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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B66B |
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管理番号 | 1378433 |
審判番号 | 不服2021-3753 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-03-23 |
確定日 | 2021-10-19 |
事件の表示 | 特願2017- 65036「エスカレーターの踏段」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月 1日出願公開、特開2018-167931、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成29年 3月29日の出願であって、令和 2年 8月13日付けで拒絶理由通知がされ、同年10月19日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月22日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和 3年 3月23日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正書が提出され、同年 7月30日に上申書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 本願の請求項1、2及び5ないし7に係る発明は、以下の引用文献1ないし8に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開昭61-114991号公報 引用文献2:特開2009-234740号公報 引用文献3:特開2012-218837号公報(周知技術を示す文献) 引用文献4:特開2015-030605号公報(周知技術を示す文献) 引用文献5:中国特許出願公開第105398925号明細書 引用文献6:特開2004-149304号公報 引用文献7:特開2016-185834号公報(周知技術を示す文献) 引用文献8:特開2012-166937号公報(周知技術を示す文献) 第3 審判請求時の補正について 1. 審判請求時の補正(以下、「本件補正」という。)について 本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 【請求項1】 複数個の踏段を無端状に連結した状態で循環移動するエスカレーターの踏段であって、 少なくとも一部の前記踏段は、利用者が乗る踏板であって、左右方向に並んでそれぞれ進行方向に沿って形成された複数の踏板クリート溝を有する踏板と、前記踏板の進行方向一端に連結された立ち上がり部であるライザーと、前記踏板クリート溝に配置された警告表示部と、前記踏段に取り付けられた電池とを含み、 前記踏板は、踏板本体と、前記踏板本体の左右方向端部にねじ止めによって固定され、樹脂により形成されたデマケーションクリートとを有し、 前記警告表示部は、左右方向端部の前記踏板クリート溝に嵌め込まれた長尺薄板状の基板と、前記基板の上部に取り付けられ、前記電池により電力が供給される複数のライト部とを有し、前記複数のライト部の点灯または点滅によって利用者に注意を喚起し、 前記警告表示部が配置される前記左右方向端部の前記踏板クリート溝は、前記デマケーションクリートに形成された溝であり、 前記警告表示部が配置される前記デマケーションクリートに形成された溝には貫通孔が形成され、前記貫通孔と、前記基板とに貫通したねじが、前記踏板本体に形成されたねじ孔に結合されることにより、前記デマケーションクリートと前記基板とが前記踏板本体に固定される、 エスカレーターの踏段。 【請求項2】 請求項1に記載のエスカレーターの踏段において、 前記ライザーは、左右方向に並んでそれぞれ立ち上がり方向に沿って形成された複数のライザークリート溝を有し、 前記電池は、左右方向端部の前記ライザークリート溝に嵌め込まれる、エスカレーターの踏段。 【請求項3】 請求項2に記載のエスカレーターの踏段において、 前記電池は、長尺薄板状の太陽電池である、エスカレーターの踏段。 【請求項4】 請求項1から請求項3のいずれか1に記載のエスカレーターの踏段において、 前記複数のライト部は、前記基板の上部に直線状に並んで取り付けられる、エスカレーターの踏段。 【請求項5】 請求項4に記載のエスカレーターの踏段において、 前記警告表示部は、前記複数のライト部を、同時に、または時間的に異なって点滅させるように構成される、エスカレーターの踏段。 【請求項6】 複数個の踏段を無端状に連結した状態で循環移動するエスカレーターの踏段であって、 少なくとも一部の前記踏段は、利用者が乗る踏板であって、左右方向に並んでそれぞれ進行方向に沿って形成された複数の踏板クリート溝を有する踏板と、前記踏板の進行方向一端に連結された立ち上がり部であるライザーと、前記踏板クリート溝に配置された警告表示部と、前記踏段に取り付けられた電池とを含み、 前記警告表示部は、左右方向端部の前記踏板クリート溝に嵌め込まれた長尺薄板状の基板と、前記基板の上部に取り付けられ、前記電池により電力が供給される複数のライト部とを有し、前記複数のライト部の点灯または点滅によって利用者に注意を喚起し、 前記ライザーは、左右方向に並んでそれぞれ立ち上がり方向に沿って形成された複数のライザークリート溝を有し、 前記電池は、左右方向端部の前記ライザークリート溝に嵌め込まれる、エスカレーターの踏段。 【請求項7】 請求項6に記載のエスカレーターの踏段において、 前記電池は、長尺薄板状の太陽電池である、エスカレーターの踏段。 2.本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の特許請求の範囲の記載は、令和 2年10月19日に手続補正された特許請求の範囲の記載によって特定される次のとおりである。 【請求項1】 複数個の踏段を無端状に連結した状態で循環移動するエスカレーターの踏段であって、 少なくとも一部の前記踏段は、利用者が乗る踏板であって、左右方向に並んでそれぞれ進行方向に沿って形成された複数の踏板クリート溝を有する踏板と、前記踏板の進行方向一端に連結された立ち上がり部であるライザーと、前記踏板クリート溝に配置された警告表示部と、前記踏段に取り付けられた電池とを含み、 前記踏板は、踏板本体と、前記踏板本体の左右方向端部にねじ止めによって固定され、樹脂により形成されたデマケーションクリートとを有し、 前記警告表示部は、左右方向端部の前記踏板クリート溝に嵌め込まれた長尺薄板状の基板と、前記基板の上部に取り付けられ、前記電池により電力が供給される複数のライト部とを有し、前記複数のライト部の点灯または点滅によって利用者に注意を喚起し、 前記警告表示部が配置される前記左右方向端部の前記踏板クリート溝は、前記デマケーションクリートに形成された溝である、エスカレーターの踏段。 【請求項2】 請求項1に記載のエスカレーターの踏段において、 前記警告表示部が配置される前記デマケーションクリートに形成された溝には、貫通孔が形成され、前記貫通孔に貫通したねじにより、前記デマケーションクリートが前記踏板本体に固定されると共に、前記基板が前記デマケーションクリートに固定される、エスカレーターの踏段。 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載のエスカレーターの踏段において、 前記ライザーは、左右方向に並んでそれぞれ立ち上がり方向に沿って形成された複数のライザークリート溝を有し、 前記電池は、左右方向端部の前記ライザークリート溝に嵌め込まれる、エスカレーターの踏段。 【請求項4】 請求項3に記載のエスカレーターの踏段において、 前記電池は、長尺薄板状の太陽電池である、エスカレーターの踏段。 【請求項5】 請求項1に記載のエスカレーターの踏段において、 前記警告表示部の前記基板は、前記踏板クリート溝の底部にねじ止めまたは両面テープにより固定される、エスカレーターの踏段。 【請求項6】 請求項1から請求項5のいずれか1に記載のエスカレーターの踏段において、 前記複数のライト部は、前記基板の上部に直線状に並んで取り付けられる,エスカレーターの踏段。 【請求項7】 請求項6に記載のエスカレーターの踏段において、 前記警告表示部は、前記複数のライト部を、同時に、または時間的に異なって点滅させるように構成される、エスカレーターの踏段。 【請求項8】 複数個の踏段を無端状に連結した状態で循環移動するエスカレーターの踏段であって、 少なくとも一部の前記踏段は、利用者が乗る踏板であって、左右方向に並んでそれぞれ進行方向に沿って形成された複数の踏板クリート溝を有する踏板と、前記踏板の進行方向一端に連結された立ち上がり部であるライザーと、前記踏板クリート溝に配置された警告表示部と、前記踏段に取り付けられた電池とを含み、 前記警告表示部は、左右方向端部の前記踏板クリート溝に嵌め込まれた長尺薄板状の基板と、前記基板の上部に取り付けられ、前記電池により電力が供給される複数のライト部とを有し、前記複数のライト部の点灯または点滅によって利用者に注意を喚起し、 前記ライザーは、左右方向に並んでそれぞれ立ち上がり方向に沿って形成された複数のライザークリート溝を有し、 前記電池は、左右方向端部の前記ライザークリート溝に嵌め込まれる、エスカレーターの踏段。 【請求項9】 請求項8に記載のエスカレーターの踏段において、 前記電池は、長尺薄板状の太陽電池である、エスカレーターの踏段。 3.本件補正の適否 本件補正は、請求項1に関し、その「デマケーションクリート」と「基板」と「踏板本体」について、「前記警告表示部が配置される前記デマケーションクリートに形成された溝には貫通孔が形成され、前記貫通孔と、前記基板とに貫通したねじが、前記踏板本体に形成されたねじ孔に結合されることにより、前記デマケーションクリートと前記基板とが前記踏板本体に固定される」と発明特定事項を限定するから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。 そして、当該「デマケーションクリート」と「基板」と「踏板本体」についての構成は、願書に最初に添付した明細書の段落【0026】に、「警告表示部41は、左右方向端部の踏板クリート溝34に嵌め込んで固定される。このとき、デマケーションクリート37の貫通孔(図示せず)と、警告表示部41の基板43の孔44とにねじ45(図3)が貫通する。そして、そのねじ45が、デマケーションクリート37を踏板本体33aに固定するための踏板本体33aのねじ孔(図示せず)に結合される。これにより、基板43は、踏板クリート溝34の底部にネジ止めにより固定される。」と記載されているから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものである。 さらに、本件補正は、本件補正前の請求項2及び5を削除するとともに、当該請求項の削除に伴って補正後の請求項の引用関係を整理したものであるから、特許法第17条の2第5項第1号及び第2号に規定する請求項の削除及び特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであり、かつ、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであることが明らかであるから、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものである。 ここで、補正後の請求項1ないし5に係る発明は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないので、以下、検討する。 4.独立特許要件について 4-1 本願発明1ないし7について 本願の請求項1ないし7に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される、上記第3の1.のとおりである。 4-2 引用文献に記載された事項及び引用発明 (1)引用文献1に記載された事項及び引用発明について 引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同様。)。 ア 「6.特許請求の範囲第2項において、前記縦方向の荷重検出器の動作により、前記表示灯が点灯する電気回路としたことを特徴とするマンコンベアの安全装置。」(1頁右下欄2ないし5行) イ 「従来、マンコンベアのステップと枠体(スカートガード)の隙間に衣服、靴先などがはさみこまれる危険性を防止するため、ステップの左右両端部を高分子材料として危害を少なくしたり、・・・」(2頁左上欄7ないし10行) ウ 「〔発明の実施例〕 以下、本発明の一実施例について、マンコンベアの一例であるエスカレータについて説明する。 第1図はエスカレータ側面の全体構造を示し、1,2は上下に設けられた鎖車で、これに左右各一本の無端状のチエーン3が巻掛けられており、このチエーン3にはステツプ4が一定ピツチで連続的に取付けられている。上部の鎖車2には駆動機5の小鎖車6との間に駆動チエーンが巻掛けられ、この駆動機5の動力を伝達することにより鎖車1,2を介してステツプ4が連続的に回動するようになつている。8は移動手摺で欄干9の両側に設けられており、上部鎖車2からの動力により、手摺駆動装置(図示せず)を介してステツプ4と同期的に走行するようになツている。駆動機5の制御用装置10は駆動機5の近くに配置されている。 次に、第2図はステツプの斜視図でステツプ4は、フレーム11、ローラ12、クリート20により構成され、ステツプの前方,側方には発光ランプ15を設けている。さらに、ステツプの左右端部には、縦方向荷重検出器16、横方向荷重検出器17を設け、フレーム11には発光素子18を配置する。また、多数設けられたステップ4の数個には、電源部(蓄電池内蔵)13と音声装置(警報装置含み)14を組込み、エンドレスに設けたステツプ4の相互間をケーブル(図示せず)で渡り、電気関係の部品を接続する。 第3図は第2図のIII-III矢視断面図である。ステツプ4の左右両側のクリート21は中央部(人が乗るところ)のクリート20より少し高くし、ねじ22により取付けている。クリート20,21間には、縦方向荷重検出器16と横方向荷重検出器17をステップ4の左右(左側図示省略)に配置している。また、発光素子18と対向する受光素子19は固定側のスカートガード23に設置している。この受光素子19はエスカレータの制動距離等により計算し、複数個を配置する。 第4図、第5図は電気回路のブロツク図で、乗客が危険地帯であるクリート21の上に乗ると、縦方向荷重検出器16が動作し、電源部13と音声装置14により危険を知らせる。例えば、中央に御乗り下さい、など。さらには警報を発したり、発光ランプ15を点灯し、警告をすることができる。」(2頁右上欄9行ないし右下欄13行) エ 「〔発明の効果〕 本発明によれば、電気的な安全装置とすることができるので、乗客に対する指導,安全性がより向上する。」(3頁左上欄10ないし13行) オ 「第1図 ![]() 」 カ 「第2図 ![]() 」 キ 「第3図 ![]() 」 ク 「第4図 ![]() 」 ケ 上記第2図及び第3図並びにエスカレータの技術常識から、クリート20及び左右両側のクリート21は左右方向に並んでそれぞれ進行方向に沿って形成された複数の溝を備えることが看取できる。 コ 上記第2図及びエスカレータの技術常識から、ステツプ4はクリート20及び左右両側のクリート21の進行方向一端に連結された立ち上がり部であるライザーを備え、当該ライザーは左右方向に並んでそれぞれ立ち上がり方向に沿って形成された複数のライザークリート溝を備えることが看取できる。 サ 上記摘記事項ウ及び上記第2図ないし第4図から、発光ランプ15の表示灯は、前方と側方のクリート20の溝に設けられ、前記電源部13により電力が供給される複数の発光ランプ15を有することが看取できる。 シ 上記摘記事項ウ並びに上記第2図及び第3図から、左右両側のクリート21に形成された溝には貫通孔が形成され、前記貫通孔を貫通したねじ22が、前記クリート20に形成されたねじ孔に結合されて、左右両側のクリート21は、クリート20の左右両側の端部に、ねじ22によって取付けられることが看取できる。 上記摘記事項ア?ク及び認定事項ケ?シから、引用文献1には、次の発明が記載されているものといえる(以下、「引用発明」という。)。 (引用発明) 「多数のステツプ4をエンドレスに設けて連続的に回動するエスカレータのステツプ4であって、 数個の前記ステツプ4は、左右方向に並んでそれぞれ進行方向に沿って形成された複数の溝を備える乗客が乗るクリート20及び左右両側のクリート21と、左右方向に並んでそれぞれ立ち上がり方向に沿って形成された複数のライザークリート溝を備えた、クリート20及び左右両側のクリート21の進行方向一端に連結された立ち上がり部であるライザーと、前記クリート20の溝に設けられた警告のための発光ランプ15の表示灯と、前記ステツプ4に組み込まれた電源部13とを備え、 前記左右両側のクリート21に形成された溝には貫通孔が形成され、前記貫通孔を貫通したねじ22が、前記クリート20に形成されたねじ孔に結合されて、前記左右両側のクリート21は前記クリート20の左右両側の端部にねじ22によって取付けられ、 前記警告のための発光ランプ15の表示灯は、前方と側方の前記クリート20の溝に設けられ、前記電源部13により電力が供給される複数の発光ランプ15を有し、クリート20と左右両側のクリート21との間に配置した縦方向荷重検出器16が動作して前記複数の発光ランプ15の点灯によって乗客に警告する、 エスカレータのステツプ4。」 (2)引用文献2に記載された事項について 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0006】 この発明は、踏板、踏板の両端を支持する一対の踏段ブラケット、及び踏段ブラケットに装着された車輪を備え、車輪を乗り口と降り口との間に配設された無端状の踏段レール上を転動させて乗り口と降り口との間を循環走行する乗客コンベアの踏段の照明装置において、踏段に配設され、車輪の回転トルクにより駆動されて発電する発電機と、踏段に配設され、発電機の電力により充電されるバッテリーと、バッテリーからの電力の供給により発光し、踏板にあけられた照射窓から踏板の踏面を照射する照明手段と、を備えている。」 イ 「【0021】 次いで、照明装置40の詳細について説明する。 図2?図5において、照明装置40は、照明カバー41と、圧電センサ45と、一方の追従輪軸30aに取り付けられた発電機42と、それぞれ踏板22の裏面に固定された制御手段60、バッテリー49、第1のスイッチ手段52A、第2のスイッチ手段52B、及び照明手段としてのLEDモジュール47と、を有している。 【0022】 そして、照明カバー41は透光性を有する樹脂により形成され、照射窓26に隙間なく嵌めこまれている。また、発光ダイオードモジュール47(LEDモジュール47)は、図3に示されるように、照明カバー41の裏面に配設されている。さらに、LEDモジュール47は、図5に示されるように、並列に接続された複数のLED48を有し、外部から電力が供給されたときに、LED48のそれぞれが発光(点灯)するようになっている。以下、複数のLED48の点灯及び消灯を、LEDモジュール47の点灯及び消灯とする。そして、複数のLED48は、照射窓26の長手方向に所定の間隔で照明カバー41に向けて光を照射可能に配置されている。また、照明カバー41を透過した光は、散乱して利用者の目に優しい淡い光となる。」 ウ 「【図2】 ![]() 」 エ 「【図3】 ![]() 」 (3)引用文献3に記載された事項について 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 「【0020】 上記のように、主光源配列11、12の先端部に配置される一対の主棒状光源9、9に対して、それらの背後に副棒状光源13を配置し、光の進行方向に対して前後2列の光源を用いることで、照明対象の踏段(図示せず。)から各光源9、13までの距離は異なるものになる。そのため、前後の光源の明るさに差が発生し、照度むらによる違和感の原因となることが考えられる。この問題に対しては、後列の副棒状光源12から発せられ、拡散する光を、前列の主棒状光源9、9まで誘導するカバー31を設ける。このカバー31は断面がコ字型のステンレスなどの金属素材を用い、その内面を光反射率の高い鏡面仕上げするか、または内面に光反射率の高くなる塗装を施すことが望ましい。このような断面がコ字型のカバー31の長手方向の両端において、一対の主棒状光源9、9のL字型の保持具21の端部をネジ止めなどにより固定する。 【0021】 副棒状光源13にこのようなカバー31を設けることにより、後列の副棒状光源12から発せられた光を外部に拡散することなく、前方へと誘導することができる。また、このような構成の照明装置においては、一対の主棒状光源9、9のL字型保持具21の副棒状光源13のカバー31へのネジ止めなどによる固定位置を調整することにより、前列の主棒状光源9、9の後列の副棒状光源12に対する距離を調整することにより、光の進行方向に対する光りの強度を調整することもできる。なお、エスカレーター据付時に現地で調整を行いたい場合、後列取り付け用ステーに長穴を設ける等して前列と後列の距離をある程度変動できる構造にしておくことも可能である。」 (4)引用文献4に記載された事項について 引用文献4には、以下の事項が記載されている。 「【0020】 照明カバー3の内面部3aに対する面状発光体4の固定は、前述のように接着剤5によって固定する他、両面テープを用いて固定してもよい。また、ビス等によって固定してもよい。また、面状発光体4の経年劣化による交換を考慮した場合には、面状発光体4を照明カバー3から容易に取り外すことができる固定手段を設けると都合がよい。」 (5)引用文献5に記載された事項について 引用文献5には、以下の事項が記載されている。 「 ![]() (審決翻訳) そして、上記のLEDライト装置110は踏段本体101の上面周辺にLEDライトを設けることとし、且つLEDライト装置(設置は誤記と認める。以下同様。)110は赤緑両色ライトとする。LEDライトをインテリジェントな踏段100の上面周辺に設け、LEDライトの明かりをつける時は、インテリジェントな踏段100の周囲を全て照らすことができて、提示効果は明らかでありかつ外形は同じくとても美しい。また、LEDライト装置110が赤緑両色LEDライトであるために、異常事態、あるいは故障が発生した時、赤色ライトの明かりをつけるか、あるいは赤緑両色の明かりを明滅して提示し、比較的目立った提示効果は更に好ましい;緑色ライトの明かりをつけたインテリジェントな踏段100の照明は、正常時に動作することとなり、乗客に踏段をはっきり見て取るらせることができてよい。」 (6)引用文献6に記載された事項について 引用文献6には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0013】 図1(a)において、11a,11b,11cは3個の踏段であり、その外縁に近い位置に、踏段11aにはコの字状に、また踏段11b、11cにはニの字状に、溝12が設けられその中に各々注意灯12a,12b,12cが設けられている。また踏段11cの先端に近く車椅子の車輪がくる位置には、車椅子が外に出ないように突起形状をした車止め13a,13bが設置され、これらの車止め13a,13b内にも注意灯14a,14bが設置されている。」 イ 「【0018】 なお上記実施形態では、注意灯12a,12b,12c,14a,14bはすべて点灯するものとしたが、注意灯12a,12b,12cのみを点灯させ、注意灯14a,14bを点滅させるとか、注意灯14a,14bのみを点灯させ、注意灯12a,12b,12cを点滅させるように一部を点滅させることもできる。また、これら全部の注意灯を点滅させることもできる。このように注意灯を点滅させると、点灯するだけよりも一層、乗客の注意を喚起することができる利点がある。 【0019】 なお、各踏段に設けた注意灯は同時に点滅させるだけでなく、オンオフの時点を順次変えて点滅させるようにすることもできる。また、上記実施形態のおける注意灯14a,14bはなくともよい。」 (7)引用文献7に記載された事項について 引用文献7には、以下の事項が記載されている。 「【0020】 図3は、エスカレータ10の1つの踏段30を示す斜視図である。図4は、マイクロスイッチ42が上側踏段30により押される状態を示している図3のA-A断面対応図である。踏段30は、利用者が乗降可能な略矩形状の踏板33と、踏板33の進行方向(図3の左右方向)一方側(図3の右側)の端部に略直角に結合されたライザー34とを有する。踏板33は、金属製の踏板本体33aと、踏板本体33aの左右両端部、及びライザー34とは反対側の端部に固定された複数の樹脂製のデマケーションクリート33b、33cとを有する。図3ではデマケーションクリート33b、33cを斜線部で示している。図3において、踏段30のライザー34側端部における左右両端部には第2案内ローラ36が回転可能に取り付けられている。各第2案内ローラ36は、トラス12(図1)において左右両側で上下に離れて支持される図示しない第2レールに沿って移動する。 (8)引用文献8に記載された事項について 引用文献8には、以下の事項が記載されている。 「【0021】 また、図2に示すように、踏板30上のライザー32と反対側の長辺部には、黄色等の目立つ色が付された注意喚起部であるデマケーションコム40が設けられている。また、踏板30は、鉄、アルミニウム合金等の金属により構成される踏板本体42と、踏板本体42の左右両端部上にねじ等で固定された樹脂製のデマケーションクリート(以下、「デマクリート」という。)44とを含む。図3に示すように、踏板本体42及びデマクリート44の上面には、櫛歯が形成されている。また、デマクリート44の表面にも、黄色等の目立つ色の表示部が表示されている。また、ライザー32(図1)の表面にも図示しない櫛歯が形成されている。」 4-3 対比・判断 (1)本願発明1について ア 対比 引用発明の「ステツプ4」、「多数のステツプ4」及び「数個の前記ステツプ4」は、それぞれ本願発明1の「踏段」、「複数個の踏段」及び「数個の前記踏段」に相当する。そして、引用発明の「多数のステツプ4をエンドレスに設けて連続的に回動するエスカレータ」及び「エスカレータ」は、それぞれ本願発明1の「複数個の踏段を無端状に連結した状態で循環移動するエスカレーター」及び「エスカレーター」に相当する。 また、引用発明の「乗客」は、本願発明1の「利用者」に相当し、引用発明の「乗客が乗るクリート20及び左右両側のクリート21」は、本願発明1の「利用者が乗る踏板」に相当する。そして、引用発明の「乗客が乗るクリート20及び左右両側のクリート21」が「備える」「左右方向に並んでそれぞれ進行方向に沿って形成された複数の溝」は、本願発明1の「踏板」が「有する」「左右方向に並んでそれぞれ進行方向に沿って形成された複数の踏板クリート溝」に相当する。 さらに、引用発明の「左右方向に並んでそれぞれ立ち上がり方向に沿って形成された複数のライザークリート溝を備えたクリート20及び左右両側のクリート21の進行方向一端に連結された立ち上がり部であるライザー」は、本願発明1の「踏板の進行方向一端に連結された立ち上がり部であるライザー」に相当する。 また、引用発明の「クリート20の溝に設けられた」「警告のための発光ランプ15の表示灯」は、本願発明1の「踏板クリート溝に配置された」「警告表示部」に相当する。 さらに、引用発明の「ステツプ4に組み込まれた電源部13とを備え」るとの態様は、本願発明1の「踏段に取り付けられた電池とを含み」との態様に相当する。 そして、引用発明の「クリート20」及び「左右両側のクリート21」は、それぞれ本願発明1の「踏板本体」及び「デマケーションクリート」に相当し、引用発明の「クリート20の左右両側の端部にねじ22によって取付けられ」る態様は本願発明1の「踏板本体の左右方向端部にねじ止めによって固定され」る態様に相当するから、結局、本願発明1の「前記踏板は、踏板本体と、前記踏板本体の左右方向端部にねじ止めによって固定され、樹脂により形成されたデマケーションクリートとを有し」との態様と、引用発明の「前記左右両側のクリート21は前記クリート20の左右両側の端部にねじ22によって取付けられ」との態様とは、「前記踏板は、踏板本体と、前記踏板本体の左右方向端部にねじ止めによって固定されたデマケーションクリートとを有し」との態様の限りにおいて一致する。 また同様に、引用発明の「ねじ22」は本願発明1の「ねじ」に相当するから、本願発明1の「前記デマケーションクリートに形成された溝には貫通孔が形成され、前記貫通孔と、前記基板とに貫通したねじが、前記踏板本体に形成されたねじ孔に結合されることにより、前記デマケーションクリートと前記基板とが前記踏板本体に固定される」態様と、引用発明の「前記左右両側のクリート21に形成された溝には貫通孔が形成され、前記貫通孔を貫通したねじ22が、前記クリート20に形成されたねじ孔に結合されて、前記左右両側のクリート21は前記クリート20の左右両側の端部にねじ22によって取付けられ」る態様とは、「前記デマケーションクリートに形成された溝には貫通孔が形成され、前記貫通孔に貫通したねじが、前記踏板本体に形成されたねじ孔に結合されることにより、前記デマケーションクリートが前記踏板本体に固定される」態様の限りにおいて一致する。 そして、引用発明の「クリート20の溝」は本願発明1の「踏板クリート溝」に相当する。また、引用発明の「発光ランプ15」、「点灯」及び「警告」はそれぞれ本願発明1の「ライト部」、「点灯または点滅」及び「注意を喚起」に相当する。さらに、本願発明1の「左右方向端部の踏板クリート溝」と引用発明の「前方と側方の前記クリート20の溝」とは、「側方の前記踏板クリート溝」の限りにおいて一致する。そうすると、結局、本願発明1の「前記警告表示部は、左右方向端部の前記踏板クリート溝に嵌め込まれた長尺薄板状の基板と、前記基板の上部に取り付けられ、前記電池により電力が供給される複数のライト部とを有し、前記複数のライト部の点灯または点滅によって利用者に注意を喚起し」との態様と引用発明の「前記警告のための発光ランプ15の表示灯は、前方と側方の前記クリート20の溝に設けられ、前記電源部13により電力が供給される複数の発光ランプ15を有し、クリート20と左右両側のクリート21との間に配置した縦方向荷重検出器16が動作して前記複数の発光ランプ15の点灯によって乗客に警告する」態様とは、「前記警告表示部は、側方の前記踏板クリート溝に取り付けられ、前記電池により電力が供給される複数のライト部とを有し、前記複数のライト部の点灯または点滅によって利用者に注意を喚起し」との態様の限りにおいて一致する。 してみると、本願発明1と引用発明とは、両者が 「複数個の踏段を無端状に連結した状態で循環移動するエスカレーター踏段であって、 少なくとも一部の前記踏段は、利用者が乗る踏板であって、左右方向に並んでそれぞれ進行方向に沿って形成された複数の踏板クリート溝を有する踏板と、前記踏板の進行方向一端に連結された立ち上がり部であるライザーと、前記踏板クリート溝に配置された警告表示部と、前記踏段に取り付けられた電池とを含み、 前記踏板は、踏板本体と、前記踏板本体の左右方向端部にねじ止めによって固定されたデマケーションクリートを有し、 前記警告表示部は、側方の前記踏板クリート溝に取り付けられ、前記電池により電力が供給される複数のライト部を有し、前記複数のライト部の点灯または点滅によって利用者に注意を喚起し、 前記デマケーションクリートに形成された溝には貫通孔が形成され、前記貫通孔に貫通したねじが、前記踏板本体に形成されたねじ孔に結合されることにより、前記デマケーションクリートが前記踏板本体に固定される、 エスカレーターの踏段。」 である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点) (相違点1) 「デマケーションクリート」の材質に関し、本願発明1は「樹脂により形成された」ものであるのに対し、引用発明では不明である点。 (相違点2) 「警告表示部」に関し、本願発明1は、配置されるのが「左右方向端部の前記踏板クリート溝」であって「デマケーションクリートに形成された溝」であり、構成が「左右方向端部の前記踏板クリート溝に嵌め込まれた長尺薄板状の基板と、前記基板の上部に取り付けられ」た複数の「ライト部」であり、踏板本体への固定が、「デマケーションクリートに形成された溝には貫通孔が形成され、前記貫通孔と、前記基板とに貫通したねじが、前記踏板本体に形成されたねじ孔に結合され」「デマケーションクリートと前記基板とが前記踏板本体に固定される」のに対して、本願発明1では、配置されるのが「側方の前記クリート20の溝」であって、「発光ランプ15」を有することを除き基板の有無等の構成が不明であり、クリート20への固定がどのようになされるのか不明な点。 イ 判断 上記相違点について検討する。 (相違点1)について 上記4-2の(7)及び(8)に記載のとおり、引用文献7及び引用文献8に「樹脂製のデマケーションクリート」が開示されていることからすれば、エスカレーターの技術分野において「デマケーションクリート」を「樹脂により形成された」ものとすることは、周知技術といえるところ、上記4-2の(1)のイに記載のとおり、引用文献1には「マンコンベアの」「ステップの左右両端部を高分子材料と」することが記載され、引用発明における「左右両側のクリート21」を「樹脂により形成された」ものとすることが示唆されているといえるから、引用発明をして上記相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (相違点2)について エスカレーターの踏段において、その「警告表示部」に関し、「左右方向端部の前記踏板クリート溝」であって「デマケーションクリートに形成された溝」に配置し、「左右方向端部の前記踏板クリート溝に嵌め込まれた長尺薄板状の基板と、前記基板の上部に取り付けられ」た複数の「ライト部」として、「デマケーションクリートに形成された溝には貫通孔が形成され、前記貫通孔と、前記基板とに貫通したねじが、前記踏板本体に形成されたねじ孔に結合され」「デマケーションクリートと前記基板とが前記踏板本体に固定される」との構成は、引用文献1ないし8のいずれにも開示ないし示唆されていない。 また、技術常識を参酌しても、エスカレーターの踏段において上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることが、当業者にとって容易であったということはできない。 そして、本願明細書の段落【0023】に「警告表示装置40は、警告表示部41と、警告表示部41にケーブル46で接続された電池としての太陽電池50とを含む。」と記載されているところ、本願発明1は上記相違点2に係る本願発明1の構成を備えることで、同段落【0030】に記載された「既存の踏段に警告表示装置40を容易に取り付けることができるので、既存の踏段から簡易に実現でき」るとの効果を奏するといえる。 してみると、本願発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明ではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではない。 (2)本願発明2ないし5について 本願発明2ないし5は、上記相違点2に係る本願発明1の構成を含む、「前記警告表示部は、左右方向端部の前記踏板クリート溝に嵌め込まれた長尺薄板状の基板と、前記基板の上部に取り付けられ、前記電池により電力が供給される複数のライト部とを有し、前記複数のライト部の点灯または点滅によって利用者に注意を喚起し、前記警告表示部が配置される前記左右方向端部の前記踏板クリート溝は、前記デマケーションクリートに形成された溝であり、前記警告表示部が配置される前記デマケーションクリートに形成された溝には貫通孔が形成され、前記貫通孔と、前記基板とに貫通したねじが、前記踏板本体に形成されたねじ孔に結合されることにより、前記デマケーションクリートと前記基板とが前記踏板本体に固定される」構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 5.小括 以上のとおりであるから、本願発明1ないし5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではなく、その他の拒絶理由も発見できないから、特許出願の際独立して特許を受けることができる発明であるので、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 第4 原査定について 審判請求時の補正により、本願発明1ないし5は、「前記警告表示部は、左右方向端部の前記踏板クリート溝に嵌め込まれた長尺薄板状の基板と、前記基板の上部に取り付けられ、前記電池により電力が供給される複数のライト部とを有し、前記複数のライト部の点灯または点滅によって利用者に注意を喚起し、前記警告表示部が配置される前記左右方向端部の前記踏板クリート溝は、前記デマケーションクリートに形成された溝であり、前記警告表示部が配置される前記デマケーションクリートに形成された溝には貫通孔が形成され、前記貫通孔と、前記基板とに貫通したねじが、前記踏板本体に形成されたねじ孔に結合されることにより、前記デマケーションクリートと前記基板とが前記踏板本体に固定される」という発明特定事項を備えるものとなっており、それぞれ当業者であっても、拒絶査定において引用された引用発明に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 なお、本願発明6及び7については、原査定において拒絶の理由を発見しない発明であるところ、以下のとおりである。 1 引用文献に記載された事項及び引用発明 引用文献1に記載された事項及び引用発明並びに引用文献2ないし8に記載された事項については、第3の4.の4-2の(1)ないし(8)のとおりである。 2 対比・判断 (1)本願発明6について ア 対比 第3の4.の4-3の「(1)本願発明1について」の「ア 対比」において述べたことを考慮すると、さらに、引用発明の「左右方向に並んでそれぞれ立ち上がり方向に沿って形成された複数のライザークリート溝を備えた」「ライザー」は、本願発明6の「前記ライザーは、左右方向に並んでそれぞれ立ち上がり方向に沿って形成された複数のライザークリート溝を有」する態様に相当する。 してみると、本願発明6と引用発明とは、両者が 「複数個の踏段を無端状に連結した状態で循環移動するエスカレーターの踏段であって、 少なくとも一部の前記踏段は、利用者が乗る踏板であって、左右方向に並んでそれぞれ進行方向に沿って形成された複数の踏板クリート溝を有する踏板と、前記踏板の進行方向一端に連結された立ち上がり部であるライザーと、前記踏板クリート溝に配置された警告表示部と、前記踏段に取り付けられた電池とを含み、 前記警告表示部は、左右方向端部の前記踏板クリート溝に嵌め込まれた長尺薄板状の基板と、前記基板の上部に取り付けられ、前記電池により電力が供給される複数のライト部とを有し、前記複数のライト部の点灯または点滅によって利用者に注意を喚起し、 前記ライザーは、左右方向に並んでそれぞれ立ち上がり方向に沿って形成された複数のライザークリート溝を有する、 エスカレーターの踏段。」 である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点) (相違点3) 本願発明6は「前記電池は、左右方向端部の前記ライザークリート溝に嵌め込まれる」ものであるのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。 イ 判断 上記相違点について検討する。 (相違点3)について エスカレーターの踏段において、「電池は、左右方向端部の前記ライザークリート溝に嵌め込まれる」との構成は、引用文献1ないし8のいずれにも開示ないし示唆されていない。 また、技術常識を参酌しても、エスカレーターの踏段において上記相違点3に係る本願発明6の構成とすることが、当業者にとって容易であったということはできない。 そして、本願明細書の段落【0023】に「警告表示装置40は、警告表示部41と、警告表示部41にケーブル46で接続された電池としての太陽電池50とを含む。」と記載されているところ、本願発明6は上記相違点3に係る本願発明6の構成を備えることで、同段落【0030】に記載された「既存の踏段に警告表示装置40を容易に取り付けることができるので、既存の踏段から簡易に実現でき」るとの効果を奏するといえる。 してみると、本願発明6は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明ではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではない。 (2)本願発明7について 本願発明7は、上記相違点3に係る本願発明6の「前記電池は、左右方向端部の前記ライザークリート溝に嵌め込まれる」構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明6と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 小括 したがって、審判請求時の補正により、本願発明6及び7は、「前記電池は、左右方向端部の前記ライザークリート溝に嵌め込まれる」という発明特定事項を備えるものとなっており、それぞれ当業者であっても、拒絶査定において引用された引用発明に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-09-29 |
出願番号 | 特願2017-65036(P2017-65036) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B66B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 加藤 三慶 |
特許庁審判長 |
間中 耕治 |
特許庁審判官 |
内田 博之 田村 嘉章 |
発明の名称 | エスカレーターの踏段 |
代理人 | 特許業務法人YKI国際特許事務所 |