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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B65D |
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管理番号 | 1378714 |
異議申立番号 | 異議2019-700452 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-06-04 |
確定日 | 2021-06-11 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6436439号発明「包装体及び包装体の製造方法」の特許異議申立事件について、令和2年5月13日付け異議の決定に対し、知的財産高等裁判所において決定の一部取消しの判決(令和2年(行ケ)第10075号、令和3年3月11日判決言渡)があったので、決定が取り消された部分の請求項2?6に係る発明についてさらに審理のうえ、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6436439号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕、〔5、6〕について訂正することを認める。 特許第6436439号の請求項2ないし6に係る特許を維持する。 特許第6436439号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 1 本件特許、本件特許異議の申立て 特許第6436439号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成26年11月4日に出願したものであって、平成30年11月22日に特許権の設定登録がされ、平成30年12月12日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和元年6月4日:特許異議申立人古郡裕介(以下「申立人」という。)による特許異議の申立て 令和元年7月31日付け:取消理由通知書 令和元年10月3日:特許権者による意見書の提出及び訂正の請求 令和元年11月20日:申立人による意見書の提出 令和元年12月17日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和2年2月14日:特許権者による意見書の提出及び訂正の請求 令和2年3月19日:申立人による意見書の提出 令和元年10月3日の訂正の請求は、令和2年2月14日の訂正の請求がなされたことにより、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 2 異議の決定 令和2年5月13日付け:異議の決定 「特許第6436439号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕、〔5、6〕について訂正することを認める。 特許第6436439号の請求項2?6に係る特許を取り消す。 特許第6436439号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。」 3 訴えの提起、判決 令和2年6月22日:訴えの提起(令和2年(行ケ)第10075号) 令和3年3月11日:判決言渡 「1 特許庁が異議2019-700452号事件について令和2年5月13日にした異議の決定のうち,特許第6436439号の請求項2?6に係る部分を取り消す。 2 訴訟費用は,被告の負担とする。」 第2 訂正の請求についての判断 1 訂正の内容 令和2年2月14日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6436439号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。 (訂正事項1) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (訂正事項2) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に 「上記熱収縮性フィルムは、90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときの長手方向の収縮率が10%以上60%以下であり、幅方向の収縮率が30%未満である請求項1に記載の包装体。」とあるのを、 「上面開口部を有する容器本体と上記上面開口部を閉塞する蓋体とを備えた蓋付容器を、非熱収縮性フィルムと熱収縮性ポリエステル系フィルムとからなる環状フィルムで包装した包装体であって、 上記非熱収縮性フィルムは、ポリエステル系フィルムにヒートシール層を積層したものであり、厚さが8μm以上30μm以下であり、150℃の熱風中で30分間熱収縮させたときの長手方向の収縮率が5%以下、幅方向の収縮率が4%以下であり、 上記非熱収縮性フィルムは、上記蓋付容器の上面に対応する位置に設けられており、 上記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ポリエステルの全構成ユニットを100モル%として、エチレンテレフタレートユニットを50モル%以上含み、エチレングリコール以外の多価アルコール由来のユニットとテレフタル酸以外の多価カルボン酸由来のユニットとの合計が10モル%以上であり、非晶質成分となりうるモノマーとして、ネオペンチルグリコール及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールが含まれたポリエステル系樹脂からなり、90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときの長手方向の熱収縮率が10%以上60%以下であり、幅方向の収縮率が30%未満であり、 上記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記蓋付容器の下面に対応する位置に設けられており、 上記熱収縮性ポリエステル系フィルムの両端部と上記非熱収縮性フィルムの両端部とが蓋付容器の両側面で接続されて上記環状フィルムとなっていることを特徴とする包装体。」に訂正する。(請求項2を引用する請求項3及び4についても同様に訂正する。) (訂正事項3) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に「熱収縮性フィルム」とあるのを、「熱収縮性ポリエステル系フィルム」に、「請求項1又は2に記載の包装体」とあるのを、「請求項2に記載の包装体」に訂正する。(請求項3を引用する請求項4についても同様に訂正する。) (訂正事項4) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4に、「請求項1?3のいずれかに記載の包装体」とあるのを、「請求項2又は3に記載の包装体」に訂正する。 (訂正事項5) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に 「上面開口部を有する容器本体と上記上面開口部を閉塞する蓋体とを備えた蓋付容器を、非熱収縮性フィルムと熱収縮性フィルムとからなる環状フィルムで包装する包装体の製造方法であって、上記非熱収縮性フィルムは、ポリエステル系フィルムにヒートシール層を積層したものであり、厚さが8μm以上30μm以下であり、上記熱収縮性フィルムは、エチレンテレフタレートを主たる構成ユニットとし、エチレングリコール以外の多価アルコール由来のユニットとテレフタル酸以外の多価カルボン酸由来のユニットとの合計がポリエステル全ユニット100モル%中10モル%以上であり、非晶質成分となりうるモノマーとして、ネオペンチルグリコール及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールが含まれたポリエステル系樹脂からなり、 上記蓋付容器を搬送手段によって所定の方向に搬送する工程と、 上記蓋付容器の上面に対応する位置に上記非熱収縮性フィルムを設ける工程と、 上記蓋付容器の下面に対応する位置に上記熱収縮性フィルムを設ける工程と、 上記蓋付容器の搬送方向前方側面で、上記熱収縮性フィルムの一端部と上記非熱収縮性フィルムの一端部とを接続する工程と、 上記蓋付容器の搬送方向後方側面で、上記熱収縮性フィルムの他端部と上記非熱収縮性フィルムの他端部とを接続する工程とを備えている ことを特徴とする製造方法。」とあるのを、 「上面開口部を有する容器本体と上記上面開口部を閉塞する蓋体とを備えた蓋付容器を、非熱収縮性フィルムと熱収縮性ポリエステル系フィルムとからなる環状フィルムで包装する包装体の製造方法であって、 上記非熱収縮性フィルムは、ポリエステル系フィルムにヒートシール層を積層したものであり、厚さが8μm以上30μm以下であり、150℃の熱風中で30分間熱収縮させたときの長手方向の収縮率が5%以下、幅方向の収縮率が4%以下であり、 上記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ポリエステルの全構成ユニットを100モル%として、エチレンテレフタレートユニットを50モル%以上含み、エチレングリコール以外の多価アルコール由来のユニットとテレフタル酸以外の多価カルボン酸由来のユニットとの合計が10モル%以上であり、非晶質成分となりうるモノマーとして、ネオペンチルグリコール及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールが含まれたポリエステル系樹脂からなり、90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときの長手方向の熱収縮率が10%以上60%以下であり、幅方向の収縮率が30%未満であり、 上記蓋付容器を搬送手段によって所定の方向に搬送する工程と、 上記蓋付容器の上面に対応する位置に上記非熱収縮性フィルムを設ける工程と、 上記蓋付容器の下面に対応する位置に上記熱収縮性ポリエステル系フィルムを設ける工程と、 上記蓋付容器の搬送方向前方側面で、上記熱収縮性ポリエステル系フィルムの一端部と上記非熱収縮性フィルムの一端部とを接続する工程と、 上記蓋付容器の搬送方向後方側面で、上記熱収縮性ポリエステル系フィルムの他端部と上記非熱収縮性フィルムの他端部とを接続する工程とを備えている ことを特徴とする製造方法。」に訂正する。(請求項5を引用する請求項6についても同様に訂正する。) (訂正事項6) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6に「熱収縮性フィルム」とあるのを、「熱収縮性ポリエステル系フィルム」に訂正する。 ここで、訂正前の請求項1?4は、請求項2?4が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあり、また、訂正前の請求項5及び6は、請求項6が、訂正の請求の対象である請求項5の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1?4〕、〔5、6〕について請求されている。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 上記訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 上記訂正事項2は、訂正前の請求項2が、訂正前の請求項1を引用するものであったのを、請求項1の記載を引用しないものとするとともに、訂正前の「熱収縮性フィルム」について、「エチレンテレフタレートを主たる構成ユニットと」することがエチレンテレフタレートをどの程度の量含むことであるのか、及び「非熱収縮性フィルム」について、どの程度の収縮率であるのか、それぞれ特定されていなかったのを、「熱収縮性フィルム」が「熱収縮性ポリエステル系フィルム」であって「ポリエステル全構成ユニットを100モル%として、エチレンテレフタレートユニットを50モル%以上含」むこと、及び「非熱収縮性フィルム」が「150℃の熱風中で30分間熱収縮させたときの長手方向の収縮率が5%以下、幅方向の収縮率が4%以下であ」ることを特定し、さらに、熱収縮性ポリエステル系フィルムの端部と非熱収縮性フィルムの端部との接続が両端部共に蓋付容器の両側面であることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることに該当するものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項2は、本件特許明細書の【0026】、【0056】、図2の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的 上記訂正事項3は、訂正事項2において、訂正前の「熱収縮性フィルム」を「熱収縮性ポリエステル系フィルム」に訂正したことに伴い、文言の整合性をとるとともに、訂正前の「請求項1又は2」を引用するものを「請求項2」を引用するものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に該当するものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項3は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項3は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的 上記訂正事項4は、訂正前の請求項4が、「請求項1?3のいずれか」を引用するものを「請求項2又は3」を引用するものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項4は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項4は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (5)訂正事項5について ア 訂正の目的 上記訂正事項5は、訂正前の請求項5の「熱収縮性フィルム」について、収縮率がどの程度であり、「エチレンテレフタレートを主たる構成ユニットと」することがエチレンテレフタレートをどの程度の量含んでいることであるのか、及び「非熱収縮性フィルム」について、収縮率がどの程度であるのか、それぞれ特定されていなかったのを、「熱収縮性フィルム」が「熱収縮性ポリエステル系フィルム」であって「ポリエステル全構成ユニットを100モル%として、エチレンテレフタレートユニットを50モル%以上含」むこと、及び「非熱収縮性フィルム」が「150℃の熱風中で30分間熱収縮させたときの長手方向の収縮率が5%以下、幅方向の収縮率が4%以下であ」ることを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項5は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項5は、本件特許明細書の【0022】、【0026】、【0056】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (6)訂正事項6について ア 訂正の目的 上記訂正事項6は、訂正事項5において、訂正前の「熱収縮性フィルム」を「熱収縮性ポリエステル系フィルム」に訂正したことに伴い、文言の整合性をとるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に該当するものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項6は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項6は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (7)小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?4〕、〔5、6〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項2?6に係る発明(以下「本件発明2?6」といい、総称して「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2?6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項2】 上面開口部を有する容器本体と上記上面開口部を閉塞する蓋体とを備えた蓋付容器を、非熱収縮性フィルムと熱収縮性ポリエステル系フィルムとからなる環状フィルムで包装した包装体であって、 上記非熱収縮性フィルムは、ポリエステル系フィルムにヒートシール層を積層したものであり、厚さが8μm以上30μm以下であり、150℃の熱風中で30分間熱収縮させたときの長手方向の収縮率が5%以下、幅方向の収縮率が4%以下であり、 上記非熱収縮性フィルムは、上記蓋付容器の上面に対応する位置に設けられており、 上記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ポリエステルの全構成ユニットを100モル%として、エチレンテレフタレートユニットを50モル%以上含み、エチレングリコール以外の多価アルコール由来のユニットとテレフタル酸以外の多価カルボン酸由来のユニットとの合計が10モル%以上であり、非晶質成分となりうるモノマーとして、ネオペンチルグリコール及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールが含まれたポリエステル系樹脂からなり、90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときの長手方向の熱収縮率が10%以上60%以下であり、幅方向の収縮率が30%未満であり、 上記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記蓋付容器の下面に対応する位置に設けられており、 上記熱収縮性ポリエステル系フィルムの両端部と上記非熱収縮性フィルムの両端部とが蓋付容器の両側面で接続されて上記環状フィルムとなっている ことを特徴とする包装体。 【請求項3】 上記熱収縮性ポリエステル系フィルムの幅方向の屈折率が1.570以上1.620以下であることを特徴とする請求項2に記載の包装体。 【請求項4】 上記非熱収縮性フィルムには、ノッチ及び/又はミシン目が形成されている請求項2又は3に記載の包装体。 【請求項5】 上面開口部を有する容器本体と上記上面開口部を閉塞する蓋体とを備えた蓋付容器を、非熱収縮性フィルムと熱収縮性ポリエステル系フィルムとからなる環状フィルムで包装する包装体の製造方法であって、 上記非熱収縮性フィルムは、ポリエステル系フィルムにヒートシール層を積層したものであり、厚さが8μm以上30μm以下であり、150℃の熱風中で30分間熱収縮させたときの長手方向の収縮率が5%以下、幅方向の収縮率が4%以下であり、 上記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ポリエステルの全構成ユニットを100モル%として、エチレンテレフタレートユニットを50モル%以上含み、エチレングリコール以外の多価アルコール由来のユニットとテレフタル酸以外の多価カルボン酸由来のユニットとの合計が10モル%以上であり、非晶質成分となりうるモノマーとして、ネオペンチルグリコール及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールが含まれたポリエステル系樹脂からなり、90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときの長手方向の熱収縮率が10%以上60%以下であり、幅方向の収縮率が30%未満であり、 上記蓋付容器を搬送手段によって所定の方向に搬送する工程と、 上記蓋付容器の上面に対応する位置に上記非熱収縮性フィルムを設ける工程と、 上記蓋付容器の下面に対応する位置に上記熱収縮性ポリエステル系フィルムを設ける工程と、 上記蓋付容器の搬送方向前方側面で、上記熱収縮性ポリエステル系フィルムの一端部と上記非熱収縮性フィルムの一端部とを接続する工程と、 上記蓋付容器の搬送方向後方側面で、上記熱収縮性ポリエステル系フィルムの他端部と上記非熱収縮性フィルムの他端部とを接続する工程とを備えている ことを特徴とする製造方法。 【請求項6】 請求項5に記載の包装体の製造方法であって、上記熱収縮性ポリエステル系フィルムを熱収縮させて、上記環状フィルムを蓋付容器に密着させる工程をさらに有する包装体の製造方法。」 第4 当審の判断 1 取消理由の概要 本件訂正前の本件特許に対して通知した令和元年12月17日付け取消理由通知(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。 (進歩性)本件発明2?6は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証?甲第4号証に記載の事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 <刊行物> 甲第1号証:特開2001-10663号公報 甲第2号証:実願昭58-71513号(実開昭59-176074号 )のマイクロフィルム 甲第3号証:特開2009-143605号公報 甲第4号証:特開平8-301239号公報 甲第5号証:福島幹男、「メルセンの特徴と応用」、東ソー研究・技術 報告、2003年、47巻、p.75-79 甲第6号証:特開2008-280371号公報 甲第7号証:特開2008-280370号公報 2 令和元年12月17日付け取消理由(決定の予告)についての判断 (1)本件発明2の進歩性について ア 甲第1号証に記載された発明 甲第1号証(以下、「甲1」ともいう。他の甲号証も同様。)には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 食品を詰めて施蓋した弁当容器に合成樹脂フィルムチューブを被せて容器周面に締着させてなる電子レンジ加熱用弁当包装体において、 前記チューブは、非熱収縮性フィルム(21)と熱収縮性フィルム(22)とが互いの両端縁を接着代として周方向に接合され、熱収縮性フィルム(22)の周方向幅はチューブ全周長の1/2以下である筒状体であり、熱収縮性フィルム(22)の熱収縮により、弁当容器の外周長さにほぼ等しいチューブ周長に収縮して弁当容器に締着されてなる電子レンジ加熱用弁当包装体。」 (イ)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電子レンジ加熱用弁当包装体、特にプラスチックフィルムのチューブを熱収縮により容器に締着させた包装形態を有する弁当包装体の改良に関する。 【0002】 【従来の技術】コンビニエンスストアー等で販売される弁当は、米飯・惣菜、パスタ等の調理済の食品を、シート成形された浅い箱状のプラスチック容器に詰めて蓋を被せたうえ、フィルムで包んだ包装形態を有している。近時、弁当の包装形態として、熱収縮性プラスチックフィルムからなるチューブ(熱収縮性チューブ)を弁当容器に被せ、熱収縮で容器周囲に締着させることにより、容器本体と蓋とを結束するようにした包装形態が採用されつつある。熱収縮性チューブは、弁当への被嵌操作の便宜のために、装着しようとする弁当の容器断面より幾分大き目の開口径が与えられており、これを弁当に被せたうえ、チューブ開口径が弁当の断面径にほぼ一致するように熱収縮(周長縮減)させ、容器周面に締着させることにより包装を完成する。」 (ウ)「【0008】 【発明の実施の形態】図1は、本発明の弁当包装体に使用されるチューブ(20)を示している。チューブ(20)は、非熱収縮性フィルム(21)と熱収縮性フィルム(22)とを、互いの端縁部(211,212)(221,222)同士を接着代として上下に重ね、熱接着し又は適宜の接着剤を介して接合することにより筒形状に成形されている。 【0009】非熱収縮性フィルムとは、実質的に熱収縮を生じないプラスチックフィルム(100℃における熱収縮率:3%未満)であり、例えばポリエステル,ポリプロピレン,ポリアミドなどからなる二軸延伸フィルムが使用される。チューブ(20)を構成する該フィルム(21)のフィルム厚は10?100μm(好ましくは12?40μm)である。 【0010】熱収縮性フィルム(22)は、一軸延伸フィルムが好ましく、その延伸方向(熱収縮方向)をチューブ(20)の円周方向に向けて非熱収縮性フィルム(21)と接合されてチューブ(20)を構成する。熱収縮性フィルムの熱収縮率は通常約30?70%である。なお、二軸延伸フィルムであっても、主な収縮が一方向(面内の直角2方向における一方の熱収縮率が約30?70%、他方が約15%以下)であれば、上記一軸延伸フィルムと同じように使用することができる。熱収縮性フィルム(22)の材種は、例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等であり、フィルム厚は10?100μm(好ましくは20?40μm)である。」 (エ)「【0012】図2は、チューブ(20)を、装着しようとする弁当(10)に被嵌した状態を示している。同図は、チューブ(20)を、熱収縮性フィルム(22)が弁当容器の下面側に位置する向きに被せた例であるが、それに限定されず、容器の側面に向けてもよく、あるいは下面から側面にまたがるように被せてもよい。」 (オ)「【0015】なお、弁当を食する際の包装体の開封を容易にするための手当てとして、通常は破封用のミシン目をチューブに刻設しているが、本発明のチューブ(20)では必ずしもその必要はない。非熱収縮性フィルム(21)と熱収縮性フィルム(22)との接合代を剥離可能な程度に接着しておけば、その部分を引き剥がすことによりチューブ(20)を取り除くことができる。接着面は剪断剥離力に対して強い接着力を示すが、接着面に垂直の方向は指先の比較的小さな力で引き剥がすことができる。この引き剥がし性をよくするために、接合代は、図1に示すように、熱収縮性フィルム(22)が外側となるように重ねて接着しておくとよい。また接合代(2つの接着代のうち一方だけでよい)が容器の側面に位置する向きにチューブ(20)を装着しておけば開封操作が容易である。」 (カ)「【0016】 【実施例】部分収縮性チューブを使用して弁当包装体を形成する(各構成部品の諸元は図4参照)。 (1)弁当(10) 容器の外周長さ(LA):324mm 横幅(wA):120mm 高さ(hA):42mm (2)チューブ(20) 周長(LC):360mm(余長 36mm=360mm-324mm) 非熱収縮性フィルム(21)の周方向長さ(LN):240mm(接合代を含む) 熱収縮性フィルム(22)の周方向長さ(LS):120mm(接合代を含まず) 熱収縮性フィルム熱収縮率:50%(at.90℃熱水×10秒) 【0017】(3)チューブの装着 チューブを弁当に被せ、加熱処理(熱風吹き付け)により装着する。 熱風温度:100℃,加熱時間:8秒。 (4)弁当包装体 チューブの周長(熱収縮後) :320mm(減縮量ΔL=40mm) 熱収縮性フィルムの幅(熱収縮後) :80mm (減縮量ΔL=40mm) 弁当に装着された状態におけるチューブ(20)の周長320mmは、弁当の外周長さ324mmよりわずかに小さく、程よい締付け力で弁当(10)に締着している。 【0018】上記の加熱装着工程における熱収縮性フィルム(22)の収縮量40mmは、収縮率に換算すると約33%[=(120-80)/120 ×100]であり、約17%(=50-33,%)の熱収縮率が残留していることになるが、その残留分は高温での熱収縮性であり、収縮量も少なく、店頭での電子レンジ加熱で、容器内部の加熱された食品からの熱による二次加熱を受けても、容器を変形させるような大きな収縮は生じない。 【0019】上記実施例における弁当の包装において、本発明の部分収縮チューブ(20)に代え、熱収縮性フィルム(熱収縮率50%)のみからなるチューブ(30)を使用する場合は、約11%の熱収縮率[=(360mm-320mm)/360mm ×100,%]で弁当に装着することができるが、それには加熱条件(温度,時間,熱風量)の微妙な調整を必要とし、効率よい装着作業を安定に維持することは困難である。しかも、装着されたチューブ(20)に残留する熱収縮率が約39%(=50-11,%)と大きいために、電子レンジ加熱において、加熱された食品からの二次加熱を受けると、大きな収縮力が生じ、容器を変形させることになる。 【0020】なお、上記熱収縮性フィルムのチューブ(30)を使用して、実施例と同じ33%の収縮率で弁当容器の周面に締着させる(チューブ周長を熱収縮で320mmに縮小させる)場合は、そのチューブとして、周長約477mmを越える大きな開口径をもつチューブを使用しなければならず、フィルム使用量が多く、材料コスト負担増を免れない。しかも、チューブの開口径が大きいために、弁当(10)に対する装着位置決めが著しく困難となるほか、フィルム表面の印刷表示に大きなゆがみを生じ易くなる等の不具合を付随し実用的でない。」 甲第1号証の実施例(【0016】?【0020】)に着目して整理すると、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「シート成形された浅い箱状のプラスチック容器に蓋を被せた弁当に、チューブ(20)を被せた弁当包装体であって、 チューブ(20)は、非熱収縮性フィルム(21)と熱収縮性フィルム(22)とを、互いの端縁部(211,212)(221,222)同士を接着代として上下に重ね、熱接着することにより筒形状に成形され、 熱収縮性フィルムは熱収縮率は50%(at.90℃熱水×10秒)であり、 チューブ(20)を、熱収縮性フィルム(22)が弁当容器の下面側に位置する向きに被せた、 弁当包装体。」 イ 甲2の記載 (ア)甲2には、以下の記載がある。 「1.考案の名称 商品ラベル 2.実用新案登録請求の範囲 1.商品の外周に巻回して添着される帯状ラベルに於いて,前記帯状ラベルが長手方向に熱収縮性合成樹脂フィルムと非熱収縮性合成樹脂フィルムとを交互に連設して成り,少なくとも前記非熱収縮性フィルムに印刷表示を施して成ることを特徴とする商品ラベル. 3.考案の詳細な説明 ・・・ 更に前記非熱収縮性合成樹脂フィルム5は,第5図に示す如く,耐熱性に優れるラミネートフィルムとすることが好ましい.この場合,例えば熱収縮性合成樹脂フィルム4がポリプロピレンとされたとき,非熱収縮性合成樹脂フィルム5は内層フィルム5aをポリプロピレンとする一方,外層フィルム5bを耐熱性に優れるポリエステル又はナイロンとする.従って,これにより熱収縮性合成樹脂フィルム4を前記内層フィルム5aの内面に重合し,両者を前記固着6に際し熱着すれば両者が同材のポリプロピレンとされているので好適に溶着6される.然し本考案がこれに限定されないことは勿論で,非熱収縮性合成樹脂フィルム5の内層フィルム5aと熱収縮性合成樹脂フィルム4とが異質の樹脂素材であり,又は非熱収縮性合成樹脂フィルム5を単層のフィルムとしこれが熱収縮性合成樹脂フィルム4と異質の樹脂素材であるときは両フィルムの重合個所に感熱性接着剤をパートコートし,該接着剤を介して熱着することが自由である. 」 (イ)以上のとおり、甲2には、熱収縮性合成樹脂フィルムがポリプロピレンとされたとき、非熱収縮性樹脂フィルムの熱収縮性合成樹脂フィルムと接する部分をポリプロピレンとすると、両者は同材のポリプロピレンとされているので好適に熱着することが記載されている(甲2の5頁6行?14行)から、熱収縮性フィルムと非熱収縮性フィルムを接合するために、非熱収縮性フィルムの熱収縮性フィルムと接する側に、熱着するための層、すなわちヒートシール層を設けることが開示されている。 ウ 甲3の記載 (ア)甲3には、以下の記載がある。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 熱収縮性フィルムを基材とするラベルを少なくとも外周の一部に被覆して熱収縮させてなる包装体であって、被覆されているラベルの単位厚み当たりの主収縮方向と直交する方向における直角引裂強度が100N/mm以上300N/mm以下であり、被覆されているラベルの主収縮方向の破断前ヤング率が0.05GPa以上0.15GPa以下であることを特徴とする包装体。 【請求項2】 被覆されているラベルの主収縮方向と直交する方向の引張破壊強さが100MPa以上300MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の包装体。 【請求項3】 被覆されているラベルの主収縮方向と直交する方向の屈折率が1.560以上1.600以下であることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載の包装体。 【請求項4】 被覆されているラベルの主収縮方向と直交する方向のエルメンドルフ引裂荷重および主収縮方向のエルメンドルフ引裂荷重を測定した場合におけるエルメンドルフ比が0.15以上1.5以下であることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の包装体。 【請求項5】 被覆されているラベルの主収縮方向と直交する方向に沿って、ミシン目あるいは一対ノッチが設けられたことを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の包装体。 【請求項6】 未延伸フィルムを、テンター内で幅方向の両端際をクリップによって把持した状態でTg+5℃以上Tg+40℃以下の温度で幅方向に2.5倍以上6.0倍以下の倍率で延伸した後、積極的な加熱操作を実行しない中間ゾーンを通過させた後に、75℃以上140℃以下の温度で1.0秒以上20.0秒以下の時間に亘って熱処理し、30℃/秒以上70℃/秒以下の冷却速度でフィルムの表面温度が45℃以上75℃以下となるまで急速に冷却し、しかる後、Tg+5℃以上Tg+80℃以下の温度で長手方向に2.0倍以上5.5倍以下の倍率で延伸した後に、テンター内で幅方向の両端際をクリップによって把持した状態で90℃以上140℃以下の温度で加熱しながら幅方向に1%以上30%以下の範囲内で緩和させることによって、ラベルに成形する前の熱収縮性フィルムが製造されていることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の包装体。 【請求項7】 熱収縮性フィルムが、熱収縮性ポリエステル系フィルムであることを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の包装体。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、熱収縮性フィルムによって形成されたラベルを被覆した包装体に関するものであり、詳しくは、被覆された熱収縮性フィルムからなるラベルの引き裂き具合が良好な包装体に関するものである。 【背景技術】 【0002】 近年、包装品の外観向上のための外装、内容物の直接的な衝突を避けるための包装、ガラス瓶またはプラスチックボトルの保護と商品の表示を兼ねたラベル包装等の用途に、各種の樹脂からなる熱収縮プラスチックフィルムが広範に使用されている。それらの熱収縮プラスチックフィルムの内、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等からなる延伸フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器、ポリエチレン容器、ガラス容器等の各種の容器において、ラベルやキャップシールあるいは集積包装の目的で使用される。 【0003】 ところが、ポリ塩化ビニル系フィルムは、収縮特性には優れるものの、耐熱性が低い上に、焼却時に塩化水素ガスを発生したり、ダイオキシンの原因となる等の問題がある。また、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムをPET容器等の収縮ラベルとして用いると、容器をリサイクル利用する際に、ラベルと容器を分離しなければならない、という問題もある。一方、ポリスチレン系フィルムは、収縮後の仕上がり外観性が良好であるものの、耐溶剤性に劣るため、印刷の際に特殊な組成のインキを使用しなければならない、という不具合がある。また、ポリスチレン系フィルムは、高温で焼却する必要がある上に、焼却時に異臭を伴って多量の黒煙が発生するという問題がある。それゆえ、耐熱性が高く、焼却が容易であり、耐溶剤性に優れたポリエステル系フィルムが、収縮ラベルとして広汎に利用されるようになってきており、PET容器の流通量の増大に伴って、使用量が増加している傾向にある。 【0004】 また、通常の熱収縮性ポリエステル系フィルムとしては、幅方向に大きく収縮させるものが広く利用されている(特許文献1)。そのように幅方向が主収縮方向である熱収縮性ポリエステル系フィルムは、幅方向への収縮特性を発現させるために幅方向に高倍率の延伸が施されているが、主収縮方向と直交する方向(長手方向)に関しては、低倍率の延伸が施されているだけであることが多く、延伸されていないものもある。そのように、主収縮方向と直交する方向に低倍率の延伸を施したのみのフィルムや、主収縮方向のみしか延伸されていないフィルムは、主収縮方向と直交する方向の機械的強度が劣るという欠点がある(特許文献1等参照)。 【特許文献1】特開平9-239833号公報 【0005】 また、ボトルのラベルは、環状にしてボトルに装着した後に周方向に熱収縮させなければならないため、幅方向に熱収縮する熱収縮性フィルムをラベルとして装着する際には、フィルムの幅方向が周方向となるように環状体を形成した上で、その環状体を所定の長さ毎に切断してボトルに装着しなければならない。したがって、幅方向に熱収縮する熱収縮性フィルムからなるラベルを高速でボトルに装着するのは困難である。それゆえ、最近では、フィルムロールから直接ボトルの周囲に装着する、所謂、胴巻き(ラップ・ラウンド)が可能な長手方向に熱収縮するフィルムが求められており、今後、需要が飛躍的に増大するものと見込まれる。 【0006】 それゆえ、出願人らは、主収縮方向が長手方向であり主収縮方向と直交する方向(幅方向)における機械的強度の高い熱収縮性フィルムを得るべく鋭意検討し、その結果、横延伸-中間熱処理-縦延伸という特殊なプロセスによって、主収縮方向が長手方向であり幅方向における機械的強度の高い熱収縮性フィルムが得られることを見出し、当該熱収縮性フィルムについて、先に提案した(特願2006-165212)。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかしながら、出願人らが先に出願した横延伸-中間熱処理-縦延伸というプロセスによって得られる熱収縮性フィルムは、主収縮方向が長手方向であり幅方向における機械的強度に優れるものの、長手方向の温湯収縮率や熱収縮応力が高すぎるものも存在し、フィルムロールから直接ボトルの周囲に胴巻きした後に熱収縮させた際の収縮仕上がり性が必ずしも良好であるとは言えなかった。また、フィルムロールから直接ボトルの周囲に胴巻きする際には、ある程度ボトルに密着するように巻き付けることができるので、長手方向の温湯収縮率や熱収縮応力をさほど高くする必要はなく、長手方向の温湯収縮率や熱収縮応力が高すぎると、却って、ボトルの周囲に巻き付けて熱収縮させた際にボトルを締め付ける力が強くなりすぎて、ボトルを開栓する際に噴きこぼれが生じる恐れがある。さらに、中央部に“くびれ”を有する形状のペットボトルのラベルとして使用する場合には、長手方向の温湯収縮率や熱収縮応力が高すぎると、熱収縮させた後の仕上がり状態が悪くなってしまう。加えて、上記した横延伸-中間熱処理-縦延伸というプロセスによって得られる熱収縮性フィルムの中には、靱性(粘り強さ)やタフネス性が不十分なものも存在し、そのような靱性やタフネス性が不十分なフィルムに後加工を施すと、強いテンションが加わった場合にフィルムが破断する恐れがあった。 【0008】 本発明の目的は、上記従来の熱収縮性フィルムが有する問題点を解消し、主収縮方向である長手方向への収縮性が良好で、主収縮方向と直交する幅方向における機械的強度が高いのみならず、フィルムロールから直接ボトルの周囲に胴巻きした後に熱収縮させた際の収縮仕上がり性が良好で、後加工時の作業性の良好な熱収縮性ポリエステルフィルムを得て、そのような熱収縮性フィルムからなるラベルが被覆されており、当該ラベルの引き裂き具合が良好な包装体を提供することにある。」 「【発明の効果】 【0016】 本発明の包装体にラベルとして使用される熱収縮性フィルムは、主収縮方向である長手方向への収縮性が適度に高く、主収縮方向と直交する幅方向における機械的強度も高い上、製造されたロール状のフィルムにおいて巻き締まりが起こらず、フィルムロールにシワが入りにくく、開封性が良好である。したがって、当該熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ボトル等の容器のラベルとして好適に用いることができ、ボトル等の容器に短時間の内に非常に効率良く装着することが可能となる上、フィルムロールから直接ボトルの周囲に胴巻きした後に熱収縮させた場合に、熱収縮による収縮仕上がり性が良好である。加えて、装着されたラベルは、非常に良好な目開封性を発現するものとなる。したがって、本発明の包装体は、被覆されたラベルの引き裂き具合が良好であり、被覆されたラベルを適度な力で、主収縮方向と直交する方向に、ミシン目が設けられた場合にはミシン目に沿って綺麗に引き裂くことができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0017】 本発明の包装体は、熱収縮性ポリエステル系フィルムを基材とするラベルを少なくとも外周の一部に被覆して熱収縮させてなるものであり、包装体の対象物としては、飲料用のペットボトルをはじめ、各種の瓶、缶、菓子や弁当等のプラスチック容器、紙製の箱等を挙げることができる(以下、これらを総称して包装対象物という)。なお、通常、それらの包装対象物に、熱収縮性ポリエステル系フィルムを基材とするラベルを熱収縮させて被覆させる場合には、当該ラベルを約2?15%程度熱収縮させて包装体に密着させる。本発明においては、包装対象物にラベルが熱収縮されて装着されたものを包装体と呼んでいる。なお、包装対象物に被覆されるラベルには、印刷が施されていても良いし、印刷が施されていなくても良く、ラベルの主収縮方向と直交する方向にミシン目が設けられていてもよい。」 「【0033】 本発明で好ましく使用される熱収縮性フィルムの厚みは、特に限定するものではないが、10?200μmが好ましく、20?100μmがより好ましい。」 「【0039】 熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステルは、全ポリステル樹脂中におけるエチレングリコール以外のグリコール成分、もしくはテレフタル酸以外のジカルボン酸成分の含有量が15モル%以上であることが好ましく、17モル%以上であるとより好ましく、20モル%以上であると特に好ましい。ここで、共重合成分としてグリコール成分、もしくはジカルボン酸成分となりうる主成分は、たとえば、ネオペンチルグリコール、1、4-シクロヘキサンジオールやイソフタル酸を挙げることができ、必要に応じてそれらを混合することも可能である。なお、共重合成分(エチレングリコール以外のグリコール成分、もしくはテレフタル酸以外のジカルボン酸成分)の含有量が、40モル%を超えると、フィルムの耐溶剤性が低下して、印刷工程でインキの溶媒(酢酸エチル等)によってフィルムの白化が起きたり、フィルムの耐破れ性が低下したりするため好ましくない。また、共重合成分の含有量は、37モル%以下であるとより好ましく、35モル%以下であると特に好ましい。」 「【0042】 また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、90℃の温水中で無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、下式3により算出したフィルムの長手方向の熱収縮率(すなわち、90℃の湯温熱収縮率)が、15%以上40%未満であることが好ましい。熱収縮率={(収縮前の長さ-収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%)・・式3 【0043】 90℃における長手方向の湯温熱収縮率が15%未満であると、収縮量が小さいために、ラベルとして胴巻き方式で巻き付けた後の熱収縮時にシワやタルミが生じてしまうので好ましくなく、反対に、90℃における長手方向の湯温熱収縮率が40%を超えると、ラベルとして胴巻き方式で巻き付けた後の熱収縮時に収縮歪みが生じ易くなったり、いわゆる“飛び上がり”が発生してしまうので好ましくない。なお、90℃における長手方向の湯温熱収縮率の下限値は、17%以上であると好ましく、19%以上であるとより好ましく、21%以上であると特に好ましい。また、90℃における長手方向の湯温熱収縮率の上限値は、38%以下であると好ましく、36%以下であるとより好ましく、34%以下であると特に好ましい。」 「【0059】 また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、長手方向の屈折率が1.560以上1.600未満であると好ましい。長手方向の屈折率が1.600を上回ると、ラベルとする際の溶剤接着性が悪くなるので好ましくない。反対に、1.560未満となると、ラベルとした際のカット性が悪くなるので好ましくない。なお、長手方向の屈折率の上限値は、1.597以下であると好ましく、1.594以下であるとより好ましい。また、長手方向の屈折率の下限値は、1.563以上であると好ましく、1.566以上であるとより好ましい。 【0060】 また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、幅方向の屈折率が1.560以上1.600未満であると好ましい。幅方向の屈折率が1.600を上回ると、ラベルとする際の溶剤接着性が悪くなるので好ましくない。反対に、1.560未満となると、ラベルとした際のカット性が悪くなるので好ましくない。なお、幅方向の屈折率の上限値は、1.598以下であると好ましく、1.596以下であるとより好ましい。また、幅方向の屈折率の下限値は、1.565以上であると好ましく、1.570以上であるとより好ましい。」 「【0104】 また、実施例および比較例に用いたポリエステルは以下の通りである。 【0105】 ポリエステル1:エチレングリコール70モル%、ネオペンチルグリコール30モル%とテレフタル酸とからなるポリエステル(IV0.72dl/g)ポリエステル2:ポリエチレンテレフタレート(IV0.75dl/g) 【0106】 [実施例1] 上記したポリエステル1とポリエステル2とを重量比70:30で混合して押出機に投入した。しかる後、その混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さが200μmの未延伸フィルムを得た。このときの未延伸フィルムの引取速度(金属ロールの回転速度)は、約20m/min.であった。また、未延伸フィルムのTgは67℃であった。しかる後、その未延伸フィルムを、横延伸ゾーン、中間ゾーン、中間熱処理ゾーンを連続的に設けたテンター(第1テンター)に導いた。なお、当該テンターにおいては、横延伸ゾーンと中間熱処理ゾーンとの中間に位置した中間ゾーンの長さが、約40cmに設定されている。また、中間ゾーンにおいては、フィルムを通過させていない状態で短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、延伸ゾーンからの熱風および熱処理ゾーンからの熱風が遮断されている。 【0107】 そして、テンターに導かれた未延伸フィルムを、フィルム温度が90℃になるまで予備加熱した後、横延伸ゾーンで横方向に85℃で3.7倍に延伸し、中間ゾーンを通過させた後に(通過時間=約1.2秒)、中間熱処理ゾーンへ導き、幅方向に10%緩和させながら、105℃の温度で6.0秒に亘って熱処理することによって厚み60μmの横一軸延伸フィルムを得た。しかる後、テンターの後方に設けられた左右一対のトリミング装置(周状の刃先を有する丸刃によって構成されたもの)を利用して、横一軸延伸フィルムの端縁際(中央のフィルム厚みの約1.2倍の厚みの部分)を切断し、切断部位の外側に位置したフィルムの端部を連続的に除去した。 【0108】 さらに、そのように端部をトリミングしたフィルムを、複数のロール群を連続的に配置した縦延伸機へ導き、予熱ロール上でフィルム温度が70℃になるまで予備加熱した後に、表面温度95℃に設定された延伸ロール間で2.2倍に延伸した。しかる後、縦延伸したフィルムを、表面温度25℃に設定された冷却ロールによって強制的に冷却した。なお、冷却前のフィルムの表面温度は約75℃であり、冷却後のフィルムの表面温度は約25℃であった。また、70℃から25℃に冷却するまでに要した時間は約1.0秒であり、フィルムの冷却速度は、45℃/秒であった。 【0109】 そして、冷却後のフィルムをテンター(第2テンター)へ導き、当該第2テンター内で115℃の雰囲気下で幅方向に15%緩和させながら5.0秒間に亘って熱処理(最終セット)した後に冷却し、両縁部を裁断除去することによって、約30μmの二軸延伸フィルム(熱収縮性フィルム)を所定の長さに亘って巻き取ってなるフィルムロールを得た。 【0110】 <ラベルを装着した包装体の作製> 上記の如く得られたフィルムロールを、約200mmの幅にスリットした上で、所定の長さに分割して巻き取ることによって小型のスリットロールを作成し、そのスリットロールに、予め東洋インキ製造(株)の草・金・白色のインキを用いて、ラベル用の印刷(3色印刷)を繰り返し施した。また、各ラベル用印刷毎に、フィルムロールの長手方向と直交する方向に、フィルム全幅に亘るミシン目(約4mm間隔で約1mm径の円が連続するミシン目を)を、約22mmの間隔で2本平行に形成した。そして、ラベル用の印刷が施されたロール状のフィルムの片方の端部を、500mlのPETボトル(胴直径62mm、ネック部の最小直径25mm)の外周の一部に塗布した粘着剤の上に重ねることによって接着し、その状態で、ロール状のフィルムを所定の長さだけ引き出して、PETボトルの外周に捲回させた。しかる後、ペットボトルの外周で重なり合った熱収縮性フィルム同士を約240℃に調整した溶断シール刃によって溶断シールすることによって、ペットボトルの外周にラベルを被覆させた。そして、FujiAstecInc製スチームトンネル(型式;SH-1500-L)を用い、ラベルを被覆させたペットボトルを、通過時間2.5秒、ゾーン温度80℃の条件下で通過させ、500mlのPETボトルの外周においてラベルを熱収縮させることによってラベルの装着を完了した。なお、装着の際には、ネック部においては、直径40mmの部分がラベルの一方の端になるように調整した。そして、上記の如く得られた熱収縮性フィルム、ラベル(装着前後)、および包装体(ラベルを装着したペットボトル)の特性を上記した方法によって評価した。評価結果を表3、4に示す。 【0111】 [実施例2] 原料であるポリエステル1とポリエステル2との混合比(重量比)を90:10に変更するとともに、縦延伸倍率を2.4倍に変更し、縦延伸後のフィルムを第2テンター内で幅方向に熱緩和させる際の温度を120℃に変更し、当該幅方向の緩和時における緩和量を20%に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって熱収縮性フィルムを連続的に製造した。また、実施例1と同様の方法によってラベルを作製し、そのラベルを実施例1と同様の方法によってペットボトルの外周に装着した。そして、得られたフィルム、装着前後のラベル、および包装体の特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3、4に示す。 【0112】 [実施例3] 実施例1と同様に得られた240μmの未延伸フィルムを第1テンターにおける横延伸倍率を4.0倍に変更するとともに、縦延伸倍率を2.4倍に変更し、縦延伸後のフィルムを第2テンター内で幅方向に緩和させる際の温度を120℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって熱収縮性フィルムを連続的に製造した。また、実施例1と同様の方法によってラベルを作製し、そのラベルを実施例1と同様の方法によってペットボトルの外周に装着した。そして、得られたフィルム、装着前後のラベル、および包装体の特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表3、4に示す。」 「【0115】 【表3】 【0116】 【表4】 【0117】 表3から明らかなように、実施例1?3で得られたフィルムは、いずれも、主収縮方向である長手方向への収縮性が適度に高く、主収縮方向と直交する幅方向への収縮性は非常に低かった。また、実施例1?3で得られたフィルムは、いずれも、溶剤接着強度が高く、長手方向の厚み斑が小さく、ラベル密着性が良好で収縮斑もなく、収縮仕上がり性が良好であった。さらに、実施例1?3の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ミシン目開封性が良好である上、自然収縮率が小さく、製造されたフィルムロールにシワが発生することがなかった。そして、各実施例で得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムからなるラベルを包装した包装体は、いずれもラベルのミシン目開封性が良好であり、ラベルをミシン目に沿って適度な力で綺麗に引き裂くことが可能であった。 【0118】 それに対して、比較例1で得られた熱収縮性フィルムは、長手方向及び幅方向の温湯収縮率が大きいため、ラベルの収縮仕上がり性が良くなかった。また、比較例2で得られた熱収縮性フィルムは、幅方向の温湯収縮率が大きく、ラベルの破断前ヤング率が小さくて、ラベルの収縮仕上がり性が良くない他、靭性、タフネス性の点で満足なものではなかった。また、両比較例で得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムからなるラベルを包装した包装体は、ラベルのミシン目開封性が不良であり、ラベルをミシン目に沿って適度な力で綺麗に引き裂くことができなかった。」 (イ)甲3記載事項について 甲3の段落【0039】には、「熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステルは、全ポリステル樹脂中におけるエチレングリコール以外のグリコール成分、もしくはテレフタル酸以外のジカルボン酸成分の含有量が15モル%以上であることが好ましく、17モル%以上であるとより好ましく、20モル%以上であると特に好ましい。ここで、共重合成分としてグリコール成分、もしくはジカルボン酸成分となりうる主成分は、たとえば、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジオールやイソフタル酸を挙げることができ、必要に応じてそれらを混合することも可能である。なお、共重合成分(エチレングリコール以外のグリコール成分、もしくはテレフタル酸以外のジカルボン酸成分)の含有量が、40モル%を超えると、フィルムの耐溶剤性が低下して、印刷工程でインキの溶媒(酢酸エチル等)によってフィルムの白化が起きたり、フィルムの耐破れ性が低下したりするため好ましくない。また、共重合成分の含有量は、37モル%以下であるとより好ましく、35モル%以下であると特に好ましい。」と記載されており、実施例(甲3の段落【0105】?【0112】)の記載も参酌すると、当該熱収縮性ポリエステル系フィルムは熱収縮フィルムとして用いられるものであるから、甲3には、「包装袋において、熱収縮性フィルムとして、熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、ポリエステルの全構成ユニットを100モル%として、エチレンテレフタレートユニットを60モル%以上含み、エチレングリコール以外の多価アルコール由来のユニットとテレフタル酸以外の多価カルボン酸由来のユニットとの合計が15モル%以上であり、非晶質成分となりうるモノマーとして、ネオペンチルグリコール及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールが含まれたポリエステル系樹脂を用いること」が記載されている(以下、「甲3記載事項」という。)といえる。 エ 対比 本件発明2と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「シート成形された浅い箱状のプラスチック容器に蓋を被せた弁当」は、プラスチック容器が上面開口部を有し、その上面開口部を蓋で閉塞するものであるから、本件発明2の「上面開口部を有する容器本体と上記上面開口部を閉塞する蓋体とを備えた蓋付容器」に相当する。 (イ)甲1発明の「非熱収縮性フィルム(21)と熱収縮性フィルム(22)とを、互いの端縁部(211,212)(221,222)同士を接着代として上下に重ね、熱接着することにより筒形状に成形され」た「チューブ(20)」と、本件発明2の「非熱収縮性フィルムと熱収縮性ポリエステル系フィルムとからなる環状フィルム」とは、「非熱収縮性フィルムと熱収縮性フィルムとからなる環状フィルム」の限りで一致する。 (ウ)甲1発明の「弁当に、チューブ(20)を被せた弁当包装体」と、本件発明2の「蓋付容器を、非熱収縮性フィルムと熱収縮性ポリエステル系フィルムとからなる環状フィルムで包装した包装体」とは、「蓋付容器を、非熱収縮性フィルムと熱収縮性フィルムとからなる環状フィルムで包装した包装体」の限りで一致する。 (エ)甲1発明の「チューブ(20)を、熱収縮性フィルム(22)が弁当容器の下面側に位置する向きに被せた」態様は、チューブ(20)の非熱収縮性フィルム(21)が弁当の上面を覆うことを意味するから、甲1発明の当該態様と本件発明2の「上記非熱収縮性フィルムは、上記蓋付容器の上面に対応する位置に設けられており」、「上記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記蓋付容器の下面に対応する位置に設けられて」いる態様とは、「上記非熱収縮性フィルムは、上記蓋付容器の上面に対応する位置に設けられており」、「上記熱収縮性フィルムは、上記蓋付容器の下面に対応する位置に設けられて」いる態様の限りで一致する。 (オ)甲1発明の「チューブ(20)は、非熱収縮性フィルム(21)と熱収縮性フィルム(22)とを、互いの端縁部(211,212)(221,222)同士を接着代として上下に重ね、熱接着することにより筒形状に成形され」る態様と、本件発明2の「上記熱収縮性ポリエステル系フィルムの両端部と上記非熱収縮性フィルムの両端部とが蓋付容器の両側面で接続されて上記環状フィルムとなっている」態様とは、「上記熱収縮性フィルムの両端部と上記非熱収縮性フィルムの両端部とが接続されて上記環状フィルムとなっている」態様の限りで一致する。 (カ)甲1発明の「弁当包装体」は、本件発明2の「包装体」に相当する。 そうすると、本件発明2と甲1発明とは、以下の点で一致し、相違する。 <一致点> 「上面開口部を有する容器本体と上記上面開口部を閉塞する蓋体とを備えた蓋付容器を、非熱収縮性フィルムと熱収縮性フィルムとからなる環状フィルムで包装した包装体であって、 上記非熱収縮性フィルムは、上記蓋付容器の上面に対応する位置に設けられており、 上記熱収縮性フィルムは、上記蓋付容器の下面に対応する位置に設けられており、 上記熱収縮性フィルムの両端部と上記非熱収縮性フィルムの両端部とが接続されて上記環状フィルムとなっている 包装体。」 <相違点1> 本件発明2は、「上記非熱収縮性フィルムは、ポリエステル系フィルムにヒートシール層を積層したものであり、厚さが8μm以上30μm以下であり、150℃の熱風中で30分間熱収縮させたときの長手方向の収縮率が5%以下、幅方向の収縮率が4%以下であ」るのに対して、甲1発明は、非熱収縮性フィルムが具体的に特定されていない点。 <相違点2> 熱収縮性フィルムについて、本件発明2は、「熱収縮性ポリエステル系フィルム」であって、「ポリエステルの全構成ユニットを100モル%として、エチレンテレフタレートユニットを50モル%以上含み、エチレングリコール以外の多価アルコール由来のユニットとテレフタル酸以外の多価カルボン酸由来のユニットとの合計が10モル%以上であり、非晶質成分となりうるモノマーとして、ネオペンチルグリコール及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールが含まれたポリエステル系樹脂からなり、90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときの長手方向の熱収縮率が10%以上60%以下であり、幅方向の収縮率が30%未満であ」るのに対して、甲1発明は、熱収縮率は50%(at.90℃熱水×10秒)ではあるものの、そのように具体的に特定されていない点。 <相違点3> 環状フィルムについて、本件発明2は、「上記熱収縮性ポリエステル系フィルムの両端部と上記非熱収縮性フィルムの両端部とが蓋付容器の両側面で接続されて」いるのに対して、甲1発明は、熱収縮性フィルムと非熱収縮性フィルムの互いの両端部同士を熱接着しているが、弁当容器の両側面で接続しているか不明である点。 オ 検討 以下、上記相違点について検討する。 <相違点1について> (ア)非熱収縮性フィルムを「厚さが8μm以上30μm以下であり、150℃の熱風中で30分間収縮させたときの長手方向の収縮率が5%であり、幅方向の収縮率が4%以下」とすることについて 甲1の段落【0009】には、「非熱収縮性フィルムとは、実質的に熱収縮を生じないプラスチックフィルム(100℃における熱収縮率:3%未満)であり、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミドなどからなる二軸延伸フィルムが使用される。チューブ(20)を構成する該フィルム(21)のフィルム厚は10?100μm(好ましくは12?40μm)である。」と記載されているから、甲1発明において、非熱収縮性フィルムを「厚さが8μm以上30μm以下であり、150℃の熱風中で30分間収縮させたときの長手方向の収縮率が5%であり、幅方向の収縮率が4%以下」とすることは、当業者が設計上適宜なし得たことであると認められる。 (イ)非収縮性フィルムをポリエステル系フィルムとすることについて 甲1には、非熱収縮フィルムとして、ポリエステル、ポリプロピリン、ポリアミドが記載されている(段落【0009】)から、甲1発明において、非熱収縮フィルムをポリエステル系フィルムにすることは,当業者が容易に想到することができるものである。 (ウ)非熱収縮性フィルムにヒートシール層を積層することについて a 甲2には、熱収縮性フィルムと非熱収縮性フィルムを接合するために、非熱収縮性フィルムの熱収縮性フィルムと接する側に、熱着するための層、すなわちヒートシール層を設けることが開示されている(上記2(1)イ(イ))。 b 特開2010-100331号公報(以下、「参考文献」という。)の段落【0018】、【0032】、【0033】等には、熱収縮性フィルムと非熱収縮性フィルムの間にヒートシール層を設けること、特に、段落【0018】には、非熱収縮性の第1の帯体用原反と熱収縮性の第2の帯体用原反とから容器用の帯封を製造する帯封の製造方法において、第1の帯体用原反は非熱収縮性、第2の帯体用原反は熱収縮性で、両帯体用原反を重ね合わせただけではヒートシールすることができないが、原反をシールする接着剤が施された部位においてヒートシールすることができることが記載されている。 該参考文献においては、一定間隔ごとであっても、その部分には接着剤を重ねるものであり、段落【0033】、【0034】、【図3】及び【図4】によると、接着剤は、幅のあるライン状であることが認められるから、参考文献には、熱収縮性フィルムと非熱収縮性フィルムを接合するために二つのフィルムの間にヒートシール層を設けることが開示されていると認められる。 c 甲2や参考文献の上記記載によると、熱収縮性合成樹脂フィルムと非熱収縮性フィルムを接合するために、二つのフィルムの間にヒートシール層を積層することは、本件特許の出願前の周知技術であることが認められ、ヒートシール層を二つのフィルムのどちらに設けるかは二者択一の事項にすぎないと認められることを考え併せると、非熱収縮性フィルムにヒートシール層を設けることは、当業者が容易に想到することができたものである。 (エ)よって、相違点1に係る本件発明2の構成とすることは、甲1発明から当業者が容易に想到し得たことである。 <相違点2について> 甲1発明及び甲3記載事項は、共に、弁当包装体という技術分野に属するものであると認められる(甲1の段落【0001】、甲3の段落【0017】)。 しかし、甲1発明は、熱収縮性チューブを使用した弁当包装体について、煩雑な加熱収縮の制御を実行することなく、包装時の容器の変形やチューブの歪みを防ぎ、また、店頭で、電子レンジによる再加熱をした際にも弁当容器の変形が生じることを防ぐことを課題とするものである(甲1の段落【0003】、【0004】)のに対し、甲3に記載された発明は、ラベルを構成する熱収縮性フィルムについて、主収縮方向である長手方向への収縮性が良好で、主収縮方向と直交する幅方向における機械的強度が高いのみならず、フィルムロールから直接ボトルの周囲に胴巻きした後に熱収縮させた際の収縮仕上がり性が良好で、後加工時の作業性の良好なものとするとともに、引き裂き具合をよくすることを課題とするもの(甲3の段落【0007】、【0008】)である。 そして、上記課題を解決するために、甲1発明は、非熱収縮性フィルム(21)と熱収縮性フィルム(22)とでチューブ(20)を形成し、熱収縮性フィルム(22)の周方向幅はチューブ全周長の1/2以下である筒状体であり、熱収縮性フィルム(22)の熱収縮により、弁当容器の外周長さにほぼ等しいチューブ周長に収縮して弁当容器に締着されてなるものとしたのに対し、甲3に記載された発明の熱収縮性フィルムは、甲3の特許請求の範囲記載のとおり、各数値を特定したものである。 これらのことからすると、甲1発明と甲3に記載された発明は、課題においてもその解決手段においても共通性は乏しいから、甲3記載事項を甲1発明に適用することが動機付けられているとは認められない。 また、甲1発明と甲3記載事項とでは、ポリエステルフィルムを用いている点が共通するが、包装体用の熱収縮性フィルムを、ポリエステルとすることは、本件特許の出願前の周知技術であると認められ、ポリエステルは極めて多くの種類があることからすると、材料としてポリエステルという共通性があるというだけでは、甲1発明において、熱収縮性フィルムとして、甲3記載事項で示される熱収縮性フィルムを適用することに動機付けがあるということはできない。 以上によると、甲1発明において、熱収縮性フィルムとして、甲3記載事項で示される熱収縮性フィルムを適用する動機付けがあると認めることはできない。 したがって、甲1発明及び甲3記載事項に基いて、相違点2に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 <相違点3について> 甲1には、「図2は、チューブ(20)を、装着しようとする弁当(10)に被嵌した状態を示している。同図は、チューブ(20)を、熱収縮性フィルム(22)が弁当容器の下面側に位置する向きに被せた例であるが、それに限定されず、容器の側面に向けてもよく、あるいは下面から側面にまたがるように被せてもよい。」(段落【0012】)と記載されているから、甲1発明において、熱収縮性フィルム(22)を下面から側面にまたがるようにすることで、熱収縮性フィルム(22)の両端部と非熱収縮性フィルム(21)の両端部とが弁当容器の両側面で接続されるようにすることは、当業者が適宜なし得たことであるということができる。 したがって、甲1発明において、相違点3に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 カ 小括 したがって、上記のとおり、相違点2が容易に想到することができないものである以上、本件発明2は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明3、4の進歩性について 本件発明3、4と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも<相違点1>?<相違点3>で相違する。 したがって、前記(1)のとおり、相違点2が容易に想到することができないものである以上、本件発明3、4は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明5の進歩性について 甲第1号証には、甲1発明の製造方法に係る以下の発明(以下「甲1製法発明」という。)が記載されている。 「シート成形された浅い箱状のプラスチック容器に蓋を被せた弁当に、チューブ(20)を被せた弁当包装体の製造方法であって、 チューブ(20)は、非熱収縮性フィルム(21)と熱収縮性フィルム(22)とを、互いの端縁部(211,212)(221,222)同士を接着代として上下に重ね、熱接着することにより筒形状に成形され、 熱収縮性フィルムは熱収縮率は50%(at.90℃熱水×10秒)であり、 チューブ(20)を、熱収縮性フィルム(22)が弁当容器の下面側に位置する向きに被せた、 弁当包装体の製造方法。」 本件発明5と甲1製法発明とを対比すると、以下の点で一致し、相違する。 <一致点> 「上面開口部を有する容器本体と上記上面開口部を閉塞する蓋体とを備えた蓋付容器を、非熱収縮性フィルムと熱収縮性フィルムとからなる環状フィルムで包装する包装体の製造方法。」 <相違点6> 本件発明5は、「上記非熱収縮性フィルムは、ポリエステル系フィルムにヒートシール層を積層したものであり、厚さが8μm以上30μm以下であり、150℃の熱風中で30分間熱収縮させたときの長手方向の収縮率が5%以下、幅方向の収縮率が4%以下であ」るのに対して、甲1製法発明は、非熱収縮性フィルムが具体的に特定されていない点。 <相違点7> 熱収縮性フィルムについて、本件発明5は、「熱収縮性ポリエステル系フィルム」であって、「ポリエステルの全構成ユニットを100モル%として、エチレンテレフタレートユニットを50モル%以上含み、エチレングリコール以外の多価アルコール由来のユニットとテレフタル酸以外の多価カルボン酸由来のユニットとの合計が10モル%以上であり、非晶質成分となりうるモノマーとして、ネオペンチルグリコール及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールが含まれたポリエステル系樹脂からなり、90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときの長手方向の熱収縮率が10%以上60%以下であり、幅方向の収縮率が30%未満であ」るのに対して、甲1製法発明は、熱収縮率は50%(at.90℃熱水×10秒)ではあるものの、そのように具体的に特定されていない点。 <相違点8> 本件発明5は、「上記蓋付容器を搬送手段によって所定の方向に搬送する工程と、 上記蓋付容器の上面に対応する位置に上記非熱収縮性フィルムを設ける工程と、 上記蓋付容器の下面に対応する位置に上記熱収縮性ポリエステル系フィルムを設ける工程と、 上記蓋付容器の搬送方向前方側面で、上記熱収縮性ポリエステル系フィルムの一端部と上記非熱収縮性フィルムの一端部とを接続する工程と、 上記蓋付容器の搬送方向後方側面で、上記熱収縮性ポリエステル系フィルムの他端部と上記非熱収縮性フィルムの他端部とを接続する工程とを備えている」のに対して、甲1製法発明は、熱収縮性フィルムと非熱収縮性フィルムの両端縁を熱接着しているが、具体的な工程が特定されていない点。 相違点6及び相違点7は、上記相違点1及び2と実質的に同じである。 したがって、前記(1)のとおり、相違点2が容易に想到することができないものである以上、本件発明5は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明6の進歩性について 本件発明6と甲1製法発明とを対比すると、両者は少なくとも<相違点6>?<相違点8>で相違する。 そして、相違点6及び相違点7は、上記相違点1及び2と実質的に同じである。 したがって、前記(1)のとおり、相違点2が容易に想到することができないものである以上、本件発明6は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について (1)実施可能要件について 申立人は、「本件特許明細書の実施例で使用した熱収縮性フィルムと非熱収縮性フィルムはそれぞれ1種のみである。この組合せ以外で目的とする包装体が得られるか、当業者は過度の試行錯誤を要する。 また、実施例で使用した収縮率以外の熱収縮性フィルムの製造方法が不明で実施できない」旨を主張する。 しかしながら、本件特許明細書は、実施例として、非熱収縮性フィルムと熱収縮性フィルムとを市販品を用いて作成することが記載されており(【0072】及び【0073】)、市販品が一般的なものであることを考慮すると、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。 収縮率については、本件発明の特定事項の「長手方向の収縮率が5%以下」及び「幅方向の収縮率が4%以下」について、実施例に係る市販品の収縮率は「1.4%」及び「0.2%」(【0073】)であることを踏まえれば、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。 したがって、申立人の主張は、採用することができない。 (2)サポート要件について 申立人は、「本発明の課題は、段落【0006】に記載されるように、『装置を用いて自動的に蓋付容器を環状フィルムで包装することができ、かつ、非熱収縮性フィルムの端部と熱収縮性フィルムの端部との間に十分な接着力が生ずる環状フィルムとすることができる包装体を提供すること』である。本件特許明細書の実施例で使用し課題を解決した熱収縮性フィルムと非熱収縮性フィルムはそれぞれ1種のみである。このフィルムの組合せから本件特許発明に用いられうる多くの種類のフィルムの組合せまで発明を拡張できない」旨を主張する。 しかしながら、本件発明は、上記(1)で述べた実施例により当業者が課題を解決できると認識できるものである。 したがって、申立人の主張は、採用することができない。 (3)明確性について 申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項1及び5のエチレンテレフタレートを主たる構成ユニット」の「主たる」が不明瞭であることに加えて、「非熱収縮性」及び「熱収縮性」がどの程度の収縮率であれば非熱収縮性フィルムとして使用でき、どの程度の収縮率であれは熱収縮性フィルムとして使用できるか不明である旨を主張する。 しかしながら、本件訂正により、エチレンテレフタレートを含む量及び収縮率についてそれぞれ規定されており、特許請求の範囲の記載は、明確性の要件を満たす。 したがって、申立人の主張は、採用することができない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2?6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項2?6に係る特許を取り消すべき理由はない。 請求項1に係る特許は、本件訂正により、削除されたため、本件特許の請求項1に対して、申立人がした特許異議の申立ては不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (削除) 【請求項2】 上面開口部を有する容器本体と上記上面開口部を閉塞する蓋体とを備えた蓋付容器を、非熱収縮性フィルムと熱収縮性ポリエステル系フィルムとからなる環状フィルムで包装した包装体であって、 上記非熱収縮性フィルムは、ポリエステル系フィルムにヒートシール層を積層したものであり、厚さが8μm以上30μm以下であり、150℃の熱風中で30分間熱収縮させたときの長手方向の収縮率が5%以下、幅方向の収縮率が4%以下であり、 上記非熱収縮性フィルムは、上記蓋付容器の上面に対応する位置に設けられており、 上記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ポリエステルの全構成ユニットを100モル%として、エチレンテレフタレートユニットを50モル%以上含み、エチレングリコール以外の多価アルコール由来のユニットとテレフタル酸以外の多価カルボン酸由来のユニットとの合計が10モル%以上であり、非晶質成分となりうるモノマーとして、ネオペンチルグリコール及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールが含まれたポリエステル系樹脂からなり、90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときの長手方向の熱収縮率が10%以上60%以下であり、幅方向の収縮率が30%未満であり、 上記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記蓋付容器の下面に対応する位置に設けられており、 上記熱収縮性ポリエステル系フィルムの両端部と上記非熱収縮性フィルムの両端部とが蓋付容器の両側面で接続されて上記環状フィルムとなっている ことを特徴とする包装体。 【請求項3】 上記熱収縮性ポリエステル系フィルムの幅方向の屈折率が1.570以上1.620以下であることを特徴とする請求項2に記載の包装体。 【請求項4】 上記非熱収縮性フィルムには、ノッチ及び/又はミシン目が形成されている請求項2又は3に記載の包装体。 【請求項5】 上面開口部を有する容器本体と上記上面開口部を閉塞する蓋体とを備えた蓋付容器を、非熱収縮性フィルムと熱収縮性ポリエステル系フィルムとからなる環状フィルムで包装する包装体の製造方法であって、 上記非熱収縮性フィルムは、ポリエステル系フィルムにヒートシール層を積層したものであり、厚さが8μm以上30μm以下であり、150℃の熱風中で30分間熱収縮させたときの長手方向の収縮率が5%以下、幅方向の収縮率が4%以下であり、 上記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ポリエステルの全構成ユニットを100モル%として、エチレンテレフタレートユニットを50モル%以上含み、エチレングリコール以外の多価アルコール由来のユニットとテレフタル酸以外の多価カルボン酸由来のユニットとの合計が10モル%以上であり、非晶質成分となりうるモノマーとして、ネオペンチルグリコール及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールが含まれたポリエステル系樹脂からなり、90℃の温水中で10秒間熱収縮させたときの長手方向の熱収縮率が10%以上60%以下であり、幅方向の収縮率が30%未満であり、 上記蓋付容器を搬送手段によって所定の方向に搬送する工程と、 上記蓋付容器の上面に対応する位置に上記非熱収縮性フィルムを設ける工程と、 上記蓋付容器の下面に対応する位置に上記熱収縮性ポリエステル系フィルムを設ける工程と、 上記蓋付容器の搬送方向前方側面で、上記熱収縮性ポリエステル系フィルムの一端部と上記非熱収縮性フィルムの一端部とを接続する工程と、 上記蓋付容器の搬送方向後方側面で、上記熱収縮性ポリエステル系フィルムの他端部と上記非熱収縮性フィルムの他端部とを接続する工程とを備えている ことを特徴とする製造方法。 【請求項6】 請求項5に記載の包装体の製造方法であって、上記熱収縮性ポリエステル系フィルムを熱収縮させて、上記環状フィルムを蓋付容器に密着させる工程をさらに有する包装体の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-05-31 |
出願番号 | 特願2014-224065(P2014-224065) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(B65D)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 宮崎 基樹 |
特許庁審判長 |
石井 孝明 |
特許庁審判官 |
村山 達也 藤原 直欣 |
登録日 | 2018-11-22 |
登録番号 | 特許第6436439号(P6436439) |
権利者 | 東洋紡株式会社 二葉化成株式会社 |
発明の名称 | 包装体及び包装体の製造方法 |
代理人 | 特許業務法人アスフィ国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人アスフィ国際特許事務所 |
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