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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1379171
審判番号 不服2021-614  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-15 
確定日 2021-10-13 
事件の表示 特願2018-511455「試料の相を分離するためのデプスフィルトレーションデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月 9日国際公開、WO2017/040650、平成30年12月 6日国内公表、特表2018-536142〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)8月31日(パリ条約による優先権主張 2015年(平成27年)9月1日 米国)を国際出願日とする特許出願であって、平成31年4月22日付けで拒絶理由が通知され、令和元年8月6日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月23日付けで拒絶理由(最初)が通知され、令和2年4月7日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月10日付けで拒絶査定されたところ、令和3年1月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正(以下「本件補正」という)がなされたものである。
また、請求人は令和3年5月7日に上申書を提出している(以下、単に「上申書」という。)。

第2 本件補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

本件補正を却下する。

[理由]

1.本件補正の概要
本件補正は、特許請求の範囲の補正を含んでおり、本件補正により、令和2年4月7日提出の手続補正書における特許請求の範囲の請求項1の記載

「【請求項1】
血液サンプルを血漿相および細胞相に分離するためのデバイスであって、前記デバイスは、
入口部および出口部を含む容器であって、前記入口部は、前記血液サンプルを受容するように構成されている、容器と、
前記血液サンプルを前記血漿相および前記細胞相に分離するための前記容器の中に位置付けされているセパレーターであって、前記セパレーターは、血液サンプルの細胞相と相互作用し血液サンプルの細胞相を遅くして、それにより血漿相が細胞相よりも速く移動することを可能にする、それぞれが異なる細孔サイズを有する複数の繊維フィルターを含む、セパレーターと、
前記セパレーターを越えて圧力勾配を生成させるための部材であって、前記セパレーターを通る前記血液サンプルの移動の速度を増加させ、前記血漿相が前記細胞相の前に前記セパレーターを出て行くようになっている、部材と
を含み、
前記セパレーターは、前記入口部に隣接して位置決めされているオープンセルフォームと、前記出口部に隣接して位置決めされているセルフィルターを含み、
繊維構造はオープンセルフォームからセルフィルターへと直接延びており、前記繊維構造は、前記細胞相の中に位置付けされている粒子を遅くし、前記細胞相のフローをさらに遅くし、前記セパレーターを通る前記血漿相のフローを増加させ、
前記セルフィルターは、前記細胞相がそれを通って移動し前記出口部を通って出てゆくのを妨げる、デバイス。」

は、

「【請求項1】
血液サンプルを血漿相および細胞相に分離するためのデバイスであって、前記デバイスは、
入口部および出口部を含む容器であって、前記入口部は、前記血液サンプルを受容するように構成されている、容器と、
前記血液サンプルを前記血漿相および前記細胞相に分離するための前記容器の中に位置付けされているセパレーターであって、前記セパレーターは、血液サンプルの細胞相と相互作用し血液サンプルの細胞相を遅くして、それにより血漿相が細胞相よりも速く移動することを可能にする、それぞれが異なる細孔サイズを有する複数の繊維フィルターを含む、セパレーターと、
前記セパレーターを越えて圧力勾配を生成させるための部材であって、前記セパレーターを通る前記血液サンプルの移動の速度を増加させ、前記血漿相が前記細胞相の前に前記セパレーターを出て行くようになっている、部材と
を含み、
前記セパレーターは、前記入口部に位置決めされているオープンセルフォームと、前記出口部に位置決めされているセルフィルターを含み、
繊維構造はオープンセルフォームからセルフィルターへと直接延びており、前記繊維構造は、前記細胞相の中に位置付けされている粒子を遅くし、前記細胞相のフローをさらに遅くし、前記セパレーターを通る前記血漿相のフローを増加させ、
前記セルフィルターは、前記細胞相がそれを通って移動し前記出口部を通って出てゆくのを妨げる、デバイス。」

へと補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。)。

2.補正の適否
(1)本件補正による補正事項
本件補正は、特許請求の範囲について、以下に挙げる補正事項を含むものである。
補正事項ア オープンセルフォームが位置決めされる部位を「入口部に隣接して」から「入口部に」と変更する補正

補正事項イ セルフィルタが位置決めされる部位を「出口部に隣接して」から「出口部に」と変更する補正

(2)新規事項の有無についての検討
ア 補正事項アについて
ア-1 記載・看取事項
国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、これらを合わせて「本願翻訳文等」という。また、個々にそれぞれ、「本願明細書翻訳文」、「本願図面」という。)には、以下のように記載されている(下線は当審において付与した)。また、改行を「\」に置き換えて表記することがある。以下同様。)。

(ア)「【請求項3】・・・前記セパレーターは、前記入口部に隣接して位置決めされているオープンセルフォームを含む」(明細書中にも、【0009】、図1?2に関係する実施例に係る【0031】、図5?7に関係する実施例に係る【0035】をはじめ、複数箇所に同様の記載がある。)

(イ)「【請求項9】・・・少なくとも、第1の直径を有する第1の部分、第2の直径を有する第2の部分、および、第3の直径を有する第3の部分を含む、容器と、前記第1の部分に隣接して位置付けされている入口部であって、前記入口部は、前記生物学的サンプルを受容するように構成されている」

(ウ)「【請求項11】・・・前記入口部は、前記第1の部分の前記第1の直径よりも小さい直径を有する幅の狭い供給チャネルを含む」

(エ)「【0008】\ 1つの実施形態によれば、繊維フィルターのうちの少なくとも1つは、無秩序繊維構造を含むことが可能であり、無秩序繊維構造は、第2の相の中に位置付けされている粒子を遅くし、第2の相のフローをさらに遅くし、セパレーターを通る第1の相のフローを増加させる。
【0009】\ 生物学的サンプルは、容器を通って垂直方向に移動することが可能であり、セパレーターは、入口部に隣接して位置決めされているオープンセルフォームを含むことが可能である。デバイスは、セパレーターの後に位置付けされている細胞フィルターをさらに含むことが可能であり、細胞フィルターは、第2の相がそれを通って移動すること、および、第2の相が出口部を通って出て行くことを妨げるように構成されている。」

(オ)「【0031】\図1および図2A?図2Dを引き続き参照すると、および、図3、図4A?図4C、および図5をさらに参照すると、生物学的サンプル10を第1の相14および第2の相16に分離するためのデバイス2は、入口部6および出口部8を含む容器4を含み、入口部6は、生物学的サンプル10を受容するように構成されている。デバイス2は、セパレーター30をさらに含み、セパレーター30は、生物学的サンプル10を第1の相14および第2の相16に分離するための容器4の中に位置付けされている。図3、図4A?図4C、および図5を特に参照すると、セパレーター30は、一連のフィルター32を含むことが可能である。1つの実施形態によれば、フィルター32のうちの少なくとも1つは、無秩序繊維構造を有する繊維フィルターであることが可能であり、無秩序繊維構造は、第2の相16の中に位置付けされている赤血球および細胞粒子22、23を遅くして捕捉し、セパレーターを通して、第2の相16のフローをさらに遅くし、第1の相14のフローを増加させる。セパレーター30の繊維構造は、フロー障害物として作用することによって、血球のフローを減速させるように設計されており、フロー障害物は、血漿/血清または第1の相14がセパレーター30を通ってより速く移動し、したがって、サンプルフローのフロントに向けて分離することを可能にする。1つの実施形態によれば、一連のフィルター32は、図3に示されているように、同じ多孔性を有することが可能である。あるいは、図4A?図4Cに示されているように、セパレーター30または一連のフィルター32は、可変の細孔サイズを有することが可能であり、それを通って、生物学的サンプル10は垂直方向または下降方向に移動し、細孔サイズは、下向き方向Dに減少している。たとえば、一連のフィルター32は、入口部6に隣接して位置決めされているオープンセルフォーム34と、繊維フィルター層35と、セパレーター30の後に位置付けされている細胞捕獲フィルター36とを含むことが可能であり、細胞捕獲フィルター36は、第2の相16がそれを通って移動することおよび出口部8を通って出て行くことを妨げるように構成されている。図5に示されているようなさらに別の実施形態によれば、セパレーター30は、可変の細孔サイズ37、38、39を有する異なるグレードのフィルターによって充填された複数のステージを含み、異なる細胞タイプを徐々に濾過して取り除き、清浄な第1の相14を生み出すことが可能である。」

(カ)「【0035】\ここで、図6A?図6Bおよび図7A?図7Bが参照され、図6A?図6Bおよび図7A?図7Bは、生物学的サンプル110を第1の相114および第2の相116に分離するためのデバイスを示しており、デバイスは、全体的に102として示されており、容器104は、テーパー付きの、段付きの、または円錐形状の構造を有しており、それは、生物学的サンプル110の分離時間を改善し、入口部106において増加した表面積を結果として生じさせ、それは、大きい体積の生物学的サンプル110を加工することを可能にする。また、図5は、容器に関する段付きの構成を示している。デバイス102は、容器104を含み、容器104は、第1の直径D1を有する第1の部分160と、第2の直径D2を有する第2の部分162と、第3の直径D3を有する第3の部分164とを有している。デバイス102は、第1の部分160に隣接して位置付けされている入口部106をさらに含み、入口部106は、生物学的サンプル110を受容するために構成されている。出口部108は、第3の部分164に隣接して位置付けされており、第2の部分162は、第1の部分160と第3の部分164との間に位置付けされている。血漿の分離時間を改善することとなるテーパー付きの、段付きの、または円錐形状の構造を形成するために、第1の直径D1、第2の直径D2、および第3の直径D3は、サイズが徐々に減少することが可能である。段付きの設計は、3つの異なる直径に限定されず、むしろ、容器の入口部から出口部へサイズが減少するように移動する複数の直径を有することが可能であり、円錐形状に接近するということが理解され得る。」

(キ)オープンセルフォームの上流側端面位置を入口部と同一視する記述は請求の範囲及び明細書の各翻訳文中に見いだせない。

(ク)入口部(6,106)の位置について、下記事項が看取できる。

a.図1では容器4の上端部よりやや内方でセパレーター30上端面から上方に離れた位置が示されている。

b.図3では容器4の上部、セパレーター30上端面より上方の空隙部が示されている。

c.図4A?Cでは、容器4はその上端が波線状に描かれるとともに、該波線から若干の空隙を介し、オープンセルフォーム34の上端が描かれ、入口部6として該上端部が指示されている。

d.図5では、容器4に充填された3層のセパレーター37?39のうち上部のセパレーター37の上端面が指示されている。

e.図6A,Bでは何れも、容器104の下部に充填されたセパレーター130の上方、空隙部を介してその上端部近傍を指して入口部106が示されている。また、図7Aでは、容器104の上方の、上端が波線状に記載された筒状部材の内部を指して入口部106が示されている。

ア-2 新規事項についての検討

(ア)補正事項アの意味する範囲について
オープンセルフォームなる部材が「入口部に隣接」して位置決めされることと「入口部に」位置決めされることとは、意味する範囲が重なり合わない別の概念である。
「隣接」とは、「となりあってつづくこと。近隣関係にあること。」(広辞苑第4版)を意味するから、AがBに隣接する(隣接して位置決めされる)とは、AはBと隣り合って続いている、即ち隣り合って接しているにとどまり、AとBとは隣り合う別の位置を占める場合に限られるから、AがBと同じ位置を占めるような関係性を含まないことが明らかである。
一方で、AがBに位置決めされるとは、AとBとが同じ位置を占めることを指し、逆にAがBとは隣り合った別の位置を占める場合は含まれない。
よって、補正事項アは、補正前の記載事項の意味する範囲で行われた補正であるとはいえない。

(イ)本願翻訳文等の記載について
a.オープンセルフォームと入口部との関係についての本願明細書翻訳文の記載は上記ア-1(オ)の「一連のフィルター32は、入口部6に隣接して位置決めされているオープンセルフォーム34と、繊維フィルター層35と、セパレーター30の後に位置付けされている細胞捕獲フィルター36とを含むことが可能」との記載のみである。

b.上記aの記載では、入口部6とオープンセルフォーム34とは、「隣接して位置決めされている」と記載されており、これは上記補正事項アの補正前の記載に対応する。

c.上記看取事項ア-1(ク)cによれば、上記記載事項ア-1(オ)が参照する図4A?Cでは、オープンセルフォーム34の上端面を指して6(入口部)と表記されている。
しかし、下記(a)?(c)の記載・看取事項を総合すると、図4A?Cにおいても、容器4上部に描かれた波線状の部分は容器4の上端ではなく、容器4の上端部は該波線部のさらに上方にあり、容器4の入口部6とは、容器4の該上端部(上端面)からフィルタ充填部位までの空隙を含む領域を曖昧に指す概念であると理解される。
(a)当該各図の容器4はその上端が波線状に描かれており、一般的な図の記法として、ある長尺要素の一端部方向を省略して表示する場合に該省略部分との境界を波線状に描くこと。
(b)上記記載事項ア-1(オ)に「図1および図2A?図2Dを引き続き参照すると、および、図3、図4A?図4C、および図5をさらに参照する」、「図3、図4A?図4C、および図5を特に参照する」、「図5に示されているようなさらに別の実施形態によれば・・・」と記載され、図1?図4が共通して参照され、図5は別の実施例として参照されていること。
(c)上記看取事項ア-1(ク)a,bによれば、図4A?Cと共通して参照される図1?3では何れも容器4の上端部とセパレーター30との間には空隙部があり、前記容器4上端部近傍または前記間隙部を指して「入口部6」としていること。

d.また、図4A?Cについて、オープンセルフォーム34の上端面が入口部6であるとの解釈は、上記ア-1(イ)aで摘記した記載事項と矛盾する。

e.図5は、上記看取事項アー1(ク)dによれば、容器4の上端面までセパレーター30が充填されているが、セパレーター最上層が「オープンセルフォーム」であるとの説明は本願翻訳文等にない。
また、図5については、上記ア-1(カ)の記載事項において「図5は、容器に関する段付きの構成を示している。デバイス102は、容器104を含み、容器104は、第1の直径D1を有する第1の部分160と、第2の直径D2を有する第2の部分162と、第3の直径D3を有する第3の部分164とを有している。デバイス102は、第1の部分160に隣接して位置付けされている入口部106をさらに含み、入口部106は、生物学的サンプル110を受容するために構成されている。」と説明されるとおり、容器104の上端部に隣接してさらに上方に「入口部106」が設けられることを前提としている。また、そのような前提のもとで、図5では容器104に充填されたセパレータの上端面を指して入口部106としている。

f.上記アー1(ク)eに示す図6A,B、図7についても、入口部106の位置として、容器上部またはその上方に接続された筒状部材の形成する空隙部分の上端からその近傍、さらに該空隙部内部に到る領域が示されているといえる。

g.以上a?fから、図4A?Cにおいてオープンセルフォーム34上端面を指して入口部6としているのは、この部位が容器4の上端面であることを示すものでも、さらに、オープンセルフォーム34の上端面が容器4の上端面と一致することを示すものでもなく、たかだか、容器4の上端部の体積要素、つまり容器4の上部で、オープンセルフォーム34を含むセパレーター30が充填されていない空隙部分及び容器4上端部を含む概念である「入口部6」の下端部位置を示すもの、即ち、入口部6とオープンセルフォーム34とは、「となり合ってつづ」いていることを示すに過ぎないというべきである。この解釈は、上記e、fで検討した図5、図6A,B、図7に対する入口部106の指示形態によっても裏付けられる。

(ウ)請求人の主張について
請求人は審判請求書において補正事項アの補正の根拠について、「本出願当初明細書段落[0008]?[0009]、及び、本出願当初図面4Cの記載に基づき行うものであ」る旨主張している。
しかし、これら各段落や図面の記載が補正事項アの根拠となり得ないことは、上記(イ)で述べたとおりである。

(エ)まとめ
以上(ア)?(ウ)によれば、補正事項アは、補正前の記載事項の意味する範囲内でなされたものでもなく、本願翻訳文等の記載を参酌しても、根拠となる記載事項を見いだし得ないものであるから、当業者によって、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項である「当初明細書等に記載した事項」との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるといえる。

イ 補正事項イについて
イ-1 記載・看取事項

(ア)「【請求項9】・・・セパレーターであって、前記セパレーターは、前記容器の中に位置付けされ、前記入口部と前記出口部との間に配設されており、・・・」

(イ)「【0012】\ 本発明の別の態様によれば、生物学的サンプルを第1の相および第2の相に分離するためのデバイスは、少なくとも、第1の直径を有する第1の部分、第2の直径を有する第2の部分、および、第3の直径を有する第3の部分を含む、容器と、第1の部分に隣接して位置付けされている入口部であって、入口部は、生物学的サンプルを受容するように構成されている、入口部と、第3の部分に隣接して位置付けされている出口部とを含み、・・・」

(ウ)「【0014】\ 本発明の別の態様によれば、生物学的サンプルを第1の相および第2の相に分離するためのデバイスは、入口部および出口部を含むホルダーを含む。入口部は、生物学的サンプルを受容するように構成されている。デバイスは、生物学的サンプルを第1の相および第2の相に分離するためにホルダーと協働する少なくとも1つのラテラルフローストリップと、ラテラルフローストリップを越えて圧力勾配を生成させるための部材であって、ラテラルフローストリップを通る生物学的サンプルの移動の速度を増加させ、第1の相が第2の相の前にフローストリップおよび出口部を出て行くようになっている、部材とをさらに含む。少なくとも1つのラテラルフローストリップは、次々に積層された複数のラテラルフローストリップを含むことが可能である。1つの実施形態によれば、ラテラルフローストリップは、大きい底辺および小さい底辺を有する台形形状を有することが可能であり、大きい底辺は、ホルダーの入口部に隣接して位置決めされており、小さい底辺は、ホルダーの出口部に隣接して位置決めされている。」

(エ)【0031】には上記ア-1(オ)の記載がある。

(オ)【0035】には上記ア-1(カ)の記載がある。

(カ)図1,3,4A?6B,8,9からは、容器(4,104、204)の下端(下流端)に出口部(8,108,208)が突出して形成され、その内部が中空であって、内部にセパレーターが配置されていないことが看取できる。
また、図2C,Dでは、図1,3からの類推で出口部と推察される容器4下端から突出した細径部内に同種のハッチが描かれていることが看取できるが、当該ハッチは図2Cにおいて全血サンプル10などの「血漿部14」である旨示されていることが看取できる。

(キ)図5からは、容器4のセパレーター30の部分において、容器4は上層から下層へ段階的に、最も大径の第1の部分、それより小径の第2の部分、それよりさらに小径の第3の部分、該第3の部分より小径の出口部8が順次隣接して設けられていること、前記第1?第3の部分にはそれぞれ、セパレーター30の異なるフィルター37?39が充填されていること、出口部8の内部にはセパレーター30が充填されていないこと、が看取できる。

(ク)その他、本願翻訳文等において、出口部内にセパレーター等のフィルター要素を配置することに関する記述は見いだせない。

イ-2 新規事項についての検討
(ア)補正事項イの意味する範囲について
セルフィルターなる部材が「出口部に隣接」して位置決めされることと「出口部に」位置決めされることとは、意味する範囲が重なり合わない別の概念である。
また、「隣接」の意味については上記ア-2(ア)のとおりである。
よって、補正事項イは、補正前の記載事項の意味する範囲で行われた補正であるとはいえない。

(イ)本願明細書・図面各翻訳文、本願図面の記載について
a.生物学的サンプルの移動方向にそって複数段のフィルタを設ける本件補正後の請求項1に係る発明(ここでは、「本件補正発明」という。)に関係する、セパレーターと出口部との位置関係について、本願明細書翻訳文中に直接的、明示的な記載は見いだせない。
上記イ-1(ウ)では、本件補正発明とは異なりサンプルの移動方向に垂直な向きに複数のフィルタ(ラテラルフローストリップ)が積層する態様において、当該フィルタの「底辺は、ホルダーの出口部に隣接して位置決めされている」ことが記載されている。
また、上記イ-1(イ)(エ)(オ)(キ)を総合すると、容器4の最下段に形成される最も小径の「第3の部分」内部にはセパレーター30のフィルター39が充填され、「出口部108は、第3の部分164に隣接して位置付け」られることが記載されているといえる。

b.上記aで認定された記載事項は、上記補正事項イの補正前の記載に対応する。

c.上記イ-1(カ)の看取事項のとおり、図2C,Dにおいて出口部8内部に描かれたハッチは、全血サンプル10などの「血漿部14」の存在を示すものであって、セパレーター等のフィルター要素が出口部内に存在することを示すものとは解されない。

d.以上a?cのとおり、本願翻訳文等には、補正事項イの補正前の記載に直接対応する記載はなく、本願翻訳文等の記載を総合すると、図5のような、下流側に向かって段階的に縮径する容器4において、セパレーターが充填された最下段の最小の径の部分と出口部8とが隣接していることが記載されているといえるにとどまる。
そして、セパレーターが出口部8に位置決めされる、即ちセパレーターが出口部8に存在することについては、記載も示唆もない。

(ウ)請求人の主張について
請求人は審判請求書において補正事項イの補正の根拠について、「本出願当初明細書段落[0008]?[0009]、及び、本出願当初図面4Cの記載に基づき行うものであ」る旨主張している。
しかし、これら各段落や図面の記載が補正事項イの根拠となり得ないことは、上記(イ)で述べたとおりである。

(エ)まとめ
以上(ア)?(ウ)によれば、補正事項イは、補正前の記載事項の意味する範囲内でなされたものでもなく、本願翻訳文等の記載を参酌しても、根拠となる記載事項を見いだし得ないものであるから、当業者によって、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項である「当初明細書等に記載した事項」との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるといえる。

ウ 上申書における主張について
請求人は上記上申書において、補正事項ア,イの補正の目的や意味について、
「入口部および出口部に「隣接しているのではなく」、「直接位置している」とは、「隣接」するという記載では、各フィルターの位置が入口部の下端および出口部の上端よりも離れた位置であって、各フィルターの効果を十分に発揮できない位置であっても含まれることになることから、「隣接」よりもより狭く位置を特定するという意図をもって「直接」という用語を用いております。すなわち、「両フィルターはそれぞれ入口部および出口部に隣接しているのではなく、それぞれ入口部および出口部に直接位置している」とは、オープンセルフォームが、入口部の下部端に直に接するように位置し、セルフィルダーが、出口部の上部端に直に接するように位置するということであります。」
と主張している。
しかし、本件補正発明における「入口部」、「出口部」が、容器内部の上・下端面から下・上方、セパレータの上・下面にかけて延びる空隙領域を曖昧に指す概念であると解されることは上記アー2(イ)、イー2(イ)で述べたとおりであり、これは、当該上申書における主張において請求人が、「入口部」に「下部端」が、「出口部」に「上部端」があるとしていることと矛盾しない。
そうすると、面ではなくある体積領域である「入口部」、「出口部」について、「入口部(出口部)に隣接して位置決めされる」ことと「入口部(出口部)に位置決めされる」こととの意味する範囲が文言上共通しないことは、上記アー2(ア)、イー2(ア)のとおりである。
仮に、補正の意図が上申書における主張のとおり、「入口部(出口部)に位置決めされること」が「入口部(出口部)に」「直に接する」ことであるなら、「隣接」はそもそも隣り合って接することであるから、「直に接する」こととの間に意味内容の差が存在しないことになるが、この場合は、補正の目的要件の問題が生じる。
また、「入口部(出口部)に位置決めされる」ことが「入口部(出口部)に」「直に接する」との意味を含むとしても、本件補正発明における「入口部」、「出口部」が容器上下端面ではなくある体積領域であることは請求人も上申書において認めるところであるから、「入口部(出口部)に位置決めされる」ことには、「隣接」ではなく、当該体積領域内にオープンセルフォームやセルフィルターが位置する場合を文言上含むことにかわりなく、この点において、本願翻訳文等の開示事項は上記アー2(イ)、イー2(イ)のとおりであることからみて、補正事項ア、イが新規事項を加入するものであることに変わりはない。

エ 新規事項の有無についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、本願翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、また、そのすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において新たな技術事項を導入するものであり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(3)補正の目的要件違反についての検討
ア 上記(2)のとおり、上記補正事項ア、イについての本件補正は新規事項を追加するものであるが、念のため、補正の目的要件についても以下に検討する。
上記(2)ア-2(ア)、同イ-2(ア)のとおり、補正事項ア、イはいずれも、補正前の記載事項の意味する範囲で行われた補正であるとはいえないから、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
また、同項第1,3,4号の何れに規定された事項を目的とするものにも該当しないことは明らかである。

イ また、請求人は上申書において本件補正の目的について(2)ウのとおり主張する。
しかし、補正事項ア、イは、少なくとも文言上、補正前の記載事項の意味する範囲から逸脱した意味となる場合を含むから、補正前の記載事項の意味する範囲で行われた補正であるとはいえないことに変わりはない。
また、仮に補正の目的が上申書における請求人の主張のとおり、「入口部(出口部)に位置決めされること」が「入口部(出口部)に」「直に接する」こととのみ解釈し得るとすれば、本件補正前の「隣接」はそもそも隣り合って接することであるから、本件補正後の「直に接する」こととの間に意味内容の差が存在しないことになるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
これについて上申書では、明瞭でない記載の釈明にあたるとも主張するが、拒絶査定の理由に、当該補正事項ア、イに関し明確性要件違反の指摘は含まれないから、当該主張は失当である。よって、この点を含め、特許法第17条の2第5項第1,3,4号の何れに規定された事項を目的とするものにも該当しないことは明らかである。

ウ したがって、上記補正事項ア、イは、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものではない。
よって、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

エ しかしながら、審判請求書において請求人は、上記各補正事項について、
「この補正は、「前記セパレーターは、前記入口部に隣接して位置決めされているオープンセルフォームと、前記出口部に隣接して位置決めされているセルフィルターを含み、」を「前記セパレーターは、前記入口部に位置決めされているオープンセルフォームと、前記出口部に位置決めされているセルフィルターを含み、」と補正することで、本発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、・・・補正前の発明と発明の産業上の利用分野および解決しようとする課題が同一であるから、この補正事項は特許法第17条の2第3項、第4項、および第5項の規定を満たし、また・・・特許法第17条の2第6項の要件(独立特許要件)も満たすものである。」と主張する。
よって、事案に鑑み、本件補正後の請求項1における、入口部や出口部「に位置決めする」という概念が、同本件補正前の、入口部や出口部に「隣接して位置決め」する、という概念の範囲内のものであって、当該本件補正が特許法第17条の2第3項及び第5項の規定に違反せず、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものにあたると仮定して、本件補正により補正された請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討を続けることとする。

3.本件補正発明の独立特許要件についての検討
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?6に係る発明は、その請求項1?6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(本件補正発明)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)本件補正発明について
本件補正発明は、上記1.の本件補正の概要に示した次のとおりのものである(A?Jは、分説のため当審にて付与した。)

「A 血液サンプルを血漿相および細胞相に分離するためのデバイスであって、
B 前記デバイスは、
入口部および出口部を含む容器であって、前記入口部は、前記血液サンプルを受容するように構成されている、容器と、
C 前記血液サンプルを前記血漿相および前記細胞相に分離するための前記容器の中に位置付けされているセパレーターであって、前記セパレーターは、血液サンプルの細胞相と相互作用し血液サンプルの細胞相を遅くして、それにより血漿相が細胞相よりも速く移動することを可能にする、それぞれが異なる細孔サイズを有する複数の繊維フィルターを含む、セパレーターと、
D 前記セパレーターを越えて圧力勾配を生成させるための部材であって、前記セパレーターを通る前記血液サンプルの移動の速度を増加させ、前記血漿相が前記細胞相の前に前記セパレーターを出て行くようになっている、部材と
を含み、
E 前記セパレーターは、前記入口部に位置決めされているオープンセルフォームと、
F 前記出口部に位置決めされているセルフィルターを含み、
G 繊維構造はオープンセルフォームからセルフィルターへと直接延びており、
H 前記繊維構造は、前記細胞相の中に位置付けされている粒子を遅くし、前記細胞相のフローをさらに遅くし、前記セパレーターを通る前記血漿相のフローを増加させ、
I 前記セルフィルターは、前記細胞相がそれを通って移動し前記出口部を通って出てゆくのを妨げる、
J デバイス。」

(2)引用文献1に記載された発明
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶理由において引用文献1として提示された、本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2004/046716号には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同じ。)。

(ア)1頁7-8行には次の記載がある。
「技術分野\ 本発明は、血球成分を含む血液から血漿もしくは血清成分を分離するために用いられる血漿もしくは血清分離膜に関し、より詳細には、赤血球の破壊を生じさせることなく、血漿もしくは血清成分を分離することを可能とする血漿もしくは血清分離膜、及びフィルタ装置に関する。」

(イ) 2頁15行?4頁9行には次の記載がある。
「発明の開示\本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、赤血球の破壊を引き起こすことなく、血液から血漿もしくは血清成分を確実かつ速やかに分離することを可能とする血漿もしくは血清分離膜、及び該血漿もしくは血清分離膜を用いたフィルタ装置を提供することにある。
本願発明者らは、血液から血漿もしくは血清成分と血球成分とを分離するために種々検討した結果、特定の構造の孔を有する分離膜を用いれば、溶血を引き起こすことなく血球と血漿もしくは血清成分とを分離し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
本発明の血漿もしくは血清分離膜は、血液から血漿もしくは血清を分離するための膜であり、空隙率が30%以下とされていることを特徴とする。
本発明に係る血漿もしくは血清分離膜のさらに他の特定の局面では、膜の一方面から他方面に貫通する複数の貫通孔が設けられている。
本発明のより特定的な局面では、上記貫通孔の径は、0.05?2.0μmの範囲とされる。
本発明に係る血漿もしくは血清分離膜のさらに別の特定の局面では、平均の表面粗さが100nm以下とされている。
本発明に係る血漿もしくは血清分離膜のさらに他の特定の局面では、該血漿もしくは血清分離膜は、血球の混入を防止する血球成分停止膜として用いられる。
また、本発明に係るフィルタ装置は、血球よりも血漿を速く移動させる第1のフィルタ部材と、該第1のフィルタ部材の後段に直列に接続された本発明の血漿もしくは血清分離膜とを備えることを特徴とする。
なお、本明細書において「直列に接続され」とは、直接に連ねられている構成に限定されず、間に他の部材が介在していてもよい。
本発明に係るフィルタ装置のある特定の局面では、上記フィルタ部材が第1のフィルタ部材であり、上記血漿もしくは血清分離膜が第2のフィルタ部材であり、第1のフィルタ部材の前段に、平均繊維径が3.0μm以上、嵩密度が0.3g/cm^(3)以下の繊維からなる第3のフィルタ部材が設けられている。
本発明に係るフィルタ装置のさらに他の特定の局面では、前記第1のフィルタ部材が、繊維からなり、平均繊維径が0.2?3.Oμmかつ充填密度が0.1?0.5g/cm^(3)である。
本発明に係るフィルタ装置の別の広い局面では、一端に開口を有する容器本体と、前記容器本体の開口に液密的に固定された筒状部材と、前記筒状部材内に配置されており、血球よりも血漿を速く移動させる第1のフィルタ部材と、前記筒状部材内において第1のフィルタ部材の後段に直列に接続されており、本発明に従って構成された血漿もしくは血清分離膜からなる第2のフィルタ部材とを備え、第1,第2のフィルタ部材がフィルタ収容部に配置されており、フィルタ収容部の前段に血液収容部が、フィルタ収容部の下流側に血漿もしくは血清収納部が構成されている。
本発明に係るフィルタ装置のさらに他の特定の局面では、前記第1のフィルタ部材の前段に設けられており、平均繊維径が3.0μm以上、嵩密度が0.3g/cm^(3)以下の繊維からなる第3のフィルタ部材がさらに備えられる。」

(ウ) 8頁23行?9頁16行には次の記載がある。
「上記血球よりも血漿を速く移動させる性質の第1のフィルタ部材については、特に限定されないが、例えば細い繊維径を有する合成高分子もしくはガラスからなる繊維または多孔性高分子などを用いることができる。もっとも、血液中の測定成分を吸着してしまう場合には、第1のフィルタ部材を構成する材料を表面処理しておくことが望ましい。表面処理剤としては、特に限定されないが、ポリエーテル系もしくはシリコーン系などの潤滑剤、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどの親水性高分子類もしくは天然の親水性高分子類、または高分子界面活性剤などを用いることができる。
上記第1のフィルタ部材が合成高分子またはガラスからなる繊維の場合、平均繊維径は0.2?3.Oμmの範囲が好ましい。0.2μm末満では溶血が生じやすくなり、3.0μmを超えると、血球と血漿もしくは血清とを分離するために繊維を高密度に充填する必要があり、またフィルタ部材の量が多くなるため、コストが高くなることがある。より好ましくは、繊維径は0.5?2.5μmの範囲とされる。
また、第1のフィルタ部材は繊維径0.2?3.Oμm、充填密度0.1?0.5g/cm^(3)の範囲内で2段以上の複数段構成とされていてもよい。その場合は、上流側より下流側の充填密度を高くするか、あるいは、上流側よりも下流側の繊維径を細くすることが好ましい。これによって、さらに血漿あるいは血清の分離効率を高めることができる。」

(エ) 10頁9行?11頁8行には次の記載がある。
「本発明に係るフィルタ装置のある特定の局面では、一端に開口を有する容器本体と、容器本体の開口に液密的に取り付けられた筒状部材とが備えられ、筒状部材内に、血球よりも血漿もしくは血清を速く移動させる第1のフィルタ部材と、フィルタ部材の下方に直列に接続された上記血漿もしくは血清分離膜からなる第2のフィルタ部材とが備えられる。
このようなフィルタ装置の一例を、図1?図3に示す。
図1に示すフィルタ装置1は、上端に開口2aを有する容器本体2と、容器本体2の開口2aに気密的に挿入された筒状部材3とを有する。容器本体2は、例えば採血管や試験管などにより構成することができ、該容器本体2を構成する材料としては、合成樹脂やガラスなどを適宜用いることができる。筒状部材3についても、合成樹脂またはプラスチックなどの適宜の材料により構成され得る。筒状部材3の下端の外周面には雄ねじが形成されており、他方、容器本体2の開口近傍内周面には、雌ねじが形成されており、上記雌ねじと雄ねじとにより筒状部材3が容器本体2に押し込まれて固定される。この雌ねじと雄ねじの螺合部分を気密シール性を有するように構成することにより、筒状部材3の外周面が容器本体2の内周面に気密的に固定される。
筒状部材3内には、上方にフィルタ部材4が収納されており、フィルタ部材4の下方に、すなわちフィルタ部材4の後段に直列に血漿もしくは血清分離膜5が配置されている。血漿もしくは血清分離膜5の外周縁は筒状部材3の内周縁に密着している。また、フィルタ部材4の上方では筒状部材3の上端開口に栓体6が取り付けられており、それによって筒状部材3の上端開口が密栓されている。
上記容器本体2内を減圧することにより、筒状部材3内に採集された血液がろ過され、それによって本発明に従って血球成分と、血漿もしくは血清とを分離することができる。」

(オ) 12頁15行?13頁17行には次の記載がある。
「本発明に係るフィルタ装置では、好ましくは、血球成分よりも血漿もしくは血清を速く移動させる上記第1のフィルタ部材と、血漿もしくは血清分離膜からなる第2のフィルタ部材とが直列に接続されており、第1のフィルタ部材の上流側に、平均繊維径が3.0μm以上、嵩密度が0.3g/cm^(3)以下の繊維からなる第3のフィルタ部材が設けられる。
第3のフィルタ部材は、平均繊維径3.0μm以上かつ嵩密度0.3g/cm^(3)以下の繊維からなるフィルタである限り、特に限定されない。
平均繊維径が3.0μm以上かつ嵩密度0.3g/cm^(3)以下であればよいが、平均繊維径は20μm以下であることが望ましい。平均繊維径が20μmを超えると、血液中に微量に析出したフィブリンなどを捕捉することができないことがある。平均繊維径が3.0μm未満では、溶血が生じ易くなる。また、嵩密度が0.3g/cm^(3)よりも大きくなると、目詰まりを起こし易くなる。
上記第1?第3のフィルタ部材を備える場合、第1のフィルタ部材と第2のフィルタ部材とが第2のフィルタ部材が下流側となるように直列に接続されており、第1のフィルタ部材の上流側に上記第3のフィルタ部材が設けられている。
従って、血液から、血球成分と、血漿または血清とを分離するに際しては、血液が第3のフィルタ部材上に供給される。第3のフィルタ部材に供給された血液が、第3のフィルタ部材、第1のフィルタ部材を順に通過する。この場合、粘度の高い血液やフィブリンが析出しやすい血液を供給した場合においても、第3のフィルタ部材において、フィブリン等が捕捉され、第1のフィルタ部材における目詰まりが生じ難くなる。
従って、第1のフィルタ部材において、赤血球に過剰な圧力が加わり難いため、溶血の発生を抑制することができる。第1のフィルタ部材では、血球成分よりも血漿または血清が速やかに移動する。従って、血漿もしくは血清が第2のフィルタ部材を通過し、血液から分離される。また、第1のフィルタ部材を通過して来た血球は、第2のフィルタ部材において捕捉され、第2のフィルタ部材の下流には漏洩しない。」

(カ) 13頁25行?14頁13行には次の記載がある。
「図4は、本発明の他の実施形態に係るフィルタ装置を示す略図的正面断面図である。フィルタ装置21は、注射用シリンジ22を用いて構成されている。シリンジ22内に、第1のフィルタ部材23、第2のフィルタ部材24が第2のフィルタ部材24が下流側となるように配置されている。そして、第1のフィルタ部材23上に第3のフィルタ部材25が配置されている。
図5に示すように、フィルタ装置21の使用に際しては、シリンジ22の上部から血液を供給し、シリンジのピストン26を押し込む。それによって、血液に圧力が加えられ、シリンジの先端22a側から分離された血漿または血清を採取することができる。
また、ピストン26を用いる方法に代えて、シリンジ22の先端22a側から吸引することによって血漿または血清を分離することもできる。
例えば、シリンジ22の先端に注射針を取り付け、該注射針を図示しない真空採血管の栓体に刺通させることにより、シリンジの先端側から吸引し、血漿または血清を該真空採血管に採取することができる。」

(キ) 14頁14行?26行には次の記載がある。
「図6は、さらに他の実施形態のフィルタ装置を示す正面断面図である。
フィルタ装置31は、ケース32,33からなるカートリッジを有する。
ケース32とケース33とは、ネジ止め等により着脱自在にかつ液密的に固定されている。上記フィルタ31内に、第1?第3のフィルタ部材23?25が、図4に示した実施形態と同様に配置されている。フィルタ31は、血液が供給される入ロポート32aと、分離された血漿もしくは血清が排出される出ロポート33aとを有する。
使用に際しては、入ロポート32aをシリンジと接続し、シリンジに採取された血液をピストンで押圧することにより、血漿または血清を第1?第3のフィルタ部材23?25において血液から分離し、出ロポート33aから採取することができる。フィルタ装置31においても、出ロポートと33a側を吸引することにより、血漿または血清の分離を行ってもよい。」

(ク)図4は次のとおりである。











(ケ)図5は次のとおりである。



(コ)図6は次のとおりである。



イ 引用文献1の図面から認定できる事項
(ア)図4からは、フィルタ装置21の注射用シリンジ22は円筒形状の上部と漏斗形状の下部とからなる中空体であり、その円筒形状の上部の内部に、その上端面の開口から空隙を介して第3のフィルタ部材25、第1のフィルタ部材23、及び第2のフィルタ部材24が順に直列に隙間なく装填され、第2のフィルタ部材24の下方には、下方に向かって注射用シリンジ22の径が縮小する空隙部分と、その下方の細径筒状の空隙部分とからなる前記漏斗形状の部分が形成され、その下端部開口が注射用シリンジの先端22aとなっていることが看取できる。
また、上記ア(カ)の記載を参照して図5を合わせ見ると、前記注射用シリンジ22の上部開口から、注射用ピストン26が挿入されるものであることを読み取ることができる。

(イ)図6からは、フィルタ31のカートリッジは、上半部の逆漏斗形状のケース32と、下半部の漏斗形状のケース33とを、大径部同士突き合わせて接合した外形を呈し、その上端の入口ポート32aから下方に向かって、細径で中空の筒状部を経て、下方ほど拡径する空隙部を介し、第3のフィルタ部材25,第1のフィルタ部材23、第2のフィルタ部材24が順に直列に隙間なく装填され、第2のフィルタ部材24の下方は、下方ほど縮径する空隙部を介し、細径で筒状の空隙部を経て、出口ポート33aに到る構成を備えることが看取できる。

ウ 上記アの各記載事項及び上記イで認定した図面の記載事項から、以下の事項が導かれる。

(ア)上記記載事項(カ)によれば、図4,5の実施形態では、「フィルタ装置21の使用に際しては、シリンジ22の上部から血液を供給し、シリンジのピストン26を押し込む。それによって、血液に圧力が加えられ、シリンジの先端22a側から分離された血漿または血清を採取することができる」のであるから、少なくとも使用時、シリンジ22の上端、および下端である「先端22a」は、それぞれ開口していることが明らかである。

(イ)記載事項ア(キ)によれば、「フィルタ31のカートリッジは、血液が供給される入ロポート32aと、分離された血漿もしくは血清が排出される出ロポート33aとを有する」のであるから、カートリッジの上端である入口ポート32a、下端である出口ポート33aはいずれも、少なくとも使用時には開口していることが明らかである。

(ウ)記載事項ア(カ)によれば「シリンジ22の上部」からは「血液を供給」されるのであり、記載事項ア(キ)によればカートリッジの「入ロポート32a」には「血液が供給される」のであり、該開口からフィルタ部材23?25が装填されている部位までに空隙が存在するのであるから、シリンジ22の上部開口や、同じく開口であるカートリッジの入口ポート32aから供給された血液は、まず該各開口から受け入れ、シリンジやカートリッジ内の、前記開口からフィルタ部材23?25装填部位までの間の空隙部分に取り込まれてフィルタ部材の上面に達すると理解される。

(エ)記載事項ア(オ)には「血液から、血球成分と、血漿または血清とを分離するに際しては、血液が第3のフィルタ部材上に供給される。第3のフィルタ部材に供給された血液が、第3のフィルタ部材、第1のフィルタ部材を順に通過する。」、「第1のフィルタ部材では、血球成分よりも血漿または血清が速やかに移動する。従って、血漿もしくは血清が第2のフィルタ部材を通過し、血液から分離される。」なる各機序が記載されている。
これらから、第3のフィルタ部材、第1のフィルタ部材、第2のフィルタ部材からなる「第1?第3のフィルタ部材」は「血液から、血球成分と、血漿または血清とを分離する」ものであり、そのうち「第1のフィルタ部材」は「血球成分よりも血漿または血清が速やかに移動する」作用を奏する部材であるといえる。
また、記載事項ア(ウ)によれば、「第1のフィルタ部材は繊維径0.2?3.Oμm、充填密度0.1?0.5g/cm^(3)の範囲内で2段以上の複数段構成とされていてもよい。その場合は、上流側より下流側の充填密度を高くするか、あるいは、上流側よりも下流側の繊維径を細くすることが好ましい」のであるから、前記「第1?第3のフィルタ部材」のうち「第1のフィルタ部材」が、繊維径又は充填密度が相違する複数段の繊維フィルタ部材から構成される態様が記載されているといえる。

(オ)記載事項ア(カ)には「フィルタ装置21の使用に際しては、シリンジ22の上部から血液を供給し、シリンジのピストン26を押し込む。それによって、血液に圧力が加えられ、シリンジの先端22a側から分離された血漿または血清を採取することができる。\ また、ピストン26を用いる方法に代えて、シリンジ22の先端22a側から吸引することによって血漿または血清を分離することもできる。」と記載され、吸引機構に関し「シリンジ22の先端に注射針を取り付け、該注射針を図示しない真空採血管の栓体に刺通させることにより、シリンジの先端側から吸引し、血漿または血清を該真空採血管に採取することができる。」との記載がある。
記載事項ア(キ)には「使用に際しては、入ロポート32aをシリンジと接続し、シリンジに採取された血液をピストンで押圧することにより、血漿または血清を第1?第3のフィルタ部材23?25において血液から分離し、出ロポート33aから採取することができる。フィルタ装置31においても、出ロポートと33a側を吸引することにより、血漿または血清の分離を行ってもよい。」と記載されている。
これらの記載によれば、シリンジまたはカートリッジに対し、血漿または血清の分離を行うに際し、血液に圧力を加えるため、上部開口側に少なくともピストンからなる押圧機構、または、下部開口側に、例えば真空採血管と注射針とからなる吸引機構を設けることが記載されているといえる。

エ 引用文献1に記載された発明
上記アの各記載事項、並びに上記イ・ウの認定事項から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a?jは、本件補正発明のA?Jに対応させて付与した。以下「構成a」などという。)。

「a 血球成分を含む血液から血漿もしくは血清成分を分離するために用いられるフィルタ装置であって、
b 前記フィルタ装置は、上端に開口とその下方の空隙、および下端に開口とその上方の空隙を有する、シリンジまたはカートリッジからなる部材であって、
c 血液から、血球成分と、血漿または血清とを分離するための第1?第3のフィルタ部材であって、該第1?第3のフィルタ部材は、そのうち第1フィルタ部材が、繊維径0.2?3.Oμm、充填密度0.1?0.5g/cm^(3)の範囲内で血球成分よりも血漿または血清が速やかに移動するものであり、繊維径又は充填密度が相違する複数段の繊維フィルタ部材から構成される、第1?第3のフィルタ部材と、
d シリンジまたはカートリッジからなる部材に供給された血液に圧力をかけるために、上端開口側に少なくともピストンからなる押圧機構、または、下端開口側に、例えば真空採血管と注射針とからなる吸引機構を設け、血液から血漿または血清が分離されて第2のフィルタ部材の下流には血球が漏洩しないものであり、
e 前記第1?第3のフィルタ部材のうち第3のフィルタは、最も上端開口部側で、シリンジまたはカートリッジからなる部材の上端の開口とその下方の空隙からなる部分に隣接して、血液中のフィブリン等を捕捉し、第1のフィルタ部材における目詰まりが生じ難くするために装填される、繊維からなる第3のフィルタ部材と、
f 最も下端開口部側に、シリンジまたはカートリッジからなる部材の下端の開口とその上方の空隙からなる部分に隣接して装填される、貫通孔を有する血漿または血清分離膜からなる第2のフィルタ部材を含み、
g 前記第1?第3のフィルタ部材は隙間なく装填されており、該第1?第3のフィルタ部材のうち、第3のフィルタ部材から第2のフィルタ部材に到る第3・第1フィルタは何れも繊維フィルタ部材であり、
h 少なくとも前記繊維フィルタ部材のうち第1のフィルタ部材は血球成分よりも血漿または血清が速やかに移動するものであり、
i 前記第2のフィルタ部材は、血球を捕捉し下流に漏洩しないものである、
j フィルタ装置。」

(3)周知文献2に記載された事項
本願優先日前に公知となった特開1997-68484号公報(拒絶査定における引用文献2;以下、「周知文献2」という。)には次の記載がある。
ア 「【0002】液体のろ過は広い分野で利用される分離手段である。たとえば大腸癌スクリーニングの指標となる糞便中に含まれるヘモグロビンを検出する時には、糞便懸濁液からろ過によって上清を分離する操作が必要になる。また食品の微生物検査試料の調製においても懸濁液のろ過操作がしばしば要求される。」

イ「【0026】開口部の構造1:図3は液体流路を持つ第2ピストン4と、シリンダ7を閉塞する第1ピストン3とで構成されるピストンを示す分解斜視図である。第2ピストン4の縦方向の外周面にスリット12からなる開口部5を設けている。この態様では第2ピストン4側にスリット12を設けスリット12に囲まれた中空部位14にろ過材9を収容して上部の解放端を第1ピストン3で塞ぐ構造となっている。図3のろ過材9は、グラスウールフィルタ11とポリウレタンスポンジフィルタ10の2層構造となっている。また第2ピストン4は、その内部に中空部位14から滴下口8にいたる液体流路6を備えている。このような構成とすることによって、ピストンを容器1内部方向に挿入するまでは密封状態が維持される(図1)。そしてピストンを容器1内部方向に挿入すると開口部5が容器内部空間と連絡し液体の採取が開始する(図2)。」

ウ 図1?3は次のとおりである。






(4)周知文献3に記載された事項
本願優先日前に公知となった特許第5713277号公報(拒絶査定における引用文献3;以下、「周知文献3」という」。)には、次の記載がある。
ア 「【0001】本発明は、インフルエンザ等の抗原の検出に用いる検出キットに関し、特に、試薬容器の蓋の改良に関する。
【背景技術】【0002】インフルエンザ等の抗原の検出に用いる検出キットが、診断補助のために利用されている。例えば、ある従来のインフルエンザウイルス抗原検出試薬は、次の様な手順で判定を行う。
(1)試薬容器の蓋を取り、検体を採取した綿棒を容器本体内の検体検出試薬に浸し、よく撹拌する。
(2)容器本体の外から綿棒を数回しごいて、検体を絞り出す。
(3)容器本体に、別添のろ過フィルタ付きノズルを装着する。
(4)アッセイストリップを平らな場所に置き、抽出試料7滴を試料添加部に滴下する。
(5)抽出試料を滴下してから20分後に、明るいところでアッセイストリップの判定部を目視により判定する。」

イ 「【0017】フィルタ部22は、繊維やスポンジ状の樹脂等でできており、検体抽出試薬12に検体が混ざってできる抽出試薬を通過させることにより、固形物や半流動物等を取り除く。\ フィルタ押さえ23は、フィルタ部22を固定するための取り付け金具である。\ 操作部24は、使用時において、フィルタ部22により固形物や半流動物等が取り除かれた抽出試薬を排出する孔を、使用者の操作に因って出現させる。」

ウ 図2は次のとおりである。




(5)周知文献4に記載された事項
本願優先日前に公知となった特開2011-152490号公報(以下、「周知文献4」という。)には、以下の記載がある。
ア 「【0020】本実施形態にかかるフィルター(濾過材)1は、図1および図2に示すように、多数の気孔2(図2参照)が相互に連通するように、ほぼ全体に亘って形成されており、連通した気孔2によって流体(たとえば、水)の通過が許容されている。そして、通過する流体に混入された異物を気孔2によって除去するようになっている。
【0021】本実施形態では、フィルター1は、図1に示すように、中心軸に沿って流体を導出する中心通路3を形成した所定厚みTの円筒状に形成されており、流体は、円筒状のフィルター1の外周から流入して肉厚内部を通過したのち中心通路3へと流出し、当該中心通路3を伝って外方に送給されるようになっている。
【0022】さらに、本実施形態では、気孔2は、図2に示すように、当該気孔2の孔径dが、通過する流体の上流側から下流側、すなわち、円筒状のフィルター1の外周から内周に向かって徐々に小さくなるように形成されている。そして、それら多数の気孔2が相互に連通したオープンセル構造をしている。すなわち、本実施形態にかかるフィルター1は、円筒状のフィルター1の外周から内周に向かって孔径dが徐々に小さくなる気孔2を相互に連通させた三次元の網目構造に形成されている。なお、気孔2の孔径dが徐々に小さくなるように配列する方法については後述する。
【0023】本実施形態にかかるフィルター1を用いて水(流体)を濾過する場合、濾過しようとする水は、フィルター1の外周面からフィルター1の内部に導入され、フィルター1内部のオープンセル構造を構成する三次元網目構造の分岐および集合する連通孔2cを通過して中心側へと移動して中心通路3へと至る。なお、連通孔2cは、連通する気孔2の孔径dが大きければ大きくなり、連通する気孔2の孔径dが小さければ小さくなる。」

イ 「【0029】次に、上述したフィルター1を用いた水処理装置10について説明する。
【0030】この水処理装置10は、図2に示すフィルター1を用いてフィルターユニット11を構成し、当該フィルターユニット11を水の浄化経路としての浄化主通路12に配置することにより構成されている。
【0031】フィルターユニット11は、スポンジ状のフィルター1を収納するハウジング11aを有しており、このハウジング11aは、両端がエンドプレート11b、11cで閉塞された円筒形を成している。そして、ハウジング11aの内側にフィルター1が同軸上に配置されている。フィルター1の両端は遮蔽板1a、1bで閉止されるとともに、中心通路3の内周には、多孔質材で形成されて補強部材を兼ねる集水管1cが取り付けられている。
【0032】水流入側(図4中下方)のエンドプレート11bの中心部には、吸水管11dが接続されており、給水口11eが形成されている。また、水流出側(図4中上方)のエンドプレート11cの中心部には、吐出管11fが接続されており、吐出口11gが形成されている。」

ウ 図1,図2は次のとおりである。





(6)周知文献5に記載された事項
本願優先日前に公知となった米国出願公開第2006/0060531号明細書(以下、「周知文献5」という。)には、次の記載がある。
ア 「[0085]During operation, pressure provided by a filter head draws fluid from a container on the piercing instrument 116, along the channel 124 through the pre-filter 140.The pre-filtered fluid is then alternately passed between the reservoirs 112, 113,and filtrate then moves past the filter membrane 118 and is collected in the well 142. The pre-filter 140 filters the fluid before it reaches the reservoirs 112,113 and allows the filter membrane 118 to work more efficiently thereby speeding the filtration process and producing a higher quality of filtrate. For example, when filtering a blood specimen in the microfiltration cell 110, a quantity of red blood cells or other interference could be reduced in the pre-filter 116. When filtering a serum specimen, cells, fibrin strands, or other interference could be reduced.
[0086]The pre-filter 140 described above and the pre-filters 240, 340 described below are preferably of the type having a torturous path which freely passes liquids but traps solids, for example, typical depth filters or cell traps. Filter materials can be chosen based on their ability to trap cells or other solids, and treatments such as surface treatments can be applied to the filter materials to enhance cell trapping or solids trapping properties. Example filter materials include plastic open cell foam, glass fibers, cotton fibers, and hollow core tubular filters. The prefilter can also be configured to utilize chemical or biological characteristics to bind cells, fibrin strands or other solids present in a fluid sample. Alternatively, the pre-filter can employ an electric potential or a temperature differential to attract solids from a fluid.」

(当審訳:「[0085]動作中、フィルタヘッドによって与えられた圧力は、穿孔器具116上の容器から流体を汲み上げるとき、プレフィルター140を介して流路124に沿っている。予備濾過された流体は、リザーバ112、113を交互に通過し、濾液は、濾過膜118を通過し、ウェル142に収集される。プレフィルター140は流体をリザーバ112、113に到達する前に濾過し、フィルタ膜118をより効率的に動作することを可能にし、これによって、濾過プロセスを迅速化し、より高い品質の濾液を生成する。例えば、精密濾過セル110内の血液検体を濾過する場合、赤血球または他の干渉成分の量をプレフィルター116において低減することができる。血清試料を濾過する場合、細胞、フィブリン鎖、その他の干渉成分を低減することができる。
[0086]上述したプレフィルター140及び下述するプレフィルター240、340は、好ましくは、液体を自由に通過するが固形物は捕捉する曲がりくねった経路を有する、例えば一般的なデプスフィルターまたは細胞捕捉体のようなものである。フィルタ材料は存在しうる細胞又は他の固形物に基づいて選択することができ、細胞捕捉または固形物捕捉特性を強化するために、フィルタ材料に表面処理等の処理を行なう。例えば、フィルタ材料は、プラスチック製のオープンセルフォーム、ガラス繊維、綿繊維、および中空コア筒状フィルタを含む。プレフィルターはまた、流体試料中に存在する細胞、フィブリン鎖または他の固形物に結合する化学的または生物学的特性を利用するように構成することができる。あるいは、プレフィルタは、流体から固形物を引き付けるために電位又は温度差を用いることができる。」)

(7)周知文献6に記載された事項
本願優先日前に公知となった特開2006-151840号公報(以下、「周知文献6」という。)には、次の記載がある。
ア 「【0001】\ 本発明はウイルスの除去方法に関する。より詳しくは、医薬用蛋白質製剤を製造するためのウイルス除去方法に関する。」

イ 「【0051】こうして、共存する蛋白質に影響を与えず、ウイルスのみが凝集する条件を設定し、後述する親水性膜を透過させることにより、ウイルスは膜を透過させる前の溶液中の1000分の1以下、好ましくは1万分の1以下、より好ましくは検出限界以下まで除去される。
・・・
【0053】本発明で用いられる親水性膜としては、単分子状態のウイルス径よりも大きい膜孔径を有する親水性膜であれば、特に限定されない。
・・・
【0055】上述の材質を有する親水性膜として、具体的には、・・・、メトリセルシリーズ、ベリセルシリーズ、・・・などが挙げられる。
【0056】単分散状態のウイルス径よりも大きい膜孔径としては、分離される蛋白質が膜に目づまりを起こさない膜孔径であれば特に限定されないが、約1.5倍?約50倍、より好ましくは約1.5倍?約25倍、さらに好ましくは約1.5倍?約10倍の膜孔径があげられる。
【0057】例えば、平均粒子径18?24nmのパルボウイルスを除去する場合には、好ましくは35nmから1μm程度の膜孔径を有する親水性膜、より好ましくは35nmから0.45μm程度、さらに好ましくは35nmから0.2μm程度の膜孔径を有する親水性膜を用いることができる。以上のように、除去を行おうとするウイルスのウイルス径により、膜孔径の大きさを適宜変更することができる。
【0058】・・・上述した親水性膜を含めて、現在市販されている製品の膜孔径の規定方法は一定していないため、以下に本発明で用いられる主な膜とその膜孔径を記載する:・・・、GN-4メトリセルフィルター〔公称孔径0.8μm〕、GN-6メトリセルフィルター〔公称孔径0.45μm〕、FPベリセルフィルター〔公称孔径0.2μm,0.45μm〕・・・。
【0059】なお、「公称孔径」とは精密ろ過膜の分離性能を表す孔径であり、バクテリアチャレンジ試験とバブルポイント試験により規定される孔径である。」

(8)本件補正発明と引用発明との対比
ア 構成aの「血球成分を含む血液から血漿もしくは血清成分を分離する」こと、「フィルタ装置」はそれぞれ、構成Aの「血液サンプルを血漿相および細胞相に分離する」こと、「デバイス」に相当する。

イ 構成Bの「受容する」の字義は「受け入れて取り込むこと」(広辞苑第4版)である。
また、本願明細書翻訳文の【0040】には「デバイス302は、毛細管圧を介して生物学的サンプル310を受容するように構成されている毛細管350を含む。」との、【0041】には「図11A?図11Dに示されているように、動作の間に、生物学的サンプル310、たとえば、血液などが、毛細管350の中に受容される。」との各記載があり、ここで血液などを「受容」するのは何らかの体積要素の開口端などではなく、「毛細管」という体積要素そのものである。このことから、本件補正発明における「受容」とは、上記字義のとおり、単に容器すなわち体積要素の開口端を通過する、すなわち該開口端に入るというのではなく、該開口端を経て体積要素(容器)の内部に(血液を)受け入れ、取り込むとの意味であると解される。
そうすると、本件補正発明における「血液サンプルを受容するように構成されている」入口部とは、容器の開口端ではなく、該開口端から容器内部にかけての、血液を受け入れ、取り込むことができる空隙部分までを含めた部分を指すと認められる。
この解釈は、本願の図1・図3で入口部6が容器の上端開口よりも容器内部の空隙域を指して描かれていること、また図4A?Cにおいて、入口部6が上部空隙部分が省略された容器の空隙部下端、フィルタ34の上端面を指して描かれていることとも矛盾しない。
同様に、出口部8についても、図1,3,4A?C何れにおいても、容器下端の内部が空隙である細径円筒部を指して描かれていることから、本件補正発明における出口部は容器下端開口部のみではなく、少なくとも該開口部へつづく細径円筒部も含む部分を指すと認められる。
よって、構成bの「上端」の「開口とその下方の空隙」、「下端」の「開口とその上方の空隙」、「シリンジまたはカートリッジからなる部材」はそれぞれ、構成Bの「入口部」、「出口部」、「容器」に相当するといえる。

ウ 構成cの「血球成分と、血漿または血清とを分離するための第1?第3のフィルタ部材」は構成Cの「前記血液サンプルを前記血漿相および前記細胞相に分離するための前記容器の中に位置付けされているセパレーター」に相当し、特に構成cの「第1?第3のフィルタ部材」は構成Cの「セパレーター」に相当する。
また、構成cの「血球成分よりも血漿または血清が速やかに移動するものであり、繊維径又は充填密度が相違する複数段の繊維フィルタ部材から構成される」「第1のフィルター部材」は、繊維フィルターにおいて繊維径や充填密度が相違すれば細孔サイズが相違することになることが明らかであるから、構成Cの「血液サンプルの細胞相と相互作用し血液サンプルの細胞相を遅くして、それにより血漿相が細胞相よりも速く移動することを可能にする、それぞれが異なる細孔サイズを有する複数の繊維フィルター」に相当するといえる。

エ 構成dにおいて、シリンジまたはカートリッジからなる部材の上端開口側の押圧機構または下端開口側の吸引機構により「シリンジまたはカートリッジからなる部材に供給された血液に圧力をかける」ということは、内部に第1?第3のフィルター部材が装填されたシリンジまたはカートリッジからなる部材の内部の血液に対し、上下流方向に上端開口側に高く下端開口側に低くなる圧力勾配を印加することにほかならない。
また、前記「血液に圧力をかける」ことにより、該圧力をかけない場合に比べて、シリンジまたはカートリッジからなる部材の内部の血液に下流方向への移動速度を増進させる作用が働くことも物理法則上明らかであるといえる。
また、構成dの「血液から血漿または血清が分離されて第2のフィルタ部材の下流には血球が漏洩しない」ことは、構成Dの「前記血漿相が前記細胞相の前に前記セパレーターを出て行くようになっている」ことに相当する。
よって、構成dの「ピストンからなる押圧機構」及び「真空採血管と注射針とからなる吸引機構」は構成Dの「前記セパレーターを越えて圧力勾配を生成させるための部材」に、「前記セパレーターを通る前記血液サンプルの移動の速度を増加させ、前記血漿相が前記細胞相の前に前記セパレーターを出て行くようになっている」との作用と共に相当するといえる。

オ 構成eの「第3のフィルタ部材」は、「第1のフィルタ部材」とは異なる種類のフィルタ部材である。また、第1?第3のフィルタ部材の中で「最も上端開口部側で、シリンジまたはカートリッジからなる部材の上端の開口とその下方の空隙からなる部分に隣接して」、すなわち当該部分に面して存在するフィルタ部材であるから、構成Eの「入口部」に相当する「上端の開口とその下方の空隙からなる部分」との位置関係において、構成Eの「前記入口部に位置決めされている」に相当するといえる。
また、構成eの「第3のフィルタ部材」は、フィルターである点で構成Eの「オープンセルフォーム」と共通する。

カ 構成fの「第2のフィルタ部材」は、「シリンジまたはカートリッジからなる部材の下端の開口とその上方の空隙からなる部分に隣接して」すなわち当該部分に面して「装填される」ものであるから、構成Fの「出口部」に相当する構成fの「シリンジまたはカートリッジからなる部材の下端の開口とその上方の空隙からなる部分」との位置関係において、構成Fの「前記出口部に位置決めされている」に相当するといえる。
また、構成fの「貫通孔を有する血漿または血清分離膜からなる第2のフィルタ部材」は、フィルターである点で構成Fの「セルフィルタ」と共通する。

キ 構成gにおいて「前記第1?第3のフィルタ部材は隙間なく装填されており、該第1?第3のフィルタ部材のうち、第3のフィルタ部材から第2のフィルタ部材に到る第3・第1フィルタは何れも繊維フィルタ部材であ」るから、構成gにおいて「繊維フィルタ部材」の繊維構造は、最上層の「第3のフィルタ部材」から最下層の「第2のフィルタ部材」まで直接、すなわち断絶なく延びているといえる。
また、本件補正発明における「オープンセルフォーム」は、本願翻訳文等に特段の説明がないが、一般に気泡どうしが連続した発泡体を指す用語であり、繊維からなる構造、すなわち繊維構造の部材ではない。また、本件補正発明における「セルフィルター」についても本願翻訳文等に特段の説明がないが、当該分野においては一般に、細胞等を分離するための多孔質膜を指す用語であり、少なくとも繊維構造のものに限られない。そうすると、構成Gにおける「繊維構造はオープンセルフォームからセルフィルターへと直接延びており」なる特定事項は、オープンセルフォームとセルフィルターとの間が繊維構造で満たされている状態を指す、少なくともそのような場合を含むと解される。
よって、構成gの「前記第1?第3のフィルタ部材は隙間なく装填されており、該第1?第3のフィルタ部材のうち、第3のフィルタ部材から第2のフィルタ部材に到る第3・第1フィルタは何れも繊維フィルタ部材であ」ることは、最上層のフィルタ部材と最下層のフィルタ部材とに挟まれた領域について、構成Gの「繊維構造は」・・・「直接延びており」に相当するといえる。

ク 構成hの「少なくとも前記繊維フィルタ部材のうち第1のフィルタ部材は血球成分よりも血漿または血清が速やかに移動するものであ」ることは、構成Hの「前記繊維構造は、前記細胞相の中に位置付けされている粒子を遅くし、前記細胞相のフローをさらに遅くし、前記セパレーターを通る前記血漿相のフローを増加させ」ることに相当する。

ケ 構成iの「前記第2のフィルタ部材は、血球を捕捉し下流に漏洩しないものである」ことは、構成Iの「前記セルフィルターは、前記細胞相がそれを通って移動し前記出口部を通って出てゆくのを妨げる」ことに相当する。

コ 一致点・相違点
上記ア?ケによれば、本件補正発明と引用発明とは下記(ア)の点で一致し、下記(イ)?(ウ)の点で相違する。
(ア)一致点
「A 血液サンプルを血漿相および細胞相に分離するためのデバイスであって、
B 前記デバイスは、
入口部および出口部を含む容器であって、前記入口部は、前記血液サンプルを受容するように構成されている、容器と、
C 前記血液サンプルを前記血漿相および前記細胞相に分離するための前記容器の中に位置付けされているセパレーターであって、前記セパレーターは、血液サンプルの細胞相と相互作用し血液サンプルの細胞相を遅くして、それにより血漿相が細胞相よりも速く移動することを可能にする、それぞれが異なる細孔サイズを有する複数の繊維フィルターを含む、セパレーターと、
D 前記セパレーターを越えて圧力勾配を生成させるための部材であって、前記セパレーターを通る前記血液サンプルの移動の速度を増加させ、前記血漿相が前記細胞相の前に前記セパレーターを出て行くようになっている、部材と
を含み、
E’ 前記セパレーターは、前記入口部に位置決めされている上部のフィルターと、
F’ 前記出口部に位置決めされている下部のフィルター含み、
G’ 繊維構造は上部のフィルターから下部のフィルターへと直接延びており、
H 前記繊維構造は、前記細胞相の中に位置付けされている粒子を遅くし、前記細胞相のフローをさらに遅くし、前記セパレーターを通る前記血漿相のフローを増加させ、
I’ 前記下部のフィルターは、前記細胞相がそれを通って移動し前記出口部を通って出てゆくのを妨げる、
J デバイス。」

(イ)相違点1
構成E,Gに関し、入口部に位置決めされている上部のフィルタが本件補正発明では「オープンセルフォーム」であるのに対し、引用発明では繊維からなる第3のフィルタである点。

(ウ)相違点2
構成F,G,Iに関し、出口部に位置決めされている下部のフィルタが本件補正発明では「セルフィルター」であるのに対し、引用発明では貫通孔を有する血漿または血清分離膜である点。

(9)当審の判断
ア 相違点1について
(ア)本件補正発明における、セパレーターを構成するフィルター群のうち入口部に位置決めされるフィルター部材を「オープンセルフォーム」とすることの技術的意義や、「オープンセルフォーム」自体の定義については、本願翻訳文等にも特段の記載がないから、その解釈は当該用語の一般的な意味によることとなる。
(イ)そこで検討するに、「オープンセルフォーム」とは一般に、上記(5)の周知文献4にも記載されたとおり、「連続気泡発泡体」とも訳される、発泡体の気泡が相互に連続して((5)ウの図1(b)参照)透液性を示すスポンジ様の素材を意味し、そのうち「オープンセル」の字義は「ウレタンなどの立体構造の1つ。閉殻空洞が泡のように多数集まっている。」であり、ここでの「閉殻空洞」の字義は「多面体様だが、面が無く、辺だけで構成された立体構造。」である(何れも「デジタル大辞泉」による。)。
(ウ)また、「オープンセルフォーム」に該当する透液性のウレタンフォーム等のスポンジ素材は、グラスウールや樹脂繊維などの繊維構造の素材と併用され、またはそれと可換に、固液分離のための濾材(フィルタ)に汎用される素材であることは、次のa,bに示す周知文献の記載からも明らかである。
a.上記(3)に示した周知文献2には、糞便懸濁液や食品懸濁液から上清を濾過するために「グラスウールフィルタ11とポリウレタンスポンジフィルタ10の2層構造」つまり繊維構造のフィルタとオープンセルフォームに該当するスポンジフィルタとを併用することが記載されている。
b.上記(4)に示した周知文献3には、検体と試薬との混合液から「固形物や半流動物等を取り除く」ために「繊維やスポンジ状の樹脂等ででき」たフィルタ部によって濾過することが記載されており、固液分離において繊維構造のフィルタと、オープンセルフォームに該当するスポンジ様フィルタとは可換であることを理解することができる。
(エ)また、特に血液の液体分離の分野に限っても、上記(6)に示した周知文献5に、
「精密濾過セル110内の血液検体を濾過する場合、赤血球または他の干渉成分の量をプレフィルタ116において低減することができる。血清試料を濾過する場合、細胞、フィブリン鎖、その他の干渉成分を低減することができる。・・・上述したプレフィルター140及び下述のプレフィルター240、340は、好ましくは、液体を自由に通過するが固形物は捕捉する曲がりくねった経路を有する、例えば一般的なデプスフィルターまたは細胞捕捉体のようなものである。・・・例えば、フィルタ材料は、プラスチック製のオープンセルフォーム、ガラス繊維、綿繊維、および中空コア筒状フィルタを含む。」(下線は当審にて。)
との記載があるとおり、繊維構造のフィルタ素材も、オープンセルフォームからなるフィルタ素材も、フィルタやプレフィルタとして可換に用いられるフィルタ素材として知られていることを理解することができる。
(オ)上記(ア)で述べたとおり、本件補正発明において、セパレーターを構成するフィルター群のうち入口部に位置決めされるフィルター部材として「オープンセルフォーム」を採用したことの技術的意義については本願翻訳文等に特段の記載がなく定かではないから、その開孔率や厚さ等の諸元の範囲についても不定であり、単に、フィルタ素材としてオープンセルフォームを最上層に採用した、ということにとどまる。
そうすると、上記(イ)?(エ)のとおり、血液を含む、各種懸濁液の液体分離において、フィルタ素材として、繊維構造のフィルタ(プレフィルタ)とオープンセルフォームとを併用、またはそれに置換することが周知であることに照らせば、引用発明において、最上層の第3フィルター部材を、オープンセルフォームからなるフィルタに単に置き換える程度のことは、可換な周知素材の中からの任意の素材の選択であって、当業者が容易になしえたことであるといえる。
(カ)また、オープンセルフォームからなるフィルタであっても、その厚みや気泡の大きさ、気泡の連続度等の諸元が調整自在であることは、上記周知文献4の図1(b)及び【0022】の「本実施形態では、気孔2は、図2に示すように、当該気孔2の孔径dが、通過する流体の上流側から下流側、すなわち、円筒状のフィルター1の外周から内周に向かって徐々に小さくなるように形成されている。」なる記載に例示されるとおり周知であるし、現に、上記(エ)のとおり、血液の液体分離の分野での利用も含め周知であるから、前記置き換えに際し特段の阻害要因もない。
(キ)以上のとおりであるから、引用発明において、最上層の第3のフィルタ部材としてオープンセルフォームからなるフィルタを採用することは、周知技術に基づいて当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について
(ア)本件補正発明における、セパレーターを構成するフィルター群のうち出口部側に位置決めされるフィルター部材を「セルフィルター」とすることの技術的意義や、「セルフィルター」自体の定義については、構成Iで「前記セルフィルターは、前記細胞相がそれを通って移動し前記出口部を通って出てゆくのを妨げる」と特定されるほか、本願翻訳文等の請求項4に「前記セルフィルターは、前記第2の相がそれを通って移動すること、および、前記第2の相が前記出口部を通って出て行くことを妨げるように構成されている」との定性的な記載があるほかに、その材質や諸元について特段の記載がない。
(イ)流体中の細胞等の粒子を分離除去するために汎用されるセルフィルターは、必ずしも材質が定まらないが、例えば上記(7)の周知文献6でも説明・列挙されているとおり、分離除去する粒子の径に適合した孔径を有する多孔質性の膜素材のものが周知である。
(ウ)一方、引用発明の構成f,iにおいて、「第2のフィルター部材」は「貫通孔を有する血漿または血清分離膜からなる」「血球を捕捉し下流に漏洩しないもの」であり、多数の血球等を捕捉する目的からみて、ここでの「貫通孔」は多数設けられることが明らかであるから、当該分離膜は多孔質の膜に該当するといえる。
(エ)そうすると、引用発明の「第2のフィルター部材」は、少なくともその形態と機能において本件補正発明の「セルフィルター」と相違しない。
(オ)以上のとおりであるから、相違点2は実質的な相違点ではない。
また、仮に相違点であるとしても、細胞分離用のセルフィルターと称するフィルター部材は周知のものであり、引用発明の「第2のフィルター部材」を、機能上相違しない「セルフィルター」に置き換えることは当業者が容易になし得ることであるといえる。

(10)請求人の主張についてア 請求人は審判請求書において本件補正発明の進歩性に関しおおむね以下のとおり主張している。
(ア)「本願発明1においては、補正により、セパレーターは、オープンセルフォームが、入口部に位置決めされ、セルフィルターが出口部に位置決めされたものとなっている。すなわち、両フィルターはそれぞれ入口部および出口部に隣接しているのではなく、それぞれ入口部および出口部に直接位置しているものである。\ 従って、本願発明1は、「前記セパレーターは、前記入口部に位置決めされているオープンセルフォームと、前記出口部に位置決めされているセルフィルターを含」む点で引用発明1とは異なるものである」旨。
(イ)「本願の図面4A?Cが示すように、本願発明1における「繊維構造はオープンセルフォームからセルフィルターへと直接延び」るとは、繊維構造が各層で完全に分かれたものではなく、互いの繊維構造が互いの内部へと伸びていることを表している。これに対し、引用文献1では、例えば図4に示されるように、各層のフィルターは互いに直接接触はしているが、互いの内部へと伸びてはいない。\従って、本願発明1は、「繊維構造はオープンセルフォームからセルフィルターへと直接延びて」いる点で引用発明1とは異なるものである」旨。
(ウ)「本願発明1において、「前記細胞相の中に位置付けされている粒子を遅くし、前記細胞相のフローをさらに遅くし、前記セパレーターを通る前記血漿相のフローを増加させ」るものは「繊維構造」である。これに対し、引用発明1で、このような効果を得ることができるのは上流側よりも下流側の繊維径を細かくすることによるものである。\従って、本願発明1は、「前記繊維構造は、前記細胞相の中に位置付けされている粒子を遅くし、前記細胞相のフローをさらに遅くし、前記セパレーターを通る前記血漿相のフローを増加させ」る点で引用発明1とは異なり、また、この点は当業者にとって自明ではないものである」旨。
(エ)上記(ア)?(ウ)により「血液サンプルが入口から容器に入るとすぐに血漿相と細胞相が分離し始め、これらの分離は連続的に行われ、フィルターの有する繊維の構造により、血液の液体成分である血漿を通すが、個体成分である細胞は通しにくく、血漿相がセパレーターを先に通過でき、かつ、通過した血漿相が出口をすぐに通過できるという高い効果を提供することができる」旨。

イ 上申書の主張について
(ア)上申書に示された補正案
請求人は上申書において、本件補正発明の構成Cを、下記構成C’へと補正する案を示している。
構成C’「前記血液サンプルを前記血漿相および前記細胞相に分離するための前記容器の中に位置付けされているセパレーターであって、前記セパレーターは、血液サンプルの細胞相と相互作用し血液サンプルの細胞相を遅くして、それにより血漿相が細胞相よりも速く移動することを可能にする、それぞれが異なる細孔サイズを有する複数の繊維フィルターを含み、それぞれの繊維フィルターの前記細孔サイズが前記容器の前記入口部から前記出口部の方向へと減少する、セパレーターと、」
(イ)請求人は該上申書において、上記構成案C’をもとに、さらに以下のとおり主張する。
「前記補正案による補正後の本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」とする)と、引用文献1に記載の発明(以下、「引用発明1」とする)を対比すると、本願発明1はセパレーターの「それぞれの繊維フィルターの前記細孔サイズが前記容器の前記入口部から前記出口部の方向へと減少する、」点で相違します。
この点につきさらに言及すると、確かに引用発明1についても、繊維フィルターの細孔サイズが容器の入口部から出口部の方向へ変化するものではあります。
しかし、引用発明1では、フィルタ部材の繊維径については、上流より下流の方が細かいことから、セパレーターのそれぞれの繊維フィルターの細孔サイズが容器の入口部から出口部の方向へと減少する本願発明1とは明確に異なるものであります。
そして、本願発明1は、セパレーターの「それぞれの繊維フィルターの前記細孔サイズが前記容器の前記入口部から前記出口部の方向へと減少する、」ことから、図5に示されるセパレーターと同様に、異なる細胞タイプを徐々に濾過して取り除き、清浄な第1の相を生み出すことが可能である、という高い効果を提供することができます(本願明細書段落[0031]、本願図面4A-4C、5参照)。
さらには、引用文献1には、セパレーターの「それぞれの繊維フィルターの前記細孔サイズが前記容器の前記入口部から前記出口部の方向へと減少する」点について一切示唆ないし教示はなく、引用文献2-3についても同様であることから、当業者が本願発明1の構成を引用文献1-3の記載から容易に想到しうるものではない・・・。」

ウ 請求人の主張に対して(ア)主張ア(ア)に対して
当該主張の根拠となる、本件補正(補正事項ア,イ)により変更された本件補正発明の特定事項については、当該特定事項の意味するところが請求人の主張(ア)のとおりであるとすれば、上記2(2),(3)で述べたとおり、本件補正は新規事項を加入するものであり、また、目的外の補正であることとなる。
また、仮に限定的減縮を目的とした補正であるとすれば、該各特定事項を以てしても引用発明に基づいて進歩性を有しないことは上記(9)で述べたとおりである。
よって、当該主張は採用できない。
(イ)主張ア(イ)に対して
「繊維構造が各層で完全に分かれたものではなく、互いの繊維構造が互いの内部へと伸びている」ことについて、本願翻訳文等に根拠となる文言上の記載はなく、むしろ【0031】には「一連のフィルター32は、入口部6に隣接して位置決めされているオープンセルフォーム34と、繊維フィルター層35と、セパレーター30の後に位置付けされている細胞捕獲フィルター36とを含む」と、オープンセルフォーム・セルフィルター(細胞捕獲フィルター)とは、繊維フィルター層35に対し別体として説明されており、図4A?Cをみても、図4A,Bではそもそもセルフィルターは記載されておらず、繊維フィルター層35とオープンセルフォーム34とは、前者が実線のハッチで、後者が破線のハッチで描き分けられており、「互いの繊維構造が互いの内部へと伸びている」ことを図のみから読み取ることはできない。
よって、当該主張は本願翻訳文等の記載事項にもとづかない主張であり、採用できない。
(ウ)主張ア(ウ)に対して
請求人のいう引用発明の「上流側よりも下流側の繊維径を細かくすること」は、第1のフィルター部材の「繊維構造」に外ならないから、請求人の当該主張は根拠を欠き、採用できない。
(エ)主張ア(エ)に対して
請求人が当該効果の根拠とする本件補正発明の構成についての主張のうち主張ア(イ),(ウ)は上記(イ),(ウ)のとおりそもそもその主張根拠を欠き、主張ア(ア)についても、上記(ア)特定事項自体が不適法な補正によるものか、または、上記(8)イのとおり、引用発明と差異がないものである。
よって、引用発明に対し、本件補正発明の奏する効果は格別優れたものということはできない。
(オ)主張イについて
引用文献1には、(2)ア(ウ)に「第1のフィルタ部材は繊維径0.2?3.Oμm、充填密度0.1?0.5g/cm^(3)の範囲内で2段以上の複数段構成とされていてもよい。その場合は、上流側より下流側の充填密度を高くするか、あるいは、上流側よりも下流側の繊維径を細くすることが好ましい。」との記載がある。
この記載には、請求人が指摘する「フィルタ部材の繊維径については、上流より下流の方が細かい」繊維構造のほかに、「上流側より下流側の充填密度を高くする」繊維構造とする態様も並列的に含まれており、繊維径を維持したまま充填密度を下流ほど高くすることは、請求人の言う「繊維フィルターの細孔サイズが容器の入口部から出口部の方向へと減少」することに相当することが明らかである。
よって、構成案C’も引用文献1に記載された発明との間に相違点を生じさせるものとはいえない。

(11)まとめ
したがって、上記(2)?(10)において検討したように、本件補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
上記2.,3.において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反し、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものでもなく、また、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和2年4月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の1に記載したとおりのものである。

2.原査定の拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、概略、本願発明は引用文献1及び周知技術を示す引用文献2,3に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

<引用文献等一覧>
1.国際公開第2004/046716号
2.特開平09-068484号公報(周知技術を示す文献;当審の周知文献2)
3.特許第5713277号公報(周知技術を示す文献;当審の周知文献3)

3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1?3の記載事項は、上記第2の3(2)?(4)に記載したとおりである。

4.対比・判断
請求人の主張によれば、本願発明は上記第2の3.で検討した本件補正発明について、「セパレーター」の「オープンセルフォーム」及び「セルフィルター」なる各フィルターの位置に関する限定事項を拡張したものである。
そうすると、本願発明と引用発明との間には、上記相違点1,2と同様の相違点のみが存在する。
引用発明において該各相違点の構成とすることが当業者にとって想到容易であることは上記第2の3.(9),(10)で述べたとおりである。
また、本件補正はそもそも、新規事項または目的外補正に該当するものであるが、そうであるとしても(補正事項ア、イが限定的減縮に該当しないとしても)、前記各フィルターがそれぞれ入口部・出口部に隣接している点は、上記第2の3.(8)オ,カのとおり、引用発明と一致することに変わりはない。
よって、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願優先日前に頒布された引用文献に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-05-17 
結審通知日 2021-05-18 
審決日 2021-05-31 
出願番号 特願2018-511455(P2018-511455)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01N)
P 1 8・ 561- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 572- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩田 裕介  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 蔵田 真彦
樋口 宗彦
発明の名称 試料の相を分離するためのデプスフィルトレーションデバイス  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
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