点を通り前記水平面と直交する直線を第2基準線L2とし,
前記第2低剛性エリアと前記高剛性エリアとの境界点である第3境界点を通り前記水平面と直交する直線を第3基準線L3としたとき,
前記第1低剛性エリアは,前記第1基準線L1から前記フェースバック方向に3mmまでの範囲に少なくとも位置し,
前記第2低剛性エリアは,前記第2基準線L2から前記フェースバック方向に3mmまでの範囲に少なくとも位置し,
前記高剛性エリアは,前記第3基準線L3から前記フェースバック方向に3mmまでの範囲に少なくとも位置し,
前記第1低剛性エリアの肉厚d1は0.7mm?1.5mm(但し,接合部31の肉厚が0.7mmの場合は,0.7mmを含まずに超え,接合部31の肉厚が1.5mmの場合は1.5mmを含まずに超える)であり,
前記第2低剛性エリアの肉厚d2は0.7?1.2mmであり,
前記高剛性エリアの肉厚d3は2.5?8.0mmである,
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。」
の点で一致し,以下の点で,相違する。
[相違点]
相違点1
本願発明1は「前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からトウ方向に10mm離れた平面を第1平面とし,
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からヒール方向に10mm離れた平面を第2平面とし,
前記フェース中心基準断面および前記水平面と直交しリーディングエッジからフェースバック方向に50mm離れた平面を第3平面としたとき,
前記第1平面と前記第2平面と前記第3平面とで囲まれた前記ソール部の部分に,前記リーディングエッジから前記フェースバック方向に向かって第1低剛性エリア,第2低剛性エリア,高剛性エリアが形成」されているのに対して,引用発明1は「第1低剛性エリア,第2低剛性エリア,高剛性エリア」に相当するエリアを備え,「第1ないし第3平面」に相当する平面を画定することも可能であるといえるが,各エリアと第1ないし第3平面との関係が不明である点。

相違点2
本願発明1は「前記第1低剛性エリアの肉厚d1の加重平均値Δd1と,前記第2低剛性エリアの肉厚d2の加重平均値Δd2と,前記高剛性エリアの肉厚d3の加重平均値Δd3とは以下の関係式(1),(2)を満たし,
0.5≦(Δd2/Δd1)<1 (1)
1≦(Δd3/Δd1) (2)
前記第1低剛性エリアの肉厚d1の加重平均値Δd1は1.0mm以上2.0mm以下であり,
前記第2低剛性エリアの肉厚d2の加重平均値Δd2は0.5mm以上1.0mm以下であり,
前記高剛性エリアの肉厚d3の加重平均値Δd3は1.5mm以上10mm以下」であるのに対して,引用発明1における第2周縁領域122,接合部31,先端厚肉部32の各肉厚の加重平均値は不明であり,各肉厚の加重平均値から導き出される関係式を満たすかどうかについても不明である点。

3 判断
上記相違点について,以下,検討する。
(1)相違点1について
引用発明1の第2周縁領域122及び接合部31はソール部3のトゥ-ヒール方向の全幅に亘って設けられ,先端厚肉部32はソール部3のトゥ-ヒール方向の中央部に約半分の領域に設けられている。
ここで,一般的なゴルフクラブヘッドのソール部3のトゥ-ヒール方向の幅に鑑みるに,第2周縁領域122,接合部31,先端厚肉部32は,本願発明1のフェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からトウ方向に10mm離れた平面である「第1平面」と,フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からヒール方向に10mm離れた平面である「第2平面」に囲まれていることは明らかである。
また,第2周縁領域122,接合部31,先端厚肉部32は,フェースバック方向の幅として,それぞれ「8mmより大きく15mm以下」,「10mm以下,2.5mm以上」,「10?30mm」の数値範囲内の数値を取り得るものであるから,第2周縁領域122,接合部31,先端厚肉部32のフェースバック方向の幅の合計として「50mm」以内の数値とすることを含んでいるから,フェース中心基準断面および前記水平面と直交しリーディングエッジからフェースバック方向に50mm離れた平面である「第3平面」に囲まれていることも明らかである。
したがって,引用発明1は,相違点1に係る本願発明1の発明特定事項の全てを備えているといえるから,相違点1は実質的な相違点ではない。
(2)相違点2について
本願発明1における「肉厚の加重平均値」とは,令和2年12月14日付け審判請求書によれば「フェース基準断面における各エリアの実際の肉厚をその長さで重み付けした値である」である。
ここで,一般的なゴルフクラブヘッドのソール部3において,各エリアにおける「肉厚」に極端に変化がないことに照らせば,あるエリアの「肉厚の加重平均値」は,「各エリアの肉厚」と大差がないものと認められる。
したがって,引用発明1において「第2周縁領域122,接合部31,先端厚肉部32」の各肉厚の加重平均値も,各領域の肉厚の値と大差がないものと解される。
そして,引用発明1の各領域の取り得る数値範囲は,「第2周縁領域122の肉厚は0.7mm?1.2mm(但し,接合部31の肉厚が0.7mmの場合は,0.7mmを含まずに超え,接合部31の肉厚が1.2mmの場合は1.2mmを含まずに超える)」,「接合部31の肉厚は0.7?1.2mm」,「先端厚肉部32の肉厚は2.5?8.0mm」であるから,引用発明1は,相違点2に係る発明特定事項によって特定される関係式(1),(2)を満たすような数値範囲内の数値を含むものである。
したがって,引用発明1は,相違点2に係る本願発明1の発明特定事項の全てを備えているといえるから,相違点2は実質的な相違点ではない。
してみると,本願発明1と引用発明1との間に相違するところはないから,本願発明1は,引用文献1に記載された発明に該当する。

4 小括
以上検討したとおり,本願発明1は,本願出願の出願前に出願公開された引用文献に記載された発明であって,特許法第29条第1項第3号に該当する発明であるから,特許を受けることができない。

第5 進歩性についての当審の判断
1 本願発明1,引用発明,本願発明1と引用発明との一致点及び相違点について
本願発明1,引用発明,本願発明1と引用発明との一致点及び相違点については,上記「第4 新規性についての当審の判断」で検討したとおりであって,相違点は以下のとおりである。
[相違点]
相違点1
本願発明1は「前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からトウ方向に10mm離れた平面を第1平面とし,
前記フェース中心基準断面と平行し前記フェース中心基準断面からヒール方向に10mm離れた平面を第2平面とし,
前記フェース中心基準断面および前記水平面と直交しリーディングエッジからフェースバック方向に50mm離れた平面を第3平面としたとき,
前記第1平面と前記第2平面と前記第3平面とで囲まれた前記ソール部の部分に,前記リーディングエッジから前記フェースバック方向に向かって第1低剛性エリア,第2低剛性エリア,高剛性エリアが形成」されているのに対して,引用発明1は「第1低剛性エリア,第2低剛性エリア,高剛性エリア」に相当するエリアを備え,「第1ないし第3平面」に相当する平面を画定することも可能であるといえるが,各エリアと第1ないし第3平面との関係が不明である点。
相違点2
本願発明1は「前記第1低剛性エリアの肉厚d1の加重平均値Δd1と,前記第2低剛性エリアの肉厚d2の加重平均値Δd2と,前記高剛性エリアの肉厚d3の加重平均値Δd3とは以下の関係式(1),(2)を満たし,
0.5≦(Δd2/Δd1)<1 (1)
1≦(Δd3/Δd1) (2)
前記第1低剛性エリアの肉厚d1の加重平均値Δd1は1.0mm以上2.0mm以下であり,
前記第2低剛性エリアの肉厚d2の加重平均値Δd2は0.5mm以上1.0mm以下であり,
前記高剛性エリアの肉厚d3の加重平均値Δd3は1.5mm以上10mm以下」であるのに対して,引用発明1における第2周縁領域122,接合部31,先端厚肉部32の各肉厚の加重平均値は不明であり,各肉厚の加重平均値から導き出される関係式を満たすかどうかについても不明である点。

2 判断
上記相違点について,以下,検討する。
(1)相違点1について
本願発明1は,「前記第1平面と前記第2平面と前記第3平面とで囲まれた前記ソール部の部分に,前記リーディングエッジから前記フェースバック方向に向かって第1低剛性エリア,第2低剛性エリア,高剛性エリアが形成」されていることを特定し,必ずしも「前記第1平面と前記第2平面と前記第3平面とで囲まれた前記ソール部の部分」にのみ「第1低剛性エリア,第2低剛性エリア,高剛性エリアが形成」されていることを特定するものではないが,かりに「のみ」に設けられていることを特定しているとしても,引用発明1の「第2周縁領域122,接合部31,先端厚肉部32」を,上記のような平面に囲まれたソールの部分にのみ設けるようにすることは,当業者が適宜なし得る程度の設計的事項にすぎない。
したがって,本願発明1は,引用発明1において,相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは,当業者が適宜なし得る程度のことであるといえる。

(2)相違点2について
引用発明1は,相違点2に係る発明特定事項によって特定される関係式(1),(2)を満たすような数値範囲内の数値を含むものであること,及び「エリアの肉厚の加重平均値」は,「エリアの肉厚」と大差がないものと認められることについては,上記「第4 新規性についての当審の判断」,「3 判断」で検討したとおりである。
まず,本願発明1の式(2)について検討する。
本願発明1の式(2)である「1≦(Δd3/Δd1)」は,単に「高剛性エリアの肉厚d3の加重平均値Δd3」が「第1低剛性エリアの肉厚d1の加重平均値Δd1」と等しいか,より大きいことを表しているものである。
そして,引用発明1は「第2周縁領域122の肉厚が接合部31の肉厚より大きく,かつ,先端厚肉部32が第2周縁領域122の肉厚以上に設定」される,つまり,先端厚肉部32の肉厚が第2周縁領域122の肉厚よりも大きいことを特定しているから,「先端厚肉部32の肉厚の加重平均値」が「第2周縁領域122の肉厚の加重平均値」より大きいと解され,本願発明1の式(2)は,実質的に引用発明1に記載されているといえる。
本願発明1の式(1)について検討する。
本願発明1の式(1)である「0.5≦(Δd2/Δd1)<1」は,「第1低剛性エリアの肉厚d1の加重平均値Δd1」は,「第2低剛性エリアの肉厚d2の加重平均値Δd2」よりも大きく,「第1低剛性エリアの肉厚d1の加重平均値Δd1」は,「第2低剛性エリアの肉厚d2の加重平均値Δd2」の2倍を超えないことを表しているものである。
上述のとおり,「エリアの肉厚の加重平均値」は,「エリアの肉厚」と大差がないものと認められ,第2周縁領域122の肉厚が接合部31の肉厚よりも大きいことを特定している引用発明1においても,「第2周縁領域122の肉厚の加重平均値」は,「接合部31の肉厚の加重平均値」よりも大きいと解される。
また,「第2周縁領域122の肉厚の加重平均値」と「接合部31の肉厚の加重平均値」の差をどの程度にするかは,前者が後者の2倍を超えないことにより,格別の作用効果が生じていないことに照らせば,当業者が適宜定める程度の設計的事項にすぎない。
したがって,本願発明1は,引用発明1において,相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは,当業者が適宜なし得る程度のことであるといえる。

そして,本願発明1の発明特定事項全体によって奏される作用効果も,引用発明1から,当業者が予測し得る程度のものである。

3 小括
したがって,本願発明1は,引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから,本願発明1は,本願出願の出願前に出願公開された引用文献に記載された発明であって,特許法第29条第1項第3号に該当する発明であるから,特許を受けることができない。
また,本願発明1は,引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-06-15 
結審通知日 2021-06-22 
審決日 2021-08-03 
出願番号 特願2016-156285(P2016-156285)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
P 1 8・ 113- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東 芳隆  
特許庁審判長 藤本 義仁
特許庁審判官 吉村 尚
藤田 年彦
発明の名称 ゴルフクラブヘッド  
代理人 野田 茂  
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