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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C01B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C01B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C01B
管理番号 1378733
異議申立番号 異議2020-700649  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-11-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-09-02 
確定日 2021-08-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6657485号発明「オゾンガス発生システム及びオゾンガス発生方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6657485号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?7〕、〔8、9〕について訂正することを認める。 特許第6657485号の請求項1?9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6657485号は、2018年(平成30年)11月13日(優先権主張 平成30年5月21日(JP)日本国)を国際出願日とする出願であって、令和2年2月7日にその特許権の設定登録がされ、同年3月4日に特許掲載公報が発行された。その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和 2年 9月 2日 :特許異議申立人 木下 桂(以下「申立人」という。)による請求項1?9に係る特許に対する特許異議の申立て
同年12月 9日付け:取消理由通知
令和 3年 2月 4日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 3月17日 :申立人による意見書の提出
同年 4月20日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年 6月30日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和3年6月30日提出の訂正請求書における訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、次の訂正事項1?8からなる(下線部は訂正箇所を示す。)。
なお、本件訂正請求により、令和3年2月4日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、「前記オゾン発生器に酸素を含んだ原料ガスが供給され、」との記載を、「前記オゾン発生器に触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる原料ガスが供給され、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?7も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1について、「前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、」との記載を、「前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、前記複数の放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されており、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?7も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1について、「前記オゾン発生器は以下の条件(1)及び条件(2)を満足することを特徴とする、」との記載を、「前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるように、前記オゾン発生器は以下の条件(1)及び条件(2)を満足することを特徴とする、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?7も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項4
本件明細書の段落【0035】について、「この発明に係るオゾンガス発生システムは、1対の平板電極に誘電体を介し配置した放電セルを有するオゾン発生器と、前記オゾン発生器にオゾン発生用交流電圧を付与するオゾン用電源とを備え、前記オゾン発生器に酸素を含んだ原料ガスが供給され、前記オゾン発生器は、前記放電セルの放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、前記放電空間に供給した原料ガスからオゾンガスを生成し、該オゾンガスを外部に出力し、前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、前記オゾン発生器は以下の条件(1)及び条件(2)を満足することを特徴とする。条件(1)及び条件(2)は以下の通りである。条件(1) 前記複数の放電セルは、それぞれ放電面の放電面積soが30cm^(2)以上、160cm^(2)未満の範囲に設定される、条件(2) 前記複数の放電セルそれぞれに供給する原料ガスの原料ガス流量qoは、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定される。」との記載を、「この発明に係るオゾンガス発生システムは、1対の平板電極に誘電体を介し配置した放電セルを有するオゾン発生器と、前記オゾン発生器にオゾン発生用交流電圧を付与するオゾン用電源とを備え、前記オゾン発生器に触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる原料ガスが供給され、前記オゾン発生器は、前記放電セルの放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、前記放電空間に供給した原料ガスからオゾンガスを生成し、該オゾンガスを外部に出力し、前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、前記複数の放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されており、前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるように、前記オゾン発生器は以下の条件(1)及び条件(2)を満足することを特徴とする。条件(1)及び条件(2)は以下の通りである。条件(1) 前記複数の放電セルは、それぞれ放電面の放電面積soが30cm^(2)以上、160cm^(2)未満の範囲に設定される、条件(2) 前記複数の放電セルそれぞれに供給する原料ガスの原料ガス流量qoは、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定される。」に訂正する。

(5)訂正事項5
本件明細書の段落【0036】について、「条件(1)及び条件(2)を満足することにより、」との記載を、「ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるように条件(1)及び条件(2)を満足することにより、」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8について、「前記オゾン発生器に酸素を含んだ原料ガスが供給され、」との記載を、「前記オゾン発生器に触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる原料ガスが供給され、」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。)。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8について、「該オゾンガスを外部に出力し、前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、」との記載を、「該オゾンガスを外部に出力し、前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、前記複数の放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されており、」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。)。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8について「(2) 前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qoを、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定するステップとを備える、」との記載を、「(2) 前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qoを、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定するステップとを備え、前記ステップ(1)及び前記ステップ(2)は、前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるように実行される、」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。)。

(9)一群の請求項について
訂正前の請求項1の記載を請求項2?7が引用する関係にあるから、訂正前の請求項1?7は一群の請求項であるところ、本件訂正事項1?3に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項〔1?7〕を訂正の単位として請求されたものであり、また、本件訂正事項4?5に係る明細書の訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4号の規定に従い、この一群の請求項〔1?7〕を訂正の単位として請求されたものである。
また、訂正前の請求項8の記載を請求項9が引用する関係にあるから、訂正前の請求項8、9に係る発明は一群の請求項であるところ、本件訂正事項6?8に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項〔8、9〕を訂正の単位として請求されたものである。

2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1に記載された「前記オゾン発生器に酸素を含んだ原料ガスが供給され、」との記載を、「前記オゾン発生器に触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる原料ガスが供給され、」に訂正して、「原料ガス」をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、高純度酸素を原料ガスとすることは本件訂正前の本件明細書の段落【0073】に記載されており、触媒ガスを添加しないことは本件訂正前の本件明細書の段落【0003】に記載されているから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
さらに、訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項1に記載された「前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、」との記載を、「前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、前記複数の放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されており、」に訂正して、「複数の放電セル」をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、放電セルの放電面に光触媒が塗布されることは、本件訂正前の本件明細書の段落【0086】、【0298】に記載されているから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
さらに、訂正事項2は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項1に記載された「前記オゾン発生器は以下の条件(1)及び条件(2)を満足することを特徴とする、」との記載を、「前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるように、前記オゾン発生器は以下の条件(1)及び条件(2)を満足することを特徴とする、」に訂正して、「オゾン発生器」の満足する設定条件をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとすることは、本件訂正前の本件明細書の段落【0051】に記載されており、ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるようにすることは、本件訂正前の本件明細書の段落【0172】に記載されているから、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
さらに、訂正事項3は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項1?3に係る請求項1の訂正に伴って、本件明細書の段落【0035】を訂正し、請求項1の記載と本件明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1?3と同じく、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
さらに、訂正事項4は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正事項3に係る請求項1の訂正に伴って、本件明細書の段落【0036】を訂正し、請求項1の記載と本件明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項3と同じく、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
さらに、訂正事項5は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項6について
訂正事項6は、請求項8に記載された「前記オゾン発生器に酸素を含んだ原料ガスが供給され、」との記載を、「前記オゾン発生器に触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる原料ガスが供給され、」に訂正して、「原料ガス」をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、高純度酸素を原料ガスとすることは本件訂正前の本件明細書の段落【0073】に記載されており、触媒ガスを添加しないことは本件訂正前の本件明細書の段落【0003】に記載されているから、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
さらに、訂正事項6は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7)訂正事項7について
訂正事項7は、請求項8に記載された「該オゾンガスを外部に出力し、前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、」との記載を、「該オゾンガスを外部に出力し、前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、前記複数の放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されており、」に訂正して、「複数の放電セル」をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、放電セルの放電面に光触媒が塗布されることは、本件訂正前の本件明細書の段落【0086】、【0298】に記載されているから、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
さらに、訂正事項7は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(8)訂正事項8について
訂正事項8は、請求項8に記載された「(2) 前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qoを、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定するステップとを備える、」との記載を、「(2) 前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qoを、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定するステップとを備え、前記ステップ(1)及び前記ステップ(2)は、前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるように実行される、」に訂正して、「ステップ(1)」及び「ステップ(2)」をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとすることは、本件訂正前の本件明細書の段落【0051】に記載されており、ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるようにすることは、本件訂正前の本件明細書の段落【0172】に記載されているから、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
さらに、訂正事項8は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(9)独立特許要件について
特許異議申立ては、全ての請求項1?9についてされているので、訂正事項1?8に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

3 小括
以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?7〕、〔8、9〕について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明9」といい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される次のとおりのものである(下線部は訂正箇所を示す。)。

「【請求項1】
1対の平板電極(1,3)に誘電体を介し配置した放電セルを有するオゾン発生器(200)と、
前記オゾン発生器にオゾン発生用交流電圧を付与するオゾン用電源(100)とを備え、
前記オゾン発生器に触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる原料ガスが供給され、
前記オゾン発生器は、前記放電セルの放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、前記放電空間に供給した原料ガスからオゾンガスを生成し、該オゾンガスを外部に出力し、
前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、
前記複数の放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されており、
前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるように、前記オゾン発生器は以下の条件(1)及び条件(2)を満足することを特徴とする、
(1) 前記複数の放電セルは、それぞれ放電面の放電面積soが30cm^(2)以上、160cm^(2)未満の範囲に設定される、
(2) 前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qoは、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定される、
オゾンガス発生システム。
【請求項2】
請求項1記載のオゾンガス発生システムであって、
前記オゾン発生器は以下の条件(3)をさらに満足することを特徴とする、
(3) 前記複数の放電セルそれぞれの放電空間における放電電力密度Jは、2.5W/cm^(2)以上、6W/cm^(2)未満の範囲に設定される、
オゾンガス発生システム。
【請求項3】
請求項2記載のオゾンガス発生システムであって、
前記オゾン発生器は、前記複数の放電セルを所定の冷却温度に冷却する冷却機構をさらに含み、
前記オゾン発生器は以下の条件(4)をさらに満足することを特徴とする、
(4) 前記所定の冷却温度は5℃以上に設定される、
オゾンガス発生システム。
【請求項4】
請求項3記載のオゾンガス発生システムであって、
前記オゾン用電源及び前記オゾン発生器は以下の条件(5)及び条件(6)をさらに満足することを特徴とする、
(5) 前記複数の放電セル全体に供給する総ガス流量Qは3.0L/min以上である、
(6) 前記複数の放電セル全体に付与する総放電電力DWと前記総ガス流量Qとの比である比電力値DW/Qは、600(W・min/L)以上であり、前記総放電電力DWは前記オゾン発生用交流電圧によって規定される、
オゾンガス発生システム。
【請求項5】
請求項4記載のオゾンガス発生システムであって、
前記複数の放電セルそれぞれの放電面は平面視して円状を呈し、
前記オゾン発生器は以下の条件(7)をさらに満足することを特徴とする、
(7) 前記複数の放電セルそれぞれの放電面の直径が70mm以上、140mm未満の範囲に設定される、
オゾンガス発生システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうち、いずれか1項に記載のオゾンガス発生システムであって、
前記オゾン用電源は、
出力周波数fを20kHz以上、50kHz未満の範囲に設定して、高周波交流電圧を出力するインバータ部(22)と、
前記高周波交流電圧を高電圧に昇圧して前記オゾン発生用交流電圧を得る昇圧用トランス(25)とを含む、
オゾンガス発生システム。
【請求項7】
請求項6記載のオゾンガス発生システムであって、
前記昇圧用トランスは内部励磁インダクタンス値Ltを有し、
前記複数の放電セルは全体の静電容量値C0を有し、
以下の条件式を満足する並列共振周波数fcの近傍に前記出力周波数fを設定したことを特徴とする、
条件式:fc=1/(2π・(Lt・C0)^(0.5))
オゾンガス発生システム。
【請求項8】
1対の平板電極(1,3)に誘電体を介し配置した放電セルを有するオゾン発生器(200)と、前記オゾン発生器にオゾン発生用交流電圧を付与するオゾン用電源(100)とを用いて、オゾンガスを発生するオゾンガス発生方法であって、
前記オゾン発生器に触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる原料ガスが供給され、前記オゾン発生器は、前記放電セルの放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、前記放電空間に供給した原料ガスからオゾンガスを生成し、該オゾンガスを外部に出力し、前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、前記複数の放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されており、
前記オゾンガス発生方法は、
(1) 前記複数の放電セルそれぞれの放電面の放電面積soを、30cm^(2)以上、160cm^(2)未満の範囲に設定するステップと、
(2) 前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qoを、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定するステップとを備え、
前記ステップ(1)及び前記ステップ(2)は、前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるように実行される、
オゾンガス発生方法。
【請求項9】
請求項8記載のオゾンガス発生方法であって、
前記オゾンガス発生方法は以下のステップ(3)をさらに備える、
(3) 前記複数の放電セルそれぞれの放電空間における放電電力密度Jを、2.5W/cm^(2)以上、6W/cm^(2)未満の範囲に設定するステップ、
オゾンガス発生方法。」

2 取消理由の概要
令和3年4月20日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由(下記(1)イ)及び令和2年12月9日付けの取消理由通知で通知した取消理由(下記(1)ア、イ)の概要は、次のとおりである。

(1)取消理由1(サポート要件違反)
ア 発明の詳細な説明に課題解決手段として記載されたガス滞在時間Toについて
本件発明の課題は、本件明細書の段落【0031】、【0034】の記載から、システム構成を必要最小限に抑えて、大ガス流量域においても高濃度なオゾンを外部に出力することができるオゾンガス発生システム、及び、オゾンガス発生方法を提供することであると解されるところ、発明の詳細な説明には、放電空間におけるガス滞在時間Toを短くすることが、当該課題を解決する手段として記載されている。
また、ガス滞在時間Toは、放電面の放電面積so、放電ギャップ長d及び1放電空間当たりの原料ガス流量qoにも影響されるものであるから、放電面積so及び原料ガス流量が特定されても、ガス滞在時間Toは特定されない。
そうすると、ガス滞在時間Toの範囲も、放電ギャップ長dの範囲も特定されていない請求項1?9に係る発明は、上記課題を解決する手段を反映しているといえないから、請求項1?9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
よって、本件特許の請求項1?9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

イ 原料ガスの組成及び放電面に塗布される光触媒材料について
本件発明の課題は、上記アのとおりと解されるところ、発明の詳細な説明の<実施の形態>において当該課題を解決することが裏付けられているのは、放電面に光触媒材料が塗布され、かつ高純度酸素ガスが原料ガスとして供給されるオゾン発生器であるといえる。
一方、原料ガスに触媒ガスを添加した原料ガスを用いる等により、放電面に光触媒材料が塗布されず、又は高純度酸素ガスが原料ガスとして供給されないものであるオゾン発生器は、オゾン発生のメカニズムが異なる以上、技術常識からみて、最適な放電面の放電面積so及びそれぞれの放電空間に供給する原料ガス流量qoの範囲も異なる蓋然性が高く、条件(1)及び条件(2)に規定される範囲において、課題を解決することができるか疑義がある。
そうすると、放電面に光触媒材料が塗布され、かつ高純度酸素ガスが原料ガスとして供給されるものであると特定されていない請求項1?9に係る発明は、上記課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものとはいえないから、請求項1?9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
よって、本件特許の請求項1?9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

3 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由の概要
申立人が主張する特許異議申立理由のうち、上記2の取消理由において採用しなかった特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。

(1)申立理由1(進歩性欠如)
設定登録時の請求項1、8に係る発明は、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、設定登録時の請求項2?5、9に係る発明は、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明及び甲第4号証、甲第5号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、設定登録時の請求項6、7に係る発明は、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである(特許異議申立書第9頁第1行?第18頁第10行)。

(2)申立理由2(サポート要件違反)
ア 放電面の形状について
設定登録時の請求項1?4、6?9に係る発明は、放電面の形状を特定するものではないが、単位周囲長さl(cm)を固定した条件において、オゾン生成能力(生成されるオゾンの濃度)は、放電面の形状に依存することになり、放電セルの形状が変われば、必要なガス流量も変わるものと考えられる。
また、本件明細書の段落【0156】?【0238】には、実施例として、放電面が円形の放電セルを用いた場合に、オゾン発生器が条件(1)及び条件(2)を満足するように設定することでオゾン発生器からより高濃度のオゾンガスを取り出せることが記載されている。
そして、放電面の形状が変われば、必要なガス流量も変わると考えられるところ、本件明細書において放電面の形状が円形以外の正方形や長方形としたときの条件を抽出するための実験結果が記載されていない。
したがって、放電面の形状が円形以外の場合を含む請求項1?4、6?9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない(特許異議申立書第18頁第13行?第20頁第2行)。

イ 放電ギャップ長について
設定登録時の請求項1?9に係る発明は、放電ギャップ長を特定するものではないが、放電ギャップ長が数十?数百μmの短ギャップ長であるという構成は、目的を達成するために必須の構成である。
また、本件明細書には、オゾン分解量を抑えるためにガス滞在時間を短くすることが記載されているところ、ガス滞在時間=放電面積×放電ギャップ長/原料ガス流量の式により、ガス滞在時間は求められるため、このうちの放電面積および原料ガス流量のみの範囲を規定したとしても、放電ギャップ長を規定しなければ、ガス滞在時間を定めることはできない。
さらに、ガス滞在時間を定めるためには、放電ギャップ長が必須であるにもかかわらず、本件明細書の段落【0156】?【0238】に記載された実施例には、放電ギャップ長についての記載がない。
したがって、放電ギャップ長が規定されていない請求項1?9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない(特許異議申立書第20頁第3行?第21頁第8行)。

<甲号証一覧>
甲第1号証:特許第2983153号公報
甲第2号証:Slawomir Jodzis, “Effective Ozone Generation in Oxygen Using a Mesh Electrode in an Ozonizer with Variable Linear Velocity”, Ozone: Science & Engineering: The Journal of the International Ozone Association, 2012, Vol. 34, p. 378-386
甲第3号証:Slawomir Jodzis et al., “Ozone Synthesis Under Surface Discharges in Oxygen: Application of a Concentric Actuator”, IEEE Transactions on Plasma Science, 2011, Vol. 39, No.4, p. 1055-1060
甲第4号証:特開2017-190259号公報
甲第5号証:特開2004-142963号公報
甲第6号証:特許第5923658号公報

4 甲号証及び参考文献の記載事項について
(1)甲第1号証の記載内容及び引用発明
ア 甲第1号証の記載内容
甲第1号証には、以下の記載がある(当審注:下線は当審による。「…」は当審による省略を意味する。以下も同様。)。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、オゾン発生装置、特に高濃度オゾンを高効率で発生することの可能なオゾン発生装置に関するものである。」
(イ)「【0100】
【実施例】実施例1.
以下、この発明の一実施例を図について説明する。図1はこの発明の実施例1を示す断面図であり、図47に示した従来例と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。図1において、11はヒューズ12を介して電源1に接続された給電板、31は給電板11に電気接触された導電層(電極)である。この導電層31は図47の従来例の高圧電極3に相当する。4は誘電体であり、アルミナセラミックス板により形成されている。このセラミックス板4と導電層31の大きさの関係を図2に示す。図2中、32はガス通路のためにセラミックス板4の中央部に設けられた穴(ガス供給機構)である。この導電層31はセラミックス板4の片面に厚み40ミクロンの銀メタライズ層で形成されている。給電板11と導電層31の一部でも接触しておれば給電板11と導電層31は同電位となる。したがって、たとえ給電板11とセラミックス板4の間に隙間が生じても、両者が同電位であるため、その隙間には電界がかからず、したがってボイド放電が発生することはない。また、セラミックス板4の外周部もしくは内周部を伝って接地電極2に沿面放電が飛ばないように(図1参照)、セラミックス板4の全面に導電層31を形成せず、外周部と内周部に導電層31の形成されていない領域を設けている。沿面放電を防止するための導電層31と接地電極2との距離は、印加電圧にもよるが、通常十分な2mm以上に設定してある。
【0101】61は金属製のスペーサであり、接地電極2とセラミックス板4との間に挿入されている。該スペーサ61を介してセラミックス板4と接地電極2により、放電の発生する放電空間5が形成され、導電層31及び接地電極2の間に発生する放電により、該放電空間5へのガス供給口(ガス供給機構)7から供給された酸素を含むガスの一部が放電空間5内でオゾン化される。用いるガスは酸素単独でも、窒素と酸素の混合ガスでも空気でもよい。ただし、水分量はなるべく少なく、酸素濃度はなるべく高いほうが効率的である。セラミックス板4、接地電極2はそれぞれ金属スペーサ61を介して面接触されており、セラミックス板4での発熱は、スペーサ61を介して、冷却された接地電極2で有効に吸収される。」
(ウ)「【0105】次に動作について説明する。ガスは図1において接地電極2の周囲部から矢印7の方向に吸い込まれ、放電空間5を通過後、矢印81の方向に流れ、ガス排出管(ガス供給機構)9を通って矢印8の方向に排出される。…」
(エ)「【図1】


(オ)「【図2】



イ 甲第1号証に記載された発明
上記ア(エ)の図1の符号「1」で示される回路記号は交流電源を意味するから、上記ア(イ)の「電源1」は交流電源である。
また、上記ア(エ)の図1には符号「2」(接地電極)、「4」(セラミックス板)、「31」(導電層)は、それぞれ、上下に2つ含まれる。
よって、甲第1号証には、実施例1に基づく発明として、以下の発明が記載されている。
「導電層と、冷却された接地電極と、導電層が片面に形成された誘電体であるセラミックス板と、導電層に電気接触された交流電源とを備え、セラミックス板と接地電極により形成された放電空間へ酸素単独からなるガスが供給され、導電層及び接地電極の間に発生する放電により、酸素単独からなるガスの一部が放電空間内でオゾン化され、放電空間を通過後、ガス排出管を通ってガスが排出され、導電層、接地電極及びセラミック板をそれぞれ上下に2つ含むオゾンガス発生装置。」(以下、「甲1-1発明」という。)

「導電層と、冷却水で冷却された接地電極と、導電層が片面に形成された誘電体であるセラミックス板と、導電層に電気接触された交流電源とを用いて、オゾンガスを発生するオゾンガスの発生方法であって、セラミックス板と接地電極により形成された放電空間へ酸素単独からなるガスが供給され、導電層及び接地電極の間に発生する放電により、酸素単独からなるガスの一部が放電空間内でオゾン化され、放電空間を通過後、ガス排出管を通ってガスが排出され、導電層、接地電極及びセラミック板をそれぞれ上下に2つ含むオゾンガス発生方法。」(「甲1-2発明」という。)

(2)甲第2号証?甲第6号証、申立人が令和3年3月17日に意見書と共に提出した参考文献1(特開2010-265121号公報)の記載内容
ア 甲第2号証の記載内容
甲第2号証には、下記の事項が記載されている。

(ア)「The way of the gas flow inside the ozonizer is presented in Figure 2. The discharge element consists of a metal mesh (brass, mesh 12, wire diameter 0.5mm) adhered to the ceramic plate (9) made of alumina (φ100×1mm) with an electric permeability of ε = 9.1. The reverse side of the plate adjacent to the metal wall of the cooling chamber (12), which was the induction electrode. … The total volume of the reaction space was 5 cm^(3) and ca. 0.5 cm^(3) was occupied with a mesh.
However, not the entire volume of the space was used similarly. There are specific places in the reaction space, where the mesh wires adhere to the ceramic plate. The discharge develops on the metal-dielectric border and forms a system of regularly distributed “spots” (Figure 3). …
The studies were carried out in pure (99.999%) oxygen. The flow rates of 10, 20 and 40 Ndm^(3)/h were used.」(p. 380右欄第3行?第25行)
(当審訳:オゾン発生装置の内部のガスの流れが図2に示されている。放電素子は透磁率ε=9.1のアルミナ製のセラミックプレート(9)(φ100×1mm)に付着された金属メッシュ(真ちゅう、メッシュ12、線径0.5mm)で構成される。プレートの反対側は、冷却チャンバー(12)の金属壁に隣接しており、これが誘電体電極となった。…反応空間の総体積は、5cm^(3)であり、約0.5cm^(3)がメッシュで占められていた。
しかしながら、その空間のすべてが等しく使用されていなかった。反応空間には特定の場所があって、そこでは、メッシュの線材がセラミックプレートに付着されている。放電は、金属と誘電体の境界で発生し、規則的に分布した「スポット」のシステムを形成する(図3)。…
研究は、純粋な(99.999%の)酸素で実施された。10、20及び40Ndm^(3)/hの流量が用いられた。)
(イ)「


(当審訳:図3.メッシュ電極上で発生する放電の写真(透明導電性電極を通して空気中で撮影された写真;実際の直径80mm);露出時間25ms。誘電接触のあるメッシュの場所にグローが表示される。)

イ 甲第3号証の記載内容
甲第3号証には、下記の事項が記載されている。

(ア)「Fig. 1 shows the ozonizer cross section. Inside the ozonizer, the ceramic discharge element (actuator, Fig. 2) made of an alumina plate with a diameter of 100 mm and thickness of 1 mm was located. … On the active side of the plate, the electrode consists of concentric strips with a 1-mm thickness. … On the reverse side, an induced electrode was made in the form of a circle with a 90-mm diameter. …
Typically, the gas flows toward the middle of the actuator. The linear velocity of the gas in the reaction space varied and equaled (under normal condition) from 0.005-0.03 m/s (at 10Ndm^(3)/h) to 0.04-0.28 m/s (at 80Ndm^(3)/h). The reaction space volume was 12.9 cm^(3).」(p. 1055右欄第7行?第27行)
(当審訳:図1にオゾン発生装置の断面図を示す。オゾン発生装置の内部には、100mmの直径、1mmの厚さのアルミナプレートで作られたセラミック放電素子(アクチュエータ、図2)が配置されていた。…プレートの活性面上では、厚みが1mmの同心円のストリップで電極が構成されている。…反対の面の上では、誘電体電極が90mmの直径の円形で作られた。…
通常、ガスはアクチュエータの中央に向かって流れる。反応空間のガスの線速度は(標準状態で)0.005?0.03m/s(10Ndm^(3)/hにおいて)、0.04?0.28m/s(80Ndm^(3)/hにおいて)の範囲で変化する。反応空間の体積は12.9cm^(3)である。)
(イ)「


(当審訳:図2 同心円ストリップからなる電極を備えるアクチュエータ。アルミニウムのコーティング(約60μm)で覆われたセラミックプレート(厚さが1mm))

ウ 甲第4号証の記載内容
甲第4号証には、下記の事項が記載されている。

(ア)「【0048】
すなわち、放電電力密度W/Sの範囲は、1?5(W/cm^(2))の範囲内であることが実験から分かった。」
(イ)「【0156】
そして、本実施の形態のオゾン発生器1に課したオゾン分解抑制要件は、上記ステップ(d)において、以下の要件(d1)?(d3)を満足することを特徴としている。
【0157】
(d1) 前記原料ガスとして酸素ガス純度を99.99(%)とした高純度酸素ガスを用い、
(d2) 前記原料ガスの供給時のガス流量は3(L/min)以上とし、
(d3) 前記誘電体バリア放電における放電電力密度を1?5(W/cm^(2))の範囲内で、かつ、比電力W/Q値を300?500(W・min/L)の範囲内にしている。
【0158】
本実施の形態のオゾン発生方法は上記特徴を有することにより、オゾン発生器1内で高濃度のオゾンが生成でき、かつ、放電による単位体積当たりの注入エネルギーで発熱するガス温度も抑制でき、オゾン発生器1内でのオゾン分解率を80%以下に抑えて、取り出せるオゾン濃度が200(g/m^(3))以上の高濃度オゾンの生成を可能にすることができる。」

エ 甲第5号証の記載内容
甲第5号証には、下記の事項が記載されている。

(ア)「【0093】
以上のように実際の装置における知見から本実施の形態のオゾン発生器においては、放電領域ギャップ長d、放電ガス圧力p、両者の積p×d、および放電電力密度Wは、装置の大きさ、容積率、経済性を考慮すると、図13から図16の黒四角で示された領域、つまり以下の表1の範囲から選択されることが望ましい。
【0094】



オ 甲第6号証の記載内容
甲第6号証には、下記の事項が記載されている。

(ア)「【0012】
本発明の一実施形態によれば、オゾンを生成するために必要な出力電力より低い電力から全出力電力までの範囲の電力で動作できるとともに、出力電力を増加させることが可能な電力系統及び電力制御技術が提供される。本発明の具体的な実施形態によれば、電力系統における20kHz以上40kHz以下の周波数範囲及び10kWの出力電力が提供される。出力電力は、10kWの1%以下もの低さまで制御される。具体的な実施形態によれば、5kWの電力を出力可能な2つのパワートレインを使用して、10kWの出力電力を実現することができる。」
(イ)「【0021】
共振タンク330は、電力段320のフルブリッジのIGBT及び高電圧変圧器340を駆動回路、共振インダクタLr325(変圧器漏れインダクタンスを含むことができる)、高電圧増幅変圧器Xfm340(磁化インダクタンスLm341を有する)、及びオゾン負荷セルスタック310(容量Co311、インピーダンスRo312、及びクランプ電圧Do313を有する)内の非対称性による故障から保護するために、ブロッキングコンデンサCb331を含んでもよい。5kWの単一のパワートレインにより、変圧器の出力電圧は、最大出力の負荷動作において約30kHzのスイッチング周波数(fsw)で約8kV(pk?pk)まで増加させることができる。共振タンクの周波数fresは、

で与えられる。Nは変圧器の巻線比である。Cb>>Co^(*)N^(2)、Lm>>Lr、及び線質係数Qが1より大きく

で定義される場合、図1Aに示す単純化した構成が有効となる。諸実施形態では、共振タンクの電流の再循環(エネルギー損失)を抑制するために、Qが3未満になるように選択される。このモデルの構成要素は、分析を簡単にするために高次波を(基本波のために)無視しているが、(第1次波のために)理想化されていることが理解されよう。」

カ 申立人が令和3年3月17日に意見書と共に提出した参考文献1(特開2010-265121号公報)の記載内容
参考文献1には、下記の事項が記載されている。

(ア)「【0045】
本実施形態のオゾン発生装置用放電セルは、所定の間隔をあけて平行に配置された平板状の誘電体10,10を備えている。誘電体10,10は体積抵抗率が10^(14)Ω・cm以上である純度が99.5%以上の高純度アルミナ焼結基板からなる。

【0048】
放電空隙20は、誘電体10,10の外縁部に直角方向に形成された原料ガス流路及びオゾンガス流路と連通している。放電空隙20のギャップ量は、オゾンガスの高純度化のために小さいほどよく、具体的には200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下が特に好ましい。
【0049】
誘電体10,10の対向面のシール部11,11より内側には、リブ12と共に機能膜としての低抵抗層14が設けられている。低抵抗層14は、オゾン濃度の低下を阻止するTiO_(2) の如き機能物質の粉末14aを、ガラスからなる無機系固定材14bにより対向面に膜状に固定して形成された機能膜であり、シール部11より内側のリブ12を除く部分に形成されている。

【0051】
誘電体10、10の反放電空隙側(背面側)の表面には、外縁部を額縁状に残して膜状の電極30,30が金属箔接着などによりそれぞれ形成されており、これには高周波高圧電源40が接続されている。電源40の一方の端子は接地されており、その端子と接続される電極30が接地電極であり、他方の電極30が高圧電極である。
【0052】
誘電体10,10の更に背面側には、絶縁板を介して板状の冷却体等が設けられており、これにより放電セルユニットが構成される。板状の冷却体は、誘電体10と同様のセラミック板でもよいし、金属板でもよい。いずれの冷却体も、内部を板面に平行な方向に冷媒が流通する構成になっている。そして、このような放電セルユニットが厚み方向に積層されることにより、オゾン発生装置用放電セルが形成される。
【0053】
オゾン発生装置の運転においては、放電セルの放電空隙20に原料ガスとして高純度の酸素ガスを供給する。酸素ガスの純度としては、クリーン度等の点から99.9%以上が好ましく、99.99%以上が特に好ましい。また、放電空隙20に無声放電を発生させるべく、電極30,30の間に所定の高周波高電圧を印加する。更に、電極30,30の背面側に配置された冷却体に冷媒としての冷却水を供給する。」
(イ)「【0057】
上述したオゾン発生装置用放電セルにおいて、高圧電極側及び接地電極側の誘電体として市販の純度99.5%の高純度アルミナ粉末焼結基板を用いた。その体積抵抗率は10^(14)Ω・cm、厚さは0.5mmである。放電空隙の面積は100cm^(2)、ギャップ量は0.1mm(100μm)である。
【0058】
誘電体の表面に低抵抗層を形成するために機能物質として使用する粉状の金属又はその酸化物としては、Ti、Ni、Wという3種類の金属粉末、TiO_(2)、NiO、WO_(3)という3種類の金属酸化物粉末を用意し、これらを単独で或いは混合して用いた。いずれの粉末の粒径も最大で5μmである。

【0064】
完成した放電セルを組み込んだオゾン発生装置を運転し、オゾンガスを発生させた。原料ガスとしては、純度が99.99%以上の酸素ガスを1.0L/minの流量、0.2MPaの圧力で供給した。供給電力は当該オゾン発生装置の最大出力とした。発生したオゾンガスのオゾン濃度と、誘電体表面に形成された低抵抗層の体積抵抗率との関係を図3に示す。」
(ウ)「【図1】


5 当審の判断
(1)取消理由1(サポート要件違反)について
ア 発明の詳細な説明に課題解決手段として記載されたガス滞在時間Toについて
本件訂正により本件発明1?9は、「ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になる」ことが特定されるものであり、本件発明の課題を解決する手段を反映したものとなっている。

イ 原料ガスの組成及び放電面に塗布される光触媒材料について
本件訂正により本件発明1?9は、「オゾン発生器に触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる原料ガスが供給され」、「放電面に光触媒材料が塗布され」ることが特定されるものであり、本件発明の課題を解決することができることに疑義がないものである。

ウ 小活
したがって、本件発明1?9は、発明の詳細な説明に記載したものであるから、取消理由1に理由はない。

(2)申立理由1(進歩性欠如)について
ア 本件発明1、8について
(ア)本件発明1と甲1-1発明を対比する。
甲1-1発明の「導電層」及び「接地電極」、「セラミックス板」は、本件発明1の「1対の平板電極(1,3)」、「誘電体」に相当する。
また、甲1-1発明の「導電層及び接地電極の間に発生する放電」は、セラミックス板を介して導電層及び接地電極の間に交流電源により生じさせる放電であるから、「前記放電セルの放電空間に誘電体バリア放電」に相当する。
さらに、甲1-1発明の「導電層、接地電極及びセラミック板をそれぞれ上下に2つ含む」ことは、放電セルが2つ積層されることを意味するから、「前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含」むことに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1-1発明とは、
「1対の平板電極(1,3)に誘電体を介し配置した放電セルを有するオゾン発生器(200)と、
前記オゾン発生器にオゾン発生用交流電圧を付与するオゾン用電源(100)とを備え、
前記オゾン発生器に」「原料ガスが供給され、
前記オゾン発生器は、前記放電セルの放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、前記放電空間に供給した原料ガスからオゾンガスを生成し、該オゾンガスを外部に出力し、
前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含」む
「オゾンガス発生システム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1は、「原料ガス」が「触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる」のに対し、甲1-1発明は、酸素単独からなる点。
<相違点2>
本件発明1は、「前記放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されて」いるのに対し、甲1-1発明は、このような特定がない点。
<相違点3>
本件発明1は、「前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるように、前記オゾン発生器は以下の条件(1)及び条件(2)を満足し」、ここで、
「(1) 前記複数の放電セルは、それぞれ放電面の放電面積soが30cm^(2)以上、160cm^(2)未満の範囲に設定される、
(2) 前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qoは、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定される、」
ものであるのに対し、甲1-1発明は、このような特定がない点。

事案に鑑み、上記相違点3について検討する。
まず、オゾンガス発生システムにおいて、「前記ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるように、前記オゾン発生器は以下の条件(1)及び条件(2)を満足」させることは本件特許に係る優先日時点の技術常識ではないから、この点が甲第1号証に記載されていない以上、上記相違点3は実質的なものといえる。
次に、上記相違点3に係る本件発明1の特定事項の容易想到性について検討する。
甲第2号証には、上記4(2)アのとおり、オゾン発生装置に用いられるメッシュ電極の直径が80mmであること、40Ndm^(3)/h(約0.67L/min)の流量が用いられること、反応空間の総体積が5cm^(3)であることが記載されている。
また、甲第3号証には、上記4(2)イのとおり、同心円状ストリップからなる電極の直径が90mmであること、反応空間のガス流量が80Ndm^(3)/h(約1.33L/min)であること、反応空間の体積が12.9cm^(3)であることが記載されている。
しかしながら、甲第2号証や甲第3号証には、オゾンガスの分解量を抑えるためにガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるようにオゾン発生器を設定することが記載されていないから、甲1-1発明において、甲第2号証や甲第3号証の記載を考慮しても、ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるようにオゾン発生器を設定することは当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明8と甲1-2発明を上記(ア)と同様に対比すると、両者は、
「1対の平板電極(1,3)に誘電体を介し配置した放電セルを有するオゾン発生器(200)と、前記オゾン発生器にオゾン発生用交流電圧を付与するオゾン用電源(100)とを用いて、オゾンガスを発生するオゾンガス発生方法であって、
前記オゾン発生器に」「原料ガスが供給され、前記オゾン発生器は、前記放電セルの放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、前記放電空間に供給した原料ガスからオゾンガスを生成し、該オゾンガスを外部に出力し、前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含」む
「オゾンガス発生方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1’>
本件発明8は、「原料ガス」が「触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる」のに対し、甲1-2発明は、酸素単独からなる点。
<相違点2’>
本件発明8は、「前記複数の放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されて」いるのに対し、甲1-2発明は、このような特定がない点。
<相違点3’>
本件発明8は、「前記オゾンガス発生方法は、
(1) 前記複数の放電セルそれぞれの放電面の放電面積soを、30cm^(2)以上、160cm^(2)未満の範囲に設定するステップと、
(2) 前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qoを、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定するステップとを備え、
前記ステップ(1)及び前記ステップ(2)は、前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるように実行される」
ものであるのに対し、甲1-2発明は、このような特定がない点。

事案に鑑み、上記相違点3’について検討する。
まず、上記相違点3’は、上記相違点3と同様に、実質的なものである。
次に、上記相違点3’に係る本件発明8の特定事項の容易想到性について検討すると、上記相違点3と同様に、甲1-2発明において、甲第2号証や甲第3号証の記載を考慮しても、ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるようにオゾン発生器を設定することは当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8は、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2?5、9について
(ア)本件発明2?5は、本件発明1を直接又は間接に引用するものであるから、本件発明2?5と甲1-1発明とを対比すると、少なくとも、上記相違点3で相違する。
そして、上記相違点3は実質的なものであって、さらに、甲第4号証、甲第5号証に記載された周知技術(上記4(2)ウ、エ)を考慮しても、甲1-1発明において、ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるようにオゾン発生器を設定することは当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2?5は、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明及び甲第4号証、甲第5号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明9は、本件発明8を引用するものであるから、本件発明9と甲1-2発明とを対比すると、少なくとも、上記相違点3’で相違する。
そして、上記相違点3’は実質的なものであって、さらに、甲第4号証、甲第5号証に記載された周知技術(上記4(2)ウ、エ)を考慮しても、甲1-2発明において、ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるようにオゾン発生器を設定することは当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明9は、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明及び甲第4号証、甲第5号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明6、7について
本件発明6、7は、本件発明1を直接又は間接に引用するものであるから、本件発明6、7と甲1-1発明とを対比すると、少なくとも、上記相違点3で相違する。
そして、上記相違点3は実質的なものであって、甲第6号証に記載された周知技術(上記4(2)オ)を考慮しても、甲1-1発明において、ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるようにオゾン発生器を設定することは当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6、7は、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 小活
以上のとおりであるから、申立理由1に理由はない。

(3)申立理由2(サポート要件違反)について
ア 放電面の形状について
上記2(1)アのとおり、本件発明の課題は、本件明細書の段落【0031】、【0034】の記載から、システム構成を必要最小限に抑えて、大ガス流量域においても高濃度なオゾンを外部に出力することができるオゾンガス発生システム、及び、オゾンガス発生方法を提供することであると解されるところ、発明の詳細な説明には、放電空間におけるガス滞在時間Toを短くすることが、当該課題を解決する手段として記載されている。
一方、本件明細書には、放電面の形状に関して、以下の記載がある。

「【0051】
また、放電セル(基本セルS1,S2)の放電面を平面視して円状で構成し、放電面の直径(外径)を小さくすることで、放電セルの放電空間を原料ガスが通過する時間であるガス滞在時間To[ms]を短縮させている。」
「【0114】
ガス滞在時間Toは、放電空間における電子、イオン、放電ガスと放電面で生成したオゾンガスとの衝突によるオゾン分解量と、放電空間内で滞在しているオゾン自身の自己オゾン分解量の両方に密接に関連する。また、単位周囲長さl(cm)を基準とした平均ガス流速vo/d(cm/s)は、1単位の放電セル内で生成されるオゾン生成能力と密接に関係しており、オゾン生成能力に対しガスの平均ガス流速vo/dが大きければ、総ガス流量Qが大きいことになり、取出せるオゾン濃度が低くなることになる。」
「【0124】
また、単位周囲長さl(cm)を基準とした放電面に流れる平均ガス流速vo/d(cm/s)は、放電セルの形状に依存する。例えば、円板状の放電セルの場合、単位周囲長さl(cm)を基準とした放電セルに流れるガス断面savは、放電面積soの1/2相当の放電径に流れ込む単位ギャップ長当たりの平均ガス流速voで定義すると以下の式(12)で表される。
【0125】
vo(cm/s)=qo/(2π・(so/2π)^(0.5))
=f(so)・{1/To}…(12)
なお、単位ギャップ長当たりの平均ガス流速voは、関数f(so)と放電空間中のガス滞在時間Toの逆数に依存する値である。」
「【0295】
<その他>本実施の形態では、放電セルにおける放電面の形状を平面視して円状に構成したオゾン発生器200を示したが、放電セル形状を正方形もしく長方形形状の平板セルで構成してもよい。この場合も、条件(2)を満足する投入できる放電電力密度Jの範囲に設定して、多段の放電セルを積層すれば良い。」

上記の段落【0051】、【0114】、【0124】、【0125】の記載によれば、放電面の形状とガス滞在時間Toや平均ガス流速voとは一定の関係があることが理解され、段落【0295】の記載によれば、放電セル形状が正方形もしくは長方形でもよく、円形に限られないことが理解されるものの、「ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になる」ことが特定される本件発明1?4、6?9において、放電面の形状が円形でなければ、本件発明の課題が解決できないとする根拠となる記載は本件明細書の内容を子細に見ても確認できない。
したがって、放電面の形状が円形以外の場合を含むものであっても、本件発明1?4、6?9は、当業者が本件発明の課題を解決することができると認識できるものであるから、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。

イ 放電ギャップ長について
本件明細書には、放電ギャップ長に関して、以下の記載がある。

「【0122】
To(ms)=(d・so)/qo…(11)
なお、式(11)において、dは、放電ギャップ長(mm)、soは、1単位の放電セルの放電面における放電面積(cm^(2))、qoは1放電空間当たりの原料ガス流量(L/min)である。」
「【0242】
オゾン用電源100は、放電空間の放電ギャップ長dが長くなれば、ガス滞在時間Toが非常に長くなり、放電空間で生成するオゾン生成量に対するオゾン分解量が非常に大きくなり、高濃度なオゾンガスを取り出せなくなる。
【0243】
また、放電ギャップ長dが短くなり過ぎると、また、放電空間を通過するガス流速が増し、放電面が接近することで生成したオゾンガスと放電面の壁との衝突や放電空間でのガス衝突や発生した電子、イオン、放電ガスとの衝突が増すため、オゾン分解量が非常に大きくなる。このように、放電ギャップ長dが短くなり過ぎると、高濃度なオゾンガスを取り出せなくなるため、放電ギャップ長dは、数十?数百μm条件の短ギャップ長範囲にすることが望ましい。特に、より高濃度なオゾンガスを取り出すためには、放電ギャップ長dを20μm?100μmの範囲にすることで、より効果を奏する。」
「【0252】
本実施の形態のオゾンガス発生システム1000は、上述した条件(1)?条件(3)を満足することにより、複数の放電セルそれぞれの放電面に関し以下の効果を奏する。なお、3つの条件を満足する際、オゾン発生器の放電ギャップ長dは数十?数百μmnの短ギャップ長に設定する必要がある。以下、この点を詳述する。
【0253】
放電ギャップ長を数十?数百μmの短ギャップの誘電体バリア放電の方が、高電界の放電が実現できる。すなわち、短ギャップの誘電体バリア放電の方が、高エネルギーの放電光エネルギーを有した放電になり、触媒ガスを含んだガスや放電面に塗布した光触媒を光励起させるのに有効に働き、結果として酸素ガスの解離を促進させる効果がより高まる。このため、条件(1)?条件(3)を満足したオゾンガス発生システム及びオゾンガス発生方法を実現する際、オゾン発生器の放電ギャップ長は数十?数百μmに設定することが望ましい。」

上記の段落【0122】、【0242】の記載によれば、放電ギャップ長とガス滞在時間Toは一定の関係があることが理解され、段落【0243】、【0252】、【0253】の記載によれば、放電ギャップ長dは、数十?数百μm、特に、20μm?100μmの範囲にすることが望ましいことが理解されるものの、「ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になる」ことが特定される本件発明1?9において、放電ギャップ長dが数十?数百μm、特に、20μm?100μmの範囲でなければ、本件発明の課題が解決できないとする根拠となる記載は本件明細書の内容を子細に見ても確認できない。
したがって、放電ギャップ長dが規定されないものであっても、本件発明1?9は、当業者が本件発明の課題を解決することができると認識できるものであるから、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。

ウ 小活
以上のとおりであるから、申立理由2に理由はない。

(4)申立人の主張について
申立人は、令和3年3月17日提出の意見書において下記ア?ウを主張するので、以下で検討する。

ア 特許法第29条第2項(進歩性欠如)について
(ア)申立人は、本件発明1、8は、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明及び参考文献1に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである旨を主張する。
そこで、この主張を検討すると、申立人の主張は、甲第1号証?甲第6号証及び参考文献1をどのように用いることを想定したものか定かではないが、申立理由1の内容を考慮して、甲第1号証を主たる証拠として、甲第2号証?甲第6号証、及び、参考文献1を従たる証拠とし、本件発明1、8の容易想到性を以下検討する。

(イ)本件発明1と甲1-1発明を対比すると、上記(2)ア(ア)に記載されるとおり、両者は、少なくとも、上記相違点3で相違する。
そこで、上記相違点3について検討する。
上記(2)ア?ウで検討したとおり、甲第2号証や甲第3号証の記載事項、あるいは、甲第4号証?甲第6号証に記載された周知技術を考慮しても、甲1-1発明において、ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるようにオゾン発生器を設定することは当業者が容易に想到し得たことではない。
また、参考文献1には、上記4(2)カ(イ)のとおり、実施例において「原料ガスとしては、純度が99.99%以上の酸素ガスを1.0L/minの流量、0.2MPaの圧力で供給した」と記載されているが、上記4(2)カ(ア)の「このような放電セルユニットが厚み方向に積層されることにより、オゾン発生装置用放電セルが形成される」なる記載及び実施例において放電セルの構造が具体的に記載されていないことから、「1.0L/minの流量」という数値が放電セルあたりの流量(本件発明における「前記複数の放電セル全体に供給する総ガス流量Q」)を意味するのか、放電セルユニットあたりの流量(本件発明における「前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qo」)を意味するのか定かではないから、「1.0L/minの流量」を放電セルユニットあたりの流量と認めることができない。
そうすると、参考文献1に記載された「1.0L/minの流量」という値を用いて、ガス滞在時間Toを算出することはできない。
さらに、参考文献1には、オゾンガスの分解量を抑えるためにガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるようにオゾン発生器を設定することは記載されていない。
したがって、甲1-1発明において、参考文献1に記載の周知技術を考慮しても、ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるようにオゾン発生器を設定することは当業者が容易に想到し得たことではない。

(ウ)本件発明8と甲1-2発明を対比すると、上記(2)ア(イ)に記載されるとおり、両者は、少なくとも、上記相違点3’で相違する。
そこで、上記相違点3’について検討すると、上記(イ)と同様に判断されるから、甲1-2発明において、甲第2号証や甲第3号証の記載事項、あるいは、甲第4号証?甲第6号証、参考文献1に記載の周知技術を考慮しても、ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるようにオゾン発生器を設定することは当業者が容易に想到し得たことではない。

イ 特許法第36条第6項第2号(明確性要件違反)について
(ア)申立人は、本件発明1、8の「高純度酸素」とは、どの程度の濃度であるのか不明確であり、例えば、空気(大気)中の酸素は約21%であるが、21%よりも大きければ高純度であるのか、又は、100%の酸素が高純度であるのか、高純度の範囲が不明確である旨を主張する。
そこで、この主張について検討すると、「高純度酸素」は不純物が一定濃度以下である酸素からなるガスであり、一般的に広く流通するものであることは本件特許に係る優先日時点の技術常識であるから、例えば、酸素が21%の空気(大気)は「高純度酸素」でないこと、100%の酸素は「高純度酸素」であることは、当業者にとって明らかである。
したがって、「高純度酸素」なる記載は、当業者の優先日時点における技術常識を基礎として、第三者に不測の不利益を及ぼす程度に不明確であるとはいえない。

(イ)申立人は、本件発明1、8の「触媒ガス」とは具体的にはどのような物質であるのか不明確であるとともに、どのような化学反応を促進させる触媒ガスであるのか不明確である旨を主張する。
そこで、この主張について検討すると、本件明細書の段落【0020】には、「…放電セルの放電空間に誘電体バリア放電を発生させると、「供給された原料ガスに含まれる微量の窒素ガスの触媒作用」…によって、酸素原子の解離量が多くなることから高濃度のオゾンガスを生成することができる」と記載されていることから、「触媒ガス」には、例えば、「窒素ガス」が含まれ、「触媒ガス」は、酸素原子を解離させ、オゾンガスを生成する化学反応を促進させるものであることが理解できる。
したがって、「触媒ガス」なる記載は、当業者の優先日時点における技術常識を基礎として、第三者に不測の不利益を及ぼす程度に不明確であるとはいえない。

ウ 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件違反)について
申立人は、本件発明1、8の「光触媒材料」について、光触媒材料にも数多くの種類があり、それぞれ、オゾンを発生させる際の効果、及び、発生したオゾンが分解するのを抑制する効果は異なるものと考えられるところ、本件明細書には、どのような光触媒材料を用いることができるのか記載されていないため、当業者といえども本件発明を実施することができない旨を主張する。
そこで、この主張について検討すると、本件明細書の段落【0020】には、「…放電セルの放電空間に誘電体バリア放電を発生させると、…「放電セルを構成する電極面の全面に配設された光触媒機能」によって、酸素原子の解離量が多くなることから高濃度のオゾンガスを生成することができる」と記載されていることから、「光触媒材料」とは、酸素原子を解離させ、オゾンガスを生成する化学反応を促進させるものであり、このような「光触媒材料」の具体的な種類は、本件特許に係る優先日時点の技術常識であるから、本件明細書には、どのような「光触媒材料」を用いることができるのか記載されていないとしても、当業者は、優先日時点の技術常識から具体的な「光触媒材料」を選択することができる。
また、申立人は、「光触媒材料」の効果の違いを主張の前提とするが、その証拠は挙げておらず、仮に、このような効果の違いがあったとしても、優先日時点の技術常識である「光触媒材料」の中から、ある特定のものを選択した場合に本件発明が実施できないとする特段の理由もない。
したがって、本件明細書及び図面の記載並びに優先日時点の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく「光触媒材料」を選択し、本件発明を実施することができるから、発明の詳細な説明は、本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものといえる。

エ 小活
以上のとおりであるから、申立人の主張はいずれも採用できない。

第4 むすび
以上のとおり、請求項1?9に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由、及び、取消理由に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。また、他に請求項1?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
オゾンガス発生システム及びオゾンガス発生方法
【技術分野】
【0001】
この発明は、オゾン用電源と放電現象を利用したオゾン発生器との組合構成により、高濃度なオゾンガスを出力するオゾンガス発生システムに関する。特に、放電ギャップ長dを数十μm?数百μmの範囲の短ギャップにし、放電を用いたオゾン発生器とオゾン用電源との組合で、高濃度なオゾンガスまたは高発生量のオゾンガスを出力できるオゾンガス発生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、放電式のオゾンガス発生装置は、オゾンガスを発生させるための電源供給を行うオゾン用電源と、オゾンガス生成用の放電セル(オゾン発生セル)を内蔵したオゾン発生器との組合せで構成される。
【0003】
放電セルは誘電体を介した放電空間を有しており、オゾン用電源からオゾン発生器に高電圧のオゾン発生用交流電圧を印加することにより、放電セルの放電空間内で誘電体バリア放電(無声放電)を誘起させることができる。誘電体バリア放電を発生している放電空間に、オゾンガスを生成するための触媒ガスを添加した酸素ガスを原料ガスとして採用した放電発生装置、もしくは触媒ガスを添加しない高純度酸素ガスが原料ガスとして供給され、上記誘電体バリア放電面にオゾンガスを生成するための光触媒材料が塗布された放電発生装置の2通りの装置が構成される。これら2通りの放電発生装置それぞれに供給した原料ガスに放電エネルギーを与えることで、触媒を介した高濃度のオゾンガスが生成される。
【0004】
放電セルで生成したオゾンガスを集め、オゾン発生器から所定のオゾン濃度のオゾンガスが取出せる構成にしたものが、オゾンガス発生装置である。オゾンガス発生装置に用いるオゾン発生器としては、例えば、特許文献1で開示されたオゾン発生器がある。
【0005】
種々の先行技術文献で開示されたオゾン発生器は、当然オゾンガスを生成するための触媒ガスを添加することもしくは、放電面に光触媒材料を塗布するように施したオゾン発生器を対象にしている。以後の発明要素においては、原料ガスに触媒ガスを添加した原料ガスもしくは放電面に光触媒材料を塗布するようにしたオゾン発生器であることの明記は省略して、当然上記処置は施されているオゾン発生器を前提として説明する。
【0006】
また、オゾン発生器で単位時間当たりの生成した総オゾン生成量Y(g/h)は、放電セルの放電空間に供給した原料ガスの総ガス流量Q(L/min)とオゾン発生器に投入する総放電電力DW(W)に対応した量となり、以下の式(1)を満足する。
【0007】
Y=Q・C…(1)
なお、式(1)における”C”は、放電セルで生成するオゾン生成濃度(g/m^(3))である。
【0008】
つまり、オゾン発生器で生成する総オゾン生成量Y(g/h)は、生成したオゾン生成濃度C(g/m^(3))と供給した原料ガスの総ガス流量Q(L/min)の積に対応した値となる。
【0009】
ちなみに、放電セルで生成するオゾン生成濃度C(g/m^(3))は、単位時間当たりの単位ガス体積V(cm^(3))に注入する放電電力DW(watt=joule・sec.)に対応する。なお、単に単位ガス体積V(cm^(3))はオゾンガス発生器全体において以下の式(2)を満足する。
V(cm^(3)/sec)=1000・Q/60…(2)
【0010】
つまり、放電セルで生成するオゾン生成濃度C(g/m^(3))は、オゾン発生セルの単位ガス体積V(cm^(3))に注入する放電エネルギー量(joule/cm^(3))に相当する比電力値DW/Q(W・min/L)によって決まる。
【0011】
したがって、オゾン生成濃度C(g/m^(3))は、比電力値DW/Q(W・min/L)に比例して生成濃度が高くなる。オゾン生成濃度C(g/m^(3))は、以下の式(3)で表される。
C(g/m^(3))=A・DW/Q…(3)
【0012】
なお、式(3)において、”A(g/J)”は、放電セルによる単位放電エネルギー当たりのオゾン生成能力を示した固有の比例定数である。固有値である”A(g/J)”は、電子衝突や放電による種々の触媒化学反応を介してオゾンを生成できる能力値を示す。より詳細に説明すると、この”A(g/J)”は、放電形態、ガス種、放電面材料、ギャップ長dに依存する固有値といえる。
【0013】
ちなみに、単位時間当たりの生成した総オゾン生成量Y(g/h)に対し、式(3)で導出されるオゾン生成濃度Cを生成する放電セルにおいて、放電空間内に滞在しているオゾン量Ys(g)は、下記の式(4)で表される。
Ys(g)=C・d・S/1000000…(4)
【0014】
式(4)における”d”は、放電ギャップ長(cm)で、”S”は、オゾン発生器の総放電面積(cm^(2))である。放電セルの放電空間内に滞在しているオゾン量Ysは、オゾンを生成できる能力値Aや比電力値DW/Q値だけでなく、放電セル構造因子である放電ギャップ長d、総放電面積Sで決まる固定値であって、放電セル構造が決まれば変更ができないパラメータ値でもある。
【0015】
図7は従来のオゾン発生装置における比電力値DW/Qに対する取出しオゾン濃度Ctの特性を示すグラフである。
【0016】
なお、オゾン発生装置における取出しオゾン量Ytは、取出しオゾン濃度Ctと供給するガス流量Qとの積にほぼ対応した値となる。つまり、可能な範囲で最大となるガス流量Qの原料ガスを供給して、図7に示した取出しオゾン濃度Ct値と比電力値DW/Q値とから、オゾン発生装置における取出しオゾン量Yt(=Ct・Q)の最大値が求まり、注入する放電電力DW(=比電力値(DW/Q)・Q)の最大値も求まる。
【0017】
オゾンガス発生装置においては、式(3)、式(4)で算出したオゾン生成濃度C、オゾン量Ysのオゾンが発生している。一方、図7に示すように、放電現象を利用するオゾンガス発生装置においては、オゾン発生器の比電力値DW/Qに対する取出しオゾン濃度Ctの特性は、特性8000aとなる。特性8000aにおいて、低い比電力値DW/Qに対する取出しオゾン濃度Ctの特性を示す接線(二点鎖線)が各放電セルに滞在しているオゾン量Ysに相当するオゾン生成濃度Cを示している。
【0018】
一方、高い比電力値DW/Qにおける取出しオゾン濃度Ctは、各放電セルから生成するオゾン生成濃度C(二点鎖線)から各放電セル内での生成したオゾンを分解する濃度Cdを取り除いた値となる。すなわち、取出しオゾン濃度Ctは、オゾンガス発生装置から取出せる実際のオゾン濃度を示している。
【0019】
ここで、原料ガスとして高純度酸素ガスを用いているオゾン発生器について検討する。このようなオゾン発生器においては、比電力値DW/Q(W・min/L)に対して決定される、生成オゾン濃度特性(二点鎖線)で示されるオゾン生成能力の主要因は、特許文献2?特許文献6で示された放電セルの放電空間で発生する誘電体バリア放電(無声放電)であると考えられる。各特許文献が示すように、放電空間における電子衝突による酸素原子の解離量は非常に少なく、この電子衝突を原因としたオゾン生成能力は、高濃度オゾン生成の内で極一部の量に過ぎない。
【0020】
すなわち、総放電電力DWをオゾン発生器に供給し、放電セルの放電空間に誘電体バリア放電を発生させると、「供給された原料ガスに含まれる微量の窒素ガスの触媒作用」、または「放電セルを構成する電極面の全面に配設された光触媒機能」によって、酸素原子の解離量が多くなることから高濃度のオゾンガスを生成することができる。
【0021】
このように、微量の窒素ガス量による酸素原子解離能力や電極面に配設した光触媒の酸素原子解離能力が、オゾンガス発生の主要因となる。
【0022】
放電セル中で生成されるオゾン生成濃度C(g/m^(3))は、上述した酸素原子解離能力が高いほど、式(3)で示したA(g/J)値が高くなり、放電空間で多量のオゾンガスが生産される。
【0023】
また、放電セルでは、放電エネルギー(J)を注入することで、A(g/J)をパラメータとした式(3)に従うオゾン濃度のオゾンガスが生成されているが、生成されたオゾンガスは、同時に放電セル内で自己分解と放電ガスとの衝突による分解とがある。この放電セル内でのオゾンガスの自己分解と放電ガスとの衝突による分解との総和であるオゾン分解量は、取り出した雰囲気中での通常のオゾンガスの自己分解量よりも大きい。
【0024】
これは、電子衝突による酸素原子解離が放電空間内において、オゾン生成能力に対比して、大きい割合を占めることを意味する。つまり、放電プラズマ中の電子、イオン、放電ガスとの衝突による生成したオゾンを解離させ酸素に戻すオゾンガスの分解量、及び放電セル内での高濃度オゾン状態のオゾンが自己分解するオゾン分解量が、通常の大気中でのオゾンの分解量に比べ大きくなるため、放電プラズマ中におけるオゾンの分解量が無視できないことを示している。
【0025】
そのため、各放電セル内での生成したオゾンガスを分解する濃度Cdも、投入する総放電電力DWや総ガス流量Qに依存する要素となると考えられる。
【0026】
図7で示した従来のオゾンガス発生装置において、装置の実用環境を考慮すると、原料ガスの総ガス流量Qとして略2.4L/min以上のガス流量域を必要とし、オゾン発生器を冷却する冷却温度を5℃以上にした制約条件にすることが望ましいと想定される。なお、上記オゾン発生器を冷却する冷却温度の制約条件の上限は常温(20℃)に対し30℃程度を想定してオゾンガス発生装置が運用されている。
【0027】
上記制約条件下において、高い比電力値DW/Q(500W・min/L附近)にして取出しオゾン濃度Ctを高めても、従来のオゾンガス発生装置は、400g/m^(3)を超える高濃度なオゾンガスを取出すことができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特許第3607890号公報
【特許文献2】特許第3642572号公報
【特許文献3】特許第4953814号公報
【特許文献4】特許第5069800号公報
【特許文献5】特許第4825314号公報
【特許文献6】特許第4932037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
従来のオゾンガス発生装置は、既存のオゾン用電源と既存の放電セル形状のオゾン発生器とで構成されている。
【0030】
従来のオゾンガス発生装置では、原料ガスの総ガス流量Qが比較的大きい大ガス流量域条件で、総放電電力DWを高め、高い比電力値DW/Q(500W・min/L附近)に設定すると、各放電セルにおいて、生成するオゾン生成濃度Cに対し、オゾンガス発生装置内でのオゾンガスの分解量が大きいために、取出しオゾン濃度Ctが所定濃度以上高められない状態になっている。
【0031】
このため、従来のオゾンガス発生装置では、取出しオゾン濃度Ctに限界があり、オゾンガス発生装置から取出せるオゾン濃度を大ガス流量域で。より高濃度なオゾンガスを取り出せることができないという問題点があった。
【0032】
特に、図7で示す特性を有する従来のオゾンガス発生装置では、大ガス流量域の比電力値DW/Qに対するオゾン濃度特性において、400g/m^(3)を超える高濃度(領域99a内の濃度)のオゾンガスを取り出せることができなかった。
【0033】
また、放電セルに関し、放電投入電力を上げ、オゾン生成量を増しても、却ってオゾンガスの分解量が大きくなり、取出せるオゾン濃度が高められない問題があった。また、取出しオゾン量Ytを高めるために、放電投入電力を上げ、放電電力密度を高めると、負荷印加電圧が高くなる問題点もあった。さらに、より高周波周波数の交流出力にすると、オゾン用電源が安定してオゾン発生用交流電圧を供給できない等、電源制御上における放電電力密度が制約を受けてしまう問題点があった。
【0034】
本発明では、上記のような問題点を解決し、システム構成を必要最小限に抑えて、高濃度なオゾンを外部に出力することができるオゾンガス発生システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
この発明に係るオゾンガス発生システムは、1対の平板電極に誘電体を介し配置した放電セルを有するオゾン発生器と、前記オゾン発生器にオゾン発生用交流電圧を付与するオゾン用電源とを備え、前記オゾン発生器に触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる原料ガスが供給され、前記オゾン発生器は、前記放電セルの放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、前記放電空間に供給した原料ガスからオゾンガスを生成し、該オゾンガスを外部に出力し、前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、前記複数の放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されており、前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるように、前記オゾン発生器は以下の条件(1)及び条件(2)を満足することを特徴とする。条件(1)及び条件(2)は以下の通りである。条件(1)前記複数の放電セルは、それぞれ放電面の放電面積soが30cm^(2)以上、160cm^(2)未満の範囲に設定される、条件(2)前記複数の放電セルそれぞれに供給する原料ガスの原料ガス流量qoは、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定される。
【発明の効果】
【0036】
この発明におけるオゾンガス発生システムは、ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるように条件(1)及び条件(2)を満足することにより、各放電セルの放電空間におけるガス滞在時間Toを短くすることで、電子、イオン、放電ガスとの衝突によるオゾンガス分解量や放電セル内で生成したオゾンの自己オゾン分解量を抑えることができる。
【0037】
その結果、この発明におけるオゾンガス発生システムは、オゾン発生器からより高濃度のオゾンガスを取り出せることが可能になる効果を奏する。
【0038】
この発明の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の実施の形態であるオゾンガス発生システムの構成を示す説明図である。
【図2】図1で示したオゾン発生器の放電セルにおける放電面の構造を示す説明図である。
【図3】Aタイプ?Cタイプ放電セル形状それぞれのオゾン発生器のガス滞在時間Toに対する総オゾン分解量Ydの特性を示すグラフである。
【図4】Aタイプ?Cタイプ放電セル形状それぞれのオゾン発生器の比電力値DW/Qに対する取出しオゾン濃度Ctの特性を示すグラフである。
【図5】Aタイプ?Cタイプ放電セル形状それぞれのオゾン発生器の原料ガスの総ガス流量Qに対する取出しオゾン濃度Ctの特性を示すグラフである。
【図6】オゾン用電源の動作周波数fに対するAタイプ?Cタイプ放電セル形状それぞれのオゾン発生器に印加される負荷ピーク電圧Vpの特性を示すグラフである。
【図7】従来のオゾン発生装置における比電力値DW/Qに対する取出しオゾン濃度Ctの特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
<実施の形態>
(原理及び概要)
図1はこの発明の実施の形態であるオゾンガス発生システムの構成を示す説明図である。同図に示すように、本実施の形態のオゾンガス発生システム1000は、1対の平板電極(1,3a,3b)に誘電体を介し配置した放電セル(S1及びS2:基本放電セルと定義する)を有するオゾン発生器200と、オゾン発生器200にオゾン発生用交流電圧を付与するオゾン用電源100とを備えている。
【0041】
そして、オゾン発生器200内の放電セル(S1,S2)の放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、この放電空間に供給した酸素ガスを含む原料ガスからオゾンガスを生成し、オゾンガスを外部に取り出している。
【0042】
オゾンガス発生システム1000において、1単位の放電セル当たり1つの放電空間(1対の放電面によって形成される空間)と1つのオゾンガス取り出し口を有するように構成されている。以下、放電空間を構成する1対の放電面を「1単位の放電面」あるいは「1放電面」と称する場合がある。また、1単位の放電セルに供給する放電電力dw(W)、放電面積so(cm^(2))、原料ガス流量qo(L/min)等は、1単位の放電セル当たりのオゾンガス発生に関するパラメータ記号として小文字で示す。
【0043】
一方、オゾン発生器200内の複数の放電セル全体に供給する総放電電力DW(W)、総放電面積S(cm^(2))、原料ガスの総ガス流量Q(L/min)等は、オゾン発生器200のパラメータ記号として大文字表記で示す。なお、1単位の放電セルやオゾン発生器の違いによって、パラメータ値が変化しない記号については、原則として大文字表記で説明する。
【0044】
オゾン発生器200の取出しオゾン濃度Ctを最大にする条件を求めるべく、1単位の放電セルにおいて、放電空間の放電形状に関わる放電面積soと、1単位の放電空間(放電面)に投入できる放電電力密度Jと、1単位の放電空間に流す原料ガス流量qoとの最適化を検討する。
【0045】
ちなみに、オゾンガス発生システム1000での放電セルの放電空間の放電ギャップ長dの範囲は数十μm以上から数百μm未満のオゾン発生器に適用する。特に、放電ギャップ長dは20μm?100μmの範囲において、その効果がより高められるからである。
【0046】
放電面積so(cm^(2))を所定面積範囲内に設定し、適用放電ギャップ長dの範囲に設定したオゾン発生器おいて、特に、より高濃度のオゾンガスを取り出せる条件としては、1単位の放電セル内に流れる平均ガス流速vo/dを略(1.6/d)cm/s未満の範囲内になるようにする。
【0047】
さらに、1単位の放電セル(1放電面)に供給する原料ガス流量qoを略0.25L/min未満にしている。このため、オゾンガス発生システム1000の比電力値dw/qoを高く設定しても、1単位の放電セル内でのオゾンガス生成量y(=C・qo)に対し、オゾンガスの衝突によるオゾン分解と生成したオゾン自身の自己分解とを合わせた総オゾン分解量ydを低く抑えることができ、高濃度なオゾンガスを1単位の放電セルから取出せることができる。
【0048】
また、1単位の放電セルに供給する放電電力密度が2.5W/cm^(2)?6W/cm^(2)範囲内となるように、放電電力dw(W)とすることで、1単位の放電セルにおけるオゾンガス生成量y(=C・qo)に対し、オゾンガスの衝突によるオゾン分解と生成したオゾン自身の自己分解とを合わせた総オゾン分解量ydを低く抑えることができる。その結果、放電セルから効率良く、オゾンガスの取出しオゾン量ytを最大限に溜めることができる。
【0049】
さらに、オゾンガス発生システム1000は、各々が1放電面(1つの放電空間)を有する放電セルS1,S2をn段積層してオゾン発生器200を構成している。したがって、放電面(放電空間)は2n個になり、オゾンガス発生システム1000は、2n倍の総放電電力DW(=2・n・dw)[W]を供給するオゾン用電源100と2n倍の総放電面積S(=2・n・so)[cm^(2)]と2n倍の原料ガス流量Q(=2・n・qo)[L/min]を達成している。このため、オゾンガス発生システム1000は、高濃度な取出しオゾン濃度Ctをオゾン発生器から得るとともに、供給するガス流量Qに対し、オゾンガスの取出しオゾン量Ytを最大限に高めることができる。
【0050】
また、オゾン用電源100から出力する高周波・高電圧のオゾン発生用交流電圧の出力周波数を20kHz?50kHz範囲内で、従来の出力周波数である20kHz以下に比べ高めている。このため、オゾン用電源100は、オゾン発生器200に印加するオゾン発生用交流電圧のピーク電圧値を7kVp以下にして、総放電電力DWをオゾン発生器200に供給することができる。
【0051】
また、放電セル(基本セルS1,S2)の放電面を平面視して円状で構成し、放電面の直径(外径)を小さくすることで、放電セルの放電空間を原料ガスが通過する時間であるガス滞在時間To[ms]を短縮させている。
【0052】
さらに、放電セルに流れる平均ガス流速vo/dを略0.035/d[cm/s]未満に抑えることで、放電セルで生成するオゾン生成量に対する供給するガス量も抑えられ、放電セル内において高いオゾン生成濃度Cを確保して、かつ、オゾンガスの衝突によるオゾン分解と生成したオゾン自身の自己分解とを合わせた分解量Ydを低く抑えている。その結果、オゾン発生器200から取出せる取出しオゾン濃度Ctを高めることができる。
【0053】
さらに、オゾン用電源100を構成する高周波・高電圧トランスとして機能する並列共振用トランス25の内部励磁インダクタンス値Ltと多段積層された複数の放電セルで構成したオゾン発生器200自身の静電容量値C0とにより、並列共振できる動作周波数域に合わせた高周波を出力制御するオゾン用電源100を構成している。
【0054】
その結果、オゾン用電源100は、昇圧用トランスである並列共振用トランス25の出力部において並列共振回路を形成したオゾン用電源となり、より安定化したオゾン発生用交流電圧をオゾン発生器200に供給することができる。
【0055】
(全体構成)
この発明による実施の形態であるオゾンガス発生システムの構成及び特徴を図1?図6を参照して説明する。
【0056】
図1はこの発明の実施の形態であるオゾンガス発生システム1000の構成を示す説明図である。図1に示すように、本実施の形態のオゾンガス発生システム1000は、オゾンガスを生成するオゾン発生器200とオゾン発生器200に総放電電力DW用のオゾン発生用交流電圧を付与するオゾン用電源100とを主要構成部として含んでいる。
【0057】
本実施の形態のオゾンガス発生システム1000は、半導体製造装置や洗浄装置等の他の装置と共に併設されることが多い。特に、高純度のオゾンガスが求められ、かつ、処理速度を高めることや処理能力をより高めることが要求されている。したがって、オゾンガス発生システム1000は、既存の装置で得られるオゾン濃度より高濃度なオゾンガスが取出せることや供給するガス流量Qに対し、取出しオゾン量Ytが大きくなるシステムが望ましい。
【0058】
図2は図1で示したオゾン発生器200の放電セルにおける放電面の構造を示す説明図である。図1及び図2において、オゾンガス発生システム1000は、オゾンガスを発生させるオゾン発生器200と、このオゾン発生器200に総放電電力DW用のオゾン発生用交流電圧を供給するオゾン用電源100から構成されている。
【0059】
オゾン用電源100は、AC-DCコンバータ回路部21、インバータ回路部22、限流リアクトル23、電源制御回路24及び並列共振用トランス25を主要構成として含んでいる。
【0060】
インバータ部であるインバータ回路部22は、AC-DCコンバータ回路部21を介して商用電源から入力された電力(電圧)を受け、この電圧を必要な高周波交流に変換して得られる高周波交流電圧を、限流リアクトル23を介して並列共振用トランス25に出力する。なお、インバータ回路部22による高周波交流電圧の出力周波数fを20kHz?50kHz範囲内としている。すなわち、オゾン用電源100の動作周波数fは20kHz?50kHzの範囲内となる。
【0061】
なお、本願明細書において、「AA?BB」で示す範囲は、原則、AA以上BB未満を示す。
【0062】
昇圧用トランスである並列共振用トランス25は、上記高周波交流電圧を高電圧に昇圧してオゾン発生用交流電圧を得て、このオゾン発生用交流電圧をオゾン発生器200の高電圧端子HV及び低電圧端子LV間に供給している。
【0063】
オゾン発生用交流電圧によってオゾン発生器200に供給する総放電電力DWが規定される。さらに、並列共振用トランス25は、後に詳述するように、負荷の力率を改善する措置がなされている。
【0064】
高電圧端子HVは、オゾン発生器200内の各放電セルの高圧電極3a、及び3bに電気的に接続されている。
【0065】
電源制御回路24によってAC-DCコンバータ回路部21及び高周波インバータを含むインバータ回路部22の電流/電圧を制御することにより、オゾン発生器200に供給するオゾン発生用交流電圧の電圧値を制御することができる。
【0066】
オゾン発生器200は、各々が基本放電面を有する複数の基本セルS1,S2が積層されて構成されている。1対の基本セルS1及びS2を基本構成としている。基本構成は、接地冷却電極1及び誘電体電極2a、2b、高圧電極3a、3b、及び絶縁板4a、4bから構成される。
【0067】
基本セルS1は、下方から上方に向かう、接地冷却電極1、誘電体電極2a、高圧電極3a、絶縁板4aの積層構造を含んで構成される。
【0068】
基本セルS2は、上方から下方に向かう、接地冷却電極1、誘電体電極2b、高圧電極3b、絶縁板4bの積層構造を含んで構成される。基本セルS1,S2間で接地冷却電極1は共用される。
【0069】
そして、基本セルS1の上方及び基本セルS2の下方に低圧冷却板5が設けられる。このような構成の1対の基本セルS1,S2からなる基本構成が多段に積層される。なお、1単位の基本セルは、それぞれ放電空間を形成するための1対の放電面を有する。すなわち、基本セルS1及びS2からなる基本構成を6段積層した場合、1単位の基本セルが12個積層されたことになる。
【0070】
基本セルS1及びS2の構造の詳細については後述する。所定数の基本構成(基本セルS1及びS2)が基台10上に図1の上下方向に積層されて、オゾン発生器200の主要部となっている。
【0071】
積層された複数の基本セルは、最上部の基本セル(基本セルS1)上に重ねて設けられた積層押え板7と、積層押え板7及び各基本セルを貫通する積層セル押え棒8によって、積層セル押えばね6を介して所定の締め付け力で基台10に締着されている。
【0072】
複数の基本セル全体が発生器カバー11で覆われている。発生器カバー11は一面を削除した概略の箱状を成し開口周縁部に設けられたフランジをカバー締付けボルト(図示せず)で基台10に締着されている。発生器カバー11の開口周縁部と基台10との間には、Oリング(図示せず)が挟まれており発生器カバー11と基台10とが形成する内部空間は密閉構造とされている。
【0073】
基台10には、この内部空間に、高純度酸素ガス等の原料ガスを供給する原料ガス入口31が設けられている。原料ガス入口31から供給された原料ガスG_(IN)は、発生器カバー11内の内部空間に充満され、複数の放電セルの放電空間の間隙に入り込む。
【0074】
基台10には、放電空間にて生成されたオゾンガスをオゾン発生器200からマニホールドブロック9を介して外部に出すオゾンガス出口32と放電セルを冷却する冷却水が出入りする冷却水出入口(図示せず)が設けられている。
【0075】
つまり、オゾンガス出口32は、基台10に設けられたオゾンガス通路の端部開口であり、冷却水出入口は基台10内に設けられた冷却水通路に繋がる(図示省略)。なお、基台10内に設けられた冷却水通路とオゾンガス通路とは互いに独立した通路で形成している。
【0076】
このような構成のオゾンガス発生システム1000において、取出しオゾン量Ytをより高めるために、オゾン発生器200内の複数の放電セルの放電面(総放電面積S)に投入する放電電力DW対する比である放電電力密度J(=DW/S)を規定する。さらに、取出しオゾン濃度Ctを高められる条件に設定するために、1単位の放電セル(基本セルS1あるいはS2)に供給する平均ガス流速vo/dを規定するように、1単位の基本セルの放電面の径を小さくする。このように小さくすることで、1放電セル(基本セル)におけるオゾン分解量ydを低く抑え、高濃度なオゾンガスを取り出せるようにしている。また、各々が基本セルS1,S2を有する複数の放電セルによる多段積層セル構造(n(≧2))で供給ガスを分散させることで、原料ガス流量qoの2n倍の原料ガスの総ガス流量Q(=2・n・qo)が供給できるようにしている。
【0077】
また、オゾン発生器200内の各放電セルに投入できる放電電力密度J(=DW/S)を上昇させた場合、所望の総放電電力DWを供給すると、負荷印加電圧Vdが高くなる。この負荷印加電圧Vdを低く抑制して、所望の総放電電力DWを供給して、取出しオゾン量Ytを最大限に確保する目的で、オゾン用電源100の出力周波数を20?50kHzまで高めている。なお、負荷印加電圧Vdはオゾン用電源100から出力するオゾン発生用交流電圧の実効値を示している。
【0078】
さらに、オゾン用電源100内において、並列共振用トランス25の内部励磁インダクタンス値Ltと多段に積層された複数の放電セルを含んで構成したオゾン発生器200自身の静電容量値C0とにより、並列共振できる出力周波数の高周波交流電圧をインバータ回路部22から出力させている。
【0079】
具体的には、オゾン用電源100は、以下の式(5)を満足する並列共振周波数fcの近傍に動作周波数fを設定している。
【0080】
fc=1/(2π・(Lt・C0)^(0.5))…(5)
その結果、オゾン用電源100は、並列共振用トランス25の出力側に並列共振回路を形成したオゾン用電源となり、より安定化したオゾン発生用交流電圧をオゾン発生器200に供給できる。
【0081】
図1及び図2に示すように、平面視して接地冷却電極1の周辺端部と一部重複して、複数の放電セル(S1,S2)の積層方向に延びるマニホールドブロック9を有している。
【0082】
接地冷却電極1は、平面視して円状の上面及び下面を放電面として有している。すなわち、接地冷却電極1の上面が基本セルS1の放電面となり、接地冷却電極1の下面が基本セルS2の放電面となる。すなわち、基本セルS1は接地冷却電極1の上面と、誘電体電極2aの下面とを1対の放電面として、1対の放電面間に放電空間を形成している。同様に、基本セルS2は接地冷却電極1の下面と誘電体電極2bの上面とを1対の放電面として、1対の放電面間に放電空間を形成している。これら2つの放電空間に発生したオゾンガスを取り出すための開口部15を設けている。また、基本放電セルS1及びS2の両面を冷却するために、接地冷却電極1の内部に冷却水経路(図示せず)を有している。
【0083】
開口部15は接地冷却電極1の内部に設けられた出力経路17を介してマニホールドブロック9のオゾンガス出力経路92に繋がっている。一方、マニホールドブロック9に設けられた冷却水出力経路91及び冷却水入力経路93は、接地冷却電極1の内部に設けられた上記冷却水経路と接続されている。
【0084】
このように、基台10に設けられた冷却水経路と、マニホールドブロック9に設けられた冷却水出力経路91及び冷却水入力経路93と、接地冷却電極1に設けられた冷却水経路とを含んで、オゾン発生器200の複数の放電セルを冷却する冷却機構が構成される。
【0085】
また、接地冷却電極1の上面及び下面それぞれ上に、放電ギャップ長d(mm)を構成するための放電スペーサ13が複数個設けられ、複数の放電スペーサ13を介して誘電体電極2a及び2b並びに高圧電極3a及び3bを重ね合わせる。その結果、接地冷却電極1,高圧電極3a(誘電体電極2a)間、及び、接地冷却電極1,高圧電極3b(誘電体電極2b)間それぞれに放電ギャップ長dの放電空間を形成することができる。
【0086】
さらに、接地冷却電極1の上面及び下面には、1つのオゾン生成法として、オゾンを生成するための光触媒材(図示せず)が塗布されたオゾン発生器構成としている。
【0087】
接地冷却電極1の外周部から原料ガスG_(IN)が供給される。この際、複数の放電セルの枚数nに分散された原料ガス流量qo(Q/n)が各放電セルに供給される。そして、接地冷却電極1と高圧電極3a、3bとの間にオゾン発生用交流電圧が印加されることにより、各放電セルの放電面全面に誘電体バリア放電が形成される。したがって、放電空間内において、誘電体バリア放電の光エネルギーと光触媒の活性化により、放電空間に供給した原料ガスに含まれる酸素ガスの酸素原子解離が促進される。
【0088】
その結果、オゾン発生器200は、誘電体バリア放電の特徴である、間欠放電の休止期間で生成した酸素原子と酸素ガスとの三体衝突化学反応が促進され、各放電セルの放電空間において、高効率のオゾン生成能力を発揮することができる。つまり、オゾン発生器200は、複数の放電セルの総放電面積Sと比電力値DW/Qとに比例した濃度のオゾンガスを生成することができる。
【0089】
接地冷却電極1の外周から原料ガスG_(IN)が供給されているため、各放電セルの放電空間で生成したオゾンガスは、ガスの流れに沿って、接地冷却電極1の中央部の開口部15に入り、接地冷却電極1内に設けたオゾン通路である出力経路17を経由して出力オゾンガスG_(OUT)として取り出される。
【0090】
オゾン発生器200内において各放電セルにより生成されたオゾンガスが集められ、マニホールドブロック9のオゾンガス出力経路92を介し、最終的にオゾンガス出口32から所定濃度のオゾンガスが外部に取出される。
【0091】
オゾン発生器200から最終的に取り出される取出しオゾン量Ytは、1単位の放電セルそれぞれの放電空間で生成したオゾンガス生成量yから各放電空間での放電中の衝突によるオゾン分解量と放電セル中のオゾンの自己オゾン分解量とを合わせたオゾン分解量ydを差し引いた取出しオゾン量ytの総和となる。
【0092】
図2の各放電セルで単位時間当たりの生成したオゾン生成量y(g/h)は、放電空間に供給した原料ガス流量qo(L/min)と各放電セルに投入する放電電力dw(W)に対応し、オゾンが放電面に塗布した光触媒機能が作用することで、以下の式(6)で表される。
【0093】
y=qo・C…(6)
式(6)において、”C”は、1単位の放電セルで単位時間当たりの生成するオゾン生成量yと放電空間中の原料ガス流量qoとで算出されるオゾン濃度(g/m^(3))となる。
【0094】
すなわち、1単位の放電セルに形成される放電空間の体積である1放電空間体積dv(cm^(3))は、以下の式(7)で表される。
dv(cm^(3))=d・so…(7)
【0095】
したがって、1放電空間で生成した後、放電空間に滞在しているオゾン量ys(g)は、生成したオゾン生成濃度C(g/m^(3))と式(7)で算出された放電空間体積dv(cm^(3))の積に対応したオゾン生成量yとなる。
【0096】
なお、式(7)において、”d”は、放電ギャップ長(cm)、”so”は、1単位の放電セルにおける放電面の放電面積(cm^(2))であり、これらのパラメータ”d”,”so”は、放電セル構造を規定する固定値である。
【0097】
放電セルで生成するオゾン生成濃度C(g/m^(3))は、単位時間当たりの単位ガス体積dv(cm^(3))に注入する放電電力dwに対応する。なお、単位ガス体積dvは、1単位の放電セルに関し以下の式(8)(式(2)に同じ)に再度示す。
【0098】
dv(cm^(3)/sec)=1000・Q/(n・60)…(8)
つまり、1単位の放電セルで生成するオゾン生成濃度C(g/m^(3))は、単位ガス体積dvに注入する放電エネルギー量(joule/cm^(3))に相当する比電力値dw/qo(W・min/L)によって決まり、以下で示す式(9)のように放電空間で滞在しているオゾン量ys(g)は、比電力値dw/qo(W・min/L)に比例して高くなる。
ys(g)=C・d・s/1000000…(9)
【0099】
ここでは、1単位の放電セルにおける比電力値dw/qoで示したが、多段に積層した場合(n倍)の全体の比電力値DW/Qとは同じ比で示されるため、今後、比電力値DW/Qで表記する。
【0100】
しかし、実際の放電を用いたオゾンガス発生装置においては、取出しオゾン濃度Ctは、図7に示すように、比電力値DW/Qに比例して増加せず、比電力値DW/Qに対する取出しオゾン濃度Ctの特性は特性8000aとなる。
【0101】
特性8000aにおいて、低い比電力値DW/Qの取出しオゾン濃度Ct特性の接線(二点鎖線)が放電セル(オゾン発生セル)で生成するオゾン生成濃度C(g/m^(3))の特性と定義される。
【0102】
一方、図7の特性8000aに示すように、高い比電力値DW/Qの領域での取出しオゾン濃度Ctは、各放電セルから生成するオゾン生成濃度Cから、各放電セル内での生成したオゾンを分解する濃度Cdを取り除いた値となっていると判断できる。
【0103】
図7に示すように、原料ガス流量Qが略3.0L/min以上の大流量域において、オゾン発生器の比電力値DW/Qに対する取出しオゾン濃度Ctの特性8000aが所定の濃度値で飽和している。このため、総放電電力DWを増加し比電力値DW/Qを高めても取出しオゾン濃度Ctを高めることができない。
【0104】
比電力値DW/Qを高くしても、所定濃度値から取出しオゾン濃度Ctが高くならず、むしろ低下傾向を示す原因は、放電セルで発生した電子、イオン、放電ガスと放電空間で生成したオゾンとの衝突でオゾンガスが分解することと、放電セル内で滞在しているオゾン自身の自己分解が大きいことにある。
【0105】
つまり、放電空間で生成したオゾンガスが、放電中の電子空間を通過する際、電子、イオン、放電ガス等と衝突して分解する分解量とオゾン自身の自己分解する自己分解量とを合わせた分解量が大きいことにより、取出しオゾン濃度Ctが低下している。
【0106】
放電セル内でオゾン分解する総オゾン分解量Yd(=2・n・yd)は、放電空間中での発生した電子量ne、放電ガスngの分子量、平均ガス流速vo/d、ガス滞在時間To及びガス温度Tgに依存して以下の式(10)で表される。なお、”yd”は1単位の放電セルのオゾン分解量を意味する。
【0107】
Yd=B(ne,ng,vo/d,To,Tg,C)…(10)
式(10)に示すように、総オゾン分解量Ydは、B(…)の関数で求まる。
【0108】
したがって、複数の放電セル内でオゾンガスを分解する総オゾン分解量Ydを比電力値DW/Qに対応して低減できれば、取出しオゾン濃度Ctを高めることができる。
【0109】
複数の放電セル内でオゾン分解する総オゾン分解量Ydは、複数の放電空間中でのオゾンガスの分解量であるが、図7に示すように、総ガス流量Qが略3.0L/min以上の大流量域においては、オゾンガスを生成するために投入する総放電電力DWとガス流量Qとの比(比電力値DW/Q)で一義的決まることが分かる。
【0110】
このことから、比電力値DW/Qに依存した総オゾン分解量Ydは、オゾン発生器の構造そのもの条件で決まる固有の特性を有していることが分かった。つまり、オゾン発生器の構造やオゾン電源の出力条件を見直せば、比電力値DW/Qに依存した総オゾン分解量Ydも低減でき、かつ取出しオゾン量Ytが高められる。この点に着目したのが本願発明である。
【0111】
図2に示す接地冷却電極1における1放電面の断面において、放電セル中での生成したオゾンガスのオゾンの分解量に注目する。
【0112】
原料ガス流量Q(原料ガス流量)で原料ガスを供給すると、2n個の1単位の放電セル(基本セルS1あるいはS2)それぞれに流れる原料ガス流量qo(=Q/(2・n))に分散して供給され、1単位の放電セル当たり放電電力dw(=DW/(2・n))を投入する場合を考える。
【0113】
この場合、1つの放電空間で生成したオゾンガスのオゾン生成量y[=Y/(2・n)](g/h)は、放電空間を原料ガスが流れることにより生成される量である。そして、1単位の放電セルでのオゾン生成量yは、放電空間を通過する時間であるガス滞在時間Toと、1放電面における単位周囲長さl(cm)を基準とした放電セルに流れるガス断面sav(=1・d)における平均ガス流速vo/d(cm/s)(=qo・0.001/(60・sav))とからなる2つの要素と密接に関連する。これら2つの要素は、放電セルの形状で決まる固有値となる。なお、単位周囲長さl(cm)とは、1放電空間を形成する1対の放電面のうち、一の放電面である代表放電面の外周に沿った周囲長さ(cm)を示す。つまり、1放電面の平均面積sav(=so/2)の放電径の周囲長さ(cm)が単位周囲長さl(cm)となる。
【0114】
ガス滞在時間Toは、放電空間における電子、イオン、放電ガスと放電面で生成したオゾンガスとの衝突によるオゾン分解量と、放電空間内で滞在しているオゾン自身の自己オゾン分解量の両方に密接に関連する。また、単位周囲長さl(cm)を基準とした平均ガス流速vo/d(cm/s)は、1単位の放電セル内で生成されるオゾン生成能力と密接に関係しており、オゾン生成能力に対しガスの平均ガス流速vo/dが大きければ、総ガス流量Qが大きいことになり、取出せるオゾン濃度が低くなることになる。
【0115】
したがって、ガス滞在時間To及びガス温度Tgは、放電空間を通過中のオゾンガスの衝突による分解量とオゾン自身の自己分解量を高める要素となり、放電セル内でのオゾン分解量を高める要因を助長させている。また、放電空間内でオゾンを生成する能力よりも、平均ガス流速vo/d(cm/s)が大きくなると、取出すオゾン濃度Ctが低くなる。
【0116】
つまり、1つの放電空間において、投入できる放電電力密度J(=wd/so)の誘電体バリア放電のエネルギーで生成したオゾンガスのオゾン発生量y[=Y/(2・n)](g/h)のうち、放電空間内に滞在しているオゾン量ys(g)に関し、このオゾン量ysを高濃度でオゾンを取り出す際には、放電空間におけるガスのガス滞在時間Toによるオゾン分解量ydの影響が無視できない。
【0117】
具体的には、ガス滞在時間Toが大きいほど、オゾン分解時間が長くなるため、放電ガスとの衝突による分解量と滞在しているオゾン自身の自己分解量との総計であるオゾン分解量ydが大きくなる。
【0118】
また、放電空間でオゾンが生成する能力よりも、平均ガス流速vo/d(cm/s)が大きくなると、取出しオゾン濃度Ctが低くなる。
【0119】
さらに、放電電力密度Jを増すとガス温度Tgが高くなる傾向はあるが、放電面全面を冷却して、放電熱エネルギーを十分に取り除く冷却能力を有すれば、投入できる放電電力密度Jを増した放電セル形状ほどにオゾン分解量ydは増加せず、ある程度冷却能力で抑制できる。
【0120】
ガス温度Tgによるオゾン分解については、放電電極面の冷却能力と関連し、十分な冷却能力にすることでガス温度Tgの温度上昇を抑制できる。ガス温度Tgの温度上昇抑制については、オゾン発生器の設計上の必須問題であるため、ここでは、ガス温度Tgによるオゾン分解量の増加については考慮しない。
【0121】
次に、通常の3.0L/min以上の大流量の原料ガスを流した場合において、放電空間中のガス滞在時間To、単位周囲長さl(cm)を基準した放電空間を流れる平均ガス流速vo/d、及び放電電力密度Jに適した放電セル形状について考える。ガス滞在時間Toは以下の式(11)のようになる。
【0122】
To(ms)=(d・so)/qo…(11)
なお、式(11)において、”d”は、放電ギャップ長(mm)、”so”は、1単位の放電セルの放電面における放電面積(cm^(2))、”qo”は1放電空間当たりの原料ガス流量(L/min)である。
【0123】
一方、”S”は、オゾン発生器200内の総放電面積(cm^(2))を示し、”Q”は、オゾン発生器200内に供給する原料ガスの総ガス流量(L/min)を示し、”n”は、図1で示したオゾン発生器200の積層した放電セル(基本セルS1及びS2の組合せ)の枚数(個)を示し、放電面数としては、2・nとなる。
【0124】
また、単位周囲長さl(cm)を基準とした放電面に流れる平均ガス流速vo/d(cm/s)は、放電セルの形状に依存する。例えば、円板状の放電セルの場合、単位周囲長さl(cm)を基準とした放電セルに流れるガス断面savは、放電面積soの1/2相当の放電径に流れ込む単位ギャップ長当たりの平均ガス流速voで定義すると以下の式(12)で表される。
【0125】
vo(cm/s)=qo/(2π・(so/2π)^(0.5))
=f(so)・{1/To}…(12)
なお、単位ギャップ長当たりの平均ガス流速voは、関数f(so)と放電空間中のガス滞在時間Toの逆数に依存する値である。
【0126】
また、1放電空間に投入できる放電電力密度J(W/cm^(2))は、以下の式(13)で表される。
【0127】
J(W/cm^(2))=DW/S=dw/so…(13)
なお、式(13)において、”DW”は総放電電力である。
【0128】
放電空間において、単純に比例してオゾン分解量ydが増加する要素は、ガス滞在時間Toである。ガス滞在時間Toが短くなるようにするには、1単位の放電セルの放電面の放電面積soを小さくして、同じ放電電力dw[=DW/(2・n)]を投入すれば、式(11)で示すガス滞在時間Toが短くなる分、オゾン分解量ydを下げることができる。
【0129】
しかしながら、1単位の放電セルの放電面積soを小さくすると、式(12)で示すように単位周囲長さ(cm)を基準とした放電面を流れる平均ガス流速vo/d(cm/s)が大きくなる。このため、放電面内に供給する原料ガス流量qoが低い条件下でも、オゾン取出し濃度Ctを高くすることができる。
【0130】
本願発明者は、1単位の放電セルにおける放電面積soを小さくすれば.放電空間に供給する原料ガス流量qoが低い条件で、放電空間でのガス滞在時間Toを短くする条件設定が重要であることを見出した。すなわち、本願発明者は、上記条件設定により、生成したオゾンの衝突によるオゾン分解と滞在しているオゾン自身の自己分解とを含む分解に要する時間が短縮でき、結果として放電空間におけるオゾン分解量ydを減らせることを認識した。
【0131】
したがって、高濃度オゾンが取出せるように、平均ガス流速vo/dを最適条件に設定し、ガス滞在時間Toを短くすることが望ましい。つまり、放電空間で生成したオゾンの取出す際におけるオゾン分解量ydを減らすには、1単位の放電セルにおける放電面積soを小さくすることが必要である。
【0132】
そして、ガス滞在時間Toを短くする方法として、放電電力密度Jが望ましい範囲内になるように放電セルにおける放電面の径を小さくし、径を小さくした放電面により形成される放電空間に投入する放電電力dwを設定する方法が考えられる。この方法によれば、1放電空間におけるオゾン分解量ydを低減でき、結果として、1放電空間からより高濃度で、所定量のオゾンガスが取出せるようになる。
【0133】
つまり、本願発明者は、高濃度なオゾンガスを取り出す手段として、1放電空間から高濃度のオゾンガスが取出せるオゾンセル構造(放電面の放電面積so)と、放電電力密度Jの設定を規定するため、1放電空間に投入する放電電力dwと、平均ガス流速vo/dを規定範囲内にするための原料ガス流量qoとを含む各種要因の条件範囲を適切に設定することが重要になる。
【0134】
さらに、上記した1放電空間に関する条件を維持し、かつ、高濃度のオゾンガスが取出せるガス流量を高める方法として、基本セルS1及びS2を有する放電セルを多段(n倍)に積層することが望まされる。放電セルをn段に積層すると、放電電力DW(=2・n・dw)及び総ガス流量Q(=2・n・qo)を高めたオゾンガス発生システムを構成することができ、結果的に比較的大きなガス流量域で高濃度なオゾンガスを取出すことができる。
【0135】
加えて、上記構成のオゾンガスシステムにおいて、総放電電力DW(=2・n・dw)と総ガス流量Qとを可能な範囲で最大に設定することにより、取出しオゾン量Yt(=Ct・Q)を最大限に高めることができる。
【0136】
以上、高濃度オゾンが取り出せるようにするため、オゾン分解量ydを減らす手段として、放電空間におけるガス滞在時間Toを短くできるようにするため、1放電面の放電面積soを規定値範囲内に小さくしたオゾンガス発生システムにすることが望ましい。
【0137】
また、取出しオゾン量Ytを高めるようにするため、総放電電力DW及び放電電力密度Jを規定値範囲内において最適にしたオゾンガス発生システムにすることが望ましい。
【0138】
次に、高濃度オゾンが取出せるオゾンガス発生システムとしては、ガス流量が低流量やオゾン発生器をより低温に冷却する手段はあるが、低流量のオゾンガスを必要とする要求分野は限られる。また、オゾン発生器をより低温に冷却する手段は、オゾンガス発生システムに付帯設備が大きくなり、オゾンガス発生システム自身も従来装置に比べ、高価で大きくなることになる。
【0139】
以上のことから、高濃度オゾンが取出せるオゾンガス発生システムの制約条件を総ガス流量Qのガス流量範囲を略3.0L/min以上の大流量のガス流量とし、オゾン発生器200を冷却する冷却温度を5℃以上にした条件を考える。この条件下で、例えば、一実施例としての400g/m^(3)以上の高濃度オゾンを取り出せ、かつ、取出しオゾン量Ytを高めたオゾンを取り出せることのできるオゾンガス発生システム1000を実現させることが必要になる。この場合、オゾン発生器200の総放電面積Sを確保するだけでなく、放電空間に供給する放電電力密度J及び総放電電力DWを可能な範囲で最大に設定できる安定したオゾン用電源100を得ることも重要である。
【0140】
オゾン用電源100は、高濃度で、所定量のオゾンガスを得るために、オゾン発生器200に総放電電力DWを投入してオゾン発生器200の放電電力密度Jを高める必要がある。この場合、オゾン用電源100のオゾン発生用交流電圧の出力周波数が従来の出力周波数である20kHz未満であると、オゾン発生器200に印加する負荷電圧が高くなり、オゾン用電源100、オゾン発生器200自身の耐電圧強化が必要になる等の問題点が生じる。
【0141】
このため、ピーク電圧が7kVp(5.0kVrms)以下の負荷印加電圧Vdを付与するオゾン用電源100としては、出力周波数fが20kHz?50kHz(20kHz以上、50kHz未満)の高周波のオゾン発生用交流電圧を出力するオゾン用電源することが望ましい。また、出力周波数fが30kHzを超えるオゾン用電源とすると、電源自身から発するノイズが急激に増え、オゾンガス発生システムに付帯する計測機器や外部機器の誤動作が増大することになる。さらに、オゾン発生器との負荷との共振周波数附近を維持するため、出力周波数fの負荷変動に応じた周波数制御が不可欠になり、オゾン用電源として安定な電力を出力させることが非常に困難になる。そのため、オゾン用電源100の出力周波数fは、20kHz?30kHz未満に制限することがより望ましい。
【0142】
20kHz?50kHzの高周波の負荷印加電圧Vdを付与するオゾン用電源として、以下の2種類の電源が考えられる。
【0143】
第1の電源…オゾン用電源のインバータ部とオゾン発生器との間に直列共振回路を設けた電源、
第2の電源…オゾン用電源のインバータ部とオゾン発生器との間に高周波・高電圧トランスを設けた電源。
【0144】
第1の電源においては、オゾン用電源の出力側のトランスを無くし、インバータ部とオゾン発生器との間に共振Q値の高い(例えば、Q値が10以上)直列共振回路を設け、負荷印加電圧Vdまで昇圧するようにする必要がある。第1の電源においては、高周波・高電圧トランスが無いというメリットでオゾン用電源自身をコンパクト化できる。
【0145】
しかし、第1の電源は、インバータ部と直列共振回路とオゾン発生器との3つの主要構成部を跨る回路間で共振させるため、共振した負荷電流の帰還電流がインバータ部まで戻ることにより、インバータ部の電源ロスが非常に大きくなる。
【0146】
さらに、第1の電源は、負荷印加電圧Vdまで昇圧共振させるため、微妙な負荷条件変動で負荷印加電圧Vdが変化し、インバータ部の動作周波数を制御しても、安定した負荷印加電圧Vdをオゾン発生器に投入することが難しい。加えて、動作周波数が常に可変であるため、電源ノイズが大きくなるなどの問題点がある。
【0147】
以上の問題点があるため、実用上は、高周波のオゾン用電源が出力する放電電力DWは1.5kW未満のオゾンガス発生システムにしか適さない。また、第1の電源である小さなオゾン用電源を複数個搭載することは、オゾン発生器構成の複雑化や制御の複雑化を招き、さらに、オゾン用電源内の制御ロスや部品点数が増える等の問題点が生じる。
【0148】
そのため、原料ガスの総ガス流量Q(原料ガス流量)のガス流量範囲を略3.0L/min以上とし、上記オゾン発生器を冷却する冷却温度を5℃以上にした条件下で、400g/m^(3)以上の高濃度のオゾンガスを取り出すことを目的とした本実施の形態のオゾンガス発生システムには不適である。なぜなら、本実施の形態のオゾンガス発生システムは、比電力値DW/Qが600W・min/L以上を満足する総放電電力DWが必要であるからである。
【0149】
第2の電源においては、インバータ部(インバータ回路部22)とオゾン発生器との間に高周波・高電圧トランス(並列共振用トランス25)を設けることにより、高周波・高電圧トランスの1次側巻数と2次側巻数との巻数比で決まる一定値で電圧昇圧できる。さらに、トランスの2次側以降で、負荷との並列共振回路を設けることで、負荷に供給する出力周波数と負荷印加電圧Vdとをほぼ一定値にして、総放電電力DWをオゾン発生器200に供給することができる。
【0150】
その結果、インバータ部に共振した負荷電流が帰還電流として戻ることなく、インバータ部の電源ロスを比較的小さくでき、負荷との共振度合に依らず負荷印加電圧Vdが一定で、負荷に安定した総放電電力DWを供給できる。
【0151】
このため、第2の電源では、高周波のオゾン用電源が出力する放電電力DWを1.8kW以上にすることができ、第2の電源は安定した出力をオゾン発生器に投入することができるメリットがある。
【0152】
本実施の形態のけるオゾン用電源100は、上述した第2の電源の要件を満足させている。そして、オゾン用電源100とオゾン発生器200とを組み合わせてオゾンガス発生システム1000を構成している。
【0153】
このため、本実施の形態のオゾンガス発生システム1000は、原料ガスの総ガス流量Qのガス流量範囲を略3.0L/min以上とし、オゾン発生器200を冷却する冷却温度を5℃以上にした条件下で、400g/m^(3)以上の高濃度オゾンを取り出すことができる。さらに、オゾンガス発生システム1000は、高濃度オゾンガスが取出せる流量が大流量化でき、かつオゾン発生器の冷却能力も従来と同等レベルのオゾンガス発生システムになる。
【0154】
さらに、並列共振用トランス25自身の内部インダクタンスと負荷(オゾン発生器200)の静電容量との共振周波数になるように、インバータ回路部22の動作周波数を設定している。このため、並列共振用トランス25の出力側に新規に共振用リアクトルを設けることなく、並列共振用トランス25の2次側以降の共振回路もこの並列共振用トランス25で共用できるメリットがある。
【0155】
以上、原料ガスが比較的大きな総ガス流量Qで、高濃度なオゾンガスを取り出すオゾン発生器の手段として、発生器内の1単位の放電セルにおける放電空間を最適な範囲に設定することの重要性を説明した。以下、本実施の形態のオゾンガス発生システム1000の詳細について図1を参照して説明する。
【0156】
オゾン用電源100からの投入する総放電電力DWを一定の5.0kWにして、オゾン発生器200の基本セルS1,S2を有する放電セルの段数nを6(計12個の放電空間が形成される)とし、放電ギャップ長dを数十?数百μm条件を満足する一定長とし、以下の3種類のオゾン発生器を準備した。
【0157】
Aタイプ放電セル形状の発生器…総放電面積Sが2500cm^(2)、
Bタイプ放電セル形状の発生器…総放電面積Sが1250cm^(2)、
Cタイプ放電セル形状の発生器…総放電面積Sが625cm^(2)、
そして、Aタイプ放電セル形状の発生器?Cタイプ放電セル形状の発生器それぞれで取出せるオゾン濃度を求めた。
【0158】
Aタイプ放電セル形状の発生器では、1放電面積soが約209cm^(2)、放電径(放電面の直径)が約φ170(mm)、投入できる放電電力密度Jが2W/cm^(2)の設定となる。
【0159】
Bタイプ放電セル形状の発生器では、1放電面積soが約104cm^(2)、放電径が約φ115(mm)、投入できる放電電力密度Jが4W/cm^(2)の設定となる。
【0160】
Cタイプ放電セル形状の発生器では、1放電面積soが約52cm^(2)で、放電径が約φ81(mm)で、投入できる放電電力密度Jが8W/cm^(2)の設定となる。
【0161】
なお、オゾン発生器を冷却する冷却水温は一定の5℃に設定した。
【0162】
図2に示すように、1放電面の放電径を比較的小さくすることにより、1放電空間におけるガス滞在時間Toは、1単位の放電セル(基本セルS1あるいはS2)に投入できる放電電力密度Jの増大割合に対し、Aタイプ放電セル形状の発生器は1倍、Bタイプ放電セル形状の発生器は1/2、Cタイプ放電セル形状の発生器は1/4となる。
【0163】
放電セル数nを6(放電面数12(放電空間数12))にすることで、1単位の放電セルでの平均ガス流速vo/dは、Aタイプ放電セル形状の発生器は1/12、Bタイプ放電セル形状の発生器は1/6、Cタイプ放電セル形状の発生器は1/3になる。したがって、1放電空間の流速は放電電力密度Jの増大割合に対し、それぞれのタイプで、放電セル数n(放電面数12)に対応した1/12の割合でしか平均ガス流速vo/dは大きくならない。
【0164】
その結果、オゾン発生器200内で生成したオゾンガスが放電空間を通過する際における総オゾン分解量Ydは、放電径が小さい放電セルの方が小さくなることが解る。1単位の放電セルの形状と放電セルの積層に対する高濃度オゾンガスが取出せる効果の詳細については後述する。
【0165】
図3は、本実施の形態のオゾン発生器200がA放電セル形状のタイプ発生器、Bタイプ放電セル形状の発生器、Cタイプ放電セル形状の発生器の場合、各々の放電面に原料ガスを流した場合における放電空間のガス滞在時間Toに対する総オゾン分解量Ydの特性を示すグラフである。
【0166】
図3において、Aタイプ放電セル形状の発生器の総オゾン分解量Ydの特性5000a、Bタイプ放電セル形状の発生器の総オゾン分解量Ydの特性5000b、Cタイプ放電セル形状の発生器の総オゾン分解量Yd特性5000cとなる。
【0167】
また、破線で示した特性5000s1、特性5000s1は、放電電力密度J設定の境界値を考察した上下限を示している。
【0168】
特性5000s1は、Aタイプ放電セル形状の発生器とBタイプ放電セル形状の発生器との間の放電電力密度Jが2.5W/cm^(2)設定に相当する境界特性である。
【0169】
特性5000s2は、Bタイプ放電セル形状の発生器とCタイプ放電セル形状の発生器との間の放電電力密度Jが6.0W/cm^(2)設定に相当する境界特性である。
【0170】
図3で示す特性5000a、5000b、及び5000cを比較する。図3に示すように、放電径を小さくすれば、ガス滞在時間Toが50ms以下の範囲において、ガス滞在時間Toに対応して、一定の割合で、総オゾン分解量Ydが高まる。一方、ガス滞在時間Toが50ms以上の範囲において、総オゾン分解量Ydは放電径が小さいほど少なくことが実験的に確かめられた。
【0171】
つまり、放電面の放電径が小さい条件設定にすれば、放電空間でのオゾン分解量ydが少なくなり、その分、オゾン発生器200からの取出しオゾン量Ytが増加することを意味する。この点においては、Cタイプ放電セル形状の発生器が最も優れている。
【0172】
一点鎖線で示した領域99aは、後に説明するが、高濃度のオゾンガスが取出せる範囲での総オゾン分解量Ydに相当する。図3に示すように、放電空間でのガス滞在時間Toは20ms?80msの範囲において、領域99aの総オゾン分解量Ydは、約400g/h?900g/hに抑えられており、特性5000aの総オゾン分解量Ydに比べ十分に低くなっているため、高濃度のオゾンガスを取出すことが期待できる。
【0173】
図4は、Aタイプ放電セル形状の発生器、Bタイプ放電セル形状の発生器及びCタイプ放電セル形状の発生器それぞれの比電力値DW/Qに対する取出しオゾン濃度Ctの特性を示すグラフである。
【0174】
図4において、Aタイプ放電セル形状の発生器のオゾン取出し濃度Ctの特性4000a、Bタイプ放電セル形状の発生器のオゾン取出し濃度Ctの特性4000b、Cタイプ放電セル形状の発生器のオゾン取出し濃度Ctの特性4000cが示されている。
【0175】
また、破線で示した特性4000s1、特性4000s2は、図3と同じように、放電電力密度Jを可能な範囲で最大に設定できる放電セル形状の境界値を考察した上下限を示している。
【0176】
特性4000s1は、取出しオゾン濃度Ctが400g/m^(3)が得られる放電電力密度Jの放電セル形状の下限境界の特性結果を示し、その放電電力密度Jは約2.5W/cm^(2)まで設定できる放電セル形状である。
【0177】
特性4000s2は、取出しオゾン濃Ctが400g/m^(3)が得られる放電電力密度Jの放電セル形状の上限境界の特性結果を示し、その放電電力密度Jは約6.0W/cm^(2)まで設定できる放電セル形状である。
【0178】
取出しオゾン濃度Ctの特性は、比電力値DW/Qに応じた放電空間でのオゾン生成濃度を示すが、オゾン発生器に投入できる放電電力密度Jが異なる放電セル形状にした場合、取出しオゾン濃度Ctの特性も異なる。
【0179】
しかしながら、各特性(4000a、4000b、4000c)を有するAタイプ?Cタイプのオゾン発生器において、オゾン生成濃度に相当する図4の比電力値DW/Qに対する特性(二点鎖線の接線特性)の勾配を見ると、放電面の放電径の小さい、放電電力密度Jを高くできるようにした放電セル形状ほど、小さい結果となる。つまり、放電空間で生成するオゾン生成能力は、放電電力密度Jが高くできるようにした放電セル形状の方が小さくなることを示している。
【0180】
図4で示す特性4000a、4000b、及び4000cは、オゾン生成濃度特性からオゾンガスの分解量を差し引いたものを示している。オゾンガスの分解量は、放電空間でオゾンガスが通過する際、オゾンガスが放電中の電子ne、イオンn^(+)や放電ガスngと衝突することによって生じるオゾン分解量と放電中に滞在しているオゾン自身の自己分解量との総和になる。
【0181】
比電力値DW/Qに対する特性の接線特性であるオゾン生成濃度特性は、Aタイプ放電セル形状の発生器が最も大きく、放電セル径が小さくなり、投入できる放電電力密度Jを大きくしたものほどオゾン生成濃度特性は低くなる傾向を示している。
【0182】
つまり、オゾン生成能力は、放電電力密度Jに逆比例する結果になる。放電空間中の窒素ガスの触媒作用や放電面での光触媒作用によるオゾン生成能力は放電電力密度Jを高くした放電セル形状ほど低くなる傾向を示している。
【0183】
しかし、図3で示したように、放電径を変えた放電セルを多段に積層したオゾン発生器においては、放電径を小さくすると放電空間のガス滞在時間Toを短くすることができ、生成したオゾンの分解量を少なくすることができる。なぜなら、オゾンガスの分解は、放電空間内でオゾンガスが電子や放電ガスと衝突する分解と放電内で滞在している期間に生じる。そのため、生成したオゾン自身の自己分解と衝突による分解との総分解量は、ガス滞在時間Toを短くすることによって単純に小さくすることができるからである。
【0184】
上記要因により、Aタイプ放電セル形状の発生器、Bタイプ放電セル形状の発生器及びCタイプ放電セル形状の発生器の取出しオゾン濃度Ctの特性が異なり、Bタイプ放電セル形状の発生器では、図4で示す領域99a内において、400g/m^(3)以上の高濃度オゾンを取り出すことができる。
【0185】
つまり、Aタイプ放電セル形状の発生器では、オゾン生成量は高いが、ガス滞在時間Toが比較的長いため、衝突による分解とオゾン自身の自己分解との総和であるオゾンの分解量が大きくなり、結果として、最大でも400g/m^(3)未満の濃度のオゾンガスしか取り出せないことを示している。
【0186】
Bタイプ放電セル形状の発生器では、オゾン生成量はAタイプ放電セル形状の発生器に比べ低くなるが、ガス滞在時間Toが短くなるため、衝突による分解とオゾン自身の自己分解との総和であるオゾンの分解量が小さくなる。したがって、Bタイプ発生器は、結果として、比電力値DW/Qが600W・min/L以上の範囲で、400g/m^(3)以上の高濃度のオゾンが取出せることになる。
【0187】
本願発明は、Bタイプ放電セル形状の発生器のような高濃度のオゾンが取出せるオゾン発生器の放電セル形状と動作条件を見つけ出すことにあり、以下の要件を満足することが望ましいことを本願発明者は見出した。
【0188】
オゾン発生器200に供給する原料ガスの総ガス流量Qを略3.0L/min以上にすると、オゾン用電源100から投入する総放電電力DWは少なくとも1.8kW以上の電力を投入する必要がある。
【0189】
さらに、Cタイプ放電セル形状の発生器では、所定の放電電力DWを投入するために放電電力密度Jを高くするため、放電空間におけるオゾン生成能力(二点鎖線)で決定するオゾン生成量が極端に低くなる。そのため、ガス滞在時間Toを短くなることで、衝突による分解とオゾン自身の自己分解との総和であるオゾン量の分解量を小さくしても、取出しオゾン濃度Ctは低くなる。
【0190】
結果として、Cタイプ放電セル形状の発生器では、原料ガスの総ガス流量Qと投入した放電電力DWの条件において、最大でも320g/m^(3)未満の濃度しか取り出せないことが判明した。
【0191】
このことから、400g/m^(3)以上の高濃度のオゾンが取出せるオゾン発生器を実現するには、最適な放電セル形状があり、実施の形態のオゾン発生器においては、放電セル形状の上限範囲としては、境界特性4000s2で示したように、放電電力密度Jを約6W/cm^(2)未満に限定したものが望ましく、放電電力密度Jの下限としては、境界特性4000s1で示したように、放電電力密度Jを約2.5W/cm^(2)以上に設定したものが望ましいという結果になった。
【0192】
図5は、Aタイプ放電セル形状の発生器、Bタイプ放電セル形状の発生器及びCタイプ放電セル形状の発生器それぞれの原料ガスの総ガス流量Qに対する取出しオゾン濃度Ctの特性を示すグラフである。
【0193】
図5において、特性3000aはAタイプ放電セル形状の発生器の特性を示し、特性3000bはBタイプ放電セル形状の発生器の特性を示し、特性3000cはCタイプ放電セル形状の発生器の特性を示す。
【0194】
特性枠である領域99aは、取出しオゾン濃度が400g/m^(3)以上の高濃度のオゾンが得られるガス流量域を示し、Bタイプ放電セル形状の発生器において、供給する原料ガスの総ガス流量Qは、約25L/min未満で400g/m^(3)以上の高濃度が得られることが分かった。
【0195】
さらに、特性枠99bは、従来のオゾン発生器相当のAタイプ放電セル形状の発生器で得られるオゾン濃度特性3000aに比べ、比較的高濃度なオゾンガスが得られるガス流量域を示し、Bタイプ放電セル形状の発生器において、供給する原料ガスの総ガス流量Qは、50L/min未満で高濃度なオゾンガスが得られることが分かった。
【0196】
また、図5では、供給する原料ガスの総ガス流量Qが、略3.0L/min未満においては、Aタイプ放電セル形状の発生器においても、400g/m^(3)以上の高濃度のオゾンガスを得ることができる。しかし、この場合、取出せる総オゾン量は100g/h未満であり、少量のオゾン量を必要とする市場は少ない。また、本オゾン発生器では、大流量のオゾンガスが取り出せ、かつ、高濃度なオゾンガスが得られることを目的としているため、低ガス流量における高濃度のオゾンガスを得られるものは射程外となる。
【0197】
さらに、Aタイプ放電セル形状の発生器で、特殊なオゾン発生器として、発生器の冷却温度を5℃未満にして、400g/m^(3)以上の高濃度のオゾンガスを得ることが考えられる。しかしながら、冷却温度を5℃未満にしたものは冷却能力をアップした付帯設備が必要になり、実用上のメリットがないため、本実施の形態では、オゾンガス発生システム1000として冷却温度の適用温度としては5℃以上に設定とした。
【0198】
オゾン発生器200は、各放電セルの接地冷却電極1と高圧電極3a、3bとの間に交流電圧を印加し、酸素ガスを含んだ原料ガスが注入された放電空間に放電現象を生じさせてオゾンガスを発生させている。
【0199】
図1に示したオゾン用電源100の並列共振用トランス25から高圧ブッシングを介して高圧電極3a、3bの給電部である高電圧端子HVにオゾン発生用交流電圧が印加される。このオゾン発生用交流電圧によって総放電電力DWが規定される。
【0200】
すると、各放電セル(基本セルS1あるいは基本セルS2)の放電空間に誘電体電極2a、2bを介して誘電体バリア放電が発生する。この際、総放電電力DWに基づき各放電セルに投入できる放電電力密度J(=DW/S)(W/cm^(2))の電力密度が放電セルに投入される。各放電セルの放電空間で生成されたオゾンガスは、図2で示すように、放電空間の中央に設けた開口部15から接地冷却電極1内の出力経路17を介して、マニホールドブロック9のオゾンガス出力経路92に集められ、オゾン発生器200から取出される。
【0201】
接地冷却電極1及び低圧冷却板5の内部は冷却するための冷却空間(図示せず)が設けられており、基台10に設けられた冷却水経路、マニホールドブロック9の冷却水出力経路91及び冷却水入力経路93を経由して、接地冷却電極1及び低圧冷却板5内に冷却水を流すことで各放電セルを冷却している。このように、接地冷却電極1、低圧冷却板5基台10、及びマニホールドブロック9を含んで、放電セルを所定の冷却温度に冷却する冷却機構が構成される。
【0202】
以下、1単位の放電セルにおける1放電面の形状について説明し、さらに、複数の放電セルを積層する効果について説明する。
【0203】
オゾンガス発生システム1000において、基本セルS1及びS2を有する放電セルを多段(6段)に積層したもの(放電面:12面)で高濃度なオゾンガスが取出せる条件について説明した。
【0204】
ここでは、より本願発明の適用範囲を明確にするため、1単位の放電セルにおける1放電空間での高濃度オゾンガスが取出せる条件を説明する。以下、原料ガスの総ガス流量Q(原料ガス流量)のガス流量範囲を略3.0L/min以上の大流量域において、より高濃度(400g/m^(3)相当以上)なオゾンガスが取出せる放電セルの積層する効果について説明する。
【0205】
積層したオゾン発生器における図5で示した総ガス流量Qに対する取り出しオゾン濃度Ct特性から。高濃度で所定量のオゾンガスを効率よく取出すべく、1単位の放電セル(1放電面)に供給する原料ガス流量qoが略0.5L/min?略2.5L/min弱の範囲を満足するように、1放電面の放電面積soを小さくした放電セル形状に設定することが望ましい。
【0206】
すなわち、高ガス流量域まで高濃度なオゾンガスが取出すために、1単位の放電セルの多段に積層する枚数nを増やす手段を講じ、1放電面積soを略約30cm^(2)?略160cm^(2)に設定することが重要である。また、原料ガスの総ガス流量Qおいて、高出力の取出しオゾン量Ytを得るために、放電面の放電径を小さくして放電面積soを規定した1単位の放電セルを多段に積層する(枚数nを増やす)手段を講じ、かつ、投入できる放電電力密度Jを略2.5W/cm^(2)?略6.0W/cm^(2)の範囲に設定したオゾンガス発生システム1000が望ましい。
【0207】
そして、1放電面積soと放電電力密度Jとから放電電力dw(=so・J)が求まり、放電ギャップ長dを数十?数百μmとした1放電空間に供給する原料ガス流量qoを略0.5L/min?略2.5L/min弱範囲において、Bタイプの放電セル形状を採用した場合を考える。この場合、オゾン濃度が400g/m^(3)を超える高濃度オゾンが取出せ、多段に積層する枚数nに比例して取出せるオゾン流量を増やせることになる。また、Bタイプの放電セル形状において、総ガス流量Qで、可能な範囲で最大の取出しオゾン量Ytを得るため、上述した条件を満足し、かつ、可能な範囲で最大となるように。放電電力密度Jから放電電力dw(=so・J)を決定し、放電ギャップ長dを数十?数百μmとした1放電空間に供給する原料ガス流量qoを可能な範囲で最大に設定することが望ましい。
【0208】
1放電面積soを30cm^(2)?160cm^(2)に規定する具体的方法としては、1例としては平面視して円状の放電セルの放電面の直径をφ70mm?φ140mmの範囲にして、放電面積soを規定していることになり、原料ガスの総ガス流量Qを高めたオゾン発生器にするには、1単位の放電セルを多段に積層して、発生器の総放電面積S(=2・n・so)を確保する必要がある。
【0209】
また、1放電面の放電面積soを30cm^(2)?160cm^(2)に規定した放電セル形状の発生器において、投入する総放電電力DWをパラメータとする放電電力密度J(=DW/S)を低い値に規定するには、オゾン発生器の総放電面積Sを大きくしなければならなくなり、1放電セルの積層枚数n(=S/(2・so))を増やす必要が生じる。放電面の積層枚数nを増やすとオゾン発生器の製作コスト等が高くなることを避けるには、1放電面に投入できる放電電力密度Jを、オゾンガス発生システム1000において最も有効な条件範囲内で高い値に設定することが望ましい。
【0210】
高濃度なオゾンガスが取出せる原料ガスの総ガス流量Qをより大ガス流量までアップさせたオゾンガス発生システム1000を構成するには、放電面積so、放電電力密度J、投入した放電電力dwおよび1放電空間に供給する原料ガス流量qoに関し、上述した条件を満足する1単位の放電セルを実現し、多段に積層する放電セル枚数nを増やすことが不可欠になる。
【0211】
また、原料ガスの総ガス流量Qが大きい領域において、高出力の取出しオゾン量Ytを最大限に高めるオゾンガス発生システム1000を構成するには、放電面積so、放電電力密度J、投入した放電電力dwおよび1放電空間に供給する原料ガス流量qoを、可能な範囲で最大値に設定し、上述した条件を満足する1放電面を実現し、放電セル枚数nに多段に積層することが必要となる。
【0212】
つまり、オゾン発生器200において、上述した条件を満足する1放電面を2n個設け、投入する総放電電力DW(=2・n・dw)を満足するオゾン発生用交流電圧を出力するオゾン用電源100が必要になる。
【0213】
その結果、オゾンガス発生システム1000は、2n個の放電空間に供給する原料ガスの総ガス流量Q(=α・2・n・qo)を供給可能になる。なお、α値は、1放電面を2n個分積層してオゾンガスを合流させた場合の減損率を示す定数である。
【0214】
次に高濃度オゾンガスを取り出すためのオゾン発生器の動作に関しての諸条件について説明する。
【0215】
図6は、オゾン用電源100の動作周波数fに対する総放電電力DWを投入した際のAタイプ放電セル形状の発生器、Bタイプ放電セル形状の発生器及びCタイプ放電セル形状の発生器に印加される負荷ピーク電圧Vpの特性を示すグラフである。
【0216】
以下、オゾン用電源100の動作周波数を20kHz?50kHzにした根拠について図6を参照して説明する。
【0217】
図6において、特性7000aはAタイプ放電セル形状の発生器の放電電力密度J(=DW/S)が2W/cm^(2)条件時の負荷ピーク電圧Vpの特性を示す。
【0218】
特性7000bは、Bタイプ放電セル形状の発生器の放電電力密度Jが4W/cm^(2)条件時の負荷ピーク電圧Vpの特性を示す。
【0219】
また、特性7000cはCタイプ発生器の放電電力密度Jが8W/cm^(2)条件時の負荷ピーク電圧Vp特性を示す。
【0220】
放電電力密度Jが4W/cm^(2)条件時の負荷ピーク電圧Vpの特性7000bにおいて、Bタイプ放電セル形状の発生器では、領域99a内で最も高濃度のオゾンガスが取出せることが実験的に判明した。
【0221】
破線で示した特性7000s1、特性7000s1は、本発明範囲の放電電力密度Jの放電セル形状の境界値を考察した上下限を示した特性図である。
【0222】
特性7000s1は、放電電力密度Jが少なくとも2.5W/cm^(2)の放電セル形状の境界特性を示している。特性7000s2は、放電電力密度Jの設定が最大限界の6W/cm^(2)の放電セル形状の境界特性である。
【0223】
したがって、領域99aと特性7000s1,7000s2との関係から、所定のガス流量Qにおいて、400g/m^(3)以上の高濃度のオゾンガスが得られ、かつ、供給するガス流量Qで、所望の取出しオゾン量Ytが得られる装置にする放電電力密度J(=DW/S)を得るためには、放電電力密度Jの下限は約2.5W/cm^(2)付近以上で、放電電力密度Jの上限は約6.0W/cm^(2)の条件範囲にするのが望ましい結果になった。
【0224】
以下、オゾン用電源100の動作周波数fを20kHz?50kHzの電源方式を説明する。そして、オゾン用電源100において、高周波インバータ部であるインバータ回路部22を採用したこと、及び、高周波・高電圧トランスである並列共振用トランス25とオゾン発生器200との間に並列共振型を実現したことについて説明する。
【0225】
図6に示すように、動作周波数fが低くなると、比較的大きい総放電電力DWを投入して、放電電力密度J(=DW/S)を高くすると、負荷ピーク電圧Vpが高くなる特性を示す。
【0226】
負荷ピーク電圧Vpが高くなると、オゾン発生器200の耐電圧を十分確保するために、オゾン発生器200を大きくする必要がある。負荷ピーク電圧Vpは、オゾン用電源100としては10kVp未満であれば、インバータ回路部22は、比較的コンパクトで安定したものが可能である。
【0227】
また、負荷ピーク電圧Vpが7kVp以上になれば、耐電圧を確保すべく、並列共振用トランス25を大きくしたり、オゾン発生器の高圧部と低圧部との空間距離を大きくしたりする必要が生じ、オゾン発生器自身が大きくなる。
【0228】
さらに、並列共振用トランス25の巻数比が大きくなるなどの問題点が生じる。そのため、オゾンガス発生システム1000としては、負荷印加電圧Vdにおける負荷ピークであるVpは7kVp(5.0kVrms)未満となるようにして、所望の総放電電力DWを供給することが望ましい。
【0229】
図6に示すように、負荷ピーク電圧Vpが7kVp(5.0kVrms)未満としたオゾン用電源100に限定した場合、400g/m^(3)以上の高濃度なオゾンガスが取出せ、かつ、総ガス流量Qで取出しオゾン量Ytを最大とするオゾンガス発生システム1000としては、動作周波数fは20kHz以上が望ましい。
【0230】
一方、動作周波数fが高くなると、オゾン発生器200で生成されるオゾン生成能力が低下する傾向があるため、400g/m^(3)以上の高濃度オゾンが取出せる高濃度オゾンガス発生装置としては、動作周波数fは50kHz未満が望ましい。
【0231】
それに加え、総ガス流量Q(原料ガス流量)のガス流量範囲を略3.0L/min以上のガス流量で、400g/m^(3)以上の高濃度なオゾンガスを取り出せ、かつ、総ガス流量Qで取出しオゾン量Ytを最大にするためのオゾンガス発生システム1000にするには、1.8kW以上の総放電電力DWを供給するオゾン用電源100が必要となる。したがって、1.8kW以上が出力できる並列共振用トランス25としては、オゾン用電源のノイズ対策面や出力電力の安定供給面を考慮すると、実用上、動作周波数fは20kHz以上で30kHz未満が特に望ましい。
【0232】
以上、図6で示したように、原料ガスの総ガス流量Q(原料ガス流量)のガス流量範囲を略3.0L/min以上のガス流量で、400g/m^(3)以上の高濃度オゾンを取り出せるオゾンガス発生システム1000としては、以下の条件を満足する必要があることがわかる。
【0233】
・1単位の放電セルにおける1放電面積soを略約30cm^(2)?略160cm^(2)に設定する。
・1放電面積soと放電電力密度Jから1単位の放電セルの放電空間における放電電力dw(=so・J)を規定する。
【0234】
また、原料ガスの総ガス流量Qを可能な範囲で最大に設定して、高出力の取出しオゾン量Ytが得られるオゾンガス発生システム1000を構成する条件としては、以下の条件を満足することが望ましい。
・放電電力密度J(=DW/S)を2.5W/cm^(2)?6W/cm^(2)の範囲設定に規定する。
・放電ギャップ長dを数十?数百μmとした1放電空間に供給する原料ガス流量qoを略0.5L/min?略2.5L/min弱範囲に規定する。
【0235】
原料ガス流量qoと1放電面積soとを上述した条件を満足するように設定することで、1放電空間における平均ガス流速vo/dを最適速度に設定するとともに、放電空間でのガス滞在時間Toを短くすることができ、高濃度なオゾンガスを取出すことが可能となる。
【0236】
さらに、以下のようにオゾン発生器を構成することが望ましい。
・1放電面で取り出せるオゾン濃度を高濃度にし、基本セルS1及びS2を有する放電セルを多段に積層したオゾン発生器とする。
【0237】
また、オゾン用電源100は以下の条件を満足することが望ましい。
・オゾン発生用交流電圧の出力周波数を20kHz?50kHz未満の範囲にして、所望の総放電電力DWを出力制御できる。
【0238】
上記条件を満足させて、オゾンガス発生システム1000を構成することにより、大流量、高濃度なオゾンガスを取り出せる効果を奏する。さらに、オゾンガス発生システム1000をコンパクト、かつ安価に構成することができる。
【0239】
(オゾンガス発生システム1000の種々の条件)
オゾンガス発生システム1000は、原料ガスの総ガス流量Q(原料ガス流量)のガス流量範囲を略3.0L/min以上の大流量で、取出せるオゾン濃度が高濃度(400g/m^(3))となるように、放電セルを多段に積層している。
【0240】
オゾンガス発生システム1000は、400g/m^(3)以上の高濃度なオゾンガスを取り出すべく、比電力値DW/Qの範囲を600以上にしたオゾン用電源100オゾン用電源を設けることが望ましい。
【0241】
特に、オゾン用電源100が供給するオゾン発生用交流電圧による総放電電力DWの範囲としては、1.8kW?15kW程度が望ましい。
【0242】
オゾン用電源100は、放電空間の放電ギャップ長dが長くなれば、ガス滞在時間Toが非常に長くなり、放電空間で生成するオゾン生成量に対するオゾン分解量が非常に大きくなり、高濃度なオゾンガスを取り出せなくなる。
【0243】
また、放電ギャップ長dが短くなり過ぎると、また、放電空間を通過するガス流速が増し、放電面が接近することで生成したオゾンガスと放電面の壁との衝突や放電空間でのガス衝突や発生した電子、イオン、放電ガスとの衝突が増すため、オゾン分解量が非常に大きくなる。このように、放電ギャップ長dが短くなり過ぎると、高濃度なオゾンガスを取り出せなくなるため、放電ギャップ長dは、数十?数百μm条件の短ギャップ長範囲にすることが望ましい。特に、より高濃度なオゾンガスを取り出すためには、放電ギャップ長dを20μm?100μmの範囲にすることで、より効果を奏する。
【0244】
原料ガスの総ガス流量Qの範囲としては、400g/m^(3)以上の高濃度なオゾンガスが得られる範囲は、3SLM?25SLM程度であり、また、従来の装置に比較して高濃度なオゾンガスが得られる範囲としては、3SLM?50SLM程度の範囲が望ましい。
【0245】
(本実施の形態の効果)
本実施の形態のオゾン用電源100は、各々が放電面となる1対の平板電極1と高圧電極3a(3b)に誘電体を介し配置した基本セルS1(S2)を有するオゾン発生器200と、オゾン発生器200にオゾン発生用交流電圧を付与するオゾン用電源100とを備えて構成されている。
【0246】
オゾン発生器200に酸素を含んだ原料ガスが供給され、オゾン発生器200は、基本セルS1(S2)の放電面によって形成される放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、放電空間に供給した原料ガスからオゾンガスを生成し、該オゾンガスを外部に出力している。
【0247】
オゾン発生器200は、多段に積層された複数の放電セル(S1,S2)を含んで構成される。そして、出力するオゾンの高濃度化されるオゾン発生器200は、以下の条件(1)及び条件(2)を満足している。
【0248】
(1)複数の放電セルは、それぞれの放電面によって形成される放電面積soが30cm^(2)?160cm^(2)(30cm^(2)以上、160cm^(2)未満)の範囲に設定される。
【0249】
(2)複数の放電セルそれぞれの放電面によって形成される放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qoは、0.5L/min?2.5L/min(0.5L/min以上、2.5L/min未満)の範囲に設定される。
【0250】
また、オゾン発生器200に供給するガス流量Qと放電電力DWを可能な範囲で最大に設定して、より高い取出しオゾン量Ytを得るためには、オゾン発生器200は、上記の条件(1)、条件(2)に加え、以下の条件(3)を満足している必要がある。
【0251】
(3)複数の放電セルそれぞれの放電空間に投入する放電電力密度Jは、2.5W/cm^(2)?6W/cm^(2)(2.5W/cm^(2)以上、6W/cm^(2)未満)の範囲に設定される。
【0252】
本実施の形態のオゾンガス発生システム1000は、上述した条件(1)?条件(3)を満足することにより、複数の放電セルそれぞれの放電面に関し以下の効果を奏する。なお、3つの条件を満足する際、オゾン発生器の放電ギャップ長dは数十?数百μmnの短ギャップ長に設定する必要がある。以下、この点を詳述する。
【0253】
放電ギャップ長を数十?数百μmの短ギャップの誘電体バリア放電の方が、高電界の放電が実現できる。すなわち、短ギャップの誘電体バリア放電の方が、高エネルギーの放電光エネルギーを有した放電になり、触媒ガスを含んだガスや放電面に塗布した光触媒を光励起させるのに有効に働き、結果として酸素ガスの解離を促進させる効果がより高まる。このため、条件(1)?条件(3)を満足したオゾンガス発生システム及びオゾンガス発生方法を実現する際、オゾン発生器の放電ギャップ長は数十?数百μmに設定することが望ましい。
【0254】
オゾンガス発生システム1000は、上述した条件(1)及び条件(2)を満足することにより、各放電セルの(1対の放電面によって形成される)放電空間におけるガス滞在時間Toを短くして総オゾン分解量Ydを抑えることができる。
【0255】
その結果、オゾンガス発生システム1000は、上述した条件(1)及び条件(2)を満足させ、かつ、各放電セルの放電面に供給する原料ガス流量qoと放電電力dwとを可能な範囲で最大に設定して、取出しオゾン量ytを最大限に高めることにより、高濃度なオゾンガスを取り出せる条件を作りだせる。
【0256】
オゾンガス発生システム1000は、さらに条件(3)を満足することにより、各放電セルから取り出せるオゾンの生成量を所定量以上確保でき、かつ、効率よく取り出せることができ、取出しオゾン量Ytをより高めることができる。
【0257】
その結果、オゾンガス発生システム1000は、システム構成を必要最小限に抑えて、高濃度なオゾンもしくは、取出しオゾン量Ytを効率的に高め、外部に出力することができる効果を奏する。
【0258】
このように、オゾンガス発生システム1000は、条件(1)及び条件(2)に加え、上述した条件(3)をさらに満足することにより、条件(1)?条件(3)を満足させ、かつ、各放電セルの放電空間に供給する原料ガス流量qoと放電電力dwとを可能な範囲で最大に設定して、取り出しオゾン量ytを最大限に高めることができる。
【0259】
その結果、本実施の形態のオゾンガス発生システム1000は、システム構成を必要最小限に抑えて、高濃度なオゾンガスもしくは高発生量のオゾンガスを外部に出力することができる効果を奏する。
【0260】
さらに、本実施の形態のオゾンガス発生システム1000におけるオゾン発生器200は、以下の条件(4)をさらに満足している。
【0261】
(4)冷却機構によるオゾン発生器200の冷却温度は5℃以上である。
【0262】
本実施の形態のオゾンガス発生システム1000のオゾン発生器200は、さらに上述した条件(4)を満足することにより、上述した冷却機構によるオゾン発生器200の冷却温度を極端に低くする必要性をなくし、冷却機構の簡略化を図ることができる。なお、上記制約条件の上限は常温(20℃)に対し30℃程度を想定している。また、より冷却効果を重視する場合は、水が凍る温度である0℃以上に冷却温度を設定することが望ましい。
【0263】
さらに、本実施の形態のオゾンガス発生システム1000におけるオゾン発生器200は、以下の条件(5)及び条件(6)をさらに満足している。
【0264】
(5)オゾン発生器200内の複数の放電セル全体に供給する総ガス流量Qは3.0L/min以上である。
【0265】
(6)オゾン発生器200内の複数の放電セル全体に付与する総放電電力DWと総ガス流量Qとの比である比電力値DW/Qは、600(W・min/L)以上である。
【0266】
なお、条件(5)は高濃度のオゾンガスを取出せることを目的としており、条件(5)の目的を達成することの付随効果として、条件(6)は出力するオゾンガス量を最大限に高める効果を奏する。
【0267】
オゾンガス発生システム1000のオゾン用電源100及びオゾン発生器200は、さらに上述した条件(5)及び条件(6)を満足することにより、以下の効果を奏する。
【0268】
オゾンガス発生システム1000は、上述した条件(5)を満足することにより、例えば400g/m^(3)以上の高濃度オゾンを取り出すことができる複数の放電セルに供給する原料ガスに関し、十分大きな総ガス流量Qを確保し、最終的に高濃度なオゾンガスが得られ、取出しオゾン量Ytを高めることができる。
【0269】
オゾンガス発生システム1000は、上述した条件(6)を満足することにより、条件(5)の効果に加え、条件(1)?条件(6)を満足することを環境下で、例えば以下の効果を奏する。オゾン発生器200に供給する総ガス流量Q及び総放電電力DWを可能な範囲で最大限投入にして、取出しオゾン量Ytを最大限に高めることができる。
【0270】
その結果、本実施の形態のオゾンガス発生システム1000は、システム構成を必要最小限に抑えて、比較的大容量、かつ高濃度なオゾンガスを外部に出力することができる効果を奏する。
【0271】
また、オゾン発生器200内の放電セルを構成する基本セルS1,S2それぞれの放電面はそれぞれ平面視して円状を呈し、オゾン発生器200は以下の条件(7)をさらに満足する。
【0272】
(7)複数の放電セルそれぞれの放電面の外径が70mm?140mm(70mm以上、140mm未満)の範囲に設定される。
【0273】
また、上述した放電面を有する放電セル(基本セルS1及びS2の組合せ)をオゾン発生器にn個同一平面上に並べて、放電セル数を増やしたオゾンガス発生システム1000の変形例を構成すれば、図1で示した基本構成と同様な効果を奏する。
【0274】
オゾンガス発生システム1000は、上述した条件(7)を満足することにより、条件(1)を満足する放電面積soを比較的容易に実現し、かつ、ガス流入する平均断面savに流れ込む平均ガス流速vo/dを適切な値に比較的容易に設定することができる。
【0275】
加えて、オゾンガス発生システム1000のオゾン用電源100は、出力周波数f(動作周波数f)を20kHz?50kHz(20kHz以上、50kHz未満)範囲内にして、オゾン発生用交流電圧をオゾン発生器200に出力している。より実用的なオゾン用電源100の出力周波数f(動作周波数f)は、20kHz?30kHz(20kHz以上、30kHz未満)範囲が望ましい。
【0276】
このため、オゾンガス発生システム1000は、オゾン発生器200内の複数の放電セルに印加するオゾン発生用交流電圧のピーク電圧値を7kVp以下にして、オゾン発生器200が所望する放電電力DWを実現することができる。
【0277】
さらに、オゾン用電源100の並列共振用トランス25は、内部励磁インダクタンス値Ltを有し、オゾン発生器200内の複数の放電セルは全体の静電容量値C0を有している。
【0278】
そして、オゾン用電源100は、上述した式(4)を満足する並列共振周波数fcの近傍に出力周波数fを設定している。
【0279】
オゾンガス発生システム1000は、並列共振周波数fcの近傍に出力周波数fを設定することにより、オゾン発生器200への総放電電力DWの投入時に並列共振を行うことで、インバータ部(インバータ回路部22)の出力力率を高めることができる。
【0280】
すなわち、並列共振用トランス25とオゾン発生器200との間で総放電電力DWの投入時に並列共振を行うことにより、インバータ回路部22での出力力率を高めることができる。
【0281】
その結果、オゾン用電源100は、所望の総放電電力DWを満足するオゾン発生用交流電圧を負荷側であるオゾン発生器に供給できる。
【0282】
なお、所望の総放電電力DWはとして1.8kW以上の総放電電力DWが考えられる。そうすると、オゾン発生器200内の各放電セルに投入できる放電電力密度J(=DW/S)を2.5W/cm^(2)?6W/cm^(2)の範囲に設定することができる。
【0283】
その結果、オゾンガス発生システム1000は、高効率のオゾン用電源100を実現することにより、高濃度のオゾンガスを取り出せすべく、供給する総ガス流量Qと総放電電力DWを可能な範囲で最大値に設定しても、全体としてコンパクトな構成のオゾンガス発生システムを実現することができる効果を奏する。
【0284】
<方法発明への展開>
本実施の形態では、装置発明であるオゾンガス発生システム1000として説明した。しかしながら、本願発明の変形例として、上述したオゾン用電源100及びオゾン発生器200を用いたオゾンガス発生方法に展開することも可能である。
【0285】
すなわち、1対の平板電極1,3(3a,3b)に誘電体(2a,2b)を介し配置した放電セルを有するオゾン発生器200と、オゾン発生器200にオゾン発生用交流電圧を付与するオゾン用電源100とを用いて、高濃度なオゾンガスを発生するオゾンガス発生方法に展開することができる。
【0286】
本実施の形態の変形例であるオゾンガス発生方法は、上述したオゾンガス発生システム1000の条件(1)及び条件(2)に対応して以下のステップ(1)及びステップ(2)を実行する。
【0287】
(1)前記複数の放電セルそれぞれの放電面における放電面積soを、約30cm^(2)以上、160cm^(2)未満の範囲に設定するステップ、
(2)前記複数の放電セルそれぞれの1対の放電面によって形成される放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qoを、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定するステップ。
【0288】
また、オゾン発生器200に供給するガス流量Qと総放電電力DWを可能な範囲で最大限投入にして、取出しオゾン量Ytを最大限に得るためには、オゾンガス発生方法は、上記のステップ(1)及びステップ(2)に加え、以下のステップ(3)を実行することが望ましい。
【0289】
(3)前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に投入する放電電力密度Jを、2.5W/cm^(2)?6W/cm^(2)の範囲に設定するステップ。
【0290】
上記オゾンガス発生方法は、ステップ(1)及びステップ(2)を実行することにより、各放電セルの放電空間におけるガス滞在時間Toを短くしてオゾンガス分解量を抑えることができる。
【0291】
したがって、上記オゾンガス発生方法は、ステップ(1)及びステップ(2)を実行することにより、各放電セルの放電空間に供給する原料ガス流量qo及び放電電力dwを可能な範囲で最大に設定すれば、オゾンガスを高濃度に取り出せる効果を奏する。
【0292】
上記オゾンガス発生方法は、さらに、ステップ(3)を実行することにより、各放電セルの放電面に供給するガス流量q及び放電電力dwを可能な範囲で最大に設定すれば、取出しオゾン量ytを最大に高めることができる効果を奏する。
【0293】
その結果、本願発明の変形例であるオゾンガス発生方法は、高濃度なオゾンもしくは高発生量のオゾンガスを外部に出力することができる効果を奏する。
【0294】
さらに、上記オゾンガス発生方法は、オゾンガス発生システム1000の上述した条件(4)?条件(7)に対応して、条件(4)?条件(7)を満足させるためのステップを実行することができ、オゾンガス発生システム1000と同様な効果を奏する。
【0295】
<その他>
本実施の形態では、放電セルにおける放電面の形状を平面視して円状に構成したオゾン発生器200を示したが、放電セル形状を正方形もしく長方形形状の平板セルで構成してもよい。この場合も、条件(2)を満足する投入できる放電電力密度Jの範囲に設定して、多段の放電セルを積層すれば良い。
【0296】
また、放電セルとして、同軸円筒電極管を短管にして、条件(3)を満足する放電電力密度Jの範囲に設定して、1つの極管を多数並べて構成しても良い。
【0297】
本実施の形態では、オゾン用電源100の高周波・高電圧トランスである並列共振用トランス25の内部励磁インダクタンス値Ltを有する構成を示した。この構成以外に、並列共振用トランス25の出力部に、並列共振する共振用リアクトルを追加してオゾン用電源を構成することも可能である。
【0298】
また、オゾン発生器200として、原料ガスとし酸素ガスを供給し、放電セルの放電面に光触媒を塗布した構成を示した。これに限定されず、オゾン発生器200に代えて、窒素を含んだ酸素ガスを原料ガスとして供給するオゾン発生器を用いても良い。
【0299】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0300】
1 接地冷却電極
2a,2b 誘電体電極
3a,3b 高圧電極
4a,4b 絶縁板
5 低圧冷却板
6 積層セル押えばね
7 積層セル押え板
8 積層セル押え棒
9 マニホールドブロック
10 基台
11 オゾン発生器カバー
21 AC-DCコンバータ回路部
22 インバータ回路部
23 限流リアクトル
24 電源制御回路
25 並列共振用トランス
100 オゾン用電源
200 オゾン発生器
1000 オゾンガス発生システム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の平板電極(1,3)に誘電体を介し配置した放電セルを有するオゾン発生器(200)と、
前記オゾン発生器にオゾン発生用交流電圧を付与するオゾン用電源(100)とを備え、
前記オゾン発生器に触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる原料ガスが供給され、
前記オゾン発生器は、前記放電セルの放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、前記放電空間に供給した原料ガスからオゾンガスを生成し、該オゾンガスを外部に出力し、
前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、
前記複数の放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されており、
前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるように、前記オゾン発生器は以下の条件(1)及び条件(2)を満足することを特徴とする、
(1)前記複数の放電セルは、それぞれ放電面の放電面積soが30cm^(2)以上、160cm^(2)未満の範囲に設定される、
(2)前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qoは、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定される、
オゾンガス発生システム。
【請求項2】
請求項1記載のオゾンガス発生システムであって、
前記オゾン発生器は以下の条件(3)をさらに満足することを特徴とする、
(3)前記複数の放電セルそれぞれの放電空間における放電電力密度Jは、2.5W/cm^(2)以上、6W/cm^(2)未満の範囲に設定される、
オゾンガス発生システム。
【請求項3】
請求項2記載のオゾンガス発生システムであって、
前記オゾン発生器は、前記複数の放電セルを所定の冷却温度に冷却する冷却機構をさらに含み、
前記オゾン発生器は以下の条件(4)をさらに満足することを特徴とする、
(4)前記所定の冷却温度は5℃以上に設定される、
オゾンガス発生システム。
【請求項4】
請求項3記載のオゾンガス発生システムであって、
前記オゾン用電源及び前記オゾン発生器は以下の条件(5)及び条件(6)をさらに満足することを特徴とする、
(5)前記複数の放電セル全体に供給する総ガス流量Qは3.0L/min以上である、
(6)前記複数の放電セル全体に付与する総放電電力DWと前記総ガス流量Qとの比である比電力値DW/Qは、600(W・min/L)以上であり、前記総放電電力DWは前記オゾン発生用交流電圧によって規定される、
オゾンガス発生システム。
【請求項5】
請求項4記載のオゾンガス発生システムであって、
前記複数の放電セルそれぞれの放電面は平面視して円状を呈し、
前記オゾン発生器は以下の条件(7)をさらに満足することを特徴とする、
(7)前記複数の放電セルそれぞれの放電面の直径が70mm以上、140mm未満の範囲に設定される、
オゾンガス発生システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうち、いずれか1項に記載のオゾンガス発生システムであって、
前記オゾン用電源は、
出力周波数fを20kHz以上、50kHz未満の範囲に設定して、高周波交流電圧を出力するインバータ部(22)と、
前記高周波交流電圧を高電圧に昇圧して前記オゾン発生用交流電圧を得る昇圧用トランス(25)とを含む、
オゾンガス発生システム。
【請求項7】
請求項6記載のオゾンガス発生システムであって、
前記昇圧用トランスは内部励磁インダクタンス値Ltを有し、
前記複数の放電セルは全体の静電容量値C0を有し、
以下の条件式を満足する並列共振周波数fcの近傍に前記出力周波数fを設定したことを特徴とする、
条件式:fc=1/(2π・(Lt・C0)^(0.5))
オゾンガス発生システム。
【請求項8】
1対の平板電極(1,3)に誘電体を介し配置した放電セルを有するオゾン発生器(200)と、前記オゾン発生器にオゾン発生用交流電圧を付与するオゾン用電源(100)とを用いて、オゾンガスを発生するオゾンガス発生方法であって、
前記オゾン発生器に触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる原料ガスが供給され、前記オゾン発生器は、前記放電セルの放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、前記放電空間に供給した原料ガスからオゾンガスを生成し、該オゾンガスを外部に出力し、前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、前記複数の放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されており、
前記オゾンガス発生方法は、
(1)前記複数の放電セルそれぞれの放電面の放電面積soを、30cm^(2)以上、160cm^(2)未満の範囲に設定するステップと、
(2)前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qoを、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定するステップとを備え、
前記ステップ(1)及び前記ステップ(2)は、前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms?80msの範囲になるように実行される、
オゾンガス発生方法。
【請求項9】
請求項8記載のオゾンガス発生方法であって、
前記オゾンガス発生方法は以下のステップ(3)をさらに備える、
(3)前記複数の放電セルそれぞれの放電空間における放電電力密度Jを、2.5W/cm^(2)以上、6W/cm^(2)未満の範囲に設定するステップ、
オゾンガス発生方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-08-03 
出願番号 特願2019-527281(P2019-527281)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C01B)
P 1 651・ 121- YAA (C01B)
P 1 651・ 537- YAA (C01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 森坂 英昭  
特許庁審判長 宮澤 尚之
特許庁審判官 伊藤 真明
金 公彦
登録日 2020-02-07 
登録番号 特許第6657485号(P6657485)
権利者 東芝三菱電機産業システム株式会社
発明の名称 オゾンガス発生システム及びオゾンガス発生方法  
代理人 吉竹 英俊  
代理人 吉竹 英俊  
代理人 有田 貴弘  
代理人 有田 貴弘  

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