現在、審決メルマガは配信を一時停止させていただいております。再開まで今暫くお待ち下さい。

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  F01N
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F01N
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  F01N
管理番号 1378747
異議申立番号 異議2021-700660  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-11-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-09 
確定日 2021-09-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第6814268号発明「排気ガス処理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6814268号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6814268号の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、令和元年9月25日に出願され、令和2年12月22日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月13日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1に係る特許に対し、令和3年7月9日に特許異議申立人株式会社三五(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

2 本件発明
特許第6814268号の請求項1の特許に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
排気ガス処理装置であって、
第1方向に沿って流れる排気ガスを浄化する第1触媒担体と、
前記第1触媒担体を通過した排気ガスであって前記第1方向と交差する第2方向に沿って流れる排気ガスを浄化する第2触媒担体と、
前記第1触媒担体と前記第2触媒担体とを収容するケースと、
排気ガスを計測する計測部を有し前記第1触媒担体を通過した排気ガスを測定するためのセンサと、
前記第1触媒担体の外周面と前記ケースの内周面との間に設けられ、前記第1触媒担体の外周を覆う外周流路と、
前記ケースが内側に突出して形成され、前記第1触媒担体を通過した排気ガスを前記第2触媒担体及び前記外周流路のそれぞれに導くように分岐させる分岐部と、
を備え、
前記センサが有する前記計測部は、前記第1触媒担体の下流側端面と前記第2触媒担体の上流側端面と前記ケースにおける前記第1触媒担体を通過した排気ガスを受ける内壁面とによって囲われる領域であって前記第1触媒担体の中央よりも前記第2触媒担体側の領域に配置され、
前記計測部は、前記分岐部から前記第2触媒担体に向かって排気ガスが流れる領域に配置され、
前記分岐部の頂部がなす角度は、70°?120°である、
ことを特徴とする排気ガス処理装置。」

3 申立理由の概要
申立人は、証拠として特許第6319412号公報(以下「甲第1号証」という。)を提出し、請求項1に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
また、申立人は、請求項1に係る特許は特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであるから、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
さらに、申立人は、請求項1に係る特許は特特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであるから、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

4 文献の記載
4.1 甲第1号証について
本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって、申立人から証拠として提出された甲第1号証には、「エンジンの排気装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付与。以下同様。)。

(1)「【0027】
<排気浄化装置>
本実施形態に係る排気浄化装置1は、図1及び図2に示すように、エンジンEの4つの排気ポートに接続された排気マニホールドMと、排気マニホールドMの出口に接続された接続部Nと、接続部Nの出口に接続された触媒装置Qとを備えている。」

(2)「【0033】
<触媒装置>
触媒装置Qは、図2?図4に示すように、接続部Nの出口に接続された第1触媒としての三元触媒2と、その下流側に配置された第2触媒としてのGPF3と、これら三元触媒2とGPF3とを接続する接続部材としての接続管4と、GPF3の下流側の終端に設けられたGPF終端部7と、GPF終端部7の先に設けられた排気ガス出口5及びEGR用取出口6とを備えている。
【0034】
<三元触媒>
三元触媒2は、排気ガス中の炭化水素HC、一酸化炭素CO、窒素酸化物NOxを浄化するための触媒である。三元触媒2は、詳細な説明は省略するが、例えばPt、Pd、Rh等の貴金属を金属酸化物からなるサポート材上に担持してなる触媒成分を、ハニカム担体上にコートしてなる触媒等が挙げられる。三元触媒2としては、特に限定されるものではなく、いかなる公知のものも用いることができる。」

(3)「【0043】
さらに、図5に示すように、三元触媒2は、キャタリスト本体としての前段部21及び後段部22の外周全体を覆うキャタマット23と、そのキャタマット23の外周全体を覆うキャタケース24とを備えている。」

(4)「【0047】
<GPF>
GPF3は、三元触媒2の下流側に配設されており、三元触媒2を通過した排気ガス中のパティキュレートマター(以下、「PM」と称する。)をトラップするためのフィルタである。GPF3は、詳細な説明は省略するが、例えばハニカム担体等に目封じを施し、フィルタ機能を追加したものであり、フィルタに堆積したPMの燃焼を促進するため触媒コートを施したものが挙げられる。排気ガス中のPMはGPF3の隔壁表面に吸着され、PMが堆積したところで、例えばPM燃焼温度に高めるためメイン噴射の後に燃料を噴射するポスト噴射を行い、GPF3に堆積したPMを焼却除去する。GPF3としては、特に限定されるものではなく、いかなる公知のものも用いることができる。」

(5)「【0050】
なお、GPF3は、三元触媒2と同様に、排気ガス浄化用のGPFキャタリスト本体と、そのGPFキャタリスト本体の外周全体を覆うGPFキャタマットと、そのGPFキャタマットの外周全体を覆うGPFキャタケースとを備えている。GPFキャタマット及びGPFキャタケースは、上述のキャタマット23及びキャタケース24と同様の目的で用いられ、これらと同様の構成のものを用いることができる。
【0051】
<接続管>
接続管4は、三元触媒2とGPF3とを接続するための管状部材であり、排気経路の一部を形成している。
【0052】
図10に示すように、接続管4は、上流側の第1開口4Aと、下流側の第2開口4Bと、これら第1開口4Aと第2開口4Bとを接続する曲がり部4Cとを備えている。
【0053】
図10に示すように、三元触媒2は、三元触媒終端面2B側から第1開口4Aを通じて接続管4内に挿入されている。一方、図5等に示すように、GPF3は、GPF始端面3A側から第2開口4Bを通じて接続管4内に挿入されている。」

(6)「【0056】
そして、図5に示すように、三元触媒2の三元触媒終端面2BとGPF3のGPF始端面3Aとは、曲がり部4C内で、二面角αが約90度となるように配置されている。この二面角αは、この角度に限定されるものではないが、三元触媒2からGPF3への排気ガス流れを十分に確保する観点から、互いに好ましくは60度以上120度以下、より好ましくは70度以上110度以下、特に好ましくは80度以上100度以下である。
【0057】
加えて、GPF3のGPF始端面3Aには、三元触媒2の側面によりその一部が覆われて重複部分31が形成されている。」

(7)「【0073】
-第1壁部及び第2壁部-
第2接続部材41は、図5、図6、図10及び図12に示すように、三元触媒2を通過した排気ガスをGPF3へと案内するための第1壁部42及び第2壁部43を備えている。図5に示すように、第1壁部42は、三元触媒2の三元触媒終端面2Bと対向しており、第2壁部43は、GPF3のGPF始端面3Aと対向している。
【0074】
なお、接続管4を第1接続部材40及び第2接続部材41に分割して成形するときに、第1壁部42及び第2壁部43を一方の第2接続部材41に形成することにより、排気ガスを案内する壁部に分割位置を形成することなく滑らかな壁面を得ることができる。そうして、排気ガス流れの乱れを抑制することができる。
【0075】
第1壁部42は、図10及び図12に示すように、移行壁部42Aと、傾斜壁部42Bと、段差壁部42Cとを備えている。移行壁部42Aは、第2開口4Bを形成する下流端から滑らかに前方へ延びている。傾斜壁部42Bは、移行壁部42Aに滑らかに接続されるとともに、三元触媒2側に立ち上がるように形成されている。段差壁部42Cは、後方は傾斜壁部42Bに滑らかに接続されるとともに、前方は、図5に示すように、第2壁部43に第2壁部曲率半径R3(所定曲率半径)をもって滑らかに接続されている。
【0076】
移行壁部42Aは、図10に示すように、接続管4を第2開口4B側から第1開口4Aが右側に配置されるように見たときに、接続管4の底部4E側から移行壁部曲率半径R1をもって立ち上がるように形成されている。同様に、段差壁部42Cは、接続管4の底部4E側から段差壁部曲率半径R2をもって立ち上がるように形成されている。なお、図10に示すように、移行壁部曲率半径R1及び段差壁部曲率半径R2を併せて第1壁部曲率半径Rという。
【0077】
ここに、図10に示す第1壁部曲率半径Rは、図5に示す第2壁部曲率半径R3よりも大きくなるように設定されている。
【0078】
排気ガスなどの流体は、曲率半径の大きな曲面に沿って流れる傾向があることが知られている。例えば、図15に示すように、接続管4の曲がり部4Cについて、一般的な湾曲した管形状、すなわち、第2壁部曲率半径R3が第1壁部曲率半径Rよりも大きく緩やかに湾曲した形状を採用した場合を考える。この場合、図15中破線矢印で示すように、三元触媒2を通過した排気ガスは、その大部分が、第2壁部曲率半径R3で緩やかに湾曲した壁面に沿って、そのままGPF3へ流入すると考えられる。そうすると、GPF3の重複部分31近傍に流入する排気ガス量が低下し、GPF3の利用効率が低下し得る。また、排気ガス量が多くなる部分では、排気ガスの流速が高まるため、通気抵抗が増大して出力が低下し得る。
【0079】
一方、本実施形態に係る排気浄化装置1では、接続管4における曲がり部4Cの第1壁部42及び第2壁部43は、図5及び図6に示すように、第2壁部曲率半径R3を小さくするとともに、図10及び図11に示すように、第1壁部曲率半径Rは、第2壁部曲率半径R3よりも大きくなるように形成されている。
【0080】
そうすると、図6に示すように、排気ガスの流れに変化が生じる。すなわち、三元触媒2を通過した排気ガスについて、第1壁部42と第2壁部43との接続部分の壁面よりも、第1壁部42の壁面に沿って流れる傾向が高まる。具体的には、図6中破線矢印で示すように、図15に示す流れと同様の排気ガスの流れが減少する。一方で、図6中実線矢印で示すように、第1壁部42に到達しつつ、特に移行壁部42Aや段差壁部42Cの移行壁部曲率半径R1や段差壁部曲率半径R2をもって湾曲して形成された壁面に沿って、下方から上方へ巻き上がるような排気ガスの流れが増加する。このように、第1壁部42に到達しつつ三元触媒2とGPF3との間の空間に巻き上がるような排気ガスの二次流れを利用することにより、排気ガス全体の流速が低減され、接続管4内に排気ガスが充満する。そうして、GPF3の重複部分31に流れ込む排気ガス量を増加させることができるとともに、GPF3へ流入する排気ガスの通気抵抗を低下させ、排気ガス流れを均一化させることができ、延いてはGPF3の利用効率・機能・性能を向上させることができる。
【0081】
また、第1壁部42のうち、第2壁部43と連なる段差壁部42Cは、移行壁部42Aよりも三元触媒2側に突出している。これにより、図6に示すように、三元触媒2を通過して段差壁部42Cに到達した排気ガスが、移行壁部42Aが存在するGPF3の端に向かって集中的に流れることを抑制するとともに、重複部分31への流れを促進させることができる。
【0082】
さらに、図10に示すように、移行壁部曲率半径R1は、段差壁部曲率半径R2よりも大きくなるように設定されている。
【0083】
図7、図8及び図11中の実線矢印で示すように、三元触媒2を通過した排気ガスは、第1壁部42の、特に移行壁部42Aや、段差壁部42Cに到達しつつその湾曲した壁面に沿って巻き上がる、又は、巻き下がるように流れ、接続管4の曲がり部4C内に充満すると考えられる。このとき、図7及び図8に示すように、移行壁部曲率半径R1が段差壁部曲率半径R2よりも大きくなるように、すなわち移行壁部42Aが段差壁部42Cよりも緩やかに湾曲するように形成されていることから、GPF3のGPF始端面3A近傍において、排気ガス流れの速度をさらに低下させることができる。そうして、接続管4内からGPF3に流入する排気ガスの通気抵抗をさらに低下させて、排気ガスの流れを均一化させることができ、延いてはGPF3の利用効率・機能・性能をさらに向上させることができる。
【0084】
また、図8に示すように、接続管4の天部4D側であり且つ第2接続部材41に、台座部44が設けられており、例えば図4に示すNOxセンサ92(検出手段)などの各種センサ等の制御用デバイスを設置することができる。なお、図8では、簡単のため、NOxセンサ92のセンサ本体の図示を省略し、このセンサ本体を取り付けるためのNOxセンサ取付部92Aのみを示している。
【0085】
三元触媒2を通過した排気ガスは、上述のごとく、接続管4内に充満してGPF3に流入していく。このとき、接続管4の天部4D側は、三元触媒2を通過した排気ガスが直接到達することが少なく、第1壁部42の壁面に沿って巻き上がるような排気ガスの二次流れにより排気ガスが充満する。そうすると、接続管4の天部4D側には、排気ガスの成分濃度を始め、例えば温度や圧力等を検出するために十分な量の排気ガスが、流速が低下した状態で充満する。そうして、接続管4の天部4D側に各種センサを配置させることにより、安定した検出精度を確保することができ、各種センサなどの制御用デバイスの搭載性が向上する。」

(8)図6を参酌すると、GPF3の重複部分31へ流れ込む排気ガスの流れを示す実線矢印3本のうち、2本は三元触媒2の周面上を通ることを看取できる。
そして、(3)及び(7)の記載事項を併せて参酌すると、GPF3の重複部分31へ流れ込む排気ガスは、三元触媒2のキャタケース24と接続部4の第1接続部材40との間を通って流れると把握できる。

(9)(7)の記載事項と併せて図4ないし6を参酌すると、NOxセンサ92が、接続管4の天部4D側であり且つ第2接続部材41における、三元触媒2の三元触媒終端面2BとGPF3のGPF始端面3Aとの間の領域であって、三元触媒中心軸L2よりもGPF3側の領域に設置されることを看取できる。

したがって、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

<甲1発明>
「排気浄化装置1であって、
排気ガス中の炭化水素HC、一酸化炭素CO、窒素酸化物NOxを浄化するための触媒である第1触媒としての三元触媒2と、
三元触媒2の下流側に配設されており、三元触媒2を通過した排気ガス中のパティキュレートマターをトラップするためのフィルタである第2触媒としてのGPF3とを備え、
接続管4は、上流側の第1開口4Aと、下流側の第2開口4Bと、これら第1開口4Aと第2開口4Bとを接続する曲がり部4Cとを備え、三元触媒2の三元触媒終端面2BとGPF3のGPF始端面3Aとは、曲がり部4C内で、二面角αが約90度となるように配置され、
三元触媒2は、キャタリスト本体の外周全体を覆うキャタケース24を備え、三元触媒終端面2B側から第1開口4Aを通じて接続管4内に挿入されている一方、GPF3は、排気ガス浄化用のGPFキャタリスト本体の外周全体を覆うGPFキャタケースを備え、GPF始端面3A側から第2開口4Bを通じて接続管4内に挿入され、
三元触媒2を通過した排気ガスを検出するNOxセンサ92を設置し、
GPF3の重複部分31へ流れ込む排気ガスは、三元触媒2のキャタケース24と接続部4の第1接続部材40との間を通って流れ、
曲がり部4Cには第1壁部42と第2壁部43が備えられ、三元触媒2を通過した排気ガスは、第2壁部43の第2壁部曲率半径R3で緩やかに湾曲した壁面に沿って、そのままGPF3へ流入する流れと、第1壁部42に備えられた移行壁部42Aや段差壁部42Cの移行壁部曲率半径R1や段差壁部曲率半径R2をもって湾曲して形成された壁面に沿って、下方から上方へ巻き上がり、GPF3の重複部分31に流れ込む流れとに分岐し、
NOxセンサ92が、接続管4の天部4D側であり且つ第2接続部材41における、三元触媒2の三元触媒終端面2BとGPF3のGPF始端面3Aとの間の領域であって、三元触媒中心軸L2よりもGPF3側の領域に設置される、
排気浄化装置1。」

5 当審の判断
(1)特許法第29条第2項について
本件発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「排気浄化装置1」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許の「排気ガス処理装置」に相当し、同様に、「NOxセンサ92」は「センサ」に相当する。

甲1発明の「三元触媒2」は、「排気ガス中の炭化水素HC、一酸化炭素CO、窒素酸化物NOxを浄化するための触媒」であり、「キャタリスト本体」を備えるものであるから、「三元触媒2」の「キャタリスト本体」は、本件発明の「第1触媒担体」に相当する。

甲1発明の「GPF3」は、「三元触媒2を通過した排気ガス中のパティキュレートマターをトラップするためのフィルタ」であり、「排気ガス浄化用のGPFキャタリスト本体」を備えるものであるから、「GPF3」の「排気ガス浄化用のGPFキャタリスト本体」は、本件発明の「第2触媒担体」に相当する。

甲1発明の「GPF3」は、「三元触媒2の下流側に配設されており」、「三元触媒2の三元触媒終端面2BとGPF3のGPF始端面3Aとは、曲がり部4C内で、二面角αが約90度となるように配置され」るから、甲1発明の「三元触媒2」を通過する排気ガスの流れ方向と、「GPF3」を通過する排気ガスの流れ方向とは交差していると把握できる。
そうすると、甲1発明は、本件発明の「第1触媒担体」における「第1方向に沿って流れる排気ガスを浄化する」という事項と、本件発明の「第2触媒担体」における「前記第1触媒担体を通過した排気ガスであって前記第1方向と交差する第2方向に沿って流れる排気ガスを浄化する」という事項とを備えているといえる。

甲1発明の「三元触媒2は、キャタリスト本体の外周全体を覆うキャタケース24を備え、三元触媒終端面2B側から第1開口4Aを通じて接続管4内に挿入されている一方、GPF3は、排気ガス浄化用のGPFキャタリスト本体の外周全体を覆うGPFキャタケースを備え、GPF始端面3A側から第2開口4Bを通じて接続管4内に挿入され」という事項から、「三元触媒2」の「キャタリスト本体」と、「GPF3」の「排気ガス浄化用のGPFキャタリスト本体」とは、それぞれ「キャタケース24」と「GPFキャタケース」に覆われると共に、「接続管4」内に挿入されていると把握できる。
そうすると、甲1発明の「キャタケース24」、「GPFキャタケース」及び「接続管4」は、「三元触媒2」の「キャタリスト本体」と、「GPF3」の「排気ガス浄化用のGPFキャタリスト本体」を収容するものであるから、本件発明の「ケース」に相当する。

甲1発明の「GPF3の重複部分31へ流れ込む排気ガスは、三元触媒2のキャタケース24と接続部4の第1接続部材40との間を通って流れ」という事項から、三元触媒2のキャタケース24と接続部4の第1接続部材40との間に、GPF3の重複部分31へ流れ込む排気ガスの流路が形成されると把握できる。
そうすると、当該流路と、本件発明の「前記第1触媒担体の外周面と前記ケースの内周面との間に設けられ、前記第1触媒担体の外周を覆う外周流路」とは、「前記第1触媒担体の外周面と前記ケースの内周面との間に設けられた外周流路」という限りにおいて一致する。

甲1発明の「曲がり部4Cには第1壁部42と第2壁部43が備えられ、三元触媒2を通過した排気ガスは、第2壁部43の第2壁部曲率半径R3で緩やかに湾曲した壁面に沿って、そのままGPF3へ流入する流れと、第1壁部42に備えられた移行壁部42Aや段差壁部42Cの移行壁部曲率半径R1や段差壁部曲率半径R2をもって湾曲して形成された壁面に沿って、下方から上方へ巻き上がり、GPF3の重複部分31に流れ込む流れとに分岐し」という事項から、「第1壁部42に備えられた移行壁部42Aや段差壁部42C」は、三元触媒2を通過した排気ガスを、GPF3へ流入する流れと、三元触媒2のキャタケース24と接続部4の第1接続部材40との間に形成された流路への流れとに分岐させているといえる。
そうすると、甲1発明の「第1壁部42に備えられた移行壁部42Aや段差壁部42C」と、本件発明の「前記ケースが内側に突出して形成され、前記第1触媒担体を通過した排気ガスを前記第2触媒担体及び前記外周流路のそれぞれに導くように分岐させる分岐部」及び「前記分岐部の頂部がなす角度は、70°?120°である」とは、「前記第1触媒担体を通過した排気ガスを前記第2触媒担体及び前記外周流路のそれぞれに導くように分岐させる分岐部」という限りにおいて一致する。

甲1発明の「NOxセンサ92が、接続管4の天部4D側であり且つ第2接続部材41における、三元触媒2の三元触媒終端面2BとGPF3のGPF始端面3Aとの間の領域であって、三元触媒中心軸L2よりもGPF3側の領域に設置される」という事項は、本件発明の「前記センサが有する前記計測部は、前記第1触媒担体の下流側端面と前記第2触媒担体の上流側端面と前記ケースにおける前記第1触媒担体を通過した排気ガスを受ける内壁面とによって囲われる領域であって前記第1触媒担体の中央よりも前記第2触媒担体側の領域に配置され」という事項に相当する。

甲1発明の「NOxセンサ92」は「三元触媒2を通過した排気ガスを検出する」ものであるから、少なくともGPF3の重複部分31に流れ込む排気ガス、すなわち、「第1壁部42に備えられた移行壁部42Aや段差壁部42C」から「GPF3」に向かって流れる排気ガスを検出可能な領域に設置されているといえる。
そうすると、甲1発明は、本件発明の「前記計測部は、前記分岐部から前記第2触媒担体に向かって排気ガスが流れる領域に配置され」という事項を備えているといえる。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「排気ガス処理装置であって、
第1方向に沿って流れる排気ガスを浄化する第1触媒担体と、
前記第1触媒担体を通過した排気ガスであって前記第1方向と交差する第2方向に沿って流れる排気ガスを浄化する第2触媒担体と、
前記第1触媒担体と前記第2触媒担体とを収容するケースと、
排気ガスを計測する計測部を有し前記第1触媒担体を通過した排気ガスを測定するためのセンサと、
前記第1触媒担体の外周面と前記ケースの内周面との間に設けられた外周流路と、
前記第1触媒担体を通過した排気ガスを前記第2触媒担体及び前記外周流路のそれぞれに導くように分岐させる分岐部と、
を備え、
前記センサが有する前記計測部は、前記第1触媒担体の下流側端面と前記第2触媒担体の上流側端面と前記ケースにおける前記第1触媒担体を通過した排気ガスを受ける内壁面とによって囲われる領域であって前記第1触媒担体の中央よりも前記第2触媒担体側の領域に配置され、
前記計測部は、前記分岐部から前記第2触媒担体に向かって排気ガスが流れる領域に配置される、
排気ガス処理装置。」

<相違点1>
「前記第1触媒担体の外周面と前記ケースの内周面との間に設けられた外周流路」に関して、本件発明は、「前記第1触媒担体の外周面と前記ケースの内周面との間に設けられ、前記第1触媒担体の外周を覆う外周流路」であるのに対して、甲1発明は、三元触媒2のキャタケース24と接続部4の第1接続部材40との間に形成される流路が三元触媒2の外周を覆うか不明である点。

<相違点2>
「前記第1触媒担体を通過した排気ガスを前記第2触媒担体及び前記外周流路のそれぞれに導くように分岐させる分岐部」に関して、本件発明は、「前記ケースが内側に突出して形成され、前記第1触媒担体を通過した排気ガスを前記第2触媒担体及び前記外周流路のそれぞれに導くように分岐させる分岐部」及び「前記分岐部の頂部がなす角度は、70°?120°である」のに対して、甲1発明は、そのような構成であるのか不明である点。

事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
本件発明の「分岐部」に関して、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0074】を参酌すると、「これらの構成では、第1触媒担体(TWC12)を通過した排気ガスGの一部は、ケース30の内壁面31cに形成される分岐部33に衝突し、分岐部33の頂部33aの接線方向Dに方向転換して第2触媒担体(GPF14)に流れる。第2触媒担体(GPF14)に向かって流れる排気ガスGが流れる領域(領域A)では、分岐部33に衝突して方向転換した排気ガスGが導かれるので、領域A1の中でも排気ガスGの流速が高い。よって、領域Aにセンサ(空燃比センサ40)を設置することで、排気ガスGを測定するセンサ(空燃比センサ40)が高精度に数値を検出できるようにすることができる。」と記載されているように、排気ガスGの一部を分岐部33に衝突させ、排気ガスGの流速を高め、排気ガスGを測定するセンサ(空燃比センサ40)が高精度に数値を検出できるようにするためのものである。
一方、甲1発明の移行壁部42A及び段差壁部42Cは、甲第1号証の段落【0080】や【0083】を参酌すると、移行壁部42A及び段差壁部42Cの移行壁部曲率半径R1や段差壁部曲率半径R2をもって湾曲して形成された壁面に沿って排気ガスを流すことで、排気ガス全体の流速を低減させ、排気ガスが流速の低下した状態で充満する、接続管4の天部4D側にセンサを配置することで安定した検出精度を確保するものである。
そうすると、本件発明は、排気ガスの流速が速い領域にセンサの計測部を配置しているのに対して、甲1発明は、排気ガスの流速が低下した領域にセンサを配置している点で、両発明は技術思想が相違する。
そのため、甲1発明において、排気ガスの流速を高めるという技術思想の下で、移行壁部42A及び段差壁部42Cを第2接続部材41の内側に突出させ、その頂部の角度を本件発明と同様に設定する動機付けは存在しない。
そして、他に、上記相違点2に係る本件発明の発明特定事項が本件特許の出願前に公知であったというべき証拠や根拠もない。
したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本件発明は、当業者であっても甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

以上のとおり、本件発明は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6 採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許法第29条第1項第3号について
申立人は、特許異議申立書において、本件発明は甲第1号証に記載されたものである旨を主張する。
しかしながら、上記5(1)で述べたとおり、本件発明と甲1発明とを対比すると、両発明の間には相違点が存在する。
したがって、申立人の主張は採用できない。

(2)特許法第36条第6項第1号について
申立人は、特許異議申立書において、本件特許の請求項1には「排気ガスを計測する計測部を有し前記第1触媒担体を通過した排気ガスを測定するためのセンサ」という記載があるが、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、段落【0012】等を参酌しても、「TWC12を通過した排気ガスGの酸素濃度を測定するためのセンサとしての空燃比センサ40」が記載されているのみで、その他のセンサは記載されていないから、その他のセンサも包含する本件特許の請求項1の記載は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない旨を主張する。
しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0088】には、「上記実施形態では、センサとして空燃比センサ40を例に説明したが、センサとして排気ガスGについての数値を測定するための他のセンサを適用してもよい。」という記載があるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「空燃比センサ40」以外のセンサも記載されているといえる。
そうすると、本件特許の請求項1の記載は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものである。
したがって、申立人の主張は採用できない。

(3)特許法第36条第6項第2号について
ア 申立人は、特許異議申立書において、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0013】には、「ケース30は、入口側フランジ11が取り付けられるディフューザ部25と、内部にTWC12を収容する入口側筒部31と、入口側筒部31に接合され内部にGPF14を収容する中間筒部37と、一端が中間筒部37に接合され、他端に排気側管路(図示せず)に接続するための出口側フランジ39が設けられた出口側筒部38と、を有する。」という記載がある一方、段落【0020】には「GPF14は、例えば、微小粒子状物質を除去する楕円柱状のセラミックフィルタによって構成される(図4及び図6参照)。GPF14は、その外周面14aが緩衝材15を介して中間筒部37の内周面に嵌合されることによって、中間筒部37内に固定される。」という記載があるため、中間筒部37がアウタケースとしてのケース30を構成するものなのか、或いは、GPF14を内部に固定するインナケースであるのかが不明であり、その結果、本件発明の「ケース」の構成が明確でない旨を主張する。
しかしながら、本件発明の「ケース」は、第1触媒担体と第2触媒担体とを収容するケースであるから、段落【0013】の上記記載より、本件特許明細書の発明の詳細な説明における「ケース30」に相当する。
そして、段落【0013】の上記記載より、中間筒部37はケース30の一部を構成している。であるから、本件発明の「ケース」の一部に相当することは明らかである。
また、請求項10の記載によれば、本件発明の「インナケース」は、「前記ケース内に設けられ前記外周流路を挟んで前記筒状部と対向する」ものであるが、中間筒部37は「前記ケース内に設けられ前記外周流路を挟んで前記筒状部と対向する」ものではないから、中間筒部37は「インナケース」には相当しない。
すなわち、中間筒部37は本件発明の「ケース」の一部に相当し、「インナケース」には相当しない。
さらに、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0086】には、「なお、上述した実施形態では、ケース30内にインナケース20で覆われた第1触媒担体(TWC12)を配置した二重管構造を採用したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、1つのケース内に、二つの触媒をそのまま配置してもよい。」という記載があり、インナケース20は省略できることが記載されている。
しかしながら、この場合、中間筒部37はインナケース20ではないから省略することができないことは明らかである。
したがって、申立人の主張は採用できない。

イ 申立人は、特許異議申立書において、本件特許の請求項1には「前記第1触媒担体の外周面と前記ケースの内周面との間に設けられ、前記第1触媒担体の外周を覆う外周流路」という記載があるが、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、段落【0018】を参酌しても、「このとき、インナケース20は、インナケース20の外周面20aと入口側筒部31との間に所定の間隔Wの隙間が設けられるようにして、ケース30内に設けられる。この隙間は、排気ガスGが流れる外周流路35を形成する。」と記載され、外周流路35(本件発明の「外周流路」)はあくまでもインナケース20の外周面20aと入口側筒部31との間に形成されるものとしか把握できず、外周流路35がTWC12の外周面と入口側筒部31の内周面との間に形成されるものとは把握できないから、本件発明の「外周流路」の構成が明確でない旨を主張する。
しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0086】には、「なお、上述した実施形態では、ケース30内にインナケース20で覆われた第1触媒担体(TWC12)を配置した二重管構造を採用したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、1つのケース内に、二つの触媒をそのまま配置してもよい。」という記載があることから、この記載と段落【0018】の上記記載とを併せて解すると、インナケース20は省くことができるものであり、外周流路35がTWC12の外周面と入口側筒部31の内周面との間に形成されるものと把握できる。
したがって、申立人の主張は採用できない。

7 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-09-16 
出願番号 特願2019-174526(P2019-174526)
審決分類 P 1 652・ 113- Y (F01N)
P 1 652・ 121- Y (F01N)
P 1 652・ 537- Y (F01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 二之湯 正俊  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 山本 信平
高島 壮基
登録日 2020-12-22 
登録番号 特許第6814268号(P6814268)
権利者 マレリ株式会社
発明の名称 排気ガス処理装置  
代理人 特許業務法人プロスペック特許事務所  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ