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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F15B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F15B
管理番号 1379166
審判番号 不服2020-7200  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-27 
確定日 2021-10-13 
事件の表示 特願2017-500043「弁モジュラーシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月14日国際公開、WO2016/005032、平成29年 9月21日国内公表、特表2017-527749〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)6月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年7月5日 ドイツ(DE))を国際出願日とする出願であって、平成31年3月14日付けで拒絶理由が通知され、令和元年9月19日に意見書及び手続補正書が提出され、令和元年9月20日付けで拒絶理由が通知され、令和元年12月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和2年1月20日付けで拒絶査定がされ、これに対して、令和2年5月27日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 令和2年5月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年5月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「個々のブロックコンポーネント(1?4)を備えた、弁モジュラーシステムであって、前記ブロックコンポーネントは、インサートバルブ(29、35)、圧力レギュレータ、ノズル又はスクリーンを有するインサート(43)、流体導管、ブラインドプラグ(13、15)、圧力及び温度表示器、又は、ハイドロ貯蔵器(9)である、他のコンポーネントと適合可能な接続コンポーネントを収容するために、その露出した端面の少なくとも一部に連通するそれぞれ多数の接続箇所を有し、かつ、長手方向に対をなして整合するその隣接する端面(11)が長手連鎖を形成しながら互いに突き合わされて、その限りにおいて少なくとも部分的に互いに流体を案内するように接続されている、弁モジュラーシステムにおいて、
長手連鎖に対して横方向に少なくとも1つの他のブロックコンポーネント(45、49、51、59)が、他方のブロックコンポーネント(1?4)の少なくとも1つの上に高さ方向連鎖を形成しながら流体を案内するように取り付けられており、前記弁モジュラーシステムは、前記ブロックコンポーネント(1?4、45、49、51、59)の一方を前記ブロックコンポーネント(1?4、45、49、51、59)の他方に接続する付加的な外部の配管を必要とせず、
複数の前記ブロックコンポーネント(1?4)が前記長手連鎖において隙間なく互いに対して当接して配置されており、
前記複数のブロックコンポーネント(1?4)の角部領域のそれぞれにおいて、固定穴(19)が設けられている、ポケット(17)の形式の切り欠きが設けられている、ことを特徴とする弁モジュラーシステム。」

(2)本件補正前の請求項1の記載
本件補正前の、令和元年12月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「個々のブロックコンポーネント(1?4)を備えた、弁モジュラーシステムであって、前記ブロックコンポーネントは、インサートバルブ(29、35)、圧力レギュレータ、ノズル又はスクリーンを有するインサート(43)、流体導管、ブラインドプラグ(13、15)、圧力及び温度表示器、又は、ハイドロ貯蔵器(9)である、他のコンポーネントと適合可能な接続コンポーネントを収容するために、その露出した端面の少なくとも一部に連通するそれぞれ多数の接続箇所を有し、かつ、長手方向に対をなして整合するその隣接する端面(11)が長手連鎖を形成しながら互いに突き合わされて、その限りにおいて少なくとも部分的に互いに流体を案内するように接続されている、弁モジュラーシステムにおいて、
長手連鎖に対して横方向に少なくとも1つの他のブロックコンポーネント(45、49、51、59)が、他方のブロックコンポーネント(1?4)の少なくとも1つの上に高さ方向連鎖を形成しながら流体を案内するように取り付けられており、前記弁モジュラーシステムは、前記ブロックコンポーネント(1?4、45、49、51、59)の一方を前記ブロックコンポーネント(1?4、45、49、51、59)の他方に接続する付加的な外部の配管を必要とせず、
複数の前記ブロックコンポーネント(1?4)が前記長手連鎖において隙間なく互いに対して当接して配置されている、ことを特徴とする弁モジュラーシステム。」

2 本件補正の適否
(1)本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「個々のブロックコンポーネント」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(3)引用文献1の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された刊行物である特開昭47-35480号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は注目箇所を示すために当審で付したものである。)
(ア)「可動装置のためのポンプやモーターや制御弁アセンブリー、または軍用装置、または制御された水力システムが必要とされる他の用途とおなじ産業分野のパワーパツケイジのような水力制御システムの組立においては、外部配管によつて装置に接続される種々の制御弁や連結要素から制御システムを組立てることがこの技術における通例であつた。」(第2ページ左上欄第12行-右上欄第4行)
(イ)「本発明によると、相互連結する主要な配管を使用することなく、多機能の規格化した回路形成ブロツク要素の変更から、いずれの水力制御システムも単純で複雑な制御機能も果たすように独特のシステムが提供される。」(第2ページ左下欄第7-11行)
(ウ)「図面を詳細に参照すると、代表的な流体動力制御システムは第1図の20で広く示され、導管単位構造の間のシールやロツドや管口のように共通の内面特徴を備えた導管単位構造と弁単位構造から構成される。それらのブロツクは後で詳細に述べられるように、重要な機能を持つカテゴリーに分割される。一般にそのブロツクは第1、3、7図の特有のバスアセンブリ42に配置され、そのアセンブリは、レシーバー74に帰還するのと同じように、第2図に説明された可変容量ポンプ66のような圧縮された液体の中央流出源から圧力と流れを二重ダクト導管に与える。そのような二重管のアレンジメントは、ポンプ66に接続される圧入ダクト110とレシーバー74に接続される排出ダクト112から構成される。」(第3ページ右下欄第3行-第4ページ左上欄第2行)
(エ)「バスアセンブリ42とダクト110、112は、二重ダクト導管単位構造の二つの支管アセンブリに圧力と排水を与え、第1の支管は130で示され、第2の支管は132で示されることが分かるだろう。バスダクト110、112からくる各支管は、特別な流体モーター機能を操作するために完全なマニホールドアセンブリを示す。支管130に特有の回転型モーター負荷が第2図の108で示され、支管132に、第2図のパワーシリンダ106が特有の負荷を示している。」(第4ページ左上欄第3-12行)
(オ)「第1支管130はセンターブロツク30に直接接続されたバスアダプターブロツク34によつてバスアセンブリ42に装着される。並行なサイドブロツク26はセンターブロツク30の頂上面に装着され、順次に第2の並行なサイドブロツク22を装着するように使われる。全体の支管アセンブリ130はバスアダプタブロツク34のベースフランジの孔151とバスブロツク36の頂部面の孔153を通るボルト146を装着することによつて、バスアセンブリ42のバスブロツクに固定される。」(第4ページ左上欄第13行-右上欄第8行)
(カ)「・・・第1図の第1支管130のダクト134と136は、第2、3図に示されたような流体モータ108に導かれる。そのようなダクト134と136の出口は、134-Aと136-Aで示されたように並行なサイドブロツク22の頂上面あることがここに分かるだろう。」(第4ページ右上欄第11行-左下欄第1行)
(キ)「・・・導管138、142は、最後のアセンブリのプラグ91、93を設けているが、それらの導管口は特殊な制御システムには使われない。特に第1、4、7図を参照すると、バスアセンブリ42は、バスブロツク36、並行なサイドブロツク44、標準スペーサー50、52、バスブロツク54、標準スペーサー56とそれに続くサイドブロツク58を含む標準の単位構造を含み、それらの全ては共に、必要な長さの標準のマニホールドロツド122によつてボルト止めされる。またマニホールドロツドは114で示されたように支管の単位構造を共に固定するために使われる。バスロツド122は全てのバス単位構成を通つて延び、ロツドナツト118によつてそれぞれ固定される。標準ロツドは選択された支管か導管の単位構造のバスアセンブリのいずれかを共に接続する手段を備え、導管単位構造と標準の二重ダクトシステムのシール120との間の内面に圧力を与えることがここに分かるだろう。内面シール構造120はまた第5図に支管130の離れた図面で説明され、それらのシールは、導管ブロツクの間の各内面ジヤンクシヨンを備える。」(第4ページ右下欄第2行-第5ページ左上欄第9行)
(ク)「・・・ロツド122は全てのバスアセンブリを通り共にバス単位構成に装着され、そのロツドのネジ端部は標準マニホールドロツドナツト118を設ける。また固定ロツド114、122は、雌ねじ部材にねじ込まれ、固定される時に、レンチで締められるように、図示しないが、そのねじ切り端に隣接した平坦部を設ける。」(第5ページ右上欄第6-12行)
(ケ)「全てのシステムのいずれかの位置に置かれるいずれかのブロツクが、交換可能で、一般に共通な特徴を持つている・・・」(第5ページ右下欄第13-15行)
(コ)上記(ア)における「外部配管によつて装置に接続される種々の制御弁や連結要素から制御システムを組立てることがこの技術における通例であつた」との記載、上記(イ)における「本発明によると、相互連結する主要な配管を使用することなく」との記載を総合すると、「相互連結する主要な配管」とは「相互連結する主要な外部配管」を表していることが理解できる。
(サ)上記(ウ)、(エ)の記載、第3、7図から、バスアセンブリ42が、可変容量ポンプ66からの圧力と流れを与える圧入ダクト110と、レシーバー74に帰還する圧力と流れを与える排出ダクト112を備えることが理解できる。
(シ)上記(エ)、(カ)の記載、第3、5図から、第1の支管130が、バスアセンブリ42からの圧力と流れを流体モータ108に与えるダクト134と流体モータ108から帰還する圧力と流れをバスアセンブリ42に与えるダクト136を備えることが理解できる。
(ス)第1、4-7図から、バスブロツク36、サイドブロツク44、標準スペーサー50、52、バスブロツク54、標準スペーサー56、サイドブロツク58が、長手方向に対をなして整合するその隣接する端面が長手連鎖を形成しながら互いに突き合わされてバスアセンブリ42を構成するよう接続されていること、及び、バスアセンブリ42における長手連鎖に対して横方向に、バスアダプターブロツク34、センターブロツク30、サイドブロツク26、22が、バスブロツク36の上に高さ方向連鎖を形成しながら第1の支管130を構成するように取り付けられていることが看取される。
(セ)上記(ウ)における「導管単位構造の間のシールやロツドや管口のように共通の内面特徴を備えた導管単位構造と弁単位構造から構成される」との記載、上記(ケ)における「全てのシステムのいずれかの位置に置かれるいずれかのブロツクが、交換可能で、一般に共通な特徴を持つている」との記載から、上記(キ)に記載されたバスアセンブリ42を構成する、バスブロツク36、サイドブロツク44、標準スペーサー50、52、バスブロツク54、標準スペーサー56、サイドブロツク58は、交換可能で、管口に関して共通の特徴を備えることが理解でき、上記(キ)及び第1、3-4図から、バスブロツク36、センターブロツク30、サイドブロツク88、98といった種類の異なる導管単位構造において、それらの露出した端面に連通するダクト110、112、138、142の管口に、共通のアセンブリのプラグ91、93が1-2個設置されていることが理解できる。以上の事項を総合すると、バスブロツク36、サイドブロツク44、標準スペーサー50、52、バスブロツク54、標準スペーサー56、サイドブロツク58のそれぞれは、その露出した端面に連通するダクト110、112の管口の2箇所に、アセンブリのプラグ91を設置可能であることが理解できる。

イ 引用発明
引用文献1の前記記載事項からみて、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「バスブロツク36、サイドブロツク44、標準スペーサー50、52、バスブロツク54、標準スペーサー56、サイドブロツク58を備えた、流体動力制御システムであって、
バスブロツク36、サイドブロツク44、標準スペーサー50、52、バスブロツク54、標準スペーサー56、サイドブロツク58のそれぞれは、その露出した端面に連通するダクト110、112の管口の2箇所に、アセンブリのプラグ91を設置可能であり、かつ、
バスブロック36、サイドブロツク44、標準スペーサー50、52、バスブロツク54、標準スペーサー56、サイドブロツク58は、長手方向に対をなして整合するその隣接する端面が長手連鎖を形成しながら互いに突き合わされて、可変容量ポンプ66からの圧力と流れを与える圧入ダクト110とレシーバー74に帰還する圧力と流れを与える排出ダクト112を備えるバスアセンブリ42を構成するよう接続されている、流体動力制御システムにおいて、
バスアセンブリ42における長手連鎖に対して横方向に、バスアダプターブロツク34、センターブロツク30、サイドブロツク26、22が、バスブロツク36の上に高さ方向連鎖を形成しながら、バスアセンブリ42からの圧力と流れを流体モータ108に与えるダクト134と流体モータ108から帰還する圧力と流れをバスアセンブリ42に与えるダクト136を備える第1の支管130を構成するように取り付けられており、前記流体動力制御システムは、相互連結する主要な外部配管を使用することなく、
バスブロツク36、サイドブロツク44、標準スペーサー50、52、バスブロツク54、標準スペーサー56、サイドブロツク58の全ては共に、必要な長さのマニホールドロツド122によってボルト止めされる、流体動力制御システム。」

(4)本件補正発明と引用発明との対比、一致点及び相違点
ア 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「流体動力制御システム」は、本件補正発明の「弁モジュラーシステム」に相当し、以下同様に、
「バスブロツク36、サイドブロツク44、標準スペーサー50、52、バスブロツク54、標準スペーサー56、サイドブロツク58」は「個々のブロックコンポーネント(1?4)」に、
「アセンブリのプラグ91」は「ブラインドプラグ(13、15)」及び「接続コンポーネント」に、
「ダクト110、112の管口」は「接続箇所」に、
「バスアダプターブロツク34、センターブロツク30、サイドブロツク26、22」は「少なくとも1つの他のブロックコンポーネント(45、49、51、59)」に、
「バスアセンブリ42」は「他方のブロックコンポーネント(1?4)の少なくとも1つ」に、
「主要な外部配管」は「付加的な外部の配管」に、それぞれ相当する。

(イ)引用発明の「可変容量ポンプ66からの圧力と流れを与える圧入ダクト110とレシーバー74に帰還する圧力と流れを与える排出ダクト112を備えるバスアセンブリ42を構成するよう接続されている」という事項は、本件補正発明の「その限りにおいて少なくとも部分的に互いに流体を案内するように接続されている」という事項に相当し、以下同様に、
「バスアセンブリ42における長手連鎖に対して横方向に、バスアダプターブロツック34、センターブロツック30、サイドブロツック26、22が、バスブロツック36の上に高さ方向連鎖を形成しながら、バスアセンブリ42からの圧力と流れを流体モータ108に与えるダクト134と流体モータ108から帰還する圧力と流れをバスアセンブリ42に与えるダクト136を備える第1の支管130を構成するように取り付けられており」という事項は「長手連鎖に対して横方向に少なくとも1つの他のブロックコンポーネント(45、49、51、59)が、他方のブロックコンポーネント(1?4)の少なくとも1つの上に高さ方向連鎖を形成しながら流体を案内するように取り付けられており」という事項に、
「相互連結する主要な外部配管を使用することなく」という事項は「前記ブロックコンポーネント(1?4、45、49、51、59)の一方を前記ブロックコンポーネント(1?4、45、49、51、59)の他方に接続する付加的な外部の配管を必要とせず」という事項に、それぞれ相当する。

(ウ)本件補正発明における「他のコンポーネント」とは、具体的に何を表すのか必ずしも明確でないが、発明の詳細な説明の段落【0024】の記載「・・・ブロックコンポーネント1においては、磁気コイル端子31を有する3/2ルート弁29と圧力センサ33が設けられている。ブロックコンポーネント2には、同様に圧力センサ33が設けられている。他のブロックコンポーネント3は、コイル端子31を備えた3/2ルート弁35、他の圧力センサ33及び圧力調整弁37を有している。・・・」を参酌すると、「他のブロックコンポーネント」という意味であると解される。また、本件補正発明における「接続コンポーネントを収容する」との表現は、図1、3の図示内容を参酌すると、「接続コンポーネントをその一部を内部に収容して設置する」態様を包含する概念と解される。さらに、本件補正発明における「多数の接続箇所」とは、具体的な数の程度が必ずしも明確でないが、広義には2以上の接続箇所を意味するものと解される。
そうすると、引用発明の「バスブロツク36、サイドブロツク44、標準スペーサー50、52、バスブロツク54、標準スペーサー56、サイドブロツク58のそれぞれは、その露出した端面に連通するダクト110、112の管口の2箇所に、アセンブリプラグ91を設置可能であり」と、本件補正発明の「ブロックコンポーネントは、ブラインドプラグである、他のコンポーネントと適合可能な接続コンポーネントを収容するために、その露出した端面の少なくとも一部に連通するそれぞれ多数の接続箇所を有し」とは、「ブロックコンポーネントは、ブラインドプラグである、他のコンポーネントと適合可能な接続コンポーネントを収容するために、その露出した端面の少なくとも一部に連通するそれぞれ接続箇所を有し」という限りにおいて一致する。

イ 一致点及び相違点
以上の対比を総合すると、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「個々のブロックコンポーネントを備えた、弁モジュラーシステムであって、
前記ブロックコンポーネントは、ブラインドプラグである、他のコンポーネントと適合可能な接続コンポーネントを収容するために、その露出した端面の少なくとも一部に連通するそれぞれ接続箇所を有し、かつ、長手方向に対をなして整合するその隣接する端面が長手連鎖を形成しながら互いに突き合わされて、その限りにおいて少なくとも部分的に互いに流体を案内するように接続されている、弁モジュラーシステムにおいて、
長手連鎖に対して横方向に少なくとも1つの他のブロックコンポーネントが、他方のブロックコンポーネントの少なくとも1つの上に高さ方向連鎖を形成しながら流体を案内するように取り付けられており、前記弁モジュラーシステムは、前記ブロックコンポーネントの一方を前記ブロックコンポーネントの他方に接続する付加的な外部の配管を必要としない、
弁モジュラーシステム。」

<相違点1>
ブロックコンポーネントが有する、インサートバルブ(29、35)、圧力レギュレータ、ノズル又はスクリーンを有するインサート(43)、流体導管、ブラインドプラグ(13、15)、圧力及び温度表示器、又は、ハイドロ貯蔵器(9)である他のコンポーネントと適合可能な接続コンポーネントを収容するために、その露出した端面の少なくとも一部に連通するそれぞれの接続箇所が、本件補正発明では、多数、すなわち2以上の接続箇所であるのに対して、引用発明では、2箇所の管口のみに留まる点。

<相違点2>
本件補正発明では、複数のブロックコンポーネントが長手連鎖において隙間なく互いに対して当接して配置されているのに対して、引用発明では、バスブロツク36、サイドブロツク44、標準スペーサー50、52、バスブロツク54、標準スペーサー56、サイドブロツク58がそのような構成を備えるのか否か不明な点。

<相違点3>
本件補正発明では、複数のブロックコンポーネントの角部領域のそれぞれにおいて、固定穴が設けられている、ポケットの形式の切り欠きが設けられているのに対し、引用発明では、バスブロツク36、サイドブロツク44、標準スペーサー50、52、バスブロツク54、標準スペーサー56、サイドブロツク58の全ては共に、必要な長さのマニホールドロツド122によってボルト止めされる点。

(5)相違点についての判断
ア 相違点1について
相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項「ブロックコンポーネントは、インサートバルブ(29、35)、圧力レギュレータ、ノズル又はスクリーンを有するインサート(43)、流体導管、ブラインドプラグ(13、15)、圧力及び温度表示器、又は、ハイドロ貯蔵器(9)である、他のコンポーネントと適合可能な接続コンポーネントを収容するために、その露出した端面の少なくとも一部に連通するそれぞれ多数の接続箇所を有し」については、「又は」で接続された選択肢のうちの「ブロックコンポーネントは、ブラインドプラグ(13、15)である、他のコンポーネントと適合可能な接続コンポーネントを収容するために、その露出した端面の少なくとも一部に連通するそれぞれ多数の接続箇所を有し」との発明特定事項について検討すれば足りることは明らかである。
また、上述のとおり、本件補正発明における「多数の接続箇所」とは、具体的な数の程度が必ずしも明確でないが、2つの接続箇所を有するものであれば、引用発明も2箇所の管口を備えており、相違するところはない。
したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。
仮に、本件補正発明における「多数の接続箇所」が3以上の接続箇所を意味するものであり、相違点1が実質的な相違点であったとしても、流体制御ユニットのブロックに、弁や計器等を設置するために、その露出した端面の少なくとも一部に連通するそれぞれ多数の接続箇所を設けることは、特開昭54-19217号公報の第2図、中国実用新案第202628646号明細書の図1-6等にも開示されているとおり、周知の技術的事項(以下「周知技術1」という。)であり、引用発明において周知技術1に鑑みて、バスブロツク36、サイドブロツク44、標準スペーサー50、52、バスブロツク54、標準スペーサー56、サイドブロツク58のそれぞれに、弁や計器等を設置するために、その露出した端面の少なくとも一部に連通するそれぞれ、3以上である多数の接続箇所を設けるようにすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項にすぎない。

イ 相違点2について
引用文献1には、バスブロツク36、サイドブロツク44、標準スペーサー50、52、バスブロツク54、標準スペーサー56、サイドブロツク58が長手連鎖において隙間なく互いに対して当接して配置されている旨の明記はないが、第1、4図を参照すると、バスブロツク36、サイドブロツク44、標準スペーサー50、52、バスブロツク54、標準スペーサー56、サイドブロツク58が長手連鎖において隙間なく互いに対して当接して配置されていることが看取できる。したがって、相違点2は実質的な相違点ではない。
仮に、相違点2が実質的な相違点であったとしても、引用文献1には、バスアセンブリ42を構成するバスブロツク36、サイドブロツク44、標準スペーサー50、52、バスブロツク54、標準スペーサー56、サイドブロツク58の全てをロツド122が通って延び、該ロツド122が、レンチで締められるロツドナツト118によって固定され、バスブロツク36、サイドブロツク44、標準スペーサー50、52、バスブロツク54、標準スペーサー56、サイドブロツク58と、それらの各内面ジヤンクシヨンを備えるシール120との間の内面に圧力を与えることが記載されており(上記(3)ア(キ)、(ク)を参照)、バスブロツク36、サイドブロツク44、標準スペーサー50、52、バスブロツク54、標準スペーサー56、サイドブロツク58が長手連鎖において隙間なく互いに対して当接する程度の締付力でロツドナツト118をロツド12に固定することは、当業者が適宜なし得た設計的事項にすぎない。

ウ 相違点3について
複数のブロックコンポーネントを連結した流体制御ユニットにおいて、複数のブロックコンポーネントの角部領域のそれぞれにおいて、固定穴が設けられている、ポケットの形式の切り欠きを設け、該固定穴にねじを挿通して隣接するブロックコンポーネントと連結することは、特開昭48-63191号公報の第2ページ右上欄第10-20行、第1-2図、特表2012-519804号公報の図3、5、10-11等にも開示されているとおり、周知の技術的事項(以下「周知技術2」という。)である。
そして、複数のブロックコンポーネントを連結した流体制御ユニットにおいて、個々のブロックコンポーネントの組付け分解を容易とすることは、実公昭47-24001号公報の第2欄第26-31行、特開2005-344435号公報の段落【0025】等にも開示されているように、周知の技術課題であるから、引用発明に周知技術2を適用し、マニホールドロツド122によってボルト止めすることに代えて、バスブロツク36、サイドブロツク44、標準スペーサー50、52、バスブロツク54、標準スペーサー56、サイドブロツク58の角部領域のそれぞれにおいて、固定穴が設けられている、ポケットの形式の切り欠きを設け、該固定穴にねじを挿通して連結するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

エ 請求人の主張について
請求人は審判請求書において、本件補正発明は「特に、前記複数のブロックコンポーネント(1?4)の角部領域のそれぞれにおいて、固定穴(19)が設けられている、ポケット(17)の形式の切り欠きが設けられているという構成により、前記複数のブロックコンポーネント(1?4)同士を接続する際に、『各』ブロックコンポーネントのポケット(17)内の固定穴(19)に、隣接のブロックコンポーネントから固定ねじ(21)を固定することができるという効果を生じるものであります。一方、引用例2(審決注:上記(3)の引用文献1)は、複数のブロックコンポーネント(1?4)同士を接続する際に、『全て』のブロックコンポーネントの穴を通るロッド114を、『端』にあるブロックコンポーネントでロッドナット(118)で固定するものであり、『各』ブロックコンポーネントを隣接のブロックコンポーネントに固定することができるという効果を開示も示唆もしておりません。」と主張している。
しかしながら、上記ウで検討したとおり、複数のブロックコンポーネントの角部領域のそれぞれにおいて、固定穴が設けられている、ポケットの形式の切り欠きを設け、該固定穴にねじを挿通して隣接するブロックコンポーネントと連結することは周知技術(周知技術2)であり、個々のブロックコンポーネントの組付け分解を容易とするといった周知の技術課題に鑑みて、引用発明に周知技術2を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、請求人の主張を採用することはできない。

オ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する作用効果は、引用発明及び周知技術2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

カ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術2(もしくは引用発明、周知技術1及び周知技術2)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができる発明ではない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし13に係る発明は、令和元年12月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、本願発明は、日本国内または外国において、その優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であり、また、引用文献1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び引用発明は、上記第2[理由]2(3)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]2(2)で検討した本件補正発明から、「前記複数のブロックコンポーネント(1?4)の角部領域のそれぞれにおいて、固定穴(19)が設けられている、ポケット(17)の形式の切り欠きが設けられている」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明との相違点は、上記第2[理由]2(4)イにおける相違点1及び2のみとなり、上記第2[理由]2(5)に記載したとおり、これら相違点1及び2は実質的な相違点ではない。
本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2[理由]2(5)に記載したとおり、引用発明及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、相違点3に相当する発明特定事項が削除された本願発明は、引用文献1に記載された発明であり、また、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-04-28 
結審通知日 2021-05-11 
審決日 2021-05-26 
出願番号 特願2017-500043(P2017-500043)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F15B)
P 1 8・ 113- WZ (F15B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谿花 正由輝  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 鶴江 陽介
田合 弘幸
発明の名称 弁モジュラーシステム  
代理人 青木 篤  
代理人 三橋 真二  
代理人 南山 知広  
代理人 胡田 尚則  
代理人 鶴田 準一  
代理人 渡辺 陽一  

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