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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 C02F 審判 一部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 C02F 審判 一部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 C02F 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C02F |
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管理番号 | 1378720 |
異議申立番号 | 異議2020-700945 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-12-03 |
確定日 | 2021-08-18 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6702344号発明「好気性生物処理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6702344号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正することを認める。 特許第6702344号の請求項1、5、6に係る特許を維持する。 特許第6702344号の請求項2?4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6702344号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成30年 2月15日を出願日とする出願であって、令和 2年 5月11日にその特許権の設定登録がされ、同年 6月 3日に特許掲載公報が発行され、その後、請求項1?6に係る特許に対して、同年12月 3日に特許異議申立人 瀬戸 美希子により甲第1?6号証を証拠方法として特許異議の申立てがされ、令和 3年 2月24日付けで当審より取消理由が通知され、その指定期間内である同年 4月19日に訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)及び意見書の提出がされたので、期間を指定して申立人に訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)をしたが、申立人からは、当該期間内に何ら応答がなかったものである。 第2 本件訂正請求による訂正の適否 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、以下の訂正事項からなる(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。 (1)訂正事項1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に 「【請求項1】 有機性排水が通水される反応槽と、 該反応槽内に通気方向が上下方向となるように設置された酸素溶解膜を有する酸素溶解膜モジュールと、 該酸素溶解膜モジュールに酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給手段と、 酸素溶解膜モジュールに供給された酸素含有ガスのうち前記酸素溶解膜に溶解しなかった残部よりなる排ガスを槽外に排出する排ガス配管と、 酸素溶解膜モジュールから凝縮水を反応槽外へ排出する排水配管と を備え、 該排水配管の内径は50mm以下であり、その末端は前記酸素溶解膜より高い位置に配置されており、前記凝縮水は、通気LV10?20m/sにより前記排水配管を通じて前記排ガスと共に前記反応槽外へ排出される有機性排水の好気性生物処理装置。」 と記載されているのを、 「流動床担体が充填されており、有機性排水が通水される反応槽と、 該反応槽内に通気方向が上下方向となるように設置された酸素溶解膜を有する酸素溶解膜モジュールと、 該酸素溶解膜モジュールに酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給手段と、 酸素溶解膜モジュールに供給された酸素含有ガスのうち前記酸素溶解膜に溶解しなかった残部よりなる排ガスを該反応槽外に排出すると共に、該酸素溶解膜モジュールから凝縮水を反応槽外へ排出する排水配管(29)と を備え、 該酸素溶解膜モジュールは、複数のユニットを有しており、各ユニットは、 上部ヘッダー(20)と、 下部ヘッダー(21)と、 上端が該上部ヘッダー(20)に連なり、下端が該下部ヘッダー(21)に連なる前記酸素溶解膜と を有しており、 各ユニットの上部ヘッダー(20)の上部は配管を介して上部マニホールド(23)に連結されており、 各ユニットの下部ヘッダー(21)の下部は配管を介して下部マニホルド(24)に連結されており、 前記酸素含有ガス供給手段は、該上部マニホルド(23)に接続されており、 前記排出配管(29)は、一端が該下部マニホルド(24)に接続されており、 該排出配管(29)の内径は50mm以下であり、その他端は前記酸素溶解膜より高い位置に配置されており、前記凝縮水は、通気LV10?20m/sにより該排出配管(29)を通じて前記排ガスと共に前記反応槽外へ排出される有機性排水の好気性生物処理装置。」 に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5、6も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (5)訂正事項5 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に 「請求項1ないし4のいずれかの有機性排水の好気性生物処理装置。」 と記載されているのを、 「請求項1の有機性排水の好気性生物処理装置。」 に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6も同様に訂正する。)。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (7)一群の請求項について 訂正前の請求項2?7は、いずれも訂正前の請求項1を引用するものであるから、訂正事項1?6による特許請求の範囲の訂正は、一群の請求項1?7について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正事項1による訂正のうち、 「有機性排水が通水される反応槽と、」を 「流動床担体が充填されており、有機性排水が通水される反応槽と、」 とする訂正は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項7、明細書の【0023】の記載に基づいて、「反応槽」を「流動床担体が充填」されたものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 イ 訂正事項1による訂正のうち、 「酸素溶解膜モジュールに供給された酸素含有ガスのうち前記酸素溶解膜に溶解しなかった残部よりなる排ガスを槽外に排出する排ガス配管と、 酸素溶解膜モジュールから凝縮水を反応槽外へ排出する排水配管と を備え、 該排水配管の内径は50mm以下であり、その末端は前記酸素溶解膜より高い位置に配置されており、前記凝縮水は、通気LV10?20m/sにより前記排水配管を通じて前記排ガスと共に前記反応槽外へ排出される」を 「酸素溶解膜モジュールに供給された酸素含有ガスのうち前記酸素溶解膜に溶解しなかった残部よりなる排ガスを該反応槽外に排出すると共に、該酸素溶解膜モジュールから凝縮水を反応槽外へ排出する排水配管(29)と を備え、 該酸素溶解膜モジュールは、複数のユニットを有しており、各ユニットは、 上部ヘッダー(20)と、 下部ヘッダー(21)と、 上端が該上部ヘッダー(20)に連なり、下端が該下部ヘッダー(21)に連なる前記酸素溶解膜と を有しており、 各ユニットの上部ヘッダー(20)の上部は配管を介して上部マニホールド(23)に連結されており、 各ユニットの下部ヘッダー(21)の下部は配管を介して下部マニホルド(24)に連結されており、 前記酸素含有ガス供給手段は、該上部マニホルド(23)に接続されており、 前記排出配管(29)は、一端が該下部マニホルド(24)に接続されており、 該排出配管(29)の内径は50mm以下であり、その他端は前記酸素溶解膜より高い位置に配置されており、前記凝縮水は、通気LV10?20m/sにより該排出配管(29)を通じて前記排ガスと共に前記反応槽外へ排出される」 とする訂正は、本件訂正前の「酸素溶解膜モジュール」に対して「排ガス配管」及び「排水配管」がどのように接続されているのかが特定されておらず、また、「排ガス」の排出に関して、「排水配管」が「排ガス配管」を兼ねるものであるか否かが明確でないので、「酸素溶解膜モジュール」、「排ガス配管」及び「排水配管」の関係が明確でなかったのを、願書に添付した明細書の【0026】、【0027】、【0029】、【0030】、【0037】、【0038】、【図2】、【図6】及び【図7】の記載に基づいて、「酸素溶解膜モジュール」に対する「排水配管(29)」の接続の関係を明らかにすると共に、「排ガス」と「凝縮水」が共に「排水配管(29)」により「反応槽」外に排出されることを明らかにするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、前記訂正は、「有機性排水の好気性生物処理装置」の「酸素溶解膜モジュール」の構成を、「複数のユニットを有しており、各ユニットは、上部ヘッダー(20)と、下部ヘッダー(21)と、上端が該上部ヘッダー(20)に連なり、下端が該下部ヘッダー(21)に連なる前記酸素溶解膜とを有」するものに限定し、更に、「酸素含有ガス供給手段」が「上部マニホルド(23)に接続され」、「排出配管(29)」が「下部マニホルド(24)に接続され」るものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮も目的とするものである。 そして、前記訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 ウ 前記ア、イによれば、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (2)訂正事項2?4、6について 訂正事項2?4及び6は、それぞれ、請求項2?4及び7を削除するものであるから、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項5について 訂正事項5は、訂正事項2?4による請求項の削除に伴い、請求項5における選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 独立特許要件について ア 本件特許異議の申立てにおいては、本件訂正前の請求項1?6に係る発明の特許に対して特許異議の申立がされているので、前記請求項1?6のうち請求項1、5及び6に対応する本件訂正後の請求項1、5及び6に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定(独立特許要件)は適用されない。 イ 訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むことから、特許異議の申立てがされていない本件訂正前の請求項7に係る訂正事項6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件が課されることとなるが、訂正事項6は本件訂正前の請求項7を削除するものであり、独立特許要件に違反しない。 4 小括 したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項から第7項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件訂正が認められることは前記第2に記載のとおりであるので、本件特許の請求項1、5及び6に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明5」、「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、5及び6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 流動床担体が充填されており、有機性排水が通水される反応槽と、 該反応槽内に通気方向が上下方向となるように設置された酸素溶解膜を有する酸素溶解膜モジュールと、 該酸素溶解膜モジュールに酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給手段と、 酸素溶解膜モジュールに供給された酸素含有ガスのうち前記酸素溶解膜に溶解しなかった残部よりなる排ガスを該反応槽外に排出すると共に、該酸素溶解膜モジュールから凝縮水を反応槽外へ排出する排水配管(29)と を備え、 該酸素溶解膜モジュールは、複数のユニットを有しており、各ユニットは、 上部ヘッダー(20)と、 下部ヘッダー(21)と、 上端が該上部ヘッダー(20)に連なり、下端が該下部ヘッダー(21)に連なる前記酸素溶解膜と を有しており、 各ユニットの上部ヘッダー(20)の上部は配管を介して上部マニホールド(23)に連結されており、 各ユニットの下部ヘッダー(21)の下部は配管を介して下部マニホルド(24)に連結されており、 前記酸素含有ガス供給手段は、該上部マニホルド(23)に接続されており、 前記排出配管(29)は、一端が該下部マニホルド(24)に接続されており、 該排出配管(29)の内径は50mm以下であり、その他端は前記酸素溶解膜より高い位置に配置されており、前記凝縮水は、通気LV10?20m/sにより該排出配管(29)を通じて前記排ガスと共に前記反応槽外へ排出される有機性排水の好気性生物処理装置。 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】(削除) 【請求項5】 酸素溶解膜モジュールは非多孔質の酸素溶解膜を備えている請求項1の有機性排水の好気性生物処理装置。 【請求項6】 酸素溶解膜が疎水性である請求項5に記載の有機性排水の好気性生物処理装置。 【請求項7】(削除)」 第4 取消理由の概要 令和 3年 2月24日付け取消理由通知書で通知した取消理由の概要は以下のとおりである。 なお、本件特許異議申立てにおける特許法第36条第6項第1号及び第2号についての申立理由は、下記1(1)?(4)において全て採用され、特許法第29条第2項についての申立理由は、下記2において採用されている。 1 特許法第36条第6項第1号及び第2号について (1)本件訂正前の請求項1に係る発明について 本件訂正前の請求項1に係る発明においては、「酸素溶解膜モジュール」に対して「排ガス配管」及び「排水配管」がどのように接続されているのかが特定されておらず、また、「排ガス」は、「排ガス配管」から排出される一方、「凝縮水」とともに「排水配管」を通じても排出されるものであり、「排ガス」の排出に関して、「排水配管」が「排ガス配管」を兼ねるものであるか否かが明確でないので、「酸素溶解膜モジュール」、「排ガス配管」及び「排水配管」の関係が明確でないから、本件訂正前の請求項1に係る発明及び本件訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用する本件訂正前の請求項2?6に係る発明(以下、「訂正前発明1」?「訂正前発明6」という。)は明確でない。 また、このため、訂正前発明1?6と本件特許明細書の【0022】?【0038】、【図1】、【図2】、【図4】?【図7】に記載された三つの実施の形態との関係も明確でないから、訂正前発明1?6が発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。 更に、特に【図1】、【図2】、【図4】?【図7】の記載によれば、本件発明は、「排水配管」を「酸素溶解膜モジュール」の下部に接続することで、酸素溶解膜内から凝縮水が容易に排出されて、本件特許明細書の【0006】に記載される、酸素溶解膜内に凝縮水が生成し、ガス流路や中空糸膜の一部が閉塞し、通気効率が低下する、という課題(以下、「本件課題」という。)を解決するものと認められるが、訂正前発明1?6においては、「排水配管」を「酸素溶解膜モジュール」の下部に接続することが特定されていないので、訂正前発明1?6は本件課題を解決しないものも包含するから、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。 (2)訂正前発明2について 訂正前発明2において、「排水配管」の「末端」が「酸素溶解膜より高い位置に配置され」、更に「排水配管」が「鉛直下向き又は下り勾配を有する」場合、当該「鉛直下向き又は下り勾配」の部分から「酸素溶解膜より高い位置に配置され」る「末端」に至る間の最も低くなる部分に凝縮水が滞留することが推認され、その結果として、酸素溶解膜内から凝縮水が容易に排出されるものとはならず、本件課題を解決できないことが推認される。 そうすると、訂正前発明2は本件課題を解決しないものも包含するから、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。 (3)訂正前発明3について 訂正前発明3は、「排水配管」の「末端」が「酸素溶解膜より高い位置に配置され」る、との発明特定事項を有するものであるが、当業者は、「排水配管」の「末端」が「酸素溶解膜より高い位置に配置され」る「有機性排水の好気性生物処理装置」において、どのように「タンク」及び「ポンプ」を備えるかを想起できないから、訂正前発明3は、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。 (4)訂正前発明4について 当業者は、「排水配管」の「末端」が「酸素溶解膜より高い位置に配置され」る「有機性排水の好気性生物処理装置」において、「排水配管にバルブが設けられる」ことを想起できないから、訂正前発明4は、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。 (5)小括 したがって、訂正前発明1?6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 特許法第29条第2項について 甲第1号証:国際公開第2016/209235号 甲第5号証:特表2005-511303号公報 甲第6号証:国際公開第2014/130043号 訂正前発明1?6は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明及び本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前発明1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第5 当審の判断 1 特許法第36条第6項第1号及び第2号について (1)本件発明1について ア 本件発明1においては、「酸素溶解膜モジュール」の「ユニット」の「下部ヘッダー(21)」の下部が「配管を介して下部マニホルド(24)に連結」され、「排出配管(29)」の「一端が下部マニホルド(24)」に接続されることが特定されているから、「酸素溶解膜モジュール」と「排出配管(29)」の接続の関係は明確であり、本件発明1においては、「排ガス配管(29)」が、「排ガスを反応槽外に排出すると共に」、「凝縮水を反応槽外へ排出する」ものであることが特定されているから、「排ガス配管(29)」が「排ガス」と「凝縮水」の排出を兼ねるものであることが明らかである。 したがって、本件発明1における「酸素溶解膜モジュール」及び「排ガス配管(29)」の関係は明確である。 イ また、「排ガスを該反応槽外に排出すると共に」、「凝縮水を反応槽外へ排出する排水配管(29)」「を備え」、「該排出配管(29)の内径は50mm以下であり、その他端は前記酸素溶解膜より高い位置に配置され、前記凝縮水は、通気LV10?20m/sにより該排出配管(29)を通じて前記排ガスと共に前記反応槽外へ排出される」、との発明特定事項を有する本件発明1は、本件特許明細書の【0037】?【0038】、【図6】、【図7】に記載された三つ目の実施の形態と合致するものである。 ウ 更に、本件発明1において、「酸素溶解膜モジュール」の「ユニット」の「下部ヘッダー(21)」の下部が「配管を介して下部マニホルド(24)に連結」され、「排出配管(29)」の「一端が下部マニホルド(24)」に接続されることが特定されていることからみれば、本件発明1は、「排ガス」と「凝縮水」を共に排出する「排出配管(29)」を、「酸素溶解膜モジュール」の下部に接続するものといえ、そうすることで、酸素溶解膜内から凝縮水が容易に排出されて、本件課題を解決するものといえるから、本件課題を解決しないものを包含するものではない。 エ 前記ア?ウによれば、本件発明1は明確であり、また、発明の詳細な説明に記載された発明というべきである。 そして、これらのことは本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明5及び6についても同様であるので、前記第4の1(1)の取消理由はいずれも理由がない。 (2)請求項2?4について 本件訂正により請求項2?4は削除されたので、前記第4の1(2)?(4)の取消理由はいずれも理由がない。 (3)小括 したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2項に規定する要件を満たしているというべきであるので、前記第4の1の取消理由はいずれも理由がない。 2 特許法第29条第2項について 本件特許異議申立てにおける特許法第29条第2項についての申立理由は、前記第4の2において採用されたものであるが、本件特許異議申立においては、前記甲第1、5?6号証に加えて、本件特許の出願日当時の周知技術を示す文献として下記甲第2?4号証も挙げられているので、事案に鑑み、以下、下記甲第2?4号証の記載事項も勘案して検討する。 甲第2号証:米国特許出願公開第2002/0020666号明細書 甲第3号証:玉置明善ら,「化学プラント建設便覧」,改訂2版,1992年4月,丸善,p.684-686 甲第4号証:空気調和・衛生工学会,「空気調和設備計画設計の実務の知識」,第1版第3刷,平成9年2月25日,株式会社オーム社,p.242-243,282-283 (1)甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 ア 甲第1号証には、以下(1a)?(1h)の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「…」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。 (1a)「7. A reactor comprising a tank; water in the tank; and, a plurality of gas transfer membranes floating in the water in the tank.」(特許請求の範囲) (当審訳:7. タンク;タンク内の水;及びタンク内の水に浮かぶ複数のガス移送膜を含む反応器。) (1b)「[0023] Figure 1A shows a module 10 having many cords 12 potted into upper headers 14 and lower headers 15.… [0024] Referring to Figure 1B, many modules 10 can be combined to form a cassette 16. … [0025] Figures 2A and 2B show top and side views of a floating membrane supported biofilm unit 30. This unit 30 has two cassettes 16 attached by their frames 18 to two floats 32.… … [0029] Figure 3 shows, from above, a reactor 50 with three of the larger units 40 floating in a tank 52. In use, water being treated, such as mixed liquor or wastewater, flows through the tank 52. The water in the tank 52 has a free surface.… … [0032] …One hose 56 is connected to each unit 40 in Figure 3, and could be used to supply oxygen to a unit 40 operating in a dead end process or without collecting the exhaust gas. Alternatively, each unit 40 may have one or more other hoses 56, for example to supply mixing/scouring gas separately from process gas, to collect exhaust gas, for monitoring, or to remove condensate or other liquids. … [0034] A floating unit 40 can be used in a variety of membrane biofilm reactors. Depending on the type of a gas supplied into it, the unit 40 can be used for, among others, aerobic treatment of wastewater. In this case, the process gas is an oxygen-containing gas such as air.… … [0037] Figure 4 shows a module 10 connected to various hoses 56. A single module 10 is shown to simplify the figure, but numerical parameters in the following description are for a floating unit 40 having four cassettes 16. One hose 56 is used for carrying a generally continuous flow of process air to the membranes in the module 10. This air enters through the upper header 15, flows down the lumens of the hollow fiber membranes in the cords 12, collects in lower header 14, and exhausts through a hose 56 that preferably extends back above the surface of the water. Flowing process gas from top to bottom helps carry any condensate or leakage water to the bottom header 14 where it can be removed as described further below. The flow rate of process air for a four-cassette unit 40 is 30-60 Nm^(3)/h, with a target value of 40-50 Nm^(3)/h. This can normally be handled in a 25mm (1 inch) hose. … [0039] The exhaust discharge pressure is a design choice. An increased exhaust discharge pressure can be provided using an orifice in the exhaust discharge hose 56.… … [0045] Another hose 56 may be used for one or more ancillary functions such as removing liquid from a module 10, monitoring gasses exhausted from the module 10, or both. This ancillary function hose 56 may be a small tube, for example about 5mm for a four cassette unit 40. In the example shown in Figure 4, the ancillary hose 56 is connected at a low point, preferably at or below the bottom of the lower headers 14, where liquid from inside of the modules 10 collects. The liquid may contain condensate or leakage or both. The ancillary hose 56 may be attached to another hose 56, for example the process air hose 56, to extend from the unit 40 to the edge do the tank 52.The distal end of the ancillary hose 56 is connected to a monitoring station 70 shown in Figure 6. The monitoring station 70 may be located on the ground or a deck near the tank 52 and be connected to ancillary hoses 56 from multiple units 40. [0046] At the monitoring station 70, each ancillary hose 56 is equipped with a valve 72, for example an on/off isolation valve. The valve 72 allows liquid to be removed, or exhaust monitored, from each unit 40 separately. For example, each unit may be treated once per hour or once per day in sequence. The monitoring station 70 has a vacuum pump 74, a liquid reservoir 76 on a load cell 78 and a liquid discharge line 80. [0047] When monitoring or testing a unit 40, the associated isolation valve 72 is opened (as shown for the top ancillary hose 56 in Figure 6) while the other isolation valves 72 remain closed. Liquid is pumped from the unit 40 using the vacuum pump 74 and collected in the condensate reservoir 76. Once the mass of liquid removed has stabilized, indicating that substantially all the liquid has been removed from the unit 40, the mass is recorded using the load cell 78 and the condensate is discharged through discharge line 80. Alternatively, the liquid removed may be measured by a level sensor, or by another method. At or around the same time, the exhaust gas is monitored using one or more instruments 82 to determine the concentration of one or more gases, such as oxygen or carbon dioxide, that provide an indication of biological activity. When the testing for one unit 40 is done, its associated isolation valve 72 is closed and the process can be repeated for another unit 40. Typically, all of the units 40 are tested in sequence. … [0049] …Most of the exhaust air is vented, optionally through a restriction to cause the process air to be at higher pressure while in the module 10. Only a small amount of the exhaust air is required for exhaust gas monitoring, and this small amount can be withdrawn through the ancillary hose 56 to reduce the length of large diameter hose 56 required.」 (当審訳:[0023] 図1Aは、上側ヘッダ14及び下側ヘッダ15にポッティングされた多くのコード12を有するモジュール10を示す。… [0024] 図1Bを参照すると、多くのモジュール10を組み合わせてカセット16を形成することができる。… [0025] 図2A及び2Bは、浮遊膜支持バイオフィルムユニット30の上面図及び側面図を示す。このユニット30は、フレーム18によって2つのフロート32に取り付けられた2つのカセット16を有する。 … [0029] 図3は、上部から、タンク52内に浮遊する3つのより大きなユニット40を有する反応器50を示す。使用時、混合液または廃水などの処理中の水は、タンク52を通って流れる。タンク52内の水は自由表面を有する。… … [0032] …1つのホース56は、図3の各ユニット40に接続され、デッドエンドプロセスで作動するユニット40に酸素を供給するために、または排気ガスを収集することなく使用され得る。別法として、各ユニット40は、例えば、プロセスガスとは別個に混合/圧縮ガスを供給するために、排ガスを収集するために、監視するために、または凝縮液もしくは他の液体を除去するために、1つ以上の他のホース56を有してもよい。 … [0034] 浮遊ユニット40は、様々な膜バイオフィルム反応器において使用することができる。その中に供給されるガスの種類に応じて、ユニット40は、特に廃水の好気処理に使用することができる。この場合、処理ガスは空気等の酸素含有ガスである。 … [0037] 図4は、様々なホース56に接続されたモジュール10を示す。図を簡略化するために単一のモジュール10が示されているが、以下の説明における数値パラメータは、4つのカセット16を有する浮動ユニット40に対するものである。1つのホース56は、モジュール10内の膜にプロセス空気のほぼ連続的な流れを運ぶために使用される。この空気は、上側ヘッダ15を通って入り、コード12内の中空糸膜の管腔を下に流れ、下側ヘッダ14内に集まり、好ましくは水の表面の上方に戻って延びるホース56を通って排出する。プロセスガスを上部から底部へ流すことは、任意の凝縮水または漏出水を底部ヘッダ14へ運ぶのに役立ち、そこで、以下にさらに記載するように除去され得る。4カセットユニット40のプロセス空気の流量は 30-60Nm^(3)/h であり、目標値は40-50Nm^(3)/h である。これは、通常、25mm(1 inch)ホースで取り扱うことができる。 … [0039] 排気排出圧力は設計上の選択である。排気排出ホース56のオリフィスを用いて排気排出圧力を増大させることができる。… … [0045] 別のホース56は、モジュール10から液体を除去すること、モジュール10から排出される気体を監視すること、またはその両方などの1つ以上の補助機能のために使用されてもよい。この補助機能ホース56は、小型チューブ、例えば4カセットユニット40については約5mmとすることができる。図4に示される例では、補助ホース56は、モジュール10の内部からの液体が集まる低点、好ましくは下部ヘッダ14の底部またはその下に接続される。液体は、凝縮物もしくは漏出、または両方を含み得る。補助ホース56は、ユニット40からタンク52の縁部まで延びるように、別のホース56,例えばプロセス空気ホース56に取り付けられてもよい。補助ホース56の遠位端は、図6に示される監視ステーション70に接続される。監視ステーション70は、タンク52の近くの地面またはデッキに配置され、 複数のユニット40からの補助ホース56に接続されてもよい。 [0046] 監視ステーション70において、各補助ホース56はバルブ72、例えばオン/オフ隔離バルブを備える。バルブ72は、各ユニット40から別々に除去された液体または排気を監視することを可能にする。例えば、各ユニットは、1時間当たり1回、または1日当たり1回順次に処置され得る。監視ステーション70は、真空ポンプ74と、ロードセル78上の液体リザーバ76と、液体排出ライン80とを有する。 [0047] ユニット40を監視または試験するとき、関連する隔離弁72は開かれ(図6の上部補助ホース56について示されている)、他の隔離弁72は閉じたままである。液体は、真空ポンプ74を使用してユニット40から圧送され、凝縮液リザーバ76内に回収される。除去された液体の質量が安定し、実質的に全ての液体がユニット40から除去されたことを示すと、質量はロードセル78を使用して記録され、凝縮液は排出ライン80を通って排出される。あるいは、除去された液体は、レベルセンサまたは他の方法によって測定されてもよい。同時に、排気ガスは、生物学的活性の指標を提供する酸素または二酸化炭素などの1つ以上のガスの濃度を決定するために、1つ以上の計器82を使用して監視される。1つのユニット40に対する試験が行われるとき、それに関連する隔離弁72は閉じられ、プロセスは別のユニット40に対して繰り返され得る。典型的には、ユニット40の全てが順に試験される。 … [0049] …排出空気の大部分は、任意選択で、モジュール10内にある間にプロセス空気をより高い圧力にするための制限を通じて単に排気される。排気監視には少量の排気しか必要とせず、必要な大径ホース56の長さを短くするため、この少量の排気を補助ホース56を通して引き抜くことができる。) (1c)「 」 (1d)「 」 (1e)「 」 (1f)「 」 (1g)「 」 (1h)「 」 イ 前記ア(1a)によれば、甲第1号証には「反応器」が記載されており、当該「反応器」は、タンク;タンク内の水;及びタンク内の水に浮かぶ複数のガス移送膜を含むものである。 また、前記ア(1b)?(1h)によれば、前記「反応器」は、タンク内に浮遊するユニットを有し、ユニットは複数のカセットを有し、更に多くのモジュールを組み合わせてカセットを形成したものであり、使用時、混合液または廃水などの処理中の水は、タンクを通って流れるものであり、1つのホースが各ユニットに接続され、デッドエンドプロセスで作動するユニットに酸素を供給するために、または排気ガスを収集することなく使用され得るものであり、別法として、各ユニットは、プロセスガスとは別個に混合/圧縮ガスを供給するために、排ガスを収集するために、監視するために、または凝縮液もしくは他の液体を除去するために、1つ以上の他のホースを有してもよいものであり、ユニットは、特に廃水の好気処理に使用することができ、この場合、処理ガスは空気等の酸素含有ガスであるものであり、1つのホースは、モジュール内の膜にプロセス空気のほぼ連続的な流れを運ぶために使用され、この空気は、上側ヘッダを通って入り、コード内の中空糸膜の管腔を下に流れ、下側ヘッダ内に集まり、好ましくは水の表面の上方に戻って延びるホースを通って排出すものであり、プロセスガスを上部から底部へ流すことは、任意の凝縮水または漏出水を底部ヘッダへ運ぶのに役立ち、そこで、以下にさらに記載するように除去され得るものであり、排気排出圧力は設計上の選択であり、排気排出ホースのオリフィスを用いて排気排出圧力を増大させることができるものである。 また、別のホースが、モジュールから液体を除去すること、モジュールから排出される気体を監視すること、またはその両方などの1つ以上の補助機能のために使用されてもよいものであり、この補助機能ホースは、例えば4カセットユニットについては約5mmとすることができるものであり、補助ホースは、モジュールの内部からの液体が集まる低点、好ましくは下部ヘッダの底部またはその下に接続され、液体は、凝縮物もしくは漏出、または両方を含み得るものであり、補助ホースは、ユニットからタンクの縁部まで延びるように、別のホース、例えばプロセス空気ホースに取り付けられてもよいものであり、補助ホースの遠位端は、監視ステーションに接続され、監視ステーションは、タンクの近くの地面またはデッキに配置され、複数のユニットからの補助ホースに接続されてもよいものである。 そして、監視ステーションにおいて、各補助ホースはバルブ、例えばオン/オフ隔離バルブを備え、バルブは、各ユニットから別々に除去された液体または排気を監視することを可能にするものであり、例えば、各ユニットは、1時間当たり1回、または1日当たり1回順次に処置され得るものであり、監視ステーションは、真空ポンプと、ロードセル上の液体リザーバと、液体排出ラインとを有し、ユニットを監視または試験するとき、関連する隔離弁は開かれ、他の隔離弁は閉じたままであり、液体は、真空ポンプを使用してユニットから圧送され、凝縮液リザーバ内に回収されるものであり、同時に、排気ガスは、生物学的活性の指標を提供する酸素または二酸化炭素などの1つ以上のガスの濃度を決定するために、1つ以上の計器を使用して監視され、1つのユニットに対する試験が行われるとき、その関連する隔離弁は閉じられ、プロセスは別のユニットに対して繰り返され得るものであり、典型的には、ユニットの全てが順に試験されるものであり、排出空気の大部分は、任意選択で、モジュール内にある間にプロセス空気をより高い圧力にするための制限を通じて単に排気され、排気監視には少量の排気しか必要とせず、必要な大径ホースの長さを短くするため、この少量の排気を補助ホースを通して引き抜くことができるものである。 ウ 前記イによれば、甲第1号証には、 「タンク;タンク内の水;及びタンク内の水に浮かぶ複数のガス移送膜を含む反応器であって、 前記反応器は、タンク内に浮遊するユニットを有し、ユニットは複数のカセットを有し、更に多くのモジュールを組み合わせてカセットを形成したものであり、使用時、混合液または廃水などの処理中の水は、タンクを通って流れるものであり、 1つのホースが各ユニットに接続され、デッドエンドプロセスで作動するユニットに酸素を供給するために、または排気ガスを収集することなく使用され得るものであり、別法として、各ユニットは、プロセスガスとは別個に混合/圧縮ガスを供給するために、排ガスを収集するために、監視するために、または凝縮液もしくは他の液体を除去するために、1つ以上の他のホースを有してもよいものであり、 ユニットは、特に廃水の好気処理に使用することができ、この場合、処理ガスは空気等の酸素含有ガスであるものであり、1つのホースは、モジュール内の膜にプロセス空気のほぼ連続的な流れを運ぶために使用され、この空気は、上側ヘッダを通って入り、コード内の中空糸膜の管腔を下に流れ、下側ヘッダ内に集まり、好ましくは水の表面の上方に戻って延びるホースを通って排出すものであり、プロセスガスを上部から底部へ流すことは、任意の凝縮水または漏出水を底部ヘッダへ運ぶのに役立ち、そこで、以下にさらに記載するように除去され得るものであり、 排気排出圧力は設計上の選択であり、排気排出ホースのオリフィスを用いて排気排出圧力を増大させることができるものであり、 別のホースが、モジュールから液体を除去すること、モジュールから排出される気体を監視すること、またはその両方などの1つ以上の補助機能のために使用されてもよいものであり、この補助機能ホースは、例えば4カセットユニットについては約5mmとすることができるものであり、補助ホースは、モジュールの内部からの液体が集まる低点、好ましくは下部ヘッダの底部またはその下に接続され、液体は、凝縮物もしくは漏出、または両方を含み得るものであり、補助ホースは、ユニットからタンクの縁部まで延びるように、別のホース、例えばプロセス空気ホースに取り付けられてもよいものであり、補助ホースの遠位端は、監視ステーションに接続され、監視ステーションは、タンクの近くの地面またはデッキに配置され、複数のユニットからの補助ホースに接続されてもよいものであり、 監視ステーションにおいて、各補助ホースはバルブ、例えばオン/オフ隔離バルブを備え、バルブは、各ユニットから別々に除去された液体または排気を監視することを可能にするものであり、例えば、各ユニットは、1時間当たり1回、または1日当たり1回順次に処置され得るものであり、監視ステーションは、真空ポンプと、ロードセル上の液体リザーバと、液体排出ラインとを有し、 ユニットを監視または試験するとき、関連する隔離弁は開かれ、他の隔離弁は閉じたままであり、液体は、真空ポンプを使用してユニットから圧送され、凝縮液リザーバ内に回収されるものであり、同時に、排気ガスは、生物学的活性の指標を提供する酸素または二酸化炭素などの1つ以上のガスの濃度を決定するために、1つ以上の計器を使用して監視され、1つのユニットに対する試験が行われるとき、その関連する隔離弁は閉じられ、プロセスは別のユニットに対して繰り返され得るものであり、典型的には、ユニットの全てが順に試験されるものであり、 排出空気の大部分は、任意選択で、モジュール内にある間にプロセス空気をより高い圧力にするための制限を通じて単に排気され、排気監視には少量の排気しか必要とせず、必要な大径ホースの長さを短くするため、この少量の排気を補助ホースを通して引き抜くことができるものである、反応器。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 (2)対比・判断 ア 本件発明1について (ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「タンク」は、本件発明1における「有機性排水が通水される反応槽」に相当するところ、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 ・相違点1:本件発明1は、「反応槽」が「流動床担体が充填され」るものであるのに対して、甲1発明は、「タンク」が「流動床担体が充填され」るものではない点。 (イ)そして、甲1発明において、「タンク」を「流動床担体が充填され」るものとする動機付けは存在しないので、甲1発明において、「タンク」を、「流動床担体が充填され」る、との前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることを当業者が容易になし得るものではないし、更に、このことは、甲第2?6号証に記載される本件特許出願日当時の周知技術に左右されるものでもないから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて、または、甲1発明及び本件特許出願日当時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明5、6について 本件発明5及び6は、いずれも直接的又は間接的に本件発明1を引用するものであって、本件発明5及び6と甲1発明とを対比した場合、いずれの場合であっても、少なくとも前記ア(ア)の相違点1の点で相違する。 そうすると、前記ア(イ)に記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明5及び6は、甲1発明に基づいて、または、甲1発明及び本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)小括 したがって、本件発明1、5及び6は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、または、甲第1号証に記載された発明及び本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第4の2の取消理由は理由がない。 第6 むすび 以上のとおり、請求項1、5及び6に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。 また、ほかに請求項1、5及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項2?4は、本件訂正により削除されたため、これらの請求項に係る特許に対する特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項が準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 流動床担体が充填されており、有機性排水が通水される反応槽と、 該反応槽内に通気方向が上下方向となるように設置された酸素溶解膜を有する酸素溶解膜モジュールと、 該酸素溶解膜モジュールに酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給手段と、 酸素溶解膜モジュールに供給された酸素含有ガスのうち前記酸素溶解膜に溶解しなかった残部よりなる排ガスを該反応槽外に排出すると共に、該酸素溶解膜モジュールから凝縮水を反応槽外へ排出する排出配管(29)と を備え、 該酸素溶解膜モジュールは、複数のユニットを有しており、各ユニットは、 上部ヘッダー(20)と、 下部ヘッダー(21)と、 上端が該上部ヘッダー(20)に連なり、下端が該下部ヘッダー(21)に連なる前記酸素溶解膜と を有しており、 各ユニットの上部ヘッダー(20)の上部は配管を介して上部マニホールド(23)に連結されており、 各ユニットの下部ヘッダー(21)の下部は配管を介して下部マニホルド(24)に連結されており、 前記酸素含有ガス供給手段は、該上部マニホルド(23)に接続されており、 前記排出配管(29)は、一端が該下部マニホルド(24)に接続されており、 該排出配管(29)の内径は50mm以下であり、その他端は前記酸素溶解膜より高い位置に配置されており、前記凝縮水は、通気LV10?20m/sにより該排出配管(29)を通じて前記排ガスと共に前記反応槽外へ排出される有機性排水の好気性生物処理装置。 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】(削除) 【請求項5】 酸素溶解膜モジュールは非多孔質の酸素溶解膜を備えている請求項1の有機性排水の好気性生物処理装置。 【請求項6】 酸素溶解膜が疎水性である請求項5に記載の有機性排水の好気性生物処理装置。 【請求項7】(削除) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-08-03 |
出願番号 | 特願2018-25233(P2018-25233) |
審決分類 |
P
1
652・
851-
YAA
(C02F)
P 1 652・ 121- YAA (C02F) P 1 652・ 537- YAA (C02F) P 1 652・ 853- YAA (C02F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 岡田 三恵 |
特許庁審判長 |
宮澤 尚之 |
特許庁審判官 |
金 公彦 伊藤 真明 |
登録日 | 2020-05-11 |
登録番号 | 特許第6702344号(P6702344) |
権利者 | 栗田工業株式会社 |
発明の名称 | 好気性生物処理装置 |
代理人 | 重野 剛 |
代理人 | 重野 剛 |
代理人 | 重野 隆之 |
代理人 | 重野 隆之 |