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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B01J 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B01J 審判 全部申し立て 2項進歩性 B01J |
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管理番号 | 1378766 |
異議申立番号 | 異議2021-700529 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-06-01 |
確定日 | 2021-10-08 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6794552号発明「ディーゼルエンジンの排気ガス浄化用触媒」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6794552号の請求項1?19に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許6794552号の請求項1?19に係る特許(以下、それぞれ「本件特許1」?「本件特許19」という。)についての出願は、2018年(平成30年)2月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年(平成29年)2月3日 欧州特許庁(EP))を国際出願日として特許出願され、令和2年11月13日に特許権の設定登録がされ、同年12月2日に特許掲載公報が発行された。 その後、本件特許の全請求項に係る特許(本件特許1?19)に対して、令和3年6月1日に、特許異議申立人 森田 弘潤(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1?19に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明19」といい、まとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 第1の端面「a」と第2の端面「b」との間に延びる長さLを有する担体と、 前記担体上に配置された組成が異なる触媒活性材料領域A、B、及びCとを備える触媒であって、 材料領域Aが、白金又はPt:Pd≧1の重量比を有する白金及びパラジウムを含み、端面「a」から始まって又は端面「b」から始まって、前記長さLの100%に沿って延びており、 材料領域Bが、パラジウム又は白金及びパラジウムを含み、端面「b」から始まって前記長さLの一部分に沿って延びており、 材料領域CがSCR活性材料を含み、端面「a」から始まって前記長さLの一部分に沿って延び、 前記材料領域B及び前記材料領域Cは前記材料領域Aの上方に配置されている、触媒。 【請求項2】 材料領域Aが、白金又は20:1?1:1の重量比を有する白金及びパラジウムを含有することを特徴とする、請求項1に記載の触媒。 【請求項3】 材料領域Bが、パラジウム又は3:1?1:12の重量比を有する白金及びパラジウムを含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の触媒。 【請求項4】 材料領域Aが白金及び遷移金属酸化物を含むことを特徴とする、請求項1?3のいずれか1項に記載の触媒。 【請求項5】 材料領域Aの重量に対してそれぞれ、白金が0.05?4.0重量%の量で存在し、前記遷移金属酸化物が0.5?15重量%の量で存在することを特徴とする、請求項4に記載の触媒。 【請求項6】 前記遷移金属酸化物がCu_(x)Oであり、式中0<x≦2であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の触媒。 【請求項7】 前記材料領域Aの重量に対してそれぞれ、Cu_(x)Oが0.5?5重量%の量で存在し、白金が0.05?2.0重量%の量で存在することを特徴とする、請求項6に記載の触媒。 【請求項8】 材料領域Bがアルカリ土類金属を含有することを特徴とする、請求項1?7のいずれか1項に記載の触媒。 【請求項9】 材料領域B中の前記アルカリ土類金属が、ストロンチウム又はバリウム又はストロンチウム及びバリウムであることを特徴とする、請求項8に記載の触媒。 【請求項10】 材料領域Cが、SCR活性材料として、8個の四面体原子の最大環サイズを有し及び遷移金属を含有する小孔ゼオライトを含有することを特徴とする、請求項1?9のいずれか1項に記載の触媒。 【請求項11】 前記小孔ゼオライトが、AEI、CHA、KFI、ERI、LEV、MER、又はDDR構造型に属し、及びコバルト、鉄、銅、又はコバルト、鉄、銅のうちの2つ若しくは3つの混合物と交換されることを特徴とする、請求項10に記載の触媒。 【請求項12】 材料領域Cが、SCR活性材料として、構造型BEAを有し及び遷移金属を含有するゼオライトを含有することを特徴とする、請求項1?9のいずれか1項に記載の触媒。 【請求項13】 材料領域Bが前記担体の前記長さLの30?50%に沿って延びていることを特徴とする、請求項1?12のいずれか1項に記載の触媒。 【請求項14】 材料領域Cが前記担体の前記長さLの50?70%に沿って延びていることを特徴とする、請求項1?13のいずれか1項に記載の触媒。 【請求項15】 順に、アンモニア又はアンモニア前駆体を供給するための第1のデバイスと、第1のSCR触媒と、請求項1?14のいずれか1項に記載の触媒であって、その端面「a」が前記第1のSCR触媒の方向を向くように配置されている触媒と、を備える、触媒装置。 【請求項16】 請求項1?14のいずれか1項に記載の前記触媒の端面「b」の方向を向くように配置されたディーゼル微粒子フィルタを備えることを特徴とする、請求項15に記載の触媒装置。 【請求項17】 前記ディーゼル微粒子フィルタに続く第2のSCR触媒を備えることを特徴とする、請求項16に記載の触媒装置。 【請求項18】 前記第2のSCR触媒の上流において、アンモニア又はアンモニア前駆体を供給するための第2のデバイスを備えることを特徴とする、請求項17に記載の触媒装置。 【請求項19】 前記第2のSCR触媒に続くアンモニアスリップ触媒を備えることを特徴とする、請求項17又は18に記載の触媒装置。」 第3 特許異議申立理由の概要 1 申立理由1(新規性欠如) 本件発明1?3、8?14は、以下の甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許1?3、8?14は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 2 申立理由2(進歩性欠如) 本件発明1?19は、以下の甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1?19は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 3 申立理由3(サポート要件違反) 本件発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件特許1は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 4 証拠一覧 申立人が提出した甲第1、2号証(以下、単に「甲1」などという。)は、以下のとおりである。 ・甲1:特表2017-501032号公報 ・甲2:Vressner et al., “Meeting the EURO IV NOx Emission Legislat ion using a EURO IV Base Engine and a SCR/ASC/DOC/DPF Config uration in the World Harmonized Transient Cycle”, SAE Inter national, (米), 2010, No. 2010-01-1216 第4 当審の判断 1 申立理由1及び2(新規性欠如、進歩性欠如)について (1)甲1の記載事項及び甲1発明 ア 甲1には、以下(1a)?(1c)の記載事項がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「…」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。 (1a)「【請求項1】 希薄燃焼エンジンからの排ガス排出物の削減のための酸化触媒複合材料であって、 長さ、入口端及び出口端を有する担体基材、前記担体上の酸化触媒の触媒材料を含み、前記酸化触媒の触媒材料が、ゼオライト、Pt、及び第1の耐火性のMn含有金属酸化物支持体を含む第1のウォッシュコート; 第2の耐火性金属酸化物支持体、Pt:Pd比が約10:1?1:10の範囲の白金(Pt)成分及びパラジウム(Pd)成分を含む第2のウォッシュコート;並びに パラジウム及び希土類酸化物成分を含み、白金を実質的に含まない第3のウォッシュコート; を含み、 前記希薄燃焼エンジン排ガス中の炭化水素及び一酸化炭素を削減し、かつNOをNO_(2)に酸化するのに効果的である酸化触媒複合材料。」 (1b)「【0104】 図4A?4Gは、該酸化触媒複合材料が本発明の1以上の実施形態に従ってコーティングされている、ディーゼルエンジンからの排ガス排出物の削減のためのゾーン型酸化触媒複合材料20の実施形態を示す。第1のウォッシュコートは、ゼオライト、Pt、及び、第1の耐火性のMn含有金属酸化物支持体を含む。第2のウォッシュコートは、第2の耐火性金属酸化物支持体、Pt:Pd比が約10:1?1:10の範囲の白金(Pt)成分及びパラジウム(Pd)成分を含む。第3のウォッシュコートは、パラジウム及び希土類酸化物成分を含む。 … 【0106】 さらなる実施形態において、一方のウォッシュコートが上流であり、他方のウォッシュコートが下流であるように、ウォッシュコートは担体基材上にコーティングされる。…図4Dを参照すると、第2のウォッシュコートが担体上にコーティングされ、次いで、第1及び第3のウォッシュコートが第2のウォッシュコートの上(上部)にコーティングされる。…層状構造及びゾーン構造のいずれかにおける3種類のウォッシュコート層/成分の全配置が可能であることは、当業者なら理解するであろう。」 (1c)「【図4D】 ![]() 」 イ 前記ア(1a)?(1c)の記載を、【図4D】の実施形態に着目して整理すると、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「酸化触媒複合材料がコーティングされている、ディーゼルエンジンからの排ガス排出物の削減のためのゾーン型酸化触媒複合材料であって、第1のウォッシュコートは、ゼオライト、Pt、及び、第1の耐火性のMn含有金属酸化物支持体を含み、第2のウォッシュコートは、第2の耐火性金属酸化物支持体、Pt:Pd比が約10:1?1:10の範囲の白金(Pt)成分及びパラジウム(Pd)成分を含み、第3のウォッシュコートは、パラジウム及び希土類酸化物成分を含み、第2のウォッシュコートが担体上にコーティングされ、次いで、第1及び第3のウォッシュコートが第2のウォッシュコートの上(上部)にコーティングされているもの。」 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「第2のウォッシュコート」及び「第3のウォッシュコート」は、それぞれ、本件発明1における「材料領域A」及び「材料領域B」に相当する。そして、両者は、少なくとも次の相違点を有するものと認められる。 ・相違点1 本件発明1の触媒は、「材料領域CがSCR活性材料を含」むものであるのに対し、甲1発明のゾーン型酸化触媒複合材料は、本件発明1の材料領域Cと同配置にある「第1のウォッシュコート」が「ゼオライト、Pt、及び、第1の耐火性のMn含有金属酸化物支持体を含む」ものである点。 イ 相違点についての検討 (ア)申立人は、本件明細書及び甲1の記載からみて、甲1発明の「ゼオライト、Pt、及び、第1の耐火性のMn含有金属酸化物支持体」を含む「第1のウォッシュコート」は、本件発明1の「SCR活性材料」を含む「材料領域C」に相当するものであり、前記アの相違点1は実質的なものはない旨主張するので、まず、この点について検討をする。 はじめに、本件明細書をみると、その【0020】には、次の記載がある。 「材料領域Cは、SCR活性材料、すなわちSCR触媒を含有する。 SCR触媒として、窒素酸化物とアンモニアとのSCR反応における全ての活性触媒-特に自動車の排気ガス触媒の分野における当業者に一般的に知られているもの-を原則として使用することができる。これには、混合酸化物型の触媒、及びゼオライトに基づく-特に遷移金属交換ゼオライトに基づく-触媒が含まれる。」 そうすると、本件発明1の「SCR活性材料」は、窒素酸化物をアンモニアによって窒素及び水に変換する触媒である、混合酸化物型の触媒や遷移金属交換ゼオライトに基づく触媒等のSCR触媒のことを表すものと解される。 一方、甲1の【0051】、【0061】、【0065】、【図5】?【図7】の記載からすると、甲1発明の「ゼオライト、Pt、及び、第1の耐火性のMn含有金属酸化物支持体」は、一酸化炭素、炭化水素、一酸化窒素の酸化を促進するための触媒であると理解することができる。具体的にいうと、甲1の「ゼオライト」は、甲1の【0065】などを参酌すると、炭化水素の吸着や貴金属触媒を担持するものであり、甲1の「Pt」は、同【0051】、【0061】などを参酌すると、一酸化炭素、炭化水素、一酸化窒素などを酸化する作用を示すものであり、甲1の「第1の耐火性のMn含有金属酸化物支持体」は、同【0061】などを参酌すると、白金との相乗効果により、一酸化窒素の酸化を改善するものであることを、それぞれ把握することができる。そうである以上、これらの成分は、窒素酸化物をアンモニアによって窒素及び水に変換するSCR活性材料とはいえないのであるから、本件発明1で特定事項とされる「SCR活性材料」とは異なるものであるといわざるを得ない。このことは、甲1の【図5】?【図7】に示される実施形態において、酸化触媒複合材料の形態にあるディーゼル酸化触媒(DOC)の上流に還元剤としての尿素やSCRが配置されていないことからも頷ける。 したがって、本件明細書及び甲1の記載からみて、上記相違点1が実質的なものでないということはできない。 この点は、甲2の記載に照らしても同じである。すなわち、甲2をみても、甲1の「ゼオライト、Pt、及び、第1の耐火性のMn含有金属酸化物支持体」が「SCR活性材料」であるというに足りる記載を認めることはできないから、結局、相違点1は実質的なものであるというほかない。 (イ)次に、相違点1に係る本件発明1の構成の容易想到性について検討すると、前記(ア)で検討したとおり、甲1発明の「ゼオライト、Pt、及び、第1の耐火性のMn含有金属酸化物支持体」は、SCR活性を期待されるものではなく、また、この「ゼオライト、Pt、及び、第1の耐火性のMn含有金属酸化物支持体」を「SCR活性材料」に変更する動機付けとなるような記載を甲1あるいは甲2の記載中に認めることもできないから、甲1さらには甲2に記載された技術的事項を参酌しても、甲1発明において、「ゼオライト、Pt、及び、第1の耐火性のMn含有金属酸化物支持体」を「SCR活性材料」とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 (3)本件発明2?19について 本件発明2?19は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、容易に想到するものとは認められない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、新規性欠如、進歩性欠如に関する特許異議申立理由には、理由がない。 2 申立理由3(サポート要件違反)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明に記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)サポート要件に関する判断 ア 本件発明1の課題について 本件発明1の課題に関し、本件明細書の発明の詳細な説明の【0006】、【0007】には、次の記載がある。 「【0006】 ほとんどの場合、排気ガスの流れ方向において、酸化触媒がエンジンの近くに配置され、次いで微粒子フィルタ及びSCR触媒が続くように、様々な触媒が排気ガス浄化システム内で組み合わされており、ここでSCR触媒も、微粒子フィルタ上に担持されて存在してもよい。現在及び将来の排出ガス規制Euro6及び6+のディーゼルエンジンの排気ガス温度は、CO_(2)排出量の削減につながる燃料節約の結果としてますます低くなっている。したがって、いくつかの場合には、排気ガスに含まれる窒素酸化物の少なくとも一部分を、エンジンに近接して配置されたSCR触媒によって変換し、その後、排気ガスを酸化触媒、微粒子フィルタ、及び適用可能な場合には別のSCR触媒を通して最初に案内することが、提案されている。 【0007】 この触媒装置では、特に、一酸化二窒素をほとんど生成せず、それにもかかわらず次のSCR触媒に十分な二酸化窒素をもたらす入手可能なディーゼル酸化触媒を有することが重要である。」 そうすると、本件発明1が解決しようとする課題は、ディーゼルエンジンの排気ガスを浄化するためのディーゼル酸化触媒を提供することと認められる。 イ 発明の詳細な説明の記載について 本件明細書の発明の詳細な説明には、こうした課題を解決するための手段として、次の記載を認めることができる。 ・「【0009】 本発明は、第1の端面「a」と第2の端面「b」との間に延びる長さLを有する担体と、担体上に配置された触媒活性材料領域A、B、及びCと、を備える触媒であって、材料領域Aが、白金又はPt:Pd≧1の重量比を有する白金及びパラジウムを含み、端面「a」から始まって又は端面「b」から始まって、長さLの70?100%に沿って延びており、材料領域Bが、パラジウム又は白金及びパラジウムを含み、端面「b」から始まって長さLの一部分に沿って延びており、材料領域CがSCR活性材料を含み、端面「a」から始まって長さLの一部分に沿って延び、材料領域Cは材料領域Aの上方に配置されている、触媒に関する。」 ・「【0032】 本発明に係る触媒は、ディーゼルエンジンの排気ガスを浄化するのに適している。それらは、具体的には、一酸化炭素及び炭化水素を二酸化炭素及び水に酸化することができる。更に、それらは窒素酸化物によってSCR反応においてアンモニアを酸化することができ、適宜アンモニアを一時的に貯蔵することができる。同時に、下降流側の領域は一酸化窒素を二酸化窒素に酸化することができる。 【0033】 それらは排気ガス浄化システムに組み込まれるのが好ましく、それによってエンジンの近くに配置されたSCR触媒を通過した排気ガスが端面「a」で触媒に入り、端面「b」で再びそれを出る。 したがって、本発明は、また、順に、アンモニア又はアンモニア前駆体を供給するための第1のデバイス、第1のSCR触媒、及び本発明に係る触媒を含む触媒装置に関し、ここで本発明に係る触媒は、その端面「a」が第1のSCR触媒の方向を向くように配置されている。 【0034】 アンモニア又はアンモニア前駆体を供給するためのデバイスは、特に、尿素水溶液を供給するためのデバイスである。そのようなデバイスは当業者に公知であり、市場で入手することができる。」 これらの記載から、本件発明1の触媒は、一酸化炭素及び炭化水素を二酸化炭素及び水に酸化し、窒素酸化物によってSCR反応においてアンモニアを酸化し、一酸化窒素を二酸化窒素に酸化することで、排気ガスを浄化するためのものであり、そのために、担体の上に材料領域A、材料領域B、材料領域Cを配置したものであると理解できる。 そして、パラジウム又は白金及びパラジウムを含む材料領域Bは、本件明細書の「一酸化炭素及び炭化水素は、適切な酸化触媒上での酸化によって無害にされる。酸化触媒も、文献に広く記載されている。それらは、例えば、酸化アルミニウムなどの大面積の多孔質高融点酸化物上に必須の触媒活性成分として白金及びパラジウムなどの貴金属を担持するフロースルー基材である。」(【0003】)、「同時に、下降流側の領域は一酸化窒素を二酸化窒素に酸化することができる。」(【0032】)との記載から、一酸化炭素、炭化水素、一酸化窒素を酸化するのに適した領域であるといえる。また、SCR活性材料を含む材料領域Cは、本件明細書の「更に、それらは窒素酸化物によってSCR反応においてアンモニアを酸化することができ、適宜アンモニアを一時的に貯蔵することができる。」(【0032】)との記載から、窒素酸化物によるSCR反応においてアンモニアを酸化するのに適した領域であるといえる。 そうすると、上記のような発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、本件発明1の「材料領域Bが、パラジウム又は白金及びパラジウムを含み、端面「b」から始まって前記長さLの一部分に沿って延びており、材料領域CがSCR活性材料を含み、端面「a」から始まって前記長さLの一部分に沿って延び」るという構成を具備することにより、本件発明1の課題を少なからず解決できると認識することができると考えるのが合理的である。 (3)申立人の主張 申立人は、本件発明1は、材料領域B及びCについて、端面「a」又は「b」から始まって「長さLの一部分に沿って延び」ることが特定されているが、材料領域B又はCがごく僅かな長さである場合も含むものであり、当該場合において、発明の課題が解決できると認識することができないと主張するので(特許異議申立書27頁)、サポート要件に関する当審の判断は、前記(2)で示したとおりであるが、念のため申立人の主張についてもここで検討をする。 確かに、本件発明1の材料領域B及び材料領域Cは、その領域の延びる長さに応じて発現する機能が増減するものといえるが、仮に領域の延びる長さがごく僅かなものであったとしても、その長さに応じた機能が少なからず現れると理解するのが合理的である。 また、本件明細書の実施例1、2において、材料領域B及びCの長さとしてそれぞれ50%のものが記載されているとしても、単に好適な実施形態を示したものにすぎず、材料領域B及びCの長さを50%にしなければならないとする特段の事情もうかがえない。 したがって、材料領域B及びCの長さが特定されていないことをもってサポート要件違反であるとする申立人の主張は採用しえない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、サポート要件違反に関する特許異議申立理由には、理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許1?19を取り消すことはできない。 また、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論とおり決定す |
異議決定日 | 2021-09-28 |
出願番号 | 特願2019-535370(P2019-535370) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
Y
(B01J)
P 1 651・ 537- Y (B01J) P 1 651・ 121- Y (B01J) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 山崎 直也 |
特許庁審判長 |
日比野 隆治 |
特許庁審判官 |
金 公彦 大光 太朗 |
登録日 | 2020-11-13 |
登録番号 | 特許第6794552号(P6794552) |
権利者 | ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト |
発明の名称 | ディーゼルエンジンの排気ガス浄化用触媒 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 阿部 達彦 |
代理人 | 村山 靖彦 |