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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H03H
管理番号 1378406
審判番号 不服2020-13681  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-30 
確定日 2021-10-19 
事件の表示 特願2017-172852「積層型共振回路部品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月28日出願公開、特開2019- 50468、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年9月8日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和元年12月19日付け:拒絶理由通知
令和2年 2月19日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年 3月24日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知
令和2年 6月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年 6月25日付け:令和2年 6月 1日の手続補正についての
補正の却下の決定、拒絶査定
令和2年 9月30日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
令和3年 5月20日付け:拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。
)通知
令和3年 7月21日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年 6月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1、3、7
・引用文献等 A、E-F

・請求項 2-3、7
・引用文献等 A-C、E-F

・請求項 4、7
・引用文献等 A-C、E-F

・請求項 5-7
・引用文献等 A-F

<引用文献等一覧>
A.特開2017-143116号公報
B.特開平05-190379号公報(周知技術を示す文献)
C.特開平10-270249号公報(周知技術を示す文献)
D.国際公開第2016/006542号(周知技術を示す文献)
E.特開2016-201517号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
F.特開2006-211273号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由(令和3年 5月20日付け拒絶理由)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1-3、6
・引用文献等 1-3

・請求項 4-6
・引用文献等 1-4

<引用文献等一覧>
1.特開2017-143116号公報(原査定の引用文献A)
2. 特開2002-111422号公報(令和2年6月25日付け補正の却下の決定における引用文献7。周知技術を示す文献)
3.特開平10-270249号公報(原査定の引用文献C。周知技術を示す文献)
4.国際公開第2016/006542号(原査定の引用文献D。周知技術を示す文献)

第4 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、令和3年 7月21日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
LC共振回路を構成するコイルパターンとコンデンサパターンをともに備えた第一の電極層を、第一の絶縁体層を介して積層した積層体を形成する第1ステップと、
前記第一の電極層により生成されるインダクタンス及び容量値のばらつきを確認する第2ステップと、
前記第一の電極層のコンデンサパターンに対向する位置にあるコンデンサパターンのみを備えた一対の第二の電極層と、前記第一の電極層のコイルパターンに電気的に接続されるコイルパターンのみを備えた第三の電極層とを、それぞれ別の第二の絶縁体層を介して積層する第3ステップと、
を有する積層型共振回路部品の製造方法であって、
前記第一?第三の電極層は、前記積層体の少なくとも一面に共通して露出される一対の外部導体パターンを備え、
前記一対の第二の電極層のうちの一方のコンデンサパターンは、前記一対の外部導体パターンのうちの一方に電気的に接続され、前記一対の第二の電極層のうちの他方のコンデンサパターンは、前記一対の外部導体パターンのうちの他方に電気的に接続され、
前記第3ステップでは、前記第2ステップで確認したばらつきによる前記積層体の共振周波数の変動量が相殺されるように、前記一対の第二の電極層の間の前記第二の絶縁体層の厚さを調整することを特徴とする積層型共振回路部品の製造方法。」

第5 当審拒絶理由で引用された文献、引用発明
1.当審拒絶理由で引用された特開2017-143116号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審にて付与したものである。以下同じ。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関し、より特定的には、コイル及びコンデンサを備えた電子部品に関する。」

「【0012】
次に、電子部品10の構造について説明する。電子部品10は、図1B及び図2に示すように、積層体12、外部電極14a,14b、引き出し導体層20a,20b,23a?23j、コンデンサC及びインダクタLを備えている。よって、引き出し導体層20a,20bはインダクタLの一部ではない。また、引き出し導体層23a?23jはコンデンサCの一部ではない。」

「【0016】
外部電極14a(第1の外部電極の一例)は、後述するインダクタL及びコンデンサCに電気的に接続されている。外部電極14aは、前後方向から見たときに、L字型をなしており、積層体12の下面と右面(第2の直交方向の一方側の端に位置する第1の側面の一例)とに跨っている。外部電極14aは、被覆層15a及び外部導体層25a?25jを含んでいる。
【0017】
外部導体層25a?25jは、図2に示すように、絶縁体層16d?16mに設けられている。外部導体層25a?25jは、L字型をなしており、前側から見たときに、絶縁体層16d?16mの右下の角近傍に設けられている。また、外部導体層25a?25jはそれぞれ、絶縁体層16d?16mを前後方向に貫通している。よって、外部導体層25a?25jは、前側から見たときに、一致した状態で重なっていると共に、前後方向に隣り合うもの同士で接続されている。これにより、外部導体層25a?25jは、積層体12の右面及び下面において積層体12から露出している。外部導体層25a?25jは、例えば、Ag、Cu、Au等の電気抵抗の低い金属を主成分とする導電性材料により作製されている。」

「【0019】
外部電極14b(第2の外部電極の一例)は、後述するインダクタL及びコンデンサCに電気的に接続されている。外部電極14bは、前後方向から見たときに、L字型をなしており、積層体12の下面と左面(第2の直交方向の他方側の端に位置する第2の側面の一例)とに跨っている。外部電極14bは、被覆層15b及び外部導体層26a?26jを含んでいる。
【0020】
外部導体層26a?26jは、図2に示すように、絶縁体層16d?16m上に設けられている。外部導体層26a?26jは、L字型をなしており、前側から見たときに、絶縁体層16d?16mの左下の角近傍に設けられている。また、外部導体層26a?26jはそれぞれ、絶縁体層16d?16mを前後方向に貫通している。よって、外部導体層26a?26jは、前側から見たときに、一致した状態で重なっていると共に、前後方向に隣り合うもの同士で接続されている。これにより、外部導体層26a?26jは、積層体12の左面及び下面において積層体12から露出している。外部導体層26a?26jは、例えば、Ag,Cu,Au等の電気抵抗の低い金属を主成分とする導電性材料により作製されている。」

「【0023】
インダクタLは、インダクタ導体層18a?18f(1以上のインダクタ導体層の一例)及びビアホール導体v1?v6を含んでおり、前後方向に沿って延在する中心軸Ax(図3B参照)を有する螺旋状のコイルである。電子部品10では、インダクタLは、前側から見たときに、反時計回り方向に周回しながら、前側から後ろ側へと進行する弦巻状をなしている。また、インダクタLの径は、実質的に均一である。
【0024】
インダクタ導体層18a?18fはそれぞれ、絶縁体層16f?16kの表面(主面の一例)上に設けられて(積層されて)おり、円環の一部が切り欠かれた形状(C字形状)をなす線状の導体層である。そして、インダクタ導体層18a?18fは、前側から見たときに、互いに重なり合って円環状の軌道R(図3B参照)を形成している。軌道Rの中心は、前側から見たときに、中心軸Axと一致しており、直線L0(図1B及び図3B参照)と重なっている。直線L0は、積層体12の実装面の対角線の交点を通過し、かつ、上下方向に平行な直線である。

「【0027】
ビアホール導体v1?v6はそれぞれ、絶縁体層16f?16jを前後方向に貫通している。ビアホール導体v1は、接続部P1と接続部P2とを接続している。ビアホール導体v2は、接続部P3と接続部P4とを接続している。ビアホール導体v3は、接続部P5と接続部P7とを接続している。ビアホール導体v4は、接続部P6と接続部P8とを接続している。ビアホール導体v5は、接続部P9と接続部P10とを接続している。ビアホール導体v6は、接続部P11と接続部P12とを接続している。これにより、インダクタ導体層18a?18fは、ビアホール導体v1?v6を介して、螺旋状に電気的に直列接続され、高いインダクタンスを有するインダクタLを構成する。ビアホール導体v1?v6は、例えば、Ag、Cu、Au等の電気抵抗の低い金属を主成分とする導電性材料により作製されている。

「【0031】
コンデンサCは、コンデンサ導体層22a?22j(複数のコンデンサ導体層の一例)を含んでいる。コンデンサ導体層22a?22jは、例えば、Ag,Cu,Auなどの電気抵抗の低い金属を主成分とする導電性材料により作製されている。コンデンサ導体層22a,22b,22e,22f,22i,22jはそれぞれ、絶縁体層16d,16e,16h,16i,16l,16mの表面(主面の一例)上に設けられ(積層され)ており、U字型をなしており、前側から見たときに、一致した状態で重なっている。以下に、図3Aを参照しながら、コンデンサ導体層22bを例に挙げて説明する。ただし、コンデンサ導体層22a,22e,22f,22i,22jについては、コンデンサ導体層22bと同じであるので説明を省略する。
【0032】
コンデンサ導体層22bは、長方形50の一部が円52により切り欠かれた形状をなしている。長方形50は、左右方向に延在する長辺及び上下方向に延在する短辺を有する。また、長方形50の対角線の交点は、前側から見たときに、直線L0上に位置している。円52の直径は、長方形50の長辺よりも短い。更に、円52の中心は、長方形50の対角線に対して上側に位置しており、軌道Rの中心(中心軸Ax)と一致している。これにより、長方形50の上側の長辺が円52により切り欠かれている。また、前後方向から見たときに、コンデンサCとインダクタLとの間隔が一定である。
【0033】
コンデンサ導体層22c,22dはそれぞれ、絶縁体層16f,16gの表面(主面の一例)上に設けられ(積層され)ており、L字型をなしており、前側から見たときに、一致した状態で重なっている。コンデンサ導体層22c,22dは、22a,22b,22e,22f,22i,22jの右側の短辺が欠損した形状である。コンデンサ導体層22g,22hはそれぞれ、絶縁体層16j,16kの表面(主面の一例)上に設けられ(積層され)ており、L字型をなしており、前側から見たときに、一致した状態で重なっている。コンデンサ導体層22g,22hは、22a,22b,22e,22f,22i,22jの左側の短辺が欠損した形状である。したがって、コンデンサ導体層22c,22d,22g,22hは、前側から見たときに、コンデンサ導体層22a,22b,22e,22f,22i,22jと重なる。このとき、各コンデンサ導体層22a?22jは絶縁体層16d?16lを介して対向し、高いキャパシタンスを有する積層型のコンデンサCを構成する。
【0034】
引き出し導体層23a?23jはそれぞれ、絶縁体層16d?16mの表面上に設けられている線状の導体層である。引き出し導体層23aは、コンデンサ導体層22aと外部導体層25aとを接続している。引き出し導体層23bは、コンデンサ導体層22bと外部導体層26bとを接続している。引き出し導体層23cは、コンデンサ導体層22cと外部導体層25cとを接続している。引き出し導体層23dは、コンデンサ導体層22dと外部導体層26dとを接続している。引き出し導体層23eは、コンデンサ導体層22eと外部導体層25eとを接続している。引き出し導体層23fは、コンデンサ導体層22fと外部導体層26fとを接続している。引き出し導体層23gは、コンデンサ導体層22gと外部導体層25gとを接続している。引き出し導体層23hは、コンデンサ導体層22hと外部導体層26hとを接続している。引き出し導体層23iは、コンデンサ導体層22iと外部導体層25iとを接続している。引き出し導体層23jは、コンデンサ導体層22jと外部導体層26jとを接続している。これにより、コンデンサCは、外部電極14aと外部電極14bとの間に電気的に接続されている。従って、インダクタLとコンデンサCとは、互いに並列接続されることにより、LC並列共振器を構成している。引き出し導体層23a?23jは、例えば、Ag、Cu,Au等の電気抵抗の低い金属を主成分とする導電性材料により作製されている。」

「【0037】
以上のように構成されたインダクタL及びコンデンサCでは、コンデンサCは、前側から見たときに、長方形50が円52により切り欠かれた形状をなしている。そして、円52の中心とインダクタLの軌道Rの中心とは一致している。更に、円52の直径は、軌道Rの直径よりも大きい。これにより、インダクタLは、前側から見たときに、円52内に収まっている。ここで、絶縁体層16f?16k(第1の絶縁体層の一例)の表面上にはそれぞれ、インダクタ導体層18a?18f及びコンデンサ導体層22c?22hが設けられている。各絶縁体層16f?16kの表面上において、コンデンサ導体層22c?22hの下端U1(コンデンサ導体層における直交方向の一方側の端部の一例)は、インダクタ導体層18a?18fの下端U2(インダクタにおける直交方向の一方側の端部の一例)よりも、積層体12の下面の近くに位置している(図3B参照)。特に、本実施形態に係る電子部品10では、コンデンサCの下端は、インダクタLの下端よりも積層体12の下面の近くに位置している。また、インダクタLとコンデンサCとは、前側から見たときに、重なっていない。」

「【0045】
(電子部品の製造方法)
以下に、本実施形態に係る電子部品10の製造方法について図2を参照しながら説明する。
【0046】
まず、絶縁体層16oとなるべきマザー絶縁体層を形成する。マザー絶縁体層とは、複数の絶縁体層16oが繋がった状態でマトリクス状に配列された大判の絶縁体層である。8インチ角の大きさのキャリアフィルム上に硼珪酸ガラスを主成分とする絶縁ペーストをスクリーン印刷により塗布した後に、該絶縁ペーストの全体を紫外線で露光する。これにより、絶縁ペーストが硬化し、絶縁体層16oとなるべきマザー絶縁体層が形成される。本実施形態では、焼成後の比誘電率が6である絶縁ペーストを用いた。また、絶縁体層16oに用いられる絶縁ペーストには、絶縁体層16b?16nに用いられる絶縁ペーストと異なる着色が施されている。
【0047】
次に、絶縁体層16nとなるべきマザー絶縁体層を形成する。絶縁体層16nとなるべきマザー絶縁体層の形成は、絶縁体層16oとなるべきマザー絶縁体層の形成と同じであるので説明を省略する。
【0048】
次に、絶縁体層16mとなるべきマザー絶縁体層を形成する。絶縁体層16nとなるべきマザー絶縁体層上に硼珪酸ガラスを主成分とする絶縁ペーストをスクリーン印刷により塗布した後に、外部導体層25j,26jが形成される位置を覆うフォトマスクを介して該絶縁ペーストを紫外線で露光する。これにより、フォトマスクに覆われた部分以外の絶縁ペーストが硬化する。この後、未硬化の絶縁ペーストをアルカリ溶液などで除去する。これにより、右下及び左下の角が切り欠かれた絶縁体層16mとなるべきマザー絶縁体層が形成される。
【0049】
次に、フォトリソグラフィ工程により、コンデンサ導体層22j、引き出し導体層23j及び外部導体層25j,26jを形成する。具体的には、Agを金属主成分とする感光性導電ペーストを印刷により塗布して、導電ペースト層を絶縁体層16mとなるべきマザー絶縁体層上に形成する。この際、絶縁体層16mとなるべきマザー絶縁体層に形成された切り欠き内にも導電ペーストが充填される。更に、導電ペースト層にフォトマスクを介して紫外線等を照射し、アルカリ溶液等で現像する。これにより、コンデンサ導体層22j、引き出し導体層23j及び外部導体層25j,26jが、絶縁体層16mとなるべきマザー絶縁体層上に形成される。
【0050】
この後、絶縁体層16mとなるべきマザー絶縁体層を形成する工程と、コンデンサ導体層22j及び外部導体層25j,26jを形成する工程と、を交互に繰り返すことにより、絶縁体層16d?16lとなるべきマザー絶縁体層、インダクタ導体層18a?18f、引き出し導体層20a,20b,23a?23i、コンデンサ導体層22a?22i、外部導体層25a?25i,26a?26i及びビアホール導体v1?v6を形成する。なお、ビアホール導体v1?v6が形成される絶縁体層16f?16jとなるべきマザー絶縁体層の形成時には、ビアホール導体v1?v6が形成される位置を覆うフォトマスクを介して露光を行う。
【0051】
次に、絶縁体層16a?16cとなるべきマザー絶縁体層を形成する。絶縁体層16a?16cとなるべきマザー絶縁体層の形成は、絶縁体層16oとなるべきマザー絶縁体層の形成と同じであるので説明を省略する。絶縁体層16aに用いられる絶縁ペーストには、絶縁体層16b?16nに用いられる絶縁ペーストと異なる着色が施されている。以上の工程を経て、複数の積層体12がつながった状態でマトリクス状に配列されたマザー積層体を得る。」

「【0087】
なお、インダクタ導体層18a?18fは絶縁体層16f?16kに設けられており、絶縁体層16f?16kにはコンデンサ導体層22c?22hが設けられている。すなわち、インダクタ導体層18a?18fが設けられている全ての絶縁体層はコンデンサ導体層22c?22hが設けられている絶縁体層16f?16k(第1の絶縁体層の一例)である。しかしながら、インダクタ導体層18a?18fが設けられている絶縁体層16f?16kの一部にコンデンサ導体層が設けられていなくてもよい。すなわち、絶縁体層16a?16oは、インダクタ導体層及びコンデンサ導体層が設けられた少なくとも1以上の絶縁体層を含んでいればよい。ただし、絶縁体層16a?16oは、インダクタ導体層及びコンデンサ導体層が設けられた複数の絶縁体層を含んでいることが望ましい。」

「【図2】



図2より、絶縁体層16d?16eの表面上にはそれぞれ、コンデンサ導体層22a?22bが設けられ、絶縁体層16m?16lの表面上にはそれぞれ、コンデンサ導体層22i?22jが設けられていることが読み取れる。

以上の記載から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「コイル及びコンデンサを備えた電子部品10の製造方法であって、
電子部品は、積層体12、外部電極14a,14b、引き出し導体層20a,20b,23a?23j、コンデンサC及びインダクタLを備え、
外部電極14aは、被覆層15a及び外部導体層25a?25jを含み、外部導体層25a?25jは、絶縁体層16d?16mに設けられ、L字型をなしており、前後方向に隣り合うもの同士で接続され、積層体12の右面及び下面において積層体12から露出し、
外部電極14bは、被覆層15b及び外部導体層26a?26jを含み、外部導体層26a?26jは、絶縁体層16d?16m上に設けられ、L字型をなしており、前後方向に隣り合うもの同士で接続され、積層体12の左面及び下面において積層体12から露出し、
インダクタLは、インダクタ導体層18a?18fを含み、インダクタ導体層18a?18fはそれぞれ、絶縁体層16f?16kの表面上に設けられて(積層されて)おり、円環の一部が切り欠かれた形状(C字形状)をなす線状の導体層であり、螺旋状に電気的に直列接続され、高いインダクタンスを有するインダクタLを構成し、
コンデンサCは、コンデンサ導体層22a?22jを含み、コンデンサ導体層22a,22b,22e,22f,22i,22jはそれぞれ、絶縁体層16d,16e,16h,16i,16l,16mの表面上に設けられ(積層され)ており、U字型をなし、コンデンサ導体層22c,22dはそれぞれ、絶縁体層16f,16gの表面上に設けられ(積層され)ており、L字型をなし、コンデンサ導体層22g,22hはそれぞれ、絶縁体層16j,16kの表面上に設けられ(積層され)ており、L字型をなし、各コンデンサ導体層22a?22jは絶縁体層16d?16lを介して対向し、高いキャパシタンスを有する積層型のコンデンサCを構成し、
絶縁体層16f?16kの表面上にはそれぞれ、インダクタ導体層18a?18f及びコンデンサ導体層22c?22hが設けられ、
絶縁体層16d?16eの表面上にはそれぞれ、コンデンサ導体層22a?22bが設けられ、
引き出し導体層23a?23jはそれぞれ、絶縁体層16d?16mの表面上に設けられている線状の導体層であり、引き出し導体層23aは、コンデンサ導体層22aと外部導体層25aとを接続し、引き出し導体層23bは、コンデンサ導体層22bと外部導体層26bとを接続し、
インダクタLとコンデンサCとは、互いに並列接続されることにより、LC並列共振器を構成しており、
まず、絶縁体層16oとなるべきマザー絶縁体層を形成し、次に、絶縁体層16nとなるべきマザー絶縁体層を形成し、次に、絶縁体層16mとなるべきマザー絶縁体層を形成し、この後、絶縁体層16d?16lとなるべきマザー絶縁体層、インダクタ導体層18a?18f、引き出し導体層20a,20b,23a?23i、コンデンサ導体層22a?22i、外部導体層25a?25i,26a?26iを形成し、次に、絶縁体層16a?16cとなるべきマザー絶縁体層を形成して、複数の積層体12がつながった状態でマトリクス状に配列されたマザー積層体を得る、
インダクタ導体層18a?18fが設けられている絶縁体層16f?16kの一部にコンデンサ導体層が設けられていなくてもよい
電子部品10の製造方法。」

2.当審拒絶理由で引用された特開2002-111422号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0028】さらに、下部磁性体層6と上部磁性体層8の間に形成された蛇行形状コイルパターン7の長さ,幅,厚さなどを調整することによって、インダクタンスの値を調整することができ、下部電極2と上部電極4の対向面積、誘電体層3の厚み、誘電率などを調整することによって、静電容量の値を調整することができる。」
「【図3】



3.当審拒絶理由で引用された特開平10-270249号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0016】また、前記実施形態は、コイル用導体が形成された絶縁性グリーンシートを積み重ねた後、一体的に焼成するものであるが、必ずしもこれに限定されない。絶縁性シートは予め焼結されたものを用いてもよい。また、以下に説明する製法によってコイル部品を製作してもよい。印刷等の手段によりペースト状の絶縁性材料を塗布して絶縁性層を形成した後、その絶縁性層の表面にペースト状の導電体材料を塗布してコイル用導体を形成する。次に、ペースト状の絶縁性材料を前記コイル用導体の上から塗布して絶縁性層を形成する。こうして順に重ね塗りすることによって積層構造を有するコイル部品が得られる。このとき、他の絶縁性層と異なる厚みを有する絶縁性層を形成する際には、例えば印刷の場合であれば絶縁性材料の粘度を変えたり、スクリーン版のメッシュの厚みや大きさを変えたり等して塗布厚みを変更する。」

「【0019】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、コイル用導体の間に配設された絶縁性層のうち所定の絶縁性層の厚みを変えることにより、コイル用導体の間隔を部分的に異ならせ、それに応じてインダクタンス値を変化させるようにしたので、特性を低下させることなく、インダクタンス値の微調整を行うことができ、狭偏差のインダクタンス値を有する、特性の優れた積層型コイル部品を得ることができる。さらに、本発明によれば、コイル用導体のパターン形状の種類を増やす必要がないので、積層型コイル部品の製造コストも引き下げることができる。」

「【図1】



上記2、3の記載事項より、「導体層と絶縁体層を順次積層して製造される積層型回路部品において、所望の回路特性が得られるように絶縁体層の厚さを調整すること」は周知な技術である。

4.当審拒絶理由で引用された国際公開第2016/006542号(以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「[0055] 環状の軌道の左端から左側の端面までの距離D(図10参照):59.7μm
インダクタ導体層18a?18gの線幅:30μm
インダクタ導体層18a?18gの厚み:11.5μm
絶縁体層16a?16gの厚み:14.5μm
インダクタLのターン数:8.5ターン」

以上の記載より、引用文献4には、「インダクタ導体層の厚みを11.5μmとし、絶縁体層の厚みを14.5μmとすること」が記載されている。

第6 原査定で引用された文献
1.原査定で引用された特開2017-143116号公報(以下、「引用文献A」とも言う。引用文献1と同じ。)には、上記「第5 1.」で摘記した事項及び引用発明が記載されていると認められる。

2.原査定で引用された特開平05-190379号公報(以下、「引用文献B」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を達成するために、次のようにして積層コンデンサの容量調整方法を構成した。すなわち、誘電体と内部電極とからなる積層体の外層に積層付加部を一体に設け、積層付加部は、容量調整用の付加電極と誘電体とが交互に積層されたものであり、付加電極は積層付加部を含む積層体全体の内部で誘電体間に埋設されて、誘電体のみを介して内部電極と対向する部分を有するものである積層コンデンサを用意し、この積層コンデンサの積層付加部を積層面と平行に研磨して所要枚数の付加電極を削除するものである。」

以上の記載より、引用文献Bには、「所要枚数の付加電極を削除することで積層コンデンサの容量を調整すること」が記載されている。

3.原査定で引用された特開平10-270249号公報(以下、「引用文献C」とも言う。引用文献3と同じ。)には、上記「第5 3.」で摘記した事項が記載されている。

4.原査定で引用された国際公開第2016/006542号(以下、「引用文献D」とも言う。引用文献4と同じ。)には、上記「第5 4.」で摘記した事項が記載されている。

5.原査定で引用された特開2016-201517号公報(以下、「引用文献E」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0036】
すなわち当該回路は、図10に示すように、入力端子T1と出力端子T2との間に直列に接続した2つのLC並列回路(互いに並列に接続したコイルL1とコンデンサC2からなる第一のLC共振回路と、互いに並列に接続したコイルL2とコンデンサC4からなる第二のLC共振回路)と、入力端子T1と第一のLC並列回路との間に一端を、グランド端子Gに他端をそれぞれ接続したコンデンサC1と、2つのLC並列回路の間に一端を、グランド端子Gに他端をそれぞれ接続したコンデンサC3と、出力端子T2と第二のLC並列回路との間に一端を、グランド端子Gに他端をそれぞれ接続したコンデンサC5とからなる。
【0037】
積層体は、図11に示すように長方形の平面形状を有し、順に積層した第1導体層M1、第1絶縁層I1、第2導体層M2、第2絶縁層I2、第3導体層M3、第3絶縁層I3、第4導体層M4、第4絶縁層I4、第5導体層M5、第5絶縁層I5および第6導体層M6を有する。なお、本実施形態に係るLPFは、図11に示した各層以外にも、例えばグランド電極を備えた導体層など図示しない他の導体層や絶縁層を備えていても良い。」

「【0039】
なお、第1導体層M1のグランド端子部Gは、後に述べるコンデンサC3(コンデンサ電極C31)を構成するために、第三の角部のグランド端子部Gと第四の角部のグランド端子部Gが当該第1導体層の長辺(左辺)に沿ってひと続きに延びるように形成した。また、入力端子部T1と出力端子部T2との間には、コンデンサC1とコンデンサC5を構成するグランド側のコンデンサ電極C11,C51を備え、このコンデンサ電極C11,C51と前記第1導体層M1のグランド端子部Gを接続電極E1で接続した。さらに、コンデンサ電極C11,C51と第1絶縁層I1を介して対向するように第2導体層M2にコンデンサ電極C12とコンデンサ電極C52を備え、第1導体層M1のコンデンサ電極C11と第2導体層のコンデンサ電極C12によりコンデンサC1を、第1導体層M1のコンデンサ電極C51と第2導体層M2のコンデンサ電極C52によりコンデンサC5をそれぞれ構成した。
【0040】
また、積層体を垂直方向から見て当該積層体を長手方向について2等分した場合の一方(図11の各層の上半分)の領域には、前記第一LC共振回路を構成する積層コイルL1を配置する。この積層コイルL1は、第1導体層M1、第3導体層M3、第4導体層M4および第5導体層M5にそれぞれ備えたループ状のコイル導体L11,L12,L13,L14を、第1絶縁層I1、第2導体層M2、第2絶縁層I2、第3絶縁層I3および第4絶縁層I4をそれぞれ貫くビアVによって順に接続することにより構成する。」

「【0045】
具体的には、第1導体層M1のコイル導体L11の一部と重なるようにL字状に延びるコンデンサ電極C21を第2導体層M2に備える。このコンデンサ電極C21はコイル導体L11の線幅より小さい幅を有し、垂直方向から見てコイル導体L11の線幅内に収まるように配置されて、第1絶縁層I1を介してコイル導体L11と対向してコンデンサC2を構成する。なお、このコンデンサ電極C21は、電気的に接続するため、次に述べるコンデンサ電極C41とひと続きとなっている。また、コンデンサ電極C21に対向するコイル導体L11の部分を黒で塗りつぶして示した(以下、コイル一体型コンデンサについて同様)。当該部分がコイル導体L11として機能すると同時にコンデンサC2を構成するコンデンサ電極C22としても機能することとなる。また、当該コンデンサ電極C22部分によってコイルL1(コイル導体L11)とコンデンサC2とが電気的に接続される。」

「【図11】



以上より、引用文献Eには、「コイルパターンとコンデンサパターンの両方を具備する層の他に、コンデンサパターンのみを具備する層、コイルパターンのみを具備する層、を有する構成」が記載されている。

6.原査定で引用された特開2006-211273号公報(以下、「引用文献F」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0041】
図5において、8bは、第4の誘電体層33及び第5の誘電体層34の層間に形成された第1のコンデンサ電極41と、第5の誘電体層34及び第6の誘電体層35の層間に形成された第2のコンデンサ電極42との間に生じる容量によるコンデンサであり、9bは、第1の誘電体層30及び第2の誘電体層31の層間に形成された接地電極37と、第2の誘電体層31及び第3の誘電体層32の層間に形成された第3のコンデンサ電極43との間に生じる容量によるコンデンサであり、7bは、第5の誘電体層34及び第6の誘電体層35の層間に形成された第4のコンデンサ電極44と、第6の誘電体層35及び第7の誘電体層36の層間に形成された第5のコンデンサ電極45との間に生じる容量によるコンデンサである。また、4bは、第3の誘電体層32及び第4の誘電体層33の層間に形成された第1のインダクタパターン38に生じるインダクタであり、5bは第6の誘電体層35及び第7の誘電体層36の層間に形成された第2のインダクタパターン39に生じるインダクタであり、6bは第4の誘電体層33及び第5の誘電体層34の層間に形成された第3のインダクタパターン40に生じるインダクタである。」

「【図5】



以上より、引用文献Fには、「コイルパターンとコンデンサパターンの両方を具備する層の他に、コンデンサパターンのみを具備する層、コイルパターンのみを具備する層、を有する構成」が記載されている。

第6 対比・判断
1.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の、絶縁体層の表面上に積層されている、「円環の一部が斬りかかれた形状」を有する「インダクタ導体層18a?18f」は、本願発明の「コイルパターン」に相当する。また、「U字型をな」す「コンデンサ導体層22a,22b,22e,22f,22i,22j」、「L字型をな」す「コンデンサ導体層22c,22d」及び「コンデンサ導体層22g,22h」は、本願発明の「コンデンサパターン」に相当する。
そして、「絶縁体層16f?16kの表面上にはそれぞれ、インダクタ導体層18a?18f及びコンデンサ導体層22c?22hが設けられ」ることから、絶縁体層16fの表面上に「インダクタ導体層18a及びコンデンサ導体層22c」が、絶縁体層16gの表面上に「インダクタ導体層18b及びコンデンサ導体層22d」が、絶縁体層16hの表面上に「インダクタ導体層18c及びコンデンサ導体層22e」が、絶縁体層16iの表面上に「インダクタ導体層18d及びコンデンサ導体層22f」が、絶縁体層16jの表面上に「インダクタ導体層18e及びコンデンサ導体層22g」が、絶縁体層16kの表面上に「インダクタ導体層18f及びコンデンサ導体層22h」が、設けられるものであり、「インダクタ導体層18a及びコンデンサ導体層22c」、「インダクタ導体層18b及びコンデンサ導体層22d」、「インダクタ導体層18c及びコンデンサ導体層22e」、「インダクタ導体層18d及びコンデンサ導体層22f」、「インダクタ導体層18e及びコンデンサ導体層22g」、及び「インダクタ導体層18f及びコンデンサ導体層22h」は、いずれも「第一の電極層」といえる。
また、絶縁体層16f?16kは「第1の絶縁体層」であるといえる。
そして,マトリクス状に配列されたマザー積層体を得るにあたり,絶縁体層16d?16lとなるべきマザー絶縁体層を形成しているから、本願発明と引用発明とは、「LC共振回路を構成するコイルパターンとコンデンサパターンをともに備えた第一の電極層を、第一の絶縁体層を介して積層した積層体を形成するステップ」を有する点で一致する。

(2)引用発明は、「絶縁体層16d?16eの表面上にはそれぞれ、コンデンサ導体層22a?22bが設けられ」るものであるから、「コンデンサ導体層22a?22b」は、本願発明の「前記第一の電極層のコンデンサパターンに対向する位置にあるコンデンサパターンのみを備えた一対の第二の電極層」に相当し、絶縁体層16dを介して積層されるものである。
そして、引用発明は、「絶縁体層16mとなるべきマザー絶縁体層を形成する工程と、コンデンサ導体層22j及び外部導体層25j,26jを形成する工程と、を交互に繰り返すことにより、絶縁体層16d?16lとなるべきマザー絶縁体層、インダクタ導体層18a?18f、引き出し導体層20a,20b,23a?23i、コンデンサ導体層22a?22i、外部導体層25a?25i,26a?26iを形成する」ことから、上記(1)のステップである、絶縁体層16f?16k、インダクタ導体層18a?18f及びコンデンサ導体層22c?22hを形成した後に、絶縁体層16d?16e及びコンデンサ導体層22a?22bが形成されるものである。
引用発明は、「インダクタ導体層18a?18fが設けられている絶縁体層16f?16kの一部にコンデンサ導体層が設けられていなくてもよい」が,どの絶縁体層がコンデンサ導体層が設けられない絶縁体層であるかは記載されていないから、「前記第一の電極層コイルパターンに電気的に接続されるコイルパターンのみを備えた第三の電極層」を積層することは記載されているものの,「第1ステップ」の後のステップにおいて積層することは記載されていない。

(3)引用発明は、「前後方向に隣り合うもの同士で接続され、積層体12の右面及び下面において積層体12から露出」する「外部導体層25a?25j」及び「前後方向に隣り合うもの同士で接続され、積層体12の左面及び下面において積層体12から露出」する「外部導体層26a?26j」を有し、それぞれが「絶縁体層16d?16mに設けられ」ているから、「外部導体層25a?25j」及び「外部導体層26a?26j」は、「前記積層体の少なくとも一面に共通して露出される一対の外部導体パターン」であって「絶縁体層16d?16m」すなわち「前記第一?第三の電極層」に備えられているといえる。
そして、「引き出し導体層23aは、コンデンサ導体層22aと外部導体層25aとを接続し、引き出し導体層23bは、コンデンサ導体層22bと外部導体層26bとを接続」するから、「前記一対の第二の電極層のうちの一方のコンデンサパターンは、前記一対の外部導体パターンのうちの一方に電気的に接続され、前記一対の第二の電極層のうちの他方のコンデンサパターンは、前記一対の外部導体パターンのうちの他方に電気的に接続され」ているといえる。


そうすると、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「LC共振回路を構成するコイルパターンとコンデンサパターンをともに備えた第一の電極層を、第一の絶縁体層を介して積層した積層体を形成する第1ステップと、
前記第一の電極層のコンデンサパターンに対向する位置にあるコンデンサパターンのみを備えた一対の第二の電極層を、第二の絶縁体層を介して積層する第3ステップと、
を有する積層型共振回路部品の製造方法であって、
前記第一?第二の電極層は、前記積層体の少なくとも一面に共通して露出される一対の外部導体パターンを備え、
前記一対の第二の電極層のうちの一方のコンデンサパターンは、前記一対の外部導体パターンのうちの一方に電気的に接続され、前記一対の第二の電極層のうちの他方のコンデンサパターンは、前記一対の外部導体パターンのうちの他方に電気的に接続される積層型共振回路部品の製造方法。」

(相違点)
(相違点1)本願発明は「前記第一の電極層により生成されるインダクタンス及び容量値のばらつきを確認する第2ステップ」を有するのに対して、引用発明はそのような構成を有していない点。
(相違点2)本願発明は「第3のステップ」が、「前記第一の電極層のコイルパターンに電気的に接続されるコイルパターンのみを備えた第三の電極層とを、それぞれ別の第二の絶縁体層を介して積層する」ことを含み、第三の電極層は、「前記積層体の少なくとも一面に共通して露出される一対の外部導体パターンを備え」るのに対して、引用発明は、特に特定されていない点。
(相違点3)本願発明は「前記第3ステップでは、前記第2ステップで確認したばらつきによる前記積層体の共振周波数の変動量が相殺されるように、前記一対の第二の電極層の間の前記第二の絶縁体層の厚さを調整する」ことが特定されているのに対して、引用発明はそのような構成を備えていない点。

2.相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点1及び3について、合わせて先に検討すると、相違点1及び3に係る本願発明の、第2ステップで「前記第一の電極層により生成されるインダクタンス及び容量値のばらつきを確認」し、「確認したばらつきによる積層体の共振周波数の変動量が相殺されるように、前記一対の第二の電極層の間の前記第二の絶縁体層の厚さを調整する」ことは、上記引用文献B?Fには記載されておらず、本願出願日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明は、当業者であっても引用発明、引用文献B?Fに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 当審拒絶理由についての判断
令和3年7月21日に提出された手続補正書により補正された請求項1に係る発明は、上記第6で判断したように、当審拒絶理由における引用文献1(原査定における引用文献A)に記載された発明とは、上記相違点1乃至3に係る点で相違する。
そして、上記相違点1及び3は、原査定における引用文献2乃至4には、記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、拒絶理由は解消した。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-09-30 
出願番号 特願2017-172852(P2017-172852)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H03H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石田 昌敏  
特許庁審判長 吉田 隆之
特許庁審判官 佐藤 智康
衣鳩 文彦
発明の名称 積層型共振回路部品の製造方法  
代理人 福井 宏司  

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