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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
管理番号 1378758
異議申立番号 異議2021-700354  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-11-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-20 
確定日 2021-10-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第6771208号発明「可撓性調光シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6771208号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6771208号(以下「本件特許」という。)の請求項1、2に係る特許についての出願は、平成28年7月7日を出願日とする出願であって、令和2年10月1日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行:令和2年10月21日)がされ、その後、その特許について、令和3年4月20日に特許異議申立人小林保(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1、2に係る発明(以下「本件発明1」等という。まとめて「本件発明」ともいう。)は、特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
表面保護層及び裏面樹脂層と、その中間に感温変色性樹脂層を含んでなる光透過性積層体であって、前記光透過性積層体が布帛を含み、「表面保護層/布帛/感温変色性樹脂層/裏面樹脂層」、「表面保護層/感温変色性樹脂層/布帛/裏面樹脂層」、及び「表面保護層/感温変色性樹脂層/布帛/感温変色性樹脂層/裏面樹脂層」から選ばれた何れか1種の構成であり、少なくとも前記表面保護層が光半透過性、かつ紫外線遮蔽性で、1)白色系微粒子及び紫外線吸収剤を含む樹脂層、あるいは2)非相溶樹脂ブレンドに紫外線吸収剤を含む層であり、前記感温変色性樹脂層が、発色/消色の可逆性マイクロカプセルを含み、この可逆性マイクロカプセルが、30?40℃、41?55℃、及び56℃以上の何れかの温度帯に完全消色点を有し、前記光透過性積層体の温度が前記完全消色点に到達した時に、前記感温変色性樹脂層の消色によって前記光透過性積層体の全光線透過率(JIS K7375:2008年)が増大し、かつ、前記光透過性積層体の温度が前記完全消色点未満に降下した時に、前記感温変色性樹脂層の発色によって前記光透過性積層体の全光線透過率を減少させることを特徴とする可撓性調光シート。
【請求項2】
前記感温変色性樹脂層が発色/消色の可逆性マイクロカプセルを2種または3種含み、個々の発色/消色の可逆性マイクロカプセルの完全消色点の差が5℃以上である請求項1に記載の可撓性調光シート。」

第3 申立理由の概要
1.特許法第29条第2項に係る申立理由
本件発明1は、甲第1号証若しくは甲第2号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第1号証若しくは甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、本件発明1に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
本件発明2は、甲第1号証若しくは甲第2号証に記載された発明並びに甲第3号証?甲第6号証の何れかに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、本件発明2に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

2.特許法第36条第6項第2号に係る申立理由
本件発明1及びこれを引用する本件発明2は、以下の理由ア、イの点で明確ではないから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものであり、本件発明1、2に係る特許は、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
ア 本件発明1の「光半透過性」の「半」の意味が一義的に定まらないため、「光半透過性」が明確ではない。
イ 本件発明1の「56℃以上」は上限が定められていないため、温度の範囲が明確ではない。

3.特許法第36条第6項第1号に係る申立理由
本件発明1及びこれを引用する本件発明2は、以下の理由ウの点で発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものであり、本件発明1、2に係る特許は、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
ウ 本件発明1の「30?40℃、41?55℃、及び56℃以上の何れかの温度帯に完全消色点を有し」は、40℃を超え41℃未満と55℃を超え56℃未満が除外されているが、その臨界的意義が発明の詳細な説明に記載されていない。

4.提出された証拠
以下、甲第1号証?甲第7号証を、「甲1」?「甲7」という。
甲1:特開昭62-122750号公報
甲2:特開2000-297277号公報
甲3:特開2014-233931号公報
甲4:特開2004-98385号公報
甲5:特開平3-76783号公報
甲6:特開2003-103681号公報
甲7:新村出編、「広辞苑」、株式会社岩波書店、2008年1月11日第6版第1刷、2311頁

第4 当審の判断
1.特許法第36条第6項第2号及び同項第1号に係る申立理由について
まず、記載不備に係る申立理由について検討する。
(1)上記理由アについて
本件発明1の「少なくとも前記表面保護層が光半透過性」との事項は、表面保護層が、「光透過性」といえる程、光を透過させないことを意味するものと理解でき、本件発明1は明確である。
また、本件明細書(段落【0015】)に「全光線透過率(JIS K7375:2008年)50?85%に調整することが好ましい。」と記載され、上記理解と整合する。

(2)上記理由イについて
本件発明1の「調光シート」が、スポーツスタジアムなど大型膜構造施設の採光/ブラインド窓や、シート倉庫の採光/ブラインド窓等の屋内外用途に用いられることから(【0005】)、「可逆性マイクロカプセル」の完全消色点の上限を含む温度範囲は、「調光シート」に日射光が当たることによって上昇する範囲の温度として理解されるものである。
したがって、本件発明1は明確である。

(3)上記理由ウについて
ア 特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定される要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ そこで、本件明細書の発明の詳細な説明を参照すると、本件発明の課題は、「本発明は、スポーツスタジアムなど大型膜構造施設の採光/ブラインド窓、シート倉庫の採光/ブラインド窓、トラック幌の採光/ブラインド窓、建築養生シート、天井膜材、空間仕切りシート、シートシャッターの採光/ブラインド窓、店舗軒出しテント、ベランダ日除けシートなど屋内外用途に用いられ、気温変化によってシートの光透過性がコントロールされ、特に気温上昇に伴う日中はシートの光線透過率を最大として採光環境を整え、気温が低下する夜間には光線透過率を下げることで屋内照明の外漏れを抑止するカーテン効果を発現し、しかも耐候性及び可撓性に優れる調光シートを提供しようとするものである。」(段落【0005】)と記載されている。
この課題に対し、発明の詳細な説明の、「表面保護層及び裏面樹脂層は共に、光半透過性、かつ紫外線遮蔽性であることが好ましいが、少なくとも表面保護層が光半透過性、かつ紫外線遮蔽性であれば、裏面樹脂層は必ずしも紫外線遮蔽性を有する必要はなく、また必ずしも光半透過性を有する必要はない。本発明の可撓性調光シートは色相が可逆的に変化する感温変色性樹脂層が、光半透過性の表面保護層及び裏面樹脂層によって意図的に被覆隠蔽されるため、調光シートの外観に色相変化の影響がし難い仕様で、外観の色相変化を特徴とする従来の感温変色性シートとは本質的に仕様を異にする。従って本発明の調光シートの光透過性は感温変色性樹脂層の色相変化でコントロールされ、しかも耐光性に優れているため屋外使用が可能であるという特徴を有している。この感温変色性樹脂層のみでも光透過性のコントロールは可能であるが、耐光性が悪く可逆的変色が数ヶ月程度で損なわれるため屋外使用に適していない。本発明の調光シートは、感温変色性樹脂層の耐光性を長期間安定持続させるために光半透過性で、紫外線遮蔽性の表面保護層(及び裏面樹脂層)を感温変色性樹脂層の上に設け、感温変色性樹脂層の色相変化を隠蔽し、今までに注目されていなかった感温変色性樹脂層の光透過性コントロールと、屋外使用の可使時間持続性に着目したものである。」(段落【0014】)、「感温変色性樹脂層が発色/消色の可逆性マイクロカプセルを2種または3種含み、個々のマイクロカプセルの完全消色点を互いに5℃以上異にすることで、得られる調光シートの光透過率変化を2段階、または3段階にコントロールすることができる。2種類のマイクロカプセルの組み合わせは、20?40℃/41?55℃、20?40℃/56℃以上、41?55℃/56℃以上、3種類のマイクロカプセルの組み合わせは20?40℃/41?55℃/56℃以上である。これらの組み合わせにおいて、個々のマイクロカプセルの完全消色点の差は5℃以上が好ましい。個々の完全消色点の差が10℃未満だと調光コントロールの温度領域を狭くすることがある。昇温速度や降温速度が気温変動のように緩やかだと、完全消色点の前後5?20℃において、発色または消色の濃淡変化が各温度帯でブロードに残存し、互いの濃淡変化がオーバーラップすることで光線透過のグラデーション効果が広い温度帯領域で得られるようになる。」(段落【0022】)との記載からみて、本件発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
ウ 申立人は、本件発明1の「30?40℃、41?55℃、及び56℃以上の何れかの温度帯に完全消色点を有し」は、40℃を超え41℃未満と55℃を超え56℃未満が除外されているが、その臨界的意義が発明の詳細な説明に記載されていない旨主張するが、本件発明が特許法第36条第6項第1号に規定される要件に適合するか否かと、40℃を超え41℃未満と55℃を超え56℃未満が除外されているが、その臨界的意義が発明の詳細な説明に記載されていないこととは、何ら関連がない。

(4)小括
よって、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に違反するものではないから、本件発明1、2に係る特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消すべきものではない。

2.特許法第29条第2項に係る申立理由について
(1)甲1を主引用例とする理由
ア 甲1の記載事項、甲1に記載された発明
(ア)特許請求の範囲
「(1) 繊維基材層と、感熱可逆変色性インキを含有する合成樹脂層(A層)と、紫外線吸収剤及び酸化防止剤の少なくとも一方を含有する合成樹脂層(B層)を有する積層構造体であって、表裏いずれからも紫外線吸収剤及び酸化防止剤の少なくとも一方を含有する合成樹脂層(B層)が感熱可逆変色性インキを含有する合成樹脂層(A層)の外側に設けられていることを特徴とする感熱可逆変色性シート。」(請求項1)
(イ)技術分野、従来技術、問題点及び発明の目的
「(技術分野)
本発明は温度の変化によって可逆的に変色する感熱可逆変色性シートに関する。
(従来技術及び問題点)
従来から温度によって変色する感熱可逆変色性インキ組成物として種々のものが知られ、タオル、おもちや等の分野で実用化されている。
かかるサーモクロミズム現象を衣類等の繊維製品に応用する試みも検討されているが感熱可逆変色性インキ組成物を布帛に塗布したり捺印したとしても耐光堅牢度非常に低くとても実用に耐えられるものでなかった。
(発明の目的)
本発明の目的は編織物によって代表される繊維製品の有する特性を損なうことなく長期間安定にサーモクロミズム現象を発現することの可能な感熱可逆変色性シートを提供することにある。」(1頁右下欄8行?2頁左上欄4行)
(ウ)発明の構成
「このような感熱可逆変色性インキとしては可逆的に発色、消色を繰り返すもの又は可逆的に鮮明な色彩の変化を繰り返すもの等が知られており、いずれも本発明で用いることができるが、特に-20?50℃の間で変色するものが好ましく用いられる。」(2頁右上欄3?8行)
「本発明においてはB層は得られた積層構造体のA層より外側に設けられたものであり、A層がB層によって直接、あるいは間接に包みこまれた状態になるように積層されたものである。この場合複数のB層は同一組成のものから成るものでも異なる組成のものでもよい。繊維基材をC層とすれば、例えばC-B-A-B,B-C-A-B,B-A-C-B等の順序に積層される。本発明の積層構造体は必要に応じ最外層に別途保護層を設けることにより撥水性、耐磨耗性を一層向上させることができる。」(3頁右下欄13行?4頁左上欄3行)
「又使用目的に応じて最外層を構成する層中に酸化チタン、酸化珪素等の艶消し剤を最外層に対し0.1?10重量%程度添加することも好ましい。本発明の各層の付与方法は直接コーテイング、転写コーテイング、グラビアコーテイング等の方法により可能であり溶媒の除去方法は湿式、乾式いずれの方法も可能である。」(4頁左上欄11?17行)
(エ)発明の効果
「本発明の感熱可逆変色性シートは長期間安定な感熱可逆変色現象を示し、特に耐光性に優れている。また本発明の感熱可逆変色性シートは繊維基材の特性を保持しており、スキーウエア、カジユアルウエア、パンツ、コート、ウインドブレーカー、水着、合羽等の衣料や傘、鞄材等として広く利用しうる。また、従来知られた液晶タイプでは、限られた色の変化しか楽しめなかったが、本発明の感熱可逆変色性シートにおいては種々の色の組合わせを楽しむことが出来る。」(4頁左上欄19行?4頁右上欄8行)
(オ)実施例
「実施例 4
ナイロン210dデニールオツクスフオードにポリエステル系ポリウレタンのクリスボン4070[大日本インキ化学(株)製]100部、クリスボンNX[大日本インキ化学(株)製]5部、トルエン/酢酸エチル=1/1の混合溶媒40部、チヌビンP[Ciba-Geigy (AG)製]の5%DMF溶液1.6部、スミライザーBBM[住友化学(株)製]の5%DMF溶液14部から成る塗布液を25g/m^(2)に塗布し乾燥した後、スーパーフレツクス300[第一工業製薬(株)製]30部、感熱可逆変色性インキ組成物で赤白可逆変色性のサーモクロミツク・カラーL-22-5(A)150部、スミテツクスM-3[住友化学(株)製]4部、スミテツクスキヤタライザーACX[住友化学(株)製]0.5部から成る塗布液を130g/m^(2)に塗布し乾燥し、更にクリスボン♯3416[大日本インキ化学(株)製]100部、酸化珪素粉末8部、チヌビンP[Ciba-Geigy(AG)製]0.07部、スミライザーBBM[住友化学(株)製]0,5部、DMF/MEK混合溶媒70部から成る塗布液を30g/m^(2)に塗布し乾燥した後、ベーキングオーブンにて145℃6分間加熱した後、巾出し機にて160℃30秒間巾出しセツトしてコーテイング膜面に艶消し効果を有するコーテツドフアブリツクとした。この製品の耐光堅牢度はJIS-L-1042基準のフエード試験では4級以上の耐光性を有しており防寒衣として充分使用可能であり、示温性を示す感熱可逆変色性布帛として好適であった。」(5頁右上欄19行?同右下欄7行)
(カ)上記記載から、甲1には次の「甲1発明」が記載されているといえる。
「繊維基材層と、感熱可逆変色性インキを含有する合成樹脂層(A層)と、紫外線吸収剤を含有する合成樹脂層(B層)を有する積層構造体であって、
繊維基材をC層とすれば、B-A-C-Bの順序に積層され、
感熱可逆変色性インキは、可逆的に発色、消色を繰り返し、-20?50℃の間で変色し、
最外層を構成するB層中に酸化チタン、酸化珪素等の艶消し剤が添加され、
スキーウエア、カジユアルウエア、パンツ、コート、ウインドブレーカー、水着、合羽等の衣料や傘、鞄材等として利用した、感熱可逆変色性シート。」
イ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「繊維基材層」は、本件発明1の「布帛」に相当する。
甲1発明の感熱可逆変色性シートは、衣類等に利用されるものであるから、「感熱可逆変色性インキを含有する合成樹脂層(A層)」が繊維基材層(C層)よりも人から見える表側に位置し、その合成樹脂層(A層)に接する「紫外線吸収剤を含有する合成樹脂層(B層)」は、最表層に位置し、酸化チタン、酸化珪素等の艶消し剤が添加されている。また、「紫外線吸収剤を含有する合成樹脂層(B層)」は、下層の「感熱可逆変色性インキを含有する合成樹脂層(A層)」の発色が人から見える程度に、光透過性を有することは明らかであるから、白色系微粒子である酸化チタン、酸化珪素等の艶消し剤が添加された「紫外線吸収剤を含有する合成樹脂層(B層)」は、本件発明1の「光半透過性、かつ紫外線遮蔽性で、1)白色系微粒子及び紫外線吸収剤を含む樹脂層」である「表面保護層」に相当する。
甲1発明の繊維基材層に接する「合成樹脂層(B層)」は、本件発明1の「裏面樹脂層」に相当する。
甲1発明の「可逆的に発色、消色を繰り返し、-20?50℃の間で変色」する「感熱可逆変色性インキを含有する合成樹脂層(A層)」と、本件発明1の「発色/消色の可逆性マイクロカプセルを含み、この可逆性マイクロカプセルが、30?40℃、41?55℃、及び56℃以上の何れかの温度帯に完全消色点を有」する「感温変色性樹脂層」とは、「感温変色する樹脂層」という限りで一致する。
甲1発明の「積層構造体」と本件発明1の「光透過性積層体」とは、「積層体」という限りで一致し、甲1発明の「積層構造体」を「スキーウエア、カジユアルウエア、パンツ、コート、ウインドブレーカー、水着、合羽等の衣料や傘、鞄材等として利用した」「感熱可逆変色性シート」と、本件発明1の「光透過性積層体の温度が前記完全消色点に到達した時に、前記感温変色性樹脂層の消色によって前記光透過性積層体の全光線透過率(JIS K7375:2008年)が増大し、かつ、前記光透過性積層体の温度が前記完全消色点未満に降下した時に、前記感温変色性樹脂層の発色によって前記光透過性積層体の全光線透過率を減少させる」「可撓性調光シート」とは、「積層体に含まれる層の感熱可逆変色を用いたシート」という限りで一致する。
(イ)そうすると、本件発明1と甲1発明は、「表面保護層及び裏面樹脂層と、その中間に感温変色する樹脂層を含んでなる積層体であって、前記積層体が布帛を含み、表面保護層/感温変色性樹脂層/布帛/裏面樹脂層であり、前記表面保護層が光半透過性、かつ紫外線遮蔽性で、白色系微粒子及び紫外線吸収剤を含む樹脂層であり、積層体に含まれる層の感熱可逆変色を用いたシート」で一致し、次の相違点1、2で相違する。
《相違点1》
感温変色する樹脂層に関して、本件発明1が「発色/消色の可逆性マイクロカプセルを含み、この可逆性マイクロカプセルが、30?40℃、41?55℃、及び56℃以上の何れかの温度帯に完全消色点を有」する「感温変色性樹脂層」であるのに対し、甲1発明は「可逆的に発色、消色を繰り返し、-20?50℃の間で変色」する「感熱可逆変色性インキを含有する合成樹脂層(A層)」である点。
《相違点2》
積層体に含まれる層の感熱可逆変色を用いたシートに関して、本件発明1の「積層体」が「光透過性積層体」であり、「光透過性積層体の温度が前記完全消色点に到達した時に、前記感温変色性樹脂層の消色によって前記光透過性積層体の全光線透過率(JIS K7375:2008年)が増大し、かつ、前記光透過性積層体の温度が前記完全消色点未満に降下した時に、前記感温変色性樹脂層の発色によって前記光透過性積層体の全光線透過率を減少させる」「可撓性調光シート」であるのに対し、甲1発明の「積層構造体」は光透過性であるとは特定されておらず、「スキーウエア、カジユアルウエア、パンツ、コート、ウインドブレーカー、水着、合羽等の衣料や傘、鞄材等として利用した」「感熱可逆変色性シート」である点。
(ウ)まず、上記相違点2について検討する。
甲1発明は、上記ア(イ)に摘記したように、「温度の変化によって可逆的に変色する感熱可逆変色性シートに関」し、従来から「タオル、おもちや等の分野で実用化されている」が、「衣類等の繊維製品に応用する試みも検討されているが感熱可逆変色性インキ組成物を布帛に塗布したり捺印したとしても耐光堅牢度非常に低くとても実用に耐えられるものでなかった」ことから、「編織物によって代表される繊維製品の有する特性を損なうことなく長期間安定にサーモクロミズム現象を発現することの可能な感熱可逆変色性シートを提供する」という課題を解決しようとするものであり、甲1発明により、「本発明の感熱可逆変色性シートにおいては種々の色の組合わせを楽しむことが出来」(上記ア(エ))、「示温性を示す感熱可逆変色性布帛として好適」(上記ア(オ))なものとすることができるとされる。
しかし、甲1発明の「感熱可逆変色性シート」の「積層構造体」が、光透過性であることを示唆する記載はなく、温度変化による発色、消色によって、「積層構造体」の全光線透過率を減少、増大させて、甲1発明の「感熱可逆変色性シート」を「調光シート」として用いることも記載されていない。
甲1発明の「感熱可逆変色性シート」は、衣類等の繊維製品について、温度変化により発色、消色させて、「種々の色の組合わせを楽しむこと」ができるようにし、また、「示温性を示す」ことを可能にしようとするものあるから、そのような甲1発明の「感熱可逆変色性シート」の「積層構造体」を光透過性とし、「光透過性積層体の温度が前記完全消色点に到達した時に、前記感温変色性樹脂層の消色によって前記光透過性積層体の全光線透過率(JIS K7375:2008年)が増大し、かつ、前記光透過性積層体の温度が前記完全消色点未満に降下した時に、前記感温変色性樹脂層の発色によって前記光透過性積層体の全光線透過率を減少させる」「可撓性調光シート」とする動機付けはない。
また、甲3には、30℃以下で黒色、35℃以上で無色に変色する可逆熱変色性マイクロカプセル顔料について記載(段落【0047】)されているが、甲1発明の「感熱可逆変色性シート」について、全光線透過率を増大、減少させて、「調光シート」として用いる動機付けは記載されていない。
さらに、他に提出された証拠の甲2、甲4?甲6にも記載されていない。
そうすると、本件発明1の上記相違点2に係る構成は、甲1発明及び甲2?6の技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(エ)そして、上記相違点2に係る構成を含む本件発明1は、本件明細書の実施例1(段落【0028】)に、「得られたシートの透過色は常温で青色を呈し、その全光線透過率(JIS K7375)が13%であったが、37℃以上の温度で青色→薄い青色→無色の変化を完結し、その全光線透過率を25%に拡張した。そして常温近辺で再びシートが無色→薄い青色→青色を段階的に呈して全光線透過率が徐々に13%に制限される可逆的調光機能を発現し、屋外曝露1年後にも同等の可逆的調光機能を保持していた。」と記載されるように、「気温変化によってシートの光透過性がコントロールされ、特に気温上昇に伴う日中はシートの光線透過率を最大として採光環境を整え、気温が低下する夜間には光線透過率を下げることで屋内照明の外漏れを抑止するカーテン効果を発現し、しかも耐候性及び可撓性に優れる」(段落【0005】)という、甲1?甲6のいずれの証拠にも記載されていない格別の効果を奏するものである。
(オ)よって、本件発明1は、上記相違点1について検討するまでもなく、甲1発明に基いて、若しくは、甲1発明及び甲2?6の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
ウ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであり、上記イで述べたように、本件発明1の上記相違点2に係る構成は、甲1発明及び甲2?6の技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、上記相違点2に係る構成を備える本件発明2は、甲1発明に基いて、若しくは、甲1発明及び甲2?6の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。

(2)甲2を主引用例とする理由
ア 甲2の記載事項、甲2に記載された発明
(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】 (イ)無色又は淡色のロイコ色素、及び(ロ)該ロイコ色素を発色させる能力を有する下記一般式(1)で示される顕色性物質からなる少なくとも2成分を必須成分とする可逆感温変色性組成物。
【化1】


(イ)発明の属する技術分野
「本発明は可逆感温変色性組成物に関する。更に詳しくは、諸堅牢度、特に耐水性が飛躍的に向上するとともに、発色時の色濃度が高く且つ毒性の低い可逆感温変色性組成物に関する。」(【0001】)
(ウ)従来の技術
「無色又は淡色のロイコ色素と、各種のフェノール類とを組み合わせてなる組成物が、温度の変化に応じて可逆的に発色したり消色したりする特性を示すことは、米国特許第3560229号公報等により公知である。・・・・
上記各種の可逆感温変色性組成物は、種々様々な用途に用いられており、その実使用時の要請からその色相は極めて多岐に及ぶ。この為、当該組成物においてその色相を決定しうる作用を担うところのロイコ色素は、各種各様のものが極めて豊富なバリエーションをもって実用に供せられている。
しかしながら、一方、このロイコ色素を発色させる顕色性物質たるフェノール類としては、ビスフェノールAを代表としてわずか数種類のものが実用に供せられているのに過ぎない。この理由としては、主にその経済性や流通性等が挙げられるものと考えられるが、当該組成物においてはこの顕色性物質に起因して、下記の如き種々の問題点が存する現状にある。
○1(当審注:○の中に1。以下同じ。)当該組成物が水(水分)と接触する環境下に置かれた場合、顕色性物質が選択的に水相へ移行(抽出)する結果、ロイコ色素との間の当量バランス(組成比率)が崩れ、所望の変色特性を示さなくなる。
即ち、耐水性が劣る。
○2 当該組成物が高温に置かれた場合、顕色性物質が分解乃至昇華し、所望の変色特性を示さなくなる。
即ち、耐熱性が劣る。
○3 当該組成物は、用途によっては更に高い安全性が要求される。
即ち、低毒性であることが必要である。」(【0002】?【0010】)
(エ)発明が解決しようとする課題
「本発明は、この様な状況に鑑みなされたものであって、上記の如き問題点を一掃した、耐水性、耐熱性、低毒性等に優れた特性を有する可逆感温変色性組成物を提供することを目的としてなされたものである。」(【0012】)
(オ)課題を解決するための手段
「(6) 用途
ここに本発明の可逆感温変色性組成物の用途を挙げると、例えば各種衣料品、装飾品、寝具品、インテリア用品、玩具類、学習教材、筆記具、文房具、その他日常雑貨類等に適用すれば、優れた可逆感温変色特性が示されることから、嗜好性、装飾性、意外性等が付与された付加価値の高いユニークな製品を得ることができる。
・・・・
本発明の可逆感温変色性組成物について、更に詳しい用途の具体例を以下に示すが、本発明の用途はこれらに限定されるものではない。(尚、以下の記載において「組成物」という表現は、特に断りのない限り、マイクロカプセルに内包された組成物を含む。)
・・・・
(18) 透明性の合成繊維よりなる基体の片面上の一部に当該組成物含有インキで模様層が形成され、更にその模様層を含む基体にポリウレタン樹脂を含む塗料にて多孔性皮膜層が形成された透湿性に優れた可逆感温変色性プリント布帛、及びこの布帛を用いた衣料品、インテリア用品、雑貨など。
・・・・
尚、上述したインキ、塗料、プラスチックなどの中に各種の薬剤、例えば界面活性剤、乾燥調整剤、消泡剤、架橋剤、触媒、粘度調整剤、染料、顔料、蛍光顔料、蛍光染料、体質顔料、夜光顔料、蓄光顔料、フォトクロミック材料、エレクトロクロミック材料、パール顔料、ガラスビーズ、金属粉、防腐剤、帯電防止剤、発泡剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、プラスチック用安定剤、滑剤、香料、抗菌剤、消臭剤、光触媒、防虫剤、忌避剤、老化防止剤などを用途に応じて適宜配合することができる。」(【0044】?【0066】)
(カ)発明の実施の形態
「【実施例14】実施例1で得た組成物200部に対して、多価イソシアネート(ミリオネートMR:日本ポリウレタン工業(株)製)50部を加えて、加熱、撹拌して均一な分散液を得た。次に、分散安定剤としてコロイド状リン酸三カルシウム10部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部とを含む60℃に加熱した水溶液2000部中に、上記の均一分散液を加え、撹拌機を用いて該均一分散液の平均粒子径が3μmとなるように撹拌速度を調整し、分散させた。この分散液中にキシリレンジアミン10部を滴下し、60℃で約3時間分散液の撹拌を続けて反応を終了した後、塩酸によって分散安定剤を分解除去し、濾過、水洗、乾燥することにより、約260部の該組成物内包マイクロカプセル粒状物を得た。
次に、この様にして得られた粒状物100部を、アニオン系界面活性剤(デモールN:花王(株)製)5部を含む水溶液1000部中に撹拌下投入し、均一に分散させ、続いてこの分散液中にメラミン・ホルマリンプレポリマー20部を滴下し、撹拌を続けながら、80℃まで加熱した。
次いで希塩酸を滴下して系のpHを4.5に調整し、この温度で2時間撹拌を続けた後、放冷し、濾過、水洗、乾燥を行い約120部のマイクロカプセルに内包された可逆感温変色性組成物を得た。
上記で得られた本発明のマイクロカプセル内包組成物は、約48℃以下の温度において濃青色を示し、それより高い温度では無色となる可逆性の変色特性を示した。」(【0083】?【0086】)
(キ)上記記載から、甲2には次の「甲2発明」が記載されているといえる。
「透明性の合成繊維よりなる基体の片面上の一部に、可逆感温変色性組成物で模様層が形成され、更にその模様層を含む基体にポリウレタン樹脂を含む塗料にて多孔性皮膜層が形成され、
可逆感温変色性組成物はマイクロカプセルに内包され、約48℃以下の温度において濃青色を示し、それより高い温度では無色となる可逆性の変色特性を示し、
塗料は、体質顔料、パール顔料、ガラスビーズ、紫外線吸収剤を適宜配合され、
衣料品、インテリア用品、雑貨などに用いられる、
透湿性に優れた可逆感温変色性プリント布帛。」
イ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「透明性の合成繊維よりなる基体」は、本件発明1の「布帛」に相当する。
甲2発明の可逆感温変色性プリント布帛は、衣料品等に利用されるものであるから、「模様層」が「透明性の合成繊維よりなる基体」よりも人から見える表側に位置し、その基体に接する「多孔性皮膜層」は最表層に位置し、多孔性皮膜層を構成する塗料には体質顔料、パール顔料、ガラスビーズ、紫外線吸収剤を適宜配合される。また、「多孔性皮膜層」は、下層の可逆感温変色性組成物で形成された「模様層」の発色が人から見える程度に、光透過性を有することは明らかであるから、甲2発明の「多孔性皮膜層」と本件発明1の「光半透過性、かつ紫外線遮蔽性で、1)白色系微粒子及び紫外線吸収剤を含む樹脂層、あるいは2)非相溶樹脂ブレンドに紫外線吸収剤を含む層であ」る「表面保護層」とは、「光半透過性で紫外線吸収剤を含む樹脂層」という限りで一致する。
甲2発明の「マイクロカプセルに内包され、約48℃以下の温度において濃青色を示し、それより高い温度では無色となる可逆性の変色特性を示」す「可逆感温変色性組成物」で形成された「模様層」は、本件発明1の「発色/消色の可逆性マイクロカプセルを含み、この可逆性マイクロカプセルが、30?40℃、41?55℃、及び56℃以上の何れかの温度帯に完全消色点を有」する「感温変色性樹脂層」に相当する。
甲2発明の基体に多孔性皮膜層と模様層が積層された「可逆感温変色性プリント布帛」と、本件発明1の布帛を含む光透過性積層体からなる「可撓性調光シート」とは、「積層体」であることで一致し、甲2発明の「衣料品、インテリア用品、雑貨などに用いられる、透湿性に優れた可逆感温変色性プリント布帛」と、本件発明1の「光透過性積層体の温度が前記完全消色点に到達した時に、前記感温変色性樹脂層の消色によって前記光透過性積層体の全光線透過率(JIS K7375:2008年)が増大し、かつ、前記光透過性積層体の温度が前記完全消色点未満に降下した時に、前記感温変色性樹脂層の発色によって前記光透過性積層体の全光線透過率を減少させる」「可撓性調光シート」とは、「積層体に含まれる層の感温可逆変色を用いた布帛」という限りで一致する。
(イ)そうすると、本件発明1と甲2発明は、「光半透過性で紫外線吸収剤を含む樹脂層、感温変色性樹脂層及び布帛からなり、前記感温変色性樹脂層が、発色/消色の可逆性マイクロカプセルを含み、この可逆性マイクロカプセルが、30?40℃、41?55℃、及び56℃以上の何れかの温度帯に完全消色点を有する、積層体に含まれる層の感温可逆変色を用いた布帛」で一致し、次の相違点3?5で相違する。
《相違点3》
光半透過性で紫外線吸収剤を含む樹脂層に関して、本件発明1が「1)白色系微粒子及び紫外線吸収剤を含む樹脂層、あるいは2)非相溶樹脂ブレンドに紫外線吸収剤を含む層」であるのに対し、甲2発明は「体質顔料、パール顔料、ガラスビーズ、紫外線吸収剤を適宜配合され」た「塗料」にて形成された「多孔性皮膜層」である点。
《相違点4》
本件発明1が、「表面保護層及び裏面樹脂層と、その中間に感温変色性樹脂層を含んでなる光透過性積層体であって、前記光透過性積層体が布帛を含み、「表面保護層/布帛/感温変色性樹脂層/裏面樹脂層」、「表面保護層/感温変色性樹脂層/布帛/裏面樹脂層」、及び「表面保護層/感温変色性樹脂層/布帛/感温変色性樹脂層/裏面樹脂層」から選ばれた何れか1種の構成」であるのに対し、甲2発明は、「透明性の合成繊維よりなる基体の片面上の一部に、可逆感温変色性組成物で模様層が形成され、更にその模様層を含む基体にポリウレタン樹脂を含む塗料にて多孔性皮膜層が形成され」たものである点。
《相違点5》
積層体に含まれる層の感温可逆変色を用いた布帛に関して、本件発明1が「光透過性積層体の温度が前記完全消色点に到達した時に、前記感温変色性樹脂層の消色によって前記光透過性積層体の全光線透過率(JIS K7375:2008年)が増大し、かつ、前記光透過性積層体の温度が前記完全消色点未満に降下した時に、前記感温変色性樹脂層の発色によって前記光透過性積層体の全光線透過率を減少させる」「可撓性調光シート」であるのに対し、甲2発明は、光透過性であるとは特定されておらず、「衣料品、インテリア用品、雑貨などに用いられる、透湿性に優れた可逆感温変色性プリント布帛」である点。
(ウ)まず、上記相違点5について検討する。
甲2発明は、上記ア(ウ)に摘記したように、「可逆感温変色性組成物」を用いた可逆感温変色性プリント布帛の、耐水性、耐熱性及び低毒性を改善することを課題とするものであって、光透過性であるとは記載されていないし、温度変化による発色、消色によって、「積層構造体」の全光線透過率を増大、減少させて、甲2発明の「可逆感温変色性プリント布帛」を「調光シート」として用いるとも記載されておらず、そのような甲2発明の「可逆感温変色性プリント布帛」を、「光透過性積層体の温度が前記完全消色点に到達した時に、前記感温変色性樹脂層の消色によって前記光透過性積層体の全光線透過率(JIS K7375:2008年)が増大し、かつ、前記光透過性積層体の温度が前記完全消色点未満に降下した時に、前記感温変色性樹脂層の発色によって前記光透過性積層体の全光線透過率を減少させる」「可撓性調光シート」とする動機付けはない。
また、甲3には、30℃以下で黒色、35℃以上で無色に変色する可逆熱変色性マイクロカプセル顔料について記載(段落【0047】)されているが、甲2発明の「可逆感温変色性プリント布帛」について、全光線透過率を増大、減少させて、「調光シート」として用いる動機付けは記載されていない。
さらに、他に提出された証拠の甲1、甲4?甲6にも記載されていない。
そうすると、本件発明1の上記相違点2に係る構成は、甲2発明及び甲1、3?6の技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(エ)そして、上記相違点5に係る構成を含む本件発明1は、上記(1)イ(エ)で述べたように格別の効果を奏するものである。
(オ)よって、本件発明1は、上記相違点3、4について検討するまでもなく、甲2発明に基いて、若しくは、甲2発明及び甲1、3?6の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
ウ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであり、上記イで述べたように、本件発明1の上記相違点5に係る構成は、甲2発明及び甲1、3?6の技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、上記相違点5に係る構成を備える本件発明2は、甲2発明に基いて、若しくは、甲2発明及び甲1、3?6の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。

(3)小括
よって、本件発明1、2は、特許法第29条第2項の規定に違反するものではないから、本件発明1、2に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1、2に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-09-30 
出願番号 特願2016-134925(P2016-134925)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (B32B)
P 1 651・ 121- Y (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 横島 隆裕  
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 井上 茂夫
藤井 眞吾
登録日 2020-10-01 
登録番号 特許第6771208号(P6771208)
権利者 平岡織染株式会社
発明の名称 可撓性調光シート  
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