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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16L
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 F16L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1378366
審判番号 不服2020-6930  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-21 
確定日 2021-09-22 
事件の表示 特願2015-227116号「改良されたボールベアリングを備えるクイックカップリング」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月30日出願公開、特開2016-99006号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年11月19日(パリ条約による優先権主張 2014年11月19日 (EP)欧州特許庁)の出願であって、令和1年9月10日付けで拒絶理由が通知され、令和1年12月12日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和1年12月18日付けで拒絶査定がされ、その後、令和2年5月21日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 令和2年5月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年5月21日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。

「【請求項1】
雌型スクリューカップリングであって、ボール本体(ball body)(11’)を備える第一ブロック(10’)と、雄型カップリングに流体連結するための前記第一ブロック(10’)内に少なくとも部分的に収容されたアダプタ本体(adapter body)(21’)を備える第二ブロックと、を備えるタイプであり、前記第一ブロック(10’)と前記第二ブロック(20’)との間に設けられたボールベアリング(40’)をさらに備え、前記ボールベアリング(40’)は、前記第一ブロック(10’)と前記第二ブロック(20’)との間の相対的な回転を可能とするように前記第一ブロック(10’)と前記第二ブロック(20’)との間に挿入された複数のボール(43’)を備え、前記アダプタ本体(21’)は、その外部表面において、前記アダプタ(21’)を円周方向に横断する、少なくとも一つのハウジング凹部(22)を備え、前記ボール(43’)は、少なくとも部分的に前記凹部(22)に収容され、前記雌型スクリューカップリングは、前記ボール本体(11’)内に、前記ボールベアリング(40’)の前記ボール(43’)を、前記ハウジング凹部(22)にその作動位置(operative position)において挿入可能に適合された半径方向貫通穴(47)を備え、前記雌型スクリューカップリングは、前記貫通穴(47)を閉鎖するための閉鎖手段(45)をさらに備え、前記閉鎖手段(45)は、エキスパンダータイプのプラグ(45)を備え、前記エキスパンダータイプのプラグ(45)は、ボール(46)による干渉によってシートの中に保たれることを特徴とする雌型スクリューカップリング。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の令和1年12月12日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
ボール本体(ball body)(11’)を備える第一ブロック(10’)と、雄型カップリングに高速に連結するためのアダプタ本体(adapter body)(21’)を備える第二ブロックとを備えるタイプの雌型スクリューカップリングであって、更に、前記第一ブロック(10’)と前記第二ブロック(20’)との間に挿入され、前記第一ブロック(10’)と前記第二ブロック(20’)との間の相対的な回転を可能とするボールベアリングを備え、前記ボール本体(11’)内に、前記ボールベアリング(40’)の複数のボール(43’)を、その作動位置(operative position)において挿入可能に適合された半径方向貫通穴(47)を備え、
更に、ボール(46)と、前記貫通穴(47)を閉鎖するための閉鎖手段(45)と、を備え、
前記閉鎖手段(45)は、エキスパンダープラグからなり、
前記エキスパンダープラグは、前記ボール(46)の挿入による干渉によってそのシートの中に保たれることを特徴とする雌型スクリューカップリング。」

2 補正の適否
[1]目的外補正について
本件補正は、
(1)「雄型カップリング」と「アダプタ本体(21’)」とが連結される形態について、「高速に連結」を「流体連結」とする補正、
(2)「前記ボール(46)の挿入による干渉」を「前記ボール(46)による干渉」とする補正を含むものである。
上記(1)の補正について検討すると、「連結」に関して、補正により「高速に連結」から、「流体連結」へと、「連結」そのものの形態から「連結」される対象へと異なる概念に変更したものであるから、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。
また、上記(2)の補正について検討すると、「エキスパンダープラグ」における「前記ボール(46)の挿入による干渉」から「エキスパンダータイププラグ」における「前記ボール(46)による干渉」と補正されたことに関して、「前記ボール(46)の挿入による干渉」から、「の挿入」を削除したものであって、直列的に記載された発明特定事項の削除に相当するから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当せず、請求項の削除、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。
したがって、上記(1)及び(2)の補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

[2]独立特許要件について
審判請求人は、審判請求書において、本件補正は特許請求の範囲の請求項1に補正前の請求項2に記載された事項を追加するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としている旨主張しているので、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決する課題が同一であり、特許請求の範囲の請求項1に関する本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって新規事項を追加するものではないとして、本件補正によって補正された請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について、以下に検討する。

(1)本願補正発明について
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用例である登録実用新案第3034408号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある(下線は理解の一助のために当審が付与した。以下同様。)。

ア 引用例の記載
1a)「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 空気出端の内側に数個のスチール・ボールをもつ制御套管が設けられ、外環の前端に設けられているE型スナップリングによってつなぎ管に嵌め止め固定し、かつ、つなぎ管の内孔後段に圧縮スプリングを設置し、
制御套管内に空気出継手が組み込まれ、空気出継手の一端には移動弁を押しつける強力なスプリングが設けられて、制御套管の空気入り端の内縁に環溝が設けられ、環溝にある制御套管の管体にはねじ孔が設けられており、
回転継手の一端には連接管が凸設され、その連接管の内端外縁には環溝が環設されており、その連接管の外端内縁には凹部が凹設されて、回転継手の他端内縁には内ねじが設けられているので、回転継手の一端の連接管が制御套管の空気入り端に挿入された場合連接管の外端内縁にある凹部は空気出継手にある移動弁の一端の受入れ段に当て止め位置決めされ、
かつ回転継手の一端にある連接管の内端外縁の環溝と制御套管の空気入り端の内縁にある環溝と合せられて数個のスチール・ボールが置き込まれ、さらにセットスクリューによって制御套管の管体にあるねじ孔に締め込んでスチール・ボールを拘束し、それによって回転継手と制御套管が連接位置決めされ、かつ互いに回転することができることを特徴とする空気配管用継手。」

1b)「【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案の空気配管用継手の構造は、回転継手の一端にある連接管を制御套管の空気入り端に入れて、連接管の外端内縁の凹部は空気出継手にある移動弁の一端のつなぎ端に位置決めされ、かつ回転継手の一端にある連接管の内端外縁の環溝と制御套管の空気入り端の内縁にある環溝は合わせられて数個のスチール・ボールが挿入され、さらに回転継手と制御套管は相対して回転することができ、それによって圧縮空気工具の空気ホースと継手の連接端が引っ張られ、曲がって空気の流れが影響されることを避け、それと同時に空気ホースが引っ張られて回転継手と圧縮機の継手が脱落してしまうことを減少する。
【0006】
【考案の実施の形態】
以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。
本考案の空気配管用継手は図2、3に示すように、主として空気出端の内側に数個のスチール・ボール11をもつ制御套管1が設けられ、外環の前端に設けられているE型スナップリング12によってつなぎ管2に嵌止め固定し、かつ、つなぎ管2の内孔後段に圧縮スプリング3を設置し、その制御套管1内に空気出継手4が組み込まれ、空気出継手4の一端には移動弁5を押しつける強力なスプリング41が設けられており、移動弁5の一端には受入れ段51が設けられている。その特徴は制御套管1の空気入り端の内縁に環溝13が設けられ、環溝13にある制御套管1の管体にはねじ孔14が設けられており、回転継手6の一端には連接管61が凸設され、その連接管61の内端外縁には環溝611が環設されており、その連接管61の外端打内縁には凹部612が凹設されている。回転継手6の他端内縁には内ねじ62が設けられているので、回転継手6の一端の連接管61が制御套管1の空気入り端に挿入された場合、その連接管61の外端内縁にある凹部は空気出継手4にある移動弁5の一端の受入れ段51の当て止め位置決めされ、かつ回転継手6の一端にある連接管61の内端外縁の環溝611は制御套管1の空気入端の内縁にある環溝13と合せられて数個のスチール・ボール15が置き込まれ、さらにセットスクリュー16によって制御套管1の管体にあるねじ孔14に締め込んでスチール・ボール15を拘束し、それによって回転継手6と制御套管1が連接位置決めされ、かつ互いに回転することができる。
【0007】
そのために、図4に示すように、圧縮空気工具の空気入継手7が押さえられて外から内へ空気出継手4を押し込んだ場合、制御套管1にあるスチール・ボール11は中へ自由に突出し、空気入継手7が挿入された後圧縮スプリング3の推力を受けてつなぎ管2が復帰し、そのためにスチール・ボール11は内へ押さえられて突出し、並びに空気入継手7の嵌溝71内に嵌め込まれて連接位置決めされ、かつ、回転継手6の他端の内ねじ62は圧縮機の空気配管の継手に締め付けられる(図面には示されていない)。圧縮空気工具が工事の必要に応じて場所を変える場合、空気ホースは圧縮空気工具に伴って移動され、空気ホースの空気入継手7は制御套管1と一体に連結され、圧縮空気工具に伴って移動する場合は回転継手6に対応して回転することができ、それによって圧縮空気工具の空気ホースと快速継手の連結端が引っ張られ、曲がってしまって空気の流れが影響されることを避け、それと同時に空気ホースが引っ張られて回転継手6と圧縮機の継手が脱落してしまうことを減少する。」

1c)図3及び図4には、回転継手6の一端にある連接管61が制御套管1内に収容されることが図示されている。

1d)図3及び図4には、スチール・ボール15が環溝611に部分的に収容されることが図示されている。

1e)図2には、ねじ孔14にスチール・ボール15を挿入することが図示されている。



イ 上記アから分かること
1f)図3、図4及び段落【0007】の記載から、空気入継手7に回転継手6の一端にある連接管61が連結されることが分かる。

1g)段落【0006】の記載から、回転継手6の一端にある連接管61の内端外縁の環溝611と制御套管1の空気入端の内縁にある環溝13とが合わせられて数個のスチール・ボール15が置き込まれたことによる回転機構が設けられていることが分かる。

1h)段落【0006】の記載から、回転継手6の一端にある連接管61の内端外縁の環溝611と制御套管1の空気入端の内縁にある環溝13とを合わせてから、ねじ孔14から数個のスチール・ボール15が置き込まれることから、ねじ孔14は、スチール・ボール15を、回転機構が動作する位置において環溝611に挿入するためのものであることが分かる。

ウ 引用発明
上記ア及びイからみて、引用例には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「空気配管用継手であって、制御套管1と、空気入継手7に連結するための、制御套管1内に収容される回転継手6の一端にある連接管61を備えるものであり、
制御套管1と回転継手6の一端にある連接管61との間に設けられた回転機構をさらに備え、回転機構は、回転継手6の一端にある連接管61と制御套管1とが相対して回転することができるように、回転継手6の一端にある連接管61と制御套管1との間に挿入された数個のスチール・ボール15を備え、
回転継手6の一端にある連接管61は、その内端外縁において環溝611を備え、スチール・ボール15は、部分的に環溝611に収容され、
空気配管用継手は、制御套管1内に回転機構のスチール・ボール15を、環溝611に、回転機構が動作する位置において挿入するためのねじ孔14を備え、
空気配管用継手は、ねじ孔14に締め込んでスチール・ボール15を拘束するセットスクリュー16をさらに備える、空気配管用継手。」

また、上記ア及びイからみて、引用例には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「制御套管1と、空気入継手7に連結される回転継手6の一端にある連接管61を備えるものである空気配管継手であって、
制御套管1と回転継手6の一端にある連接管61との間に設けられ、回転継手6の一端にある連接管61と制御套管1とが相対して回転することができるようにする回転機構を備え、
制御套管1内に、回転機構の数個のスチール・ボール15を、回転機構が動作する位置において挿入するためのねじ孔14を備え、
ねじ孔14に締め込んでスチール・ボール15を拘束するセットスクリュー16をさらに備える、空気配管用継手。」

(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1における「空気配管用継手」は、本願補正発明における「雌型スクリューカップリング」に相当し、引用発明1における「制御套管1」は、本願補正発明における「ボール本体(ball body)(11’)を備える」、「第一ブロック」に相当し、引用発明1における「空気入継手7」は、引用例の図4に示されるように、制御套管1内に挿入されるものであるから、本願補正発明における「雄型カップリング」に相当し、引用発明1における「連結」は、「空気配管用継手」における連結であることから、本願補正発明における「流体連結」に相当し、以下同様に、「制御套管1内に収容される」「回転継手6の一端にある連接管61」は「第一ブロック(10’)内に少なくとも部分的に収容された」「アダプタ本体(adapter body)(21’)を備える」、「第二ブロック」に、「ものであり」は「タイプであり」に、「回転機構」は「ボールベアリング(40’)」に、「相対して回転することができるように」は「相対的な回転を可能とするように」に、「数個の」、「スチール・ボール15」は「複数の」、「ボール(43’)」に、「連接管61」の「内端外縁」は「前記アダプタ本体(21’)」の「外部表面」に、「連接管61」が「その内端外縁において」備える「環溝611」は、「前記アダプタ(21’)を円周方向に横断する」、「少なくとも一つのハウジング凹部(22’)」に、「回転機構が動作する位置」は「その作動位置」に、「挿入するための」は「挿入可能に適合された」に、「ねじ孔14」は「半径方向貫通穴(47)」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明1における「ねじ孔14に締め込んでスチール・ボール15を拘束するセットスクリュー16」は、締め込むことによりねじ孔14を閉鎖することは明らかであって、本願補正発明における「前記貫通穴(47)を閉鎖するための閉鎖手段(45)」であって、「前記閉鎖手段(45)は、エキスパンダータイプのプラグ(45)を備え、前記エキスパンダータイプのプラグ(45)は、ボール(46)による干渉によってシートの中に保たれる」ものとは、「貫通穴(47)を閉鎖する部材」という限りにおいて一致する。

したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
「雌型スクリューカップリングであって、ボール本体(ball body)(11’)を備える第一ブロック(10’)と、雄型カップリングに流体連結するための前記第一ブロック(10’)内に少なくとも部分的に収容されたアダプタ本体(adapter body)(21’)を備える第二ブロックと、を備えるタイプであり、前記第一ブロック(10’)と前記第二ブロック(20’)との間に設けられたボールベアリング(40’)をさらに備え、前記ボールベアリング(40’)は、前記第一ブロック(10’)と前記第二ブロック(20’)との間の相対的な回転を可能とするように前記第一ブロック(10’)と前記第二ブロック(20’)との間に挿入された複数のボール(43’)を備え、前記アダプタ本体(21’)は、その外部表面において、前記アダプタ(21’)を円周方向に横断する、少なくとも一つのハウジング凹部(22)を備え、前記ボール(43’)は、少なくとも部分的に前記凹部(22)に収容され、前記雌型スクリューカップリングは、前記ボール本体(11’)内に、前記ボールベアリング(40’)の前記ボール(43’)を、前記ハウジング凹部(22)にその作動位置(operative position)において挿入可能に適合された半径方向貫通穴(47)を備え、前記雌型スクリューカップリングは、前記貫通穴(47)を閉鎖する部材をさらに備える、雌型スクリューカップリング。」

[相違点1]
「前記貫通穴(47)を閉鎖する部材」が、本願補正発明においては「前記貫通穴(47)を閉鎖するための閉鎖手段(45)」であって、「前記閉鎖手段(45)は、エキスパンダータイプのプラグ(45)を備え、前記エキスパンダータイプのプラグ(45)は、ボール(46)による干渉によってシートの中に保たれる」ものであるのに対して、
引用発明1においては「ねじ孔14に締め込んでスチール・ボール15を拘束するセットスクリュー16」である点。

以下、相違点1について検討する。

[相違点1について]
通路等の孔を閉鎖する手段として、ボールの挿入によって拡張することにより孔の内壁中に保たれるエキスパンダータイプのプラグを用いることは周知技術(例えば、特開昭47-2460号公報:ケーシングの内側に球の拡張部材を挿入することによる穿孔閉止用塞子について、Fig.1ないし6等を参照。/実願昭58-126129号(実開昭60-34191号)のマイクロフィルム:鋼球26をプラグ27の穴部28に圧入させることにより外周を通路11の内周面に押着する通路の閉塞構造について第5図等を参照。)であって、孔や通路を塞ぐために一般的に用いられる技術であるから、引用発明1に周知技術を適用し、引用発明1におけるセットスクリュー16に代えてエキスパンダータイプのプラグを採用することにより、上記相違点1に係る本願補正発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願補正発明による効果は、全体としてみても、引用発明1及び周知技術から予測される範囲内であって格別顕著なものではない。

(4)審判請求書における請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「当該拒絶査定では、引用文献1のセットスクリューが閉鎖手段と見なされています。これに関しまして、本願発明では、閉鎖手段は、半径方向貫通穴47を閉鎖するためのものですが、引用文献1では、セットスクリューは、スチール・ボール15を拘束するためのものです。従いまして、本願発明のエキスパンダープラグの機能と、引用文献1のセットスクリューの機能とは、異なり、引用文献1のセットスクリューは、本願発明の閉鎖手段に相当しないと思料します。また、引用文献2および引用文献3は、カップリングを対象としていません。従いまして、当業者が引用文献1と引用文献2または引用文献3とを組み合わせるのは容易ではなく、補正後の本願請求項1に係る発明は、当業者が引用文献から容易に想到することが不可能なものであり、進歩性を有すると思料します。」と主張している(審判請求書第4ページ第1ないし10行)。

上記請求人による主張について検討すると、引用例において「セットスクリュー16」が「スチール・ボール15を拘束する」ことについて、「それによって回転継手6と制御套管1が連接位置決めされ、かつ互いに回転することができる。」(引用例 段落【0006】)の記載によれば、スチール・ボール15は、回転継手6と制御套管1が連接位置決めするとともに、回転継手6と制御套管1とを相対的に回転可能とする機能を有するものであり、仮に「スチール・ボール15を拘束する」が、セットスクリュー16がスチール・ボール15を押圧して動きを拘束するという意味であれば、回転継手6と制御套管1とを相対的に回転可能とすることは技術常識からみて困難であり、スチール・ボール15はボールベアリングとしての機能を果たし得ない。
そうすると、「セットスクリュー16」が「スチール・ボール15を拘束する」とは、セットスクリュー16がねじ孔14を閉鎖することにより、回転継手6の一端にある連接管61の内端外縁の環溝611と制御套管1の空気入端の内縁にある環溝13との間に閉じ込めて保持することを意味すると解することができるから、セットスクリュー16は閉鎖手段としての機能を有するものといえる。
また、エキスパンダープラグは、孔の閉鎖のために一般的に用いられるものであるから、引用発明1のセットスクリュー16に代えてエキスパンダープラグを採用することに困難性はない。
よって、審判請求人による上記の主張は採用できない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、本願補正発明は、引用発明1及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1(2)に記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。

本願発明は、本願の優先日前に頒布された下記引用例1に記載された発明及び引用例2及び引用例3に示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用例一覧>
1.登録実用新案第3034408号公報
2.特開昭47-2460号公報
3.実願昭58-126129号(実開昭60-34191号)のマイクロフィルム

3 引用例の記載事項及び引用発明
原査定の引用例1の記載事項及び引用発明2は、前記第2 2 [2](2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明と引用発明2とを対比する。
引用発明2における「制御套管1」は、本願発明における「ボール本体(ball body)(11’)を備える」、「第一ブロック」に相当し、引用発明2における「空気入継手7」は、引用例の図4に示されるように、制御套管1内に挿入されるものであるから、本願発明における「雄型カップリング」に相当し、引用発明2における「連結」は、引用例の段落【0007】の記載から、空気入継手7を挿入することのみによる連結であるから、本願発明における「高速に連結」に相当し、以下同様に、「回転継手6の一端にある連接管61」は「アダプタ本体(adapter body)(21’)を備える」、「第二ブロック」に、「ものである」は「タイプの」に、「空気配管継手」は「雌型スクリューカップリング」に、「間に設けられ」は「間に挿入され」に、「相対して回転することができるようにする」は「相対的な回転を可能とする」に、「回転機構」は「ボールベアリング」に、「数個の」、「スチール・ボール15」は「複数の」、「ボール(43’)」に、「回転機構が動作する位置」は「その作動位置(operative position)」に、「挿入するための」は「挿入可能に適合された」に、「ねじ孔14」は「半径方向貫通穴(47)」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明2における「ねじ孔14に締め込んでスチール・ボール15を拘束するセットスクリュー16」は、締め込むことによりねじ孔14を閉鎖することは明らかであって、本願発明における「ボール(46)と、前記貫通穴(47)を閉鎖するための閉鎖手段(45)」 であって、「前記閉鎖手段(45)は、エキスパンダープラグからなり、前記エキスパンダープラグは、前記ボール(46)の挿入による干渉によってそのシートの中に保たれる」ものとは、「貫通穴(47)を閉鎖する部材」という限りにおいて一致する。

したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
「ボール本体(ball body)(11’)を備える第一ブロック(10’)と、雄型カップリングに高速に連結するためのアダプタ本体(adapter body)(21’)を備える第二ブロックとを備えるタイプの雌型スクリューカップリングであって、更に、前記第一ブロック(10’)と前記第二ブロック(20’)との間に挿入され、前記第一ブロック(10’)と前記第二ブロック(20’)との間の相対的な回転を可能とするボールベアリングを備え、前記ボール本体(11’)内に、前記ボールベアリング(40’)の複数のボール(43’)を、その作動位置(operative position)において挿入可能に適合された半径方向貫通穴(47)を備え、
更に、前記貫通穴(47)を閉鎖する部材と、を備える、雌型スクリューカップリング。」

[相違点2]
「貫通穴(47)を閉鎖する部材」に関して、本願発明においては、「ボール(46)と、前記貫通穴(47)を閉鎖するための閉鎖手段(45)」であって、「前記閉鎖手段(45)は、エキスパンダープラグからなり、前記エキスパンダープラグは、前記ボール(46)の挿入による干渉によってそのシートの中に保たれる」ものであるのに対して、
引用発明2においては、「ねじ孔14に締め込んでスチール・ボール15を拘束するセットスクリュー16」である点。

以下、相違点2について検討する。

[相違点2について]
通路等の孔を閉鎖する手段として、ボールの挿入によって拡張することにより孔の内壁中に保たれるエキスパンダータイプのプラグを用いることは周知技術(例えば、特開昭47-2460号公報:ケーシングの内側に球の拡張部材を挿入することによる穿孔閉止用塞子について、Fig.1ないし6等を参照。/実願昭58-126129号(実開昭60-34191号)のマイクロフィルム:鋼球26をプラグ27の穴部28に圧入させることにより外周を通路11の内周面に横着する通路の閉塞構造について、第5図等を参照。)であって、孔や通路を塞ぐために一般的に用いられる技術であるから、引用発明2に周知技術を適用し、引用発明2におけるセットスクリュー16に代えてエキスパンダータイプのプラグを採用することにより、上記相違点2に係る本願発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明による効果は、全体としてみても、引用発明2及び周知技術から予測される範囲内であって格別顕著なものではない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2021-04-09 
結審通知日 2021-04-13 
審決日 2021-05-06 
出願番号 特願2015-227116(P2015-227116)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16L)
P 1 8・ 57- Z (F16L)
P 1 8・ 121- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 弘  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 松下 聡
後藤 健志
発明の名称 改良されたボールベアリングを備えるクイックカップリング  
代理人 関口 正夫  
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