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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
管理番号 1378755
異議申立番号 異議2021-700516  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-11-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-05-25 
確定日 2021-10-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第6794499号発明「熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子及びその用途」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6794499号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 主な手続の経緯等
特許第6794499号(設定登録時の請求項の数は5。以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許は、平成28年4月11日(優先権主張 平成27年6月3日)に出願された特願2016-78818号(以下、「原出願」という。)の一部を令和1年6月12日に出願した特願2019-109600号に係るものであって、令和2年11月13日に設定登録され、特許掲載公報が同年12月2日に発行され、その後、その特許に対し、令和3年5月25日に、特許異議申立人 中川太佑(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし5)がされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項の番号に応じて各発明を「本件特許発明1」などといい、これらを併せて「本件特許発明」という場合がある。)。

「【請求項1】
真球度が0.90?1.00、かつ光散乱指数が0.5?1.0、かつアマニ油吸油量が30?150mL/100gであり、ポリブチレンサクシネート及びポリヒドロキシアルカノエートからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子。
【請求項2】
前記略球状樹脂粒子が、1?500μmの体積平均粒子径と、39.1?57.9のCV値とを有する請求項1に記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子。
【請求項3】
前記略球状樹脂粒子が、
(i)化粧品用の配合剤、
(ii)塗料用艶消し剤、レオロジー改質剤、ブロッキング防止剤、滑り性付与剤、光拡散剤、ファインセラミックス焼結成形用助剤、接着剤用充填剤及び医療用診断検査剤から選択される各種剤、
(iii)自動車材料及び建築材料から選択される成形品への添加剤
のいずれかに使用される請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子を配合した化粧料。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子を配合したコーティング材料。」

第3 特許異議申立理由の概要
1 特許異議申立理由の要旨
特許異議申立人が提出した特許異議申立書において主張する特許異議申立理由は、おおむね次のとおりである。

(1)申立理由1(甲第1号証を主引用文献とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)申立理由2(甲第2号証を主引用文献とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明の係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(3)申立理由3(甲第3号証を主引用文献とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1ないし3及び5に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(4)申立理由4(甲第4号証を主引用文献とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(5)申立理由5(甲第5号証を主引用文献とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲第5号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(6)申立理由6(公知技術を根拠とする新規性欠如)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、公知の刊行物(甲第19号証)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(7)申立理由7-1(公知技術を根拠とする新規性欠如)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、公知の刊行物(甲第20号証及び甲第21号証)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(8)申立理由7-2(公知技術を主引用発明とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、公知の刊行物(甲第20号証及び甲第21号証)に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(9)申立理由7-3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、以下の理由で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

本件特許発明1は、実施例で現に得られた樹脂粒子に基づく物性等から数値限定して特定しているにもかかわらず、特に、光散乱指数に重大な影響を及ぼす構成を規定しないことから、本件特許発明1は発明の詳細な説明に記載されたものではない。

(10)申立理由7-4(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、以下の理由で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

本件特許発明1は、実施例で現に得られた樹脂粒子に基づく物性等から数値限定して特定しているにもかかわらず、特に、光散乱指数に重大な影響を及ぼす構成を規定しないことから、実施可能要件をみたすものではない。

(11)申立理由8(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、以下の理由で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

申立理由8は、おおむね次のア、イのとおりである。
ア 本件特許明細書には、樹脂粒子が得られるか、得られないかの条件の違いしか記載されておらず、本件特許発明の要件によって、どのように課題を解決し、本件特許発明に到達するかの詳細については、具体的に開示されていない。

イ 本件特許明細書には樹脂粒子の真球度の測定方法が記載されているが、第0032段落には「粒子径の測定範囲:2.954μm?30.45μm」と記載されており、上記測定範囲外の粒子について真球度は測定されていないことから、本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された内容が、本件特許発明の範囲までサポートされていない。

(12)申立理由9-1(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、以下の理由で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

「真球度が0.90?1.00、かつ光散乱指数が0.5?1.0」という要件は達成すべき結果を特定するものであり、本件特許発明1に係る発明は達成すべき結果による物の特定に相当すると認められる。
しかしながら、これらの要件を満足する樹脂粒子を具体的にどのようにすれば得られるのかは、実施例に記載されたもの以外については、具体的に記載されていない。また、これらの要件を満足しない場合についての具体的な記載はなく、当業者がいかなる手段により課題を解決するのか理解することができない。

(13)申立理由9-2(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、以下の理由で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

「真球度が0.90?1.00、かつ光散乱指数が0.5?1.0」という要件は達成すべき結果を特定するものであり、本件特許発明1に係る発明は達成すべき結果による物の特定に相当すると認められる。
しかしながら、これらの要件を満足する樹脂粒子は、具体的にどのようにすれば得られるのか、実施例に記載されたもの以外については記載されていない。また、これらの要件を満足しない場合についての具体的な記載はなく、当業者がいかなる手段により課題を解決するのか理解することができない。

2 証拠方法
特許異議申立人は、証拠として、以下の文献等を提出する。文献の表記は、特許異議申立書の記載に基づく。以下、甲各号証の番号に応じて、甲第1号証を「甲1」などという。

・甲第1号証:韓国公開特許2003-0067867号明細書
・甲第2号証:Hemijska Industrija 62(6)329-338(2008)
・甲第3号証:特開2004-231760号公報
・甲第4号証:米国特許出願公開第2014/0026916号明細書
・甲第5号証:特開2002-356558号公報
・甲第6号証:国際公開第2012/105140号
・甲第7号証:特開2004-345980号公報
・甲第8号証:ファンデーション用粉体の開発動向(色材69巻8号530?538ページ、1996年8月発行)
・甲第9号証:特開2011-105673号公報
・甲第10号証:特開2012-211111号公報
・甲第11号証:顔料の吸油(液)量について(色材37巻7号259?263ページ、1964年7月発行)
・甲第12号証:JIS K3362(1990)(日本規格協会平成2年2月2日公示)
・甲第13号証:UV Talk LETTER Vol.14 September 2014(発行日2014年9月1日)
・甲第14号証:反射・散乱の計測とモデル化(情報処理学会研究報告 CVIM, コンピュータビジョンとイメージメディア172(34) 1-11ページ, 2010 Information Processing Society of Japan、2010年5月27日)
・甲第15号証:特表2014-505769号公報
・甲第16号証:「高分子」Vol.15、No,166 29-33ページ(1965年12月20日発行)
・甲第17号証:高分子論文集、Vo1.66、No.1,pp.19(Jan.,2009) (2009年発行)
・甲第18号証:愛知県産業技術研究所研究報告書「生分解性繊維による有害化学物質の吸着」(2005)(2005年発行)
・甲第19号証:特開2002-265333号公報
・甲第20号証:特開2002-187810号公報
・甲第21号証:特開2010-241785号公報

第4 主な証拠の記載等
1 甲1の記載事項等
(1)甲1の記載事項
甲1の記載の摘記は省略し、特許異議申立人が提出した甲1の部分翻訳文から摘記する。(下線については、当審において付与したものである。以下同様。)

・記載事項1
「ポリブチレンサクシネート球状微粒子の製造方法」(発明の名称)

・記載事項2
「図1は、実施形態1によって製造されたポリプチレンサクシネート球状微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。」(1ページ目の下から3行目)

・記載事項3
「図2は、実施形態1により製造されたポリブチレンサクシネート球状微粒子の粒度分布図である。」(1ページ目の下から2行目)

・記載事項4
「図3は、実施形態2によって製造されたポリブチレンサクシネート球状微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。」(1ページ目の下から1行目)

・記載事項5
「図5は、実施形態3により製造されたポリプチレンサクシネート球状微粒子の粒度分布図である。」(2ページ目の2行目)

・記載事項6
「本発明は平均粒子径および粒子サイズ分布などを制御することができるポリブチレンサクシネート球状微粒子の製造方法を提供することを主な目的とする。本発明の別の目的は、化粧品フィラーに使用可能なポリブチレンサクシネート球状微粒子を提供することである。」(3ページ目の1?3行目)

・記載事項7
「第3工程で得られたポリブチレンサクシネート微粒子(粉末)は球形で、平均粒子径が0.05?80μm(好ましくは0.1?20μm)で、単分散に優れるものとなる。本発明によれば、球形がいびつなものを0.1%未満にすることができ、最大の表面積を有するようになる。」(4ページ目の下から15?17行目)

・記載事項8
「実施形態1
第一の溶液として10m1の塩化メチレン溶液(ポリブチレンサクシネート:塩化メチレン=1:3)、第二の溶液0.5%のポリビニルアルコール水溶液20ml準備した。続いて、25℃で両溶液を混合し、ホモミキサー(2,500rpm)でエマルジョンを製造した。製造されたエマルジョンは、40℃で60分間撹拌することにより、ポリブチレンサクシネート微粒子を析出させた。その後、遠心分離法により析出物を回収し、減圧乾燥させてポリブチレンサクシネート微粒子(粉末)を得た。
析出させた微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することによって、ポリブチレンサクシネート微粒子が単分散に優れた球状粒子で構成されていることを確認した。観察結果を図1に示す。ポリブチレンサクシネート微粒子の平均粒径は1.2μmであった。その測定結果を図2に示す。」(4ページ目の下から1?10行目)

・記載事項9
「実施形態2
第一の溶液として10mlの塩化メチレン溶液(ポリブチレンサクシネート:塩化メチレン=1:3)、第二の溶液として0.25%のポリビニルアルコール水溶液20mlを準備した。続いて、25℃で両溶液を混合し、ホモミキサー(3,000rpm)でエマルジョンを製造した。製造されたエマルジョンは、40℃で60分間撹拌することにより、ポリブチレンサクシネート微粒子を析出させた。その後、遠心分離法により析出物を回収し、減圧乾燥させてポリブチレンサクシネート微粒子(粉末)を得た。
析出させた微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することによって、ポリブチレンサクシネート微粒子が単分散に優れた球状粒子で構成されていることを確認した。観察結果を図3に示す。ポリブチレンサクシネート微粒子の平均粒子径は3.6μmであった。その測定結果を図4に示す。」(5ページ目1?10行目)

・記載事項10
「本発明により得られたポリブチレンサクシネート球状微粒子は、化粧品用ポリマー添加剤として使用することができ、その他の各種用途に幅広く使用することができる。例えば、電気・電子材料、医療用材料、各種フィルター用材料、クロマトグラフィー用材料、スペーサー剤、フィルム剤、複合材料の添加剤、ポリブチレンサクシネートワニス添加剤等にも有用である。」(5ページ目の下から5?8行目)

・記載事項11


」(図1)

・記載事項12


」(図2)

・記載事項13


」(図3)

・記載事項14


」(図5)

(2)甲1に記載された発明
記載事項7によると、甲1に記載のポリブチレンサクシネート微粒子は球形であって、球形がいびつなものが0.1%未満であるから、上記ポリブチレンサクシネート微粒子も「略球状」「樹脂」粒子であるといえる。
そして、上記(1)の記載、特に、実施形態1及び2について整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
<甲1発明>
平均粒径が1.2μm又は3.6μmのポリブチレンサクシネート略球状微粒子。

2 甲2の記載事項等
(1)甲2の記載事項
甲2の記載の摘記は省略し、特許異議申立人が提出した甲2の部分翻訳文を摘記する。

・記載事項1
「本研究の目的は、生分解性ポリ(ブチレンサクシネート)、PBSからなる多孔質ミクロスフェアを得るための最適条件を見つけることである。また、非多孔質PBSミクロスフェアは、エマルジョン安定剤としてのポリ(ビニルアルコール)、PVAの存在下で溶媒を蒸発させるエマルジョンプロセスによって製造できた。」(329ページ目の3?6行目)

・記載事項2
「脂肪族の生分解性および生体滴合性ポリマーに基づくミクロスフェアの用途は、近年、化粧品、薬品、およびその他の生物学的および医学的分野で著しく増加している。」(329ページ目の左段落の1?4行目)

・記載事項3
「ミクロスフェアの見かけ密度
ガラスキャピラリーを使用して見かけ密度を測定した。キャピラリーの体積は、既知の密度の水を充填する前後のキャピラリーの質量を測定することによって決定され(シリンジを使用)、次の式に基づいて計算される。
V=w_(V)/ρ_(V)
ここで、Vはキャピラリーの体積、w_(V)は水の質量、ρ_(V)は室温での水の密度である。
乾燥ポリマー粉末サンプルを充填する前後のキャピラリーの質量を、キャピラリーの所定の体積に基づいて測定することにより、見かけ密度は次の式に基づいて決定される。
ρ=w/V
ここで、ρは見かけ密度、wはキャピラリー内のサンプルの質量、Vはキャピラリーの体積である。」(331ページ目の左段落の13?28行目 なお、甲2の部分翻訳文で「p」、「wv」、「pv」と記載されている箇所については、それぞれ甲2の原文に記載されるとおり「ρ」、「w_(V)」、「ρ_(V)」とした。)

・記載事項4
「非多孔質ミクロスフェアの取得
非多孔質PBSミクロスフェアの製造中に、ミクロスフェアのサイズと形態に対する個々のパラメーターの影響を調べた。」(331ページ目の左段落の下から5?8行目)

・記載事項5
「得られたミクロスフェアのサイズに対するポリマー濃度[12]の影響を調べるために、ミクロスフェアを5?20wt%の溶液中のポリマーのさまざまな濃度で合成した。図1は、ポリマー濃度に応じたミクロスフェアの平均直径の値を示す。得られたPBSミクロスフェアのSEM顕微鏡写真を図2に示す。」(331ページ目の右段落の1?7行目)

・記載事項6


図1.ポリマー濃度によるマイクロカプセルの平均サイズの依存性。」(331ページ目の右段落の図とその説明)

・記載事項7
「ポリマー濃度を5から20重量%に増加させると、得られたミクロスフェアの平均直径が75から282μmに増加することが観察された。」(331ページ目の右段落の上から8?10行目)

・記載事項8


図2.乳化剤の濃度が0.5質量%、CHCl_(3)/H_(2)O比が1/20、攪拌速度が600min^(-1)、有機相のポリマー濃度が(a)5質量%(b)10質量%(C)15質量%および(d)20質量%で調製されたマイクロスフェアのSEM写真」(332ページ目の上の図とその説明)

・記載事項9
「表1.PBSミクロスフェアの製造における実験条件、ミクロスフェアの平均粒子径、分解前後の見かけ密度


「Uzora:パターン」、「Odnos CHCl_(3)/heksan:CHCl_(3)/ヘキサンの比」、「SadrzajPEOuorganskojfazi:有機相中のPEO含有量」、「Srednjiprecnikmikrosfera:ミクロスフェアの平均直径」、「Prividna gustina:見かけ密度」、「Bez porogena:ポロゲンなし」、「^(a)緩衝液中で1ヶ月分解した後」(334ページ目の表の説明)

(2)甲2に記載された発明
上記(1)の記載、特に、記載事項5ないし8を中心に整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているものと認める。
<甲2発明>
平均直径が75から282μmのPBSミクロスフェア。

3 甲3の記載事項等
(1)甲3の記載事項
・記載事項1
「【請求項1】
ポリエステル系生分解性樹脂の粒子からなる生分解性樹脂粉末であって、
前記粒子が多孔質状であることを特徴とする生分解性樹脂粉末。」

・記載事項2
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多孔質状をなしているポリエステル系生分解性樹脂粒子からなる生分解性樹脂粉末及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
医薬品や農薬等の各種薬剤の徐放性担持体としては、例えば、特開昭61-227913号公報や特開昭63-258642号公報に記載されたような無機微粉末が用いられている。
【0003】
それらの無機微粒子粉末も現に要求されている安全性の基準は満たしているが、人体に対する安全性や自然環境への影響等に対する近年の意識の高まりから、より安全性の高いものが求められるようになってきており、このような無機の徐放性担持体に代えて、生分解性を有する有機質の材料を使用する試みがなされている。
【0004】
例えば、特開平3-17014号公報には、生分解性ポリマーからなる超微粉砕した生分解性粒子が開示されている。また、特開平5-148129号公報には、それ自体が油であるか、あるいは油に含有されている活性成分を封止した生分解可能なポリマー微小粒子が開示されている。また、特開平7-53725号公報には、生分解性ポリマー材料に薬物類を添加して形成されるミクロ粒子又はナノ粒子、又はポリマー材料に薬物類を包理させたミクロ粒子又はナノ粒子が開示されている。
【0005】
しかしながら、これらの従来技術では、生分解性樹脂と薬剤を相溶化させるために、通常は加熱が必要であったため、熱安定性や蒸散性の関係から、薬剤の種類によっては使用することができないという問題があった。あるいは、製剤工程が複雑で、コストがかかるという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、生分解性が高い有機樹脂からなり、人体や自然環境に対する安全性がより高い徐放性担持体となりうる生分解性樹脂粉末を提供することを課題とするものである。特に、薬剤の種類を問わずに担持体として使用でき、製剤が容易で、従ってコストも削減できる樹脂粉末を提供しようとするものである。」

・記載事項3
「【0019】
【発明の実施の形態】
本発明でいうポリエステル系生分解性樹脂とは、従来からも用いられているポリエステル系生分解性高分子化合物である。
【0020】
具体例としては、乳酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、リンゴ酸、グリコール酸等のヒドロキシアルカン酸、・・・の単独重合物、あるいはこれらの共重合物が挙げられる。
【0021】
また、アジピン酸やコハク酸とエチレングリコール及び/又はブチレングリコールの共重合物等の二塩基酸ポリエステルも使用可能である。」

・記載事項4
「【0032】
・・・多孔質状樹脂粒子は、表面の凹凸を除いた全体的な形状としてはほぼ球形であり、粒径は約0.1?100μmの範囲のものが製造可能である。」

・記載事項5
「【0043】
本発明の生分解性樹脂粉末は、医薬品や農薬等の薬剤の除放性担体として有用であるが、それ以外に例えば複写機用トナーや粉体塗料等への適用も可能である。」

・記載事項6
「【0045】
[実施例1,2]ポリ乳酸樹脂(島津製作所(株);LACTY9030)50部をトルエン200部に溶解した溶液にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(EO:20mol、分子量約1200)3部とスルホコハク酸ジオクチルナトリウム3部を添加し、ホモディスパーによる攪拌下、水55部を徐々に添加して乳化体とした後、減圧下でトルエンを除去した。得られた乳化体につき乳酸ナトリウム50%水溶液3.7部を用いてpH調整を行い、白濁液状の乳化物(固形分約50%、粒径0.8μm、pH3.8)115部を得た。なお、以上の操作は、トルエンに樹脂を溶解させる工程を除き、50℃以下で行った。
【0046】
上記乳化物を、図1に示した構造を有するパルス燃焼乾燥装置(パルテック(株)製、ハイパルコン25型)に投入して、下記及び表1に示した条件で乾燥し、樹脂粉末を得た。
【0047】
周波数:500ヘルツ圧力振幅:±0.2kg/cm^(2)音圧:140デシベルサイクロン差圧:50mmH_(2)O
【0048】
得られた樹脂粉末につき、水分含量、嵩比重、平均粒径、収率、吸油量を以下の方法により測定した。結果を表1に示す。
【0049】
水分含量:JIS K0067(1992)に準拠して測定した。
【0050】
嵩比重:JIS K3362(1990)に準拠して測定した。
【0051】
平均粒径:5gの粉末を95gの水に添加・分散し、島津製作所製レーザ回折式粒度分布測定装置SALD-2000にて測定した。
【0052】
収率:回収した全粉末重量a(g)、投入したエマルション重量A(g)及びエマルション固形分比率x(%)から、次式に従い算出した;[収率]=a/(A×x)
【0053】
吸油量:1-ブタノールを粉末に加え、紛状を維持できる量の上限を調べた。」

・記載事項7
「【表1】



・記載事項8
「【0057】
さらに、実施例1?3で得られた樹脂粉末の外観を電子顕微鏡(日本電子(株)製、走査電子顕微鏡JSM-T300型)を用いて観察した。得られた写真のうち、実施例1及び3についてのものを、図2(実施例1、2000倍)、図3(実施例1、10000倍)、図4(実施例3、2000倍)、図5(実施例3、3500倍)として示す。」

・記載事項9
「【図2】



(2)甲3に記載された発明
上記(1)の記載、特に、記載事項7の実施例1について整理すると、甲3には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているものと認める。
<甲3発明>
表面の凹凸を除いた全体的な形状としてはほぼ球状であり、平均粒径16.4μmの、1-ブタノール吸油量が50g/100gであるポリ乳酸樹脂粉末。

4 甲4の記載事項等
(1)甲4の記載事項
甲4の記載の摘記は省略し、特許異議申立人が提出した甲4の部分翻訳文を摘記する。

・記載事項1


」(図1)

・記載事項2


」(図2)

・記載事項3
「本明細書では、パーソナルケア製品を人体に適用し、前記製品を水で体から洗い流すことを含む、水質汚染を低減する方法を説明する。前記製品は、平均サイズが400ミクロン未満のポリヒドロキシアルカノエート(「PHA」)マイクロビーズを含み、前記ポリヒドロキシアルカノエートマイクロビーズは、水生環境において急速に沈む。」([0013])

・記載事項4
「本発明のいくつかの実施形態では、PHAマイクロビーズは球形またはほぼ球形であり、ローションの感触を高めるのに有用であり、および/またはしわの線を減らすのに有用である。」([0018])

・記載事項5
「PHAマイクロビーズは、メイクアップ、歯磨き粉、角質除去剤、日焼け止めなどのパーソナルケア製品に用いることができます。」([0022])

・記載事項6
「図1は、350倍の倍率で撮影されたPHAミクロスフェアの画像である。」([0023])

・記載事項7
「図2は、2800倍の倍率で撮影されたPHAミクロスフェアの画像を示し、選択されたPHAマイクロビーズの直径の測定値を含む。」([0024])

・記載事項8
「パーソナルケア製品としては、リップクリーム、クレンジングパッド、ケルン、コットンパッド、デオドラント、アイライナー、リップグロス、口紅、ローション、メイクアップ、マウスウォッシュ、ポマード、香水、シャンプー、コンディショナー、シェービングクリーム、スキンクリーム、日焼け止め、ウェットワイプ、歯磨き粉が含まれますが、これらに限定されません。」([0031])

・記載事項9
「PHAミクロスフェアが使用される場合、好ましいサイズ範囲は、約10μmから約100μmである。」([0032])

・記載事項10
「「真円度」という用語は、マイクロビーズ粒子の形状を指し、ISO9276-6:2008(E)セクション8.2に従って測定された定量的な2次元画像分析によるものです。真円度は、粒子の形状と完全な球の違いであると文献で説明されております。真円度の値は0から1の範囲であり、真円度1は、2次元画像で測定された完全な球形粒子またはディスク粒子を表します。本発明のいくつかの実施形態では、高い真円度を有するPHAマイクロビーズ(例えば、PHAミクロスフェア)が望ましく、一方、より多くの研磨粒子が望まれる他の例では、PHAマイクロビーズの好ましい真円度は0.5未満であり得る。」([0033])

・記載事項11
「PHAマイクロビーズは、プラスチックマイクロビーズを製造するための従来技術で知られている多くの方法によって製造することができる。マイクロビーズが球形であるか、ほぼ球形である場合(真円度が0.95より大きい場合)、それらはミクロスフェアとして知られています。PHAミクロスフェアは、PHAマイクロビーズに属し、配合された製品の感触を改善し、光散乱によるしわの出現を低減するための化粧品配合物において特に有用である。」([0037])

・記載事項12
「攪拌速度、有機溶媒と水との比率、および乳化剤の濃度を変えることにより、得られるPHAマイクロビーズのサイズと粒子分布を調整することができる。」([0039])

・記載事項13
「PHAミクロスフェアは、当技術分野で知られている技術を使用してパーソナルケア製品に用いることができる。PHAマイクロスフェアは流動性を有する。」([0042])

・記載事項14
「本発明の方法に有用なパーソナルケア製品は、例えば、スキンケア、リップケア、制汗剤、デオドラント、化粧品、オーラルケア、またはヘアケア製品であり、顔、首、手、腕、口、髪、または体の他の部分に用いることができる。パーソナルケア製品としては、例えば、保湿剤、コンディショナー、練り歯磨き、老化防止化合物、皮膚ライトナー、日焼け止め、日焼け止めタナー、剃毛剤、口紅、ファンデーション、マスカラ、アフターシェーブ、およびそれらを組み合わせて使用することができる。」([0063])

(2)甲4に記載された発明
上記(1)の記載、特に、記載事項9?11を中心に整理すると、甲4には次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているものと認める。
<甲4発明>
サイズ範囲が約10μmから約100μmであり、真円度が0.95より大きいPHAミクロスフェア。

5 甲5の記載事項等
(1)甲5の記載事項
・記載事項1
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はクロマトグラフィー用担体、電子写真用トナー、薬剤用担体、化粧品などとして利用されている樹脂粒子、特に結晶性ポリエステル球状粒子の製造方法に関する。」

・記載事項2
「【0033】
【実施例】(実施例1)本発明の実施例として3-hydroxy-5-phenoxyvalerate(以後PHPxV)について示す。混合溶媒として良溶媒であるクロロホルム、非溶媒であるエタノールを2:1の割合で混合した物を用いた。この混合溶媒を30℃に保ちながらPHPxVを投入し溶液が透明になるまで攪拌した。その後、溶液を30℃に保ちエバポレーターによって0.7気圧まで減圧して球晶状粒子が析出することによる溶液の白濁を確認し、その後フィルターを用いた吸引ろ過により溶媒を除去したPHPxVを3時間真空乾燥することにより球晶状粒子を回収した。
【0034】このPHPxVの球晶状粒子ガラスキャピラリーの先端に接着したものを図1に示す。図からもわかるようにPHPxVの球晶状粒子はほぼ真球状に形成されていることがわかる。」

・記載事項3
「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によって製造されたPHPxVの球晶状粒子(ガラスキャピラリー上に固定)」

記載事項4
「【図1】



(2)甲5に記載された発明
上記(1)の記載、特に、実施例1を中心に整理すると、甲5には次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されているものと認める。
<甲5発明>
ほぼ真球状のPHPxV球晶状粒子。

6 甲8の記載事項
・記載事項1
「ソフトフォーカスに対するニーズが高まる事となった。現在では、一般向ファンデーションにも応用されており、ファンデーションの重要な機能となっている。
この機能を有する粉体は,球状粉体である。具体的には、ナイロン、ポリエチレン、アクリル系等の有機球状粉体と無機系の球状シリカ等が代表的な粉体である。
これらの粉体は、その球状という形態から光を乱反射する。この乱反射により肌の凹凸をぼかすことがソフトフォーカス効果である。図-5には代表的なソフトフォーカス粉体であるナイロンパウダーと一般的な粉体であるタルクの変角光沢計による測定結果を示す。
ナイロンパウダーは、タルクと比較して角度依存性が低く乱反射度が大きいことがわかる。

」(533ページ右段の下から13行目から、534ページ左段上から1行目)

7 甲9の記載事項
・記載事項1
「【0017】
本発明の粉末状化粧料の具体例としては白粉、デオドラントパウダー、パヒュームパウダー、ボディパウダー等が挙げられる。これらの中でも、白粉が本発明の効果が顕著に発揮されるため好ましい。」

・記載事項2
「【表1】



・記載事項3
「【0023】
図1に示した通り、本発明の実施例1は、比較例より-40°?20°の反射強度が高く、35°?60°にある正反射光が低く、高いソフトフォーカス効果を示していた。」

・記載事項4
「【図1】



8 甲10の記載事項
・記載事項1
「【請求項1】
アコヤ貝貝殻をアルカリ溶液に浸漬した後、解砕し、200?500メッシュで分別することを特徴とする薄片状炭酸カルシウムを主成分とする化粧品用粉体」

・記載事項2
「【請求項2】
請求項1の粉体の表面に平均粒子径0.05?0.5μの球形粉体を表面処理した化粧品用粉体 」

・記載事項3
「【実施例】
【0011】
以下に実施例、配合例を示すがこれに限定させるものではない。
【0012】
実施例1
三重県志摩市浜島町迫子大崎ミキモト多徳養殖場において浜揚げしたアコヤ貝貝殻20kgをバレル研磨機に入れ、研磨石を加え、水を徐々に加えつつ3時間撹拌した。この貝殻14kgに10%水酸化ナトリウム水溶液を85kgを加えて、3週間時々撹拌しつつ浸漬した。
これを静置し、上澄みをすて、すてた量と同じ量の水を加え、撹拌した。これを5回繰り返した。
48メッシュ、100メッシュ、400メッシュの順に篩を通し、通過したものを集めた。
これをろ紙(東洋濾紙社製No5C)で濾過し、ろ紙上の固形物を水80kgを加え撹拌した。これを5回繰り返した。
これを100℃で24時間乾燥させた。収量は6kgであった。
【0013】
実施例2
実施例1の粉体2.4kgと球形粉体(材質=ポリメタクリル酸メチル(綜合化学株式会社、平均粒子径=0.2μ)0.6kgをヘンシェルミキサー(三井三池工機株式会社)に投入し、10分間、2800rpmで撹拌した。
【0014】
変角光度測定
村上色彩技術研究所社製変角光度計GP-5で入射角度-45度、受光角度-90?90で測定した。
結果を表1及び表2に示す。」

・記載事項4
「【表2】



・記載事項5
「【0017】
なお、表1の比較1はマイカ(トピー工業社製、商品名PDM-10L)、比較2はタルク(浅田製粉社製、商品名JA-13R)を用いた。
以上のように実施例は比較した粉体に比較して、再帰反射、拡散反射は増加しており、反射光があらゆる角度に散乱しており化粧品粉体として有効であることがわかった。」

・記載事項6
「【0018】
処方例1 ファンデーション
タルク 44
マイカ 25
酸化チタン 10
ナイロンパウダー 10
ジメチコン 5
酸化鉄 4.8
実施例1 1
パラベン 0.2」

・記載事項7
「【0019】
処方例2 仕上げ用化粧品
マイカ 50
タルク 26
シリカ 5
酸化チタン 10
スクワラン 5
酸化鉄 2.8
実施例2 1
パラベン 0.2」

9 甲13の記載事項
・記載事項1
「粉末試料から反射する光は試料表面で反射する正反射光と、試料の内部に侵入し屈折、透過、散乱を繰り返した後、表面から出てくる拡散反射光の2種類に分けられます。」(3ページ目の2?4行目)

10 甲14の記載事項
・記載事項1
「多くの反射モデルは,図2のように,反射光を拡散反射成分と鏡面反射成分の和として近似する^(★1).」(2ページ目の右段落4?5行目)

・記載事項2
「拡散反射は,入射光が表面層内部で乱反射することで生じる成分であり,観察方向に依存せず,あらゆる方向に均一の強度で観察される.」(2ページ目の右段落8?9行目)

・記載事項3
「鏡面反射は,入射光が大気と表面層との境界において反射することで生じる成分であり,正反射方向付近で強く観察される.なめらかな表面で強く観察され,ハイライトとも呼ばれる.」(2ページ目の右段落下から1?3行目)

・記載事項4
「半透明物体では,物体表面に入射した光は内部へ到達し,散乱を繰り返す.」(5ページ目の右段落下から11?12行目)

11 甲19の記載事項等
(1)甲19の記載事項
・記載事項1
「【請求項1】球状ポリメタクリル酸アルキルエステル粉末を10?50質量%と揮発性シリコーン油を10?50質量%含有することを特徴とする肌の凹凸隠し用油性化粧料。」

・記載事項2
「【0024】
実施例2スティックファンデーション
(1)セレシン 5
(2)カルナバロウ 1
(3)セスキイソステアリン酸ソルビタン 2
(4)スクワラン 残余
(5)オクチルメトキシシンナメート 2
(6)デカメチルシクロペンタシロキサン 20
(7)ドデカメチルシクロヘキサシロキサン 20
(8)マイカ 2
(9)カオリン 2
(10)球状ポリメタクリル酸メチル 30
(ガンツ化成社製、ガンツパールGMX-0810)
(11)酸化チタン 8
(12)酸化鉄系顔料 3.9
(13)ヘリンドンP50%タルクベース 0.9
(14)δ-トコフェロール 0.05
(15)香料 適量
<製法>3?5及び14、15を加熱混合後、8?13を添加し、ディスパー分散する。このものを特殊機化製TKミル処理し、85℃に加熱する。あらかじめ均一に加熱混合した1、2及び6、7をこれに加え混合後脱気する。所定のスティック容器に充填後、5℃にて急冷し成型した。」

(2)甲19に記載された発明
上記(1)の記載を整理すると、甲19には次の発明(以下、「甲19発明」という。)が記載されているものと認める。
<甲19発明>
球状ポリメタクリル酸メチル(ガンツ化成社製、ガンツパールGMX-0810)。

12 甲20の記載事項等
(1)甲20の記載事項
・記載事項1
「【請求項1】 屈折率の異なる2種以上の樹脂或いはシリカを、隣接する外層の屈折率が内層の屈折率より小さくなるように多層状に被覆した、再帰反射性を有する球状粉体を含有する化粧料。」

・記載事項2
「【0008】再帰反射性を有する特定の粉末として、屈折率の異なる2種以上の樹脂或いはシリカを、隣接する外層の屈折率が内層の屈折率より小さくなるように多層状に被覆した球状粉体を用いる。」

・記載事項3
「【0010】本発明の球状粉体に用いられる樹脂としては、例えばポリメタクリル酸トリフルオロエチル(屈折率1.42),ポリメタクリル酸エチル,ポリメタクリル酸メチル(屈折率1.4893),ポリシクロヘキシルメタクリレート(屈折率1.5066),ポリアクリロニトリル(屈折率1.52),ポリベンジルメタクリレート(屈折率1.568),ポリフェニルメタクリレート(屈折率1.5706)等のアクリル樹脂、ポリスチレン(屈折率1.59),ポリσ-クロロスチレン(屈折率1.61)等のスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル(屈折率1.63),ポリビニルナフタレン(屈折率1.682),ポリ安息香酸ビニル(屈折率1.58),ポリビニルカルバゾール(屈折率1.683),ポリビニルアルコール(屈折率1.49),ポリ酢酸ビニルなどのビニル樹脂、アモルファスポリオレフィン(屈折率1.53),ポリ-4-メチルペンテン(屈折率1.466)等のオレフィン樹脂、ナイロン6(屈折率1.53),ナイロン66等のポリアミド樹脂、フェノール樹脂、アシルジグリコールカーボネート(屈折率1.50),ポリカーボネート(屈折率1.584),ジエチレングリコールビスアリルカーボネートポリマー(屈折率1.50)等のポリカーボネート樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(屈折率1.35)等のフッ素樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(屈折率1.576),ポリエチレン(屈折率1.51)等のエチレン樹脂等、球状に成形可能な樹脂であれば特に限定されない。またこれらの樹脂は、共重合可能なものについては共重合体、また屈折率,耐熱性向上のため側鎖置換等による変性が可能なものについては変性体が含まれる。これらの樹脂のなかでも、特にポリエステル樹脂,スチレン樹脂,アクリル樹脂,オレフィン樹脂,ビニル樹脂が好ましく用いられる。」

・記載事項4
「【0013】本発明に係る再帰反射性を有する粉体を含有する化粧料としては、顔料を用いる化粧料に広く利用可能であり、リキッドファンデーション,油性パウダーファンデーション,パウダータイプ若しくはツーウェイタイプのケーキ型ファンデーション,スティックファンデーション,フェイスパウダー,口紅,頬紅,アイシャドウ,アイブロウ,マスカラ等のメイクアップ化粧料をはじめとして、その他ボディパウダー,日焼け止めクリーム,日焼け止め乳液,カーマインローション,美白パウダー,化粧下地,乳液,化粧水などが例示される。」

・記載事項5




(2)甲20に記載された発明
上記(1)の特に請求項1の記載を整理すると、甲20には次の発明(以下、「甲20発明」という。)が記載されているものと認める。
<甲20発明>
屈折率の異なる2種以上の樹脂或いはシリカを、隣接する外層の屈折率が内層の屈折率より小さくなるように多層状に被覆した、再帰反射性を有する球状粉体。

13 甲21の記載事項等
(1)甲21の記載事項
・記載事項1
「【請求項1】
ビニル系単量体が重合されてなり、下記一般式(1)、で表される亜リン酸のジエステルか、
【化1】


又は、下記一般式(2)又は(3)で表されるリン酸の部分エステルか、
【化2】


(ただし、上記一般式(1)?(3)における、R1とR2とは、それぞれ独立して、炭素数が1?14個の、非環式の飽和又は不飽和炭化水素から1個の水素原子を除去した1価基か、又は、下記式(4)で表される基である。)
【化3】


のいずれかの成分を含有する樹脂粒子であって、
表面に非晶質リン酸カルシウムを被覆させてコアシェル型の複合粒子を形成させるためのコア粒子に用いられることを特徴とする樹脂粒子。」

・記載事項2
「【0003】
・・・
例えば、化粧料においては、皮脂による化粧崩れを防止することや、光散乱によるソフトフォーカス(ぼかし)が求められることから、含有させるコアシェル型の複合粒子の外殻をなす被覆層をリン酸カルシウムで形成させて前記要望を満足させることができる。」

・記載事項3
「【0063】
(複合粒子の製造例1)
(樹脂粒子の作製)
容量5リットルのステンレスビーカーに、分散剤としてピロリン酸マグネシウム粉末60gを水3000gに分散させた分散液を入れた。
別に、メタクリル酸メチル950gにエチレングリコールジメタクリレート50gと、2、2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.9gとを加え、さらにエステル類としてカプロラクトンEO変性リン酸ジメタクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「PM-21」)を500ppm/単量体の割合となるように加えて単量体溶液を作製した。
この単量体溶液を上記ステンレスビーカーに入れ、特殊機化製「卓上型TKホモミキサー」(回転数6000rpm)により分散を行った後、攪拌機付ジャケット式の5リットル容量のオートクレーブに入れ、オートクレーブ内の温度を50℃に保ちながら撹拌して、6時間懸濁重合を行った。
その後105℃に昇温し、2時間攪拌を続けて樹脂粒子を含むスラリーを作製した。
次いで冷却し6規定の塩酸をスラリーのpHが1以下になるまで加え、ピロリン酸マグネシウムを溶解した後濾過、洗浄を行った。
得られた樹脂粒子の平均粒径は8.5μmであった。
【0064】
(被覆層の形成)
作製された樹脂粒子をイオン交換水に分散させ、全量を3.5リットルにしたものに水酸化カルシウムを80g加えた後良く攪拌し樹脂粒子分散液を作製した。なお、この時の樹脂粒子分散液のpHは13.0であった。
この樹脂粒子分散液を20℃以下の温度に冷却した後、濃度10%に希釈したオルトリン酸をpHが10.5になるまで徐々に加え、リン酸カルシウム成分を含む水性懸濁液を作製した。
なお、オルトリン酸を加えている間は樹脂粒子分散液の温度が40℃を超えないように調整し、樹脂粒子分散液の粘度変化に応じて適宜攪拌の回転数を調整した。
このオルトリン酸の滴下終了後2時間攪拌を継続して、樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させた後、この水性懸濁液を濾過・乾燥し複合粒子を得た。
なお、乾燥後の複合粒子は凝集状態であったため、市販のミキサーで解砕後、200メッシュの篩を通過させ製造例1の複合粒子とした。」

・記載事項4
「【0087】
(光散乱性の評価)
製造例1?13によって得られた複合粒子、及び、製造例1において作製された樹脂粒子(非晶質リン酸カルシウムを析出させる前のもの)に対して、自動変角光度計(村上色彩研究所社製、型名「GP-200」)を用いて入射角-45度で光を照射した際の反射角-90度から+90度における反射光分布を測定した。
具体的には、白黒隠蔽紙(BYK-Gardner社製、「Test Chart 2803」)に対して、その黒色部分を中心にして一辺5cmの正方形に切断した両面テープを接着させ、この両面テープ貼付け位置にかさ比重測定器(JIS K 5101準拠品)を用いて各製造例で得られた複合粒子を落下させ、この両面テープ上に落下させた複合粒子に圧縮空気を吹き付けて余分な複合粒子を除去して測定試料として反射光分布を測定した。
得られた結果を、+45度における反射光強度を100とした場合の、-25度、0度、+25度におけるそれぞれの反射光強度の比率(反射光強度比)を表1に示す。
この-25度、0度、+25度と、-45度の入射角、基準となる+45度の反射角とは、図11に示すようなもので、入射光が-45度の方向から入射された場合、通常は、+45度の方向に光が反射されることから、この光の反射方向に対して後方側、すなわち、-25度側などにおいて強い反射強度が観測されるほど光散乱性に優れているといえる。」

・記載事項5
「【表1】



(2)甲21に記載された発明
上記(1)の記載を製造例1から整理すると、甲21には次の発明(以下、「甲21発明」という。)が記載されているものと認める。
<甲21発明>
メタクリル酸メチル、エチレングリコールジメタクリレート、2、2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、カプロラクトンEO変性リン酸ジメタクリレートからなる単量体溶液を重合してなる樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを被覆させた樹脂粒子。


第5 特許異議申立理由についての判断
1 申立理由1(甲1を主引用文献とする進歩性欠如)について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ポリブチレンサクシネート略球状微粒子」は、本件特許発明1の「ポリブチレンサクシネート及びポリヒドロキシアルカノエートからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子」に相当するから、両者は、
「ポリブチレンサクシネート及びポリヒドロキシアルカノエートからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1-1>
略球状樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「真球度が0.90?1.00」と特定するのに対し、甲1発明は、この点を特定しない点。
<相違点1-2>
略球状樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「光散乱指数が0.5?1.0」と特定するのに対し、甲1発明は、この点を特定しない点。
<相違点1-3>
略球状樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「アマニ油吸油量が30?150mL/100g」と特定するのに対し、甲1発明は、この点を特定しない点。

上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点1-2>から検討するに、甲1発明のポリブチレンサクシネート略球状微粒子の「光散乱指数」の数値については、甲1あるいは他の証拠の記載を見ても明らかではない。
その結果、甲1発明に、いずれの提示された証拠の記載事項を組み合わせたとしても、「光散乱指数が0.5?1.0」という事項を導くことはできないし、光散乱指数を評価指標として採用し、しかもその数値範囲を0.5?1.0に特定する動機付けもない。

この点について、特許異議申立人は、甲8?10の記載から、化粧品粉体として有効な粉体の光拡散指数は0.5?1.0であるといえるから、甲1に記載のポリブチレンサクシネート略球状微粒子は、化粧品フィラーとして有効であることから光拡散指数が0.5?1.0である蓋然性が高く、また、甲1に記載された化粧品粉体として有効な粉体において、光拡散指数の0.5?1.0を採用することは、当業者であれば容易に想到し得ることであると主張している。

しかし、特許異議申立人が、光拡散指数に関する証拠として挙げた甲8?10を見ても、ファンデーション用粉体や白粉には光を乱反射する機能(ソフトフォーカス効果)が求められることは記載されているが、いずれの証拠においても粒子の光散乱指数を0.5?1.0の範囲内とすることについては記載されていない。
たとえ、甲8?10において、ファンデーション用粉体や白粉の光散乱指数を0.5?1.0の範囲内とすることが自明であったとしても、甲1発明のポリブチレンサクシネート略球状微粒子は、用途がファンデーション用粉体や白粉に特定されておらず、また、甲1の記載事項6には、甲1発明が化粧品フィラーとして使用可能であることは示唆されているが、化粧品フィラーには、光を乱反射する機能を必要としないスクラブ用などの多種多様な用途があることから、直ちに甲1発明の用途としてファンデーション用粉体や白粉が採用され、かつ、その「光散乱指数」の範囲が特定されるものでもない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

してみれば、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用し、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
そして、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2ないし5もまた、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立理由1についてのまとめ
上記(1)及び(2)のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、申立理由1によっては取り消すことができない。

2 申立理由2(甲2を主引用文献とする進歩性欠如)について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明のミクロスフェアは「小球体」を意味し、また、PBSは「ポリブチレンサクシネート」であるから、甲2発明の「PBSミクロスフェア」は本件特許発明1の「ポリブチレンサクシネート及びポリヒドロキシアルカノエートからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子」に相当する。
してみると、両者は、
「ポリブチレンサクシネート及びポリヒドロキシアルカノエートからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点2-1>
略球状樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「真球度が0.90?1.00」と特定するのに対し、甲2発明は、この点を特定しない点。
<相違点2-2>
略球状樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「光散乱指数が0.5?1.0」と特定するのに対し、甲2発明は、この点を特定しない点。
<相違点2-3>
略球状樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「アマニ油吸油量が30?150mL/100g」と特定するのに対し、甲2発明は、この点を特定しない点。

上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点2-2>から検討するに、甲2発明のPBSミクロスフェアの「光散乱指数」の数値については、甲2あるいは他の証拠の記載を見ても明らかではない。
その結果、甲2発明に、いずれの提示された証拠の記載事項を組み合わせたとしても、「光散乱指数が0.5?1.0」という事項を導くことはできないし、光散乱指数を評価指標として採用し、しかもその数値範囲を0.5?1.0に特定する動機付けもない。

この点について、特許異議申立人は、以下のように主張している。
甲2には、PBSからなる多孔質ミクロスフェアと、非多孔質ミクロスフェアが記載されており、また、甲13、14から粒子内部に空洞(孔)を有する粒子は、内部での光の屈折や散乱が大きくなることは技術常識である。そうすると、甲2には、空洞を有しない拡散反射光が小さい非多孔質粒子から、拡散反射光が大きく、光拡散指数が大きい多孔質粒子まで記載されているといえる。
さらに、甲8?10からソフトフォーカス特性に優れる粉体の光拡散指数が0.5より大きいことは当業者において技術常識である。よって、甲2から、「光拡散指数が0.5?1.0」を導くことは、当業者であれば容易に発明し得ることである。

しかし、甲2には、空洞を有しない拡散反射光が小さい非多孔質粒子から、拡散反射光が大きく、光拡散指数が大きい多孔質粒子まで記載されているが、これらの粒子の光散乱指数が0.5?1.0の範囲内にあることが明らかとはいえない。
また、特許異議申立人が、光拡散指数に関する証拠として挙げた甲8?10を見ても、ファンデーション用粉体や白粉には光を乱反射する機能(ソフトフォーカス効果)が求められることは記載されているが、いずれの証拠においても粒子の光散乱指数を0.5?1.0の範囲内とすることについては記載されていない。たとえ、甲8?10において、ファンデーション用粉体や白粉の光散乱指数を0.5?1.0の範囲内とすることが自明であったとしても、甲2発明のPBSミクロスフェアは、用途がファンデーション用粉体や白粉に特定されておらず、また、甲2の記載事項2には、甲2発明が化粧品に使用可能であることは示唆されているが、化粧品には、光を乱反射する機能を必要としないスクラブ用などの多種多様な用途があることから、直ちに甲2発明の「光散乱指数」の範囲が特定されるものでもない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

してみれば、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2ないし4について
本件特許発明2ないし4はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用し、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
そして、本件特許発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2ないし4もまた、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立理由2についてのまとめ
上記(1)及び(2)のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、申立理由2によっては取り消すことができない。


3 申立理由3(甲3を主引用文献とする進歩性欠如)について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「表面の凹凸を除いた全体的な形状としてはほぼ球状」は、本件特許発明1の「略球状」に相当する。また、甲3の「ポリ乳酸」は、本件特許発明1の「熱可塑性樹脂」に相当する。
してみると、両者は、
「熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点3-1>
略球状樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「真球度が0.90?1.00」と特定するのに対し、甲3発明は、この点を特定しない点。
<相違点3-2>
略球状樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「光散乱指数が0.5?1.0」と特定するのに対し、甲3発明は、この点を特定しない点。
<相違点3-3>
略球状樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「アマニ油吸油量が30?150mL/100g」と特定するのに対し、甲3発明は、この点を特定しない点。
<相違点3-4>
略球状樹脂粒子を構成する熱可塑性樹脂に関し、本件特許発明1は、「ポリブチレンサクシネート及びポリヒドロキシアルカノエートからなる群より選ばれた少なくとも1種」と特定するのに対し、甲3発明は「ポリ乳酸」である点。

上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点3-2>から検討するに、甲3発明のポリ乳酸樹脂粉末の「光散乱指数」の数値については、甲3あるいは他の証拠の記載を見ても明らかではない。
その結果、甲3発明に、いずれの提示された証拠の記載事項を組み合わせたとしても、「光散乱指数が0.5?1.0」という事項を導くことはできないし、光散乱指数を評価指標として採用し、しかもその数値範囲を0.5?1.0に特定する動機付けもない。

この点について、特許異議申立人は、甲3に記載の粒子は、「真球度が0.90?1.00」および「アマニ油吸油量が30?150mL/100g」を満足するものであるから、粒子の形状、表面性および内部構造が本件特許発明1のものと同じであって、さらに、その粒子の樹脂成分としてポリブチレンサクシネートおよびポリヒドロキシアルカノエートが例示されていることから、甲3に記載の粒子も「光拡散指数が0.5?1.0」を満足する旨主張する。

しかし、仮に甲3に記載の粒子が「真球度が0.90?1.00」および「アマニ油吸油量が30?150mL/100g」を満足したとしても、粒子の表面性および内部構造は、真球度の値とアマニ油吸油量の値から一義的に導出されるとはいえないから、甲3に記載の粒子の形状、表面性および内部構造が本件特許発明1のものと同じであったとはいえない。その結果、甲3に記載の粒子が「光拡散指数が0.5?1.0」を満足するともいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
してみれば、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2、3及び5について
本件特許発明2、3及び5はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用し、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
そして、本件特許発明1は、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2、3及び5もまた、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立理由3についてのまとめ
上記(1)及び(2)のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし3及び5に係る特許は、申立理由3によっては取り消すことができない。


4 申立理由4(甲4を主引用文献とする進歩性欠如)について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲4発明とを対比する。
甲4の記載事項10から、甲4発明における「真円度」とは、マイクロビーズ粒子の形状を指し、ISO9276-:2008(E)セクション8.2に従って測定された定量的な2次元画像分析によるものであって、真円度1は、2次元画像で測定された完全な球形粒子またはディスク粒子を表す。ここで、本件特許発明1における「真球度」に関して、発明の詳細な説明の段落【0032】には「真球度は、樹脂粒子を撮像した画像と同じ投影面積を有する真円の直径から算出した周囲長を、樹脂粒子を撮像した画像の周囲長で除した値である。」と記載されていることから、甲4発明の「真円度」は、本件特許発明1の「真球度」に相当し、甲4発明の真円度の上限も1であるといえる。そして、甲4発明のミクロスフェアは「小球体」を意味し、また、PHAは「ポリヒドロキシアルカノエート」であるから、甲4発明の「PHAミクロスフェア」は本件特許発明1の「ポリブチレンサクシネート及びポリヒドロキシアルカノエートからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子」に相当する。
してみると、両者は、
「真球度が0.95?1.00であり、ポリブチレンサクシネート及びポリヒドロキシアルカノエートからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点4-1>
略球状樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「光散乱指数が0.5?1.0」と特定するのに対し、甲4発明は、この点を特定しない点。
<相違点4-2>
略球状樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「アマニ油吸油量が30?150mL/100g」と特定するのに対し、甲4発明は、この点を特定しない点。

上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点4-1>から検討するに、甲4発明のPHAミクロスフェアの「光散乱指数」の数値については、甲4あるいは他の証拠の記載を見ても明らかではない。
その結果、甲4発明に、いずれの提示された証拠の記載事項を組み合わせたとしても、「光散乱指数が0.5?1.0」という事項を導くことはできないし、光散乱指数を評価指標として採用し、しかもその数値範囲を0.5?1.0に特定する動機付けもない。

この点について、特許異議申立人は、甲8?10の記載から、化粧品粉体として有効な粉体の光拡散指数は0.5?1.0であるといえるから、甲4に記載のポリブチレンサクシネート球状微粒子は、化粧品フィラーとして有効であることから光拡散指数が0.5?1.0である蓋然性が高く、また、甲4に記載された化粧品粉体として有効な粉体において、光拡散指数の0.5?1.0を採用することは、当業者であれば容易に想到し得ることであると主張している。
しかし、特許異議申立人が、光拡散指数に関する証拠として挙げた甲8?10を見ても、ファンデーション用粉体や白粉には光を乱反射する機能(ソフトフォーカス効果)が求められることは記載されているが、いずれの証拠においても粒子の光散乱指数を0.5?1.0の範囲内とすることについては記載されていない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

してみれば、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用し、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
そして、本件特許発明1は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2ないし5もまた、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立理由4についてのまとめ
上記(1)及び(2)のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、申立理由4によっては取り消すことができない。


5 申立理由5(甲5を主引用文献とする進歩性欠如)について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲5発明とを対比する。
甲5発明のPHPxVは、本件特許発明の「ポリヒドロキシアルカノエート」に相当する。
してみると、両者は、
「ポリブチレンサクシネート及びポリヒドロキシアルカノエートからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点5-1>
略球状樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「真球度が0.90?1.00」と特定するのに対し、甲5発明は、「ほぼ真球状」と記載されるものの、この点を特定しない点。
<相違点5-2>
略球状樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「光散乱指数が0.5?1.0」と特定するのに対し、甲2発明は、この点を特定しない点。
<相違点5-3>
略球状樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「アマニ油吸油量が30?150mL/100g」と特定するのに対し、甲2発明は、この点を特定しない点。

上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点5-2>から検討するに、甲5発明のPHPxV球晶状粒子の「光散乱指数」の数値については、甲5あるいは他の証拠の記載を見ても明らかではない。
その結果、甲5発明に、いずれの提示された証拠の記載事項を組み合わせたとしても、「光散乱指数が0.5?1.0」という事項を導くことはできないし、光散乱指数を評価指標として採用し、しかもその数値範囲を0.5?1.0に特定する動機付けもない。

この点について、特許異議申立人は、甲5には「本発明はクロマトグラフィー用担体、電子写真用トナー、薬剤用担体、化粧品などとして利用されている樹脂粒子。」と記載されているから、化粧用粉体として有用である光拡散性を有する蓋然性が高いと主張している。
しかし、特許異議申立人が、光拡散指数に関する証拠として挙げた甲8?10を見ても、ファンデーション用粉体や白粉には光を乱反射する機能(ソフトフォーカス効果)が求められることは記載されているが、いずれの証拠においても粒子の光散乱指数を0.5?1.0の範囲内とすることについては記載されていない。
たとえ、甲8?10において、ファンデーション用粉体や白粉の光散乱指数を0.5?1.0の範囲内とすることが自明であったとしても、甲3発明のポリ乳酸樹脂粉末は、用途がファンデーション用粉体や白粉に特定されていないから、直ちに甲5発明の「光散乱指数」の範囲が特定されるものでもない。
してみれば、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用し、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
そして、本件特許発明1は、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2ないし5もまた、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立理由5についてのまとめ
上記(1)及び(2)のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、申立理由5によっては取り消すことができない。

6 申立理由6について
特許異議申立人は、申立理由6として、公知技術に基づいて新規性がない旨主張しているが、特許異議申立書においては、特許法第29条第1項各号に掲げる発明(引用発明)に相当する公知技術を特定していない。そこで、異議申立書の「(4)具体的理由」の「ク 公知技術による新規性なしについて(特許法第29条第1項3号)」における主張全体を勘案し、そこに公知技術として提示されている甲19に記載されている発明(甲19発明)を上記引用発明として認定して、以下、対比判断する。

(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲19発明とを対比する。
甲19発明のポリメタクリル酸メチルは、本件特許発明の「熱可塑性樹脂」に相当する。
してみると、両者は、
「熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点6-1>
略球状樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「真球度が0.90?1.00」と特定するのに対し、甲19発明は、この点を特定しない点。
<相違点6-2>
略球状樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「光散乱指数が0.5?1.0」と特定するのに対し、甲19発明は、この点を特定しない点。
<相違点6-3>
略球状樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「アマニ油吸油量が30?150mL/100g」と特定するのに対し、甲19発明は、この点を特定しない点。
<相違点6-4>
略球状樹脂粒子を構成する熱可塑性樹脂に関し、本件特許発明1は、「ポリブチレンサクシネート及びポリヒドロキシアルカノエートからなる群より選ばれた少なくとも1種」と特定するのに対し、甲19発明は「ポリメタクリル酸メチル」である点。

そして、事案に鑑み、<相違点6-4>から検討するに、<相違点6-4>は実質的な相違点であるから、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲19発明であるとはいえない。

(2)本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用し、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
そして、本件特許発明1は、甲19発明であるとはいえないから、本件特許発明2ないし5もまた、甲19発明であるとはいえない。

(3)申立理由6についてのまとめ
上記(1)及び(2)のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、申立理由6によっては取り消すことができない。

7 申立理由7-1及び申立理由7-2について
特許異議申立人は、申立理由7として、公知技術に基づいて新規性及び進歩性の要件を充足しない旨主張しているが、特許異議申立書においては、特許法第29条第1項各号及び同条第2項に掲げる発明(引用発明)に相当する引用発明に相当する公知技術を特定していない。そこで、特許異議申立書の「(4)具体的理由」の「ケ 特許法第29条第1項第3号及び第2項(新規性及び進歩性なし)並びに特許法第36条第6項第1号及び第4項第1号(サポート要件及び実施可能要件違反)」における主張全体を勘案し、そこに公知技術として提示されている甲20又は甲21に記載されている発明(甲20発明又は甲21発明)を上記引用発明として認定して、以下、対比判断する。

(1)本件特許発明1と甲20発明との対比・判断
本件特許発明1と甲20発明とを対比する。
甲20発明の「樹脂」からなる「球状粉体」は、本件特許発明1の「略球状」「樹脂」「粒子」に相当する。
してみると、両者は、
「略球状樹脂粒子」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点7-1>
略球状樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「真球度が0.90?1.00」と特定するのに対し、甲20発明は、この点を特定しない点。
<相違点7-2>
略球状樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「光散乱指数が0.5?1.0」と特定するのに対し、甲20発明は、この点を特定しない点。
<相違点7-3>
略球状樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「アマニ油吸油量が30?150mL/100g」と特定するのに対し、甲20発明は、この点を特定しない点。
<相違点7-4>
略球状樹脂粒子を構成する樹脂に関し、本件特許発明1は、「ポリブチレンサクシネート及びポリヒドロキシアルカノエートからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂」と特定するのに対し、甲20発明は、この点を特定しない点。

そして、事案に鑑み、<相違点7-2>から検討するに、甲20発明の樹脂からなる球状粉末の「光散乱指数」の数値については、甲20あるいは他の証拠の記載を見ても明らかではない。
したがって、上記<相違点7-2>は実質的な相違点である。
そして、甲20発明に、いずれの提示された証拠の記載事項を組み合わせたとしても、「光散乱指数が0.5?1.0」という事項を導くことはできないし、光散乱指数を評価指標として採用し、しかもその数値範囲を0.5?1.0に特定する動機付けもない。

そして、特許異議申立書において、特許異議申立人が「光散乱指数」についての証拠として提示した甲8?10を見ても、ファンデーション用粉体や白粉には光を乱反射する機能(ソフトフォーカス効果)が求められることは記載されているが、いずれの証拠においても粒子の光散乱指数を0.5?1.0の範囲内とすることについては特定されていない。その結果、甲20発明に、いずれの証拠の記載事項を組み合わせたとしても、「光散乱指数が0.5?1.0」という事項を導くことはできない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲20発明であるとはいえないし、甲20発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件特許発明1と甲21発明との対比・判断
本件特許発明1と甲21発明とを対比する。
甲21の記載事項2及び3から、-45度からの入射光に対して、+45度における反射光強度を100とした場合の、0度におけるそれぞれの反射光強度の比率(反射光強度比)の値に記載されており、この値から光拡散指数(+45度における反射光強度を1とした場合の、0度におけるそれぞれの反射光強度の比率)を計算すると、本件特許発明1の「光散乱指数」の数値範囲を満足する。
したがって、両者は、
「光散乱指数が0.5?1.0である樹脂粒子」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点7-5>
樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「真球度が0.90?1.00」と特定するのに対し、甲21発明は、この点を特定しない点。
<相違点7-6>
樹脂粒子に関し、本件特許発明1は、「アマニ油吸油量が30?150mL/100g」と特定するのに対し、甲21発明は、この点を特定しない点。
<相違点7-7>
樹脂粒子を構成する樹脂に関し、本件特許発明1は、「ポリブチレンサクシネート及びポリヒドロキシアルカノエートからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂」と特定するのに対し、甲21発明は、この点を特定しない点。
<相違点7-8>
樹脂粒子の形状に関し、本件特許発明1は「略球状」と特定するのに対し、甲21発明は、この点を特定しない点。

そして、事案に鑑み、<相違点7-7>から検討する。
まず、上記<相違点7-7>は実質的な相違点である。
そして、甲21発明は、樹脂粒子を構成する材質として、メタクリル酸メチル、エチレングリコールジメタクリレート、2、2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、カプロラクトンEO変性リン酸ジメタクリレートからなる単量体溶液を重合してなる樹脂を必須の構成としたものであるから、たとえ他の証拠において樹脂粒子の材質として「ポリブチレンサクシネート及びポリヒドロキシアルカノエートからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂」が公知であったとしても、甲21発明の樹脂粒子の材質を「ポリブチレンサクシネート及びポリヒドロキシアルカノエートからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂」に置き換える動機付けがなく、当業者が容易になし得るものとはいえない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲21発明であるとはいえないし、甲21発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用し、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
してみれば、本件特許発明1は、甲20発明又は甲21発明であるとはいえないから、本件特許発明2ないし5もまた、甲20発明であるとはいえない。また、本件特許発明1は、甲20発明又は甲21発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2ないし5もまた、甲20発明又は甲21発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)申立理由7-1及び7-2についてのまとめ
上記(1)ないし(3)のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、申立理由7-1及び7-2によっては取り消すことができない。


8 申立理由7-3、8及び9-1(サポート要件)について
申立理由7-3、8及び9-1について、まとめて検討する。
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第2のとおりである。

(3)発明の詳細な説明の記載
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、真球度が高くかつ光学特性、及び配合時のハンドリング特性に優れた熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子及びその用途に関する。」

・「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1?7の製法で作られる従来の熱可塑性樹脂粒子は、得られる粒子が球形状ではない、粒子径が細かくならない、粒度分布が広い、場合によっては繊維状のものを含む等の課題を抱えている。中でも触感、質感を重視する化粧品分野、レオロジー制御が重要になる塗料分野等では、従来の熱可塑性樹脂粒子は、現状のままでは、微粒子添加による効果を十分発揮していなかった。
特に、熱可塑性を有した生分解性の樹脂は、柔らかすぎたり、粘りが強すぎたりする。そのために一般的な機械粉砕にて粉体を製造しようとした場合、
(1)微細な粉体にすることが困難である
(2)脆すぎるために得られる粉体は大粒径のものから微小な粒径のものまでが混在してしまう
(3)使用中に更に微粉化してしまうために研磨効果が持続しない
ことがあった。
【0007】
加えて、特許文献1では、この技術を用いることにより粉体を製造することは可能になるものの、微細な粉体を製造することは依然として困難である。また、液体窒素のような冷媒を取り扱うための複雑な設備が必要になったり、工程が追加されるために生産に要する時間が大幅に長くなったりしてしまい、生産性が極度に悪化してしまう。
また、特許文献2?4では、溶解や析出、乾燥といった多段階の工程を要するために生産性が悪いだけではなく、不純物を含んだ廃溶媒が多量に発生する。この廃溶媒は、排出すると環境に悪影響を与えてしまう可能性が高く、また、再利用するための不純物を取り除く処理には多大な労力が必要になる。加えて、この処理の際にも環境に悪影響を与える恐れのある物質が生成してしまう可能性が高い。また、得られる粉体中には必ず微量の溶媒が残ってしまい、この残留溶媒が最終製品の品質に悪影響を及ぼす恐れもある。
【0008】
特に、特許文献4では、ポリ乳酸系樹脂をベンゼンに溶解させ、次いでm-キシレンを60℃未満で混合してポリ乳酸系樹脂の粉末を析出させているため、大量の有機溶媒が必要となるだけでなく、有機溶媒の樹脂中への残存が懸念される。更には、球形の粒子が得られた場合でも、例えば化粧品分野や塗料分野等での使用においては、特に光学特性が充分に発揮されないことが懸念される。
特許文献8では、表面平滑な微粒子が得られるものの、真球度と光散乱指数が十分に優れたものは得られなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者等は、樹脂粒子の真球度と光散乱特性とアマニ油吸油量を特定の範囲とすることで、上記の課題を解決可能であることを見出し、本発明に至った。また、この樹脂粒子は、熱可塑性樹脂粒子を乳化・分散させるための溶媒として、常温での樹脂の溶解性は低いが、高温での樹脂の溶解性が高い、特定の構造の安全性の高いアルコール溶媒を用いることにより作製可能であることを見出し、本発明に至った。
【0010】
かくして本発明によれば、真球度が0.90?1.00、かつ光散乱指数が0.5?1.0、かつアマニ油吸油量が30?150mL/100gであり、ポリブチレンサクシネート及びポリヒドロキシアルカノエートからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子が提供される。
また、上記熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子を配合した化粧料が提供される。
更に、上記熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子を配合したコーティング材料が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い光散乱性を有する略球状の熱可塑性樹脂粒子を提供できる。また、本発明によれば、この樹脂粒子を簡便に作製可能な製造方法を提供できる。
以下のいずれかの場合、より高い光散乱性を有する略球状の熱可塑性樹脂粒子を提供できる。
(1)熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂である。
(2)熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエート、ナイロン12、ナイロン6及びポリカプロラクタムからなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂である。
(3)熱可塑性樹脂が、生分解性を有し、かつポリエステル系樹脂及びポリエーテル系樹脂、からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂である。」

・「【0013】
(熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子:以下、略球状粒子ともいう)
(1)諸物性
略球状粒子は、0.90?1.00の真球度、0.5?1.0の光散乱指数、30?150mL/100gのアマニ油吸油量を有する。真球度及び光散乱指数及びアマニ油吸油量の測定法は、実施例の欄に記載する。
真球度が0.90未満の場合、化粧料等に配合した際に、流動性が低下し、触感や滑り性が悪くなることがある。好ましい真球度は0.92?1.00であり、より好ましい真球度は0.93?1.00である。
光散乱指数が0.5より小さい場合、十分な光散乱性を示さず、化粧料等に配合した場合にはソフトフォーカス特性に劣ることがある。好ましい光散乱指数は0.55?1.0であり、より好ましい光散乱指数は0.6?1.0である。
【0014】
また、アマニ油吸油量が上記範囲であることで、略球状粒子を含む製品を製造する際に、略球状粒子の配合時のハンドリング特性を良好とすることができる。30mL/100g未満の場合、化粧料等に配合した際に化粧崩れをおこしやすく、化粧もちが悪くなる場合がある。アマニ油吸油量が150mL/100gより大きい場合、他の成分が吸収されてしまい、流動性が低下するため、ハンドリング性が悪化することがある。より好ましいアマニ油吸油量は30?145mL/100gである。
【0015】
更に、略球状粒子は、1?500μmの体積平均粒子径を有することが好ましい。略球状粒子は用途に応じて様々な粒子径を使用することができる。例えば、ファンデーション用途の場合は3?20μm、スクラブ剤の場合は、200?500μm、塗料用途の場合は3?100μm等、用途に応じて適宜選択することができる。平均粒子径の測定法は、実施例の欄に記載する。
【0016】
(2)熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂は、特に限定されない。例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルのエステル成分は、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクタム等が挙げられる。ポリヒドロキシアルカノエートの中でも好ましいのは、一般式(1)[-CH(R)-CH2CO-O-](ただし、式中Rは-CnH2n+1で表されるアルキル基であり、nは1?15の整数)で示される繰り返し単位からなるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)重合体又は共重合体である。より具体的には、3-ヒドロキシブチレートと、3-ヒドロキシプロピオネート、3-ヒドロキシバレレート、3-ヒドロキシヘキサノエート、3-ヒドロキシヘプタノエート、3-ヒドロキシオクタノエート、3-ヒドロキシナノエート、3-ヒドロキシデカノエート、3-ヒドロキシテトラデカノエート、3-ヒドロキシヘキサデカノエート、3-ヒドロキシオクタデカノエート、4-ヒドロキシブチレート、4-ヒドロキシバレレート、5-ヒドロキシバレレート、6-ヒドロキシヘキサノエートからなる群から選ばれる、少なくとも1種のモノマーとのコポリマーを使用できる。具体的な(3-ヒドロキシアルカノエート)重合体または共重合体としては、前記3-ヒドロキシアルカノエートのホモポリマー、又はnの異なる2種以上の3-ヒドロキシアルカノエートからなる共重合体、前記ホモポリマー及び前記共重合体の群より選ばれる2種以上をブレンドした混合体が挙げられる。なかでも、n=1の3-ヒドロキシブチレート繰り返し単位、n=2の3-ヒドロキシバレレート繰り返し単位、n=3の3-ヒドロキシヘキサノエート繰り返し単位、n=5の3-ヒドロキシオクタノエート繰り返し単位、n=15の3-ヒドロキシオクタデカノエート繰り返し単位からなる群より構成されるホモポリマー、共重合体及び混合物が好ましく、3-ヒドロキシブチレート繰り返し単位と、3-ヒドロキシバレレート、3-ヒドロキシヘキサノエート、及び3-ヒドロキシオクタノエートからなる群より選ばれる少なくとも1つの繰り返し単位とからなる共重合体がより好ましい。最も好ましくは、3-ヒドロキシブチレート繰り返し単位と3-ヒドロキシヘキサノエート単位の共重合体であるポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)である。より具体的には、カネカ社製製品名アオニレックスシリーズが挙げられる。ポリエーテル系樹脂としては、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としては、ナイロン12、ナイロン6等が挙げられる。
これら例示樹脂は、1種のみで使用してもよく、複数種混合して使用してもよい。なお、熱可塑性樹脂の分子量は特に限定されない。最終的な用途・目的に応じて適宜選択することができる。
【0017】
本発明の製造方法は、一般に粒子化が困難である生分解性を有し、かつポリエステル系樹脂及びポリエーテル系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂にも適用できる。そのような樹脂としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクトン等のポリエステル系樹脂が挙げられる。
【0018】
熱可塑性樹脂は、以下の製造方法の欄に記載する特定溶媒に対して、高温で溶解又は可塑化するが、常温では溶解しない樹脂であることが好ましい。この性質を有する樹脂は、特定の真球度及び光散乱指数の略球状粒子を簡便に提供できるという効果を奏する。
【0019】
(3)その他成分
略球状粒子は、必要に応じて、公知の流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料(例えば、体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料等)、染料等を含んでいてもよい。
【0020】
(4)用途
略球状粒子は、ファンデーション、制汗剤、スクラブ剤等の化粧品用の配合剤、塗料用艶消し剤、レオロジー改質剤、ブロッキング防止剤、滑り性付与剤、光拡散剤、ファインセラミックス焼結成形用助剤、接着剤用充填剤、医療用診断検査剤等の各種剤、自動車材料、建築材料等の成形品への添加剤等の用途で使用できる。
【0021】
(熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子の製造方法)
略球状粒子は、
(1)熱可塑性樹脂を、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び/又は3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート(アルコキシ基の炭素数は1?5個)を含む溶媒、水、分散安定剤の存在下、前記熱可塑性樹脂を100℃以上の温度で乳化・分散する工程(乳化・分散工程)、
(2)その後冷却することで熱可塑性樹脂を粒子として得る工程(冷却工程)
を経ることで得ることができる。
【0022】
上記製造方法によれば、通常熱可塑性樹脂の微粒子化法でよく用いられる皮膚刺激性のある有機溶媒(例えば、キシレン、トルエン、n-メチルピロリドン、クロロホルム、塩化メチレン、ジオキソラン、THF等)を用いることなく、安全性の高いアルコール溶媒を使用しており、球状で、小粒子径で、狭粒度分布で、光学特性に優れた熱可塑性樹脂粒子を製造できる。また、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び/又は3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテートは、生分解性を有し、かつ低皮膚刺激性であるため、化粧品のような用途で用いる際の残留による悪影響を抑制できる。更に、本発明の製造方法は、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)等の結晶性を有する生分解性の熱可塑性樹脂を湿式で球状化する方法への使用に有用である。加えて、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び/又は3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテートは、高温で熱可塑性樹脂を溶解又は可塑化するが、常温では熱可塑性樹脂を溶解しないので、これらアルコール系溶媒を容易に再利用でき、工業的に有利である。
この製造方法により得られた略球状粒子は、他の製造方法により得られた粒子に比べ、光学特性(ソフトフォーカス効果)及び吸油特性に優れるという効果を奏する。
【0023】
(a)乳化・分散工程
(i)溶媒
溶媒は、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び/又は3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート(以下、特定溶媒とも称する)を含む。特定溶媒が溶媒中に占める割合は、50重量%以上が好ましく。70重量%以上がより好ましく、100重量%であることが更に好ましい。特定溶媒以外の使用可能溶媒としては、メタノール、エタノール等の低級アルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル系溶剤が挙げられる。特定溶媒としては、クラレ社製からソルフィットの商品名で市販されている溶媒も使用できる。また、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノールは、例えば、国際公開WO2013/146370号に記載の方法により製造できる。
【0024】
ここで、特定溶媒中のアルコキシ基の炭素数は1?5個である。アルコキシ基の炭素数が5より大きい場合、溶解性が悪化することがある。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基が挙げられる。プロポキシ基、ブトキシ基及びペンチルオキシ基には、直鎖状だけではなく、取り得る構造異性体も含まれる。好ましいアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基である。
溶媒の使用量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、100?1200重量部であることが好ましい。使用量が100重量部未満の場合、熱可塑性樹脂の濃度が高すぎて充分に撹拌混合することが難しいことがある。1200重量部より多い場合、装置の大きさに比して生産量が少なくなることがある。より好ましい使用量は100?800重量部であり、更に好ましい使用量は100?400重量部である。
【0025】
(ii)分散安定剤
分散安定剤としては、疎水化処理した無機微粒子が好適に使用できる。具体例としては、疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製;商品名AEROSIL(R:登録商標)R972、AEROSIL(R)R974、AEROSIL(R)R976S、AEROSIL(R)R104、AEROSIL(R)R106、AEROSIL(R)R202、AEROSIL(R)R805、AEROSIL(R)R812、AEROSIL(R)R812S、AEROSIL(R)R816、AEROSIL(R)R7200、AEROSIL(R)R8200、AEROSIL(R)R9200、AEROSIL(R)R711、AEROSIL(R)RY50、AEROSIL(R)NY50、AEROSIL(R)RY200、AEROSIL(R)RY200S、AEROSIL(R)RX50、AEROSIL(R)NAX50、AEROSIL(R)RX200、AEROSIL(R)RX300、AEROSIL(R)R504)、疎水性アルミナ(日本アエロジル社製;商品名AEROXIDO(R)AluC)、疎水性酸化チタン(日本アエロジル社製;商品名AEROXIDE(R)TiO2T805:チタン工業社製;商品名超微粒子酸化チタンSTシリーズ、ST-455、STV-455、ST-557SA、ST-457EC、ST-457EC、ST-605EC:堺化学工業社製;商品名超微粒子酸化チタンSTRシリーズ、STR-100C-LP、STR-60c-LP、STR-100W-LP、STR-100C-LF)等が挙げられる。
また、分散安定剤として、第三リン酸カルシウム(太平化学産業社製;商品名TCP-10U等)、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸亜鉛等のピロリン酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、コロイダルシリカ(日産化学社製:商品名スノーテックスシリーズスノーテックス40、スノーテックスS、スノーテックスXS等)等の親水性の難水溶性無機化合物等を用いることもできる。
上記の中でも、目的とする樹脂粒子を安定して得ることができるという点において、第三リン酸カルシウム、コロイダルシリカが特に好ましい。
分散安定剤の熱可塑性樹脂に対する添加量は、0.5?15重量%が好ましい。
【0026】
また、本発明の方法では、上記の分散安定剤に加えて、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤を併用することも可能である。
アニオン性界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等がある。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン-オキシプロピレンブロックポリマー等がある。カチオン性界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等がある。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド等がある。
界面活性剤の添加量は、水に対して0.01?0.5重量%が好ましい。
これら分散安定剤や界面活性剤は、得られる樹脂粒子の粒子径及び分散安定性を考慮して、それらの選択や組合せ、使用量等を適宜調整して使用される。
【0027】
(iii)水の使用量
水の使用量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、100?2200重量部であることが好ましい。使用量が100重量部未満の場合、熱可塑性樹脂の濃度が濃すぎて十分に撹拌混合することが難しいことがある。2200重量部より多い場合は、装置の大きさに比して生産量が少なくなることがある。より好ましい使用量は150?1000重量部であり、更に好ましい使用量は200?800重量部である。
【0028】
(iv)加熱撹拌
加熱撹拌は、100℃以上の加熱温度下で行われる。加熱温度が、100℃未満の場合、熱可塑性樹脂が軟化せず、微粒子化できないことがある。加熱撹拌は、180℃以下の温度で行うことができる。
本製造方法で得られる略球状粒子は、粒子径分布の小さな粒子になるが、これは、エマルション形成の段階において、非常に均一なエマルションが得られるからである。このため、エマルションを形成させるに十分な剪断力を得るためには、公知の方法による撹拌を用いれば十分であり、撹拌羽根による液相撹拌法、ホモジナイザーによる混合法、超音波照射法等の通常公知の方法で混合することができる。
撹拌の速度及び時間は、熱可塑性樹脂が溶媒に溶解又は溶媒中に均一に分散できさえすれば特に限定されず、適宜選択するのが好ましい。
加熱撹拌は、通常、大気圧下で行われるが、必要に応じて、減圧下又は加圧下で行ってもよい。
【0029】
(b)冷却工程
熱可塑性樹脂を粒子として析出させるために、熱可塑性樹脂を含む溶媒は、加熱撹拌後、冷却される。冷却温度は、通常、常温(約25℃)である。加熱撹拌時の温度から冷却温度に達する時間はできるだけ早いことが好ましい。また、冷却は、撹拌しつつ行うことが好ましい。撹拌速度は、加熱撹拌の撹拌速度と同様の範囲とすることができる。
冷却後の溶媒中の略球状粒子は、必要に応じて、ろ過、脱水、乾燥を経て、溶媒から取り出されてもよい。ろ過、脱水、乾燥は、特に限定されず、公知の方法により行うことができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。まず、実施例及び比較例中の測定方法及び評価方法について説明する。
なお、下記の実施例10は参考例である。
【0031】
(真球度の測定)
フロー式粒子像分析装置(商品名「FPIA(登録商標)-3000S」、シスメックス社製)を用いて測定する。
具体的な測定方法としては、イオン交換水20mLに、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩0.05gを加えて界面活性剤水溶液を得る。その後、上記界面活性剤水溶液に、測定対象の樹脂粒子群0.2gを加え、分散機としてBRANSON社製の超音波分散機「BRANSONSONIFIER450」(出力400W、周波数20kHz)を用いて超音波を5分間照射して、樹脂粒子群を界面活性剤水溶液中に分散させる分散処理を行い、測定用の分散液を得る。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した上記フロー式粒子像分析装置を用い、上記フロー式粒子像分析装置に使用するシース液としては、パーティクルシース(商品名「PSE-900A」、シスメックス社製)を使用する。上記手順に従い調整した測定用の分散液を上記フロー式粒子像分析装置に導入し、下記測定条件にて測定する。
【0032】
測定モード:HPF測定モード
粒子径の測定範囲:2.954μm?30.45μm
粒子の真球度の測定範囲:0.5?1.0
粒子の測定個数:1000個
測定にあたっては、測定開始前に標準ポリマー粒子群の懸濁液(例えば、Thermo FisherScientific社製の「5200A」(標準ポリスチレン粒子群をイオン交換水で希釈したもの))を用いて上記フロー式粒子像分析装置の自動焦点調整を行う。なお、真球度は、樹脂粒子を撮像した画像と同じ投影面積を有する真円の直径から算出した周囲長を、樹脂粒子を撮像した画像の周囲長で除した値である。
【0033】
(体積平均粒子径及び変動係数(CV値)の測定)
・コールターカウンター法
樹脂粒子の体積平均粒子径は、コールターMultisizerTM3(ベックマン・コールター社製測定装置)により測定する。測定は、ベックマン・コールター社発行のMultisizerTM3ユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを用いて実施するものとする。
【0034】
なお、測定に用いるアパチャーは、測定する樹脂粒子の大きさによって、適宜選択する。測定する樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が1μm以上10μm以下の場合は50μmのサイズを有するアパチャーを選択し、測定する樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が10μmより大きく30μm以下の場合は100μmのサイズのアパチャーを選択し、樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が30μmより大きく90μm以下の場合は280μmのサイズを有するアパチャーを選択し、樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が90μmより大きく150μm以下の場合は400μmのサイズを有するアパチャーを選択する等、適宜行う。測定後の体積平均粒子径が想定の体積平均粒子径と異なった場合は、適正なサイズを有するアパチャーに変更して、再度測定を行う。
Current(アパチャー電流)及びGain(ゲイン)は、選択したアパチャーのサイズによって、適宜設定する。例えば、50μmサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は-800、Gain(ゲイン)は4と設定し、100μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は-1600、Gain(ゲイン)は2と設定し、280μm及び400μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は-3200、Gain(ゲイン)は1と設定する。
【0035】
測定用試料としては、樹脂粒子0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10mL中にタッチミキサー(ヤマト科学社製、「TOUCHMIXERMT-31」)及び超音波洗浄器(ヴェルヴォクリーア社製、「ULTRASONICCLEANERVS-150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用する。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、樹脂粒子を10万個測定した時点で測定を終了する。樹脂粒子の体積平均粒子径は、10万個の樹脂粒子の体積基準の粒度分布における算術平均である。
樹脂粒子の粒子径の変動係数(CV値)を、以下の数式によって算出する。
樹脂粒子の粒子径の変動係数=(樹脂粒子の体積基準の粒度分布の標準偏差÷樹脂粒子の体積平均粒子径)×100
【0036】
(アマニ油吸油量の測定)
樹脂粒子のアマニ油吸油量は、JISK5101-13-2-2004の測定方法を参考にして、煮アマニ油に代えて精製アマニ油を使用し、終点の判断基準を変更した(「測定板を垂直に立てた時にペースト(樹脂粒子及び生成アマニ油の混錬物)が流動を始める」点に変更した)方法によって、測定する。アマニ油吸油量の測定の詳細は、以下の通りである。
(A)装置及び器具
測定板:300×400×5mmより大きい平滑なガラス板
パレットナイフ(ヘラ):鋼製又はステンレス製の刃を持った柄つきのもの
化学はかり(計量器):10mgオーダーまで計れるもの
ビュレット:JISR3505:1994に規定する容量10mLのもの
(B)試薬
精製アマニ油:ISO150:1980に規定するもの(今回は一級アマニ油(和光純薬工業社製)を用いる)
【0037】
(C)測定方法
(1)樹脂粒子1gを測定板上の中央部に取り、精製アマニ油をビュレットから一回に4、5滴ずつ、徐々に樹脂粒子の中央に滴下し、その都度、樹脂粒子及び精製アマニ油の全体をパレットナイフで充分練り合わせる。
(2)上記の滴下及び練り合わせを繰り返し、樹脂粒子及び精製アマニ油の全体が固いパテ状の塊になったら1滴ごとに練り合わせて、精製アマニ油の最後の1滴の滴下によりペースト(樹脂粒子及び精製アマニ油の混練物)が急激に軟らかくなり、流動を始める点を終点とする。
(3)流動の判定
精製アマニ油の最後の1滴の滴下により、ペーストが急激に軟らかくなり、測定板を垂直に立てた時にペーストが動いた場合に、ペーストが流動していると判定する。測定板を垂直に立てた時もペーストが動かない場合には、更に精製アマニ油を1滴加える。
(4)終点に達したときの精製アマニ油の消費量をビュレット内の液量の減少分として読み取る。
(5)1回の測定時間は7?15分以内に終了するように実施し、測定時間が15分を超えた場合は再測定し、規定の時間内で測定を終了した時の数値を採用する。
【0038】
(D)アマニ油吸油量の計算
下記式により試料100g当たりのアマニ油吸油量を計算する。
O=(V/m)×100
ここで、O:アマニ油吸油量(mL/100g)、m:樹脂粒子の重量(g)、V:消費した精製アマニ油の容量(mL)
【0039】
(光散乱指数の測定)
(i)反射光度分布の測定
以下に示す方法により、樹脂粒子の表面で反射した光の拡散性を評価する。
樹脂粒子の反射光度分布を、三次元光度計(村上色彩研究所社製のゴニオフォトメーターGP-200)を用い、室温20℃、相対湿度65%の環境下で測定する。
【0040】
具体的には、
(1)図1に示すように、厚み2mmの黒色ABS樹脂板(タキロン社製)4の中心に、2cm角の正方形にカットした両面テープ(日東電工製ORT-1)3を貼る。
(2)次いで、前記黒色ABS樹脂板4の黒色部分上の両面テープ3の粘着面に、樹脂粒子2を見かけ密度測定器の漏斗及び漏斗台(JISK5101-12-1-2004)を用いて落としてから、その粘着面上の余分な樹脂粒子2を0.05?0.1MPaの圧縮空気で吹き飛ばす。
(3)前記黒色ABS樹脂板4を平坦なガラス板の上に載せ、別の平坦な5cm角の正方形の250gのガラス板を樹脂粒子2の点着面に載せ、樹脂粒子2に荷重を加えて1分間静置する。その後、再び、前記粘着面上の余分な樹脂粒子を圧縮空気で吹き飛ばす。
(4)(2)及び(3)の操作を3回繰り返した試験片を反射光度分布測定用の試験片1とする。そして、得られた試験片1の反射光を次のようにして測定する。図1に示すように、試験片1(樹脂粒子2)の法線(0°)に対して-45°の角度で、ハロゲンランプを光源とした光5を試験片1(樹脂粒子2)に入射させ、反射した反射光6の反射角-90°?+90°における光度分布を三次元光度計により測定する。測定に際しては全ての入射光が試験片1の黒色部分に入射するように試験片1の位置を調整する。なお、反射光検出は分光感度185?850nm、最高感度波長530nmの光電子増倍管により検出する。
【0041】
(ii)+45°の反射光強度100に対する0°の反射光強度の算出
前記反射光度分布の測定により得られた反射角0°、+45°における反射光強度データ(ピーク光度データ)から、反射角+45°の反射光強度(ピーク光度)を100としたときの、反射角0°における反射光強度(ピーク光度)を求める。反射角+45°(正反射方向)の反射光強度を100としたとき、反射角0°の反射光強度が100に近づくほど、化粧料に配合したときのソフトフォーカス効果が大きくなる。光散乱指数は下記式により算出する。
光散乱指数=(0°の散乱光強度)/(45°の散乱光強度)
より1に近い値を示すほど、角度依存性のない高い光散乱特性を示すといえる。
【0042】
(実施例1)
300mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R)品番:FZ71PD)を20g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製ソルフィットファイングレード)60g、イオン交換水100g、分散剤として10%第三リン酸カルシウム水溶液(太平化学産業社製TCP-10U)20g、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.24gを投入し、反応温度(加熱撹拌温度)120℃、撹拌回転数400rpmにて90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。
【0043】
(実施例2)
300mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R)品番:FZ71PD)を20g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製ソルフィットファイングレード)60g、イオン交換水120g、分散剤として疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製AEROSIL(R)R972)1.5gを分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度120℃、撹拌回転数400rpmで90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。
【0044】
(実施例3)
300mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R)品番:FZ71PD)を40g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製ソルフィットファイングレード)60g、イオン交換水100g、分散剤として疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製AEROSIL(R)R972)3gを分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度120℃、撹拌回転数400rpmで90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。
【0045】
(実施例4)
300mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R)品番:FZ71PD)を20g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製ソルフィットファイングレード)60g、イオン交換水120g、界面活性剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェノルエーテル(第一工業製薬社製製品名;ノイゲンEA-167)を0.12g、分散剤として、疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製AEROSIL(R)R972)1.5gを分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度120℃、撹拌回転数400rpmで90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。
【0046】
(実施例5)
1500mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R)品番:FZ71PD)を120g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製ソルフィットファイングレード)360g、イオン交換水720g、分散剤として疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製AEROSIL(R)R972)を6g分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度120℃、撹拌回転数400rpmで90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。
【0047】
(実施例6)
1500mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R)品番:FZ71PD)を240g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製ソルフィットファイングレード)420g、イオン交換水540g、分散剤として疎水性シリカ(日本アエロジル社製AEROSIL(R)R972)を18g分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度120℃、撹拌回転数600rpmで90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。
【0048】
(実施例7)
1500mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R)品番:FZ91PD)を240g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製ソルフィットファイングレード)480g、イオン交換水480g、分散剤として疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製AEROSIL(R)R972)を18g分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度120℃、撹拌回転数600rpmで90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。
【0049】
(実施例8)
1500mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R)品番:FZ71PD)を240g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製ソルフィットファイングレード)480g、イオン交換水480g、分散剤として疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製AEROSIL(R)R976S)を12g分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度120℃、撹拌回転数600rpmで90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。
【0050】
(実施例9)
1500mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R)品番:FZ71PD)を240g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製ソルフィットファイングレード)480g、イオン交換水240g、分散剤として10%第三リン酸カルシウム水溶液(太平化学産業社製TCP-10U)240g、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.48gを投入し、反応温度(加熱撹拌温度)120℃、撹拌回転数600rpmにて90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。
【0051】
(実施例10)
1500mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリ乳酸(ユニチカ社製テラマック(R)品番:TE-2500)を240g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製ソルフィットファイングレード)480g、イオン交換水480g、分散剤として疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製AEROSIL(R)R972)を18g分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度140℃、撹拌回転数600rpmで90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付することで略球状粒子を得た。
【0052】
(実施例11)
1500mLオートクレーブに熱可塑性樹脂として3-ヒドロキシブチレート/3-ヒドロキシヘキサノエートの共重合体(カネカ社製カネカバイオポリマーアオニレックス(R)品番:X131A)を240g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製ソルフィットファイングレード)480g、イオン交換水480g、分散剤として疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製AEROSIL(R)974)を24g分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度130℃、撹拌回転数600rpmで90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付することで略球状粒子を得た。
【0053】
(比較例1)
アイカ工業社製ガンツパールGMX-0810を用いて各種測定を行った。
【0054】
(比較例2)
300mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R)品番:FZ71PD)を20g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製ソルフィットファイングレード)60g、イオン交換水120g、分散剤として疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製AEROSIL(R)R972)1.5gを分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度90℃、撹拌回転数400rpmで90分撹拌した。
その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出したところ、ペレット形状のまま残っており、微粒子化することができなかった。
実施例で得られた略球状粒子の各種物性を下記表に示す。
【0055】
【表1】


【0056】
実施例で得られた略球状粒子は、特定溶媒を使用しかつ、加熱撹拌温度が熱可塑性樹脂を100℃以上の温度で加熱撹拌し、その後冷却することで得られているため、球状であり、小粒子径であり、狭粒度分布であり、高い光散乱性を有することが分かる。」

(4)検討
以下、上記(1)の判断基準に基づいて検討する。
発明の詳細な説明の段落【0006】ないし【0011】によると、本件特許発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「高い光散乱性を有する略球状の熱可塑性樹脂粒子を提供」することである。 発明の詳細な説明の段落【0010】、【0011】、【0013】ないし【0020】の記載から、当業者は「真球度が0.90?1.00、かつ光散乱指数が0.5?1.0」という構成を有する粒子は上記課題を解決できると認識でき、実際に、【0030】ないし【0056】には、実施例として「真球度が0.90?1.00、かつ光散乱指数が0.5?1.0」である略球状樹脂粒子が記載されている。
そして、請求項1及び請求項1を引用する請求項2?5には、「真球度が0.90?1.00、かつ光散乱指数が0.5?1.0」という構成が特定されているから、当業者は、当該構成を含む本件特許発明は、上記発明の課題を解決できると認識できる。

(5)特許異議申立人の主張について
特許異議申立書における特許異議申立人の主張について、以下検討する。

ア 申立理由7-3(特許異議申立書の3(4)ケ)について
特許異議申立人は、「本件特許発明1では、実施例で現に得られた樹脂粒子に基づく物性等を請求項において数値限定しているにもかかわらず、特に、光散乱指数に重大な影響を及ぼす構成の有無を規定することなく、本件特許発明1の光散乱指数の数値を限定していることから、本件特許発明は発明の詳細な説明に記載されたものではなく」と主張する。
しかしながら、サポート要件の判断は、上記(1)に記載したように、特許請求の範囲の記載と、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲との関係に基づいて判断するものであり、物の発明である本件特許発明1において、課題解決手段である光散乱指数の範囲を特定しているため、その光散乱指数に重大な影響を及ぼす構成の有無によって、サポート要件の判断は左右されるものではない。
したがって、特許異議申立人のサポート要件に関する上記主張は採用できない。

イ 申立理由8-ア(特許異議申立書の3(4)コ)について
特許異議申立人は、「本件特許明細書では、樹脂粒子が得られるか、得られないかの条件の違いしか記載されておらず、本件特許発明の要件によって、どのように課題を解決し、本件特許発明に到達するかの詳細については、具体的に開示されていない。」と主張する。
しかしながら、実施例で得られた樹脂粒子が、所期の課題を解決するものであるし、また、その余の点については、上記サポート要件の判断において検討のとおりである。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

ウ 申立理由8-イ(特許異議申立書の3(4)サ)について
特許異議申立人は、「本件特許明細書第0031には樹脂粒子の真球度の測定方法が記載されているが、第0032段落には「粒子径の測定範囲:2.954μm?30.45μm」と記載されており、上記測定範囲外の粒子について真球度は測定されていないことから、本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された内容が、本件特許発明の範囲までサポートされていない。」と主張する。
しかしながら、サポート要件の判断は、上記(4)での検討のとおりである。そして、本件特許明細書における実施例では、上記測定範囲内の粒子について発明の課題を解決できることを確認できる。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

エ 申立理由9(特許異議申立書の3(4)シ)について
特許異議申立人は、「「真球度が0.90?1.00、かつ光散乱指数が0.5?1.0」という要件は達成すべき結果を特定するものであり、本件特許発明1に係る発明は達成すべき結果による物の特定に相当すると認められる。
しかしながら、これらの要件を満足する樹脂粒子を得るためには、具体的にどのようにすれば、上記要件を満足するものが得られるのかは、実施例に記載されたもの以外については、具体的に記載されていない。また、これらの要件を満足しない場合ついての具体的な記載はなく、当業者がいかなる手段により課題を解決するのか理解することができない。」と主張する。
しかしながら、サポート要件の判断は、上記(4)での検討のとおりであって、実施例とその他の発明の詳細な説明に記載から、当業者は「真球度が0.90?1.00、かつ光散乱指数が0.5?1.0」という構成を有する粒子は上記課題を解決できると理解できる。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

よって、特許異議申立人の主張は、いずれも採用できない。

(6)申立理由7-3、8及び9-1(サポート要件)についてのまとめ
したがって、上記(1)ないし(5)のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、申立理由7-3、8及び9-1によっては取り消すことができない。

10 申立理由7-4及び9-2(実施可能要件)について
申立理由7-4及び9-2をまとめて検討する。
(1)実施可能要件の判断基準
物の発明の実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。

(2)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明の記載は、上記8(2)のとおりである。

(3)検討
以下、上記(1)の判断基準に基づいて検討する。
本件特許の発明の詳細な説明の段落【0009】、【0018】、【0021】ないし【0029】には、本件特許発明の略球状樹脂粒子の製造方法が記載されており、さらに、【0030】ないし【0056】には、本件特許発明の実施例が記載され、当該実施例において、真球度が高く、光散乱性に優れる熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子が製造できたことを確認している。
したがって、これらの記載を参酌すれば、当業者が過度の試行錯誤を要することなく本件特許発明1?5の物を生産し、かつ、使用できるものといえる。

(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立書における特許異議申立人の主張について、以下検討する。

ア 申立理由7-4(特許異議申立書の3 (4)ケ)について
特許異議申立人は、「本件特許発明1では、実施例で現に得られた樹脂粒子に基づく物性等を請求項において数値限定しているにもかかわらず、特に、光散乱指数に重大な影響を及ぼす構成の有無を規定することなく、本件特許発明1の光散乱指数の数値を限定していることから、・・・(省略)・・・実施可能要件をみたすものではない」と主張する。
しかしながら、実施可能要件の充足の可否を特許請求の範囲における特定事項の記載の有無をもってする特許異議申立人の主張は失当といえる。そして、実施可能要件の判断は、上記(3)での検討のとおりである。
したがって、特許異議申立人の実施可能要件に関する上記主張は採用できない。

イ 申立理由9-2(特許異議申立書の3 (4)シ)について
特許異議申立人は、「「真球度が0.90?1.00、かつ光散乱指数が0.5?1.0」という要件は達成すべき結果を特定するものであり、本件特許発明1に係る発明は達成すべき結果による物の特定に相当すると認められる。
しかしながら、これらの要件を満足する樹脂粒子を得るためには、具体的にどのようにすれば、上記要件を満足するものが得られるのかは、実施例に記載されたもの以外については、具体的に記載されていない。また、これらの要件を満足しない場合ついての具体的な記載はなく、当業者がいかなる手段により課題を解決するのか理解することができない。」と主張する。
しかしながら、実施可能要件の判断は、上記(3)での検討のとおり、本件特許明細書の記載によれば、出願時の技術常識に基づいて過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし5に係る物の発明を実施することができることは明らかである。
したがって、特許異議申立人の実施可能要件に関する上記主張は採用できない。

(5)申立理由7-4及び9-2(実施可能要件)についてのまとめ
したがって、上記(1)ないし(4)のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、申立理由7-4及び9-2によっては取り消すことができない。

第6 むすび
したがって、特許異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
異議決定日 2021-09-24 
出願番号 特願2019-109600(P2019-109600)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (C08J)
P 1 651・ 113- Y (C08J)
P 1 651・ 121- Y (C08J)
P 1 651・ 537- Y (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大村 博一  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 大畑 通隆
岩本 昌大
登録日 2020-11-13 
登録番号 特許第6794499号(P6794499)
権利者 積水化成品工業株式会社
発明の名称 熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子及びその用途  
代理人 金子 裕輔  
代理人 甲斐 伸二  
代理人 野河 信太郎  
代理人 安藤 達也  
代理人 稲本 潔  
代理人 山田 泰之  
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